3-1. ハスラー2

監督 マーティン・スコセッシ
出演 ポール・ニューマントム・クルーズメアリー・エリザベス・マストラントニオ
1986年・アメリカ(東宝)

解説
ハスラー稼業から足を洗った男と若いハスラーの戦いと友情を描く続編。製作はアーヴィン・アクセラッドとバーバラ・デ・フィーナ。監督は 「アフター・アワーズ」 のマーティン・スコセッシ。ウォルター・テヴィスの小説(角川文庫)をリチャード・プライスが脚色。撮影はミハエル・バルハウス、音楽はトッド・カソー、編集はセルマ・スクーンメイカーが担当。出演はポール・ニューマン、トム・クルーズなど。ドルビー・ステレオ

ストーリー
かつてのハスラー、エディ(ポール・ニューマン)は50代になり、頭には白いものがまじっていた。あのミネソタ・ファッツと死闘を演じてから、25年が経っていた。今は酒のセールスで生計をたて、恋人のジャネル(ヘレン・シェイヴァー)との老後の生活のことなども考えていた。ある日、エディは若いハスラー、ヴィンセント(トム・クルーズ)と出会った。天性の閃きを感じさせる腕の冴えにエディは若い頃の自分の姿を重ね合わせた。数カ月後にアトランティックシティで、ナインボールの大会がある。エディとヴィンセントはチームを組んでその大会に参加することにした。ヴィンセントの恋人カルメン(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)も加わって、3人の旅が始まった。この旅で、エディはどうしてもヴィンセントを一流のハスラーに仕立てあげようと思った。ゲームの勝ち方、負け方、そして負けて金をかせぐ方法etc……。トラブルも起こった。カルメンとエディの仲を疑って、分かれ分かれになった時期もあった。アトランティックの大会に参加して勝ち上がっていった2人は、準決勝で顔を合わせた。凄まじい激戦ののちエディはヴィンセントを破った。打ちひしがれて床に崩れ落ちるヴィンセント。翌日、エディはヴィンセントがわざと負けたのを知った。そして、それを見破れなかった自分の老いを知った。たしかにヴィンセントは全盛期の自分を超えていた。ヴィンセントは次のヒューストン大会に向かって旅立って行った。巣を離れて飛立つ若鷲のように。




3-2. メリー・ポピンズ

監督 ロバート・スティーヴンソン
出演 ジュリー・アンドリュースディック・バン・ダイクデイヴィッド・トムリンソン
1964年・アメリカ(ウォルト・ディズニー・プロ)

解説
イギリスの女流作家P・L・トラヴァースが1934年に「メリー・ポピンズ」 を生んで以来、ショウ・ビジネスのプロデューサーたちは権利の獲得にひしめいたという。脚色はビル・ウォルシュとドン・ダグラディらディズニーのトップ・ライターが担当、撮影はエドワード・コールマンによる。音楽は、リチャード・M、及びロバート・B・シャーマン兄弟による歌曲と、アカデミー賞受賞の音楽監督アーウィン・コスタルによる編曲と指揮。シャーマン兄弟には「夏の魔術」 などがある。コスチュームおよびデザイン顧問はトニー・ウォルトン、振付はマーク・ブロウ、ディ・ディ・ウッド夫妻、漫画監督はハミルトン・S・ラスク、漫画美術監督はマックラレン・スチュアートらがそれぞれ担当した。出演は「サウンド・オブ・ミュージック」 のジュリー・アンドリュース、「バイ・バイ・バーディー」 のディック・ヴァン・ダイク、「トム・ジョーンズの華麗な冒険」 のデイヴィッド・トムリンソン、ほかにグリニス・ジョンズ、ハーミオン・バッデレイ(子役)、カレン・ドートリス(同)マシュウ・ガーバー(同)、エルザ・ランチェスター、エド・ウィンほか。製作はウォルト・ディズニー、製作補佐はビル・ウォルシュ。

ストーリー
1910年。ロンドンでも美しい桜通りに住むバンクス氏(デイヴィッド・トムリンソン)は銀行家で気むづかし屋。奥さん(グリンス・ジョーンズ)も婦人参政権運動に夢中で子供は放りっぱなし。乳母任せの子供たちは腕白ざかりで一向に乳母が居つかない。ある日、子供たちは自分の夢にぴったりの、優しくて、美しい、親切で若い乳母の条件を書いて父親に見せたが父は紙片をストーブに放りこんでしまった。それは煙突から空高く飛んでいった。翌朝、パラソルを開いた若い女性がフワフワ空からやってきた。子供の書いた紙片を持って。メリー・ポピンズ(ジュリー・アンドリュース)である。自分勝手に子供部屋へ行き、指を鳴らすと魔法のように散らかったものが片づき、不思議な鞄からは何でも出すのだ。日課の散歩のときなど大道芸人バート(ディック・V・ダイク)の描く絵の中にさえ入って行け、遊ぶことさえできる。彼女がやって来てからは家中が朗らかになり、歌まで歌いだしたのがバンクス氏は不思議でたまらない。子供の躾に厳格なバンクス氏は子供たちに倹約を教えようと預金させようとした。銀行の老頭取が無理に預金をさせようとしたので、子供は思わず「私のお金を返して!」と大声をだした。それを聞いた預金者たちは銀行が危ないのではないかと勘違い、あわてて払いもどしに殺到、大混乱になった。逃げだした子供は途中で煙突掃除夫姿のバートに出会った。煙突だらけの屋上に上ると、煙突の中からメリー・ポピンズが現れ、あちこちから煙突掃除夫が飛んできて、皆で踊りつづけた。その夜、バンクス氏は銀行から呼び出しをうけて重役から叱りとばされたが、メリー・ポピンズのことが目に浮び、まったく気にならない。翌朝、陽気になったバンクス氏は一家揃ってタコあげにでかけた。一家の楽しそうな姿を見てメリー・ポビンズは風に乗って空に舞い上がった。公園では銀行の重役までがタコ上げにきょうじている。重役たちはバンクス氏を重役にすることを決めみんなで楽しんでいたのだ。メリー・ポピンズはきっとこれからまたどこかへ幸せをまきに行くのだろう。




3-3. 君とボクの虹色の世界

監督 ミランダ・ジュライ
出演 ミランダ・ジュライジョン・ホークスマイルズ・トンプソン
2005年・アメリカ(ハピネットピクチャーズ)

解説
カンヌ映画祭をはじめ、各国の映画賞に輝いた、新鋭ミランダ・ジュライ監督による群像ドラマ。年齢や環境の異なるさまざまな人々の触れ合いを、ポップな映像でつづる。

ストーリー
クリスティーン(ミランダ・ジュライ)はアーティストを夢見ながら、高齢者タクシーの運転手をして生計を立てている。ある日、得意客のマイケル(ヘクター・エリアス)と一緒にショッピングモールの靴売り場を訪れた彼女は、店員のリチャード(ジョン・ホークス)に恋をする。彼は最近離婚したばかりで、まだ新しい恋に踏み出す勇気が出ない。ふたりはなかなか素直に一歩を踏み出せない。リチャードの息子ロビーとピーターは、チャットで遊んでいるうちに、ある女の人と意気投合。そしてロビーは相手の女性から今度会いましょうと誘われる。リチャードの隣家に住むしっかり者の小学生シルヴィーは、嫁入り道具をコレクションしている。ある日コレクションをピーターにみられ、未来の夫と娘のために集めていると語る。女の子が苦手で少し内気なピーターは、シルヴィーの夢に共感する。仲良しの二人組のヘザー(ナターシャ・スレイトン)とレベッカ(ナジャラ・タウンゼント)は、二人ともまだBFはいない。ある日、たまたま知り合ったアンドリュー(ブラッド・ヘンケ)に声をかけてみたところ、好反応が返ってくる。気を良くした彼女たちが翌日もアンドリューの家に行ってみると、「シャツを脱げ」と張り紙が。クリスティーンの得意客でもあるマイケルは、70歳にしてようやく人生を共に過ごす愛するパートナーとめぐり合えた。その愛する人エレンは、チューブにつながれており、そう長くは生きられない。もう少し時間があれば……。思うように制作が進まないクリスティーンに、マイケルはチャレンジしないと始まらないと励ます。それぞれの、愛したい・愛されたいという想いが交差していく。




3-4. プリンセス・シシー

監督 エルンスト・マリシュカ
出演 ロミー・シュナイダーカールハインツ・ベームマグダ・シュナイダー
1955年・西ドイツ(映配)

解説
「わたしの可愛い人」 のロミー・シュナイダーを主演に、戦前 「別れの曲」 のシナリオを書いているエルンスト・マリシュカが監督・脚本を担当した作品。十九世紀のババリアの王女とオーストリアの王子のロマンスが描かれる。撮影はヘルベルト・ガイヤー、音楽はアントン・プロフェスが受けもっている。他に出演するのは、カール・ハインツ・ベーム、ロミー・シュナイダーの母であるマグダ・シュナイダー、グスタフ・クヌート、ウッター・フランツ、フィルマ・デギッシャー、エリッヒ・ニコービッツ、ペーター・ベック、ヨゼフ・マインラート、フランツ・ベーハイム等。製作カール・エーリッヒ。

ストーリー
一八四八年、フランスに起った革命の嵐はオーストリアをも襲い、ハプスブルグ家は危機に立った。ソフィー大公妃(フィルマ・デギッシャー)は夫のフランツ・カルル大公を退位させ、息子のフランツ・ヨゼフ王子(カール・ハインツ・ベーム)の即位をはかった。皇后候補の物色が始まった。ソフィー大公妃は妹ルードビカ公妃(マグダ・シュナイダー)の長女ヘレーネ・愛称ネネ(ウッター・フランツ)に白羽の矢を立てた。一家の主、マックス公爵(グスタフ・クヌート)が宮廷生活を嫌っていたため、ネネの一家はボッセンホーフェンで田舎ぐらしをしていた。父親とともに、自然を相手の毎日をたのしんだのはシシーの愛称で呼ばれる次女エリザベート(ロミー・シュナイダー)であった。ネネとシシーは母ルードビカ公妃と共にソフィー大公妃に招かれてイッシュルを訪れた。シシーは若すぎるため、オースリア皇帝の宴席に出られなかった。しかし彼女はそんなことには一向無頓着だった。裏窓から逃げ出して魚を釣っていると、フランツ・ヨゼフが通りかかった。王子はこの可憐なシシーが一目でお気に召した。シシーも王子が好きになった。二人は互の身上話をして、楽しい一刻を過した。しかし王子が姉の夫となるべき人であったことを知ると、シシーは苦しんだ。宴席にシシーも招待された。宴席上、フランツ王子はシシーばかりをみつめ、シシーとのみ話し、おどった。楽しい夜であった。夜更けて王子は婚約を発表したが相手はシシーであった。ネネは寂しそうであった。一瞬戸惑った大衆は、バルコニーの若い二人を祝福した。ソフィー大公妃はまだ幼いシシーを皇后に迎えることに反対した。しかし王子の熱意は勝った。オースリアの王子が小国ババリアの王女と婚約したことは世界中の人々を驚かせた。森や動物に別れを告げると、シシーはホッセンホーフェンを去った。フランツ・ヨゼフ皇帝とウィーン市民は、シシー女王を歓迎した。結婚の日、シシーはお伽噺の国の王女のように、フランツの先導で静かに祭壇へ向って行った。シシーの眼には喜びの涙が光っていた。




3-5. 若き皇后・シシー

監督 エルンスト・マリシュカ
出演 ロミー・シュナイダーカールハインツ・ベームマグダ・シュナイダー
1956年・オーストリア

解説
1955年の「プリンセス・シシー」の続編として発表された。日本では劇場公開されなかったが、DVDが発売されている(DVD題名は「エリザベート2 若き皇后」)。

ストーリー
オーストリア皇后となったものの、狩りや乗馬を何より愛するシシーと、宮廷の慣例を固守する義母のゾフィー大公妃との間には確執が絶えない。ゾフィーに侮辱されたハンガリー貴族アンドラーシ伯爵の怒りもシシーが取りなしことなきをえる。しかし生まれたばかりの娘の養育権をゾフィーに奪われてしまい、抗議のためシシーは故郷に帰ってしまう。迎えに来た皇帝に説得され、二人はオーストリアの山岳地帯を旅行する。ウィーンでは、ゾフィーへの反発から欠席を決めていたハンガリーとの修好のためのパーティーに国のためを思い出席する。そこでハンガリー使節団からの要請を受け、シシーはハンガリー女王としての戴冠を受ける。




3-6. ある皇后の運命の歳月

監督 エルンスト・マリシュカ
出演 ロミー・シュナイダーカールハインツ・ベームマグダ・シュナイダー
1957年・オーストリア

解説
1955年の「プリンセス・シシー」、1956年の「若き皇后シシー」の続編として発表された。日本では劇場公開されなかったが、DVDが発売されている(DVD題名は「エリザベート3 運命の歳月」)。

ストーリー
宮廷生活が気詰まりなシシーは、愛するハンガリーに娘ジゼラと滞在している。そこでアンドラーシ伯爵の仲介で反対勢力貴族との会見も果たす。いつまでも戻らない皇后を迎えに来た皇帝フランツとつかの間の旅行を楽しむが、急な胸の痛みに襲われウィーンに急遽帰国。医師団から結核の診断とともに転地療養を指示され、夫と娘との接触も禁じられる。ポルトガルのマデイラ島での療養もはかばかしくないところに、母親のルドヴィカが看護に加わる。彼女の励ましによりギリシャのコルフ島では奇跡的に病いが完治する。その帰途、夫と合流し、オーストリア支配を快く思わない北イタリアとの親善のためミラノ、ヴェネチアに公式訪問を敢行するが、冷たい出迎えを受ける。しかしサン・マルコ広場でのシシーと娘ジゼラとの感動的な再会を目にしたヴェネチア市民も皇后万歳の声を上げる。




3-7. アラビアのロレンス 前編

監督 デイヴィッド・リーン
出演 ピーター・オトゥールアレック・ギネスアンソニー・クイン
1962年・イギリス(コロムビア)

解説
T・E・ロレンス自伝「知恵の七柱」からロバート・ボルトが脚色し、 「戦場にかける橋」 のデイヴィッド・リーンが監督した七〇ミリスペクタクル。撮影はフレデリック・A・ヤング、音楽はモーリス・ジャール。出演者は舞台俳優のピーター・オトゥール、 「戦艦デファイアント号の反乱」 のアレック・ギネス、 「バラバ」 のアンソニー・クイン・ 「紳士同盟」 のジャック・ホーキンス、 「カサブランカ」 のクロード・レインズ、ホセ・フェラー、アーサー・ケネディ、アンソニー・クェイルなど。製作はサム・スピーゲル。テクニカラー・スーパーパナピジョン七〇ミリ。

ストーリー
一九一六年、英国陸軍カイロ司令部に勤務中のロレンス少尉(ピーター・オトゥール)は、三ヵ月の欠勤許可をもらった。理由は、現在トルコに対して反乱を起しつつあるアラブ民族の情勢を確かめることにあった。早速ロレンスは灼熱の砂漠の中を反乱軍の指揮者フェイサル王子(アレック・ギネス)の陣営に旅立ったが、途中、同じ民族が血を流しあうのを見て愛想をつかし、ハリス族首長アリの案内申し出を断った。陣営近くで英軍の連絡将校ブライトン大佐(アンソニー・クェイル)に逢ったが、陣営につくや突如トルコ空軍の爆撃を受けた。そこでロレンスは近代武力の前に暴露されたアラブ反乱軍の無力さをまざまざと見せつけられた。ブライトン大佐は彼らに英軍の武器による指導と訓練を提案したが、ロレンスはゲリラ戦を主張した。つまり、トルコ軍の重要地点アカバの反対側にいるアウダ(アンソニー・クイン)を首長とするホウエイタット族と手を結び、背後から敵連絡網などを叩いて撹乱させるという作戦だった。日が経つにつれて、ロレンスの部隊は全く疲労し、ラクダも人も次々と砂の上に倒れて行った。ある夜、部隊全員がアウダの陣営に招待された。ロレンスとアリはアラブ民族の団結を説いたが、アウダは一笑に付すだけだった。が、アカバに秘宝があるという話を聞くと、彼はロレンスに助力を約した。補強された部隊が進撃中、ガシムがアウダの部下と争い相手を殺してしまった。“眼には眼を”という砂漠の掟により、ガシムを殺さねばならなかった。死を賭してまで救ったガシムだったが、ロレンスは引金を引いた。アカバでの戦いは苛烈をきわめた。燃えるものは全て焼き尽され、ロレンスが意識を回復したときにはトルコ兵の姿はなく、アウダが役にも立たない秘宝の箱を抱えているだけだった。ロレンスはアカバ攻略を告げるためカイロに向った。カイロに着くと司令官が変りアレンビー将軍(ジャック・ホーキンス)になっていた。ロレンスは、新たな任務を与えられた。ゲリラ戦の指導者である。何回目かの鉄道爆破のとき、部下のファラジが重傷を負った。ロレンスは秘密のもれるのを恐れ、その場で射殺した。エルサレムに行ったロレンスは、すでに英仏両国間にアラブとトルコの土地を二等分するというサイクス=ピコット条約が結ばれているのを知り愕然とした。が、ロレンスのゲリラ部隊は再編成され、アリもアウダも参加していた。部隊がロレンス支持者の集落へ来たとき、すでに集落はトルコ軍の襲撃を受け燃え上り眼前に悲惨な光景が待っていた。怒ったロレンスはトルコ兵を最後の一人までも追って殺害した。種族間の争いが起り、アウダは部下を連れ砂漠へ帰り、アリは政治の勉強のためダマスカスに残ると言った。その時ロレンスはトルコの病院に忘れられている二百人の重傷者のことに心がおよんだ。彼はアラビア人の服をまとうと病院へ向った。だが、服装で誤解した英国の軍医に、彼こそこの惨状を引き起したアラビア人の張本人だと平手打ちを食わされた。アレンビー将軍の司令部でも、やがてシリアの王となるフェイサルにとっても、ロレンスは無用の者となりつつあった。彼は態のいい追放を受けた。その時はじめて彼の心に孤独感がしみわたった。大佐への進級と、英国への帰還船に個室が用意されたことだけが、ロレンスの砂漠での功績に対する感謝の印だった。軍用乗用車でダマスカスを発ったロレンスは、窓外に顔なじみを探したが、誰一人として彼に気づく者はいなかった。ロレンスを覚えているのは荒漠たる砂漠の広がりだけかも知れなかった。




