12-1. G.I.ジェーン

監督 リドリー・スコット
出演 デミ・ムーアヴィゴ・モーテンセンアン・バンクロフトジェーソン・ベギースコット・ウィルソンルシンダ・ジェニー
1997年・アメリカ(日本ヘラルド映画)

解説
性差別が根強く残る米海軍の女性将校が、超過酷なエリート偵察部隊訓練に挑戦して仲間との性差を越えた信頼を築くまでを描いたドラマ。「素顔のままで」 のデミ・ムーアが前作のストリッパー役から一転、丸坊主でスタントなしの体当たり演技で主演を張った。監督は「白い嵐」 のリドリー・スコット。脚本は作家・脚本家のダニエル・アレキサンドラの原案を基に、彼女と「逃亡者」「アライバル 侵略者」 (監督も)のデイヴィッド・トゥーイの共同で執筆。製作はデミと「愛に気づけば」 のロジャー・バーンバウム、スザンヌ・トッド、製作総指揮は作家・脚本家のダニエル・アレキサンドラ、ジュリー・バーグマン・センダー、クリス・ザーパスの共同。撮影はCM時代からスコットと親交がある「白い嵐」 のヒュー・ジョンソン、音楽は「ロザンナのために」 のトレヴァー・ジョーンズ、美術は「セブン」 のアーサー・マックス、編集は「魅せられて」 のピエトロ・スカリア、衣裳は「ダイ・ハード2」 のマリリン・ヴァンス=ストレイカー。共演は「デイライト」 のヴィーゴ・モーテンセン、「キルトに綴る愛」 のアン・バンクロフト、「デッドマン・ウォーキング」 のスコット・ウィルソンほか。

ストーリー
海軍情報部のジョーダン・オニール大尉(デミ・ムーア)は、男女差別雇用撤廃法案を唱えるデヘイヴン上院議員(アン・バンクロフト)の要請で海軍のエリート偵察部SEALに送り込まれる。彼女を待っていたのは鬼曹長ウルゲイル(ヴィーゴ・モーテンセン)の想像を絶するしごきと訓練生たちの好奇の目だった。頭をスキンヘッドに男たちと寝起きをともにすることで「女」を捨てたオニールを、マスコミは「GIジェーン」と皮肉る。ウルゲイルの執拗な拷問に耐え、訓練生たちは彼女を「仲間」として受け入れ始めた矢先、オニールが同性愛者であることが発覚、デヘイヴン議員の取引でデスク勤務を命じられたが、激怒したオニールに負けた議員は彼女を訓練に復帰させた。最後の訓練に向かう潜水艦にリビアの部隊を救出せよとの指令が下る。突然の実戦だったが、作戦は成功する。訓練が終り、ウルゲイルはオニールにSEALの隊員の証であるバッジを手渡す。




12-2. あなたが寝てる間に…

監督 ジョン・タートルトーブ
出演 サンドラ・ブロックビル・プルマンピーター・ギャラガーピーター・ボイルジャック・ウォーデングリニス・ジョンズ
1995年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
大都会で暮らす孤独なシングル・ウーマンが、運命のいたずらから真実の愛を掴むまでを描いたハートフルなラヴストーリー。偶然の積み重ねによる物語の妙と、ツボを抑えた演出が醸し出す笑いと感動が心に残る。監督は「クール・ランニング」 のジョン・タートルトーブ。脚本は新鋭のダニエル・G・サリヴァンとフレデリック・リボー。製作は「エンジェルス」「アイ・ラブ・トラブル」 などのヒットメーカー・コンビ、ジョー・ロスとロジャー・バーンバウム。エグゼクティヴ・プロデューサーはアーサー・サルキシアンと、「コーンヘッズ」 などの監督でもあるスティーヴ・バロン。撮影は「クール・ランニング」 のフェドン・パパマイケル、音楽は「マスク(1994)」 のランディ・エデルマンが担当。主演は「スピード」 で一躍トップスターとなったサンドラ・ブロックと、「めぐり逢えたら」「キャスパー」 のビル・プルマン。共演は「未来は今」 のピーター・ギャラガー、「ケイティ」 のピーター・ボイル、「ギルティ 罪深き罪」 のジャック・ウォーデンほか。

ストーリー
シカゴの下町に住むルーシー(サンドラ・ブロック)は、地下鉄の改札嬢を務めるシングル・ウーマン。天涯孤独で恋人もいない彼女は、毎朝、改札口で見かけるハンサムな男性に恋している。クリスマス・イヴの朝、休日出勤した彼女の目の前で、その男性がホームに落下。とっさに飛び下りた彼女は、列車に轢かれそうになった彼を必死で救出した。昏睡状態の彼は病院に収容されたが、面会謝絶の病室の前でルーシーが呟いた「私たち、結婚するのに」という独り言がもとで、彼女はその男性、エリート弁護士ピーター(ピーター・ギャラガー)の婚約者と誤解されてしまう。彼女はだますつもりはなかったが、心臓が悪い祖母エルシー(グリニス・ジョンズ)、家具商の父オックス(ピーター・ボイル)、母ミッジ(ミコール・メルキュリオ)、妹メアリー(モニカ・キーナ)ら優しい彼の家族のことを思うと、つい本当のことを言いそびれてしまった。ルーシーは彼らにすっかり気に入られ、彼女の方でも忘れていた家族の温もりに触れて幸福な気持ちに。ピーターの弟ジャック(ビル・プルマン)は初め彼女を疑うが、いつしかそれは恋心に変わっていった。ルーシーもまた彼を好きになっていた。突然、ピーターが意識を取り戻した。嘘がバレるのは時間の問題と思いきや、ルーシーのことを知らないという彼を、周囲の者は記憶喪失と勘違い。ただ一人、ルーシーの秘密を知るピーターの名付け親ソウル(ジャック・ウォーデン)は、「虚栄心を捨てて本物を見つけろ」と諭す。ルーシーの魅力に気づいたピーターは、彼女にプロポーズした。式の前日、ジャックは彼女に結婚祝いを贈った。それは、いつか彼に行ってみたい街と話した、フィレンツェの街を型どった置物だ。決心を固めたルーシーは式の当日、全てを告白。本当に好きなのはジャックだと宣言、式は大混乱に。翌日、改札の窓口にジャックが現れ、指輪をルーシーに渡してプロポーズ。二人はめでたくゴールインした。




12-3. レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで

監督 サム・メンデス
出演 レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットキャスリン・ハーンマイケル・シャノンデヴィッド・ハーバーキャシー・ベイツ
2008年・アメリカ、イギリス(パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン)
解説
タイタニック」 のレオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレットの再共演が11年ぶりに実現。現実と理想の狭間でもがくカップルの運命をつづるラブ・ストーリーだ。

ストーリー
1950年代のコネチカット州。元陸軍兵のフランク・ウィーラー(レオナルド・ディカプリオ)はニューヨークの事務機会社ノックスに勤め、女優志願だったエイプリル(ケイト・ウィンスレット)と結婚した。夫妻は2人の子供に恵まれ、“レボリューショナリー・ロード”の閑静な住宅街で理想的な家庭を築いていた。ある日、エイプリルはアマチュア劇団の舞台に立つ。しかし最悪の出来に終わり、帰りの車中で夫に怒りをぶつける。フランクは30歳の誕生日に、タイピストのモーリーン(ゾエ・カザン)と食事に出かけ、自分が父と同じような人生を歩んでいることの不満を漏らす。2人は店を出ると、モーリーンの部屋へ行く。フランクが帰宅すると、彼の誕生日を祝う準備が整っていた。そしてエイプリルはフランクに、家族一緒にパリで暮らしたいと告げる。軍人時代、フランクはパリに駐在し、その街に魅了されていた。その思いを聞いたエイプリルも、パリに憧れを抱いていた。また彼女は、パリでは自分が働くので、フランクは好きなことをしていいと言う。フランクは移住を決意し、出発を秋と決める。フランクの同僚や、ウィーラー家の隣人・シェップ(デヴィッド・ハーバー)とミリー(キャスリン・ハーン)のキャンベル夫妻は、2人の計画に冷ややかな視線を送る。ある日、フランクたちに家を紹介した不動産屋のヘレン(キャシー・ベイツ)と夫ハワードが、精神を病み入院していた息子のジョン(マイケル・シャノン)を連れてくる。ジョンは、人生の空しさを乗り越えたいというフランクを冷めた目で見る。パリ行きの準備が進む中、ノックス社の取引先のバート(ジェイ・O・サンダース)がフランクを引き抜こうとする。フランクは新しいポストに心を動かされるが、移住の決意をバートに伝える。出発が近づいたある日、エイプリルが妊娠していることを告白する。それでもエイプリルは移住を強行しようとするが、フランクは決意が揺れ始める。




12-4. エターナル・サンシャイン

監督 ミシェル・ゴンドリー
出演 ジム・キャリーケイト・ウィンスレットキルスティン・ダンストイライジャ・ウッドマーク・ラファロトム・ウィルキンソン
2004年・アメリカ(ギャガ)

解説
「ヒューマンネイチュア」 の監督&脚本家による異色ラブ・ロマンス。思い出を“消去”した元恋人同士のせつなくもおかしい運命を描出。主演はジム・キャリー。

ストーリー
バレンタイン目前のある日、ジョエル(ジム・キャリー)は、最近ケンカ別れした恋人のクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が、自分との記憶を全部消してしまったという不思議な手紙を受け取る。ショックを受けたジョエルは、自らもクレメンタインとの波乱に満ちた日々を忘れようと、記憶除去を専門とするラクーナ医院の門を叩く。ハワード・ミュージワック博士(トム・ウィルキンソン)が開発したその手術法は、一晩寝ている間に、脳の中の特定の記憶だけを消去できるというもの。さっそく施術を受けるジョエル。技師のパトリック(イライジャ・ウッド)、スタン(マーク・ラファロ)、メアリー(キルスティン・ダンスト)が記憶を消していく間、無意識のジョエルは、クレメンタインと過ごした日々を逆回転で体験する。しかしやがて、ジョエルは忘れたくない素敵な時間の存在に気づき、手術を止めたいと思うようになるが、そのまま手術は終わる。そして朝。家を出たジョエルは、衝動的に仕事をさぼって海辺へと向かい、そこでクレメンタインと出会う。二人は互いに惹かれ合うが、彼らのもとに、消された記憶について二人がそれぞれ語っているテープが届く。自分と博士との不倫の記憶を消されたと知ったメアリーが、彼らに送ったのだ。テープから聞こえてくるお互いの悪口。しかし二人は、それでも改めて恋に落ちるのだった。




12-5. 馬上の二人

監督 ジョン・フォード
出演 ジェームズ・スチュアートリチャード・ウィドマークリンダ・クリスタルシャーリー・ジョーンズジョン・マッキンタイア
1961年・アメリカ(コロムビア)

解説
サタデイ・イヴニング・ポスト連載のウィル・ククの西部小説を「捜索者」 のフランク・ニュージェントが脚色、「バファロー大隊」 のジョン・フォードが監督した異色西部劇。撮影はチャールズ・ロートン・ジュニア、音楽はジョージ・ダニング。出演は「戦略爆破部隊」 のジェームズ・スチュアート、「アラモ」 のリチャード・ウィドマークとリンダ・クリスタル、それに「ペペ」 のシャーリー・ジョーンズ、ほかにジョン・マッキンタイア、ハリー・ケイリー・ジュニアなど。製作スタン・シュペトナー。

ストーリー
1880年、テキサスのタスコサ町の保安官ガスリー・マケーブ(ジェームズ・スチュアート)は、町から40哩離れたグランド砦の司令官フレーザー少佐の招きで砦へ行った。少佐はコマンチ族に拉致された白人の救出を依頼した。マケーブは酒場のマダム・ベルの執拗な求愛から逃れるために砦へ行ったのだが、この仕事に気が進まない。が、1ヵ月80ドル、白人1人につき500ドルという報酬に承諾した。少佐はとくに17歳くらいの少年を探すようにつけ加えた。マケーブは旧友のジム・ゲイリイ中尉(リチャード・ウィドマーク)を護衛に捜索隊を連れてコマンチ領へ。だが、気の乗らないマケーブは酒を飲み、一行の中のブロンド娘マーティ(シャーリー・ジョーンズ)をよくからかった。彼女の弟も拉致されていた。一行のキャンプがコマンチ族に襲われ、集落に連行された。そこでマケーブは、ウルフという17歳くらいの少年に目を止めた。からだは褐色に塗っているが、まぎれもない白人だ。マケーブとゲイリイは酋長クワナと取り引き、ウルフと陸軍仕官の婚約者で、その任地に向かう途中捕まったエレナ(リンダ・クリスタル)とを連れて砦に帰った。砦でウルフは好奇心の的になった。暴れ回る彼を誰も白人とは思わない。が、頭の異常なマッケンドレス夫人だけは我が子と信じ興奮していた。実際ウルフは真実の子ではなく、マッケンドレス夫人の夫リングルが、マケーブに1000ドル渡して連れてこさせたものだった。エレナも砦の人々に軽蔑の目で見られた。一方、マーティは、弟を探す見込みがなくなったので砦を発とうとしていた。ゲイリイは彼女を慰め、その夜のダンス・パーティに誘った。マケーブもエレナとともに出席した。パーティの最中ウルフが「我が息子、我が息子」と傍を離れぬマッケンドレス夫人を殺した。私刑の場所へ連行される途中、ウルフはマーティの部屋から流れるオルゴールの音楽を聞いて愕然とした表情をみせ「俺の音楽だ」と叫んだ。マーティは驚いた。オルゴールは弟の愛用していたものであり、ウルフこそ弟だったのだ。が、ウルフは救われなかった。マーケーブはエレナを連れタコサに帰った。が、ここでもエレナは冷たく扱われた。絶望と悲しみで1人カリフォルニアへ帰ろうとする彼女をマケーブが追った。




12-6. リプレイスメント

監督 ハワード・ドイッチ
出演 キアヌ・リーヴスジーン・ハックマンブルック・ラントンオーランド・ジョーンズフェイゾン・ラブ
2000年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
 「マトリックス」のK・リーブス主演最新作。人生に挫折した男たちが、一瞬の栄光を勝ち取るために必死で闘う姿をドラマティックに綴る。代理選手たちの活躍を描いたスポーツ・ドラマだ。

ストーリー
フットボール・シーズンの終盤になり、ワシントン・センティネルズの主力選手が年俸アップを求めてストに入ってしまった。チーム・オーナーのオニール(ジャック・ウォーデン)に泣きつかれたかつての名監督ジミー(ジーン・ハックマン)は、代理選手による即席チーム作りに着手する。メンバーに選ばれたのは、今は船の側面に付着した貝殻をこすり取る仕事をしているシェイン(キアヌ・リーヴス)、俊足だけが取り柄のフランクリン(オーランド・ジョーンズ)、熱血ポリスマンのベイトマン(ジョン・ファブロー)、イギリス人のサッカー選手ナイジェル(リス・エヴァンス)、刑務所服役中の牧師ウィルキンソン(マイケル・ジェイス)、日本人力士のジャンボ・フミコ(エース・ヨナミネ)など。いずれも実力はありながら、あと一歩で駄目男の烙印を押された連中ばかり。そんな彼らが気合いを入れて戦い抜き、見事快進撃を果たす。チアリーダーのアナベル(ブルック・ラングトン)とシェインの恋もめでたく成就するのだった。




12-7. スタンド・バイ・ミー

監督 ロブ・ライナー
出演 ウィル・ウィートンリヴァー・フェニックスコリー・フェルドマンリチャード・ドレイファスキーファー・サザーランド
1986年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
森の奥にあるという事故死体を見に出かけた4人の少年たちの小さな冒険旅行を通して、少年期の特異な友情、そして訣別の姿をノスタルジックに描く。製作はアンドリュー・シェインマン、ブルース・A・エヴァンス、レイノルド・ギデオン、スティーブン・キング原作の「死体」をレイノルド・ギデオンとブルース・A・エヴァンスが脚色。監督は「シュア・シング」 のロブ・ライナー、撮影はトーマス・デル・ルース、美術はデニス・ワシントン、音楽はジャック・ニッチェ、編集はロバート・レイトンが担当。出演はウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、コリー・フェルドマン、そしてリチャード・ドレイファスが特別出演。

