f1-1. トロイ
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
出演 ブラッド・ピット,
エリック・バナ,
オーランド・ブルーム,
ダイアン・クルーガー,
ブライアン・コックス
2004年・アメリカ (ワーナー)
解説
ブラッド・ピットが古代ギリシャの英雄、アキレスに扮する歴史大作。ひとりの美女を巡ってぼっ発した“トロイ戦争”を、壮大なスケールで描くスペクタクル・ロマンだ。
ストーリー
スパルタの王メネラオス(ブレンダン・グリーソン)とトロイの王子ヘクトル(エリック・バナ)は、長年にわたる両国の戦いの終結を祝って宴を開いていた。しかしそんな中、ヘクトルの弟パリス(オーランド・ブルーム)と、メネラオスの妻ヘレン(ダイアン・クルーガー)が、許されぬ恋に落ちてしまった。侮辱を受けたメネラオスは、ヘレンの奪回を決意。彼の兄アガメムノン(ブライアン・コックス)は、4万ものギリシャ軍をトロイへと進軍させる。トロイのプリアモス王(ピーター・オトゥール)は苦悩の末、ギリシャ軍との全面戦争を選択。難攻不落のトロイへの攻撃の鍵を握るのは、ギリシャ軍最強の戦士と呼ばれるアキレス(ブラッド・ピット)だ。自分自身のためのみ戦う彼は、預言者である母テティス(ジュリー・クリスティー)から死の予言を受けつつも、トロイへと赴く。その激動の中、運命の女ブリセウス(ローズ・バーン)と出会う。やがてアキレスはヘクトルと一対一で対決し、ヘクトルが敗れて死亡。彼の死体を自分の陣地へ持ち帰ったアキレスだが、そこに危険を承知でプリアモス王が訪ねてくる。彼は息子ヘクトルの死体と、ブリセウスと共にトロイへ帰った。そしてアキレスも含むギリシャ軍の兵士たちは、トロイに運ばれた木馬に忍び込み、一気にトロイを攻める。その戦いの中で、プリアモス王が死亡。まもなくアキレスも、パリスが放った矢に倒れて息を引き取るのだった。
1-2. フライトプラン
監督 ロベルト・シュヴェンケ
出演 ジョディ・フォスター,
ショーン・ビーン,
ピーター・サースガード,
エリカ・クリステンセン,
ケイト・ビーハン
2005年・アメリカ (ブエナ ビスタ)
解説
アカデミー賞に輝くジョディ・フォスターの3年ぶりの主演作。高度1万フィートを飛行中の旅客機から消えた少女をめぐり、その真相を探る母親の苦闘を描くサスペンスだ。
ストーリー
ベルリン空港。突然の夫の事故死という深い喪失感を抱えた女性航空機設計士のカイル(ジョディ・フォスター)は、6歳になる娘ジュリア(マーリーン・ローストン)と共に、夫の棺を乗せた旅客機に乗りこむ。それは皮肉にも、カイルが設計した最新鋭の航空機だった。機内に落ち着くと、カイルは睡魔に襲われる。その間に、ジュリアの姿が見えなくなってしまう。乗客、乗務員の誰一人としてジュリアの姿を見たと証言する者はなく、なんと乗客名簿にも名前が載っていない。パニックに陥ったカイルは、エアマーシャル(私服航空保安官)のカーソン(ピーター・サースガード)に阻止されながらも、機長のリッチ(ショーン・ビーン)に捜索を嘆願する。機長の指示の下、徹底的な捜索が行なわれるがジュリアは発見されない。やがて乗務員から、ジュリアは夫と共に6日前に死亡したという信じがたい知らせがもたらされる。すべてはカイルの妄想だと判断され、彼女は機長から逮捕命令を下された。だがカイルは反撃し、孤独な戦いに身を投じる。やがて真相が発覚。実はカーソンが犯人で、彼はフライト・アテンダントのステファニー(ケイト・ビーハン)と組んで、ジュリアを機械室に隠し、カイルを危険人物に仕立て上げて航空会社から金を取ろうとしたのだ。しかもカイルの夫もカーソンが殺害したのだった。それを知ったカイルは自力でジュリアを助け出し、すべての誤解を解くのだった。
1-3. ザ・シューター 極大射程
監督 アントワン・フークア
出演 マーク・ウォールバーグ,
マイケル・ペーニャ,
ダニー・グローヴァー,
ケイト・マーラ,
イライアス・コティーズ
2007年・アメリカ (UIP)
解説
「ディパーテッド」 のマーク・ウォールバーグが、天才狙撃手に扮したアクション。2000年度「このミステリーがすごい!」 海外部門で第1位となったベストセラー小説の映画化。
ストーリー
アフリカの小国エリトリア。海兵隊の特殊部隊に所属する狙撃の名手ボブ・リー・スワガー(マーク・ウォールバーグ)は、相棒のドニーと岩山での偵察任務を遂行していた。そこへ武装車両の隊列が現れ銃撃戦がはじまる。応援を要請するが無線はつながらず、愛する妻を故郷に残してきたドニーが命を落としてしまう。それから3年、軍隊をリタイアしたスワガーは、世間との縁を切り、ワイオミングの山中で愛犬のサムとひっそり暮らしていた。そんなある日、名誉勲章に輝く退役軍人アイザック・ジョンソン大佐(ダニー・グローヴァー)がやってきた。大佐は、全米各地を遊説する大統領に対し暗殺の動きがあるため、880ヤードに渡って敷かれる警戒網の外から狙撃を行う可能性のある場所を特定してほしいという依頼に来たのだった。依頼を引き受けたスワガーは早速各地を検証、フィラデルフィアにある独立記念会館前の広場を割り出した。演説当日、スワガーは監視にあたり、アイザック大佐の指揮する部隊が犯人グループを取り押さえる手筈になっていた。演説がはじまり、極度の緊張の中、スワガーの監視スコープの中にライフルの先端が浮かび上がる。無線で突入の指示を出すが、ライフルは大統領に狙いをつけたまま微動だにしない。おかしいと思った瞬間、2発の銃声が響き渡る。1発は大統領に向かって、そしてもう1発は、スワガーの背後から彼に向かって放たれたのだった。しかも狙撃されたのは大統領ではなく、その隣にいたエチオピアの大司教だった。しかも、スワガーが狙撃犯だという証拠が続々と発見される。巨大な陰謀に巻き込まれたことを知ったスワガーは、非常線をくぐり抜け、独り立ち向かうことを決意する。
1-4. 理由なき反抗
監督 ニコラス・レイ
出演 ジェームズ・ディーン,
ナタリー・ウッド,
ジム・バッカス,
アン・ドーラン,
ロチェル・ハドソン
1955年・アメリカ (ワーナー・ブラザース)
解説
「エデンの東」 でアカデミー男優賞候補となったジェームズ・ディーンの遺作。青少年の犯罪心理を追求したニコラス・レイの原作をスチュワート・スターンが脚色、アーヴィング・シュルマンが潤色シ、ニコラス・レイが監督した。撮影は「快傑ダルド」 のアーネスト・ホーラー、音楽は「エデンの東」 のレナード・ローゼンマン。主な出演者はJ・ディーンの他、「銀の盃」 のナタリー・ウッド、「四角いジャングル」 のジム・バッカス、「紅の翼(1954)」 のアン・ドーランとウィリアム・ホッパーの他、サル・ミネオ、コリー・アレン、「ミスタア・ロバーツ」 のニック・アダムスなど少年俳優が出演する。「放射能X」 のデイヴィッド・ワイスバート製作。
ストーリー
17歳の少年ジム(ジェームズ・ディーン)は泥酔のため、集団暴行事件の容疑者として警察に連行された。彼は、そこで夜間外出で保護を受けた少女ジュディ(ナタリー・ウッド)や、仔犬を射って注意されたプレイトウ少年(サル・ミネオ)と知り合った。3人は説諭の末帰宅を許された。ジムの一家は転居続きで、つい最近この街へ来たばかりだった。彼の父親(ジム・バッカス)は意志薄弱で、家庭は男まさりの母親(アン・ドーラン)が、きりまわしていた。翌朝、新しい学校であるドウスン・ハイ・スクールへ登校の途中、ジムはジュディに会ったが、彼女は不良学生のバズ(コリー・アレン)、ムーズ(ニック・アダムス)、クランチ(F・マゾーラ)等と一緒であった。その日の午後、学生たちはプラネタリウム館へ星の勉強に出掛けたが、不良仲間の反感を買ったジムは彼等のボスのバズに喧嘩を売られた。2人はプラネタリウム館の外でナイフを手に決闘したが守衛の仲裁を受け、その夜“チッキイ・ラン”と称する度胸試しをやることになった。吹き曝しの高台でジムとバズは、それぞれボロ自動車を崖の端にフル・スピードで走らせた。ジュディやバズの不良仲間が見守る中で、ジムは巧く崖際で車から脱出したが、飛び出しそこねたバズは、そのまま谷底へ落ち込んだ。呆然としたジムはプレイトウとジュディに助けられて帰宅し、警察へ届けようとしたが、事なかれ主義の両親は許可しなかった。強いて警察に出向いたジムは少年保護係レイ(エドワード・プラット)の不在を知り、釈然とせぬまま警察を出て、秘かに空家でジュディと会った。ムーズとクランチはジムが警察に届けるのを恐れ、プレイトウを脅してジムの住居を知った。プレイトウは怒りのあまり、父親の拳銃を持ち出すと闇の中に駈け出していった。空邸のジムとジュディは、跡を追ってきたプレイトウを1室に残し、激しい抱擁を重ねた。数刻後、ジムを追い求めるムーズたちが空家をみつけ、プレイトウは発見された。彼は家から持ち出した拳銃を追手に放ち、クランチを倒した。間もなく附近には大掛りな警備網が張られジムやプレイトウの家族や、少年保護係のレイも駈けつけた。ジムは近くのプラネタリウム館に駈け込んだプレイトウを制止しようとした。半狂乱のプレイトウはジムに拳銃を向け、警官に射殺された。ジムの両親は死体に寄りすがって泣き叫ぶ我が子を心から慰め、この悲劇にもお互いの理解によって、ついに終止符が打たれた。
1-5. チャーリー
監督 リチャード・アッテンボロー
出演 ロバート・ダウニー・Jr.,
ジェラルディン・チャップリン,
ダン・エイクロイド,
モイラ・ケリー,
アンソニー・ホプキンス
1992年・アメリカ (東宝東和)
解説
サイレント映画の時代から赤狩りでハリウッドを追われるまで世界の喜劇王として活躍したチャールズ・チャップリンの半生を描く伝記ドラマ。監督・製作は「遠い夜明け」 のリチャード・アッテンボローで、彼の「ガンジー」 を10回以上観たというチャップリンの未亡人ウーナの許諾を得て実現した企画である。共同製作は「氷の微笑」 のマリオ・カサール。アッテンボローの製作会社に所属するダイアナ・ホーキンスの原案で、チャップリン自身の手による「チャップリン自伝」 (新潮社・刊)と、この作品の歴史顧問も務めるデイヴィッド・ロビンソンの、徹底した調査に基づいて全生涯を再現したドキュメント「チャールズ・チャップリン」 (文藝春秋・刊)を原作に、小説家でもあるウィリアム・ボイドと、ブランアン・フォーブス、「ミザリー」 のウィリアム・ゴールドマンが共同で脚本を執筆した。撮影は「存在の耐えられない軽さ」 のスヴェン・ニクヴィスト、音楽は「ダンス・ウィズ・ウルブズ」 のジョン・バリーが担当。主演は「エア・アメリカ」 のロバート・ダウニー・ジュニア。チャップリンの娘で、「モダーンズ」 のジェラルディン・チャップリンが自身の祖母にあたるハンナを演じている。他に「スニーカーズ」 のダン・エイクロイド、「冬の恋人たち」 のモイラー・ケリー、「ワンダとダイヤと優しい奴ら」 のケヴィン・クライン、「ストリート・オブ・ファイヤー」 のダイアン・レインらが共演している。
ストーリー
ロンドンの芝居小屋の舞台を見つめる少年、チャーリー。舞台の上には彼の母ハンナ(ジェラルディン・チャップリン)がいた。突然彼女が体調をくずし、母の代わりに舞台に飛び出した少年の見様見真似の芸に観客は熱狂した。ハンナの発狂により、チャーリーと母と兄シドニーの、貧しくともささやかな幸福に満ちた生活は終わりを告げた。チャーリー(ロバート・ダウニー・ジュニア)は兄の勧めで名門カルノー一座に入り、看板俳優にのし上がった。コーラス・ガールのヘティ(モイラ・ケリー)との出会いもそんな頃だった。アメリカ巡業に旅立ったチャーリーは、そこで映画に出会い、ハリウッドからの招きを受けて映画界に飛びこんでいった。大プロデューサーのマック・セネット(ダン・エイクロイド)に認められ、リトルトランプとして世界中の人気者になったチャーリーは、莫大な富と名声を得た。しかし、ヘティの結婚や母の病気など私生活は順調とは言えなかった。それでも親友ダグラス・フェアバンクス(ケヴィン・クライン)、エドナ・パーヴァンス(ペネロープ・アン・ミラー)など良い仲間に囲まれたチャーリーは、次々と傑作を撮り続けた。ロンドンへの凱旋の途中ヘティの死を知ったチャーリーは、故郷への想いを断ち切った。アメリカに戻った彼は、サイレントからトーキーへの移行、世界恐慌などを前に次々と映画を撮り続け、リタ・グレイ、ポーレット・ゴダート(ダイアン・レイン)とのロマンスが世間を騒がせた。忍びよるファシズムの影に怒りを感じたチャーリーは「独裁者」を発表し、FBIから政治的危険人物としてマークされてしまう。ようやく最愛の女性ウーナ・オニール(モイラ・ケリー)と出会ったチャップリンだったが、父親認知裁判のスキャンダルに巻き込まれ、やがて吹き荒れる赤狩りの嵐の中、チャーリーは家族と共にアメリカを去り、政府は彼らの再入国を禁じた…。そして20年後、アメリカ映画界はチャーリーにアカデミー特別賞を贈呈するため彼を授賞式に招き、拍手の中でチャーリーは過去を懐かしむのだった…。
1-6. 5つの銅貨
監督 メルヴィル・シェイヴェルソン
出演 ダニー・ケイ,
バーバラ・ベル・ゲデス,
ルイ・アームストロング,
ボブ・クロスビー,
ハリー・ガーディノ
1959年・アメリカ (パラマウント)
解説
1020年代に一世を風びしたバンド・リーダー、レッド・ニコルズの半生に基づく音楽伝記映画。脚本を「月夜の出来事」 のメルヴィル・シェイヴェルソンとジャック・ローズが書き、監督は同じくメルヴィル・シェイヴェルソン。撮影は「拳銃の罠」 のダニエル・L・ファップ。音楽をリース・スティーヴンスが担当。出演は「戦場のドン・キホーテ」 のダニー・ケイ、「めまい」 のバーバラ・ベル・ゲデスやルイ・アームストロング、ボブ・クロスビー、シェリー・マン、レイ・アンソニーら。“マイ・ブルー・ヘヴン”“ビル・ベイリー”らの往年の流行曲が演奏される。製作はジャック・ローズ。
ストーリー
1920年代の頃。コルネットが得意の田舎青年レッド・ニコルズ(ダニー・ケイ)は、ウィル・パラダイスの楽団に入ってギターのトニーや歌手のボビー(バーバラ・ベル・ゲデス)と知り合いになった。やがてボビーと恋仲になったレッドは、秘密酒場でルイ・アームストロングと即興でかけあい演奏をやったことから彼と仲よくなり、次第に芸を世に認められるようになった。レッドとボビーは結婚しトニーはレッドのマネージャーとなった。レッドはあくまでデキーランド・スタイルを守ったが、バンド・リーダーのウィルはそれに反対だった。バンドを脱退してレッドは“ファイブ・ペニーズ”楽団を結成し、巡業をはじめた。娘のドロシーが生まれ、育つにつれて、デキシーランド・スタイルは一世を風びし、楽団のメンバーにもトミー・ドーシーやグレン・ミラーが加わった。ボビーは成長する娘に巡業がよくないことを考えて、彼女を寄宿学校に入れた。レッドの人気が絶頂に達した頃、ドロシーが小児マヒにかかっていることが知らされてきた。飛行機で病床にかけつけたレッドは、音楽に熱中してドロシーにかまわなかったことを後悔した。バンドを解散し、コルネットを金門橋から投げ捨てた彼は、娘の病気を治すことに専念した。時が過ぎて第2次大戦が始まった頃、レッドは造船所の職工だった。ドロシーは13になり、父の昔演奏したレコードを誇りに思う娘になっていた。ボビーは夫の才能を再び世に出そうとして場末のナイト・クラブに出演させた。しかしよせ集めのバンドは失敗に終わった。その時ルイ・アームストロング、トミー・ドーシー、グレン・ミラーなどの昔の“ファイブ・ペニーズ”のメンバーが現れ演奏に加わった。ボビーがそれにつれて“ファイブ・ペニーズ”の曲を歌いはじめた時、ドロシーが杖を使わずに立ち上って、思わずレッドの後ろに歩みよった。レッドの目にも、ボビーの目にも、ドロシーの目にも、いつしか涙がにじみ出ていた。
1-7. アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵
監督 パスカル・トマ
出演 カトリーヌ・フロ,
アンドレ・デュソリエ,
ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド,
ローラン・テルズィエフ,
ヴァレリー・カプリスキー
2005年・フランス (ハピネットピクチャーズ/セテラ)
解説
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーの人気シリーズが原作の推理劇。持ち前の好奇心を発揮し、ある風景画にまつわる怪事件に挑む人妻の姿を軽妙につづる。
ストーリー
フランスの田舎で悠々自適の生活をおくる、好奇心旺盛な奥さまプリュダンス(カトリーヌ・フロ)と、おっとり気味の旦那さまベリゼール(アンドレ・デュソリエ)。ある日、高級老人ホームにいる叔母(フランソワーズ・セニエ)を訪問する。そこでプリュダンスは不思議な老婦人ローズ(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)に話しかけられ、何故か彼女の存在が強い印象として残る。数週間後、叔母が亡くなり二人が老人ホームで遺品を整理していると、ある風景画に胸騒ぎを覚える。そこには、はるか昔に見た記憶のある家が描かれていた。さらに、その風景画の元の持ち主がローズであることが判明、しかもローズは突然老人ホームから姿を消していたのだった。事件の予感“親指のうずき”を感じたプリュダンスは、絵に描かれた家とローズを探しに旅に出る。過去の記憶を頼りに、プリュダンスはある村にたどり着く。その村でローズの足跡をたどると、アルコール中毒の司祭(アンドレ・トラン)、村の婦人会の責任者でオールドミスのブレイ(ヴァレリー・カプリスキ)など、怪しげな人物と次々に遭遇。そんな中、プリュダンスは司祭に頼まれて墓地である少女の墓碑銘を探していると、突然誰が彼女の頭を殴打、彼女は気を失う。一方、プリュダンスの消息が途絶えたことを心配するベリゼールは、ホームの嘱託医から、入居者の1人が病気の兆候など無かったのに就寝中に急死した、と告白される。ベリゼールは妻の身に何か不吉なことが起こったのではと、さらに不安は募らせる。これらの背景には、フランスアルプスの平和な村に潜む、人々に忘れ去られてしまった恐ろしい事件が隠されていた。謎が謎を呼ぶ事件の結末は……。
1-8. オリエント急行殺人事件
監督 シドニー・ルメット
出演 アルバート・フィニー,
ローレン・バコール,
マーティン・バルサム,
イングリッド・バーグマン,
ジャクリーン・ビセット
1974年・イギリス (パラマウント=CIC)
解説
オリエント急行の中で起こった殺人事件をめぐって、それに関わった人間群像の愛憎と名探偵エルキュール・ポワロの活躍を描いたアガサ・クリスティ女史の同名小説の映画化。製作はジョン・ブラボーンとリチャード・グッドウィン、監督は「セルピコ」 のシドニー・ルメット、脚本はポール・デーン、撮影はジェフリー・アンスワース、音楽はリチャード・ロドニー・ベネットが各々担当。出演はアルバート・フィニー、ローレン・バコール、マーティン・バルサム、イングリッド・バーグマン、ジャクリーン・ビセット、ジャン・ピエール・カッセル、ショーン・コネリー、ジョン・ギールグッド、ウェンディ・ヒラー、アンソニー・パーキンス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、レイチェル・ロバーツ、リチャード・ウィドマーク、マイケル・ヨーク、コリン・ブレークリー、デニス・クイリー、ジョージ・クールリスなど。