3-8. アラビアのロレンス 後編

監督 デイヴィッド・リーン
出演 ピーター・オトゥールアレック・ギネスアンソニー・クイン
1962年・イギリス(コロムビア)

解説
T・E・ロレンス自伝「知恵の七柱」からロバート・ボルトが脚色し、 「戦場にかける橋」 のデイヴィッド・リーンが監督した七〇ミリスペクタクル。撮影はフレデリック・A・ヤング、音楽はモーリス・ジャール。出演者は舞台俳優のピーター・オトゥール、 「戦艦デファイアント号の反乱」 のアレック・ギネス、 「バラバ」 のアンソニー・クイン・ 「紳士同盟」 のジャック・ホーキンス、 「カサブランカ」 のクロード・レインズ、ホセ・フェラー、アーサー・ケネディ、アンソニー・クェイルなど。製作はサム・スピーゲル。テクニカラー・スーパーパナピジョン七〇ミリ。

ストーリー
一九一六年、英国陸軍カイロ司令部に勤務中のロレンス少尉(ピーター・オトゥール)は、三ヵ月の欠勤許可をもらった。理由は、現在トルコに対して反乱を起しつつあるアラブ民族の情勢を確かめることにあった。早速ロレンスは灼熱の砂漠の中を反乱軍の指揮者フェイサル王子(アレック・ギネス)の陣営に旅立ったが、途中、同じ民族が血を流しあうのを見て愛想をつかし、ハリス族首長アリの案内申し出を断った。陣営近くで英軍の連絡将校ブライトン大佐(アンソニー・クェイル)に逢ったが、陣営につくや突如トルコ空軍の爆撃を受けた。そこでロレンスは近代武力の前に暴露されたアラブ反乱軍の無力さをまざまざと見せつけられた。ブライトン大佐は彼らに英軍の武器による指導と訓練を提案したが、ロレンスはゲリラ戦を主張した。つまり、トルコ軍の重要地点アカバの反対側にいるアウダ(アンソニー・クイン)を首長とするホウエイタット族と手を結び、背後から敵連絡網などを叩いて撹乱させるという作戦だった。日が経つにつれて、ロレンスの部隊は全く疲労し、ラクダも人も次々と砂の上に倒れて行った。ある夜、部隊全員がアウダの陣営に招待された。ロレンスとアリはアラブ民族の団結を説いたが、アウダは一笑に付すだけだった。が、アカバに秘宝があるという話を聞くと、彼はロレンスに助力を約した。補強された部隊が進撃中、ガシムがアウダの部下と争い相手を殺してしまった。“眼には眼を”という砂漠の掟により、ガシムを殺さねばならなかった。死を賭してまで救ったガシムだったが、ロレンスは引金を引いた。アカバでの戦いは苛烈をきわめた。燃えるものは全て焼き尽され、ロレンスが意識を回復したときにはトルコ兵の姿はなく、アウダが役にも立たない秘宝の箱を抱えているだけだった。ロレンスはアカバ攻略を告げるためカイロに向った。カイロに着くと司令官が変りアレンビー将軍(ジャック・ホーキンス)になっていた。ロレンスは、新たな任務を与えられた。ゲリラ戦の指導者である。何回目かの鉄道爆破のとき、部下のファラジが重傷を負った。ロレンスは秘密のもれるのを恐れ、その場で射殺した。エルサレムに行ったロレンスは、すでに英仏両国間にアラブとトルコの土地を二等分するというサイクス=ピコット条約が結ばれているのを知り愕然とした。が、ロレンスのゲリラ部隊は再編成され、アリもアウダも参加していた。部隊がロレンス支持者の集落へ来たとき、すでに集落はトルコ軍の襲撃を受け燃え上り眼前に悲惨な光景が待っていた。怒ったロレンスはトルコ兵を最後の一人までも追って殺害した。種族間の争いが起り、アウダは部下を連れ砂漠へ帰り、アリは政治の勉強のためダマスカスに残ると言った。その時ロレンスはトルコの病院に忘れられている二百人の重傷者のことに心がおよんだ。彼はアラビア人の服をまとうと病院へ向った。だが、服装で誤解した英国の軍医に、彼こそこの惨状を引き起したアラビア人の張本人だと平手打ちを食わされた。アレンビー将軍の司令部でも、やがてシリアの王となるフェイサルにとっても、ロレンスは無用の者となりつつあった。彼は態のいい追放を受けた。その時はじめて彼の心に孤独感がしみわたった。大佐への進級と、英国への帰還船に個室が用意されたことだけが、ロレンスの砂漠での功績に対する感謝の印だった。軍用乗用車でダマスカスを発ったロレンスは、窓外に顔なじみを探したが、誰一人として彼に気づく者はいなかった。ロレンスを覚えているのは荒漠たる砂漠の広がりだけかも知れなかった。




3-9. グローリー

監督 エドワード・ズウィック
出演 マシュー・ブロデリックデンゼル・ワシントンケアリー・エルウィス
1989年・アメリカ(トライ・スター映画)

解説
南北戦争を舞台に、北軍の黒人部隊の指揮官と兵士たちの活躍と勇姿を描く戦記ドラマ。製作はフレディ・フィールズ、監督は 「きのうの夜は…」 のエドワード・ズウィック。りンカーン・カースティンとピーター・バーチャード、ロバート・グールド・ショーの原作を基に、脚本はケヴィン・ジャール、撮影はフレディ・フランシス、音楽はジェームズ・ホーナーが担当。出演はマシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマンほか。89年アカデミー賞助演男優(D・ワシントン)、撮影、録音賞受賞。

ストーリー
1860年代初頭、ボストンの実家に戻ってきた北軍指揮官ロバート・グールド・ショー(マシュー・ブロデリック)は、パーティの席上で知事(アラン・ノース)から、黒人だけで組織される第54連隊の指揮官を勧められ、それを引き受ける。ショーの友人で白人士官のキャボット・フォーブス(ケイリー・エルウェス)と幼なじみの黒人シアーレス(アンドレ・ブラウアー)も、それに志願した。やがて多くの黒人たちが入隊を志願するが、その大半は南部から逃れてきた奴隷で、食事と軍服目当ての者も少なくなかった。訓練は苛酷を極め、しかし兵士は白人部隊をしのぐ成長ぶりをみせた。が、北軍内部でさえ人種差別は根強く、必要物資もなかなか支給されない上、リンカーン大統領の命令で、黒人兵は戦闘の加わることができないでいた。厳しい訓練が続く中、ショーは、リーダー格のローリング(モーガン・フリーマン)や白人を憎むトリップ(デンゼル・ワシントン)、射撃の名手シャーツ(ジミー・ケネディ)たち兵士との交流を通して、厚い信頼関係を築いてゆくのだった。間もなく第54連隊は、サウスカロライナに移動し、ローリングも黒人初の上級曹長になるが、略奪や肉体労働ばかりの黒人兵士の仕事に業を煮やしたショーは、総司令官にそれを訴えて脅かしたことで、連隊はようやく実際の戦闘に加わることができ、そしてめざましい戦果をあげた。さらにショーは、難攻不落の南軍の砦フォート・ワグナーの攻撃を、部隊の全滅を覚悟で志願する。戦いの前夜、兵舎でゴスペルを歌う兵士たち。ローリングは、今まで家畜同様に扱われてきた、これは自分たちの誇り高い栄光なのだ、と語る。そして南北戦争の雌雄を決するこの壮絶な死闘の中で、第54連隊は全滅した。しかし彼らの勇敢な戦いは、その後北軍に多くの黒人部隊を誕生させるきっかけとなり、その勝利に大きく貢献することになるのである。




3-10. フラッシュ・ダンス 

監督 エイドリアン・ライン
出演 ジェニファー・ビールスマイケル・ヌーリーベリンダ・バウアー
1983年・アメリカ(パラマウント作品=CIC)

解説
ブロのダンサーをめざす19歳の溶接工の愛、友情、そして夢を描く。製作はドン・シンプソンとジェリー・ブラック・ハイマー。エグゼクティヴ・プロデューサーはジョン・ピータースとピーター・グーバーがつとめている。監督は 「フォクシー・レディ」 (80)のエイドリアン・ライン。トム・ヘドリーの原案に基づき、ヘドリー自身と 「フィスト」 のジョー・エスターハスが脚本を執筆。撮影はドン・ピーターマン、音楽はジョルジォ・モロダー、編曲・指揮はシルヴェスター・リーヴェイが担当。主題歌をアイリーン・キャラが歌っている。振付けはジェフリー・ホーナディが手掛けている。出演は四千人のなかから選ばれたエール大学の1年生のジェニファー・ビールス、マイケル・ヌーリー、リリア・スカラ、ベリンダ・バウアー、サニー・ジョンソンなど。82年10月18日、ピッツバーグのロケ撮影で製作を開始し、LAロケを含む3カ月間で主要場面の撮影を終了した。ドルビー・ステレオ。日本版字幕は戸田奈津子。イーストマン・カラー、ビスタサイズ。1983年作品。

ストーリー
ペンシルヴェニア州の工業都市ピッツバーグ。19歳のアレックス・オウエンス(ジェニファー・ビールス)は女だてらに、溶接工として男たちと混じって働いている。夜はモービーズ・バーのフロア・ダンサーとして、ロック・リズムにのって激しい踊りを披露する。彼女には本格的なプロのダンサーになるという夢があった。だから、倉庫を改造した家にもどると、汗だくになってダンスの訓練を続けている゜ピッツバーグ・ダンス・アンド・レパートリー・カンパニーにオーディションの応募用紙をもらいに行ったものの、他の応募者がみなバレエの勉強を長年続けていること、それにひきかえ自分にオーソドックスな基礎のないことを知ると、そのまま帰ってくる。モービーズで彼女を見た社長のニック・ハーリー(マイケル・ヌーリー)が食事に誘うが、「ボスとは食事をしない主義なの」と相手にしない。そして彼女が訪れたのは、ダンスの恩師ハンナ・ロング(リリア・スカラ)の家だった。かつてジーグフリード・フォリーズで活躍したハンナは、「夢を捨てては駄目よ」と忠告する。モービーズでウェイトレスをやっているジェニー(サニー・ジョンソン)はアレックスの親友で、プロのスケーターになることを夢みている。料理人のリッチーはジェニーの恋人で、LAに行つて、リチャード・プライヤーやエディ・マーフィーのようなコメディアンになるのが希望だった。近くでトップレス・ショーをやっているジョニー・Cは、アレックスを引き抜こうと何度も声をかけてくる。ある夜、駐車場でゾョニー・Cに襲われようとするところを、ニックに救われた。ジェニーのスケートのオーディションの日、アレックスはニックと一緒に応援に行く。だが、仮女は二度も転倒してしまう。涙を流すジェニー。その夜、アレックスとニックは彼女の家で結ばれた。やがて、2人は互いに欠かせぬ存在になる。しかしアレックスとハンナがバレエ公演を見に行った夜、ニックが美しい女性と車で去るところを目撃。怒ったアレックスはニックの家の窓ガラスに石をなげつける。家へもどったアレックスにリッチーが会いに来て、LAへ行くと告げる。ジェニーを愛しているが、今はどうしようもないという。次の朝、ニックを責めたアレックスは例の女性が離婚した妻であること、自分はピッツバーグ・ダンス・アンド・レパートリー・カンパニーの理事だから、どうしても昨晩は出席しなければならなかったと聞かされ、怒りもおさまった。その夜、2人がレストランで食事をしているところに、ニックの元妻ケティ(ベリンダ・バウアー)がやって来たが、心は平静だった。ニックの励ましで、オーディションを受けることを決意。モービーズで仮装パーティが開かれている時、リッチーがもどって来た。しかし、ジェニーはジョニー・Cと一緒に出て行く。オーディションの通知が来て有頂天になったが、ニックが裏で手をまわしたことを知るとカンカンになる。ジェニーがトップレス・ダンサーになっているのを見ると表へつれ出す。「何故とめるの?」と叫ぶジェニーに、「友達だから」とアレックスは答える。ハンナが死んだ。もう一度、やり直すことにしたアレックスはオーディションを受けることにした。当日、独創的な彼女のダンスに目をみはる審査員たち。外へ出ると、赤い薔薇を手にニックがたっていた。2人は抱きあう。(パラマウント=CIC配給*1時間35分)




3-11. ブレイブハート

監督 メル・ギブソン
出演 メル・ギブソンソフィー・マルソーパトリック・マクグーハン
1995年・アメリカ(20世紀フォックス映)

解説
13世紀末、悪政に苦しむスコットランドの独立と開放を目指して戦った実在の英雄、ウィリアム・ウォレスの生涯を描いた歴史スペクタクル大作。製作費2700万ドルを投じ、数千人のエキストラと200頭の馬が演じる戦闘場面は、リアルな臨場感に満ちて圧巻。監督・製作・主演の3役を兼ね、アクションから恋の葛藤まで、確かな演出力を見せたのは、 「顔のない天使」 に続いて2本目の監督作となるメル・ギブソン。脚本は作家として活躍し、初の映画作品となるランダル・ウォレスのオリジナル。製作はギブソン、彼と共にアイコン・プロを主宰するブルース・デイヴィ、 「ロシア・ハウス」 のアラン・ラッド・ジュニア 。撮影は 「レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い」 のジョン・トール、音楽は 「アポロ13」 のジェームズ・ホーナー、美術は 「マーヴェリック」 のトム・サンダース、編集は 「グローリー」 のスティーヴン・ローゼンブラム、6000着の衣装デザインは 「1492 コロンブス」 のチャールズ・ノード。特殊効果は 「コナン・ザ・グレート」 のニック・アルダー、スタント・コーディネーターを 「クリフハンガー」 のサイモン・クレーンが担当。共演はアメリカ映画に本格的初出演の 「恋人たちのアパルトマン」 のソフィー・マルソー、カルト的名作TVシリーズ「プリズナーNO.6」で知られ、映画は 「アルカトラズからの脱出」 などに出演している名優パトリック・マクグーハン、 「遙かなる大地へ」 のブレンダン・グリーソンほか。第68回アカデミー賞で、作品、監督、撮影、音楽(ドラマ部門)、メイクアップ、音響効果の6部門を受賞。

ストーリー
残酷な王エドワード1世(パトリック・マクグーハン)が率いるイングランドの侵略で家族を皆殺しにされたウィリアム・ウォレス(メル・ギブソン)は、故郷から遠く離れた異郷の叔父の下で成長し、懐かしい故郷に戻ってきた。幼なじみのミューロン(キャサリン・マッコーマック)は美しく成長し、再会した2人は恋に落ちる。そんな折り、イングランドはスコットラドの貴族を支配するため、“初夜権”なる悪法を復活。それは領地内で結婚の決まった花嫁を略奪し、初夜の権利を貴族の男たちに与えるという非人間的なものだった。花嫁を奪われるのを恐れたウォレスは2人きりで結婚式を挙げるが、ミューロンは彼の目の前でイングランド兵に殺される。復讐を誓うウォレスは、悪政に苦しむ人々と共に自由と解放を目指す抵抗軍を組織、彼のカリスマ性と指導力に魅かれ人々が続々と集まってきた。エドワード1世は抵抗軍を封じ込めるため、数千の大軍を送る。3倍もの兵を相手に、ウォレスたちは敵の騎馬隊が接近した時にハリネズミのように槍で人馬もろとも突き刺す“シルトン戦法”という奇抜な戦略で圧勝した。ウォレスはスコットランドの貴族からサーの称号を与えられ、さらに国境の南でも勝利を収め、国民的なヒーローとなる。予期せぬ強敵の出現にエドワード1世は、息子エドワード王子(ピーター・ハンリー)の妃イザベル(ソフィー・マルソー)を停戦交渉の使者としてウォレスの元に送る。彼女は政略結婚によりフランスから嫁がされるが、王子は同性愛者で夫婦は愛のない生活を送っていた。たくましいウォレスにひと目で魅了されたイザベルは彼の命を救うため、エドワード1世が密かに北に向かっているとの情報を伝える。四方八方から囲まれ、窮地に陥ったウォレスは、スコットランドの貴族たちに援軍を求め、特に若い貴族ロバート・ザ・ブルース(アンガス・マクファーデン)を信頼し協力を頼んだ。だが、ハンセン病に苦しむ彼の父は、息子を国王にしたいがため、陰謀を巡らす。エドワード1世は総攻撃をかけてくるが、私利私欲に走ったスコットランドの貴族たちは敵に買収され、ロバートさえも戦場に現れずウォレス軍は大敗を喫する。しかし、ウォレスは裏切り者を暗殺し、ゲリラ戦を繰り返しながら再起に備えた。エドワード1世は停戦交渉に再びイザベルを送るが、ウォレスをより愛するようになっていた彼女は、彼と一夜を共にする。一方、ロバートは裏切った罪の意識に苦しんでいたが、彼の父の仕掛けた罠により、ウォレスは捕らえられ、反逆児として裁かれることに。彼は群衆の前で、最後まで自由を求め続けながら極刑に処せられた。10年後の1314年、ウォレスの遺志を継いだロバート率いる軍が戦いに勝利し、スコットランドに自由と平和が訪れた。




