5-1. シャム猫FBI ニャンタッチャブル

監督 ロバート・スティーヴンソン
出演 ヘイリー・ミルズディーン・ジョーンズドロシー・プロバイン
1965年・アメリカ(ウォルト・ディズニー映画)

解説
ザ・ゴードンズの「秘密の猫」を原作に、彼自身とビル・ウォルシュが共同で脚色し、「メリー・ポピンズ」 のロバート・スティーヴンソンが監督したコメディ。撮影はエドワード・コールマン、音楽はボブ・ブラナーが担当した。出演は「ポリアンナ」 のヘイリー・ミルズ、「猛犬ご注意」 のディーン・ジョーンズ、「グレート・レース」 のドロシー・プロバイン、ロディ・マクドウォール、「三匹荒野を行く」 のシャム猫シン・キャットなど。

ストーリー
本名ダーン・キャット、愛称をDCというシャム猫は、ランドール家の誇り高き猫で、とくに妹娘のパティ(ヘイリー・ミルズ)にかわいがられていた。ある日、このDCが若い男の買い込んだ魚につられて、その男のアパートにまぎれこんでしまった。ところがそこは2人組銀行強盗の隠れ家で、銀行の出納係のミラーが、人質として連れ込まれていた。ミラーは突然迷い込んだシャム猫を見て、強盗たちの隙をうかがい、自分の腕時計の裏に「助けて」と刻みこみ、外へ出してやった。さてDCの首の腕時計を発見したパティは、すぐそれが今重大ニュースで流されている銀行強盗事件に関係ありと感づき、早速FBIへ飛んで行った。そして若くてハンサムな青年ジーク・ケルソー(ディーン・ジョーンズ)が捜査に当たることになった。ジークはDCの首環に新型無線機をとりつけ、その発信電波を追跡するという科学的戦法をとった。だが、DCは気まぐれに夜遊びして歩くだけで一向に目的とする強盗の隠れ家へ行かず捜査は少しも進展しなかった。しびれをきらしたFBIは、遂に捜査中止を決定した。こんなことではあきらめないパティは、お人好しの時計屋をくどきおとし、DCがつけていた婦人腕時計は確かに誘拐されたミラーのものだという偽の電話をFBIにかけさせることに成功した。この電話情報にジークは俄然自信をとりもどし、再び事件の捜査を開始した。そしてジークはやっと銀行強盗の隠れ家を発見したが、彼に協力したパティもろとも捕虜にされてしまった。ところが突如、牙をむき出し爪をたてたDCが強盗たちに襲いかかった。ジークはその隙をついて、強盗たちに飛びかかり見事ねじふせてしまった。




5-2. ユアン少年と小さな英雄

監督 ジョン・ヘンダーソン
出演 ボビーオリバー・ゴールディングジェームズ・コスモ
2005年・イギリス(アルバトロス)

解説
19世紀のスコットランドに実在した“忠犬ボビー”の実話をもとにした感動作。亡き主人の墓から動こうとしないテリア犬と、それを見守る少年との絆を温かに映し出す。

ストーリー
1958年、スコットランドのエディンバラ。貧困地区に母と暮らす少年ユアン(オリバー・ゴールディング)は、警察官ジョン・グレイのテリア犬ボビー(ボビー)と大の仲良し。しかし病に倒れたグレイはユアンに偉人伝を渡し、この中のひとりのようになってほしいと、グレイは別れの言葉を残す。深い悲しみに暮れるボビーは、主人の眠る教会の墓地に忍び込み、そこで暮らすようになる。この教会を受け持つリー牧師(グレッグ・ワイズ)は、貧困地区復興を説く解放的な考え方の持ち主。しかしリー牧師を目の敵にする地元の資本家、スミシー(ショーン・パートウィー)と、孤児院の理事ジョンソンは墓地に佇むボビーの存在を訝しく思っている。ある夜、貧困地区の家屋が突然崩壊してしまう。がれきに埋もれたユアンはボビーに助け出されるものの、母親は死に、彼は孤児となる。そのままジョンソンが経営する孤児院に引き取られ労働を強いられるユアン。一方、ボビーは懸命の探索の末、ユアンの居場所をつきとめる。ユアンはボビーの協力を得て孤児院からの脱出を成功させる。その頃、街では登録犬制度が施行されはじめていた。ジョンソンとスミシーは、ボビーを未登録犬として通報。ボビーは捕獲され動物収容所に入れられてしまう。ボビーに対する判決は、正午に法廷で検討されることになった。ユアンは大胆にも市長チャンバース(クリストファー・リー)の執務室に侵入し、必死で助けを乞う。そして、今まさにボビーの判決が下ろうとしていたとき、ボビーを連れたチェンバースが法廷に現れる。ボビーは市が運営する教会に住む犬であり、ボビーは市長彼自身の犬だと、チェンバースは主張。しかし、その論法は有効でないと裁判官に判断されてしまう。もはやボビーを助ける手段はないのか。聴衆席にいたユアンにあるアイディアがひらめく。それは、かつてボビーの主人グレイにもらった偉人伝からヒントを得た妙案だった……。




5-3. 理由

監督 アーネ・グリムシャー
出演 ショーン・コネリーローレンス・フィッシュバーンケイト・キャプショー
1995年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
猟奇殺人の真相を追う法律学者の活躍と、事件に秘められた意外な真実を描くサスペンス。ジョン・カッツェンバックの同名小説を「マンボ・キングス わが心のマリア」 のアーネ・グリムシャーの監督で映画化。主演はエグゼクティヴ・プロデューサーも担当した「グッドマン・イン・アフリカ」 のショーン・コネリー。製作はリー・リッチ、グリムシャー、スティーヴ・ペリー、脚本は「ダイ・ハード」「逃亡者(1993)」 のジェブ・スチュアートと「シャレード」「料理長殿、ご用心」 のピーター・ストーン、音楽は「逃亡者(1993)」 のジェームズ・ニュートン・ハワード、撮影は「男が女を愛する時」 のラヨシュ・コルタイ、美術はパトリシア・フォン・ブランデンスタイン、編集はウィリアム・A・アンダーソン、共同製作はゲイリー・フォスターとアーネ・ラインハートがそれぞれ担当。共演は「ミルク・マネー」 のエド・ハリス、「ボビー・フィッシャーを探して」 のローレンス・フィッシュバーン、「めぐり逢い(1994)」 のケイト・キャプショー、「黒豹のバラード」 のブレア・アンダーウッドなど。

ストーリー
死刑反対論者であるハーバート大学の法学部教授ポール・アームストロング(ショーン・コネリー)の許に、エヴァン・ジェリン(ルビー・ディー)という老婦人がやってきた。少女誘拐殺人の濡れ衣を着せられ、死刑監房に入れられている孫の命を助けて欲しいという彼女の申し出を一度は断ったポールであったが、もと弁護士の妻ローリー(ケイト・キャプショー)の説得で、事件の解明に乗りだすことに。フロリダに飛んだポールは刑務所のボビー・アール(ブレア・アンダーウッド)と面会、彼は警官タニー・ブラウン(ローレンス・フィッシュバーン)らの苛酷な取調べに屈し、自分が犯人であると告げたと語る。ポールは事件の起きた町オチョビーに赴き、閉鎖的な町の実体を垣間見る。そして黒人というだけで煙たがられていたボビーの身の上と、彼を犯人に仕立てるべくおざなりな捜査が行なわれていたことを確信する。再度刑務所に行ったポールはボビーの口から、同じ死刑囚にして連続殺人鬼のブレア・サリバン(エド・ハリス)こそ真犯人であると知らされ、そのブレアも誇らしげに自分がやったと語った。ボビーの無実を立証できる様々な証拠を手にしたポールは再審を要求、ボビーは勝訴し釈放された。ところが、ポールの妻ローリーと娘がボビーに誘拐される。ボビーの本当の目的はローリーを殺すことだった。ボビーは少女殺人事件の前にも犯罪を犯して逮捕されており、その時警官たちの虐待に遭って去勢されてしまった。その事件の担当弁護士がローリーだった。彼女を逆恨みしたボビーは復讐を決意するが、数年後に犯した少女殺しのため刑務所に入れられてしまった。目的を達成するためには無実を勝ち取って出所するしかない。そこで敏腕な法律学者であり、ローリーの夫でもあるポールに白羽の矢を立てたのだ。ポールは、ボビーが真犯人であると見抜いていたタニーと協力し、家族の命を救う。




5-4. 奇跡の旅

監督 デュウェイン・ダンハム
出演 ロバート・ヘイズキム・グライストヴェロニカ・ローレン
1993年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
飼主一家の事情で遠く離れた家に預けられた犬二匹と猫一匹が、家族に逢うために冒険の旅に出る姿を描くアニマル・アドヴェンチャー・ドラマ。監督は、デイヴィッド・リンチ監督作品の編集者として頭角を現し、TV版「ツイン・ピークス」 の3つのエピソードを演出したデュウェイン・ダンハム。本作が劇場用映画デビュー作となる。製作はフランクリン・R・レヴィとジェフリー・チャーノフ。エグゼクティヴ・プロデューサーはドナルド・W・アーンストとカーク・ワイズ。カナダの女流作家シーラ・バーンフォードの1960年代のベストセラー小説Incredible Journeyをもとに、「アダムス・ファミリー」 のキャロライン・トンプソンと「美女と野獣(1991)」 のリンダ・ウールヴァートンが脚本を執筆。撮影はリード・スムート。音楽はブルース・ブロートンが担当。アニマルコーディネーターはジョー・カンプ。この原作は1963年に「三匹荒野を行く」 のタイトルで映画化されているが、前作では動物たちの心理をナレーションで説明していたのに対し、本作では3匹自身にセリフをしゃべらせるというスタイルになっている。3匹の動物たちの声の出演は、「ドク・ハリウッド」 のマイクル・J・フォックス、「天国は待ってくれる」 のドン・アメチー、「星の流れる果て」 のサリー・フィールド。出演は「フライングハイ」 のロバート・ヘイズ、「ホワイ・ミー?」 のキム・グレイストほか。

ストーリー
ピーター(ベンジー・タール)、ホープ(ヴェロニカ・ローレン)、ジェイミー(ケヴィン・シェヴァリア)の3人兄弟の母ローラ(キム・グレイスト)は、ボブ(ロバート・ヘイズ)と再婚することになった。しかし子供たちは新しい父親になかなかなじめない。しかもボブの仕事の都合で引っ越すことになった新しい家はペット厳禁で、ゴールデン・レトリバーのシャドウ(声: ドン・アメチー)とヒマラヤンのサシー(声: サリー・フィールド)と、アメリカン・ブルドッグのチャンス(声: マイクル・J・フォックス)と別れなければならなくなった。シェラネヴァダの麓に住むケイト(ジーン・スマート)に預けられた3匹は、家族たちのことが心配でたまらず、ケイトの留守中荒野へと旅立った。最初はお互いになじめなかった3匹だったが、グリズリーと出会ったり、急流に流されたサシーが九死に一生を得たりといった冒険の旅を続けるうち、強い心の絆で結ばれていく。その頃、3匹の失踪を知った子供たちはパニック状態になるが、ボブが忙しい仕事の合間にペット捜索願いのビラを作っていることを知り、子供たちはボブを少し見直す気になる。旅を続ける3匹は、途中で迷子の女の子を助けるが、女の子を保護した捜索隊の一人がビラで見た3匹だと気づき、一家に連絡を取って動物保護センターに連れていくが、3匹はそこを野良犬収容所と勘違いして脱走を計る。そしてようやく山を越えると懐かしい町が眼下に広がった。しかしその時、シャドウが深い泥穴に転落してしまった。チャンスとサシーはなんとか助けようとするが、どうにもならず、家族のもとへ助けを呼びに急ぐ。家族の皆は家で3匹を待っていた。チャンスとサシーに少し遅れて、自力で脱走したシャドウも帰って来て、冒険の旅は終わりを告げるのであった。




5-5. チャイナタウン

監督 ロマン・ポランスキー
出演 ジャック・ニコルソンフェイ・ダナウェイジョン・ヒューストン
1974年・アメリカ(パラマウント映画=CIC)

解説
アメリカ西海岸最大の近代都市としての様相をととのえつつあった1930年代のロサンゼルスを舞台に、政治的陰謀に巻き込まれた私立探偵の活躍を描く。製作はロバート・エヴァンス、監督は「マクベス(1971)」 のロマン・ポランスキー、脚本は74'年度のアカデミー脚本賞に輝くロバート・タウン、撮影はジョン・A・アロンゾ、音楽はジェリー・ゴールドスミスが各々担当。出演はジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン、ペリー・ロペス、ベリンダ・パーマーなど。日本語版監修は高瀬鎮夫。テクニカラー、パナビジョン。1974年作品。

ストーリー
私立探偵ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)の事務所に、ミセス・モーレイと名乗るダム建設技師の妻が現れ、夫の浮気の調査を依頼した。ギテスは早速行動を開始した。まずモーレイ技師の身辺を洗い、彼がロサンゼルス川に異常な関心を持っていること、町をあげての新ダム建設には地盤がゆるくて危険だという理由で反対であること、そして若い娘のような恋人がいるらしいことをつきとめた。更に、モーレイは妻イブリンの父で町の実力者のノア・クロス(ジョン・ヒューストン)と、何かで対立しているらしかった。しかしギテスには、依頼された問題以外の争いや、水資源問題などどうでもよかった。だが、事件は意外な事が発端となった。モーレイの浮気がゴシップ新聞で暴露され、弁護士を共なったモーレイ夫人(フェイ・ダナウェイ)が名誉きそんで訴えるべく事務所に乗り込んできたのだ。しかも、夫人は最初に依頼してきた女とは違う人間だった。すると最初の女は何者で、何の目的があったのか。かつてチャイナタウンの警官だったギテスの第六感がはたらいた。数日後、モーレイが放水溝から溺死体となって発見された。貯水池に疑問を持ったギテスは、深夜、立入禁止の貯水池に忍び込むが、二人組の男に捕らえられてナイフで鼻を切られてしまう。こうなったら意地でもあとにはひけない。ギテスはイブリンに接しているうち、次第に事件の核心へと近づいていった。そこにはイブリンの父クロスが大きく浮かび上がってきていた。ギテスに問いつめられたイブリンの告白によると、モーレイと親しくしていた娘はキャサリン(ベリンダ・パーマー)といい、クロスの娘だった。そして驚くべきことに、キャサリンの母はイブリンだった。15のときに力づくで父親に犯されたイブリンは、キャサリンを妊んだままメキシコへ家出し、そこで知り合ったモーレイと結婚したのだった。今度の事件は義父と娘婿との対立だった。クロスは既にロス市郊外の砂漠地帯を手広く買い占めていた。モーレイが新ダムを建設し、砂漠へ水を流せばそれによって厖大な利益がころがり込む筈だが、理想主義者のモーレイが同調しなかった。事件は次第に解決の方向に向かったが娘を父の手から守るためにメキシコに逃げようとしてチャイナタウンにひそんでいたイブリンがクロスに発見された。イブリンをかばうギテスは操作に当っていたかつての同僚のエスコバー警部補にクロスの悪行をまくしたてたが、警部補は耳をかそうとはしなかった。その間にクロスがイブリンの車に近づき、キャサリンを降ろそうとしたため、イブリンが彼の腕を撃ち、車をスタートさせた。走り去る車に警官が発砲し、車は停まった。一同が駆け寄ると、イブリンは絶命していた。(ユニヴァーサル映画=CIC配給2時間10分)




5-6. ロープ

監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ジェームズ・スチュアートジョン・ドールファーリー・グレンジャー
1948年・アメリカ(MGM)

