2-1. コンペティション

監督 ジョエル・オリアンスキー
出演 リチャード・ドレイファスエイミー・アーヴィングリー・レミック
1980年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
ピアニストになるために青春のすべてをかけてきた青年と少女のコンクールをめぐっての競争心と恋の葛藤を描く。製作総指揮はハワード・パイン、製作はウィリアム・サックハイム、監督は「ロンゲスト・ヤード」 などの脚本を手がけたジョエル・オリアンスキー。オリアンスキーとウィリアム・サックハイムの原案を基にオリアンスキーが脚色。撮影はリチャード・H・クライン、音楽はラロ・シフリン、編集はデイビッド・ブルーイットが各々担当。出演はリチャード・ドレイファス、エイミー・アーヴィング、リー・レミック、サム・ワナメイカー、ジョセフ・カリ、タイ・ヘンダースン、ビッキー・クリーグラー、フィリップ・スターリング、アダム・スターンなど。

ストーリー
第23回中西部ピアノ・コンペティション(コンクール)に3位で入賞したポール・ディートリック(リチャード・ドレイファス)は、サンフランシスコで開かれる最も権威あるヒルマン・ピアノ・コンペティションでの19回目の挑戦に賭けていた。ピアニストになるために青春のすべてをかけてきたポールは、もう30歳を迎えていた。参加資格は30歳までなのだ。この最後のチャンスに失敗すると、彼はピアニストを諦め、音楽教師への道を歩む他ないのだ。しかし、彼に夢を託してきた父親(フィリップ・スターリング)も病弱でもうあまり長くは働けず、自分の腕にかかっていると思うとポールの気は重かった。サンフランシスコには、各国から選ばれた12人の若者たちが揃い、決戦日をめざして練習に励んでいた。その中に美しい娘ハイディ・スクーノバー(エイミー・アーヴィング)がいた。いくつかのコンクールでポールと顔を合わせていた彼女は彼に親しげに声をかけるが、それを冷たくあしらうポール。彼にとつて、今、ピアノ以外に気をとられることは禁物だったのだ。そして、まず6人の決勝出場者が決まり、ポールとハイディの他に、ソ連から来た16歳のタチアナ(ヴィッキー・クリーグラー)、芸能タレントとして売り出そうとこの場を利用する野心家ジェリー(ジョセフ・カリ)、黒人の金持ちでイタリアに住むマイケル(タイ・ヘンダースン)、カナダから来たマーク(アダム・スターン)らがいた。タチアナのピアノ教師が亡命をはかり、そのショックで彼女が倒れたため大会が1週間延期された。決勝日と音楽教師の面接の日が重なってしまったポールは悩み、やりきれない気持ちのままハイディを訪ねた。泣きながら悩みを告白するポールを、ハイディはやさしく抱きしめた。しかし、ハイディのピアノ教師グレタ(リー・レミック)は、彼女にポールに恋してはいけないと激しく忠告した。グレタも、若い頃同じような経験から苦い思いを味わっていたのだ。悩む彼女に今度はポールが言った。どちらが勝ってもいっしょにいようと。しかし、それはアンドルー・アースキン(サム・ワナメーカー)の指揮のもとですでに決勝曲、ベートーベンのピアノ協奏曲5番変ホ長調皇帝を完璧に弾き終わって絶大な拍手を受けていたポールの優位な立場からの言葉だったのかもしれない。運命の日、ハプニングから、予定曲を返上してプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ハ長調を見事に弾いたハイディは、ポールを破って優勝した。喜ぶハイディに、しかしポールの言葉は冷たかった。その夜のパーティ。優勝したにも拘らずポールの不在で沈んでいるハイディの前に、1度は帰る決心をして車に乗った筈のポールが微笑みながら現われるのだった。




2-2. ショコラ

監督 ラッセ・ハルストレム
出演 ジュリエット・ビノシュヴィクトワール・ティヴィソルジョニー・デップアルフレッド・モリナ
2000年・アメリカ

解説
ショコラ」(Chocolat)は、2000年のアメリカ映画。ジョアンヌ・ハリスの同名小説を映画化。
宗教と人間関係の複雑な絡み合い、そして大人の事情に飲み込まれている子どもたち、また、愛する人を遠く思い続ける大人たちの感情が秘められた映画である。


ストーリー
ある日、フランスのある村に一組の親子が北風とともにやってきた。その親子ヴィアンヌとアヌークは、そのルーツである南米から受け継がれるチョコレートの効能を広めるため世界中を旅していて、この村でも老女アルマンドから借りた物件でチョコレート店の開店する。 周囲の好奇の目が向けられる中店を開いたヴィアンヌは、一人一人の希望にぴったりと合うチョコレートを差し出し、その不思議なチョコレートの作用から村人達を惹きつけていく。とりわけ、夫の暴力に悩むジョセフィーヌや、その奔放な性格のせいで厳格な娘から絶縁されているアルマンドにとっては、ヴィアンヌの明るく朗らかな人柄やチョコレートの美味しさと不思議な効果は、ひとときの安らぎとなるのであった。 しかし今は断食の期間。ミサにも参加しようとせず、私生児であるアヌークを連れたヴィアンヌの存在は、敬虔な信仰の体現者で村人にもそれを望む村長のレノ伯爵の反感を買ってしまう。この村は伝統と規律を守る厳格な村なのだ。レノは村人たちに、ヴィアンヌのチョコレート店を悪魔的で堕落したものだと説いて出入りを禁じ、またジョセフィーヌの夫のセルジュを信仰の力で更生させようと躍起になる。 そんなある日、村にジプシーの一団が流れ着く。レノによって村人たちから「流れ者」としてボイコットされる彼らと境遇を同じくするヴィアンヌは、そのリーダーである青年ルーと思いを交わす。そんな様子を知ったレノは、ますますヴィアンヌに対する風当たりを強めていく。 追い込まれたヴィアンヌはアルマンドに悩みを告白。自分の誕生パーティーを一緒に開こうというアルマンドの提案を受け、ヴィアンヌは多くの村人やジプシー達に声をかける。パーティーの席上でチョコレート料理を振る舞い、さらにはジプシーたちの船上で続きを行うことで村人たちとジプシーたちをある程度繋げさせることに成功し、明るさを取り戻すヴィアンヌであったが、その様子を見ていた村長とセルジュは彼女達に対する反感をより一層募らせていく。




2-3. ハロー・ドーリー

監督 ジーン・ケリー
出演 バーブラ・ストライサンドウォルター・マッソーマイケル・クロフォード
1969年・アメリカ(20世紀フォックス年)

解説
1964年1月以来現在まだ続演中のブロードウェイ・ミュージカル、「ハロー・ドーリー!」 の映画化。脚色は「サウンド・オブ・ミュージック」 のアーネスト・リーマンが、製作とともに担当。監督はジーン・ケリーで「プレイラブ48章」 につぐ演出である。撮影は「マイ・フェア・レディ」 のハリー・ストラドリング、作詞作曲は、ジェリー・ハーマン、音楽監督は、ライオネル・ニューマンである。美術デザインはジョン・デ・キュア、美術監督は、ハーマン・A・ブルメンタル、ジャック・マーティン・スミスが担当。編集はウィリアム・レイノルズ、ミュージカルには欠かせないダンス・ナンバーの振り付けは「スター!」 のマイケル・キッド。ほかに「バージニア・ウルフなんかこわくない」 でアカデミー賞を獲得したアイリーン・シャラフが衣裳を担当。出演は「ファニー・ガール」 のバーブラ・ストライサンド、「おかしな二人」 のウォルター・マッソー、ほかにマイケル・クロフォード、マリアン・マクアンドリュー、それにルイ・アームストロングなど。

ストーリー
美しくまだ若いドーリー(バーブラ・ストライサンド)は、道行く人たちにカードを配る。「あなたとあの人の心を結びつけてさしあげます……」飼料工場製造主ホレス(ウォルター・マッソー)は、口やかましい中年男で、金を大切にするだけが生活のような人間。ホレスの姪のアーメンガード(ジョイス・エームス)と画家アンブロース(トミー・テューン)の恋にも大反対。しかし自分は帽子屋の美しいアイリーン(マリアン・マクアンドリュー)と結婚するつもりなのだった。アイリーンとホレスを紹介したのは、ドーリーだが、彼女には2人の仲がいいのが面白くない。一方、ホレスの雇人コーネリアス(マイケル・クロフォード)とバーナビー(ダニー・ロッキン)は、恋人もなく寂しい毎日だった。これを見たドーリーは2人にアイリーンと彼女の店の助手エミー(E・J・ピーカー)が、恋の相手にピッタリと勧めた。がアイリーンの店で、コーネリアスたちは、こともあろうに、ホレスとぶつかり大騒動となってしまった。が、その場は何とかドーリーの機転できりぬけ、皆、後で食事をしようと約して別れた。高級料理店で、食事したものの皆、金がなく、アイリーンたちは逃げ出してしまった。そんな騒ぎの後で、ホレスはドーリーを見直し、結婚を申し込んだ。ドーリーは、青空を渡るような風のように幸福だった。




2-4. バード

監督 クリント・イーストウッド
出演 フォレスト・ウィテカーダイアン・ヴェノーラマイケル・ゼルニカー
1988年・アメリカ(ワーナーブラザーズ)

解説
バード」(Bird)は、クリント・イーストウッドが監督および製作をつとめた1988年のアメリカ映画。ジャズサックス奏者チャーリー・パーカーの音楽と生涯を描いた伝記作品である。カンザスシティで過ごした少年時代、チャン・リチャードソンとの結婚、そして34歳で夭逝するといった生涯の各場面をコラージュによって構成する手法を用いた。 題名はパーカーの愛称、Bird による。

ストーリー
54年9月1日、自殺を図り精神病院に収容されたバード(出演 Edward_Garlick: Forest_Whitaker)の脳裏に、18年前、16歳の時の故郷カンサス・シティでの記憶、ヘロイン中毒死した父の遺体、そしてレノ・クラブでのコンテストでシンバルを投げられた屈辱が蘇る。それから8年後の43年、ニューヨークの52番街のクラブで<ビ・バップ>を創始して成功を収めつつあるバードの演奏に、観客は熱狂している。その頃彼はダンサーのチャン(ダイアン・ヴェノーラ)と出会い、バードの音楽にはひかれてもプロボーズには応じない彼女に、サックスを質に入れ白馬を借りて、仲間の演奏をバックに颯爽とチャンを迎え、これによって彼女のハートを射止めた。やがて彼らは西部に進出するが、そこではビ・バップは侵略者扱いされ、バードは酒浸りとなり入院、そんな彼が再びニューヨークで仕事に戻れたのはチャンの奔走のおかげだった。49年はバードにとって飛躍の年となった。パリでのコンサート、「バードランド」の開店、白人トランペッター、レッド・ロドニー(マイケル・ゼルニカー)を仲間に引き入れた南部の演奏旅行で成功を収めるが、レッドが麻薬捜査官に逮捕され、ニューヨークで仕事がしにくくなりロスに旅立った頃から、バードに影が差し始める。娘ブリーの死、そして半年後の自殺未遂。ショック療法の勧めを断ったバードは、一家でウエストチェスターに移り静かに暮らそうとするが、彼は仕事に出ねばならなかった。52番街の変貌に驚くバードは、パラマウント劇場でのロックンロール・コンサートで、バスター・フランクリン(キース・デイヴィッド)演ずるところの“新しい音楽”のあまりの幼稚さを目にし、深いショックをうける。街をさまよい打ち合わせに遅れたバードに、エージェントはチャンに電話するよう勧める。彼女はいつになく優しく気遣わしげだ、まるでこれが最後の電話と予感しているかのように……。55年3月12日、チャーリー・“バード”・パーカーは死んだ。死因は心臓麻痺、34歳であった。




2-5. 善き人のためのソナタ

監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演 ウルリッヒ・ミューエマルティナ・ゲデックセバスチャン・コッホウルリッヒ・トゥクル
2006年・ドイツ(アルバトロス・フィルム)

解説
東ドイツのシュタージのエージェントを主人公にしたドラマで、当時の東ドイツが置かれていた監視社会の実像を克明に描いている。第79回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。

ストーリー
1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓っていた。ある日彼は、反体制の疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視するよう命じられる。さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、聴こえてくる彼らの世界にヴィースラーは次第に共鳴していく。そして、ドライマンが弾いたピアノソナタを耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられる。




2-6. めぐりあう時間たち

監督 スティーヴン・ダルドリー
出演 ニコール・キッドマンジュリアン・ムーアメリル・ストリープ
2002年・アメリカ(アスミック・エース)

解説
アカデミー賞主演女優賞に輝いたニコール・キッドマンら3大スター女優競演の話題作。小説「ダロウェイ夫人」 とともに3つの時代に生きる3人の女性の一日を描く群像ドラマ

ストーリー
1923年、ロンドン郊外のリッチモンド。作家のヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)は、病気療養のために夫レナード(スティーヴン・ディレイン)とこの町に住み、『ダロウェイ夫人』を執筆していた。そんな彼女のもとに、姉のヴァネッサ(ミランダ・リチャードソン)たちがロンドンから訪ねてくる。お茶のパーティーが終わり、姉たちが帰ったあと、ヴァージニアは突然駅へと急ぎ、追ってきたレナードにすべての苦悩を爆発させる。その悲痛な叫びにより、レナードは彼女と共にロンドンへ戻ることを決意するのだった。1951年、ロサンジェルス。主婦ローラ・ブラウン(ジュリアン・ムーア)は妊娠中。夫のダン(ジョン・C・ライリー)は優しかったが、ローラは彼が望む理想の妻でいることに疲れていた。今日はダンの誕生日。夜のパーティーを準備中、親友キティ(トニ・コレット)がやってきて、腫瘍のため入院すると彼女に泣きながら告げる。やがてローラは、息子のリッチー(ジャック・ロヴェロ)を隣人に預け、大量の薬瓶を持って一人ホテルへと向かう。その部屋で彼女は『ダロウェイ夫人』を開きながら、膨れた腹をさするのだった。2001年、ニューヨーク。編集者のクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)は、エイズに冒された友人の作家リチャード(エド・ハリス)の受賞パーティーの準備をしていた。彼女は昔、リチャードが自分につけたニックネームミセス・ダロウェイにとりつかれ、感情を抑えながら彼の世話を続けてきた。しかしリチャードは、苦しみのあまり飛び降り自殺。パーティーは中止になったが、そこにリチャードの母親であり、家族を失ってしまったローラが訪ねてくるのだった。




2-7. サラバンド

監督 イングマール・ベルイマン
出演 リヴ・ウルマンエルランド・ヨセフソンボリエ・アールステット
2003年・スウェーデン(シネフィル・イマジカ)

解説
北欧の名匠、イングマール・ベルイマンが20年ぶりに放つ新作。30年ぶりに再会した元夫婦とその子供たちが織り成す愛憎劇と、そのてん末を繊細に映し出した家族ドラマだ。

ストーリー
マリアン(リヴ・ウルマン)は、30年ぶりにかつての夫ヨハン(エルランド・ヨセフソん)に会うために、彼の別荘を訪ねる。別荘のそばには、ヨハンの息子のヘンリック(ボリエ・アールステット)とその娘のカーリン(ユーリア・ダフヴェニウス)が住み、二人はカーリンが音楽学校に入学するため、チェロの訓練を昼夜問わず重ねる。ある日、マリアンのもとへカーリンが飛び込んできて、初対面であるにも関らず、父親の激しい束縛と確執をぶつける。ある日、ヘンリックは父親のヨハンを訪ねる。ヘンリックはチェロをカーリンに買い与えるために、父親に借金を申し出た。しかし、侮辱にまみれた言葉で息子を追い詰めるヨハン。そこには50年にも渡る父子の憎しみの感情が横たわっていた。ヨハンは、父親であるヘンリックを通さず、カーリンへ直接ヨーロッパ有数の音楽学校からの入学の誘いの手紙を渡す。しばらくしてカーリンは、死の直前に母が書いた、ヘンリック宛の手紙を見つける。母は、ヘンリックの底なしの愛情がカーリンを束縛し深く傷つけることにならないか心配していた。母親の危惧が現実になったことに、カーリンは動揺するばかりだった。数ヵ月後に父娘コンサートが開催されることになった。曲はバッハの《無伴奏チェロ組曲第5番》サラバンド。しかし母親の手紙を隠していたことに怒りを隠せないカーリンは、父親にその思いをぶつけ、自分が探した音楽学校に入学することを決めたと宣言。絶望の淵に立たされたヘンリックは自殺未遂する。その夜、震えながら泣くヨハンをマリアンはなだめ、彼と一緒に寝る。なぜ不意に訪ねてきたか問うヨハンに、マリアンは「あなたが、呼んでいる」と答えるだけだった。