3-12. 許されざる者

監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッドジーン・ハックマンモーガン・フリーマン
1992年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
銃を捨て密かに暮らしていた老ガンマンが、賞金稼ぎのために再び銃を取る姿を描く西部劇。92年度アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞、助演男優賞、編集賞受賞作。監督・製作・主演は 「ルーキー」 のクリント・イーストウッド。エグゼクティヴ・プロデューサーは 「ホワイトハンター ブラックハート」 のデイヴィッド・ヴァルデス。脚本は 「ブレードランナー」 のデイヴィッド・ウェップ・ピープルス、撮影は 「バード」 のジャック・N・グリーン。音楽はレニー・ニーハウスが担当。共演は本作でオスカーを受賞した 「ミシシッピー・バーニング」 のジーン・ハックマン、 「虚栄のかがり火」 のモーガン・フリーマン、 「ジャガーノート」 のリチャード・ハリス、 「ピンク・キャデラック」 のフランセス・フィッシャーなど。

ストーリー
1880年、ワイオミング。列車強盗や殺人で悪名を轟かせていたウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)は、今では銃を捨て2人の子供と農場を営みながら密かに暮らしていた。しかし家畜や作物は順調に育たす、3年前に妻にも先立たれ苦しい生活だった。そんなマニーのもとにスコフィールド・キッド(ジェームス・ウールヴェット)という若いガンマンが訪ねてくる。彼は娼婦フィッツジェラルド(アンナ・トムソン)に重傷を負わせた2人のカウボーイを倒して、一千ドルの賞金を得ようとして考えていた。一緒に組もうと誘われたマニーは11年ぶりに銃を手にする。マニーのかつての相棒ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)が同行することになり、3人は町へ向かった。その頃、保安官のリトル・ビル・ダゲット(ジーン・ハックマン)は強引なやり方で町を牛耳っていた。伝説的殺し屋のイングリッシュ・ボブ(リチャード・ハリス)と同行していた小説家ボーチャンプ(サウル・ルビネック)を暴力的に町から追放するダゲッド。マニーら一行が町に到着すると、ひとり酒場にいたマニーをダゲットは激しく殴りつけ、重症を負わせる。そんなマニーを献身的に看護したのは傷つけられた娼婦のフィッツジェラルドだった。立ち直ったマニーはローガンとキッドに追いつき、追っていたカウボーイを発見して1人を射殺するが、ローガンはもう人をてないと悟り、マニーらに別れを告げた。カウボーイたちの家を見つけ、残るひとりを仕留めたキッドは、マニーに初めて人を撃ったと告白する。その頃、町では殺人罪で捕まったローガンがダゲットの激しい拷問にあい、命を落としていた。賞金を受け取る際にその話を聞いたマニーは、キッドから拳銃を受け取り、子どもたちとローガンの妻とキッドの4人で賞金を分けるように言うと町へと向かった。酒場の前にローガンの死体が放置されているのを見たマニーは店主を射殺して銃撃戦になり、遂にダゲットと対決して彼を倒した。そして子どもたちの待つ家へマニーは帰っていくのだった。




3-13. エリン・ブロコビッチ

監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ジュリア・ロバーツアルバート・フィニーアーロン・エッカート
2000年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
本物のエリン・ブロコビッチがレストランのウェイトレス役で特別出演。ジュリアという名札をつけ、エリン自身を演じるJ・ロバーツと言葉を交わすシーンは印象的。

ストーリー
カリフォルニア州モハベ砂漠の小さな町。エリン(ジュリア・ロバーツ)は元ミス・ウィチタの美貌ながら、離婚歴2回、3人の子持ちながら無職。職探しに出て採用面接の帰り、追突事故に巻き込まれた彼女は、引退を控えた弁護士エド(アルバート・フィニー)に裁判の弁護を依頼するも和解金を取り損ねた。職もなく貯金も尽きかけた彼女はエドの法律事務所へ押しかけ、強引に彼のアシスタントとして働き始める。書類整理中、彼女は不審なファイルを見つける。不動産売却の書類になぜか血液検査の結果が添付されていたのだ。孤軍奮闘して調査した結果、大企業の工場が有害物質を垂れ流しにしている事実を突き止める。病に苦しむ住民たちを目の当たりにしたエリンは、気乗りしない住民たちを訴訟に持ち込むよう説得に回る。その後及び腰だったエドも本格的にその問題を担当。また彼女の隣りに住むバイク野郎ジョージ(アーロン・エッカート)が3人の子供の面倒を見てくれる主夫として私生活面をサポート。地道な活動が住民たちの共感を呼び、大企業と交渉の場を持つまでに。ついには執念で600人以上もの署名を集め、全米史上最高の和解金350億円を勝ち取った。大きくなった法律事務所で窓際の個室を与えられたエリンはエドから破格のボーナスを受け取るのだった。




3-14. ダーティ・ダンシング

監督 エミール・アルドリーノ
出演 ジェニファー・グレイパトリック・スウェイジシンシア・ローズ
1987年・アメリカ(ベストロン映画)

解説
60年代初期のアメリカを舞台に、思春期の娘の成長を描く。製作はリンダ・ゴットリーブ。監督は舞台・ダンスの演出家でもあり、ドキュメンタリー映画“He Makes Me Feel Like Dancin”で83年度アカデミー・ドキュメンタリー賞を受賞したエミール・アルドリーノ。脚本はエレノア・バーグスタイン、撮影はジェフ・ジャー、音楽監修はダニー・ゴールドバーク、マイケル・ロイドが担当。ロネッツの 「あたしのベビー」 をはじめ60年代のヒット曲が全14曲使われている。出演はジェニファー・グレイ、パトリツク・スウェイズ、シンシア・ローズほか。

ストーリー
1963年の夏。17歳の私(ジェニファー・グレイ)はまだ“ベイビー”と呼ばれていた。その夏は父が久し振りに休暇をとって一家で知り合いの山荘へ避暑に出掛けた。山荘に着いたその晩、ベイビーは山荘の経営者の孫ニールにダンスを誘われた。そしてベイビーはホールでこれまでに見たこともないようなセクシーで激しいダンスをするカップルを見つけ、唖然とした。2人は山荘のダンス教師だった。その夜遅く、ベイビーはボーイのビリーに案内されて、従業員だけの秘密のダンスホールに行く。そこであのダンス教師に再会。彼はビリーの従兄でジョニー(パトリック・スウェイジ)といい、早速、べイビーにダンスのパートナーを申し込んだ。あんな激しくセクシーなダンスはとても……拒否するベイビーだったが、やがてジョニーのいわれるままに自然に身体が動き出していった。そんなある日、ジョニーのパートナーのペニー(シンシア・ローズ)が妊娠していることが判った。相手はバイト従業員のロビーだった。責任逃がれをするロビーに変わってベイビーが父親から中絶費用を借り、ペニーにさし出すが、彼女はそれを受けとろうとはしなかった。そしてさらに、ペニーの手術の日が彼女とジョニーの大事なショーの日と重なってしまった。困ったジョニーはベイビーに代役をたのみ、その日からベイビーの特訓が始まった。木曜日がきた。ショーはあっけなく終わった。いくつか失敗はしたが、ジョニーは「よくやった」とベイビーをほめた。山荘に帰るとペニーが苦しんでいた。もぐりの医者による手術が原因だったが、ベイビーの父親の応急処置でことなきを得た。だが、父親はジョニーをペニーの相手だと思い、べイビーにも厳しくあたった。やがて夏の終わりも近づいてきた。あれ以来、父親の不機嫌は続いていたが、ベイビーはジョニーにますます魅かれていった。ところが、今度はジョニーが盗難事件の犯人にデッチあげられ、結局、山荘を去るはめになってしまった。夏の終わり。山荘でのお別れパーティの夜、盗難事件の真犯人も判り、父親のジョニーに対する誤解もとけたのだが、ジョニーの姿はない……。ホールでマンボが始まった。するとそこヘジョニーが現われた。感激するベイビー。2人のダーティ・ダンシングが始まった。




3-15. 荒野の用心棒 

監督 セルジオ・レオーネ
出演 クリント・イーストウッドマリアンネ・コッホジャン・マリア・ヴォロンテ
1964年・イタリア(東和)

解説
「ローマの旗の下に」 のボブ・ロバートソン(セルジオ・レオーネの変名)がシナリオを執筆、自から監督した西部劇。ただし、黒沢作品 「用心棒」 の盗作であることを川喜多氏が発見、東宝は著作権の侵害で告訴して勝つなどの、いわくつきのもの。撮影はジャック・ダルマス(マッシモ・ダラマーノの変名)、音楽はエンニオ・モリコーネが担当した。出演はTV 「ローハイド」 のクリント・イーストウッド、マリアンネ・コッホ、ジョン・ウェルズ、ヨゼフ・エッガー、ヴォルフガング・ルクシーなど。テクニカラー・テクニスコープ。イタリアオリジナル版は100分。

ストーリー
無法者の横行する一八七二年のニュー・メキシコ。ある日ジョー(C・イーストウッド)という、腕利きの男が現われ、この町を二分するロホ兄弟の方に身を寄せることになった。もう一方の旗頭モラレスの手下四人を鮮やかに片づけたからだ。彼は酒場の亭主からこのニつの勢力が町の皆から煙たがられていることを知り、その厄病神どもを始末しようと考えた。一計を案じて両派を反目させることに成功、ロホ兄弟はモラレス家に殴り込みの準備をした。兄弟の弟ラモン(J・ウェルズ)がマリソル(M・コッホ)という子持ち女を自分のものにしようと監禁しているのを知ったジョーは、見張りの手下を始末し、母子を逃がした。これをモラレスの仕業と見せかけたつもりだったが、ラモンに見破られ、マリソルの行方を自白させようと激しいリンチを加えられたが、口は割らなかった。夜、半死半生のジョーは、スキを見てロホ家をぬけ出し、棺桶屋のオヤジの手引で安全な隠れ家に身を寄せた。その隠れ家に、棺桶屋のオヤジがロホ一家の手下をだまして手に入れた拳銃をもってきてくれた。傷つけられた身体で、ジョーは拳銃の早射ちの業をみがいた。傷ついた左手が利かぬ以上、右手で勝負するほかない。彼の失踪にあわてたラモンたちは酒屋の亭主を捕えて居所を教えろと迫ったが果さず、ついにモラレス家に殴り込みをかけ、不意を襲われたモラレスは簡単にやられてしまった。ラモンは酒屋の亭主を通りの真中でリンチを加えた。ジョーをおびきよせるためである。静まりかえった町に姿を現したジョーは、待ちかまえたラモンから続けざまに銃弾を浴びた。が、平然としているジョーに、ラモンはうろたえる。彼は胸に鉄板を入れていたのだ。ラモンはジョーの銃に倒れ、ジョーを背後から狙ったロホも、酒屋の亭主が仕止めた。ジョーは再び静かに町を去って行った。




3-16. 夕陽のガンマン

監督 セルジオ・レオーネ
出演 クリント・イーストウッドリー・ヴァン・クリーフジャン・マリア・ヴォロンテ
1966年・イタリア(UA)

解説
セルジオ・レオーネとフルヴィオ・モルセッラのストーリーをルチアーノ・ヴィンセンツォーニとセルジオ・レオーネが脚色、レオーネが 「荒野の用心棒」 (この時はボブ・ロバートソンというアメリカ名前を使った)についで発表した製作・監督担当の西部アクション。撮影はマッシモ・ダラマーノ、音楽はエンニオ・モリコーネが担当した。出演クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ヴォロンテほか。テクニカラー、テクニスコープ。

ストーリー
マンゴー(C・イーストウッド)は若い男で激しい性格、物事はすばやく片づけるのが得意だ。もう一人、大佐(L・V・クリーフ)と呼ばれる男は初老で、身のこなしも上品、冷静に計算してから仕事を片づける。この二人お互いに相手を知らなかったが、共通の目的はインディオ(G・M・ポロンテ)と呼ばれる凶悪な殺人鬼を探し、殺すことだった。賞金は二万ドル。マンゴーと大佐の出会いは、お互いの不信から決闘寸前にまでいったが、血をみずに終り、共通の目的を果たすために手を結んだ。もちろん賞金は山分け、ということで……このときインディオは牢獄を脱走し、仲間と一緒にエル・パソの銀行を襲撃する計画をねっていた。これを知った二人は、一人がインディオの仲間に潜入し、手引きをした末に彼を殺すことにきめた。そしてマンゴーが潜入する役を引きうけることになった。銀行襲撃の日−−うまうまとインディオ一味に加わったマンゴーは内部から、大佐は外からインディオを倒すことに手はずをととのえた。ところが素早いインディオのため計画は失敗。舞台はメキシコ領の小さな村に移された。ここで略奪品に手を出したマンゴーと大佐は、インディオの手下に捕えられてしまった。だが二人を助けて自分の手下を殺させその上で二人を殺そうというのがインディオの考えだった。結果は二人の銃弾に手下は皆殺しになりさらに大佐はインディオの銃の前に立たされてしまった。懐中時計のオルゴールが鳴りやめば大佐の命は消える。このときマンゴーがあらわれ、彼の立会いの下、大佐とインディオの決闘が行なわれることになった。銃弾はとびかい、インディオは倒れた。マンゴーに感謝した大佐は、賞金の山分けを辞退、彼は望みどおりすべての賞金を頂だいすることになった。




3-17. 続・夕陽のガンマン  

監督 セルジオ・レオーネ
出演 クリント・イーストウッドイーライ・ウォラックリー・ヴァン・クリーフ
1967年・イタリア(ユナイト) 98分

解説
ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ、トニオ・スカルペッリ、セルジオ・レオーネの共同脚本を、 「夕陽のガンマン」 のセルジオ・レオーネが監督した西部劇。撮影はトニーノ・デリ・コリ。出演は前作 「夕陽のガンマン」 と同じくクリント・イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフ、 「ロード・ジム」 のイーライ・ウォラックなど。製作はアルベルト・グリマルディ。テクニカラー、テクニスコープ。

ストーリー
南北戦争末期の西部。ジョー(C・イーストウッド)とテュコ(E・ウォラック)の二人はコンビを組んで賞金をかせいでいた。テュコが人を殺し、賞金つきのお尋ね者となる。そのテュコをジョーがとらえて賞金をうけとりテュコが絞首刑という寸前にジョーが救い出す、といった方法だった。だが、この商売も次第にあぶなくなってきたので、ジョーはテュコを捨て、去っていった。怒ったテュコは、ジョーを罠におとしてとらえ、砂漠の中で痛めつけた。その時、南軍の兵士の死体をのせた馬車が疾走して来た。その中に唯一人瀕死の兵士がおり、水を求めていた。その兵士が墓地に隠した二十万ドルのありかを知っているというので、テュコは水を取りに行ったが、戻ってくるとすでに死んでいた。そしてジョーはその墓の名を聞いていた。墓地の名をテュコが、墓石の名をジョーが知っているということで、二人は相棒になるしかなかった。二人は南軍の軍服を着込み、救護所へもぐり込んだが、その軍服のために北軍の捕虜となり、収容所にぶち込まれてしまった。その収容所には以前から隠した二十万ドルをさがしていたセサンテ(L・V・クリーフ)がおり、二人はさんざん責められた。が、ジョーがいくら拷問をかけても口を割りそうにない男だとみたセサンテは、同盟を結び一緒に金を捜すことにした。だが出来ることなら金を全部一人占めにしたいと思うのが人情である。三人は、それぞれに相手をだしぬこうと争った。そしてまずセサンテが二人に射殺された。残った二人はおめあての金を掘りあてたが、テュコはジョーの罠にかかってしまった。しかし、ジョーはテュコを射殺することはできず、結局、また旅を続けるのだった。