ストーリー
一九三〇年、ニューヨーク、ロングアイランドに住む大富豪アームストロング家の三歳になる一人娘が誘拐された。二十万ドルという巨額の身代金が犯人に支払われたにもかかわらず、幼児は死体となって発見された。悲報のショックで夫人も亡くなり、アームストロング自身も度重なる不幸にピストル自殺を遂げてしまう。事件後六ヵ月目に犯人が逮捕されたが、莫大な金力とある種の秘密勢力を利用して証拠不十分で釈放されるという結果に終わった。それから五年後。トルコのイスタンブールから、アジアとヨーロッパを結ぶ豪華な大陸横断国際列車オリエント急行が、さまざまな乗客を乗せてパリ経由カレーに向けて発車しようとしていた。ベルギー人の有名な探偵エルキュール・ポワロ(A・フィニー)も乗客の一人で、ロンドンへの帰途につくところだった。真冬だというのに珍しくオリエント急行の一等寝台車は満員で、偶然出会った古い友人で鉄道会社の重役であるビアンキ(M・バルサム)の取りはからいで、ポワロはようやくコンパートメントで落ちつくことが出来た。やがて列車は、動き出し、三日間の旅が始まった。二日目の深夜、列車は突然スピードをおとした。前夜から降り続いていた雪で線路が埋まり、立往生してしまったのだ。ポワロは周囲の静寂で眼をさました。隣室で人が呻く声を聞いたような気がしたのだ。同時に車掌を呼ぶベルが鋭く廊下に響いた。オリエント急行は雪の中に立往生したまま朝を迎えた。そしてポワロの隣りのコンパートメントにいたアメリカ人の億万長者ラチェット(R・ウィドマーク)が、刃物で身体中を刺されて死んでいるのを下男のベドース(J・ギールガッド)とポワロが発見した。コンパートメントに残された燃えかすの手紙には、五年前に起きたアームストロング誘拐事件に関連する文面が発見された。ポワロはビアンキに依頼され、この事件の解明を引き受けざるをえなかった。そして早速、国籍も身分も異なる同じ一等寝台の車掌と十二人の乗客たちの尋問を始めた。まずはラチェットの秘書ヘクター(A・パーキンス)、さらにこの車輌の車掌のピエール(J・P・カッセル)、ベドーズ、ハバード夫人(L・バコール)、英語教師グレタ・オルソン(I・バーグマン)、ハンガリーの外交官アンドレニ伯爵(M・ヨーク)とその夫人(J・ビセット)、ドラゴミロフ公爵夫人(W・ヒラー)とその召使ヒルデガード・シュミット(R・ロバーツ)、英国軍人アーバスノット大佐(S・コネリー)、メアリー・デベナム(V・レッドグレイブ)、車のセールスマン、フォスカレリ(D・クイリー)、私立探偵と名のるハードマン(C・ブレイクリー)の順だった。尋問していくに従い、ラチェットがアームストロング誘拐事件の真犯人であることが判明し、十二人の乗客はまったく関係ないようにみえたが、アームストロング家に関係を持っている人たちだった。ヘクターはアームストロング夫人に可愛がられ、ドラゴミロフ公爵夫人はアームストロング夫人の名付け親、アンドレイ伯爵夫人はアームストロング夫人の妹、ヒルデガード・シュミットはアームストロング家の召使、夫人の秘書だったメアリー・デベナム、アーバスノット大佐はアームストロング大佐の同僚、車掌のピエールの娘はアームストロング家に召使として働いていたが誘拐事件のあらぬ疑いをかけられ自殺したのだった。オリエント急行殺人事件は、アームストロング家に関わった人々が巧妙に仕組んだ計画殺人だったのだ。
1-9. 情婦(1957)
監督 ビリー・ワイルダー
出演 タイロン・パワー,
マレーネ・ディートリッヒ,
チャールズ・ロートン,
エルザ・ランチェスター,
ジョン・ウィリアムス
1957年・アメリカ (松竹=ユナイト)
解説
英国の女流推理小説作家アガサ・クリスティが1932年に短篇小説形式で発表、その後ブロード・ウェイ、ロンドンでロングランされた舞台劇の映画化で、意表を突く結末をもったミステリー・ドラマ。「昼下がりの情事」 のビリー・ワイルダーと「ハッピー・ロード」 の共同脚本者の1人ハリー・カーニッツが脚本を担当。ラリー・マーカスが脚色してワイルダーが監督した。撮影監督は「炎の人ゴッホ」 のラッセル・ハーラン、音楽はマティ・マルネック。主演は、「二十七人の漂流者」 のタイロン・パワー、「モンテカルロ物語」 のマレーネ・ディートリッヒ、「ホブスンの婿選び」 のチャーズ・ロートン。
ストーリー
病癒えたロンドン法曹界の長老ウィルフリッド卿(チャールズ・ロートン)は、看護婦に付き添われて事務所に帰る。が、酒、煙草、そして得意の刑事事件もダメだといわれ、大いにクサっていた。そこへ弁護士仲間が依頼人を伴って現われ、弁護士の煙草ほしさに部屋に招じ入れ、話を聞くうちに卿は俄然興味がわいてきた。ヴォール(タイロン・パワー)という依頼人は、知り合いの富裕な未亡人が殺されたことから、嫌疑が自分にかかっていること。自分の潔白は妻クリスチーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が保証する、と述べて卿に弁護を頼む。だが円満な夫婦の間の証言など、法廷で取り上げられるわけがない。他にヴォールの無実を証す証人がないとすれば、殺す動機のない点を主張しなければならない。その点ヴォールは、自分の発明品に少し投資してもらいたいと思っていた、と述べる。ところがこの時、新聞で未亡人の全財産がヴォールに遺されていたことが判り、ヴォールの立場は不利になる。やがて事務所にスコットランド・ヤードの車が停まり、ヴォールは逮捕される。その後ヴォールの妻クリスチーネが来訪。ヴォールのアリバイを証言するが、その言葉はなぜか曖昧であった。この2人は、ヴォールが戦時中ドイツに進駐していた頃、彼女を助けことから結ばれた仲である。ウィルフリッド卿は看護婦や周囲の心配をよそに、弁護に立つことになった。公判の日、中央刑事裁判所の傍聴席は、満員だった。検事の証人喚問、ウィルフリッドの反対訊問など、事態は黒白いずれとも定めかねる展開になる。その時検事側証人として、クリスチーネが出廷。自分には前夫があり、ヴォールとの結婚は正式のものではないと証言、しかも未亡人殺しを告白したという、驚くべき証言をする。ここにおいてヴォールの有罪は確定したかに見えた。その夜、ウィルフリッド卿は見知らぬ夜の女に呼び出され、クリスチーネが夫を陥れようとした証拠の手紙を買わされる。次の公判の日、ウィルフリッドはこの手紙を重大な証拠として出廷、クリスチーネの仮面を剥ぐ。一転、ヴォールは無罪になった。だが、何か納得のいかないウィルフリッドの前に、クリスチーネが現われた。……事件は落着したのではなかったのか? ウィルフリッド卿の予感は、不幸にも的中したようである。何故なら、クリスチーネは彼に意外な事実を語ったのだ。意外な事実? だが、それに引き続いて、彼女にとっても、意外な事実が明らかになったのだ。……ここで、この事件の種明しをすることは、差し控えることにする。その方がこれから御覧になる人には、かえって親切な紹介の仕方だと思うし、結末を洩らさないでくださいという製作者の要望に、添うことであるからだ。
1-10. ナイル殺人事件
監督 ジョン・ギラーミン
出演 ピーター・ユスティノフ,
ジェーン・バーキン,
ロイス・チャイルズ,
ベティ・デイヴィス,
ミア・ファロー
1978年・アメリカ (東宝東和)
解説
ナイル河をさかのぼる豪華遊覧船で起きた連続殺人事件を描くミステリー。製作はジョン・ブラボーンとリチャード・グッドウィン、監督は「キングコング(1976)」 のジョン・ギラーミン、脚本は「探偵(スルース)」 のアンソニー・シェーファー、原作はアガサ・クリスティー(「ナイルに死す」 早川書房刊)、撮影はジャック・カーディフ、音楽はニーノ・ロータ、美術はピーター・マートン、衣裳はアンソニー・パウエルが各々担当。出演はピーター・ユスチノフ、ジェーン・バーキン、ロイス・チャイルズ、ベティ・デイヴィス、ミア・フアロー、ジョン・フィンチ、オリヴィア・ハッシー、ジョージ・ケネディ、アンジェラ・ランズベリー、サイモン・マッコーキンデール、デイヴィッド・ニーヴン、マギー・スミス、ジャック・ウォーデンなど。
ストーリー
つい最近莫大な遺産を相続した美貌と聡明さを兼ねそなえたアメリカ娘のリネット(ロイス・チャイルズ)は、親友ジヤクリーン(ミア・ファロー)から失業中の婚約者サイモン(サイモン・マッコーキンデール)を助けで欲しいという相談をうけ、早速サイモンと会った。リネットがこのサイモンと突然婚約を発表したのはそれから間もなくだった。しかし、この2人の結婚は思わぬ波紋をまきちらすことになる。豪華客船カルナーク号でエジプトヘハネムーンに旅立った2人にその影響は徐々に現れはじめた。なんと船の中にはジャクリーンが乗っていたのだ。さらにリネットの叔父で財産管理を委ねていたアンドリュー(ジョージ・ケネディ)、リネットを自作の小説のモデルにしてからかっている作家のサロメ(アンジェラ・ランズベリー)、そしてその娘でリネットに劣等感をもつロザリー(オリヴィア・ハッセー)、リネットの真珠のネックレスに目をつけているバン・スカイラー(ベティ・デイヴィス)、リネットにいかさま師呼ばわりされた医師ベスナー(ジャック・ウォーデン)、リネットに結婚を破談されたと思い込んでいるメイドのルイーズ(ジェーン・バーキン)、父親がリネットの祖父に破産させられた過去を持つ看護婦のミス・バウアーズ(マギー・スミス)、ブルジョア階級を軽蔑している学生ファーガスソ(ジョン・フィンチ)らが、それぞれの思惑を秘めて乗っていた。偶然、この船に乗り合わせていた私立探偵ポアロ(ピーター・ユスチノフ)は、早速リネットにジャクリーンを遠ざけてほしいと頼まれるが、ポアロは丁重に断わるのだった。ある朝、リネットが死体となって発見された。凶器はピストルでJの血文字が残され、証拠はジャクリーン.にことごとく不利だった。が、彼女にはアリバイがあった。ポアロは旧友レイス大佐(デイヴィッド・ニーヴン)の協力を得て捜査を開始した。多くの人間が動機をもつており、それぞれがピストルを手に入れリネットを撃ち殺すことができる状況だった。そして、ポアロの推理が真相に迫り、重大な事実と鍵が判明してきた頃、ルイーズが殺され、続いてサロメも殺された。ポアロは乗客を一室に集めこの殺人事件の謎をみなの前で解明していった。実は、サイモンが愛しているのはリネットではなく、ジャクリーンでリネットとの結婚は、すべて2人の計画のうえでのことだった。サイモンがリネットを殺すところを目撃したルイーズが、自らの金欲のために命を失い、ルイーズとサイモンのやりとりを聞いたサロメがジャクリーンに撃たれたのだった。驚く人々の前で、その罪を認めたジャクリーンは、愛するサイモンを撃ち、自らも命を絶つのだった。
1-11. 地中海殺人事件
監督 ガイ・ハミルトン
出演 ピーター・ユスティノフ,
ジェーン・バーキン,
コリン・ブレークリー,
ニコラス・クレイ,
ジェームズ・メイソン
1982年・イギリス (東宝東和)
解説
アドレア海の孤鳥でおきた殺人事件の謎を名探偵が解くというミステリー。ジョン・ブラボーンとリチャード・グッドウィンが、EMIのために製作。監督は「クリスタル殺人事件」 のガイ・ハミルトン、アガサ・クリスティの「白昼の悪魔」(早川書房)に基づき、アンソニー・シェーファーが脚色。撮影はクリス・チャリス、コール・ポーターの音楽をジャック・ラーチベリーがアレンジ、演奏の指揮をとっている。出演はピーター・ユスティノフ、ジェーン・バーキン、ダイアナ・リグ、ニコラス・クレイ、ジェームズ・メイソンなど。ロンドンのリー・インターナショナル撮影所とスペインのマヨルカ島で撮影。
ストーリー
イギリスの荒地で、ハイカーが婦人の死体を発見したと警察に通報する。その後、ロンドンの保険会社で、エルキュール・ポアロ(ピーター・ユスティノフ)が重役から模造宝石に保険をかけようとしたホーレス卿(コリン・ブレークリー)の捜査を依頼された。ポアロは彼に会い、「結婚の約束をした女優のアリーナ(ダイアナ・リグ)に20万ドルの宝石を与えたのだが、彼女が他の男と結婚したので、宝石を取りもどしたところ、それが模造品だった」と聞かされる。当のアリーナはアドレア海の孤島にあるホテルで休暇をすごす予定なので、ポアロもそこへおもむく。ホテルの女主人ダフニー(マギー・スミス)はタイラニア国王の元愛人で、手切れ金の代りにこのホテルをもらったという人物。アリーナとは昔、一緒に舞台に出たことがあり、二人は再会すると互いに笑いながら嫌味を言い合う。アリーナが新夫ケネス(デニス・クイリー)、ケネスと前妻との間の子リンダ(E・ホーン)とホテルに到着したのを待っていた人々がいる。彼女を再び舞台に復帰させようというプロデューサーのオデル(J・メイソン)とマイラ(S・ミルズ)のガードナー夫妻。彼女の伝記を執筆したジャーナリストのレックス(ロディ・マクドウォール)。だが、アリーナは女優復帰を拒否、伝記の出版も拒絶した。そして、ラテン語教師のパトリック・レッドファーン(ニコラス・クレイ)と大っぴらにいちゃつき、人々の非難の目をあびた。彼女のことでパトリックが妻クリスティン(ジェーン・バーキン)と喧嘩しているのを、多くの人が聞きつける。ある日、ホテルを一人で出たアリーナは、ホテルと反対側の浜辺で日光浴をしていた。パトリックとマイラがボートでその浜辺へ。パトリックは横になっている彼女のところへ行き彼女の死を発見する。ダフニーの依頼で、捜査にあたるポアロ。ちょうど、やって来たホーレス卿を含め、皆それぞれ犯行の動機を持っていた。ポアロは死亡推定時刻の11時半から12時までの皆のアリバイを聞き、誰一人としてアリーナを殺すことは不可能なことを知る。リンダとクリスティンは犯行現場とは反対側の海辺でスケッチをしていたし、ケネスは部屋でタイプを打っていたし、レックスは別の海上にいた。ダフニーは従業員とミーティングをし、窓からオデルが庭で読書しているのを目撃していた。皆が、ホテルを去るという日、皆を集めて犯人を指摘するポアロ。ポアロは犯人はレッドファーン夫妻だという。クリスティンはあらかじめリンダの時計を進めておいて、浜辺でリンダに時間を聞き、「12時5分前」という返事に急いで浜辺を去る。そしてアリーナのところへ駆けつけ、彼女をなぐり、彼女の水着を着て浜辺で横になる。遠くから見ただけのマイラが、彼女をアリーナと思い込んだのも無理はなかった。マイラがホテルに知らせに行った隙にパトリックがアリーナを絞殺。犯行動機はイギリスでアリーナと知りあったパトリックが、20万ドルの宝石を奪い、偽物とすりかえたことを誤魔化すためだった。そのためパトリックとクリスティンはわざと喧嘩を演じてみせていたのだ。さらに、ポアロはイギリスの荒地で発見された婦人がパトリックの前妻で、通報したハイカーがクリスティンであったことを語り、二つの犯行が類似していること、そして解決の鍵となったのはパトリックの何げない言葉であったと話すのだった。
1-12. クリスタル殺人事件
監督 ガイ・ハミルトン
出演 アンジェラ・ランズベリー,
ジェラルディン・チャップリン,
トニー・カーティス,
エドワード・フォックス,
ロック・ハドソン
1980年・アメリカ (東宝東和)
解説
ロンドン郊外の静かな町を舞台に起こった殺人事件をアガサ・クリスティがポアロ探偵と共に創造したミス・ジューン・マープルが解くサスペンス映画。製作はジョン・ブラボーンとリチャード・グッドウィン、監督は「007/黄金銃を持つ男」のガイ・ハミルトン。クリスティの原作(「鏡は横にひび割れて」/早川書房刊)を基にジョナサン・ホールズとバリー・サンドラーが脚色。撮影はクリストファー・チャリス、音楽はジョン・キャメロン、製作デザインはマイケル・ストリンジャー、衣装はフィリス・ダルトンが各々担当。出演はアンジェラ・ランズベリー、ジェラルディン・チャップリン、トニー・カーティス、エドワード・フォックス、ロック・ハドソン、キム・ノヴァク、エリザベス・テイラー、ウェンディ・モーガン、モーリン・ベネットなど。
ストーリー
教会で上映されていた探偵映画がクライマックスを迎えた時、機械の故障で画面がとぎれた。この時、一人の老婦人が席を立ち、犯人はわかったからこれ以上見る必要はない、と犯人をズバリ指摘して出て行った。この老婦人ミス・ジェーン・マーブル(アンジェラ・ランズベリー)は、このロンドンの郊外の町セント・メアリー・ミードに住む推理好きで有名な人気者だ。この町では今、映画『スコットランドの女王メアリー』の撮影が行なわれており、久しくスクリーンを遠ざかっていた往年のスター、マリーナ・クレッグ(エリザベス・テイラー)が主演のため、夫で監督のジェースン・ラッド(ロック・ハドソン)と共に長期滞在を予定している。町中あげての歓迎パーティでホステスを勧めるマリーナのもとに様々な人々がやってくる。婦人会のヘザー・バブコック(モーリン・ベネット)もそんな一人だ。彼女は、昔からのマリーナのファンで以前一度会ったことがある、ということなどを、一方的にしゃべりまくった。ちょうど、そのころ、製作者マーティ(トニー・カーティス)と共に主演女優でライバルのローラ(キム・ノヴァック)が到着し、マリーナのいる二階に姿を現した。彼女を見て一瞬顔をこわばらせるマリーナ。その直後、ヘザーが死んだ。彼女の死はたちまち町中にひろがり、チェリー(ウェンディ・モーガン)の口を通じてミス・マーブルの耳にもとどいた。チェリーは、パーティの手伝いに行っていて、会場の様子を詳しく知っていたのだ。やがて事件解明のためスコットランド・ヤードの警部でマーブルの甥のクラドック(エドワード・フォックス)が派遣され、ヘザーの死がカクテルに盛られた毒物によるものであることをマーブルに知らせにくる。しかも、そのカクテルは、マリーナが飲む予定だったものだ。捜査が難行しているころ撮影現場ではマリーナとローラが火花を散らせていた。やがて秘書エラ(ジェラルディン・チャップリン)が用意したマリーナのコーヒーから再び毒物が発見された。その件で容疑が深まったエラが、常用していた鼻炎用の吸入器に仕込まれた毒で殺された。テリーが語った、マリーナの表情が、一瞬氷のように変化した、という言葉を考え続けていたマーブルは、その時ヘザーがマリーナに何を語ったのかを調べた。その内容はヘザーがマリーナの舞台を見て感激し舞台裏で彼女に思わずキスしてしまったというものだった。そしてマーブルは神父が語っていたある言葉を思い出した。ヘザーがその時風疹にかかっていたという事実だ。マリーナは、妊娠中の風疹が原因で障害児を産んでいる。その時ヘザーが移した風疹が原因だとしたら…。マーブルがマリーナの滞在している館に着いた直後のクラドックもやって来た。なぜかマリーナに会わせようとしないジェースン。マリーナを愛する彼は全てをしっていたのだ。そして事件を解いてみせるマーブルに、彼はマリーナの名誉を守るため昨夜チョコレートの中に毒を入れ彼女を永遠の眠りにつかせたと告白した。マリーナの部屋に入った3人は、しかし、そのチョコレートを飲まず、自ら毒を飲んで死んでいったマリーナの最後の姿を見出すのであった。
