8-1. ワールド・オブ・ライズ

監督 リドリー・スコット
出演 レオナルド・ディカプリオラッセル・クロウマーク・ストロング
2008年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウという2大スターの豪華初共演作。非情な世界に身を置くCIAエージェントたちの頭脳戦を描くサスペンス・アクション大作だ。

ストーリー
ロジャー・フェリス(レオナルド・ディカプリオ)は、上司であるエド・ホフマン(ラッセル・クロウ)から命じられるままに潜入調査を行うCIAの敏腕工作員。今回の命令は、中東の爆破テロ組織のリーダーであるアル・サリーム(アロン・アブトゥブール)を捕えることだった。助手のバッサーム(オスカー・アイザック)とイランに潜入したフェリスは、自爆テロを命じられたジハード戦士のニザールからサリームの最新情報を得る。ホフマンからの命令でニザールを泳がせていたフェリスだが、自身の身元が漏れる危険性を感じて彼を殺す。その結果、銃撃戦に巻き込まれたフェリスは被弾し、バッサームは命を落とした。瀕死の状態から立ち直ったフェリスに、冷酷なホフマンは次の指令を下した。ニザールの資料から、サリームの隠れ家が発覚したのだ。フェリムは、ヨルダン情報局の責任者であるハニ・サラーム(マーク・ストロング)に協力を仰いだ。心を通いあわせるフェリスとハニ。しかし、そんな信頼関係もホフマンの裏工作によって壊れてしまう。それに怒ったフェリスは、ホフマンに逆らって独自でサリームを追いかける作戦を実行に移した。ところが、その途中でフェリスが思いを寄せていたイラン人の看護婦アイシャ(ゴルシフテ・ファラハニ)がサリームの組織によって誘拐されてしまった。それが罠だと知りながらも、サリームの指示に従ってアジトへとフェリスは誘導された。そんなフェリスに対して、ホフマンは何も出来なかった。サリームのアジトで拷問を受け、遂には殺されそうになったとき、救出に現れたのはハニだった。間一髪のところで、命拾いするフェリス。重症が癒えてホフマンと再会したフェリスは、CIAの組織を離れて中東に生きる決意を語る。その後ろ姿を見守るホフマンは、これまでフェリスを監視しつつけた衛星偵察システムから彼を外すよう指令を下した。




8-2. 懺悔

監督 テンギズ・アブラゼ
出演 アフタンディル・マハラゼイア・ニニゼ
1984年・ソビエト(グルジア)(ザジフィルムズ)

解説
いまは亡きグルジアの鬼才テンギズ・アブラゼ監督の遺作となった伝説の1本。独裁者による粛正の恐怖を回想形式で描き、衝撃的な内容が国内外で大反響を呼んだ問題作だ。

ストーリー
なれた手つきで教会をかたどったケーキを作る一人の女性ケテヴァン(ゼイナブ・ボツヴァゼ)。傍らの男が新聞を広げ、素晴らしい人が亡くなったと叫ぶ。そこには一人の男、ヴァルラム・アラヴィゼ(アフタンディル・マハラゼ)の写真が載っていた。彼はケテヴァンが幼かった頃から、市長であり、偉人として崇められていた人物だった。ヴァルラムの葬儀には多くの人が参列し、彼の息子アベル(アフタンディル・マハラゼ)は周囲から父をたたえる言葉をかけられる。翌朝、アベルは妻の叫び声で目を覚ます。庭に出ると、墓から掘り起こされたヴァルラムの遺体があった。墓が暴かれる事件はその後2度続いたため、墓はアベルとその息子トルニケ(メラブ・ニニゼ)、そして警察によって厳重に監視された。しばらくして轟く銃声。トルニケが発した弾が犯人の肩に命中、取り押さえられた犯人はケテヴァンだった。法廷にケテヴァンは自信に満ちた姿で現れ、自らの行為を認めつつも、掘り起こしたことは罪ではないと主張、心の奥底に封印していた過去を語り始める……。当時8歳だった彼女は、画家である父サンドロ(エディシェル・ギオルゴビアニ)と美しい母ニノ(ケテヴァン・アブラゼ)と共に幸せな生活を送っていた。しかし、政治的、文化的にも明晰な理念を持つサンドロが、文化遺産である老朽化した教会の修復をヴァルラムに申請したことを機に、生活に不穏な空気が忍び寄る。そんなある日、鎧を纏った男たちが現れ、サンドロは連行される。何者かが彼を無政府主義者だと告発したのだ。残されたニノは夫の無実を訴えるが相手にされず、消息も分からぬまま知人や友人も次々に粛清されていく。そして遂に、ニノも逮捕された……。法廷でケテヴァンは、ヴァルラムの罪を糾弾する。彼女への非難の怒号が渦巻く中、トルニケだけは動揺を隠せなかった。彼は自分の家族が犯した罪を知り、アベルを責め立て、その後、祖父の形見の猟銃で自殺する。アベルは自らヴァルラムの遺骸を掘り起こすと、崖から谷底深くに放り投げるのだった。




8-3. 噂のモーガン夫妻

監督 マーク・ローレンス
出演 ヒュー・グラントサラ・ジェシカ・パーカーサム・エリオット
2009年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
スター共演によるロマンチック・コメディ。殺人を目撃した離婚寸前のセレブ夫妻が、身分を隠して田舎町へ逃亡。カルチャーギャップの妙味と大人の恋愛模様が巧みに交錯する。

ストーリー
メリル・モーガン(サラ・ジェシカ・パーカー)は、マンハッタンで数千億円の物件ばかりを扱う不動産会社の女社長。夫のポール・モーガン(ヒュー・グラント)は、全米屈指の敏腕弁護士。常にニューヨーク中の噂の的のモーガン夫妻。週刊誌の表紙を飾ることも珍しくない2人は人も羨む完璧な超セレブカップルだった。だが、そんな満ち足りた幸せな日々も、ポールの浮気が発覚して過去のものとなってしまう。冷め切ってしまった妻メリルの気持ちを、プレゼント攻撃で何とか取り戻そうとするポール。その夜も、夜景の美しいレストランに妻を誘い、“夫婦カウンセリングに通おう”と関係の修復に懸命に努めていた。だが、その帰り道、思わぬ事態が2人を襲う。殺人事件を目撃してしまったのだ。犯人に顔を見られた2人は、警察の“証人保護プログラム”により、身分を隠してワイオミングへ向かうことになる。人間よりも牛や馬の方が多い田舎で2人きり。生まれながらのニューヨーカーから見ると、まるで異星人のような農村の住人たち。彼らとの交流や、大自然との出会いの中で、2人の関係には変化が生まれてくる。だが、メリルは夫に告げられない、ある事実を抱えていた。さらに、2人の後を追ってくる殺人者。その恐怖に怯えながら、命の危険をともに乗り越えた末に、2人が辿り着く結婚の真実とは……?




8-4. 四月の雪

監督 ホ・ジノ
出演 ペ・ヨンジュンソン・イェジンイム・サンヒョ
2005年・韓国(UIP)

解説
韓流ブームの立役者、ぺ・ヨンジュンの最新主演作。悲劇的な出来事のさなかに巡り合った男女のせつない愛の行方が、雪が舞う海辺の町を舞台につづられる。

ストーリー
ソウルのコンサート制作会社で照明のチーフ・ディレクターとして働くインス(ペ・ヨンジュン)が、妻の交通事故の知らせを受け取ったのは、仕事の真っ最中のことだった。東海岸の小さな町、サムチョク。救急病院の手術室の前で、インスはソヨン(ソン・イェジン)と出会う。そして、ふたりに残酷な現実がつきつけられる。それぞれの妻と夫は一台の車に乗っていた。デジカメ、携帯電話……2人の疑惑を裏づけ、知りたくもない現実が突きつけられる。「死んでくれればよかったのに」。意識の戻らぬ妻に向かい、インスの唇からそんな言葉が思わず漏れ出す。疑惑が確信へとその姿を変え、生死をさまよう者たちへの思いが憎悪になる。しかし、彼らは真実を確めずにはいられない。インスとソヨンは互いの結婚相手のことを語り合う。そして、それぞれが結婚する前、大学時代からの知り合いであることを知る。今や確める術もないが、何時から欺かれていたのか? 悲しみは憎しみとなり、そして無力感だけが残った。他の誰にも語ることのできない真実を、はからずも共有することになったインスとソヨン。ふたりはいつしか互いの支えとなっていることに気付く。傷の深さの分だけ、それを埋めるかのようにインスはソヨンと愛し合う。しかし、転機は唐突に訪れた。インスの妻が意識を取り戻し、ソヨンの夫はさらに状態を悪化させてゆく。目を奪う鮮やかな花弁の上に舞い降りる“四月の雪”。それは幻のように儚く消えてゆく。いつしか春を迎えようとしているサムチョクの街。ふたりの愛も雪のように消えてしまうのだろうか。




8-5. シマロン  

監督 アンソニー・マン
出演 グレン・フォードマリア・シェルアン・バクスター
1960年・アメリカ(MGM)

解説
エドナ・ファーバーの同名長編小説の映画化。「波も涙も暖かい」 のアーノルド・シュルマンが脚色し、「真昼の欲情」 のアンソニー・マンが監督した西部開拓魂を描いたドラマ。撮影は「ナポリ湾」 のロバート・サーティース、音楽をフランツ・ワックスマンが担当。出演は「奥様の裸は高くつく」 のグレン・フォード、「縛り首の木」 のマリア・シェル、「生きていた男」 のアン・バクスター、ほかにアーサー・オコンネル、ラス・タンブリンら。製作エドモンド・グレインジャー。

ストーリー
1889年、ヤンシー・クラバット(グレン・フォード)彼の新妻サブラ(マリア・シェル)はオクラホマ・テリトリーの土地競争出発点に向った。新生活を未開の天地に求めようというのだ。途中から野育ちの若者チュロキー・キッド(ラス・タンブリン)と10人の子供を持つトム・ワイヤット(アーサー・オコンネル)夫妻が2人の知り合いになった。数百台の幌馬車が砂塵をあげて疾走をはじめ、目的地に着いた順に自分の土地をもらえる土地競争が開始された。ヤンシー夫妻は農耕に適した土地に先着したが女無法者デキシー・リー(アン・バクスター)に拳銃で追われた。オセイジに着いた夫婦は「オクラホマ・ウィグワム」という新聞をつくり、インディアンの権利擁護にのりだした。銀行破りの罪で追われるチェロキー・キッドがある日逃れてきてヤンシーの腕の中で死んだ。やがてヤンシーは新しい土地競争に加わり、妻サブラは留守中新聞と家を守った。米西戦争に加わったヤンシーは英雄として帰ってき、今は石油王となったワイヤットのインディアン圧迫を攻撃して知事の椅子を得た。そして彼の政治活動をきらう妻を残してヤンシーは再び去った。10年の歳月が流れ、サブラは「オクラホマ・ウィグワム」の名編集長として名を成し、息子シムはインディアン娘ルビーと結婚して孫をもうけた。いつも野望に燃えて新しい仕事に取り組む夫の帰りを彼女は待った。ある日、油田大火災のニュースが入り、それをある男が必死に消しとめ重傷を負ったとの報がもたらされた。その男はヤンシーだった。病院にかけつけたサブラは死の床にある夫をひしと抱きしめた。




8-6. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか  

監督 スタンリー・キューブリック
出演 ピーター・セラーズジョージ・C・スコットスターリング・ヘイドン
1963年・アメリカ(コロムビア)

解説
ピーター・ジョージの「赤い警報」 (架空政治小説)を彼自身とスタンリー・カブリック、テリー・サザーンが共同で脚色、「ロリータ」 のスタンリー・カブリックが製作・監督した空想政治ドラマ。撮影は「恐怖の砂」 のギルバート・テイラー、音楽は「追いつめられて」 のローリー・ジョンソンが担当。出演は「ピンクの豹」 のピーター・セラーズが3役、「殺人秘密計画書」 のジョージ・C・スコット、「私はそんな女」 のキーナン・ウィン、ほかにスリム・ピケンズ、ピーター・ブル、トレイシー・リードなど。

ストーリー
合衆国の戦略空軍基地。リッパー将軍の副官として赴任したマンドレイク英空軍大佐(ピーター・セラーズ)は、突然「R作戦」開始の命令をうけて愕然とした。ソ連攻撃に備えた緊急かつ最高の報復作戦「R」を下令するのだ。基地は完全に封鎖され、厳戒態勢がとられた。また哨戒飛行機の全機も通信回路が遮断され、基地からの指令だけしか受けられない状態になり、50メガトンの水爆を搭載、直ちにソ連内の第1目標に機首を向けた。その直後、大佐は司令官が精神に異常をきし、敵の攻撃もないのに独断でこの処置をとったことを知ったが、手遅れだった。その頃国防省の最高作戦室では、大統領(ピーター・セラーズ)を中心に軍部首脳と政府高官が事態の処理をめぐって激論を交わしていた。議長のタージッドソン将軍(ジョージ・C・スコット)は時間の緊迫を訴え、編隊の呼戻しが不可能な以上、全力をあげソ連に先制攻撃をかける以外道のないことを説いた。しかし、大統領はソ連大使に事態を説明、撃墜を要請した。だが、1発でも水爆が落ちれば全世界は死滅する。解体は不可能なのだ。米国兵器開発局長官ストレンジラブ博士(ピーター・セラーズ)はこの存在を証明した。同じ頃、大統領の命令をうけたガーノ陸軍大佐指揮下の部隊は基地接収のため交戦中だった。やがて基地警備隊は降伏、司令官は自殺、マンドレークは呼返しの暗号を発見した。ミサイル攻撃を受け、通信機に損傷を受けた、キング・コング少佐(スリム・ピケンズ)の機だけは目標に直進していた……地球上のあらゆる場所を核爆発の閃光が彩っていった…。




8-7. インビクタス 負けざる者たち

監督 クリント・イーストウッド
出演 モーガン・フリーマンマット・デイモンザック・フュナティ
2009年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
名匠クリント・イーストウッド監督による実話をベースにした感動ドラマ。南アフリカ大統領ネルソン・マンデラと同国のラグビー代表チーム主将との人種を超えた友情を描く。

ストーリー
反アパルトヘイト運動により反逆罪として逮捕され27年を監獄で過ごしたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は、釈放後の1994年、遂に南アフリカ共和国初の黒人大統領となる。だが彼は、国民の間に人種差別と経済格差がいまだに残されていることを痛感する。そんな中、スポーツという世界共通言語で国民の意識を変えることができると信じるマンデラは、弱小だった南アフリカ代表ラグビーチームの再建を決意。翌年に自国で開催するラグビー・ワールドカップに向け、マンデラとチームキャプテンのフランソワ・ピナール(マット・デイモン)は、互いに協力していくことを誓う……。




8-8. いつか晴れた日に

監督 アン・リー
出演 エマ・トンプソンアラン・リックマンケイト・ウィンスレット
1995年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
近代英国を舞台に、対照的な性格の良家の姉妹が、結婚をめぐる愛とお金の問題を越えて幸福をつかむまでをコミカルに描いた一編。18世紀の女性作家ジェーン・オースティンが1795年に発表した小説「いつか晴れた日に 分別と多感」(小社刊)の映画化。脚色は、主演もつとめた「キャリントン」 のエマ・トンプソンで、映画の脚本は初挑戦だったにもかかわらず、第68回アカデミー脚色賞を女優として初めて受賞。主要キャストも彼女の人選によるもので、英国を代表する映画・舞台俳優が集結。監督は「ウェディング・バンケット」「恋人たちの食卓」 で、ニューヨーク・インディーズの旗手となった台湾出身の映画作家、アン・リー。エグゼクティヴ・プロデューサーは「サブリナ」 のシドニー・ポラック、製作はポラックのミラージュ・プロの、「愛と死の間で」 でトンプソンと組んだ、「サブリナ」 のリンゼイ・ドラン。製作補はアン・リーの盟友で「推手」 以来、パートナーを組むジェームズ・シェイマス、ローリー・ボーグ。撮影は「フォー・ウェディング」 のマイケル・コールター、音楽は「リトル・プリンセス」 のパトリック・ドイル、美術は「ハワーズ・エンド」 (アカデミー賞受賞)のルチアーナ・アリジ、編集はアン・リーとは全作品で組むティム・スクイアーズ、衣裳は「眺めのいい部屋」 (アカデミー賞受賞)のジェニー・ビーヴァンとジョン・ブライトのコンビがそれぞれ担当。共演は「乙女の祈り」 のケイト・ウィンスレット、「恋する予感」 のアラン・リックマン、「9か月」 のヒュー・グラントほか。第68回アカデミー賞脚色賞受賞(エマ・トンプソン)はじめ、各賞にノミネート。96年度キネマ旬報外国映画ベストテン第10位。

