4-1. 至上の恋

監督 ジョン・マッデン
出演 ジュディ・デンチビリー・コノリーアントニー・シャー
1997年・イギリス(松竹富士)

解説
英国史上最長の王位を誇るヴィクトリア女王(在位1837〜1900)の秘められた恋を描いたラヴ・ロマンス。監督は 「哀愁のメモワール」 のジョン・マッデン。脚本はジェレミー・ブロック。製作は 「従妹ベット」 のサラ・カーティス。製作総指揮はダグラス・レイ、アンドレア・コールダーウッド、レベッカ・イートン、ナイジェル・ウォールグリーン。撮影はリチャード・グレートレックス。音楽はスティーヴン・ウォーベック。美術は 「ある貴婦人の肖像」 のマーティン・チャイルズ。出演は 「眺めのいい部屋」「ハムレット」 のジュディ・デンチ、 「ポカホンタス」 (声優として)のビリー・コノリー、 「リチャード三世」 のアンソニー・シェールほか。

ストーリー
1861年。ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)は夫アルバート公を亡くし、3年もの長きに渡りワイト島のオズボーン宮に蟄居して喪に服した。滞った公務を処理すべく、政財界は公のスコットランド人従僕ブラウン(ビリー・コノリー)を悲嘆に暮れる女王の馬の世話係として宮に派遣。純朴な彼は女王の憔悴ぶりを目のあたりにして衝撃を受ける。中庭で白い馬と共に女王を待つブラウンの姿を何日もの間目にした女王は、連れ出されるように久々に戸外へと出る。規則を破って女王を外に連れ出したりする献身的なブラウンに、やがて女王は心を開くようになっていった。心ない周囲の動きもあったが、女王のために忠誠を尽くし続けるブラウンは女王の心に変化をもたらしていた。司祭にとまどう胸の内を明かす女王。いっぽう、ブラウンは彼に悪意を持つ人々のためにあらぬ誤解を受け苦しみ、ついに女王にその危害が及ぶことを恐れて辞職を願い出た。だが、女王は「私はあなたなしでは生きていけない」と告げて彼の手をとって口づけをする。ブラウンも女王の手に長く接吻を返すのだった。




4-2. 大いなる決闘

監督 アンドリュー・V・マクラグレン
出演 チャールトン・ヘストンジェームズ・コバーンバーバラ・ハーシー
1976年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
復讐に燃える男と引退保安官との戦いを描いた正統西部劇。製作はラッセル・サッチャーとウォルター・セルツァー、監督は 「ビッグケーヒル」 のアンドリュー・V・マクラグレン、脚本・原作はブライアン・ガーフィールド、撮影はデューク・キャラハン、音楽はジェリー・ゴールドスミスが各々担当。出演はチャールトン・ヘストン、ジェームズ・コバーン、バーバラ・ハーシー、クリストファー・ミッチャムなど。日本語版監修は岡枝慎二。デラックスカラー、パナビジョン。1976年作品。

ストーリー
1909年。開拓時代のアリゾナ地区。サム(チャールトン・ヘストン)は、鉄の意志と冷徹な頭脳の鬼保安官として鳴らした男であったが、年をとるに従い、暴力の世界がいやになり、遂に引退を決意した。彼は妻と死別し、娘スーザン(バーバラ・ハーシー)と暮している。彼の長い保安官時代に、ナバオ・インディアンと白人のハーフで、列車強盗の常習犯ザック(ジェームズ・コバーン)を逮捕した時、過ってザックの妻を殺したのが、サムのシコリとしていつまでも胸に残っていた。一方、アリゾナ地区刑務所にいるザックは、復讐の鬼となり、脱走の機会を待っていたが、遂にその機会がやって来た。ザックが脱走したのを知ったサムは、自分が保安官をやめようとやめまいと、奸智なザックに狙われるのを知った。だが、ザックも相手が並々ならぬ敵である事は知っている。両者の闘いは、いわば互いに死に賭したチェス・ゲームの対局であった。ザックは、まずサムの一人娘スーザンを誘拐し、サムを誘い出す手をうった。サムの追跡が始まる。スーザンに心を寄せる若者ハル(クリストファー・ミッチャム)と、ノエル保安官(マイケル・パークス)が助っ人に出た。一方、ザックには凶悪犯シーザーという味方がいる。アリゾナ山間地帯を、ザックに捕えられたスーザンの厳しい旅が続いた。サムは一行をやっと捜しだしたが、ザックの復讐は残忍をきわめた。まず、父親であるサムの目前で、スーザンを強姦しようとする。たえるハルだが、サムの銃口は、今にも火を吹かんばかり。彼は枯草に火を放ち、一面を炎の海とし、ザックをいぶり出そうとする。だが逆に、炎に巻かれたサムとハルは、目の前で強姦されるスーザンをどうにもできなかった。やがて、怨念にもえる男と男の宿命の対決は、白熱の銃撃戦の果て、ついにクライマックスの決闘へと迫っていった。(20世紀フォックス配給1時間40分)




4-3. エリザベス ゴールデン・エイジ

監督 シェーカル・カプール
出演 ケイト・ブランシェットジェフリー・ラッシュクライヴ・オーウェン
2007年・イギリス、フランス、 ドイツ(東宝東和)

解説
歴史大作 「エリザベス」 の9年ぶりの続編。前作に続き主演するケイト・ブランシェットが、せつない恋路を経てスペイン無敵艦隊との戦いにのぞむ、激動の時代の女王を熱演!

ストーリー
1585年。イングランド国王の娘として生まれたエリザベス(ケイト・ブランシェット)は女王の座を手にしたものの、宮中では依然陰謀が渦巻き、外からは世界列強が虎視眈々と侵攻を狙っていた。さらにスコットランドからは宿敵のメアリー女王(サマンサ・モートン)が逃亡してきて王位継承権を主張するなど、側近のフランシス(ジェフリー・ラッシュ)に守られながらも、心休まらない日々を送っていた。そんな彼女の前に、新世界から帰還したばかりの航海士ウォルター・ローリー(クライヴ・オーウェン)が現われる。次の探検の費用をエリザベスから引き出そうと考えた彼は、宮廷に入り込んで、新世界の可能性を熱心に語る。それは国外へ出たことのないエリザベスにとって未知の世界だった。やがてエリザベスは、知性と野性を兼ね備えたローリーに惹かれていく。一方のローリーも、最初は資金目的の宮廷詣でだったが、だんだんエリザベスに特別な感情を抱くようになる。しかし未婚のまま国家と添い遂げることを誓ったエリザベスにとって、これは禁じられた愛だった。そこでエリザベスは、侍女のベス(アビー・コーニッシュ)を自分の代わりにローリーに近づけ、彼を宮廷に通わせる口実にする。だがそのせいでローリーとベスは恋仲となり、やがて妊娠、結婚まで秘かに行っていた。それを知り、孤独感に打ちのめされ理性を失ったエリザベスは、ベスを遠ざけ、ローリーを投獄してしまう。そんな折、エリザベス暗殺を指示したかどによりメアリー女王が処刑されたことがきっかけで、スペインの無敵艦隊がイングランドに攻めてきた。最初はイングランドの劣勢だったが、エリザベスは自ら兵士として戦場に赴き、イングランド軍を勝利に導くのだった。




4-4. 夕日のギャングたち

監督 セルジオ・レオーネ
出演 ロッド・スタイガージェームズ・コバーンロモロ・ヴァッリ
1971年・イタリア(ユナイト)

解説
二十世紀初頭のメキシコを舞台に、アイルランド人の革命家とメキシコ人山賊の活躍を描く。製作はフルヴィオ・モルセッラ、監督はセルジオ・レオーネ、レオーネの原案を彼自身とルチアーノ・ヴィンセンツォーニ、セルジオ・ドナーティが脚色化した。撮影はジュゼッペ・ルゾリーニ、音楽はエンニオ・モリコーネが各々担当。出演はロッド・スタイガー、ジェームズ・コバーン、ロモロ・ヴァッリ、マリア・センティ、フランコ・グラツィオーシなど。日本語版監修は清水俊二。テクニカラー・テクニスコープ。

ストーリー
一九一三年のメキシコ。陽気で人の好い山賊の首領ファン・ミランダ(R・スタイガー)は、サン・フェリペに通じる街道で、駅馬車を襲った後オートバイで通り合わせたアイルランド人ジョン・マロリー(J・コバーン)を捕えた。彼は、アイルランド共和国の脱走兵でやたらダイナマイトを振り廻すところから、イギリス政府のおたずね者になっていた。メサ・ベルデの銀行を襲撃しようとしているファンにとって、彼と組めば鬼に金棒だ。早速二人はメサ・ベルデ行の列車に乗り込んだ。途中、ファンは警察に見つかり逮捕されそうになったところを、謎の人物、外科医のビレガ博士(R・バッリ)によって助けられた。メサ・ベルデに着いてみると、銀行は軍隊によって警護されていたが、計画を敢行し襲ってみると、中には政治犯が監禁されていた。パンチョビラやサパタの革命軍に加わっているビレガ博士に引っかかってしまったのだ。ファンは革命軍の英雄として祭り上げられたものの、冷酷なグチエレス大佐(D・アントワン)率いる政府軍によって追われる身となってしまった。やがてグチエレスの手によってビレガ博士が捕えられ、激しい拷問の結果、何千という革命の指導者たちが死ぬことになった。一方、山の隠れ家に戻ったファンが目撃したものは、老いた父ニーノ、そして可愛い六人の息子がグチエレスによって虐殺されている姿だった。怒りに燃え復讐を決心したファンは、待ち伏せていたグチエレスに捕えられたが、ジョンに救出された。アメリカへ行こうと決めた二人は列車に飛び乗った。その列車が革命軍に攻撃された時、ファンは逃亡中の総督ドン・ハメイ(F・グラツィオーシ)を殺し、またまた革命軍の英雄に祭り上げられてしまった。もうアメリカの銀行を襲うどころではない。パンチョビラがファンにほれ込んだのだ。そんな時、ビレガが革命軍に戻ってきてジョンをびっくりさせた。彼は、ジョンに裏切り行為を目撃されていたとは知らないのだ。パンチョビラは、ファンとジョンに、グチエレスと千人の部下を運ぶ列車の襲撃を命じた。ジョンはビレガを連れてダイナマイトを積んだ列車に乗り込んだ。それをグチエレスの列車に衝突させようというのだ。二台の列車が近づき、あわやという瞬間、ジョンは飛びおり、ビレガを乗せた列車は轟音をたてて衝突した。そこへファンの率いる一隊が到着し、後始末を始めた。硝煙の中からファンが現われ、二人が駆けよろうとした時、銃声が響き、ジョンの躯がくずれ落ちた。涙にくれるファンにほほえみかけるジョンは上着のポケットに目をやった。そこにはダイナマイトが二本残っていた。「お願いだ」、ファンは導火線に火をつけた。赤い火花は空を彩り、それはジョンが夢みたであろう最も大きな、美しい、見事な爆発であった。