解説
英国の劇作家で「ガス燈」 を書いたパトリック・ハミルトンの戯曲“Rope's end”を俳優・作家・監督であるヒューム・クローニンが脚色し、アーサー・ローレンツが脚本化したサスペンスもの。監督は「見知らぬ乗客」「サイコ」 のアルフレッド・ヒッチコック。撮影は「疑惑の影」 のジョセフ・ヴァレンタインと、「クオ・ヴァディス」 のウィリアム・V・スコール。レオ・F・フォーブステインが音楽を担当している。出演者は「裏窓」「めまい」「リバティ・バランスを射った男」 のジェームズ・スチュアート、「見知らぬ乗客」「夢去りぬ」 のファーリー・グレンジャー、「謎の大陸アトランティス」 やTV「ヒッチコック劇場」 のジョン・ドール、「断崖」「気球船探検」 のサー・セドリック・ハードウィック、「美しき被告」 のダグラス・ディック、コンスタンス・コリアらヒッチコック作品に出ている者が多い。製作は「私は告白する」 以後TVを手がけているシドニー・L・バーンステイン。なお事件の実際の時間と映画の時間とがぴったり同じになっている。

ストーリー
大きな窓からマンハッタンの摩天楼が一目で見渡せるニューヨークのあるアパートの一室、殺人は夕方、この部屋で行われた。フィリップ(ファーリー・グレンジャー)とブラントン(ジョン・ドール)という大学を出たばかりの青年2人が同級生だったデイビットを絞め殺して、死体を衣装箱に入れたのだ。動機など別にない。ただ自分たちがずば抜けて人より秀れていることを試したかったのだ。2人はもっとスリルを味わうために被害者の父(サー・セドリック・ハードウィック)、恋人(ジョアン・チャンドラー)、被害者の恋仇だったケネス(ダグラス・ディック)、伯母(コンスタンス・コリア)、青年たちの先生だった大学教授(ジェームズ・スチュアート)を招いて晩餐会を催す。死体入りの衣装箱の上にごちそうを並べて皆に食べさせたり、殺人に使ったロープで幾冊かの本を縛って父親に贈ったりして、腹の中で優越感を味わっていた。時間が経つにつれて、フィリップは犯した罪の恐ろしさに次第に冷静さを失っていくが、ブランドンは鋼鉄のような神経の持ち主で、教授がかつて世の中には法律など超越した超人がいてもいいといった言葉を思い出し、彼は死骸を教授に見せてやりたいというヒロイックな衝動にかられる。2人の異常さに感づいた教授は、偶然被害者の帽子を見つけて、殺人発覚の糸口をつかむ。一旦外に出た教授は煙草入れを忘れたと電話してから、再び部屋を訪れたが、フィリップはすっかりとり乱していた。教授に箱を開けて見せた時、日頃から説いていた殺人とは現実に人を殺すことではなく、より抽象的、学究的なものだったことを2人は発見するのだった。逆上したフィリップの拳銃をとり上げた教授は、空に向けてそれを発砲した。救急車がかけつけ、2人は法律で裁かれることになる。




5-7. オペラ座の怪人 

監督 ジョエル・シュマッカー
出演 ジェラルド・バトラーエミー・ロッサムパトリック・ウィルソン
2004年・アメリカ(ギャガ) 143分

解説
アンドリュー・ロイド=ウェバーの大ヒット・ミュージカルを完全映画化。オペラ座に暗躍する怪人と可憐な歌姫の愛憎模様が、豪華絢爛な美術と音楽をバックに展開する。

ストーリー
パリ、1919年。ドラマは過去へとタイムスリップを始める。かつては豪華絢爛だったパリ・オペラ座。その栄華を偲ぶ品々が、廃墟となった劇場でオークションにかけられていた。そこには、老紳士ラウル・シャニュイ子爵(パトリック・ウィルソン)と年老いたバレエ教師、マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)の姿があった。やがて、謎の惨劇に関わったとされるシャンデリアが紹介され、ベールが取り払われると、ふたりは悲劇の幕開けとなった1870年代当時へと一気に引き戻される。パリ、1870年代。オペラ座では奇怪な事件が続いていた。オペラ『ハンニバル』のリハーサル中、プリマドンナのカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)の頭上に背景幕が落下した。腹を立てたカルロッタは役を降板。代役を務めたのは、バレエダンサーのクリスティーヌ(エミー・ロッサム)だった。喝采を浴びた彼女は、幼馴染みのラウルと再会。だが、その喜びも束の間、仮面をかぶった謎の怪人・ファントム(ジェラルド・バトラー)にオペラ座の地下深くへと連れ去られてしまう。地下の迷宮。そこには怪人の憎しみと哀しみがあった。クリスティーヌは、ファントムを亡き父親が授けてくれた‘音楽の天使’だと信じてきたが、地下の隠れ家で仮面をはぎ、その正体を知ってしまう。同時に彼の孤独な心と自分に対する憧れにも気づくのだった。その頃、オペラ座の支配人たちは、オペラ『イル・ムート』の主役にクリスティーヌを据えよというファントムからの脅迫状を受け取っていた。その要求を無視してカルロッタを主役に立てた舞台は大混乱。ついに殺人事件が起きてしまう。オペラ座の屋上。ふたりは永遠の愛を誓う。恐怖にかられたクリスティーヌは、ラウルにファントムの正体を打ち明ける。クリスティーヌを優しく抱くラウル。愛を確かめ合うふたりを、ファントムは怒りと哀しみの目で見つめていた。大晦日、仮面舞踏会で婚約の喜びに浸るクリスティーヌとラウルの前に、ファントムは自作の新作オペラ『勝利のドン・ファン』を持って現れる。ファントムを追って迷宮に迷い込むラウル。それを助けたマダム・ジリーはファントムの暗い過去を語るのだった。『勝利のドン・ファン』初日。惨劇はその日に起きた。‘音楽の天使’への思慕にかられたクリスティーヌは、亡き父の墓地に出向く。心配して後を追ってきたラウルは潜んでいたファントムと決闘になるが、ファントムにとどめを刺そうとするラウルをとめたのは、クリスティーヌだった。『勝利のドン・ファン』の初日、厳重な警戒態勢の中、ファントムは大胆にも主役になりかわり、クリスティーヌとデュエットする。舞台で仮面をはぎ取るクリスティーヌ。怒ったファントムはシャンデリアを客席へ突き落として、クリスティーヌを再びさらう。消えたふたりを探すラウルは、やっとの思いで地下の隠れ家にたどり着くのだが……。




5-8. マザー・テレサ

監督 ファブリツィオ・コスタ
出演 オリヴィア・ハッセーセバスティアーノ・ソマラウラ・モランテ
2003年・イタリア(東芝エンタテインメント)

解説
インドを舞台に、人々に無償の愛を注いだマザー・テレサの波乱の生涯を描く伝記ドラマ。「ロミオとジュリエット」 の名女優オリビア・ハッセーが、マザーを力強く熱演。

ストーリー
1946年、インドのカルカッタ。カトリックの女子校で教鞭をとっていたマザー・テレサ(オリビア・ハッセー)は、イスラム教徒とヒンズー教徒の抗争に巻き込まれて負傷した者を校内に入れて手当したことから、修道院長(ラウラ・モランテ)と対立。ダージリンへの転任命令を受ける。その途上で行き倒れになった男と出会い、「私は渇く」と言う彼の言葉の中に、神の声を見出す。命令に背いてカルカッタに舞い戻った彼女は、「私の居場所は修道院の中ではありません。最も貧しい人々のところです」と言って、修道会に院外活動の許可を求める。得られた回答は、「院外活動をしたいなら一市民に戻れ」というものだったが、マザー・テレサの熱意を汲んだエクセム神父(ミハエル・メンドル)の口添えによって、決定はバチカンの手にゆだねられることになった。「これが神の望みであれば、必ず実現する」。そう信じるマザー・テレサは、バトナで医療と薬学の実地訓練を受けながら、バチカンからの返事をじっと待ち続けた。やがてバチカンから送られてきたのは、院外活動の許可を伝える手紙だった。晴れて町へ出ることを許されたマザー・テレサは、新しい修道服である白い木綿のサリーに身を包み、貧困にあえぐ人々が住むストリートでの活動を開始した。子供たちに配る食糧を手に入れるため、市場で物乞い同然のことをするマザー・テレサの姿に、眉をひそめる修道院長。しかし、いっぽうには、彼女の活動を応援する者たちもいた。ヴァージニア(イングリッド・ルビア)をはじめとするかつての教え子たちだ。彼女たちボランティアの手を借りながら、マザー・テレサは、病人や孤児の世話をするための施設をこつこつと作り上げていく。4年後。修道会に属しながらの活動に限界を感じたマザー・テレサは、新しい教団“神の愛の宣教者会”を作りたいとエクセム神父に申し出る。それに応じてバチカンからやって来たのが、セラーノ神父(セバスティアーノ・ソンマ)だった。カルカッタに到着した彼は、さっそくマザー・テレサに会おうとするが、当の彼女の前には、すぐに解決しなければならない難問が山積みの状態だった。寺院を改装して開設した“死を待つ者の家”に対する地元住民の猛抗議。孤児院の違法性を主張し、閉鎖を求める役所の命令。そのひとつひとつに、誠意と情熱で立ち向かっていくマザー・テレサ。しかし、それを知らないセラーノ神父は、なかなか自分に会おうとしない彼女を尊大な人間だと思いこみ、バチカンに否定的な報告を送ろうとする。が、実際、彼の前に現れたマザー・テレサは、尊大さのかけらもない人物だった。「私は、神が手に持つペンにすぎないのです」と語るマザー・テレサの無私無欲な姿勢に、深い感銘を受けるセラーノ神父。彼は自らもその地にとどまり、マザー・テレサのかたわらで同じ道を歩もうと決意する。1965年。教団の活動がますます活発になっていくなかで、マザー・テレサはハンセン病患者のための“平和の村”を建設する計画に着手する。これに対しては、「マザーのせいで、カルカッタに不幸と貧困のレッテルが貼られてしまった」と、インド国内から多くの批判の声があがったが、それが大々的に報じられたことにより、世界各国から多くの寄付金が寄せられるようになった。「神が望めば資金は集まる。神が望まなければあきらめる」と、いつものように粘り強く、精力的に、資金の調達と計画の推進に走り回るマザー・テレサ。書類の不備によって建設計画が頓挫しかけたとき、彼女はバチカンに乗り込み、教皇に直談判することもした。その努力が実り、村の建設はようやく再開にこぎ着けたものの、完成までの道のりには予想外の困難がつきまとうのだった。




5-9. 恋愛睡眠のすすめ

監督 ミシェル・ゴンドリー
出演 ガエル・ガルシア・ベルナルシャルロット・ゲンズブールアラン・シャバ
2006年・フランス イタリア(アスミック・エース)

解説
鬼才ミシェル・ゴンドリ監督によるロマンティックなラブ・ストーリー。夢見がちな青年が、夢の中で思いをかなえようとする姿を幻想的なビジュアルとともに描く。

ストーリー
仕事も恋愛も何一つうまくいかずパッとしない人生を送ってきたステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、父の死をきっかけに長年暮らしてきたメキシコから母のいるパリに帰郷する。母親が大家をしているアパートに移り住み、ついでに就職先も見つけてもらうステファン。これでパッとしない生活も良くなる。ステファンはそう思っていた。だが会社に行ってみると、イラストレーターとして雇われたと思っていたのに現実はつまらないカレンダーの製版係だった。理想とかけ離れた退屈な仕事に早くも落胆するステファン。そんなある日、ステファンの部屋の隣に新しい住人が引っ越してくる。たまたま通りかかったステファンは引越し屋の不注意で怪我をしてしまい、隣人のステファニー(シャルロット・ゲンズブール)と彼女の友人・ゾーイに手当てしてもらう。しかしステファンは、引っ込み思案でシャイな性格のため、隣に住んでいることさえ言えない。やがてステファンはクールで知的なステファニーを好きになる。しかしあっさりふられてしまうステファン。そんな現実から逃避するため、ステファンは夢の中で彼女と恋愛するようになる。やがて思い込みの激しいステファンは、現実でもステファニーと「恋人同士」だと思うようになり、夢と現実がごちゃ混ぜになっていく。そんな妄想が止まらないステファンにステファニーが出した答えとは?




5-10. 想い出の微笑

監督 
出演 
1995年・アメリカ(劇場未公開)

解説
 女優のD・キートンが初監督したヒューマン・コメディ。愛する母親の死に直面した少年が、苦悩しつつも大人になってゆく様を描く。少年スティーブンは、ある日最愛の母が不治の病に冒されてしまったことを知らされる。そのため、彼は変人の伯父二人と暮らすことになる。彼らとの生活を通じて、スティーブンは人生の意味、個性とは何か、本当の価値とは何かをしだいに学んでゆく。

ストーリー
12歳のスティーヴンは、科学者の父親シドと、優しい母親セルマ、妹のサンディと暮らしていた。幸せな一家は、ある日、突然の不幸に襲われる。セルマががんに冒されていたのだ。母親の余命が少ないことを隠すシド。しかし、ふとしたことから母親が不治の病だと気付いたスティーヴンは、二人の伯父さんの所へ家出する……。最愛の母親の死に直面して動揺する少年が、変わり者の伯父たちとの生活を通して個性と価値観を学び、大人へと成長していく、ほろ苦くも心温まる上質のハートフル・コメディ。




5-11. 夜を楽しく

監督 マイケル・ゴードン
出演 ロック・ハドソンドリス・デイトニー・ランドール
1959年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
ドリス・デイと夫のマーティン・メルチャーが共同で主宰するアーウィン・プロ作品。ラッセル・ラウストクラレンス・グリーンのオリジナル・ストーリーを、「ペティコート作戦」 のコンビ、スタンリー・シャピロとモーリス・リッチマンが脚色し、「シラノ・ド・ベルジュラック」 のマイケル・ゴードンが監督したコメディ。撮影は「明日泣く」 のアーサー・E・アーリング、音楽をジョセフ・ガーシェンソンが担当。出演は「先生のお気に入り」 のドリス・デイ、「太陽の谷」 のロック・ハドソン、他にニック・アダムス、マルセル・ダリオ、セルマ・リッター、ジュリア・ミード、アレン・ジェンキンス、アレックス・ジェリー等。製作ロス・ハンターとマーティン・メルチャー。

ストーリー
室内装飾家のジャン・モロー(ドリス・デイ)が電話をかけようとすると、男が女と話しているのが聞こえた。この共同線の色男は恋歌まで歌い出すのだ。ジャンは怒鳴った。ケンカした。しょっちゅう電話で女をクドイて、いやなヤツ。顔は知らないけど。相手は歌謡曲の作者のブラッド・アレン(ロック・ハドソン)である。大変な女タラシ。ジャンが電話局に抗議したが、局の女の苦情係はブラッドに苦もなく丸めこまれ、甲斐もなかった。やむなく協定を結び、1時間を半分ずつ使用することにした。――ブラッドの友達ジョナサンは金持ちで、彼の歌曲を使うショーの金主だ。ジョナサンは恋をしていた。相手はジャンらしい。美人と聞かされて、ブラッドは興味を持つ。ジャンはトクイ先の富豪の息子トニーに誘われナイトクラブへ行くが、隣席に女ときていたのがブラッドだ。彼は、トニーが酔いつぶれたのを幸い、彼女に近づいた。西部の純真な田舎者、レックス・ステットソンと名乗った。ジャンは本気で彼を信じた。夜中に翌日のデイトを申し込んできたのが、共同線の相手とは知らなかった。ブラッドは次に自分の地声でレックスはイカサマ師だと電話し、彼女をからかうのだ。レックスことブラッドが彼女といっしょにいる時、入口にジョナサンが現れた。危うくロケンしそうになったが、うまくごまかし、おっぱらった。――ジャンはジョナサンに自分の恋を打ち明けた。彼がその相手を探偵に調べさせるとブラッドではないか。彼に自分の山荘で作曲に専念しろと命じた。ブラッドは抜け目なく彼女を一緒に連れていった。ジョナサンは気づいて後を追う。山荘での2人は恋を打あけ会った。楽譜から例の電話で恋歌を歌ういやらしい男であることがジャンにロケンした。女は猛烈に怒った。ダマシタワネ。その時ついたジョナサンが彼女を連れ帰った。訪ねてきたブラッドを見て、ジョナサンはうれしがった。この女タラシが嫌われた女に参ってしまったからだ。ジャンも偶然きたが、男に目もくれない。ブラッドはジャンの大酒のみの女中アルマに酒をのませ、一策をさずかった。彼のアパートの室内装飾を頼んだのだ。彼女は彼の部屋を思いきり悪趣味に飾りたてた。出来上がりをみて、ブラッドはアタマにきた。お前が使ったらどうだ。怒鳴って出ようとした時、彼女がひきとめた。むろん和解した。