3-18. パーフェクトワールド 

監督 クリント・イーストウッド
出演 ケヴィン・コスナークリント・イーストウッドローラ・ダーン
1993年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
脱獄犯と人質の少年との交流、そして男を追う警察署長の苦悩を描いた犯罪ドラマ。 「ボディガード(1992)」 のケヴィン・コスナーが主演し、 「ザ・シークレット・サービス」 のクリント・イーストウッドが監督・出演と、二大スターの初顔合わせが話題を呼んだ。イーストウッドの主宰するマルパソ・プロ作品で、製作のデイヴィッド・ヴァルデス、撮影のジャック・N・グリーン、音楽のエニー・ニーハウス、美術のヘンリー・バムステッド、編集のジョエル・コックス、スタント・コーディネーターのバディ・ヴァン・ホーンなど主要スタッフは、 「許されざる者(1992)」 をはじめとするイーストウッド作品の常連で占められている。そのほかのスタッフは、共同製作に 「トイズ」 マーク・ジョンソン。脚本にジョン・リー・ハンコック。共同編集にロン・スパング。衣装にエリカ・エルデ・フィリップスら。2人の主演者の脇を固めるのは本作が映画出演2本目のT・J・ロウサー、 「ジュラシック・パーク」 のローラ・ダーンなど。

ストーリー
1963年、テキサス州。ブッチ・ヘインズ(ケヴィン・コスナー)は、アラバマ刑務所から同じ囚人のテリー・ピュー(キース・サセバージャ)と脱走した。途中、8歳の少年フィリップ(T・J・ローサー)の家に押し入った2人は少年を人質に逃亡するが、ブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを射殺する。すぐに厳重な警戒線が張られ、州警察署長のレッド・ガーネット(クリント・イーストウッド)が陣頭指揮に当たった。レッドはブッチが10代のころ、彼の更生のためを思って少年刑務所に送った当人だった。だが、ブッチはそれを契機に犯罪の常習犯となり、ついには脱獄するまでに至った。レッドは、そこまで追い込んだのは自分だと強い悔恨の念にかられ、是が非でも自身の手で捕らえねばと思っていた。犯罪心理学者のサリー(ローラ・ダーン)が同行することになり、彼女はレッドの独自の捜査に反発しつつも次第に彼にひかれていく。一方、一人前の男として接するブッチにフィリップは親しみと友情を覚え、彼のほうでも少年が気に入った。父親を知らずエホバの証人の信者である母親のもとで、宗教上の厳しい戒律から年ごろの男の子の楽しみは何一つ与えられずに育ったフィリップ。少年に自分に似たものを感じたブッチは、ハロウィンやローラー・コースターなどフィリップのささやかな望みをリストに書かせ、ひとつずつ実現させる。母と自分を残して二度と帰ってこなかった父がたった1度よこしたアラスカからの絵ハガキを大事にしまっていたブッチは、「小さな相棒」を連れてかの地を目指す。車の中で眠っていた彼らにマックという男が声をかけ、一人は彼の家に泊まった。翌朝、フィリップやマックの孫と戯れるブッチは、小さな幸せを感じる。だが、ラジオで脱獄囚のニュースを聞き、危険を感じたマックが彼から引き離そうとするあまり孫を突き飛ばしてしまうのを見て逆上する。優しい表情から一変して「孫を愛していると言ってみろ」と、狂気につかれたようにマックを脅すブッチ。フィリップはそんな姿を見てたまらず、銃で彼を撃つ。その時、捜索隊が到着し、彼らを包囲した。レッドの説得に、ブッチはフィリップに別れを告げ、少年を引き渡そうとする。だが、誤認したFBI捜査官の銃弾が容赦なくブッチの胸を貫く。その手には、あの絵ハガキが握られていた。




3-19. 追憶の切符

監督 ジェイコブ・チャン
出演 ズオ・シャオチンニッキー・ウーセシリア・イップ
2008年・中国

解説
ニュースレポーターとして都会で働く女性。実は赤ん坊の頃に教会の前に捨てられ、孤児として育っていた。今でも自分を捨てた親にわだかまりを持っているのだが、育ての母であるシスターが亡くなったことで実の親を捜すことになる。雲南省の雄大な風景をバックにわずかな手がかりをたどっていく女性。その旅は自分が成長する旅でもあった。インターネットで評判になった台湾の大学教授のエッセイを下敷きに、 「墨攻」 の監督ジェイコブ・チャンが脚本・監督。

ストーリー





3-20. 主人公は僕だった

監督 マーク・フォースター
出演 ウィル・フェレルマギー・ギレンホールダスティン・ホフマン
2006年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ)

解説
「プロデューサーズ」 のウィル・フェレルが、姿の見えない声に人生を操られる男を演じたコメディ。 「ネバーランド」 など人間ドラマに定評のあるマーク・フォースター監督作。

ストーリー
過去12年間、毎朝同じ時間に目覚め、同じ回数歯を磨き、同じ歩数でバス停まで行き、同じ分量仕事をこなし、毎晩同じ時間に眠る。そんな生活を送る国税庁の会計検査官ハロルド・クリック(ウィル・フェレル)は、婚約者に捨てられ、友達は同僚のデイヴだけという寂しい男だった。しかし、ある朝突然、ハロルドの人生に女性の声が割り込んできた。ナレーションのように、彼の頭に浮かんだ思いと、今まさにとっている行動を、アカデミックな言葉遣いで語りはじめたのだった。小説としか思えないその声は、時々気紛れに聞こえてくるだけなので、ハロルドには物語の全容がつかめず混乱していた。そんな中、とんでもないフレーズが聞こえてくる。「このささいな行為が死を招こうとは、彼は知るよしもなかった……」死に直面しているらしいことに気付いたハロルドは、大学教授のジュールズ・ヒルバート(ダスティン・ホフマン)に相談に行く。「悲劇は死で、喜劇は結婚で終わる」と語るヒルバートは、喜劇の定番である“最初は敵対する相手と恋におちる”ことを勧める。ハロルドにはちょうどいい相手がいた。「税金が防衛費に使われるのは許せないから、その分は払わなかったの」と堂々と脱税し、ケーキ店を経営する女性、アナ・パスカル(マギー・ギレンホール)だった。ある日、ケーキ屋の過去3年分の帳簿を調べ疲れ果てていたハロルドに、アナがクッキーを焼いてくれる。それをきっかけに、思い出話などに心を和ませる2人だったのだが……。そしてハロルドの頭に聞こえる声の人物が判明した。小説家のカレン・アイフル(エマ・トンプソン)だった。しかも、彼女の小説の主人公は必ず死ぬことで知られていた……。




3-21. セントラル・ステーション

監督 ウォルター・サレス
出演 フェルナンダ・モンテネグロマリリア・ペラヴィニシウス・デ・オリヴェイラ
1998年・ブラジル(日本ヘラルド映画)

解説
父親探しを通して芽生えた少年と中年女性の心の交流を暖かく描いたロードムービー。監督はドキュメンタリーも手がけるヴァルテル・サレス。脚本はジョアン・エマヌエル・カルネイロとマルコス・ベルンステイン。製作は 「天国の約束」 のアルテュール・コーンと 「ヴィゴ」 のマルティーヌ・ド・クレルモン=トネール。製作総指揮はエリザ・トロメッリ、リリアン・ブリムバウム、ドナルド・ランヴォ。撮影はヴェルテル・カルバーリョ。音楽はアントニオ・ピントとブラジル音楽シーンで活躍するジャキス・モレレンバウム。美術はカシオ・アマランテ、カルラ・カフェー。編集はイザベル・ラテリー、フェリーペ・ラセルダ。録音はジャン=クロード・ブリッソン、 「アンダーグラウンド」 のフランソワ・グルー、ブルーノ・タリエール、ヴァルディル・グザヴィエ。出演はブラジルの名女優フェルナンダ・モンテネグロ、本作が映画初出演の子役ヴィニシウス・デ・オリヴェイラほか。98年ベルリン映画祭金熊賞(グランプリ)銀熊賞・主演女優賞(モンテネグロ)受賞。第71回(98年度)アカデミー主演女優賞(モンテネグロ)ノミネート。

ストーリー
リオの中央駅で代筆屋を営む中年女ドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)の所へ少年ジョズエ(ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ)と母親がやって来た。だが父親への手紙を依頼した直後、母親が交通事故で急死。ドーラは行き場を失ったジョズエを家に連れ帰り、翌日彼を養子縁組斡旋所に売り渡した。しかしそこが臓器売買組織だと知って慌てて連れ戻し、住所を頼りに父親探しへ旅立つ。途中で無一文になりながらもジョズエの機転で切り抜け、父親の家にたどり着く。そこにはジョズエの腹違いの兄達が行方不明の父の帰りを待っていた。翌朝眠っているジョズエを残し、静かにドーラは立ち去る。




3-22. その男ゾルバ

監督 マイケル・カコヤニス
出演 アンソニー・クインアラン・ベイツイレーネ・パパス
1964年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
ニコス・カザンツァキスの同名小説を 「エレクトラ」 のマイケル・カコヤニスが脚色・製作・監督した文芸ドラマ。撮影はウォルター・ラサリー(この作品で'64 年度アカデミー黒白撮影賞獲得) 、音楽はミキス・テオドラキスが担当した。出演は 「訪れ」 のアンソニー・クイン、 「汚れなき瞳」 のアラン・ベイツ、 「エレクトラ」 のイレーネ・パパス、リラ・ケドロワ(この作品で'64 年度アカデミー助演女優賞を獲得) 、 「アメリカ アメリカ」 のジョージ・ファウンダスほか。

ストーリー
英国の作家バジル( アラン・ベイツ) はゾルバ( アンソニー・クイン) という不敵なギリシャ人に惚れこみ、亡父の遺産である亜炭の山の採掘の現場監督にした。彼はそのとき言った。「私ア、厄病神ですぜ」それはクレタ島にある村にあり、2人はマダム・ホーテンス( リラ・ケドロワ) の経営するホテルに住むことになった。その村には世間とほとんど没交渉の生活をしている未亡人( イレーネ・パパス) がいたが、やがてバジルに心ひかれるようになった。炭鉱管理人の息子パブロは未亡人を想っていたが、未亡人とバジルにできた愛の絆を知り自殺した。彼の父は未亡人を憎み、彼女を殺してしまった。春が来て亜炭の採掘が始まるころ、ホーテンスとゾルバはバジルを連れてマダムの病床にかけつけた。村人たちは彼女の死を今か今かとまちかまえていた。この村では、死者の財産を勝手に奪いとる風習があったからだ。やがて彼女が息をひきとると村人たちが争って何もかも持ち出してしまった。ゾルバは言った。「人生なンてはかないもンさ……」−−ケーブルの工事ができあがると、その竣工式と試運転が行なわれることになり、村人たちが集まった。ところがケーブルが切れ、支柱が総倒れになってゾルバの技術とアイデアは失敗した。ゾルバはそれでも泰然と構えて少しもどうじなかった。バジルはどんな逆境、いかなる失敗にもめげないゾルバに心服するのだった。




3-23. ウィスキー

監督 フアン・パブロ・レベージャ、 パブロ・ストール
出演 アンドレス・パソスミレージャ・パスクアルホルヘ・ボラーニ
2004年・ウルグアイ、アルゼンチン、ドイツ、スペイン(ビターズ・エンド)

解説
東京国際映画祭グランプリに輝くなど、世界中で絶賛されたウルグアイ映画。弱冠30歳の若手監督コンビが、人間のおかしさや孤独を、淡々と味わい深く映し出す。

ストーリー
ウルグアイの町。ハコボ(アンドレス・パソス)は、父親から譲り受けた小さな靴下工場を細々と経営している。毎朝決まった時間に工場に行き、シャッターを開ける。その工場では、控えめだが忠実な中年女性マルタ(ミレージャ・パスクアル)が彼の片腕として働いている。ハコボの一日の大半は、彼女にこまごまとした用事を言いつけることで過ぎてゆく。二人は長年仕事をしていても、必要な会話を交わす以上の関係になることはなかった。1年前に亡くなった母親の墓石の建立式に、ハコボの弟エルマン(ホルヘ・ボラーニ)が来ることになる。ブラジルで同じく靴下工場を経営しているエルマンと、ハコボは長い間疎遠になっていた。ハコボは弟が滞在する間、マルタに夫婦の振りをして欲しいと頼むと、意外にも彼女はすんなりとその申し出を受け入れる。偽装夫婦の準備を始める二人。結婚指輪をはめ、一緒に写真を撮りに行く。カメラの前に立ち、二人はぎこちなく笑って「ウィスキー」と、唱える。そして、エルマンがウルグアイにやってきた。ハコボの家で三人で夕食をとるとき、新婚旅行でブラジルのイグアスの滝に行ったと、口裏を合わせるハコボとマルタ。兄弟はサッカー観戦に行き、その途中立ち寄ったハコボの工場を見たエルマンは、工場の改装を勧め、力になると言う。その言葉に神経を逆なでされたのか、普段は物静かなハコボが、サッカー観戦では口汚くののしるのだった。墓石の建立式が無事終わり、三人はレストランで夕食をとる。エルマンは、お礼にハコボとマルタをピリアポリスに招待すると言い出した。最初は反対していたハコボだったが、二人に押されて、しぶしぶ同意する。ピリアポリスでは大きなホテルに泊まり、ゲームをしたり、三人で記念写真を撮ったりする。マルタは“逆さ言葉”の特技をエルマンに披露したりして、彼らの距離は少し縮まるのだった。滞在の最後の夜、エルマンはハコボに対し、母親の介護を任せきりにしていたことを謝り、お詫びとして札束の入った包みを渡そうとする。固持するハコボだったが、エルマンが歌う姿を見て、包みをポケットにしまう。そして夜中、部屋から抜け出したハコボはエルマンからもらったお金を全てカジノで賭けて、大儲けしてしまう。ちょうどその頃、マルタも部屋を抜け出して、エルマンの部屋に行く。ハコボ、マルタ、エルマン、嘘でつながった彼らの物語は、どんな結末にいたるのか?




3-24. ジュノ

監督 ジェイソン・ライトマン
出演 エレン・ペイジマイケル・セラジェニファー・ガーナー
2007年・アメリカ(20世紀フォックス映画)

解説
全米で異例の大ヒットを記録し、アカデミー賞4部門の候補になった話題作。ごく普通の女子高生の妊娠を巡る騒動がユーモアたっぷりに描かれる青春ドラマだ。

ストーリー
アメリカ中西部のとある平凡な街に住むジュノ(エレン・ペイジ)は、1977年のパンクロックとB級映画が大好きという、ちょっと変わった16歳の女子高生。ある秋の日、彼女の妊娠が判明する。原因は、同級生のポーリー(マイケル・セラ)との興味本位のセックス。ジュノは中絶するつもりで病院に向かうが、中絶反対運動に参加している同級生に出会い、考えを変える。“赤ちゃん、もう爪だって生えてるわよ。”という同級生の言葉が心に突き刺さったのだ。ジュノは早速、親友のリア(オリヴィア・サルビー)とともに里親探しを開始。フリーペーパーで郊外の高級住宅街に住むヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)とマーク(ジェイソン・ベイトマン)の夫婦を見つける。準備万端整ったところでジュノは両親に妊娠の事実を報告。ショックを受けながらも二人は彼女を受け入れ、全面的なバックアップを約束するのだった。週末、父のマック(J.K.シモンズ)とともに養子縁組契約のために里親希望の二人の家に向かうジュノ。弁護士とともに待っていたマーク、ヴァネッサと、ぎこちない会話を続けながらもなんとか契約手続きは無事完了。ホッと一息ついたところで、ジュノがマークのギターを発見。二人はお互いが共通の趣味を持っている事を知り、意気投合する。これをきっかけに、紙切れだけの関係が大きく変わってゆく。小さな命を授かったことがきっかけとなり、ジュノは、今まで気づかなかった様々なことを知り、成長してゆく。窮屈そうに生きる大人たちの姿、両親の深くて大きな愛、かけがえのない友情。そして、長い冬が過ぎ、春から初夏に変わる頃、ジュノはいよいよ出産予定日を迎える……。




3-25. 恋愛小説家

監督 ジェームズ・L・ブルックス
出演 ジャック・ニコルソンヘレン・ハントグレッグ・キニア
1997年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
潔癖家で毒舌の変人小説家が、なじみのウェイトレスや隣人との交流を通して人並みの愛を知るまでを描いたラヴ・ロマンス。主演のジャック・ニコルソン( 「ブラッド&ワイン」 など)、ヘレン・ハント( 「ツイスター」 )がそれぞれ97年度(第70回)アカデミー賞で最優秀主演男優賞・同女優賞を受賞したことでも話題に。監督は 「愛と追憶の日々」 でニコルソンと組んだ 「ブロードキャスト・ニュース」 のジェームズ・L・ブルックス。脚本は 「レイト・フォー・ディナー」 のマーク・アンドラスの原案を基に、アンドラスとブルックスが執筆。製作はブルックスと、 「ザ・エージェント」 のブリジット・ジョンソン、 「ブロード〜」「スリーパーズ」 のクリスティン・ズィー。製作総指揮は 「ザ・エージェント」 のリチャード・サカイとローレンス・マーク、 「靴をなくした天使」 のローラ・ズィスキン。撮影は 「ボディ・バンク」 のジョン・ベイリー。音楽は 「草の上の月」 のハンス・ズィマー。美術のビル・プルゼスキ( 「マチルダ」 )、編集のリチャード・マークス( 「愛と追憶の日々」 )、衣裳のモリー・マギニス( 「ジキル&ハイド」 )は 「ブロードキャスト・ニュース」 でもブルックスと組んだスタッフ。共演は 「ザ・エージェント」 のキューバ・グッディング・Jr.、 「TOUCH タッチ」 のスキート・ウールリッチ、 「渇いた太陽」 のシャーリー・ナイトほか。特別出演で監督のハロルド・ライミス、ローレンス・カスダンが顔を見せる。