2-8. エーゲ海の天使

監督 ガブリエーレ・サルヴァトレス
出演 ヴァンナ・バルバディエゴ・アバタントゥオーノクラウディオ・ビガリ
1991年・イタリア(KUZUIエンタープライズ)

解説
エーゲ海を舞台に八人のイタリア兵たちの姿をユーモアと風刺を混じえて綴ったドラマ。九一年度アカデミー外国語映画賞受賞作品。監督はTurne(89 末)のガブリエーレ・サルヴァトレス。製作はジャンニ・ミネルヴィーニと「ボイス・オブ・ムーン」 のマリオ&ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ。脚本はヴィンセンツォ・モンテレオーネ。撮影はイタロ・ペットリッチョーネ。音楽はジャンカルロ・ビガッツィが担当。主演はギリシャ出身でこの作品で海外デビューのヴァンナ・バルバ、サルヴァトレス作品は三作目となるディエゴ・アバタントゥオーノ。

ストーリー
一九四一年、第二次大戦が勃発した年、エーゲ海の小島に八人のイタリア兵が上陸した。彼らの任務は島を敵から守り、報告することであった。モンティーニ中尉(クラウディオ・ビガリ)、ロルッツ軍曹(ディエゴ・アバタントゥオーノ)、中尉の従卒ファリーナ(ジュゼッペ・チェデルナ)、ムナロン兄弟(メーモ・ディーニ、ヴァスコ・ミランドラ)、ストラツァボスコ(ジージョ・アルベルティ)、ノヴェンタ(クラウディオ・ビジオ)、無線技師コラサンティ(ウーゴ・コンテ)、この八人から部隊は成る。第一日目の夜、暗闇からの足音で一斉射撃が始まる。その犠牲になったのはストラツァボスコの可愛がるロバだった。彼は撃った仲間に憤怒し無線機を岩に投げつけ壊してしまう。そして次に彼らの戦艦が爆撃に遭い本国と連絡のつけようがなくなってしまった。そしてある日、今まで隠れていた島の人が八人の前に現れた。彼らは島の住人とともに平穏な日々を過ごしていくようになる。ファリーナは娼婦のヴァシリサ(ヴァンナ・バルバ)を愛し結婚をする。そして他の者たちもそれぞれ夢のような生活を送っていた。しかし、ある日島にイギリス軍の船がやってきた。それは八人がこの島を離れ、国に帰ることを意味していた。ファリーナは帰国を拒み身を隠す。しかし、彼は血気盛んで祖国再建に燃える軍曹に見つかってしまう。だが軍曹はファリーナの心情を思いやり、それを見逃す。何十年か後、老人となったモンティーニが島を訪れる。そして彼はファリーナを訪ねる。だが妻のヴァシリアはこの世を去っていた。モンティーニはもう一人この島で思い出深い人に出会うことになる。それは軍曹だったロルッソだったのだ。




2-9. 消された記憶

監督 ジョン・ウー
出演 ベン・アフレックアーロン・エッカートユマ・サーマン
2003年・アメリカ(UIP)

解説
原題 Paycheck。SF小説の大家フィリップ・K・ディックの原作を、「フェイス/オフ」 のジョン・ウー監督が映画化。3年分の記憶を消された男の、決死の逃避行をスリリングに描くアクションだ。

ストーリー
情報化社会が進んだ近未来。フリーで仕事しているコンピューター・エンジニアのマイケル・ジェニングス(ベン・アフレック)は、数々のハイテク企業の極秘プロジェクトに参加して、高い報酬を受け取っては、毎回、その参加期間の記憶を消されていた。そして彼は、オールコム社のビッグ・プロジェクトに関わり、3年間もの記憶を消される。しかしそのあとに受け取った封筒には、ガラクタのような19個のアイテムと、確かに自分のサインが入った報酬辞退の誓約書が入っているだけだった。衝撃と不安に苛まれたジェニングスだったが、それに追い討ちをかけるように、FBIとオールコム社に雇われたエージェントが彼を追いかけ始める。窮地に陥ったジェニングスは、元雇い主である起業家ジミー・レスリック(アーロン・エッカート)に殺される前に、同僚であり恋人だったレイチェル(ユマ・サーマン)の助けを借りて、すべての謎を解くために奔走し始める。やがて封筒の中のアイテムは、ジェニングス自身が開発した未来予知マシンを破壊するよう誘導するために、任務終了の直前に自ら自分宛てに送ったものだと判明する。レスリックがそれを悪用するために、世界が滅亡してしまうからだった。かくしてジェニングスとレイチェルは、追っ手の攻撃をかわして命懸けで突き進み、ついにマシンを破壊することに成功するのだった。




2-10. 地下室のメロディー

監督 アンリ・ヴェルヌイユ
出演 ジャン・ギャバンアラン・ドロンヴィヴィアーヌ・ロマンス
1963年・フランス(東和=松竹映配=日本ヘラルド)

解説
監督はギャバンとベルモンドを組ませた「冬の猿」 や「野獣は放たれた」 のアンリ・ヴェルヌイユ。主演者には「ギャンブルの王様」 のジャン・ギャバンと「太陽はひとりぼっち」 のアラン・ドロン。またギャバンの女房に「地の果てを行く」「我等の仲間」 でギャバンと名コンビをうたわれたヴィヴィアーヌ・ロマンス。カジノの踊り子でドロンの手管にかかって利用される女ブリジットに「地下鉄のザジ」 のグラマー、カルラ・マルリエ、ドロンの義兄ルイにモーリス・ビローが扮している。撮影には「ヘッドライト」 のルイ・パージュ、ファンキィなモダンジャズのフィーリングをきかせた音楽は「戦士の休息」 のミシェル・マーニュ、そしてシナリオは「殺人鬼に罠をかけろ」 のミシェル・オーディアール、これにヴェルヌイユと「現金に手を出すな」 の原作者で、暗黒街のスラングの権威アルベール・シモナンが参加している。

ストーリー
五年の刑を終って娑婆に出た老ギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)は足を洗ってくれと縋る妻ジャネット(ヴィヴィアーヌ・ロマンス)をふりすてて、昔の仲間マリオを訪ねた。マリオはある計画をうち明けた。カンヌのパルム・ビーチにあるカジノの賭金をごっそり頂こうという大仕事だ。相棒が必要なので刑務所で目をつけていたフランシス(アラン・ドロン)と彼の義兄ルイを仲間に入れた。賭金がどのように金庫に運ばれるのかをたしかめると、シャルルは現場での仕事の段取りをつけた。各自の役割がきまった。決行の夜、フランシスは空気穴を通ってエレベーターの屋根にかじりついた。金勘定に気をとられている会計係とカジノの支配人の前に飛びおりた覆面のフランシスの手にマシンガンがあった。彼は会計係から、鍵を奪ってシャルルを表から入れた。札束を鞄に詰めると、シャルルとフランシスは、ルイの運転するロールス・ロイスを飛ばした。金は借りた脱衣所にかくした。警察が乗り出したころ、シャルルとフランシスは何食わぬ顔で別なホテルに納まっていた。完全犯罪は成功したのだ。しかし朝食をとりながら、眺めていた新聞のある記事と写真が一瞬シャルルの眼を釘づけにした。無表情な彼の顔に、かすかな動揺が起った。




2-11. 初恋の来た道

監督 チャン・イーモウ
出演 チャン・ツィイースン・ホンレイチョン・ハオチャオ・ユエリン
2000年・アメリカ 中国(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した、名匠チャン・イーモウによる感動のラブ・ストーリー。美しい四季を背景に、純粋無垢な少女の初恋がみずみずしくつづられる。

ストーリー
都会でビジネスマンとして働いているルオ・ユーシェン(スン・ホンレイ)が、父の急死の知らせを受けて数年ぶりに故郷の村へ帰ってくる。母(チャオ・ユエリン)は、古いしきたり通りに葬式をあげたいと願っていた。ユーシェンは部屋に飾られた父母の新婚当時の写真を見ながら、昔聞いた彼らのなれそめを思い出していた。町から教師として赴任してきた20歳のルオ・チャンユー(チョン・ハオ)と、彼に恋い焦がれる18歳の娘チャオ・ディ(チャン・ツィイー)。ディはなんとか自分の想いを彼に伝えようとし、やがて二人の間には恋心が通じ合う。そんなある日、チャンユーは町へ呼び戻されることになり、村の学校から姿を消してしまう。チャンユーが帰ってくるのを、雪の降りしきる冬の道でひたすら待つディ。村と町をつなぐこの一本道は、二人にとって大切な愛の道となった。葬式が終わり、息子ユーシェンは、父が一生立ち続けた教壇で、父が初めての授業のために書いた文章を読む。一方ディは、少女の日を思い出すように学校へ向って歩き出すのだった。




2-12. 引き裂かれたカーテン

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ポール・ニューマンジュリー・アンドリュースリラ・ケドローヴァ
1966年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
ヒッチコック監督の50本記念作品。ブライアン・ムーアが自分の原作を脚色、「マーニー」 のヒッチコックが演出したスパイ推理ドラマ。撮影をジョン・F・ウォレン、音楽はジョン・アディソンが担当している。主演は、「動く標的」 のポール・ニューマンと「サウンド・オブ・ミュージック」 のジュリー・アンドリュース。彼等をめぐり「その男ゾルバ」 のリラ・ケドロワ、「栄光への脱出」 のルドウィヒ・ドナート、バレリーナのタマラ・トゥマノヴァが絡んでいる。製作も、ヒッチコックが兼ねている。

ストーリー
アメリカからデンマークへ向かう1隻の客船。この船には、コペンハーゲンで開催される科学者国際会議に出席するため米宇宙委員会のマイケル(ポール・ニューマン)と婚約者で秘書のセーラ(ジュリー・アンドリュース)が乗っていた。そして目的地へ着く直前の日、マイケルの所へ秘密の連絡文が届いた。発信地は東ベルリンだった。コペンハーゲンへ行くのを止めて、東ベルリンへ行くといいだしたマイケルに、不安になったセーラは事の真相を糺したが、心配する必要はない、2、3日コペンハーゲンで待っているようにと笑うだけだった。何か重大なことがあると直感したセーラは、マイケルを追って東ベルリンへ向かった。空港にたったマイケルは秘密諜報員のグロメク(ウォルフガング・キーリング)の案内で東ベルリン秘密諜報機関長のゲルハルトに紹介された。マイケルは東ベルリン亡命を決意していたのだった。これは、アメリカで開発の進んだ核兵器、ガンマ5の秘密の共産圏漏洩の意味を持っていた。驚いたセーラはマイケルを売国奴となじったが、心底から彼を愛しているゆえ東ベルリンを去ることはできなかった。そうしたある日、田舎へ出かけ1人の農夫にあった。農夫はアメリカ諜報員で、マイケルはスパイ活動のため東ベルリンへ亡命のかたちをとり潜入していたのだ。アメリカのガンマ5研究も、東ベルリンのリント博士の研究がないと完成しなかったのだった。つまりガンマ5については高度の科学的知識が必要であり、マイケル送りこみを計画したのだ。しかし農夫との出会いを、尾行してきたグロメクに見つかったからたまらない。マイケルは彼を殺し農地へ埋める破目になった。着々と進んでいた計画の破綻。早急にリントの研究を盗み東ベルリンを離れないと計画も水の泡だ。リントにうまくとりいり研究をメモし終えた時、ゲルハルトの追及の手が伸びはじめた。マイケルとセーラの必死の逃亡生活が展開された。ゲルハルトの作戦は綿密で執拗だった。新聞は連日写真入りで事件を報道、2人は夜だけしか動くことができなかった。海岸に追いつめられた2人、逮捕は時間の問題と思われた時、危機一髪、フェリーボートが近づいた。アメリカ諜報機関の秘密船だった。九死に一生、2人はスウェーデン行きの船にまぎれこむことができた。―甲板では、いまこそ結婚できると、愛を確かめあうマイケルとセーラの熱い抱擁の姿があった。




2-13. 海外特派員

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジョエル・マクリーラレイン・デイハーバート・マーシャル
1940年・アメリカ(インターナショナル・プロモーション)

解説
第二次世界大戦直前のヨーロッパを舞台に、アメリカの新聞社から派遣されてきた特派員が巻き込まれる殺人事件と不穏な社会情勢を描いたサスペンス映画で、かつてTVで放映されたが劇場では初公開である。製作はウォルター・ウェンジャー、監督はアルフレッド・ヒッチコック、脚本はチャールズ・ベネットとジョーン・ハリソン、撮影はルドルフ・マテ、音楽はアルフレッド・ニューマンがそれぞれ担当。出演はジョエル・マクリー、ラレイン・デイ、ハーバート・マーシャル、ジョージ・サンダース、アルバート・パッサーマン、ロバート・ベンチリーなど。

ストーリー
1938年のある日、ニューヨーク・モーニング・グローブ紙の社長は、不穏なヨーロッパ情勢を取材する特派員として、最も威勢のいい記者ジョン・ジョーンズ(ジョエル・マクリー)を指名した。社長室に呼ばれたジョーンズは、そこでヨーロッパでの平和運動の大立者フィッシャー(ハーバート・マーシャル)と知りあった。やがてジョーンズは、ロンドンへ向かった。彼を迎えた前任者ステビンス(ロバート・ベンチリー)は既に記者魂を失った男だった。間もなくフィッシャーもロンドンに到着し、戦争防止の立役者オランダの元老政治家ヴァン・メア(アルバート・パッサーマン)の歓迎パーティを開き、ジョーンズは、そこでフィッシャーの美しい娘キャロル(ラレイン・デイ)と知りあった。アムステルダムで平和会議が開かれることになり、雨が激しく降りつける中、ジョーンズも取材のために出かけたが、彼の目前でヴァン・メアがカメラマンを装った男に拳銃で撃たれた。傘の間をぬって逃げた犯人は、待たせてあった車に乗り込んだ。ジョーンズは追跡すべく通りがかりの車に無理矢理乗り込んだが、その車には新聞記者フォリオット(ジョージ・サンダース)とキャロルが乗っていた。激しい追跡の末、3人の乗る車は風車の点在する田園地帯で停まった。ジョーンズは風車の1つが奇妙な動きをしているのに気づき、単身、小屋へ忍び込むが、そこには数人の不審な男たちと、先ほど撃たれたばかりのヴァン・メアがいた。彼はナチスのスパイに誘拐されていて、先の殺人は替え玉を使ったトリックだったのだ。やっとのことで、小屋から逃げだしたジョーンズは警官を連れて戻って来るが、すでに痕跡は全て消され、キャロルにも信用を無くしてしまった。ホテルに戻ったジョーンズを2人の警察官を装った男が訪ねた。危険を感じた彼は、窓づたいにキャロルの部屋に入り、彼女に事情を話して協力を得、船でロンドンに帰った。ところが、ジョーンズがキャロルを送ってフィッシャーの家へ行くと、あの風車小屋にいた男の1人がフィッシャーと談笑していたのである。フィッシャーはジョーンズにその男は情報を集めてくれる男だと釈明し、ジョーンズが真相を知りすぎて危険だからと言って、護衛として私立探偵をつけてくれた。しかし、この男は教会塔からジョーンズを突き落とそうとして、誤って自ら墜落してしまった。この事件でジョーンズは、フィッシャーが平和主義者の仮面の裏で、キャロルにも内緒でナチに協力し、しかもヴァン・メア誘拐の張本人であることを知った。ジョーンズはフォリオットと協力してヴァン・メアの居所をつきとめ、救出に成功した。おりから、ヨーロッパでは風雲急をつげ、開戦の号外がとびかっていた。ジョーンズがアメリカへ帰国する飛行機にフィッシャー父娘も乗りあわせていた。フィッシャーは機内で、アメリカに着くと同時に逮捕されることを知り、キャロルに、ドイツ人を父に持つ自分が祖国のためと信じ、ナチスに加担していたことを告げた。その時、ドイツ軍艦の攻撃で、飛行機は洋上に不時着し、その混乱の中でフィッシャーは自殺した。やがてジョーンズ、キャロルたちはアメリカ軍に救助された。そしてジョーンズは、この事件を伏せようとするアメリカ軍を巧みにゴマカし本社へ連絡し、特ダネをものにした。やがて、ロンドンが空襲をうける頃、ラジオ局で、ジョーンズとキャロルがアメリカ向けの放送で、雄弁に呼びかける姿が見られた。