ストーリー
作家ゴーディ・ラチャンス(リチャード・ドレイファス)が、遠い過去の日を思い起こすきっかけになったのは、ある新聞記事に目を止めたことだった。“弁護士クリス・チャンバース刺殺される”――。オレゴン州キャッスルロックは人口1200あまりの小さな町。12歳のゴーディ(ウィル・ウィートン)は、文章を書くことに才能の片りんをのぞかせる感受性豊かな少年だった。彼には春に小学校を卒業以来、いつも一緒の3人の仲間がいた。リーダー格のクリス(リヴァー・フェニックス)、大きなメガネをかけたテディ(コリー・フェルドマン)、ちょっとスローなバーン(ジェリー・オコネル)。性格も個性も違う4人だが、木の上に組み立てた小屋の中に集まってはタバコを喫ったり、ワイ談をしたり、少年期特有の仲間意識で結ばれていた。が、そんな彼らもそれぞれ家庭の問題をかかえている。ゴーディは、出来のよかった兄(ジョン・キューザック)の事故死以来、両親がショックで立ち直らず、彼を邪剣にしており、クリスは、アル中の父、グレた兄という家庭環境の中で将来に不安を感じ、またテディは、ノルマンジー作戦の英雄だったが今は精神を病んでしまっている父へ屈折した想いを抱いている。ある日、バーンが耳よりの情報を持ってきた。ここ数日、行方不明になって話題となっている少年が、30キロ先の森の奥で列車にはねられ、その死体が野ざらしになっているというのだ。バーンはそれを、彼やクリスの兄たちがメンバーとなっている、エース(キーファー・サザーランド)をボスとする不良グループの会話から盗み聞きしたのだ。死体を発見したら町の英雄になれる!キャッスルロックという小さな世界しか知らなかった少年たちにとって、それは初めて体験する大冒険だった。テディが走ってくる列車の前に立ちはだかろうとしたり、鉄橋を渡ってる時に列車に追いかけられたり、また、沼でヒル攻めにあったり、この旅は少年たちにとって度胸だめしの性格を帯びていた。野宿の夜、交代でクリスが持ってきた拳銃を手に見張りをする。クリスはゴーディと2人きりになった時、自分の将来に希望はないが、ゴーディのものを書く才能を何とか守ってみせると優しく語りかける。翌日、4人はついに死体を見つけた。だが、そこヘエースたち不良グループが死体を横取りしようと現われた。テディとバーンは逃げ出すが、クリスは毅然とした態度で立ち向かった。怒ったエースはナイフでクリスを刺そうとした瞬間、ゴーディが拳銃をエースに突きつけた。少年たちの気迫に押されてエースたちは退散した。冒険は終わった。4人はそれぞれ帰路につく……。以来、バーンとテディは徐々に仲間から離れていくようになった。その後、クリスは一念発起して弁護士になり、ゴーディは作家になったのだった――。今、ゴーディはあの時のような友だちを2度と持つことはなかった、と思い出にひたるのだった。




12-8. 炎のランナー

監督 ヒュー・ハドソン
出演 ベン・クロスイアン・チャールソンナイジェル・ヘイヴァースニコラス・ファレルダニエル・ジェロール
1981年・イギリス(20世紀フォックス)

解説
1924年のパリ・オリンピックに出場した二人のイギリス青年を描く。実話の映画化。製作はデイヴィッド・パトナム、製作指揮はドディ・フェイド、監督はCM出身で、これが第一作になるヒュー・ハドソン。脚本はコリン・ウェランド、撮影はデイヴィッド・ワトキン、音楽はヴァンゲリスが担当。出演はベン・クロス、イアン・チャールソン、シェリル・キャンベル、アリス・クリージャ、イアン・ホルムなど。原題はウィリアム・ブレイクの詩「エルサレム」から取られている。

ストーリー
1919年、ケンブリッジ大に入学したハロルド・エイブラハムズ(ベン・クロス)は、自分がユダヤ人であることを強く意識していた。アングロ・サクソンの有形無形の差別に反発し、その鬱憤を発散するため走った。同じ頃、スコットランドではエリック・リデル(イアン・チャールソン)が駿足を謳われていた。彼は宣教師の家庭に生まれ、彼も父の後を継ぐつもりだった。彼にとって、走ることは神の思寵をたたえることだったが、妹のジェニー(シェリル・キャンベル)は彼が一日も早く宣教の仕事を始めることを望んでいた。ケンブリッジでは、ハロルドを中心に、障害物のアンドリュー(ナイジェル・ヘイヴァース)、中距離のオーブリー(ニコラス・ファレル)とヘンリー(ダニエル・ジェロール)が活躍をし、24年のパリ・オリンピックを目指して練習を続けた。ハロルドはスコットランドまで行き、エリックが走るのを見学。ある夜、オペラ見物に出かけたハロルドは、歌手のシビル(アリス・クリージャ)に一目惚れし、早速デートに誘い出す。23年、ロンドンでの競技会で、エリックとハロルドは対決。わずかの差でエリックが勝つ。ハロルドはサム・ムサビーニ(イアン・ホルム)のコーチを受けることになった。そのためトリニティの学寮長(ジョン・ギールグッド)とキースの学寮長(リンゼイ・アンダーソン)に、アマチュア精神にもとると批難されたが、彼は昂然と反論した。オリンピック出場が決定したケンブリッジ四人組とエリックは、パリに向かう。百メートルの予選が日曜日と知ってエリックは出場を辞退する。日曜は神が定めた安息日だから、走れないというのだ。選手団長のバーケンヘッド卿(ナイジェル・ダヴェンポート)、皇太子(デイヴィッド・イエランド)、サザーランド公(ピーター・イーガン)の説得も効はなかった。アンドリューが四百メートルに出る権利をエリックに譲ると申し出る。百メートルではハロルドが、米国のパドック(デニス・クリストファー)、ショルツ(ブラッド・デイビス)を押えて優勝。競技場近くの宿に一人残っていたサムは、ハロルドの勝利を知り感涙にむせぶ。四百メートルでは、エリックが勝利をおさめた。帰国した選手たちに、イギリス国民は惜しみない賞賛を与えるのだった。




12-9. エド・ウッド

監督 ティム・バートン
出演 ジョニー・デップマーティン・ランドーサラ・ジェシカ・パーカーパトリシア・アークエットジェフリー・ジョーンズ
1994年・アメリカ(ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
史上最低の監督と言われた男、エドワード・デイヴィッド・ウッド・ジュニア、通称エド・ウッドの愛すべき、奇想天外な半生を描いた伝記映画。ルドルフ・グレイの評伝「Nightmare of Ecstasy」(邦訳・早川書房刊「エド・ウッド 史上最低の映画監督」)を、“エドの同類”を自認する「バットマン リターンズ」 のティム・バートンの監督で映画化。脚本は「プロブレム・チャイルド うわさの問題児」 のコンビ、スコット・アレクサンダーとラリー・カラツェウスキー。製作はバートンと「シザーハンズ」 以来の彼の右腕、デニーズ・ディ・ノヴィの共同。エグゼクティヴ・プロデューサーは「ハードロック・ハイジャック」 の監督マイケル・レーマン。撮影は「バットマン リターンズ」 のステファン・チャプスキー、音楽は「依頼人」 のハワード・ショアが担当。また、往年の怪奇スター、ベラ・ルゴシのマスクを完璧に再現したリック・ベイカーほか3人が、第67回アカデミー賞メイクアップ賞を受賞。主演は「シザーハンズ」「ギルバート・グレイプ」 のジョニー・デップ。ルゴシに「ウディ・アレンの重罪と軽罪」 のマーティン・ランドーが扮し、アカデミー賞助演男優賞を受賞。ほかに「スリー・リバーズ」 のサラ・ジェシカ・パーカー、「ホーリー・ウェディング」 のパトリシア・アークェット、「恋はデ・ジャブ」 のビル・マーレイらが共演。95年度キネマ旬報外国映画ベストテン第5位。

ストーリー
30歳のエド・ウッド(ジョニー・デップ)は、“オーソン・ウェルズは26歳で「市民ケーン」をとった”を座右の銘に、貧しいながらも映画製作の夢に燃えていた。ある日、性転換した男の話を映画化する、と小耳にはさんだ彼は早速プロデューサーに売り込む。「これは僕のための作品です。僕は女装が趣味だから、人に言えない辛さが分かる」と力説するが、バカ扱いされて追い返された。その帰り道でエドは往年の怪奇スター、ベラ・ルゴシ(マーティン・ランドー)と運命的な出会いを果たす。ベラの出演をエサに監督になった彼は友人のオカマ、バニー(ビル・マーレイ)や恋人ドロレス(サラ・ジェシカ・パーカー)らの協力を得て、監督・脚本・主演した性転換の話「グレンとグレンダ」を完成させた。これを履歴書代わりにいろいろ売り込むがうまく行くはずもなく、自分で資金を集めることに。その間にもエドの元には、頭の足りない巨漢プロレスラーのトー・ジョンソン(ジョージ“ジ・アニマル”スティール)、インチキ予言者クリズウェル(ジェフリー・ジョーンズ)など、一風変わった仲間たちが集まってきた。次回作「原子の花嫁」がクランク・インするが、アンゴラのセーターと女装に執着するエドにあきれたドロレスは怒り爆発し、彼の元を去った。失意のうちにテレビで人気の妖婦ヴァンパイラ(リサ・マリー)に出演のアプローチをするが、けんもほろろ。そんな中、麻薬中毒のベラの病状は悪化する一方で、エドは彼を入院させた。その病院で彼は心優しい女性キャシー(パトリシア・アークェット)と出会うが、彼女は彼の女装癖も受け入れてくれるのだった。一方、エドは心からベラの容体を心配していたが、入院費用が払えず、彼に嘘をついて退院させねばならなかった。「原子の花嫁」が配給会社により「怪物の花嫁」と改題されプレミア試写が行われた。ブーイングの嵐だったが、エドは満足だった。そして数フィートのフィルムを残してベラが死んだ。傷心の彼の前に、バプテスト教会の信者という新たなカモが登場。早速資金を調達した彼は、史上最悪の映画と後世に名を残す「プラン9 フロム・アウタースペース」に着手。ついにヴァンパイラの出演も取り付け、ベラの形見のフィルムや多くの仲間たちと共に意気揚々と撮影に入った。ところが、今回の出資者はあれこれと撮影に口を出し、エドは爆発寸前。お気に入りのアンゴラを着ても心が落ちつかない彼は撮影所を飛び出すが、入ったバーで尊敬するオーソン・ウェルズ(ヴィンセント・ドノフリオ)と遭遇する。彼から「夢のためなら闘え。他人の夢を撮ってどうなる?」と教え諭されたエドは胸を張って撮影所に戻り、自身の納得のいく作品を堂々完成させた。




12-10. シティヒート

監督 リチャード・ベンジャミン
出演 クリント・イーストウッドバート・レイノルズジェーン・アレキサンダーマデリーン・カーンリップ・トーン
1984年・アメリカ(ワーナー映画)

解説
ライヴァル意識ムキ出しの刑事と私立探偵が巨大な悪の組織を相手に戦い、勝利を収めるまでを描く。製作はフリッツ・マーネイズ。ブレーク・エドワーズの監督・脚本で製作に入ったが、途中で降り、かわりにリチャード・ベンジャミンが監督を担当。エドワーズの脚本にジョセフ・スティンソンが手を加えた。エドワーズの名前は使わず、サム・O・ブラウンとクレジットされている。撮影はニック・マクリーン、音楽はレニー・ニーハウスが担当。出演はクリント・イーストウッド、バート・レイノルズなど。

ストーリー
1933年、カンサスシティ。冷静でスゴ腕のスピア警部(クリント・イーストウッド)と女にモテモテの私立探偵マイク・マーフィー(バート・レイノルズは、警官時代同期で、ことある事にいがみ合う喧嘩仲間。マーフィーの相棒のスウィフト(リチャード・ラウンドツリー)が暗黒街の一方の大物レオン・コル(トニー・ロー・ビアンコ)の隠し帳簿を手に入れて、もう一方の大物プリモ・ピット(リップ・トーン)から2万5千ドル、当のレオンからも5万ドルをせしめようと計画した。スウィフトの恋人ジニー(アイリーン・キャラ)は彼の身を案じ、とめたがきかず、両テンビンにかけられていることを知った組織のボス2人は先を争って帳簿争奪に立ち上がった。その帳簿が公表されればレオン・コルの失脚は明らかなだけに、コルは自己防衛のために、プリモはライヴァルをつぶすために必死だ。そんなある日スウィフトが殺された。だが彼の手元に帳簿はない。ジニーはもとより、マーフィー、秘書のアディ(ジェーン・アレクサンダー)、マーフィーの恋人キャロライン(マデリーン・カーン)にまで危機が迫った。当然、スピア警部が暗黒街の動きに気づかぬ筈もなく、スピアとマーフィーの喧嘩コンビが復活した。2人の手荒な暗黒街壊滅作戦によつて、両組織はあえなくカンサスから姿を消した。(ワーナー映画配給*1時間38分)




12-11. ロード・オブ・ザ・リング

監督 ピーター・ジャクソン
出演 イライジャ・ウッドイアン・マッケランリヴ・タイラーヴィゴ・モーテンセンショーン・アスティン
2001年・アメリカ(日本ヘラルド映画)

解説
世界的ベストセラー小説「指輪物語」 を、「乙女の祈り」 の鬼才ピーター・ジャクソンが映画化した3部作の第1弾が登場。世界を滅ぼす魔力を秘めた、伝説の指輪をめぐるファンタジーだ。

ストーリー
時は中つ国第3紀、ホビットの村。111歳の誕生日を迎えたビルボ・バギンズ(イアン・ホルム)は村を出ようとするが、旧友の魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)に、持っている指輪を残していくよう説得される。それは全世界を闇の支配下に置くことのできる、冥王サウロンの指輪だった。ガンダルフは、ビルボのいとこである若者フロド・バギンズ(イライジャ・ウッド)にそれを託し、山の火口に投げ込むよう命じる。フロドは友人のサム(ショーン・アスティン)、メリー(ドミニク・モナハン)、ピピン(ビリー・ボイド)と共に旅に出た。途中、剣の使い手である人間アラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)に出会い、半エルフ族のエルロンド(ヒューゴ・ウィーヴィング)の館に向かう。そこで4人とアラゴルンは、人間のボロミア(ショーン・ビーン)、ドワーフ族のギムリ(ジョン・リス=デイヴィス)、エルフ族のレゴラス(オーランド・ブルーム)、そしてガンダルフと落ち合い、9人の旅の仲間が結成された。彼らは追ってくる魔物と戦いながら目的地を目指すが、途中でガンダルフは転落死、ボロミアは戦死。そしてフロドは、サムと二人だけで、サウロンが支配する悪の王国モルドールへとボートに乗って向かうのだった。




12-12. ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

監督 ピーター・ジャクソン
出演 イライジャ・ウッドイアン・マッケランリヴ・タイラーヴィゴ・モーテンセンショーン・アスティン
2002年・アメリカ(日本ヘラルド映画)

解説
J.R.R.トールキンの冒険ファンタジー、「指輪物語」を映画化した全3部作の第2部。離ればなれになった旅の仲間たちがそれぞれの試練に挑む壮大な冒険スペクタクル。

ストーリー
遥か昔の中つ国。三手に分かれてしまった旅の仲間。先を急ぐフロド(イライジャ・ウッド)とサム(ショーン・アスティン)の後を、ゴラムという奇妙な生き物がこっそりつけていた。彼は指輪の前の持ち主。指輪をねらうゴラムを捕らえて、フロドはモルドールへの道案内を命じた。フロドたちと離れ離れになったアラルゴン(ヴィゴ・モーテンセン)、レゴラス(オーランド・ブルーム)、ギムリ(ジョン・リス・デイヴィス)の3人は、太古の不思議な森ファルゴンで、白の魔法使いとして甦ったガンダルフ(イアン・マッケラン)と再会。4人で、サルマンの攻撃を受けている人間の国ローハンへと向かう。一方、さらわれたメリー(ドミニク・モナハン)とピピン(ビリー・ボイド)は、オークの手から逃れて森に迷いこみ、樹木の牧者エントに会う。やがて、ローハン軍とサルマン軍の戦いの火蓋が切られた。ローハン軍にはエルフの軍隊がついたものの、ウルク=ハイの軍勢は圧倒的で、大量の死体が積もる壮絶な戦いに。ゴンドールでは、フロドもまた危機を迎えていた。指輪の魔力にもだえ苦しむフロド。ついに誘惑に屈して指輪をはめようとするが、サムがそれを阻止し、その場を切り抜ける。そしてフロドとサムは、彼らを陥れようと企むゴラムに案内をさせて、旅を続けるのだった。




12-13. インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

監督 ニール・ジョーダン
出演 トム・クルーズブラッド・ピットアントニオ・バンデラススティーヴン・レイクリスチャン・スレーター
1994年・アメリカ(ワーナー・ブラザース)

解説
吸血鬼に魅入られ、不老不死となった青年が遂げる数奇な運命を描いたホラー・ロマン。女性作家アン・ライスの代表作でカルト的な人気を誇る小説「夜明けのヴァンパイア」(早川書房)を、彼女自身の脚本で映画化。過去に何度も映画化が企画され、幾多の監督や俳優が候補に上ったが、いずれも実現しなかった。結局、「クライング・ゲーム」 のニール・ジョーダンが監督に決まったものの、主役のトム・クルーズに熱狂的な愛読者が反対運動を起こし、さらに原作者本人が彼の配役に不満の意を表明(完成品を見た彼女は後に発言を撤回し、「ヴァラエティ」紙の広告スペースを私費で買い取り、絶賛する文章を掲載した)。その上、撮影が開始されてからは、マロイ役のリヴァー・フェニックスが急逝するなど、数々の話題を提供した(完成作品は、リヴァーの思い出に捧げられている)。製作は、ジョーダンの初監督作「殺人天使」(V)以来、10年来のコンビを組んでいるスティーヴン・ウーリーと、ゲフィン・カンパニーの創立者デイヴィッド・ゲフィンの共同。撮影は「リバー・ランズ・スルー・イット」 のフィリップ・ルースロ、美術はフェリーニ作品で知られる、「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」 のダンテ・フェレッティ、特殊メイクは「シザーハンズ」 のスタン・ウィンストンが担当。音楽はオリジナル・スコアをエリオット・ゴールデンサルが書き、主題歌はガンズ&ローゼスがローリング・ストーンズの曲をカバーした「悪魔を憐れむ歌」。出演は「ザ・ファーム 法律事務所」 のトム・クルーズ、「トゥルー・ロマンス」 のブラッド・ピット、クリスチャン・スレイターほか。