4-5. 大いなる男たち

監督 アンドリュー・V・マクラグレン
出演 ジョン・ウェインロック・ハドソントニー・アギラ
1969年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
南北戦争直後の西部を舞台に、元北軍と南軍の兵士がくりひろげる、男と男のドラマ。監督はフォードの後継者と目される 「バンドレロ」 のアンドリュー・V・マクラグレン。また、スタンリー・L・ホーの短編小説の脚色を 「アルフレッド大王」 のジェームズ・リー・バレットが担当。撮影はウィリアム・H・クローシア、音楽ならびに指揮はヒューゴー・モンテネグロ、コスチューム・デザイン担当はビル・トーマス。なお、製作には 「その男ゾルバ」 のロバート・L・ジャックスが当たっている。出演は、この作品が俳優生活40周年のジョン・ウェイン、 「北極の基地・潜航大作戦」 のロック・ハドソン、メキシコの人気俳優トニー・アギラ、プロ・フットボールから映画入りしたロマン・ゲブリエルとマーリン・オルセン、また女優陣は 「バットマン(1966)」 のリー・メリウェザー、新人メリッサ・ニューマン、マリアン・マッカーゴ。

ストーリー
ヘンリー・トーマス(ジョン・ウェイン)は元北軍の大佐であった。しかし南北戦争終了と同時に牧童となり現在は自分の忠実な部下とインディアンの養子のブルー・ボーイ(ロマン・ゲブリエル)を連れて3000頭の馬をマキシミリアン皇帝に渡すべくメキシコに向かっていた。また、南軍に所属していたラングドン大佐(ロック・ハドソン)は、再起を計るべく、妻のマーガレット(リー・メリウェザー)、娘のシャーロット(メリッサ・ニューマン)、兄の未亡人アン(マリアン・マッカーゴ)、ビッグ・ジョージ(マーリン・オルセン)ら、総勢百余名を連れて、反乱軍と戦うマキシミリアン皇帝のもとへ向かった。ラングドン大佐の一行が、リオ・グランデ河を渡った場所にキャンプを張った時、山賊に襲われた。しかしトーマス大佐の事前の連絡とブルー・ボーイら、大佐の仲間の活躍で危機を脱することができた。この時、両大佐の間には、熱い男の血が通い合い、ブルー・ボーイとシャーロットの心には、淡い恋が芽生えた。そして、ラングドン大佐が招いた、独立際のパーティで、殴り合いという荒々しい友情表現を通して、一層彼らの心は固く結び合った。いよいよデュランゴが近づいて来た。トーマスはマキシミリアンの使者と会い、馬を渡す準備をした。ラングドンは、ロハス将軍(トニー・アギラー)と会見した。だが、彼は反乱軍の一味であり、一行は全員捕虜になってしまった。そして、ロハスは、トーマスが持っている馬を、自分たちの方へ、ただで譲るよう説得すれば、全員の命を助ける、とラングトンに、厳命するのだった。ラングドンは、元南軍大佐の誇りを捨ててトーマス一行のもとへ馬を走らせた。事情を聞いたトーマスらは無言のまま承知した。途中、マキシミリアンの命をうけたフランス兵の阻止をけちらし、トーマスたちは3000頭あまりの馬を暴走させデュランゴへ乗り込んだ。そして、処刑寸前の人々を救い、意気揚々と故郷へ引き上げて行った。




4-6. 男の出発

監督 ディック・リチャーズ
出演 ゲイリー・グライムスビリー・グリーン・ブッシュルーク・アスキュー
1972年・アメリカ(フォックス)

解説
カウボーイになることを夢見る16歳の少年が、身を持って体験していく現実の厳しさを描くウエスタン。製作はポール・A・ヘルミック、監督は写真家であるディック・リチャーズでこれがデビュー作となった。リチャーズの原案をエリック・バーコビッチとグレゴリー・プレンティスが共同で脚本化した。撮影はローレンス・エドワード・ウィリアムス、ラルフ・ウールジー、音楽はトム・スコット、ジェリー・ゴールドスミス、編集はジョン・F・バーネットが各々担当。出演はゲイリー・グライムス、ビリー・グリーン・ブッシュ、ルーク・アスキュー、ボー・ホプキンス、ジョフリー・ルイス、ウエィン・サザーリン、ジョン・マクリアム、マット・クラーク、レイモンド・ガス、アンソニー・ジェームズなど。

ストーリー
南北戦争後のテキサスのある村−−。16歳のベン・モックリッジ(ゲイリー・グライムス)はカウボーイになることを夢見ていた。彼は、母親に内緒で買った拳銃を友達に見せ、その感触を楽しんだ。その頃、フランク・カルペッパー(ビリー・グリーン・ブッシュ)をボスとするカウボーイたちが、テキサスからコロラド州フォード・ルイスに牛を送る用意をしていることを知り、どんな仕事でもするからカウボーイとして雇ってほしいと泣きついた。カルペッパーはコック(レイモンド・ガス)の助手として彼を雇い、出発した。第1の事件はすぐ起こった。キャンプに4人組の牛泥棒が入り、牛を暴走させ、20頭を盗んだのだ。カルペッパーは早速牛泥棒を追い、激しいガンファイトの末、倒したが3人の部下を失った。手不足を感じた彼は、カスティーゴの村に行ってラス・コールドウェル(ジョフリー・ルイス)にあい、牛輸送の手伝いを依頼する用事をベンにいいつけた。ベンは喜んででかけたが、途中、2人の賊に襲われ大事な拳銃と馬を奪われてしまった。歩いて村に辿りついたベンは、コールドウェルに用件を伝え、彼の仲間のルーク(ルーク・アスキュー)とブリック(ボー・ホプキンズ)、ミズーラ(ウエィン・サザーリン)らと共に出発した。カルペッパーは、ベンが馬と拳銃を巻き上げられたことを聞くと、賊の居所をつきとめ、取り戻してくれた。ある夜、ベンは自ら進んで見張りを引き受けたのはよかったが、馬泥棒に襲われ、ぶりのめされた上、馬をごっそり盗まれてしまった。ベンが役に立たず足でまといになるばかりと考えたカルペッパーは、コールドウェルと仲間を近くの村へ馬を買わせにやるついでに、ベンもつれて行き駅馬車の切符を買って、親許に帰してくれと頼んだ。ベンに好意を持っていたルークは、別れる前に彼に酒を飲ませてやろうと考え、仲間と酒場に入った。その酒場で、馬泥棒を発見したベンはコールドウェルに知らせた。やがて双方の拳銃が火をふき、ベンも賊の1人を倒した。馬も無事に戻り、再びベンはカウボーイたちの仲間入りした。一行は、暑い乾燥地帯を超えるとやがて川にめぐりあった。牛たちは緑の草と水を見ると柵を破って突進した。カルペッパーは牧場に侵入した償いをするために牧場主であるピアース(ジョン・マクリアム)にあったが、腹黒いピアースは法外な賠償金を要求してきた。カルペッパーは牛をコロラドへ無事に送ることを思い、屈辱を忍んで金を払ったが、相手の弱みにつけ込んだピアースは、さらに武器を捨てていくことを命じた。しばらく御一行が肥沃な谷間に入ると、ナサニエル(アンソニー・ジェームズ)の率いる教団にあった。彼らは長い旅を続けていたが、ようやくここを約束の地と定めて定住することになっていた。だがピアースが再び現われ、、自分の縄張りであるからでていけと命じた。ベンは教団の人たちに深い同情を寄せ、ここに踏みとどまり、彼らに協力する決心を固めた。一行はベンを残して出発したがコールドウエルとルーク、ブリック、ミズーラもベンの所に引き返した。彼らは教団の人に協力することを申しでたが、平和主義を遵奉するナサニエルは拒絶した。やがて戦いは始まり優勢なるピアース側を迎え撃つのはベンと4人のカウボーイだけだった。激しい銃撃戦の末、4人のカウボーイは死に、ピアース側も全滅した。生き残ったベンは、教団がここに住みつくよう勧めたが流血によって汚れた土地は、もはや約束の土地ではないと、と拒絶した。ベンはコールドウェル以下3人のカウボーイの遺体を棄てていくことはできなかった。4人の亡骸を葬ったベンは、大切な拳銃を捨て、母親の許に帰ろうと思った。