ストーリー
マンハッタン。メルヴィン・ユドール(ジャック・ニコルソン)は人気恋愛小説家だが、実生活の彼は中年を過ぎていまだ独身の、潔癖症で毒舌家の嫌われ者の変人だった。そんな彼だが、ある日隣人でゲイの画家サイモン(グレッグ・キニア)の愛犬ヴァーデルをあずかる羽目に。街で拾ったモデルのヴィンセント(スキート・ウールリッチ)の仲間がサイモンの部屋を荒らして、彼に重傷を負わせたのだ。サイモンのパートナーの黒人の画商フランク(キューバ・グッディング・Jr.)はなかば脅してユドールに犬を押しつけるが、なぜかユドールはヴァーデルに心の安らぎを見いだす。それを契機に、毎日ランチに通うカフェのなじみのウェイトレス、キャロル(ヘレン・ハント)とまともに話を交わすようになるユドール。喘息持ちで病弱な息子を抱えたシングルマザーの彼女の境遇を知った彼は、彼女にひとかたならない興味を持ち出した。ユドールは、彼女が息子の介護で店での給仕を辞めないようにするためと称して自費で彼女に名医を世話。思いがけない親切にとまどいを隠せないキャロル。だが、息子が日に日に元気になって彼女の人生は一変、キャロルはユドールに感謝するが、そんな彼女の真情あふれる態度にも毒舌で応えたりするユドールの相変わらずの変人ぶりに彼女は呆れるばかり。そんな折り、サイモンは退院するが、高額の治療費と展覧会の失敗のためついに破産。絶望するサイモン。サイモンは長年絶縁状態にあった彼の両親に頼るべきだと判断したフランクは、郷里ニュー・オーリンズへの旅の同行をユドールに頼む。ユドールはゲイとの旅行だからひとりでは不安という口実でキャロルを誘う。かくして旅立つ3人。ところがキャロルとサイモンは初対面から意気投合、思惑が外れてユドールは腐る。気持ちが晴れやかなキャロルは夕食にユドールを誘う。ユドールは「君が僕の人生を変えてくれた」と初めてキャロルにロマンティックな告白をするが、ムード最高潮のところでつい要らない毒舌が出る。傷ついたキャロルはホテルに戻り、ユドールへの当てつけにサイモンの前で入浴しようとする。するとサイモンは彼女の裸身を見て絵心を取り戻し、たちまち以前の活力を取り戻した。翌朝。両親に会う必要がなくなった3人はニューヨークへ帰る。だが、キャロルはメルヴィンと仲たがいしたまま去ってしまい、メルヴィンは後悔に苛まれる。サイモンはアパートは差し押さえられたが、メルヴィンは彼を同居人として迎え入れた。初めて味わう気持ちに混乱するメルヴィンをサイモンが励ます。朝の4時。メルヴィンはキャロルの元を訪ね、ついに彼女に愛を告白するのだった。




3-26. ヘアスプレー

監督 アダム・シャンクマン
出演 ジョン・トラヴォルタニッキー・ブロンスキーアマンダ・バインズ
2007年・アメリカ(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
ブロードウェイの人気ミュージカルを映画化。“ミス・ヘアスプレー”を目指す女性らが華やかな歌やダンスを披露する。主人公の母親を演じる女装したジョン・トラボルタに注目。

ストーリー
60年代のボルチモア。ハイスクールに通うトレーシー(ニッキー・ブロンスキー)の夢は、人気番組『コーニー・コリンズ・ショー』に出演して踊ること。でも現実は、ランドリー店で働く母エドナ(ジョン・トラヴォルタ)とオモチャ屋で店番する父ウィルバー(クリストファー・ウォーケン)に囲まれて、親友のペニー(アマンダ・バインズ)とテレビ放送を楽しみにしている日常だった。そんなある日、番組のオーディションが開催されて、トレーシーも参加する。そこで目の当たりにしたのは、メンバーの中心的存在アンバー(ブリタニー・スノウ)のステージママであるベルマ(ミシェル・ファイファー)が実権を握っている姿だった。失望するトレーシーだが、ダンスパーティで彼女のリズム感を見抜いたコーニー・コリンズによって抜擢される。レギュラーの座を獲得したトレーシーは、たちまち街の人気者となった。それが面白くないベルマとアンバー。ある日、メイベル(クイーン・ラティファ)ら黒人と知りあったトレーシーは、そのパフォーマンスのパワフルさに魅せられる。当時のアメリカではあからさまな人種差別で、『コーニー・コリンズ・ショー』でも黒人が登場できるのは月に一度の“ブラック・デー”だけだった。その理不尽さに公民権運動のデモにトレーシーも参加するが、ベルマの通報によって警察に追われる身となってしまう。一方、その頃『コーニー・コリンズ・ショー』のダンスコンテストが始まっていた。視聴者からの電話投票で『ミス・へアスプレー』が決まる。会場の周囲を警官に包囲させて、トレーシーの参加を阻止しようとしたベルマだが、その策略は失敗する。黒人たちも飛び入り参加したコンテストで『ミス・ヘアスプレー』に輝いたのは、なんと黒人の少女だった。スタジオ内はダンス大会となり、全員が踊り出す。その中にはトレーシーと、幸福そうな両親の姿もあった。




3-27. アフリカの女王

監督 ジョン・ヒューストン
出演 ハンフリー・ボガートキャサリン・ヘップバーンロバート・モーレイ
1951年・イギリス(BCFC=NCC)

解説
製作者S・P・イーグルと監督者ジョン・ヒューストンの組織するホライズン・プロが、英国のロミュラス( 「パンドラ」 )と提携した一九五一年度色彩活劇。C・S・フォレスターの原作から、 「タイム」 の映画批評担当者ジェームズ・エイジイとジョン・ヒューストン( 「キー・ラーゴ」 )が脚色、ヒューストンが監督した。撮影は 「黒ばら」 のジャック・カーディフ、音楽は 「老兵は死なず」 のアラン・グレイの担当。主演は 「キー・ラーゴ」 のハンフリー・ボガート(本作品で五一年度アカデミー賞授賞)と 「アダム氏とマダム」 のキャサリン・ヘップバーンで、以下 「大空に散る恋」 のロバート・モーレイ、 「三十六時間」 のピーター・ブルらが助演する。

ストーリー
一九一四年、欧州で戦乱が起った頃、アフリカのドイツ領コンゴでは、ドイツ軍が村の掠奪を行い、宣教師はそのショックで死んでしまった。彼の妹ローズ・セイヤア(K・ヘプバーン)は天涯孤独の身となった処を、カナダ生れの飲んだくれ男チャリイ・オルナット(H・ボガート)に引き取られた。チャリイは村々に食糧や郵便をくばる川蒸気「アフリカの女王」号を操っていたが戦争の終るまで仕事をやめて引こもろうと決心した。しかしローズは、川を下って下流の湖に碇泊しているドイツ砲艦「ルイザ」に近づき、舟もろとも魚雷をぶつけて撃沈しようと言い張った。やっとみこしをあげたチャリィは、彼女と共に川を下りはじめたが、雨が降っても彼女の居る被いの中には入れて貰えず、秘蔵のジンは川に捨てられてしまう始末だった。やがて舟はドイツ砲台の前を通過、エンジンをこわされ、やっと逃れると激流にはまって矢のように岩の間を滑り出した。エンジンが直った時二人は思わずキスし、以後、曲ったスクリュウを一週間もかかって叩き直したり、マラリアにおかされたチャリイをローズが必死に看護したりする苦労を重ねて、ようやく湖にすべりこんだ。二人はひそかに舟に魚雷をとりつけ、夜と共に「ルイザ」に向け突進したが、波が高く寸前で転覆、沈没してしまった。二人は「ルイザ」に捕われ、スパイとして絞首刑を宣告されたが、チャリイは執行前にローズとの結婚式をあげさせてくれと頼み、許されて二人の式が行われている時、突如「ルイザ」は大爆発を起した。沈んでいた「アフリカの女王」に乗上げたのでもあろうか。チャリイとローズは、意気揚々岸へ泳ぎはじめた。




3-28. オール・ザ・キングスメン

監督 スティーヴン・ゼイリアン
出演 ショーン・ペンジュード・ロウケイト・ウィンスレット
2006年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ)

解説
ホリデイ」 のジュード・ロウが新聞記者を、 「ミスティック・リバー」 のショーン・ペンが州知事を演じる骨太な政治サスペンス。ピューリッツァー賞受賞小説の2度目の映画化。

ストーリー
上流階級出身の新聞記者ジャック(ジュード・ロウ)がウィリー(ショーン・ペン)と初めて出会ったのは、ウィリーが州の下級役人だった頃だ。汚職政治を追及し、辞職に追い込まれたウィリーだが、その後、いきなり後ろ盾を得て州知事選に立候補する。対立候補の票を割るための当て馬に利用されたのだった。ジャックは、ウィリーに真相を告げ、演説スタイルを変えるように助言した。失意のウィリーは意を決し、演説原稿を破り捨てて自分の言葉で喋り出す。貧しい生い立ち、労働者や農民の立場に立っていること。この演説は貧しい人々の心を打ち、ジャックの応援記事と相まってウィリーの人気を急上昇させた。そしてついに知事になったウィリー。ジャックは彼の参謀となった。数年が過ぎウィリーの権力は絶大なものになったが、忌み嫌っていたはずの汚職や愛人スキャンダルにまみれる様になっていた。批判を浴びるウィリーを助けるために骨身を削って働くジャックだが、彼が密かに思慕を寄せていた幼馴染のアン(ケイト・ウィンスレット)とウィリーの関係を知るに及んで絶望の淵に立たされてしまう。そして知事の弾劾委員会が開かれている議事堂に二発の銃弾が響き渡った。




3-29. アウト・オブ・サイト  

監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ジョージ・クルーニージェニファー・ロペスルイス・ガスマン
1998年・アメリカ(UIP)

解説
プロの銀行強盗と女連邦保安官の恋愛をスタイリッシュに描いたラヴ・サスペンス。 「ジャッキー・ブラウン」 の原作者エルモア・レナードの同名小説を 「セックスと嘘とビデオテープ」「蒼い記憶」 のスティーヴン・ソダーバーグ監督が映画化。脚本は 「ゲット・ショーティ」 に次いでレナード作品を脚色したスコット・フランク。製作は 「ゲット・ショーティ」 のダニー・デヴィート、 「フィーリング・ミネソタ」 のマイケル・シャンバーグ、 「マチルダ」 のステイシー・シェール。製作総指揮は 「メン・イン・ブラック」 の監督バリー・ソネンフェルドと 「セックスと嘘とビデオテープ」 のジョン・ハーディ。撮影は 「蒼い記憶」 のエリオット・デイヴィス。音楽はベルファスト出身のDJデイヴィッド・ホルムズ。編集は 「シークレット・サービス」 のアン・V・コーツ。出演は 「ピースメーカー」 「ER 緊急救命室」(TV)のジョージ・クルーニー、 「Uターン」 のジェニファー・ロペス、 「ボディ・カウント ヤバい奴ら」 のヴィング・レイムス、 「ゲット・ショーティ」 のデニス・ファリーナ、 「ブギーナイツ」 のドン・チードルほか。

ストーリー
銃を持たずに銀行を襲うプロの銀行強盗ジャック・フォーリー(ジョージ・クルーニー)は、逃走用の車の故障で運悪くフロリダの刑務所に収監される。ジャックは相棒のバディ(ヴィンク・レイムス)と脱獄し、刑務所内で知り合った株屋のリプリー(アルバート・ブルクッス)が自宅に隠し持つダイヤモンドの原石を盗んで足を洗うと計画をした。ところが脱獄しようとしたところを、召喚のため刑務所に立ち寄った連邦保安官のカレン・シスコ(ジェニファー・ロペス)と鉢合わせ。ショットガンでジャックの脱獄を阻止しようとするカレンだが、バディに捕まりジャックとともに車のトランクに押し込められ逃走に付き合うはめに。ジャックとカレンは車のトランクの中で会話するうち互いに好意を抱き始める。カレンはハイウェイで二番目の逃走車を準備していたグレン(スティーヴ・ゼーン)の車に乗せられ、ジャックたちはまんまと逃走に成功。デトロイトへと向かった。ジャックを追ってきたカレンは、ホテルのバーでジャックと再会し、互いの立場の違いに戸惑いつつも互いに恋に落ちたことを認め、ベッドへ。元刑務所仲間のスヌーピー・ミラー(ドン・チードル)とともにリプリーの屋敷へ盗みに入るが、スヌーピーの仲間たちのせいで大騒動になり、そこにカレンが現れた。迷いながらもジャックの足を撃ち逮捕するカレンだったが、刑務所へ護送するためふたりはもう一度再会する。護送車にはジャックのほかに脱獄のプロも乗っており「9回脱獄した」と自慢する。ジャックたちの会話を聞きながらカレンは意味ありげに微笑むのだった。




3-30. インヴィンシブル

監督 エリクソン・コア
出演 マーク・ウォールバーググレッグ・キニアエリザベス・バンクス
2006年・アメリカ(ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ)

解説
「インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン」( - えいこうへのタッチダウン、原題:Invincible)は、2006年のアメリカ映画。 30歳にしてNFLのプロ・アメリカンフットボール選手となったヴィンス・パパーリの実話に基づいて製作された映画。 日本では劇場未公開だが、2007年3月21日にDVDが発売された。

ストーリー
不況に苦しむ1976年のフィラデルフィア。臨時教師としての職を失い、バーテンダーのアルバイトでなんとか生計を立てていたヴィンス・パパーリの唯一の楽しみは昔からの仲間とアメフトに興じること。しかし、そんなヴィンスに愛想を尽かした妻は「無職で貧乏な駄目男」と罵る言葉を書き残し、家を出て行く。 一方、フィラデルフィア・イーグルスのヘッドコーチに就任したディック・ヴァーミールは、不振のチームを立て直すため、オープン(誰でも参加可)な入団テストを行うことにする。
傷心のヴィンスに周りの友人らは入団テストを受けてみるように言うが、既に30歳で、しかも正式にプレイしていたのは高校時代の1年間だけのヴィンスは自信もなく、乗り気ではない。しかし、父親から「今回は見送れ、人生に期待し過ぎるな」と言われたことで逆にテストを受けることにする。イーグルスファンなどが数多く参加したテストにプロとして使えそうな者はいなかったが、ヴィンスの足の速さに注目したヴァーミールは、ヴィンスをキャンプに参加させることにする。 入団テストに合格したヴィンスは一夜にして地元の有名人となるが、当のヴィンスは「どうせすぐにクビになる」と考え、浮かれることはない。周りの選手たちの中で浮いた存在であることに戸惑いつつも、ヴィンスは何とかキャンプを乗り切るが、全く活躍できないままプレシーズンを終える。そんなヴィンスをコーチらが切り捨てようとする中、ヴァーミールの強い後押しで、ヴィンスは正式にイーグルスの選手となる。それでも、ヴィンスはなかなか期待通りの活躍ができない。 そんなある日、昔の仲間とアメフトを楽しむ中で自信を取り戻したヴィンスは次の試合で目覚ましい活躍をする。そして奇跡的なタッチダウンを決め、チームを勝利に導く。 その後1978年までの3シーズン、イーグルスに在籍したヴィンスは今、妻となったジャネットと子供2人の4人でニュージャージーで暮らしている。





3-31. アフガン零年

監督 セディク・バルマク
出演 マリナ・ゴルバハーリゾベイダ・サハールハミダ・レファー
2003年・アフガニスタン、日本、アイルランド(アップリンク、ムヴィオラ)

解説
'04年のゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞に輝いたアフガニスタン発の人間ドラマ。女性の自由を奪ったタリバン政権下で、“男”を演じることになった少女の過酷な運命を描く

ストーリー
長年の戦争の末、タリバンが政権の座についたアフガニスタン。イスラムの教えを厳格に守ろうとするタリバン政権下では、女性は身内の男性の同伴なしには外出が許されなかった。そんな中、生計を支えるべき男たちを全員戦争で失い、祖母と母親、そして12歳の少女の3人だけになってしまった一家があった。彼女たちは外出も出来ず生活の糧を失う。母親は仕方なく少女を男の子に変装させて働かせることを決意。バレた時の恐怖に怯える少女をなだめると、そのおさげ髪をバッサリと切り少年の姿にして、亡き父の戦友だったミルク屋に働きに出す。「ばれたら、タリバンに殺される」と泣く少女を、祖母は”虹をくぐると少年は少女に、少女は少年に変わり、悩みが消える”という昔語りの話でなだめる。タリバンに見つかることを怯える少女にとっては、通りを歩くことさえ大きな恐怖の連続だった。そして、男達だけの礼拝でお祈りの仕方を間違えた少女に、一人のタリバン兵は不審の色を隠さなかった。ある日、街のすべての少年がタリバンの宗教学校に召集され、少女もそこへ連行される。コーランの授業、身の清め方。少女は、必死の思いでひとつひとつをやり過ごすが、やがてまわりの少年達に「女だろう」と怪しまれる。「男なら名前は何という?」と少年達に囃し立てられる少女に、お香屋の少年が助け舟をだす。「こいつの名前はオサマだ。」しかし、その騒ぎに気づいたタリバン兵が、少女を井戸に吊るし、罰を加える。そして少女の足下をつたう赤い血。恐怖による衝撃から、少女に初潮が訪れたのだ。ついに少女であることが暴かれ、彼女は強引にブルカを被せられる。牢獄に入れられた少女は、やがて宗教裁判の場に引きずり出され……