ストーリー
19世紀初頭。イングランド南西部はサセックス州。私園ノーランド・パークの主ヘンリー・ダッシュウッドは臨終の床で、先妻の息子の長男ジョン(ジェームズ・フリート)に、現在の妻ダッシュウッド夫人(ジェンマ・ジョーンズ)と3人の娘たちの世話を託して死ぬ。ジョンは彼女らの世話をしようとするが、強欲な妻のファニー(ハリエット・ウォルター)がそれを阻止、父の遺言は反故に。ファニーはノーランド・パークに乗り込み主人風を吹かせ、ダッシュウッド夫人らを新しい家に追い立てようとする。分別ある長女エリノア(エマ・トンプソン)は礼を尽くすが、多感な次女のマリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)はあからさまに嫌悪の情をみせ、おてんばな三女マーガレット(エミリー・フランソワ)は隠れているばかり。そんな折り、ファニーの弟エドワード・フェラース(ヒュー・グラント)がパークを訪れる。礼儀正しく控え目な彼にエリノアはひかれ、二人はやがて親密な仲に。二人の結婚を夢見るダッシュウッド夫人だったが、ファニーは「貧乏娘が金持ちにたかろうとしている」と彼女を侮辱。怒った夫人は従兄のジョン・ミドルトン卿(ロバート・バーティ)の申し出を受け、彼の小さな別荘バートン・コテージに引っ越すことを決めた。バートン・パークでジョン卿とその義母ジェニングス夫人(エリザベス・スプリッグス)の歓待を受けた母娘は、つましい生活をはじめる。そこへジョン卿の親友で隣人のブランドン大佐(アラン・リックマン)が来訪。大佐はマリアンヌに会うや一目で彼女を愛するようになる。ところがその矢先、彼女の前に“白馬の騎士”が文字通り登場。その若く魅力的な紳士ジョン・ウィロビー(グレッグ・ワイズ)にマリアンヌは虜になる。一方、エリノアはエドワードがコテージを訪れるのを待ったが、音沙汰はない。ある日、ブランドン大佐がダッシュウッド一家をピクニックに招待した日。大佐は急な知らせを受けて、慌ただしくロンドンへ。ウィロビーはマリアンヌに明日重要な話をすると語り、皆はプロポーズを期待。翌日、マリアンヌを残し教会へ行った一家が戻ると、泣きじゃくるマリアンヌの姿が……。ウィロビーは理由を言わず、資産家の叔母レディー・アレンの言いつけでロンドンに戻ると逃げるように去った。一方、エリノアはジェニングス夫人の姪で、夫人の娘夫婦シャーロット(イメルダ・スタウントン)とパーマー氏(ヒュー・ローリー)と滞在中の令嬢ルーシー・スティール(イモジェン・スタップス)がエリノアに、自分は5年前からエドワードの婚約者だと打ち明け、秘密を守ることを約束させられた。沈む姉妹をジェニングス夫人がロンドンに招待。ところがロンドンに着いても、マリアンヌの再三の手紙にもかかわらず、ウィロビーから音沙汰はない。姉妹は舞踏会でウィロビーに再会。しかし彼はマリアンヌによそよそしいばかりか別の貴婦人の方へ歩み去る。エリノアもジェニングス夫人のお膳立てでエドワードに会えるはずが、ファニーが連れて来たのは末の弟のロバートだった。マリアンヌはウィロビーからの別れの手紙で、彼が持参金つきの娘と結婚すると知って絶望の淵に。彼女の身が心配なエリノアは、帰郷するためブランドン大佐に助けを求める。大佐はエリノアに驚くべき事実を話す。大佐には亡くなった恋人の私生児ベスがおり、何と彼女ははウィロビーの子を妊娠したというのだ。これで彼は叔母の遺産の相続権を失い、マリアンヌを諦め、財産ある娘との結婚を決めたのだ。エリノアはすべてをマリアンヌに伝えた。一方、ルーシーは舞踏会でロバートと意気投合、ファニーとも知己を得たとエリノアに報告に来る。そこへ偶然エドワードが来訪。しかし再会を喜び合う間もなく、エドワードはルーシーと去り、エリノアは黙ってそれを見送る。夢見心地のルーシーは、ファニーに意中の人を告白。ところがファニーは逆上、「性悪女!」とルーシーを追い出す。ジェニングス夫人はエドワードが母親の命令であるルーシーとの婚約破棄を拒否したため、財産の相続権を失ったというニュースを姉妹に伝える。エリノアが二人の婚約を知っていたことを姉の表情からマリアンヌは直感。辛い思いを初めてエリノアは初めて打ち明ける。一方、ブランドン大佐はエドワードの苦境を知って、自分の領地の提供を申し出、頼まれたエリノアは辛さを隠して、エドワードに大佐の言葉を伝える。やがて二人は帰郷の途に。パーマー夫妻の屋敷に滞在中、マリアンヌはウィロビー邸をのぞむ丘で悲しみに浸る。嵐に打たれ、倒れていた彼女を見つけたのは大佐だった。重い流感にかかったマリアンヌを必死で看病するエリノア。大佐はいてもたってもいられず、エリノアの頼みでダッシュウッド夫人を連れに行く。マリアンヌは一命をとりとめ、苦しい息で大佐に初めて礼を言う。春。健康を回復したマリアンヌの傍らには、いつも彼女に愛情を注ぐ大佐がいた。そこへ突然、エドワードがやって来る。結婚の噂を聞いていた一家はエドワードに新婚生活をたずねる。ところが驚いたことに、エドワードはまだ結婚していなかった。ルーシーはロバートに愛を移して、彼と結婚したのだ。あまりのことにすすり泣くエリノアに、エドワードははじめて愛を告白した……それから間もなく。ブランドンとマリアンヌ、エドワードとエリノアの二組の結婚式がバートンの教会で行われた。




8-9. 日の名残り

監督 ジェームズ・アイヴォリー
出演 アンソニー・ホプキンスエマ・トンプソンジェームズ・フォックス
1993年・アメリカ(コロンビア トライスター映画)

解説
英国の名門家に一生を捧げてきた老執事が自身の半生を回想し、職務に忠実なあまり断ち切ってしまった愛を確かめるさまを描いた人間ドラマ。原作は、英国在住の日本人作家カズオ・イシグロ(石黒一雄)がTVドラマ用の脚本を改稿した同名小説(中央公論社)。主演のアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソン、監督のジェームズ・アイヴォリー、脚本のルース・プローワー・ジャブヴァーラ、製作のイスマイル・マーチャント、撮影のトニー・ピアース・ロバーツ、音楽のリチャード・ロビンス、美術のルチアーナ・アリジ、編集のアンドリュー・マーカス、衣装のジェニー・ビーヴァンと、92年カンヌ国際映画祭受賞作「ハワーズ・エンド」 のキャスト、スタッフが再結集。そのほかのスタッフは、共同製作に「ハリウッドにくちづけ」 のコンビ、マイク・ニコルズとジョン・コーリー、エクゼクティヴ・プロデューサーにポール・ブラッドリーら。共演は「パトリオット・ゲーム」 のジェームズ・フォックス、「ある日どこかで」 のクリストファー・リーヴ、「赤い航路」 のヒュー・グラントほか。

ストーリー
1958年。オックスフォードのダーリントン・ホールは、前の持ち主のダーリントン卿(ジェームズ・フォックス)が亡くなり、アメリカ人の富豪ルイス(クリストファー・リーヴ)の手に渡っていた。かつては政府要人や外交使節で賑わった屋敷は使用人もほとんど去り、老執事スティーヴン(アンソニー・ホプキンス)の手に余った。そんな折、以前屋敷で働いていたミス・ケントン(エマ・トンプソン)から手紙をもらったスティーヴンは彼女の元を訪ねることにする。離婚をほのめかす手紙に、有能なスタッフを迎えることができるかもと期待し、それ以上にある思いを募らせる彼は、過去を回想する: 。38年、スティーヴンスは勝気で率直なミス・ケントンをホールの女中頭として、彼の父親でベテランのウィリアム(ピーター・ヴォーン)を執事として雇う。スティーヴンはケントンに、父には学ぶべき点が多いと言うが老齢のウィリアムはミスを重ねる。ダーリントン卿は、第二次大戦後のドイツ復興の援助に力を注ぎ、非公式の国際会議をホールで行う準備をしていた。会議で卿がドイツ支持のスピーチを続けている中、病に倒れたウィリアムは死ぬ。36年、卿は急速に反ユダヤ主義に傾き、ユダヤ人の女中たちを解雇する。当惑しながらも主人への忠誠心から従うスティーヴンに対して、ケントンは卿に激しく抗議した。2年後、ユダヤ人を解雇したことを後悔した卿は、彼女たちを捜すようスティーヴンに頼み、彼は喜び勇んでこのことをケントンに告げる。彼女は彼が心を傷めていたことを初めて知り、彼に親しみを感じる。ケントンはスティーヴンスへの思いを密かに募らせるが、彼は気づく素振りさえ見せず、あくまで執事として接していた。そんな折、屋敷で働くベン(ティム・ピゴット・スミス)からプロポーズされた彼女は心を乱す。最後の期待をかけ、スティーヴンに結婚の決めたことを明かすが、彼は儀礼的に祝福を述べるだけだった: 。20年ぶりに再会した2人。孫が生まれるため仕事は手伝えないと言うケントンの手を固く握りしめたスティーヴンは、彼女を見送ると、再びホールの仕事に戻った。




8-10. 愛情物語

監督 ジョージ・シドニー
出演 タイロン・パワーキム・ノヴァクジェームズ・ホイットモア
1955年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
1930年から20年間にわたり甘美な演奏で全米を風靡した音楽家エディ・デューチンを主人公とした映画で、デューチンと親交のあったレオ・カッチャーがオリジナル・ストオリイを執筆し、サム・テイラーが脚色し、「ショーボート」「悲恋の王女エリザベス」 のジョージ・シドニーが監督、「野郎どもと女たち」 のハリー・ストラドリングが撮影、音楽は「ピクニック」 のモリス・ストロフが担当している。なお、この映画の中のピアノ演奏は名手カルメン・キャヴァレロが吹き込んでいる。主演は「長い灰色の線」 のタイロン・パワー、「ピクニック」 のキム・ノヴァク、新人ヴィクトリア・ショウなど。

ストーリー
ピアニストとして身をたてるべく、エディ・デューチン(タイロン・パワー)は有名なセントラル・パーク・カジノのオーケストラの指揮者ライスマンを訪れた。かつてデューチンがパークシャの避暑地で演奏している時、ライスマンから賞賛されたからだ。しかしいくらライスマンでもすぐ就職させるわけにはいかなかった。当てがはずれてしょげかえったデューチンは、ふとグランド・ピアノが目にとまり、淋しい気持ちでピアノを弾き出す。ところがその調べを聞き入る1人の令嬢、大資産家の姪マージョリイ・オルリックス(キム・ノヴァク)が、事情を聞いて同情し、ライスマンに、オーケストラ演奏の合間にデューチンのピアノ演奏を入れてくれるように頼んだ。ライスマンは大切な客の彼女の申し入れを2つ返事で承諾する。このようなことからデューチンは楽壇に出ることができるようになり、2人の間も発展する。2人はやがて叔父夫婦の祝福を受けてめでたく結婚する。しかもデューチンの楽壇での地位は益々重くなり、愛児ピーターが生まれる。デューチンの喜びは大きかった。クリスマスの夜、演奏が終えてマージョリイが入院している病院にかけつけたデューチンは彼女が重態であることを知る。彼女はデューチンが来て間もなく息をひきとる。マージョリー亡き後の彼の落胆は悲惨だった。彼は叔父夫婦にピーターをあずけ、バンドを率いて演奏旅行に出かける。その間に第二次大戦が勃発し、デューチンは海軍に入り、亡妻を一時でもはやく忘れようと軍の演奏関係の仕事を一切断って、軍務に精励する。やがて終戦となり、ニューヨークに帰り、叔父夫婦の家を訪ねる。ピーターは既に10歳になっていた。ところが長い間、面倒を見なかっただけにピーターは彼になついてこない。その反対に英国の戦災孤児の美しい娘チキタ(ヴィクトリア・ショウ)に非常になついていた。しかし間もなく、父子の愛情は音楽を通じて温かいものが流れるようになる。デューチンは昔日の人気をとり戻したが、それと同時にチキタに対して愛情を抱きはじめる。ところがある日、デューチンはピアノの演奏中左手がしびれる。医者の診断を受けたところ白血病で余命いくばくもないと宣告をうける。デューチンはチキタとの結婚に悩んだが、しかし、チキタは結婚を承諾する。デューチンとピーターに対する深い彼女の愛情がそうさせたのだった。チキタとの結婚生活によってデューチンは幸福をとり戻す。が死期は刻々と迫って来る。彼はピーターにそのことを打ち明ける。2人はグランド・ピアノの前に坐り、ピアノを合奏する。そして死期のいよいよ近づいたことを知るデューチンは愛情と死の予想の苦しみに堪えかねて自らの命を断った。




8-11. ある公爵夫人の生涯

監督 ソウル・ディブ
出演 キーラ・ナイトレイレイフ・ファインズシャーロット・ランプリング
2008年・イギリス、イタリア、フランス(パラマウント ピクチャーズ ジャパン)

解説
18世紀末の英国を舞台にした歴史ドラマ。故ダイアナ妃の直系の祖先にあたる実在の公爵夫人のスキャンダラスな生き様を、きらびやかな映像で語り明かす。

ストーリー
18世紀後半のイギリス。貴族の娘ジョージアナ・スペンサー(キーラ・ナイトレイ)の結婚が決まる。相手は裕福な貴族、デヴォンシャー公爵(レイフ・ファインズ)。母レディ・スペンサー(シャーロット・ランプリング)から婚礼のことを聞かされ、新生活に胸を弾ませるジョージアナ。だが、その期待はすぐに裏切られる。歳の離れた夫の関心事は後継者の男子の誕生だけで、彼女には愛情を示さなかったのだ。それでも公の場では公爵夫人として振る舞うジョージアナは、斬新なファッションや聡明な人柄で人々を魅了。カリスマ公爵夫人として人気を集めるが、家庭への不満は積もるばかり。生まれる子供はすべて娘。夫は娘たちに関心を示さないどころか、愛人の娘の世話まで押し付けてくる。ある日、彼女は離婚歴のあるレディ・エリザベス・フォスター(ヘイレイ・アトウェル)と出会い、意気投合。2人は親友となる。だが、その関係もすぐに終わりを告げる。公爵がエリザベスを愛人に選んだのだ。ショックを受けるジョージアナ。屋敷では3人の奇妙な生活が始まる。こうした苦しみに耐えながら、ジョージアナはついに男の子を出産。やがて彼女の前に若く情熱的なチャールズ・グレイ(ドミニク・クーパー)が現れる。一途な想いをぶつけてくるチャールズにジョージアナは心を奪われ、2人は恋に落ちる。それはたちまちスキャンダルに。公爵と母の説得を受けるジョージアナ。娘たちのこともあり、チャールズとの関係を諦めざるを得なかった。その直後、彼女はチャールズの子供を出産する。公爵邸で育てることは許されず、生まれた赤ん坊はグレイ家に引き渡された。チャールズや赤ん坊との辛い別れに傷ついたジョージアナに、公爵は初めて夫らしい優しさを見せる。こうして彼女は40代で生涯を終えるまで、華やかな公爵夫人としてロンドン中の人々に愛され続けた。そして、公爵とエリザベスは彼女の死後、正式に結婚した。