2-14. 疑惑の影

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 テレサ・ライトジョゼフ・コットンマクドナルド・ケイリー
1942年・アメリカ

解説
レベッカ」「汚名」「白い恐怖」 のアルフレッド・ヒッチコック監督。主演女優テレサ・ライトはニューヨークの劇場出身。「ミニヴァー夫人」 で助演女優賞をうけ「ヤンキースの誇り」 でゲイリー・クーパーの相手役を演じた。ジョセフ・コットンは先般封切られた「恋の十日間」 でお馴染。1942年作品。

ストーリー
加州サンタ・ローザの町に住むニュートン一家は平和な生活を続けていたが長女のチャーリーは家庭を生々としたものにしたいと思いそのためには母の弟のチャーリー叔父に来てもらいたいと思っていた。当のチャーリー叔父はある犯罪のため身に迫る危険を知って加州へ高飛びして偶然にもニュートン一家に仮寓することになった。一家は悦んで彼を歓待した。ある日、ジャック・グラハムとサンダースという二人の男がニュートン家を訪れて来た。彼等は政府の調査員として米国の中流家庭の調査に来たとのふれこみだったがチャーリー叔父は彼等が探偵であることを見破り二人を避けていた。ところがうっかりしたところを写真に撮られたので怒ってフィルムを奪ったが、そのただならぬ様子に傍らにいたチャーリーは怪しんだ。その夜チャーリーはジャックから、彼等が叔父をある殺人事件の容疑者としてその確証を握りに東部の警察から派遣されて来たのだといわれ、協力を求められたが、叔父を信用しているチャーリーは、彼の申し出を固く断った。だが叔父が破り棄てた新聞の記事にも疑いを持った彼女は、早速図書館へ行き新聞の綴込みを調べると、金持ちの未亡人を次々に殺害して金を奪った犯人が西部へ逃亡した形跡があり、目下厳探中であると書かれてあった。そして最後の被害者の名前が、叔父から土産にもらった指輪の裏に刻まれている頭文と符合しているので、もはや叔父の犯罪を認めないではいられなかった。チャーリーは家族の名誉を守るために、叔父が捕縛される前に家から出そうと決心した。叔父に対して自分が総てを知っていると匂わせたり、証拠となるべき指輪を示して退去を迫ったが、叔父は平気な顔で滞在を続けるのであった。そして逆に自分の身の安全を計るために、事実を知っているチャーリーを殺そうとして、排気ガズを充満させたガレーヂに彼女を閉じこめたが幸いにも彼女は救われることが出来た。やがて叔父は自ら出発すると言い出した。彼は町で知り合った金持ちの未亡人と密かに他所へ行く予定だったのだ。出発の日叔父を見送りに列車内に入ったチャーリーの手を叔父はしっかり握り、列車が動き出しても話さず、彼女を車から突落して殺そうと計った。しかし列車に轢かれたのはチャーリー叔父だった。サンタ・ローザの教会で、彼の葬式が行なわれた時、チャーリーとジャックは二人だけが知っている事実を胸に秘めて参列していた。




2-15. 奇跡 (1954)

監督 カール・テオドール・ドライエル
出演 ヘンリク・マルベルイエミル・ハス・クリステンセンプレーベン・レーアドルフ・リュ
1954年・ベルギー、デンマーク(フランス映画社)

解説
 映画を通して常に真理を掴もうとしていたドライエルの、サイレント期の「裁かるゝジャンヌ」 に匹敵する重要作で、あちらが情熱的な祈りと信仰的葛藤の果てに辿り着く静謐な境地を描く映画だとしたら、おだやかな祈りが情熱のさざ波に洗われた末、見出す光を疑いなく信じる力強い作品がこの「奇跡」 だ。30年代のデンマーク・ユトランド半島の大農場主ボーエン家の人々の生き方(真面目だが信仰心の薄い長男、神学を追及しすぎて気がふれた次男、対立宗派の娘と結婚し悶着を起こす三男)を通じ、ドライエルは信仰の可能性を問うのだが、最後、一家を支える信仰篤き長男の嫁が難産の末に死に、その悲運に接し正気を取り戻した次男の敬虔な祈りで映画は幕を閉じる。それはまさにキリストの復活劇を思わす崇高な瞬間であり、常に幻想の衣を纏っていた映画が裸になり、夢そのものになるような至福を見させる。寡作なドライエルはそれから十数年後、いよいよキリストの伝記映画にとりかかる直前に病没した。

ストーリー





2-16. 黒い罠

監督 オーソン・ウェルズ
出演 チャールトン・ヘストンジャネット・リーオーソン・ウェルズ
1958年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
「マクベス(1948)」 以来のオーソン・ウェルズ監督作品の登場である。探偵作家ホイット・マスターソンの「悪の記章」 を原作とする、メリカ=メキシコ国境の町に起こった爆殺事件にからまる、両国の捜査刑事の対立と不気味な警察内部の腐敗が、国境町の風土感を生かして描かれる。撮影監督は「千の顔を持つ男」 のラッセル・メティ。音楽は「世界を駈ける恋」 のジョセフ・ガーシェンソン。主演は「悪魔に支払え!」 に次ぐウェルズ自身に「十戒(1957)」 のチャールトン・へストンと「ジェット・パイロット」 のジャネット・リー。その他「追想」 のエイキム・タミロフやジョセフ・カレイアなどの性格演技者が選ばれている。特別主演として「情婦」 のマレーネ・ディートリッヒ、「赤い風車」 のザザ・ガボールが登場。製作は「翼に賭ける命」 のアルバート・ザグスミス。

ストーリー
新妻スーザン(ジャネット・リー)と新婚旅行へ出発のため、国境の町にやってきたメキシコ政府特別犯罪調査官マイク・ヴァルガス(チャールトン・ヘストン)は、アメリカ領へ入った時、2人を追い抜いた豪華な乗用車が突如爆発したのを目撃した。ヴァルガスは職業がら、妻をホテルに帰して、休暇中にもかかわらず調査をはじめた。間もなくアメリカ側の警官がやってきた。捜査担当のハンク・ウィンラン警部(O・ウェルズ)は、足が不自由で、獰猛な性格の巨躯の持ち主で、自分の担当した事件でかならず犯人を挙げる男として知られていた。爆発した車中の2死体は、若いストリップ・ガールと町の富豪リネットカーのものと判明した。クィンラン警部はヴァルガスの介入を嫌ったが、上司の命令で協力を余儀なくされた。スーザンは現場からホテルに帰る途中見知らぬメキシコ人に情報提供をタネに誘われ、安ホテルでメキシコとアメリカをまたにかける暗黒街の顔役アンクル・ジョー・グランディ(エイキム・タミロフ)から、麻薬密売容疑で捕われている彼の兄の調査から夫の手を引かせるよう脅迫された。妻をアメリカ側ホテルに移したヴァルガスは、クィンランと共にリネカーの娘マーシァ(J・ムーア)と、若い夫サンチェスを尋問した。しかしアパートの洗面所の靴箱からクィンランが爆発の時のものと同型のダイナマイト発見した時、ヴァルガスは疑問を生じた。彼が先刻洗面所に入った時、箱は空だったのだ。念のためクィンランの扱った事件の記録を調べた彼は、このアメリカ警察の英雄の数々の功績が、無実の罪を強引に作り上げる虚偽の工作から成立しているのを発見した。弱味を探られたのを知ったクィンランは顔役グランディと図ってスーザンを誘拐し、麻薬窟に彼女を半裸にして失神させておき、彼女のストッキングでグランディを絞殺し、死体を傍らに放置した。スーザンは逮捕された。この時、クィンランの部下メンジスが、グランディの死体の近くで、クィンランの常用する杖を発見し、ヴァルガスに協力を誓った。マイクロフォンを服の下に隠したメンジスは、クィンランを誘い出して無実の罪を作った事実を聞き出し、ヴァルガスが形態無電録音器にこれを録音した。しかしコンクリートの橋に2人がさしかかった時、反響から、クィンランは事情を察知した。怒ってメンジスを射ったクィンランは、素手のヴァルガスに1弾をうち込もうとした時、瀕死のメンジスがはなった弾をうけて射殺された




2-17. 太陽に灼かれて

監督 ニキータ・ミハルコフ
出演 ニキータ・ミハルコフインゲボルガ・ダプコウナイテオレグ・メシーコフ
1994年・ロシア フランス(ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)

解説
旧ソ連映画を代表する名匠ニキータ・ミハルコフが30年代のスターリンの大粛清をテーマに、激動の時代に引き裂かれた男女の悲劇を描いた人間ドラマ。ミハルコフが主演を兼ね、脚本をルスタム・イブラギムベーコフと共同で執筆、製作にも参加。撮影は「ウルガ」 のヴィレン・カルータ。美術はウラジミール・アロニン、アレクサンドル・サムレキン。録音はフランスのジャン・ウマンスキー、編集はイタリアのエンツォ・メニコーニ。音楽は「惑星ソラリス」 などタルコフスキー作品で知られ、「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」「ウルガ」 でもミハルコフと組んだエドゥアルド・アルテミエフ。出演はほかに「恋愛小説」 のインゲボルガ・ダプコウナイテ、ミハルコフの末娘ナージャ、舞台の名優でミハルコフの「絆」 などのオレグ・メシーコフ。主題歌はロシアン・タンゴの名曲「疲れた太陽」。67回米アカデミー外国語映画賞、94年カンヌ映画祭審査員グランプリ受賞。キネマ旬報外国映画ベストテン第6位。

ストーリー
36年の夏、旧貴族階級の青年ディミトリ(オレグ・メーシコフ)が住むモスクワには粛清の嵐が吹き荒れていた。革命の英雄コトフ大佐(ニキータ・ミハルコフ)は田園地帯の避暑地“芸術家村”で若妻マルーシャ(インゲボルガ・ダプコウナイテ)とその一族、娘のナージャ(ナージャ・ミハルコフ)とともに幸福な日々を送っていた。ある日サングラスの髭面の老人が彼らを訪問。それはかつて家族同然に親交があったディミトリの変装だった。一家は再会を喜び、ナージャもすぐになつくが、大佐は彼が妻の昔の恋人だと知っていた。一家は川に遊びにいく。大佐はナージャと遊び、二人きりになったマルーシャとディミトリのあいだには昔の情熱が甦る。“毒ガス避難訓練”のドタバタ騒ぎで川遊びは中断。お茶の時間に、ディミトリはナージャ相手のおとぎ話を装いつつ自分が国外に派遣されたのは大佐の差し金だったと暗示する。午睡の最中、マルーシャは大佐と愛し合いながらディミトリのことを問う。大佐はその話は事実で、国外派遣は貴族出身の彼の安全を守るためだったが、彼女の心を独占したい気もあったと告白、マルーシャは夫と愛を確かめ合う。午睡のあと、ナージャと大佐、ディミトリは家の裏の森でボール遊びをする。大佐はボールを取りに行く振りをして藪のなかにディミトリを呼び、彼の本当の目的を問う。大佐は彼が粛清を実行する秘密警察のメンバーだと知っていた。ディミトリは去り、黒い車の仲間たちを連れて戻ってくる。大佐は仕事でモスクワに行くと家族に告げ、軍服姿で車に乗る。途中、麦畑の真中で一行は立ち往生するトラックと出会う。トラックの運転手はすぐに英雄の大佐に気づく。秘密警察たちは大佐に暴行を加え、運転手を射殺して出発する。その前方に巨大なスターリンの肖像を吊るした気球が舞い上がる。翌朝、モスクワのアパートには手首を切ったディミトリが横たわっていた。




2-18. ああ結婚

監督 ヴィットリオ・デ・シーカ
出演 ソフィア・ローレンマルチェロ・マストロヤンニアルド・プリージ
1964年・アメリカ(ヘラルド)

解説
エドアルド・ド・フィリッポの原作を、レナート・カステラーニ、トニノ・グエッラ、レオ・ベンヴェヌッティ、ピエロ・デ・ベルナルディらが共同で脚色、「昨日・今日・明日」 のヴィットリオ・デ・シーカが監督したコメディ。撮影は「禁じられた恋の島」 のロベルト・ジェラルディ、音楽は「昨日・今日・明日」 のアルマンド・トロヴァジョーリが担当した。出演はソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、アルド・プグリージなど。製作はカルロ・ポンティ。

ストーリー
ドメニコ(マルチェロ・マストロヤンニ)が若い妻を迎えることに上機嫌になっているところ、彼の内妻フィルメーナ(ソフィア・ローレン)が急病で入院したと知らせをうけた。後悔と良心の苛責の中で彼女との思い出をたぐりはじめた。−−フィルメーナはナポリのスラムで無知と極貧のなかに育った。そして戦時中商売女というおきまりのコースを辿った。初めての男がドメニコだった。戦争は終った。闇商売で儲けたドメニコがフィルメーナと再会した。そして2人の関係は続いた。フィルメーナはドメニコと結婚することが最大の願いだったが、彼の方は結婚だけはどうしても承知しなかった。ドメニコはフィルメーナを自分の家に連れていったことはあったが、部屋は女中部屋だった。20年の歳月が流れた。フィルメーナの臨終の床にきたドメニコは、もうすぐ死ぬのだからと思って、結婚式をあげた。ところが彼女は奇跡的に助かってしまった。また彼女には田舎に3人の息子をあずけてあった。その1人が自分の子だと知ったドメニコは、誰がそうなのか知りたがった。そのうち、本当に愛し合っていることを知った2人は、3人の息子の前で改めて結婚式をあげた。




2-19. 翼よ!あれが巴里の灯だ

監督 ビリー・ワイルダー
出演 ジェームズ・スチュアートマーレイ・ハミルトンパトリシア・スミス
1956年・アメリカ(ワーナー・ブラザース)

解説
世界最初の大西洋横断無着陸飛行の成功者チャールズ・A・リンドバーグの同名の自伝回想録の映画化。「七年目の浮気」 のビリー・ワイルダーと、ウェンデル・メイスが共同脚色、「紳士は金髪がお好き(1953)」 のチャールズ・レデラーが脚色、ワイルダーが監督した。撮影監督は「間違えられた男」 のロバート・バークスと「太鼓の響き」 のペヴァレル・マーレイ、空中場面はトーマス・タットワイラーが担当した。音楽は「地獄の翼」 のフランツ・ワックスマンが作曲指揮、レオニード・ラーブが編曲した。主演は「知りすぎていた男」 のジェームズ・スチュアート。バートレット・ロビンソン、パトリシア・スミス、マーク・コネリーなどが助演する。なお「シネラマ・世界の七不思議」 の監督の1人、飛行家のポール・マンツが空中場面の監修をしている。

ストーリー
1926年、ニューヨーク〜パリ無着陸飛行の最初の成功者に与える25000ドルのオーテエイグ賞の設定が発表される。若きリンドバーグ(ジェームズ・スチュアート)はそれを目指し、セントルイス飛行クラブ会長ナイト氏とともに、町の実業家を訪ねて資金の寄付をあおぐ。銀行の頭取など町の有力者たちは経済上の支援者となり、飛行機の名は郷土の名をとって「セントルイス魂号」と名づけられた。が、肝心の飛行機は、これから買わなければない。まず見つけたニューヨーク、コロンビア航空会社のベランカ機は、操縦者のリンドバーグが無名だという理由で、買取を拒絶される。失意のリンドバーグは次に後援者の紹介で、カリフォルニア州サン・ディエゴの小工場ライアン航空会社を訪れる。工場長マホニーと設計主任ホールは、幸い彼の申し出を快諾する。時に1927年3月、ラジオは、バード中佐ら数名のアメリカ側、ナンジェッセとコリーラのフランス側の飛行家たちが、多発機で横断飛行準備中と伝えていた。ぐずぐずしていれば、誰かに先を越される。リンドバーグの頼みで、マホニーらは大急ぎで飛行機を完成させる。それに乗ったリンドバーグは直ちにセントルイスへ戻る。が折も折、パリを発ったナンジェッセとコリーが、大洋上で行方不明となる。この不祥事に後援者たちはリンドバーグの身を心配し、横断飛行を中止しようとする。しかし固い決意のリンドバーグは、発進地ニューヨークのルーズヴェルト飛行場に向かう。5月19日、その日は天候が乱れていた。いよいよ20日、午前7時52分、雨で荒れた飛行場から多くの人の声援に送られ、リンドバーグは3600万マイル彼方のパリを目指して飛び立った。大圏コースをたどり正午までにノヴァ・スコティアの上空を通過、濃霧に悩まされながらも「セントルイス魂号」は、好調の飛行を続けた。だが前夜一睡もできなかったリンドバーグは、度々睡魔に襲われる。睡魔と戦う彼の頭には、最初の単独飛行のこと、空中サーカスで曲乗師をやっていたことなどが、走馬燈の絵のように続く。アメリカ大陸を後に、機は大西洋上にかかった。夜になりニューファウンドランド東方に来たとき雷雲層に入り、突然、機は凍結し始める。ようやく大迂回して機の氷を叩き落としたが、リンドバーグは完全に疲れ切った。しかし夜が明け2日目、遂にアイルランドの緑の海岸を発見、彼は最後の力を振い起した。そして不休51時間の末、遂に機は日没のパリに近づき、サーチライトの煌々と光るル・ブールジェ飛行場に、世紀の着陸を遂げる。所要時間33時間39分20秒。リンドバーグは何十万の観衆の歓呼に迎えられた。そしてニューヨークに帰った彼は、400万の市民に迎えられて輝かしい壮挙を讃えられた。