3-32. 北国の帝王

監督 ロバート・アルドリッチ
出演 リー・マービンアーネスト・ボーグナインキース・キャラダイン
1973年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
アメリカ全土を襲った不況がその頂点に達した1930年台のオレゴン州を背景に、鉄道を利用して移動するホーボーと呼ばれた浮浪者たちの中の帝王と、彼らの無賃乗車を拒む冷酷な車掌との戦いを描く。製作総指揮はケネス・ハイマン、製作はスタン・ヒュー、監督は 「ワイルド・アパッチ」 のロバート・アルドリッチ、脚本はクリストファー・ノッフ、撮影はジョセフ・バイロック、音楽はフランク・デヴォール、編集はマイケル・ルチアーノが各々担当。出演はリー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナイン、キース・キャラダイン、チャールズ・タイナー、マルコム・アタベリー、サイモン・オークランドなど。

ストーリー
1933年。29年からアメリカを襲った経済史上空前の不況のために、失業者は浮浪者と化し、彼らはホーボーと呼ばれていた。ホーボーたちは鉄道を利用して野宿地から他の野宿地へ移動した。彼らは貨物列車や家畜車に乗るのが常套手段であったが、やむを得ない場合は車輪と車輪の空間に巧みに身を忍ばせて移動するという危ない綱渡りもした。だが、オレゴン州のウィラメット・バレーに来るホーボーたちは、そこを通過する19号車に乗ることは避けていた。この列車の車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)は冷酷無比な男で、彼はホーボーたちの無賃乗車は絶対に許さなかった。ハンマーを携え、ホーボーたちを見つけたらその場で殴り殺すというすさまじさだった。だが、この狡猾なシャックの裏をかいて、いつも悠々と19号車に乗っているホーボーがいた。Aナンバー・ワン(リー・マーヴィン)と呼ばれ、ホーボーから“北国の帝王”というニックネームを贈られている男だ。ある日、Aナンバー・ワンのニワトリを盗もうとして失敗したシガレット(キース・キャラダイン)という若者が彼の王座を奪おうと、行動を共にするようになった。そのために19号車で思わぬ失敗を犯したが、そんなことでひるむA・ナンバー・ワンではなかった。崖下でひと息いれると、彼はあたりに捨ててあった油の空きカンを集めて、それを持って再び線路に現われた。A・ナンバー・ワンはその空きカンの底に残っていた油を集めてレールに塗り始めた。シガレットもそれをまねた。これはやがてここを通過する客車の機関車の車輪を空回りさせて、1時停止させ、その間に列車に乗り込み、ある地点で19号車においついたとき、それに乗り換える方法だった。この計画は見事に成功した。それから3日目の朝、シャックは2人のホーボーが車の下に潜んでいるとにらみ、得意の鉄棒つきの綱で2人を撃退する手を使った。この戦法は効を奏してAナンバー・ワンはさんざん痛めつけられ危うくなった。シガレットはその気になれば彼を助けられたのに知らん顔をしていた。それでもAナンバー・ワンは降参しなかった。鉄棒の責苦をのがれるためにAナンバー・ワンは、車のエア・ブレーキをかけて列車を急停車させたからたまらない。シャックはふり落とされ、火夫は傷つき、機関士は気を失い、最後部に乗っていたブレーキ係りは死んだ。やがてシャックの指図により19号車は発車した。そして彼は、車によじ登ろうとしているシガレットを見つけ、鉄製のクサリで殴り殺そうとした。Aナンバー・ワンはシャックに怒鳴った。「シャック、貴様の年貢の納め時が来たぞ!」。無蓋車の上で鎖を手にしたシャックと、それに立ち向かうAナンバー・ワンとの血みどろの決闘が始まった。Aナンバー・ワンが無蓋車の羽目板にかけてあったマサカリをとって反撃に出て、シャックに重傷を負わせ、車から突き落とした。彼はシガレットをも突き落とした。19号車はばく進を続け、Aナンバー・ワンの叫び声だけが木霊する。「貴様のようなチンピラに“北国の帝王”をまねる資格はない。貴様のようなチンピラは物ごいをして歩くのが分相応だ、金輪際人まねをするんじゃねえぞ」。




3-33. 翼に賭ける命

監督 ダグラス・サーク
出演 ロック・ハドソンロバート・スタックドロシー・マローン
1957年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
現代アメリカ文学の代表的作家ウィリアム・フォークナーの小説 「パイロン」 (飛行標塔)の映画化で、曲芸飛行に命を賭ける男を中心に、人間の愛情と運命を描いた文芸篇。 「風と共に散る」 のジョージ・ザッカーマンが脚色、 「間奏曲」 のダグラス・サークが監督した。撮影監督は 「東京特ダネ部隊」 のアーヴィング・グラスバーグ、音楽は作曲が 「間奏曲」 のフランク・スキナー、指揮が 「悪魔に支払え!」 のジョセフ・カーシェンスン。主演は 「大空の凱歌」 のロック・ハドソン、 「硝煙」 のロバート・スタック、 「千の顔を持つ男」 のドロシー・マローン。 「脱獄囚」 のジャック・カーソン、 「友情ある説得」 のロバート・ミドルトンが助演する。

ストーリー
1932年の事である。新聞記者のバーク(ロック・ハドソン)は、ニューオルリンズで開かれている曲芸飛行競技会についての記事を書くため、現地に赴いた。そこで彼はロジャー(ロバート・スタック)に出会った。ロジャーは、第一次大戦で空の英雄と崇拝されていたが、今は飛行塔の周りをすれすれに飛び廻る飛行競技で僅かな賞金を貰って不安定な生活を送っているパイロットである。競技を明日に控え、休息の部屋を借りることも出来ないロジャーらに同情したバークは自分の部屋を彼らに提供した。その夜、バークはロジャーの妻ラバーン(ドロシー・マローン)から興味ある話を聞いた。ラバーンは貧しい農家に生まれたが、当時英雄と讃えられたロジャーに惹かれ家出し、整備員のジッグス(ジャック・カーソン)と3人で同棲するようになった。彼女はジッグスの愛情に気を引かれながらも、妊娠した時、ダイスを振って、自分かジッグスのどちらが彼女と結婚するかを決めるような非人間的なロジャーに盲従しているというのだ。バークはこの虚無的、動物的な醜い人間の生態に記事としての面白さを見出し、編集長に報告した。が、編集長はそれを過小評価した。バークは頑として自分の記事を主張したのでクビにされてしまった。レースは始まった。ロジャーの中古機は農具製造業者マットの機と衝突して墜落した。明日のレースに夢中のロジャーは、もう1つのカードの飛行機に目をつけた。オードがラバーンにみだらな目を注いでいるのを見たロジャーは、彼女の肉体と交換してでも彼のボロ機を手に入れるように命じた。この事を知ったバークは、ラバーンの窮境を救うためオードに彼の記事を大きく扱うことを交換条件に飛行機を獲得した。機を入手したロジャーは、ラバーンがオードの命に従ったと思いこみ、身の恥ずかしさを知りラバーンへの愛情を初めて告白した。だが、レースの途中故障が起こり、修理不能とみたロジャーは見物人を傷つけまいとして湖中へ飛びこんだ。人生に希望を失ったラバーンはヤケになりオードの許へ走った。だが、バークの愛は失意のラバーンを立直らせるのに成功した。新聞社でもバークを復職させた。シカゴ行きの飛行機にラバーンと息子のジャックを乗せたバークは、2人の間に新しい生活が始まることを約束させた。




3-34. グッドナイト&グッドラック

監督 ジョージ・クルーニー
出演 デイヴィッド・ストラザーンロバート・ダウニーJr.パトリシア・クラークソン
2005年・アメリカ(東北新社)

解説
人気俳優ジョージ・クルーニーの監督第2作。米国の伝説的なニュース・キャスターとその番組スタッフたちの壮絶な闘いの日々を、シャープなモノクロ映像で描く社会派映画。

ストーリー
1953年、テレビ黎明期のアメリカ。国民は、マッカーシー上院議員による共産主義者を告発する運動”赤狩り“に怯えて暮らしていた。そんな中、CBSの人気ニュース番組『シー・イット・ナウ』のキャスター、エド・マロー(デイヴィッド・ストラザーン)は、ある空軍兵士が”赤狩り“のため除隊処分されようとしている事件を番組で取り上げる。こうしてマローやプロデューサーのフレンドリー(ジョージ・クルーニー)、ドン・ヒューイット(グラント・ヘスロウ)や、秘密で職場結婚しているジョー・ワーシュバ(ロバート・ダウニー・Jr.)とシャーリー・ワーシュバ(パトリシア・クラークソン)らの記者たちが、マッカーシーからの圧力を受けることになる。しかし54年、CBSの会長ペイリー(フランク・ランジェラ)の支持を得て、マローはマッカーシーの虚偽と策謀を露わにする番組を放映。これが大きな反響を得る。一カ月後、マッカーシーが反論に出たが、世論はマローを支持し、CBSは完全勝利を収めた。だが次第に、政府や広告主との関係を案じるペイリーは、マローたちを危険視し始める。ワーシュバ夫妻は突然の退社をほのめかされ、テレビ業界には大衆化の波が押し寄せていた。ある日、マローとフレンドリーは、ペイリーから『シー・イット・ナウ』の時間枠変更と、スタッフの削減を命じられる。58年、マローは報道番組制作者協会のパーティで、テレビ業界の未来を憂えたスピーチをするのだった。




3-35. 青い珊瑚礁(×)

監督 ランダル・クレイザー
出演 ブルック・シールズクリストファー・アトキンズレオ・マッカーン
1980年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
南太平洋の大自然を舞台に、ある孤島に流された男の子と女の子がやがて成長し大人になっていく過程を描く。製作・監督は 「グリース」 のランダル・クレイザー、共同製作はリチャード・フランクリン。ヘンリー・ドゥビア・スタグプールの原作を基にダグラス・デイ・スチュアートが脚色。撮影はネストール・アルメンドロス、音楽はバジル・ポールドゥリス、編集はロバート・ゴードンが各々担当。出演はブルック・シールズ、クリストファー・アトキンズ、レオ・マッカーン、ウィリアム・ダニエルス、エルバ・ジョゼフスン、グレン・コーハンなど。

ストーリー
南太平洋の広大な海上を一隻の帆船がゆったり進行していた。その船内にはアーサー(ウィリアム・ダニエルス)と8歳になる息子のリチャード(グレン・コーハン)、従妹で7歳のエミリーン(エルバ・ジョゼフスン)がいた。ある日、その船内が火事で突然燃え出し、リチャードとエミリーンは、アーサーとはぐれ、料理番のパディ(レオ・マッカーン)と3人だけがボートに乗った。恐ろしい一夜が明けて、目覚めてみると、エミリーンの目に別天地のような美しい島影がうつった。しかし、その島は無人島で、過去に漂流してきたらしい人々のガイコツと酒だるがころがっていた。2人はパディから毒のある木の実の見分け方、縄の結び方など生きるために必要なことを教わるが、ある朝、そのパディが事故で死に、リチャードたちは途方にくれた。それから数年後。女らしく成長したエミリーン(ブルック・シールズ)と逞しい青年になったリチャード(クリストファー・アトキンズ)は、エデンの園のアダムとイブのような毎日を送っていたが最近では思春期の徴候がそれぞれを悩まし始め、いっしょの部屋では生活できなくなっていた。エミリーンを部屋から追い出してからしばらくしてのある夜、リチャードは、島の反対側からきこえる不気味な音を耳にした。エミリーンが心配になって外に飛び出たリチャードは、そこで、恐ろしい光景を目にした。何人かの裸の男たちの生けにえの儀式だ。逃げるようにして戻る除中、彼は高熱に苦しんでいるエミリーンを見つけた。リチャードは彼女を必死で看病し、彼女が全快した時、初めて愛を意識し結ばれた。そしてエミリーンは妊娠し、苦しい出産を終え、子どもとの新しい生活がはじまった。それから間もなくして、息子たちを探しつづけていたアーサーの捜索船が島にやって来た。しかし2人はその船に背を向けた。ある日、3人のボートがサメに襲われ漂流し、食糧も水もなく死をまつばかりという不幸な状況に見まわれた。食べ物を欲しがった坊やは食べてはいけない赤い木の実を食べぐったりし、それを見て、リチャードが残りの実を2分した。親子が横たわるボートが大海原を漂っていく。そして、その遥かかなたには、帆船が姿を現わしていた。




3-36. エネミー・オブ・アメリカ

監督 トニー・スコット
出演 ウィル・スミスジーン・ハックマンジョン・ヴォイト
1998年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
プライバシーを知らぬ間に侵害され追われる身となったひとりの男の苦闘を措くサスペンス。監督は 「クリムゾン・タイド」「ザ・ファン」 のトニー・スコット。脚本は 「ハーヴェスト」 のデイヴィッド・マルコーニ。製作は 「アルマケドン」 のジェリー・ブラッカイマー。製作総指揮は 「アルマゲドン」 のチャド・オーメン、 「ザ・ファン」 のジェームズ・W.スコッチドポール、 「めぐり逢い」 のアンドリュー・Z・デイヴィス。撮影は 「GIジェーン」 の西海岸ユニット部分の撮影を務めたダン・ミンデル。音楽は 「アルマゲドン」 のトレバー・ラビンと 「アンツ」 のハリー・グレッグソン=ウィリアムズ。美術は 「トゥルー・ロマンス」 のベンジャミン・フェルナンデス。衣裳は 「Xファイル ザ・ムービー」 のマーリン・スチュワート。出演は 「メン・イン・ブラック」 のウィル・スミス、 「クリムゾン・タイド」「バードケージ」 のジーン・ハックマン、 「クロスゲージ」 のジョン・ヴォイト、 「ザ・エージェント」 のレジーナ・キング、 「エンゼルハート」 のリサ・ボネット、 「自由な女神たち」 のガブリエル・バーン、 「ガタカ」 のローレン・ディーン、 「ナイトウォッチ」 のシェイク・ビジーほか。

ストーリー
ディーン(ウィル・スミス)は腕のいい弁護士。妻カーラ(レジーナ・キング)と息子エリック(ジャッシャ・ワシントン)とともに成功した人生を歩んでいた。ところが、ある日、偶然大学時代の同級生から暗殺の現場が映ったビデオテープを受け取ってしまう。テープの中身は、国家安全保障局=NSAに出向中の行政官レイノルズ(ジョン・ヴォイト)がテロ防止法案を巡って対立する下院議員を謀殺している場面だった。なにも気づかないまま、NSAから追われるディーン。巨大な管理システムを持つNSAは、ディーンのプライバシーを暴き、失職にまで追いつめる。情報屋のブリル(ジーン・ハックマン)に助けを求めたディーンだが、身体中につけられた追跡装置や盗聴器を指摘され、ブリルに避けられる。だが、仕事仲間のレイチェル(リサ・ボネット)をNSAに殺されたディーンは再びブリルと接触し、共にNSAと戦う決意をする。元NSA通信員だったブリルは敵と同じ手口でレイノルズに揺さ振りをかける。しかし、作戦は失敗。二人は捕らえられてしまう。機転を効かせたディーンは「テープは別の場所にある」と嘘を言いレイノルズをFBIが監視するマフィアの店へ誘う。マフィアと揉めたレイノルズは銃撃戦の末、死亡。ほかの職員もFBIに捕らえられる。騒ぎの中、ひっそりと姿を消すブリル。騒ぎが収まったころ、ディーンが居間でくつろいでいると、ふいにテレビにバカンスを楽しむブリルの映像が転送されてくる。それはブリルからデイーンヘの最後の挨拶だった。




3-37. タップス

監督 ハロルド・ベッカー
出演 ジョージ・C・スコットティモシー・ハットンロニー・コックストム・クルーズ
1981年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
土地開発のため閉校されることになった陸軍幼年学校の生徒たちが、銃を持って反対にたちあがるというドラマ。製作はスタンリー・R・ジャッフェ、ハワード・ジャッフェ、監督はOnion Field(79)のハロルド・ベッカー。デブリー・フリーマンの小説をダリル・ポニクサンとロバート・マーク・ケイメンが脚色。撮影はオーウェン・ロイズマン、音楽はモーリス・ジャールが各々担当。出演はジョージ・C・スコット、ティモシー・ハットン、ロニー・コックス、ショーン・ペン、トム・クルーズなど。

