11-1. サウンド・オブ・ミュージック 

監督 ロバート・ワイズ
出演 ジュリー・アンドリュースクリストファー・プラマーエレノア・パーカー
1965年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
アカデミー賞に輝く不朽の名作。ナチス支配を乗り越えて生きようとする一家の姿を、美しい音楽を盛り込んで描き出す。2003年に40年の歳月を経てニュープリント・デジタルリマスター版となって登場。2011年<第二回 午前十時の映画祭 Series2/青の50本>にて再上映。

ストーリー
志願修道女のマリア(ジュリー・アンドリュース)は歌が大好きだった。ある日彼女は院長の命令で、7人の子供がいる、やもめの退役海軍大佐トラップ(クリストファー・プラマー)家の家庭教師となった。トラップ家の古風で厳格な教育方法に対しマリアは彼女一流の音楽教育を始めた。大佐が婚約者の男爵夫人を迎えにウィーンに旅立った後、マリアは子供たちに音楽の楽しさ、歌うことのすばらしさを教えた。帰宅した大佐は子供たちの変りように驚きマリアを責めたが、子供たちの美しいコーラスを聞いた時、心ならずも忘れていた音楽を愛した昔を思い出した。数日後トラップ家でパーティが開かれた。その頃オーストリアでもナチの勢力は日増しに強くなり、広間に飾られたオーストリア国旗はナチ派の非難まとだった。マリアは大佐と踊ったとき、彼を愛しているのに気づき修道院に帰った。しかし院長に励まされ、再びトラップ家に帰ったが、そこには大佐と男爵夫人の婚約発表が待っていた。だが、子供たちはなつかず、大佐がマリアを愛しているこを知った夫人はひとりウィーンに旅立った。大佐とマリアは結婚した。大佐の友人マックスは彼らを音楽祭りに出場させることにした。ハネムーンから帰った大佐を待っていたのはヒットラーからの召集令状だった。祖国への愛を裏切れない彼に残された唯一の道それは亡命だった。音楽祭りで一家が故国の民謡を歌った時、はからずも観衆の大コーラスがかぶさり、一家は優勝した。その後修道院に身をかくした一家は、長女の恋人で、今はナチにくみするロルフに見つかったが、大佐の勇気が彼にうちかった。そして一家はスイス目ざして力強く山道を登っていった。




11-2. 街の灯

監督 チャールズ・チャップリン
出演 チャールズ・チャップリンヴァージニア・チェリルフローレンス・リー
1931年・アメリカ

解説
「サーカス」 に次ぐチャールズ・チャップリン作品で、例によって自ら原作脚色監督主演したもの。カメラはチャップリン映画専属のローランド・トセローがゴードン・ポロック及びマーク・マークラットを助手としてクランクしている。助演者はこの映画でデビューしたヴァージニア・チェリル、ハリー・マイヤース、「進めオリンピック」 のハンク・マン、アラン・ガルシア等である。チャップリンは発声映画反対主義であるから、台白は用いず擬音と伴奏楽のみを付してある。なお本邦上映の分には日本字幕が挿入されている。

ストーリー
ある都で盛大な銅像除幕式があった。紳士貴女こもごも立って祝辞を述べた後に、いざ像を覆っていた幕が引き下されると、驚くベし、この像の上には一人のみすぼらしい小男が眠っていた。で、人々の驚駭と叱声の中に、この小男は狼狽して逃げ出したのであるが、こうして宿をも失われたこの浮浪者にとっては身投げでもするより外にすることがない様に思われた。ところが、この浮浪者が、計らずも、街角で花を売る娘を見て胸を踊らせたのである。しかも、この盲目の娘は彼女に大金を恵んだ紳士が彼であると思い込んで彼の手を握っては感謝の言葉を述べるのであった。そうなっては、彼も男であった。彼は初恋に胸をときめかせ、そして働いて金を儲け彼女と交際しようと考えた。そして、まず街の清掃作業員になった。で、金が入ると、彼女の家へ堂々として紳士らしく訪問していき、いじらしい盲目の娘が、つつましく彼と話をしたり、やさしく微笑んだりするのを眺めては、思慕の情をやっていた。が、恋というものは、仲々成らぬものである。彼は職を失った。その上に娘は病気になった。大切な恋人の病を癒す大金がいる。そこで彼は賞金目当てにボクシングに飛入りした。が、所詮は素人の小男の彼だった。リング上を修羅の如くに荒れ廻りはしたが、遂には彼は手痛く叩きのめされてしまった。絶望だった。暗い夜だった。彼はトボトボと街を歩いた。すると、その彼の目の前に現われたのは、酔っ払いの百万長者だった。この金持ちは酔うと、やア親友と、叫んでは浮浪者たる彼の首っ玉にも跳びつく癖のある男で、彼も幾度かその邸宅に引っ張られて夜を明かしたことがある、が、ただ残念なことには、酔いがさめると、もう全然酔中のことは忘れているということであった。で、金の探索に困り抜いていた彼は金持ちのこの由を相談すると、そこは大金持ちでその上に酔っていたので、金持ちは大いに気前よく彼を我家に招じたうえに金1千ドル也をポンと投げ与えた。が、間の悪い時には悪いもので、ここへ強盗が押し込んで来て、そこに活劇となり金持ちは叩きのめされた。で、正気に返ると金持ちはもう先刻の親友を認識してはいない。こいつは強盗の仲間だ、というので彼は弁解も聞き入れられず、罪もないのに捕まえられてしまった。が、でも、彼は、一寸した隙に1000ドル娘に届けることだけはできた。それから年は過ぎて、無実の刑に服した彼が、また町に出て来たとき、裟婆の風は冷たく彼を吹いた。むごく、わびしい人生だった。が、その彼はふと、ある花屋の前に立と、その店内に、いそいそと立ち働くかつての盲目の恋人を見つけた。あの1000ドルで彼女は目も見えるようになったらしい。だが、それとは知らぬ娘は、いつまでも店の前に立っている彼を見て、これはお乞食さんだと思った。だが、気立てのいい彼女は、なにがしかの金を彼に恵んでやろうと、店から出てきた。そして金を彼の手中に押し入れた。が、そうして手に触ったとき、かつての記憶が呼びかえった。あなたでしたか.....。この言葉が娘の口から漏れたときは彼も娘も、もう千万無量の思い出、じっと顔と顔とを見合わせて突っ立っていた。




11-3. ライフ・イズ・ビューティフル

監督 ロベルト・ベニーニ
出演 ロベルト・ベニーニニコレッタ・ブラスキジョルジオ・カンタリーニ
1998年・イタリア(松竹=アスミック・エース エンタテインメント=角川書店提供)

解説
収容所に送られたユダヤ人の父親が幼い息子を生きながらえさせるためにとった意外な作戦をぺーソスあふれるタッチで描いた感動作。監督・主演は「ボイス・オブ・ムーン」 (主演)「ジョニーの事情」 (主演・監督)のイタリアを代表する喜劇俳優ロベルト・ベニーニ。脚本はベニーニと「ジョニーの事情」「宣告」 のヴィンチェンツォ・チェラーミ。製作はエルダ・フェッリ、ジャンルイジ・ブラスキ。撮影は「ボイス・オブ・ムーン」「死と処女」 のトニーノ・デリ・コリ。音楽は「ボイス・オブ・ムーン」 のニコラ・ピオヴァーニ。美術・衣裳は「インテルビスタ」 のダニーロ・ドナーティ。共演はベニーニ夫人で彼の作品でコンビを組むニコレッタ・ブラスキ(「ミステリー・トレイン」 )、新人のジョルジオ・カンタリーニ、「時の翼に乗って ファラウェイ・ソー・クロース!」 のホルスト・ブッフホルツほか。

ストーリー
1937年、イタリアはトスカーナ地方の小さな町アレッツォ。本屋を開く志を抱いてやってきたユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)は美しい小学校教師ドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)と運命的な出会いをする。当座の生活のため叔父ジオ(ジュスティーノ・ドゥラーノ)の紹介でホテルのボーイになり、なぞなぞに取り憑かれたドイツ人医師レッシング(ホルスト・ブッフホルツ)らと交流したりしながら、ドーラの前に常に何度も思いもかけないやり方で登場。ドーラは町の役人と婚約していたが、抜群の機転とおかしさ一杯のグイドにたちまち心を奪われてしまった。ホテルで行われた婚約パーティで、グイドはドーラを大胆にも連れ去り、ふたりは晴れて結ばれた。息子ジョズエ(ジョルジオ・カンタリーニ)にも恵まれ、幸せな日々だったが、時はムッソリーニによるファシズム政権下。ユダヤ人迫害の嵐は小さなこの町にも吹き荒れ、ある日、ドーラが自分の母親(マリザ・パレデス)を食事に呼ぶため外に出たすきに、グイドとジョズエは叔父ジオと共に強制収容所に連行された。ドーラも迷わず後を追い、自分から収容所行きの列車に乗り込んだ。さて、絶望と死の恐怖たちこめる収容所で、グイドは幼いジョズエをおびえさせまいと必死の嘘をつく。収容所生活はジョズエがお気に入りの戦車を得るためまでのゲームなのだと。とにかく生き抜いて“得点”を稼げば、戦車がもらえるのだとグイドはことあるごとに吹き込み続けた。強制労働の合間を縫って、女性の収容所に押し込められたドーラを励まそうと、放送室にしのびこんで妻に呼びかけたりと、グイドの涙ぐましい努力は続く。そんなある日、グイドは軍医として収容所にやってきたあのなぞなぞ好きの医師レッシングと偶然再会。レッシングから「重要な話がある」と耳打ちされたグイド。ドイツ軍の士官たちのパーティの給仕を命じられた彼は、監視の目を盗んでレッシングに話しかけるが、なんとレッシングは新たななぞなぞの答えをグイドに聞いただけだった。戦況は進み、収容所は撤退準備をはじめる。この機を逃さじとグイドはジョズエをひそかに隠して、ドーラを捜すうちに兵士につかまった。グイドはジョズエの隠れ場所を通るとき、おどけて行進ポーズをとる。それが彼の最後の姿だった。ドイツ兵が去った後、外へ出たジョズエは進駐してきたアメリカ軍の戦車を見て歓声をあげる。戦車に乗せられたジョズエは生きていたドーラを見つけ、母子は抱き合った。これが幼い息子を生きながらえさせようとした父親の命がけの嘘がもたらした奇跡の物語だ。




11-4. やさしい嘘と贈り物

監督 ニコラス・ファクラー
出演 マーティン・ランドーエレン・バースティンアダム・スコット
2008年・アメリカ(ピックス)

解説
ひとりで寂しい日々を過ごす老紳士が、ある老婦人との出会いで、自分の過去に気付いていく姿を描く感動的なドラマ。名優2人が共演し、優しく美しい家族の物語を映し出す。

ストーリー
孤独な生活を送る老人ロバート・マローン(マーティン・ランドー)のもとに、ある日、夢のような出来事が訪れる。スーパーでの仕事を終えて帰宅すると、そこに一人の美しい女性がいたのだ。メアリー(エレン・バースティン)という名のその女性は、通りがかったロバートの家の扉が開いており、住人のことを心配したのだと語る。立ち去る間際、彼女はロバートを食事に誘う。久しぶりとなる女性とのデートに心躍らせながら、若いスーパーのオーナー、マイク(アダム・スコット)に、その出来事を相談。当日、慣れない場に苦戦しつつも、小洒落たレストランで楽しいひと時を過ごすロバート。そして2人は“絶対に物事をあきらめない”という約束を交わす。こうしてロバートとメアリーの交際が始まる。メアリーの娘アレックス(エリザベス・バンクス)からは、メアリーがロバートに好意を寄せていると知らされ、まるで10代のような恋にときめいてゆくロバート。そして2人で訪れたクリスマスパーティー。そこでロバートは、メアリーと会話する男を彼女の別れた夫と勘違いして罵倒してしまう。だが、それはロバートの弟、バック(ジェームズ・デヴニー)だった。弟の顔をすっかり忘れてしまったロバート。さらに、彼の中で彼女を失うことに対する恐れから、嫉妬心が膨れ上がってゆく。そして、彼女の電話番号も彼女の苗字も忘れてしまっていることに気付いたとき、パニックに陥る。混乱してメアリーに八つ当たりするが、昔の自分の写真を目にして、すべてを思い出してゆく。ロバートは、あらゆることを忘れていた。スーパーのオーナー、マイクは自分の息子であり、メアリーの娘だと思っていたアレックスは自分の娘でもあり、恋に落ちた相手は自分の妻だったのだ…。倒れて病院に運ばれるロバート。助からないという医者の言葉にも、“あきらめない”という約束を胸に、メアリーは最愛のロバートのもとを訪れる……。




11-5. 白いカラス

監督 ロバート・ベントン
出演 ニコール・キッドマンアンソニー・ホプキンスエド・ハリス
2003年・アメリカ(ギャガ=ヒューマックス)

解説
米のベストセラー小説をニコール・キッドマン&アンソニー・ホプキンス共演で映画化。ある秘密を抱える元大学教授が、年齢を超えた恋を通して再生していく姿を感動的に描出。

ストーリー
1998年、米マサチューセッツ州。名門アテナ大学の学部長コールマン・シルク(アンソニー・ホプキンス)は、ユダヤ人として初めて古典教授の地位に昇りつめた学者。だが勇退を目前に、何気なく発した言葉が黒人差別だと非難され、辞職に追い込まれてしまう。半年後。いまだ怒りのおさまらないコールマンは、湖畔で隠遁生活を送る作家のネイサン・ザッカーマン(ゲイリー・シニーズ)を訪ね、自分の屈辱の経緯を本にしてくれと依頼する。それには尻込みしたネイサンだが、孤独な二人の間には友情が芽生えていった。1年後。コールマンはネイサンに、恋人がいることを打ち明ける。彼女の名はフォーニア・ファーリー(ニコール・キッドマン)。義父の虐待、ベトナム帰還兵の夫レスター(エド・ハリス)の暴力、子供の死という悲惨な過去を背負った、清掃の仕事をしている34歳の女性だ。一方、コールマンも自身の出生にまつわる秘密を、長年連れ添った亡き妻にさえ隠していた。実は彼は白い肌に生まれついた黒人であり、社会でうまく生きていくためにユダヤ人だと偽っていたのだった。互いに深い傷を持つコールマンとフォーニアは、ネイサンの忠告を無視して、どんどん愛にのめり込んでいく。そしてコールマンがフォーニアに自分が黒人であることを告白した後、ふたりは交通事故死してしまうのだった。




11-6. 大統領の陰謀 

監督 アラン・J・パクラ
出演 ダスティン・ホフマンロバート・レッドフォードジャック・ウォーデン
1976年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
ウォーターゲート事件を追求し、ニクソン大統領を失脚させたワシントン・ポスト紙の2人の記者、カール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの行動を通して、事件の全貌を描く。製作はウォルター・コブレンツ、共同製作はマイケル・ブリットンとジョン・ボースチン監督は「バララックス・ビュー」 のアラン・J・パクラ、脚本はウィリアム・ゴールドマン、原作はカール・バーンスタインとボブ・ウッドワードの共同著書、撮影はゴードン・ウィリス、音楽はデイヴィッド・シャイアー、編集はロバート・J・ウォルフが各々担当。出演はダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード、ジャック・ウォーデン、マーティン・バルサム、ハル・ホルブルック、ジェイソン・ロバーズ、ジェーン・アレクサンダー、メレディス・バクスターなど。