1-13. アガサ 愛の失踪事件
監督 マイケル・アプテッド
出演 ダスティン・ホフマン,
ヴァネッサ・レッドグレイヴ,
ティモシー・ダルトン,
ヘレン・モース,
トニー・ブリットン
1979年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画)
解説
イギリスの女流推理作家として著名なアガサ・クリスティの1926年の失踪事件を基に、その事件にまつわる人間模様を描く。製作はジャービス・アステアとガブリック・ロージー、監督はマイケル・アプテッド。キャサリン・タイナンの原作を基に彼女とアーサー・ホプクラフトが脚色。撮影はビットリオ・ストラーロ、音楽はジョニー・マンデル、編集はジム・クラーク、美術はサイモン・ホランド、製作デザインはシャーリー・ラッセルが各々担当。出演はダスティン・ホフマン、ヴァネッサ・レッドグレーブ、ティモシー・ダルトン、ヘレン・モース、トニー・ブリットン、ティモシー・ウェスト、セリア・グレゴリー、アラン・バデル、ポール・ブルーク、イボンヌ・ギランなど。
ストーリー
わが愛、わが友。アガサよりと彫りこまれたコップを夫のアーチー(ティモシー・ダルトン)に贈ろうと、アガサ(ヴァネッサ・レッドグレーブは用意したが、夫はそれには目もくれず、約束の時間に妻が遅れたことだけをなじった。その日は、彼女が新しく書き下した推理小説「アクロイド殺人事件」の出版宣伝のための昼食会が開かれる日なのだ。急いで家を出るとき、アーチーは、美しい女秘書ナンシー(セリア・グレゴリー)に仕事の指示を与えていたが、2人の仲が仕事を越えているのを、アガサは知っていた。昼食会は盛況で、客の中には、ロンドンの新聞にコラムをもつアメリカ人ウィーリー(ダスティン・ホフマン)や、町の新聞記者ジョン(ポール・ブルーク)もいたが、内気なアガサは、集まった人々への気持ちも、口ごもりがちだった。翌朝、彼女は、夫から思いがけない言葉を宣告された。秘書のナンシーと結婚したいというのだ。結婚生活12年目を向かえるアガサにとってそれは、あまりにも残酷なことだった。インタビューのためにクリスティ邸を訪れたウォーリーは、すげなくアーチーに追い返され、一方アガサは、ナンシーのハロゲイトの療養地でのプランを知り、1人車に乗った。谷間の村の中に乗りすてられたその車が発見されたのは、翌日のこと。さっそく、サリー警察のケンワード刑事(ティモシー・ウェスト)がクリスティ邸に尋問にくるが、アーチーは自分たち夫婦の仲が破綻の危機にあることを隠した。しかし、この事件は、あっという間に新聞の大見出しになった。その頃ハロゲイトのハイドロ・ホテルに来ていたアガサは、テレサ・ニール夫人と名のり、背骨の治療にきているイブリン(ヘレン・モース)という女性と親しくなり、彼女の紹介で、ロイヤル・バスの治療師ブレイスウェート夫人(イボンヌ・ギラン)とも親しくなった。アガサは、ナンシーが部屋を予約しているバレンシア・ホテルに電話し、まだ着いていないと知ると、ロンドン・タイムス新聞に奇妙な尋ね人広告を出した。南アフリカでなくなったテレサ・ニール夫人のお友達か親戚の方がおられましたらご連絡下さいその頃ウォーリーはアガサ探しに熱中し始めハロゲイトに向かっていた。ハイドロ・ホテルについた彼は、そこでアガサを見つけ、顔を知られていないのをさいわいに、彼女をホテルのダンス・ルームに誘い出すことに成功。メロディにのって踊る2人。しかし、踊りながらも、アガサは、夫の愛を奪った女への報復を考え続けていた。翌日、復讐のための道具を買いこみ、電気架線の初歩を学んだ。1人部屋に帰ったアガサは、声もなく涙を流し、やがて、心をきめたようにネジまわしで部屋のヒューズ・ボックスをあけた。翌朝、アガサはイブリンの声をよそおってブレイスウェート夫人に電話をかけ、身体の具合が悪いからすぐハイドロ・ホテルに来るようにと頼み、そのあと、今度はブレイスウェート夫人をよそおってナンシーに電話し、予約を受けていた電気治療の時間が変更になったからすぐにロイヤル・バスに来て欲しいと伝えた。アガサは、ブレイスウェート夫人がイブリンの部屋へ入るのを確認すると、ロイヤル・バスの彼女の治療室へ入り、ヒューズ・ボックスの中の電圧を操作し、ゆっくり電気椅子に身を埋めた。誰かが部屋のスイッチを入れればアガサは感電死する。計画通りナンシーが来た。しかし、ナンシーがスイッチを入れ、電気が流れはじめた直後、アガサを探していたウォーリーが飛び込みアガサの命を救った。こうして彼女の復讐は失敗に終わったのだった。
1-14. 逢びき(1945)
監督 デイヴィッド・リーン
出演 シリア・ジョンソン,
トレヴァー・ハワード,
スタンリー・ホロウェイ,
ジョイス・ケイリー,
シリル・レイモンド
1945年・イギリス ()
解説
映画演劇の両面にプロデューサーであり、作家であり、監督であり、俳優であるノエル・カワードが、自作の戯曲 「静物画」 を映画化したもので、監督にはイギリス映画界の若き偉材デイヴィッド・リーンが、「この愉快な種族」「大いなる遺産」 と同じく当り撮影は「ヘンリー五世(1945)」「余計者をまっ殺」 のロバート・クラスカーが指揮した。主演は、舞台女優で、映画にはシネギルド作品数本に出演したシリア・ジョンソンと舞台出身で、「星への道」 のトレヴァー・ハワードで、ヴェテラン喜劇俳優スタンリー・ホロウェイを筆頭にジョイス・ケイリー、シリル・レイモンド、イヴァーリー・グレッグ、マーガレット・バートンらが助演している。製作を担当しているアンソニー・ハヴェロック・アランとロナルド・ニームは監督リーンと共にシネギルド・プロを主宰している。
ストーリー
ローラは平凡な勤め人フレッド・ジェッソンの妻である。娘と息子と一人ずつ二人の子の母として、住宅ばかりの郊外に住んで、平ぼんな、しかし幸福な生活を送っている。彼女は毎週木曜日に、近くのミルフォードという町へ、朝から汽車で出かけ、一週間分の買物をし、本屋で本を取替え、簡単な昼食をとり、午後は映画を見物したりして、夕方の汽車で帰宅する習慣である。ある木曜日の夕方、目にすすが入ったのを、ミルフォード駅の喫茶室で一人の医師にとってもらった。その医者と次の木曜日にミルフォードの町で行き会った。その次の木曜日、ローラは昼食に行き、食堂でまた会った。こんでいたので同席して昼食を共にし、初めて自己紹介をし合った。彼はアレック・ハアヴィーという開業医で、ローラとはミルフォード駅から反対の方向の住宅地に住んでおり、木曜日毎にミルフォード病院に勤めている友人スチーヴン・リンがロンドンへ行くのでその代理にやって来るという。昼食後、アレックはひまだと言ってローラに映画をつき合ったが、この会合で二人は互に相手に何か心をひかれる思がして、駅で別れる時アレックは次の木曜日にぜひ会ってくれとたのむのだった。次の木曜日には、しかしローラは心待ちに待ったが彼は来なかった。会えないがわびしく、物足りぬ気持で汽車を待っていると、アレックはかけつけて、手術が手間どってぬけられなかった。次の木曜日にはぜひと言った。次の木曜日、映画がくだらぬので植物園を散歩しボートに乗る。そしてボートハウスで、二人は愛の告白をし合った。帰ると息子が頭にけがをしていた。ローラは神の戒めのような気がして自責の念にたえなかった。次の木曜日ローラはまた彼と会い、郊外にドライヴして愛を語った。アレックにさそわれ、リンのアパートで会うと、思いがけずリンが帰宅したので、彼女はくつじょくにたえず夜の町を歩きまわった。駅で彼は心配していた。彼も妻子ある身の自責にたえず、南アフリカ、ヨハネスブルグの病院に勤務することに決めたと言った。次の木曜日は最後の会合であった。別離の苦しさは二人の胸をしめつけ、また会う事もあるまいと思えば、ひとしお愛の思はつのる。ミルフォード駅の喫茶室で相対している時おしゃべりのドリーにローラは見つかり、気持をめちゃめちゃにさされる。アレックはだまって去った。自分の汽車を待ちながら、ローラは急行列車に投身したい衝動にかられるのをやっと思い止る。ドリーがしゃべるのを気分が悪いからと言ってだまってもらい、帰宅したフレッドは何も言わなかったが妻のやなみを同情してくれた。ローラはわれに返った心地であった。また夫と子供達との平和な生活にかえることが出来るだろう。
1-15. 野のユリ
監督 ラルフ・ネルソン
出演 シドニー・ポワチエ,
リリア・スカラ,
リザ・マン,
アイサ・クリノ,
フランセスカ・ジャービス
1963年・アメリカ (ユナイテッド・アーチスツ)
解説
ウィリアム・E・バレットの原作を「八十日間世界一周」 (アカデミー賞)のジェームズ・ポーが脚色、TV出身のラルフ・ネルソンが製作・演出したヒューマニズムドラマ。撮影は「風と共に去りぬ」 (アカデミー賞)のアーネスト・ホーラー、音楽は「マンハッタン物語」 のジェリー・ゴールドスミスが担当した。出演は「長い船団」 のシドニー・ポワチエ、TV「プレイハウス90」 のリリア・スカラ、フランセスカ・ジャービス、アイサ・クリノ、リザ・マン、パメラ・ブランチ、「ティファニーで朝食を」 のスタンリー・アダムスなど。
ストーリー
キャンプ用具を積み込んだステーション・ワゴンを運転して気楽な旅を続けている黒人ホーマー(シドニー・ポワチエ)はアリゾナ砂漠のはずれでエンストをおこし、荒地を耕す東独を亡命してきた、修道女たちとあった。修道女たちは、この荒地に教会を建てるという無謀な望みを持っていた。ホーマーは水を貰い、かわりに雨洩りの修理を申し出た。テントで眠っていたホーマーは、翌朝マリア院長(リリア・スカラ)にたたき起こされ、教会設立の準備を命じられた。しかし、マリア院長から渡されたのは、下手な教会のスケッチが1枚だけ。純真なマリアは、神様の導びきでホーマーが、自分たちのためにやってきたに違いないと思い込んでいたのだ。気のいいホーマーはマリア院長の熱意と断固たる信念に押しきられ、仕事を手伝うことになった。建築資財は修道女たちが集めることになった。ホーマーも、女たちに頼りにされて仕事が次第に面白くなっていった。しかし食事の粗末なことには、ホーマーも閉口し、村の建設会社で働き、その給料で食料品を買った。しかしマリア院長は、ホーマーが、資財より食料品を買いこむのが気にいらず、ついにホーマーと衝突し、ホーマーは怒って去っていった。それから何日目かの日曜日が来た。砂漠地帯を歩く修道女のもとに、遊びつかれたホーマーが帰ってきた。修道女たちは感動をもって彼をむかえた。心をいれかえたホーマーは月給で建築資財を買い、独力で教会を建てようとした。これを聞き知った建築会社の社長が助力をかってでた。マリア院長は双手をあげて歓迎した。ホーマーも1度は自尊心を傷つけられ、ムクれたものの、自分の指示の下に仕事がすすめられることに満足した。やがてこの友情と信頼にささえられて教会は完成した。修道女たちが、霊歌を歌うのを後に、ホーマーはステーション・ワゴンで静かに遠ざかっていった。
1-16. 栄光のル・マン
監督 リー・H・カッツィン
出演 スティーヴ・マックイーン,
ジークフリート・ラウヒ,
エルガ・アンデルセン,
ロナルド・ライヒフント,
Fred Haltiner
1971年・アメリカ (東和)
解説
パリの南西約 200キロの小都市ル・マンで開催される世界最大のカー・レースとして有名な“ル・マン24時間レース”を背景に“栄光”にすべてを注ぎ、スピードの極限に挑む男たちの壮烈なドラマ。製作はジャック・レディッシュ、監督はTV出身の新人リー・H・カッツィン、脚本はハリー・クライナー、撮影はロバート・ハウザーとルネ・ギッサール・ジュニアが各々担当。出演はスティーヴ・マックィーン、ジークフリート・ラウヒ、エルガ・アンデルセン、ロナルド・ライヒフント、リュック・メレンダ、そのほかレースの場面には38回ル・マン優勝者のリチャード・アットウッドなど十数人のプロ・レーサーが特別出演している。この映画に使われたレーシング・マシンは24台である。
ストーリー
アメリカの国際級プロ・レーサー、マイク・デラニー(スティーヴ・マックィーン)は“ル・マン24時間レース”出場のため、ポルシェを駆ってル・マンに向かっていた。金曜日、午前6時。とある寺院の前に一台のフェラーリを認めて中に入ったマイクは、そこに顔見知りの男女を見出した。レーサー、クロード・オーラック(リュック・メレンダ)とベルギーのグランプリ・レースで事故死したピエロ・ベルジェッティの妻モニク(エルガ・アンデルセン)である。この事故で、マイクも負傷していた。夜、世界各国から集まったレーサーたちは町のバーで最後のひとときを楽しんでいる。モニクを得意気にエスコートするオーラック。彼は不用意にも事故のことを口に出して、マイクと気まずくなってしまう。今度のレースでマイクが最もマークしているのはドイツ人エーリッヒ・ストーラー(ジークフリート・ラウヒ)である。彼のレースへの異常な執念、そして彼はフェラーリを運転するのだ。まさに宿命のライバルだ。いよいよ当日、午後3時51分、最後の点検が行われ、いま、午後4時、運命の旗は振られた。51台の色とりどりの車が一斉にうなりをあげ、もの凄い爆音を立ててスタートした。全長約13.5キロのサーキットを24時間という長時間、最高のテクニックと細心の注意力を駆使して乗り切るのである。トップを切るポルシェ、マイクのNo.20は2位、ストーラーのフェラーリNo.8は4位を走る。夜になって雨となった。こんどはストーラーがトップ。雨はしだいに激しさを増し、最悪のコンディションになってきた。レインタイヤを準備せよとの指示が出された。雷雨のような車の轟音と雨の中で、モニクは自分の現在いる世界が不思議なものに思えてくるのだった。夜明け近くマイクとストーラーのデッドヒートが展開される。難所のインディアナ・ポリス・コーナーでオーラックのフェラーリがコーナーの土手から転落した。その直後マイクの車が前方を走る車を避けようとして、大破してしまう。救急所で検査を受けるマイクの目にオーラックのつぶれたヘルメットがうつった。記者たちの無遠慮な質問を受けて当惑するモニクをマイクはそっと救い出してやるのだった。マネージャーの指示により、ピンチヒッターとして再びポルシェNo.20に乗ったマイクは、ストーラーたちの必死の妨害も巧みにかわしてついにトップに躍り出た−−。生命を賭け、男の可能性の限界に挑んだ長く苦しい24時間はいま、その幕を閉じた。
1-17. ブリット
監督 ピーター・イェーツ
出演 スティーヴ・マックイーン,
ロバート・ヴォーン,
ジャクリーン・ビセット,
サイモン・オークランド,
ドン・ゴードン
1968年・アメリカ (ワーナー)
解説
ロバート・L・パイクの原作を、アラン・R・トラストマンが脚色、イギリス演劇界の出身で、「太陽と遊ぼう」「大列車強盗団」 のピーター・イエーツが監督したアクション。撮影はウィリアム・A・フレイカー、音楽はラロ・シフリンが担当した。出演は 「華麗なる賭け」 のスティーヴ・マックィーン、「ナポレオン・ソロ」 シリーズのロバート・ヴォーン、「甘い暴走」 のジャックリーン・ビセットほか。制作はフィリップ・ダントニ。
ストーリー
やくざ者のジョニーは仲間を裏切り、200万ドルを持ち逃げした。その彼が目ざすはサンフランシスコ。少壮政治家チャルマース(ロバート・ヴォーン)が、もしジョニーが上院で証言台に立ってくれれば身柄を保護してやろうと確約してくれたからだ。しかしサンフランシスコにやって来たジョニーはニセ者だった。彼の本名はレニック。夫婦そろってのヨーロッパ旅行を報酬に身替わりになったのだ。そうとは知らず敏腕刑事ブリット(スティーブ・マックィーン)は、彼の護衛役をつとめた。だが、ある夜ブリットが恋人キャシー(ジャクリーン・ビゼット)に会いに行っている最中、ニセのジョニーは2人の男に射たれ重傷を負った。病院にかつぎこまれたが、そこでも、あやしげな男たちが、常につきまとう。チャルマースはブリットの失態を責めるが、何故かブリットはチャルマースの行動に疑問を抱く。政治的野心のためのなにかを……。医師の努力もむなしくニセのジョニーは死んだ。だがブリットは、彼がまだ生きていると見せかけて病院の外に運び出した。2人の殺し屋がブリットを追い、サンフランシスコの急坂道で、すさまじい追跡が展開。一方、チャルマースは、ブリットをこの事件から手をひかせようと懸命だった。だがブリットはひるまず事件の究明を続け、死んだジョニーはニセ者だったことを知った。そしてヨーロッパ旅行を楽しみにしていた彼の妻も殺されていた。彼女のカバンの中にはトラベル・チェックが入っていた。ブリットの勘がひらめく。本物のジョニーはヨーロッパへ行く!空港だ!広い夜の空港を逃走するジョニー。追うブリット。ついにロビーに追いつめ、拳銃が火を吹き、彼を捕まえたのである。やくざ者ジョニーの背後にあった巨大な権力に、ブリットは自分の職務のすべてを賭けたのである。
1-18. ゲッタウェイ(1972)
監督 サム・ペキンパー
出演 スティーヴ・マックイーン,
アリ・マッグロー,
ベン・ジョンソン,
サリー・ストラザーズ,
アル・レッティエリ
1972年・アメリカ (東和)
解説
「ワイルドバンチ」「わらの犬」 などの作品でバイオレンスの真髄を鮮明に捕らえたサム・ペキンパーが、「ジュニア・ボナー 華麗なる挑戦」 に続いて再びスティーヴ・マックィーンとコンビを組み、組織に追われる男と女が必死で逃亡する姿を描く。製作はデビッド、フォスター、ミッチェル・プロウアー、脚色は「生き残るヤツ」 のウォルター・ヒル、原作はジム・トンプソンの同名小説。撮影はルシエン・バラード、音楽はクインシー・ジョーンズ、編集はロバート・L・ウォルフが各々担当。出演はスティーヴ・マックィーン、アリ・マックグロー、ベン・ジョンソン、サリー・ストラザーズ、アル・レッティエリ、ボー・ホプキンス、ジョン・ブライソンなど。
ストーリー