8-12. エマ

監督 ダグラス・マクグラス
出演 グウィネス・パルトロウトニ・コレットアラン・カミング
1996年・イギリス(松竹富士配給)

解説
イングランドの片田舎を舞台に、恋のキューピッドを任じる世間知らずのお嬢様が巻き起こす恋の騒動を描いた人間喜劇。「いつか晴れた日に」 の原作者として知られる英国の女流作家ジェーン・オースティン(1775〜1817)の同名長編小説を、「ブロードウェイの銃弾」 の脚本家で、本作が初監督作となるダグラス・マクグラスの脚本・監督で映画化。製作総指揮は「イングリッシュ・ペイシェント」 のボブとハーヴェイのワインステイン兄弟と、ドナ・ジグリオッティ。英国はドーセット州の田園地方をとらえた美しい撮影は「あなたがいたら 少女リンダ」 のイアン・ウィルソン、音楽は「3人のエンジェル」 のレイチェル・ポートマン、美術は「オルランド」 「プリンセス・カラブー」(V)のマイケル・ハウェルズ、衣裳は「キルトに綴る愛」 のルース・マイヤーズ。チャーミングな好演を見せた主演は「セブン」「ムーンライト&バレンチノ」 のグウィネス・パルトロウ。共演は「ザ・インターネット」 のジェレミー・ノーザム、「ミュリエルの結婚」 のトニ・コレット、「トレインスポッティング」 のユアン・マクレガー、「恋の闇 愛の光」 のポリー・ウォーカー、「ザ・プレイヤー」 のグレタ・スカッキ、「サークル・オブ・フレンズ」 のアラン・カミング、「トライアル 審判」 のジュリエット・スティーヴンソンほか。

ストーリー
エマ・ウッドハウスは美しく、機知に富む女性である。母が亡くなり姉が結婚して家を出て行った後、父と2人で暮らしている。 ウッドハウス家の家庭教師を16年務めたアナ・テーラーは、ウェストンに嫁いだ。ウェストン氏にテーラーを紹介したのはエマで、自らが恋の仲介役であることを知る。するとエマは、友人であるハリエット・スミスを牧師のエルトンと結び付けようとするが、エルトンが結婚しようとしているのが自分だと知り、この計画は失敗する。 ウェストンの前妻との子であるフランク・チャーチル、ウッドハウス家の隣人ベイツの姪であるジェーン・フェアファクスが登場する。チャーチルには好感を持ったエマだったが、ジェーンとは馬が合わない。エマは、今度はチャーチルとハリエットをくっつけようとするが、エマがミス・ベイツを侮辱してしまったためにナイトリーにたしなめられ、自らの欠点を認識する。 ハリエットは当初エマによって結婚を拒絶したロバート・マーティンと結ばれ、エマはナイトリーと結婚する。




8-13. エリザベス

監督 シェーカル・カプール
出演 ケイト・ブランシェットジェフリー・ラッシュジョセフ・ファインズ
1998年・イギリス(日本ヘラルド映画)

解説
イングランドの女王エリザベス一世の数奇な半生を描く歴史大作。監督は「女盗賊プーラン」 のシェカール・カブール。脚本は「ミーティング・ビーナス」 のマイケル・ハースト。製作は「ビッグ・リボウスキ」 のティム・ビーヴァンとエリック・フェルナー、「ロザンナのために」 のアリソン・オーウェン。撮影は「スライディング・ドア」 のレミ・エイドファラシン。音楽は「シャイン」 のデヴィッド・ハーシュフェルダー。美術は「キャメロット・ガーデンの少女」 のアレクサンドラ・バーン。衣裳は「ハムレット」 のアレクサンドラ・バーン。出演は「オスカーとルシンダ」 のケイト・ブランシェット、「恋におちたシェイクスピア」 のジョセフ・ファインズとジョフリー・ラッシュ、「ペダル・ドゥース」 のファニー・アルダンほか。

ストーリー
16世紀のイングランド。国内では旧教・カトリックと新教・プロテスタントが争っていた。ときの女王メアリー(キャシー・バーク)はプロテスタントを弾圧、新教派のエリザベス(ケイト・ブランジェット)もロンドン塔に投獄されてしまう。しかし、ほどなくメアリー女王は他界。1558年、エリザベスに王位が継承される。新しい女王に、フランスのアンジュー公(ヴァンサン・カッセル)、スペイン王との結婚話が持ち上がるが、エリザベスは恋人のロバート(ジョセフ・ファインズ)と逢い引きを重ねていた。国内の財政は苦しく、スコットランドとの戦争にも敗れたイングランド。エリザベスは新教派のウォルシンガム(ジョフリー・ラッシュ)を味方につけ、国を新教に統一することを決定。これを怒ったローマ法王は英国に密使を送る。ウォルシンガムは不穏な動きを抑えるため、スコットランド女王メアリー(ファニー・アルダン)を暗殺。臣下たちは結婚により身を守るようエリザベスに薦め、ロバートにはすでに妻がいることを告げる。国内では旧教派のノーフォーク卿(クリストファー・エクルストン)が法王と結託し反撃に出ようとしていた。意を決したエリザベスはローマからの密使を探し出し、ノーフォーク卿をはじめとする旧教派を一網打尽にする。愛に破れ祖国と生きることを決意したエリザベスは、人々の前で「私は国家と結婚します」と宣言するのだった。




8-14. はるか群衆を離れて

監督 ジョン・シュレシンジャー
出演 ジュリー・クリスティテレンス・スタンプピーター・フィンチ
1967年・イギリス(MGM)

解説
イギリスの文豪トマス・ハーディの小説を「いつも2人で」 のフレデリック・ラファエルが脚色、「ダーリング」 のジョン・シュレシンジャーが監督した十九世紀のイングランド南部を背景にした女性ドラマ。撮影は「ローマで起った奇妙な出来事」 のニコラス・ローグ、音楽は「妖婆の家」 のリチャード・ロドニー・ベネットが担当した。出演は「ダーリング」 のジュリー・クリスティ、「唇からナイフ」 のテレンス・スタンプ、「夏の夜の10時30分」 のピーター・フィンチ、「まぼろしの市街戦」 のアラン・ベイツほか。製作は「或る種の愛情」「唇からナイフ」 のジョゼフ・ジャンニ。メトロカラー、パナビジョン70ミリ。

ストーリー
イングランドの南部ウェセックス地方は、豊かな牧羊地だった。牧羊農民のゲイブリエル(A・ベイツ)は、隣人のバスシーバ(J・クリスティ)に結婚を申し込んだが、きっぱりと断わられた。その後ゲイブリエルは、すべての羊を失い、一介の羊飼いとして、ある農場に雇われた。ところがこの農場の主人はバスシーバだった。伯父の死で農場を受けついだというのだ。この農場にはファニーという女中がいて、彼女は評判のよくないプレイボーイの軍曹トロイ(T・スタンプ)と結婚することになっていた。結婚式当日。彼女は教会に来るのが遅れ、トロイの怒りをかって、この話は立ち消えになった。バスシーバの隣人にボールドウッド(P・フィンチ)という豪農の独身男がいた。バスシーバが、からかい半分に恋文を送ると、彼の方は本気になってしまい、結婚を申し込んできた。しかしバスシーバの心を深くとらえていたのはトロイだった。やがて二人は結婚した。しばらく後、ファニーが死に、彼女の死はトロイの心に深い悲しみと悔いを残した。そしてトロイは、どこへともなく去っていった。消息のない彼を、人々は死んだものと思うようになった。そして再びボールドウッドがバスシーバに求婚してきた。男の熱意に負けて彼女もこれを受けいれ、盛大なパーティが開かれた。その夜、トロイは帰ってきた。ボールドウッドの銃が火をふきトロイは倒れた。夫に取りすがり、気違いのように彼の名を呼びつづけるバスシーバ。ボールドウッドは獄舎につながれる身となった。それから八ヵ月。夫の墓の前で、バスシーバはゲイブリエルに会った。彼はカリフォルニアに発つため、別れを告げに来たのだ。長い間、一緒に働いていた人、というより、彼女にとってゲイブリエルは、もはやなくてはならない人だった。ずっと昔、求婚を断って以来、何年になるだろう。しかし、彼の変らない誠実な愛が、彼女の胸の中で大きく広がっていくのだった。




8-15. めぐり逢えたら

監督 ノーラ・エフロン
出演 トム・ハンクスメグ・ライアンビル・プルマン
1993年・アメリカ(コロンビア トライスター映画)

解説
目前の幸せに迷うキャリアウーマンと、愛する妻に先立たれたシングルファーザーの運命的な恋を描いた、ハートフルな恋愛ドラマ。監督・脚本は「恋人たちの予感」 などで脚本家として活躍し、「ディス・イズ・マイライフ」 で監督に進出したノーラ・エフロン。ジェフ・アーチの原案を、アーチとエフロン、「スティング」 のデイヴィッド・ウォードが共同で脚色。製作は「ショート・サーキット2 がんばれ!ジョニー5」 のゲイリー・フォスター。エグゼクティヴ・プロデューサーは「フィッシャー・キング」 のリンダ・オスト。撮影は「チャーリー」 のスヴェン・ニクヴィストが担当。「スターダスト」 などのスタンダード曲を散りばめた音楽は「ア・フュー・グッドメン」 のマーク・シャイマン。また、レオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント主演1957年の名作「めぐり逢い(1957)」 がドラマ全体のモチーフとなっているのをはじめ、「打撃王」「特攻大作戦」 などに言及した映画ネタが随所に盛り込まれているのも見どころのひとつ。主演は「キスへのプレリュード」 のメグ・ライアンと「プリティ・リーグ」 トム・ハンクス。共演は「ジャック・サマースビー」 のビル・プルマン、「プリティ・リーグ」 のロージー・オドネル、ハンクス夫人のリタ・ウィルソン、「007消されたライセンス」 のレーリー・ローウェル、「ア・フュー・グッドメン」 の監督、ロブ・ライナーなど。なお、日本での上映に当たり、ポップスグループ、ドリームズ・カム・トゥルーの短編映画「WINTER SONG」 (監督ジュリアン・テンプル)がオープニング映画として併映された。

ストーリー
ボルチモアの新聞記者アニー・リード(メグ・ライアン)は、カーラジオで偶然聞いた番組に心ひかれた。それはリスナー参加のトーク生番組で、シアトルに住む8歳の少年ジョナー・ボールドウィン(ロス・マリンジャー)が「落ち込んでるパパに新しい奥さんを」といじらしいまでに切々と訴えていた。続いて電話口に出た父親サム・ボールドウィン(トム・ハンクス)の声が、彼女の胸に響いた。建築技師のサムは、1年半前に妻に先立たれてからのやるせない心境を淡々と語り出し、孤独で眠れぬ夜もあると告白する声にもらい泣きするアニー。その時から彼女の内部で何かが変わった。婚約者のウォルター(ビル・プルマン)を相手にしても楽しくない。一方、サムは仕事仲間のジェイ(ロブ・ライナー)が心配して、女性との積極的な交際をアドバイスされる。やがてサムこそ自分にとって最もふさわしい相手だと信じたアニーは、ジョナに手紙を書き、データベースでサムのことを調べ始める。そんなアニーに同僚のベッキー(ロージー・オドネル)はあきれながらも見守る。サムは友人たちの紹介でビクトリアという女性とデートするが、ジョナはお気にめさない。パパにふさわしいのはアニーだけだと考えたジョナはラジオを通じて彼女に呼びかける。アニーはシアトルに向かうが、お互いの顔を知らない彼女とサムは幾度かすれ違っただけだった。バレンタイン・デーに、ニューヨークのエンパイヤ・ステート・ビルの展望台でのめぐり逢いの約束するメッセージをサムに送ったアニー。ジョナも「会ってあげて」と頼むが、耳を貸さないサム。親子の仲は一気に悪化し、ジョナはアニーとの約束を果たすため単身ニューヨークに向かう。あわてて追いかけるサム。そのころ、エンパイヤ・ステート・ビルを望むレストランでは、アニーがウォルターに婚約解消を告げてた。彼女はやはりサムのことが気になって仕方なく、入口が閉まりかかったエンパイヤ・ステート・ビルの屋上に登らせてもらう。そこにサムとジョナがいた。初めてアニーは何度か顔を合わせ、気を魅かれた彼がシアトルの男だったとわかり、二人は手に手を取ってビルを後にするのだった。




8-16. 悪の花園

監督 ヘンリー・ハサウェイ
出演 ゲイリー・クーパースーザン・ヘイワードリチャード・ウィドマーク
1954年・アメリカ(20世紀フォックス[極東]会社)

解説
ナイアガラ」 のチャールズ・ブラケットが1954年に製作したメキシコ辺境もの。フレッド・フリーバーガー、ウィリアム・タンバーグ合作のオリジナル・ストーリーを「帰らざる河」 のフランク・フェントンが脚色、「炎と剣」 のヘンリー・ハサウェイが監督した。撮影は「ディミトリアスと闘士」 のミルトン・クラスナーとホルヘ・スタール、音楽は「十二哩の暗礁の下に」 のバーナード・ハーマンの担当。「楽園に帰る(1953)」 のゲイリー・クーパー、「ディミトリアスと闘士」 のスーザン・ヘイワード、「街の野獣(1950)」 のリチャード・ウィドマーク、「街の野獣(1950)」 のヒュー・マーロウ、「地獄と高潮」 のキャメロン・ミッチェル、歌手のリタ・モレノ、「狂熱の孤独」 のヴィクトル・マヌエル・メンドーサらが出演している。

ストーリー
1850年。カリフォーニアの黄金を目指す3人の男、元保安官フッカー(ゲイリー・クーパー)、イカサマ賭博師フィスク(リチャード・ウィドマーク)、やくざデイリー(キャメロン・ミッチェル)を乗せた船が修理のためメキシコのある漁港に着いた。3人は酒場でアメリカ女リー(スーザン・ヘイワード)に会い、落磐で金坑内でカン詰になっている彼女の夫ジョンを救うため同行してくれと頼まれた。これにメキシコ人ヴィセンテが加わり、女1人男4人がカリフォーニアへ陸路の旅をはじめた。彼女は金坑への道を記した地図を誰にも見せなかった。インディアンが出没する危険地帯に入ったとき、リーは男たちに腰抜けは今のうちに引き返せと言って度胆を抜いた。ある夜リーに挑んだデイリーは彼女に手ひどく殴られた。金坑はインディアンンの聖地「悪の園」の中にあった。一行はインディアンの目を盗んで金坑に辿りつき、ジョンを救出してすぐ引き揚げることになった。負傷したジョンは馬に乗って離脱したが、インディアンに捕らえられて張りつけにされた。デイリーもヴィセンテもインディアンに倒された。フッカーとフィスクはカードでインディアンを食い止める役を決めた。結局フィスクが勝ち、敗けたフッカーがリーを連れて逃げることとなった。2人が安全地帯に着いたとき、フッカーはフィスクのイカサマに負けたのだといって1人で引き返していった。フィスクと別れた峠に戻ると、彼はインディアンを撃退したがもう死に瀕していた。彼は自らを犠牲にしてリーを助けたのだった。