4-7. Q&A

監督 シドニー・ルメット
出演 ティモシー・ハットンニック・ノルティアーマンド・アサンテ
1990年・アメリカ(日本ヘラルド映画)

解説
刑事による正当防衛殺人を捜査する若き正義漢の検事補が、警察の腐敗の壁にぶつかって苦闘する姿を描く社会派ドラマ。エグゼクティヴ・プロデューサーはパトリック・ワックスバーガー、製作はアーノン・ミルチャンとバート・ハリス、エドウィン・トレスの原作を基に 「ファミリービジネス」 のシドニー・ルメットが監督・脚本、撮影はアンジェイ・バートコウィアク、音楽はルーベン・バーデスが担当。出演はティモシー・ハットン、ニック・ノルティほか。日本版字幕は古田由紀子。カラー、ビスタサイズ、ドルビーステレオ。1990年作品。

ストーリー
殉職した模範刑事の息子で地方検事補アル・ライリー(ティモシー・ハットン)は、初仕事として、ベテラン刑事マイク・ブレナン(ニック・ノルティ)による麻薬売人射殺事件のQ&A(尋問調書)を、黒人のチャッピー、プエルトリコ人のバレンタインの2人の刑事と協力して作ることになる。しかし目撃者の1人、プエルトリコ系麻薬ディーラーのボビー・テキサドール(アーマンド・アサンテ)の証言は、正当防衛を主張するブレナンと食い違うものだった。疑惑を持ったアルは、かつての恋人で今はテキサドールの愛人となっているナンシー・ボッシュ(ジェニー・ルメット)から何とか真実を聞き出そうとするが、黒人の父を持ち、アルの人種差別的言動により去ったという過去にしこりを持つナンシーはそれを拒むのだった。一方、ブレナンは重要な証人のオカマのロジャーを捜し出して口封じをしようとするが、機先を制したテキサドールがロジャーを連れ去る。アルもその後を追い、そこでブレナンが麻薬組織と黒いつながりを持っていることを知るが、その直後にテキサドールとロジャーの乗ったヨットはブレナンによって爆破される。アルの部下のチャッピーと、バレンタインを抱き込もうとするが失敗して、ついに追い詰められ逆上したブレナンはアルのもとに乗り込んでくるが、撃ち合いの末倒れる。が、真の黒幕が自分の上役の検事課長のケヴィン・クインであることを既に知ったアルは彼を告発しようとするが、先輩検事のブレーメンフェルドは、検事総長に立候補しようとしているクインは全ての証拠をもみ消すことができる立場にあるから、そんなことをしても無駄だと忠告する。なすすべもなく怒りに震えるアル。しかしいつかきっと自らの手で真実を暴く(という)決意を胸に、ナンシーのもとへ結婚の申し込みに向かう。(日本ヘラルド映画配給*2時間15分)




4-8. プラトーン

監督 オリヴァー・ストーン
出演 トム・ベレンジャーウィレム・デフォーチャーリー・シーン
1986年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
ベトナム戦争の最前線を舞台に、地獄のような戦場と兵士達の赤裸々な姿を描く。製作はアーノルド・コペルソン、エグゼクティヴ・プロデューサーはジョン・デイリーとデレク・ギブソン、監督・脚本は 「ミッドナイト・エクスプレス」「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」 の脚本を執筆したオリヴァー・ストーン、撮影はロバート・リチャードソン、音楽はジョルジュ・ドルリューが担当。出演はチャーリー・シーン、トム・ベレンジャーほか。

ストーリー
クリス(チャーリー・シーン)が、ベトナムへやって来たのは1967年。大学を中退してまでベトナムを志願したのは、次々と徴兵されていく同年代の若者たちのほとんどが、少数民族や貧しい者たちだった事に対する義憤からだった。だが、いきなり最前線の戦闘小隊(プラトーン)に配属されたクリスにとって、戦争の現実は彼の想像をはるかに超えた苛酷なものだった。その小隊の隊長バーンズ(トム・ベレンジャー)は冷酷非情、顔の深い傷痕が証明するように過去何度も死線をくぐりぬけてきた強者だ。班長のエリアス(ウィレム・デフォー)は戦場にありながらも無益な殺人を犯してはならないという信念の持ち主。その他、様々な個性を持つ兵士たち13人の小隊は、人間の最大の罪悪といえる戦争の真っ只中に放り込まれる。ある日、ベトコンの基地と思われる小さな村を発見した。バーンズは真実を吐かない村民を銃殺した。バーンズの非情さに怒りを爆発させたエリアスは殴りかかった。「軍法会議にかけてやる」と叫ぶエリアスと、彼の平和主義的言動に心良く思っていなかったバーンズの対立は決定的となった。そして――大規模なベトコンの大部隊との戦闘が間近かに迫ったある日。エリアスが単身、斥候に出た時、後を追ったバーンズが卑劣にも射殺してしまう。やがて、ベトコンの大部隊と凄まじい接近戦が始まった。圧倒的な人海戦術の前に次々と倒れていく戦友たち。悪夢のような一夜が明けた。傷つきボロボロになったクリスの前に、バーンズが息も絶え絶えに倒れていた。エリアス射殺のことを気づいていたテイラーは、バーンズに向けて怒りの引金を引いた。




4-9. ミッシング

監督 コスタ=ガヴラス
出演 ジャック・レモンシシー・スペイセクメラニー・メイロン
1982年・アメリカ(ユニヴァーサル映画)

解説
73年9月南米チリで起きたクーデターの最中、失踪したアメリカ青年の事件をモデルにした82年度カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。製作はエドワード・ルイスとミルドレッド・ルイス、製作総指揮はピーター・グーバーとジョン・ピータース、監督は 「Z」 のコスタ=ガブラス。トームス・ハウザーの原作に基づき、コスタ=ガブラスとドナルド・スチュワートが脚色した。撮影はリカルド・アロノヴィッチ、音楽はヴァンゲリス、美術はピーター・ジェイミソン、編集はフランソワーズ・ボノが各々担当。出演はジャック・レモン、シシー・スペイセク、メラニー・メイロン、ジョン・シェア、チャールズ・チオッフィなど。

ストーリー
73年、チャールズ・ホーマン(ジョン・シェア)と妻のべス(シシー・スペイセク)は、世界の現状を自らの目でみようと旅に出て、今は南米某国に住んでいた。チャールズはそこで小説を書きつつ、友人のフランクや、デイビッドが関わる「フィン」という非営利のラディカルな雑誌の翻訳も手伝っている。8月末、ニューヨークから、もう1人の友人テリー(メラニー・メイロン)が来た。チャールズは彼女の帰国前日、リゾート地、ビーニャ・デル・マールヘ日帰り旅行に出かけ、その夜、クーデターが起こった。世界初の自由選挙による人民政府が、軍によって覆されたのだ。ビーニャで足止めをくった2人は、朝の食卓でバドコックというアメリカ人と出会う。海軍の要請で来てると口をすべらす男。町には、なぜかアメリカ人が多く、軍服姿も目立つ。メモをとり出すチャールズ。結局2人は、米軍関係の上層部のタワー大尉(チャールズ・チオッフィ)に送られ、戒厳令下の首都に帰り、ホテルに1泊後、ベスの元に帰った。往来には死体が転がり、検問所が数カ所おかれている。空港は閉鎖され、チャールズとテリーは、記者のニューマンに会い、ビーニャのアメリカ人の事は忘れた方がいいと忠告され、チャールズはホテルの前でテリーと別れた。一方、フランクたちの様子を見に行ったベスは、銃声の行きかう街角で一夜を明かし、帰宅すると、家は荒れ放題で、夫の姿はなかった。チャールズの失踪を、べスは義父であるニューヨークのビジネスマンで、地位と財力に恵まれたエドワード・ホーマン(ジャック・レモン)に知らせる。1人息子の失踪に呆然となり、ホーマンは南米某国へ飛んだ。出迎えのベスに冷たい態度をとるホーマン。大使館に捜索を依頼するがアテにならないまま、2週間が過ぎ、主義主張、生き方の異なるホーマンとベスは反発し合う。しかし、領事パトナムを始め、大使館側は「友人のリストを出せ」と迫るばかりで、近所の人の話ではチャールズは彼らの家から軍に拘引され、政治犯が収容されているスタジアムに連れていかれたらしいとの情報から、ホーマンとベスの間のわだかまりは消えていく。病院まわりをし、スタジアムにも行く2人。アメリカの陰謀の影がちらつき出した。ある日、ニューマンの案内で難民の1人パリスからチャールズらしき囚人を見たとの情報を得、死体置場で射殺されたフランクの死体を発見。次の日、ホーマンはフォード財団で息子の死を知る。拉致された3日後にスタジアムで処刑されたというのだ。怒りを爆発させたホーマンに、大使は、息子さんは首を突っこみすぎたというだけだった。ベスと共にアメリカに帰国したホーマンは、ヘンリー・キッシンジャーを含む11人の公人を息子の死を共謀・放置したかどで告訴した。スタジアムの壁に埋められたチャールズの遺体は7カ月後に戻ってきたが、検死は不可能な状態。係争数年を経て、訴えは証拠不十分で却下された。




4-10. シャレード  

監督 スタンリー・ドーネン
出演 ケーリー・グラントオードリー・ヘップバーンウォルター・マッソー
1963年・アメリカ(ユニヴァーサル)