ストーリー
1972年6月17日土曜日の午前2時30分。ワシントンのウォーターゲート・オフィス・ビルの5階にある民主党全国委員会本部に5人の男たちが侵入した。彼らは来るべき秋の大統領選挙にそなえて必勝を期する民主党のキャンペーンを攪乱するために、秘かに雇われた者たちだった。この5人は元CIAの情報部員と大統領再選本部の現役の対策員で固められていた。仕事は手抜かりなくおこなわれる筈であったが、ビルの警備員に見咎められ、たちまち警察に通報された。そして不法侵入の現行犯で逮捕された。まだ入社して9カ月になったばかりのワシントン・ポスト紙の記者ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)は、ウォーターゲート事件が起きてから7時間後に、上司のハワード・ローゼンフェルド(ジャック・ウォーデン)に呼ばれた。一方、同じポスト紙のベテラン記者カール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)も、この事件に興味を示していた。その朝、彼は現場にいってきた記者たちのメモをコピーし、局長のハワード・サイモンズ(マーティン・バルサム)や主幹のブン・ブラッドリー(ジェイソン・ロバーズ)に、もう少しチェックしてみたいと伝えた。そしてバーンスタインは、ウォーターゲート・ビルのあらゆる人たち−−事務員はもとより、夜警、掃除婦など−−に片っ端から電話をかけ始めていた。政府上層部のスポークスマンたちはこの不正侵入行為に非難を集中させた。はじめのうちはこの侵入事件は狂信者たちの単独犯によるもので,リチャード・M・ニクソン大統領の公式の選挙運動本部から認められたものでも、援助を受けているものでもないと思われ、ホワイト・ハウスの人間とはまったく無関係と思われていたのだ。その日の午後、裁判所では保釈が認められるかどうかを決定する予審が行われたが、ウッドワードはその場に刑事犯の弁護士ではない政府筋の弁護士たちが来ているのに好奇心をそそられた。さらに、侵入者の1人、ジェームズ・W・マッコード・ジュニアが、最近CIAを辞めたことを認めたとき、ウッドワードはこの事件がホワイト・ハウスから発表されているような政治狂信者の仕わざとか単なる三流の侵入事件にとどまるものではないことを感じた。この犯行ははじめ、刑事事件と考えられていたが、この侵入事件が国家の自由な選挙制度とプライバシーに対する市民権を破壊しようとする網の目のように張られた巧妙な犯罪の氷山の一角にすぎないことがわかると、ワシントン・ポスト社内では調査を続けるというウッドワードとバーンスタインの主張も認められた。2人の取材活動が開始された。最初のうちは政治の厚い壁にはさまれて試行錯誤のくり返しだったが、謎の人物ディープ・スロート(ハル・ホルブルック)の、『金を追え』という示唆に従ってニクソン再選委員会の選挙資金を追求するうちに、その裏に隠された陰謀が次第に鮮明になっていった。裏付け調査を終わった2人の暴露記事が全世界に報道される日がやってきた。それは大統領をはじめとするホワイト・ハウスの幕僚たちに大きな衝撃を与えた。ワシントン・ポスト紙は権力からの激しい否認にあい、ニクソン大統領の報道担当官たちからは激しい非難と嘲笑を浴びせられた。しかし、不吉な警告にも屈せず、ウッドワードとバーンスタイン、それにワシントン・ポスト紙の同僚たちは、長いあいだ疑っていた侵入犯と政府の関連を立証してみせた。岐路に立たされたホワイト・ハウスの強い圧力にも屈せず、両記者の徹底的な調査は半信半疑で当惑する市民たちに、政府の高官たちの犯罪的な裏切り行為を納得させるに充分だった。たとえどんな大統領でも、大統領とあろう者がそのような陰謀に加担したり見逃したりしたことを、初めは信じたがらなかった国民も疑いの目を向け始めた。次から次へと発表される2人の記事は国会で真相を究明することを促し、さらにそれは政府や陰謀者たちの不安をつのらせ、ある場合にはパニック状態に陥らせた。ウッドワードとバーンスタインのタイプをたたく手に力がこもり、それは近い日、必ず訪れるであろうニクソン大統領失脚を物語っているようだった。




11-7. タイタニック

監督 ジェームズ・キャメロン
出演 レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットビリー・ゼインキャシー・ベイツ
1997年・アメリカ(20世紀フォックス映画)

解説
1912年4月、処女航海の途中で氷山に接触し沈んだ豪華客船タイタニック号。同船の乗客たちの知られざるエピソードを、レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレット主演で映画化し、多くの人々の涙を誘ったラブストーリーを3D化。実物大の模型を製作して撮影に挑んだリアリティへの追求が、3Dにさらなる臨場感を与えている。

ストーリー
現代。タイタニック号引揚げ作業の責任者ラベット(ビル・パクストン)が、タイタニック最大の秘宝と伝えられるダイヤモンド“ハート・オブ・ジ・オーシャン”を身につけた若い美女のスケッチ画を発見。そのニュースをテレビで見た101歳のローズ(グロリア・スチュアート)が、絵のモデルは自分だと名乗り出る。悲劇の航海の様子が、ローズの口から語られる……。1912年4月10日、世紀の豪華客船タイタニック号は、世界のVIPを乗せ出港した。17歳だったローズ(ケイト・ウィンスレット)は、母親ルース(フランシス・フィッシャー)が決めたフィアンセで大資産家キャル(ビリー・ゼーン)と共に乗船したが心はうつろだった。一方、タイタニック号の三等切符を賭けに勝って手に入れた画家志望のジャック(レオナルド・ディカプリオ)は、あこがれのアメリカへ渡れる喜びに酔っていた。ジャックは甲板でスケッチをしている時、ローズを見てその美しさに一目惚れしてしまう。その夜、海に身を投げようとするローズを、偶然ジャックが助ける。ジャックの感性に惹かれていったローズは、ジャックを部屋に呼び肖像画を描いてもらう。情熱を押さえられないふたりは激しく求めあい、はじめて結ばれる。その頃、船上の見張り番が巨大な氷山を発見し連絡するがすでに遅く、タイタニック号の船首が氷山に接触、浸水が始まった。だがジャックはキャルによって宝石泥棒に仕立て上げられ、警備兵室のパイプに繋がれてしまう。一等船室の女性、子供優先で救命ボートへの乗船が始まるが、ローズはジャックが気掛かりでボートから引き返す。なんとか警備兵室のジャックを助け出すのに成功、しかし嫉妬に狂ったキャルがどこまでも二人を追ってくる。船内では海水が滝のようになって流れ、海面では船の沈没と共に渦巻きが発生。1000人を超える生存者が甲板にしがみついていたが、船は割れ大勢の人が人形のように谷底へ落ちていく。沈みゆく船とともに最後まで愛を貫こうとしたジャックとローズの運命は……。




11-8. センター・ステージ

監督 ニコラス・ハイトナー
出演 アマンダ・シュールゾーイ・サルダナスーザン・メイ・プラット
2000年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
舞台演出家出身のニコラス・ハイトナー監督が、米国バレエ界の内幕を描く群像ドラマ。名門バレエ団入団を目指して競う若者たちの、成功と挫折をドラマチックにつづる感動作。

ストーリー
バレリーナを夢見るジョディ(アマンダ・シュール)は、ニューヨークの名門バレエ団、アメリカン・バレエ・カンパニーへの登龍門である学校に合格。反抗的なエヴァ(ゾーイ・サルダナ)と優等生モーリーン(スーザン・メイ・プラット)を新生活のルームメイトに、厳しいレッスンに励んでいく日々。しかしある日、舞台監督のジョナサン(ピーター・ギャラガー)に呼び出され、足の骨格が悪いから卒業公演は難しいと一撃される。落ち込むジョディを励ます仲間たち。気晴らしに外部のダンススタジオへ出向いた彼女は、バレエ団の花形クーパー(イーサン・スティーフェル)と偶然出会い意気投合、そのままベッドインしてしまう。だが卒業公演オーディションの数日後、クーパーの公演を観に行ったジョディは彼に冷たくあしらわれ、二人の関係はぎくしゃくしたものになった。それでも続く、ハードなレッスンの毎日。いろいろなトラブルも経て、そしてついに、卒業公演の幕が開くのだった。




11-9. ウオーター・ホース

監督 ジェイ・ラッセル
出演 エミリー・ワトソンアレックス・エテルベン・チャップリン
2007年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
ロード・オブ・ザ・リング」 の製作陣が放つ、心温まるファンタジー。ヨーロッパ中が戦火に包まれた暗い時代を背景に、幼い少年と伝説の生き物の強い絆を描き、感動を呼ぶ。

ストーリー
第二次世界大戦の真っ只中。アンガス・マクマロウ(アレックス・エテル)は、戦地へ行ったまま音信不通の父の帰りをひたすら待っていた。神話と伝説が息づき、美しい森と湖に囲まれたスコットランドの村で、母のアン(エミリー・ワトソン)と姉の3人で暮らしているアンガスだが、父のいない寂しさは誰にも埋めることはできなかった。ある日、アンガスはネス湖で青く光る卵を見つけて、秘かに持ち帰る。そこから生まれてきた生き物にアンガスは“クルーソー”と名付け、毎日のように食べ物を与えるのだった。やがて、イギリス軍が押し寄せ、マクマロウ家の広い屋敷が、ハミルトン大尉(デヴィッド・モリッシー)を始めとする将校たちの宿舎となる。ネス湖が注ぐ海に出没するナチの潜水艦を撃退するのが目的らしい。そんな中、成長したクルーソーは屋敷を駆け回り、姉や下働きとして雇われているモーブリー(ベン・チャプリン)に見つかってしまう。クルーソーは、ケルト人の古い伝説に出てくる“ウォーター・ホース”であり、すぐにネス湖に放すべきだと、モーブリーはアンガスに忠告する。最初は嫌がっていたアンガスであったが、一晩ごとに成長するクルーソーの姿を見て渋々承諾するのだった。アンガスは大人たちの隙を見ては、ネス湖へクルーソーに会いに行く。ある日、クルーソーはアンガスを背中に乗せて湖中を泳ぎ出した。もはやクルーソーとアンガスは信頼と愛情でしっかりと結ばれていた。しかし、クルーソーを目撃した大人たちが、伝説の生き物を捕獲しようと計画、宣伝のために捏造写真まで撮影される。その後、兵士がクルーソーを敵の潜水艦と勘違いし、湖に向かって砲撃する。一方、アンガスは、クルーソーを大海原へ逃がそうと湖へと向かう……。




11-10. オーシャンズ 12

監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ジョージ・クルーニーブラッド・ピットマット・デイモン
2004年・アメリカ(ワーナー)

解説
豪華スター共演による、痛快犯罪劇の続編。カジノ王から盗んだ金を返すため、再結集したチームが再び大計画に挑む。キャサリン・ゼタ=ジョーンズら新キャストにも注目。

ストーリー
超キレ者の犯罪立案者ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)は、かつてラスベガスのカジノ王、テリー・ベネディクト(が経営する、誰にも破れないと言われたカジノの金庫から想像を超えた策略で大金を奪い、一躍犯罪界のもっとも悪名高き首謀者となった。強奪金は、しめて1億6千万ドル。それを仲間たちと山分けした後、ダニーは別れていた元妻テス(ジュリア・ロバーツ)と復縁。静かで“合法的な”暮らしをそれなりに楽しんでいたが…。詐欺師としてのキャリアが行き詰まっていたラスティー・ライアン(ブラッド・ピット)は、ダニーからカジノ強奪の話を持ちかけられ、彼の右腕として才覚を発揮する。みごと、信じられないような大成功を収める。その後、彼はオシャレなハリウッドのホテル経営者に転身。そんなラスティーを待っていたのは、次なるビッグな強奪計画だけではなく、本物の“LOVE”の予感が…。スリにかけては右に出る者のいない、しかし野心が先走りして失敗しがちのナイス・ガイ、ライナス・コールドウェル(マット・デイモン)。カジノ強奪で立派に役割を果たした彼は、ダニーを真似て自分自身のチームを作ろうと、シカゴで“人材開発”に金を使っている。来たるべき任務の到来に、彼は一人前のオトコとしてチームの要に立候補するが…。憎きオーシャンズに復讐できるなら、手段は問わない冷酷非情な実業家テリー・ベネディクト(アンディ・ガルシア)。特に、どさくさにまぎれて恋人まで盗んだ首謀者ダニー・オーシャンは、絶対に許せない。彼が取る道は2つに1つしかない。盗まれた金と同額(+利子)の損害賠償をダニーからせしめるか、それとも彼らを殺すか…。ヨーロッパのFBIとして誉れ高い、ユーロポールの捜査官イザベル・ラヒリ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)。彼女は高度な窃盗事件を扱うエリートであるうえ、ミステリアスでエレガントな色香を併せ持つ。カジノ強奪事件を詳細に研究済みのイザベルは、オーシャンズの前に強敵として立ちふさがり、さらにラスティーとは“LOVE”という名のつながりが! ふたりの甘く危険な関係は、しかし余計に彼女の挑戦心を刺激する…。フランスの特権階級出身の裕福なプレイボーイ、フランソワ・トゥルアー(ヴァンサン・カッセル)。彼には、犯罪現場に小さな黒ギツネの像を名刺代わりに残すことで知られる華麗なる西欧の強盗、“ナイト・フォックス”という別の顔がある。金のために盗むのではない。不可能な犯罪をやってのけること自体が、フランソワを興奮させるのだ。“ナイト・フォックス”はオーシャンズに一騎打ちの盗み合いを仕掛ける!




11-11. ミクロの決死圏 

監督 リチャード・フライシャー
出演 スティーブン・ボイドラクウェル・ウェルチエドモンド・オブライエン
1966年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
S・F作家オットー・クレメントとジェイ・ルイス・ビックスビー共同執筆による原作を、「情無用の街」 のハリー・クライナーがシナリオ化し、「海底二万哩」 のリチャード・フライシャーが演出したS・Fもの。撮影はアーネスト・ラズロ。音楽はレナード・ローゼンマンが担当。出演は「脱走」 のスティーブン・ボイドに「青春カーニバル」 のラクェル・ウェルチ。この2人を巡って、エドモンド・オブライエン、アーサー・オコンネル、アーサー・ケネデイ等が絡んでいる。製作はソール・デイヴィッドがあたっている。

ストーリー
物体を細菌大に縮小し、長時間体内に浮遊しうる研究を完成した、チェコの科学者ヤン・ベネス博士がアメリカに亡命してきた。しかしアメリカへ着くや敵側のスパイに狙われ、車に乗っているところを襲われ、博士は脳出血を起こし倒れた。現在のアメリカの医学では、博士の研究の初歩の段階までしか進んでいず、体中に潜りこむことは1時間しかできなかった。だから、長時間潜行を知るためには1時間だけでも博士の脳内に潜り博士を助けねばならない。医学史空前の試みがここに挙行された。潜行艇に医師と科学者を乗せ、ミクロ大に縮小し、それを博士の頚動脈に注射することにより、博士の脳内出血部に到達させ、レーザー光線で治療する、というのであった。潜行艇プロテウス号は、脳外科医デュバル(アーサー・ケネデイ)、その助手コーラ(ラクェル・ウェルチ)、循環器の専門医マイケルス(ドナルド・プリーゼンス)、海軍大佐オーウェンス(ウィリアム・レッドフィールド)、それに特別情報部員グラント(スティーブン・ボイド)の5人を乗せて博士の体内に潜入していった。無論外部とはリモート・コントロールで絶えず緊密な連絡をとることは言うまでもない。しかし、実際に潜行艇が血管内を潜行してゆくと思いがけないことが突発した。血管の内皮壁に微細な割れ目があり、とかく艇の進行が遅れがちだし、心臓の鼓動は進行を妨げた。彼らは60秒間博士の心臓を止めて、やっとのことで通過、さらにリンパ節内に入っていった。しかしここでも海草のような網状ファイバーに絡まれ艇は壊滅寸前となった。そこでグラントとコーラ、マイケルスが艇外に出て絡みついたファイバーを必死で除去、正に九死に一生の難事だった。ようやく艇が脳に入った時、余す時間は6分しかなかった。グラントの超人的な活躍で脳の治療を終えた時、突如外部との連絡が絶えて、艇が破壊した。マイケルスが敵側に通じてい、裏切ったのだった。絶体絶命の危機。後4分のうちに体外にでないと博士の生命は無論、彼らも消滅してしまう。出口を捜さんと4人が必死になっていると、後方から1点の光明がグラントを捉えた。それはバネス博士の目から入る光線だった。涙腺を刺激し、涙とともに体外へ脱出、時間はもはや分をわって秒台に達していた。すばやくミクロ拡大機にあてられ、4人は無事に決死の大冒険に成功した。




11-12. レント

監督 クリス・コロンバス
出演 ロザリオ・ドーソンテイ・ディグスウィルソン・ジャメイン・ヘレディア
2005年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル)

解説
演劇界のアカデミー賞であるトニー賞など、数々の賞に輝く伝説のミュージカルを映画化。'90年代のNYを舞台に繰り広げられる、芸術家の卵の青年たちの物語を、歌にのせて描く。