テキサスのサンダースン刑務所からドク・マッコイ(スティーヴ・マックィーン)が出所した。銀行強盗の罪で10年の刑に服していたのだが、4年間服役したところで突然釈放になったのだ。この釈放はドクにとって1つの取引でもあった。彼は、地方政界の実力者ベニヨン(ベン・ジョンソン)を相手取り、出所と引き換えに町銀行を襲い、奪った金を山分けして保釈金代わりに払おうというのだ。ドクを、愛する妻キャロル(アリ・マックグロー)が待っていた。4年ぶりに味わう自由のうまさ!やがて銀行襲撃の綿密な計画が立てられ、用心深いベニヨンは2人の殺し屋、ルディ(アル・レッティエリ)とジャクソン(ボー・ホプキンズ)を送り込んできた。決行の朝、ドクはキャロルの運転する小型トラックに乗り込み、銀行前のマンホールの真上に停めると、地下にもぐり銀行に通じる電力源を切断した。ルディとジャクソンが拳銃を携えドクが金庫から札束をバッグにつめ込んでいく。襲撃計画は成功したかのように思えたとき、ジャクソンが守衛の1人を射殺してしまった。タイミングよく、ドクの仕掛けた時限爆弾が爆発し、混乱に乗じてドクとキャロル、ルディとジャクソンは別々に逃走した。その途中、ルディは足手まといのジャクソンを射殺し、車から放り出すと、落ち合いの場所に急行した。ドクは、ルディが金を1人じめしようとしていることを知り、一瞬早く彼の胸板をぶち抜いた。ドクはルディが動かなくなったのを見届けると、ベニヨンが待つ農場に向かった。その場でベニヨンは、自分のような政界のボスがたかだか一介の囚人の出所にわざわざ手を貸したのは、魅力的なキャロルがいたればこそ、といい、暗に彼女との情事をほのめかした。その時、車で待っていたはずのキャロルがいつの間にか近づき、やにわにベニヨンを射殺した。ダガ、ベニヨンの言葉がドクに与えたショックは大きかった。怒りと屈辱−−しかしいまのドクにはここを立ち去るしかなかった。車から列車に乗りついだ2人は駅のロッカーに金の入ったバッグを預けたが、鍵をすりかえられ、盗まれるというよきせぬアクシデントが起き、ドクの必死の探索で取り戻したものの、この1件でドクは指名手配の身となってしまう。一方、ドクに撃たれたルディは防弾チョッキのおかげで1命を取りとめ付近の獣医クリトンを脅迫して彼を追うためエル・パソに向かった。その頃“経理士”とあだ名されるベニヨンの弟(ジョン・ブライソン)もドクの行方を追っていた。指名手配になっていることを知ったドクはショットガンを買い求め、パトカーの追撃をかわしながらエル・パソのホテルに到着した。しかしホテルには一足先に着いたルディが見張っており、さらに“経理士”にも連絡がいき渡っていた。そんなことは知らないドクとキャロルは高飛びの用意もすませ、しばしの安らぎをみいだしていた。だがいつもと違うホテルの雰囲気に敏感に反応したドクは廊下にひそんでいたルディを殴り倒した。折しも“経理士”らがホテルに到着し、ドクのショットガンが火を吹くのを皮切りに、凄まじい銃撃戦が始まった。1人、1人、ベニヨンの一味が倒れていく。エレベーターからドクを狙った“経理士”も、逆にケーブルを切断され、床に叩きつけられた。窓伝いに逃げるドクとキャロルを、意識の回復したルディが狙った。だがドクは今度こそ止めの1発をルディに見舞った。無事落ちのびた2人は通りがかりの老人から小型トラックを3万ドルで買い取ると、国境を超えて南へ向かった。
1-19. シンシナティキッド
監督 ノーマン・ジュイソン
出演 スティーヴ・マックイーン,
エドワード・G・ロビンソン,
アン・マーグレット,
カール・マルデン,
チューズデイ・ウェルド
1965年・アメリカ (MGM)
解説
リチャード・ジェサップの同名小説を、リング・ラードナー・ジュニアと、「博士の異常な愛情」 のテリー・サザーンが共同で脚色、「スリルのすべて」 のノーマン・ジュイソンが監督したギャンブラーのドラマ。撮影は「36時間」 のフィリップ・ラスロップ、音楽は「泥棒を消せ」 のラロ・シフリンが担当した。出演は「大脱走」 のスティーヴ・マックィーン、「シャイアン」 のカール・マルデン、「テスト・ハネムーン」 のチューズデイ・ウェルド、ほかにリップ・トーン、ジョーン・ブロンデル、ジェフ・コーリーなど。「いそしぎ」 のマーティン・ランソホフが製作した。
ストーリー
シンシナティ・キッド(スティーヴ・マックィーン)は渡り者の賭博師。ニューオーリンズの町の小さな賭け金稼ぎに嫌気がさしたころ、ポーカーの名人ランシー(エドワード・G・ロビンソン)がやって来た。キッドはいつか、ランシーと手合わせを、と考えていたので、この社会の長老格シューター(カール・マルデン)にその機会を頼んだ。シューターはかつて血気の勝負師、キッドの自信過剰をたしなめたが結局、2人は対戦した。さて、キッドにはクリスチャン(チューズデイ・ウェルド)という情婦があった。彼女はキッドを深く愛している。が、彼女はもっと安定した生活、家庭、そして子供たちを欲していた。キッドの方は、彼女を愛してはいたが、シューターの妻メルバ(アン・マーグレット)に求められ、その魅力にとりつかれるような、曖昧さも持っていた。大手合わせは全国から人を集めて大きな興奮のうちにスタート。1人ずつ脱落して最後に残ったランシーとキッドの決戦−−。キッドは敗れた。完全に孤独だった。だがクリスチャンだけが、彼を暖かく迎えた。彼女は彼が勝ったのか負けたのかも知らなかった。賭博師の女の、暗黙のルールで、カードのことに関しては一切係らないのだ。彼が文なしだとわかると、彼女は持ち金のすべてを彼に渡した。12ドル。キッドに生気がよみがえる。いつもの元気な様子で、じっと見守った。クリスチャンに背を向けながらいう「アパートに帰ってろよ。そこで会おう。」
1-20. 華麗なる賭け
監督 ノーマン・ジュイソン
出演 スティーヴ・マックイーン,
フェイ・ダナウェイ,
ポール・バーク,
ジャック・ウェストン,
ヤフェット・コットー
1968年・アメリカ (ユナイト)
解説
アラン・R・トラストマンの脚本を、アカデミー受賞作「夜の大捜査線」 のノーマン・ジュイソンが製作・監督したアクション・コメディ。撮影はハスケル・ウェクスラー、音楽はミシェル・ルグランが担当している。出演は「砲艦サンパブロ」 のスティーヴ・マックィーン、「俺たちに明日はない」 のフェイ・ダナウェイ、「南海ピンク作戦」 のポール・バーク、「シンシナティキッド」 のジャック・ウェストン、ヤフェット・コットーなど。
ストーリー
トーマス・クラウン(スティーヴ・マックィーン)は、金持ちで、ハンサムで、洗練された紳士だ。が、実は彼は、泥棒にかけては異常な才能と情熱の持主。ある日、彼はかねて計画中の一大銀行強盗を実行した。エーブはじめ4人の部下に指令を送り、自分のビルの前の銀行を襲わせた。計画は見事成功、クラウンは奪った金に自分の金を足して、ジュネーブの銀行に預金した。ボストン警察のマローン刑事(ポール・バーク)は、事件調査に乗り出したが、手がかり一つ得られなかった。一方、被害を受けた銀行が加入していた保険会社のマクドナルドは、犯罪追及に特別な熱意を持つビッキー(フェイ・ダナウェイ)に調査を命じた。ビッキーはマローン刑事と協力しながら、自分自身でも調査を行ない、次第に実業家クラウンがあやしいとにらむようになった。そして、ある美術品の競売会で、目指すクラウンに近付き、自分は銀行強盗の犯人を調査していると名乗りをあげ、クラウンの反応をみたが、クラウンは一向に動じなかった。逆にクラウンは、ビッキーの挑戦を受けてたつため、彼女と交際することに決めた。こうして、あたかも恋愛中のように見せかけながら、クラウンとビッキーは、奇妙なつきあいを始めた。が、クラウンの証拠はなかなかつかめず、そのうち、ビッキーは疑惑を持ちながらも、クラウンに恋するようになった。その頃、クラウンは、もう1度最後の冒険を試みて、南米に逃げる決心をし、それをビッキーに打ち明け、共に南米に行こうと誘った。銀行強盗は、前の時と同じように実行され、成功したかに見えた。が、クラウンの車が、盗んだ金を部下から受け取るべき地点に来たとき、そこには、ビッキーやマローン刑事が、多数の警察を従えて待ちかまえていた。クラウンの運もこれまでとみえた。ビッキーは車に近付いた。が意外、車に乗っていたのは別の男だった。男はクラウンからのメッセージをビッキーに渡した。南米へ後から来るように、伝言にはそうあった。犯人を逃したくやしさと、恋人が警察の手に渡らなかったのとで、ビッキーは複雑な気持ちだった。その頃、南米へのジェット機上、クラウンはふかぶかと座席にかけていたのだった。
1-21. トム・ホーン
監督 ウィリアム・ウィヤード
出演 スティーヴ・マックイーン,
リンダ・エヴァンス,
リチャード・ファーンズワース,
ビリー・グリーン・ブッシュ,
スリム・ピケンズ
1979年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画)
解説
19世紀末の西部を舞台に、その名を轟かせた名うてのガンマン、トム・ホーンの厳しくも孤独な生涯を描く。製作総指揮はスティーヴ・マックィーン、製作はフレッド・ワイントローブ、監督はウィリアム・ウィヤード。トム・ホーン自らが書いた自伝を基にトーマス・マックグァーンとバッド・シュレイクが脚色。撮影はジョン・A・アロンゾ、音楽はアーネスト・ゴールド、編集はジョージ・グレンヴィル、特殊効果はフィル・コーレィが各々担当。出演はスティーヴ・マックィーン、リンダ・エヴァンス、リチャード・ファーンズワースワース、ビリー・グリーン・ブッシュ、スリム・ピケンズなど。
ストーリー
バウンティ・ハンターとして西部にその名をはせる早射ちガンマン、トム・ホーン(スティーヴ・マックィーン)は、ワイオミング州のハガービルに着くと、早速、大牧場主のジョン・コーブル(リチャード・ファーンズワースワース)の訪問をうけた。コーブルは、ホーンをワイオミングの大牧場主たちに引きあわせ、彼らがこの地方から牛泥棒を一掃するためにホーンをやといたがっていることを打ち明けた。ホーンは、次々に牛泥棒を退治し、たちまちワイオミングの人々の評判になったが、大牧場主たち以外の人間は、彼を冷血漢の殺し屋として見るようになる。やがて、ホーンのところに連邦保安官のジョー(ビリー・グリーン・ブッシュ)という男が現われ、彼に近づいた。ジョーは内心、評判になる一方のホーンを嫉み、何とか名声を逆転させたいと願っていたのだ。ある朝、ホーンは4人の牛泥棒を不意打ちにしたが、4人目の男はまだ少年だったので見逃した。ホーンには、女教師のグレンドレーネ・キンメル(リンダ・エヴァンス)という東洋人とドイツ人の混血の女教師の恋人がいたが、彼女はホーンのことを暖かく見守っていた。そのうち、大牧場主のなかにも、ホーンを非情な男とみる者が現われ、ホーンの立場は孤立する。ある日、ハガービルの町で、まだ15歳になるかならない小牧場主の息子が惨殺された。調査の結果、ホーン愛用の銃と同じ口径の銃によるものだった。この事件で、ジョーはまんまとホーンをワナにはめ、事件の噂を世間に広めた。町の保安官が、7人の副保安官をひき連れて、バーで酒を飲んでいたホーンを捕えに来た。ホーンは最後につぶやいた。「俺はあの少年を殺さなかった……」
1-22. パピヨン
監督 フランクリン・J・シャフナー
出演 スティーヴ・マックイーン,
ダスティン・ホフマン,
ロバート・デマン,
ウッドロー・パーフリー,
ドン・ゴードン
1973年・フランス (東和)
解説
胸に蝶の刺青をしているところから“パピヨン”と呼ばれたアンリ・シャリエールが一九三一年、無実の罪で終身重労働を宣告され、南米仏領ギアナの刑務所に送られたが、数度に渡る脱獄を試みたのち、ベネズエラの市民権を得たという数奇な体験を綴った同名小説の映画化。製作は「リスボン特急」 のロベール・ドルフマンと「パットン大戦車軍団」 のフランクリン・J・シャフナー、製作総指揮はテッド・リッチモンド、監督はフランクリン・J・シャフナー、脚本は「ダラスの熱い日」 のダルトン・トランボとロレンツォ・センプル・ジュニア、撮影はフレッド・キーネカンプ、音楽はジェリー・ゴールドスミス、編集はロバート・スウィンクが各々担当。出演はスティーブ・マックイーン、ダスティン・ホフマン、ロバート・デマン、ウッドロー・パーフリー、ドン・ゴードン、アンソニー・ザービ、ヴィクター・ジョリー、ラトナ・アッサン、ウィリアム・スミザーズ、バーバラ・モリソン、ドン・ハンマーなど。日本語版監修は清水俊二。テクニカラー、パナビジョン、スーパー・シネラマ。
ストーリー
胸に彫られた蝶の刺青があるところから、パピヨン(S・マックイーン)と呼ばれた男が、大勢の囚人と共にフランスの刑務所から、南米仏領ギアナの監獄に送られたのは肌寒い夜明けのことだった。罪名は殺人だが、本当にやったのは金庫破りにすぎない。国籍剥奪の上、二度と生きては帰れぬ“生き腐れの道”へ追放されるのは納得できなかった。灼熱の海を渡る船中で、パピヨンはルイ・ドガ(D・ホフマン)を知った。フランス中を混乱させた彼の罪状は国防債券偽造。パピヨンは、脱走に必要な金を工面するために、ドガの金を狙う囚人から彼の生命を守ることを約束する。夜蔭に乗じてドガを襲った二人の男をナイフで仕末して、二人の仲は深まった。ギアナに到着して、サン・ローランの監獄に放り込まれた二人は、獄吏の買収に失敗し、ジャングルの奥の強制労働キャンプに送られる。ワニが棲む沼地での材木切り出し、粗悪なねぐら。囚人たちは次々に死んでいった。数日後、ヘマをして看守に殴られるドガをかばったパピヨンは、銃弾を浴びせられ、川へ飛び込んで逃亡を計る。だが、無計画だったために捕まり、二年間の島送りとなった。サン・ローラン西方の沖合いにあるサン・ジョセフ島の重禁固監獄は“人喰い牢”と呼ばれる恐ろしい独房だ。吸血コウモリとムカデの住みかで天井は鉄格子。陽はまったくあたらず、ひとかけらのパンとスープしかあたえられず、囚人たちは次々に死んでいく、暗黒の墓場だ。ムカデ、ゴキブリをスープに入れて、餓死寸前のところでパピヨンは二年の刑を終えることができた。サン・ローランに戻ったパピヨンは、ドガの助けを借りて、クルジオ(W・パーフリー)、ホモのマチュレット(R・デマン)と共に脱獄を試みた。クルジオは捕えられたものの、三人は遂に自由の世界に降りたった。ジャルグルでは、奇怪な刺青の男に救われ、さらに、ハンセン病患者の首領トゥーサン(A・ザーブ)にヨットを与えてもらい、コロンビアとおぼしき海岸にヨットをつけることができた。しかし、運悪くパトロール隊と遭遇し、パピヨンはジャングルに舞い込んだ。ドガは捕えられ、マチュレットは銃弾に倒れ、パピヨンもパトロール隊が放った原住民の執拗な追跡に逃げおおせず、毒矢を射られて断崖から激流に落下していった。意識を取り戻したパピヨンは、インディオ集落で手厚い看護を受けた。ゾライマ(R・アッサン)という美しい娘とのロマンスも芽ばえる平和なひとときだったが、酋長の胸に自分と同じ蝶の刺青を彫ってやった翌朝、インディオたちはパピヨンに大粒の真珠を残し、忽然と姿を消した。一たんは修道院に身をひそめたものの、院長の通告で捕えられ、パピヨンの苦難の逃走は失敗に終った。五年後、サン・ジョセフ島での狐独な独房生活から解放されたパピヨンの髪は真白になっていた。そして、悪魔島へ。この島では手錠も足枷もなかったが、周囲は断崖で激流とサメが押し寄せ、脱出はとうてい不可能だった。かつてフランス中を騒然とさせたドレフェスも、そしてドガもこの島に流されていた。ドガは、もはや祖国に帰る夢をなくし、孤独だが平和な日々に満足していた。だがパピヨンは違う。脱出のチャンスをうかがう彼は、試みにココナッツの実を海に投下し波の動きを調べる。そして、断崖の下の入江に押し寄せる波は七つあり、その七つ目の波に乗れば沖へ出られることを発見した。このパピヨンの脱出案にドガも心を動かされたが、ドタン場で決意が崩れた。抱きあって無言の別れを告げる二人。ココナッツの実をつめた包みを七つ目の波に落下させ、パピヨンは絶崖から身をひるがえした。見送るドガの眼には熱い涙がとめどもなく流れていた……。
1-23. 大脱走
監督 ジョン・スタージェス
出演 スティーヴ・マックイーン,
ジェームズ・ガーナー,
リチャード・アッテンボロー,
ジェームズ・ドナルド,
チャールズ・ブロンソン
1963年・アメリカ (ユナイテッド・アーチスツ)
解説
第二次大戦中、ドイツの第3捕虜収容所に収容された連合軍将校たちが大脱走を敢行した史実を基にした脱走劇。スティーブ・マックィーンやジェームズ・ガーナーなど、数々の名優たちによる演技合戦が見もの。2004年にニュープリントでリバイバル公開。
ストーリー
新たに作られたドイツの北部第3捕虜収容所に、札つきの脱走常習者・連合軍空軍将校たちが運び込まれた。しかし早くも“心臓男”と異名をとったヒルツ(スティーブ・マックィーン)は鉄条網を調べ始めるし、ヘンドレー(ジェームズ・ガーナー)はベンチをトラックから盗み出す始末だ。まもなく、ビッグXと呼ばれる空軍中隊長シリル(リチャード・アッテンボー)が入ると、大規模な脱走計画が立てられた。まず、森へ抜ける数百フィートのトンネルが同時に掘り始められた。それはトム・ディックハリーと名付けられた。全員250名が逃げ出すという企みだ。アメリカ独立記念日トムが発覚してつぶされた。が、ほかの2本は掘り続けられた。しかし、あいにくなことに掘り出し口が看取小屋の近くだったため、脱走計画は水泡に帰し、逃げのびたのはクニー(チャールズ・ブロンソン)と、彼の相手ウィリイだけであった。激怒した収容所ルーゲル大佐が、脱走者50名を射殺したと威嚇した。やがて、“勇ましい脱走者”の生存者を乗せたトラックが到着したとき、ゲシュタポの車が収容所の入口に止まり、ルーゲルは重大過失責任で逮捕された。かくてドイツ軍撹乱という彼らの大使命は果たされたが、幾多の尊い生命が失われていった。再び収容所に静けさが訪れたが、ヒルツやヘンドレイは相変わらず逃亡計画を練りあちらこちらでその調査が始まっていた。
1-24. 砲艦サンパブロ
監督 ロバート・ワイズ
出演 スティーヴ・マックイーン,
リチャード・アッテンボロー,
リチャード・クレンナ,
キャンディス・バーゲン,
マラヤット・アンドリアン
1966年・アメリカ (20世紀フォックス映画)
解説
1942年にベスト・セラーとなったリチャード・マッケナの小説「サンパブロ号乗組員」を原作に、ロバート・アンダーソンが脚色、「サウンド・オブ・ミュージック」 のロバート・ワイズが製作・監督した。撮影は「荒野の悪魔」 のジョー・マクドナルド、音楽はジェリー・ゴールドスミス。出演は「ネバダ・スミス」 のスティーヴ・マックィーン、「グループ」 のキャンディス・バーゲン、「飛べ!フェニックス」 のリチャード・アッテンボローのほかリチャード・クレンナ、マラヤット・アンドリアン、マコ(岩松信)など。
ストーリー
1926年。中国統一を夢みる中国人の排外思想が激しくなり、デモが暴徒と化していた。列国は揚子江沿岸の権益と人命財産を守るため艦艇を出動させていたが、アメリカの砲艦サンパブロ号もその1つであった。ある日その砲艦にホルマン(スティーヴ・マックィーン)という1等機関兵が赴任して来た。彼は旅の途中、伝道学校の教師としてアメリカからはるばるやって来た美しい女性シャーリー(キャンディス・バーゲン)と親しくなった。そして彼女の魅力にひかれたが、そのまま別れてサンパブロ号の一員となったのである。彼は意外にも砲艦が中国人の支配下にあり、コリンズ艦長(リチャード・クレンナ)でさえままならぬ状態にいることを知り、機関室だけでも自分が責任を持とうとしたが、中国人乗組員は彼に非難の目を向け、それを阻止した。ホルマンが艦内で親しくなったのはフレンチー(リチャード・アッテンボロー)だけで、ふたりはよく一緒に上陸しては酒場へ出かけた。フレンチーは酒場の女メイリー(マラヤット・アンドリアン)が好きになり、何とか彼女を見受けしたいと考えた。そんな時揚子江沿岸の事態が急に悪化しアメリカ宣教師ジェームソンが阿片を栽培した罪で国民軍に捕らえられた。アメリカ側と中国側との折衝がなって、彼は許されたが伝道団の人々は軍に保護されることを拒絶した。艦は彼らを残し上海へ引揚げることになった。一方フレンチーもホルマンの協力でライバルたちを一蹴し、メイリーと結婚した。いよいよ中国民の示威運動が激烈になり、サンパブロ号もついに動けなくなってしまった。何カ月もそんな状態が続いた。暴徒の手は身重のメイリーの上にも及び彼女は空しく死んでいった。そして蒋介石が南京を占拠、米海兵隊の上海上陸の報が入ると、コリンズ艦長は名誉回復をせんものと宣教師たちの救出に向かった。しかし団長のジェームソンは伝道団は絶対中立だと主張して動かなかった。激しい戦闘のなかでコリンズ艦長は戦死し、ホルマンはひとり最後まで踏みとどまり、シャーリーたちを艦内に避難させた。そして彼は敵弾をうけて栄光の死をとげた。