解説
連続殺人をめぐってのミステリー・コメディ。製作・監督は 「パリの恋人」 のスタンリー・ドーネン、脚本はピーター・ストーン、撮影はチャールズ・ラング。音楽は 「ティファニーで朝食を」 でオスカーを獲得した作曲ヘンリー・マンシーニ。出演者は 「噂の二人」 のオードリー・ヘップバーン、 「ミンクの手ざわり」 のケーリー・グラント、 「脱獄」 のウォルター・マッソー、ジョージ・ケネディ、 「大脱走」 のジェームズ・コバーンなど。オードリーの衣裳はジヴァンシー、タイトルデザインをモーリス・バインダーが担当した。

ストーリー
フランスの冬の観光地。レジーナ(オードリー・ヘップバーン)はフランスの友達とスキーを楽しんでいた。彼女は夫との離婚を決意している。彼女はそのスキー場で偶然ピーター(ケーリー・グラント)と知り合い、強く心をひかれた。パリのアパートに帰った彼女は夫の殺害を知らされ唖然とした。夫の葬儀のとき、会葬者の中に見知らぬ3人の男ーペンソロー(ジェームズ・コバーン)ギデオン(ネッド・グラス)スコビー(ジョージ・ケネディ)がいた。大使館で彼女は情報部長に、夫は戦時中、会葬に来た男たちと共謀して25万ドルを隠匿、戦後山分けをすることになっていたが、夫はそれを裏切り金を持って逃げるところを殺された、政府のお尋ね者だったと聞かされた。レジーナはペンソローやギデオンに脅迫される。スコビーが彼女の部屋に侵入したとき、レジーナの悲鳴を聞いてピーターが窓づたいに逃げる彼を追い、ある部屋につづいて飛び込んだ彼は意外にも例の3人に挨拶した。彼も仲間の1人か。レジーナと、ほかの男たちは、誰もが互いに信じられなくなり彼らは申し合わせて互いに相手の部屋を捜索することにした。やがて、ピーターの部屋でスコビーが死体となって発見された。そして、エレベーターの中でギデオン、自分の部屋でベンスロー、……レジーナはピーターが犯人なのか、と疑うが話は二転三転して、ピーターは軍の秘密捜査官であり25万ドルの行方を求めて泥棒紳士になっていたことで結末を告げる。勿論、行方不明の金は発見されたことは言うまでもあるまい。




4-11. おしゃれ泥棒 

監督 ウィリアム・ワイラー
出演 オードリー・ヘップバーンピーター・オトゥールイーライ・ウォラック
1966年・アメリカ(20世紀フォックス)123分

解説
ジョージ・ブラッドショウの原作を 「ピラミッド(1955)」 のハリー・カーニッツが脚色し 「コレクター」 のウィリアム・ワイラーが演出したオトナのコメディー。撮影は 「シャレード」 のチャールズ・ラング。音楽はジョニー・ウィリアムス(2)が担当。主演に 「パリの恋人」 のオードリー・ヘップバーン、 「アラビアのロレンス」 のピーター・オトゥール。彼らを中心に 「ファニー」 のシャルル・ボワイエ、 「トム・ジョーンズの華麗な冒険」 のヒュー・グリフィス、 「青年」 のイーライ・ウォラックらヴェテランが絡む。製作は 「ピクニック」 のフレッド・コールマー。

ストーリー
シャルル・ボネ(ヒュー・グリフィス)は美術の愛好家であり収集家である。また美術品を美術館に寄附する篤志家でもある。さらに時々はコレクションの一部を競売に出す。彼のいうところによると、それらの美術品は彼の父が買い集めた遺品だというが、誰もコレクションを見た人はいない。実をいえば、ボネは偽作の天才なのだ。ブローニュの森の近くにある彼の大邸宅内には、秘密のアトリエがあって、彼は自ら偽作をしているのだ。彼には1人娘のニコル(オードリー・ヘップバーン)があるが、彼女は父親の仕事を止めさせようと、いつも胸を痛めている。パリ一の美術商ド・ソルネ(シャルル・ボワイエ)は、得意客のボネが、どうしてあんなにコレクションがあるのか、いつも不思議に思っていた。もしかするとあの傑作はニセモノでは……というわけで、私立探偵シモン・デルモット(ピーター・オトゥール)に万事を頼んだ。ところがヘマなシモンはニコルに見つかり、苦しまぎれに自分は泥棒だ、といったが、何故かニコルは彼を警察に引き渡さなかった。ボネが所有している美術品中の逸品はチェリーニのビーナスだが、彼はそれを美術館に出品するという。しかし、もし偽作だと分かったら大変と、ニコルはシモンに頼んでまんまと盗み出してしまった。ここにリーランド(イーライ・ウォラック)というアメリカの美術収集家がいた。彼はビーナス欲しさに政略結婚を考え、ニコルと婚約を結んだ。そしてド・ソルネのあっせんでシモンと会見したが、シモンは3つの条件を出した。第1は売価が100万ドル、第2はすぐに国外へ持ち出すこと、第3はニコルとの婚約を取り消すことー。ビーナスさえ手に入ればと、リーランドはすぐにこの条件を承知。うまく100万ドルをせしめたシモンは、いつしか恋仲になったニコルと駆け落ちしてしまった。




4-12. ヒトラーの贋札

監督 ステファン・ルツォヴィツキー
出演 カール・マルコヴィクスアウグスト・ディールデヴィッド・シュトリーゾフ
2007年・ドイツ、オーストリア(クロックワークス)

解説
ナチス・ドイツによる紙幣贋造事件。その秘密作戦に協力せざるをえなかったユダヤ人技術者たちの葛藤や苦悩をスリリングに映し出す、実話に基づく歴史ドラマ。

ストーリー
第二次世界大戦終結直後、モンテカルロの一流ホテル。札束が入ったスーツケースを持ったサリー(カール・マルコヴィクス)が入ってくる。1936年、ベルリン。サリーはパスポートなどを偽造する贋作師で、犯罪捜査局の捜査官ヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)に捕らえられる。サリーはマウトハウゼン強制収容所に送られるが、彼のスケッチが親衛隊隊長に気に入られ、ナチスお抱えの画家になる。ある日彼は、ザクセンハウゼン強制収容所に移送される。そこではヘルツォークが極秘任務、囚人に贋ポンド紙幣を大量生産させる「ベルンハルト作戦」を指揮していた。贋札工場は隔離され、厚待遇が用意されていた。そこでサリーは、ブルガー(アウグスト・ディール)やコーリャらと共に、完璧な贋ポンド紙幣を作り出す。ある日、アウシュヴィッツから送られてきた古紙から、仲間の子供たちのパスポートが見つかる。それは子供たちの死を意味していた。彼らは自分たちがナチスに協力し、同胞を苦しめているという現実に直面した。ブルガーは決起を促すが、サリーは相手にしなかった。彼らの次の任務は贋ドル紙幣の生産だった。それにはブルガーの技術が必要だったが、彼は協力しない。ヘルツォークは、4週間以内に成功しなければ見せしめに5人を銃殺すると宣告する。作業員たちはブルガーを密告するべきだとサリーに訴えるが、サリーは拒否する。そんな中、コーリャが結核に侵される。サリーは、国外逃亡を企てたヘルツォーク一家のパスポートを偽造し、薬を手に入れる。贋ドル紙幣は期限までに完成した。しかしコーリャは病気が親衛隊にばれ、感染防止のために銃殺される。数日後、作業は停止され、機材が運び出される。連合軍が迫ってきていたのだ。親衛隊が去った夜、ヘルツォークは、隠していた贋ドル紙幣を取りに戻る。それを見つけたサリーはヘルツォークから銃を奪い、撃つ。翌朝、囚人たちによって工場の扉が破られる。再びモンテカルロ。サリーはカジノでわざと負け続けるが……。




4-13. アビエイター

監督 マーティン・スコセッシ
出演 レオナルド・ディカプリオケイト・ブランシェットケイト・ベッキンセール
2004年・アメリカ(松竹、日本ヘラルド)

解説
マーチン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオが組んだ話題作。'30〜'40年代に映画と航空業界で成功した富豪ハワード・ヒューズの波乱の半生を通し、その人間像に迫る。

ストーリー
1927年、21歳の青年ハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)は、ハリウッドへ単身飛び込み、父の遺産をすべて注ぎ込んで航空アクション映画「地獄の天使」の製作に着手。30年にそれが完成すると、彼は一躍ハリウッド・セレブリティの仲間入りを果たす。まもなくハワードは、人気女優のキャサリン・ヘップバーン(ケイト・ブランシェット)と恋に落ちる。一方で、たくさんの話題の映画を世に送り出し、また飛行機会社を設立して、自ら操縦桿を握ってスピード記録を次々と更新。人生の絶頂期を謳歌するかに見えたハワードだったが、夢にのめり込み過ぎた結果、やがてキャサリンと破局。ハワードは次なる恋の相手に15歳の新人女優フェイス・ドマーグ(ケリー・ガーナー)を選んだが、ハリウッド一の美女と讃えられるエヴァ・ガードナー(ケイト・ベッキンセール)との仲に彼女が嫉妬し、ゴシップ誌の餌食となる。そして自らデザインした偵察機のテスト飛行を行なったハワードは、墜落して炎上する大事故を起こす。奇跡的に一命を取り止めたものの、米空軍との契約を打ち切られた開発中の巨大飛行艇、ハーキュリーズについてFBIの強制捜査が入り、精神に異常を来していく。それでも裁判を乗り切った彼は、ハーキュリーズの完成に向けて力を注ぐ。そして47年、いよいよハーキュリーズのテスト飛行。結局これ一回限りとなる飛行を敢行し、ハワードは幼い日の自分のことを思い出すのだった。




4-14. ノー・マンズ・ランド

監督 ダニス・タノヴィッチ
出演 ブランコ・ジュリッチレネ・ビトラヤツフィリプ・ショヴァゴヴィッチ
2001年・フランス、イタリア、ベルギー、イギリス、スロベニア(ビターズ・エンド)