ストーリー
現代のサンフランシスコ。とある部屋で、マスコミでのし上がろうとする野心的な若者クリス(クリスチャン・スレイター)が、漆黒の髪の美青年ルイ(ブラッド・ピット)へインタビューを始めたが、その内容は驚くべきものだった。18世紀末の米ニューオリンズ。フランス移民のルイは当時25歳。最愛の妻と娘を亡くして絶望する彼に、美貌の吸血鬼レスタト(トム・クルーズ)が近づく。彼は、人間らしく揺れ動く、繊細な魂のルイに興味を覚え、永遠の命を共にする伴侶として彼を選ぶ。首筋にレスタトの牙を立てられて死亡したルイは、間もなく吸血鬼として蘇生した。だが、彼は大胆で冷酷なレスタトとは対照的に、他人の命を奪って生きることに耐えられない。レスタトは瀕死の少女クローディア(キルスティン・ダンスト)を自分たちの同族に仕立て、ルイに与える。クローディアはルイと違い、吸血鬼の生活にすぐになじんだ。次々と人間を襲い、その血を吸う彼女の心は成長しても、体は子供のままだった。彼女はその悲しみといらだちをレスタトにぶつけ、やがて彼を殺してルイと2人で遠くへ旅立とうと計画する。争いの中で、炎に包まれたレスタトを後に、2人は同族を求めてヨーロッパへ渡った。パリでサンティアゴ(スティーヴン・レア)という吸血鬼と出会ったルイとクローディアは、彼の案内でアルマン(アントニオ・バンデラス)を首領とする吸血鬼の一族と出会う。ルイは仲間に誘われるが残虐なアルマンとは相いれず、去ろうとする。アルマンはクローディアを捕らえて日光を浴びさせ、彼女を処刑する。いつしか愛していた彼女を失ったルイは怒りにかられ、アルマン一族を滅ぼす。サンティアゴとも訣別した彼は、その後アメリカに戻り、現代に至るまでひっそりと暮らし続けている。生きていたレスタトとも再会したが、その場限りで別れた: 。話し終えた彼に、興奮したクリスは自分も吸血鬼にしてくれと頼む。だが、ルイの怒りに恐怖を覚え、命からがら車で逃げ帰った彼は、潜んでいたレスタトに血を吸われる。カーステレオから『悪魔を憐れむ歌』が流れる夜明けの光景の中、復活したレスタトは車を駆り、いずこともなく姿を消した。




12-14. マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋

監督 ザック・ヘルム
出演 ダスティン・ホフマンナタリー・ポートマンジェーソン・ベイトマンザック・ミルズテッド・ラドジグ
2007年・アメリカ(角川映画)

解説
主人公は僕だった」 の脚本家、ザック・ヘルムが初監督に挑んだファンタジー。名優ダスティン・ホフマンとナタリー・ポートマン共演で、自分を信じることの大切さをうたう。

ストーリー
ビルが立ち並ぶ街の一角に、“マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋”はあった。世界の果てまで飛び続ける紙飛行機や抱き返してくれるぬいぐるみなど、まるで魔法のような物ばかりが置いてある。それもそのはず、おもちゃはすべて魔法使いのマゴリアムおじさん(ダスティン・ホフマン)によって生かされているのだ。オーナーのマゴリアムおじさんのもと、支配人として働く23歳のモリー(ナタリー・ポートマン)やお手伝いのエリック(ザック・ミルズ)もそんなお店を愛していた。しかしモリーはこの頃元気がない。天才ピアニストと称された腕を持ちながら、作曲に関してはただの一小節も思い浮かばないことから、本当の天才とは認められていないからだ。そんなある日、243歳になったマゴリアムおじさんが突然の引退宣言、モリーに跡継ぎを願い出る。作曲家の夢さえ叶えられない自分がオーナーになる自信などモリーにはなかった。しかも一度引退してしまうと、マゴリアムおじさんには二度と会えなくなってしまうという。モリーは必死でマゴリアムおじさんを引き止める。しかしマゴリアムおじさんは計理士のヘンリー(ジェイソン・ベイトマン)を雇い、売り上げと店の資産価値の計算を依頼するなど、着々と引退の準備を進める。ところがもっと過激な手段でマゴリアムおじさんの引退に抗議するものたちが現れた。命を吹き込まれたおもちゃたちが、マゴリアムおじさんがいなくなる寂しさと、次期オーナーのモリーの頼りなさに怒り出したのだった。ヘンリーの仕事を邪魔したり、お店に来る人に悪戯をしたり…おもちゃ屋は一時閉店せざるを得なかった。みんなの愛した“マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋”を復活させるには、モリーがおもちゃを自在に操る魔法を身につけるしかない。自信のないモリーにそんな奇跡は起こせるはずもなく、おもちゃ屋を閉店したまま、遂にマゴリアムおじさんの引退の日が訪れてしまう。




12-15. シェナンドー河

監督 アンドリュー・V・マクラグレン
出演 ジェームズ・スチュアートダク・マックルアーグレン・コーベットパトリック・ウェインローズマリー・フォーサイス
1965年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
ジェームズ・リー・バレットの脚本を、「マクリントック」 のアンドリュー・V・マクラグレンが監督した南北戦争を背景とした開拓叙事詩。撮影はウィリアム・H・クローシア、音楽はフランク・スキナーが担当した。出演は「シャイアン」 のジェームズ・スチュアート、「若さでブッ飛ばせ!」 のダグ・マクルーア、グレン・コーベット、パトリック・ウェインほか。製作はロバート・アーサー。

ストーリー
1863年南北戦争のまっ最中、バージニア州ノース・アンナ河の流域で広大な農場を経営しているチャーリー(ジェームズ・スチュアート)は、戦争にまきこまれず厳然たる中立を守っていた。彼は妻なきあと7人の子供たちを、厳しい躾けと限りない愛情で育てあげ、奴隷制度も否定していた。ある日彼の家に南軍の将校が来て、息子たちの参戦を申しいれたが、彼はきっぱりと断った。息子ジェームズの妻アンに娘マーサが生まれ、1人娘ジェニーは南軍の将校サムと結婚したが、彼はその直後に戦場にかり出されてしまった。その頃一家に思いもよらぬ不幸がまい込んだ。「坊や」と呼ばれている末っ子が、偶然拾った南軍の帽子をかぶっていたばっかりに北軍の捕虜になってしまった。一家はいやおうなく戦争にまき込まれてしまい、彼らはジェームズ一家を残して捕虜収容所をたずねた。しかし「坊や」は仲間と一緒に脱走した後だった。情報をたよりにチャーリーたちは、北部に向かう南軍捕虜列車を襲撃し、護衛の北軍小部隊を撃破した。そして列車の中から出てきたのは、ジュリーの夫サムだった。チャーリーたちは「坊や」捜しをあきらめ農場に帰ったが、そこに待っていたのは南軍の歩哨の相手かまわずの発砲だった。長男ジェイコブが倒れた。そのうえ農場は掠奪者に襲われ、ジェームズ夫妻が殺害されていた。悲しみのチャーリーは、昔、妻や子供たちとよく行った教会に残された家族と共に出かけた。礼拝の最中、物音にふり返ると、そこには松葉杖をついた「坊や」が立っていた。来会者たちの賛美歌がいつまでもつづいた。




12-16. パブリック・エネミーズ

監督 マイケル・マン
出演 ジョニー・デップジェームズ・ルッソデイヴィッド・ウェンハムクリスチャン・ストルティジェイソン・クラーク
2009年・アメリカ(東宝東和)

解説
ジョニー・デップが、1930年代に世間を騒がせた実在のアウトロー、ジョン・デリンジャーに扮するラブ・ストーリー。デリンジャーとその恋人が辿る愛の行方を描き出す。

ストーリー
1930年代のアメリカ大恐慌時代。鮮やかな手口で銀行から金を奪い、不可能とも思える脱獄を繰り返す世紀のアウトロー、ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)は、その“黄金時代”を謳歌していた。利益を独り占めする銀行を襲撃する大胆不敵な犯罪手口、強者から金を奪っても弱者からは一銭も奪わないという独特の美学を貫くカリスマ性。それまでの“強盗”のイメージを覆すデリンジャーに、不況に苦しむ多くの国民は魅了され、まるでロックスターのようにもてはやしていた。そんなある日、デリンジャーは、他の女たちとはどこか違う雰囲気をまとった神秘的な美女、ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に目を奪われる。彼にとってビリーとの出会いは、これからの人生を決定付ける運命の瞬間であり、彼女もまたデリンジャーの強引で一途な愛に、危険な選択だと分かりながらも次第に惹かれていくのだった。だがその頃、FBIはデリンジャーをアメリカ初の“社会の敵ナンバーワン(PUBLIC ENEMY NO.1)”として指名手配。捜査の目をかい潜り、デリンジャーはビリーと再会するが、FBI捜査官メルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)の包囲網が徐々に彼らを追いつめていく。永遠の愛を信じながら、二人の自由への逃亡劇が始まった……。




12-17. 幻影師アイゼンハイム

監督 ニール・バーカー
出演 エドワード・ノートンポール・ジアマッティジェシカ・ビールルーファス・シーウェルエディ・マーサン
2006年・アメリカ(デジタルサイト)

解説
19世紀末のウィーンを舞台にした優雅で幻想的なラブ・サスペンス。実力派俳優エドワード・ノートンが舞台上で謎めいたイリュージョンを披露する“幻影師”を演じる。

ストーリー
19世紀末のウィーンではイリュージョンが見世物として一世を風靡していた。中でも人気を誇っていたのは、幻影師アイゼンハイム(エドワード・ノートン)。彼の評判を聞きつけた皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)は、婚約者の公爵令嬢ソフィ(ジェシカ・ビール)と共に彼のショーを観覧する。アイゼンハイムはイリュージョンの体験者としてソフィを舞台に招き愕然とする。彼女はかつての恋人だった。家具職人の子エドゥアルド・アブラモヴィッツ、後のアイゼンハイムはソフィに奇術を披露するうち想い合うようになるが、身分の違いから引き離される。それから15年後の再会であったが、彼女は、皇帝退位計画を極秘に進める悪名高き皇太子に嫁ごうとしていた。数日後、皇太子は多くの賓客と共にアイゼンハイムを王宮に招く。イリュージョンを解明しようという皇太子の狙いを見透かしたアイゼンハイムは、わざと挑発的な奇術で皇太子に恥をかかせる。アイゼンハイムの身を案じたソフィは、助けになろうと彼の元を訪れる。そこで2人は、封印していた想いを抑えきれなくなる。皇太子はアイゼンハイムを潰すべく、ウール警部(ポール・ジアマッティ)を監視につける。警部はアイゼンハイムのイリュージョンに魅了されていたが、皇太子に逆らうことはできず、ソフィとの密会を皇太子に報告する。ソフィは怒り狂う皇太子と激しい口論を交わし、別れを決意して館を飛び出す。その後皇太子の別荘地の一角で、変死体となった彼女が発見される。アイゼンハイムは、舞台で死者の魂を甦らせるというイリュージョンを始める。それは熱狂的な信者を増やし、合理主義を進める帝国の脅威となる。皇太子は自らアイゼンハイムの正体を暴こうと、変装して劇場に潜り込む。その日、アイゼンハイムはソフィを甦らせる。真相の発覚を恐れた皇太子は警部に、国の秩序を乱した罪でアイゼンハイムを捕らえるよう命じる。警官たちが取り囲む舞台で、アイゼンハイムの驚くべきイリュージョンが始まる。




12-18. シャイン

監督 スコット・ヒックス
出演 ジェフリー・ラッシュノア・テイラーアレックス・ラファロヴィッツアーミン・ミューラー=スタールリン・レッドグレーヴ
1995年・オーストラリア (KUZUIエンタープライズ)

解説
ピアノの天才少年と呼ばれ、一度は精神を病みながら、ハンディキャップを越えて復帰した実在のピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッド(1948-)の半生を基に描く感動の音楽ドラマ。監督はテレビのドキュメンタリー出身のスコット・ヒックス。製作はジェーン・スコット。ヘルフゴッド夫妻に取材したヒックスの原案を基に、ジャン・サルディが脚本を執筆。音楽はデイヴィッド・ヒルシュフェルダーで、ピアノ演奏はヘルフゴット自身によるもの。出演は成人したデイヴィッド・ヘルフゴット役を23年間舞台での俳優・演出のキャリアを持つジェフリー・ラッシュ、10代を「ペテルブルグ幻想」 のノア・テイラー、幼年期をアレックス・ラファロヴィッツが演じた。共演は父親役に「ホーリー・ウェディング」 のアーミン・ミューラー=スタール、「ある貴婦人の肖像」 の名優ジョン・ギールグッド、「ジョージー・ガール」 のリン・レッドグレイヴほか。97年キネマ旬報外国映画ベスト・テン第3位。

ストーリー
激しい雨の晩、ワイン・バーで働くシルヴィア(ソニア・トッド)はびしょ濡れで店のドアを叩いたデイヴィッド・ヘルフゴッド(ジェフリー・ラッシュ)を家まで送ってやった。デイヴィッドは幼少の頃(アレックス・ラファロヴィッツ)から音楽狂の父ピーター(アーミン・ミューラー=スタール)にピアノを仕込まれ、天才少年として評判になった。だがアメリカ、ついで英国の王立音楽院に留学の話が出ると、最初は息子の才能に鼻高々だった父は、突然彼が家族から離れることを暴力的に拒否する。デイヴィッド(ノア・テイラー)は著名な作家で、年齢を越えて友情を結んだキャサリン・プリチャード(グーギー・ウィザーズ)の励ましで、ついに家を出る。ロンドンで彼はセシル・パーカー(ジョン・ギールグッド)に師事、パーカーは彼をわが子のように愛し、鍛える。彼はコンクールでの演奏曲に、幼年時代から父にいつか弾きこなすよう言われていたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を選ぶ。猛特訓でこの難曲を完璧に演奏したデイヴィッド、だがその直後、あまりのストレスに彼は発狂した。それから10数年を精神病院で過ごしたデイヴィッドはかつて自分のファンだったという女性に引き取られるが、その後引取り先を転々とした。そしてある晩、あのバーのドアを叩いたのだ。シルヴィアはやがてデイヴィッドがピアノを弾くことを知り、彼はやがて店の専属ピアニストとして大人気になる。新聞にも記事が出て、父も訪ねてくるが、彼は父を許せなかった。シルヴィアが星占い師のギリアン(リン・レッドグレイヴ)を紹介し、二人はやがて愛し合い、結婚する。デイヴィッドはついにコンサート・ピアニストとして復帰する。だがその席に、父の姿はなかった。彼は妻とともに父の墓に参る。彼の前には新しい人生が広がっていた。




12-19. タキシード

監督 ケヴィン・ドノヴァン
出演 ジャッキー・チェンジェニファー・ラヴ・ヒューイットジェイソン・アイザックスデビー・マザールリッチー・コスター
2002年・アメリカ (UIP)

解説
ジャッキー・チェン&ジェニファー・ラブ・ヒューイット共演によるアクション・コメディ。細菌学者の陰謀に立ち向かう、タクシー運転手&女スパイの活躍をVFX満載で描く。

ストーリー
スピード狂のタクシードライバーから謎の大富豪デヴリンのお抱え運転手に転身したジミー(ジャッキー・チェン)には、絶対に守るべきルールがあった。それは、デヴリンのタキシードに決して触れないこと。だが事故でデヴリンが重傷を負った時、ジミーはタキシードに袖を通してしまう。その瞬間、彼はスゴ腕のスパイに変身! 実はデヴリンは秘密組織 CSA の伝説的エージェントで、そのタキシードはハイテクの粋を尽くした秘密兵器だったのだ!