ストーリー
1989年ニューヨーク、クリスマス・イヴの夜。イースト・ヴィレッジのロフトに住むルームメイト、HIVウィルスに侵された元人気ロック・バンドのメンバーであるロジャー(アダム・パスカル)と、ドキュメンタリー映像作家を目指すマーク(アンソニー・ラップ)は、家賃を滞納して電気を止められていた。今は資産家となったかつての仲間ベニー(テイ・ディグス)が家賃を催促に来るが、彼は実は、若き芸術家たちのためにスタジオを作ることを計画している。そんな夜、ロジャーは階下に住む麻薬中毒のダンサー、ミミ(ロザリオ・ドーソン)と出会って、心を惹かれ始める。その頃、強盗に襲われた哲学教授のコリンズ(ジェッセ・L・マーティン)は、ドラァグ・クイーンのエンジェル(ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア)に助けられ、お互いエイズという病気を抱えていることを知り、すぐさま恋に落ちた。クリスマス。ベニーの進める立ち退き計画に抗議するため、パフォーマンス・アーティストのモーリーン(イディナ・メンゼル)がライヴを行なっている。彼女はマークの元恋人だったが、今は女性弁護士のジョアンヌ(トレイシー・トムス)と付き合っていた。そしてロジャーは、ミミもHIVに感染していることを知り、2人は恋人同士となる。大晦日、ついにロフトは閉鎖され、仲間たちの環境は徐々に変化していった。そして1年経ち、発病していたエンジェルが死亡。残された仲間たちは、今この時を精一杯生きることを改めて決意するのだった。




11-13. ベスト・キッド

監督 ハラルド・ズワルト
出演 ジェイデン・クリストファー・サイア・スミスジャッキー・チェンタラジ・P・ヘンソン
2010年・アメリカ、中国(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
カンフーを通して成長していく少年とその師匠との絆を描いた大ヒット青春ストーリーをリメイク。師弟コンビに扮するのは、ジャッキー・チェンとウィル・スミスの息子ジェイデン・スミス。

ストーリー
父を亡くし、母親と2人で暮らしをしている11歳の少年ドレ(ジェイデン・スミス)。彼は母の転職を機に、アメリカから中国・北京に引っ越してくる。言葉も文化も違う新天地での生活に馴染めないドレは、近所のカンフー少年チョンたちにいじめられる。ドレは彼らから逃げてばかりいたが、ある日、マンションの管理人ハン(ジャッキー・チェン)に助けられる。実はカンフーの達人であるハンは、自分を守るために使うことを条件に、ドレにカンフーを教える。ドレはカンフーの訓練にひたむきに取り組み、同時に、逃げずに立ち向かうことの大切さも学んでいく。やがてドレは、チョンとのカンフー決戦の日を迎える。




11-14. ボルベール (帰郷)

監督 ペドロ・アルモドバル
出演 ペネロペ・クルスカルメン・マウラロラ・ドゥエニャス
2006年・スペイン(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
「トーク・トゥ・ハー」 のペドロ・アルモドバル監督が、笑いと涙たっぷりに描く6人の女性のドラマ。ペネロペ・クルスが、たくましさの中に脆さをはらんだ主人公を好演。

ストーリー
明るくたくましく生きるライムンダ(ペネロペ・クルス)に、ある日突然、二つの死が降りかかる。15歳の娘パウラ(ヨアンナ・コバ)が、本当の親ではないことを理由に関係を迫ってきた夫を、包丁で刺し殺してしまったのだ。ライムンダはパウラを守るために、空き家となっていた隣のレストランの冷凍庫に、夫の死体をひとまず隠す。そしてその夜、ライムンダの両親が死んだ大火事のショックから病気がちになっていた最愛の伯母も、息をひきとった。姉のソーレ(ロラ・ドゥエニャス)と隣人のアグスティナ(ブランカ・ポルティージョ)に伯母の葬式を任せ、夫の死体をどうするか頭を悩ませていたライムンダは、近くで撮影していた映画スタッフに店員と間違えられ、彼らに食事を提供することに。やがてレストランはそのまま彼女の生活の場になっていった。一方、伯母の葬儀のため故郷ラ・マンチャに戻ったソーレは、近所の人たちの奇妙な噂を耳にする。火事で死んだはずの母の姿を見かけたというのだ。動揺するソーレだが、葬儀を終えて家に帰り着いた時、車のトランクから母(カルメン・マウラ)がにこやかに現れて仰天する。突然の再会に戸惑いながらも、ソーレは母と一緒に暮らし始める。やがてライムンダがソーレの家を訪れるが、母は、理解し合えないまま別れたライムンダの前に現れる勇気はまだなかった。まもなく、ライムンダは映画スタッフたちの打ち上げパーティーで、母に教えられたタンゴの名曲を歌って聞かせる。心の奥に眠る母への思慕を揺り起こす彼女。店の前に停められたソーレの車に隠れて、母もまた娘への愛しさに瞳を濡らしていた。そしていよいよ、母とライムンダの再会の時がやってくるのだった。




11-15. 天使にラブソングを

監督 エミール・アルドリーノ
出演 ウーピー・ゴールドバーグマギー・スミスハーヴェイ・カイテル
1992年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
殺人事件を目撃し、修道院に匿われたクラブ・シンガーが巻き起こす騒動を描くコメディ。監督は「スリーメン&リトルレディ」 のエミール・アルドリーノ、製作はテリー・シュワルツ、エクゼクティブ・プロデューサーは「アダムス・ファミリー」 のスコット・ルーディン、脚本はジョセフ・ハワード名義で、ポール・ルドニックが執筆した第一稿を「ハリウッドにくちづけ」 のキャリー・フィッシャー、「トップガン」 のジム・キャッシュとジャック・エプスジュニア、「マグノリアの花たち」 のロバート・ハーリングが潤色した。撮影は「ターミネーター2」 のアダム・グリーンバーグ、音楽は「フォー・ザ・ボーイズ」 のマーク・シャイマンが担当。主演は「ザ・プレイヤー」 のウーピー・ゴールドバーグ、「レザボア・ドッグス」 のハーヴェイ・カイテル、「フック」 のマギー・スミス、「フィッシャー・キング」 のキャシー・ナジミー。

ストーリー
ネヴァダ州リノのカジノで歌うクラブ・シンガー、デロリス=ヴァン・カルティエ(ウーピー・ゴールドバーグ)は、一帯の顔役で、自身の愛人でもあるヴィンス(ハーヴェイ・カイテル)が組織の裏切り者を殺す現場を見てしまう。警察へ駆け込んだデロリスをサザー警部(ビル・ナン)はサンフランシスコの修道院に匿うことにした。新米尼僧シスター・クラレンスとして修道院に迎えられたデロリスは、厳格な修道院長(マギー・スミス)の高圧的な態度にもめげず、シスター・パトリック(キャシー・ナジミー)、シスター・ロバーツ(ウェンディ・マッケナ)ら若い尼僧たちと親しくなり、ラザラス尼(メアリー・ウィックス)から聖歌隊のリーダーを引き継ぎ、歌のレパートリーにソウルやロックのナンバーを加え始めた。彼女たちのはたちまち全世界に拡がり、ローマ法王の耳にも。やがて法王が訪米されることになり、デロリスたちの修道院を訪問することになった。その頃、ヴィンスの放った殺し屋の影がデロリスに迫りつつあった。殺し屋に捕まってリノに連れ戻されたデロリスを、尼僧たちが一致団結して助け出し、ヴィンスたちは逮捕された。そして法王の前で、デロリス率いる聖歌隊はにぎやかに歌い踊るのだった。




11-16. 天使にラブソングを 2

監督 ビル・デューク
出演 ウーピー・ゴールドバーグキャシー・ナジミーメアリー・ウィックス
1993年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
歌って踊るエネルギッシュな修道女、デロリスの活躍を描くミュージカル・コメディ。93年の「天使にラブソングを」 の続編。監督は、俳優でもある「ディープ・カバー」 のビル・デュークに交代。製作は、前作に続きスコット・ルーディンと、ドーン・スティール。エグゼクティヴ・プロデューサーは「ワーキング・ガール」 のローレンス・マークと、前作で共同製作を務めたマリオ・イスコヴィッチ。脚本は「花嫁のパパ」 のコンビ、ジェームズ・オアとジム・クラックシャンク。撮影はオリヴァー・ウッド。音楽はスコアをマイルス・グッドマンが書き、前作のマーク・シャイマンか音楽監修を担当、アレサ・フランクリンの「ア・ディーパー・ラヴ」をはじめ数々の曲が全編を彩る。主演は前作に続きウーピー・ゴールドバーグ。共演はマギー・スミス、キャシー・ナジミーら前作のキャストに加え、「荒野の七人」 のジェームズ・コバーンほか。

ストーリー
セント・キャスリン修道院の尼僧たちが、クリスプ氏(ジェームズ・コバーン)が理事長を務めるセント・フランシス高校で社会奉仕をする事になった。しかしそこは、構内暴力や非行が横行する問題校だった。シスター・メリー・パトリック(キャシー・ナジミー)やシスター・メアリー・ロバート(ウェンディー・マッケナ)たちはスレた悪ガキたちに手を焼き、修道院長(マギー・スミス)も困り果てる。尼僧たちは今やラスベガスのエンターティナーとなったデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)に助けを求める。フランシス高校は懐かしの母校でもあり、再び尼僧ファッションに身を包んだ彼女は、音楽教師として学校に潜り込んだ。授業そっちのけで騒ぐ生徒たちや石頭の教師たちに驚きながらも、彼女はユニークな授業を続けるが校長たちの反発にあう。そして、荒れた学校に平和が戻らなければ今年中に閉校という計画がある事を耳にする。デロリスはひょんな事から生徒たちに歌の才能がある事に気づき、ゴスペルのコーラス・グループ結成を思い立つ。彼女の熱意に、反抗的な生徒たちもいつしか心を許し、″地獄からのクラス″の23人は、天使のヒップホップ聖歌隊に変身。権威あるカリフォルニア州の合唱コンクールを目指す彼らは、″歌う街頭募金″で参加費用を集める。いよいよ当日、ほかの出場者たちに圧倒された生徒たちは逃げだそうとする。だが、デロリスの激しい叱責に勇気を出して歌い踊り、見事優勝する。彼らは何かをやり遂げる喜びを初めて知った。




11-17. グランド・ホテル

監督 エドモンド・グールディング
出演 グレタ・ガルボジョーン・クロフォードウォーレス・ビアリー
1932年・アメリカ(MGM支社)

解説
1本立てで主演映画を作り得るスターを5名集めたキャストの贅沢さで空前のセンセーションを惹き起こした映画で、ヴィッキ・バウム作の同名の小説を女史自ら劇化したものを映画化したもの。ただしこの映画直接の扮本はウィリアム・A・ドレイク翻案の米国における舞台脚本で、監督には「月世界征服(1931)」「夜の天使」 のエドモンド・グールディングが当たり、カメラは「お気に召すまま(1932)」「摩天楼の狼」 のウィリアム・ダニエルスの担任である。主要俳優は「お気に召すまま(1932)」 のグレタ・ガルボ、「雨」「蜃気楼の女」 のジョーン・クローフォード、「チャンプ(1931)」「肉体」 のウォーレス・ビアリー、「アルセーヌ・ルパン」 のジョン・バリモアおよび「男子戦はざる可らず」 のルイス・ストーン、「ビール万歳」 のジーン・ハーショルト、この他バーネル・ブラット、ロバート・マクウェード、モーガン・ウォーレス、タリー・マーシャル、フェルディナンド・ゴットシャルク等も出演している。

ストーリー
ホテルはいわば人生の縮図である。ベルリンのグランド・ホテルの1日、ここに登場する人々の生活を例にとってみよう。機業界の大立物プレイジンクは自己の事業が危機に瀕したので他の会社との合同を企てていた。エキゾチックな踊り子として艶名を謳われたグルシンスカヤは昨日の人気も失せ、明日にも自殺を決行せん許り全く気力を失っていた。フォン・ガイゲルン男爵は賭博に浮き身をやつしてた挙げ句、多大の借財を負って盗賊団に身を投じていた。彼はグルシンスカヤの宝石を盗み出して債務を逃れんとしていた。これに加わる新しい登場人物が女速記者のフレムヘン、すこぶる性的魅力のある女で最近プレイジンクに雇われたのである。その外かつてはプレイジングの会社の帳簿係をしていたクリンゲラインは健康を害して自暴自棄になり、せめてこの世の名残にもと、へそくり金でグランド・ホテルに投宿して豪勢なる雰囲気に浸っていた。クリンゲラインはガイゲルン男爵と知己となり共にフレムヘンとも親しい仲になった。プレイジングは自分の画策した合同運動が失敗に帰し、心ならずもついに不正手段で取引に成功した。これが彼の道徳観念に動揺を与え、フレムヘンに金を与え商用を口実に彼女と共に旅行せぬかと説いた。彼女は同意した。グルシンスカヤは一夜自分の部屋に戻ってくると意外にも男爵が自分の部屋に隠れているのを発見した。彼は彼女を愛してここまで追ってきたと弁解し人生の歓喜を讃える。彼女は彼を疑おうともしない。翌朝男爵は彼女から盗んだ宝石を返して、彼の愛の真剣であることを訴える。彼女は喜んで翌朝2人は一緒にホテルを立つことを約束する。その夜プレイジングは自分の部屋でフレムヘンに切ない胸のうちを打ち明けようとする。依然金の調達に執着していた男爵はプレイジングの部屋に忍び入った。物音を聞きつけたプレイジングは怪しげな男を発見して彼に飛びかかり猛烈な格闘を演じてついに男爵を殺してしまう。罪を逃れんとの一念から狂乱のプレイジングはクリンゲラインに罪を隠匿させようとする。卑劣なる脅迫に臆せぬクリンゲラインは一笑に附して直ちに警察を呼んだ。夜が明けた。フレムヘンは気の毒なクリンゲラインを慰める。2人はパリに行き新しい生涯に入ることを決心する。一方グルシンスカヤのマネジャー達は彼女が男爵の悲惨事を耳にする事を恐れたが、未だ何も知らぬ彼女は数年来経験せぬ幸福感に打たれ唄を口ずさみながらホテルのロビーを通り抜け停車場へ歩を運ぶ、男爵の行衛を心配しつつも。プレイジングは警察に引致された。男爵の死骸はホテルの裏口から運び出された。クリンゲラインとフレムヘンは新生の喜びに浸りつつパリへ出発する。かくてグランド・ホテルの新しき日が再び迎えられる。




11-18. クララ・シューマン 愛の協奏曲

監督 ヘルマ・サンダース・ブラームス
出演 マルティナ・ケデックパスカル・グレゴリーマリック・ジディ
2008年・ドイツ、フランス、ハンガリー(アルバトロス・フィルム)

解説
作曲家ロベルト・シューマンの妻クララの生涯を描いたドラマ。シューマンと並ぶ、天才作曲家ヨハネス・ブラームスのミューズでもあった彼女の愛と、真実の姿を音楽と共につづる。

ストーリー
コンサートホールで観客の喝采を浴びる作曲家ロベルト・シューマン(パスカル・グレゴリー)と妻でピアニストのクララ(マルティナ・ゲデック)は、ヨハネス・ブラームスと名乗る男(マリック・ジディ)に呼び止められる。クララはヨハネスとの出会いに運命的なものを感じ、波止場の薄暗い居酒屋へ足を運ぶ。そこでヨハネスの演奏を聴き、彼の才能を一瞬で見抜く。ロベルトは持病の頭痛に苦しんでいた。クララは夫を救うため、自ら指揮者として楽団員の前に立つ。そして女性の指揮者への偏見をはねのけ、見事な演奏を引き出す。ある日、ヨハネスがシューマン家を訪れる。ヨハネスは夫妻の子供たちに気に入られ、シューマン家で共同生活を送ることになる。ヨハネスは苦労の多いクララを明るく輝かせると同時に、楽団に馴染めないロベルトの理解者となる。頭痛から深酒に溺れるロベルトは、ヨハネスを自身の後継者として紹介する。そしてクララには、自分がいなくなったあとの支えにするようほのめかす。この三角関係に耐えられなくなったヨハネスはクララへの永遠の敬愛を誓い、シューマン家を去る。音楽監督の座を奪われたロベルトはライン川に身を投げ、入院する。クララがひとりで出産を終えると、ヨハネスは彼女のもとに戻ってくる。危篤状態に陥ったロベルトは、クララの腕の中で息を引き取る。ヨハネスはクララに求愛するが、クララはロベルトとの日々を忘れることはできなかった。ヨハネスはクララに肉体関係を求めず、彼女が死んだら後を追うと誓う。2人の友情は、クララが死ぬまで続いた。その約1年後、ヨハネスも彼女を追うように生涯の幕を閉じる。




11-19. バレンタイン・デー

監督 ゲイリー・マーシャル
出演 ジェシカ・アルバテイラー・ロートナージェシカ・ビール
2010年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
LAを舞台に、バレンタインデーにまつわるそれぞれのカップルのストーリーを描くアンサンブルムービー。ジュリア・ロバーツ、ジェシカ・アルバら豪華キャストの出演も話題。

ストーリー
2月14日。ロサンゼルスで花屋を営む男が、一緒に暮らす恋人に朝一番でプロポーズをする。笑顔で婚約指輪を受け取る彼女。だが、男が出かけると女は部屋の荷物をまとめ始めるのだった……。飛行機にたまたま隣合わせた男女。洗練された物腰が魅力的な30代の男と、11ヶ月ぶりに一晩だけロサンゼルスでの滞在許可が下りた軍人の女。会話を交わすうちに惹かれあっていく二人だったが、目的地には共に意外な人が待っていた……。理想の男性にめぐり合い、幸せいっぱいの小学校教師。そんな彼女は、医師の仕事でサンフランシスコへ出張に行く彼をこっそり追いかけるつもりだった。しかし、男は飛行場ではなく、全く別の場所へと向かっていた……。結婚50年を過ぎても変わらぬ愛を誓い合う仲睦まじい夫婦。ところが、よりによってこの日に、妻は夫に重大な告白をする……。付き合い始めて間もない同じ会社で働く男女。だが、その女は誰にも言えないサイドビジネスに励んでいた……。皆がみんなバレンタインデーを楽しんでいるわけではない、と今年も“バレンタインデーなんか大嫌いだ!パーティ”を開くアメフトの有名選手のパブリシスト。そんな彼女に近づくスポーツキャスターがいる。彼は、電撃引退の噂がある選手を取材したいだけであったが、彼女がバレンタインデーを嫌う本当の理由を知り、その存在が気になり始める……。年齢も職業も、愛のかたちも様々な男女たちが織り成す愛の行方は……?