解説
アカデミー賞外国語映画賞に輝くなど世界で絶賛された異色戦争映画。ボスニア紛争中にいがみ合う男たちの不条理な運命を、皮肉めいた笑いを交えてスリル満点に描き出す。

ストーリー
1993年6月、霧の中で道に迷ったボスニア軍兵士のチキ(ブランコ・ジュリッチ)は、ボスニアとセルビアの中間地帯ノー・マンズ・ランドの塹壕にたどり着いた。敵の生存者を確かめるため、セルビア軍兵士のニノ(レネ・ビトラヤツ)と老兵士(ムスタファ・ナダレヴィッチ)がそこにやってくるが、チキは老兵士を殺し、ニノにも怪我を負わせた。そしてやっかいなことに、老兵士が死体だと思って下にジャンプ型地雷を仕掛けてしまったツェラ(フィリプ・ショヴァゴヴィッチ)が生きていた。彼が動くと、地雷が爆発してしまう。止むを得ず、この状況から抜け出すために協力しあうチキとニノ。やがて心を通わせる二人だったが、助けにきたマルシャン軍曹(ジョルジュ・シアティディス)たちと一緒に塹壕を離れようとしたニノの足をチキが銃で撃ち、再び一触即発の状態に戻る。やがてマルシャン軍曹とテレビ記者のジェーン(カトリン・カートリッジ)が協力し、マスコミの力を使って中々動こうとしなかった国連防備軍を動かすことに成功。しかしツェラの下の地雷を撤去することはできなかった。しかもマスコミが騒ぐ中、チキはニノに向かって発砲。同時に防備軍がチキを射殺。そして防備軍は、地雷を撤去したという虚偽の発表をし、マスコミと共に塹壕から立ち去る。塹壕にはツェラ一人が残されるのだった。




4-15. 青い珊瑚礁

監督 ランダル・クレイザー
出演 ブルック・シールズクリストファー・アトキンズレオ・マッカーン
1980年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
南太平洋の大自然を舞台に、ある孤島に流された男の子と女の子がやがて成長し大人になっていく過程を描く。製作・監督は 「グリース」 のランダル・クレイザー、共同製作はリチャード・フランクリン。ヘンリー・ドゥビア・スタグプールの原作を基にダグラス・デイ・スチュアートが脚色。撮影はネストール・アルメンドロス、音楽はバジル・ポールドゥリス、編集はロバート・ゴードンが各々担当。出演はブルック・シールズ、クリストファー・アトキンズ、レオ・マッカーン、ウィリアム・ダニエルス、エルバ・ジョゼフスン、グレン・コーハンなど。

ストーリー
南太平洋の広大な海上を一隻の帆船がゆったり進行していた。その船内にはアーサー(ウィリアム・ダニエルス)と8歳になる息子のリチャード(グレン・コーハン)、従妹で7歳のエミリーン(エルバ・ジョゼフスン)がいた。ある日、その船内が火事で突然燃え出し、リチャードとエミリーンは、アーサーとはぐれ、料理番のパディ(レオ・マッカーン)と3人だけがボートに乗った。恐ろしい一夜が明けて、目覚めてみると、エミリーンの目に別天地のような美しい島影がうつった。しかし、その島は無人島で、過去に漂流してきたらしい人々のガイコツと酒だるがころがっていた。2人はパディから毒のある木の実の見分け方、縄の結び方など生きるために必要なことを教わるが、ある朝、そのパディが事故で死に、リチャードたちは途方にくれた。それから数年後。女らしく成長したエミリーン(ブルック・シールズ)と逞しい青年になったリチャード(クリストファー・アトキンズ)は、エデンの園のアダムとイブのような毎日を送っていたが最近では思春期の徴候がそれぞれを悩まし始め、いっしょの部屋では生活できなくなっていた。エミリーンを部屋から追い出してからしばらくしてのある夜、リチャードは、島の反対側からきこえる不気味な音を耳にした。エミリーンが心配になって外に飛び出たリチャードは、そこで、恐ろしい光景を目にした。何人かの裸の男たちの生けにえの儀式だ。逃げるようにして戻る除中、彼は高熱に苦しんでいるエミリーンを見つけた。リチャードは彼女を必死で看病し、彼女が全快した時、初めて愛を意識し結ばれた。そしてエミリーンは妊娠し、苦しい出産を終え、子どもとの新しい生活がはじまった。それから間もなくして、息子たちを探しつづけていたアーサーの捜索船が島にやって来た。しかし2人はその船に背を向けた。ある日、3人のボートがサメに襲われ漂流し、食糧も水もなく死をまつばかりという不幸な状況に見まわれた。食べ物を欲しがった坊やは食べてはいけない赤い木の実を食べぐったりし、それを見て、リチャードが残りの実を2分した。親子が横たわるボートが大海原を漂っていく。そして、その遥かかなたには、帆船が姿を現わしていた。




4-16. ナチュラル  

監督 バリー・レヴィンソン
出演 ロバート・レッドフォードロバート・デュヴァルグレン・クローズ
1984年・アメリカ(コロムビア映画)

解説
プロ野球の選手を志した男の半生を描く野球映画。エグゼクティヴ・プロデューサーはロジャー・タウンとフィリップ・M・ブリーン、製作はマーク・ジョンソン、アソシエイト・プロデューサーはロバート・F・コールズベリー。監督は 「ダイナー」 のバリー・レヴィンソン、バーナード・マラムードの原作(「奇跡のルーキー」早川書房刊)をロジャー・タウンとフィル・ダッセンベリーが脚本化。撮影はカレブ・デシャネル、音楽はランディ・ニューマン、編集はステュー・リンダー、プロダクション・デザイナーはアンジェロ・グラハムとメル・ボーン、衣裳はバーニー・ポラックが担当。出演はロバート・レッドフォード、ロバート・デュヴァル、グレン・クロース、キム・ベイシンガー、ウィルフォード・ブリムリー、バーバラ・ハーシーなど。日本版字幕は戸田奈津子。ドルビー・ステレオ。テクニカラー、スタンダード。1984年作品。

ストーリー
1918年の春。ネブラスカの静かな草原。そこにはキャッチ・ボールをする父と子の姿があった。農民のエドは妻を亡くした後、幼いロイをずっとコーチし続けてきた。彼は生まれついての天才児で、投・打・守備のどれをとっても大リーグ並みのプレーをしていた。そんなロイの姿を幼なじみのアイリスは優しいまなざしでみつめていた。父親の死後、ロイは雷で2つに裂けた樫の木を削って手製のバットを作った。そして稲妻マークを刻み込み、そのバットをワンダーボーと名付けた。それから6年が過ぎ、20歳になったロイ(ロバート・レッドフォード)は、将来を誓い合ったアイリス(グレン・クロース)に別れを告げ、スカウトマン、サムと共に街を出た。キャンプに向かう夜行列車の中で、名物バッターとして知られるウォンボルト、スポーツ記者のマックス(ロバート・デュヴァル)、それに黒いドレスに身を包んだセクシャルな女ハリエット(バーバラ・ハーシー)の3人連れに合った。サムはウォンボルトに賭けを挑んだ。ロイなら君を3球3振にさせるぞ、と。勝負はその通りになったが、サムはロイのボールを受けそこね、後に心臓発作で急死してしまう。シカゴに着いてホテルに入ったロイの許にハリエットから電話がくる。彼女の美しい毒に気がつかないロイは、言われた通りに部屋に行く。その時、ハリエットの手に握られていた拳銃から火が吹いた。−−そして16年後のニューヨーク。常に下位で低迷しているニューヨーク・ナイツのベンチに35歳のルーキー、ロイ・ハブスが現われる。プロ経験のないロイを、監督のポップ・フィッシャーは冷たく扱うが、ロイのお陰でニューヨーク・ナイツは勝ち続け、野球界は奇跡のルーキーの登場で大揺れとなる。ナイツのオーナーである判事は、自分のチームが負ける方に賭けていたので慌て、マックス、愛人のメモ(キム・ベイシンガー)らを仲間に引き込み、ロイの秘められた過去を暴こうとやっきとなる。ロイはやすやすとメモの誘惑にのり、スランプ状態に陥ってしまう。そんなロイの窮状を救ったのは将来を誓い合った幼なじみのアイリスである。シカゴの巡業の時、彼女の家に立ち寄ったロイは、使い古しのグローブをみつける。それは彼女の息子のものだった。スランプから脱したロイの打棒が炸裂、優勝まであと1勝と迫った夜、早過ぎる優勝パーティが開かれたが、ロイは脇腹を抱えて倒れてしまう。かつてハリエットに撃ち込まれた銃弾が発見され、医者は優勝決定戦に出場するのは不可能だと忠告する。自分がいないとナイツは負けてしまう…。ロイは再起不能を覚悟で試合に出ようと思った。ところが判事やマックスは、ハリエットに撃たれた現場写真をロイにつきつけ、試合に負けて欲しいと裏取引を申し出る。試合の日、ロイは古傷の痛みに耐え、大ホームランを打ってナイツを優勝へと導く。数日後、とある田舎街の草原でキャッチボールをする親子の姿があった。ロイが20歳の時アイリスとの間にできた子供だった。そんな2人の姿をアイリスが微笑みをたたえて見つめていた。(コロムビア映画配給*2時間18分)