5-12. ベッドかざりとほうき

監督 ロバート・スティーヴンソン
出演 アンジェラ・ランズベリーデイヴィッド・トムリンソンロディ・マクドウォール
1971年・アメリカ(ブエナ ビスタ映画)

解説
通信教育で猛勉強中のアマチュア魔女の魔法がまきおこすファンタジーとミュージカルとアドベンチャーを描く。原作はメアリー・ノートンの「魔法のベッド飾り」 。製作は「メリー・ポピンズ」 のビル・ウォルシュ監督はビル・ウォルシュと名コンビを謳われる「フラバァ・デラックス(新フラバー)」 のロバート・スティーヴンソン、脚本はウォルシュとドン・ダグラディ、撮影はフランク・フィリップス、音楽はアーウィン・コスタル、編集はコットン・ウォーバートンが各々担当。出演はアンジェラ・ランズベリー、デイヴィッド・トムリンソン、ロディ・マクドウォール、サム・ジャッフェ、ジョン・エリクソン、シンディ・オカラハン、ロイ・スイート、イアン・ウエイヒルなど。

ストーリー
第2時世界大戦の2年目、1940年の秋、イギリスでのお話。14歳のチャーリー(イアン・ウエイヒル)、12歳のキャリー(シンディ・オカラハン)、6歳のポール(ロイ・スナート)の兄弟は孤児となり、ドイツ空軍猛爆下のロンドンの街に放り出されたが、当局の手で海岸沿いの小さな町ペパリンジ・アイに疎開させられた。兄弟はエグランタイン(アンジェラ・ランズベリー)というオールド・ミスの家に預けられたが、この小母さんはとても好きになれるタイプではないので、夜陰に乗じて窓から抜け出し、ロンドンに逃げ帰ろうとした。が、ふと夜空を見上げた3人はビックリして逃げるのを中止した。実はエグランタインはロンドンのエミリアス・ブラウン魔法学校の通信教育を受けているアマチュア魔女で、一刻も早く魔法をマスターしてドイツ軍を撃退しようと、愛国心に燃えての猛勉強中なのである。その夜も虎の巻と首っぴきでホウキにまたがり飛行中に墜落した所を兄弟に見られてしまった次第なのだ。それが原因で打ちとけあったエグランタインと兄弟の許に、魔法学校を閉鎖するとの通知が舞い込んだ。あわてた4人は魔法のベッドで大空を飛びロンドンへ。魔法学校とは真っ赤な嘘で実はインチキ手品師のエミリアス(デイヴィッド・トムリンソン)が古本をタネに通信教育をやっていたのだから、逆に当人がびっくりする始末。古本が前半分しかなく忽ちタネ切れとなったのが学校閉鎖の真相だった。苦心惨憺の末、エグランタインがさぐりだした結果、呪文は“ナブンブ島”という伝説の国の魔法の宝石に隠されているということが解ったので、5人はベッドに飛び乗りナブンブ島へ−−やがてキング・ライオンが支配する漫画の動物大国ナブンブ島についた5人は、タイミングよく呪文を知り、ロンドンへ戻ってきた。エグランタインは博物館に陳列されている鎧、兜を身代わりに使うことにし、呪文をかけると鎧も兜も人間が着ているように動きだし、出動準備OK。ホウキにまたがったエグランタインは大空に舞い上がり、鎧、兜だけの無人軍隊に大逆襲を命じた。ドイツ軍はあわてふためき大混乱に陥り総退却。エグランタインは一躍英雄になり3人の兄弟も新しい家族ができて大喜び、彼女を愛するようになったエミリアスは、インチキ手品師から足を洗って軍隊に入り、国のために働く決心をするのだった。




5-13. ガス燈

監督 ジョージ・キューカー
出演 シャルル・ボワイエイングリッド・バーグマンジョゼフ・コットン
1944年・アメリカ

解説
パトリック・ハミルトンの舞台劇より、劇作家として著名なジョン・ヴァン・ドルーテン、「男は神に非ず」 の脚色監督および「たそがれの維納」 の脚色者ウォルター・ライシュ、「ドラキュラ(1979)」「フランケンシュタイン(1931)」 等怪奇映画「永遠に愛せよ」「ベンガルの槍騎兵」 等の脚色者ジョン・L・ボルダーストンの3人が協同脚色をし、「ロミオとジュリエット」「素晴らしき休日」 のジョージ・キューカーが監督した。撮影は「決断の谷」「冒険」 の近作、古くは「冬来りなば」 のジョセフ・ルッテンバーグの担当。「カサブランカ」 のイングリット・バーグマンと「運命の饗宴」「永遠の処女」 等のシャルル・ポワイエが主演するほか、「恋の十日間」「疑惑の影」 の新人ジョセフ・コットン、「断崖」「永遠に愛せよ」 のディム・メイ・ホイッティ、本作品にデヴュー後「ナショナル・ベルヴェット」「ドリアン・グレイの画像」 等に出演した新人エミール・ラミュウらが出演している。なおバーグマンは本作品で1944年アカデミー主演女優賞を得た。1944年度製作。

ストーリー
1870年のロンドン。オールクィスト家に起こった歌手アリス・オ ールクィスト嬢の殺人事件は未だ犯人があがっていなかった。アリスの姪ポーラはグレゴリー・アントンと結婚したが、良人の言に従い問題の家で結婚生活を営むことになった。ある日ハンドバックに入れたはずの首飾りが紛失して以来、グレゴリーはポーラが自分のしたことを少しも記憶していないといってことごとに彼女を責めた。そのあげく、彼女も精神病で死んだ彼女の母と同じく次第に精神が衰えて死ぬだろうというのだった。ポーラは良人の言を気にしながら一人不安な日を送っていたが、次第に自分の精神状態に自信を失い、夜ごとにポッと薄暗くなるガス燈の光も、天井に聞こえる奇怪な物音も、自分の精神の衰えているための錯覚かと焦燥にかられた。ある夜久し振りで良人と出かけた知人宅で時計を隠したといって良人から辱しめられたとき、彼女は堪え難い悲しみに襲われたがその様子を注視している若い男があった。彼はブライアン・カメロンという探偵で、少年時代憧れていた名歌手アリスの殺人事件には非常な関心をもっていた。彼はある夜グレゴリーの外出中家人の制止もきかずポーラに会い、彼女の叔母の事件についていろいろとポーラに語ってきかせ、また、彼女が決して精神に異常を来しているのではなく、良人の策略にすぎないこと、夜ごとに暗くなるガス燈の光も良人が閉鎖された屋根裏の部屋にいるためであることなどを説明した。ブライアンがグレゴリーの机をあけてみると、彼女が隠したと良人から責められた数々の品物が現われ、20年前のこの家の殺人事件にグレゴリーが重大な関係を持っていた事実を説明する手紙も発見される。やがて探し求めていたダイヤモンドを手に入れて現われたグレゴリーはブライアンにひかれてゆくのだった。




5-14. 戦場のピアニスト 

監督 ロマン・ポランスキー
出演 エイドリアン・ブロディトーマス・クレッチマンフランク・フィンレイ
2002年・ポーランド フランス(アミューズピクチャーズ)

解説
2002年カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)に輝く珠玉の感動ドラマ。鬼才ロマン・ポランスキーが自身の戦争体験を重ね、実在のピアニストの自伝を映像化した入魂作だ。

ストーリー
1939年、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻。ワルシャワのラジオ局でピアノを弾いていたウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)とその一家は、ユダヤ人に対するゲットーへの移住命令により、40年、住み慣れた我が家をあとにする。ナチスの虐殺行為がエスカレートする中、ウワディスワフはカフェのピアノ弾きとして日々を過ごす。42年、シュピルマン一家は大勢のユダヤ人と共に収容所へ送られるが、ウワディスワフは警察の友人の手で一人収容所行きを免れた。43年、ウワディスワフはゲットー脱出を決行。旧知のポーランド歌手ヤニナ(ルース・プラット)の手引きで隠れ家に移った彼は、僅かな食料で食いつなぎひっそり暮らし続けた。だが隣人に存在がバレて脱出、親友の妹ドロータ(エミリア・フォックス)と彼女の夫のもとを訪ね、新しい隠れ家に住む。夏になる頃、ワルシャワ蜂起が始まり街は戦場となった。ある晩とうとう、ドイツ軍将校(トーマス・クレッチマン)に見つかってしまったウワディスワフ。彼がピアニストてあることを告げると、将校は彼にピアノを弾かせた。演奏に感動した将校は、ウワディスワフをかくまってやり、その数週間後に終戦が訪れるのだった。




5-15. 罠にかかったパパとママ

監督 デイヴィッド・スウィフト
出演 ヘイリー・ミルズモーリーン・オハラブライアン・キース
1961年・アメリカ(日本RKO映画)

解説
エリッヒ・ケストナーの小説「双児のロッテ」 を映画化したホーム・コメディー。監督・脚色担当はデイヴィッド・スウィフト。撮影は「レッグス・ダイヤモンド」 のルシエン・バラード。音楽は「ボクはむく犬」 のポール・スミス。出演者はヘイリー・ミルズ(2役)、モーリン・オハラ、ブライアン・キース、チャールズ・ラグルズ、ウナ。マーケルなど。主題歌をトミー・サンズが歌っている。製作はウォルト・ディズニー。

ストーリー
湖畔のキャンプで知り合ったシャロン(ヘイリー・ミルズ)とスージー(ヘイリー・ミルズ)は、自分たちがあまりにもよく似ているので驚いた。ふとしたことで大喧嘩をした後、隔離キャンプへ入れられた2人は自分たちが双子の姉妹であることを知って大喜び。両親は2人が幼い時離婚してボストンとカリフォルニアに別れてしまったのだ。両親を和解させるために一計を案じた2人は、それぞれ入れ替わって帰宅した。パパ(ブライアン・キース)の方へ乗り込んだシャロンは、パパにヴィッキーという恋人があることを発見、電話でスージーに連絡した。弱ったスージーはママ(モーリン・オハラ)に本当のことを打ち明け、協力を要請した。祖父の力添えでママもモダンなニューヨーク・スタイルに着替えパパを訪ねた。姉妹の涙ぐましい努力にもかかわらずパパとママは意地の張り比べ。パパとヴィッキーの結婚も間近に迫った。困った姉妹はまったく同じ格好で両親の前に現れ、パパとママが一緒にキャンプへ行ってくれなければどちらがどちらか教えないと言い出した。これには両親も降参したようだがおさまらないのはヴィッキーである。姉妹は彼女をキャンプへひき出して“ヴィッキー退治”の大いたずらをやってのけた。心配して駆けつけたパパとママもどうやら仲直りしたようである。姉妹はようやく一緒に楽しく生活できるようになったのだった。




5-16. ポリアンナ

監督 デイヴィッド・スウィフト
出演 ヘイリー・ミルズジェーン・ワイマンリチャード・イーガン
1960年・アメリカ(日本RKO)

解説
エレナー・H・ポーター女史の小説を「罠にかかったパパとママ」 のデイヴィッド・スウィフトが脚色・監督したもの。撮影は「ハタリ!」 のラッセル・ハーラン、音楽はポール・スミス。出演者は「汚れなき瞳」 のヘイリー・ミルズ、「心のともしび」 のジェーン・ワイマン、「スパルタの若獅子」 のリチャード・イーガン、カール・マルデンなど。製作はジョージ・ゴリッツィン。この映画でヘイリー・ミルズはこの60年度のアカデミー特別賞を受賞。

ストーリー
両親に死なれ孤児になったポリアンナ(ヘイリー・ミルズ)は、ポリー・ハリント叔母さん(ジェーン・ワイマン)に引き取られた。そして叔母さんから最初に言われたことは、ハリントン家は町の名もハリントン通り、町の人たちがすべてハリントン家を手本にするから礼儀正しく振舞わねばいけない、ということだった。ある日、孤児院を抜け出てきたジミー少年と知り合ったポリアンナは、“町一番のいじわる爺さん”の庭へ入り込み捕まってしまった。が、“いじわる爺さん”は実は孤独で淋しがり屋であり、そんな気持ちのためいじわるをしていることが分かった。ポリアンナは明るく無邪気に話しかけた。そのため“いじわる爺さん”のいじわるもすっかり治ってしまった。孤児院新築費募集バザーの話が町の人たちの間に起こった。が、町のことはすべて自分がしなければ承知しないポリー叔母さんが頑強に反対した。その上、叔母さんはフォード牧師(カール・マンデル)に手紙を書き、日曜日の説教でバザーに反対するよう頼んだ。しかし、牧師はポリアンナの言う通り、バザーを開くよう進めたので叔母さんはすっかり怒ってしまった。バザーの晩、ポリアンナはジミー少年に誘われて家を抜け出した。そして町中の人たちの中で楽しいひとときを過ごした。夜遅く家に帰ったが玄関から入れず、木を登って部屋へ入ろうとし落ちて足を折ってしまった。その時以来、ポリアンナの寝たきりの生活が始まり、気持ちは暗く沈んでいった。ある日、そんなポリアンナの部屋に突然町の人たちが押し寄せてきた。足の骨折を知った町中の人たちが、彼女の太陽のように明るくやさしい気持ちを思い出しお見舞いに来たのだ。翌日、ポリー叔母さんに付き添われたポリアンナは、町中の人たちに見送られ、ボルチモアの病院へ手術をしに行くことになった。ハリントン駅から汽車で出発するポリアンナの顔には、以前のように明るい微笑が浮かんでいた。




5-17. プロヴァンス物語 マルセルの夏

監督 イヴ・ロベール
出演 フィリップ・コーベールナタリー・ルーセルディディエ・パン
1990年・フランス(アルバトロス)

解説
19世紀末の南フランスに生まれた少年マルセルとその周りの人々の交流をノスタルジックに描いた心優しきヒューマン・ドラマ。本作と「マルセルのお城」 の二部作で成っている。監督は「ぐうたらバンザイ!」 のイヴ・ロベール、脚本はロベールとジェローム・トネール、ルイ・ヌスラの共同、撮影はロベール・アラズラキ、音楽はウラジミール・コスマが担当。「愛と宿命の泉」 の原作者マルセル・パニョルの回想録が基になっている。出演はフィリップ・コーベール、ナタリー・ルーセル、ジュリアン・シアマーカほか。

ストーリー
一八九五年、マルセルは南フランスのマルセイユに近いオーバーニュに生まれた。父のジョゼフは小学校教師、母のオーギュスティーヌはお針子をしている美しい女性であった。マルセルが3歳のとき、一家はサン・ルノーに引越すが、その頃彼は字が読めるようになり、早熟を心配した母は、6歳になるまで字を読む事を禁じてしまった。やがて彼にポールという弟ができた。1900年、妹が生まれ、マルセルの世話をしていたローズおばさんが結婚した。そしてマルセル9歳の夏、一家は田舎の別荘を借りる事にした。病弱な母に新鮮な空気を吸わせるためだ。そこはまるでおとぎの国、マルセルにとって生涯で最も美しい日々の始まりでもあったのだ。初めての自然との対話、全てが幸福に満ちあふれている……。しかし、夏が終わり秋が訪れると、都会に帰りたくないマルセルは“仙人”になろうと父母に別れの手紙を書き、別荘を抜け出すが、急に怖くなってもどってきた。手紙は元のまま置いてあったが、朝食のとき、父は「きっと“仙人”の綴りも書けないだろう」とささやき、ハッとするマルセルを母は厳しく、そして優しくみつめていた。その日、降り出した雨は涙のようにマルセルの心を濡らした。かくして夏は終わり、マルセルは両親の大らかさに触れる事で、一つ大人になっていったのだった。