1-25. タワーリング・インフェルノ 
監督 アーウィン・アレン
出演 スティーヴ・マックイーン,
ポール・ニューマン,
ウィリアム・ホールデン,
フェイ・ダナウェイ,
フレッド・アステア
1974年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画=20世紀フォックス) 166分
解説
サンフランシスコにそびえ立つ地上138階の超高層ビルの落成式の日、発電機の故障から発火、たちまちビルは炎の地獄と化した。製作はアーウィン・アレン、共同製作はシドニー・マーシャル、監督はジョン・ギラーミン、アクション・シークエンス監督はアーウィン・アレン、脚本はスターリング・シリファント、原作はリチャード・マーティン・スターンの「ザ・タワー」 、トーマス・N・スコーティアとフランク・M・ロビンソン共著の「ザ・グラス・インフェルノ」 、撮影はフレッド・コーネカンプ、アクション・シークエンス監督はジョセフ・バイロック、音楽はジョン・ウィリアムス(2)、編集はハロルド・クレスとカール・クレスが各々担当。出演はポール・ニューマン、スティーヴ・マックィーン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレークリー、リチャード・チェンバレン、ジェニファー・ジョーンズ、O・J・シンプソン、ロバート・ヴォーン、ロバート・ワグナー、スーザン・フランネリー、オーマン・バートンなど。
ストーリー
サンフランシスコの空にそびえ立つ138階建ての世界一高い超高層ビル“グラス・タワー”が落成の日を迎えた。設計者のダグ・ロバーツ(ポール・ニューマン)とオーナーのジム・ダンカン(ウィリアム・ホールデン)は、屋上に立って眼下にひろがる市の光景を見下ろしていた。ロバーツは疲れていた。一刻も早くコンクリートの大都会からのがれ出て、大自然のふところに飛び込みたかった。工事主任のギディングス(ノーマン・バートン)と打合わせをすませたロバーツは婚約者のスーザン・フランクリン(フェイ・ダナウェイ)と久しぶりに二人だけの時間をもった。惨事は、そのときすでに始まっていた。“グラス・タワー”の地下室にある発電機が故障したため主任技師のキャラハンが予備の発電機を始動させたとたんショートし、81階にある物置室の配線盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が発動機のマットをくすぶらせ始めたのだ。保安主任ハリー・ジャーニガン(O・J・シンプソン)の緊急報告を受けたロバーツは配線工事が自分の設計通りに行われていないのに憤然として、落成式の一時中止をダンカン企業の広報部長ダン・ビグロー(ロバート・ワグナー)に申し入れたが、ダンカンは拒絶した。しかしそのとき81階では火が大きく拡がりはじめていたのだ。ロバーツはダンカンの義理の息子であるロジャー・シモンズ(リチャード・チェンバレン)に会い、ビルの配線工事を担当した彼の配慮不足を責めたが、あとの祭りだった。一方、火災の発生をまだ知らない“グラス・タワー”の借間人たちは落成式パーティの準備に浮き足立っていた。1階から80階までがオフィス用、それから上は住宅用に作られたこのビルには、すでにさまざまな人が住みついて、たとえば90階のハーリー・クレイボーン(フレッド・アステア)の職業は株専門のサギ師だ。彼はおなじ階に住む富豪未亡人リゾレット・ミューラー(ジェニファー・ジョーンス)に早くも眼をつけ、今夜のパーティにエスコートし、うまく話をまとめて一儲けしようとしていた。外部からの招待客もそうそうたる顔ぶれで、上院議員ゲイリー・パーカー(ロバート・ヴォーン)、サンフランシスコ市長ロバート・ラムゼイなどがいた。入口のリボンが市長の手によって切られると、人々は135階のプロムナード・ルームへ直行し、ビルの全てのライトがともされ“グラス・タワー”の全容は夜空にクッキリとあらわれた。だが81階の物置室から出火した火は拡がり、ロバーツは消防署に急報した。連絡を受けた消火隊は隊長のマイケル・オハラハン(スティーヴ・マックィーン)の統率のもと、ほどなくビルに到着した。彼はただちにロバーツと“グラス・タワー”の設計図を検討した上、79階に司令センターを設置、ダンカンに緊急避難を令じた。81階の火が他に移り始めてエレベーターにも危険が迫っていることを察知したオハラハンは展望エレベーターを利用するよう令じたがすでに大混乱が始まっていた。地上からの救援だけでは間に合わぬことを知ると、オハラハンは海軍のヘリコプターに空からの救援を依頼したが、強風のためビルに近づくことができず、かろうじて近づいた一機もビルに激突して炎上した。“グラス・タワー”は今や完全にひとつの巨大な溶鉱炉と化した。隣りのビルからのワイヤーの救命籠作戦もロジャー・シモンズやパーカー上院議員の犠牲者を出し、いきずまっていた。あと15分で火がプロムナード・ルームに届くというとき、耐火服に身をかためたオハラハンはヘリで屋上にたどりつくと、ロバーツと協力してプロムナード・ルームのちょうど真上にある巨大な貯水槽を一挙に爆破、放水させることにした。百万ガロンに近い水の奔流で、執拗に攻めのぼってくる炎を消しさろうというのだ。ほとばしる水力に押し流されて死ぬ者も出たが、猛威をふるっていた炎はついにおさまった。
1-26. シシリアン(1969)
監督 アンリ・ヴェルヌイユ
出演 ジャン・ギャバン,
アラン・ドロン,
リノ・ヴァンチュラ,
イリーナ・デミック,
アメディオ・ナザーリ
1969年・フランス (20世紀フォックス)
解説
シシリーの秘密結社マフィアの犯罪をめぐって展開されるフィルム・ノワール(暗黒映画)。「ダンケルク」 のジャック・ストラウスが製作を担当。監督は「サン・セバスチャンの攻防」 のアンリ・ヴェルヌイユ。オーギュスト・ル・ブルトンの原作を、「オー!」 のジョゼ・ジョヴァンニ、ピエール・ペルグリ、アンリ・ヴェルヌイユが共同脚色。撮影は「大反撃」 のアンリ・ドカエ、音楽は、「ウエスタン」 のエンニオ・モリコーネが担当。出演は「パリ大捜査網」 のジャン・ギャバン、「ジェフ」 のアラン・ドロン、「ベラクルスの男」 のリノ・ヴァンチュラ、「天使のいたずら」 のイリーナ・デミック、「オー!」 のシドニー・チャップリン、「雨あがりの天使」 のカレン・ブランゲルノン、アメディオ・ナザーリ、マルク・ポレル、イブ・ルフェーブルなど。
ストーリー
パリに住むマフィアの顔役、ビットリオ・マナレーゼ(G・ギャバン)は五月の蝿と異名をとる、殺し屋サーテット(A・ドロン)を、獄中から救出する計画を立てていた。彼から送られた莫大な値打のスタンプ・コレクションに対する返礼であった。裁判所で、ビットリオの二人の息子、アルド(Y・ルフェーブル)とセルジオ(M・ポレル)に電気ドリルを渡されたサーテットは、護送車で送られる途中、アルドの妻ジャンヌ(I・デミック)の助けをかりて逃走に成功。一年ほど前にル・ゴフ警部(L・バンチュラ)に逮捕されて以来、久しぶりに自由を得たのだった。その後しばらくの間、ビットリオにかくまわれていたサーテットはジャンヌと人知れず愛し合うようになっていた。やがてサーテットは、獄中仲間から手に入れた宝石強奪の仕事の話を、ビットリオにもちかけた。心動かされた彼は、ニューヨークのマフィアのボスであるトニー・ニコシア(A・ナザリ)に助力をあおぐことにした。その結果、パリからニューヨークへ宝石を運ぶ飛行機を襲うことに決められた。当日、ビットリオ、アルド、セルジオ、それにサーテットが問題の飛行機に乗込み、何億ドルという宝石を略奪してしまった。仕事が終った後、南米へずらかる予定のサーテツトをニューヨークに残し、ビットリオたちはパリへ戻って来た。そこでシシリーへ帰る支度をしていたビットリオは、孫の口から、サーテットとジャンヌに浮気の事実があったことを聞いた。シシリー人の面目を汚された彼は、ジャンヌともども殺そうと思いサーテットを呼び戻すべく、トニーに工作を依頼した。しかしジャンヌの密告をうけた妹から自分が狙われているということを聞いたサーテットは、アルドとセルジオが待機するオルリーには、降り立たなかった。逆にこの二人は、サーテットの妹にかけられたジャンヌの電話を傍受していたル・ゴフ警部に逮捕されてしまった。このことをサーテットから聞いたビットリオは、パリ郊外で分前を払うとサーテットに伝え、ジャンヌをつれてその場に出かけた。殺気をはらんで向い合う両雄。最初に火を吹いたビットリオの銃が、サーテットの身変りになったジャンヌを血にそめた。そして、つづけざま、サーテットの身体に、弾丸がぶちこまれた。二人の死骸を残し、戻って来たビットリオ。しかし、そこには、ル・ゴフが顔役の帰りを待ち受けていた。
1-27. 評決
監督 シドニー・ルメット
出演 ポール・ニューマン,
シャーロット・ランプリング,
ジャック・ウォーデン,
ジェームズ・メイソン,
ミロ・オシー
1982年・アメリカ (20世紀フォックス)
解説
ボストンの病院で起こった不正事件をめぐる裁判をきっかけに、教会と法曹界を相手に正義を貫こうと体を張る中年弁護士の、自らの立ち直りを賭けた必死の姿を描く。エクゼクティブ・プロデューサーはバート・ハリス、製作は「JAWS・ジョーズ」 のリチャード・D・ザナックとデイヴィッド・ブラウン、監督は「プリンス・オブ・シティ」 のシドニー・ルメット。バリー・リードのベストセラー小説を基に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」 のデイヴィッド・マメットが脚色。撮影は「プリンス・オブ・シティ」 のアンジェイ・バートコウィアク、音楽はジョニー・マンデル、編集はピーター・フランク、美術はジョン・キャサーダ、コスチューム・デザイナーはアンナ・ヒル・ジョンストンが各々担当。出演はポール・ニューマン、シャーロット・ランプリング、ジャック・ウォーデン、ジェームズ・メイスン、ミロ・オシア、エドワード・ビンズ、ジュリー・ボヴァッソ、リンゼイ・クルーズなど。
ストーリー
フランク・ギャルヴィン(ポール・ニューマン)は、弁護士だが、昼間から酒を飲み、新聞の死亡欄で係争問題が起こりそうな事故死を調べては、その葬式にもぐり込み名刺を置いてくるという荒れた生活を送っていた。昔の彼は違っていた。一流大学の法科を主席で卒業し、権威ある法律事務所に勤務するようになった彼は、すぐにボスの娘と結婚しバラ色のエリート・コースを歩んでいた。それが先輩の不正事件に捲き込まれ、彼が買収工作の罪をきせられ逮捕されるという事態に陥ってしまった。クビになり妻とは離婚、全てを失った彼は、そのまま転落の一路を進んでいった。よき理解者の老弁護士ミッキー(ジャック・ウォーデン)ですら、今のギャルヴィンには手を焼いていた。そのミッキーが、ギャルヴィンにある事件をもってきた。その事件とは、出産で入院した女性が、麻酔処置のミスで植物人間になってしまったという、医療ミス事件だった。披害者の姉夫婦が、その病院、聖キャサリン病院と、担当の医師2人を訴えたのであった。原告側の証人である大病院の麻酔科の権威、グルーバーに面会し、完全な医師のミスであることを確信したギャルヴィンは、廃人となったデボラの不幸な姿を見て、ショックを受けると同時に、これまでにない怒りを感じるのだった。訴えられた聖キャサリン病院は、カソリック教会の経営で病院の評判が傷つくことを恐れたブロフィ司教(エドワード・ビンズ)は、ギャルヴィンに示談を申し出た。補償金頷は21万ドル。この仕事に執念を燃やしはじめていたギャルヴィンは、この大金を蹴った。事件は法廷にもちこまれることになり、教会側に雇われた被告側弁護士コンキャノン(ジェームズ・メイスン)が動き出した。ある夜、ギャルヴィンは、行きつけの酒場で、謎めいた範囲気をもつローラ(シャーロット・ランプリング)という美しい女と知り合った。離婚して今は独身という彼女を夕食に誘った彼は、その日ギャルヴィンのアパートで一夜を明かした。数日後、判事のホイル(ミロ・オシア)が、示談解決の余地はないかと相談を持ちかけるが、話し合いがこじれ、ギャルヴィンはミーロに悪い印象を与えた。そんなころ、ギャルヴィンにとって一大事態が発生した。彼の最大の頼みである重要証人のグルーバー医師が、コンキャノンの工作で寝返りをうち、何処かに姿を消してしまったのだ。今さら示談をむし返すことは不可能に近い。窮地に追い込まれた彼の唯一の支えとなったのはローラだった。有利の状況が見出せぬまま開廷の日が来てしまう。事件の焦点は、患者デボラが、なぜ、麻酔マスクの中で嘔吐し、そのために一時的に窒息死した状態になり脳障害を生ずるに至ったかという点にあった。患者が麻酔処置を受ける1時間以内に食事をした場合ならこの種の事故が起こりうる。しかし当夜のカルテには、患者が食事を取ったのは9時間前と示されていた。これなら麻酔処置の過失とはいえない。ギャルヴィンの最後の望みは、なぜか一切の証言をも拒否している当夜の看護婦ルーニー(ジュリー・ボヴァッソ)をくどき落とすことだった。しかし、ルーニーへのアプローチは、すべてコンキャノンに洩れていた。彼は常にギャルヴィンより先回りをしているのだ。誰かが情報を流している…。やがてギャルヴィンは、ルーニーが、当夜カルテに食事時間を書き込み2週間前に病院をやめている看護婦ケイトリン(リンゼイ・クルーズ)をかばっていたことをつきとめた。彼は、ニューヨークにいるケイトリンの居所を探し出しニューヨークに飛んだ。そのころ、コンキャノンの部下としてスパイしていたのがローラであったことを、ミッキーがつきとめた。それを知り愕然とするギャルヴィン。しかし、自分の行動を恥じ、今は真に彼を愛していると告白するローラ。翌日の法廷ではケイトリンが登場し、カルテの数字1を9に書き直したという決定的な証言を発した。ギャルヴィンは勝った。裁判にも自分にも…。
1-28. 知りすぎていた男
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェームズ・スチュアート,
ドリス・デイ,
ブレンダ・デ・バンジー,
バーナード・マイルス,
ラルフ・トルーマン
1956年・アメリカ (パラマウント映画)
解説
英国時代にヒッチコックが作った「暗殺者の家」 の再映画化で、原作はチャールズ・ベネットとP・B・ウィンダム・ルイス。脚色は「ハリーの災難」 のジョン・マイケル・ヘイズとアンガス・マクフェイル、撮影監督は、「ハリーの災難」 のロバート・バークス。音楽はバーナード・ハーマン。主演は「カービン銃第1号」 のジェームズ・スチュアートと「情欲の悪魔」 のドリス・デイ。
ストーリー
アメリカの医者ベン・マッケナ(ジェームズ・スチュアート)はブロードウェイのミュージカル・スターだったジョー夫人(ドリス・デイ)と、7歳になる息子ハンクを連れて、パリでひらかれた医学会議に出席した後フランス領モロッコへ旅をした。カサブランカからマラケシュへ行く途中、バスの中でマッケナ夫妻がアラビア人の男に捕って困っているとき、ルイ・ベルナール(D・ジェラン)というフランス人の若い男に助けられる。マラケシュに着いた時、ベルナールをカクテル・パーティにさそう。ベルナールは後で一緒にアラビア料理店へ行くことを条件として招待に応じる。その夜マッケナ夫妻はホテルにベルナールを招く。数分後、ノックの音が聞こえて、ジョーがドアを開けると1人の男が廊下に立っていた。その男はベルナールの姿を見つけると、部屋をまちがえたと云って、あわてて帰って行く。突然ベルナールはベンとジョーをアラビア料理店に連れて行くことが出来なくなったと云い急いで部屋を出て行った。マッケナ夫妻が2人だけで食事に出かけるとイギリス人のドレイトン夫妻がジョーの姿を認めて話しかけてきた。翌日、ベンとドレイトン夫妻と一緒にマラケシュの市場を見物に出かける。辺りがさわがしくなって、1人のアラビア人が何者かに殺される。アラビア人は息をひきとるまえにベンの耳に秘密を告げた。しかも、アラビア人と思ったのは、ルイ・ベルナールの変装だった。マッケナ夫妻は証人として警察に連れて行かれた。ドレイトン夫人はハンクを連れてホテルに帰る。ベンに不思議な電話がかかる。ベルナールが最後に云った「アンブローズ・チャペル」という謎の言葉を話したらハンクを殺すという脅迫だった。ベンはハンクのことが気になるので、一緒にきたドレイトンを先にホテルに帰らせて様子を探らせることにする。マッケナ夫妻が釈放されて、ホテルに戻るとドレイトン夫妻はすでにモヌケのカラ。ベンとジョーは後を追ってロンドンに向かう。ロンドンに着くと、ブキャナン警視が待っていて、ハンクの誘拐されたことを知っており、ベルナールは暗殺計画を知るためにマラケシュに派遣されたフランスのスパイだったと告げる。ベルナールの最後の言葉だけが謎をとく鍵であるとブキャナンは云ったが、ハンクの生命が危険にさらされるのをおそれて、ベンは謎の言葉を教えることを拒んだ。ベンは「アンブローズ・チャペル」という言葉をたよりに捜査を続け、それが教会であることを知る。ドレイトンはこの教会を預かっている牧師で、暗殺計画はこの礼拝堂を中心に画策されていた。ベンは教会の中に入りハンクを救い出そうとするが、ドレイトンに妨げられ、ハンクは大使館に連れて行かれた。暗殺はアルバート・ホールの音楽会で、ヨーロッパの某国の首相を倒すことだった。一方、ジョーは事情をブキャナンに知らせるためにアルバート・ホールへ赴いたが、音楽会に来ている筈なのに姿が見えなかった。狙われている首相の正面のボックスに暗殺者のリアンがいる。リアンはオーケストラに耳をすませて機会を待っていた。ベンが教会からかけつけてきた。暗殺はシンバルが鳴ると同時に行われる。リアンがピストルをかまえて狙う。ジョーは叫び声をあげ、ベンがリアンにおどりかかる。リアンは逃げようとして、ボックスに落ちて死ぬ。ベンはハンクが大使館に監禁されていることをブキャナンに告げて、救助を頼むが、大使館は治外法権になっているので、捜索は不可能だった。ジョーは大使館のパーティにベンとともに招いて貰う。ジョーはパーティで得意の歌をうたい、ハンクに聞かせて口笛でこたえさせようとした。ベンはハンクの口笛をたよりに監禁されている部屋を探し出し、ドレイトンがハンクを連れ出そうとしているところに襲いかかる。ドレイトンは階段から足を踏み外して死ぬ。ベンとジョーはやっとハンクをとりもどし、悪魔のような事件から解放される。
1-29. 勝手にしやがれ(1959) 
監督 ジャン=リュック・ゴダール
出演 ジーン・セバーグ,
ジャン・ポール・ベルモンド
1959年・フランス (新外映)
解説
「大人は判ってくれない」 のフランソワ・トリュフォーのオリジナル・シナリオを映画評論家出身のジャン・リュック・ゴダールが監督し、「いとこ同志」 のクロード・シャブロルが監修した。撮影はラウール・クタール、音楽をマルシャル・ソラールが担当。出演は「悲しみよこんにちは」 のジーン・セバーグ、「危険な曲り角」 のジャン・ポール・ベルモンド。製作ジョルジュ・ド・ボールガール。
ストーリー