ストーリー
開校以来1世紀半、伝統と歴史を誇るバンカーヒル・ミリタリー・アカデミー。ここでは12歳で親もとを離れ、6年間、厳しい規律の下で学習と教練をみっちり叩き込まれた少年たちが、育っていく。夏休みを前に、卒業と進級の時期がめぐってきた。ブライアン(ティモシー・ハットン)は、朝から興奮と緊張を抑えつけるのに苦労していた。入学以来、首席を通してきた彼はいよいよ最高学年に進級し、全校の生徒指揮官となるのだ。校長ハーラン・ベイシュ将軍(ジョージ・C・スコット)は、卒業式の訓辞で、ミリタリー・アカデミーなど現代では時代錯誤な存在だから、1年間の猶予を置いて閉校するという理事会の決定を発表。その夜のダンス・パーティで、生徒たちと町の少年たちの喧嘩をとめようとしたベイシュ将軍の銃が暴発、1人の少年が死亡。校長は警察に連行され、学校は即時閉鎖されることになった。ブライアンは閉鎖撤回を実力でかちとろうと、在校生に呼びかける。150余名の生徒は全員賛成した。武器庫のマシンガン、M60銃、手榴弾を手に篭城を始めるブライアン、アレックス(ショーン・ペン)、ウエスト、デイビッド(トム・クルーズ)、JCら。州軍が周囲をかこみ、指揮官カービー大佐(ロニー・コックス)が説得にあたるが、ブライアンらの意思は固かった。校内の水道と電気が切られた。挫折する生徒も出てくる。12歳のチャーリーが、事故のために死亡。ブライアンはついに篭城をやめることにした。だがデイビッドが狂ったようにマシンガンを発射。州軍のタンクが応戦。とめようとしたブライアンも死亡してしまう。ブライアンの亡骸を抱きかかえて校門に向うアレックス、涙が頬をつたっていた。




3-38. フットルース

監督 ハーバート・ロス
出演 ケヴィン・ベーコンロリ・シンガージョン・リスゴー
1984年・アメリカ(パラマウント映画=CIC)

解説
中西部の田舎町を舞台に都会から転校してきた若者が捲き起こす騒動を描く青春映画。製作はルイス・J・ラクミルとクレイグ・ザダン、エグゼクティヴ・プロデューサーはダニエル・メルニック、監督は 「愛と喝采の日々」 のハーバート・ロス、脚本・作詞はディーン・ピッチフォード、撮影はリック・ウェイト、音楽はマイルス・グッドマン、編集はポール・ハーシュ、プロダクション・デザインはロン・ホッブス、振付はリン・テイラー・コーベットが担当。出演はケヴィン・ベーコン、ロリ・シンガー、ジョン・リスゴー、ダイアン・ウィースト、クリストファー・ペン、サラ・ジェシカ・パーカーなど。日本版字幕は戸田奈津子。カラー、ビスタサイズ。1984年作品。

ストーリー
ユタ州の片田舎ボーモントの日曜日、午後。教会でウンザリしたような表情の若者が1人、牧師ムーア(ジョン・リスゴー)の説教を聞いている。その若者、高校生のレン・マコーミック(ケヴィン・ベーコン)は、シカゴから転校して来た都会っ子だ。父が家出してしまったので、母と2人で伯父をたよってこの地に来たのだ。今、彼の心を捉えているのは、ムーア牧師の娘エリエル(ロリ・シンガー)だ。初登校の日、彼は、ウィラード(クリストファー・ベン)という陽気な若者と意気投合し、彼から意外なことを聞かされた。この町は公序良俗の名のもとに、若者たちのロックやダンスが禁止されているというのだ。ウィラードを始め、レンには次々に友だちができるが、エリエルのボーイフレンド、チャックとそのグループの連中が、レンに敵対心を抱いていた。早速、レンのバイト先の製粉工場に、チャックの挑戦状をもってエリエルがやって来た。大型トラクターを使っての度胸だめしの決闘だ。レンが勝利を収めた瞬間、エリエルの心はレンに動いた。彼女は親友のラスティ(サラ・ジェシカ・パーカー)にレンの行動パターンを調べさせた。そんな頃、レンが友達の大麻を預かったことから、教師に不信の目をむけられ、人気のない工場でヤリ場のない怒りをぶつけていた。そこヘエリエルが現われ、2人の心は接近する。ある日、レンはエリエル、ウィラードらと隣の町のディスコに行き楽しむが、早速、そのことが町に波紋を投げかけた。実は、ロック・ダンス禁止条例というのは、5年前の高校生酒酔い運転事故死に端を発しており、その時死んだのはエリエルの兄だったのだ。レンの大人たちへの挑戦が始まった。彼はダンス・パーティーの計画を立てた。一方、チャックはレンとエリエルの仲を嫉妬してエリエルを激しくなぐる。ますます燃え上がるレンとエリエルは、初めてのキスを交わした。レンは、町の定例集会でダンス・パーティの実行を訴えることにした。その前夜、レンの家が何者かに投石され、伯父一家はレンを非難したが、そんなことでひるむレンではない。ダンス・パーティーの会場は、町はずれのベイリンにある体育館だ。初めは反対していたムーア牧師も、今では、レンの気持ちを理解し、市民の前ではっきりダンスを認める宣言を行なった。父からのプレゼントであるコサージュをつけたエリエルを、正装したレンがワーゲンで迎えに来た。会場前では、チャック達が妨害しようと待ちかまえている。しかしそんな妨害もさりげなくかわしてレンたちが館内に乗り込んだ時は、館内は熱気の渦がたちこめていた。はじけるようなリズムの鼓動の中で、若者たちは若さを爆発させた。(パラマウント映画=CIC配給*一時間四七分)




3-39. ダンボ

監督 ベン・シャープスティーン
1941年・アメリカ(ウォルト・ディズニー)

解説
「不思議の国のアリス(1951)」 と同じくウォルト・ディズニーが製作し、ベン・シャープスティーンが総監督に当ったテクニカラーの長篇漫画で、1941年作品。ジョー・グラントとディック・ヒュウマーがストーリイを書き下ろした。音楽はオリヴァー・ウォーレスとフランク・チャーチル、作詞はネッド・ワシントン。

ストーリー
サーカス団の象ジャンボ夫人が授かった赤ちゃん象は、耳が舟のように大きかったが、ジャンボ夫人にとっては大切な坊や。ダンボと名付けて可愛がった。だが、仲間の象たちや見物の悪童連はみんなダンボの大きな耳を馬鹿にしたので、堪りかねたジャンボ夫人はカッとなって思わず大暴れをしてしまい、鉄の牢屋に気狂い象として押しこめられた。ひとりぼっちになったダンボに、すっかり同情したのは鼠のティモシーである。ティモシーはダンボの大きな耳を見て、ふと思いついた。この耳を羽根がわりにして飛べないものか? カラスたちの応援でダンボはみごと空を飛ぶことが出来た。そして、満員の見物や団長の驚きを尻目に、ダンボは悠々とサーカス小屋の中を飛んで見せ、忽ち人気者になった。早速ハリウッドがダンボと契約し、ダンボは牢から出してもらったお母さんと一緒に美しい専用車でハリウッドに向かった。




3-40. 紳士は金髪がお好き

監督 ハワード・ホークス
出演 ジェーン・ラッセルマリリン・モンローチャールズ・コバーン
1953年・アメリカ(20世紀フォックス極東)

解説
「栄光何するものぞ」 のソル・C・シーゲルが製作したテクニカラーのミュージカル・コメディ、1953年作品。1928年に映画化されたアニタ・ルーズの原作小説より、ルーズとジョセフ・フィールズが舞台用に書いた台本を、 「死の接吻(1947)」 のチャールズ・レデラーが脚色し、 「果てしなき蒼空」 のハワード・ホークスが監督した。撮影は 「腰抜け 二挺拳銃の息子」 のハリー・J・ワイルド、音楽監督は 「ナイアガラ」 のライオネル・ニューマンの担当。主演は 「人生模様」 のマリリン・モンローと 「ならず者」 のジェーン・ラッセルで、チャールズ・コバーン 「パラダイン夫人の恋」 、エリオット・リード、トミー・ヌーナン、ジョージ・ウィンスロウ、マルセル・ダリオらが助演する。

ストーリー
ローレライ(マリリン・モンロー)とドロシイ(ジェーン・ラッセル)はニューヨークのナイトクラブに出ている仲の良い芸人同士だった。ローレライはなかなかのチャッカリ娘で、金持ち息子ガス(トミー・ヌーナン)の心をとらえ、パリへ渡って結婚することになったが、出発間際ガスの父が病気でとりやめになった。余った切符でドロシイがローレライと一緒にパリへ行くことになった。船にはローレライの素行を調べるためガスの父が私立探偵のアーニイを乗り込ませた。ローレライは船客名簿からヘンリイ・スポウォード三世という金持ちらしい名前を選び、会ってみると6歳の少年だった。次いで彼女はダイヤモンド鉱山主フランシス・ビークマン卿(チャールズ・コバーン)を狙った。彼の夫人が持っているダイヤの髪飾りが欲しかったのだ。その間、アーニイはドロシイに言い寄った。ある日、ビークマン卿とローレライが会っている現場をアーニイがこっそり撮影した。それを見つけたドロシイは、ローレライと協力してフィルムを奪い、ビークマン卿の目の前で焼き捨てた。これを喜んだ卿は、ローレライに夫人の髪飾りを秘かに贈った。パリに着いて髪飾りがなくなったことに気づいた卿夫人は、ローレライに嫌疑をかけた。ローレライとドロシイはある料理店に出演したが、そこへ突然、ニューヨークからガスがやって来て、髪飾りの一件でローレライを責めた。ローレライは髪飾りを返そうと思ったが、いつの間にか紛失していた。ドロシイは自ら髪飾り紛失の罪を着て、ローレライになりすまし、法廷に立ってあれこれ急場を切り抜けた。そのうち、ビークマン卿が髪飾りを取り返していたことが分かり、ドロシイは無事釈放。ドロシイをローレライだと思い込んだガスの父親は結婚はまかりならぬといきり立ったが、本物のローレライを見てたちまち気に入ってしまった。こうしてローレライとガス、ドロシイとアーニイの2組がめでたく結ばれた。




3-41. カクテル  

監督 ロジャー・ドナルドソン
出演 トム・クルーズブライアン・ブラウンエリザベス・シュー
1988年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画) 105分

解説
野心を抱く青年が体験する喪失と再生、そして真実の愛にめぐりあうまでを描く。製作はテッド・フィールドとロバート・W・コート、監督は 「追いつめられて(1987)」 のロジャー・ドナルドソン、原作・脚本はヘイウッド・グールド、撮影はディーン・セムラー、音楽はピーター・ロビンソンが担当。出演は 「ハスラー2」 のトム・クルーズ、 「普通の女」 のブライアン・ブラウン、エリザベス・シューほか。日本版字幕は戸田奈津子。ドルビーステレオ。カラー、ビスタサイズ。1988年作品。

ストーリー
野望を胸にニューヨークへやってきたブライアン・フラナガン(トム・クルーズ)は、学歴の低さが災いして、目指す大企業入社がままならず、すっかり落胆していた。そんな折ブライアンは、ふとマンハッタンのカクテル・バーの求人広告を目にし、昼間は大学に通いながら、夜はオーナーのダグ(ブライアン・ブラウン)から踊るようなリズミカルなバーテンダー・テクニックを教わり働くようになると、たちまち界隈きっての人気バーテンダー2人組になる。しかし、ブライアンのガールフレンドにダグが手を出したことから2人は大喧嘩、コンビは解散を余儀なくされる。2年後ジャマイカの浜辺でシェイカーを振るブライアンは、そこで画家志望の娘ジョーダン(エリザベス・シュー)と出会い、やがて恋におちるが、そんな彼のもとに大富豪の娘と結婚し、悠々自適の生活を送るダグが現われ、ブライアンは彼への見栄からニューヨークの女実業家ボニー(リサ・ベインズ)と情事を持ってしまう。ところがその現場をジョーダンに目撃され、彼女はブライアンの前から姿を消した。ニューヨークに戻ったブライアンは、ジョーダンの勤めるレストランを訪ねるが、彼女から冷たくあしらわれ、失った恋の重さを知るのだった。そしてボニーとのニューヨークの生活に次第に焦燥を募らせるブライアンは、あるパーティの席でそれを爆発させてしまい、2人の関係は壊れた。ブライアンはジョーダンとの真実の愛に生きるため彼女の家を訪ねるが、実は彼女は資産家の娘で、ブライアンは門前払い同然追い返される。そんな彼に追いうちをかけるかのようにダグが自殺する。愛のない金だけの空虚な生活に疲れたというのだ。ショックをうけるブライアン、しかし今、ジョーダンを手放せば自分が駄目になってしまうと悟った彼は、再びジョーダンの家に押しかけ、やがてブライアンの真実にほだされたジョーダンは、彼との愛に生きる決意をするのだった。(ワーナー・ブラザース配給*1時間42分)




3-42. ヤングガン  

監督 クリストファー・ケイン
出演 エミリオ・エステヴェスキーファー・サザーランドルー・ダイアモンド・フィリップス
1988年・アメリカ(ベストロン映画) 108分

解説
「リンカン郡の戦い」周辺の、ビリー・ザ・キッドと彼の仲間たちの姿を描く。製作はジョー・ロスとクリストファー・ケイン、監督は 「暴力教室 '88」のクリストファー・ケイン、脚本は 「クロスロード」のジョン・フスコ、撮影は 「マッドマックス サンダードーム」のディーン・セムラー、音楽はアンソニー・マリネッリとブライアン・バンクスが担当。出演は 「ウイズダム 夢のかけら」のエミリオ・エステヴェス、 「再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ」のキーファー・サザーランド、 「ラ・バンバ」のルー・ダイアモンド・フィリップス、 「ハートビートで追いかけて」のチャーリー・シーンほか。

ストーリー
1878年、ニューメキシコ州リンカン郡は2つの勢力が対立し緊張の色を濃くしていた。そんなある日、その一方の勢力であるジョン・タンストール(テレンス・スタンプ)という英国人紳士が、彼の雇うヤングガンの1人であるドク(キーファー・サザーランド)とよばれる若者とともに町へやってきた時、散弾銃の銃声とともに数十人の男たちに追われる若者と出会い、彼を救ってやる。この若者ウィリアム・H・ボニー(エミリオ・エステヴェス)こそ、後のビリー・ザ・キッドである。タンストールの牧場でビリーはスティーヴ(ダーモット・マルロニー)、チャーリー(ケーシー・シマスコ)、ブリュワー(チャーリー・シーン)、チャヴェス(ルー・ダイアモンド・フィリップス)たちと出会い、タンストールの指導のもと、次第にビリーも彼ら同様、立派なヤングガンへと成長してゆく。しかし、もう一方の勢力であるマーフィ(ジャック・パランス)一味の陰謀により、タンストールが惨殺され彼らの運命は一転する。彼の友人であった弁護士マクスウィン(テリー・オクィン)の尽力により、保安官代行となった彼らは犯人逮捕へ向かうが、ビリーの独断によってその1人を撃ち殺してしまい、一大銃撃戦となってしまう。その結果、逆にヤングガンたちに賞金がかかり追われる立場になってしまう。マーフィ一味への復讐を誓ったヤングガンたちも、ブリュワーが殺し屋に銃殺され、長い逃亡生活の疲れもあり次第に一同の意気は消沈してゆく。そんな最中ヤングガンたちは、保安官ギャレット(パトリック・ウエイン)からマクスウィン夫婦の命が危ないという情報を手に入れ、彼らを救出に向かうが、それはヤングガンたちを陥れるための罠だった。マクスウィン家に到着するや、ヤングガンたちは、マーフィ一味に屋敷を包囲される。軍隊も繰り出され絶体絶命のそんな時、チャヴェスの機転で、ビリーとドク、そしてチャヴェスだけが命からがら包囲陣からの脱出に成功した。そして逃亡のきわ、ビリーはマーフィに向けて復讐の銃を放つのだった。




3-43. ブラッド・ダイアモンド

監督 エドワード・ズウィック
出演 レオナルド・ディカプリオジャイモン・ハンスゥジェニファー・コネリー
2006年・アメリカ(ワーナー)

解説
主人公たち三者三様の思惑が交錯する、衝撃かつ感動的なサスペンス。ディカプリオが、 「ラスト サムライ」 のズウィック監督のもと、影のあるダイヤの密売人を熱演している。

ストーリー
内戦が続くアフリカ、シエラレオネ共和国。漁師ソロモン(ジャイモン・フンスー)は平穏に暮らしていたが、反政府軍RUFの襲撃により家族と引き離されてしまう。ソロモンが連れて行かれたのはRUFの資金源となっているダイヤモンドの採掘場だった。そこで驚くほど大粒のピンク・ダイヤを発見するソロモン。これがあれば家族を救える。危険を承知で彼はダイヤを秘密の場所に隠すのだった。一方、ダイヤの密輸を生業としているアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)は、刑務所でそのピンク・ダイヤの話を聞き、ソロモンに接近しようとする。家族を探す手伝いをする代わりにピンク・ダイヤの在り処を教えてくれと取引を持ちかけるアーチャー。しかしソロモンは承知しなかった。一方でジャーナリストのマディー(ジェニファー・コネリー)がアーチャーに近付いてくる。RUFの資金源となっている「ブラッド・ダイヤモンド」の真相を追っている彼女は、アーチャーの持っている情報が欲しかったのだ。しかしアーチャーは口を閉ざした。やがて難民キャンプで家族と再会するソロモン。しかし息子の姿だけが無かった。RUFが連れ去った可能性が高い。ソロモンは覚悟を決め、アーチャーの申し出を受け入れた。こうして異なる目的を持った三人がピンク・ダイヤを求めて過酷な道を歩き出す。アーチャーはこの暗黒の大陸から抜け出すため、ソロモンは息子の行方を突き止めるため、そしてマディーはアーチャーから決定的な情報を引き出すために……。