5-18. プロヴァンス物語 マルセルのお城

監督 イヴ・ロベール
出演 ジュリアン・シアマーカナタリー・ルーセルフィリップ・コーベール
1990年・フランス(アルバトロス・フィルム)

解説
「愛と宿命の泉」 の原作者、マルセル・パニョルの回想録「少年時代の思い出」の中から第二部・第三部を基に、「わんぱく戦争」 のイヴ・ロベールが監督し映画化。「マルセルの夏」 の続篇で、脚本はジェローム・トネールとイヴ・ロベールの共同、撮影はロベール・アラズラキ、音楽はウラジミール・コスマが担当。出演は「マルセルの夏」 のジュリアン・シアマーカ、ナタリー・ルーセル、フィリップ・コーベールほか。

ストーリー
20世紀が始まったばかりの南フランス、プロヴァンス。少年マルセル(ジュリアン・シアマーカ)は、小学校教師の父ジョゼフ(フィリップ・コーベール)、病弱だが優しい母オーギュスティーヌ(ナタリー・ルーセル)に囲まれ、弟ポールと共にすくすくと育つ。妹も生まれ、一家は叔父夫婦と共に丘陵地に別荘を借り、9歳のマルセルはそこで生涯で最も美しい日々となる素晴らしい夏休みを過ごした。やがて夏は終わり、一家は再び都会に戻る。しかしマルセルの頭の中は、丘の生活や親友になったリリ(ジュリ・モリナス)のことで一杯。ようやくクリスマスが来て一家は再び別荘へ。また、翌年の春、復活祭の休日にも訪れた。そこでマルセルは美少女イザベル(ジュリー・ティメールマン)に会いすっかり夢中になるが、下痢気味のイザベルを見て興ざめしてしまい、彼女も村を去り、マルセルの初恋はあっけなく終わった。都会へと再び戻った一家は、毎週丘へ通うことを決心する。しかし大荷物で、歩いて片道4時間。途中に3つの城があり、遠回りをするためだ。あるとき一家は、父のかつての教え子ブジーグに会い、内緒で鍵を渡される。これを使えば城の中を通り2時間も近道できるのだ。びくびくしながら通り抜ける一家はとうとう三つのめの城の門番に見つかり、父は教師の職を失うのではないかとおびえる。が、これもブジーグの機転で切り抜け、一家は一段と楽しい休暇を過ごすことができた。それから時は流れ、5年後、母は病気でこの世を去り、弟ポールは30歳で、リリは21歳の若さで亡くなった。更に時が過ぎ、映画人となった40代のマルセルはプロヴァンスに古城を買う。そこは偶然にも、母が死ぬほど怖がった、あの三つめの城だったのだ。こみあげる感情を抑え切れず、マルセルは幼い日に一家の行く手をさえぎった屈辱の扉を叩き壊す。時間を飛び超えたマルセルの目に、あの日の美しくはかなげな母の面影がはっきりと映った。




5-19. 黄金の七人

監督 マルコ・ヴィカリオ
出演 ロッサナ・ポデスタフィリップ・ルロワホセ・スアレス
1965年・イタリア(東和)

解説
「地球のうぶ毛」 の製作者マルコ・ヴィカリオが脚本・監督・製作を担当したサスペンス・コメディ。撮影は新人エンニオ・グァルニエリ、音楽は「ゴールデンハンター」 のアルマンド・トロバヨーリが担当した。出演は「ソドムとゴモラ」 のロッサナ・ポデスタ、フィリップ・ルロワ、ホセ・スアレスほか。

ストーリー
スイス。ジュネーブにあるスイス銀行の大金庫は万全の備えをもつ最新式のものだ。扉は電子装置で開閉、地下には坑道をめぐらし電気写真装置、侵水装置などその防御設備には近代化学の粋がもりこまれている。そして中に眠っているのは時価数百億円の金ののべ棒。となればこれを狙う連中の心は常にもましてハッスルしようというもの。ある冬の日、真黄色に塗った道路工事の車と、オレンジ色の服を着た六人の男が、道路に穴をあけ地下にもぐっていった。しかし誰も彼らがヨーロッパよりぬきの泥ちゃんとは気がつかない。しかも向いのホテルの一室では、リーダーの“教授”とよばれる男アルべール(フィリップ・ルロワ)が、情婦のジョルジア(ロッサナ・ポデスタ)を傍わらに無線通話機、レーダーで総指揮をとっているという念の入り方。特製ドリルで大金庫の底に穴をあげた男たちは午後一時、計画通りに仕事を完了。七トン、時価五億円の金ののべ樺は“銅”という名目でイタリアへ発送されてしまった。「教授」とジョルジアは夜行列車で、あとの六人は車で出発。落合うところはローマ。ところがジョルジアはスイス銀行の支配人としめし合せて、「教授」を眠らせて横取りを計った。しかし役者は「教授」の方が一枚上で計画は見事に失敗。彼は金を独占−−と思ったが、愛する女は憎めないし、六人も黙ってはいない。そこで皆で分配しようとした時、金をつんだトラックのブレーキがゆるんで坂を急降下。ドカーンと物売りの屋台にぶつかって金ののべ棒はあたりいっぱいに散乱−−これで万事休す。「もうやめようよ」「そんなこといわないでもう一度」。そして何カ月かのちのある晴れた朝、ローマ銀行の前には道路エ事用の真黄色に塗った車と、「教授」とジョルジアの乗ったロールス・ロイスがやって来た。




5-20. 続・黄金の七人

監督 マルコ・ヴィカリオ
出演 ロッサナ・ポデスタフィリップ・ルロワエンリコ・マリア・サレルノ
1966年・イタリア(東和)

解説
黄金の七人」 のマルコ・ヴィカリオが製作・監督・脚本を担当したアクション篇。撮影はエンニオ・グァルニエリ、音楽はアルマンド・トロバヨーリが担当した。出演は前作同様ロッサナ・ポデスタ、フィリップ・ルロワ、ガストーネ・モスキン、ガブリエレ・ティンティ、モーリス・ポリ、マヌエル・サルツォらの他に、性格俳優エンリコ・マリア・サレルノが特出している。

ストーリー
危ないところでローマ警察の追求の手をのがれた“黄金の七人”ことアルベール教授(P・ルロワ)と六人の男たち、それに美しいジョルジァ(R・ポデスタ)は、計画を練り直し、新しい仕事に着手した。それはローマ銀行の地下室に眠る金塊と札束を奪うことだった。ローマには二千年も前から地下道が縦横に走っている。彼らはそこに路線を敷き、本ものの列車を通した。大金庫の地下をくりぬき、金庫をそのまま貨車の上にのせて本線に連結してパリに運んでしまった。この成功をききおよんだ共産圏のZ国から極秘の仕事をたのみに来た。それはZ国の秘密情報部も投げだしたほどの大間題だった。そのためZ国は自国の原子力潜水艦はもちろん、あらゆる近代兵器を貸与すると申し出た。問題の場所は西側のA国だった。黄金の七人はA国に渡ったが、そこはつわものの彼らのことZ国から依頼された仕事のかたわら内職として七千トンの金塊略奪を計画した。Z国の援助のもとに堂々と行なうこの計画を、彼らはレインボー作戦と名づけた。それはジョルジァが計画遂行に当り、相手の目をごまかすため七色のレンズを使って、目の色を変えたところからきた名称だった。七人はZ国の依頼の問題を解決しつつ、同時に自分たちの内職の方も成功させてしまった。Z国政府が彼らの内職を知り、非難したが、それを公表すれば逆に自分たちのことを発表されてしまう。位置は逆転した。七人はZ国政府に護衛させて、七千トンの金塊を太平洋の孤島に運びこみ、まんまと、自分たちのものにしてしまった。




5-21. 危険なささやき

監督 アラン・ドロン
出演 アラン・ドロンアンヌ・パリローミシェル・オークレール
1981年・フランス(地産)

解説
失踪した娘の捜索を依頼された私立探偵が、調査をしているうちに、麻薬密売組織にぶつかり生命を狙われる。アラン・ドロンの出演第61作目に当り、彼が製作し初めて監督を手掛けたサスぺンス・スリラー。彼とクリストファー・フランクが、ジャン・パトリック・マンシェットの77年作“ Que d'Os”(翻訳題は映画と同じ「危険なささやき」、ハヤカワ・ミステリ文庫)を脚色した。撮影はジャン・トゥルニエ。音楽担当はクレジットされてない。クリスタル・ゲイルの「瞳のささやき」 、ニール・ダイヤモンドの「セイ・メイビー」 などが挿入されている。出演はドロンの他に、アンヌ・パリロー、ミシェル・オークレール、ザビエル・デプラスなど。不動産業者の地産の第1回配給作品で、東映ユニバースフィルムが配給協力に当たっている。

ストーリー
かつては敏腕の刑事だったシュカス(アラン・ドロン)、今はタルポンと組んで私立探偵事務所を経営している。ある日、イザベル・ピゴ(A・アラーヌ)と名乗る中年婦人が、失踪した娘のマルトを探してくれと依頼する。マルトは生まれながらの盲人で、ボドリアール財団という盲人協会に勤めていたそうだ。秘書シャルロット(アンヌ・パリロー)が、警察がやって来たという。隣室で待っていたのは、顔なじみのコシオリ(ダニエル・チェカルディ)で、「このヤマは千フランもらって適当にやれ」という。調査を始めたシュカスの身辺で、おかしな出来事が続く。まず、プラディエと名乗る男が尋ねて来て、「娘は好きな男と飛び出しただけだ」といい、マルトの手になると称する点字の手紙を見せた。プラディエをとり押えようとして、隠れていたもう一人の男に頭を殴られた。トロカデロ広場で待ち合わせしたピゴ夫人が、何者かに射殺された。ピゴ夫人のアパートを調べたが、手掛りは何もない。建物を出たシュカスはプラディエら二人組に拉致された。隙をみて自動車をガード・レイルにぶつけ、プラディエは即死。もう一人の大男には逃げられた。オフィスにもどったシュカスを事件の新任担当者マドリエが射つ。一瞬早くシュカスの銃が火を吹き、マドリエは死ぬ。しかし、自分も腹部を射たれて重傷を負った。シュカスは相棒のタルポン、実は元警視のエマン(ミシェル・オークレール)宅を訪れて、事件の概要を説明する。と、外から覗いている男がいた。あの大男カスぺール(ザビエル・デプラス)だ。敵はシャルロットを誘拐していた。シュカスとエマンは、カスぺールをタテにして隠れ家に行き、銃撃戦の末にシャルロットを救出した。敵の手下がポドリアール財団に関係していることが判明、ムランにある“青い丘”という痩身研究所が浮かび上ってきた。また、ムゾン・ルネ(パスカル・ロベール)という中年女が浮かんだ。彼女は財団会長ベクルーとつながっていた。シュカスはムゾンが男たちに連れ去られるのを目撃する。男の一人は、前に使い込み事件の容疑者ぺレスと一緒のところを見かけたことがある。ぺレスが殺された。シュカスはショファール警視のところに行き、そこで麻薬担当グラゼリ警視の顔を見る。警察は“青い丘”をヘロイン密売組織のアジトではないかとあやしみ内偵、ぺレスは彼らの放ったイヌだったのだ。“青い丘”の顧客にベクルーがおり、マルトは何かのきっかけで、秘密を知ったらしい。事件の全容を知りながら、自分を囮にした警察のやり方に怒りを向けるシュカス。単身“青い丘”に乗り込んだシュカスは、カスぺールを倒して、マルトを救い出す。




5-22. 魔法にかけられて

監督 ケヴィン・リマ
出演 エイミー・アダムスパトリック・デンプシージェームズ・マースデン
2007年・アメリカ(ウォルト ディズニー スタジオ)

解説
アニメと実写映像を融合した、ディズニー製作のファンタジー。プリンセス、王子、魔女など、アニメの世界のキャラクターが、現実のニューヨークに現れ、大騒動を繰り広げる。

ストーリー
アンダレーシアの森に暮らすジゼルは怪物に襲われるが、エドワード王子に助けられ、2人は恋に落ち、結婚することに。翌日、ジゼルが城に向かっていると、老婆に化けた王子の継母ナリッサ女王が現れジゼルを魔法の井戸に連れていき、彼女を突き落とす。シマリスのピップが助けを求めるが、ジゼルは井戸の底に落ちていった。ジゼル(エイミー・アダムス)が気がつくと、そこはアニメの世界ではなく現実のニューヨークだった。ジゼルは城が描かれたビル広告を本物の城と勘違いしてよじ登る。そこに離婚弁護士で、自らも離婚経験者のロバート(パトリック・デンプシー)が娘モーガンとタクシーで通りかかり、落ちてきたジゼルを助け、彼女を自宅に泊まらせる。翌朝、セントラル・パークのマンホールから、ジゼルを助けるためにエドワード王子(ジェームズ・マースデン)とピップが飛び出してくる。するとナリッサ女王の家来ナサニエル(ティモシー・スポール)が現れ、王子を連れ去る。現実離れしたジゼルの行動に怒ったロバートは、彼女を追い出そうとする。しかし浴室で足を滑らせ、ジゼルと抱き合うような格好に。それを訪ねてきた恋人ナンシー(イディナ・メンゼル)に見られ、誤解を招く。ロバートはジゼルに別れを告げようとするがなかなかうまくいかない。ロバートがナンシーに愛の言葉を口にしないと聞いたジゼルは、ハトに花とカードを届けさせ、ロバートとナンシーは仲直りをする。一方、王子とナサニエル、ピップはダウンタウンのホテルにいた。王子がテレビを魔法の鏡と勘違いし見続けていると、ニュースにジゼルが映る。王子はジゼルの元に走る。しかしナリッサ女王(スーザン・サランドン)もニューヨークにやってくる。ようやく再会できたエドワード王子とジゼルだったが、ジゼルは心から喜べない自分がいることに気がつく。やがて、ロバートとナンシーが仲直りのデートで舞踏会に出かけ、ジゼルとエドワードもそれに参加する。そこに、ナリッサ女王が現れ、ジゼルに毒りんごを食べさせ、ジゼルは息をひきとってしまう。“愛する人のキス”が必要だと、エドワード王子が試みるが、ジゼルは息を吹き返さない。やがて、自分の気持ちに正直になったロバートが、ジゼルにキスをし、ジゼルは目を開ける。お互いの本当の気持ちに気づいたジゼルとロバートは、現実のニューヨークで結ばれる。一方、一目ぼれで愛し合うようになったエドワードとナンシーは、おとぎの国で結ばれるのだった。




5-23. フリックストーリー

監督 ジャック・ドレー
出演 アラン・ドロンジャン=ルイ・トランティニャンクローディーヌ・オージェ
1975年・フランス(東宝東和)

解説
三六件の殺人を犯し、フランス犯罪史上、最も兇悪なギャングといわれるエミール・ビュイッシュを追う敏腕刑事ロジェ・ボルニッシュの活躍を描く実話の映画化。製作はアラン・ドロンとレイモン・ダノン、監督は「ボルサリーノ2」 のジャック・ドレー、実在の刑事ロジェ・ボルニッシュの手記をアルフォンス・ブーダールとドレー自身が脚本化、撮影はジャン・ジャック・タルベス、音楽はクロード・ボランが各々担当。出演はアラン・ドロン、ジャン・ルイ・トランティニャン、クローディーヌ・オージェ、レナート・サルヴァトーリ、モーリス・エバンス、アンドレ・プッスなど。