ミシェル(ジャン・ポール・ベルモンド)は自動車泥棒の常習犯。今日もマルセイユでかっぱらった車を飛ばしパリに向った。ところが途中で追いかけられた白バイの警官を射殺してしまう。パリに戻ったミシェルは、顔見知りの女から金を盗んで街に出た。旅行案内所のアントニオの所へ約束の金を取りに行く。が、渡されたのは小切手、現金はベリユッティという男が代えてくれるという。刑事が彼を尾行しはじめた。うまくまいた彼はパトリシア(ジーン・セバーグ)の許へ。彼女はヘラルド・トリビューンの新聞売子でアメリカ娘の留学生。二人は南仏の海岸で知合い、他人同士ではなくなった。パトリシアは彼の誘いを断って、街にデートに出かける。ふてくされた彼は彼女のアパートに泊り込む。翌朝、パトリシアはミシェルと部屋でしばしの時を過す……。彼女は飛行場へインタビューに、彼は街で盗んだ車をポンコツ屋に持って行く。素性がばれて、ミシェルはそこの親爺をなぐって逃げ出した。社に戻ったパトリシアのところへ刑事が来て、彼の居所を知らせろといった。尾行をまいたパトリシアは、ミシェルと二人でモンマルトルへ。ようやく酒場でベリユッテイをみつける。金は明日出来るという。その晩、二人はベリユッティの友達のところに泊った。ミシェルは金が出来たら外国に行こうという。彼女はうなずく。しかし、翌朝彼女の気持は変った。彼女の一番欲しいものは自由。新聞を買いにいったついでに、パトリシアは警察に密告した。旅仕度をしているミシェルに“あと十分で警察が来るわよ”という。が、彼の心にはむなしい自嘲と絶望がひろがっただけ。金を持って来たベリユッティは彼に逃亡をすすめる。ミシェルは“疲れた”という。背後から射たれたミシェルはよろめきながら道路を歩く。馳けつけたパトリシアに、倒れた彼は、“お前は最低だ”とつぶやいた。
1-30. 秋のソナタ
監督 イングマール・ベルイマン
出演 イングリッド・バーグマン,
リヴ・ウルマン,
レナ・ニーマン,
ハルヴァール・ビョルク,
Georg Lokkeberg
1978年・スウェーデン (東宝東和)
解説
異なった環境で生活をする母と娘の微妙な絆を描く。監督・脚本は「或る結婚の風景」 のイングマール・ベルイマン、撮影はスヴェン・ニクヴィスト、編集はシルヴィア・イングマーシッドッテルが各々担当。出演はイングリッド・バーグマン、リヴ・ウルマン、レナ・ニーマン、ハルヴァール・ビョルク、エルランド・ヨセフソン、グンナール・ビヨルンストランドなど。
ストーリー
ノルウェー北部の田園地方。この土地の牧師館で暮らしているエヴァ(リヴ・ウルマン)とヴィクトール(ハルヴァール・ビョルク)は年が離れているが、静かな平和な生活をおくっている。エヴァは、ピアニストとして華やかな生活を送ってきた母シャルロッテ(イングリッド・バーグマン)を牧師館に招いた。なんと七年ぶりの対面だ。エヴァは、複雑な気持ちで、母を迎い入れた。それは、エヴァの妹で、退行性脳性麻痺を病んでいるヘレナ(レナ・ニーマン)も呼んであり、母と会わせるという目的をもっていたからだ。そのことをエヴァから聞くと、急に苛立ちの表情を見せるシャルロッテ。夕食後、ショパンのプレリュードを弾く自信に満ちた母の表情を見つめるエヴァ。その夜、ヴィクトールに娘のことを尋ねたシャルロッテは、エヴァが息子エリックを生んだ時の幸福そうな様子や四歳になる直前にエリックが溺死した時のことなどを知った。夜ふけ、夢にうなされるシャルロッテ。酔ったエヴァは、それまで内にたまっていた母ヘの怒りを爆発させる。いつも自分や父をおいて演奏旅行に出ていった母。自分のことしか考えない人……。一方的な娘の攻撃に、たじろぐシャルロッテ。翌日、母シャルロッテは旅立っていった。
1-31. リトル・ミス・サンシャイン
監督 ヴァレリー・ファリス
出演 アビゲイル・ブレスリン,
グレッグ・キニア,
ポール・ダノ,
アラン・アーキン,
トニ・コレット
2006年・アメリカ (20世紀フォックス)
解説
ブラックな笑い満載で、米国サンダンス映画祭で喝采を浴びた、家族の絆の再生を描くロードムービー。MTV出身のディレクター夫婦、デイトン&ファリスの劇場デビュー作。
ストーリー
アリゾナ州に住むオリーヴ・フーヴァー(アビゲイル・ブレスリン)の夢は、小太りの眼鏡っ子にもかかわらずビューティー・クィーンになることだ。兄ドウェーン(ポール・ダノ)は、自室にこもって、筋肉トレーニングに余念がない。一家と同居するグランパ(アラン・アーキン)はバスルームに閉じこもり、ヘロイン吸引で夢見心地となっている。フーヴァー家の主婦シェリル(トニ・コレット)は、夫リチャード(グレッグ・キニア)の反対にもかかわらず、自殺未遂で病院に入院していた兄フランク(スティーヴ・カレル)を自宅に連れ帰る。大学で研究するフランクは、ライバルに恋人を奪われたことにショックを受け、手首を切った挙句、仕事を失っていた。ゲイであるフランクをグランパが「ホモ野郎」と呼び、“負けを拒否する!”をモットーとするモチベーション・スピーカー(成功論提唱者)のリチャードは、フランクを「負け犬」と決めつける。そんな中、「リトル・ミス・サンシャイン」コンテスト地方予選の優勝者が失格となり、繰り上げ優勝となったオリーヴがカリフォルニアで行われる決勝出場資格を得たという知らせが入る。狂気乱舞するオリーヴだが、フーヴァー家にシェリルとグランパの分の飛行機代を捻出する経済的余裕はない。自殺傾向のあるフランクを高校生のドウェーンとともに残しておくこともできず、一家全員がおんぼろのフォルクス・ワーゲン・ミニバスに乗り込んで一路、カリフォルニアを目指す。ただでさえギクシャクする家族なので、狭苦しいミニバスのなかで早速、口論がスタートする。しかも車が故障する始末だ。前途多難なフーヴァー一家は果たしてカリフォルニアまで無傷でたどりつけるのか? そしてオリーヴはビューティー・クィーンの栄冠をゲットすることができるのか?
1-32. めまい
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェームズ・スチュアート,
キム・ノヴァク,
バーバラ・ベル・ゲデス,
トム・ヘルモア
1958年・アメリカ (パラマウント) 129分
解説
「間違えられた男」 につづくアルフレッド・ヒッチコック監督のスリラー。クルウゾーの「悪魔のような女」 の原作を書いたピエール・ボアローと、トーマス・ナルスジャックの共作小説から、アレック・コッペルと「モンテカルロ物語」 サム・テイラーが共同脚色した、伝奇的なロマンとニューロティックなスリラー手法をないまぜた一編。撮影監督は「間違えられた男」「ハリーの災難」 のロバート・バークス。サンフランシスコ周辺の風光がロケによって生かされている。音楽はバーナード・ハーマン。出演者は「知りすぎていた男」「翼よ!あれが巴里の灯だ」 のジェームズ・スチュアートに「愛情物語」「夜の豹」 のキム・ノヴァクが顔を合わせる他、「暗黒の恐怖」 のバーバラ・ベル・ゲデス、「バラの肌着」 のトム・ヘルモア等。キム・ノヴァクは2つの役柄を演じわけてみせる。製作はヒッチコック自身。「悲しみよこんにちは」 のソール・バスがタイトル・デザインを担当している。
ストーリー
元刑事のジョン・ファーガスン(ジェームズ・スチュアート)は、屋上で犯人追跡中に同僚を墜死させたことから、高所恐怖症にかかって今は退職していた。商業画家の女友達、ミッジ(バーバラ・ベル・ゲデス)の所だけが、彼の気の安まる場所だった。そんなある日、昔の学校友達ゲビン・エルスターから電話があって、彼はその妻の尾行を依頼された。美しい妻のマドレイヌ(キム・ノヴァク)が、時々、昔狂って自殺した曽祖母のことを口走っては、夢遊病者のように不可解な行動に出るというのだ。しかも、彼女は、まだ自分にそんな曽祖母のあったことは、知らぬ筈だという。翌日から、ジョンの尾行がはじまった。マドレイヌの行動範囲はサンフランシスコ一帯に及んだ。ある時は曽祖母の埋められている墓地に、ある時は曽祖母が昔住んでいたというホテルに、ある時は若かりし頃の曽祖母の画像の飾られている画廊に。しかも、ぼんやりと絵に見いる彼女の、手にもつ花束の型や髪型は画像の曽祖母と同じものなのだ。そしてある日、彼女は海に身を投げた。ジョンは彼女を救って、自宅につれかえり、介抱した。そして、今はもう彼女を愛している自分を知った。彼女は、自分の行動もよく覚えてはいなかった。何事かを恐れるマドレイヌの心理を解きほぐすために、ジョンは彼女を、よく夢に見るというサンフランシスコ南部のスペイン領時代の古い教会にともなった。しかし、突然彼に愛をうちあけながら彼女は、教会の高塔にかけ上り、めまいを起したジョンが階段にたちつくすうちに、身を投げて死んだ。そのショックから、ジョンはサナトリウムに療養する身となった。まだ自分をとりもどすことの出来ぬ彼は、街をさまよっているうちに、ふとジュデイ(キム・ノヴァク)というショップ・ガールに会った。身なり化粧こそげびて俗だったとはいえ彼女の面ざしはマドレイヌに似ていた。ジョンは、いつか彼女の面倒をみてやる身となった。彼は彼女にマドレイヌに似た化粧や身なりを教えた。しかし彼女はそれをいやがった。何故なら彼女こそは、妻を殺すためにジョンの高所恐怖症を利用したゲビンに使われ、ジョンをあざむいて顔かたちの似たマドレイヌになりすましていた女だったのだから。あの時、高塔の上には殺した妻を抱いたゲビンがいた。そして、めまいを起こして高所に上れぬジョンを証人につかって、かけ上ってきたジュデイとタイミングを合わせて妻の死体を塔から投げ下ろし、自殺に見せるというトリックを使ったのだ。サンフランシスコ一帯にジョンを引きまわし、彼と恋におちたマドレイヌとは、実はジュデイその人だったのだ。ある夜、死んだはずのマドレイヌのものだった首飾りをジュデイの胸にみつけたジョンは、彼女をあの教会の白亜の高塔につれていって詰問した。総ては今やはっきりした。しかし、今はジョンを愛するジュデイは、彼への愛を口走りながら、恐怖のために塔から足をふみ外して墜死した。
1-33. コンタクト
監督 ロバート・ゼメキス
出演 ジョディ・フォスター,
マシュー・マコノヒー,
ジョン・ハート,
ジェームズ・ウッズ,
トム・スケリット
1997年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画)
解説
地球外の知的生命体と接触した女性の姿を描くSF超大作。科学と宗教、頭脳と心、ヒロインの心の成長、恋人たちの物語などさまざまな要素を盛り込んだ多面的な物語の構造が魅力。96年に他界した宇宙科学者カール・セイガンの同名小説(邦訳・新潮文庫)に基づき、セイガンと妻アン・ドルーヤンが映画用原案を作り(共同製作も)、「フック」 のジェームズ・V・ハートと 「マンハッタン花物語」 のマイケル・ゴールデンバーグが脚色。監督には 「フォレスト・ガンプ 一期一会」 のロバート・ゼメキスがあたった。製作はゼメキスと、彼のほとんどの作品に参加しているスティーヴ・スターキー、製作総指揮は「9か月」 のジョーン・ブラッドショウと「素晴らしき日」 のリンダ・オブスト。撮影は「フォレスト・ガンプ」「夕べの星」 のドン・バージェス、音楽は「フォレスト・ガンプ」 などゼメキスとは名コンビのアラン・シルヴェストリ、美術は「キルトに綴る愛」 のエド・バリュー、編集は「バードゲージ」 のアーサー・シュミット、衣裳は「フォレスト・ガンプ」 のジョアンナ・ジョンストン、主演は「ネル」 のジョディ・フォスター。共演は「評決のとき」 のマシュー・マコノヘイ、「ニクソン」 のジェームズ・ウッズ、「カウガール・ブルース」 のジョン・ハート、 「リバー・ランズ・スルー・イット」 のトム・スケリット、「TINA ティナ」 のアンジェラ・バセット、「ヒート」 のウィリアム・フィクナー、「ボディ・バンク」 のデイヴィッド・モース、「ウェインズ・ワールド」 のロブ・ロウほか。
ストーリー
電波天文学者のエリー(ジョディ・フォスター)は、砂漠の電波天文台で観測中に、恒星ヴェガ付近から地球に向けて電波信号が発せられているのに気づく。彼女は物心ついた時から常に、「なぜ私たちはここにいるのか。私たちは何者なのか」という疑問の答えを求めていた。最愛の父テッド(デイヴィッド・モース)が亡くなった後、エリーは科学に没頭する。彼女は地球外生命体からのメッセージの探究をテーマに選び、大多数の科学者からの嘲笑や成功の確率の圧倒的な低さにも関わらず、何年も宇宙からの電波の観測を続けていた。そして、とうとうメッセージは届いた。エリーが送られてくる電波信号を数字に変換すると、どこまでも続く素数の羅列になった。これは、素数を理解するまでの水準に達した生物の住む惑星を探すため、何らかの知的存在が発したメッセージに違いない。信号は単に素数を表しているだけでなく、複数の読み取り方ができることがわかった。さらに世界中の国々が協力して解読を進めるうちに、驚くべき事実が判明。このメッセージには、乗員を宇宙へ運ぶことのできる宇宙間移動装置=ポッドの設計図が含まれていたのだ。新時代の幕開けかハルマゲドンの到来か、世界中を巻き込んだ騒ぎが続き、この装置を建造するか否かについても論争が巻き起こる。最初にメッセージを発見し、その後も解読の中心となってきたエリーだったが、彼女の功績を妬む科学者ドラムリン(トム・スケリット)によって、科学調査班のリーダーの地位に果たして彼女が適任かどうかを巡る争いが起こった。そんな中、彼女は国際的な影響力を持つ宗教学者で、合衆国政府の宗教顧問でもあるパーマー・ジョス(マシュー・マコノヘイ)に援護を求めた。2人は、かつて愛し合った仲だったが、仕事第一のエリーのせいで、彼らの恋は短命に終わっていた。宇宙に目を向けてきた科学者と、人間の内面に深く分け入ろうとする宗教学者、まったく異なる信念を持って生きてきた2人だが、メッセージを理解しようとする共通の情熱から新しい絆で結ばれ、改めて愛し合うようになる。ポッドの建造が決定し、ただ1人の乗員の志願が始まった。エリーも志願するが、査問会はドラムリンを選んだ。だが、ポッドの運転テストの当日、テロリストが爆弾を爆発させて装置は破壊され、ドラムリンも死んだ。悲嘆にくれるエリーに、以前から彼女の能力を高く買って資金援助を続けていた謎の資産家ハデン(ジョン・ハート)が、装置はもう一基、北海道に建造されている、と明かす。エリーはポッドに乗り込み、巨大なマシンが動き始めた。強いエネルギー界にポッドが落とされた瞬間、めくるめく光のチューブ=ワームホールを抜けて時空間を移動する。そこは言葉にできないほど美しい空間だった。一面に広がる青い海と白い砂浜に降り立った彼女の前に、死んだはずの父テッドが現れた。これは、彼女の意識を読み取った知的生命体がテッドの姿を借りたのだった。生命体は「これは人類にとって第一歩だ」と言い、エリーは「この広い宇宙で、私たちは独りぼっちではない」と初めて実感する。彼女が次に気づいた時はベッドの上だった。彼女は国防庁長官キッツ(ジェームズ・ウッズ)や大統領補佐官レイチェル(アンジェラ・バセット)から、実験は失敗し、あの体験は幻覚ではないかと告げられる。調査会議が開かれ、エリーは激しい批判にさらされたが、彼女は毅然として自分が体験したことを信じていると主張し、多くの人々から温かく迎えられる。再び電波観測の任に就いた彼女は、砂漠の真ん中であの体験に思いを馳せる。
1-34. マーニー
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ティッピー・ヘドレン,
ショーン・コネリー,
ダイアン・ベーカー,
ルイーズ・ラサム,
アラン・ネイピア
1964年・アメリカ (ユニヴァーサル)
解説
ウインストン・グラハムの原作をジェイ・プレッソン・アレンが脚色、「鳥」 のアルフレッド・ヒッチコックが製作・演出したミステリー・ドラマ。撮影はロバート・バークス、音楽はバーナード・ハーマンが担当した。出演は「鳥」 のティッピー・ヘドレン、「わらの女」 のショーン・コネリー、「逆転」 のダイアン・ベーカーほかに、アラン・ネイピア、ルイーズ・ラサム、マーティン・ゲーベルなど。
ストーリー
R社にマーニー(ティッピー・ヘドレン)と名のる女が求職に応募した。面接したマーク(ショーン・コネリー)は彼女が金庫泥棒であることを見破っていたが、彼女にひかれるまま、雇うことにした。やがて機会が訪れると、彼女は金庫から紙幣を盗み出し、いつものように遠い田舎の農場に逃げた。だが、事情を見抜いていたマークが駆けつけていた。彼は彼女の盗癖を彼女も意識しない隠れた原因だと考えていた。彼は衝動的に彼女と結婚しようと決意した。2人は新婚旅行に出かけたが、彼が花嫁を抱擁しようとすると、異常なおびえをみせて彼を避け、彼のどのような愛情の表現に対しても、身体を縮めてしりごみした。旅行から帰った2人は外見上は夫婦らしく暮らしたが、実際は別々の寝室で過ごしていた。そのうち、マーニーは彼女の過去のことを少しずつ喋りはじめた。過去5回ほど金庫破りをしていて、5万ドルを盗んでいた。その後も色々いやな事が起こり、彼女はマークと別れようと決心した。彼女は先ず彼の事務所へ行った。金庫を開けたとき、彼がそばに来ていた。いよいよ、彼女は彼を母親のバーニス(ルイス・レタム)に会わせねばならないことを悟った。バーニスとの会見で、マーニーの常軌を逸した行動の謎が解けてきた。バーニスは昔娼婦だった。マーニーが5歳の時、母親にいたずらした水夫を夢中で殺してしまった。以後、母親はその件を秘密にし、マーニーには男を遠ざけて育てた。マーニーは母親に対して何事かわけのわからない特別の恩を感じていたらしく、そのために盗みを働き、母親に貢いでいたというわけだった。マーニーは初めて自分の行動を支配していた無意識の動機をさとり、自己破壊の精神衝撃から解放され、マークとの再出発の自信をとり戻した。
1-35. マイ・フェア・レディ
監督 ジョージ・キューカー
出演 オードリー・ヘップバーン,
レックス・ハリソン,
スタンリー・ホロウェイ,
ウィルフリッド・ハイド・ホワイト,
ジェレミー・ブレット
1964年・アメリカ (ワーナー・ブラザース)
解説
ジョージ・バーナード・ショウの「ピグマリオン」 をミュージカルに脚色(作詞)した「恋のてほどき」 のアラン・ジェイ・ラーナーが脚色。「スタア誕生(1954)」 のジョージ・キューカーが演出したミュージカル。撮影はハリー・ストラドリング、音楽はアラン・ジェイ・ラーナーの作詞、舞台と同じくフレデリック・ロー及びアンドレ・プレヴィンが作曲をそれぞれ担当した。出演は「クレオパトラ(1963)」 のレックス・ハリソン、「シャレード」 のオードリー・ヘップバーン、舞台で同じ役を演じたスタンレー・ハロウェイ、「恋をしましょう(1960)」 のウィルフリッド・ハイド・ホワイト、ジェレミー・ブレットなど。
ストーリー