4-17. グッドモーニングベトナム

監督 バリー・レヴィンソン
出演 ロビン・ウィリアムズフォレスト・ウィテカートゥング・タン・トラン
1987年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
武器を持たない米軍放送のディスクジョッキーの目を通して描かれた“もう1つのべトナム戦争”。製作はマーク・ジョンソン、ラリー・ブレズナー、監督は 「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」 のバリー・レヴィンソン、脚本はミッチ・マーコウィッツ、撮影はピーター・ソーヴァ、音楽はアレックス・ノースが担当。出演は 「ガープの世界」 のロビン・ウィリアムズ、 「プラトーン」 のフォレスト・ウィテカー、トゥング・タン・トラン、チンタラ・スカパタナほか。字幕監修に小堺一機、関根勤。

ストーリー
1965年、北爆を開始した米軍は一層深い“ベトナム戦争”の泥沼にふみ込んでしまった。米軍将兵たちのなかにこの目的なき戦いに対しての厭戦気分が蔓延し始めていた。彼らの士気を高めようと、テイラー将軍(ノーブル・ウィリンガム)は、本国から米軍放送の人気ディスクジョッキー、エイドリアン・クロンナウアー(ロビン・ウィリアムズ)を呼び寄せた。酷暑のサイゴン空港に降り立ったクロンナウアーは武器を持たず、いたってラフな格好であった。軍服も敬礼さえも好きでないというこの一等兵DJに、迎えに来たガーリック一等兵(フォレスト・ウィテカー)はびっくりさせられた。更に驚いたことに、サイゴンの街に出るや通りがかりのベトナムの美少女トリン(チンタラ・スカパタナ)を追いかけ始めた。しかし何よりも驚いたのは「グッドモーニング・ベトナム!」の叫び声で始まる放送であった。従来の、軍の検閲をパスした気抜けしたニュースとパーシー・フェイスやマントバーニといった、ただ甘いだけの音楽とは打って変わり、ギンギンのロックンロールと機関銃のようなしゃべりでニクソンまでもまな板に乗せてしまった。軍の上層部は動転したが100万のベトナム米軍は絶大な拍手をもって彼を迎えた。直属の上司であるディカーソン軍曹(J・T・ウォルシュ)とホーク少尉(ブルーノウ・カービー)には睨まれ通し。そんななかでも、ガーリックを連れてトリンを追いかけ、彼女の通う英語学校で妙な英語を教えて人気者になり、いつしかトリンの兄ツアン(トゥング・タン・トラン)と親しくなった。ベトコンのテロ事件は軍のチェックで放送禁止であったが、ある日目の前で起こった爆弾テロ事件をしゃべってしまった。軍規によって彼は降ろされた。後を継いだホーク少尉のDJは最低。津波のような投書が寄せられ、前線に向かう兵士たちの激励を聞き、再びマイクに向かった彼を許せぬディカーソンは彼とガーリックをベトコン地区に派遣して、2人を殺させようとしたが、ツアンの努力で無事帰還した。が、軍情報部が、ツアンはベトコンの活動家であることをキャッチ。戦争という障害が2人の間にそびえ立った。ベトコンと友達だったということで本国へ送還される日、英語学校のベトナム人たちとお別れの野球をやった。彼らの笑顔とトリンの涙を胸にクロンナウアーはサイゴンを去って行った。




4-18. 美しき運命の傷痕

監督 ダニス・タノヴィッチ
出演 エマニュエル・ベアールカリン・ヴィアールマリー・ジラン
2005年・フランス、イタリア、ベルギー、日本(ビターズ・エンド)

解説
ポーランドの巨匠、故クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿をエマニュエル・ベアールら人気女優の共演で映画化。心に傷を負った3人姉妹の悲哀と再生への道のりを力強く描く。

ストーリー
夫の浮気に悩む長女ソフィ(エマニュエル・ベアール)。身体の不自由な母の面倒をみて、孤独な日々を重ねる次女セリーヌ(カリン・ヴィアール)。年の離れた大学教授フレデリックと不倫関係にある三女アンヌ(マリー・ジラン)。彼女たちは、22年前に起きた悲劇によって父親を失った。そしてその悲劇は、彼女たちの人生に強い影響を及ぼしていた。ソフィは夫と愛人をホテルまで尾行して嫉妬に身もだえる。アンヌはフレデリックから突然に別れを告げられ、訪れた産婦人科で彼の急死を伝える新聞記事を読み、悲しみに震える。ある朝、セリーヌは見ず知らずの男に通りで話しかけられるが、ふり切って家へと急ぐ。22年前、教師をしていた父親と全裸の男子生徒が研究室で一緒にいるところを、母(キャロル・ブーケ)とセリーヌは目撃した。告発された父親は刑務所送りとなった。出所して家へ戻って来た父を母は中に入れず、父は自殺したのだった。そして、セリーヌに声をかけてきた男こそ、22年前にあの現場にいた男の子、セバスチャンだった。その夜、家の向かいのカフェにセバスチャンの姿を見つけたセリーヌは、彼に話しかける。彼は彼女に詩を詠む。孤独だったセリーヌの心にかすかな変化が起こり、恋の兆しさえ感じ始める。別の日、セバスチャンはセリーヌを訪ね、あの事件について告白をしようとする。それは彼女たちにとって、思いもよらない真実だった。




4-19. 約束の旅路

監督 ラデュ・ミヘイレアニュ
出演 ヤエル・アベカシスロシュディ・ゼムモシェ・アガザイ
2005年・フランス(カフェグルーヴ=ムヴィオラ)

解説
ベルリン映画祭などで、数々の映画賞を受賞したドラマ。実際にあった難民移送作戦を題材に、アフリカからイスラエルへ渡る少年のはるかなる道のりをつづる。

ストーリー
エチオピアの山中にファラシャと呼ばれるユダヤの民が古代より暮していた。彼らは太古の昔から、聖地エルサレムへの帰還を夢みていた。そして1984年、イスラエル情報機関モサドによって、エチオピアのユダヤ人だけを救出しイスラエルへ移送する、という「モーセ作戦」が実行される。1984年、スーダンの難民キャンプにある母子がいた。母親(マスキィ・シュリブゥ・シーバン)は、エチオピア系のユダヤ人だけがイスラエルに脱出できることを知る。2人はキリスト教徒だったが、母は9歳の息子(モシェ・アガザイ)をユダヤ人と偽り、イスラエルへの飛行機に乗せた。イスラエル。少年は偽りの母ハナ(ミミ・アボネッシュ・カバダァ)の助けで入国が許され、シュロモという名をもらう。しかし、ハナはまもなく病に倒れ、シュロモを残して逝ってしまう。シュロモは、ヤエル(ヤエル・アベカシス)とヨラム(ロシュディ・ゼム)夫婦の養子となる。差別に対するファラシャの抗議運動がテレビで報道された。シュロモはそこで知った宗教指導者のケス・アムーラ(イツァーク・エドガー)に会いに行く。時は数年後、シュロモはテレビでアフリカの干ばつを知る。実の母を捜しにアフリカに行きたいとケスに訴えるシュロモ。真実を隠して生きることに苛立ち、荒れるシュロモはケスに告白した。「僕はユダヤ人じゃない」。ケスは言った。お前の母は、お前を愛すればこそ、ここへ送ったのだと。やがて、シュロモは自分の道を見つけだした。パリに行って勉強し、医師になることを決意したのだ。1993年、シュロモ(シラク・M・サバハ)はパリで卒業証書を受け取り、帰国しようとするが、ケスに止められる。ユダヤ人と偽ったエチオピア人が訴えられ、大問題になっていると。。養母のヤエルはずっと彼を待っていたサラとの結婚をシュロモに勧める。ケスは真実をサラに告げるよう促すが、シュロモはためらっていた……。




4-20. 父帰る

監督 アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演 ウラジーミル・ガーリンイワン・ドブロヌラヴォフコンスタンチン・ラヴロネンコ
2003年・ロシア(アスミック・エース)

解説
ベネチア映画祭グランプリに輝いた、珠玉のロシア映画。謎めいた父親への接し方にとまどう兄弟の葛藤を、寂りょう感漂う大自然を背景に描いた異色作だ。

ストーリー
母(ナタリヤ・ヴドヴィナ)とささやかに暮らしている、アンドレイ(ウラジーミル・ガーリン)とイワン(イワン・ドブロヌラヴォフ)の二人の兄弟。ある夏の日、家を出ていた父(コンスタンチン・ラヴロネンコ)が12年ぶりに突然帰ってきた。写真でしか見覚えのない父の出現に、混乱する兄弟。しかも父は家長然とした態度でいろいろ仕切りはじめ、しばらく息子たちと旅に出ると言い出す。翌日の朝、父と兄弟の3人は釣り竿とテントを積み、車で遥か北部の湖に浮かぶ無人島を目指して出発した。目的地にまでは3日かかるらしく、父は息子たちに男としての強さを教育しはじめる。その余りに粗暴な教え方に、イワンは時折歯向かってみるが、その度に押さえ付けられるだけだった。アンドレイは次第に父を慕っていくが、イワンは憎しみが募るばかり。そんな中、無人島に到着。兄弟は一時間だけの約束でボートで湖に出るが、イワンが魚を捕ることにこだわり、遅刻。父は激怒し暴力をふるう。我慢できなくなったイワンは逃げて塔の上に登るが、追いかけてきた父が転落死してしまう。兄弟は泣きながら父の遺体を運び、無人島を脱出するが、陸地についたとたんボートが流されてしまい、遺体は湖の底へと沈んでしまうのだった。




4-21. ある子供

監督 ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演 ジェレミー・レニエデボラ・フランソワジェレミー・スガール
2005年・ベルギー、フランス(ビターズ・エンド)