ストーリー
国家警察局のロジェ・ボルニッシュ(A・ドロン)は、恋人カトリーヌ(C・オージェ)との結婚を間近かに控え、折あらば大きな手柄をモノにして、主任ポストを獲得しようと、こころ秘かに狙っていた。一九四七年、戦争が終わってからまだ間もない年の三月。敏腕刑事として同僚からも一目おかれているロジェのもとに、ある日とてつもない大きな事件がころがり込んできた。暗黒街の大物で冷酷きわまりない殺し屋エミール・ビュイッソン(J・L・トランティニャン)が脱獄したというのだ。ビュイッソンは、実兄のル・ニュス(A・プッス)、仲間のボレック(M・バリエ)、マリオ(R・サルバトーリ)の協力で首尾よく娑婆に出るとすぐ、かつて自分を密告したティボンを愛用の拳銃P38で射殺した。幼い頃からアル中の父親に盗みを強いられて育ったビュイッソンの暗い過去。その冷酷な才能と度胸は、ひたすら暗黒街の仇花である悪の栄光に接近し今ではフランス中を震えあがらせる殺人鬼として君臨しているのだ。ビュイッソン一味は、ボルニッシュの捜査活動を嘲笑するかのように第二の犯行を行った。ブルジョワの集まる高級レストランを襲い、客の身につけていた金目のものを強奪したのだ。ボルニッシュは、犬に仕立てあげたレイモンからの密告でようやく一味の隠れ家をつきとめたが、ル・ニュスとボレック兄妹を逮捕しただけで、ビュイッソンは逃がしてしまった。度重なる後手後手捜査の責を問われて、ビュイッソン事件からおろされたロジェ班は、ケチな犯罪係りに廻されてくさりきっていたが、ベルサイユ郊外の森の中で発見されたマリオの死体にめぐりあった時は狂喜した。このことから、ようやく姿を消していたビュイッソンの足どりが割れたのだ。徴税所襲撃の準備のためにラ・メール・ロワ旅館に身をよせているビュイッソンのもとに、ロジェはカトリーヌと同僚のイドワーヌ、ダロスを連れて乗り込んだ。といっても刑事としてではなく、一民間人の気さくな四人連れという恰好で、通りすがりにたまたま食事に立ち寄ったという大芝居。ビュイッソンは何者とも分らない四人組にひどく警戒の色を見せていたが、やがてカトリーヌがレストランのピアノに向い、ピアフのヒット曲を奏でると、その殺し屋の冷たいまなざしのなかに、一瞬あたたかく和むような光がキラリと浮かんだ。ほんの一瞬の油断を捉えたロジェがいきなりビュイッソンに飛びかかって、背後からはがいじめにした。三六件の殺人で起訴されたエミール・ビュイッソンは、セーヌ重罪裁判所で死刑の判決をうけ、一九五六年二月二八日に執行された。




5-24. コクーン 

監督 ロン・ハワード
出演 ドン・アメチウィルフォード・ブリムリーヒューム・クローニン
1985年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
フロリダにある老人ホームの住人と地球外生物との交流を描く。製作はリチャードとリリー・フィニーのザナック夫妻とデイヴィッド・ブラウン。監督は「スプラッシュ」 (84)のロン・ハワード。デイヴィッド・サパーステインの小説(角川文庫)に基づいてトム・べネデクが脚色した。撮影はドン・ピーターマン、音楽はジェームズ・ホーナー、特殊効果はILMがケン・ラルストンの監修で担当。出演はドン・アメチ、ウィルフォード・ブリムリーほか。ドルビー・ステレオ。

ストーリー
フロリダ州セント・ピータースバーグにある養老院に住む3人の老人、アート(ドン・アメチ)、ベン(ウィルフォード・ブリムリー)、ジョー(ヒューム・クローニン)は連れ立って近くにある空き家のプールで泳ぐのを楽しみにしていた。ジャック(スティーヴ・グーテンバーグ)は、8人乗りの船マンタIII世号の船長。ウォルター(ブライアン・デネヒー)という男が好条件で船を借りたいと申し出てきた。3人の老人、それにベンの孫デイヴィッド(バレット・オリヴァー)が.プールに行くと、ウォルターが空き屋も借りていた。翌日、3人はこっそリプールに忍び込んだ。プールには巨大なまゆ状のものが沈んでいた。これは、ウォルターが若い美女キティ(ターニャ・ウェルチ)、フィルスベリー(タイロン・パワー・ジュニア)と協力し、海底から引き上げていたものだった。3人はプールで泳いでいるうちに、元気が出てきて、ジョーは老妻アルマ(ジェシカ・タンディ)と久し振りにメイク・ラヴした。アートは元ダンサーのベス(グエン・ヴァードン)に恋を打ち明け、ベンも妻のメリー(モーリン・スティプルトン)とますます仲むつまじくなった。ジャックはキティに惹かれていく。彼女らは実はアンタレス星人であった。100世紀前に地球を訪れた先祖がアトランティスの沈没とともに海に沈んでしまい、彼らはまゆ状の先祖を惑星へつれもどそうとしていたのだった。老人3人はまゆが回春の秘訣ということを知り、バーニー(ジャック・ギルフォード)を誘うが、彼は「人には寿命というものがある」といって断った。養老院の他の老人も回春の秘密を知ってプールに行き、まゆを乱暴に扱ったためにまゆの中のアンタレス星人が死に、ウォルターは怒ってみんなを追い出した。彼は先祖を海にもどした方が幸せではないかと思うようになり、実行した。宇宙船が明日やってくるという日、ウォルターはベンたちに不老不死のユートピアであるアンタレス星に行かないかと提案する。ベンは孫と最後の釣りをし別れを告げた。デイヴィッドの態度を不審に思った母のスーザン(リンダ.ハリソン)が警察に通報した。警官隊に追われながら老人たちを乗せたマンタIII世号は海を航行し、やがて出現した宇宙船にすいこまれていった。




5-25. コクーン2 

監督 ダニエル・ペトリー
出演 ドン・アメチウィルフォード・ブリムリーコートニー・コックス
1988年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
コクーンの威力によって若さを取り戻し、不老不死の惑星に旅立った老人達が、5年の月日を経て地球へ里帰りすることで起きる事件を描くシリーズ第2作。製作はリチャード・D・ザナック、デイヴィッド・ブラウンとリリー・フィニー・ザナック、監督は「スクエアダンス」 のダニエル・ペトリー、デイヴィッド・サパーステインが創作した登場人物を基に、原案はスティーブン・マクファーソンとエリザベス・ブラドリー、脚本はマクファーソン、撮影はタク・フジモト、音楽はジェームズ・ホーナーが担当。出演はスティーヴ・グッテンバーグ、ウィルフォード・ブリムリー、ドン・アメチほか。日本版字幕は戸田奈津子。カラー、ビスタサイズ。ドルビーステレオ。1988年作品。

ストーリー
海底地震の予兆をうけ、海底に残した数体のコクーン救出のためキティ(ターニー・ウェルチ)ら3人のエイリアンが、老人たちとともに5年ぶりに地球に戻ってきた。しかしそのコクーンは、キティたちの手に渡る前にピータースバーグ海洋研究所に引き取られ、やがて中から現われた生命体は研究所の女性科学者セーラ(コートニー・コックス)と意志を通わせるようになる。星からの生命力を与えないと死ぬのは時間の問題の、その生命体を連れて帰れなかったら、と悩むキティに、ジャック(スティーヴ・グッテンバーグ)は優しく慰め、協力を申し出る。一方の老人たちは、孫デイヴィッド(バレット・オリヴァー)の成長ぶりに地球を離れがたく思うベン(ウィルフォード・ブリムリー)とメアリー(モーリン・スティプルトン)や、保育園で働くことに新しい生きがいを感じ始めるアルマ(ジェシカ・タンディ)、そしてアート(ドン・アメチ)の妻ベス(グエン・ヴァードン)が妊娠したりもするが、アルマの夫ジョー(ヒューム・クローニン)は再発した白血病に悩んでいた。亡き妻の思い出を抱きひとり地球に残ったバーニー(ジャック・ギルフォード)も帰ってきた仲間たちの若々しさに影響されて、モーテルを経営する未亡人ルビー(エレーン・ストリッチ)との間にロマンスを芽生えさせる。そんな時、保育園で働いていたアルマが車にはねられ重体となり、瀕死の妻に、ジョーはコクーンからもらった生命の威力を与え、自分は息絶えてゆく。そして海洋研究所で死を待つ生命体を救い出すため、キティ、ベン、アート、そして駆けつけたデイヴィッドがそこに侵入、セーラの黙認もあり無事成功を収め、UFOを待つジャックの船に一行は乗り込んだ。最後の決断の末に、結局惑星に帰ることにした老人は、無事に赤ちゃんを生むことを決意するアートとベスのふたりだけだった。やがてUFOは旅立ってゆき、船にひとり残されたジャックは、偶然にセーラと出会う、淡いロマンスの予感を漂わせながら……。(20世紀フォックス配給*1時間54分)




5-26. 真昼の決闘

監督 フレッド・ジンネマン
出演 ゲイリー・クーパートーマス・ミッチェルロイド・ブリッジス
1952年・アメリカ(ユナイテッド・アーチスツ)

解説
シラノ・ド・ベルジュラック」 のスタンリー・クレイマーが、1952年に製作した西部劇で、監督は「暴力行為」 のフレッド・ジンネマン。ジョン・W・カニンガムの短編小説に基づいて「シラノ」 のカール・フォアマンが脚色した。音楽の作曲と指揮はディミトリ・ティオムキン「井戸」 で、主題のバラード「ハイ・ヌーン」はティオムキン作曲、ネッド・ウォシントン作詞。撮影はフロイド・クロスビーの担当。主演は「誰が為に鐘は鳴る」 のゲイリー・クーパーで、トーマス・ミッチェル「風と共に去りぬ」 、ロイド・ブリッジス「拳銃45」 、メキシコ出身のカティ・フラドー、テレビ・スターから映画入りした新進グレイス・ケリー、オットー・クルーガー「ヴァレンチノ」 、ロン・チャニイ、ヘンリー・モーガン、アイアン・マクドナルドらが助演。

ストーリー
1870年、西部のハドリーヴィルの町、ある日曜日の午前のことである。この町の保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)は、事務所でエミイ(グレイス・ケリー)と結婚式を挙げていた。彼は結婚と同時に保安官の職を辞し、他の町へ向かうことになっていた。突然、そこへ電報が届いた。ウィルが5年前に逮捕して送獄した無頼漢フランク・ミラーが、保釈されて正午到着の汽車でこの町に着くという知らせだった。停車場にはミラーの弟ベンが仲間の2人と、到着を待っていた。時計は10時40分。ウィルは再び保安官のバッジを胸につけた。エミイはウィルに責任はないと言って、共に町を去ろうと主張したが、彼は聞き入れなかった。エミイはひとり正午の汽車で発つ決心をし、ホテルで汽車を待つ間、ウィルのもとの恋人で、今保安官補ハーヴェイ・ベル(ロイド・ブリッジス)と同棲しているメキシコ女ヘレン・ラミレス(ケティ・フラドー)と会い、彼女も同じ汽車で町を去ることを知った。一方、ウィルは無法者たちと戦うため、助勢を求めて、酒場や教会を訪れ、最後に2人の親友に頼み込むが、みんな尻ごみして力になってくれない。彼は1人で立ち向かう決心をして遺言状を書きつづった。時計が12時を指すと共に汽笛がきこえた。停車場からミラーが降り立ち、入れ替わりにエミイとヘレンが乗った。エミイは一発の銃声を聞くといたたまれず汽車から降り、町へ走った。ウィルは2人を仆し、エミイの機転であとの2人も射殺した。戦い終わって町の人々がおそるおそる集まってくるうちをウィルとエミイは黙ったまま馬車を駆って去って行った。




5-27. シルバラード

監督 ローレンス・カスダン
出演 ケヴィン・クラインスコット・グレンケヴィン・コスナー
1985年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
西部の街シルバラードに結集した4人のガンマンが街を牛耳る悪徳ボスを倒すまでを描く西部劇。製作・監督は「再会の時」 のローレンス・カスダン、脚本はカスダンとその実弟のマーク・カスダン、エグゼクティヴ・プロデューサーはチャールズ・オークンとマイケル・グリロ、撮影はジョン・べイリー、音楽はブルース・ブロートン、編集はキャロル・リトルトンが担当。出演はケヴィン・クライン、スコット・グレンなど。

ストーリー
執拗な追手の襲撃を振り切ったガンマン、エメット(スコット・グレン)が、哀れな下着姿の風来坊ペイドン(ケヴィン・クライン)と出会ったのは砂漠のど真中でだった。仲間に裏切られて身ぐるみ剥がされたという。ひとまず野宿で夜明かしした2人は次の街へ向かったがそこでペイドンはかつての無法者仲間のリーダーだったコッブ(ブライアン・デネヒー)と会った。コッブから仕事話を持ちかけられたが、足を洗うつもりのペイドンは断って、姉一家の住むシルバラードに向かうエメットに同行することになった。途中、ターリーの町に立ち寄った2人は、そこのバーで黒人客のトラブルを目撃。それを制した街の保安官からエメットの実の弟ジェイク(ケヴィン・コスナー)が縛り首目前の状態で牢に囚われていることを知らされた。ペイドンの協力で弟を助け逃亡する3人。迫る追跡隊。その時、バーで会った黒人ガンマンのマル(ダニー・グローヴァー)が3人に加勢した。目的こそ違え、めざすは同じシルバラードだ。途中、強盗に襲われた幌馬車隊を救い、4人はそれぞれの方向に分かれた。エメットとジェイクは姉の家へ。マルは父と妹の待つ開拓集落へ、そしてペイドンは幌馬車隊の若い女性ハンナ(ロザンナ・アークェット)を守って新しい入植地へ。だが、シルバラードは土地独占を図る牧場主マッケンドリック(レイ・ベイカー)に牛耳られており、エメットの姉一家も立ち退きを迫られていた。一足遅れて街に入ったペイドンは酒場のマダム、ステラ(リンダ・ハント)と意気投合するが店の経営者はコッブで、彼は街の保安官も兼ねていた。一方、マルの父親も息子との再会も束の間、何者かの闇打ちに合い、殺された。マッケンドリック=コッブの悪の勢力が邪魔な4人に襲いかかる。一味の奇襲でエメットが瀕死の重傷を負い、それを助けて匿まったマルがコッブにつかまった。さらにエメットの姉一家が襲われ、その息子とジェイクがさらわれた。ペイドンの怒りが炸裂する。妹の捨て身の行動で脱獄に成功したマル。4人が乗った馬がシルバラードに向かった。街は銃撃戦の場と化し、悪人たちは次々に倒れていった。




5-28. ジェシー・ジェームズの暗殺 

監督 アンドリュー・ドミニク
出演 ブラッド・ピットケイシー・アフレックサム・シェパード
2007年・アメリカ(ワーナー)

解説
実在したカリスマ的ギャングと、彼を殺した若者の心理に迫った人気小説の映画化。原作にほれたブラッド・ピットが製作・主演を兼ね、ベネチア国際映画祭主演男優賞を受賞。

ストーリー
南北戦争直後のアメリカ。ジェシー・ジェームズ(ブラッド・ピット)は、犯罪と逃亡を繰り返しながら生きてきた。1881年9月7日。その日、ジェシーと兄フランク(サム・シェパード)が率いるジェームズ一味は、ミズーリ州ブルーカットでの列車強盗を企てていた。その夜の決行のために集まった一団の中に、若者がひとり懸命に自分を売り込もうとする姿があった。自分も仲間に加わり、ジェームズ兄弟の“右腕”になりたいと訴えるロバート・フォード(ケイシー・アフレック)。おどおどしているくせに自惚れだけは人一倍強いその若者の申し出をジェシーはためらいもなく受け入れた。南北戦争で南軍ゲリラとして戦ったジェームズ兄弟は、戦争に敗れた後、銀行強盗や列車強盗を繰り返していたが、新聞は彼らのことをあたかも義賊のように書きたて、その“活躍”を英雄的に描いた「ジェームズ兄弟物語」なる三文小説まで出版されていた。幼いころから、そのことごとくを読みあさり、ジェシーに強い憧れを抱いていたのがロバートだった。ブルーカットでの列車強盗を最後の仕事にしようと考えていたフランクは、その後、ジェシーと距離を置くようになり、仲間のもとを離れていく。残された者たちも、それぞれ分散して身を潜めることになったが、ジェシーはロバートだけは側に残るようにと命じる。他のメンバーを差し置いて自分が指名されたことにロバートは有頂天になる。しかし、一緒に暮らし、伝説の人物の現実の姿をまのあたりにするうちに、彼の中に憧れとは別の感情が生まれ始める。さらに、仲間の中には、ジェシーの首にかかった破格の懸賞金を目当てに、裏切りを画策する動きも出てきていた。疑念と焦燥の中で、時に凄まじい怒りを爆発させ、殺気さえ漲らせるジェシー。憧れと恐怖、失望と野心…その内側に恐ろしいまでの葛藤を抱えるロバート・フォードの視線の先には、つねに偉大なる男ジェシー・ジェームズがいた……。