11-20. チャイコフスキー

監督 イーゴリ・タランキン
出演 インノケンティ・スモクトゥノフスキーアントニーナ・シュラーノワマイヤ・プリセツカヤ
1970年・ソ連(ヘラルド)

解説
ロシアの大地が生んだ偉大な作曲家チャイコフスキーの愛と苦悩を掘りさげる感動の人間ドラマであり、ソビエトのベストメンバーをよりすぐった名演奏による不滅のメロディが奏でられる音楽映画。総指揮・音楽監督を「ハイヌーン」「アラモ」「OK牧場の決斗」 のメロディで名高いディミトリ・ティオムキン、監督・脚本はイーゴリ・タランキン、撮影はおそく世界にただ一人の女性撮影監督であろう、マルガリータ・ピリーヒナ、ほかに来日したボリショイ・オペラ、ボリショイ・バレエのメンバー、レニングラード管弦楽団、ボリショイ劇場管弦楽団、至宝ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー等々ソビエト音楽界のベストメンバーが演奏・出演している。出演は「ハムレット(1964)」 のインノケンティ・スモクトゥノフスキー、「戦争と平和」 のアントニーナ・シュラーノワ、世界バレエ界のプリマ・バレリーナのマイヤ・プリセツカヤ、「戦争と平和」 のウラジスラフ・ストルジェリチクなど。カラー、七〇ミリ。

ストーリー
少年時代の小さなエピソードを経て、ピアノ協奏曲第一番の成り立ちから映画は始まる。この曲は強大な勢力をもっていた恩師ルビンシュテイン(V・ストルジェリチク)とちょっとした感情的トラブルまで起こしたが、結果的にはチャイコフスキー(I・スモクトノフスキー)の名を高めた作品であった。そしてソプラノ歌手デジレ(M・プリセツカヤ)との恋の破局、大金持未亡人との世にも珍らしいプラトニック・ラブを背景に彼の作品と感情とのつながりを綴っていく。メック夫人(A・シュラーノワ)との交際は十三年間、一二〇〇通におよぶ文通を交しながら、一度も直接会って語ったこともなく、夫人は彼の芸術の最大の理解者として莫大な経済的援助を与え続けた。さらに、可愛いだけがとりえの教え子ミリューコワ(R・ユージナ)との結婚と離婚が、チャイコフスキーの繊細な神経を踏みにじっていく。だが、彼は再起した。外国旅行や、ルビンシュテインの死に直面して、いままでの作品とは全く違う、死にうち勝つ名曲を送り出した。オペラ「ユフゲニー・オネーギン」、交響曲第四番などであった。栄光の時代がやってきた。しかし、それは死の年でもあった。交響曲第六番“悲愴”を自ら指揮して初演した八日後、突然病に倒れたチャイコフスキーは、“悲愴”の最終楽章が静かに消えてゆくように、その生涯を閉じた。




11-21. パンズ・ラビリンス

監督 ギレルモ・デル・トロ
出演 セルジ・ロペスマリベル・ベルドゥーイバナ・バケロ
2006年・スペイン、メキシコ(CKエンタテインメント)

解説
欧州各国で絶賛され、アカデミー賞で美術賞など3部門を獲得したダーク・ファンタジー。残酷な現実と恐怖の幻想世界を行き来する少女の心の闇を、圧倒的な映像美で描き出す

ストーリー
1944年のスペイン。内戦終結後もゲリラたちはフランコ将軍の圧政に反発していた。そのため、緑深い山奥でも血なまぐさい戦いが繰り広げられていた。おとぎ話が大好きな少女・オフェリア(イバナ・バケロ)は、臨月を迎えた母カルメン(アリアドナ・ヒル)と共に、その山奥にやってきた。駐屯地を指揮するフランコ軍のビダル大尉(セルジ・ロペス)と母が再婚したからだ。しかしビダル大尉は、ゲリラの疑いがあるというだけで農夫親子を惨殺するような残忍な男だった。ビダル大尉を恐れるオフェリア。一方、小間使いのメルセデス(マリベル・ベルドゥ)は実はゲリラ軍の協力者だった。大尉の元に潜り込んで、ゲリラ軍に情報を流していたのだ。そんなメルセデスと仲良くなるオフェリアだが、ある日、ひょんなきっかけから不思議な迷宮(ラビリンス)に迷い込んでしまう。そこには山羊の頭と体をしたパン(牧神)がいて、彼女に驚くべき事実を告げた。オフェリアは魔法の王国のプリンセス、モアナの生まれ変わりに違いないと言うのだ。そして満月の夜が来るまでに三つの試練に耐えられれば、両親の待つ魔法の王国に帰ることができると言う。その言葉を信じたオフェリアは三つの試練に立ち向かう決心をするのだった。こうして幻想の世界にのめり込んでいくオフェリアの周りでは、ついにゲリラ軍とフランコ軍の、血で血を洗うような戦いが始まる……。




11-22. カレンダー・ガールズ

監督 ナイジェル・コール
出演 ヘレン・ミレンジュリー・ウォルターズキーラン・ハインズ
2003年・イギリス(ブエナ ビスタ)

解説
英国で大ヒットを記録した、実話に基づく人間ドラマ。婦人会に所属する中年女性たちがヌード・カレンダー制作に奮闘する姿を、ユーモアたっぷりに活写する痛快作だ。

ストーリー
ヨークシャーの田舎町ネイプリーでは、地元の婦人会が主婦たちの社交の中心だった。定例ミーティングで取り上げられるのは、「ブロッコリーの栽培方法」に「秘伝のジャムの作り方」。こんな毎日に、婦人会のメンバーで大親友のクリス(ヘレン・ミレン)とアニー(ジュリー・ウォルターズ)は、心底うんざりしていた。そんな日々の中、アニーは最愛の夫ジョンを白血病で亡くしてしまう。悲しみに沈むアニーの気分を晴らそうと、クリスは大胆な一計を案じる。毎年恒例の婦人会のカレンダーの売り上げを伸ばし、ジョンがお世話になった病院に寄付をするため自分たち自身がカレンダーのモデルになろうというのだ。しかもヌードで!初めはとりあわない婦人会のメンバーだったが、いつしか有志が集まり始める。彼女たちは、実は心の奥でずっと待っていたのだ。自分の人生の主役は、まぎれもなく自分自身なのだと実感できるような瞬間を。婦人会幹部の圧力や家族の反発、そして周囲の好奇の目にもへこたれず、彼女たちは走り始める




11-23. 舞台よりすてきな生活

監督 マイケル・カレスニコ
出演 ケネス・ブラナーロビン・ライト・ペンスージー・ホフリヒター
2000年・アメリカ(キネティック)

解説
英国の才人ケネス・ブラナーが、売れっ子劇作家に扮して七転八倒の熱演を披露。子作り問題で悩む夫婦と隣家の孤独な少女の交流をつづるハートフルなコメディだ。

ストーリー
劇作家のピーター(ケネス・ブラナー)は新作戯曲の上演を前にして、スランプに陥っていた。子供が嫌いなため、戯曲に登場する子役の表現がしっくりいかず、舞台稽古では演出家も俳優たちも困惑顔。子供のダンス教室の先生をしている妻のメラニー(ロビン・ライト・ペン)は、赤ちゃんが欲しくてたまらない。夫と産婦人科を訪れた帰り、陰性だったと落胆するメラニーの背後で、ピーターはホッと胸を撫で下ろす。“大きな子供”のような性格のピーターは、自分が父親になることなど想像もできない。かつての売れっ子劇作家もここしばらく失敗作が続き、新作の仕事に集中したいのだが、執筆のための家庭環境は悪くなるばかり。しつこく子作りを迫る妻ばかりか、とんちんかんな事を言って家庭を掻き回す痴呆症ぎみの義理の母(リン・レッドグレーヴ)の存在も悩みの種。その上、毎晩、眠りにつくころになると隣家の庭先で犬が吠える。仕方なく夜中に気晴らしの散歩をすることが習慣になったピーターは、ある夜、路上で不審な男を捕まえる。その男は、近所で耳にしていたピーターの名を騙って歩く奇妙なストーカーで、昔、自分がピーターと人違いされたことから彼に興味を持ったのだと白状する。事情を聞き、なんとなく親近感を覚えたピーターは公園のベンチで偽ピーター(ジャレッド・ハリス)と語り合い、「近所の犬が吠えるせいで台本が書けない」と、胸のうちを明かす。不用意な発言が災いを招くとは予想もせずに…。書けないイライラの募るピーターの環境は、思わぬところから改善の兆しをみせる。ある日、家の向かいに、エイミー(スージー・ホフリヒター)という少女と母親が引っ越してきた。エイミーは足に障害があり、母親と二人暮らし。さっそく彼女を家に招き、ご近所付き合いを始めるメラニーを睨みつけ、ピーターは書斎に閉じこもる。ところが、エイミーのままごと遊びを盗み見していたピーターは、エイミーから戯曲のヒントを盗むことを思いつき、恐る恐る彼女に接近していく。そのときから二人の間には奇妙な友情が芽生えはじめる。以来、障害を気にして内気になっていたエイミーをプールに誘ったり、ダンスを教えたり。ピーターとメラニーとの交流によって、エイミーはみるみる明るさを取り戻していく。しかし、そんな幸福な関係に終止符を打ったのは、エイミーの母親トリーナだった。エイミーがメラニーに習ったインディアンのダンスを、皆の前で発表することになった日、よろけながらも楽しんで踊るエイミーに母親は恥ずかしさを覚え、ダンスを中断させてしまったのだ。怒り狂ったピーターとトリーナの言い争いに一番傷ついたのはエイミーだった。時が経ち、エイミーがピーターの家に別れを告げに来た。別居していた両親が和解し、また引越しをすることになったのだ。出発の直前、路上に座って別れの挨拶を交わすエイミーとピーター。母親にピーターとの接触を禁じられているエイミーは心ならずも彼に距離をおいているが、二人の心は分かちがたい愛情で結ばれていた。




11-24. プチ・ニコラ

監督 ロラン・ティラール
出演 ヴァレリー・ルメルシェカド・メラッドサンドリーヌ・キベルラン
2009年・フランス(コムストック・グループ=フェイス・トゥ・フェイス)

解説
フランスで50年間愛され続け、知らない人はいないという国民的絵本「プチ・ニコラ」 を実写映画化。夢見がちで天真爛漫な小学生の少年ニコラと仲間たちが巻き起こす騒動を温かい視線で描く。「モリエール 恋こそ喜劇」 のロラン・ティラール監督が1960年代のノスタルジックなムード漂うドラマに仕上げている。

ストーリー
ニコラ(マキシム・ゴダール)は、父親(カド・メラッド)と母親(ヴァレリー・ルメルシェ)と暮らす小学生の男の子。学校でも優しい先生(サンドリーヌ・キベルラン)、友人たちに囲まれ、幸せに過ごしている。ある日、両親の会話から、ニコラは母親にもうすぐ赤ちゃんが生まれると信じ込む。そして、弟が生まれたら自分は大事にされなくなり、“親指小僧”のように森に捨てられてしまうと思い込む。ニコラは自分が必要な存在であることを示そうと、両親のいない間に掃除をしたり、母親にプレゼントをしたりする。しかし一生懸命すればするほど裏目に出てしまい、かえって両親の怒りを買ってしまう。ニコラは作戦を変更し、仲間たちと赤ちゃんがいなくなる計画を考えるが、ニコラたちのとんでもないアイデアのために町全体がパニックになってしまう。ニコラは赤ちゃんにいなくなってもらう方法を見つけるが、小さな弟がうまれたばかりの友達に会う。その友達はニコラに、兄になる素晴らしさを伝える。ニコラは急いで家に帰り、弟ができる嬉しさを両親に伝える。しかしそれが誤解だとわかると、自分の幸せを考えてくれていないとふてくされてしまう。数日後、ニコラの母親の妊娠がわかる。弟ができたことを喜んだニコラは、生まれてくる日を指折り数えて待つ。しかし、生まれたのは妹だった。素直に喜ぶことができないニコラだったが、両親と親戚が集まって喜ぶ姿を見て、みんなを笑顔にできる人になりたいと考えるようになる。




11-25. ナイトメアー・ビフォア・クリスマス

監督 ヘンリー・セリック
出演 クリス・サランドンダニー・エルフマンキャサリン・オハラ
1993年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
恐怖と怪奇に彩られた異世界で愛や優しさと無縁に育った青年が本当の愛に目覚めるまでを、美しい音楽と映像でグロテスクかつメルヘンチックに描いたファンタジー。「ビートルジュース」「シザーハンズ」「バットマン(1989)」 のヒットメーカー、ティム・バートンがディズニー・スタジオ在籍中から温めていた企画(当初はTVススペシャル用)で、全編ストップモーション・アニメーションを使用した意欲作。またモーション・コントロール・カメラの導入やコンピュータでキャラクターの表情の変化をシミュレーションするなど、最新のデジタル技術を駆使し、従来の人形アニメにない大胆で斬新な映像が実現した。原案・キャラクター設定はティム・バートン、監督はバートンのディズニー時代からの盟友でMTVやCMで活躍するヘンリー・セリック。製作はバートンと「バットマン リターンズ」 のデニーズ・ディ・ノヴィ、脚本は「シザーハンズ」 のキャロライン・トンプソン、撮影はピート・コザチク。バートン作品には欠かせないダニー・エルフマンが作詞・作曲、主人公ジャックの歌を手掛け、さらに端役で声の出演も果たしている。声の出演は「フライトナイト」 のクリス・サランドン、「ホーム・アローン」 シリーズのキャサリン・オハラほか。