8-17. 荒野のガンマン

監督 サム・ペキンパー
出演 モーリーン・オハラブライアン・キーススティーヴ・コクラン
1961年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
アメリカ各地の興行者が集まってプロデュースした西部劇の異色作で、製作はチャールズ・B・フィッツ・シモンズ、脚本はアーロン・シドニー・フライシュマンが自作の小説から脚色したもの。演出は興行会からおされたサム・ペキンパー、撮影は「アラモ」 のウィリアム・H・クローシア、音楽はピーター・ツィンナーが担当。出演は「罠にかかったパパとママ」 のモーリン・オハラ、ブライアン・キース、スティーヴ・コクラン、チル・ウィルスなど。

ストーリー
南北戦争も終わった数年後北軍に従軍したイエローレッグ(ブライアン・キース)は1人の南軍兵士を探し歩いていた。戦場で負傷した時、この南軍兵は酔った勢いで彼の頭を剥ごうとしたのだ。彼の頭にはまだ傷が残っているのだ。彼はある酒場で私刑にされようとしている男ターク(チル・ウィルス)を救って愕然とした。タークの手首には彼がつけた歯形がくっきり残っていた。イエローレッグは自分の手でタークを殺そうとして彼を助けた。タークには拳銃気違いの相棒ビリーがついていた。3人は早速、チームを組んだ。そしてヒーラー町のある銀行を襲うことにした。その町に着いた3人は、ダンスホールに働くキット(モーリン・オハラ)と知り合いになった。彼女にはミードという9歳の男の子があった。その晩、3人が襲おうとした銀行を他の無法者たちが襲撃した。怒った3人は保安官側につき激しい撃ち合いが起こった。その時、イエローレッグの弾丸はキットの息子ミードに命中してしまった。全くの不幸な偶然だった。キットは町の人々から売笑婦扱いをされていた。そんな関係から、キットはシリンゴ町にミードを埋めると言い張った。そこには夫の墓があるというのだ。しかしシリンゴ町は、今は廃墟と化し、途中の草原にはアパッチ族が群れをなしていた。イエローレッグはせめてもの償いに護衛を申し出るが彼女はそれを許さず1人で出発していった。イエローレッグはビリーとタークを伴って彼女の馬車を追った。その後、ビリーがキットに襲いかかったのを見たイエローレッグはビリーを一行から追い払った。タークもビリーの後を追って去ってしまった。そんな折、アパッチに馬を持ち去られた2人は、徒歩でようやくシリンゴへたどり着いた。そこへ再びビリーとタークが現れた。彼らはヒーラー町へ引き返し、銀行から金を奪いシリンゴへやって来たのだ。ビリーは、イエローレッグに拳銃を渡し、もはや無用となったタークを殺すよう言いつけた。イエローレッグの殺人を止めるため、キットは愛を打ち明けたが、黙ってタークから受けた頭の傷を見せるだけだった。タークに対する憎悪をこめてイエローレッグの拳銃が火を吹いた。だが弾はそれ、見かねたビリーはタークを撃ち次にイエローレッグを狙った。タークは残る力をふりしぼり拳銃の引き金を引いた。倒れるビリー。必死に逃げようとするタークを追ったイエローレッグは、5年前の事件を話し終えると彼の頭をはごうとした。夢中でとめるキット。やがて2人は美しい日没に向かって馬を走らせた。




8-18. ガン・ファイター

監督 ロバート・アルドリッチ
出演 ロック・ハドソンカーク・ダグラスドロシー・マローン
1961年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
流れ者のカウボーイと保安官の対決を主軸とした西部劇。ハワード・リグスビーの原作小説「クレイジー・ホースの落日」をダルトン・トランボが脚色、ロバート・アルドリッチが監督した。撮影を受け持ったのはアーネスト・ラズロ。音楽はアーネスト・ゴールドが担当している。出演するのは「スパルタカス」 のカーク・ダグラス、「夜を楽しく」 のロック・ハドソンの他、ジョセフ・コットン、キャロル・リンレイ、ドロシー・・マローン、ネヴィル・ブランドなど。製作はユージン・フレンクとエドワード・ルイス。

ストーリー
南部の退役軍人ジョン・ブレッケンリッジ(ジョセフ・コットン)は妻ベル(ドロシー・マローン)と娘ミッシー(キャロル・リンレイ)をつれ1000頭の牛とともにメキシコの牧場を去りテキサスに行こうとした。牧畜に失敗した彼はテキサスで新生活をしようとしたのである。そこに兇状持ちのブレンダー・オマリー(カーク・ダグラス)が昔の恋人ベルをたずねてやってきてカウボーイとして牛の移動を手伝うことになった。オマリーを追う保安官ダナ・ストリブリング(ロック・ハドソン)も後をつけてやってきて逮捕をテキサスまでのばして牛追いに雇われた。一行は出発した。ある町でブレッケンリッジは旧南軍兵士とごたごたを起こし、射殺されて死んだ。ミッシーが男らしいオマリーにひかれたり、ベルとストリブリングが親しくなったりしながら旅はつづく。途中、インディアンが一行を狙ったが、ストリブリングが牛の1部をインディアンに与えて危機をのりこえた。砂漠で砂嵐に出会った時、3人組の牧夫がベルとミッシーをさらった。ストリブリングとオマリーは危ういところで2人を助けた。旅の間中、オマリーはベルの愛を求め、ストリブリングも彼女に求婚した。ベルは困惑した。やがて一行はリオグランデ河に出た。途河前夜のパーティの晩、母の黄色いドレスを着たミッシーは歌をうたった。思い出のドレスを母に似たミッシーがつけているのを見たオマリーの心は燃えた。翌日の渡河の最中、ストリブリングとオマリーは2日後の落日の決闘を約束した。牛群が無事アメリカ領に運び込まれた日、ベルはオマリーにミッシーから手を引くようにいい、娘はオマリーの子なのだと告白した。オマリーは驚き、そして苦悩した。約束の落日の時刻に、ストリブリングとオマリーは牛囲いの前で対決した。銃声がひびきわたり、倒れたのはオマリーだった。そして死んだオマリーの中には弾丸がつめてないのが発見された。地上に坐ったミッシーはミッシーは目に涙を浮かべながら、ひざの上にのせたオマリーの頭をかかえ、やさしく髪をなでた。




8-19. カラマーゾフの兄弟 第1部

監督 イワン・プイリエフ
出演 ミハイル・ウリヤーノフキリール・ラヴロフアンドレイ・ミヤフコフ
1968年・ ソ連(東和)

解説
文豪ドストエフスキーの名作を「白痴(1958)」 のイワン・プィリエフが脚色・監督した文芸大作。撮影はセルゲイ・ウロンスキー、音楽はイサーク・シュワルツ、美術をスターレン・ボルコフが担当している。出演はミハイル・ウリヤーノフ、「怒りと響きの戦場」 のキリール・ラヴロフ、アンドレイ・ミヤフコフ、リオネラ・プィリエワ、スヴェトラーナ・コルコーシコなど。なお、完成間近かでプィリエフ監督が急逝のため、ミハイル・ウリヤーノフとキリール・ラヴロフが後をひきつぎ完成した。

ストーリー
五十を過ぎてもなお、肉欲にとりつかれているフョードル・カラマーゾフ。親譲りの性格により、予備大尉の身を放縦な毎日に埋没させている、長男ドミトリー(M・ウリヤノフ)、神を否定する大学出の秀才の次男イワン(K・ラヴロフ)、清純な魂と深い信仰を持つ三男アリョーシャ(A・ミヤフコフ)。カラマーゾフ家には、激しい葛藤があった。特に、ドミトリーが婚約者カテリーナがありながら、ある老商人の世話になっているグルーシェンカ(L・プィリエワ)に惹かれ、そのグルーシェンカが借金に苦しんでいるのを幸いに、父フョードルが自分のものにしようとしているので、二人の対立は大変だった。一方カラマーゾフ家の召使いのスメルジャコフは、昔フョードルが乞食女に産ませた子供で、彼は父を憎み、他の兄弟に嫉妬していた。彼は前からイワンに近づいていたが、しきりにイワンにモスクワ行きを勧めて、行かせた。ドミトリーは、グルーシェンカのために金の工面に奔放したが、都合はつかなかった。ついに彼は、スメルジャコフの手びきにより、父親を殺した。そして逮捕された。実は犯人はスメルジャコフだったのが、彼は自殺してしまい決定的な証言もないまま、裁判は進行した。アリョーシャの証言もグルーシェンカの愛情も役にはたたなかった。彼はシベリア送りと決定した。雪の広野を行く囚人の一行。その後を、行く一台のソリ。ドミトリーとの愛に生きる決心をしたグルーシェンカだった。...




8-20. カラマーゾフの兄弟 第2部

監督 イワン・プイリエフ
出演 ミハイル・ウリヤーノフキリール・ラヴロフアンドレイ・ミヤフコフ
1968年・ ソ連(東和)

解説


ストーリー





8-21. カラマーゾフの兄弟 第3部

監督 イワン・プイリエフ
出演 ミハイル・ウリヤーノフキリール・ラヴロフアンドレイ・ミヤフコフ
1968年・ ソ連(東和)

解説


ストーリー





8-22. さよならをもう一度

監督 アナトール・リトヴァク
出演 イングリッド・バーグマンイヴ・モンタンアンソニー・パーキンス
1961年・アメリカ(ユナイテッド・アーチスツ映画)

解説
「旅」 のアナトール・リトヴァクが監督・製作した恋愛心理ドラマ。フランソワーズ・サガンの原作をサム・テイラーが脚色した。撮影はアルマン・ティラール。音楽はジョルジュ・オーリック。出演するのはイヴ・モンタン、イングリッド・バーグマン、アンソニー・パーキンスなど。

ストーリー
トラック販売会社の重役ロジェ・デマレ(イヴ・モンタン)と室内装飾家のポーラ(イングリッド・バーグマン)は5年来の恋仲。2人とも中年だがまだ十分に魅力がある。ところがロジェは最近、仕事が忙しくパリに住むアメリカ人の富豪バンデルベッシュ夫人の邸の室内装飾にポーラを推薦すると彼女を同行しながら自分は先に帰ってしまった。1人で夫人を待つポーラの前に夫人の1人息子フィリップ(アンソニー・パーキンス)が現れた。以来、25歳の熱い思いをささげるようになった。フィリップはポーラとロジェの仲が単なる恋愛関係で結婚していないことを探り出した。一方ロジェは、ポーラとの約束を取り消して他の女と旅行に出た。それをフィリップが目撃した。やがてフィリップはポーラのアパートで暮らすようになった。ロジェは2人の情事を知った。彼女を愛していながら彼には腹立たしさが先に立った。鋭くポーラを問い詰めたまたま彼女の年のことに言い及んだ。心を傷つけられたポーラはフィリップのもとへ戻っていった。ロジェは酒と女におぼれた。が、2ヵ月後、ナイトクラブで他の女を連れたフィリップを見て心が痛んだロジェはポーラと会い改めて自分の愛を告白した。その夜、ポーラはフィリップに別れ話を持ち出した。あまりにも2人の年が違いすぎる、と。ポーラとロジェは正式に結婚した。だがロジェは相変わらずポーラとの会食をすっぽかす。でも、これでいいのだ、とポーラは安らかに微笑む。




8-23. ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合

監督 トム・シャドヤック
出演 エディ・マーフィジェイダ・ピンケット=スミスジェームズ・コバーン
1996年・アメリカ(UIP)

解説
新開発の薬品の効果で、超肥満体からスリムに変身した大学教授が巻き起こす騒動を描いたコメディ。往年のコメディアン、ジェリー・ルイスの傑作喜劇「底抜け大学教授」 を、「ヴァンパイア・イン・ブルックリン」 のエディ・マーフィ主演(一人七役)でリメイク。監督は「エース・ベンチュラ」 のトム・シャドヤック。脚本はシャドヤック、「ジム・キャリーのエースにおまかせ!」 の監督でもあるスティーヴ・オーデカーク、「星の王子ニューヨークへ行く」「ブーメラン」 のデイヴィッド・シェフィールドとバリー・W・ブラウステインの共同。製作は「アポロ13」 のブライアン・グレイザーと、ラップ・ミュージック界の巨匠で「クラッシュ・グルーブ」(V)などの映画も手掛けるラッセル・シモンズ。エグゼクティヴ・プロデューサーは、ジェリー・ルイス、カレン・ケーラ、マーク・リプスキー。撮影は「エース・ベンチュラ」 のジュリオ・マカット、音楽は「ボーイズ・オン・ザ・サイド」 のデイヴィッド・ニューマン、美術はウィリアム・エリオット、編集は「幸福の条件」 のドン・ジンマーマン、衣裳は「マスク」 のハー・グエン、視覚効果監修はジョン・ファーハット、特殊メイクは「バットマン・フォーエヴァー」 のリック・ベイカーが担当。共演は「ポケットいっぱいの涙」 のジェイダ・ピンケット、「イレイザー」 のジェームズ・コバーンほか。

ストーリー
ウェルマン大学の生物学科教授クランプ(エディ・マーフィ)は温厚で紳士的だが、気弱で痛々しいほどの内気な性格。おまけに身長180cmで180kg という超巨漢のため動くのもやっとで、日々、学部長のリッチモンド(ラリー・ミラー)を悩ますドジを繰り返している。エクササイズ・インストラクターのランス・パーキンスの番組を観てのダイエットも効果なし。そんな彼の前に、化学の入門講座を担当する美人のカーラ(ジェイダ・ピンケット)が現れ、彼女にひと目ぼれしてしまう。その夜、久しぶりに実家に戻った彼は、気難しい父親、優しい母親、脳天気な兄、下ネタが大好きな祖母と、全員が太りすぎであることを再認識。これは家系であり、もはや自分は痩せられないと実感して落ち込んだ彼は、思い切ってカーラの家を訪ね、金曜日の夜にデートする約束を取りつけた。有頂天になるクランプだったが、そのデートで訪れたクラブの毒舌芸人レジー(デイヴ・チャッペル)に太りすぎを徹底的に物笑いにされる。傷ついた彼はついに決意。助手のジェイソン(ジョン・エルス)と共に開発中だったDNAを操作する痩せ薬を自身で実験してみる。すると効果は絶大で、彼は全く別人のようなスリムな男に変身。しかも、性格も陽気でノリもよく、キザなオシャレもハマる。クランプの友人バディ・ラヴと名乗ってカーラに接近した彼は、彼女と例のクラブに行き、今度はレジーを毒舌で攻撃し、完璧にやり込める。しかし、時間が来て痩せ薬の効果が切れ始めたバディは、徐々にクランプの姿に戻った。クランプはバディへの変身を楽しむが、次第にバディの人格がクランプの人格を支配し始める。学部長との約束で富豪のハートリー(ジェームズ・コバーン)と会ったクランプは、バディに変身し、口八丁手八丁でハートリーを圧倒。大学のOB会で痩せ薬の実験を証明すれば1千万ドルを寄付されることに。バディの口のうまさに乗せられた学部長は、クランプに代わりバディを大学に招くことにする。バディのプレイボーイぶりはバディよりクランプを愛していたカーラを傷つけた。クランプはもう痩せ薬は使わないと決心するが、バディの策略にはまり、薬を飲んで彼に変身。OB会に現れて薬の効果を証明するとともに、クランプの人格も消してしまおうとする。だが、その時、クランプの人格が現れ、自分の実験の正当性と1万ドルの寄附金、そしてカーラへの愛を賭けて、バティの人格と対決。1つの肉体を借りて2つの人格が目まぐるしく交互に現れて闘うが、ついにクランプが勝利した。ハートリーは彼の誠実さに感激して寄付することになり、カーラの愛も勝ち得たクランプは、初めて彼女の手を取って踊るのだった。




8-24. ナッティ・プロフェッサー クランプ家の面々

監督 ピーター・シーガル
出演 エディ・マーフィジャネット・ジャクソンラリー・ミラー
2000年・アメリカ(UIP)