5-29. グラン・ブルー 

監督 リュック・ベッソン
出演 ロザンナ・アークエットジャン・マルク・バールジャン・レノ
1988年・フランス(日本ヘラルド映画)169分

解説
潜水に取り憑かれたふたりの男が織りなす人間ドラマを華麗なる水中撮影もふんだんに描いたアドヴェンチャー・ロマンのフランス本国のみで公開されたオリジナル・ヴァージョン(132分)。監督は本作で一躍売った「レオン」「フィフス・エレメント」 のリュック・ベッソンで、「グレート・ブルー」 公開10周年を記念しての初公開。ちなみに、全米公開版「グレート・ブルー」 は日本公開は88年、英語版で120分。ロング・ヴァージョン「グラン・ブルー グレート・ブルー完全版」 は原語のフランス語版で日本公開は92年、168分。脚本はベッソンとロバート・ガーランド。撮影は「最後の戦い」「サブウェイ」 のカルロ・ヴァリーニ。音楽はベッソンとコンビを組むエリック・セラ。出演は「ヨーロッパ」 のジャン=マルク・バール、「レオン」「ロザンナのために」 のジャン・レノ、「ライアー」 のロザンナ・アークェットほか。

ストーリー
一九六五年、ギリシャのキクラーデス諸島で八歳のジャックはエンゾと出会った。そこで二人は初めて潜りを競うが、翌日、ダイバーであるジャックの父の死を目撃し、大きな衝撃を受ける。一二年後の一九八七年、いまや一流ダイバーとなったエンゾ(ジャン・レノ)は、稼いだ金をつぎ込んでジャック(ジャン・マルク・バール)の行方を探していた。ジャックとダイビング選手権に出場して勝利すること、それがエンゾの夢だったのだ。一方ジャックは水族館のイルカだけを友として静かに暮らしていた。そんなジャックと出会ったニューヨーク生れのジョアンナ(ロザンナ・アークェット)は、彼の不思議な雰囲気にひかれていく。やがてエンゾはジャックをシチリアの競技会に連れ出すが、そこでのダイビングでジャックに敗れてしまう。ジャックへの対抗心に燃えるエンゾは、無謀なダイビングに挑み、命を落としてしまう。その魂にひかれるかのように、ジャックもまた大海原に一人乗りだしていく。彼を愛し、彼の子を宿したジョアンナを残して。やがて、人間の限界を超える深海に達したジャックの目の前に一匹のイルカが現われ、彼を底知れぬ深淵へと連れ去っていくのだった。




5-30. オズ

監督 ウォルター・マーチ
出演 フェルザ・バルクニコル・ウィリアムソンジーン・マーシュパイパー・ローリーマット・クラーク
1985年・アメリカ (東宝)

解説
カンサスに戻った少女ドロシーが、再びオズの国で経験する出来事を描くSFファンタジー。製作はポール・マスランスキー、エグゼクティヴ・プロデューサーはゲイリー・カーツ。 「地獄の黙示録」 (79)でアカデミーの録音賞を獲得し監督はこれがデビューとなるウォルター・マーチ。L・フランク・ボームの原作を基にマーチ、ギル・デニスが脚色。撮影はデイヴィッド・ワトキン、音楽はデイヴィッド・シャイア、特殊効果はイアン・ウィングローヴ、視覚効果はゾーラン・パリシックが担当。出演はファルーザ・バーク、ニコル・ウィリアムソン、ジーン・マーシュなど。日本語版の声の出演は笠原弘子、冨永みーな、木村有里など、ドルビー・ステレオ。

ストーリー
カンサスを襲った大竜巻に捲き込まれてオズの国へ連れていかれた少女ドロシー(ファルーザ・バーク)が、やっとの思いでカンサスに戻ってきた。彼女の体験を妄想だと思い叔父ヘンリー(マット・クラーク)と叔母エム(パイパー・ローリー)は心配する。叔父はドロシーに電気療法を受けさせようと病院に連れていった。ウォーリー医師(ニコル・ウィリアムソン)の診断の結果、入院させられた。看護婦(ジーン・マーシュ)はとても恐しそうな人だ。激しく吹きすさぶ嵐の夜、見知らぬ少女(エマ・リドリー)とともに逃げ出し濁流にのまれた。意識をとり戻したドロシーは、めんどりのビリーナとともにオズの国にいた。エメラルド・シティに着いた彼女は、荒廃した廃墟になっているのに愕然とした。そこで、ドロシーはエメラルド・シティの征服者ノーム(ニコル・ウィリアムソン)ー、の手下で手足が車輪であるホィーラーズという山賊に襲われる。ロボットのティック・トック(マイクル・サンディン)に助けられ、難を逃れた。ゴージャスな部屋に進み入ったドロシー。その部屋には、ノーム王の配下でエメラルド・シティから王者スケアクロウ(ジャスティン・ケース)を追放した絶世の美女にして悪の化身、モンビ(シーン・マーシュ)が住んでいた。彼女は、自由自在に首を取り換えることができ、美しい生首をたくさんもっていた。ドロシーを見たモンビは、可愛い彼女の首を欲しがった。城塔に閉じこめられたドロシーはそこで、ジャック・パンプキンヘッド(ブライアン・ヘンソン)と出合った。彼と共に奇妙な飛行物体ガンブを作り、一路、ノームの本拠地へと飛んで行くが、途中で墜落。地の底で帝王ノームと対面したドロシーたちは、彼からスケアクロウを捕えているのは自分だと聞かされた。エメラルド・シティを元通りにして欲しいと懇願するドロシーに大きな謎を持ちかけた。別室で別の物に変身させられているスケアクロウを探し出すことだ。ドロシーがみごとに見つけるが、ノーム王は怒る。ビリーナが卵をうみ、それをのみ込んだノームは苦しむ。ノームにとって卵は毒なのだ。ノームは崩れ落ち、オズの国が甦えった。王女オズマ姫(エマ・リドリー)に別れをつげて、ドロシーとビリーナは再びカンサスヘ。川のほとりで倒れているのを発見されて叔母と家へもどる。病院は火事で焼けおち、ウォーリー医帥は死亡し、看護婦ウィルソンは逮捕された。




5-31. 墨攻

監督 ジェイコブ・C・L・チャン
出演 アンディ・ラウアン・ソンギワン・チーウェン
2006年・中国、日本、香港、韓国(松竹=キュービカル・エンタテイメン)

解説
インファナル・アフェア」 のアンディ・ラウが戦乱中国の軍師を演じるスペクタクル。日本製の原作コミックを、アジア4か国が共同で壮大なスケールの戦記ものに作り上げた。

ストーリー
紀元前370年の戦国時代。“趙”と“燕”という両大国間の争いに巻き込まれた小国の王城“梁城”は、趙軍の大将軍・巷淹中(アン・ソンギ)が率いる10万の軍勢を前に陥落寸前であった。梁の王は、「非攻」という専守防衛の精神を掲げる“墨家”に援軍を頼むが派遣されて来たのは戦術家・革離(アンディ・ラウ)ただ一人であった。彼は趙軍の先遣隊を追い払い、早速その才覚を発揮する。敵将である巷淹中は革離の実力を見て絶好の好敵手と認め、猛攻撃の準備を開始した。攻撃に備えて作戦を立てる革離。知略を駆使し、総力戦の果てに大軍を撤退させる事に成功する。国民の絶大な信頼を得るに至った革離はすかさず敵軍に対して先手をうち、女隊長・逸悦(ファン・ビンビン)の道案内を得て、自ら敵地への偵察に出かける。敵兵に見つかってしまうが、河に身を投げて逃亡を果たした二人。逸悦は革離に想いをよせ始めていた。城に帰還した革離は偵察によって知った敵のトンネル作戦をみごとに迎え撃ち、大勢の趙軍の兵士を捕虜にすることに成功する。しかし、革離から捕虜をあずかった梁軍の将軍はその捕虜たちを皆殺しにしてしまった。「非攻」の精神から「戦う事を辞めた兵士を殺してはならない」という戒律を尊守していた革離は自責の念に苛まれ、彼を支えようと献身する逸悦を無下に遠ざける。一方、趙の本国に大軍が攻め入ったとの報告を受けた巷淹中の軍は退却を開始した。それを受け、革離に王位を奪われるのではないかと疑心暗鬼になっていた梁の王はもはや戦術家は不要と判断し、革離を謀反の罪で排斥する。その頃城内では、革離に親和的であった逸悦等多くの人々が革離一派と見なされ、王による粛正が始まっていたが、そのさなかに、革離との勝負の決着に執着する巷淹中の私設軍が攻め入り、梁の全城民は人質にとられてしまうのだった。それを知った革離は最後の攻防に臨むべく、再び梁城に駆けつけるのだが……。




5-32. ポカホンタス

監督 マイク・ガブリエル
出演 アイリーン・ベダードデヴィッド・オグデン・スタイアーズメル・ギブソン
1995年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
アメリカ先住民族の娘とイギリス人探検家の運命的な恋を、ミュージカル・タッチで描いたディズニーの長編アニメ第33作。監督は「ビアンカの冒険 ゴールデン・イーグルを救え」 のマイク・ガブリエルと、「アラジン」 の作画監督を務め本作が初監督となるエリック・ゴールドバーグの共同。脚本はカール・バインダー、スザンナ・グラント、フィリップ・ラズプニック。製作は、ブロードウェイの舞台で演出・製作・舞台監督などを務め、本作で映画に初進出したジェームズ・ペンデコスト。作画監督は「美女と野獣(1991)」「リトル・マーメイド」「アラジン」 と、ディズニー第2の黄金期の作品群に参加したグレン・キーン。音楽はアカデミー音楽賞受賞の「アラジン」 (アカデミー音楽賞受賞)のアラン・メンケンがスコアを書き、挿入歌の作詞は、ミュージカルの著名な作詞家スティーヴン・シュワルツ。主題歌はヴァネッサ・ウィリアムズの「カラー・オブ・ザ・ウィンド」。声の出演は「マーヴェリック」 の俳優メル・ギブソン、ネイティヴ・アメリカンの女優アイリーン・ベダード、「プレタポルテ」 のリンダ・ハント、「若草物語(1994)」 のクリスチャン・ベール、現代アメリカ先住民運動のリーダー的存在でもある俳優ラッセル・ミーンズ、「美女と野獣(1991)」 のデイヴィッド・オグデン・スティアーズほか。第68回アカデミー賞で、音楽(ミュージカル・コメディ部門)、オリジナル主題歌の2部門を受賞。

ストーリー
1607年、ロンドン。勇敢な軍人ジョン・スミス(以下、声優:メル・ギブソン)は、ラドクリフ総督(デイヴィッド・オグデン・スティアーズ)率いる探検隊に参加。一行を乗せた帆船は、北米大陸のヴァージニア植民地を目指す。そこでは先住民族のパウアタン族が、自然と共存して平和に暮らしていた。パウアタン首長(ラッセル・ミーンズ)の一人娘ポカホンタス(アイリーン・ベダード)は、このところ、不思議な夢ばかり見ていた。精霊グランドマザー・ウィロー(リンダ・ハント)に助言を求めると、「その夢は、自分の進む道は自分で見つけろということさ」と言われる。上陸したスミスはポカホンタスと出会い、たちまち恋に落ちる。ポカホンタスは彼に自然と調和する生き方を教えた。一方、貪欲なラドクリフは金鉱を求めて土地を荒らし回った。パウアタン族は1人が撃たれて負傷したのをきっかけに戦闘体制をとり、両者は一触即発の状態に。その夜、ポカホンタスとスミスが逢引していると、彼女の身を案じた部族の戦士ココアムがスミスに襲いかかり、スミスの開拓者仲間トーマスに撃たれた。トーマスを逃がして捕まったスミスは、処刑されることに。ポカホンタスは「彼を殺すなら自分も殺して」と叫ぶ。首長はその姿にうたれ、殺し合いをやめると宣言。その時、ラドクリフは彼を狙って銃を撃つが、スミスは捨て身でかばって重傷を負う。開拓者たちはラドクリフを捕らえた。出航の日、スミスは「一緒に行こう」と言い、父も「自分の信じる道を進みなさい」と促した。だが、ポカホンタスはこの土地に留まる道を選び、愛する人を乗せた船をいつまでも見送った。




5-33. 天地英雄 ヘブン・アンド・アース

監督 フー・ピン
出演 チアン・ウェンヴィッキー・チャオ
2003年・中国(ソニー・ピクチャーズ)

解説
「壬生義士伝」 の中井貴一が、外国映画で初主演を飾ったアドベンチャー・ロマン。広大な砂漠を舞台に、自分の信念のために戦う男たちの姿を壮大なスケールで描く話題作だ。

ストーリー
紀元700年頃の中国。唐王朝はその最盛期を迎え、領土拡大を続ける中、周辺の異民族との衝突を繰り返していた。13歳のときに遣唐使として中国に渡って来た日本人、来栖旅人(中井貴一)は、唐の武術を学び、今では政治犯や反逆者を討伐する皇帝直属の刺客となっていた。そんな彼に、25年ぶりの日本への帰国許可が下りる。だが、長安までの身辺警護を依頼された司令官の娘、文珠(ヴィッキー・チャオ)を連れ、出発しようとする来栖に皇帝から最後の命令が届く。それは、突厥の女性や子供たちの処刑命令に背いて5人の部下と共に逆賊となった元軍人、李(チアン・ウェン)の殺害だった。李と彼の部下たちは、長安とインドや中東を結ぶシルクロードを往復する隊商の護衛を請負いながら逃亡生活を続けた後、李は部下たちに、家族を持って平安に暮らすように言い残し、ひとり砂漠へと去っていったのだった。数年後、インドの仏教聖地、天竺から唐の皇帝へ献上する10万冊の仏教経典を運ぶ大キャラバンが、唐の騎馬軍隊に護衛されながら長安へと出発した。しかし、キャラバンは砂漠地帯で巨大な砂嵐に襲われ、壊滅的な被害を被る。残されたのは若い僧侶、覚慧と唐の護衛兵がただ一人。同じ頃、砂漠を放浪していた李もまた砂嵐のため瀕死の重傷を負っていた。李は覚慧と護衛兵に命を救われ、長安までの護衛を買って出る。李はキャラバンをオアシスの村に連れて行き、かつての部下たちと再会を果たす。やがて、その地に李を討つために来栖がやってきて……。




5-34. バス停留所

監督 ジョシュア・ローガン
出演 マリリン・モンロードン・マーレーアーサー・オコンネル
1956年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
「ピクニック」 のウィリアム・インジ原作による同名のブロードウェイ・ヒット・コメディの映画化である。脚色は「七年目の浮気」 のジョージ・アクセルロッド。「ピクニック」 に続きジョシュア・ローガンが監督した撮影は「七年目の浮気」 のミルトン・クラスナー、音楽は「王様と私」 のアルフレッド・ニューマンと、「純金のキャデラック」 のシリル・J・モックリッジの共同担当。主演は「七年目の浮気」 のマリリン・モンロー、舞台俳優で本編により映画でビューのドン・マレイ「純金のキャデラック」 のアーサー・オコンネル。他に「ピクニック」 ノベティ・フィールド、舞台に出演したアイリーン・ヘッカート、「お若いデス」 のハンス・コンリードなど。