ストーリー
奇妙で愛すべき住民が暮らす街、ハロウィンタウン。カボチャ大王ジャック・スケリントン(声=クリス・サランドン)は、最高のハロウィン演出家として市長や市民たちに絶賛されながら、毎年毎年、ハロウィンの準備に明け暮れることに嫌気がさしていた。彼はある日、親友の幽霊犬ゼロとともに、森の中で奇妙な形の扉がついた木を見つける。その1つ、クリスマスツリーの形のドアをくぐり抜けると、そこは真っ白な雪と明るいデコレーションに包まれた街、クリスマスタウンだった。初めて見るクリスマスの光景に魅せられた彼はハロウィンタウンに戻ると、早速クリスマスの研究に没頭。ジャックを愛するつぎはぎ人形サリー(声=キャサリン・オハラ)は心配するが、彼はサンタの代わりにクリスマスを行うことを決意する。ジャックはサンタに休暇を取ってもらおうと、ロック、ショック、バレルの悪戯っ子3人組を派遣するが、3人はボスのウーギー・ブーギーに引き渡してしまう。そしてクリスマス・イヴ。棺桶型のソリに乗ったジャックが人間界を訪れてプレゼントを配るが、ハロウィンタウンの住民たちが作った不気味なプレゼントに被害続出。ジャックはにせサンタとして軍隊に攻撃される。ようやく自分の愚かさに気づいた彼は、捕らわれのサンタを救い、クリスマスは無事に行われた。沈む彼の側にサリーが寄り添い、ジャックは今まで気にも留めなかった彼女の優しさ、美しさに気づいた。




11-26. 扉をたたく人

監督 トーマス・マッカーシー
出演 リチャード・ジェンキンスハーズ・スレイマンダナイ・グリラ
2007年製作国・アメリカ(ロングライド)

解説
初老の大学教授と移民の青年との心のふれあいを描き、口コミから大ヒットを記録した感動作。大学教授役のリチャード・ジェンキンスは第81回アカデミー賞で主演男優賞候補に。

ストーリー
コネチカットの大学教授ウォルター・ヴェイル(リチャード・ジェンキンス)は62歳。最愛の妻を亡くしてから、心を閉ざして孤独に、日々無気力に生きていた。ある時、学会出席のためニューヨークを訪れるウォルター。滞在のため、留守にしていた別宅のアパートへ向かうが、玄関を開けると、そこには見ず知らずのカップルがいた。ここに引っ越してきたばかりというシリア出身の移民青年タレク(ハーズ・スレイマン)とセネガル出身の恋人ゼイナブ(ダナイ・グリラ)は詐欺にあったのだ。彼らは警察だけは呼ばないでくれと頼み込み、素直に荷物をまとめて出て行く。2人とも永住許可証を持たないため、警察沙汰になって国外追放されることを恐れていた。だが、その日の宿もない彼らを見かねたウォルターは、当面、部屋を貸すことを申し出る。タレクはその親切に感激し、自分の持っていたアフリカの太鼓=ジャンベをウォルターに教える。ジャンベを通じて友情を深めていくウォルターとタレク。ある日、タレクはウォルターを誘ってセントラルパークへジャンベの演奏に出掛ける。最初こそ躊躇いを見せたウォルターだったが、大勢の仲間に囲まれて演奏するうちに、久しく忘れていた高揚感が蘇ってくる。その表情には生きることに対する喜びが溢れていた。しかし帰り道、地下鉄の駅で思いがけない事件が起こる。タレクが無賃乗車の容疑で逮捕されてしまったのだ。ただの誤解にもかかわらず、警察はタレクをテロリストのように扱い、連行してしまう。入国管理局の拘置所へ移送されたタレクを救うため、弁護士を雇い、収容施設へ毎日面会に訪れるウォルター。数日後、ウォルターのもとを1人の美しい女性が訪ねてくる。それは、タレクの母モーナ(ヒアム・アッバス)だった。




11-27. エンド・オブ・ディズ

監督 ピーター・ハイアムズ
出演 アーノルド・シュワルツェネッガーガブリエル・バーンケヴィン・ポラック
1999年・アメリカ(東宝東和)

解説
新ミレニアムに復活をもくろむ魔王サタンの野望に立ち向かうタフガイの姿を描くアクション・ホラー。監督・撮影は「レリック」 のピーター・ハイアムズ。脚本は「エアフォース・ワン」 のアンドリュー・W・マーローで、製作は同作のアーミアン・バーンスタイン。音楽はジョン・デブニー。VFX総監修は「シックス・センス」 のスタン・ウィンストン。出演は「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」 のアーノルド・シュワルツェネッガー、「ユージュアル・サスペクツ」 のガブリエル・バーンとケヴィン・ポラック、「ジュリアン・ポーの涙」 のロビン・タニー、「マーズ・アタック!」 のロッド・スタイガーほか。

ストーリー
1999年、大晦日目前のニューヨーク。民間の警備会社で働く元刑事ジェリコ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、依頼人の株屋を狙撃した犯人を追い詰めるが、その男は「悪魔が復活する」と不可解な言葉を吐く。ジェリコは男がヴァチカンの元修道士であることを突き止め、彼の住居にあった写真の女性クリスティーン(ロビン・タニー)を訪ねる。謎の神父の一団に襲われた彼女を助けたジェリコは彼女を連れて教会に逃げ込んだ。彼らを迎えたコヴァック神父(ロッド・スタイガー)は、クリスティーンがミレニアムの終わりに蘇ったサタンが次の世を支配するために選んだ悪魔の花嫁で、彼女がサタンと結ばれた時世界は滅ぶと告げる。信じられないジェリコの前に、あの株屋に姿を変えていたサタン(ガブリエル・バーン)が現れる。殺された妻子を蘇らせると甘言で誘うサタンを窓から突き落としたジェリコはクリスティーンを守るため教会に戻るが、そこにサタンが現れて彼女を奪っていった。コヴァックらに命を救われたジェリコは地下で行われていたサタン復活の儀式の会場に完全武装で乗り込み、クリスティーンを奪い返す。教会に難を逃れたジェリコだが、サタンはついに真の姿を現してジェリコに迫り、彼に憑依してクリスティーンを組み敷く。だが、ジェリコは我が身を犠牲にすることでクリスティーンと世界を救うのだった。




11-28. チャップリンの独裁者

監督 チャールズ・チャップリン
出演 チャールズ・チャップリンヘンリー・ダニエルジャック・オーキー
1940年・アメリカ(東和)

解説
山高帽・ドタ靴・ステッキ・アヒル歩きのチャップリン・スタイルの最後の作品。撮影はカール・ストラッスとローランド・トセロー。音楽監督はメレディス・ウィルソン。共演者にジャック・オーキー、ポーレット・ゴダード、レジナルド・ガーディナー、ヘンリー・ダニエル、ビリー・ギルバート、チェスター・コンクリほか。

ストーリー
1918年――第1次世界大戦の末期、トメニア軍陣地では1兵卒であるユダヤ人の床屋(チャーリー・チャップリン)が奮戦していた。しかし、敗色は濃く、前線では敗退がつづき、上層部ではひそかに平和交渉が始められていた。何も知らぬ将兵は勝利を信じてた戦った。トメニア軍の空軍将校シュルツ(レジナルド・ガーディナー)は敵に包囲され、危ないところを床屋に救われた。傷ついたシュルツを助けて2人はトメニアに命からがら逃げかえったが、その時すでに戦争には負けていた。床屋は戦傷のためすべての記憶を失い病院に収容された。数年の年月が流れ、トメニアに政変が起こった。その結果ヒンケル(チャーリー・チャップリン)という独裁者が現われ、国民の熱狂的な歓迎を受けた。彼はアーリアン民族の世界制覇を夢み、他民族ことにユダヤ人の迫害を行った。ユダヤ人街のジャッケル(モーリス・モスコヴィッチ)の家族やハンナ(ポーレット・ゴダート)らは、不安な毎日を送っていた。床屋は政変のあったのも知らず、このユダヤ人街の自分の店に戻って来ていた。突撃隊の隊員はユダヤ人街に来ては乱暴した。ハンナはくやしがった。臆病者の床屋も彼女と協力して彼等に抵抗した。ある時、突撃隊に逮捕されかかった床屋を、通りかかった今は突撃隊指揮官になったシュルツが救った。おかげでユダヤ人街にも平和な日々が戻った。ヒンケルは自分の独裁政治をかくすため、国民の関心を外に向けようとオスタリッチ進駐を考え、軍資金をユダヤ人財閥に借款を申し入れたが拒絶された。ユダヤ人迫害が再開された。シュルツはヒンケルの政策の非を進言し、そのせいで失脚した。彼はジャッケルの家に隠れていたが、突撃隊に発見され床屋とともに逮捕された。床屋を慕うハンナは身の危険をさけるためジャッケル氏らとオスタリッチに逃げた。独裁者ナパロニ(ジャック・オーキー)指揮のバクテリア軍もオスタリッチに侵入した。ヒンケルはバクテリア軍を撤退させようと、ナパロニを招き、お互いにオスタリッチの主権を尊重する誓約書に署名させ、撤退に成功した。そのスキに自軍進駐の準備をした。床屋とシュルツは軍服を盗んで収容所を脱出した。国境で進駐準備の軍隊がヒンケルと間違え、進軍を開始した。その頃、ヒンケルは鴨狩中を床屋と間違えられ、警備兵に逮捕された。数万のヒンケル軍はオスタリッチに到着、床屋は演説をしなければならなくなった。壇上に立った床屋はロウバイしたが、気持ちを落着けて話しはじめた。“独裁者の奴隷になるな!民主主義を守れ!”彼の声はしだいに熱をおび自由と平和を守ろうと叫んだ。それはオスタリッチのハンナたちにも語りかけているようだった。




11-29. 黄金狂時代

監督 チャールズ・チャップリン
出演 チャールズ・チャップリンマック・スウェイントム・マレイ
1925年・アメリカ(ユナイテッド・アーティスツ映画)

解説
「パリの女性」 に続いてチャールズ・チャップリン氏が自作自監督自演した喜劇で、A Dramatic Comedyと銘打ってある。相手女優は「救いを求むる人々」 出演のジョージア・ヘール嬢で古い喜劇俳優アムプローズ事マック・スウェイン氏やトム・マレイ氏、マルコム・ウェイト氏等が助演している。

ストーリー
アラスカの金鉱が発見されて人々が潮の様に金堀に赴いた頃の一挿話である。一人ぼっちのチャーリーは吹雪に遭って小屋に駆け込む。金を掘り当てたビッグ・ジムも避難する。小屋にいたお尋ね者は食物を探しに出て役人に出会い役人2人を殺してジムの金鉱を掘った。吹雪がやんで帰って来たジムお尋ね者に頭を殴られ記憶を失った。お尋ね者は谷底に落ちて自然の裁きを受けた。チャーリーはとある町にとやって来て酒場の踊り子ジョージアに一目惚れをしてしまう。彼はカーティスの小屋の留守番に頼まれた。彼は自分が町中での笑い者にされている事に気付かず、ジョージアは彼に或る好意を持っていると信じ大晦日の晩餐にジョージアとその友達を招く約束をした。しかしジョージアは彼の事を忘れ酒場で騒いでいた。ビッグ・ジムがこの町にさ迷って来て小屋へ連れていってくれれば自分の金山へ行けるといったが気狂いと思った人々は相手にしない。彼はチャーリーに遭って小屋へ連れていってくれと言う。チャーリーはジョージアに再会を一人決めにしてジムを伴って小屋に行った。一夜の嵐は小屋を運んでジムの金山の近くに置いた。千万長者になったジムとチャーリーは帰りの船に乗った。チャーリーは船上でジョージアに邂逅した。悦び。




11-30. モダン・タイムス

監督 チャールズ・チャップリン
出演 チャールズ・チャップリンポーレット・ゴダードヘンリー・バーグマン
1936年・アメリカ(ユナイテッド支社)

解説
街の灯」 に次ぐチャールズ・チャップリン主演映画で、例の如く彼自ら脚本を書き監督制作したもので、作曲も彼自らしている。カメラは専属のローランド・トセローと「偽者紳士」 のアイラ・モーガンが協力、例によってチャーリーは物言わず、歌を歌うのみで、他の台詞も音響効果的に使われる。相手役は彼の新妻ポーレット・ゴダードが勤め助演者は、チャールズ・ホールと共に助監督を勤めているヘンリー・バーグマンを始めチェスター・コンクリン、アラン・ガルシア、ハンク・マン等の面々である。

ストーリー
チャーリーは大きな工場で職工をしていたが、毎日同じ機械を扱って単調無味な仕事を続けている内に、とうとう気が変になって乱暴を働くようになり病院へ入れられた。全治はしたけれど工場はクビになるし、医者には興奮は禁物だと注意された。とぼとぼ街を歩いていると暴動の群集に捲込まれて、彼は首謀者と見なされて投獄された。牢の中で無意識にしたことで偶然牢破りを計画していた一味を発見したので、その賞としてチャーリーは自宅にいると同様の美しい独房を与えられることになり、喜んで引移ろうとした時、彼の無罪が判って放免されてしまった。チャーリーは造船場で職を得たが、仕事が不慣れで直ぐ解雇され、もう一度監獄へ戻る工夫はないものかと考えるようになった。ふとチャーリーは飢えた不良少女が食物を盗んで警官に捕ったのを見た。彼は直ぐ無銭飲食をして警察へ引立てられた。牢へ送られる途中でチャーリーは少女と顔を合わせる。二人は示し合わして逃亡した。それからこの二人はどんなことがあっても別れない仲となった。チャーリーは百貨店の夜警に雇われた。やっと好きな仕事を見付けたと喜んだのも束の間、最初の晩に散々泥棒に荒らされ彼も嫌疑を受けて投獄された。出て来ると少女はキャバレーの踊り子になって働いていた。彼女の推薦で彼もそこの店で給仕をして歌うことになり、二人とも非常な成功をした。ところがそこへある日現れた客はかつて少女を感化院へ入れようと探していた若い役人である。チャーリーは娘を連れて逃げ出した。そして間もなく片を組合わせながら楽しげに、浮浪の旅に出る二人の姿が見られた。




11-31. ザスーラ

監督 ジョン・ファヴロー
出演 ジョシュ・ハッチャーソンジョナ・ボボダックス・シェパード
2005年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ)

解説
ジュマンジ」 の宇宙編ともいうべきSFアドベンチャー。出てきたカードの内容が実現するボード・ゲームを手にした兄弟が、銀河で奇想天外な冒険を繰り広げる。

ストーリー
土曜日の昼下がり。パパ(ティム・ロビンス)が仕事で家を空けてしまい、6歳のダニー(ジョナ・ボボ)は、あまり仲が良くない10歳の兄ウォルター(ジョシュ・ハッチャーソン)に遊び相手になってもらおうとして、逆に怒らせる。地下室に閉じ込められたダニーは、”ザスーラ“という古いボード・ゲームを発見。リビングに戻ったダニーは早速ゲームを始めてみるが、宇宙船のコマが動き出して1枚のカードが飛び出すと、彼らの住んでいる家は宇宙に漂い始めた。緊急事態に戸惑った兄弟は、姉のリサ(クリステン・スチュワート)に助けを求めるが、二人の言うことに耳に貸さない彼女は、ゲームの力によりバスルームで凍りついてしまう。もはやゴールに辿り着いてゲームを終わらせるしか術がないと気づいた兄弟。宇宙船の攻撃を受けたり散々な旅を続ける中、あるカードの指令により、玄関から宇宙飛行士(ダックス・シェパード)がやってくる。やがてリサが解凍されて目を覚まし、4人でゲームを続けていくうちに、彼らは絆を深めていく。そして流れ星に願い事ができるカードを引き当てたウォルターは、かつて宇宙飛行士が同じ願い事のカードで消してしまった彼の弟を戻すように願う。すると戻ってきたその弟は、なんとダニーだった。宇宙飛行士はウォルターの15年後の姿だったのだ。彼らの姿は消え、まもなくゲームは終了。子供たちは無事地球へと戻り、ウォルターとダニーは、兄弟の絆の大切さを深く認識するのだった。




11-32. デーヴ

監督 アイヴァン・ライトマン
出演 ケヴィン・クラインシガニー・ウィーヴァーフランク・ランジェラ
1993年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
大統領とそっくりな容姿を持つ男が、心ならずも大統領の影武者を演じ続ける羽目になる姿を描くハート・ウォーミング・コメディ。監督・製作は「キンダガートン・コップ」 のアイヴァン・ライトマン、共同製作は「ラジオ・フライヤー」 のローレン・シューラー=ドナー、エグゼクティヴ・プロデューサーは「ベートーベン」 の製作チーム、ジョーは「ベートーベン」 の製作チーム、ジョー・メジャックとマイケル・C・グロス、脚本は「ビッグ」 のゲイリー・ロス、撮影は「天使にラブ・ソングを」 のアダム・グリーンバーグ、音楽は「フォーリング・ダウン」 のジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。主演は「わが街」 のケヴィン・クライン、「エイリアン3」 のシガニー・ウィーヴァー。他に「ボディ」 のフランク・ランジェラ、「チャーリー」 のケヴィン・ダン、「イントルーダー 怒りの翼」 のヴィング・レイムス、「スニーカーズ」 のベン・キングスレイ、「ベートーベン」 のチャールズ・グローディンらが共演。また、実在の米国国会議員たらやワシントンのマスコミのメンバーが大挙して特別出演している。