12-20. ロッキー5 最後のドラマ

監督 ジョン・G・アヴィルドセン
出演 シルヴェスター・スタローンタリア・シャイアバート・ヤングSage Stalloneバージェス・メレディス
1990年・アメリカ (ユナイト映画)

解説
ボクシングに挑む1人の男の愛と闘いを通して、サクセス・ストーリーを描いてきたシリーズの第5作にして完結篇。エグゼクティヴ・プロデューサーはマイケル・S・グリック、製作はロバート・チャートフ、アーウィン・ウィンクラー、「ベスト・キッド3 最後の挑戦」 のジョン・G・アヴィルドセンが第1作に続き監督を担当、シルベスター・スタローンが脚本・主演を兼ね、撮影はスティーヴン・ポスター、音楽はビル・コンティ。出演はほかにタリア・シャイアら。

ストーリー
強敵ドラゴを倒しソ連から凱旋したロッキー。しかしそんな彼を連戦の結果による脳障害が襲う。医者の忠告により引退を決意したロッキーだが、義兄のポーリー(バート・ヤング)の口添えによる会計士の不正により思わぬ破産にまで追い込まれ、生まれ故郷のフィラディルフィアに戻った彼を慰めるものといったら妻のエイドリアン(タリア・シャイア)や息子との生活だけだった。そんなある日、かつてのマネージャーである亡きミッキーの残したジムでトレーナーとして働くロッキーのもとに若いボクサー、トミーマシーンガン(トミー・モリソン)が訪ねてくる。彼に昔の自分の姿を見たロッキーはそこに第2の人生を賭けてみようと決意、2人は厳しいトレーニングを開始する。しかし、そこへ怪しげなプロモーター、ジョージ・ワシントン・デューク(リチャード・ガント)からロッキーに再びリングに立たないかという誘いが。エイドリアンの猛反対もあって相手にしないロッキーに業を煮やしたデュークは一計を案じ、金の力にものをいわせてガンにロッキーを裏切るよう仕向ける。悪辣なデュー樗クのやり口に怒りを燃やすロッキーだが、その頃デュークはロッキーとガンの試合を仕組んでいた。しかしロッキーにとって再びリングに上がることは死と隣合わせの危険を意味していた。ガンはついにチャンピオン戦でタイトルをものにする。勝利のあとのインタビューで恩師として出た名はロッキーではなくデュークだった。そして家でささやかなクリスマス・パーティーを開いたロッキーの前に、今や別人のように変わったガンが現れた。挑発されたロッキーはついに今までの怒りを爆発させ、路上で、ガンと戦うことに。あたりはいつしか多くの人々が集まり、ロッキーを応援していた。しまいにはテレビカメラまで駆けつけた中、ロッキーはガンに最後のパンチをくらわすのだった。




12-21. キッド(1921)

監督 チャールズ・チャップリン
出演 カール・ミラーエドナ・パーヴィアンスジャッキー・クーガンチャールズ・チャップリントム・ウィルソン
1921年・アメリカ (松竹)

解説
チャップリン氏が「一日の行楽」 を発表したのは1919年の12月であった。以来1年間この映画1本の製作に全力を挙げてようやく完成を見たのは1921年の1月である。対手は今までと同じくエドナー・パーヴィアンス嬢、トム・ウィルスン氏等、そのほか新にキッドの役を6歳のジャッキー・クーガン君が演じているが、この映画における成功のためクーガン君は一躍スターとなって「ペックの悪戯小僧」 を作ったことはかつて報道した通りである。「これは喜劇ではない立派な劇である」 と米誌が評した程落ち着いた気分が出ているようで、チャップリン氏の逆境時代の経験談であると言われている。上場の暁は定めて人気を沸騰させることであろう。

ストーリー
未婚の母となった若い女性(E・パーヴィアンス)は、ためらいながらも子供の幸福(の可能性)を願って大邸宅の前に止めてあった車に書き置きとともに生まれて間もない赤ん坊を捨てる。車上ねらいのこそ泥たちが赤ん坊の存在に気付かぬまま車ごと貧民街近くまで運んだが、赤ん坊は道端に置き去りにする。たまたま通りかかった浮浪者(C・チャップリン)が結局この赤ん坊を引き取り、父親代わりとなって育てる羽目になる。5年の月日が経つ間、2人の間には実の親子以上の愛情と職業上の連帯感がはぐくまれる。ある時この子供(J・クーガン)が病気にかかり、診察に訪れた医者が(いくぶん偽善的な)義務感から子供を孤児院へ引き取るよう手続きをする。「父子」双方が引き離されることに強く抵抗を示し、ドタバタ調の騒ぎが起こる。結局浮浪者は子供を孤児院の役人から取り戻すものの、家には帰れなくなる。この間家を訪れた今では有名なオペラ歌手となった実の母は、偶然医者と出会い、かつて数語言葉を交わしたこともある子供が5年前に捨てた我が子であることを知る。多額の礼金をつけた捜索願を警察に届け、それを新聞で見た木賃宿の主人が通報し、理由も分からぬまま浮浪者と子供が連れて行かれた先は、子供の実の母が住む大邸宅であった。二人がこの女性により暖かく家の中に招じ入れられるところで映画は幕となる。




12-22. 偶然の旅行者

監督 ローレンス・カスダン
出演 ウィリアム・ハートキャスリーン・ターナージーナ・デイヴィスエイミー・ライトビル・プルマン
1988年・アメリカ (ワーナー・ブラザース)

解説
ある失意のライターがたどる心の交流を描くロマンティック・コメディー。アン・タイラーの同名小説の映画化で、エグゼクティヴ・プロデューサーはフィリス・カーライルとジョン・マルコヴィッチ。製作・監督・脚本は「シルバラード」 のローレンス・カスダン、共同製作はチャールズ・オークンとマイケル・グリロ、共同脚本はフランク・ガラチ、撮影はジョン・ベイリー、音楽はジョン・ウィリアムス(2)が担当。出演はウィリアム・ハート、キャスリーン・ターナー、ジーナ・デイヴィス(89年度アカデミー賞助演女優賞)ほか。

ストーリー
仕事の旅から戻ったメーコン・ラリー(ウィリアム・ハート)は、妻のサラ(キャスリーン・ターナー)から家を出て行く決心を告げられる。去年の夏、彼らの1人息子がキャンプ地での強盗事件に巻き込まれ、不慮の死を遂げて以来、2人の間には目に見えない溝が広がっていた。メーコンは旅慣れない人たちのために現地で取材した実用的な情報を提供するビジネスマン向けの旅行ガイドブックのライターだった。几帳面な彼は独り暮らしになっても家をきれいに保とうと努力するが、初めての家事に大いにまごつく。仕事からやっと帰り着いても待っているのは誰もいない荒れた家という有り様に、メーコンの心に、空しく冷たい風が吹き抜けていく。そんな時彼は足を骨折し、兄弟のポーター(デイヴィッド・オグデン・スティアーズ)とチャールズ(エド・ベグリー・ジュニア)、妹ローズ(エイミー・ライト)の住む祖父母の家にしばらく身を置くことになった。辺りかまわず吠え散らし、誰にでも噛みつく愛犬エドワードを何とかしようと、メーコンはミュリエル(ジーナ・デイヴィス)という犬の調教師を雇うが、8歳の病弱な息子アレクサンダー(ロバート・ゴーマン)と2人暮らしというこの風変わりな女性と行動を共にするうちにメーコンはミュリエルの新鮮な魅力にひかれてゆくのだった。しかしそんな時、彼のもとにサラから連絡があり、2人は再びヨリを戻す。相応の冷却期間のおかげか、2人の仲は昔のように円満だった。ある日メーコンは仕事でパリに向かうが、その飛行機には秘かにミュリエルも同乗していた。強引なミュリエルにメーコンは当惑するが、ある夜彼が急病に倒れたことで、アメリカから飛んできたサラはミュリエルと鉢合わせしてしまう。こうしてメーコンは、パリの山の中で2人の女性の間をさまようことになるが、結局はミュリエルの大らかな愛に気づき、パリを旅立とうとする彼女をつかまえるのだった。




12-23. カールじいさんの空飛ぶ家

監督 ボブ・ピーターソン
出演 エドワード・アズナージョーダン・ナガイボブ・ピーターソンジョン・ラッツェンバーガーエリー・ドクター
2009年・アメリカ (ウォルト・ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン)

解説
家に風船をつけて空へと舞い上がったおじいさんが体験する奇想天外な旅の模様を描く、ディズニーによる感動アニメ。監督は「モンスターズ・インク」 のピート・ドクター。

ストーリー
78歳のカールじいさん(声:エド・アズナー)は、最愛の妻エリー(声:エリー・ドクター)を亡くしてから、小さな家でひっそりと暮らしていた。そこは、幼いときに出会ったカールとエリーの思い出が詰まった大切な家。だが、妻の思い出に固執するあまり、今や家に引きこもり、自ら決めた日課や規則正しい生活を繰り返すだけの、意固地な老人になっていた。開発地区に指定された家の周囲では大規模な工事が始まり、カールも家もすっかり取り残された存在。やがてカールにも立ち退き要求が。大切な家や生活、全てを失いそうになったとき、彼は人生最初で最後の旅を決意する。その方法は、家に無数の風船をつけ、家ごと大空に飛び立つというものだった。目的地は、地球上で最も美しいといわれる南米にある伝説の滝“パラダイス・フォール”。そこは子供の頃、カールがエリーといつか一緒に行こうと誓いながら、果たせなかった約束の場所だった。さらに、この旅には思わぬ同行者がついてきた。それは、飛び立つとき偶然乗り合わせた、好奇心旺盛な近所の少年ラッセル(声:ジョーダン・ナガイ)。こうして、ラッセルを連れたカールは、空飛ぶ家で想像を超えた冒険の旅に出ることとなった……。




12-24. ミス・ポター

監督 クリス・ヌーナン
出演 レニー・ゼルウィガーユアン・マクレガーエミリー・ワトソンバーバラ・フリンビル・パターソン
2006年・イギリス、アメリカ (角川映画)

解説
世界中で人気のキャラクター、ピーターラビット。その作者、ビアトリクス・ポターの恋と波乱の半生をつづる実話ドラマ。「シカゴ」 のレニー・ゼルウィガーがヒロインを熱演。

ストーリー
1902年、ロンドン。まだ封建的な空気が漂う時代の中、上流階級の32歳の独身女性、ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)は、作家として生きることを夢見ていた。幼い頃に湖水地方で出遭った動物たちの絵に物語を添えて、絵本として世に出したいと願っているのだ。そして、ついに出版を引き受ける会社が現れる。作品に惚れこんだ編集者のノーマン・ウォーン(ユアン・マクレガー)の熱意もあり、「ピーターラビットのおはなし」と名づけられたウサギと仲間たちの物語は、驚異的なベストセラーとなった。ポターは、独身を謳歌するノーマンの姉ミリー(エミリー・ワトソン)と親友になり、最大の理解者であるノーマンとは恋心を育んでいった。しかし二人の仲を、家柄の違いにこだわるポターの母ヘレン(バーバラ・フリン)が大反対。口をきかなくなったポターに心を痛めた父ルパート(ビル・パターソン)は、夏が過ぎて秋が来ても気持ちに変わりがなければ、二人の結婚を認めると約束した。しかしノーマンは、秋が来る前に急死。悲しみに打ちひしがれるポターは、子供時代を過ごした湖水地方に一人で移り住む。そこで幼なじみの弁護士ウィリアム・ヒーリス(ロイド・オーウェン)と再会。彼と生涯二度目の恋におちたポターは、やがて結婚。さらに世界的なベストセラー作家になっていた彼女は、自ら農地を買い取って、湖水地方の自然とそこに暮らす人々の生活を守る活動を始めるのだった。




12-25. ザ・タウン

監督 ベン・アフレック
出演 ベン・アフレックジョン・ハムレベッカ・ホールブレイク・ライブリージェレミー・レナー
2010年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画)

解説
チャック・ホーガン原作の 「強盗こそ、われらが宿命」 をベン・アフレックが監督・脚本・主演し映画化した犯罪アクション。全米で最も強盗の件数が多い街を舞台に、銀行強盗を重ねる男の宿命と愛を映し出す。銀行襲撃などのアクションシーンをダイナミックに見せながら、深入りできない恋に苦しむ男の切ない心情も丁寧に切り取る。

ストーリー
広大なアメリカのどこよりも強盗が多発する街。それが、ボストンの北東部に位置するチャールズタウン。そこに暮らす者たちは、愛と憎しみを込めて、その街を“タウン”と呼んでいた。タグ(ベン・アフレック)は、強盗を親から子へと家業のように引き継がれてゆくこの街から抜け出そうとしていた。しかし、その思いとは裏腹に、今では強盗一味のリーダーに収まり、狭い街角で家族のように血と骨を分け合って育った3人の仲間たちと、ひとつの証拠も残さない完全犯罪に命を張っていた。その日も綿密な計画に従って銀行を襲撃。だが、逃走するまでの間、予定外の人質を取る羽目になる。人質となった支店長のクレア(レベッカ・ホール)がタウンの住民だと知ったダグは、何を見たのかを確認するため、正体を隠して彼女に近づく。決して交わるはずのなかった2人の出会いは、やがてタウンの人々の運命をも変えてゆく。激しい恋に落ちたクレアとの新しい人生を願うダグ。だが、FBI捜査官フローリー(ジョン・ハム)は執拗な追求で一味を追いつめる。一方、タウンを出ていこうとするダグを許さない仲間のジェム(ジェレミー・レナー)。そして、クレアに忍び寄る裏社会の掟。仲間を裏切るか、愛という名の希望を失うのか……。ダグは大リーグスタジアムの襲撃という最も危険な最後の仕事へと向かう。人は生まれ持った宿命から逃れ、人生を変えることが出来るのか……?




12-26. タクシードライバー  

監督 マーティン・スコセッシ
出演 ロバート・デ・ニーロシビル・シェパードピーター・ボイルジョディ・フォスターアルバート・ブルックス
1976年・アメリカ (コロムビア映画)

解説
大都会・ニューヨークを舞台に、うっ屈した生活を送る1人のタクシー・ドライバーが、自分の存在を世間に認めさせようと「行動」を起こす心のプロセスを追う。製作は 「スティング」 のマイケルとジュリア・フィリップス、監督は 「アリスの恋」 のマーティン・スコーシージ、脚本は 「ザ・ヤクザ」 のポール・シュレイダー、撮影はマイケル・チャップマン、音楽はバーナード・ハーマン、編集はマーシア・ルーカスがそれぞれ担当。出演はロバート・デ・ニーロ、シビル・シェパード、ピーター・ボイル、ジョディ・フォスター、アルバート・ブルックス、ハーヴェイ・カイテルなど。

ストーリー
ニューヨーク。毒々しい夜の色彩と光の洪水に飾りたてられたその『闇』をじっと見つめる虚ろな、しかし熱っぽい感情をこめた視線があった。彼の名はトラビス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)、タクシーの運転手である。彼は他の運転手のように仕事場をきめていない。客の命令するまま、高級地区だろうと黒人街だろうと、どんなところへも行く。そんなトラビスを、仲間たちは守銭奴と仇名した。ある日、トラビスは大統領候補パランタインの選挙事務所に勤める美しい選挙運動員ベッツィ(シビル・シェパード)に目をつけた。数日後、彼は事務所をたずね、選挙運動に参加したいとベッツィに申し込み、デートに誘うことに成功した。だが、デートの日、トラビスはこともあろうに、ベッツィをポルノ映画館に連れて行き、彼女を怒らせてしまったのだ。以来、トラビスはベッツィに花を贈ったり、電話をかけても、なしのつぶてだった。毎日、街をタクシーで流すトラビスは、「この世の中は堕落し、汚れきっている。自分がクリーンにしてやる」という思いにとりつかれ、それはいつしか確信に近いものにまでなった。そんなある日、麻薬患者、ポン引き、娼婦たちがたむろするイースト・ビレッジで、ポン引きのスポート(ハーヴェイ・カイテル)に追われた13歳の売春婦アイリス(ジョディ・フォスター)が、トラビスの車に逃げ込んできた。トラビスはスポートに連れ去られるアイリスをいつまでも見送っていた。やがて、トラビスは闇のルートで、マグナム、ウェッソン、ワルサーなどの強力な拳銃を買った。そして射撃の訓練にはげみ、やがて4丁の拳銃と軍用ナイフを身体に携帯し、それらを手足のように使いこなせるまでになった。ある夜、トラビスは食料品店を襲った黒人の強盗を射殺した。この頃から、彼はタクシー仲間から『キラー』と呼ばれるようになった。そしてアイリスとの再会。泥沼から足を洗うように説得するトラビスは、運命的な使命を信じるようになった。大統領候補パランタインの大集会。サングラスをかけモヒカン刈りにしたトラビスが現われ、拳銃を抜こうとしてシークレット・サービスに発見され、トラビスは人ごみを利用して逃げた。ダウンタウン。トラビスはスポートの売春アパートを襲撃、重傷を負いながらもスポートをはじめ、用心棒、アイリスの客を射殺した。アイリスは救われ、新聞はトラビスを英雄扱いにした。やがて、トラビスは何事もなかったように、またタクシー稼業に戻るのだった。




12-27. モンタナの風に抱かれて

監督 ロバート・レッドフォード
出演 ロバート・レッドフォードクリスティン・スコット・トーマスサム・ニールダイアン・ウィーストスカーレット・ヨハンソン
1998年・アメリカ (ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
雄大なモンタナの大自然を舞台に、傷ついた少女と馬の癒しと再生、男と女の切ない愛の交わりを、美しい映像で綴っていくドラマ。監督・製作・主演はハリウッドを代表する名優ロバート・レッドフォード。 「クイズ・ショウ」 に続き、これが監督第5作目となる。共同製作はパトリック・マーキー。製作総指揮はレイチェル・フェファー。脚本は 「ポストマン」 のエリック・ロスと、 「フィッシャー・キング」「マディソン郡の橋」 のリチャード・ラグラヴェニーズ。原作はニコラス・エヴァンスのベストセラー小説。撮影はオリヴァー・ストーン作品で知られるロバート・リチャードソン。音楽は 「ショーシャンクの空に」 のトーマス・ニューマン。美術はジョン・ハットマン。編集はトム・ロルフ。衣裳はジュディ・L・ラスキン。共演は 「イングリッシュ・ペイシェント」 のクリスティン・スコット・トーマス、 「ホーム・アローン3」 のスカーレット・ヨハンソン、 「スノーホワイト」 のサム・ニール、 「バードケージ」 のダイアン・ウィースト、 「大いなる遺産」 のクリス・クーパーほか。98年キネマ旬報ベスト・テン第9位。