解説
 人気コメディアン、エディ・マーフィが180kgのデブ男を演じたヒット作の続編。天才科学者が開発した若返り薬を巡るドタバタ争奪戦を、下ネタも飛び交う過激なギャグ満載で描き出す。

ストーリー
ウェルマン大学のクランプ教授(エディ・マーフィ)は、数年前発明したダイエット秘薬によって自身の中に生まれた“バディ・ラヴ”が自分の体から独立し、一人歩きしているのが悩み。そんなある時、クランプは若返り薬を発明。おまけに同僚の美しい女性デニーズ(ジャネット・ジャクソン)と婚約までしてしまい、二重の喜びを獲得。この幸せを“バディ・ラヴ”に邪魔させることは絶対阻止しなければならぬと、彼を自分の中から追い出す研究を始める。しかし自ら行った人体実験の副作用で知能が低下し始めたり、若返り薬をクランプ家のパパが飲んでしまったりと、事態はどんどんパニックに。しかも薬を“バディ・ラヴ”に盗まれてしまった。クランプは、事態を元に戻すため“バディ・ラヴ”を葬り去ることに全力を傾けるのだった。




8-25. ブリジット・ジョーンズの日記 1

監督 シャロン・マグワイア
出演 レニー・ゼルウィガーヒュー・グラントコリン・ファース
2001年・アメリカ(UIP)

解説
世界中の女性の共感を集めるベストセラー小説を映画化した恋愛コメディ。恋も仕事もうまくいかないロンドン在住のシングルウーマンの本音を、切実かつユーモラスにつづる。

ストーリー
ロンドン。出版社に勤める32歳の独身女性ブリジット(レニー・ゼルウィガー)は、ダイエットと恋愛が目下の関心事。そんな彼女が出版記念パーティーの夜、セクシーな上司ダニエル(ヒュー・グラント)と急接近。しかし、彼はとんだ浮気男で、その浮気相手であるアメリカ人の同僚と婚約してしまった。傷心のブリジットは会社をやめ、リポーターに転職する。やがて友人夫妻に呼ばれた夕食会で、ブリジットは以前紹介されたバツイチの弁護士マーク(コリン・ファース)に再会。彼は恋人連れだったが、ブリジットに好意を示した。そしてブリジットの33歳の誕生日の夜、彼女の家に祝いに来てくれたマークといいムードになるが、そこへ突然ダニエルがやってきて、彼女に許しを乞い、熱烈に愛を告白する。それに激怒したマークは、ダニエルと大ゲンカを繰り広げる。やがてクリスマス。マークの実家のパーティーで、彼の父親が息子の渡米と婚約を発表したが、それを聞いたブリジットは、思わず異議を申し立てる。それをきっかけにブリジットとマークは急接近、めでたく結ばれるのだった。




8-26. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

監督 ビーバン・キドロン
出演 レニー・ゼルウィガーヒュー・グラントコリン・ファース
2004年・アメリカ(UIP)

解説
恋や仕事に奮闘する、独身女性の日常を描いた大ヒット・コメディの続編。前作で恋を成就させたヒロインが、新たな悩みを抱えて迷走する姿に、共感かつ爆笑!

ストーリー
TVレポーターのブリジット・ジョーンズ(レニー・ゼルウィガー)は、弁護士の恋人マーク・ダーシー(コリン・ファース)が出来て幸せの絶頂にいた。気になるのは、最低男のダニエル(ヒュー・グラント)が旅行番組の案内役として人気を博していることと、マークと仲のいい美人の令嬢、レベッカ(ジャシンダ・バレット)の存在。そしてある日、マークの誘いでゴージャスな晩餐会に出席したブリジットは、彼の仕事相手たちの前で失態を晒してしまい、マークとの仲がこじれる。レベッカへのコンプレックスからますます落ち込むブリジットは、ついにマークの部屋から出ていってしまった。5週間後、あのダニエルとコンビを組んで旅行番組の案内役を務めることになったブリジットは、タイに旅立つ。そこでダニエルに言い寄られるものの、ベッドイン寸前で拒否。だが帰国の日、お土産に預かった蛇の剥製の中に麻薬が詰まっており、ブリジットは留置場に入れられてしまう。途方に暮れる彼女だったが、たまたま仕事でタイに来ていたマークが釈放の手配をしてくれた。ようやく帰国したブリジットは、マークの愛と優しさに気づき、彼のプロポーズを受けてめでたく結婚するのだった。




8-27. モーリス

監督 ジェームズ・アイヴォリー
出演 ジェームズ・ウィルビーヒュー・グラントルパート・グレイヴス
1987年・イギリス(ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)

解説
上流中産階級の偽善を若者同志の愛を通して描く。製作はイスマイール・マーチャント、監督は「眺めのいい部屋」 のジェームズ・アイヴォリー、脚本はキット・ヘスケス・ハーヴェイ、ジェームズ・アイヴォリー、原作はE・M・フォースター、撮影はピエール・ロム。音楽はリチャード・ロビンズが担当。出演はジェームズ・ウィルビィほか。

ストーリー
1909年、ケンブリッジ大学。キングス・カレッジの寮生モーリス(ジェームズ・ウィルビィ)は、同期生で優等生のリズリー(マーク・タンディ)と討論を交わすために訪れたトリニティ・カレッジで、討論のメンバーであるクライヴ・ダーハム(ヒュー・グラント)と出会った。彼は、知性に満ち、ギリシャの古典的理想主義と同性愛の信奉者で、夏のある日、モーリスに愛を告白した。しばらく後、クライヴの別荘、ペンダースレイ・パークで過ごしたモーリスは、そこに集う優雅な人々に魅了されると同時に、2人の親密さは増していった。1911年、学校を卒業した2人は、それぞれ違う道へ進んだ。モーリスは株の仲買人に、クライヴは法廷弁護人として働いていた。そんな矢先、優等生だったリズリーが同性愛者として風紀罪で逮捕され、自ら同性愛者であることに後ろめたさを感じたクライヴは、ひとりギリシャへ旅立った。そこで、母から勧められた女性(ジュディ・パーフィット)との結婚を決心するクライヴ。クライヴの愛を失ったモーリスは、絶望の底におとされるが、クライヴに招かれ訪れた別荘で、政治家への野心に満ちた彼の姿を見て、もはや何の愛も感じなくなっている自分に気づいた。その別荘で、彼は、ダーハム家の猟番の若者アレック(ルパート・グレイヴス)から愛情を注がれる。身分違いからの脅迫を恐れたモーリスは、はじめはその愛を拒むが、やがて深く愛し合うようになる。アレックが、家族と共に海外へ移住するために船に乗り込む日、モーリスは見送りに行くがアレックは姿を見せなかった。ペンダースレイを訪れたモーリスは、クライヴの偽善的な生き方を彼に向かって批難した後、ポートハウスに向かった。そこではアレックがモーリスを待っているのだった。




8-28. 子供たちの王様

監督 チェン・カイコー
出演 シェ・ユアンヤン・シュエウエンチェン・シャオホア
1987年・中国(ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)

解説
中国の文革時代を背景に、都会から遠く離れた農村に、教師として「下放」 された若者の姿を描く。阿城の原作を基に、監督・脚本は「黄色い大地(1984)」 の陳凱歌、協同脚本は万之、撮影は顧長衛が担当。出演は謝園ほか。

ストーリー
7年間を生産隊で過ごした“ヤセッポチ”という仇名の青年(謝園)が、都会から遠く離れた山間部の農村の粗末な学校へ教師として赴任した。学校の設備はひどく、紙不足から生徒は教科書すら持っていなかった。しかしその片隅には使用してはいけない学習教材がうず高く積まれ、埃をかぶっている。不安にかられ中学三年の教壇に立つ彼は級長の女の子から、先生が黒板に教科書を書き写し、それを生徒達がノートに写す、と教えられ憤慨する。が彼にはなすすべもなく、毎日が黒板を刻むチョークの音とともに悄然と過ぎ去ってゆくのだった。重苦しい喪失感を味わう彼は、ついに教科書を捨てる決心をする。生徒たちが自分で字を使って手紙を書くために、そして写すのではなく、自分の力で文章が書けるように、彼は生徒たちに改めて字を覚えさせることから始める。生徒たちの表現力は徐々に進歩し、先生との間にも信頼関係が生まれてきた。そんな竹切りにいくことになった前日のある日、彼は勉強熱心な生徒王福(楊学文)と、明日の出来事を今日中に作文に出来るかどうかの賭けをする。つぎの日、父親と昨日の夕方から竹切りに行き、夜中前に作文を書き終えた王福が、先生に自分の勝利を宣言する。そんな王福に彼は、ある事を記録するのは常に事後のことで、この道理は不変である。と話す。自分の負けを知った王福は賭けの対象となった先生の辞書を受け取ろうとしなかった。それ以後、王福は辞書を書き写すことに熱中し、今にもっと大きな辞書も書き写すのだ、と言い張る。そんな折り、党の上層部に先生が教科書通り教えていないことが伝わり、彼は再び生産隊に送り返されることになった。学校を去る時彼は王福に辞書を残し、これからは何も写すな、辞書も写すな、と書き記すのだった。ひっそりと静まりかえった濃いもやの中を小さな荷物を背負い、彼は山を下りて学校を去ってゆく……。




8-29. エイリアン2

監督 ジェームズ・キャメロン
出演 シガニー・ウィーヴァーマイケル・ビーンポール・ライザー
1986年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
エイリアンと戦った宇宙船ノストロモ号6人のうちの唯1人の生存者リプリーとエイリアンの再戦を描くSFアクション。製作はゲイル・アン・ハード、エグゼクティヴ.プロデューサーはゴードン・キャロル、デイヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル。監督・脚本は「ターミネーター」 のジェームズ・キャメロン。キャラクター創作はダン・オバノンとロナルド・シュセット、撮影はエイドリアン・ビドル、音楽はジェームズ・ホーナー、特殊効果はジョン・リチャードソン、ブライアン・ジョンソンが担当。出演はシガニー・ウィーヴァー、マイケル・ビーンほか。ドルビー・ステレオ。日本版字幕は岡枝慎二。デラックスカラー、ビスタサイズ、1986年作品。後に未公開シーンを加えた155分の[完全版]が発表された。

ストーリー
エイリアンが宇宙貨物船ノストロモ号を襲った惨事から唯1人生き残った2等航海士リプリー(シガニー・ウィーヴァー)は、57年後、催眠カプセルの中で眠りながら宇宙空間を漂っているところを発見され、ゲッタウェイ・ステイションに連れてこられた。彼女は貨物船会社の上層部にエイリアンの話をするが、誰も信じようとはしない。そればかりか、エイリアンの卵の巣である未踏の惑星LV426に宇宙技術者やその家族が住みついていると聞いて驚愕するのだった。今はアチェロンと呼ばれているその惑星との連絡が途絶え、リプリーはその原因調査を依頼され、しぶしぶ宇宙海兵隊員と共に軍事用輸送船スラコ号に乗り込んだ。乗り組員は貨物船会社のバーク(ポール・ライザー)、植民地海兵隊員ゴーマン中尉(ウィリアム・ホープ)、一等曹長アポーネ(アル・マシューズ)、ヒックス伍長(マイケル・ビーン)、女性伍長ディートリック(シンシア・スコット)、アンドロイドのビショップ(ランス・ヘンリクセン)などだった。母船スラコ号から荒れ果てた惑星の表面へと向かう着陸船と装甲兵員輸送車。植民地の主だったビルを探検するうち、両親と兄をエイリアンに殺されたという7歳の少女ニュート(キャリー・ヘン)を発見、救出した。建物全体をくまなく探索するうち、ほぼ全体がエイリアンとその卵に占拠されているのを知り、愕然とする。そして、前よりもはるかに凄絶な戦いが始まった。さすがの勇猛な兵士も敵の多勢に押され、次々と倒れていった。バークはエイリアン研究のため、リプリーとニュートにエイリアンを宿らせようと企む。会社側のあまりの非人間性に怒るリプリーと兵士たち。結局、リプリー、ニュート、ヒックス、ビショップのみが生き残り、リプリーの獅子奮迅の活躍でエイリアンをやっつけるのだった。(20世紀フォックス映画配給*2時間16分)




8-30. シラノ・ド・ベルジュラック

監督 ジャン=ポール・ラプノー
出演 ジェラール・ドパルデューアンヌ・ブロシェヴァンサン・ペレーズ
1990年・フランス ハンガリー(ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)

解説
詩人かつ剣客でありながら、大きな鼻のコンプレックスに悩み、生涯ひとつの恋を貫いた男の生涯を描くエドモン・ロスタンの有名な戯曲の映画化。製作はルネ・クレトマンとミシェル・セイドゥー、監督・脚本は「炎のごとく」 ('81・V)のジャン・ポール・ラプノー、共同脚本はジャン・クロード・カリエール、撮影はピエール・ロム、音楽をジャン・クロード・プティが担当。出演はジェラール・ドパルデュー、アンヌ・ブロシェほか。

ストーリー
1640年。雑多な人で溢れ返るブルゴーニュ劇場の中で、ひときわ目立つ大きな鼻の持ち主、詩人にして剣客とその名も高いガスコンの青年隊の偉丈夫、シラノ・ド・ベルジュラック(シェラール・ドパルデュー)が大声を上げた。今しも彼が秘かに思いを寄せる従妹のロクサーヌ(アンヌ・ブロシェ)に色目を使ったモンフルリーを舞台から引きずり降ろし、それに言いがかりをつけてきたヴァルヴェール子爵−−かねてより妻ある身でありながらロクサーヌを狙っているギッシュ伯爵(ジャック・ヴェベール)の手先となっている男−−と決闘しようというのである。騒ぎの夜、シラノはロクサーヌから伝言を受けるが、それは彼女の慕う美青年クリスチャン(ヴァンサン・ペレーズ)がガスコンの青年隊に入隊するので、彼女の思いを伝えてほしいというものだった。自らの鼻にコンプレックスを抱くシラノは無念をかみしめ、ロクサーヌのために愛の橋渡しを務めることになる。こうしてシラノはクリスチャンのために愛の手紙を書き、口説き方を伝授するが、一方シラノに怨みを抱くギッシュ伯爵は仕返しのためガスコンの青年隊を戦場に送ることにするが、それを知ったシラノの機転でロクサーヌとクリスチャンは出陣の前夜ににわか仕立てながら結婚式を挙げることができた。 シラノはクリスチャンにも無断でどんなに戦闘が激しくなってもロクサーヌに一日2通の恋文を届けることを忘れなかった。それを知ったクリスチャンは危険を省みず戦場にやって来たロクサーヌに、シラノも愛を告白すべきだと言うのだが、その間もなくクリスチャンは銃弾に倒れ、ロクサーヌはシラノが書いたとも知らず手紙を恋人の思い出と共に胸にしまう。そして14年、修道院で暮らすようになったロクサーヌのもとをシラノが訪ねてくるという日。相変わらず敵の多いシラノはその途中で頭上から材木を落とされて重傷を負うが、はうようにしてロクサーヌのもとへ向かう。あのクリスチーヌの恋文を読ませてくれと頼み、シラノは朗読を始めるが、夕闇の中にもかからわず一言一句間違いなく諳んじる聞き覚えのある声に、ロクサーヌははじめて手紙の主が彼であったことを悟る。しかし時すでに遅くシラノはロクサーヌに看取られて息絶えるのだった。




8-31. 家の鍵

監督 ジャンニ・アメリオ
出演 キム・ロッシ・スチュアートアンドレア・ロッシシャーロット・ランプリング
2004年・イタリア(ザジフィルムズ)