イライザ(オードリー・ヘップバーン)は花売り娘だ。うすら寒い三月の風の中で声をはりあげて売り歩く。ある夜、ヒギンス博士(レックス・ハリソン)に言葉の訛りを指摘されてから、大きく人生が変った。博士の家に住み込むことになったのだ。だが、今までの色々の苦労よりももっと苦しい難行を強いられた。何度も同じ言葉を録音するのだ。博士の家に同居するピカリング大佐は親切で優しい。ある日、イライザの父親ドゥリットル(スタンレー・ハロウェイ)が娘を誘惑されたと勘違いして怒鳴り込んだが、貴婦人になる修業をしていると聞いて喜んだ。それから4カ月。イライザは美しい貴婦人として社交界へデビューした。アスコット競馬場。イライザの美しさは群を抜き、名うてのプレイボーイ、フレディでさえが彼女につきまといはじめた。陰で彼女を見守る博士とピカリングは気が気ではなかった。彼女の正体がばれたら、貴族侮辱罪で社交界から追放されるだろう。彼女は誰にも気づかれずうまくやっていた。ところが各馬がゴール寸前になって興奮のあまり、つい地金を出してしまった。だが、それもご愛嬌ですんだ。つづく大使館のパーティでは完全なレディになっていた。成功だ。その夜、イライザは博士とピカリングの話を立ち聞きして驚き、怒った。自分は博士の実験台にすぎなかったのだ。思わず邸を飛び出した。博士は、イライザの不在に淋しさを感じ、彼女を愛する心を意識した。録音器の訛りの多い声を静かに聞きながら心を痛めていた。ふと、その録音器が止まった。イライザが涙を浮かべて立っていたのだ。博士はとんで行って抱き締めたい気持ちをこらえながら言った。「イライザ。ぼくのスリッパはどこ?」
1-36. 裏窓 
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェームズ・スチュアート,
グレース・ケリー,
ウェンデル・コーリー,
セルマ・リッター,
レイモンド・バー
1954年・アメリカ (パラマウント映画会社) 114分
解説
「ダイヤルMを廻せ!」 のアルフレッド・ヒッチコックが製作監督するスリラーで、「幻の女」 のコーネル・ウールリッチの原作をジョン・マイケル・ヘイズが脚色した。テクニカラー撮影は「ダイヤルMを廻せ!」 のロバート・バークス、音楽は「炎と剣」 のフランツ・ワックスマンの担当。「遠い国」 のジェームズ・ステュワート、「ダイヤルMを廻せ!」 のグレイス・ケリー、「北の狼」 のウェンデル・コーリー、セルマ・リッター、レイモンド・バー、ジュディス・イヴリンなどが出演する。
ストーリー
ニューヨークのダウン・タウン、グリニッチ・ヴィレッジのあるアパートの一室、雑誌社のカメラマン、ジェフ(ジェームズ・ステュワート)は足をくじいて椅子にかけたまま療養中なので、つれづれなるままに窓から中庭の向こうのアパートの様子を望遠鏡で眺めて退屈をしのいでいた。胸が自慢の女がブラジャーをなくした。男が欲しくてたまらぬ女が男を連れこんだがどう切り出していいか分からない。新婚の男女の濃厚なラブ・シーン。ピアノに向かって苦吟している作曲家。犬を飼っている夫婦者など。そのうちにジェフの興味を惹くことが起きた。病気で寝たきりの妻と2人暮らしのセールスマンのラース・ソーウォルドが送り出し、翌日から妻の姿が見えなくなった。ジェフは注意して彼の動静を観察し、妻を殺して死体をトランクにつめ、どこかへ送ったものと確信した。この調査には恋人のリザ(グレイス・ケリー)や看護婦のステラにも一役買ってもらった。そして、ジェフは早速調査を始めたが確証がつかめないので、ジェフがいい加減のことを言っているのではないかと思うようになった。やがてソーウォルドは自分が疑われていることに気づき、ジェフが警察に密告したことを知って殺意を抱いた。ジェフが1人で部屋にいるとき、ソーウォルドが襲ってきて体の自由のきかぬジェフを窓からつき落とそうとした。こうして意外なクライマックスが展開、事件の謎がとけるのである。
1-37. 菩提樹
監督 ヴォルフガング・リーベンアイナー
出演 ルート・ロイヴェリック,
ハンス・ホルト,
ヨゼフ・マインラート,
ミハエル・アンデ,
Knuth Mahlke
1956年・西ドイツ (新外映)
解説
修道女から男爵夫人となり、七人の子供とともにトラップ合唱隊をつくったマリア・アウグストの波乱に満ちた若き日を描いた音楽映画。ゲオルク・フルダレックの脚本により、俳優出身で戦前から監督をしていたヴォルフガング・リーベンアイナーが監督した。撮影はウェルナー・クリーン、音楽はフランツ・グローテ。主演は舞台出身のハンス・ホルト、ルート・ロイヴェリックの二人。
ストーリー
オーストリア、ザルツブルグ近郊。第一次大戦当時Uボートの艦長として活躍したトラップ男爵(ハンス・ホルト)は、不幸なことに七人の幼い子を残して妻に先立たれた。男爵は、その軍隊経験から子供たちを厳しく育てた。余りの厳格さに家庭教師は次々と去り、そんなところへ来たのがマリア(ルート・ロイヴェリック)という見習修道女だった。家庭教師として彼女は暫く俗界に戻ることになったのだが、その夜マリアは、子供たちが歌うことが大好きだということを発見した。翌日、男爵が旅に出た留守、マリアは子供たちに野放しの自由教育を始めた。マリアの弾くギターに合せて歌う子供たちの無心の声。帰城した男爵は我が家の革命とばかり驚いたが、子供たちの希望に満ち溢れた顔に満足した。クリスマスが来た。男爵はマリアに結婚を申込んだ。いつしか彼女を愛していたのだ。七人の子供を幸福にするためなら、と物分りのいい修道院長は、二人の結婚を許した。やがてマリアと七人の子供たちによるトラップ合唱隊はザルツブルク音楽祭で一等賞を得、一躍有名になった。一九三八年、オーストリアがナチス・ドイツに併合されたとき、ナチ反対を表明した男爵の身を案じ、マリアは亡命を勧めた。一家はアメリカの興行主を頼って渡米した。が、亡命者として上陸は拒否され、港の収容所に入れられた。頼りにした興行主が来たが、子供の合唱隊など商売にならぬと言い捨てた。ドアを蹴って出て行く興行主。と、その後から突如、美しい歌声が湧き起った。興行主は思わず足を止めた。それは、子供たちが歌う、人々に心の故郷を思わせる菩提樹の歌であった。
1-38. 続・菩提樹
監督 ヴォルフガング・リーベンアイナー
出演 ルート・ロイヴェリック,
ハンス・ホルト,
ヨゼフ・マインラート,
ウォルフガング・ヴァール,
Adrienne Gessner
1959年・西ドイツ (映配)
解説
好評を博した「菩提樹」 の続篇。トラップ一家のアメリカでの生活が描かれる。前篇と同じく監督はヴォルフガング・リーベンアイナーで、撮影のウェルナー・クリーン、音楽のフランツ・グローテも前篇と同じ。脚本を「戦場の叫び」 のヘルベルト・ライネッカーが担当している。出演するのも「鉄条網」 のルート・ロイヴェリックをはじめ、ミハエル・アンデ、ハンス・ホルト等前篇と同じ。製作ハインツ・アーベル。
ストーリー
祖国オーストリアを追われアメリカに渡ったトラップ男爵一家は、代理業者ザーミッシュと契約して地方巡業を行うことになった。しかし、歌の先生であるワスナー神父が古典的な聖歌のみを歌わせたことから、音楽会はいずれも失敗し、ザーミッシュは契約を解消した。ニューヨークに帰った一家には三ドル七六セントの財産しかなかった。心配した子供たちはバーのパチンコでお金を増やそうとしたが、かえって一文なしになってしまった。だが、酔った水兵にあわせて子供たちが美しい声で「オールド・ブラック・ジョー」を歌ったことから、隣人の元歌手をしていたブロンクス・リリーという女が、一家をハリスという大代理業者に紹介してくれた。しかしこのテストも、神父の命による聖歌で失敗した。その時、ウィーン生れのハンマーフィールド夫人という実業家の夫人が現れて、自分のパーティの余興に一家をよんでくれた。三百ドルのお礼と多くの人々の拍手を得て、マリア(ルート・ロイヴェリック)は、これだけ喜ばれる自分達の歌が、なぜ一般聴衆にはうけないのかと考えこんだ。パーティでの成功によってハリスは一家と契約を結び、地方巡業は満員の盛況を迎えた。ところが、聴衆は評判のトラップ一家の顔を見にくるだけで、余り歌に興味をもってはくれなかった。ベルモントの音楽会に行った日、マリアは、故郷ザルツブルグに似たその土地に気に入った家を見つけ、会場に行く時間を遅らせた。さわぐ聴衆の前で、とっさにマリアは軽快な「狩の歌」と「おおスザンナ」を歌った。万雷の拍手が起って、今度こそ一家は完全に成功した。心配していた移民局も、一家の滞在延期を認めてくれた。買いとって改造した気に入ったベルモントの家に向って、今は心もはればれと一家は、列車にのりこむのだった。
1-39. サイコ
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 アンソニー・パーキンス,
ヴェラ・マイルズ,
ジョン・ギャビン,
マーティン・バルサム,
ジョン・マッキンタイア
1960年・アメリカ (パラマウント)
解説
アルフレッド・ヒッチコック監督作品。原作はロバート・ブロックの推理小説。脚色を「黒い蘭」 のジョセフ・ステファノがうけもつ。撮影と音楽はジョン・L・ラッセルとバーナード・ハーマンがそれぞれ担当。出演は「のっぽ物語」 のアンソニー・パーキンスのほかジョン・ギャビン、ジャネット・リー、ベラ・マイルズら。製作もヒッチコック。最初の邦題は「サイコ−異常心理−」 。
ストーリー
アリゾナ州の小さな町ファーベル。そこの不動産会社に勤めているマリオン・クレーン(ジャネット・リー)は隣町で雑貨屋をひらいているサム・ルーミス(ジョン・ギャビン)と婚約していたが、サムが別れた妻に多額の慰謝料を支払っているために結婚できないでいた。土曜の午後、銀行に会社の金4万ドルを収めに行ったマリオンは、この金があればサムと結婚できるという考えに負けて隣町へ車で逃げた。夜になって雨が降って来たので郊外の旧街道にあるモーテルに宿を求めたマリオンは、モーテルを経営するノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)に食事を誘われた。ノーマンは母親と2人でモーテルに接続している古めかしい邸宅に住んでいて、頭が良く神経質で母親の影響を強くうけていた。ノーマンが1号室にマリオンを訪れた時、彼女は浴槽の中で血まみれになって死んでいた。ノーマンは殺人狂の母親の仕業と見て4万ドルともどもに裏の沼に沈めた。会社では、月曜になって銀行に4万ドルが入ってないのを知り私立探偵アポガスト(マーティン・バスサム)にマリオンの足取りを洗わせていた。マリオンの妹ライラ(ヴェラ・マイルズ)は姉がサムの家に行ったと思いサムを尋ねてきた。そこへ探偵のミルトンもやってきた。2人ともサムの家にマリオンがやってきていないことを知った。アポガストはファーベル町とサムの家の間にモーテルがあることを知り、それを調べに出た。そこでマリオンが確かにモーテルに寄ったということを知った。これから母親と会うという電話がアポガストからサムにかけられてきた。そしてアポガストは消息を絶った。アポガストの連絡を待つサムとライラの2人は町のシェリフ・チェンバース(ジョン・マッキンタイア)を訪れ意外なことを聞かされた。ノーマンの母親は10年前に死んでこの世にはいないこと。だが、マリオンが見た母親、アポガストが電話で伝えた母親は――2人はモーテルに馳けつけた。サムがノーマンをフロントに引き寄せておく作戦に、ライラはモーテルから屋敷へと忍び込んだ。そうして地下室で見たものは女の服を着たミイラであり、後ろから襲いかかった老婆は――。
1-40. セルピコ
監督 シドニー・ルメット
出演 アル・パチーノ,
ジョン・ランドルフ,
ジャック・キホー,
ビフ・マクガイア,
バーバラ・イーダ・ヤング
1973年・アメリカ (パラマウント映画=CIC)
解説
ニューヨーク市警察に根強くはびこっている腐敗、汚職にたった1人で挑戦した正義の男“セルピコ”の苦難の物語。製作はマーティン・ブレッグマン、監督はシドニー・ルメット、ピーター・マースの原作をウォルド・ソルトとノーマン・ウェクスラーが脚本化、撮影はアーサー・J・オーニッツ、音楽はミキス・テオドラキスが各々担当。出演はアル・パチーノ、ジョン・ランドルフ、ジャック・キホー、ビフ・マクガイア、バーバラ・イーダ・ヤング、コーネリア・シャープ、トニー・ロバーツ、エド・グローバーなど。
ストーリー
1971年2月、ニューヨーク市警の警官フランク・セルピコ(アル・パチーノ)が重傷を負ってグリーンポイント病院に担ぎこまれた。地区総監グリーン(ジョン・ランドルフ)は早速彼の病室に24時間の警戒態勢をを引かせた。これより11年前、セルピコは希望と使命感に燃えて警察学校を卒業した。82分署に配属され、はりきって勤務についたが理想と現実のギャップはみるまに彼の内部で広がっていった。潔癖なセルピコには日常茶飯事として行なわれていた同僚たちの収賄、さぼりなどが耐えがたいものに感じられた。犯罪情報課勤務に変わって、彼は向上心の満足と息ぬきをかねてニューヨーク大学へ勉強に行くようになり、そこで会ったレズリー(コーネリア・シャープ)というバレー・ダンサーと知り合い、やがて同棲するようになった。私服になるための訓練を受け始めた彼が、ブレア(トニー・ロバーツ)というプリンストン大学出の同僚と仲良くなった。訓練が終わると、2人は私服刑事として、セルピコは93分署に、ブレアはニューヨーク市長の調査部に配属されることになった。ブレアにいわせるとこれは2人の性格にピッタリの配属だということになる。セルピコは町に、そしてブレアは政治に大きな関心を寄せていた。配属された最初の日、セルピコは何者かにワイロの分け前を渡された。ブレアに相談し、調査部長に報告したが、部長はただ忘れてしまえと忠告するだけだった。同時に私生活の面でもレズリーを失った。セルピコは再びマクレインに会い、ブロンクスの第7地区に勤務を変えてもらった。だがここも事態は最悪だった。前の分署で顔見知りだったキーオ(ジャック・キホー)という男が近づき、ここの分け前は今まででも最高だと耳打ちした。彼が受け持たされたのは、ルベルという同僚とワイロ回収の仕事だったが、どうしても金をうけとろうとしないセルピコの立場は徐々に孤立せざるを得なかった。ブレアとセルピコは、市長の右腕として働いていたバーマンに実情を訴えたが、この夏には暴動がおこる公算があり、市長としても警察と対決するわけにはいかないという理由でとりあげてもらえなかった。セルピコは窮地に立たされ新しい恋人ローリー(バーバラ・イーダ・ヤング)とも衝突、喧嘩別れしてしまった。今やセルピコは地区中から異端者扱いで、第8分署に転任することになったが、彼を相棒として引き受けてくれるのはロンバート警視ただ1人だった。ブレアやロンバートの応援で、ついに意を決したセルピコが汚職の実態をニューヨーク・タイムスにぶちまけた。このニュースでニューヨーク中が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。しかしセルピコはデラニー総監によって、市で最も危険なブルックリンの麻薬地帯に転勤を命じられた。ある日、数人の同僚とともに麻薬犯逮捕に出勤した彼は、そこで重傷を負う破目になった。状況からみて、同僚が助けようとすれば助けられたのである。命がけでなぜあんなことをしたのかというグリーンの問いに、セルピコは答えた。自分自身のためだった、と。今、セルピコは退職し、傷痍年金を受け、スイスに住んでいる。
1-41. 大いなる西部
監督 ウィリアム・ワイラー
出演 グレゴリー・ペック,
ジーン・シモンズ,
キャロル・ベイカー,
チャールトン・ヘストン,
バール・アイヴス
1958年・アメリカ (松竹=ユナイテッド・アーチスツ)
解説
「友情ある説得」 のウィリアム・ワイラー監督が、「西部の男」 以来18年ぶりで監督した西部劇。サタディ・アヴニング・ポストに連載されたドナルド・ハミルトンの原作をジェームズ・R・ウェッブとサイ・バーレット、ロバート・ワイルダーの3人が共同で脚本化。撮影監督は「誇りと情熱」 のフランツ・プラナー。カリフォルニア州ストクトン附近のドレイス牧場一帯と、モジャヴ砂漠がロケ地に選ばれ、広大な野外シーンが常に心してとり入れられている。音楽はジェローム・モロス。タイトル・デザインを「八十日間世界一周」「めまい」 のソール・バスが受けもっている。出演者はワイラーと共にプロデュースもしている「無頼の群」 のグレゴリー・ペックに、「ベビイドール」 のキャロル・ベイカー、「黒い罠」 のチャールトン・ヘストン、「野郎どもと女たち」 のジーン・シモンズ、「楡の木陰の欲望」 のバール・アイヴス、「軍法会議(1956)」 のチャールズ・ビックフォード、チャック・コナーズ、メキシコ俳優アルフォンソ・ベザヤ等。製作ウィリアム・ワイラーとグレゴリー・ペック。
ストーリー
1870年代のテキサス州サンラファエルに、東部から1人の紳士ジェームズ・マッケイ(グレゴリー・ペック)が、有力者テリル少佐の1人娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚するためにやってきた。出迎えた牧童頭のスチーヴ・リーチ(チャールトン・ヘストン)は彼に何となく敵意を示した。スチーヴは主人の娘を恋していたのだ。途中まで許婚者を迎えたパットは、スチーヴを先に帰してジェームズと父の牧場に向かったが、途中で酒に酔ったハナシー家の息子パックたちに、悪戯をうけた。しかしジェームズは彼らを相手にしなかった。パットの父テリル少佐は大地主ルファス・ハナシーとこの地の勢力を二分し、争っていた。2人が共に目をつけている水源のある土地ビッグ・マディを、町の学校教師でパットの親友ジュリー・マラゴン(ジーン・シモンズ)が所有していた。彼女は一方が水源を独占すれば必ず争いが起こるところから、どちらにも土地を売ろうとしなかった。少佐は娘の婿にされた乱暴に対して、ハナシーの集落を襲い、息子たちにリンチを加えて復讐した。そんな少佐の態度にジェームズは相いれないものを感じた。彼は争いの元になっている土地ビッグ・マディを見て、女主人ジュリーに会い、中立の立場で誰にでも水を与え、自分でこの地に牧場を経営したいと申し出て彼女と売約契約をかわした。一方血気にはやるパットと父の大佐には、慎重なジェームズの態度が不満だった。水源地ビッグ・マディを手に入れて大佐に対抗するため、ハナシーはジュリーを監禁する挙に出た。ジェームズはメキシコ人牧童の案内で単身本拠にのりこみ、水源は自由にすると明言してジュリーを助け出そうとした。ハナシーの息子バックは、ジュリーに対する横恋慕からジェームズと決闘したが、卑怯な振舞いから父に射殺された。少佐とスチーヴの一隊がのりこんできて乱戦が始まった。そして、1対1で対決した大佐とハナシーは、相撃ちで共に死んだ。憎悪による対立と暴力の時代は終わった。今はジュリーの腕をとって、ジェームズは新しい我が家ビッグ・マディに、新生活を始めるため馬首を進めた。
1-42. 身代金
監督 ロン・ハワード
出演 メル・ギブソン,
レネ・ルッソ,
ブローリー・ノルティ,
ゲイリー・シニーズ,
デルロイ・リンド
1996年・アメリカ (ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)
解説