ストーリー
13歳の少女グレース(スカーレット・ヨハンソン)は乗馬中に巻き込まれた事故で親友と右足を失い、人生に深く絶望していた。また彼女の愛馬ピルグリムも、事故のショックで人間になつかない暴れ馬になっていた。ニューヨークで雑誌編集長として活躍しているグレースの母親アニー(クリスティン・スコット・トーマス)は、娘の心を回復させるにはピルグリムの全快が必要だと考え、モンタナで馬専門のクリニックを開業しているトム・ブッカー(ロバート・レッドフォード)の元へ、弁護士の夫ロバート(サム・ニール)をひとりニューヨークに残し、グレースとピルグリムを連れてトレーラーで旅立った。トムはアニーの強引な態度に呆れるが、グレースが協力するならばという条件つきでピルグリムの治療を引き受ける。トムの自然に逆らわない優しく誠実な治療法により、ピルグリムは徐々に回復し、グレースも少しずつ笑顔を取り戻していった。そしてアニーはトムに、またトムもアニーに、心惹かれはじめる。そんな時、アニーに会社から解雇命令が届いた。トムに恋していたアニーは、意外にも全くショックはなかった。あるキャンプの夜、ふたりはキスを交わすことになる。だがしばらくして、ロバートがニューヨークからやって来た。ロバートはすっかり元気になった娘の姿を見て、トムに心から感謝するが、アニーはそんな夫を見ているのがつらかった。やがてピルグリムはグレースを背に乗せ、歩けるまでに回復する。そろそろモンタナを去る時が来たようだ。ロバートはアニーのトムに対する感情に気づいており、すべてを彼女の決断にまかせることにした。アニーは悩んだあげく、恋心を引きずったまま、それでも夫と共にニューヨークに帰っていくのだった。




12-28. 怒りの河

監督 アンソニー・マン
出演 ジェームズ・スチュアートアーサー・ケネディジュリー・アダムスロック・ハドソンロリー・ネルソン
1951年・アメリカ (ユニヴァーサル日本支社)

解説
「ウィンチェスター銃'73」 と同じく、アーロン・ローゼンバーグが製作、ボーデン・チェイスが脚本を書き、アンソニー・マンが監督、ジェームズ・スチュアートが主演する色彩西部劇1951年作品。原作はビル・ガリック。撮影はアーヴィング・グラスバーグ、音楽はハンス・J・サルターの担当である。主演はジェイムズ・スチュワートの他、 「チャンピオン」 のアーサー・ケネディ、他に新進スターのジュリー・アダムス、ロック・ハドソン、ロリー・ネルソンらが紹介される。

ストーリー
かつてはミズーリ州境の無法者、今はオレゴン州奥地へ移動する開拓団の誠実な道案内人を勤めるグリン・マクリントック(ジェイムズ・スチュワート)が、今しリンチという間際を救った男は、これも名代の無法者エマースン・コール(アーサー・ケネディ)だった。無法者同志の奇妙な友情は、襲来したインディアンを協力して退けたことなどからいよいよ深まったが、ポートランド到着と共に、コールは土地の顔役ヘンドリックスの賭場に居つき、幌馬車隊はインディアンの矢に傷ついた隊長ジェレミーの娘ローラ(ジュリー・アダムス)を治療のため残して、出発した。開墾第一年の冬が迫り、ヘンドリックスと契約した食料の未着を怪しんで再びポートランドに現われたジェレミーとグリンは、意外にも砂金景気に湧く町の有様を見た。彼らの食料は砂金堀の山男たちに売られかけていたのである。コールとローラの妹マージーの愛人トレイ(ロック・ハドソン)の協力で食料を奪取した彼らは、追跡するヘンドリックス一味をも壊滅させた。しかし、件の食料を金堀の飯場に売れば莫大な利益になることを知ったコールは作業員たちと謀り、詭計をもってグリンを丸腰にした。射殺しようとする作業員たちをさすがに押し止め、ポートランドまでの食糧を投げ与えて去ったコールの後を、グリンは執拗に追い続ける。不安に悩むコール一味の眼前へ、やがて現われたグリンは猛烈な格闘の末、コールを河底に沈め、ローラたちと食糧を救い出した。




12-29. ブラス!

監督 マーク・ハーマン
出演 ピート・ポスルスウェイトユアン・マクレガータラ・フィッツジェラルドジム・カーターケネス・コリー
1996年・イギリス (シネカノン配給(アミューズ提供))

解説
廃坑で揺れる炭坑の町の名門ブラスバンドが、苦節をへてコンクール優勝の栄光をつかむまでを描いた群像劇。実在の英国の名門ブラスバンド、グライムソープ・コリアリー・バンドがモデルで、劇中の楽曲は同バンドが演奏し、メンバーも出演者にまじって登場。監督・脚本は「ベルボーイ狂騒曲」(V、92)のマーク・ハーマンで、長編の日本公開作品はこれが初めて。製作は 「危険な動物たち」 のスティーヴ・アボット。撮影はアンディ・コリンズ 。音楽は 「クリフハンガー」 のトレヴァー・ジョーンズで、グライムソープ・コリアリー・バンドの演奏曲の合間にオリジナル曲をはさみこんでまとめている。美術はドン・テイラー、編集はマイケル・エリス、衣裳はエイミー・ロバーツ。出演は 「ロミオ&ジュリエット」 のピート・ポスルスウェイト、 「トレインスポッティング」 のユアン・マクレガー、 「ウェールズの山」 のタラ・フィッツジェラルドほか。

ストーリー
1992年。イングランド北部ヨークシャー地方、炭坑の町グリムリー。町は炭坑閉鎖問題で揺れていた。結成百年の伝統を誇る名門ブラスバンド、グリムリー・コリアリー・バンドでも、メンバーそれぞれが苦境に陥っていた。バンドに全情熱を傾けるリーダー兼指揮者、ダニー(ピート・ポスルスウェイト)は、全英選手権に出場し、ロイヤル・アルバート・ホールで演奏して優勝することを夢見てメンバーにゲキを飛ばすが、炭坑夫である彼らは不安ゆえに気もそぞろだ。そんな折り、グロリア(タラ・フィッツジェラルド)は生まれ故郷のグリムリーに戻ってきた。彼女はかつてのダニーの親友の孫娘で、フリューゲル・ホーン持参で練習場に現れ、いきなり難曲の「アランフェス協奏曲」をバンドと巧みに奏でて一同を感心させた。メンバーの一員になった若く美しい彼女に、チューバ奏者のジム(フィリップ・ジャクソン)をはじめ男所帯のメンバーは色めきたつが、それを知ったかみさん二人が乗り込んできて収まった。メンバーのアルト・ホーン奏者の若者アンディ(ユアン・マクレガー)は気が気でない。実は二人は、ほんの子供時代、一時恋仲だったのだ。アンディはグロリアが実は会社側が炭坑の調査に呼んだ人間だと知るが、ほどなく一夜を共にする。だが、それが一徹な組合員でもあるユーフォニアム奏者のハリー(ジム・カーター)らに知られて、グロリアは冷たくあしらわれ、アンディとの仲もうまくいかなくなる。ハリファックスでの全英選手権の日は、炭坑存廃を決定する投票の開票日だった。メンバーが決勝進出を決めて帰ってくると、町の空気は沈んでいた。炭坑閉鎖が決定し、炭坑夫の解雇が決定したのだった。メンバーのほとんどが失業者になったのだ。さらにダニーが持病の肺の病をこじらせて倒れて入院。メンバーは病院の外で「ダニー・ボーイ」を演奏して、瀕死の彼を元気づけたが、資金不足で決勝に行くことができない彼らは、炭坑閉鎖とともにバンド解散を決心していた。ほどなく、84年の大規模ストに参加したおかげで借金苦の毎日を送っていた、ダニーの息子でトロンボーン奏者のフィル(スティーヴン・トンプキンソン)は、家財道具が差し押さえられ、妻が子供を連れて出ていったことにショックを受けて自殺を図る。運良く助かった彼は父にメンバーの決意を伝え、ダニーは絶望してまた床につく。だが、その矢先、グロリアが決勝出場のための資金を提供を申し出た。会社の腹黒いやり口に怒った彼女は、辞職して退職金をもらったのだ。ここにメンバーはまたひとつになり、いざ優勝を目指す。決勝当日。あこがれのロイヤル・アルバート・ホールに立ったメンバーは、「ウィリアム・テル序曲」を力強く演奏。背後には病院を抜け出したダニーとフィルの妻子の姿もあった。かくしてバンドは見事優勝を勝ち取り、ダニーが感動的なスピーチを聞かせ、喜びの帰路へとつくのだった。




12-30. キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語

監督 ダーネル・マーティン
出演 エイドリアン・ブロディジェフリー・ライトビヨンセ・ノウルズコロンバス・ショートモス・デフ
2008年・アメリカ (ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

解説
1950年代、ロックンロールを生んだシカゴのレーベル“チェス・レコード”の人々を描いた実話の物語。製作総指揮を務めるビヨンセがレーベルを代表する歌姫エタを熱演!

ストーリー
1947年、シカゴ。若い野心家のポーランド系移民レナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)はサウスサイドでバーを経営していた。そこで出会ったのは、物静かなギタリストのマディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)と、衝動的で派手なハーモニカ奏者リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)。彼らのブルースサウンドに魅了されたチェスは、急激に発展しつつあるレコードビジネス・ブームに乗っかろうと、2人を雇う。発売されたアルバムは、徐々にR&Bチャートを上昇し、ラジオでも繰り返し流されるヒット曲となっていく。1955年になると、独特の演奏スタイル“ダック・ウォーク”でロックンロールの創始者となったチャック・ベリー(モス・デフ)や、才能豊かな若い女性アーティストのエタ・ジェイムズ(ビヨンセ・ノウルズ)など、所属アーティストが続々とアメリカの音楽業界の中心に躍り出ていく。チェスは彼らを家族同様に扱い、ヒットの褒美にキャデラックを買い与える。わが世の春を謳歌するチェスだったが、時代は次第に変わっていった……。




12-31. ショウほど素敵な商売はない

監督 ウォルター・ラング
出演 エセル・マーマンドナルド・オコナーマリリン・モンローダン・デイリージョニー・レイ
1954年・アメリカ (20世紀フォックス極東会社)

解説
「愛の泉」 のソル・C・シーゲルが1954年に製作したミュージカル・ドラマ。故ラマー・トロッティのストーリーから 「栄光何するものぞ」 のフィービーとヘンリー・エフロン夫妻が脚色、 「わが心に歌えば」 のウォルター・ラングが監督した。撮影は 「エジプト人」 のレオン・シャムロイ、音楽は 「エジプト人」 のアルフレッド・ニューマンと 「帰らざる河」 のライオネル・ニューマンの共同である。主演は 「マダムと呼んで」 のエセル・マーマン、 「雨に唄えば」 のドナルド・オコナー、 「帰らざる河」 のマリリン・モンロー、 「栄光何するものぞ」 のダン・デイリー、歌手ジョニー・レイ、わがくに初登場のミュージカル・スター、ミッチー・ゲイナーで、そのほかリチャード・イースタム、ヒュー・オブライエン、フランク・マクヒュー、ライス・ウィリアムズらが助演する。

ストーリー
1919年、モリー(エセル・マーマン)とその夫テレンス・ドナヒュー(ダン・デイリー)がアデルフィ劇場に出演したとき、当時1歳の長男スティーヴも初舞台を踏んだ。1923年にドナヒュー一座がピッツバーグ劇場に出演したときはスティーヴ6歳、それに4歳の長女ケイティ、2歳の次男ティムが加わっていた。それから月日が流れ、ドナヒュー夫妻は成人した長男スティーヴ(ジョニー・レイ)長女ケイティ(ミッチー・ゲイナー)次男ティム(ドナルド・オコナー)と5人一座を組み、ニューヨークのヒポドロムに出演して大当たりをとった。父親に似て浮気者のティムはガール・フレンドとナイトクラブへ行ったとき、そこの受付をしている歌手志望のヴィッキー(マリリン・モンロー)に眼をつけたが、体よく追いはらわれた。長男スティーヴが牧師になって欠けたあと、ドナヒュー一座はマイアミのショーに出演することになったが、偶然ヴィッキーもショーに出演するためマイアミに来ており、ティムは大喜び。ヴィッキーにブロードウェイ出演の口がかかって来たとき、一緒にティムとケイティも出演する話が決まった。スティーヴの牧師就任式にはドナヒュー一家も出席して前途を祝福した。その席で作詩者のチャールズはケイティと結婚したいとスティーヴに告げた。スティーヴはもちろん2人の婚約を喜んだ。その夜ティムとヴィッキーはふとしたことから喧嘩別れしてしまった。いよいよ初日という日、ティムは自動車事故で負傷、入院した。父テレンスに不心得を叱られたティムは詫び状を残して病院から行方をくらました。ヴィッキー、モリー、ケイティのショー「マンハッタン・パレード」は大成功だった。テレンスはショーに出演するかたわらティムの行方を探していた。ティムのことでモリーはヴィッキーのことを誤解していた。ティムの行方がわからず、自分の芸にも自身を失ったテレンスは、モリーのすすめる芸能人救済資金募集ショー出演をも断り、姿をくらました。そのショーのはじまった夜、ヴィッキーはモリーの誤解をといて和解した。そのとき、突然長男スティーヴが楽屋を訪れ、母をはげました。そこへ水兵服姿のティムが現れ、父テレンスもまた帰って来た。そして久しぶりに全員揃ったドナヒュー5人組はヴィッキーを加えて舞台に登場するのだった。




12-32. ボディガード(1992)

監督 ミック・ジャクソン
出演 ケヴィン・コスナーホイットニー・ヒューストンゲイリー・ケンプビル・コッブスラルフ・ウェイト
1992年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画)

解説
ショービジネス界のトップスターと、そのボディガードとの恋を描くラヴ・ストーリー。監督は 「L.A.ストーリー 恋が降る街」 のミック・ジャクソン、製作・脚本は 「わが街」 のローレンス・キャスダン、共同製作は 「ダンス・ウィズ・ウルブズ」 のジム・ウィルソンと主演のケヴィン・コスナー、撮影は 「L.A.ストーリー 恋が降る街」 のアンドリュー・ダン、音楽は 「永遠に美しく…」 のアラン・シルヴェストリが担当。

ストーリー
フランク・ファーマー(ケヴィン・コスナー)は、世界でも屈指の実力を持つボディガード。ある時、歌手兼女優のスーパースター、レイチェル・マロン(ホイットニー・ヒューストン)の護衛を依頼される。最近彼女の身辺で、不穏な事件が発生し、脅迫状まで送られて来たのだ。レイチェルの邸宅を訪れたフランクは、ずさんな警備体制に驚き、彼女のボディガードとなる決心をする。フランクの目をかすめてライヴハウスでコンサートを行ったレイチェルは、舞台に上がった男から客席につき落とされるが、駆けつけたフランクに助けられる。錯乱状態になった彼女を心から介護するフランクを見て、それまで彼をただの邪魔者としか考えていなかったレイチェルは、初めて心を開く。フロリダのコンサートでレイチェルのもとに脅迫電話がかかり、さしせまる危険を感じたフランクは、自分の父が住むオレゴンに一時レイチェルを隔離する。雪深いオレゴンで、レイチェルの息子フレッシャーと、レイチェルの姉で付き人でもあるニッキー(ミシェル・ラマー・リチャーズ)と過ごすフランクとレイチェルはささやかな幸福に浸るが、フレッシャーの乗るボートが突然爆発し、幸い彼は助かったものの、何者かの手が近づいていることは明白となる。その夜フランクは、ニッキーから真実を聞かされる。あの脅迫状を見て、バーで見知らぬ男にレイチェルの暗殺を依頼したこと、今では後悔しているものの、その男を探し出せないでいること_。しかしフランクが少し目を放している隙に、ニッキーはあっけなく殺されてしまう。相手がプロであると悟ったフランクは、アカデミー賞受賞式に出席するというレイチェルを止めるが、最優秀主題歌賞にノミネートされている彼女は、舞台に立つことを決心する。受賞式当日、観客の中に犯人がいると確信したフランクは、客席に、ある映画スターのボディガードとして入場したはずの、昔の同僚ポートマン(トーマス・アラナ)の姿を見つけ、彼が犯人だと直感する。レイチェルがオスカーを受賞し、ステージに上がると同時にポートマンのカメラに仕掛けられた銃が火を吹き、フランクが身を投げ出して助ける。負傷したフランクは、レイチェルのボディガードを辞める。飛行場で別れを惜しむ2人だが、ショービジネスと政治家の警備というそれぞれの世界に帰っていくのだった。




12-33. 死ぬまでにしたい10のこと

監督 イザベル・コイシェ
出演 サラ・ポーリーマーク・ラファロスコット・スピードマンレオノール・ワトリングデボラ・ハリー
2002年・スペイン、カナダ (松竹)

解説
残りわずかな人生を前向きに生きようとする23歳の女性の決意を見すえた人間ドラマ。悲劇の中に希望を見出そうとするヒロインに扮したサラ・ポーリーの繊細な演技が胸を打つ。