解説
第61回ベネチア映画祭で3つの賞に輝き、イタリアで大ヒットした人間ドラマ。初めて我が子と対面した父親の心の葛藤を見据え、人と人との絆の尊さを問う感動作だ。

ストーリー
若き日、出産で恋人を失った衝撃から、生まれてきた我が子を手放してしまったジャンニ(キム・ロッシ・スチュアート)。亡くなった恋人の家族が育ててきた息子のパオロ(アンドレア・ロッシ)は、障害を持って生まれていた。15年の空白を経て、初めてパオロと出会ったジャンニは、パオロをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設に送り届けることになる。戸惑いを隠せないままベルリンに着いたジャンニは、重い障害を持つ娘を看護する穏やかな女性ニコール(シャーロット・ランプリング)と出会う。彼女との会話の中では、ジャンニはパオロの実の父親であることを中々認められないでいた。それでも徐々にパオロとの愛情の交流を実感し始めた彼は、いよいよ父親であることを引き受ける覚悟を決める。リハビリ施設を出て、パオロを船に乗せて2人で旅に出た。パオロが写真と手紙だけ交わしているガールフレンドの住むノルウェイに行くのが目的だ。その道程で、ジャンニはパオロを家族に迎えることを提案する。嬉しそうな顔を見せるパオロだが、しかし車の中で、急にジャンニの態度を試すかのようにわがままな振る舞いを始める。その態度に苛立つジャンニは車を止め、外に出て思わず涙を見せる。そんな彼を、パオロは抱きついて慰めるのだった。




8-32. ザ・シークレット・サービス  

監督 ウォルフガング・ペーターゼン
出演 クリント・イーストウッドジョン・マルコヴィッチレネ・ルッソ
1993年・アメリカ(コロンビア トライスター映画) 129分

解説
大統領を狙う暗殺者と戦うベテラン・シークレット・サービスの姿を描くサスペンス・アクション。監督は「プラスティック・ナイトメア 仮面の情事」 のウォルフガング・ペーターゼン。製作は「超能力学園Z」 のジェフ・アップル。エグゼクティヴ・プロデューサーはペーターゼンとゲイル・カッツ。「ルーキー」 のデイヴィッド・ヴァルデスの共同。脚本はジェフ・マクワイヤー。撮影は「シルバラード」 のジョン・ベイリー。音楽は「アンタッチャブル」 のエンニオ・モリコーネが担当。主演は「許されざる者(1992)」 のクリント・イーストウッド、「二十日鼠と人間」 のジョン・マルコヴィッチ、「フリージャック」 のレネ・ルッソ。他に「ロックンルージュ」 のディラン・マクダーモット、「ロシア・ハウス」 のジョン・マホーニーらが共演。

ストーリー
フランク・ホリガン(クリント・イーストウッド)は合衆国所属のシークレット・サービス・エージェント。一匹狼的な異端児で相棒は臆病なアル・ダンドゥレア(ディラン・マクダーモット)だけである。ホリガンは、ケネディ大統領がダラスを訪問した際に護衛を失敗に終わらせたことに深い自責の念を持っていた。大統領(ジム・カーリー)の再選キャンペーンがスタートしたところに、大統領暗殺の脅迫が届いた。やがてホリガンは殺し屋ミッチ・リアリー(ジョン・マルコヴィッチ)が大統領の行動を監視していることを知った。さらにミッチはJFK警護に失敗したホリガンの過去を知っていて、電話で彼に挑戦してきた。ホリガンはキャンペーンの護衛に加わるが、女性護衛官のリリー・レインズ(レネ・ルッソ)以外の同僚は快く思わない。変身術を身につけたミッチはロサンゼルスに飛び銀行に口座を設けると、係の女性とルームメイトを惨殺し、ワシントンに戻った。大統領の遊説が始まった。演説会場の安全を確保する忙しい日々の中でホリガンとリリーに特別な感情が芽生える。やがてミッチの面が割れ、ホリガンは彼のアジトに侵入する。彼を待ち受けていたのは同じくミッチを追うCIAの局員だった。ミッチは執拗にホリガンに電話をかけて挑発してくる。ある日、逆探知に成功し、ホリガンとアルがミッチのアジトを急襲した。ミッチを追跡するホリガンは、ビルの間を飛びこえようとして失敗。危機を救ったアルは撃たれて絶命した。やがて大統領がロサンゼルスにやってきた。同時にミッチもビジネスマンに化けて出現。しかし、命令を無視するホリガンは任務からはずされる。しかたなく空港に向かったホリガンは、ミッチが部屋に残したメモが口座番号であることに気づく。ホリガンはミッチが多額の政治献金をして、大統領のパーティに出席していることを知る。大統領のすぐそばの席に座るミッチの前にホリガンは立ちふさがった。ホリガンを人質にしたミッチは、ホテルのシースルー・エレベーターに逃げこみ、すべての電源を切って逃走を図るが、ホリガンの無線を使った指示により狙撃され、絶命するのだった。




8-33. 旅情

監督 デイヴィッド・リーン
出演 キャサリン・ヘップバーンロッサノ・ブラッツィイザ・ミランダ
1955年・イギリス(UA=松竹)

解説
ブロードウェイでヒットしたアーサー・ローレンツの戯曲「カッコー鳥の時節」から「ホブスンの婿選び」 のデイヴィッド・リーンがヴェニスにロケイションして監督した一九五五年度作品。脚色はデイヴィッド・リーンと小説家のH・E・ベイツが協力して行った。テクニカラー色彩の撮影は「ホブスンの婿選び」 のジャック・ヒルドヤード、音楽は「パンと恋と夢」 のアレッサンドロ・チコニーニである。主演は「アフリカの女王」 のキャサリン・ヘップバーンで、「愛の泉」 のロッサノ・ブラッツィが共演、ほか「怪僧ラスプーチン」 のイザ・ミランダ、ダレン・マッガヴィン、「裸足の伯爵夫人」 のマリ・アルドン、「黒い骰子」 のマクドナルド・パーク、ジェーン・ローズ、ガイタノ・アウディエロ、アンドレ・モレルなどが助演する。

ストーリー
アメリカの地方都市で秘書をしていた三十八歳のジェイン・ハドスン(キャサリン・ヘップバーン)は、欧洲見物の夢を実現し、ヴェニスまでやって来た。フィオリナ夫人(イザ・ミランダ)の経営するホテルに落着いた彼女は、相手もなくたった一人で見物に出かけ、サン・マルコ広場に来て、喫茶店のテイブルに腰を下した。しかし、背後からじっと彼女をみつめる中年の男(ロッサノ・ブラッツィ)に気づくと、あたふたとそこを去るのであった。翌日、彼女は浮浪児マウロの案内で名所見物をして歩いた。通りすがりの骨董店に入ると、そこの主人は昨日サン・マルコ広場で会った男だった。うろたえた彼女は十八世紀の品だというゴブレットを買い、そうそうに店を出た。その日の夕方、ジェインはまたサン・マルコ広場へ行った。例の男も来たが、彼女に先約があると感ちがいし、会釈して去って行った。翌日、彼女はまた骨董店へ行ったが、十七八の青年から主人は留守だといわれた。ジェインはこの店を記念に16ミリ・キャメラに収めようとして運河に落ち、みじめな恰好でホテルへ帰った。骨董店の主人レナートは、その彼女のホテルを訪れ、夜、広場で会おうと約束した。その夜の広場でジェインは初めて幸福感に浸り、思い出にくちなしの花を買った。別れるとき、レナートは彼女に接吻し、明夜八時に会う約束をした。翌日、彼女は美しく装って広場へ出かけたが、彼の店にいた青年がやって来て、彼が用事でおそくなることを告げた。青年がレナートの息子であることを聞いたジェインは、妻もいると知って失望し、広場を去った。ホテルへ追って来たレナートは妻とは別居しているといい、男女が愛し合うのに理屈をつけることはないと強くいった。ジェインはその夜、レナートと夢のような夜を過した。そしてそれから数日間、二人はブラノの漁村で楽しい日を送った。ヴェニスへ戻ったジェインは、このまま別れられなくなりそうな自分の気持を恐れ、急に旅立つことにきめた。発車のベルがなったときかけつけたレナートの手にはくちなしの花が握られていた。プラットフォームに立ちつくすレナートに、ジェインはいつまでも手をふりつづけた。




8-34. 鉄道員

監督 ピエトロ・ジェルミ
出演 エトロ・ジェルミルイザ・デラ・ノーチェエドアルド・ネヴォラ
1956年・イタリア(イタリフィルム=NCC)

解説
「越境者」「街は自衛する」 のピエトロ・ジェルミ監督が、自から主人公としても出演して一九五六年に監督した、労働者の一家庭を描くネオ・リアリズム作品。アルフレード・ジャンネッティの原案にもとづき、ジェルミとジャンネッティ、ルチアーノ・ヴィンセンツォーニの三人がシナリオを書き、エンニオ・デ・コンチーニとカルロ・ミュッソがこれを修正加筆した。撮影は「越境者」 のレオニダ・バルボーニ。音楽は同じく「越境者」 のカルロ・ルスティケリ。ジェルミの他に「大遠征軍」「芽ばえ」 のシルヴァ・コシナ、ファッション・モデル出身でこの作品によりサン・セバスチャン映画祭で女優賞を受けたルイザ・デラ・ノーチェ、ジェルミに見出されたエドアルド・ネヴォラ少年、カルロ・ジュフレ等が出演する。製作カルロ・ポンティ。なおこの作品は他にサンフランシスコ映画祭の男優賞(ジェルミ)、コーク映画祭監督賞などを受賞している。

ストーリー
五十歳の鉄道機関士アンドレア・マルコッチ(ピエトロ・ジェルミ)は、末っ子サンドロ(エドアルド・ネヴォラ)の誇りだった。彼は最新式の電気機関車を動かし、酒場で誰よりも巧みにギターを弾いた。だが長男で失業中のマルチェロや、食料品店員レナートと結婚している長女ジュリア(シルヴァ・コシナ)にとっては、厳格で一徹な父は少々やり切れない存在だった。母親サーラ(ルイザ・デラ・ノーチェ)の忍従と慈愛、そしてサンドロの純真さが一家の空気を支えていた。ある日、父親の運転する列車に一人の若者が身を投げた。そのショックから彼は赤信号を見すごし、列車の正面衝突事故を起しかけた。そしてこの事件によって、同乗の親友リヴェラーニとともに旧式機関車の機関士に格下げされてしまった。月給も下った。折から労働組合はストライキを計画中だったが、彼の不満をとり上げてはくれなかった。彼の酒量は上り、心はすさんだ。丁度その頃、流産して夫との生活に耐えきれなくなっていた長女ジュリアは、自活の道を求めて洗濯女工となり、彼女のことが原因で父と口論した長男マルチェロは家出した。鉄道ではゼネストが決行された。父親は久しぶりに電気機関車を運転した。−−スト破り。彼は友人達からも孤立し、遂には酒を求めて家にも帰らぬ日々が続くようになった。場末の酒場をめぐって、サンドロは父を探した。そして父を、以前によく彼が、友達たちとギターをひいて歌った酒場に連れ出すことに成功した。旧友連は快く父親を迎えてくれた。久しぶりにギターが鳴り、歌が流れ出した。しかし、弱った彼の身体は床の上に倒れた。それから三月、小康を得た父親と母とサンドロの家庭に、またクリスマスがきた。久しぶりで訪れてくれたリヴェラーニは、長男や多くの隣人達をつれてきて、大々的なクリスマス・パーティが開かれた。長女ジュリアからも、レナートと生活をやり直すという電話がきた。宴の果てた夜、ベッドでギターをひきながら父は死んだ。何だか広くなったような気のする家から、勤めに出る長男とサンドロが、今日も母親に見送られながらアパートの階段を下りていく。




8-35. エジプト人

監督 マイケル・カーティズ
出演 ジーン・シモンズヴィクター・マチュアジーン・ティアニー
1954年・アメリカ(20世紀フォックス[極東]会社)

解説
「キリマンジャロの雪」 のダリル・F・ザナック自ら製作する古代エジプト王朝史劇で、フィンランドの作家ミカ・ワルタリの小説より「ディミトリアスと闘士」 のフィリップ・ダンと「西部の2国旗」 のケイシー・ロビンソンが脚色、「ホワイト・クリスマス」 のマイケル・カーティズが監督に当った。撮影は「壮烈カイバー銃隊」 のレオン・シャムロイ、音楽は「地獄と高潮」 のアルフレッド・ニューマンと「悪の花園」 のバーナード・ハーマン。出演者は、「アンドロクレスと獅子」 のジーン・シモンズ、「ディミトリアスと闘士」 のヴィクター・マテュア、「街の野獣(1950)」 のジーン・ティアニー、「熱砂の舞」 のマイケル・ワイルディング、「地獄と高潮」 のベラ・ダーヴィ、「クオ・ヴァディス」 のピーター・ユスチノフ、新人エドモンド・パーダム、ジュディス・イヴリンら。

ストーリー
紀元前1370年頃、エジプト第17王朝。テーベの都に住む若い医師シヌヒ(エドマンド・パードム)はナイル河に流された棄子だったが、有名な医師に引き取られて育った。彼は多神教に疑問を持ち、神は1つであると固く信じていた。ふとしたことから片眼の男カプター(ピーター・ユスチノフ)を召使いとし、また酒場の女メリト(ジーン・シモンズ)に慕われるようになっているシヌヒは、軍人志望の友ホレムヒブ(ヴィクター・マテュア)と獅子狩に出かけ、獅子に襲われている一神教の予言者アクナトン(マイケル・ワイルディング)を救ったが異端者を助けた者として投獄された。が、数日してアクナトンは新国王の位置につき、シヌヒは黄金の首飾りを贈られ、ホレムヒブは近衛隊長に任命された。やがてホレムヒブは王妹バケタモン(ジーン・ティアニー)に心惹かれ、満たされぬ望みのはけ口を求めてバビロニアの女ネフェル(ベラ・ダーヴィ)の宴会に行った。シヌヒも宴に招かれ、彼女の魅力に負けて自分の財産を与えて関心を買おうとし、彼を慕うメリトを驚かせた。バケタモンはホレムヒブをそそのかしてネフェルに贅沢な贈物をさせ、シヌヒから離れさせようと企てた。ネフェルの変心を知ったシヌヒは怒って彼女を溺死させようとさえした。やがてシヌヒの養父母が自殺した。彼は自責の念にかられ、90日間謹慎して亡骸を丁寧に葬った。数年後、テーベの都は異民族ヘテ人の侵略の前に曝されていたが、太陽神を凶信する国王アクナトンはなすすべを知らなかった。シヌヒはメリトが彼の息子を生んだのを知り、彼女と会って長い放浪ののちはじめて人生の幸福を味った。シヌヒは国王の狂った頭脳の治療を命じられたが、バケタモンから自分が先王の子で彼女とは腹ちがいの兄妹であることを知らされ、アクナトンとホレムヒブを毒殺しようともちかけられた。シヌヒは一旦拒絶したが、メリトが太陽教徒に殺されたのに怒り、ついにアクナトンに毒を盛った。国王の死後ホレムヒブはバケタモンと結婚して王位につき、異境に流されたシヌヒは余生を送りながら、回顧録を執筆した。




8-36. パリの恋人

監督 スタンリー・ドーネン
出演 オードリー・ヘップバーンフレッド・アステアケイ・トムスン
1957年・アメリカ(パラマウント)

解説
作曲家として知られているロジャー・イーデンスが製作、「我が心に君深く」 のスタンリー・ドーネンが監督したミュージカル映画。撮影は「ダニー・ケイの黒いキツネ」 のレイ・ジューン。原作はレオナード・ガーシュで、製作者イーデンスが作曲した新曲以外はジョージ・ガーシュウィンのもの。振付けはユージン・ローリングとフレッド・アステア。主演は「昼下りの情事」 のオードリー・ヘップバーン、「足ながおじさん」 のフレッド・アステア、「愛は惜しみなく」 のフランスのミシェル・オークレール。そのほかロバート・フレミング、ケイ・トムスンなど。