2-20. ラスト・オブ・モヒカン

監督 マイケル・マン
出演 ダニエル・デイ・ルイスマデリーン・ストウジョディ・メイ
1992年・アメリカ(東宝東和)

解説
1825年に発表された、ジェームズ・フェニモア・クーパーの小説「モヒカン族の最後」を原作に、18世紀、建国前夜のアメリカ東部を舞台に、インディアンに育てられた白人青年と、イギリス人大佐令嬢の愛を描く歴史ドラマ。監督・脚本・製作は「刑事グラハム 凍りついた欲望」 のマイケル・マン、共同製作はハント・ローリー、エグゼクティヴ・プロデューサーは「フリージャック」 のジェームズ・G・ロビンソン、共同脚本はクリストファー・クロウ、撮影は「恋のためらい フランキーとジョニー」 のダンテ・スピノッティ、音楽は「ミシシッピー・バーニング」 のトレヴァー・ジョーンズと「キンダガートン・コップ」 のランディ・エデルマンが担当。主演は「マイ・レフトフット」 のダニエル・デイ・ルイス、「不法侵入」 のマデリーン・ストウ。

ストーリー
1757年、独立前夜のアメリカ東部。コーラ(マデリーン・ストウ)は妹アリス(ジョディ・メイ)と共に、英軍を率いる父、マンロー大佐(モーリス・ローヴス)に会うため、植民地争いの最前線へと向かっていた。護衛隊を指揮するヘイワード少佐(スティーヴン・ワディンソン)に求婚されていたが、答えを出せずにいる。突然仏軍側のインディアン、マンロー大佐の軍に妻子を殺されたマグア(ウェス・ステューディ)率いるヒューロン族が一行を襲った。コーラに銃口が向けられた時、モヒカン族の酋長チンガチェック(ラッセル・ミーンズ)と2人の息子、ウンカス(エリック・シュウェイグ)とホークアイ(ダニエル・デイ=ルイス)が現れ彼女を救った。ホークアイは、イギリス人開拓者の孤児だった。彼らは大佐の待つ砦に一行を案内する。コーラとホークアイは愛し合うようになっていた。だが、嫉妬にかられたヘイワードがホークアイを反逆罪で捕え、牢に入れてしまう。仏軍の猛攻の前に、やむなく降伏したマンロー大佐らは砦を出るが、そこへまたヒューロン族が襲いかかった。混乱の中コーラを救うホークアイ。酋長とウンカスも駆け付けアリスを救い出すが、大佐は命を落とす。逃避行の中で、ウンカスとアリスの間にも愛が芽生えていた。一行は激流を下るが、ホークアイは、コーラにヘイワードと共に別行動をすすめ、説き伏せると、目もくらむ高さの滝を飛び降りていった。しかしコーラとアリスはヒューロン族に捕らえられてしまう。ホークアイはヘイワードを通訳にしてヒューロン族の酋長に2人を助けてほしいとかけ合うが、酋長は、コーラを八つ裂きの刑にして、アリスはマグアと結婚させると宣言、コーラの身代りに自分を殺せというホークアイの言葉を、ヘイワードは、自分をと言い換え、コーラの代わりに処刑される。コーラとホークアイは釈放されるが、ウンカスが単身アリスを助けに乗り込み、殺される。アリスも投身自殺し、激怒したチンガチエックは、一族と共に戦い、マグアを倒した。最後のモヒカン族はお前だ、とチンガチエックに言われたホークアイは、コーラと結ばれ、新しい時代に向かって歩み出すのだった。




2-21. 霧の中の風景

監督 テオ・アンゲロプロス
出演 ミカリス・ゼーケタニア・パライオログウストラトス・ジョルジョグロウ
1988年・ギリシャ フランス(フランス映画社)

解説
父を探し求めてアテネからドイツを旅する幼い姉弟の姿を描く幻想譚。製作・監督・原案・脚本は「シテール島への船出」 のテオ・アンゲロプロス、共同製作はエリック・ウーマン、ラグビール・ヤーダウ、共同脚本はトニーノ・グエッラ、タナシス・ヴァルティノス、撮影はヨルゴス・アルヴァニティス、音楽はエレニ・カラインドロウが担当。出演はミカリス・ゼーケ、タニア・パライオログウほか。

ストーリー
夜のアテネ駅。11歳の少女ヴーラ(タニア・パライオログウ)と5歳の弟アレクサンドロス(ミカリス・ゼーケ)は、ドイツにいる父に会いに行きたいが、列車に乗る勇気はなかった。しかしある日、ついにふたりは列車に飛び乗り、切符がない2人はデッキで身を寄せて眠る。そしてヴーラは父に向けて話しかけるのだった。無賃乗車を車掌にみつかった2人は途中の駅で降ろされ、ヴーラは駅長(ミハリス・ヤナトゥス)に伯父さんに会うのだ、と答える。伯父(ディミトリス・カンベリディス)の勤める工場のコントロール・ルームで警官(コスタス・ツァペコス)に、ふたりは私生児で父はいない、と語る伯父の話を立ち聞きしたヴーラはショックをうける。そして警察署に連れていかれたふたりはそこから逃げ出し、夜行列車に乗り込み、旅を続けるのだった。山道で、ふたりはオレステス(ストラトス・ジョルジョグロウ)という旅芸人一座の青年の運転するトラックに乗せてもらい、町はずれの広場にやって来る。その夜、2人はオレステスから霧がかかったように白いだけで何も写っていないフィルムの切れはしをもらう。雨のハイウェイで2人はトラックの運転手(ヴァシリス・コロヴォス)の車に乗せてもらうが、翌朝アレクサンドロスが眠っている間にヴーラは運転手に犯される。ふたりの乗った列車に警官たちが乗り込んでき、逃げた工場でオレステスに再会する。ふたりはオレステスのオートバイで海岸を走り、テサロニキ駅にたどりつく。ふたりは夜の列車に乗ることにする。徴兵され軍に入るオレステスは、オートバイを売るためひとりの青年(ソクラテス・アラフォウツォス)と出て行き、残されたふたりは追いかけてきたオレステスを振り切り、夜のハイウェイを歩く。北方の駅で、ヴーラは人のよさそうな兵士(イェラシモス・スキアダレシス)を誘い切符代を稼ごうとするが、彼は何もせず金を投げ捨てるようにして去った。列車に乗ったふたりは、旅券がないので夜、川べりで監視の目を盗んでボートに乗る。彼らに向けて放たれる一発の銃声。翌朝、霧の中で目覚めたふたりの前に、緑の草原と一本の木が現われ、ふたりは木に向かって歩き出すのだった。




2-22. マイアミ・バイス

監督 マイケル・マン
出演 コリン・ファレルジェイミー・フォックスコン・リー
2006年・アメリカ(UIP)

解説
'80年代に大ヒットした人気刑事ドラマの映画化。楽園都市、マイアミを舞台に、コリン・ファレル&ジェイミー・フォックスが、青い海をバックに強烈なアクションを展開する!

ストーリー
米国フロリダ州の楽園マイアミ。マイアミ警察特捜課、通称バイスの刑事コンビ、ソニー・クロケット(コリン・ファレル)とリカルド・タブス(ジェイミー・フォックス)は、仕事では抜群のチームワークだが、私生活ではプレイボーイのクロケットと、恋人トルーディに一途なタブスは正反対だった。ある日、2人が使っている情報屋が家族を殺され、自分もフリーウェイに身を投げて自殺する事件が発生。さらにFBIの潜入捜査官2人も囮捜査の現場で殺される。どうやら南米と北米を結ぶ巨大なドラッグ密輸コネクション《ニュー・アンダーワールド・オーダー》に、合衆国司法機関の合同捜査の極秘情報が大量に漏えいしているらしい。FBIは合同捜査と関係がないマイアミ・バイスに白羽の矢を立て、《ニュー・アンダーワールド・オーダー》の拠点である南米コロンビアに乗り込み、麻薬ディーラーとして組織と接触し、情報漏えいのルートを見つけ出す特別任務を彼らに与える。無事に生還できる可能性は、限りなくゼロに近い。上司カステロは反対するが、クロケットとタブスは要請を引き受ける。マイアミにパワーボートを使って密輸していた一味のアジトを急襲し、大量のドラッグを強奪したクロケットとタブスは、そのままプライベート・ジェットで南米の奥地の危険地帯に乗り込む。組織のキーマン、ホセ・イエロと接触するのに成功した2人だが、相手はなかなか警戒心を解かない。そこで意外にも、組織の大物と密接な関係がある謎の美女、イザベラ(コン・リー)が、クロケットたちに近づく。クロケットとイザベラはハバナへ向かい、急速に恋に落ちる。同じ頃、南米の組織は合衆国が自分たちに潜入捜査官を放ったことを察知していた。マイアミに戻ったクロケットとタブスに報復の手が迫ろうとしていた。




2-23. インサイド・マン

監督 スパイク・リー
出演 デンゼル・ワシントンクライヴ・オーウェンジョディ・フォスタークリストファー・プラ
2006年・アメリカ(UIP)

解説
「マルコムX」 のスパイク・リー監督&デンゼル・ワシントン主演による犯罪サスペンス。ジョディ・フォスター、クライブ・オーウェンほか豪華キャストたちが頭脳戦を繰り広げる。

ストーリー
ダルトン・ラッセル(クライブ・オーウェン)をリーダーとする4人の銀行強盗が、マンハッタン信託銀行を占拠した。通報を受け、NY市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)とミッチェルは現場に急行する。フレイジャーは以前関った麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに、今回の事件は汚名返上のチャンスだったのだ。また、銀行の取締役会長アーサー・ケイスの命を受けて、ニューヨークでも指折りの弁護士マデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)も呼び出される。銀行内では、ダルトンたちは人質全員にジャンプスーツと覆面を着用させ、自分たちと同じ格好をさせていた。これでは誰が人質で誰が犯人なのか、区別できない状態となる。ダリウス警部率いる作戦指令車には、犯人との電話回線などの全ての準備が整った。その時、人質の老人が解放され、犯人から「警官が近づいたら人質を2人殺す」とメッセージが伝えられる。そんな中、人質がまた一人解放され、犯人からの要求が明らかになる。人質の首に下げられたボードには、「ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある」と書かれていた。警察側は、要求されたピザの箱に盗聴器をセットして銀行内に運び込む。そんな時、マデリーンが市長を伴って現場に現れ、政治レベルの問題をちらつかせながら事件に介入してくる。実はマデリーンは、ケイスから貸金庫にまつわる個人的な密命を受けていた。事件は混迷の度を深めていくが、フレイジャーは遂にダルトンとコンタクトをとることに成功する。




2-24. ワイルド・ワイルド・ウエスト

監督 バリー・ソネンフェルド
出演 ウィル・スミスケヴィン・クライン
1999年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
破天荒な連邦特別捜査官コンビの活躍を描く娯楽アクション大作。往年の同名TVシリーズ(65〜69)の映画化で、監督は「メン・イン・ブラック」 のバリー・ソネンフェルド、主演には同作のウィル・スミスが登板。脚本は「トレマーズ2」(V)のS・S・ウィルソンとブレント・マドック、ジェフリー・プライス、ピーター・S・シーマン。原案はジム・トーマスとジョン・トーマス。撮影は「エアフォース・ワン」 のミハエル・バルハウス。音楽は「ディープエンド・オブ・オーシャン」 のエルマー・バーンスタイン。SFXはILMがつとめ、視覚効果監修をエリック・ブレヴィグが担当。共演は「アイス・ストーム」 のケヴィン・クライン、「セレブリティ」 のケネス・ブラナー、「パラサイト」 のサルマ・ハエック、「北京のふたり」 のバイ・リン、「マッド・シティ」 のテッド・レヴィン、「評決のとき」 のM・エメット・ウォルシュ。

ストーリー
1869年、西部開拓時代のアメリカ。名うての捜査官の合衆国陸軍第9連隊騎兵隊大尉ジェームズ・ウェスト(ウィル・スミス)は、発明狂の法執行官アーティマス・ゴードン(ケヴィン・クライン)とコンビを組んで、科学者を誘拐して超強力な秘密兵器を製造し合衆国を脅迫してきた謎の一団の捜査を、グラント大統領(ケヴィン・クライン=二役)から命じられた。かねて追跡していた流血将軍こと元南軍のマグラス将軍(テッド・レヴィン)の行方を追ったふたりは、博士である父を探しているという女性リタ(サルマ・ハエック)に出会い、やがて事件の黒幕が南部きっての陰謀家にして天才発明家のアーリス・ラヴレス博士(ケネス・ブラナー)だと知る。ラヴレスはゴードン開発の特別機関車ワンダラー号を襲撃してふたりを砂漠に追い放った。ふたりが四苦八苦して脱出を試みる間に、ラヴレスはひそかにつくりあげた巨大なタランチュラ型の移動兵器で、ユタでの大陸横断鉄道の開通式典に出席していたグラントを誘拐、列強の代表団を集めてラヴレス帝国の誕生をぶちあげる。しかしウェストとゴードンはラヴレスに勝負を挑んで彼を倒し、大統領を救出してみごと合衆国の危機を救うのだった。




2-25. L.A.コンフィデンシャル

監督 カーティス・ハンソン
出演 ケヴィン・スペイシーラッセル・クロウガイ・ピアース
1997年・アメリカ(日本ヘラルド映画)

解説
50年代初期のロサンジェルスを舞台に、ある殺人事件をめぐり、警察と暗黒組織でうごめく人間模様を描いたサスペンス。ロサンジェルスを舞台にした一連のミステリーで知られる作家ジェームズ・エルロイの同名小説(邦訳・文春文庫)の映画化。監督は「激流」 のカーティス・ハンソン。脚本(共同製作も)は「陰謀のセオリー」「ポストマン」 のブライアン・ヘルゲランドとハンソンの共同。製作はハンソン、「ディアボロス 悪魔の扉」 のアーノン・ミルチャン、「心の指紋」 のマイケル・ネイサンソンの共同。製作総指揮は「サバイビング ピカソ」 のデイヴィッド・L・ウォルパー、「セブン」 のダン・コルスラッド。撮影は「ヒート」 のダンテ・スピノッティ。音楽は「追跡者」 のジェリー・ゴールドスミスで、50年代当時のヒット曲がスクリーンを彩る。美術は「真実の行方」 のジニーン・オプウォール。編集は「ロブ・ロイ ロマンに生きた男」 のピーター・ホーネス。衣裳は「Emma エマ」 のルース・マイアーズ。出演は「真夜中のサバナ」 のケヴィン・スペイシー、「クイック&デッド」 のラッセル・クロウ、「プリシラ」 のガイ・ピアース、「ベイブ」 のジェームズ・クロムウェル、「プレタポルテ」 のキム・ベイシンガー、「レインメーカー」 のダニー・デヴィート、「激流」 のデイヴィッド・ストラザーンほか。97年度(第70回)アカデミー賞最優秀脚色賞・助演女優賞(キム・ベイシンガー)受賞。98年度キネマ旬報ベスト・テン第1位。