ストーリー
清掃の仕事をしている23歳のアン(サラ・ポーリー)は、夫のドン(スコット・スピードマン)と、二人の娘とトレーラーハウスで暮らす主婦。しかしある日、突然の腹痛に倒れ、トンプソン医師(ジュリアン・リチングズ)に癌で余命2〜3ヵ月と宣告される。アンはドンと母(デボラ・ハリー)には貧血だと説明。そして夜更けのコーヒーショップで今までの人生を振り返りつつ、死ぬまでにしたいこと10項目のリストを作る。さっそくそれを実行していくアン。そんな時、コインランドリーで、コーヒーショップにいた男リー(マーク・ラファロ)が声をかけてくる。帰宅し洗濯物の袋を開けると本が一冊入っており、電話番号を書いた紙が挟まれていた。恋人と別れたばかりというリーの家を訪ねたアンは、彼と恋におちる。優しい夫のドンには、隣の家に越してきた自分と同じ名前のアン(レオノール・ワトリング)が、新しいパートナーになってくれるよう密かに願う。そして、10年も刑務所にいる父(アルフレッド・モリーナ)と面会。したいことを一通り実行したアンは、母やドンやリーに最後のメッセージをテープに録音して、亡くなるのだった。




12-34. ベンジャミン・バトン 数奇な人生  

監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ブラッド・ピットケイト・ブランシェットタラジ・P・ヘンソンジュリア・オーモンドジェイソン・フレミング
2008年・アメリカ (ワーナー・ブラザース映画)

解説
ブラッド・ピット主演による感動のヒューマン・ファンタジー。80歳の赤ん坊としてこの世に誕生し、激動の20世紀を生き抜いていく主人公の切ない恋を語り明かす。

ストーリー
ハリケーンが近づく病院で、老女が娘に向かって語りはじめる。それは80歳の老人として生まれ、次第に若返っていった男の数奇な半生の物語だった。その男、ベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)は1918年、ニューオリンズで生を受けた。産むと同時に母は死に、父は呪われた赤ん坊と彼を老人養護施設に捨てる。それを拾ったのは、黒人の介護士であるクイニー(タラジ・P・ヘンソン)だった。彼女は、その赤ん坊をベンジャミンと名付け、自分の子供として育てることを決める。12歳になったベンジャミンは、施設の入居者の孫娘であるデイジーと出会う。6歳のデイジーは、老いた子供であるベンジャミンに親しみを感じた。やがて、ベンジャミンは船で働きはじめる。女と酒の味を覚えた彼は、ボタン工場のオーナーと知り合う。その男は、ベンジャミンの父だった。ベンジャミンのその後が気になり、彼に接近したのだ。36年、施設から独立したベンジャミンは恋を知り、第二次世界大戦の戦火もくぐり抜けた。45年、施設に戻ったベンジャミンは、成長してバレエダンサーとなったデイジー(ケイト・ブランシェット)に再会する。デイジーに思いを寄せるベンジャミンだが、彼女はバレエに夢中だった。そんなデイジーが交通事故に遭い、ダンサー生命を絶たれたとき、二人は結ばれる。やがて、デイジーは娘を産む。父から受け継いだボタン工場を売ったベンジャミンは、デイジーと娘に財産を残して放浪の旅に出る。それは、自身の人生を確認するためのものだった。旅から帰ってきた時、デイジーには夫がいた。外見は少年ながら、内面は老人になり果てたベンジャミンを見守るのは、夫を亡くしたデイジーだった。そして、赤ん坊の姿でベンジャミンはこの世を去る。長い物語を娘に語り終えて、老いたデイジーも息をひきとった。外では、カトリーナ台風が近づいてきていた。




12-35. 夜の道

監督 ジェームズ・ニールソン
出演 ジェームズ・スチュアートオーディ・マーフィダン・デュリエダイアン・フォスターエレーン・スチュアート
1957年・アメリカ (ユニヴァーサル)

解説
ノーマン・A・フォックス原作の西部小説を 「六番目の男」 のボーデン・チェイスが脚色、テレビ畑のジェームズ・ニールソンが映画第1作として監督した。撮影監督は 「イスタンブール(1956)」 のウィリアム・ダニエルス、作曲、指揮は 「OK牧場の決斗」 のディミトリ・ティオムキン。主演は 「翼よ!あれが巴里の灯だ」 のジェームズ・スチュアート、 「東京特ダネ部隊」 のオーディ・マーフィ、 「大空の凱歌」 のダン・デュリエ、 「ケンタッキー人」 のダイアン・フォスター、 「ブリガドーン」 のエレイン・スチュワート、 「シェーン」 の子役ブランドン・デ・ワイルドなどが助演する。

ストーリー
コロラド山脈の奥地で新しい鉄道敷設に出稼ぎに来ている作業隊がいる。彼らはホワイティ(ダン・デュリエ)を首領とする強盗団に度々輸送中の列車から給金を奪われ戦々兢々としていた。鉄道工事会社の支配人キムボールは現場へ給金を届け作業隊の不安を除こうと頭を悩ませていたが、彼はマクレーン(ジェームズ・スチュアート)という格好の輸送金護衛者を見つけ実行にかかった。マクレーンは元鉄道員だが、5年前、列車輸送中の大金を強盗団に奪われ、一味に加わっていた実弟のユチカ・キッド(オーディ・マーフィ)を追っ手から逃がしたかどで職を追われ今はアコーディオンを道連れに各地を渡り歩いていた。彼は社運をかけて渡したキムボールの1万ドルを胴巻に入れコロラドの作業場へ向った。彼はジョーイという少年を連れて行ったが、それはキムボールの事務所へ行く途中ふとしたことで拾ったものだった。コロラドへの車中、果して強盗団が現れた。マクレーンはジョーイの持つ靴の箱に素早く金を隠した。意外の無収穫に怒った強盗団は乗り合わせたキムボールの妻ヴァーナ(エレイン・スチュワート)と少年を人質にペイロードの町へ去った。そしてこれを知ったキムボール支配人はマクレーンが信頼を裏切り強盗団に内通したと誤解した。マクレーンは単身ペイロードへ行ったが、強盗団のいる酒場の近くでチャーリイ(ダイアン・フォスター)という女に出会った。チャーリイはマクレーンの弟ユチカ・キッドの恋人で結婚を申込に来ていたのだ。マクレーンは酒場に入り、自分の指名が気づかれていないのを幸い、弟と話をしたいとキッドを外へ連出した。彼は、1万ドルの金が少年の靴箱に入っていることを語り弟を説得、非を悟らせようとしたが無駄だった。一方チャーリイもキッドと面会したが結婚は断られた。兄弟は酒場へ戻るが、そこへキムボールの会社の男が現れ、「預けた金はどこだ」と詰寄った。一座は忽ち殺気立ち射ち合いが始った。キッドは金を持つ少年を連れ馬で逃出した。それをヴァーナとチャーリイを連れたマクレーンが追いさらにその後をホワイティ一味が追う。マクレーンはしかし追い詰められて危機一髪。この時兄弟愛に目覚めたキッドは矢にわに強盗団に向うが忽ち倒される。マクレーンはその隙にホワイティを射ち倒し、キッドは兄の胸に抱かれて息を引取った。給金は無事作業隊に渡された。




12-36. クレイマー、クレイマー 

監督 ロバート・ベントン
出演 ダスティン・ホフマンメリル・ストリープジャスティン・ヘンリージェーン・アレキサンダージョージ・コー
1979年・アメリカ (コロムビア映画) 106分

解説
マンハッタンに住む平凡なサラリーマンの家庭に起こった妻の家出にはじまるさまざまな出来事を中心に描く。製作はスタンリー・R・ジャッフェ、監督・脚本は 「夕陽の群盗」 のロバート・ベントン、撮影はネストール・アルメンドロス、音楽はヘンリー・パーセル、編集はジェリー・グリーンバーグ、製作デザインはポール・シルバート、衣裳はルース・モーリーが各々担当。出演はダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー、ジェーン・アレクサンダー、ジョージ・コー、ジョベス・ウィリアムス、ハワード・ダフ、ピーター・ローンズなど。

ストーリー
ジョアンナ・クレイマー(メリル・ストリープ)は結婚して8年。今日も夜通し帰らぬ夫を持ってついに夜明けを迎えていた。最初は幸せだった結婚生活も、今ではもう無意味なものに感じられていた。夫テッド(ダスティン・ホフマン)は仕事第一主義で帰宅はいつも午前様だ。3人の間には会話すらなくなっていた。7歳になる子供ビリー(ジャスティン・ヘンリー)のことを気にしながらも、ジョアンナは自分をとり戻すために家を出る決心をした。寝息をたてるビリーに“アイ・ラブ・ユー”とささやきかけ、スーツケースを片手にまさに家を出ようとした時、テッドが帰って来た。上機嫌で帰って来たテッドは、妻のこうした変化には気がつかず、妻の別れの言葉も耳に入らない。ジョアンナは、こうしてエレベーターの向こうに消えていった。冗談だと思っていたテッドだったが、翌日、オフィスから自宅にかけた電話に誰も出ないことから、事の重大さをはじめて感じた。テッドの生活はその日から一変した。これまでノータッチだった家庭の仕事をまずやらなくてはならなくなった。朝食のフレンチ・トーストをビリーと作り、ビリーを学校まで送っていき、それからタクシーに飛び乗り会社に向かう。上役の心配は的中し、テッドは家の中にまで仕事を持ち込むはめになり、しかもその場もビリーに邪魔された。父子2人の生活はうまくかみ合わず、まるで憎み合っている関係のように感じられることもあったが、そんなことを繰り返しながらも、少しずつ互いになくてはならない存在になっていった。隣室に住むマーガレット(ジェーン・アレクサンダー)は離婚して、1人で子供を育てている身の上だったが、テッド父子に暖かい気遣いを示し、テッドのよき相談相手になっていた。ところが、テッドに思いもかけない出来事が待っていた。公園のジャングルジムから落ちて、ビリーが10針も縫う大ケガをしたうえ、1年以上も音沙汰なかったジョアンナが突如現われて、ビリーを取り戻したいと言ってきたのだ。折りからテッドは失業。弁護士によると、この条件では、裁判は母親が有利だという。東奔西走してやっと職はみつかったものの、裁判は予想通りテッドには不利に運び、結局ビリーはジョアンナの手に渡ることになった。ビリーなしの生活は考えられなくなっていたテッドは狂乱状態に陥った。2人が最後の朝食であるフレンチ・トーストを手ぎわよく作りはじめたころは、ビリーの目は涙であふれていた。そんなビリーを見て、テッドも悲しみをこらえることはできなかった。ただ黙ってジョアンナがくるのを待つ2人。ジョアンナからの電話で階下に降りていったテッドは、しかしそこで、落胆したジョアンナの姿を目にした。彼女は、“ビリーのためには、この家にいるのが一番いい。私は連れていかないことに決めた”といってエレベーターに乗り込んでいくのであった。




12-37. Dr.パルナサスの鏡

監督 テリー・ギリアム
出演 ヒース・レジャークリストファー・プラマージョニー・デップジュード・ロウコリン・ファレル
2009年・イギリス、カナダ (ショウゲート(提供 博報堂DYメディアパートナーズ=ショウゲート=ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント))

解説
鬼才テリー・ギリアム監督による壮大なるファンタジー。撮影中に亡くなったヒース・レジャーの役を、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が演じ分ける。

ストーリー
2007年、ロンドン。旅芸人の一座が今にも壊れそうな馬車で現れる。座長は年齢1000歳以上といわれるパルナサス博士(クリストファー・プラマー)。出し物は、人の心の中の欲望を具現化する“イマジナリウム”と呼ばれる鏡。博士に導かれて鏡を通り抜けた観客は、自分の願望を反映した幻想世界を体験できるのだ。だが、怪しげな出し物に興味を持つ客はなく、博士は何かに怯えていた。実は、かつて偉大な僧侶だった博士。悪魔のMr.ニック(トム・ウェイツ)にそそのかされて、1人の女性に恋をしたことからすべてが始まった。不死と若さを手に入れる代わりに、生まれた娘が16歳になった時、彼に差し出す約束をしてしまったのだ。そうとは知らない博士の娘ヴァレンティナ(リリー・コール)。ある日彼女は、殺されそうになっていた青年トニー(ヒース・レジャー)を助ける。記憶喪失の彼は一座に加わると、巧みな話術で女性客を惹きつけ、ヴァレンティナも彼に心奪われる。そして期限の3日前。Mr.ニックが現れ、賭けに勝てば娘を渡さなくてもいいと博士に告げる。その賭けとは、鏡の世界に入り込んだ客に、悪魔の欲望の道と節度ある博士の道を選択させて、先に5人を獲得した方が勝ちというものだった。事情を知ったトニーは、次々と女性客を鏡の中へ誘導。そして、記憶を取り戻し、自分を殺そうとした男たちの姿に気付いたトニーも鏡の中へ逃げ込む。鏡の中で客の願望を形にしたトニー(ジョニー・デップ)は、次々と客を博士の選択へ導く。しかし残り1人になったとき、トニー自身の願望を反映したトニー(ジュード・ロウ)が誘導に失敗。追っ手と悪魔に迫られ、一緒に鏡の中へと逃げ込むトニーとヴァレンティナ。すると、ヴァレンティナの願望を反映したトニー(コリン・ファレル)が彼の真の姿を現す…。期限まであとわずか、博士とヴァレンティナの運命は……?




12-38. 私がクマにキレた理由(わけ)

監督 ロバート・プルチーニ
出演 スカーレット・ヨハンソンローラ・リニーポール・ジアマッティニコラス・リース・アートドナ・マーフィ
2007年・アメリカ (ショウゲート)

解説
スカーレット・ヨハンソン主演のコメディ。NYのあるセレブ一家のベビーシッターとなったヒロインが、彼らのワガママに振り回されつつも涙と笑いの悪戦苦闘を繰り広げていく。

ストーリー
マンハッタンにある超高級アパートの一室。クマのぬいぐるみに向かって怒りを爆発させる一人の女性がいた。彼女の名はアニー・ブラドック(スカーレット・ヨハンソン)。アパートの住人であるX家に雇われ、5歳の息子グレイヤー(ニコラス・リース・アート)の面倒を見ているナニーだった。数ヶ月前。大学を卒業したアニーは、大手投資銀行の就職面接を受ける。しかし「あなたのしたいことは何?」という質問に答えることができず、不合格。落ち込んでいたアニーは、事故に会いそうになったグレイヤーを助けたことから母親のミセスX(ローラ・リニー)と知り合い、ナニーとして雇われたのだった。こうして始まったX家での日々。だが、ベビーシッターの経験すらないアニーは、息子の面倒をまったく見ないミセスXと気まぐれなグレイヤーに翻弄されっぱなし。プライベートな時間もまったく取れず、家政婦からは“前任者はデート一回でクビになった”と脅される始末。悪戦苦闘が続く中、両親にかまってもらえないグレイヤーの寂しさを知ったアニーは、彼に愛情を感じるようになっていく。そして、ようやく手に入れたプライベートタイム。親友のリネット(アリシア・キーズ)を連れて繰り出したバーで知り合ったのは、X家と同じアパートに住むハーヴァード(クリス・エヴァンス)。やがてアニーとハーヴァードは距離を縮めていく。ある時、X家全員で避暑地へ。同行したアニーは、グレイヤーに加え他の家庭の子供達の面倒まで見る羽目に。その上、グレイヤーの父親ミスターX(ポール・ジアマッティ)からはセクハラを受け、ミセスXからは解雇を言い渡されてしまう。さらに、ミセスXがハーヴァードからの電話を取り次いでいなかったことを知り、ついに怒りは頂点に。かくしてマンハッタンのX家留守宅に乗り込んでいったアニーは、子供部屋で監視カメラを仕掛けたクマのぬいぐるみを発見する……。




12-39. アイ・ラブ・トラブル

監督 チャールズ・シャイアー
出演 ジュリア・ロバーツニック・ノルティソウル・ルビネックジェームズ・レブホーンロバート・ロギア
1994年・アメリカ (ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
ライバル紙の事件記者の男女が、スクープ合戦の渦中に繰り広げる恋と冒険を描いたロマンティック・コメディ。名作 「花嫁の父」をリメイクした 「花嫁のパパ」に次いで、往年のハリウッド映画のムード漂う作品を現代に再生したのは、監督・脚本のチャールズ・シャイアーと製作・脚本のナンシー・マイヤーズのおしどり夫婦コンビ。撮影は 「花嫁のパパ」 「愛がこわれるとき」のジョン・リンドレイ、音楽は 「恋人はパパ/ひと夏の恋人」 「フリント・ストーン モダン石器時代」のデイヴィッド・ニューマン。新聞社や化学研究所の見事なセットを手掛けた美術はディーン・タヴォラリス。カジュアルからフォーマルまで、上品かつアクティヴなジュリア・ロバーツの衣装デザインは 「花嫁のパパ」でシャイアー&マイヤーズと組み、 「愛の選択」 「トゥルー・ロマンス」も手掛けたスーザン・ベッカーが担当し、作品の大きな見どころとなっている。主演は 「プリティ・ウーマン」のジュリア・ロバーツと、 「サウス・キャロライナ 愛と追憶の彼方」 「ロレンツォのオイル 命の詩」のベテラン、ニック・ノルティ。ジュリアは前作 「ペリカン文書」で新聞記者を演じたデンゼル・ワシントンのノートを参考に役作りを進め、ニックはのちに脚本家に転じたシカゴの伝説の新聞記者ベン・ヘクトの伝記などを読んで研究し、それぞれ演技プランを組み立てたという。共演は 「ゲッティング・イーブン」のソール・ルビネック、 「ビッグ」のロバート・ロッジア、 「マグノリアの花たち」のオリンピア・デュカキス、 「アンタッチャブル」のチャールズ・マーティン・スミス、 「グッバイガール」のマーシャ・メイソンら。