ストーリー
ボルティモアで小さな職業紹介所を経営するデーヴ・コーヴィック(ゲヴィン・クライン)は、時のアメリカ合衆国第44代大統領ウィリアム・ハリソン・ミッチェル(ケヴィン・クライン)に爪二つ。彼の存在を知った大統領補佐官のアレクサンダー(フランク・ランジェラ)、報道官のアラン・リード(ケヴィン・ダン)、シークレット・サーヴィスのデュエイン(ヴィング・レイムス)の3人は、ホテルでの演説の後、雪隠れする大統領の身代りを1回限りの条件で、デーヴに依頼する。しかし、ミッチェル大統領が突然倒れ、意識不明の重体に。目新しい体験に浮き浮きした気分で状況を楽しんでいたデーヴだったが、大統領補佐官の強い主張で、無期限で大統領を演じる羽目になる。ことの重大さに悩むデーヴだったが、権力者側と自分自身の立場との関係に気づいた彼は決意した。デーヴはいくつもの難問に直面する。まずファースト・レディのエレン・ミッチェル(シガニー・ウィーヴァー)の目をごまかすこと。そして大統領の複雑な業務を一夜漬けで勉強したデーヴは、職務を次々とこなして行き、国民に親しまれ、ミッチェル大統領のイメージを一変させた。しかし、アレクサンダー補佐官は、密かに大統領の座を狙っていた。彼は誠実なナンス副大統領(ベン・キングスレイ)の汚職をデッチあげ、失脚させようとしていた。デーヴは、エレンが自分が影武者となった事情を知らなかったことから、補佐官の陰謀を知る。ホワイトハウスから逃げ出そうとするデーヴと、事実を知り家へ帰ろうとするエレンだったが、思い直して2人はホワイトハウスに戻る。デーヴはアレクサンダーを解任し、失業率を0%にする法案を提出する。しかしアレクサンダーは、大統領本人の不正を暴露した。それを受けてデーヴは,議会で謝罪演説をして、副大統領の不正はなかったと弁護、そしてアレクサンダーの所業を告発した。そしてその直後、デーヴは発作で倒れる演技をして、本物の大統領とすり変わった。ミッチェル大統領はしばらくして死去し、ナンスが大統領になった。1年後、市議会に立候補したデーヴの前に、エレンが微笑みながら現れるのだった。




11-33. SAYURI

監督 ロブ・マーシャル
出演 チャン・ツィイー渡辺謙ミシェル・ヨー
2005年・アメリカ(ブエナ ビスタ、松竹)

解説
シカゴ」 のロブ・マーシャル監督がアジアの豪華俳優を迎え、アーサー・ゴールデンの小説を映画化。ひとつの愛を支えに、花街一の芸者となった女性の数奇な運命を描く。

ストーリー
貧しい漁村に生まれた少女・千代(大後寿々花)は、9歳の時に、おかあさん(桃井かおり)と呼ばれる女将が仕切る花街の置屋に売られる。苛酷すぎる日々の中、千代は会長(渡辺謙)と呼ばれる紳士に優しく声をかけられた。それを運命の出会いと信じた千代は、会長にもう一度会うために、芸者になりたいと願うようになる。そして千代が15歳の時、芸者の中の芸者と称えられる豆葉(ミシェル・ヨー)が、彼女を芸者として育てたいと申し出る。千代は芸者さゆり(チャン・ツーイー)として花開き、数多くの男たちを虜にしていった。やがてさゆりは、客として現われた会長と再会する。だが会長のビジネス・パートナーである親友の延(役所広司)がさゆりに魅了され、熱い思いを彼女に抱いてしまった。一方、同じ置屋の初桃(コン・リー)やおカボ(工藤夕貴)が、さゆりに敵対心を燃やして数々の罠を仕掛けてくる。そんな中で初桃は自滅していった。そして戦争がやってくる。芸者を引退し、田舎で疎開することになったさゆり。だが終戦後、延が彼女を迎えにきて、さゆりを豆葉と共に芸者に復活させる。延はさゆりへの思いをぶつけるが、彼女はそれを頑なに拒否した。やがて、さゆりのもとへ会長が迎えにくる。二人はお互いに抱いていた長年の恋心を、そこで初めて打ち明けるのだった。




11-34. プリティ・ウーマン

監督 ゲイリー・マーシャル
出演 リチャード・ギアジュリア・ロバーツラルフ・ベラミー
1990年・アメリカ(タッチストーン映画=ワーナー・ブラザース映画)

解説
ハリウッドの路上に立つコール・ガールがビジネス・エリートと出会ったことから幸福をつかむまでを描く現代版シンデレラ・ストーリー。エグゼクティヴ・プロデューサーはローラ・ジスキン、製作はアーノン・ミルチャンとスティーヴン・ルーサー、監督は「フォエバー・フレンズ」 のゲイリー・マーシャル、脚本はJ・F・ロートン、撮影はチャールズ・ミンスキー、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。出演はリチャード・ギア、ジュリア・ロバーツほか。

ストーリー
企業買収を繰り返す実業界の一匹狼エドワード・ルイス(リチャード・ギア)。ふとした言葉の行き違いから恋人と別れた夜、ハリウッドの路上で道案内を頼んだストリート・ガール、ビビアン・ウォード(ジュリア・ロバーツ)を気まぐれ半分で高級ホテルの自分の部屋に呼ぶ。ビビアンにとってそれは見たこともないような眩い世界であった。そしてエドワードにとっても無邪気さの中に知性を隠し持つビビアンとの出会いは新鮮なものだった。翌朝、エドワードはビビアンに1週間の間、自分のアシスタントとしてそばにいてくれと頼む。エドワードに命ぜられるまま華麗なドレスに着替えた彼女は生まれ変わったようにエレガントに見えた。そしてビビアンとの生活はエドワードにも変化を持たらす。彼はモース(ライフ・ベラミー)の経営する造船会社を買収しバラ売りすることによって莫大な利益を手にする計画を進めていたが、土壇場になって相棒の弁護士スタッキー(ジェイソン・アレクサンダー)の反対を押し切って、友好的な提携へと計画を変更する。1週間が終わり、エドワードがニューヨークに帰る日がやってくる。彼はビビアンにまた会いたいと、生活できるだけの金を渡そうとするが、プライドの高い彼女はそれを断り、部屋を去る。自分に目覚めたビビアンは新しい生活を始めようと旅立つことを決意するが、そんな彼女を迎えに来るエドワードの姿があった。




11-35. 風とライオン

監督 ジョン・ミリアス
出演 ショーン・コネリーキャンディス・バーゲンブライアン・キース
1975年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
1904年のモロッコを舞台に、原住民族リフ族とアメリカの国際紛争を描く。製作はハーブ・ジャッフェ、脚本・監督は「デリンジャー」 のジョン・ミリアス、撮影はビリー・ウィリアムズ、音楽はジェリー・ゴールドスミス、編集はボブ・ウォルフ、衣裳デザインはディック・ラモットが各々担当。出演はショーン・コネリー、キャンディス・バーゲン、ブライアン・キース、ジョン・ヒューストン、ジョフリー・ルイス、スティーヴ・カナリー、ロイ・ジェンソンなど。

ストーリー
1904年10月15日、モロッコのタンジール。その日イーデン・ペデカリス夫人(キャンディス・バーゲン)は、新任の副領事と昼食をとっていたところを、一団の馬賊に襲われ、12歳の長男ウィリアムと9歳の娘ジェニファーと共に誘拐された。一味の首領はライズリ(ショーン・コネリー)といい、王者の風格が感じられる男だった。ライズリの一団は、イーデンと2人の子供たちをリフ山脈のふもとに続く丘陵地帯に連れていった。一方、ここはアメリカ合衆国の首都ワシントン。「アメリカ婦人、リフ族の首長ライズリに誘拐さる」のニュースは、国防長官ジョン・ヘイ(ジョン・ヒューストン)を通じ、第26代大統領シオドア・ルーズベルト(ブライアン・キース)に報告された。当時、モロッコには列強国が腰を据えていた。フランス、イギリス、オーストリア、ドイツ、そしてロシア。ルーズベルトはこの事件を次期選挙に利用しようとして、国威の昂揚をはかった。『人命とアメリカ人の財産を尊重してもらうため、大西洋艦隊をモロッコに派遣する。合衆国はペデカリス夫人を生きたまま返してもらうか、ライズリを殺すしかない』とルーズベルトは宣言した。その頃、イーデン・ペデカリス夫人と2人の子供たちはライズリの一行とともに、砂漠と海が見える台地を進んでいた。ライズリはペデカリスに、『わしはムレー・アーメッド・エル・ライズリ。リフ族バーバリー人の統治者だ。わしこそ、回教徒の擁護者。予言者モハメッドの血はわしの体に流れている』と語った。一方合衆国のタンジールの領事ガマーリ(ジョフリー・ルイス)は副領事ドライトンを伴なって太守を訪れた。太守はモロッコで最も権力のある男で、甥にあたるサルタンの背後の実力者だ。だがその会談は不成功に終わり、領事はサルタンに会うことにした。ランズリがイーデンとその子供たちを誘拐したのは、そのサルタンを窮地に陥れることだった。サルタンはヨーロッパ諸国のいいなりになりモロッコの民衆を苦しめているために、西欧とライズリの板挟みにし国土と名誉を取り返そうというのがライズリの狙いで、そのためのイーデン母子誘拐だった。ライズリの思惑どおり、サルタンの説得に失敗したアメリカは、海軍の艦隊をモロッコに出動させた。ジェローム大尉(スティーヴ・カナリー)の指揮下、海兵隊のライフル2個中隊が上陸、タンジールの町を行進し、サルタンの宮殿に向かった。海兵隊と宮殿の間ですさまじい銃撃戦が始まり、そしてサルタンは捕えられた。その報せはウェザーヌの首長によってライズリにもたらされた。『太守はアメリカに提案した。スペイン銀貨で7万ペソを提供し、リフ族の領分から外国の兵隊をすべて撤退させ、ライズリとその部下たちが町へ自由に出入りすることを許す。この提案はアメリカ女と子供たちが交換条件で、アメリカのサルタン、ルーズベルトが約束した』。罠だというウェザーヌの首長と、イーデンの警告にもかかわらず、ライズリは取引きに応ずることにし、部下を従えてイーデン母子を送り届けるために出発した。エル・サラフの村で、イーデン母子はジェローム大尉にひき渡され、ライズリはドイツとフランスの軍隊に捕えられた。翌朝、イーデン母子は海兵隊の援護をうけてライズリを救出した。と同時に、村の外に待機していたライズリの部下たちがウェザーヌの首長の指揮の下、攻め込んできた。村ではアメリカ海兵隊が、ドイツとフランスを相手に壮烈な戦いを展開しており、そこにリフ族が加わり、四つどもえとなった。ライズリ救出は成功し、彼は部下と共に去った。後日、ホワイトハウスのルーズベルトのもとに、ライズリから手紙が届いた。「あなたは風のごとく、私はライオンのごとし。あなたは嵐をまきおこし、砂塵は私の眼を刺し、大地はかわききっている。私はライオンのごとくおのれの場所にとどまるしかないが、あなたは風のごとくおのれの場所にとどまることを知らない」。




11-36. マルタの鷹

監督 ジョン・ヒューストン
出演 ハンフリー・ボガートメアリー・アスターグラディス・ジョージ
1941年・アメリカ(セントラル)

解説
「欲望の砂漠」 のハル・B・ウォリスが製作した1941年度作品で、「黄金(1948)」 のジョン・ヒューストンが脚本家より監督に転じての第1回作。ヒューストン自身がハードボイルド探偵小説の第一人者、「影無き男(1934)」 のダシール・ハメットの同名の小説を脚色に当たっている。撮影はアーサー・エディソン、音楽は「仮面の男(1944)」 のアドルフ・ドュイチェの担当。主演は「潜行者」 のハンフリー・ボガート、「暴力行為」 のメアリー・アスターで、「我等の生涯の最良の年」 のグラディス・ジョージ、「仮面の男(1944)」 のピーター・ローレとシドニー・グリーンストリート、「賭博の町」 のバートン・マクレーン、「ジャンヌ・ダーク」 のワード・ボンド、「摩天楼」 のジェローム・コウアン、リー・パトリック、エライシャ・クック・ジュニアの助演のほか、ジョン・ヒューストンの父故ウォルター・ヒューストンが特別出演している。

ストーリー
サン・フランシスコで私立探偵局を開いているサム・スペードは、ワンダリーという女から、サースビーという人物に尾行されているから救ってほしいと頼まれるが、スペードの相棒のアーチャーが彼女の美しさにひかれて買って出た。しかしその夜アーチャーはサースビーと共に死体となって発見される。当局ではスペードとアーチャーの妻のアイヴァの間を怪しみ、彼の謀殺ではないかとの嫌疑をかれられ、スペードは身の危険を守るため、ワンダを追及して、彼女の本名がオーショネイといいサースビーとなにか一儲けを企てている間に、彼女は自分を裏切ろうとしたサースビーの尾行を頼んだことがわかった。スペードが事務所に帰るとカイロという奇妙な男が来て、黒い鷹の置物を探してくれたら5000ドルの謝礼を出すというので、オーショネイとこの男の間に関係があると睨み2人を対決させた。果たせる哉、2人は黒い鷹の置物を探している競争相手であり、2人の他に「肥った男」と称するガットマンの存在していることもはっきりした。スペードは自分を尾行するガットマンの用心棒のウィルマを利用してガットマンに会い、黒い鷹の真相を追及した。3人が探していた件の鷹の置物は16世紀にマルタ騎士団がスペイン王に献上するために作った純金の像で莫大な値打ちのあること、多年その置物を追及していたガットマンの手先としてイスタンブールに置物を探しに行ったオーショネイとカイロがお互いに、この宝物を独占しようとしていたことがわかる。この話の最中スペードは毒薬入りの酒に自由を奪われ、我にかえった彼はガットマンの部屋の新聞から、香港から入港したパロマ号に謎のあることを推定した。だが、パロマ号は当日火災を起こしその夜パロマ号の船長は重傷を負いながら、鷹の包をスペードの事務所に持ちこんで息絶える。スペードはガットマン、ウィルマ、オーショネイ、カイロの全関係者と事務所で会い、鷹の処分と、3つの殺人事件の犯人の処理について会談している最終、ダンディ警部補とパウルハウス刑事が訪ねてくる。スペードはアーチャー殺害の犯人がオーショネイであり、サースビーと船長はウィルマに殺されたことを指摘する。そして、鷹の置物は鉛製の贋物にしかすぎなかった。




11-37. クレイジー・ハート

監督 スコット・クーパー
出演 ジェフ・ブリッジスマギー・ギレンホールロバート・デュヴァル
2009年・アメリカ(20世紀フォックス映画)

解説
シングルマザーの女性記者との出会いによって再生していくシンガーソングライターの姿を描く人間ドラマ。第82回アカデミー賞で、ジェフ・ブリッジスが主演男優賞を受賞。

ストーリー
かつて一世を風靡したシンガーソングライターのバッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)は57歳になった今、ドサ回りの歌手に落ちぶれていた。彼の弟子トミー・スウィートは、若手トップシンガーとして人気を集めている。バッドは新曲もかけず、酒に溺れていた。バッドはショーのため訪れたサンタフェのバーで、バンドのピアニスト、ウェズリー(リック・ダイアル)から、彼の姪で地元紙の記者ジーン・クラドック(マギー・ギレンホール)の取材を受けるよう頼まれる。バッドはジーンと打ち解けるが、トミーや結婚といった核心に触れると、一方的に取材を打ち切ってしまう。ショー終了後、バッドはジーンとなりゆきで一夜を過ごす。しかしジーンは4歳の息子バディを持つシングルマザーで、離婚の痛手から、バッドとの関係を深めるのを躊躇う。バッドの次の仕事は、フェニックスの巨大スタジアムでのトミーの前座だった。バッドはマネージャーのジャック(ポール・ハーマン)に説得され、渋々出演する。ショーの後、バッドはヒューストンへ帰る前にジーンに会いに行くと電話をかける。しかしその直後、居眠り運転で車を横転させてしまう。ジーンの家で休養し、家庭の温もりに触れたバッドは、元妻との間に28歳になる息子スティーヴンがいることをジーンに打ち明ける。バッドは長年の付き合いのバーのマスター、ウェイン(ロバート・デュヴァル)に、ジーンの存在を告白する。スティーヴンに電話をかけ、元妻の死を知ったバッドは、スティーヴンに会いたいと伝えるが、スティーヴンは身勝手だと言い放つ。ジーンはためらいつつもバディを連れ、ヒューストンを訪ねる。ジーンはバッドに、バディの前でお酒を飲まないことを念押しする。しかしバッドはバーに立ち寄ってしまう。バッドがウィスキーを注文する間に、バディが姿を消す。警察に捜査を依頼した末、バディは見つかるが、ジーンとバッドの関係は変化し始める。バッドはジーンへの想いや新たな人生への希望を、新曲作りに託す。