解説
ベルギーの兄弟監督が2度目のカンヌ映画祭パルムドールに輝いた感動作。お金や命の価値を知らずに生きる若者の日常と、その心の移ろいを真摯に見つめる。

ストーリー
20歳の青年ブリュノ(ジェレミー・レニエ)と18歳の恋人ソニア(デボラ・フランソワ)の間に子供が産まれる。ブリュノは手下のように使っている少年スティーヴ(ジェレミー・スガール)たちと共に盗みを働き、盗品を売った金でその日暮らしをしている身だ。真面目に働いて欲しいと彼にソニアは頼むが、ブリュノにその気はなく、職業斡旋所に並ぶ列から離れ、なんと子供を金で売ってしまう。それを知って卒倒したソニアは病院に。足がつくのを恐れた買い手のおかげでなんとか子供は取り戻せたものの、意識を戻したソニアは警察にことの次第を話していた。ソニアは相変わらず軽い態度のブリュノに怒りを燃やし、彼を自分の家から追い出す。金に困ったブリュノは、スティーヴと共に盗みを働くが、執拗に警察に追い掛けられ、スティーヴが補導されてしまう。まもなくブリュノは自首。やがて服役中のブリュノのもとに、ソニアが訪ねてきて、ブリュノは思わず嗚咽をあげるのだった。




4-22. タイムライン

監督 リチャード・ドナー
出演 ポール・ウォーカーフランシス・オコナージェラルド・バトラー
2003年・アメリカ(ギャガ=ヒューマックス)

解説
ジュラシック・パーク」 の原作者、マイケル・クライトンの同名小説を映画化。現代から中世の世界に送り込まれた考古学者たちの冒険を、スリル満点に描くSFアドベンチャー。

ストーリー
ニューメキシコ。荒野のただ中で発見された瀕死の男は、担ぎ込まれたERで息絶える。検視を行った医師たちは、信じがたい現象を目の当たりにする。男の体内は、臓器、血管、骨格など、あらゆる組織が断層のようにずれ、欠損していた。その様は、あたかも複写に失敗し、歪みを生じたコピーのようだった。男の正体は、巨大ハイテク企業ITCに所属する物理学者。実は男を死に至らしめたのは、“転送エラー”だった……。同じ頃、フランス南西部。とある修道院の発掘現場でも、信じがたい現象が起こっていた。14世紀の地層から、現代の製品としか思えない眼鏡のレンズが発見されたのだ。一緒に発見されたメモには、<HELP ME>と書かれていた。その筆跡は、発掘に携わっていた歴史学者、エドワード・ジョンストン教授(ビリー・コノリー)のもの。教授は発掘プロジェクトのスポンサーを訪ねるべく現場を離れて以来、消息を絶っていた。2つの事件は、思いもよらない形で結びつく。発掘チームのスポンサーであり、ITCの社長、ロバート・ドニガー(デヴィッド・シューリス)に呼び出されたメンバーは、驚愕の事実を知らされる。教授はITCが極秘裏に開発した量子コンピューターの技術で14世紀フランスに送り出されたが、現地で消息を絶ってしまったのだ。メンバーの一員で、ジョンストン教授の息子クリス(ポール・ウォーカー)は、父親の行方を追うことを決意する。クリスと助教授のマレク(ジェラルド・バトラー)、紅一点のケイト(フランシス・オコナー)、仏語が堪能なフランソワ、そして案内役を務めるドニガーの側近ゴードンたちは、中世の衣装に身を包み、転送装置に立った。やがて、目もくらむばかりの閃光と轟音のなか、彼らの姿はこの世界から消滅する。そして1357年、100年戦争の真っ只中にあるフランス。オリバー卿率いるイギリス軍と、オルノー卿率いるフランス軍は、日々激しい戦闘を繰り広げていた。未来から降り立ったクリスたちに、騎馬隊が襲いかかってきた。しかも、投げた手榴弾が誤作動し、なんと転送装置が破壊されてしまい……。




4-23. ビヨンド・サイレンス

監督 カロリーヌ・リンク
出演 シルヴィー・テステュータティアーナ・トゥリーブハウィー・シーゴ
1996年・ドイツ(パンドラ)

解説
南ドイツの田園地帯を主な舞台に、ろうあの両親を持つ少女の成長を爽やかに描く感動作。監督・脚本はこれが長編デビュー作となるカロリーヌ・リンク。製作はヤーコブ・クラウゼン、トーマス・ベブケ、ルギ・ヴァルトライトナー。共同脚本はベス・ゼルリン。撮影はギャルノット・ロル。音楽はニキ・ライザー。美術はスーザン・ビーリング。編集はパトリツィア・ロンメル。出演はシルヴィー・テステュー、タティアーナ・トゥリープ、ハウィー・シーゴ、エマニュエル・ラボリ、シビラ・キャノニカほか。97年ドイツ連邦映画賞最優秀長編作品賞、最優秀主演女優賞、最優秀音楽賞、第10回東京国際映画祭グランプリ、最優秀脚本賞などを受賞。

ストーリー
ろうあの両親を手話で助ける8歳のララ(タティアーナ・トゥリープ)は、学校の成績はイマイチだが頭がよくしっかり者の少女だ。ある時、ララは父マルティン(ハウィー・シーゴ)の美しい妹、クラリッサ(シビラ・キャノニカ)にクラリネットをプレゼントされる。ララは練習を始めるやいなや、驚くほどの上達を見せた。しかし音の聞こえないマルティンはいい顔をしない。一方、母カイ(エマニュエル・ラボリ)はララの味方だ。そんなカイに、赤ちゃんが生まれる。ララにはマリーという名の妹が出来た。そして10年の歳月が流れる。18歳になったララ(シルヴィー・テステュー)は、クラリネット奏者を目指して勉強をしていた。そして父の猛反対を押し切り、音楽学校を受験するためにベルリンのクラリッサの家に身を寄せた。しかしクラリッサは夫との関係がうまくいっておらず、ララの居心地は悪かった。そんなある日、ララは、ろうあ学校で手話を教える青年トム(ハンザ・ツィピィヨンカ)と友達になる。トムとの出会いに胸をときめかせるララ。だが突然、母カイの死の知らせが飛び込んできた。意気消沈して実家へ戻るララだが、音楽の夢は捨てられない。相変わらず猛反対の父を振り切り、再びベルリンへ。そしていよいよ音楽学校の受験の日。試験場の舞台に立つララの前に、何と父マルティンが姿を現した。ララは父が見守る中、見事なクラリネットを吹くのだった。




4-24. レッスン!

監督 リズ・フリードランダー
出演 アントニオ・バンデラスロブ・ブラウンヤヤ・ダコスタ
2006年・アメリカ(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
NYのスラム街の学校で芽生えたという実話に基づく青春ドラマ。アントニオ・バンデラスがヒップホップ好きの落ちこぼれ生徒相手に奮闘する社交ダンサーを熱演!

ストーリー
ニューヨーク、スラム街。社交ダンス教室を経営し、自分も社交ダンサーであるピエール・デュレイン(アントニオ・バンデラス)はある日路地裏に止められていた車をめちゃくちゃに破壊し、逃げ去る高校生ロック(ロブ・ブラウン)に遭遇する。翌日、ピエールは問題児が多いことで有名な高校に赴き、社交ダンスを教えることにより生徒達の更正に貢献したいと申し出る。その日から教室に通い、ピエールはHIP HOPしか知らない生徒たちに社交ダンス音楽とそのステップを教えようとする。彼が本当に伝えたかったのは、社交ダンスを踊るのに必要な、相手を尊重する気持ち。誰も耳を傾けてくれなかった自分達の悩みに親身になってくれるピエールに、生徒たちは徐々に心を開き始める。それと同時に、新しい世界=社交ダンスに彼らは魅了されていく。ピエールが基本的なタンゴやワルツのステップを教えると、生徒たちはさらに自分たちの最も身近で得意とするHIP HOPミュージックとダンスの要素を融合し、社交ダンスの世界に新しい風を吹き込み、ピエールを驚かせる。それは、落ちこぼれのレッテルを学校側から一方的に貼られてしまった生徒たちにとって、自分自身、そして自分たちの世界を認めてもらうという新しい体験となっていった。そこから、それぞれの理由で夢を見ることを諦めていた生徒達は、再び何かに向かう意欲を燃やし始めていた。やがて、この課外授業を通してひとつにまとまりつつあったクラスにピエールは社交ダンス大会に出場してみないかと提案をする。それぞれ家庭や心に悩みを抱えながらも、生徒たちは大会優勝という目標に夢中になり、努力を重ね、練習をつんでいく。しかし大会当日、なかなかコンテスト会場に現れないロックに、ピエールと生徒達は不安を隠しきれず、パートナーであるラレッタはみじめな気持ちで会場の隅にうずくまるほかなかった。そんな中コンテストは始まる。




4-25. サン・ジャックへの道

監督 コリーヌ・セロー
出演 マニュエル・ロビンアルチュス・ド・パンゲルンジャン=ピエール・ダルッサン
2005年・フランス(クレストインターナショナル)

解説
仏からスペインに通じる世界遺産の巡礼路で撮影を行なったヒューマン・ドラマ。1500キロに及ぶ旅を通し、人種も生活環境も異なる人々の触れ合いがつづられる。

ストーリー
会社経営と家庭のストレスで薬に依存している兄のピエール(アルチュス・ド・パンゲルン)、支配的で頑固なオバサン教師のクララ(ミュリエル・ロバン)、アルコール漬けで家族にも見捨てられ一文無しの弟のクロード(ジャン=ピエール・ダルッサン)。互いを認めず険悪な仲の兄姉弟が、亡き母親の遺産を相続するため、フランスのル・ピュイからスペインの西の果て、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500kmにも及ぶ巡礼路を一緒に歩くはめになった。本来神聖なる旅路のはずだが、無神論者の上に歩くことなど大嫌いの彼らの頭には、遺産の二文字しかない。このツアーの同行者は、ベテラン・ガイドのギイ(パスカル・レジティミュス)、楽しい山歩きと勘違いしてお気楽に参加したハイティーンの女の子達、エルザ(フロール・ヴァニエ=モロー)とカミーユ(マリー・クレメール)、カミーユを追って参加したアラブ系移民の少年サイッド(ニコラ・カザレ)、従兄弟であるサイッドにだまされてイスラムのメッカへ行けると信じ、二人分の旅費を苦しい家計から母親から捻出してもらったラムジィ(エメン・サイディ)、頭をターバンで包んだ物静かな女性マチルド(マリー・ビュネル)。9人の男女が、様々な思いを胸に、フランスのル・ピュイから旅の一歩を踏み出した。果てしなく続く岩山の道。様々なトラブルを乗り越えながら、一行はまっすぐ続く一本道を、急勾配の道を、天候に関係なくひたすら歩き続ける。それは、まさに人生のように長く起伏に富んだ道。今や彼らは、距離的にも精神的にも出発点からは遥かに離れた地点に立っていた。1500kmもの徒歩の旅のゴールには、いったい何が待っているのだろう? そして、ささやかなラムジィの願いは叶うのだろうか?