ストーリー
ニュー・ヨークのファッション雑誌クォリティ・マガジンは新しいモデルを探し出してミス・クォリティと名づけ、パリの世界的デザイナー、ポール・デュヴァル(ロバート・フレミング)に衣裳を作らせてファッション・ショーを開き、その写真を独占して大いに雑誌を売ろうと計画した。ミス・クォリティのモデルを探す役は、有名なファッション・カメラマンのディック・エヴリー(フレッド・アステア)。苦労の末、ジョー・ストックトン(オードリー・ヘップバーン)という娘を見出した。彼女はある古本屋の店番で、パリのフロストル教授が主宰する「共感主義」の哲学を信奉するインテリ娘だった。ジョーはもちろん、ファッション・モデルなどに興味はなかったが、パリに行けば崇拝するフロストル教授に会えるので、ミス・クォリティになるのを承諾した。クォリティ誌の主筆マギー・プレスコット女史(ケイ・トムスン)とエヴリー・ジョーの一行がパリにつくと、ジョーは早速、画家や詩人や共感主義者が集まる裏街のカフェーに行った。翌日、デュヴァルのサロンでは、見ちがえるほど美しくなったジョーの姿があった。ミス・クォリティを紹介するパーティの夜、ジョーはフロストル教授が裏街のカフェーで講演することを知ると、パーティのはじまる前の寸暇をぬすんで出かけて行った。ジョーははじめてフロストル教授(ミシェル・オークレール)に会って、教授がまだ30代の青年であるのに驚いた。ジョーの後を追って来たエヴリーはジョーをうながし、デュヴァルのサロンへタクシーを走らせた。途中、2人の間に口論がはじまった。エヴリーは若い青年の教授が彼女に興味を抱いている様子が気に入らないのだ。ジョーは教授の前でエヴリーが無礼なことを云ったと腹を立てていたのだ。2人の口論はサロンに着いてからもつづいていた。そのお陰でパーティは滅茶々々になった。翌日、エヴリーはジョーがフロストル教授の部屋にいるのをみつけると、ジョーを連れ帰ろうとした。昨夜見せられなかったデュヴァルのデザインしたドレスを今夜発表することになっているからだが、一つには教授の野心を見抜いたからだった。しかし、ジョーはエヴリーのそんな態度が気に入らず、絶対帰らぬといい張って喧嘩別れしてしまった。エヴリーが帰ると教授は、エヴリーが見抜いたとおり、ジョーに愛を求めようとした。彼女ははじめて教授の本心を悟り、部屋をとび出すと、デュヴァルのサロンへ急いだ。難産だった、ミス・クォリティはやっと誕生し、エヴリーとジョーは結ばれた。




8-37. ジェイン・オースティンの読書会

監督 ロビン・スウィコード
出演 キャシー・ベイカーマリア・ベロエミリー・ブラント
2007年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
全米の女性の間で流行中の“読書会”をモチーフにしたヒューマン・ドラマ。英国の文豪ジェイン・オースティンの小説を囲む男女6人の人間模様が共感を誘う一作だ。

ストーリー
結婚歴6回、今は気楽な独り者のバーナデット(キャシー・ベイカー)は、愛犬の死を悲しむ友人のジョスリン(マリア・ベロ)を励まそうと、「ジェイン・オ−スティンは人生の最高の解毒剤だ」として、オースティンの読書会を企画する。エネルギッシュで魅力的なのに傷つくことが怖くて恋に踏み出せないジョスリン。彼女の高校時代からの友人シルヴィアも、結婚して20数年の夫から突然「他に好きな人ができた」と打ち明けられ、人生最大のトラブルに直面していた。一冊ずつリーダーを決めるのが読書会のルール。オースティンの長編小説は六冊、残り三人を探す三人。まずはオースティンに独自の解釈と深い愛を抱くプルーディー(エミリー・ブラント)、フランス語教師なのに渡仏経験がないこと、夫と趣味が合わないこと、教え子にときめいていることが目下の悩みだ。そして恋多きシルヴィアの娘・アレグラ(マギー・グレイス)。最後はジョスリンが見つけてきた唯一の男性でオースティン初体験の青年グリッグ(ヒュー・ダンシー)だ。各々の家で、時には海辺で、美味しいワインをあけて、尽きないおしゃべりが始まる。まさかオースティンについて語ることで彼女たちの人生が色づき、絡み合い、思わぬ結末にたどりつくとも知らずに……。




8-38. 麗しのサブリナ

監督 ビリー・ワイルダー
出演 ハンフリー・ボガートオードリー・ヘップバーンウィリアム・ホールデン
1954年・アメリカ(パラマウント映画会社)

解説
ローマの休日」 のオードリー・ヘップバーンが「女性よ永遠に」 のウィリアム・ホールデンおよび「ケイン号の叛乱」 のハンフリー・ボガートと共演する恋愛映画で、「第17捕虜収容所」 のビリー・ワイルダーが製作監督にあたった。ブロードウェイのヒット戯曲(サム・テイラー作)を、原作者テイラー、監督ワイルダー、アーネスト・リーマンの3人が脚色。撮影は「赤い山」 のチャールズ・ラング、音楽はフレデリック・ホランダー。「君知るや南の国」 のウォルター・ハムデン、「ダイヤルMを廻せ!」 のジョン・ウィリアムス、「赤い槍」 のマーサ・ハイヤー、ジョーン・ヴォース、マルセル・ダリオなどが助演する。

ストーリー
富豪ララビー家のお抱え運転手の娘サブリナ(オードリー・ヘップバーン)は、邸の次男坊デイヴィッド(ウィリアム・ホールデン)に仄かな思いを寄せていた。しかし父は娘に叶わぬ恋を諦めさせようと、彼女をパリの料理学校へやる。それから2年、サブリナは一分のすきのないパリ・スタイルを身につけて帰ってきた。女好きのデイヴィッドは美しくなったサブリナにたちまち熱を上げ、自分と財閥タイスン家の令嬢エリザベス(マーサ・ハイヤー)との婚約披露パーティーにサブリナを招待し、婚約者をそっちのけにサブリナとばかり踊った。デイヴィッドの兄で謹厳な事業家ライナス(ハンフリー・ボガート)は、このままではまずいとデイヴィッドをシャンペン・グラスの上に座らせて怪我をさせ、彼が動けぬうちにサブリナを再びパリに送ろうと企てる。不粋のライナスにとって、サブリナとつきあうことは骨の折れる仕事だったが、計画はうまくいき、サブリナの心はじょじょにライナスに傾く。一緒にパリへ行くことになって喜ぶサブリナだが、ライナスは船室は2つとっておいて、いざとなって自分は乗船しないつもりだった。サブリナはそのことを知って深く悲しみ、すべてを諦めてパリへ行く決心をする。ライナスもまた自責の念にかられ、いつの間にか自分が本当にサブリナに恋していることに気づく。サブリナ出帆の日、ララビー会社では重役会議が開かれていた。ライナスはここでデイヴィッドとサブリナの結婚を発表するつもりだったが、怪我が治って現れたデイヴィッドは、ライナスとサブリナが結婚するという新聞記事を見せる。そしてヘリコプターを用意しているからサブリナの乗る船に急げ、と兄に言う。すべてはサブリナとライナスの気持ちを察したデイヴィッドの計らいだった。ライナスはサブリナを追い、客船の甲板でふたりは抱き合うのだった。




8-39. バロン

監督 テリー・ギリアム
出演 ジョン・ネヴィルエリック・アイドルサラ・ポーリー
1989年・イギリス(コロムビア)

解説
18世紀の伝説的人物バロン・ミュンヒハウゼンの活躍を描くファンタジー・アドヴェンチャー。エグゼキュティヴ・プロデューサーはジェイク・エバーツ、製作はトーマス・シューリー、監督・脚本は「未来世紀ブラジル」 のテリー・ギリアム、共同脚本はチャールズ・マッケオン、撮影はジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽は「ダイ・ハード」 のマイケル・ケイメンが担当。出演はジョン・ネヴィル、エリック・アイドルほか。

ストーリー
18世紀、トルコ軍占領下にあるドイツの海岸沿いの町。貧困と飢えに苦しむ人々であふれた崩れかけた城壁の中の廃墟と化した小さな町のロイヤル劇場の舞台に、バロン・ミュンヒハウゼン(ジョン・ネヴィル)は突然姿を現わした。彼は、トルコ軍は自分を探していると語り、なぜトルコ軍に追われるはめになったかを話し始めるが、あまりにも荒唐無稽で、誰にも相手にされない。落胆するバロンであったが、空想好きの10才の少女サリー(サラ・ポリー)に励まされ、トルコ軍をやっつける約束をする。そこで彼はまず最初に、かつて一緒に戦った不思議な力を持つ四人の仲間達を集めるために、絹の下着で作った巨大気球に乗ってサリーと共に旅を始めるのだった。頭と胴体が別の意志を持つ月の王のもとで世界一の足の速いバート・ホールド(エリック・アイドル)を、地底の神ヴァルカン(オリヴァー・リード)が支配する火山の国で怪力の持ち主アルブレヒト(ウィンストン・デニス)を、巨大魚の中で鉄砲の名手アドルファス(チャールズ・マッケオン)と、どんな遠くのどんな小さな音も聞こえ、すごい肺活量の持ち主グスタヴァス(ジャック・パーヴィス)をそれぞれ助け出すが、四人ともすっかり老け込んで昔の力を失っていた。またバロンの背後にも死神の影が常につきまとうようになっていた。六人は何とか町の海岸にたどりつくが、トルコ軍の攻撃は一層激しくなってきており、バロンは意を決し、トルコ国王に会見を求め、事の決着をつけようと試みるが、実は……。




8-40. 華麗なるアリバイ

監督 パスカル・ボニゼール
出演 ミュウ・ミュウランベール・ウィルソンヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
2008年・フランス(アルバトロス・フィルム(提供 ニューセレクト))

解説
生誕120年を迎えたアガサ・クリスティーの名著「ホロー荘の殺人」 を、豪華キャストで映画化。1人の男の殺人を巡る謎が、愛憎渦巻く人間模様を背景にサスペンスフルに展開。

ストーリー
フランスの小さな村、ヴェトゥイユ。上院議員のアンリ・パジェス(ピエール・アルディティ)と妻エリアーヌ(ミュウ=ミュウ)は、週末ごとに友人たちを招き、狩りやパーティでもてなしていた。ある週末、集まったのは精神分析医のピエール(ランベール・ウィルソン)とその妻クレール(アンヌ・コンシニ)を始めとした数人。だが、彼らの間には妙な緊張感が漂っていた。妻への誠実さに欠けるピエールは、結婚以来、何度も浮気を繰り返しており、この日集まった全員がピエールに対して愛情、憎悪、嫉妬など、何らかの感情を抱く関係にあったのだ。そしてクレールは、分別のない夫の行動を知りながら、2人の子供との生活を守るため、見て見ぬ振りをしていた。その日も、ピエールは愛人エステル(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)がいることを知りながら、元恋人であるイタリア人女優のレア(カテリーナ・ムリーノ)の誘いに乗り、一夜を共にする。だが翌朝になると、復縁を迫るレアに対して、ぬけぬけと“妻子がいるから”と拒絶するのだった。その態度に激怒し、罵詈雑言を浴びせるレア。彼女と別れたピエールは、1人黙々とプールで泳ぐ。彼がプールを出ると、そこには午後のけだるい静寂が広がった。その時、突然一発の銃声と女の悲鳴が響き渡る。エリアーヌがプールに駆けつけた時、倒れたピエールの傍らに、彼の手を握るエステルと銃を握っている妻のクレールがいた。殺人の容疑者として警察に拘留されるクレール。だが、解剖の結果、ピエールを撃ったのは彼女が手にしていた銃でないことが判明。捜査は振り出しに戻る。そして当時、パジェス家にいた8人全員に、ピエールを殺害する動機があった。彼らが互いを疑い始めたとき、第2の殺人が起きる。果たして、真犯人は誰なのか……?




8-41. オーケストラ!

監督 ラデュ・ミヘイレアニュ
出演 アレクセイ・グシコフメラニー・ロランフランソワ・ベルレアン
2009年・フランス(ギャガ)

解説
音楽への思いを捨てられず、偽の楽団を結成して再び成功をつかもうとする人々の姿を描く音楽ドラマ。モーツァルトやチャイコフスキーなど、クラシックの名曲が全編を彩る。

ストーリー
劇場清掃員として働く冴えない中年男アンドレイ・フィリポフ(アレクセイ・グシュコブ)は、かつてはロシア・ボリショイ交響楽団で主席を務めた天才指揮者だった。彼は、共産主義時代、“ユダヤ主義者と人民の敵”と称されたユダヤ系の演奏家たち全員の排斥を拒絶、名声の絶頂期に解雇されたのだった。ある日、清掃中にアンドレイは、1枚のFAXを目にする。それは、演奏を取りやめたサンフランシスコ交響楽団の代わりに、パリのプレイエルに出演するオーケストラを2週間以内に見つけたいという内容だった。その瞬間、彼は、かつての仲間を集めて偽のオーケストラを結成、ボリショイ交響楽団代表としてパリに乗り込むことを思いつく。アンドレイはまず、元チェロ奏者で今は救急車の運転手・サシャ・グロスマン(ドミトリー・ナザロフ)に話を持ちかける。サシャは呆気にとられるが、アンドレイの熱意に押され、気がつけばアンドレイを救急車に乗せて昔の仲間を訪ねていた。タクシー運転手、蚤の市業者、ポルノ映画の効果音担当……モスクワの片隅でかろうじて生計をたてている彼らのほとんどが、アンドレイの荒唐無稽な誘いを二つ返事で承諾する。演奏曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ソリストは若手スター、アンヌ=マリー・ジャケ(メラニー・ロラン)を指名。問題のパスポートも、ジプシーのヴァイオリン奏者が24時間で全員の偽造品を調達し、遂に寄せ集めオーケストラはパリへと旅立っていった。到着早々、アンドレイのもとにアンヌ=マリーのマネージャー、ギレーヌ・ドゥ・ラ・リヴィエール(ミュウ=ミュウ)が現れ、彼とは旧知の仲らしい彼女は、アンヌ=マリーに話すつもりかと何かをきつく口止めする。コンサートを前に、夕食を共にするアンヌ=マリーとアンドレイ。そこでアンドレイは、究極のハーモニーに到達できたはずのレアというヴァイオリニストの悲しい運命を語り始めるのだった……。




8-42. ボーダー

監督 ジョン・アヴネット
出演 ロバート・デ・ニーロアル・パチーノカーティス・ジャクソン
2007年・アメリカ(日活)

解説
ハリウッドを代表するスター、ロバート・デ・ニーロ&アル・パチーノ共演のクライム・アクション。2人が長年コンビを組んできたベテラン刑事に扮し、社会の悪に立ち向かう。

ストーリー
NY市警のベテラン刑事、ターク(ロバート・デ・ニーロ)とルースター(アル・パチーノ)は、20年以上コンビを組み、お互いの全てを知り尽くしたパートナーとして固い絆で結ばれていた。そんなある日、警察を嘲笑うかのような連続殺人事件が発生。狙われたのは、一度は逮捕されながらも証拠不十分で社会に戻ってきた悪人たちであった。だが、捜査によって浮かび上がった全ての証拠は、タークの犯行を示していた。汚名を晴らそうと、捜査にのめり込んでいく二人。しかし、その先には彼らの人生を大きく変える驚愕の真実が待ち受けていた……。




8-43. パリで一緒に

監督 リチャード・クワイン
出演 ウィリアム・ホールデンオードリー・ヘップバーングレゴワール・アスラン
1963年・アメリカ(パラマウント)