ストーリー
事件記者から転じ、今や作家業にも進出したシカゴ・クロニクル紙の名物コラムニスト、ピーター・ブラケット(ニック・ノルティ)はある日、ピンチヒッターとして久しぶりに取材に出掛けた列車の脱線事故の現場で、シカゴ・グローブ紙の美人記者サブリナ・ピーターソン(ジュリア・ロバーツ)と出会う。先輩風を吹かせるピーターの態度にプライドを傷つけられた彼女はライバル意識を燃やし、その夜のうちに事件の重大なスクープをモノにする。翌朝のグローブ紙を見て仰天したピーターは、新米と侮ったのが間違いと、ただちに真剣に事件を追い始める。やがて彼らのスクープ合戦は白熱化、互いに相手を出し抜こうと、あの手この手の策略を巡らせる。そんな時、ピーターはサブリナにトリックを仕掛け、彼女を出し抜いてビデオを入手する。一方、列車から盗み出したブリーフケースを売りたいという匿名の電話がサブリナにかかってくる。ところが、彼女が交渉現場に着いた時には、電話の主は既に殺されていた。現場にあったペンで証拠のメモを記し、必死でその場から逃げた彼女に、事故で死んだ化学教師の妻が接触してきた。早速会いに行くと、例のテープから嗅ぎつけたピーターとばったり出くわす。教師の妻に逃げられたばかりか、2人は何者かに命を狙われた。サブリナは「命が惜しいから降りるわ」と彼に言いつつも、教師の家で掴んだネタを追いかけて、翌日行動を開始。だが、またしても機上でピーターと鉢合わせする。2人は共同戦線を張ることを約束。彼らは事件の鍵がチェス化学会社が開発したLDFという物質にあることを掴む。それは乳牛の体質を改善させ、子牛から乳が採れるという効能があった。2人はピーターの情報提供者で、ゲイル・ロビンズ上院議員(マーシャ・メイソン)の側近のサム・スマザーマン(ソール・ルビネック)から裏付けを取り、畜産業界を揺るがす大発明であることを知る。彼らはLDFの安全度を調査したチェス化学研究所の男を捜すが、男は火事で焼死していた。2人は、影のようにつきまとうやせた男(ジェームズ・レブホーン)に命を狙われる。ラスベガスを訪れた2人は追手をかわすべく、簡易結婚式の教会に飛び込み、にわか夫婦となる。戸惑いつつも愛情を感じていた彼らはその夜、ホテルで結ばれた。スクープを狙うサブリナは単独で研究所に忍び込む。一方、偶然からサムが事件に関係があることを知ったピーターは、彼女を助けるべく後を追った。サムはチェス化学の社長とグルで、汚い仕事を専門に行う男だった。LDFはガンを発生させる危険があり、それを公表しようとした研究所員がフィルムを教師の息子に送ったため、男に続いて教師を亡き者にしようとして脱線事故が仕組まれたのが真相だった。そして、証拠のフィルムはあの殺人現場から持ち帰り、いつも彼女の手元にあったペンの中に隠されていた。サブリナとピーターは追い詰められるが、一致団結して危機をかわす。事件が明らかになり、彼らのスクープが仲良く両紙の紙面を飾った。2人は新婚旅行のホテルでその記事を読むのだっだ。




12-40. スケアクロウ

監督 ジェリー・シャッツバーグ
出演 ジーン・ハックマンアル・パチーノドロシー・トリスタンアン・ウェッジワースリチャード・リンチ
1973年・アメリカ (ワーナー映画)

解説
ヒッチハイクでアメリカ大陸を横断する2人の男の友情を描く。製作はロバート・M・シャーマン、監督は 「哀しみの街かど」 のジェリー・シャッツバーグ、脚本はギャリー・マイケル・ホワイト、撮影はビルモス・ジグモンド、音楽はフレッド・マイロー、編集はエヴァン・ロットマンが各々担当。出演はジーン・ハックマン、アル・パチーノ、ドロシー・トリスタン、アン・ウェッジワース、リチャード・リンチ、アイリーン・ブレナン、ペニー・アレン、リチャード・ハックマンなど。

ストーリー
マックス(ジーン・ハックマン)とライオン(アル・パチーノ)が出会ったのは南カリフォルニアの人里離れた道路であった。マックスは6年の懲役を終えて刑務所から出てきたばかりだった。洗車店を始めるためにピッツバーグへ向かう途中、ちょっとデンバーに立ち寄って、たったひとりの肉親である妹コリー(ドロシー・トリスタン)を訪ねてみるつもりだった。ライオンの方は、5年ぶりに船員生活の足を洗って、デトロイトに置き去りにしたままの妻アニー(ペニー・アレン)に会いに行くところだった。今年5歳になる子供がいるはずだが、男か女さえも知らなかった。その2人は知り合ったとたん気が合った。こうして2人はコンビを組み、洗車屋を始めるために旅をする事になったが、途中、まずデトロイトとデンバーでのそれぞれの用事を済ませる事に相談がまとまった。トラックや汽車を乗り継いでデンバーに着いた2人は早速コリーを訪ねたが、そこで一緒に生活していたフレンチー(アン・ウェッジワース)という女にマックスはすっかりいかれてしまい、ライオンもコリーが気に入った。意気投合した4人は、これからずっと行動を共にしようという事になった。そのためにはまずマックスがピッツバーグの銀行に預けてある金を、ライオンと一緒に引き出しにいく途中、ライオンの妻のいるデトロイトに寄ればいい。ほんのひとときの別れだけれども、お別れパーティを盛大にやろうという事になり、ドンチャン騒ぎが始まった。そのことが原因で町の連中と喧嘩になり、マックスとライオンは30日間の強制労働を課せられた。それを終えると、2人は連れ立って目的地へ急いだ。ようやくたどりついた家の前で、まず電話をしてからと彼は公衆電話へかけ込んで彼女を呼んだ。だが、なつかしさと期待にあふれる彼の気持ちは一瞬にして吹き飛ばされた。アニーは5歳になろうとする男の子の顔を見ながら、出産直前に階段から落ちたために子供が死んで生まれてこなかった事、洗礼を受けていないその子は地獄に落ちたまま永遠に天国へは行けないだろう、そして自分は間もなく再婚すると大声でまくしたてた。それがアニーの悲しい嘘である事をライオンは知る由もない。電話を切ると、ショックを隠して、わざと明るくボックスを飛び出し、表で待ち構えていたマックスに生まれた子供は男の子であった事、しかし女房はすでに再婚しているので会うわけにはいかない事などを話して聞かせた。2人の行く先はもはやピッツバーグしか残っていなかった。ライオンの様子がおかしいのにマックスが気づいたのはその時だった。公園の大きな噴水のそばで子供たちと遊んでいたライオンは、その中の1人をいきなり抱き上げると、氷のような冷たい水の中にザブザブ入って行った。あわてたマックスが、彼を水の中から連れだした。かけつけた車で病院に収容されたライオンは正気に戻るまで当分の間精神療法が必要だという医者の診断であった。その時、マックスの心が決まった。洗車屋を始めるために貯金した金をそっくりそのまま親友の治療費につぎ込もうと。もうライオンとは永久に離れまいと。




12-41. アラジン

監督 ジョン・マスカー
出演ロビン・ウィリアムズ
1992年・アメリカ (ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン)

解説
「アラビアン・ナイト」 の物語をもとに、不思議なランプを手にてた若者が、愛する人を守るため冒険に挑む姿を描くファンタジー・アニメーション。監督・製作・脚本は 「リトル・マーメイド」 のコンビ、ジョン・マスカーとロン・クレメンツ。共同脚本はテッド・エリオットとテリー・ロッシオ、音楽は 「美女と野獣(1991)」 のアラン・メンケン、挿入歌は、作詞を同作のハワード・アシュマンと 「ジーザス・クライスト・スーパースター」 などで知られるミュージカル界の大御所ティム・ライスが担当。 「フック」 のロビン・ウィリアムスが魔人ジーニ役で声の出演をしており、彼は本作で第50回ゴールデン・グローブ賞特別賞を受賞した。また本作は、同賞ならびに第65回アカデミー賞で最優秀オリジナル作曲賞、最優秀主題歌賞を受賞している。

ストーリー
神秘と魅惑の都アグラバ。大いなる夢と希望を抱いた貧しい若者アラジン(声・スコット・ウェインガー)は、市場で出会った美しい娘ジャスミン(声・リンダ・ラーキン)を一目で気に入り、彼女が盗っ人として捕まっていた果物屋から助け出す。彼女はアグラバ王国の王サルタン(声・ダグラス・シール)の娘だった。結局役人に捕まったアラジンは、城の石牢に閉じこめられてしまう。その頃ジャスミンは、右大臣のジャファー(声・ジョナサン・フリーマン)から、アラジンは処刑されたと聞き、嘆き悲しんでいた。一方、アラジンは突然現れた不気味な老人に誘われ、砂漠の中の洞窟から、ランプをとってくることを条件に、牢を脱出した。アラジンは、魔法の洞窟を奥へ進む途中、不思議な魔法の絨毯に出会う。アラジンは、絨毯の道案内でやっとランプを手に入れるが、同行していたペットの猿アブー(声・フランク・ウェルカー)が宝石に手を出してしまい、洞窟は次々に大爆発を起こし始めた。外に待っていた老人はアラジンからランプをひったくると、アラジンを洞窟の底へ突き落とした。老人の正体はジャファーだった。アラジンが絶望に落ちこんでいた時、アブーが落とされる瞬間取り戻したランプを取り出した。アラジンが汚れたランプに書いてある文字を読もうとさすった途端、ランプの魔人ジーニー(ロビン・ウィリアムス)が現れた。ジーニーは、ランプを持つ主人の願いを3つだけ叶えてくれると言う。アラジンは1つめの願いで、立派なプリンスに変身し、王宮へ乗り込んだ。ジャスミンに本当の自分を名乗れないアラジンだったが、その夜、絨毯に乗ってジャスミンを訪れる。2人は絨毯に乗って美しい星空の中を飛び、ジャスミンはアラジンに好意を持ち始めた。だが、すべての権力を握ろうとしていたジャファーは王を催眠術にかけ、ジャスミンと結婚しようと狙っていた。そしてアラジンからランプを盗んだジャファーは、アラジンを元の姿に戻し、すべての嘘が明らかにされてしまう。ジャスミンを助けに行ったアラジンだったが、ジェファーはランプを使い、ジーニーに自分もジーニーと同じような魔法使いになりたいと言う。望み通りの姿になったジャファーだったが、ランプの中に吸い込まれてしまう。アラジンは最後のひとつの願いで、ジーニーをランプから開放して普通の人間に戻し、王にも気に入られ、めでたくジャスミンと結ばれるのだった。




12-42. アメイジング・グレイス

監督 マイケル・アプテッド
出演 ヨアン・グリフィズロモーラ・ガライマイケル・ガンボンキーラン・ハインズベネディクト・カンバーバッチ
2006年・イギリス (プレシディオ)

解説
18世紀のイギリスで誕生した名曲にまつわる実話ドラマ。困難を乗り越え、奴隷解放運動に奔走する実在の政治家ウィリアム・ウィルバーフォースを「ファンタスティック・フォー」シリーズのヨアン・グリフィズが熱演。監督は「ナルニア物語 第3章 アスラン王と魔法の島」のマイケル・アプテッド。

ストーリー
18世紀のイギリス。交易で富を築いた家に生まれたウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は成長すると、父と叔父が残した財産を多くの慈善事業に使うほどの優しい青年となる。イギリスの主たる収入源である奴隷貿易に心を痛めた彼は、世のために祈る聖職者になるか、世を変える政治家になるかで心が揺れる。彼の師で、『アメイジング・グレイス』の作詞をしたジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)に背中を押されたウィルバーフォースは、21歳の若さで議員に選出される。彼は英国最年少の首相ウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)と共に、奴隷貿易廃止を訴える。どんな危険な場所でも乗り込み情報を掴んでくるトマス・クラークソン(ルーファス・シーウェル)、貴族出身で奴隷経験者でもあるオラウダ・エクィアノ(ユッスー・ンドゥール)、ウィルバーフォースの友人で下院議員のヘンリー・ソーントンら、12人が活動のために集められる。1787年5月、彼らは活動を開始する。ウィルバーフォースたちはロンドンのコーヒー店や地方のパブ、ディナーパーティーの会場など国中を回って演説し、1年足らずで世論に影響を与える。39万人もの世論の賛同を得、1791年、国会に奴隷貿易廃止案を提出する。しかし奴隷制度賛成派の妨害により、その申し立ては否決される。うちのめされたウィルバーフォースを病魔が襲う。ヘンリーはウィルバーフォースを自宅に招き、妻マリアンヌとともに看病をする。そして、美しく聡明なバーバラ・スプーナー(ロモーラ・ガライ)と強制的に引きあわせる。ウィルバーフォースとバーバラはすぐ恋に落ちる。ウィルバーフォースは心が折れかけていたが、バーバラによって立ち直る。ウィルバーフォースの苦難に満ちた活動は、名曲『アメイジング・グレイス』によって支えられ、奇跡の結末を迎える。




12-43. 冒険者たち

監督 ロベール・アンリコ
出演 アラン・ドロンリノ・ヴァンチュラジョアンナ・シムカスセルジュ・レジアニ
1967年・フランス (大映)

解説
ジョゼ・ジョヴァンニの同名小説を、彼と 「ふくろうの河」 の監督ロベール・アンリコ、ピエール・ペルグリの三人が共同で脚色し、ロベール・アンリコが監督したアクション。撮影はジャン・ボフティ、音楽はフランソワ・ド・ルーベが担当。出演は 「パリは燃えているか」 のアラン・ドロン、 「女王陛下のダイナマイト」 のリノ・ヴァンチュラ、 「スタンダールの恋愛論」 のジョアンナ・シムカスほか。イーストマンカラー、テクニスコープ。

ストーリー
マヌー(A・ドロン)とローランド(L・バンチュラ)は、性格はまったく違っていたが、実の兄弟のように仲が良かった。マヌーはパリにある飛行クラブの教師で、ハンサムでスマートな外見に似合わず、驚くほどの命知らずで大ぼら吹きだ。ローランドはパリ郊外の廃車置場の中にある奇妙な仕事場に住み、画期的なカー・エンジンの開発に専念していた。ある日マヌーは飛行クラブの生徒から、耳よりな話を聞きこんだ。それはある映画プロデューサーが撮影のため凱旋門を飛行機でくぐり抜けた者に二千五百万フランの賞金を出すというのだ。マヌーは科学的調査をして、十分に勝算のあることを知った。いよいよその当日となったが、思わぬ事件が勃発、飛行はとりやめとなり、その上この事件がもとでマヌーは飛行士の免許を剥奪されてしまった。おまけにこの話が巧妙に仕組まれた冗談であることが分った。失業したマヌーは友人ローランドの仕事場へ移ったが、仕事は思うように進行しなかった。そんなある日、マヌーは飛行クラブの生徒から聞いた新たなもうけ話の調査に乗りだした。それによるとベルギーのコンゴ移住者が動乱から逃れる途中、莫大な財産を乗せて海に墜落し、財宝が海底に眠っているというのだ。調査の結果それは間違いなかった。マヌーとローランド、それに以前ローランドの仕事場で彫刻を勉強したことのあるリティティア(J・シムカス)の三人はスクーナー船に乗りこんで、宝探しを始めた。途中墜落して死んだと思われていたパイロットが船を訪れた。ついに彼らは素晴らしい仕事をなしとげた。ところがこの財宝に目をつけていた男たちが闇に乗じて襲ってきた。その戦いの中でリティティアは死んだ。危機を脱出した二人は彼女の故郷アイクス島を訪れた。そこには彼女にそっくりの少年がいた。リティティアを愛し続けていたローランドは、その少年の世話をするため島に残った。一度パリに帰ったマヌーも淋しくて、再び島へ来たが例の一味に襲われて死んでしまった。ついにローランドは島を去る決心をした。そして少年はひとり島に残された。




12-44. ナバロンの要塞

監督 J・リー・トンプソン
出演 グレゴリー・ペックデイヴィッド・ニーヴンアンソニー・クインスタンリー・ベイカーアンソニー・クェイル
1961年・アメリカ (コロムビア)

解説
第二次大戦下におけるエーゲ海域でのイギリス軍とドイツ軍の戦いを描いた戦争映画。アリスティア・マックリーンの小説をカール・フォアマンが脚色、 「北西戦線」 のJ・リー・トンプソンが監督に当たった。撮影はオズワルド・モリス。音楽はディミトリ・ティオムキン。出演するのはグレゴリー・ペック、デヴィッド・ニヴン、アンソニー・クイン、スタンリー・ベーカー、イレーネ・パパス、ジェームズ・ロバートソン・ジャスティススなど。製作カール・フォアマン。