ストーリー
ボウ(ドン・マレイ)はモンタナ州の片田舎に育った21歳のカウボーイ。アリゾナのフィニクスで行なわれるロデオ選手県体会に先輩ヴァージル(アーサー・オコンネル)に連れられていくことになる。ボウは初めての旅に張り切るがヴァージルに、もう大人なんだから女を作れといわれてクサる。ボウはいやいやながら承知するが、女を探すなら“天使”を探す、カウボーイたちが探すような変な女には眼もくれないと豪語する。2人はフィニクスの安ホテルに泊まる。ボウが入浴している間にヴァージルは“ブルウ・ドラゴン”というカフェに遊びにいく。そこの女給チェリイ(マリリン・モンロー)は自分では歌手の積りだが、客に酒を買わせる女給として雇われているのが頗る不満。その日も、この問題で支配人と口喧嘩をしたが、それでも人のよさそうなヴァージルをカモにする。チェリイが客の前で歌っているとボウが現われる。彼は一目でチェリイに惚れ、これこそ理想の天使と思い込む。彼女を外に連れだしてキスしても拒まない。ボウは婚約ができたと独り決めしてヴァージルにチェリイとの結婚を打ち明ける。ヴァージルが驚いて反対しても聞き入れない。翌日ボウはロデオに出場、各種目に優勝してゆく。チェリイも見にきていたがそのうち競技の間に彼女と結婚式を挙げるために牧師を雇ったことを知ってびっくり。結婚式は危うく逃れたがチェリイはヴァージルから金を貰って町へ逃げ出すことにする。彼女がバス停留所でロサンゼルス行きを待っていると、ロデオに優勝したボウが現われる。ボウは彼女をつかまえ無理やりモンタナ行きに乗せる。バスは出発したが、やがて行手が雪に埋もれ、グレース・ダイナーというカフェの前で立往生。乗客は居眠りするボウを残して皆カフェに入る。暫らくして眠りから覚めたボウはカフェに現われチェリイをバスに連れ戻そうとする。それを見兼ねた運転手カールは2人の間に入りボウに彼女に謝れという。ボウは聞入れない。するとヴァージルがボウを懲しめるため、カールと2人で散々殴りつける。ボウはやっとおとなしくなり、2度とチェリイの自由を束縛しないと謝る。雪にとざされた道路が開き、バスが出発することになる。チェリイを諦めたボウは、彼女にせめて別れのキスを許してくれという。ところが意外、彼女はボウについて行くと言い出し彼を驚喜させる。




5-35. キンキーブーツ

監督 ジュリアン・ジャロルド
出演 ジョエル・エジャートンキウェテル・イジョフォーサラ=ジェーン・ポッツ
2005年・アメリカ、イギリス(ブエナ ビスタ)

解説
イギリスで大ヒットを記録した、実話ベースのドラマ。倒産寸前の靴工場が、ドラッグクイーン御用達のブーツで再起するまでを温かな笑いをちりばめて活写する。

ストーリー
突然の父親の死で、倒産寸前の田舎町ノーサンプトンの靴工場を相続したチャーリー(ジョエル・エドガートン)。どうにもうまくいかずロンドンでやけ酒をくらった帰り道、からまれている美女を彼が助けようとするが、一発でのされ、逆に彼女に助けられる。しかも、彼を助けた美女は、実はドラァグクイーンで男のローラ(キウェテル・イジョフォー)だった。彼女は足に合わないセクシーブーツに悩まされながらも、毎晩華やかなステージを繰り広げていた。ノーサンプトンへ帰り、日に何人も職人たちを解雇するチャーリーに、クビになったローレン(サラ=ジェーン・ボッツ)は、他社の社長はただ座って嘆かずに、乗馬靴や登山靴でニッチ市場を開拓していると叱咤する。目を覚ましたチャーリーは、彼女を臨時顧問に任命。その夜、ローラのクラブへ行き男性の体重を支えられるドラァグクイーン御用達のキンキーブーツの市場価値を尋ねると、ドラッグクイーンたちの好反応に市場開拓の感触を得る。チャーリーのもとへ、ある日、待ちきれない彼女が乗り込んできた。職人たちの好奇の目に怖気づくチャーリーを尻目に、ローラはデザイン画をしたためる。そのデザインは驚異的な美しさとシルエットを持つ、究極のキンキーブーツだった。チャーリーはローラを靴工場の専属デザイナーにする。工員たちの失笑を買いながらもふたりは試作を重ねるが、ある時、父親が生前、工場の売却話を進めていた事実を知る。しかしチャーリーの出した答えは、売却ではなく、全生産ラインをキンキーブーツ一本に絞り、一ヵ月後のミラノの見本市に工場の命運を賭けることだった。そして、工場がミラノに向けてフル稼働する中、事件は起きた……。




5-36. 世界でいちばん不運で幸せな私

監督 ヤン・サミュエル
出演 ヨーム・カネマリオン・コティヤールチボー・ヴェルアーゲ
2003年・フランス、ベルギー(アルバトロス)

解説
仏で大ヒットしたラブ・ストーリー。子供時代に始めた風変わりなゲームにとらわれた男女の、破天荒な恋の行方を描く。遊び心あふれるポップな映像も見もの。

ストーリー
幼いときにルールを決めてからというもの、ソフィー(マリオン・コティヤール)とジュリアン(ギョーム・カネ)は大人になるまでそのゲームをやめられなくなってしまう。素直になりたいときもゲームのせいでそうなれない…。これはある1つの“ゲーム”にとらわれた2人の、長い長い“愛のお話”。相手に「条件」を出し、それがクリアできれば次は相手の番。唯一の鉄則は“相手が仕掛けるゲームに絶対にのる”ということだ。最初はジュリアンの母親(エマニュエル・グリュンヴォルド)が重い病にかかっていること、そしてポーランド移民であるソフィーがクラスメイトにいじめられていることを忘れようという無邪気な賭けから始まった。先生に汚い言葉を使ったり、校長先生の前でお漏らししたり、お姉さんの結婚式をぶち壊したり…単なる子供の遊びは、大人になるにつれどんどん加速し倒錯の域に達していく。彼らは、ありとあらゆるタブーを破り、プライドを無視し、笑い、傷つけあい…。お互いのことを好きだと認めるということを除けば何でもやった。子供の頃の友情はやがて愛情に変わるが、あまりに長いことゲームによって結託してきた2人は素直に自分の気持ちを伝えることができない。本当に言いたいことはいつもゲームに紛れてしまう。結局ただの友達でいる方がずっと簡単だった。ソフィーとジュリアンは、それぞれ別の恋人と結ばれるが……。




5-37. フォーン・ブース

監督 ジョエル・シュマッカー
出演 コリン・ファレルフォレスト・ウィテカーケイティ・ホームズ
2003年・アメリカ(20世紀フォックス映画)

解説
全米No.1ヒットを記録した、コリン・ファレル主演のサスペンス劇。電話ボックスという限定された場所を舞台に、先読み不可能なストーリーが展開される緊迫感あふれる快作だ。

ストーリー
スチュ(コリン・ファレル)は自称一流のパブリシスト。傲慢で嘘をつくことを何とも思わない彼は、アシスタントと別れたあと、ニューヨーク8番街53丁目に残る最後の電話ボックスに入り、結婚指輪を外してクライアントの新進女優パメラ(ケイティ・ホームズ)に電話をかける。しかしスチュが受話器を置いて外に出た途端にベルが鳴り、彼は思わず受話器を取った。すると電話の発信者(キーファー・サザーランド)はなぜかスチュの私生活を熟知しており、どこかからかライフルで狙いつつ、言うことを聞かなければ殺すと脅迫する。やがて、その公衆電話をめぐってスチュといざこざを起こした娼婦の用心棒が射殺される。スチュが殺したとわめき散らす娼婦たち。まもなく警察がボックスを包囲し、レイミー警部(フォレスト・ウィティカー)がスチュに電話を切るよう説得する。そしてパメラと、妻のケリー(ラダ・ミッチェル)も現場にやってくる。やがて電話の声に命じられるまま、スチュは浮気心を持ったことなどを公衆の面前で懺悔する。そして自分を撃つようにとボックスの外に飛び出すが、先に警察にゴム弾で撃たれて倒れたため、助かった。犯人は、警察が現場に踏み込む前に自殺。しかしその遺体は、前にスチュが手荒く扱ったピザの配達人であり、真犯人である電話の発信者は、静かに現場を去っていくのであった。




5-38. ジャッカル

監督 マイケル・ケイトン・ジョーンズ
出演 ブルース・ウィリスリチャード・ギアシドニー・ポワチエ
1997年・アメリカ(東宝東和)

解説
ジャッカルという呼び名だけ知られる正体不明の超大物暗殺者と、彼を追うIRAの元テロリストの攻防を描くサスペンス・アクション。フレデリック・フォーサイスの有名小説「ジャッカルの日」のフレッド・ジンネマン監督による同名映画化作品(73)にインスパイアされている(クレジットはなし)。監督は「ボーイズ・ライフ」「ロブ・ロイ ロマンに生きた男」 のマイケル・ケイトン=ジョーンズ。原案・脚本は「ハード・ターゲット」 のチャック・ファーラー。製作はケイトン=ジョーンズと、「マイケル」 のジェームズ・ジャックスとショーン・ダニエル、「デビル」 のケヴィン・ジャール。製作総指揮はテレンス・クレッグ、ハル・リーバーマン、ゲーリー・レヴィンソン、マーク・ゴードン。撮影は監督とは「ロブ・ロイ」 でも組んだ、「インデペンデンス・デイ」 はじめローランド・エメリッヒ監督とのコンビで知られるカール・ウォルター・リンデンロウブ。音楽はコーエン兄弟とのコンビで知られる、「アサシンズ」 のカーター・バーウェルで、主題歌はマッシヴ・アタックが担当。美術は「ザ・ロック」 のマイケル・ホワイト。編集は「ボーイズ・ライフ」「コピーキャット」 のジム・クラーク。衣裳は「素顔のままで」 のアルバート・ウォルスキー。タイトル・デザインは英国のアート・パンク集団であるサイモン・テイラーTOMATO LONDONが担当。主演は「フィフス・エレメント」 のブルース・ウィリスと「真実の行方」 のリチャード・ギア。共演は「スニーカーズ」 のシドニー・ポワティエ、「ロミオ&ジュリエット」 のダイアン・ヴェノーラ、「ふくろうの叫び」 のマチルダ・メイ、「マイ・ニュー・ガン」 のテス・ハーパーほか。

ストーリー
正体不明の超大物暗殺者ジャッカル(ブルース・ウィリス)は、チェチェン・マフィアの首領テレク(デイヴィッド・ハイマン)から彼の弟を殺した米国の情報機関の要人暗殺を依頼される。ジャッカルにとっても相手が巨大なだけに最後の仕事となるため、報酬は7千万ドル。この情報をつかんだ、テレクの組織壊滅を図るFBI副長官プレストン(シドニー・ポワチエ)とMVD[ロシア情報局]のコスロヴァ少佐(ダイアン・ヴェノーラ)以下のチームはジャッカルの足取りを追うが、相手は神出鬼没。チームは彼の行動を予測し、狩り出せる数少ない人間として、元IRA幹部で超一流のテロリスト、デクラン・マルクィーン(リチャード・ギア)を起用。彼は仮釈放とジャッカルの素顔を知る元バスク祖国と自由の闘士イザベラ・ザンコーナ(マチルダ・メイ)を協力者にすることを条件に捜査に加わる。実はかつてイザベラと恋仲だったデクランは、武器売買のトラブルからふたりの間の子供をジャッカルに殺されたという因縁があった。さて、ジャッカルは、遠隔操作が可能な超強力な究極兵器を手中にカナダ経由で米国へ潜入。デクランはジャッカルに迫るが、FBIの内部情報まで把握するジャッカルはコスロヴァらを殺し、デクランに「お前は女を守れない男だ」と謎のメッセージを残す。その言葉からジャッカルの標的が大統領夫人(テス・ハーパー)であると知ったデクランは、先回りして遊説先の会場でジャッカルを待ち受ける。はたしてジャッカルの究極兵器が演壇を襲うが、夫人は間一髪で無事。かくしてデクランはジャッカルを追い詰め、苦闘の末彼を倒すのだった。




5-39. アウトロー

監督 クリストファー・マッカリー
出演 トム・クルーズロザムンド・パイクヴェルナー・ヘルツォーク
2012年・アメリカ(パラマウント ピクチャーズ ジャパン)

解説
トム・クルーズが自ら製作も担当したサスペンス・アクション。本作でクルーズが演じるのは、元米軍の秘密捜査官にして流れ者の男、ジャック・リーチャー。彼が連続殺害事件の真相に迫っていく姿をスリリングに描き出す。「ユージュアル・サスペクツ」でアカデミー賞脚本賞に輝いた、クリストファー・マッカリーの監督第2作。

ストーリー
ピッツバーグ近郊。白昼公然と無作為に6発の銃弾が発射され、5人が殺害される事件がおこる。警察の捜査が進み、僅か1時間後には容疑者として元軍人のスナイパー、ジェームズ・バー(ジョセフ・シコラ)が逮捕。だがバーは殺人容疑を否認し、彼がかつて軍で最も恐れていた男、ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)への連絡を要求する。リーチャーは、元米軍の秘密捜査官として名を馳せ、今は街から街へと放浪を続ける一匹狼。真実だけを追求し、正義のためには手段を選ばず事件に立ち向かう男であった。ところがバーは刑務所への護送中、他の囚人たちに襲われ意識不明の状態となってしまう。そんな中、突然警察にジャック・リーチャーが現れ、凄腕の軍のスナイパーであるバーが標的を外す訳がないと指摘。何かがおかしいという確信を持ち始めたリーチャーは、一見単純なこの事件の裏にある隠された真相を暴くべく行動を開始する……。




5-40. ハイ・クライムズ

監督 カール・フランクリン
出演 アシュレイ・ジャッドモーガン・フリーマンジム・カヴィーゼル
2002年・アメリカ(20世紀フォックス映画)

解説
ジョセフ・フィンダーの小説 「バーニング・ツリー」を映画化した法廷ミステリー。最愛の夫の知られざる過去をめぐり、危険な闘いに挑むことになった女性弁護士の姿を描く。

ストーリー
美しく優秀な女性弁護士クレアは、建設会社を経営する夫トムと幸せな毎日を送っていた。ある日、二人の家に泥棒が侵入し、その事件を調べる過程でトムの本名がロナルド・チャップマンであると判明する。その結果、トムは海兵隊の特殊工作員時代に、エル・サルバドルで一般市民9人を殺害した容疑で、FBIに逮捕されてしまう。無実を訴えるトムを信じて、クレアは軍事法廷に立つことを決意する。特殊な軍事裁判を熟知する弁護士チャーリーの助けを借りて、軍のスキャンダルを暴いていくクレアだが……。




5-41. テキサスの五人の仲間

監督 フィールダー・クック
出演 ヘンリー・フォンダジョアン・ウッドワードジェイソン・ロバーズ
1966年・アメリカ(ワーナー)

解説
ハスラー」 のシドニー・キャロルの脚本を、TV出身で劇場用映画はこれが3本目というフィルダー・クックが製作・監督したポーカー・ゲームを中心とした西部劇。撮影は「不意打ち」 のリー・ガームス、音楽は「ガンファイトへの招待」 のデイヴィッド・ラクシンが担当した。出演は「バルジ大作戦」 のヘンリー・フォンダ、「逆転殺人」 のジョアン・ウッドワード、「旅」 のジェイソン・ロバーズ、「お呼びの時間」 のポール・フォード、「酒とバラの日々」 のチャールズ・ビックフォード、「危険な道」 のバージェス・メレディス、ケヴィン・マッカーシー、9歳の子役ジェラルド・ミチェノードなど。