ストーリー
53年末、L. A. 。ダウンタウンのナイト・アウル・カフェで6人の男女が惨殺された。ロス市警は捜査を開始、事件の背景に、白ユリの館というハリウッドの有名女優に似せた娼婦たちを擁する秘密売春組織の存在が浮かぶ。女性に暴力をふるう男を許さない熱血漢バド・ホワイト刑事(ラッセル・クロウ)は、高級娼婦リン(キム・ベイシンガー)に接近するが、いつしか彼女と恋に落ちる。一方、野心家で出世のためには手段を選ばないエド・エクスリー警部補(ガイ・ピアース)は、おのれの方針に従って捜査を続けるがバドと対立。そこでエドは、『LAコンフィデンシャル』というタブロイド誌の記者シド(ダニー・デヴィート)と結託して羽振りをきかせ、刑事ドラマ『名誉のバッジ』のアドヴァイザーも務める狡猾なジャック・ヴィンセンズ刑事(ケヴィン・スペイシー)に協力を求める。捜査が進むうち、事件の背後には、街のボスだったミッキー・コーエン逮捕後の縄張りをめぐる、ヘロインをはじめとする利権争いがからんでいるのが判明。真犯人はなんとバドらの上司で刑事課のボス、ダドリー・スミス警部(ジェームズ・クロムウェル)だった。核心に迫ろうとしたジャックはスミスの自宅を訪ねたが、あえなく殺された。エドはリンに誘惑され情事に及ぶが、その光景をシドがカメラに収める。スミスと裏でつながる売春組織の元締め、ピアス・パチェット(デイヴィッド・ストラサーン)が仕掛けた罠だった。シドは事件の関係者としてスミスらに尋問され、それに立ち会ったバドは、エドとリンの情事を知って激怒。シドは始末された。市警の資料室にいたエドにバドは襲いかかるが、エドは事件解明のために手を組もうとバドを説得。ふたりは地方検事を締め上げ、例の殺人もスミスの手によるもので、彼の目的がコーエン亡き後、ロサンジェルスの裏社会を支配することだと知る。ピアスはすでに殺されていた。ふたりはスミスを会合場所のヴィクトリア・モーテルで待ち受け、死闘の末、スミスを倒すのだった。




2-26. 魂のジュリエッタ

監督 フェデリコ・フェリーニ
音楽 ニーノ・ロータ
出演 ジュリエッタ・マシーナマリオ・ピスーサンドラ・ミーロ
1964年・イタリア(東和=ATG)

解説
 イタリアの名匠フェデリコ・フェリーニが、夫の浮気に悩む妻の不安、葛藤を描く。時おり挿入される、色鮮やかな映像で綴った回想、妄想シーンがフェリーニ独特の雰囲気を醸し出す。

ストーリー
ローマ郊外の閑静な住宅地に住む中年の夫婦ジョルジョ(M・ピス)とジュリエッタ(G・マシーナ)の結婚記念日。ジュリエッタは着飾って、夫の帰宅を待ちわびていた。夫婦だけで静かにすごしたいと考えていたジュリエッタだったが、夫は招かざる多勢の客をつれて帰ってきた。彼女はあたりの賑やかさとはうらはらに、だんだん気が滅入っていく自分をどうすることもできなかった。ジュリエッタは献身的で貞淑な妻だった。夫に対する気持は、結婚当座と少しも変ってはいなかったが、その夜の気持は、いつもと少し変っていた。もうあまり若くない自分。初めて、あせりのようなものを感じた。そして、もかしたら、夫に愛人がいるのではないか……などとさえ考えた。彼女は鏡にむかい、自分の顔と対話しているうちに、いつしかとめどない妄想が拡がっていく。そして夢幻の世界をさまよい、子供の頃の記憶がよみがえり、時に寓話の世界が現出する。その幻は、夫を誘惑するであろう色々のタイプの女性の姿をとるときもある。それは残酷で脅迫的だったり、あるものは、荒唐無稽だったり、異常ですらあった。そして、ふとわれにかえる時、夫への疑惑は耐え難いほどにふくれ上り、心の傷はますます深くなっていった。彼女は心霊術師を訪ねて悩みをうちあけ、興信所に夫の素行調査をたのんだりした。一方彼女は、女ともだちのスージイを訪ね、男性遍歴が生き甲斐だという彼女から、浮気のお膳立てを、ととのえてもらったりした。しかし、浮気のできるジュリエッタではない。興信所の調査で、夫の不貞の証拠をみせられたジュリエッタは、完全に見捨てられたことを感じた。彼女にとっては、夫の愛がすべてだったのだから。夫が出張で出かける日、ジュリエッタは涙をいっぱいうかべて、見送った。これが最後かもしれない。ジュリエッタは再び幻想の世界へ入る。しかし誰も彼女を救ってくれはしない。そして幻との対話をやめた時、傷ついたジュリエッタの心の中に、かすかな希望がよみがえってくるのだった。




2-27. 旅するジーンズと16歳の夏

監督 ケン・クワピス
出演 アンバー・タンブリンアメリカ・フェレーラブレイク・ライブリー
2005年・アメリカ(ワーナー)

解説
世界的なベストセラー小説「トラベリング・パンツ」 に基づく青春劇。仲良し少女4人組が、それぞれの旅先で悩みながらも成長し、友情を確かめ合う姿を描く。

ストーリー
母親たちがマタニティ教室で知り合い、以来、ずっと一緒に同じ気持ちを分かち合ってきた4人。自由奔放なブリジット(ブレイク・ライブリー)、内気なリーナ(アレクシス・ブルーデル)、皮肉屋のティビー(アンバー・タンブリン)、情熱的なカルメン(アメリカ・フェレーラ)。性格はまったくバラバラでも、お互いに誰よりも分かり合っている大切な存在。つらい時も4人でいたから乗り越えてくることができた。カルメンの父親が家を出ていった時も、10歳以上も年の離れた弟の誕生にティビーが憤慨した時も、そして、ブリジットの母親が自ら命を絶った時も…。他人には心を閉ざしてしまうリーナも、彼女たちと一緒なら自分らしくいられる。そんな4人が初めて別々に過ごすことになった16歳の夏。リーナは祖父母の住むギリシャへ。カルメンは別れて暮らす父親のもとへ。ブリジットはメキシコでのサッカー・キャンプに参加。ただ一人、夏休みの計画がないティビーは、地元のスーパーでバイトをしながら、人生の惨めさを綴ったドキュメンタリー映画(ミジメンタリー)を製作することに。それぞれの夏休みに向けて出発する前日、4人が古着屋で見つけた一本のジーンズ。それは、性格も違えば体型も違う四人全員にぴったり合う不思議なジーンズだった。このジーンズはきっと幸運をもたらしてくれるはず。離れ離れの夏の間、彼女たちは4人で一本のジーンズを順番にはくことに決め、それぞれの夏へと旅立った。ギリシャ・サントリーニ島から、ジーンズとともに届いたのは、ギリシャ語がうまく話せずますます内気になるリーナからのあまり芳しくない近況。ジーンズのせいで溺れかけ、通りかかった青年の船に助けられたものの、ひどく居心地の悪い思いをしたリーナ。地元に残ったティビーのもとへジーンズを届けたのは、近所に住む見知らぬ女の子。ただでさえ、スーパーの店長に文句を言われながら品出しをする惨めな日々に加え、いつの間にかドキュメンタリー映画の助手に収まってしまった、この小生意気な女の子が、ティビーの神経を逆なでする。カルメンへ送られたジーンズは、父親の新居へ転送された。父と二人で過ごす夏を、心の底から楽しみにしていたカルメンが知らされたのは、父の再婚。すでに新しい家で、新しい家族と暮らし始めていた父は、カルメンの期待を粉々に打ち砕いた。メキシコでは、ブリジットがジーンズの到着を待ち受けていた。いつも自信に溢れ、自分の決めた道を突き進むブリジットは、サッカー・キャンプでもコーチとの恋を手に入れた。そして、ジーンズは再びギリシャへ。旅するジーンズが見届けるのは、リーナに訪れる苦悩、ティビーが受け止めなければならない悲しみ、カルメンの怒り、そしてブリジットの心の闇。彼女たちの夏はまだ始まったばかりだった。




2-28. 旅するジーンズと19歳の旅立ち

監督 サナー・ハムリ
出演 アンバー・タンブリンアメリカ・フェレーラブレイク・ライブリー
2008年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
ベストセラー小説を映画化した青春ドラマ「旅するジーンズと16歳の夏」 の続編。少女から大人へと成長をとげていく4人のヒロインの新たなドラマが描かれる。

ストーリー
母親同士がマタニティ教室で出会った縁で、生まれる前から親友だった4人の少女たちが、初めてバラバラに過ごすことになった16歳の夏から3年。カーメン(アメリカ・フェレーラ)は、母が妊娠し実家での居場所のなさを感じる一方、親友たちがそれぞれ別の場所で夏を過ごすことを知り、がっかりしながらも、バーモントのシアターフェスティバルで、バックステージで仕事をすることを決める。そこで、偶然にも彼女は、生まれて初めてスポットライトの前に押し出され、同時に主役のハンサムなイギリス人青年に注目される。一方、ティビー(アンバー・タンブリン)は、大学で映画のプロジェクトを仕上げるためにニューヨークに留まり、天才ゲーマーのブライアン・マックブライアン(レオナルド・ナム、前作の役を再演)との関係を深めることを慎重に考える。しかし、予想外の出来事で2人の関係が複雑になってしまったことをきっかけに、ティビーは、愛を手にいれるには、親密になることへの不安と向き合わなければならないことを知る。“母親の死”の悲しみから依然立ち直れずにいるブリジット(ブレイク・ライブリー)は、自分自身の過去すらも疑いながら、遺跡の採掘のためトルコへと旅立つ。 見つけ出さなくてはいけない真実はもっと身近なところに埋まっているもの気づかずに・・リーナ(アレクシス・ブレーデル)は、初恋の相手コスタス(マイケル・レイディ)と別れ、ロードアイランドのデザインスクールに通い始める。そこで自由奔放なアーティスト志望の学生(ジェッシー・ウィリアムズ)に出会う。 彼女は、過去の思い出にしがみついて生きるか、傷ついた心を癒し、新しい恋をするかの選択に迫られる。それぞれの環境が変わった今、新しい優先順位や急激な変化によって、うまく連絡を取り続けることが難しくなっていった。 時にメッセージが気づかれなかったり、内容を誤解されてしまったり…。ずっと一緒に過ごし、同じ気持ちを分かち合ってきた4人は、元に戻る方法を見つけながら、愛とユーモアで、以前にも増して計りしれない友情の大切さに気づいていく。




2-29. 狼王ロボ

1962年・アメリカ(日本RKO)

解説
1890年頃、最も獰猛な狼として千ドルもの莫大な懸賞金をその首にかけられた、狼王国のキング“ロボ”の生涯を劇的に描いたウォルト・ディズニーの大自然冒険ドラマ。原作はアーネスト・トンプソン・シートンのシートンの動物記「狼ロボの伝説」 で、それを「ジャングル・キャット」 のジェームズ・アルガーとドワイト・ハウサーが脚色した。撮影は「絶海の島々」 のジャック・クーファー、「ワイルド・ドッグ」 のロイド・ビーブ、音楽は「絶海の島々」 のオリヴァー・ウォーレス、製作はウォルト・ディズニー。日本語版解説は宇野重吉。

ストーリー
1889年の春。西部の奥地に毛皮商人たちから「エル・フェロツ」(獰猛なもの)と呼ばれ恐れられている狼がいた。ある日、エル・フェロツは5匹の子狼の父親になった。その中の1匹が後の狼王ロボだった。数週間後、独りで遊べるようになったロボは、カモシカの赤ん坊と無二の親友になり毎日遊んでいた。そのころ、母狼は、牧童たちの銃弾にあたって殺された。ロボは初めて知った。人間に「銃」という恐ろしい武器のあることを……。また、父狼も人間の仕かけた罠にかかって死んでいった。やがて、ロボはある群れのボス狼を倒して自らボスの地位についた。そしてかねてから願っていた通り、美しい黒色の雌狼、ソンブラを妻とし、断崖の穴倉住宅に新居を構えた。やがて、ロボとソンブラの間にかわいい子供が生まれた。ロボは家族ができた以上、養わねばならなかった。その時以来、ロボは最も獰猛な狼として南西部一帯に鳴り響き、彼の首に千ドルの懸賞金がかけられるようになった。そうしたある日、テキサスから数頭の猛犬を引き連れた猟師がのりこんできた。そして、一本橋を渡ってすみ家に帰るロボを発見した。狼の習性を知りぬいている彼は、その一本橋のたもとに強烈な罠を隠して待ちぶせた。その翌朝、運悪く妻のソンブラが罠にかかり猟師に捕らえられてしまった。ソンブラを捕らえた猟師はすぐ撃ち殺そうとしたが、狼は夫婦愛が極めて強く、一方を捕まえると必ず片方が奪い返しに来る習性を思い出し、ソンブラを牧場の小屋に閉じ込め、奪い返しに来るロボを狙う計画を立てた。果たせるかなロボは妻の危険を知って、夜に乗じて現れた。そしてロボを先頭とした狼の一群は牧場の牛に襲いかかった。驚いた牛の群れは暴走をはじめ、アッという間に柵を破り、ソンブラが閉じ込められていた小屋を引っくり返した。ロボは妻の救出に成功したが、もはやこの一帯は安全な場所ではなくなったことを知った。そして、一群を引き連れると、未開の奥地へ安住の地を求めて去っていくのだった。




2-30. 突撃隊

監督 ドン・シーゲル
出演 スティーヴ・マックイーンボビー・ダーリンフェス・パーカー
1962年・アメリカ(パラマウント)

解説
ロバート・ピロッシュの原作を彼自身とリチャード・カーが脚色、「燃える平原児」 のドン・シーゲルが監督した第二次大戦をめぐる戦争映画。撮影はハロルド・リップステイン。音楽はレナード・ローゼンマン。出演は「荒野の七人」 のスティーヴ・マックィーン、「九月になれば」 のボビー・ダーリン、「黄色い老犬」 のフェス・パーカー、ほかにニック・アダムス、ジェームズ・コバーンなど。

ストーリー
1944年の秋。ジーグフリード要塞線に待機する予備軍があった。戦いに疲れた彼らは1カ月の休暇を貰ってよいほどの戦いをしてきたのだ。その隊には、かつて十字勲章を授けられたが、泥酔暴行の科で降等されたリーズ(スティーヴ・マックィーン)、彼の代わりに下士官に抜擢されたラーキン、戦利品をごっそり持って帰国しデパートを開こうなどと考えているコービー(ボビー・ダーリン)、小隊長ルーミス大尉(ジョセフ・フーバー)をゴマカして帰国しようとしているコリンスキー(マイク・ケリン)などがいた。しかし、帰国どころか彼らは最前線に持っていかれた。彼らの任務は要塞線主要部の閉鎖で、後続部隊到着まで独軍を釘づけにしなければならなかった。これは、1小隊の任務ではなかった。彼らは小隊を大部隊に見せなければならない。初めはうまく独軍をだましていたが、独軍の将校斥候によってアメリカ軍の陣地の全貌が発覚してしまった。独軍は一挙に撃って出るに違いない。リーズは先手をとって要塞を攻撃すべきと提案、コービー、コリンスキー、ヘンショーたちはそれに賛成であったが、ラーキンは要塞前の地雷原突破は無理として反対した。だがそのラーキンは見張中に戦死した。リーズは独断で、ヘンショー、コリンスキーを引率して敵地に潜入した。この無謀な行動は失敗、リーズだけが生還した。ルーミス大尉とパイク軍曹は、かんかんになってリーズを非難した。翌朝、独軍の襲来は目前に迫っていた。ルーミス大尉もリーズ案通り、先手をとらなければ孤立のまま全滅という情勢であった。ルーミス小隊は総攻撃を開始した。しかし、多勢に無勢である。小隊は完全に孤立してしまった。リーズは、昨日の責任を感じ、爆薬を抱いて要塞に躍り込んだ。独軍は壊滅した。ちょうど援軍が到着した時であった。




2-31. 妹の恋人

監督 ジェレマイア・S・チェチック
出演 ジョニー・デップメアリー・スチュアート・マスターソンエイダン・クイン
1993年・アメリカ(MGM映画=UIP)