解説
「フランス式十戒」 のジュリアン・デュヴィヴィエと「愛情の瞬間」 のアンリ・ジャンソンの原案を「影なき狙撃者」 のジョージ・アクセルロッドが脚色、「逢うときはいつも他人」 のリチャード・クワインが演出したロマンチック・ドラマ。撮影は「荒野の七人」 のチャールズ・ラング、音楽はネルソン・リドル。製作はアクセルロッドとリチャード・クワイン。出演は「シャレード」 のオードリー・ヘップバーン、「偽の売国奴」 のウィリアム・ホールデン、「殺人基地」 のノエル・カワード、「クレオパトラ(1963)」 のグレゴワール・アスラン、ほかにトニー・カーティス、マレーネ・ディートリッヒ、ピーター・セラーズ、メル・ファラーなど、姿を見せる程度。

ストーリー
脚本家ベンスン(ウィリアム・ホールデン)はパリのホテルで新作映画のシナリオを執筆していた。彼の友人マイヤハム(ノエル・カワード)が金を出している。期限はあと2日というのに書いたのは少しだけ。彼はガブリエル(オードリー・ヘップバーン)というタイピストを雇ったが、それは彼のシナリオにも良い結果を生んだ。シナリオはーリック(ウィリアム・ホールデン)という大盗賊が、俳優フィリップ(トニー・カーティス)がギャビー(オードリー・ヘップバーン)とのデイトをすっぽかしたため、ギャビーを誘惑し、おとりにして警察の目をくらませ、大仕事をしようと企んだ。ところが、ギャビーは実はパリの売春婦で、警察の手先になってリックの行動を探っていたのだ。それを知らないリックは彼女を伴って撮影所に行き、大作フィルムを盗み出した。そして、リックは彼女を警察のスパイと見抜き殺そうとしたがーシナリオの口述をここまで聞いたガブリエルはベンスンの人柄にひかれ、恋心を抱くようになった。リックは盗んだプリントで大金をゆするが失敗した。そしてギャビーは警官をだまして1室にとじこめ、2人は空港に逃げた。リックが待たせてあった飛行機に乗ろうとしたとき、監禁された部屋から脱出、追って来た警官に撃たれ、ギャビーの腕の中で死んだ。ー脚本は完成した。でもガブリエルは気に入らなかった。脚本の中のリックがベンスンに思えるからだ。締め切りの日、ベンスンが目を覚ますとガブリエルの姿がない。街でガブリエルを見つけると、彼女の心を察したベンスンがハッピーエンドで終ることを約束した。彼女の笑顔があった。




8-44. デジャヴ

監督 トニー・スコット
出演 デンゼル・ワシントンポーラ・パットンヴァル・キルマー
2006年・アメリカ(ブエナ ビスタ)

解説
「パイレーツ・オブ・カリビアン」 のジェリー・ブラッカイマー製作。「マイ・ボディガード」 の監督トニー・スコット&主演デンゼル・ワシントンが贈る緊迫のサスペンス。

ストーリー
543名もの犠牲者を出したフェリー爆破事件が起こった。捜査官ダグ(デンゼル・ワシントン)は、現場近くで、事件の一時間前に見つかった女性の死体が鍵を握っているのではないかと直感した。爆発の犠牲者に偽装されたその女性はクレア(ポーラ・パットン)といい、ダグはその顔を見た瞬間、何故か既視感を感じる。捜査は驚くべき監視システム「タイム・ウィンドウ」を使って行われた。これを使えば約四日前の過去を監視することが出来るのだった。ダグは四日前のクレアの部屋を監視する。すると彼女が売りに出していた車を買いたいという男から電話がかかってきた。この男が犯人ではないか?「タイム・ウィンドウ」が単なる過去の監視装置ではないことを突き止めたダグは、ゴーグルという装置を使って犯人を追い詰めていく。これを通して現実を見ると、過去を同時に見ることが出来るのだ。ついに逮捕された犯人は、狂信的な愛国者で、軍に入隊を拒否されたことから政府への恨みを晴らそうとしたらしい。こうして事件は解決を見たが、ダグには心残りがあった。何とかしてクレアの命を救いたい。「タイム・ウィンドウ」のタイムスリップ機能を利用してダグは過去に戻る決心をした。タイムスリップしたダグは犯人に拉致されていたクレアを助け出し、事件を防ごうとフェリーに向かう。全てがあの惨劇に向かって繰り返されていく。フェリーに乗り込むダグ、そしてクレア。しかし異変に気づいた犯人が乗り込み銃撃戦となる。ついに犯人を殺したダグとクレアは爆弾を積んだ車に乗ったまま海に転落する。クレアは脱出に成功するがダグは車もろとも爆死してしまった。だが救出され悲嘆に暮れているクレアの元に何故かダグが現れた。それは未来から来たダグではなく事件の捜査に現れた現在のダグだった。再会を喜ぶクレア。彼女のことがよく判らないダグ。しかしどこかで会った気がする。ダグは再びあの妙な既視感を抱くのだった。




8-45. 間諜X27

監督 ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演 マレーネ・ディートリッヒヴィクター・マクラグレンルー・コディ
1931年・アメリカ(パラマウント支社)

解説
「嘆きの天使」「モロッコ」 に次いでジョセフ・フォン・スタンバーグが自ら原作し、監督にあたった映画である。脚色者は「テキサス無宿」 と同じくダニエル・N・ルービン、カメラは「モロッコ」「戦う隊商」 のリー・ガームス。主なる出演者は「嘆きの天使」「モロッコ」 のマレーネ・ディートリッヒ、特にフォックス社から籍りられたヴィクター・マクラグレン、「放浪の王者(1930)」「危険なる楽園」 のワーナー・オーランド、「女の一生」「紐育の波止場」 のグスタフ・フォン・セイファティツ、「四人の悪魔」「父と子」 のバリー・ノートン、ルー・コディなどである。

ストーリー
世界大戦が始まってから2年、1915年の秋、オーストリアはウィーンの裏町に幾多の売春婦たちが、崩れ行く祖国を眺めながら寂しく日を送っていた。その中から強く祖国を愛する1人の女が、時のイタリア秘密探偵局長に拾い上げられた。そしてスパイX27号として彼女の名は陸軍省機密書類の奥ふかく記録されたのである。仮装舞踏会の一夜、X27号の任務の手は売国奴ヒンダウ大佐に近づいてその夜の中に彼を自殺させてしまった。その直後、彼女の手はオーストリア将役の仮面を被った敵国ロシアのスパイ、クラノウの身辺にのびた。けれどお互いにスパイであることをしりながら2人は熱烈な恋に陥り始めた。この恋のいまだ日浅くして彼は逃れてロシアに帰り、続いて重大な任務を帯びたX27号がロシアに潜入した。数日の後X27号は国境近きロシアの将校宿舎に住み込んでいたが、不幸にもクラノウに捕らえられて銃殺を申し渡された。けれども恋にもゆる彼の情けにより、彼女は再び祖国の土を踏むことができた。その年も暮れて冬が来た。X27号の罠にかかった多くのロシア兵は続々として将軍の前に引き出された。その中に愛するクラノウを見いだした彼女は、その恋ゆえに任務を売って彼を逃がしてやった。その罪は反逆、計は死に該当。辛辣なる判決の後、彼女は売国奴X27号と知れ静かに獄屋に下った。やがて明け方近く純白の雪の上に時ならぬ鮮血をとばしてX27号の若き生命は終わった。




8-46. タバコ・ロード

監督 
ジョン・フォード'>ジョン・フォード
出演 チャーリー・グレイプウィンマージョリー・ランボージーン・ティアニー
1941年・アメリカ(東宝東和)
監督 ジョン・フォード
出演 チャーリー・グレイプウィンマージョリー・ランボージーン・ティアニー
1941年・アメリカ(東宝東和)

解説
アメリカ南部のプア・ホワイトを描く。アースキン・コールドウェルの原作、ジャック・カークランドによる舞台劇の映画化。製作はダリル・F・ザナック、監督はジョン・フォード。撮影はアーサー・ミラー、音楽はデイヴィッド・バトルフが担当、出演はチャーリー・グレイプウィン、ジーン・ティアニーほか。

ストーリー
1930年初めのジョージア州、タバコ・ロードと呼ばれる一帯に老農ジーター(チャーリー・グレイプウィン)一家が住んでいた。飢えのあまり、立ち寄った末娘の夫ベンジー(ワード・ボンド)の持っていたかぶらを奪いあう始末。金めあてに息子のトゥード(ウィリアム・トレイシー)を金持女と結婚させようとするが、あてがはずれて彼女の車を売ろうとし、あわや刑務所行きに。もう1人の娘エリー・メイ(ジーン・ティアニー)が、妻に逃げられたベンジーの許へ行き、ジーターは妻と2人きりになる。元地主の息子が農業用資金を用立ててくれるが、彼は働こうともしなかった。




8-47. バックドラフト  

監督 ロン・ハワード
出演 カート・ラッセルウィリアム・ボールドウィンロバート・デ・ニーロ
1991年・アメリカ(UIP) 137分

解説
消防士兄弟の葛藤と日夜火災と戦い続ける男たちの群像を描いた大作ドラマ。放火犯探しというサスペンス・ドラマがサブ・プロットになっている。監督に「バックマン家の人々」 のロン・ハワード。製作はリチャード・ルイス、ペン・デンシャム、ジョン・ワトソン。エグゼクティブ・プロデューサーはブライアン・グレイザーと「砂の惑星」 のラファエラ・デ・ラウレンティス、脚本は「ハイランダー 悪の戦士」 のグレゴリー・ワイデン。撮影は「オールウェイズ」 のミカエル・サロモン、音楽は「パシフィック・ハイツ」 など近年売れっ子のハンス・ジマー。特殊効果及びハイロテクニック(爆発と発火効果)はアレン・ホールが担当。

ストーリー
幼い頃、消化作業中に父(カート・ラッセル)の死を目の当たりにしたブライアン・マキャーフィー(ウィリアム・ボールドウィン)は職を転々とした末に、故郷のシカゴに新米消防士として戻って来た。彼が友人のティム(ジェーソン・ゲドリック)と共に配属された17小隊には兄のスティーブン(カート・ラッセル2役)や父の部下だったアドコックス(スコット・グレン)らがいた。着任早々、火災現場に向かったブライアンは、そこでスティーブンの英雄的な活躍を目にする。スティーブンのこうした勇敢な行動は、父の死の現場にいなかったという悔恨の念から来ていた。しかし、現場に駆けつけた火炎調査官のリムゲール(ロバート・デ・ニーロ)はこの1件を放火だと断言した。翌日、兄の家を訪ねると兄嫁のヘレン(レベッカ・デモーネイ)と幼い息子がいたが、二人は離婚していた。消防隊に入って幾日か経った頃、ブライアンは兄に負けじと訓練に励むようになる。そんな時、パーティーで昔の恋人ジェニファー(ジェニファー・ジェイソン・リー)から、彼女が秘書をしている市議会議員のスウェイザク(J・T・ウォルシュ)を紹介される。その場でブライアンは騒ぎを起こした。彼は有能だったが、あまりの無謀さゆえに司令補より上に出世することができないでいた。現場で炎を前に尻込みをするブライアン。弟を叱咤してスティーブンは踏み込んでいって少年を救い出す。ブライアンは自信をなくし、スウェイザフの言う通りリムゲイルの助手となる。彼は連続放火犯を追っていた。彼の話によると犯人は炎を熟知しており、バックドラフトを起こさせて、特定の人物を爆死させるだけで、火事を起こさせないようにしているという。ジェニファーとよりを戻したブライアンは死んだ3人が消防署跡地開発の利権を得ており、犯人の情報を得るためにスウェイザクが彼をリムゲイルのもとに送り込んだことを知った。スウェイザクが次に狙われ、助けようとしたリムゲイルは重傷を負う。ブライアンは放火常習者のサイコ、ロナルド(ドナハド・サザーランド)の助言を得た。そんな時、ティムが巻き添えをくって爆死した。ブライアンは兄を犯人と疑い火災現場で対決しようとするが、犯人はアドコックスだった。しかし、その瞬間爆発が起こり、スティーブンはアドコックスを助けようとするが、二人とも死亡。逃れたブライアンは父と兄の志を継いで消防士として生涯を捧げることを誓うのだった。




8-48. 白と黒のナイフ

監督 リチャード・マーカンド
出演 グレン・クローズジェフ・ブリッジスピーター・コヨーテ
1985年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
大富豪の人妻殺人事件を通して、容疑者の夫、女性弁護士、検事の闘いを描く法廷ドラマ。製作はマーティン・ランゾホフ、監督は「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」 のリチャード・マーカンド、脚本は「フラッシュダンス」 のジョー・エスターハス、撮影はマシュー・レオネッティ、音楽はジョン・バリー、プロダクション・デザインはジーン・キャラハン、編集はショーン・バートン、コンラッド・バフ、衣裳はアン・ロスが担当。出演はグレン・クローズ、ジェフ・ブリッジスなど。

ストーリー
ある嵐の夜、海辺の別荘で殺人事件が発生した。被害者はサンフランシスコの出版王の孫娘ペイジ・フォレスターで、凶器のジャグド・エッジと呼ばれる狩猟用ナイフで何回もメッタ突きにされていた。更にメイドも殺され、その傍には夫のジャック・フォレスター(ジェフ・ブリッジス)が殴られ昏倒していた。この異常な事件を担当したクラズニー地方検事(ピーター・コヨーテ)はジャックが怪しいとにらんで妻殺しの容疑で起訴した。その理由として、ペイジの一族が所有する新聞社の編集長だったジャックが妻の死で莫大な財産を相続すること、ジャックの所属するクラブの守衛が彼のロッカーで凶器そっくりのナイフを見たことなどをあげた。だがジャックは無実を主張、敏腕で鳴らす女性弁護士テディ・バーンズ(グレン・クローズ)を雇った。美人で男まさりのテディは以前クラズニーの下で検事補として働いていたが今は夫と離婚、2人の子供を育てるために企業関係の弁護士として働いていた。彼女はいやいやながらジャックの弁護を引き受けた。というのも、過去、クラズニーと共に有罪にした囚人が首つり自殺し、その原因はクラズニーが無罪になる証拠を隠滅していたためと判明し、いつかその罪のつぐないをしなければならないと考えていたからだった。この事件を担当することは、クラズニーの正体を暴露することでもあった。テディは昔なじみの探偵サム・ランサム(ロバート・ロッジア)の協力を得て活動を開始した。彼らの行動の前提は、ジャックがウソ発見器でシロと出たこと、クラブの守衛の証言は状況証拠であること、ジャックは無実だとタイプされた匿名の手紙がたびたび届けられることなどだった。テディとジャックはいつしか依頼人と弁護士という関係を越え、愛し合うようになっていた。しかし彼女は、「もしあなたがウソをついていたら弁護から降りる」と釘をさすことも忘れなかった。やがて裁判が始まった。クラズニー検事の攻撃は激しい。彼は、殺されたペイジの浮気相手だったテニス・コーチ、スレイド(マーシャル・コルト)、ジャックの愛人などを証言台に立たせ、夫婦間の愛情が冷め切っていることを証明し、ジャックの殺意を印象づけた。ジャックが愛人の存在を隠していたことに怒ったテディは弁護を降りようと思ったが、今となってはそれも難しかった。探偵サムの援護で気をとり直したテディは、クラズニーの起訴事実に多くのミスを見つけた。守衛の見たナイフがあったのは他の男のロッカーであったこと、そして匿名の手紙から、スレイドがペイジ殺しと同じような手口で他の女性を襲っていたことなどを立証し、検事を追いつめ無罪を勝ちとった。激しく愛し合って勝利を祝った翌朝、テディはジャックの部屋からタイプライターを発見した。そのタイプライターこそ、ジャック無罪を勝ち取った大きな要因となった匿名の手紙を打ったものだった。ということは、弁護の指針は全てジャックがタイブし、投函した手紙によっていた、ということになるのだ。テディの顔がみるみる青ざめた。タイプライターを持って大急ぎで自宅に帰ったテディを、その夜、覆而の男が襲った。ふるえながら発砲するテディ。その場にかけつけたサムと共に息絶えた男の覆面を剥ぐとジャックの端正な顔が現われた。