ストーリー
1896年のある日。この日は、西部きっての5人のギャンブラーがホテルに集まり、年に1度の恒例のポーカー・ゲームを開く日だった。集った面々は、金持の葬儀屋トロップ、裁判の途中で法廷をぬけでてきた弁護士のヘイバーショウ(ケヴィン・マッカーシー)、娘の結婚式を中断してかけつけたドラモンド、牛買いのビュフォード、それにウィルコックスである。ゲームもたけなわの頃、旅の途中のメレディス(ヘンリー・フォンダ)と妻のメリー(ジョアン・ウッドワード)、息子のジャッキーがホテルに立ち寄った。馬車の車輪をなおすためだ。小休止で部屋を出たヘイバーショウから、ポーカーの話を聞いたとたんにメレディスの目の色が変わった。実は、彼は大変なポーカー狂で、せめて見物だけでもさせてほしいと頼みこむしまつ。夫の性分を知りつくしているメリーは息子を看視役につけて、見物だけを許し、自分はカジ屋へ出かけた。最初のうちこそ、遠慮がちにゲームを見ていたメレディスだったが、勝負が熱してくるにつれ、ついにがまんならなくなり息子のとめるのもきかず、ゲームに加わってしまった。賭金は、一家が農場を買うために貯めた4000ドルのうちの1000ドル。またたくまに、すってしまい残りの3000ドルもつぎこんだがだめ。そこへ帰ってきたメリーは驚いた。4000ドルを失くしたばかりか、ゲームに居残るため、500ドルに四苦八苦している夫。その時メレディスは持病の心臓病の発作で倒れてしまった。医者のスカリーが呼ばれて彼を別室へ運びこんだ。虎の子の4000ドルを取り戻すため、メリーは身代わりでポーカー続行を宣言したものの、ゲームの方法などまるで知らない。どうやら方法だけは仲間から教わったが先立つものは500ドル。トランプ・カードを担保に、銀行に借りに行き、1度は断わられたものの、ホテルへ追ってきた銀行主はメリーに500ドルを貸し、さらに1000ドルにつりあげた。他の連中もそれに従うしかなかった。そして見事、メリーの大勝利に終わった。数日後、とあるクラブに集ったのは銀行主、医者、メレディス、メリーらだった。メレディスとメリーが旅の夫婦だというのはうそ八百で彼らは相当のギャンブラー、テキサスの5人の仲間にうらみを持つ銀行主が演出した一世一代の大芝居だった。




5-42. オーバー・ザ・ムーン

監督  ニー・ゴールドウィン
出演 ダイアン・レインヴィゴ・モーテンセンアンナ・パキン
1999年・アメリカ(劇場未公開)

解説
1969年の夏。毎年、家族で過ごす避暑地にやってきたパール。彼女は10代で母親になり、毎日が満たされない生活を送っていた。ある日、洋服売りに来た若い男ウォーカーと出会う。この日はアポロ11号が初の月面着陸に成功した記念すべき日でもあった。 劇中に伝説的なロックコンサート「ウッドストック」 の場面も流されている。

ストーリー





5-43. 愛と哀しみの果て

監督 シドニー・ポラック
出演 メリル・ストリープロバート・レッドフォードクラウス・マリア・ブランダウアー
1985年・アメリカ(ユニヴァーサル=UIP)

解説
アフリカの大地に魅せられてコーヒー園を経営する1人の女性カレン・ディネーセンの恋と仕事の波乱の半生を描く。製作・監督は「トッツィー」 のシドニー・ポラック、エグゼクティヴ・プロデューサーはキム・ジョーゲンセン。アイザック・ディネーセンの回想録(「アフリカの日々」 晶文社刊)、ジュディス・サーマンの伝記、そしてエロール・トルゼビンスキーの原作を基にカート・リュデュークが脚色。撮影はデイヴィッド・ワトキン、音楽はジョン・バリー、編集はフレドリック・スタインカンプ、ウィリアム・スタインカンプ、ペンブローク・J・ヘリング、シェルドン・カーン、衣裳はミレナ・カノネロが担当。出演はメリル・ストリープ、ロバート・レッドフォード、クラウス・マリア・ブランダウアーなど。日本版字幕は戸田奈津子。アガファ・カラー、ビスタサイズ。1986年度アカデミー賞、作品・監督・脚色・撮影・美術・録音・作曲の7部門を獲得。1985年作品。

ストーリー
カレン(メリル・ストリープ)がアフリカでの記憶を綴る時、彼女の心に刻み込まれた1人の男の面影がよぎる。デニス・ハットン(ロバート・レッドフォード)、永遠に忘れることのない男性だった。デンマークに住むカレンは、莫大な財産を持つ独身女性だったが、いつかこのデンマークを離れたいと秘かに思っていた。そのきっかけともなる出来事が起こった。彼女の友人のスウェーデン貴族のプロア・ブリクセン男爵(クラウス・マリア・ブランダウアー)と結婚することになったのだ。夢と希望を抱きつつ1913年、東アフリカのケニアヘと、カレンは旅発った。彼女の所有するンゴングの農園に新居を構えることにしたのだ。ナイロビに向かう列車にいたカレンは、途中、象牙を列車に積み込んでいた男を見かけた。彼が冒険家のデニス・ハットンだ。彼は友人であるバークレー・コール(マイケル・キッチン)に象牙を渡してくれるようにカレンに言い残すと、サファリの荒野へと去っていった。ナイロビでは、召使いのファラー・アデン(マリク・ボウエンズ)が出迎えており、カレンをブロアのいる英国人クラブ・ムサイガに案内した。そこは女人禁制であったが、それを無視して足を踏み入れた彼女を、周囲の人々は茫然とした態度で見つめた。それから1時間後、カレンとブロアの結婚式が挙げられた。再びクラブに行ったカレンは、そこでコールと出会う。たくさんの蔵書に囲まれたその部屋はデニスのものであることを、彼女はコールから聞いた。紳士然としたコールや、彼から伝え聞いたデニスに、カレンは興味を持つのだった。農園に着いたカレンはハウスボーイのジュマ(マイク・プガラ)らから意外な事を聞いて愕然とする。当初計画していた酷農はやめ、コーヒー栽培をすることにブロアが勝手に決めていたのだ。激しく口論する2人。翌日、ブロアは、狩りに出かけ、雨が降るまで戻らないと言い残していた。その地で雨が降るなど、めったにないことだ。残されたカレンは、収穫が4年先になると聞きながらも、精力的にコーヒー栽培に挑んだ。ある日、草原に出かけた彼女は、ライオンに狙われそうになり、たまたま通りかかったデニスに助けられる。再会を喜んだ2人は夕食を共にし心ゆくまで語り合った。狩りから戻ったブロアとカレンの平穏な生活は、長くは続かなかった。第一次大戦の余波がアフリカにも及び、農園から320キロ南の独領との境界線に英国人を中心をする偵察隊が組まれ、その一員としてブロアが加わってしまったのだ。やがて、300人分の缶詰をネトロン湖の英軍に提供するようにとの申し入れを受けたカレンは、自ら届けるべく旅立った。幾多の危機を乗り越えてカレンらは、英軍のキャンプに辿り着いた。ブロアはそんな彼女をやさしく抱いた。それから3カ月後、カレンは梅毒にかかり、デンマークに帰国。手術の結果、子供の産めない身体になってしまった。再びアフリカの大地に戻ったカレンは、教育に目ざめ、子供たちのために学校を開放する。やがて戦争も終わり、自由を謳歌するようにデニスと共にサファリ・キャンプを続けた。一方のブロアは、相変わらず女遊びに夢中になっていた。ブロアを家から追い出すカレン。いつしか愛を語り合うようになったカレンとデニス。ある日、コールが、黒死病におかされ死期が迫っていることをデニスに告白した。コールの傍には、以前から彼の面倒を見ていたンマリ族の美しい女性がいた。コールのやがてくる死を知ってショックを受けたデニスは、カレンに、一緒に住みたいと告げ、カレンは頷いた。借金の申し入れに来たブロアが彼女に離婚を迫った。帰宅したデニスにそのことを告げ彼に結婚を迫るカレン。しかし、デニスは自由を主張し結婚を拒んだ。デニスが複葉機でセンブルヘ行つてる間、収穫したコーヒーが火事で灰になるという事件が起きた。借金で畑まで失ったカレンは、キクユ族の土地だけは確保しようと、着任早々の新総督に直談判する。そんな頃デニスが戻り、彼女を優しく慰めた。すべての後かたづけを済ませ、デンマークに帰る日を待つばかりとなったカレンに、デニスが言った。次の金曜日には必ず戻ると…。デニスの帰りを待つカレンの許にブロアが現れ、デニスが墜落事故死したことを伝えた。彼女は愛するものをすべて失った。英国人クラブで、皆が別れのグラスをさし出し、それを飲みほすと、カレンはアフリカの大地を後にした。その後、2度と、カレンはアフリカの地を踏むことはなかった。




5-44. シャングリラ

監督 ティン・ナイチョン
出演 チュウ・チーインウー・チョンティエン
2008年・中国、台湾(ワコー=グアパ・グアポ)

解説
幼い息子を事故で失った母親が、自然の美しい雲南省チベット族自治州への旅を通して再生する姿を描くヒューマンドラマ。監督は、舞台「他和他的両個老婆」の演出など台湾で活躍する演出家で、映画初監督となるティン・ナイチョン。出演は、「ラスト、コーション」 のチュウ・チーイン。第32回カイロ映画祭撮影特別賞受賞。

ストーリー
ジー・リン(チュウ・チーイン)は、幼い息子を交通事故で失う。ジー・リンは息子の突然の死を受け入れられず、悲しみに暮れる。しかし事故の加害者である夫婦は容疑を否認し、裁判は遅々として進展しない。その上、夫が自分の悲しみを理解してくれないと感じたジー・リンは一層悲しみを募らせ、夫婦の関係も次第にこじれていく。ある日、ジー・リンは息子の部屋で、梅里雪山の絵が描かれた1枚のメモを見つける。それは息子が生前、いっしょによく遊んだ宝探しゲームのヒントとして描かれたものだった。ジー・リンは衝動的に、梅里雪山のある雲南省チベット族自治州に向けて旅立つ。そんな彼女を、尾行する若い男の姿があった。旅の途中、彼女は色々な人と出会っていく。素朴な人々との出会いや小さな恋、そして雪山、氷河、湖、森林など雄大で美しい景観は、ジー・リンの心を癒してくれるのだろうか。そして彼女の旅は、意外な結末を迎える。




5-45. トンマッコルへようこそ

監督 パク・クァンヒョン
出演 シン・ハギュンチョン・ジニョンカン・ヘジョン
2005年・韓国(日活)

解説
争いごととは無縁の村に迷いこんだ兵士たちが、村人の温かさに触れて互いの絆を深めてゆく、ファンタジックなヒューマン・ドラマ。音楽を「ハウルの動く城」 の久石譲が担当。

ストーリー
朝鮮戦争下の1950年代。山の中にトンマッコルと言う不思議な村があった。「子供のように純粋な村」という意味のこの村では大らかな村人たちがのんびりと自給自足の生活を営んでいた。そこによそ者がまぎれこんでくる。まずは不時着した連合軍のアメリカ人パイロット、スミス。そして韓国軍の兵士、ピョ(シン・ハギュン)とムンが村人に連れられてやってきた。騒動が起こったのは少女ヨイル(カン・ヘジョン)が、中隊長のリ(チョン・ジェヨン)に率いられた人民軍の兵士たち3人を連れてきた時だった。敵同士の韓国軍と人民軍はお互いに銃を向けて睨み合った。村人たちの前で敵対し続ける両軍兵。そんなある日、不発だと思って投げた手榴弾が村の食糧貯蔵庫に落ちて爆発してしまう。村人たちの食料を台無しにしてしまったことを申し訳なく思った一同はひとまず休戦状態に入り、畑仕事を手伝い始める。ある日、巨大イノシシが人々を襲ってきた。兵士たちは見事な連係プレーでイノシシを仕留めた。次第に敵味方の壁を越えて打ち解けていく一同。大らかな村人たちの気風に影響されるかのように生活を楽しむことを覚えていった。秋祭りの夜、連合軍の落下傘部隊が村に現れ、村人たちに暴力を働いた。その理不尽さに一同は怒り、連合軍の武器を奪ってたちまちのうちに撃ち倒してしまう。しかしその騒動の中、ヨイルが命を落としてしまった。生き残った連合軍兵を問い詰めると、連合軍が村一帯の爆撃を決定したということが判った。一同は、この村を救いたいという一心で団結し、ある計画を実行する決意をした。村から離れた場所で爆撃機を攻撃し、自分たちが犠牲となることで、連合軍の目を村から逸らせようというのだ。激しい爆撃の最中、次々に命を失っていく兵士たち。最後の瞬間を迎え、かつては敵同士だったピョとリは笑顔で微笑みあうのだった。こうして兵士たちは命を落としたが、村は救われたのだった。




5-46. アイス・カチャンは恋の味

監督 アニュウ
出演 アニュウアンジェリカ・リーゲイリー・ツァオ
2010年・マレーシア(劇場未公開)

解説
2010年公開のロマンティックコメディ映画。マレーシア出身で、台湾などで活躍するシンガーソングライター阿牛(アニュウ)の初監督・脚本・主演作品。同じくマレーシア出身の人気歌手・俳優が多数出演している。 第11回NHKアジア・フィルム・フェスティバル上映作品。 1980年代のペラ州トゥロノ (Teronoh) が主な舞台。アイスカチャン (Ais kacang) はマレーシアのかき氷の一種。

ストーリー
少しだけ昔のマレーシア。小さなカフェの次男坊ボタックは寡黙でシャイな少年。一つ屋根の下に暮らす勝ち気な少女ファイティング・フィッシュに恋心を抱いている。もちろん気持ちを伝えることなどできず、思いの丈を絵にこめていた。ファイティング・フィッシュは母に反発し、幼い頃に別れた父親に会いたいと思い続けている。やがて、2人と幼なじみの仲間たちに、人生の次の一歩を踏み出す季節が訪れる。




5-47. デリー6

監督 ラーケーシュ・オームプラカーシュ・メヘラー
出演 アビシェーク・バッチャンソーナム・カプールワヒーダー・レヘマーン
2009年・インド年(劇場未公開)

解説
ニューヨークで育ったローシャンは、故郷に戻る祖母に付き添いデリーにやってくる。「オールド・デリー」 と呼ばれるこの地域では、ヒンズー教徒、イスラム教徒が隣りあって仲良く暮らしていた。見るものすべてが物珍しいローシャン。やがて近所に住む美しい娘、ビットゥのことが気になり始める。一方巷では、街を跋扈する怪物、カーラー・バンダル(黒い猿)の話題で持ちきり。見えないものへの恐怖が、やがてある事件を引き起こす。 インドで大きな話題となった「Rang De Basanti」(2006)のメヘラー監督の新作。「スラムドッグ$ミリオネア」でアカデミー作曲賞・歌曲賞に輝いたA.R.ラフマーン作曲の美しい曲と共に、もう一人の主人公とも言えるオールド・デリーの街が魅力的に描かれている。「デリー6」の6は、オールド・デリー(デリー旧市街)を表す郵便番号。

ストーリー





5-48. 最後の初恋

監督 ジョージ・C・ウルフ
出演 リチャード・ギアダイアン・レインスコット・グレン
2008年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
リチャード・ギア&ダイアン・レイン共演のラブ・ストーリー。海辺に建つロッジで出会った中年男女が、共に家庭を持つ身でありながらも惹かれ合う姿を、切なくも力強く映し出す。

ストーリー
主婦のエイドリアン(ダイアン・レイン)は日々の生活に疲れ果てていた。彼女は家族から離れて一人、一時の休息を求めてノース・カロライナ州のアウター・バンクスにあるローダンテにやってくる。海辺の小さな町にある友人の宿を、週末だけ手伝うためだった。だが、身勝手な夫からはすぐに“戻って来い”と連絡が入る。それに加えて、何をするにしても彼女を怒らせる思春期の娘。自分を取り巻くそんな周囲の状況をゆっくりと考え直したい。そう考えるエイドリアンには静かな環境がどうしても必要だったのだ。ところが、町に着いた彼女を待っていたのは、ひなびた町に大きな嵐がやってくるという予報。期待に反する騒ぎの中、宿には唯一の客として医師のポール・フラナー(リチャード・ギア)が到着する。だが、彼もただのんびりと週末を過ごしに来たわけではなかった。エイドリアンと同じように満たされない結婚生活を送り、良心の呵責をなんとかしたいという問題を抱えていたのだった。次第に嵐が近づいてくる中、初めて出会う二人。接近する嵐と歩調を合わせるように、お互いに安らぎを求めてゆく。やがてそれは、彼らの一生を左右するような運命的なロマンスに発展してゆく……。