ストーリー
第二次大戦下の1943年、エーゲ海は独軍の制圧下にあり、ケーロス島の英軍2000の生命は全滅の危機にあった。英軍救出の試みは度々なされたが、途中に睨みをきかすナバロン島の断崖の洞窟に据えられた独軍の2門の大砲のため失敗した。そこでジェンセン代将の幕僚フランクリン少佐(アンソニー・クェイル)は1つの提言をした。ナバロン島南部の400フィート絶壁をよじのぼり潜入するというのだ。直ちに必要人員が集められた。登山家のキース・マロリイ大尉(グレゴリー・ペック)、元ギリシャ軍大佐スタヴロウ(アンソニー・クイン)、科学者のミラー伍長(デヴィッド・ニヴン)、ナイフの名人ブラウン無線兵(スタンリー・ベイカー)、ナバロン島生まれのパパディモス1等兵(ジェームズ・ダーレン)の5人を率いたフランクリン少佐は漁船に乗り嵐の夜、ナバロン島に向った。少佐は負傷したが一行は絶壁をよじのぼり島に上陸した。これを知った独軍の追求を逃れ一行は要塞めざして潜行する。山頂の古城で一行は男装の2人の女を捕まえる。1人はマリア(イレーネ・パパス)といいパパディモスの姉だった。もう1人の若い女はアンナ(ジア・スカラ)。2人ともレジスタンス運動に従っていたのだが、アンナは1度独軍に捕まり拷問され口がきけなくなっていた。一行は彼女たちを加え進んだが、マンドラコスの町で全員捕まった。しかしスキを見てゲシュタポの隊長を捕らえ、これを囮りに独軍の制服を着込み脱出した。しかし重傷のフランクリン少佐はそこへ残された。いよいよ要塞攻撃の日、一行は要塞の間近かに迫った。要塞破壊と同時にケーロス島の英軍救出に向かう英国艦隊が要塞の下を通ることになっている。猶予は許されない。ところが、いざというとき、爆弾のヒューズが何者かの手で破壊されていることを発見した。スパイがいる。それは意外にもアンナだった。彼女にほのかな愛情を抱いていたマロリイが彼女を銃殺した。一方、残されたフランクリン少佐は拷問で一切を白状、独軍はあわてて海岸線に防備を固めた。要塞攻撃の手はずが整った。スタグロウとパパディモスが要塞近くの町で騒動を起こす。そのスキにマロリイとミラーが大砲に爆薬をしかける。そしてアンナとブラウンがモーターボートを奪って、断崖の下で逃げてくる4人を助けるというのだ。すべてはうまくいった。駆逐艦が近づいたとき2門の大砲は轟然と爆破した。しかし、ブラウンとパパディモスは帰らなかった。そしてスタヴロウとアンナは再び抵抗運動をするため島へ戻った。




12-45. 動く標的

監督 ジャック・スマイト
出演 ポール・ニューマンローレン・バコールパメラ・ティフィンロバート・ワグナージャネット・リー
1966年・アメリカ (ワーナー・ブラザース)

解説
ロス・マクドナルドの同名の原作をウィリアム・ゴールドマンが脚色し 「第3の男」 のジャック・スマイトが監督したハードボイルド・アクション。撮影はコンラッド・ホール、音楽は 「いそしぎ」 のジョニー・マンデルが担当した。出演は 「逆転」 のポール・ニューマン、 「マドリードで乾杯」 のパメラ・ティフィン、 「バイ・バイ・バーディー」 のジャネット・リー、 「いつか見た青い空」 のシェリー・ウィンタース、 「エデンの東」 のジュリー・ハリス、 「求婚専科」 のローレン・バコール、 「ピンクの豹」 のロバート・ワグナーなど。製作には、ジェリー・ガーシュインとエリオット・カストナーが共同であたった。

ストーリー
私立探偵ハーパー(ポール・ニューマン)が、行方不明になった大富豪サンプスンの探索を、引うけたのは、友人の弁護士アルバートが、彼をサンプスン夫人に紹介したからだ。ハーパーは、仲のうまくいかない妻スーザン(ジャネット・リー)との離婚話もそこそこに、早速サンプスン邸を訪ねた。そこでハーパーは、サンプスン夫人の義理の娘ミランダに会い、彼女の案内で、ロサンゼルスにある、サンプスン専用の部屋を訪れ、そこで、かつての人気女優フェイ(シェリー・ウィンタース)の写真を見つけた。ハーパーの頭に直感がわいた。このフェイの夫トロイというのは、密入国させて金をもうけるしたたかな者なのだ。早速、ハーパーは、フェイの部屋に入り込み、彼女が莫大な金を持っていることを確かめた。そしてちょうど、そのときかかってきた電話で、事件がバー「ピアノ」に関係があることを知り「ピアノ」に乗りこんだ。だが、そこの芸人である歌手のベティは、ハーパーの質問に答えてくれず、あげくに、用心棒パドラーに、外へたたき出されてしまった。しかし、この事件で、ハーパーは、サンプスン誘拐の裏には、何らかのシンジケートがあることを確信した。その頃サンプスン夫人のもとには、現金50万ドルをよこせという脅迫状が舞いこんでいた。ハーパーは、アルバートに金を用意させ、保安官のスパナーとともに、指定の場所に行った。やがて乗用車とスポーツカーが前後して現れ、先に金を受け取った乗用車の運転手は殺され、金はなくなっていた。これら一連の事件をたぐっていったハーパーは、サンプスンが以前宗教団体の指導者クロードに寄付した。山頂の“雲の神殿”がシンジケートの本部になっていることをつきとめた。だがこの事件のかたわれ、ベティからサンプスンの居所を聞き出したものの、彼はすでに死んでいた。そして、犯人の確証をにぎるべき、証人たちは、次々とたくみに殺されていった。ハーパーは、殺人の現場に必ずといっていいほど、アルバートが居合せていたことが、きっかけで、サンプスン殺しの真犯人が友人であるアルバートであることをつきとめた。ハーパーに問いつめられ、告白した後、アルバートはハーパーに拳銃をつきつけた。が、さすがのアルバートにも、友人ハーパーを殺すことはできなかった。ハーパーを見るアルバートの姿に敗者の影が色こくにじみでていた。




12-46. ブーリン家の姉妹

監督 ジャスティン・チャドウィック
出演 ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソンエリック・バナジム・スタージェスマーク・ライアンス
2008年・イギリス、アメリカ (ブロードメディア・スタジオ)

解説
ハリウッドの人気スター女優2人が共演した美しくも悲しいラブ・ストーリー。同名ベストセラー小説を基に、イギリス王室の歴史に秘められた謀略と愛のドラマを描き出す。

ストーリー
16世紀、王族間において政略結婚が常識だった時代のイングランド。新興貴族のトーマス・ブーリン卿(マーク・ライアンス)には、アン(ナタリー・ポートマン)とメアリー(スカーレット・ヨハンソン)という二人の姉妹がいた。ブーリン家にとって、娘たちは一族の経済的、社会的繁栄をもたらすための大切な道具であった。その頃、世継ぎの男子を得られない王ヘンリー8世(エリック・バナ)は、世継ぎを生むための愛人を探していた。それを聞きつけたブーリン卿は、娘のアンをその座に据えようと画策。アンを王に引き合わせる。ところが、王が興味を示したのは妹のメアリーだった。既に結婚していたメアリーだったが、一族の繁栄のため、王の申し出を受け入れる。一方、深く傷ついたアンは秘密裏に結婚。だが、王の許可なく貴族が結婚することは認められていない時代。両親によって、アンはフランスへ送られてしまう。やがて、メアリーは王の子供を身篭る。それに合わせてブーリン一族は次々と出世してゆく。だが、メアリーが体調を悪化させ、ベッドで過ごす時間が多くなると、王は次第に興味を失ってゆく。危機感を抱いたブーリン卿は、王を繋ぎ止めるためにアンを呼び戻す。王との結婚を奪われたアンにとって、それは待ちに待った妹への復讐の機会だった。宮中に出入りするようになったアンは、洗練された振る舞いでたちまち王の心を捉える。王に迫られたアンは、男子を出産したメアリーを田舎へ送り、王妃との離婚を要求。離婚を認めないカトリック信徒の王は躊躇するが、姉との和解を願うメアリーが説得。遂にアンはイングランド王妃となる。だが、それは大きなスキャンダルに。アンが男子を出産しさえすれば丸く収まると考える王だったが、生まれたのは女子だった。そして二人目を流産すると、王はアンを反逆罪で捕らえる。死刑宣告されたアンを救うため、姉を信じるメアリーは自らの危険も顧みず王の下へ向かうが……。




12-47. 月夜の宝石

監督 ロジェ・ヴァディム
出演 ブリジット・バルドーアリダ・ヴァリスティーブン・ボイドペペ・ニエトマルチ・フレスノ
1958年・フランス、アメリカ (コロムビア)

解説
素直な悪女」 の監督ロジェ・ヴァディムと製作者ラウール・J・レヴィが再びブリジット・バルドーを出演させた作品。イヴ・モンタンの作詞者でもあるアルベール・ヴィダリーの原作 「月光の宝石商人」 を、 「空と海の間に」 のジャック・レミーとヴァディム自身が脚色したスペインの風光を背景にしたスリリングな愛欲のドラマである。撮影監督は 「素直な悪女」 のアルマン・ティラール、音楽は 「スパイ」 のジョルジュ・オーリック。 「この神聖なお転婆娘」 のバルドーの他 「海の壁」 のアリダ・ヴァリ 「日のあたる島」 のスティーブン・ボイド、スペイン俳優ペペ・ニエト、マルチ・フレスノ等が出演する。

ストーリー
叔母のフロランチーヌ(A・ヴァリ)と住むためスペインの山村によばれたユルシュラ・ディフォンテーヌ(B・バルドー)は、途中の村で車中にランベルト(S・ボイド)という男を救けた。彼の妹は叔母の夫リベラ(P・ニエト)に捨てられ自殺したという。家につくとランベルトは叔父を詰問したが、叩きのめされ、フロランチーヌの介抱をうけた。ユルシュラはなにか嫉ましさを感じた。やがて血をかきたてる南国の夜、叔母は夜ごとにランベルトを自室に誘いこむようになった。ある夜、彼は忍びあいの途中、庭で叔父リベラに会い、これを殺した。叔母の部屋を出る彼を見て、ユルシュラは、今は彼女も彼を愛していることを知った。叔父殺し捜査の警察の活動が始まり、手錠をかけて連行されようとしたランベルトは隙をみて逃走した。ユルシュラは自動車でこれを追い、荒れた水車小屋でヤスリをひろい手錠を切り、彼と国境の村へ逃れた。しかしランベルトの身の上を知ると村人達は二人を追出した。叔母フロランチーヌは警察とともに二人を追っていた。食料を求めて強盗を働いたランベルトは、危くユルシュラのもとに逃げ帰ったが、このままでは彼女を不幸にすることを考えて、密かに叔母フロランチーヌに連絡をとりユルシュラを引渡すことを申出た。国境への道を発見したと偽って彼は彼女を集落の一本道につれ出した。そこには叔母と警官が待っていた。彼の心を知ったユルシュラは帰るのを嫌がった。警官の姿が近くなる、危険を感じたランベルトが思い切って立去ろうとした時、警官の拳銃が一斉に火をふいた。しかし、弾をうけて倒れたのは、彼をかばったユルシュラだった。古びた石畳の上に息絶えて横たわる彼女を、呆然と見つめるランベルトの手に、再び冷たい手錠がかけられた。




12-48. ラルジャン

監督 ロベール・ブレッソン
出演 クリスチャン・パティカロリーヌ・ラングマルク・エルネスト・フルノーブリューノ・ノペールベアトリス・タブーラン
1983年・フランス、スイス (フランス映画社)

解説
一枚のニセ札から運命を狂わされた一人の若者の姿を描く。製作はジャン・マルク・アンショ。レオ・N・トルストイの原作(「にせ利札」<レオ・N・トルストイ全集。10巻>河出書房)を基に 「やさしい女」 のロベール・ブレッソンが監督・脚色・台詞を担当。撮影はエマニュエル・マシュエルとパスカリーノ・デ・サンティスが担当。音楽はバッハ(半音階的幻想曲とフーガ、ニ短調BWV903)曲を使用。出演はクリスチャン・パティ、カロリーヌ・ラングなど。

ストーリー
現代のパリ。高校生のノルベール(マルク・エルネスト・フルノー)は、父親にお金をもらおうとして断られ、借金を返せなくなり、クラスメートのマルシアル(ブリューノ・ラペール)に相談。彼はノルベールに一枚の500フラン札を渡すがそれはニセ札で、写真機店で安い額縁を買い女主人(ベアトリス・タブーラン)からツリを貰う。後にニセ札だと気づいた主人(ディディエ・ボーシイ)は妻をなじったが、ガソリンの集金に来た若い店員イヴォン(クリスチャン・パティ)に黙って支払った。それをカフェの昼食代に使おうとしたイヴォンは、カフェの店主と争って警察に通告された。イヴォンは刑事とともに写真機店に行き、潔白を証明しようとするが、主人はイヴォンの顔に見おぼえがないという。幼い娘と妻エリーズ(カロリーヌ・ラング)がいながら、獄中につながれるイヴォンは、店の若い店員リュシアン(ヴァンサン・リステルッチ)の偽証で、有罪になってしまう。リュシアンに金で感謝する店主。執行猶予となり失職したイヴォンは、銀行強盗に加わり再び逮捕され、3年の宣告で獄に入れられてしまう。出獄したら出直すと語るイヴォンにエリーズは黙って去ってゆく。一方、リュシアンは写真機店をはじめ次々と強盗を重ねていた。エリーズからの手紙で娘の病死を知るイヴォン。妻も去り自殺を計るイヴォン。そのころリュシアンが逮捕されイヴォンと同じ刑務所に入ってくるが、やがて脱獄する。刑務所を出たイヴォンは、世の中に復讐を誓い、夜泊ったホテルの主人と妻を殺し金を奪った。町でふと目のあった老婦人(シルヴィー・ヴァン・デン・エルセン)の後をつけ、婦人の世話をうけるイヴォン。殺人を告白するイヴォンに驚きの表情一つ見せない婦人。彼女は家族の面倒を一手に引き受け一人で働いている。夜、一家を次々に惨殺したイヴォンは、斧を手に婦人の室に入った。「金はどこに?」−−斧がふりあげられる。彼はカフェに居あわせた警察官達にホテルの殺人と今までの犯行を自白するのだった。




12-49. ミシシッピー・バーニング

監督 アラン・パーカー
出演 ジーン・ハックマンウィレム・デフォーフランシス・マクドーマンドブラッド・ドゥーリフR・リー・アーメイ
1988年・アメリカ (オライオン映画=ワーナー・ブラザース)

解説
公民権運動の嵐が吹き荒れる64年のミシシッピー州ジュサップを舞台に、3人の公民権運動家の失踪事件を捜査する2人のFBI捜査官の姿を通して、アメリカの南部における人種差別問題を描く。製作はフレデリック・ゾロとロバート・F・コールズベリー、監督は 「エンゼル・ハート」 のアラン・パーカー、脚本はクリス・ジェロルモ、撮影は 「ワールド・アパート」 のピーター・ビジュー、音楽はトレヴァー・ジョーンズが担当。出演は 「傷だらけの青春」 のジーン・ハックマン、 「最後の誘惑」 のウィレム・デフォーほか。

ストーリー
全米にフリーダム・サマー(自由の夏)が吹き荒れる64年6月、ミシシッピー州ジュサップの町で起きた3人の公民権運動家の失踪事件を重要視するFBIは、2人の腕きき捜査官を現地に派遣した。元郡保安官でたたきあげのルパート・アンダーソン(ジーン・ハックマン)とハーバード大出のエリート、アラン・ウォード(ウィレム・デフォー)、この全てに対照的で時には対立さえする2人に対し、町の人々は非協力なだけでなく敵意さえも明らさまにする。そして少しでも彼らに協力的な態度を見せた人々は、何者かに家を焼かれたり、リンチにあい、再び口を重く閉ざすのだった。遅々として捜査は進まず、大掛かりな遺体の捜査も行われたが、手掛かりひとつ見つけることができない。焦立つウォードに対しアンダーソンは、保安官スタッキー(ゲイラード・サーテイン)とその助手ペル(ブラッド・ダリフ)の仲間たちが事件に関わっているという確信を抱き、ペルの妻(フランセス・マクドーマンド)を訪ねる。アンダーソンは、夫とこの町に嫌悪している彼女から事件の糸口を探ることができるのでは、と感じていたが、その間にもフリーダム・サマーの行進に参加した黒人青年が瀕死の重傷を負うリンチをうけ、またある黒人の家が焼き打ちにあった。だがこの現場を目撃した1人の少年の証言から、3人の容疑者が裁判にかけられるが、結果は不平等を極め判決は無罪同然、その直後、町のあちこちで焼き打ち行為が起き、目撃証言をした少年の家も焼かれ、彼の父親はリンチにあい木に吊るされる。この事件をきっかけに、アンダーソンはペルの妻から彼が失踪事件に関わっていること、そして彼ら3人の遺体が埋められた場所などを聞き出すが、彼女はそのことを知ったペルにめった打ちにされ重傷を負う。怒りに逆上するアンダーソンをなだめるウォードは、やがて彼の提案するプロの脅し屋を雇い、陰で糸を引く町長を痛めつけて口を割らせる、という思いきった手段に同意する。そして次々と町長の口から明かされる事件に関与した人物たちの名前とその動機。ついに事件の核心は姿を見せた。しかしそれで全てが終わったわけではない。