解説
神経を病んだ妹を見守る兄と、その妹と恋に落ちる風変わりな青年との交流を描く青春ドラマ。監督は「ナショナル・ランプーン クリスマス・バケーション」 のジェレマイア・S・チェチック。製作はキャスティング・ディレクター出身のスーザン・アーノルドとスクリプター出身のドナ・ロスの共同。エグゼクティヴ・プロデューサーはビル・バダラート。レスリー・マックネイルとリングリング・サーカスのピエロとして活躍していたバリー・バーマンの原案をもとに、バーマンが脚本を執筆。撮影は「恋はあせらず」 のジョン・シュワルツマン、音楽は「迷子の大人たち」 のレイチェル・ポートマンが担当。主演は「シザーハンズ」 のジョニー・デップ、「フライド・グリーン・トマト」 のメアリー・スチュアート・マスターソン、「わが心のボルチモア」 のアイダン・クイン。他に「ゆりかごを揺らす手」 のジュリアン・ムーア、「ベートーベン」 のオリヴァー・プラット、「ブラッド・シンプル」 のダン・ヘダヤ、「バクダッド・カフェ」 のCCHパウンダーらが共演。

ストーリー
幼い頃に火事で両親を亡くした兄妹ベニー(アイダン・クイン)とジューン(メアリー・スチュアート・マスターソン)は静かな片田舎で暮らしていた。神経過敏で精神の安定を欠くジューンをベニーは親のような感情で見守っていた。精神科医のガーペー(C・C・H・パウンダー)はジューンを施設に預けるよう勧めるが、ベニーには決心がつきかねていた。同僚のエリック(オリヴァー・プラット)は、ベニーにもっと自分の人生を大事にしろと忠告する。ある日友人トーマス(ダン・ヘダヤ)の家でポーカーに負けた兄妹は、そのツケで勝負の相手のマイクの家に居候しているいとこのサム(ジョニー・デップ)を引き取る破目になる。サムは読み書きもできず、ほとんど口もきかない風変わりな青年。だが不思議なことに、ジューンは彼を気に入ったらしい。ある日兄妹とサムは公園へピクニックに出かけるが、昨夜ウェイトレスのルーシー(ジュリアン・ムーア)とのデートに失敗したベニーは元気がない。サムは彼をはげまそうと帽子を使ってパントマイムを始める。周囲にはいつしか人垣ができ、サムは人々の笑顔に包まれていた。その夜、サムとジューンは心のままに結ばれる。サムの才能に驚いたベニーは、コメディアンのオーデションを受けさせる手はずをつけるが、それが気に食わないジューンと言い争いになり、ベニーはサムとジューンの仲が急進展していたことを知る。怒ったベニーはサムを家から叩き出す。サムとジューンは駆け落ちしようとするが、緊張のあまりジューンは発作を起こしてしまう。ジューンはそのまま精神病院に入院した。兄の面会を拒み続けるジューンの態度に、ベニーは今彼女に必要なのはサムだと気づく。ベニーとサムは病院に忍び込み、ジューンを病院から連れ出そうとする。ジューンは最初サムの心情を理解できなかったが、結局ジューンとサムは一緒に住むことに。ベニーの方は2人の住むアパートの管理人との間で新しい恋が生まれそう。




2-32. アイ・アム・サム

監督 ジェシー・ネルソン
出演 ショーン・ペンミシェル・ファイファーダイアン・ウィースト
2001年・アメリカ(松竹=アスミック・エース)

解説
知的障害者である父親と、その幼い娘との絆を描いた感動の物語。ハンディがあるがゆえに娘と引き離されてしまった父親が、幸福を取り戻すために奮闘する姿が涙を誘う。

ストーリー
スターバックスで働く7歳の知能しか持っていない中年男サム(ショーン・ペン)は、ホームレスの女性が出産した自分の娘、ルーシー・ダイアモンド(ダコタ・ファニング)と幸せに暮らしていた。しかし7歳になったルーシーはサムの知的能力を追い抜いてしまい、サムは父親として養育能力がないという判断をソーシャル・ワーカーに下されてしまう。ルーシーは施設で保護されることになり、サムは失意にくれる。彼は法廷で闘う決意を固め、エリート弁護士のリタ(ミシェル・ファイファー)に依頼。自分が社会奉仕の仕事もできることを見せつけるために弁護を引き受けたリタだったが、どう考えてもサムには不利な裁判。彼の障害者の友人たちは裁判で普通の証言ができず、隣人アニー(ダイアン・ウィースト)も外出恐怖症を乗り越え証言台に立つのだが、相手の弁護士にやり込められて落ち込んでしまう。一方、サムとルーシーは親子の絆をますます深める。サムは結局、条件付きで親権は認められたものの、ルーシーは里親のランディ(ローラ・ダーン)らと一緒に暮らすことに。だがサムはその家の近所に引っ越して、ルーシーは毎日のように彼に会いにいく。2人の愛情の深さに気づいた周囲は、ようやくその親子関係を認めるのだった。




2-33. 史上最大の作戦

監督 ケン・アナキン
出演 ジョン・ウェインロバート・ミッチャムヘンリー・フォンダ
1962年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
第二次大戦において連合軍側に徹底的勝利のチャンスを与えたノルマンディの攻防戦を描いたコーネリアス・ライアンのベスト・セラーを映画化した戦争スペクタクル。脚色はアメリカから「地上より永遠に」 の原作者ジェームズ・ジョーンズとフランス「自由の大地」 のロマン・ギャリー、デイヴィッド・パーセル、ジャック・セッドンがあたっている。監督は4人でうけもち、「橋」 のベルンハルト・ビッキイが守備側のドラマ・シーンを「ベン・ハー(1959)」 の戦車競走シーンを撮ったアンドリュー・マートンが攻撃側のスペクタクル・シーンを、「謎の要人悠々逃亡!」 のケン・アナキンが攻撃側のドラマ・シーンを、「真昼の決闘」 の編集者エルモ・ウィリアムスがそれぞれ演出している。撮影はジャン・ブールゴアン、ヘンリー・パージン、ウォルター・ウォティッツの3人が担当し、ノルマンジーの現場で6カ月間ロケを行った。「自由の大地」 のダリル・F・ザナックの製作になるものである。音楽は「ワルソー・ゲットー」 のモーリス・ジャール、主題歌をポール・アンカが作曲している。出演者はアメリカからジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダ、ロバート・ミッチャム、メル・ファーラー、スチュアート・ホイットマン、ロバート・ライアン、ジェフリー・ハンター、リチャード・ベイマー、エドモンド・オブライエン、ロバート・ワグナー、トミー・サンズ、ポール・アンカ、フェビアン、トム・トライオン、サル・ミネオ、レッド・バトンズ、エディ・アルバート、スティーヴ・フォレスト、レイ・ダントン。イギリスからケネス・モア、リチャード・バートン、リチャード・トッド、ピーター・ローフォード、レオ・ゲン、ロン・ランゲル、ショーン・コネリー、フランス側からはジャン・ルイ・バロー、マドレーヌ・ルノー、クリスチャン・マルカン、フランソワーズ・ロゼエ、アルレッティ、ブールヴィル、それにザナックに発見されてこの映画でデビューするイリナ・デミック。ドイツからはクルト・ユルゲンス、ウェルナー・ハインツ、ピーター・ヴァン・アイクなどが参加している。

ストーリー
1944年6月4日未明セーヌ河の湾曲部にあるドイツ西部軍B師団司令部で、司令官ロンメル元帥は家族の許へ帰ろうとしていた。連合軍の大陸侵入作戦を知らないわけではなかったがここ数週間は悪天候だし防御は完璧だった。同じ南部イングランドで300万近い連合軍を指揮するアイゼンハワー最高司令官は上陸作戦の日−−D・DAYを決定しょうとしていた。遅い月の出と夜明け直後の干潮という絶対条件の揃うのは6月5〜7日の3日間だが、英仏海峡は大しけが続いていた。5日は取り消され延期するとなれば19日か7月まで待たねばならない。最高首脳部会議は気象部員からの詳細な報告に基づき6日をD・DAYと最終決定した。フランスのレジスタンス向けの暗号放送は盗聴されたがヴェルレーヌの“秋の歌”が上陸作戦の開始を告げるものであることは覚えられなかった。5000雙からなる大船団はノルマンディへ南下し午前零時15分、米軍空挺部隊の降下から上陸作戦の火蓋は切られた。5時半の海上からの攻撃開始を西部軍総司令部が知ったのはその30分前、情婦エヴァの側にあったヒトラーやヘルリンゲンの自宅にいたロンメルが知ったのは5時間後だった。防御陣地は判断を誤った作戦会議のために殆ど無用の長物と化したが、激浪に苦しめられてきた連合軍を海辺に釘づけにして多大な損害を与えた。しかし物量を誇る連合軍は内陸深く侵入し上陸舟艇はノルマンディの海を覆った。“上陸作戦の最初の24時間は決定的なものになるだろう−−この日こそ連合軍にとっても我々にとっても一番長い日になるだろう”とロンメルに言わせた6月6日は史上最大の作戦をもった連合軍の圧倒的な勝利に終わり、ナチス・ドイツが崩壊し去る運命の日になった。




2-34. タハーン ロバと少年

監督 サントーシュ・シヴァン
出演 プーラヴ・バンダーレー/ビクター・バナルジー/アヌパム・ケール/ラーフル・ボース
2008年・インド

解説
8歳の少年タハーンは、祖父、母、姉と共にカシミール地方に暮らしている。一番の友達はロバのビールバル。3年前に行方がわからなくなった大好きな父に会いたいと思っている。貧しくとも平穏な暮らしが続いていたが、遠くに銃声が聞こえるなど、軍と武装勢力の抗争もまた身近にあった。ある日優しい祖父が突然亡くなり、ビールバルは借金返済のために旅商人に売られてしまう。ビールバルを取り戻すために商人を追って山越えするタハーン。やがて1人の男がタハーンに近づいてくる。

ストーリー





2-35. エレニの旅

監督 テオ・アンゲロプロス
出演 アレクサンドラ・アイディニニコス・プルサニディスヨルゴス・アルメニス
2004年・ギリシャ、フランス、イタリア、ドイツ(フランス映画)

解説
「永遠と1日」 のギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロス監督の最新作。1919年から1940年代にかけて激動の運命をたどる女性の愛と喪失の物語を荘厳な映像美で紡ぎ出す。

ストーリー
1919年頃、ロシア革命で赤軍が入城してオデッサから追われ、避難民となって帰国する一群のギリシャ人たち。エレニ(アレクサンドラ・アイディニ)はオデッサで両親を失った孤児だった。約10年後、人々はニューオデッサ村を築き、エレニはスピロス(ヴァシリス・コロヴォス)の養女として育ったが、スピロスの息子アレクシス(ニコス・プルサニディス)の子供を身篭った。やがて生まれた双子のことは、とりわけスピロスには絶対の秘密だった。アレクシスはエレニに、いつか2人で河から水の流れの始まりを探しに行こうと約束する。やがて成長したエレニを、妻ダナエ(タリア・アルギリウー)を亡くしたスピロスが娶ろうとし、エレニは結婚式の場から逃げてアレクシスとテサロニキに去る。救ってくれたヴァイオリン弾きのニコス(ヨルゴス・アルメニス)は、アレクシスがアコーディオンの名手であることを知っていた。アレクシスはアコーディオンの腕で、いつかアメリカに行けるかもしれないと夢見る。まもなくエレニとアレクシスは子供たちと対面。そして祭の最中、スピロスが現われるが、踊っていた仮面の女がエレニだとわかって心臓発作を起こし、その場で息絶える。彼の死により、ニューオデッサの懐かしい家での一家4人の暮らしが始まろうとするが、大洪水が起きて、ニューオデッサは一夜で河と化してしまう。アレクシスたちは再びテサロニキへ。ファシズムの嵐が吹き荒れる中、警察に追われていたニコスが死去。そしてアレクシスが、バンドの一行とアメリカに発つ日が来た。しかしエレニはニコスを匿った罪で逮捕。エレニが最後の牢獄から釈放されたのは、内戦が終結した1949年だった。2人の息子は戦死。そしてエレニの耳には、沖縄で戦死する前夜のアレクシスの手紙の声が聞こえてくるのだった。




2-36. Mr.ディスティニー

監督 ジェームズ・オア
出演 ジェームズ・ベルーシリンダ・ハミルトンマイケル・ケイン
1990年・アメリカ(タッチストーン映画=ワーナー・ブラザース映画)

解説
20年前の野球試合での空振り以来何をやってもダメな男が人生をやり直せたら−−という設定で描くハートウォーミング・コメディ。エグゼクティヴ・プロデューサーはローレンス・マーク、監督は「スリーメン&ベビー」 の脚本家でこれがデビューのジェームズ・オア、製作・脚本はオアとジム・クラックシャンク、撮影はアレックス・トムソン、音楽はデイヴィッド・ニューマンが担当。出演はジェームズ・ベルーシ、リンダ・ハミルトンほか。

ストーリー
ラリー・バロース(ジェームズ・ベルーシ)は自分の平凡な人生に嫌気がさしていて、それというのも、20年前の高校野球の決勝で空振りし、ヒーローになれなかったせいだと確信している。35才の誕生日の今日がそんなツキのなさのドンづまり。妻のエレン(リンダ・ハミルトン)は自分の誕生日を忘れていて、おまけに会社はクビに。帰りに酒場へ飛び込んだ彼の前に現われたのが運命を変える不思議な男、Mr.デスティニー(マイケル・ケイン)。その魔法のカクテルでラリーの人生は一変した!新しい人生ではあの時、ホームランを打ったことになっているラリーは、クビになったはずの会社の社長として、高校時代のマドンナ、シンディー(ルネ・ルッソ)と共に豪邸に住んでいる。しかしその生活は必ずしも幸福なものではなかった不当解雇を糾弾する労組と会社幹部との間で板挟みとなり孤立無援。そんな中、彼は労組の女性幹部となっているエレンを必死に口説き落とそうとするが、彼女はラリーが別の人生では夫だったと知るよしもない。気味悪がる彼女に自分しか知らない秘密を言って、ラリーは夢の生活を棄て、再びもとのさやに収まるのだった。




2-37. 愛と追憶の日々

監督 ジェームズ・L・ブルックス
出演 デブラ・ウィンガーシャーリー・マクレーンジャック・ニコルソン
1983年・アメリカ(パラマウント映画=CIC)

解説
母と娘の30数年間に及ぶ愛情関係を描くドラマ。TV出身で、かつて「結婚ゲーム」 (79)を脚色し製作に当ったジェームズ・L・ブルックスが製作・監督・脚本を手掛けている。共同製作者はペニー・フィンケルマンとマーティン・ジュロー。原作はラリー・マクマートリーの同名小説。撮影はアンジェイ・バートコウィアク、音楽はマイケル・ゴア、編集はリチャード・マークスが担当。出演はデブラ・ウィンガー、シャーリー・マクレーン、ジャック・ニコルソン、ジェフ・ダニエルズなど。日本版字幕は戸田奈津子。メトロカラー、ビスタサイズ。1983年作品。

ストーリー
テキサス州ヒューストン。48年、赤ん坊のエマを心配そうにみる母親のオーロラ(シャーリー・マクレーン)。56年、夫が死亡し、心細くなったオーロラはエマのベッドにもぐり込む。64年、隣家に宇宙飛行士のギャレット・ブリードラヴ(ジャック・ニコルソン)が、引越して来た。69年、エマ(デブラ・ウィンガー)は自室で親友のパッツィーと一緒にマリファナをふかしている。明日はエマが結婚する日だ。だがオーロラは娘の夫となるフラップ・ホートン(ジェフ・ダニエルズ)が気にくわない。「大学教師では先が知れている。娘の人生はこれで台なしになってしまう」というのだ。ついにオーロラは結婚式にも出席しなかった。結婚式の翌日、娘にそむかれたという思いのオーロラが、窓から覗くと、隣のギャレットが女をつれて家の中に入って行った。パーティでエマは妊娠したことを告げるが、オーロラは喜ばない。70年、フラップはアイオワ州デ・モインの大学に迎えられることになり、エマはオーロラ、パッツィーに別れを告げる。ヒューストンでは、オーロラがふとしたことから、ギャレットと会話をかわし、昼食に誘われた。78年、エマは3度目の妊娠で家計が苦しくなり、オーロラに少し金を貸してくれないかと頼むが、オーロラは拒否する。5歳になった次男のテディが、パパが帰って来たと告げる。今日も朝帰りだ。図書館でいねむりしたと弁解するフラップに、くってかかるエマ。スーパーのレジで金が足りず、恥かしい思いをしでいるエマに中年男のサム(ジョン・リスゴー)が助け舟を出してくれた。サムは銀行の貸付け係であった。ヒューストンでは、オーロラが8年前の昼食の誘いを受け入れ、デートする。やがて、エマはサムと、オーロラはギャレットと浮気をした。フラップはネブラスカ州リンカーンにあるカーニー州立大の英文学部長の職をオファーされた。エマは大学のキャンパスで、夫が女子大生と親しそうに話をしているのを見て怒りを爆発させ、長男のトミー、次男のテディ、長女のメラニーをつれてオーロラのところへもどった。しかし、夫の電話でエマは帰り、一家はリンカーンに移る。エマは医者の診察を受け、悪性の腫瘍とわかった。パッツィーはエマをニューヨークにつれて行き、ニューヨーク見物をさせた。リンカーンにもどって病院に入るエマ。病状が悪化し、息子2人に別れを告げたエマは、間もなく死亡した。トミー、テディ、メラニーは祖母であるオーロラが育てることになった。