11-38. ニュー・シネマ・パラダイス 

監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 フィリップ・ノワレジャック・ペランサルヴァトーレ・カシオ
1989年・イタリア フランス(ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)

解説
戦後間もないシチリアの小さな村の映画館をめぐる人人の映画への愛を描く。エグゼキュティヴ・プロデューサーはミーノ・バルベラ、製作はフランコ・クリスタルディ、監督・脚本は本作品が日本での一般公開第一作になるジュゼッペ・トルナトーレ、撮影はブラスコ・ジュラート、音楽はエンニオ・モリコーネが担当。出演はフィリップ・ノワレ、ジャック・ペランほか。89年カンヌ映画祭審査員特別大賞受賞。後に170分の「完全オリジナル版」 がビデオグラムで発表されている。

ストーリー
現在のローマ。夜遅く帰宅した映画監督のサルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(ジャック・ペラン)は、留守中に母(プペラ・マッジョ)からアルフレードが死んだという電話がかかっていたことを知らされる。その名を耳にした途端、サルヴァトーレの脳裏には、シチリアのジャンカルド村での少年時代の思い出が甦るのだった−−。当時、母マリア(アントネラ・アッティーリ)と妹の三人暮らしだったサルヴァトーレ(サルヴァトーレ・カシオ)はトトと呼ばれ、母親に頼まれた買物の金で映画を観るほどの映画好きだった。そんなトトを魅了していたのは映画館パラダイス座の映写室であり、また映写技師のアルフレード(フィリップ・ノワレ)たった。パラダイス座には司祭(レオポルド・トリエステ)の検閲があり、そのせいで村の人々はこれまで映画のキス・シーンを見たことがなかった。トトはいつも映写室に入り込む機会を窺っていたが、アルフレードは彼を追い返そうとする。が、そのうち2人の間には不思議な友情の絆が結ばれてゆき、トトは映写室でカットされたフィルムを宝物にして集めるのだった。しかしある日、フィルムに火がつき、パラダイス座は瞬く間に燃え尽きてしまう。そしてトトの懸命の救出にもかかわらず、アルフレードは火傷が原因で失明してしまうのだった。やがてパラダイス座は再建され、アルフレードに代わってトトが映写技師になった。もはや検閲もなく、フィルムも不燃性になっていた。青年に成長したトト(マリオ・レオナルディ)は、銀行家の娘エレナ(アニェーゼ・ナーノ)に恋をし、やがて愛を成就させ幸せなひと夏を過ごすが、彼女の父親は2人の恋愛を認めようとせずパレルモに引っ越しし、トトは兵役についた。除隊後村に戻ってきたトトの前にエレナが2度と姿を現わすことはなかった。アルフレードに勧められ、トトが故郷の町を離れて30年の月日が経っていた。アルフレードの葬儀に出席するためにジャンカルド村に戻ってきたトトは、駐車場に姿を変えようとしている荒れ果てたパラダイス座で物思いに耽るのだった。試写室でアルフレードの形見のフィルムを見つめるサルヴァトーレの瞳に、いつしか涙があふれ出す。それは検閲でカットされたキス・シーンのフィルムを繋げたものであった。




11-39. アイリス

監督 リチャード・エア
出演 ジュディ・デンチジム・ブロードベントケイト・ウィンスレット
2001年・イギリス(松竹)

解説
20世紀英国を代表する女流作家アイリス・マードック。自由な感性をもつ彼女の若き日と晩年の生きざまを、文学者の夫ジョン・ベイリーとの愛を軸に描く伝記ドラマ。

ストーリー
1950年代、若き日のアイリス(ケイト・ウィンスレット)とジョン(ヒュー・ボナヴィル)はオックスフォード大学で出会う。恋愛経験豊富なアイリスは、モーリス(サミュエル・ウェスト)ら複数の男性と同時に関係を持っていたが、彼女に一目惚れしたジョンの純粋さに惹かれていき、やがて結婚。その後のアイリスは次々と小説を発表し、文学界の寵児となる。そして現在。老人となったアイリス(ジュディ・デンチ)とジョン(ジム・ブロードベント)の愛は穏やかに深まっていたが、そんなある日、アイリスをアルツハイマーが襲う。どんどん物忘れがひどくなっていくアイリスに、混乱しながらも心温かく接するジョン。だが彼一人の看護は限界に達し、ジョンは彼女を施設に入れる決意をする。やがてアイリスは、静かに息を引き取るのだった。




11-40. リトル・ダンサー

監督 スティーヴン・ダルドリー
出演  ジェイミー・ベルジュリー・ウォルターズゲイリー・ルイス
2000年・イギリス(日本ヘラルド映画)

解説
夢みることのすばらしさと、家族の絆をうたいあげるヒューマン・ファンタジー。バレエに魅せられた少年の前向きな生き方を、華麗なダンスでスタイリッシュに彩る感動作。

ストーリー
1984年、ストライキに揺れるイングランド北部の炭坑町。母親を亡くし、父(ゲアリー・ルイス)も兄のトニー(ジェイミー・ドラヴェン)も炭坑労働者のビリー(ジェイミー・ベル)は、ボクシング教室に通っているが、試合に負けてばかりの11歳。そんな時、偶然目にしたウィルキンソン夫人(ジュリー・ウォルターズ)のバレエ教室に強く惹かれ、女の子たちに混じって練習するうちに夢中になっていく。ウィルキンソン先生はどんどん上達するビリーに自分が果たせなかった夢を重ね合わせ、熱心に彼を教える。しかし、家族の金をバレエに使っていたことがバレてしまい、父は激怒。ビリーは悔しさをぶつけるように、一人で踊っていた。だが、ストライキが長引き町中が暗く沈んでいるクリスマスの夜、親友マイケル(ステュアート・ウェルズ)の前で踊るビリーの姿を見て、息子の素晴らしい才能に初めて気づいた父は、彼をロンドンの名門、ロイヤル・バレエ学校に入学させる費用を稼ぐため、スト破りを決意する。それは仲間たちへの裏切り行為であった。だがスト破りの労働者を乗せたバスの中に父を見つけたトニーが、バスを追いかけて必死に止め、父は泣き崩れる。その事情を知った仲間たちがカンパしてくれ、ビリーは学校に行くことができた。15年後。バレエ・ダンサーになったビリー(アダム・クーパー)は、父と兄とマイケルが客席にいるウエスト・エンドの劇場の舞台で、スポットライトに包まれながら堂々と踊るのであった。




11-41. 風と共に去りぬ

監督 ヴィクター・フレミング
出演 ヴィヴィアン・リークラーク・ゲーブルオリヴィア・デ・ハヴィランド
1939年・アメリカ(MGM日本支社)

解説
「白昼の決闘」「ジェニーの肖像」 などの製作者デイヴィッド・O・セルズニックが1939年に完成した長編テクニカラー作品(上映時間228分)で、ベストセラーになったマーガレット・ミッチェル原作小説の映画化。監督は「ジャンヌ・ダーク」 のヴィクター・フレミング、脚本はシドニー・ハワードの担当。撮影は「テレヴィジョンの王様」 のアーネスト・ホーラーで、レイ・レナハン(「白銀の嶺」 )とウィルフリッド・M・クライン(「二人でお茶を」 )が色彩撮影に協力している。作曲はマックス・スタイナー、美術監督はリール・ホイラーが当たっている。主演は「欲望という名の電車」 のヴィヴィアン・リーと「栄光の星の下に」 のクラーク・ゲイブルで、「女相続人」 のオリヴィア・デ・ハヴィランド、レスリー・ハワード、イヴリン・キース(「千一夜物語」 )、トーマス・ミッチェル(「夢見る少女」 )、バーバラ・オニール(「扉の蔭の秘密」 )、アン・ルザーフォード(「虹を掴む男」 )、ジョージ・リーヴス、フレッド・クラインらが助演する。なおこの作品は1939年度アカデミー作品賞をはじめ監督、主演女優、助演女優、脚色、色彩撮影、美術監督、編集、サルバーグ記念、特別と10の賞を獲得した。

ストーリー
前篇=1861年、南北戦争が始まろうとする直前。ジョージア州タラの大地主ジェラルド・オハラ(トーマス・ミッチェル)の長女スカーレット(ヴィヴィアン・リー)は、樫の木屋敷と呼ばれる同じ大地主ウィルクス家で明日開かれる野外宴会に、そこの嫡子で彼女の幼馴染みであるアシュリー(レスリー・ハワード)と彼の従妹メラニー(オロヴィア・デ・ハヴィランド)の婚約が発表されると聞いて心おだやかでなかった。激しい気性と美しさをあわせ持つスカーレットは、多くの青年の憧れの的であったが、彼女の心はアシュリーとの結婚をかたく決意していたのだ。宴会の当日スカーレットは想いのたけをアシュリーにぶちまけたが、彼の心は気立ての優しいメラニーのものだった。スカーレットはそこで、チャールズトン生まれの船長で素行の評判の良くないレット・バトラー(クラーク・ゲイブル)に会い、彼の臆面のない態度に激しい憎しみを感じながら、何か惹きつけられた。突然、戦争の開始が伝えられ、スカーレットは失恋の自棄からメラニーの兄チャールズの求婚を受け入れ結婚した。メラニーと結婚したアシュリーもチャールズも戦争に参加した。だがチャールズは戦争で病を得て死に、スカーレットは若い身を喪服に包む生活の味気なさからアトランタのメラニーの元へ行き、陸軍病院のバザーでレットと再会した。レットは強引に彼女に近付いてきた。戦況はその頃南軍に利なく、スカーレットとメラニーは看護婦として働いていたが、やがて、アトランタは北軍の接近に脅えた。スカーレットと生まれたばかりの子供を抱えたメラニーは、レットの御する馬車で故郷へと向かった。レットは途中ひとり戦線へ向かい、のこされた2人はやっとの思いでタラの地に着くが、すでに廃墟になって、北軍にすっかり蹂躪されたあとだった。
後篇=戦争は南軍の敗北に終わった。捕虜になっていたアシュリーがかえって来てメラニーを喜ばせたが、スカーレットは再び彼に愛を告白してはねつけられた。タラは重税を課され、土地を守る決意を固めたスカーレットは、その頃北軍の営倉に捕らえられていたレットに金策を頼みに行ったが、断られた。彼女は妹スーレン(イヴリン・キース)の許婚フランクが事業に成功しているのを見て、欺いて彼と結婚し、事業を自分の手中に収めてアシュリーを仲間に引き入れ、唯金儲けだけに生きるようになった。フランクが死んで、スカーレットはレットと結婚し、娘ボニーを生んだが、まだアシュリーへの想いが断ち切れず、レットはもっぱらボニーへ愛情を注いだ。こうした結婚生活の不調和から、レットはボニーを連れロンドンへ行ったが、ボニーが母を慕うので再び戻ってきた。ところがボニーが落馬して死に、メラニーも病死してしまった。このためレットとスカーレットの結婚生活はまったく破れ、レットはチャールズトンへと去っていった。スカーレットはこのとき初めてレットを愛していたと気付くが、一番愛しているのはやはりタラの土地であった。彼女はタラに帰ってすべてを考え直そうと決心した。





11-42. 素直な悪女

監督 ロジェ・ヴァディム
出演 ブリジット・バルドークルト・ユルゲンスジャン=ルイ・トランティニャン
1956年・コロンビア、フランス(コロムビア)

解説
「わたしは夜を憎む」 のブリジット・バルドー主演の人間葛藤を描いた一篇。バルドーの夫でマルク・アレグレの助監督をつとめ、「白き処女地」 の脚色にも携ったロジェ・ヴァディムの第一回監督作品である。脚本はプロデューサーのラウール・J・レヴィとヴァディムが共同で書いた。撮影は「殺意の瞬間(1956)」 のアルマン・ティラール、音楽は「首輪のない犬」 のポール・ミスラキ。主演はバルドーと「反乱」 のクルト・ユルゲンス、「乙女の館」 のジャン・ルイ・トランティニャン。バルドーは、ヴァディムと「素直な悪女」 完成後離婚した。

ストーリー
南仏サン・トロペーズの町の孤児ジュリエット(ブリジット・バルドー)は、子供のないモラン夫婦に引取られた。まだ十八歳という若さでいて、彼女のあふれるばかりの性的魅力には、さまざまな男たちが集って来た。酒場の主人エリック(クルト・ユルゲンス)、内気で病弱なミシェル(ジャン・ルイ・トランティニャン)、その兄で美青年のアントワーヌなどで、おまけに中風で動けないモラン氏でさえ、日光浴中のジュリエットを盗み見て楽しむ始末だった。ジュリエットは男たちの中でも一番好意を持っているアントワーヌと、或る夜ダンスに行き、唇を許した。そして、商用でツーロンに行く彼に同行しようとまで考えたが、アントワーヌが多情と聞くと、彼をさけてエリックのヨットに逃げた。傷心のアントワーヌは一人で旅立った。次第にジュリエットがねたましくなったモラン夫人は、彼女を孤児院へ帰そうと決心した。これを知ったエリックが、彼女を町に留めておくため、ミシェルに彼女との結婚をすすめた。申し込みを受けはしたものの、ジュリエットは彼を愛してはいなかった。しかし、彼の優しさと誠実さに、心底から夫を愛しはじめ、幸福な結婚生活が始った。そこヘアントワーヌが帰って来た。それはミシェル夫婦を苛だたせるばかりだ。ジュリエットとアントワーヌは、憎みながらも、互に魅かれていたのだ。或る日、溺れかかったジュリエットをアントワーヌが救ったことから、二人の感情が爆発した。二人の関係がミシェルに知れると、恥しさのあまりジュリエットは姿を消した。彼女を連れ戻そうとするミシェルと、それをおしとどめるアントワーヌとの間に、激しい喧嘩が捲き起った。そのあと、キャバレーで酔いしれているジュリエットをみつけてミシェルは、家に連れ帰った。あやまちを許し、温い心で迎え入れようというミシェルの愛の強さに、ジュリエットは、彼こそただ一人の男と知るのだった。




11-43. 追憶 

監督 シドニー・ポラック
出演 バーブラ・ストライサンドロバート・レッドフォードブラッドフォード・ディルマン
1973年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
移り変わる激動の20年間にわたる男と女の愛を描いたラブ・ストーリー。製作はレイ・スターク、監督は「大いなる勇者」 のシドニー・ポラック、原作・脚本はアーサー・ローレンツ、撮影はハリー・ストラドリング・ジュニア、音楽はマーヴィン・ハムリッシュ、編集はマーガレット・ブースが各々担当。出演はバーブラ・ストライサンド、ロバート・レッドフォード、ロイス・チャイルズ、ブラッドフォード・ディルマン、パトリック・オニール、ヴィヴェカ・リンドフォースなど。