一人息子を誘拐した犯人と戦う父親の行動を描いたサスペンス。身代金を巡るアイディア、巧みなストーリー・テリングでサスペンスを醸し出す演出の手腕が見どころ。グレン・フォード主演、アレックス・シーガル監督の「誘拐」 (56)を、「アポロ13」 のロン・ハワードの監督でリメイク。アレクザンダー・イグノンの原案を基に、「クロッカーズ」 のリチャード・プライスが脚本を執筆。製作は「マイ・ルーム」 のスコット・ルーディンと「ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合」 のほかハワード作品のほとんどを手掛けているブライアン・グレイザー、「恋の闇 愛の光」 のB・キプリング・ハゴピアンの共同。製作総指揮のトッド・ハロウェル、音楽のジェームズ・ホーナー、美術のマイケル・コレンブリス、編集のダン・ハンリーとマイク・ヒルは「アポロ13」 に続いての参加。撮影は「トリコロール 赤の愛」 のピョートル・ソボシンスキ。衣裳は「ザ・ファン」「カジノ」 のリタ・ライアック。主演は「リーサル・ウェポン3」 以来の共演となる、「ブレイブハート」 のメル・ギブソンと「ゲット・ショーティ」 のレネ・ルッソ。共演は「アポロ13」 のゲイリー・シニーズ、「ブロークン・アロー」 のデルロイ・リンド、「I SHOT ANDY WARHOL」 のリリ・テイラー、「マッド・ラブ」 のリーヴ・シュライバー、ポップス・グループ〈ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック〉のメンバーだったドニー・ウォルバーグ、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」 のエヴァン・ハンドラー、俳優ニック・ノルティの実子である子役のブローリー・ノルティ、「クルーレス」 のダン・ヘダヤほか。
ストーリー
ニューヨーク。ここ10年で全米で五指に入るまでに急成長した航空会社の社長トム・ミューレン(メル・ギブソン)は、目的のためには手段は選ばないやり方で現在の地位を築いてきた。美しい妻ケイト(レネ・ルッソ)と9歳の息子ショーン(ブローリー・ノルティ)に囲まれ、人生の絶頂にあったかに見えた。そんなある日。ショーンが何者かに誘拐され、「200万ドル用意しろ」という電子メールが送られてきた。事件を迅速に解決したい彼は、犯人の要求通りに身代金を払おうとするが、ショーンの身を案じるケイトはFBIに事件を委ね、ホーキンス捜査官(デルロイ・リンド)以下の対策チームが到着する。トムは、工場のストライキを阻止するべく不法な買収行為を行ったことがあったが、そのために逮捕されて彼を恨んでいるブラウン(ダン・ヘダヤ)の仕業ではないかと疑う。だが、彼は犯人ではなかった。犯人グループの黒幕は市警のベテラン刑事ジミー・シェイカー(ゲイリー・シニーズ)で、仲間は彼の情婦マリス(リリ・テイラー)、チンピラのカビー(ドニー・ウォルバーグ)とクラーク(リーヴ・シュライバー)の兄弟、コンピューターの専門家マイルス(エヴァン・ハンドラー)だった。48時間後、再び犯人から連絡が入り、身代金の受け渡し方法を指定する。FBIの勧めを断り、トムは自ら現場に向かうことにした。犯人一味の計画は緻密かつ周到で、携帯電話で逐一入る指示に従い、トムは町中を振り回される。ニュージャージーの指定場所に着き、息子の居場所を記したアドレスと引き換えに身代金を渡そうとするトムに、待ち受けたドニーが銃を向けた。その時、FBIのヘリコプターが男を発見し、男はあっけなく射殺されてしまう。犯人一味はショーンを解放する気などないのではないか、という恐ろしい疑念にとりつかれたトムに、犯人から電話が入る。ショーンの生存を確認し、新たな希望が沸いたトムは、犯人に身代金を渡すことを断固拒む。TV局に向かった彼は特別番組を組ませ、200万ドルの札束の山を前に「これは渡さない。お前の首に懸けた賞金にする」と犯人に対して宣戦布告。誘拐犯人を脅迫するという前代未聞の行為は犯人に動揺を与え、ジミーはケイトに接触して、賞金を取り下げなければ息子を殺すと脅迫する。だが、それを知ったトムは逆に、賞金を倍額につり上げた。自分の身が危ないと察したジミーは3人の仲間たちを口封じのために殺し、その際にマリスと撃ち合って負傷した。彼は犯人のアジトを偶然発見し、ショーンを救った英雄として脚光を浴びる。傷も癒えたジミーは高飛びするため、懸賞金の400万ドルを受け取りにトムの前に現れた。だが、彼を見たショーンの様子から、トムはジミーの正体に気づく。ジミーは銃で脅迫して金を要求、トムは銀行へ行って口座に振り込むことを提案した。だが、機転をきかせた彼の連絡で、ホーキンスらFBIが現場に急行。警官に発見されたジミーは、市街で銃を乱射して逃走。その後を追ってジミーをとらえたトムは激しく殴りつけ、彼の銃を拾って構えた。追い詰められたジミーがもう一丁の銃を撃とうとした時、トムが正当防衛で銃で撃ち、次の瞬間、ジミーは警官隊の一斉射撃に倒れた。
1-43. ピノイ・サンデー
監督 ウィ・ディン・ホー
出演 エピィ・キソン,
バヤニ・アグバヤニ,
アレッサンドラ・デ・ロッシ,
メリル・ソリアーノ,
ジュリア・チェン
2009年・台湾、日本、フィリピン、フランス ()
解説
台湾における外国人出稼ぎ労働者の現実と、見果てぬ夢をコメディーで描いたロード・ムービー。第10回NHKアジア・フィルム・フェスティバルにて上映。
ストーリー
家族と離れ、台北で働くフィリピンからの出稼ぎ労働者、マヌエルとダド。
この街には同郷の労働者も多い。
マヌエルは美人のセリアに夢中、ダドは妻子がいる身でありながら、アナとダブル不倫中。
しかし、他にこれといって楽しみが有る訳ではない。
工場の寮の屋上にソファを置き、ビール片手に星空を眺めたい…、マヌエルはささやかな夢を語る。
そんなある日曜、マヌエルとダドは、道端に捨てられた真っ赤なソファを見付ける。
気乗りしないダドも、マヌエルに説き伏せられ、早速ソファを寮に運ぶことに。
こんなに大きなソファを担いだふたりは、果たして門限までに寮に戻れるのか…。
1-44. トゥルー・ヌーン
監督 ノシール・サイードフ
出演 イワノビチ:ユーリー・ナザーロフ,
ナシバ・シャリポワ,
ナスリディン・ヌリディノフ
2009年・タジキスタン
解説
ノシール・サイードフ監督:
タジキスタン出身。テレビ番組の演出、ドキュメンタリーを手掛けながら、バフティヤル・フドイナザーロフ監督の助監督として「ルナ・パパ」などの作品に関わる。本作が長編監督デビュー。ソ連崩壊後初めてのタジキスタン製作映画。
ストーリー
ソ連崩壊の少し前。タジキスタンとウズベキスタンの境近くに二つの村があり、人々は仲良く暮らしていた。上の村の気象観測所に駐在するロシア人キリル・イワノビチは、遠く離れた家族のもとに戻りたがっていたものの、叶わずにいた。 弟子としてかわいがっている美しい村娘ニルファが下の村に嫁ぐことになり宴の準備が進む中、二つの村の間にたいへんなことが起こる。村の人々のために奔走するキリル。やがて婚礼の日が訪れ、花嫁が下の村に向かう正午がやってくるのだが……。
1-45. キャプテン アブ・ラーイド
監督 アミン・マタルカ
出演 ナディム・サワルハ,
ラナ・スルターン,
ガンディー・サーベル
2007年・ヨルダン
解説
ストーリー
アンマンの国際空港で清掃員として働くアブ・ラーイドは妻にも先立たれ、おだやかな老いの日々を過ごしていた。そんなある日、ゴミ箱からパイロットの帽子を拾って家に持ち帰ったことで彼の暮らしが少し変わる。アブ・ラーイドを本物の機長だと思いこんだ子供たちに本で読み知った外国の話をするようになり、決して豊かではない彼らの生活に関わるようになっていくのだった。子供たちの1人ムラードは、アブ・ラーイドが偽機長だと主張する。しかしムラードは父親の暴力に人知れず苦しんでいた。
1-46. 軽蔑
監督 ジャン=リュック・ゴダール
出演 ブリジット・バルドー,
ミシェル・ピコリ,
ジャック・パランス,
ジョルジア・モル,
フリッツ・ラング
1963年・フランス・イタリア
解説
ゴダールの長篇劇映画第6作である。アルベルト・モラヴィアの同名小説を原作に、当時、2年前に結婚したばかりの妻アンナ・カリーナとの愛の問題に苦悩したゴダールが、自己を投影し、愛の不可能性を描いた。当時の日本同様、斜陽化著しいヨーロッパの映画産業での映画づくりを描き、ハリウッド一辺倒の世界への不安も描かれている。ドイツのサイレント映画の巨匠で、戦後アメリカのB級映画作家となったフリッツ・ラングが本人役で出演し、愛の問題にも映画産業の問題にも的確な言説を吐いている。
ストーリー
女優カミーユ・ジャヴァル(ブリジット・バルドー)と脚本家のポール・ジャヴァル(ミシェル・ピッコリ)は夫婦である。夜、ふたりのアパルトマンのベッドルームでの会話は無意味、でもそれは夫婦らしいものであった。
翌朝、ポールはアメリカから来た映画プロデューサー、ジェレミー・プロコシュ(ジャック・パランス)と会った。ジェレミーはフリッツ・ラング(本人)が現在撮影中の映画『オデュッセイア』があまりにも難解であるとし、この脚本のリライトをポールに発注してきた。昼になって、カミーユが現れ、夫妻はジェレミーに自宅に誘われた。自宅でジェレミーは、カミーユをカプリ島でのロケーション撮影に来ないかと言う。それは夫が決めること、とカミーユは答えた。
アパルトマンに帰った後のポールとカミーユは、なぜかしっくりこない。夜、ふたりは別々の部屋で寝ることになる。ジェレミーから再び、カミーユへのロケのオファーの電話があった。ポールはポールで、本人次第だと答えてしまう。電話の後で激したカミーユは、ポールを軽蔑すると言い放つ。ジェレミーの誘いで映画館に行った後、カミーユはオファーを承諾した。
カプリ島。ここにはジェレミーの別荘がある。撮影現場でラング監督とはやはりうまくいかないジェレミーは、カミーユに、別荘へ戻ろうと言う。カミーユはポールを一瞥するが、ポールは、カミーユがジェレミーと別荘に帰ることを軽く承諾した。ポールは、それよりも、ラング監督との映画『オデュッセイア』の問題について議論をつづけたいのだ。
遅れて別荘に着いたポールは、カミーユに、あの日ポールに言い放った「軽蔑」ということばの真意を問いただす。答えはなかった。
翌朝、ポールに手紙が届く。そのカミーユからの手紙には、ジェレミーとローマへ発つと書かれていた。おなじころ、ハイウェイで派手な衝突事故が起きていた。大型車にぶつかり大破したスポーツカーには、血まみれの男女の死体があった。ジェレミーとカミーユの変わり果てた姿であった。
1-47. パリは霧にぬれて/雨の訪問者
パリは霧にぬれて
監督 ルネ・クレマン
出演 フェイ・ダナウェイ,
フランク・ランジェラ,
バーバラ・パーキンス,
カレン・ブランゲルノン,
レイモン・ジェローム
1971年・フランス (東和)
解説
現代の高度に発達した産業社会の緊張によって生み出される不安と恐怖に苛まれ疲弊する現代人の心理状態を描出するサスペンス・ドラマ。製作はロベール・ドルフマン、監督は「雨の訪問者」 のルネ・クレマン、アーサー・カバノーの小説「子供たちがいなくなった」をクレマンと「黒衣の花嫁」 のダニエル・ブーランジェが共同脚色、シナリオはシドニー・ブックマンとエリナー・ペリーの共同、撮影はアンドレア・ヴァインディング、音楽はジルベール・ベコーが各々担当。出演は「小さな巨人」 のフェイ・ダナウェイ、「わが愛は消え去りて」 のフランク・ランジェラ、「哀愁の花びら」 のバーバラ・パーキンス、カレン・ブランゲルノン、レイモン・ジェローム、モーリス・ロネなど。
ストーリー
最近になって、時として記憶を失ったり、自失するジル(F・ダナウェイ)は今日も、ふと気がついたときには、セーヌを行き来する貨物船に乗っていた。はっとしたジルは、カフェに向い、夫に電話をかけた。いきなり夫のいら立った声がはね返ってきた。家に戻ると、夫のフィリップ(F・ランジェラ)とのいつもの耐え難い会話が待っていた。とげとげしい言葉のやりとりのあとの夫の異常ないたわりにジルは、ますます混乱を深めざるを得なかった。フィリップとジルはパリに住むアメリカ人夫婦で、二人の間には八才になるキャシーと四才のパトリックがいた。フィリップはいまは著述家として生計を立てているが、アメリカでは電子工学の会社でその明晰な能力を発揮し、現代科学の最先端に立っていた。ところが、何年かのち突然会社をやめ、逃れるようにフランスにやってきたのだ。ジルの精神異常はますます激しく、最近はすっかり親しくなった階下のアメリカ人シンシア(B・パーキンス)に何かと頼ってしまうことが多くなった。しかしシンシアはよくジルの小さな思いちがいをこまかく指摘し、そのたびジルは新たなショックを受けた。そんな状態のジルが、小型車を運転していて、事故を起してしまった。ところが自宅に帰ったジルに花束が届き、一通の手紙が添えてあった。急いで戻ってきたフィリップはそれを見て戦慄した。彼はまさに手紙の主から脅迫を受けていたのだ。数年前、電子工学に携さわっていたフィリップはいつしか産業スパイの役割まで担っていたのだ。フィリップはそんな息づまるような生活から逃れて、パリにやってきたのだ。ところが、組織は彼をまだ解き放していてはくれなかったのだ。クリスマスも近いある黄昏、恐れていた事件が起った。サーカスの帰り、セーヌにかかる橋の上で二人の子供が忽然と姿を消したのだ。捜査はまずノイローゼのジルに向けられた。必死に証言するフィリップだが、フィリップにはわかっているのだ。相手は“彼ら”なのだ。しかし必死の捜査を続ける警察は、遂にジルから事件の鍵となるべき証言を得たのだ。子供たちが姿を消す直前デパートでかつてベビー・シッターとして家へ出入りしていたハンセンなる女性(K・ブランゲルノン)の姿を見たというのだ。子供たちは隠れ家で発見された。ハンセンを手先に使ったのは何とシンシアであった。そしてシンシアこそ組織が送りこんだ人物であったのだ。
雨の訪問者
監督 ルネ・クレマン
出演 チャールズ・ブロンソン,
マルレーヌ・ジョベール,
ジル・アイアランド,
マーク・マッツァ,
ガブリエレ・ティンティ
1970年・フランス (日本ヘラルド映画)
解説
雨の降るある日、不気味な男が訪れ、ひとりの女が殺人事件にまきこまれて行く。製作は「さらば友よ」 のセルジュ・シルベルマン、監督は「パリは燃えているか」 のルネ・クレマン。脚本は、フランス推理小説界の第一人者である「シンデレラの罠」 のジャン・セバスチャン・ジャプリゾのオリジナル。撮影はアンドレア・ヴァインディング、音楽は「白い恋人たち」 のフランシス・レイ、編集はフランソワーズ・ジャヴェがそれぞれ担当。出演は「さらば友よ」 のチャールズ・ブロンソン、「ある日アンヌは」 のマルレーヌ・ジョベール、「野性の眼」 のガブリエレ・テンティ、ジル・アイアランド、マーク・マッツァ、ジャン・ガヴァンなど。
ストーリー
その日は雨が降っていた。マルセイユにほど近い海岸町−−バスから、グレイのコートに赤いバッグをさげた男が降り立った。メリー(M・ジョベール)は、いぶかしそうにその男を見た。この町には訪れる人も余りなかったからだ。町の、洋服屋で、メリーはその男を見た。というより、その男がメリーをつけているような不気味さがあった。そしてその夜、夫トニー不在の家でメリーはその男に襲われた。夫は飛行機のパイロットで留守がちだ。メリーは、ショット・ガンで地下室にいる男を殺した。証拠を焼き捨て、死体は海へ−−。翌日、友人の結婚式で、メリーはドブスというアメリカ人(C・ブロンソン)と知り合った。がっしりして、口ヒゲをたくわえた男は、「なぜあの男を殺した」といきなり聞いてきた。警察も、その殺人事件で動きだした。だが、メリーはドブスに、自分は殺しなどやらない、と言い張った。ドブスの目当ては殺された男のもっていた赤いバッグだった。ドブスはアメリカの陸軍大佐。その赤いバッグには大金がかくされていたのだ。だが、メリーが駅でみつけた赤いバッグには金などなく、夫のトニー(G・テンティ)の写真が入っていた。写真の裏には自分たちの住居が書かれてある。トニーほどうやらパイロットという職業をいいことにして、方々で女をつくり密輸にも関係していたらしい。警視のトゥーサン(J・ギャベン)も友人のニコール(J・アイランド)もくさい。自宅に侵入し、ドブスはメリーをアルコール攻めで拷問した。やがて、殺された男の情婦が犯人としてあげられ、メリーは自分の車の中に金の入ったバッグを見つけた。だが、ドブスはしつようにメリーにつきまとう。被害者の情婦の住んでいたパリを訪れたメリーは、うさんくさい男たちに拷問されたが、かけつけたドブスに救われた。一体メリーに何が起ったのだろう? 雨の訪問者も、金も、何もかも空想好きなメリーの夢だったのだろうか? 本当の犯人は、逮捕された情婦なのかも知れない。友人のニコールと夫との関係を知ったメリーは動てんした。すべてが信じられない悪夢のようだ。やがてドブスはメリーのもっていた大金を手に入れ、雨の午後に起ったことのすべてを知った。海から引き上げられた死体の手の中から、メリーのドレスのボタンが出てきた。だが、不思議なことにドブスはメリーを捕えなかった。証拠のボタンを返しただけ。夫と共にロンドンへ去るメリーを残して、ドブスは港の方へ去って行った。
1-48. ホリデイ
監督 ナンシー・マイヤーズ
出演 キャメロン・ディアス,
ケイト・ウィンスレット,
ジュード・ロウ,
ジャック・ブラック,
イーライ・ウォラック
2006年・アメリカ (UIP)
解説
C・ディアスとJ・ロウ、K・ウィンスレットとJ・ブラック。英米で2組のカップルの恋が同時進行する大人のラブ・ストーリー。監督は「恋愛適齢期」 のナンシー・メイヤーズ。
ストーリー
ロンドンの郊外に住む新聞記者のアイリス(ケイト・ウィンスレット)は、三年間も想い続けてきた同僚のジャスパー(ルーファス・シーウェル)が目の前で他の女性と婚約発表したことで、クリスマス直前だというのに涙に暮れていた。一方、ロサンゼンルスで映画の予告編製作会社を経営するアマンダ(キャメロン・ディアス)は、恋人の作曲家イーサン(エドワード・バーンズ)の浮気が原因で破局。アイリスとアマンダはパソコンを通じて知り合い、お互いに環境を変えてリフレッシュするために二週間の“ホーム・エクスチェンジ”を行う。雪の舞うロンドン郊外のコテージに到着したアマンダは、アイリスの兄グラハム(ジュード・ロウ)に出会う。初対面にもかかわらず打ち解けた二人は、早くもベッドを共にする。グラハムをプレイボーイだと思い込んだアマンダは、あくまで休暇中の遊びだと割り切ろうとするが、やがてグラハムの実情を知る。彼は二年前に妻に先立たれてから、シングルファーザーとして二人の幼い子供を育てていたのだ。これをきっかけに、アマンダはグラハムとの恋に本気になる。一方、太陽の光が降り注ぐロサンゼルスの豪邸にやってきたアイリスは、アマンダの仕事仲間だという映画音楽作曲家のマイルズ(ジャック・ブラック)と出会う。人の好い彼と、そしてかつてハリウッドの有名脚本家であった老人、アーサー(イーライ・ウォラック)との交流により、アイリスの心には新しい動きが起こり始めた。しかもマイルズは、恋人のマギー(シャニン・ソサモン)に浮気されていることを知り、アイリスとマイルズは似た者同士としてますます接近。そんな時、あのジャスパーが調子よくアイリスを訪ねてくるが、彼女は動揺しながらも彼を拒否。そして新しい恋に踏み出したアマンダとグラハム、アイリスとマイルズは、四人で仲良くパーティーを開くのだった。