2-38. 悲しみは空の彼方に

監督 ダグラス・サーク
出演 ラナ・ターナージョン・ギャビンサンドラ・ディー
1959年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
1934年にクローデット・コルベール主演で映画化されたファニー・ハーストのベスト・セラーの再映画化で、暗い宿命に泣く女の悲しみを描くメロドラマ。脚色はエリノア・グリフィンとアラン・スコットの共同。監督は「愛する時と死する時」のダグラス・サーク。撮影は「暴れ者」のラッセル・メティ。主演は「青春物語」のララナ・ターナー、「愛する時と死する時」のジョン・ギャビン、それに新人のサンドラ・ディー、「地獄の戦線」のスーザン・コーナー、「南部の反逆者」のファンタ・ムーア、「黄昏に帰れ」のダン・オハーリー等。製作はロス・ハンター。

ストーリー
1947年ー美貌の未亡人ローラ(ララナ・ターナー)は1人娘のスージーとコニー・アイランドの謝肉祭にやって来た。そこで黒人女アニー(ファンタ・ムーア)と知りあった。アニーは白人の夫に捨てられ、8歳になる娘サラ・ジェーンを連れて職を探していた。2人は同じ身の上に同情しあい、ローラの家で一緒に暮すことになった。ローラはブロードウェイの舞台女優の口を探していた。2組の母娘がコニー・アイランドで知りあった日、彼女らの写真を撮ってくれた青年スティーブ(ジョン・ギャビン)がローラを訪ねて来た。アニーはスティーブと俳優のよく集る食堂に行った。そこで配役周旋屋のアレンを知った。彼は新作劇の配役をしていた。これを聞いたローラは、アレンの事務所に急いだ。うまく取り入って採用されるばかりになったが、好色なアレンにいいよられて、ローラは逃げて帰って来た。アニーの献身的な働きぶりで、ローラの家庭は明るくなった。ただ、父親の血を引いて白人と変りない美少女のサラ・ジェーンは、母が黒人であることを苦にして暗い気持になりがちだった。スティーブは広告社に宣伝写真家として就職したのを機会に、ローラに求婚した。ところが、ローラは新進劇作家エドワーズに見い出され、一躍有名女優に成り上がったため、すでにスティーブのことは忘れていた。10年の歳月が流れた。ーローラの貧しい暮らしも、今では豪壮な邸宅に住むようになった。スージー(サンドラ・ディー)は学校の寄宿舎に入り、サラ・ジェーン(スーザン・コーナー)は夜間図書館に勤めていた。ある晩、楽屋でローラは広告会社の社長になったスティーブに会った。彼は世界旅行に彼女を誘ったが、イタリアでの映画出演を理由に断った。サラ・ジェーンには白人の恋人がいた。しかし、母が黒人のために彼は彼女から離れていった。アニーは健康を害し、サラ・ジェーンは失恋が原因でヤケになり、ナイト・クラブに勤めるようになった。アニーは病気をおして、サラ・ジェーンを迎えに行った。が、彼女は一緒に帰ろうとしなかった。イタリアから帰ったローラははじめて自分の空虚な生活に気づいた。アニーの病気が重くなった。彼女は息を引きとる前に、最後の望みとして、盛大な葬式をしてくれといった。葬儀の日、葬列の行進が始ると、群衆をわけて、サラ・ジェーンが走り寄って来た。彼女は母の柩にすがり、いつまでも泣き伏していた。




2-39. 彼女を見れば分かること

監督 ロドリゴ・ガルシア
出演 グレン・クローズホリー・ハンターキャシー・ベイカー
1999年・アメリカ(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
ハリウッドを代表する実力派女優5人が競演した、せつない人間ドラマ。男に頼らず生きる女の痛みと孤独、明日の希望をめぐる5つの物語を、オムニバス形式でつづる。

ストーリー
キャシー刑事(エイミー・ブレナマン)は、自殺死体が高校時代の同級生だったカルメン・アルバ(エルピディア・カリージョ)だと知る。〈第1話〉医師のエレイン(グレン・クローズ)は、自宅で痴呆症が進行している年老いた母親の介護をしている。占い師のクリスティーン(キャリスタ・フロックハート)は、エレインの心の空白をことごとく言い当て、近い将来に異性との出会いがあると告げる。〈第2話〉銀行の支店長をしている独身女性レベッカ(ホリー・ハンター)は、ビジネスマンのロバート(グレゴリー・ハインズ)と不倫関係になって3年。ある日、妊娠に気づくが、中絶を決意。そして手術の前夜、彼女は部下の副支店長ウォルター(マット・クレイヴン)と思いがけずベッドを共にしてしまう。〈第3話〉バツイチの童話作家ローズ(キャシー・ベイカー)は、中学生の息子との関係が決定的な変化を迎えた時、向かいに越してきた男に好意を抱くようになる。〈第4話〉占い師クリスティーンが一緒に暮らしている恋人リリー(ヴァレリア・ゴリノ)は、死の病に侵されている。だが死を恐れ、途方に暮れているのはクリスティーンの方だった。〈第5話〉カルメンの自殺の原因を調べているキャシーは、盲目の妹キャロル(キャメロン・ディアス)の世話をしながら暮らしている。キャロルは銀行の副支店長ウォルターと交際中。しかしある夜、キャロルはカルメンが死に至った理由を推理し、彼女は愛のない人生に絶望したのだろうとキャシーに語りながら涙を流すのだった。




2-40. 影なき男

監督 ロジャー・スポティスウッド
出演 シドニー・ポワチエトム・ベレンジャーカースティ・アレイ
1987年・アメリカ(ワーナー映画)

解説
ヴェテランFBI捜査官と登山ガイドがコンビを組んで凶悪犯を追跡するサスペンス。製作はロン・シルヴァーマンとダニエル・ペトリー・ジュニア。ハーヴ・ジンメルの原案を、ジンメル自らとマイケル・バートン、ダニエル・ペトリー・ジュニアが共同で脚本を担当。監督は「アンダー・ファイア」 のロジャー・スポティスウッド。撮影はマイケル・チャップマンが担当。出演はシドニー・ポワチエ、トム・ベレンジャー、クランシー・ブラウン、カーティス・アレイほか。

ストーリー
サンフランシスコのとある宝石店でダイヤが盗まれた。早速FBIのヴェテラン捜査官スタンティン(シドニー・ポワチエ)が現場に駆けつけるが捕まった犯人は何と店の主人。隠し事がありそうな店主を問いつめてみると、実は店主の自宅にある男が侵入し、夫人を拉致して立てこもっていた。男は夫人の命と引き換えに宝石をよこせと要求していたのだった。スタンティンらは店主宅を包囲し男を捕まえようとするが人質の生命の安全を図るため思うように動けず、男の巧妙な手口によってまんまと宝石を奪われ、しかも人質の夫人は左目を撃ち抜かれ殺されてしまう。スタンティンは責任を強く感じこの凶悪犯追跡に執念を燃やす。犯人は、カナダの国境に近い北大西部の大山岳地帯に釣り客のふりをして逃げ込む。何も知らない他の釣り客やガイド役のサラ(カースティ・アレイ)の命が危なかった。スタンティンは犯人を追うため山に詳しいガイドのジョナサン・ノックス(トム・ベレンジャー)に案内を頼むが、サラの恋人であり人嫌いなジョナサンは、自分1人で探すと言い張る。最初からウマの合わない2人だったが凶悪犯追求という目的のためにとりあえずコンビを組み、2日遅れで山に登る。その間に凶悪犯スティーヴ(クランシー・ブラウン)は正体を現わし他の釣り客4人を次々と岩壁から突き落とし、サラを脅して国境を越えようとする。岩壁から落ちそうになったり大雪で凍死しそうになりながらも、スタンティンとジョナサンは力を合わせて山を越えスティーヴを追うが、すんでのところで取り逃がし国境を越えられてしまう。だがスティーヴが取り引きをしようとしていた宝石ブローカーを問いつめ連絡場所を聞き出しスティーヴを待ち伏せる。公園でのカー・チェイスの後スティーヴはサラを人質に連れたままフェリーに逃げ込む。緊迫した一対一の銃撃戦のすえ重傷を負いながらもスタンティンは遂にスティーヴを海中で撃ち殺し、サラも無事に救い出されるのだった。




2-41. あなたは私の婿になる

監督 アン・フレッチャー
出演 サンドラ・ブロックライアン・レイノルズメアリー・スティーンバージェンクレイグ・T・ネルソンベティ・ホワイト
2009年・アメリカ(ディズニー)

解説
サンドラ・ブロックが自らのキャリアのため、年下の部下と結婚しようとするアラフォーのキャリアウーマンに扮するラブ・コメディ。共演は人気上昇中のライアン・レイノルズ。

ストーリー
ニューヨークにある出版社で書籍編集の編集長を務める40歳のマーガレット・テイト(サンドラ・ブロック)は着実にキャリアを重ねていた。しかしその合理的な働きぶりによって、部下たちからは恐れられる存在だった。ある朝、気難しくて有名な作家からインタビュー番組への出演をとりつけ、自分の意見に従わない男性社員をクビにしていたマーガレットは、会長から呼び出される。マーガレットはてっきり自分の有能ぶりを褒めちぎられるものと思い込んでいたが、思いがけない事実を知らされる。カナダ人である彼女はビザの申請を延ばし延ばしにしてきたが、ついに国外退去を命じられたのだ。しかし、ニューヨークでのキャリアを諦めきれないマーガレットは、あるアイディアを思いつく。それは3年間彼女のもとで働き、どんな命令にも従い続けてきた28歳のアシスタント、アンドリュー・パクストン(ライアン・レイノルズ)と結婚するというものだった。上司命令のプロポーズを断れば、アンドリューも失業の身となる。最小限の犠牲で最大の効果を得るという、彼女らしい合理的な発想だったが、偽装結婚は重罪となるリスクも背負うことになる。果たして2人は結婚し、お互いのキャリアを守ることができるのか。




2-42. 天はすべて許し給う

監督 ダグラス・サーク
出演 ジェーン・ワイマンロック・ハドソンアグネス・ムーアヘッド
1955年・アメリカ

解説
 夫に先立たれ喪に服す2人の子持ちの主人公。やっと気を取り直して新たな生活に望む彼女の前に、年下で明るい庭師のロンが現れ、いつしか二人は恋に落ちるが……。年の差や未亡人であるためのゴシップ、また常識的な彼女とあくまでマイペースの彼という双方間のジレンマなど、さまざまな問題を置き、二人の関係を禁じられた恋風に捉え、色合い豊かに純粋なラブロマンスに仕上げている。名匠D・サーク監督得意の分野とあってその手腕が冴えた1本であろう。

ストーリー
郊外の瀟洒な一軒家に暮らす未亡人のケリー(ジェーン・ワイマン)は、大学生の息子と娘も家を出ているため、1人で時間を持て余していた。 そんなある日、夫の存命中から庭の手入れをしてもらっている若い庭師の青年ロン(ロック・ハドソン)と言葉を交わしたことをきっかけに2人は急速に親しくなる。 最初はただの友人として、ロンが語る樹木の話やロンの仲間たちとの付き合いを楽しんでいただけのケリーだったが、2人はごく自然に愛し合い、結婚を考えるようになる。 しかし、保守的な町で2人の関係はスキャンダラスな形で噂されるようになり、それを知った息子や娘に激しく反対されたケリーはロンと別れることにする。 元の生活に戻ったケリーだったが、心に空いた隙間が埋まることはない。息子や娘もいずれは自立し、家を出て行く。そのことに改めて気付いたケリーはロンのもとへと向かう。




2-43. 愛する時と死する時

監督 ダグラス・サーク
出演 ジョン・ギャヴィンリゼロッテ・プルファージョック・マホニー
1958年・アメリカ(ユニバーサル・ピクチャーズ)

解説
 アメリカ映画が第二次大戦の敗戦国ドイツの立場に立って作ったごく初期の映画で、監督は独出身のダグラス・サークだから、正に打ってつけ。そのメロドラマ作法は個人的思い入れを反映して、一段と冴え渡る。敗色濃厚な'44年早春のロシア戦線から故郷に一時帰還する独軍兵士(J・ギャヴィン)は、廃墟と化した街を見てショックを受ける。両親も行方不明で、辛うじて、幼馴染みの娘と再会する。母の主治医だった彼女の父も、ゲシュタポに連れ去られ今は消息不明だった。そしていつしか愛を育んだ二人は結婚。無事だった両親とも連絡が取れ、ささやかな幸福に浸る彼だったが、再び戦場に戻り、激戦地を転戦。いよいよ終戦も間近い初春の日、妻から子供の誕生を知らせる手紙を受け取った彼は歓んだが……。ギャヴィンとヒロイン役のリゼロッテ・プルファーが物語そのままの清純さで素晴らしい。原作は「西部戦線異状なし」 のレマルク。

ストーリー
第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの敗戦が色濃くなって行く中で、前線の戦場から2週間の休暇をもらって故郷に帰ったエルンスト・グレーバーは、町が爆撃され、両親が行方不明になっていることを知る。両親の行方を探すために父親のかかりつけの医師だったクルーゼを訪ねるが、クルーゼが既に強制収容所に送られた後であることを娘のエリーザベトから聞かされる。落胆したエルンストが帰ろうとしたそのとき、空襲警報が発令され、ともに防空壕に避難したことをきっかけに、エルンストとエリーザベトは親しくなる。 何度か逢ううちに自然と愛し合うようになった2人は、エルンストの両親が居場所は不明なものの生きていることを知ったこともあり、結婚。エルンストが軍務に戻るまでの限られた時間ではあるが新婚生活をスタートさせる。ところがその矢先、町が空襲に遭い、2人は家を焼け出されてしまう。




2-44. 若者のすべて

監督 ルキノ・ヴィスコンティ
出演 アラン・ドロンレナート・サルヴァトーリアニー・ジラルド
1960年・イタリア(イタリフィルム)

解説
イタリアの南部移民問題をテーマに、ある家族の崩壊をドラマチックに描いたヴィスコンティの傑作。娼婦ナディアをめぐる兄弟の愛憎劇が圧巻。若かりし日のアラン・ドロンの名演技が見もの。(リバイバル上映)