3-44. トッツィ

監督 シドニー・ポラック
出演 ダスティン・ホフマンテリー・ガージェシカ・ラング
1982年・アメリカ(コロムビア)

解説
売れない男俊が女装した途端に役がつき一躍人気スターになるが…というコメディ・ドラマ。シドニー・ポラックとディック・リチャーズが製作し、エグゼクティヴ・プロデューサーとしてチャールズ・エヴァンスが参加。監督はシドニー・ポラック。ラリー・ゲルバートとドン・マクガイアのストーリーを基に、ラリー・ゲルバートとマレー・シスガルが脚本化した。撮影はオーウェン・ロイズマン、音楽はデーヴ・グルーシン、ホフマン氏のメイクアップをアレン・ワイシンガーが担当。出演はダスティン・ホフマン、ジェシカ・ラング、テリー・ガー、ダブニー・コールマンなど。ドルビー・ステレオ。日本版字幕は戸田奈津子。パナビジョンで撮影。テクニカラー、シネスコサイズ。1982年作品。

ストーリー
演技を若い俳優たちにコーチしている中年の男マイケル・ドーシー(ダスティン・ホフマン)。実は彼も俳優なのだが、演出家ともめたりするのでトラブル・メーカーとみられて、役がつかず失業中。ルーム・メイトで脚本家志望のジェフ(ビル・マーレイ)と生活のためにウェイターをしている。生徒の一人サンディ(テリー・ガー)は、明日の病院ものソープ・ドラマのオーディションに自信がなく、マイケルが個人レッスンを買って出て、翌日TV局までついて行ってやったが、その甲斐もなくサンディは落第。タフじゃないというので、台詞も読ましてもらえなかったのだ。翌日、彼は女装して、TV局へ行きドロシー・マイケルズと名乗る。ディレクターのロン(ダブニー・コールマン)はドロシーを見ただけで、もっとタフな女性が欲しいという。そこでドロシーが怒ってみせると、プロデューサーのリタが気に入ってカメラ・テストをした上で採用。その時、マイクは看護婦役のジュリー(ジェシカ・ラング、)と知りあい一目惚れする。さて、マイケルはその足で、エージェントのジョージ(シドニー・ポラック)に会いにゆく。始めは彼女がマイケルとわからなかったジョージだが、話を聞いてびっくり。ジェフはマイケルに協力することになった。これもジェフの書いている芝居の公演資金8 000ドルを捻出するためだ。思わぬことでマイケルはサンディとできてしまう。翌口、TV局に行ったマイケルは、病院理事エミリーの役を難なくこなす。困ったのは、ブルースター医師役のジョン(ジョージ・ゲインズ)が彼女に恋心を燃やし出したことと、ジュリーがロンとつきあっていること。ロンは横柄な男で、ジュリーをまるで恋人扱いしていない。ある日、ジュリーに台本の読み合わせを頼まれたマイケルは彼女の家へ。そこで、彼女が未婚の母であることを知る。女同士仲良く会話をしているうちに、今晩はサンディと夕食の約束をしていたことを思い出して、サンディのアパートに行く。もうサンディはカンカンになっていた。やがて、ジュリーは父親レスを紹介し、レスはドロシーにいかれてしまう。そのうち、ドロシーに人気が出て来た。ロンは相変わらず人を人とも思わぬ態度で、ドロシーにトッツィー(可愛い子ちゃん)と呼び掛けたりする。ジュリーはドロシーに感化されてロンと別れると言い出す。そんな彼女にキスしようとして、レズビアンと思われてしまった。しかも、レスからは求婚されるし、ジョンがアパートに強引に入りこんでくる。やっと彼を追い出したところヘサンデーが来た。彼女に「他に好きな人ができた」とうちあけると、彼女はカンカンに怒る。もう女優であることに耐えられなくなったマイケルは、番組のライヴ放送の時、エミリーは本当は男であったと暴露。その後、マイケルは男としてジュリーに会い、彼女も彼の愛を受け入れる。




3-45. コットンクラブ

監督 フランシス・フォード・コッポラ
出演 リチャード・ギアダイアン・レイングレゴリー・ハインズ
1985年・アメリカ(松竹富士)

解説
禁酒法下の1920年代に栄えた黒人街ハーレムにあるナイトスポット“コットンクラブ”を舞台に、そこに展開される芸人やヤクザたちの人間模様を描く。製作はロバート・エヴァンス。エグゼクティヴ・プロデューサーはダイソン・ロヴェル。監督は 「ワン・フロム・ザ・ハート」 のフランシス・フォード・コッポラ、ウィリアム・ケネディ、フランシス・フォード・コッポラ、マリオ・プーゾの原作を基にケネディ・コッポラが脚色。撮影はスティーブン・ゴールドブラット、音楽はジョン・バリー、編集はバリー・マルキンが担当。出演はリチャード・ギア、ダイアン・レインなど。

ストーリー
1920年代、禁酒法下のニューヨークの黒人街ハーレム――。レノックス通りと142丁目の角にあるコットンクラブは、白人のために黒人のジャズを聴かせる豪華なナイト・スポット。しかし正装した有名人たちだけが出入りできる、黒人禁制の場である。コルネット奏者でピアノもこなすディキシー・ドワイヤー(リチャード・ギア)は、コットンクラブの近くにあるバンビルクラブで黒人にまじってジャズを演奏している。ある日、そこへ警官に化けた2人のギャングがダイナマイトを投げ逃げ去った。狙われたのは、ハーレム一帯のナンバーズ(数あて)賭博やビール供給の権利を得ようとしているギャングのボス、ダッチ・シュルツ(ジェームズ・レマー)だ。彼はディキシーの機転で命をとりとめ、彼といっしょにいたキュートな歌手ヴェラ・シセロ(ダイアン・レイン)の生命も救ってやり彼女をアパートに送っていく。黒人のサンドマン。ウィリアムズ(グレゴリー・ハインズ)は、一流のタップダンサーになるのを夢見ており、騒動のあった日の翌日、兄のクレイ(モーリス・ハインズ)と組んでコットンクラブのオーディションを受けて合格した。さっそく、そこの歌手で美人の黒人女性リラ・ローズ(ロネット・マッキー)に恋するサンドマン。ダッチに招待されて一流ホテルのパーティに出むいたディキシーは、そのパーティがコットンクラブの持ち主で暗黒街の政治家的存在のオウニー・マデン(ボブ・ホスキンス)とフレンチー・デマンジ(フレッド・グウィン)が、先夜の後始末のために開いたものであることを知った。歌手のためのピアノ伴奏を依頼されるディキシー。歌手として現われたのはヴェラだった。ディキシーの弟で野心家のヴィンセント(ニコラス・ケイジ)は、なんとダッチの用心棒をしている。そんな矢先、ダッチを殺そうとした男の黒幕であるジョー(ジョン・ライアン)がダッチに殺される。ダッチ一家の一員のような存在になったディキシーとダッチの愛人となったヴェラの間に、恋の炎が燃え上がっていた。ボスの目を盗んでベッドを共にする2人は、共にダッチのもとを離れることを約束した。大スター、グロリア・スワンソンの口ききでスクリーン・テストを受けたディキシーは、ハリウッドの大物にみとめられ、さっそく映画に出演し、スターの道を歩み始めた。そのころコットンクラブの人気タップダンサーになっていたサンドマンがリラ・ローズと結婚した。時代は大恐慌へと突き進んでいた。ダッチのもとを相変わらず離れられずにいるヴェラは、ブロードウェイのナイトクラブ経営をまかされていた。ダッチのために殺人まで重ねていたヴィンセントが殺害された。数年が過ぎたある日、大スターたちを客席に迎えて相変わらずの振わいをみせるコットンクラブで、サンドマンがタップを踏むころ、そこから遠く離れたレストランでダッチが殺された。そして、ディキシーは、今でも激しく愛しているヴェラに、西海岸に一緒に行こう、と誘うのだった……。




3-46. 恋におちたシェイクスピア

監督 ジョン・マッデン
出演 ジョセフ・ファインズグウィネス・パルトロウスティーヴン・ベアード
1998年・アメリカ(UIP)

解説
文豪シェイクスピアの秘められた恋物語を劇中劇と絡めて織り成した一大ラヴ・ロマンス。監督はイギリス演劇界出身、 「Queen Victoria 至上の恋」 のジョン・マッデン。製作総指揮は 「マイ・フレンド・メモリー」 のジュリー・ゴールドステイン、 「54」 のボブ・ワインステイン。製作は 「鳩の翼」 のデイヴィッド・パーフィット、 「エマ」 のドナ・ジクリオッティ、 「真実の行方」 のエドワード・ズウィック。脚本は 「カットスロート・アイランド」 のマーク・ノーマン、 「ビリー・バスゲイト」 のトム・ストッパード。撮影のリチャード・グレトリックス、音楽のスティーヴン・ウォーベック、、美術のマーティン・チャイルズは 「Queen Victoria 至上の恋」 に続く参加。編集はデイヴィッド・ガンブル。衣裳は 「ベルベット・ゴールドマイン」 のサンディ・パウエル。出演は 「魅せられて」 のジョゼフ・ファインズ、 「ダイヤルM」 のグウィネス・パルトロウ、 「Queen Victoria 至上の恋」 のジュディ・デンチ、 「レ・ミゼラブル」 のジョフリー・ラッシュほか。第71回(98年度)アカデミー作品賞・主演女優賞・助演女優賞・オリジナル脚本賞・美術&装置賞・衣裳デザイン賞を受賞。

ストーリー
芝居熱が過熱するエリザベス朝のロンドン。ローズ座は人気作家ウィリアム・シェイクスピア(ジョゼフ・ファインズ)のコメディが頼みの綱だったが、彼はスランプに陥っていた。なんとか書き出した新作コメディのオーディションにトマス・ケントと名乗る青年がやってくる。実はトマスが裕福な商人の娘ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)の男装した姿だった。商人の館にもぐり込んだシェイクスピアは、ヴァイオラと運命の恋に落ちる。その日から堰を切ったように劇作を書き始めたが、トマスから親が決めた結婚のためもう会えないというヴァイオラの別れの手紙を受け取り、納得できずまた館へ。そこでトマスがヴァイオラの仮の姿だと知る。心のままに結ばれたふたりはその後も忍び逢いを続け、この恋が次第に運命の悲恋物語「ロミオとジュリエット」を形づくっていく。ヴァイオラは、トマスとして劇場の皆を欺き芝居の稽古を続けていた。初演を待つばかりの日、トマスが実は女性であることがバレ、劇場の閉鎖が言い渡される。女性が舞台に立つことが許されない時代だったのだ。ライバル劇場のカーテン座の協力で初演を迎えたが、同じ日ヴァイオラはいやいや結婚式を挙げていた。式の後劇場に駆けつけたヴァイオラは、突然声変わりが起こって出演できなくなった少年の代わりに、ジュリエット役を演じることに。ロミオ役はシェイクスピアだ。詩に溢れた悲恋劇は大喝采を呼ぶが、芝居好きのエリザベス女王の許しで劇場閉鎖は免れたものの、ヴァイオラの結婚は無効にはならず涙ながらにふたりは別れることに。結婚して新天地アメリカに赴いたヴァイオラを思い、シェイクスピアは新たなコメディ「十二夜」を書き始める……。




3-47. クィーン

監督 スティーブン・フリアーズ
出演 ヘレン・ミレンジェームズ・クロムウェルアレックス・ジェニングス
2006年・イギリス、フランス、イタリア(エイベックス・エンタテインメント)

解説
ダイアナの事故死から1週間の、英国王室の混乱をリアルに描いた実話ドラマ。英国の名女優、ヘレン・ミレンが本人そっくりにエリザベス女王を演じている。

ストーリー
1997年5月、イギリス総選挙当日。首相候補のトニー・ブレア(マイケル・シーン)が投票所に一番乗りしている頃、王室では女王エリザベス2世(ヘレン・ミレン)が君主でありながら選挙権がない皮肉を嘆いていた。投票してみたいというのが女王の叶わぬ願いだった。翌朝、女王は目覚めとともにブレアが大勝利を収めたことを知る。1997年8月30日深夜、パリの大使館からダイアナが交通事故に遭ったと連絡が入る。ダイアナは集中治療室に運ばれたという。その知らせは、ブレアはもちろん、ロイヤルファミリーにも伝えられた。チャールズ皇太子(アレックス・ジェニングス)は、王室機でパリに向かおうとするが、女王は「王室の浪費と国民から非難される」として王室機の使用を禁止する。そして8月31日、朝5時。ロイヤルファミリーに伝えられたダイアナ死亡の知らせ。女王は、チャールズに将来のイギリス国王となる母親の死体を王室機で連れ戻すことが浪費なのか尋ねられ、しぶしぶ承諾。女王からの公式声明がない中、バッキンガム宮殿は悲しみに暮れる国民が集まり、多くの花が手向けられる。厄介だったダイアナが死んでまで、マスコミの見世物になりたくない女王は、ダイアナの生家の意見を尊重して内輪の葬儀で済ませると言い放つのだった。9月1日、月曜日。バッキンガム宮殿では、ダイアナの葬儀について会合が行われ、6日後の日曜日に国葬を行う方向で話が固まった。女王は、派手な内容に呆れるとともに、アトラクションのような国葬を本当にイギリス国民が望んでいるのか疑問に思い、国民の考えていることが理解できないでいた。9月3日、水曜日。マスコミは自分たちの責任の追及をかわすため、新聞の記事では王室のバッシングがエスカレート。国民の思わぬ反応に一番動揺しているのは女王自身だった。女王には、これ以上避けることのできない問題への決断が迫っていた……。




3-48. フォッグ・オブ・ウォー

監督 エロール・モリス
出演 ロバート・S・マクナマラ
2003年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ)

解説
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝いた衝撃作。元米国防長官のインタビューを通して20世紀に起きた数々の戦争を検証し、新世紀への警鐘を発する。

ストーリー
1962年10月、マクナマラ国防長官はキューバ・ミサイル危機に直面する。閣内の雰囲気は「ソ連との全面核戦争は不可避」に傾いていた。そのとき、ソ連問題顧問の一言で、ケネディ大統領はソ連の提案受け入れを決断。核戦争は回避された。30年後、マクナマラはキューバ首相から、「当時ソ連に核攻撃を進言した」と知らされる。「核戦争を回避できたのは、ただ運が良かっただけのことだ。同じ危機が今もあるのだ」。「人類は殺戮や紛争についてもっと真剣に考えなければならない。21世紀にも、同じことを繰り返したいのか?」マクナマラが2才のとき、第一次世界大戦が終わった。世界大恐慌のまっただ中、大学に進学。経営管理の研究で頭角を現し、当時最年少でハーバード大学経営学大学院助教授になる。結婚、第一子誕生…その未来は順風満帆に見えた。そこに、第二次世界大戦が始まった。マクナマラは経営管理の理論を戦争に応用。攻撃効率を高めるため、統計を取り、分析する。だが彼の報告書を元に、日本に無差別絨毯爆撃が行われた。指揮官は後に広島・長崎に原爆を落としたカカーティス・E・ルメイ少将。「勝ったから許されるのか? 私もルメイも戦争犯罪を行ったんだ」。戦後マクナマラはフォード自動車会社に入社。会社の業績を上げ、社長にまで昇りつめた。その頃、最年少の米国大統領が誕生した。ジョン・F・ケネディ。入閣を求められ、マクナマラは国防長官に就任する。それは素晴らしくも、悪夢の日々の始まりだった。ケネディ大統領はベトナム戦争への対応に苦慮する。攻撃拡大を主張する軍部を抑え、大統領とマクナマラは、ベトナムから米軍を完全撤兵する決断を下す。しかし1963年11月ケネディ大統領暗殺…。葬儀を回想する老マクナマラの目が、涙で潤んだ。昇格したジョンソン新大統領は、逆に戦争拡大を決意する。大統領選を有利に戦うため、大統領はマクナマラに、拡大の事実を国民に隠す命を与える。トンキン湾事件を機に、北爆、地上軍派遣と、アメリカはベトナム戦争の泥沼に脚を踏み入れてゆく。31年後、マクナマラはベトナムを訪れ、トンキン湾事件の真実を知り、唖然とする。「ベトナム戦争は避けられたのではないのか?」「キューバ・ミサイル危機のとき、アメリカ政府はソ連の立場に立って状況を見ることができたのに、ベトナム戦争ではそれができなかった」。1967年11月、マクナマラは国防長官を辞任した。マクナマラは「11の教訓」とともに、新世紀へのメッセージを発する。その教訓とは、教訓1:敵の身になって考えよ。教訓2:理性は助けにならない。教訓3:自己を越えた何かのために。教訓4:効率を最大限に高めよ。教訓5:戦争にも釣り合いが必要だ。教訓6:データを集めろ。教訓7:目に見えた事実が正しいとは限らない。教訓8:理由付けを再検証せよ。教訓9:人は善をなさんとして悪をなす。教訓10: “決して”とは決して言うな。教訓11:人間の本質は変えられない。映画のラスト、インタビュアーは尋ねる。「辞任後、なぜベトナム戦争反対を唱えなかったのですか?」。それに対するマクナマラの答は果たして……。