ストーリー
1937年の春、ケイティー(バーブラ・ストライサンド)とハベル(ロバート・レッドフォード)の2人は、大学の創作クラスで机をならべて勉強していたが、政治活動に熱中するケイティーとそれに興味を示さないハベルの生き方はまったく違っていた。やがて、学生たちは卒業し、各方面に散っていった。第2次世界大戦中のニューヨークで、ケイティーとハベルは偶然、再会した。ハベルは海軍大尉だった。2人は急速に親しくなり、アパートの1室で愛の生活を始めるようになったが、ケイティーの政治への興味は尽きず、積極的な活動家として活躍し、ハベルはそんなことに興味を持たなかった。除隊したハベルとケイティーは結婚した。彼女はハベルに創作を促し、著作に多くの助言を与えた。だが、ケイティーはハベルの大学時代の友人たち、キャロル・アン(ロイス・チャイルズ)、J.J(ブラッドフォード・ディルマン)夫婦を好きになれなかった。ケイティーとハベルは40年代の終わりハリウッドに移った。ようやくハベルの脚本が売れ出し、映画脚本家・小説家として有名になっていった。そして、ハベルの小説をプロデューサーのJ.Jが映画化する。収入も安定してきて、ケイティーが妊娠した。生活は平和そのものだったが、それは永くは続かなかった。ハリウッドにも共産主義者狩のマッカーシズムが荒れ狂い始めたのだ。ケイティーは反マッカーシズム運動に力を入れたが、創作に自信を喪失したハベルはマッカーシズムの嵐から身を避けようと考えた。そのためにはケイティーと離れ、元恋人のキャロルと近づくことが有利だった。ケイティーはハベルとキャロルの関係を知って別れることを考え始めた。別れることによって、ハベルがブラック・リストからはずされるかもしれない。ケイティーは離婚を申し出た。そして、2人は子供が生まれた後、離婚した。50年代初め、ケイティーがニューヨークで“原爆禁止”の署名を集めているとき、ハベルに離婚以来初めて会った。彼女はなつかしさのあまり、ハベルに近づいた。だが、1度切れた絆はつながらない。ケイティーは再婚していたし、ハベルは脚本家として一応の成功を収めていた。2人は、お互いの元気な姿を確かめ、いたわるように抱き合った。過ぎ去った愛の時が2人の胸に去来した。




11-44. 華麗なる対決

監督 クリスチャン=ジャック
出演 ブリジット・バルドークラウディア・カルディナーレミシュリーヌ・プレール
1971年・フランス、イタリア、スペイン(松竹)

解説
一八八〇年のニュー・メキシコの大平原を背景に、女だけの強盗団とそれと対決する女牧場主と四人の弟たちを描く。製作はレイモン・エジェ、フランシス・コーヌ、監督はクリスチャン・ジャック。マリー・アンジェ・アニエスとジャン・ヌムールの原案をギイ・カザリル、クレマン・ビドル・ウッド、ダニエル・ブーランジェの三人で脚色、撮影はアンリ・ペルサン、音楽はフランシス・レイが各々担当。出演はブリジッド・バルドー、クラウディア・カルディナーレ、マイケル・J・ポラード、ミシュリーヌ・プレール、パティ・シェパード、テレサ・ジンペラ、エンマ・コーエン、フランス・ドゥニャックなど。

ストーリー
一八八〇年も終りに近い頃のニュー・メキシコ−−フォート・サージュ地区一帯を荒し、人々に恐れられていたフランシー・キングという武装強盗団の一味の正体はセクシーな女ルイーズ(B・バルドー)とその妹たちだった。一方、この地区のフランス系移民の住む町ブージバルには、マリア(C・カルディナーレ)というとてつもないお転婆娘がいた。その美しさには、滅法人のよい保安官(M・J・ポラード)が三年越しで惚れ込んでいるくらいだった。さて、あるクリスマスの日、二人の美女が対決するような事件が起こった。ブージバル行きの汽車が突如としてフランシー・キングに襲撃され、客の一1人であるドック・ミレーという謎の男の黒鞄から重要な書類が盗まれたのだ。二つの関連した書類はマリアとルイーズの手に渡った。マリアには、近くのリトル・P牧場の石油鉱脈があることを示している地図、ルイーズにはリトル・P牧場の売買契約書である。フランシー・キングことルイーズ一家は、ドック・ミレーとその妹たちになりすまして牧場にやってきた。一方そこには、厖大な石油鉱脈があることを知ったマリアが、賭場で稼いだ札束を手に現われたのだ。町の祭りの日。フランシー・キングの黒装東に身を包んだルイーズ姉妹は、マリアの弟たちを次々に誘惑して、P牧場に石油が眠っていることを聞きだす。翌朝、マリアは弟たちの行方を追ってP牧場に駈けつける。そこにはルイースが待ち構えており、二人の格闘が始まった。傷だらけになった二人は疲れ果て壁なり合ってその場にくずれ落ちた。その時、保安官と、多勢の部下を連れたドック・ミレーが現われ、彼はルイーズたちの逮捕を要求した。保安官がルイーズ姉妹に歩み寄ろうとしたとき、マリアの弟たちが隠れていた井戸の中で騒ぎだし、はずみで石油が吹きだした。てんやわんやの大騒ぎとなり、マリアとルイーズはその隙に乗じて逃げだし、危機一髪で逮捕をまぬがれた。数日後、ブージバルの町から汽車がでる。それぞれ手錠をかけられた二人の弟、娘たちがとぼけた保安官に護送される。だが、その列車は再び襲撃され、白と黒の装束をつけた盗賊は今度は乗客の持物には眼もくれず、囚人を奪うと砂漠の中に消えた。もちろん二人の盗賊はマリアとルイーズである。




11-45. ノックは無用

監督 ロイ・ベイカー
出演 リチャード・ウィドマークマリリン・モンローアン・バンクロフト
1952年・アメリカ(20世紀フォックス極東)

解説
地球の静止する日」 のジュリアン・ブロウスティンが製作するサスペンス・ドラマ1952年作品。婦人雑誌「グッド・ハウスキーピング」に連載されたシャーロット・アームストロングの小説「運命のいたずら」から「地上より永遠に」 のダニエル・タラダッシュが脚色、英国出身のロイ・ベイカー(「暁の出航」 )が監督した。撮影は「砂漠の鼠」 のルシエン・バラード、音楽は「拾った女」 のライオネル・ニューマンが担当する。主演は「拾った女」 のリチャード・ウィドマーク、「アスファルト・ジャングル」 のマリリン・モンロウ、「ゴールデン・コンドルの秘宝」 のアン・バンクロフトで、以下「三つの恋の物語」 のドナ・コーコラン、ジーン・キャグニー、エライシャ・クックJr.らが助演する。

ストーリー
マンハッタンのあるホテルのエレヴェータア・ボーイ、エディ(エライシャ・クックJr.)の処へ、姪のネル(マリリン・モンロウ)が頼って来た。彼女はパイロットの婚約者を飛行機事故で失ってから精神に異常を来した娘だ。ホテルに泊っている若いパイロット、ジェッド(リチャード・ウィドマーク)は同じホテルの酒場の歌手リン(アン・バンクロフト)と恋仲だったが、最近別れ話が持ちあがっていた。ホテルで新聞記者会議の晩餐会が開かれそれに出席するためジョーンズ夫妻が7歳の女の子バニイを連れてやって来た。エディはバニイの子守にネルを世話した。ネルはジョーンズ夫妻が会に出たあとバニイを寐かしつけ、夫人のドレスと宝石を身につけてひとりで踊りはじめた。そこへエディがあらわれ、彼女を叱りつけていった。彼と入れかわりに窓からネルの媚態を見て惹かれたジェッドが訪れた。ネルは彼が飛行士だと知ると急に頭の調子が狂い、彼を死んだ婚約者だと思い込んで接吻した。そのときラジオからリンの歌声が流れてきた。ジェッドはリンのところへ行こうとしたが、ネルは懸命にひきとめた。そこへエディが入って来た。ネルはジェッドをバス・ルームにかくしたが、エディはネルの落ち着かない様子を見て男がかくれていることを悟った。ネルはエディの頭を灰皿で打って昏倒させた。ジェッドがエディを介抱している間に、バニイがむずがりはじめた。ネルはバニイに猿ぐつわをはめ、手足をしばりあげた。エディが回復すると、ジェッドはリンの許へ飛んで行き、ネルとのいきさつを正直にうちあけた。リンは彼への愛情をよみがえらせた。一方ネルはジェッドがいないのに気づいてヒステリイを起こした。そこへジョーンズ夫人が戻って来てバニイの姿を見ておどろき、ネルにつかみかかったが、丁度駈けつけたジェッドが2人を仲裁し、バニイの縛をといてやった。エディはネルが精神異常者であることを皆に説明した。ネルはこっそり安全剃刀の刃をとり、自殺を計ろうとしたが、ジェッドが危く阻止した。ネルは警官に連れ去られていった。




11-46. 追想

監督 アナトール・リトヴァク
出演 ユル・ブリンナーイングリッド・バーグマンヘレン・ヘイズ
1956年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
1956年に制作されたアメリカ映画。ロシアの皇女アナスタシアが存命するという巷間の伝説を元にした映画。 マルセル・モーレットによる戯曲の映画化。 ロシア革命の犠牲から奇跡的に逃れ今も生存を伝えられるロマノフ王朝の皇女アナスタシアに絡まる恋と陰謀を描いた話題作。原作はガイ・ボルトンの潤色によるフランスのマルセル・モーレットの戯曲により、「旅情」のアーサー・ローレンツが脚色、「愛情は深い海の如く」のアナトール・リトヴァクが監督した。撮影は「旅情」のジャック・ヒルドヤード、音楽は「バス停留所」のアルフレッド・ニューマン。主な出演者は、「王様と私」のユル・ブリンナー、「われら女性」以来久々のイングリッド・バーグマン、「砂漠部隊」のエイキム・タミロフ、舞台からヘレン・ヘイズなど。イングリッド・バーグマンが2度目のアカデミー主演女優賞を受賞した。

ストーリー
1928年。パリ在住のボーニン(ユル・ブリンナー)を首謀者とするチェルノフ(エイキム・タミロフ)ら4人の白系ロシア人は、ロシア革命のとき独り逃れたという大公女アナスタシアが生存していると宣伝、彼女を敵から救出する名目で旧貴族から資金を集め出した。そして4人は、セーヌ河に身を投げようとしたアンナ・コレフ(イングリッド・バーグマン)をアナスタシアに仕立て、ロシア皇帝ニコラス2世が生前、大公女のために英国銀行に預金した1000万ポンド、利子も含めて3600万ドルの金を引き出そうと企む。アンナは、前に病院に入っていたとき自分はアナスタシアと打ち明けたことがあり、自分の過去を殆ど記憶していないという謎の女だった。ボーニンらの巧みな演出で、アンナはアナスタシアとして在パリの旧ロシア宮廷の要人たちに引き合わされた。しかし要人の1人は彼女の真実性を認めず、狼狽したボーニンは最後の切札として彼女を、デンマークで甥のポール公と余生を送るアナスタシアの祖母・大皇妃(ヘレン・ヘイズ)と対面させようとする。ポール公は革命前、アナスタシアと許婚であった。だがボーニンの試みは失敗、そこで彼は大皇妃の侍女を買収して劇場でポール公とアンナの対面を計った。これは成功し、ポール公も信じはしなかったがアンナの美しさに打たれた。ところが翌晩、ポール公に再び会ったアンナは、自分を偽物のアナスタシアでなく唯の女として扱って欲しいと打ち明けた。一方、ボーニンも、ポール公に自分の欲しいのはアナスタシアの金だけだと明けすけに話した。経済力の足りぬポール公は、この話に乗り、大皇妃とアンナの対面に手を貸す。大皇妃と会ったアンナは少女時代のことを聞かれ、ドギマギして帰ろうとするが、大皇妃はアンナが時々する妙な咳に気づき、彼女が本物のアナスタシアと知った。かくてアンナはアナスタシア大公女として認められ、数週間後には、彼女の金目当てのポール公と婚約披露をすることになった。だが、この時になって、アンナとボーニンは互いに愛し合っていることを知った。しかしすべてを諦めたボーニンは想いを秘めて大皇妃に暇乞いに行った。ところが大皇妃は、ボーニンの心中を鋭いカンで悟り、2人を結ぶ労をとる。アナスタシア大公女婚約披露の席に2人の姿はなく、「芝居は終わった」という大皇妃の声だけが静かに響いていた。...




11-47. 私の頭の中の消しゴム

監督 イ・ジェハン
出演 チョン・ウソンソン・イェジンペク・チョンハク
2004年・韓国(ギャガ)

解説
人気韓流スター、チョン・ウソン&ソン・イェジン共演の純愛映画。最愛の人にめぐり合った男女の喜びと、不治の病という試練に直面した悲しみを情感豊かに紡ぎ出す。

ストーリー
工事現場で働く無愛想な大工チョルス(チョン・ウソン)と、おっちょこちょいだが純粋な社長令嬢スジン(ソン・イェジン)。住む世界の違う2人が、コンビニでの思わぬハプニングで出会い、まっすぐに恋に落ちる。愛を信じず独りで生きてきたチョルスは、スジンの愛に戸惑いながらも、彼女のピュアな気持ちから、人を愛すること、許すこと、そして信じることを覚えていく。建築家として活動を始める夫と、才能あるファッションデザイナーの妻。夫のお弁当にご飯だけを2つ包んでしまったり、自分の家さえ探せずに道に迷ってしまうような彼女の物忘れさえ、しっかり者の夫には愛おしい。目が眩むほど幸せな、新婚の日々。大したことではないと思っていたスジンの物忘れが深刻になっていったのは、それから間もなくのこと。不安を覚え、医者を訪れたスジンが宣告された言葉は「若年性アルツハイマー」。肉体的な死より、精神的な死が先に訪れる病。この日から、失われていく記憶をつなぎ止めるための2人の闘いが始まる。チョルスは少しでも彼女を支えるため家中に何枚ものメモを貼り巡らせるが、彼女の記憶はどんどんこぼれていく。家族が誰なのか、自分が誰なのかすら分からなくなり、遂にはチョルスの目を見つめ、昔の恋人の名で「愛してる」と微笑むスジン。なす術のない絶望に心を乱されながらも、彼女を見守っていこうというチョルスの気持ちは揺らがない。仕事と看病に追われる日々…。そしてある日、仕事から戻ったチョルスが目にしたのは、スジンのいない空っぽの家と、1通の置き手紙だった。「あなたは今、泣いているでしょう? 愛するチョルス。記憶が残っているこの短い間に、どうしたら私の気持ちを伝えることができるでしょう。私はあなた、チェ・チョルスだけを愛しています。これだけは忘れたくない。忘れちゃいけないのに。私の記憶を奪っていくこの病気が、あなたの記憶だけは残してくれますように。それが叶わないなら、どうか、消えていく記憶の中で最後まで残っているのが、あなたと過ごした日々でありますように」。手紙を読んだチョルスは、ひとつの決意をする。




11-48. 百万長者の初恋

監督 キム・テギュン
出演 ヒョンビンイ・ヨニイ・ハンソル
2006年・韓国(東京テアトル=クロックワークス)

解説
TVドラマ「私の名前はキム・サンスン」 で、韓国国内で社会現象を巻き起こしたヒョンビンの映画初主演作。「オオカミの誘惑」 のキム・テギュン監督が贈る、せつない恋物語。

ストーリー
我がままで傲慢な財閥の三世、カン・ジェギョン(ヒョンビン)は、ケンカと遊びに明け暮れながら18歳の誕生日に手に入れる住民登録証のことだけを考えていた。それを機に、彼は亡き祖父の遺産を受け継ぎ、正真正銘の大金持ちになるはずだった。しかし祖父の遺言状には、“ある条件”が書かれていた。それは、ジェギョンが遺産を相続するには、江原道にあるポラム高校の卒業証書がなければいけないという内容だった。さらに、もしも彼が自主退学をした場合、相続金は社会に還元されること、そして、全ての権利を放棄した場合には、相続されるのは0.1パーセントだけであることが告げられた。手っ取り早く遺産を全額手に入れるには、強制退学しかないと考えるジェギョンは、とりあえず田舎のポラム高校に通うことに。転校初日、クラスで最も体格がいいミョンシクにケンカを売り、いきなりぶん殴るジェギョン。しかし、思い通りに退学にはならず、なぜかミョンシクの家に夕飯に招かれ、もてなされてしまう。校長に裏金を渡して強制退学を頼み込むが、逆に教育者としての教訓を聞かされるはめに。結局、どんな過ちも許されてしまいそうなのどかな村で、ジェギョンに残された道は黙って高校に通うことだけだった。そんな中、ジェギョンは同じクラスの委員長、ウナン(イ・ヨニ)が気になり始める。しかしウナンは“肥大性心筋症”という恐ろしい病を抱えていた。病院の診断結果では、既に移植手術も手遅れ状態で、恋をして胸をときめかせることさえも心臓に負担がかかるという。ウナンはあくまでも気丈に振る舞い、初雪が降るまでは生きていたいと強く願うのだが……。