ストーリー
一九五五年のある晩、ロッコ(アラン・ドロン)とその兄弟は、母親ロザリアとともにミラノ駅についた。父親を失った一家は故郷ルカニアから、ここに働いている長男ヴィンチェンツォを尋ねてきたのだ。彼には美しいジネッタ(クラウディア・カルディナーレ)という婚約者がいた。一家は翌日から家と職探しに奔走した。ヴィンチェンツォはプロ・ボクサーを志し、次男シモーネ(レナート・サルヴァトーリ)と三男ロッコもクラブに出入りするようになった。シモーネは貧困と不遇の青春のうっぷんをグローブに賭けた。これにボクサーくずれの男モリーニが目をつけ、たちまち悪の世界にひきずりこんだ。その頃、彼はナディア(アニー・ジラルド)という女に溺れていた。素質のあるロッコは気立てが優しく、ボクサーを嫌ってクリーニング店で働いた。が、シモーネが店の主人のブローチを盗みそこをやめさせられた。そこへ徴兵の通知がきた。一年二カ月の時が流れた−−兵役を終え帰郷する途上、ロッコは刑務所を出所したナディアに会った。彼女はロッコを好きになった。シモーネの堕落ぶりに愛想をつかしたマネージャーのチェッキは、ロッコに目をつけたが彼はその手に乗らなかった。シモーネはナディアの更生を聞き、ロッコを嫉妬した。ある晩、橋の上でロッコとナディアを待伏せしたシモーネ一味が二人を襲った。仲間にロッコを押えさせ、シモーネは彼女を暴力で犯した。二人の兄弟は血まみれになって争った。数日後、ナディアはロッコに求婚した。興奮のさめたロッコは、シモーネを救える者は彼女だけだとさとり、身をひいた。絶望したナディアはまた悪の世界に戻り、シモーネも借金のために告発された。ロッコは兄を助けるため、気のすすまぬボクサーの契約をした。ミラノに着いて五年、シモーネ以外はそれぞれ幸福に暮らしていた。ロッコも着々と腕を上げた。彼の夢は生まれ故郷のルカニアに帰ることだった。一家がロッコの勝利を祝っている席上に、落ちぶれたシモーネが帰ってきた。彼はナディアを殺してきたのだ。ロッコだけは彼を暖く迎えた。二人の兄弟は男泣きに泣き、いつまでも抱きあっていた。




2-45. 真夜中のカーボーイ

監督 ジョン・シュレシンジャー
出演 ダスティン・ホフマンジョン・ヴォイトシルヴィア・ミルズ
1969年・アメリカ(ユナイト)

解説
「ダーリング」「遥か群衆を離れて」 のジョン・シュレシンジャー監督による異色作品。虚飾の大都会ニューヨークの混沌から、必死に浮かび上がろうとする2人の若者の物語。ジェームズ・レオ・ハーリヒーの作品を、ウォルド・ソルトが脚色した。撮影はコマーシャル出身のアダム・ホレンダー、音楽はジョン・バリー、編集はヒュー・A・ロバートソンが担当。製作にはジェローム・ヘルマンが当たっている。出演は「卒業」 でスターとなったダスティン・ホフマン、舞台出身のジョン・ヴォイト。共演はベテランのシルヴィア・マイルズ、ブロードウェイ女優ブレンダ・ヴァッカロ、「ニューヨーク泥棒結社」 のジョン・マクギバー、バーナード・ヒューズなど。

ストーリー
ジョー・バック(ジョン・ヴォイト)は、カウボーイのいでたちでテキサスからニューヨークに出て来た。彼は自分の肉体と美貌を武器に、孤独なニューヨークの夫人達を慰めようと考えていた。そして富と栄光を……。彼の商売の皮切りはキャス(シルヴィア・マイルズ)であった。だが彼女は街娼上がりのパトロン持ちだったため、逆に金を巻きあげられてしまった。そんな時、彼は足の不自由なペテン師ラッツオ(ダスティン・ホフマン)と知り合った。彼の紹介でジョーはオダニエル(ジョン・マクギバー)にひき会わされた。彼は狂言者であった。ラッツオにだまされたと知ったジョーは、必死に彼を探し歩いた。しかし、無一文で街の酒場にしけこんでいた彼を見て、ジョーは何も言えなかった。逆に、ホテルを追い出されたジョーに、ラッツオは自分の室へ来るようにすすめた。それはとり壊し寸前のビルの、廃屋のような一室であった。そこでラッツオは彼の夢、フロリダ行きの夢を語るのだった。必死に、泥沼をはい上がろうと2人は力を合わせた。ラッツオがマネージャーとなり、ジョーは再び男娼を始めたがうまくゆかなかった。ジョーを買った最初の客は、ヘンゼル(ガストン・ロッシリ)とグレーテル(ヴィヴァ)のパーティで出会ったシャーリー(ブレンダ・ヴァッカロ)だった。一方、ラッツオの体はその頃から急激に衰弱していた。彼の為にもジョーは金を稼がねばならなかった。男色の学生の相手をしたり商用でニューヨークに来た男のホテルに行ったりして、彼はようやく幾らかの金をもらってラッツオの元へ戻って来た。2人はフロリダに向かった。太陽と新しい生活を求めて。ジョーは、今や屈辱と泥によごれたカウボーイ姿と訣別するのだった。しかし、ラッツオはあれほど憧れたマイアミの浜辺を見ることなく、唯一人の友人ジョーの傍で静かに目を閉じた。




2-46. 帰郷

監督 ハル・アシュビー
出演 ジェーン・フォンダブルース・ダーンジョン・ヴォイト
1978年・アメリカ(ユナイテッド・アーティスツ)

解説
ベトナム戦争によって愛を破壊されながら、なおも心のよりどころを求めて生きる男女を描く。製作はジェローム・ヘルマン、製作補はブルース・ギルバート、監督はハル・アシュビー、脚本はウォルド・ソルトとロバート・C・ジョーンズ、原作はナンシー・ダウド、撮影はハスケル・ウェクスラー、編集はドン・ジンマーマン、装飾はジョージ・ゲインズ、製作デザインはマイケル・ホーラー、録音はジェフ・ウェクスラーが各々担当。出演はジェーン・フォンダ、ジョン・ヴォイト、ブルース・ダーン、ロバート・キャラダイン、ペネロープ・ミルフォード、ロバート・ギンティ、チャールズ・サイファースなど。日本語版監修は高瀬鎮夫。デラックスカラー、ビスタサイズ。1978年作品。

ストーリー
1968年のロサンジェルス、サンタモニカ。貞淑な人妻サリー(ジェーン・フォンダ)は、夫である海兵隊大尉ボブ(ブルース・ダーン)をベトナム最前線へ送り出した後、ボランティア活動の一環として基地付属病院で働くことにした。バイ(ペネロープ・ミルフォード)という若い女性の紹介のおかげだった。バイもまた、恋人のモブリー軍曹(ロバート・ギンティ)を戦場へ送り出し、病院で働いていた。サリーの仕事は、ベトナムからの傷病帰還兵の身の回りの世話と看護だった。初めて病院へ出向いた日、サリーはハイスクール時代、同級生だったルーク(ジョン・ヴォイト)と会う。ルークはベトナム戦争で傷つき、下半身麻痺の患者としてその病院で治療を受けていたのだ。一方、バイにはこの病院で治療を続ける弟ビル(ロバート・キャラダイン)がいた。彼は五体満足ではあったが精神面で深く病んでいた。サリーとルークの間には単なる患者と看護婦という関係を越えた精神的な交流が芽生えていった。ルークはサリーと出逢ってから見違えるほど人間が変わり明るさを取りもどしていった。ある日、サリーはルークを夕食に招き、その夜、2人は結ばれる。精神的ともいえる結びつきがサリーにこれまでにない充足感を与える。それからしばらくして、前線のボブから香港で休暇を過ごさないかという連絡が入り、サリーは出かけるが、数カ月ぶりに接した夫は、どこか戦争の狂気にとり憑かれているように見えた。一方、病院では精神的にすっかり憔悴したビルが自殺するという事件が起きる。ルークの反戦意識は増し、ある夜、ベトナム戦争反対の無言の示威行動を実行する。以来、彼の行動はFBIの監視するところとなりサリーとの関係もキャッチされてしまう。やがて帰還したボブは髪型を変え、スポーツカーを乗り回す妻の変化に疑惑を抱き、銃剣を振りかざして妻を問い詰める。その場はかけつけたルークの説得で無事に終るが、英雄として帰還したボブの価値感は脆くも崩れ去るのだった。数日後、ルークはハイスクールのボランティアの集会に招かれ反戦の気持をぶちまける。一方、生きる気力をなくしたボブは結婚指輪をはずし沖へ向って泳ぎ出していた。同じ頃、ショッピング・センターには夫のために買い物をしているサリーの姿があった。




2-47. プリンス パープル・レイン

監督 アルバート・マグノーリ
出演 プリンスアポロニア・コテロモリス・デイ
1984年・アメリカ(ワーナー映画)

解説
ロック・ミュージックの世界を舞台に、悩める1人の若者の、愛と夢を求めてスターの道を歩む姿を描く音楽映画。製作はロバート・キャヴァロ、ジョゼフ・ラファロ、スティーヴン・ファーグノリ、監督は長編第1作のアルバート・マグノーリ、脚本はマグノーリとウィリアム・ブリン、オリジナル音楽作曲・製作は主演も兼ねるロック・スター、プリンスが担当。共演はアポロニア・コテロ、モリス・デイ、オルガ・カルラトス、クラレンス・ウィリアムズ3世など。日本版字幕は戸田奈津子。ドルビー・ステレオ。カラー、ビスタサイズ。1984年作品。

ストーリー
アメリカ北部ミネソタ州の工業都市ミネアポリス。ヤングに絶大な人気を持つライブスポット<ファースト・アベニュー>では、紫色のジャケットに身を包んだ黒い肌の若者ギッド(プリンス)が、自分のバンド<ザ・レボリューション>をひきいて、ダイナミックなパフォーマンスを展開している。強烈なロックのサウンドに熱狂する満員の客たち。その人ごみの中、美しい女性が楽屋に向かっていた。ロック・スターを夢みるアポロニア(アポロニア・コテロ)だ。ステージは変わって、キッドの人気をねたんでいるライバルのモリス(モリス・デイ)をリーダーとする<ザ・タイム>。そのステージに見入っているアポロニア。そこへ、キッドが楽屋から出て来た。ひと目彼女を見るなり、彼は心ひかれた。しかし、アポロニアの態度はそっけなかった。その夜、愛用のパープル・メタリックのオートバイで家に帰ると、両親(クラレンス・ウィリアムズ3世)(オルガ・カルラトス)が喧嘩しており、自分の部屋にとじこもってやりきれない気分になるキッド。両親の不和からくるキッドの落ちこみは、メンバーにも悪影響をおよぽし、女性メンバーのリサ(リサ・コールマン)とウェンディ(ウェンディ)は彼に対し不満を訴えた。また、クラブのオーナー(ビリー・スパークス)も彼に対して手を焼いている様子だ。モリスは早速、オーナーにキッド追放をうながす。やがてキッドはアポロニアとのデートに成功し、2人はたちまち愛し合うようになった。モリスもアポロニアに目をつけ、スターにすることを約束に自分のグループに加わることを承諾させた。そんなある日、アポロニアが、キッドの欲しがっていた純白のギターをプレゼントしに彼を訪ねた。喜びもつかの間、そのギターをモリスから受け取った契約金で買ったことを聞くと、キッドは彼女を殴りつけてしまう。部屋を飛び出すアポロニア。やがて、モリスはアポロニアをリーダーとする美人トリオ・グループ<アポロニア6>を結成した。やりどころのない悲しみをステージで爆発させるキッド。そんな彼の姿を、アポロニアは涙をためた瞳で見つめていた。<アポロニア6>が近くのクラブで成功を収めた夜、上機嫌のモリスがアポロニアを誘惑しようとするが、そこに現われたキッドが、モリスをつき飛ばし、彼女をバイクに乗せて去る。が、またしても2人は喧嘩別れをするはめになった。深夜、キッドが家に戻ると、父がピストル自殺をはかった。一命をとりとめたものの、悲しみにくれていたキッドは、父の戸だなから古い楽譜を見つけ出した。彼もかつては作曲を志していたのだ。立派なミュージシャンになることしか道はないと心に決めたキッドは、次の日、純白のギターを抱えてステージに立った。「この曲を父に捧げます」と告げると、全力をふりしぼって新曲<パープル・レイン>を熱唱するキッド。拍手と歓声がいつまでも続いた。彼の生き生きとした表情を<ザ・レボリューション>のメンバーも、クラブのオーナーも、そして、もちろんアポロニアも見つめ、声援するのだった。(ワーナー映画配給*1時間51分)




2-48. 屋根の上のバァイオリン弾き

監督 ノーマン・ジュイソン
出演 トポルノーマ・クレインロザリンド・ハリス
1971年・アメリカ(ユナイト)

解説
ブロードウェイの公演でロングラン記録を樹立したミュージカルの映画化。政情不安の嵐の中でも、娘たちは恋をし、各自が新しい人生に踏み出す。家長は貧しくも誇り高く、妻を愛し、娘たちを愛し、家を守る。製作・監督は 「夜の大捜査線」のノーマン・ジュイソン、イーディッシュ文字の巨匠ショラム・アレイハムのベスト・セラー小説をジョセフ・スタインが脚色、撮影は「オリバー!」 のオズワルド・モリス、美術はマイケル・ストリンジャー、音楽監督はジョン・ウィリアムズ、作曲はジェリー・ボック、作詞はシェルドン・ハーニック、管弦楽編曲はアレグザンダーコウレージ、音楽編集はリチャード・カラス、バイオリン演奏はアイザック・スターン、振付は 「ウエスト・サイド物語」 でアカデミー賞監督賞、振付により同賞の特別賞を受賞したジェローム・ロビンス、ロバート・ローレンスがそれぞれ担当。出演は、イスラエルの舞台とロンドン王立劇場でテビエ役を演じたトポル、「続・夜の大捜査線」 のノーマ・クレイン、モリー・ピコン、レナード・フレイ、ロザリンド・ハリス、マイケル・グレイザー、ミシェル・マーシュ、ニーバ・スモール、レイモンド・ラヴロックなど。

ストーリー
アナテフカの牛乳屋テビエ(トポル)は貧しくも信仰深く、少々口やかましい妻ゴールデ(ノーマ・クレイン)、愛らしい5人の娘、ツァイテル(ロザリンド・ハリス)、ホーデル(ミシェル・マーシュ)、ハーバ(ニーバ・スモール)、シュプリンシェ(エレイン・エドワーズ)、ビルケ(キャンディス・ボンスタイン)の家族と暖かい家庭を築いていた。アナテフカはウクライナ地方の貧しい小村で、市場、肉屋、かじ屋、仕立屋、宿屋などが雑然と立ち並び、屋根の上にはバイオリ弾きが、危なげなバランスを保って楽しい曲を弾いている。このバイオリン弾きが象徴するように、村もテビエも激しい現実から伝統を守って必死に生きているのだ(Tradition=伝統の歌)。村じゅうが安息日の準備に忙しいある日、イェンテ婆さん(モリー・ピコン)が肉屋のラザール(ポール・マン)と長女ツァイテルの結婚話をもってきた。ゴールデは喜んだが、ツァイテルには仕立屋のモーテル(レナード・フレイ)という恋人がいた。ツァイテルはイェンテ婆さんの話をたくみにそらした(Matchmaker Matchmaker=仲人の歌)。テビエは仕事の帰り道、ふと金持だったらとも思った(If I Were a Rich Man= もし金持なら)。途中、キエフから来た貧しい、革命を夢見る学生パーチック(マイケル・グレイザー)と意気投合し、テビエはパーチックを招いて、家族に紹介し、安息日の祈りを捧げた(Sabbath Prayer= 安息日の祈り)。次の日、テビエは仕方なく、肉屋のラザールとツァイテルとの結婚を許すのだった。村の人たちは祝福し、ユダヤ人もロシア人も一緒になって乾杯した(To Life=人生に乾杯)。しかし翌日、思いあまったツァイテルは、テビエにモーテルとの恋を打ち明け、結局テビエはモーテルとの結婚を許してやるのだった(Miracle of Miracle= 奇蹟の中の奇蹟)。反対していたゴールデも、ようやくモーテルとの結婚を認めた(The Tailor Motel Kamzoik= 仕立て屋モーテル・カムゾイル)。やがて厳粛な結婚式がとり行われ、出席者は明日に希望を託す歌を合唱するのだった(Sunries Sunset=陽は昇り、陽は沈む)。しかしその楽しい結婚式も、突然入り込んできた警官隊にメチャメチャにされてしまった。三女のハーバはロシアの若者フヨードカ(レイモンド・ラヴロック)と恋に落ち、パーチックはホーデルに結婚を申し込んだ。怒るゴールデにテビエはホールデの気持を説明し、たしなめるのだった(Do You Love Me= 愛しているかい)。間もなく学生闘士パーチックは逮捕され、ホールデはパーチックを追ってシベリアに旅発った(Far From the Home I Love= 愛するわが家を離れて)。三女のハーバもフヨードカのもとへ走った。政情は悪化する一方で、ついにユダヤ人の強制退去命令が下った。村人たちは次々と村を離れていった(Anatevka= アナテフカ)。家財道具を積み込み、静かに村を離れていこうとするテビエに、バイオリン弾きがもの悲しい曲を奏でて後にしたがうのだった。