4-26. レインマン

監督 バリー・レヴィンソン
出演 ダスティン・ホフマントム・クルーズヴァレリア・ゴリノ
1988年・アメリカ(ユナイト映画=UIP)

解説
今まで他人同然に生きてきた兄弟−−自閉症の兄と自由奔放な弟の出会いによって変化してゆくそれぞれの人生を描く。エグゼクティヴ・プロデューサーはピーター・グーバーとジョン・ピータース、製作はマーク・ジョンソン、監督は 「グッドモーニング・ベトナム」のバリー・レヴィンソン、バリー・モローの原作を基に、モロー自身と 「友よ、風に抱かれて」のロナルド・バス、撮影は 「刑事ジョン・ブック 目撃者」のジョン・シール、音楽はハンス・ジマーが担当。出演は 「トッツィー」のダスティン・ホフマン、トム・クルーズ、ヴァレリア・ゴリノほか。

ストーリー
26歳の中古車ディーラー、チャーリー・バビット(トム・クルーズ)は、恋人スザンナ(ヴァレリア・ゴリノ)とのパーム・スプリングスへの旅の途中、幼い頃から憎み合っていた父の急逝の訃報を耳にし、葬儀に出席するため、一路シンシナティへと向かうのだった。そしてその席で、チャーリーは父の遺言書を開封し、自分に遺されたものが車1台と薔薇の木だけという事実に衝撃をうける。同時に300ドルの財産を与えられたという匿名の受益者の存在を知った彼は、父の管財人であるウォルター・ブルーナー医師(ジェリー・モレン)を訪ね受益者の正体を聞き出そうとするが、医師はそれを明かそうとはしなかった。諦めて帰ろうとするチャーリーは、スザンナの待つ車の中にいたレイモンド(ダスティン・ホフマン)という自閉症の男と出会い、やがて彼こそが受益者であり、自分の兄であることを知るのだった。記憶力に優れたレイモンドをホームから連れ出したチャーリーは、スザンナも含めて3人でロスヘ旅することにした。ところがある日、チャーリーが遺産を自分のものにするためレイモンドの面倒を見るつもりでいることを知ったスザンナは愕然とし、チャーリーのもとを去る。兄の後見人となることで遺産の半分を所有しようとするチャーリーは、飛行機嫌いのレイモンドとともに車で旅をすることになったが、ある日モーテルに泊まった夜、彼こそがチャーリーの幼い頃の辛いばかりの思い出の中で、唯一心なごませる存在であった“レインマン”であることを知り胸つき動かされ、スザンナに電話で兄の本当の後見人になる決意を伝えるのだった。こうして兄弟の熱い絆で結ばれた2人は、ラスベガスに立ち寄り、レイモンドの抜群の記憶力でカードで大金を得る。またチャーリーは、レイモンドが好意を抱いた娼婦アイリスとのデートのセッティングをしたり、ダンスを手ほどきしたりするが、結局彼女は姿を現わさなかった。落胆するレイモンドをスザンナは優しくなぐさめ、彼と一緒にダンスをし、2人は静かに唇を重ねるのだった。しかしロスに到着した2人を、現実の荒波は容赦なく押し寄せ、やがてレイモンドとチャーリーは、兄として弟として、それぞれの路を歩み始めることになるのだった。




4-27. 友よ静かに死ね

監督 ジャック・ドレー
出演 アラン・ドロンニコール・カルファンローラン・ベルタン
1976年・フランス(東宝東和)

解説
古きよき時代のギャング達を描いた犯罪物語。製作はアラン・ドロン、監督は 「フリックストーリー」 のジャック・ドレー、脚本はアルフォンス・ブーダールとジャン・クロード・カリエール、原作はロジェ・ボルニッシュ(徳間書店刊)、撮影はシルヴァーノ・イッポリティ、音楽はカルロ・ルスティケリが各々担当。出演はアラン・ドロン、ニコール・カルファン、ローラン・ベルタン、アダルベルト・マリア・メルリなど。

ストーリー
1945年、パリにはまだ戦争の傷跡が残っている。さわやかな風の吹き抜ける木立ちの中、シトロエンを磨いている男達がいた。彼らこそ、今をときめく神出鬼没の犯罪をくりひろげているシトロエン・ギャングだった。この日もまた元気よく仕事に出た彼らだが、帰って来た時は、いつもと違っていた。ジョー(ザビエル・デプラス)が、ロベール(アラン・ドロン)の恋人マリネット(ニコール・カルファン)のもとへ駈けていく−−。彼女がロベールと知り合ったのは1年前、彼女が働くバーで彼がアメリカ兵と喧嘩を演じた時だった。以来、彼女は彼の本業を知りつつも、彼の仲間の友情と、我が子同様に彼の面倒をみて来たフェリシア(ラウラ・ベッティ)の優しさにふれ、そして彼らにとけこんでいった。シトロエン・ギャングの手口は大胆不敵、常に警察をケムに巻き、仕事はスムースに進んでいた。静かなある日、レイモン(ローラン・ベルタン)の子供の洗礼式が、彼らの大先輩で今は隠退しているコルネリウス(レイモン・ビュシェール)の世話で行なわれ、その後パーティが始まった。場所はアジトのスカンボ亭。宴も終わりに近づいている頃、彼らをパリ警察の捜査網が包囲している。マリネットとレイモンをフェリシアの家に送り届けて来たロベールは、木立ちの陰の警察隊を発見した。すでに彼らの包囲から脱出する方法はない。ロベールに一案ひらめいた。県警にギャングの襲撃をうけていると電話し、急拠かけつけた県警が包囲している警察と同士討ちを始めたのだ。その間に闇の中を逃げる一行。再び、銀行を襲う日がやって来た。あいかわらずの手ぎわの良さで銀行強盗はやり終えるが、ロベールはマリネットへのプレゼントに向いの宝石店に押し入り、女主人に撃たれてしまった−−。ジョーの知らせで、ロベールのもとに駆けつけるマリネット。彼はニコリとほほえんで息を引いた。翌朝、彼の埋葬が行なわれた。呆然と立ちすくむマリネットに、ジョーは近づき、ロベールが宝石店より盗んできたブレスレットを静かに彼女に手渡すのだった。




4-28. エディット・ピアフ 愛の賛歌

監督 オリヴィエ・ダアン
出演 マリオン・コティヤールシルヴィー・テステューパスカル・グレゴリー
2007年・フランス、チェコ、イギリス(ムービーアイ)

解説
「愛の讃歌」「バラ色の人生」 などの名曲で知られるシャンソン歌手、エディット・ピアフ。世界的な成功の裏で起こった恋人の事故死など彼女の悲劇も浮き彫りにした伝記映画。

ストーリー
1915年、パリ。路上で歌う母に養われるエディット・ジョヴァンナ・ガションは、祖母が経営する娼館に預けられる。復員した父に引き取られ、大道芸をする父の手伝いをしながら人前で歌うことを覚えていったエディット(マリオン・コティヤール)は、1935年、人生の転機を迎える。パリ市内の名門クラブのオーナー、ルイ・ルプレ(ジェラール・ドパルデュー)にスカウトされ、エディット・ピアフという名で歌手デビューを果たすのだった。舞台は大成功し、ピアフは一躍時の人となるが、翌36年、ルプレは何者かに殺害される。後ろ盾を失い、一時は容疑者扱いもされたピアフを救ったのは、著名な作曲家レイモン・アッソだった。アッソから厳しい特訓を受けて復帰コンサートを開いたピアフは、みごとシャンソン界にカムバックする。歌手として栄華を極めたピアフは、1947年、ボクシングの世界チャンピオン、マルセル・セルダンと人生最大の恋に落ちる。セルダンには妻子がいたが、ふたりは急速に惹かれ合い、ピアフの歌も円熟味を増してゆく。しかし1949年、セルダンの乗った飛行機が墜落する。失意の中で、ピアフは代表作となる新曲『愛の賛歌』をステージで歌い、喝采を受ける。その後もピアフは名曲を歌い続ける一方で、酒やドラッグに溺れる破滅的な生活を送り、1963年、47歳の生涯を閉じるのだった。




4-29. チェイサー

監督 ナ・ホンジン
出演 キム・ユンソクハ・ジョンウソ・ヨンヒ
2008年・韓国(クロックワークス=アスミック・エース)

解説
韓国で大ヒットを記録し、ハリウッド・リメイクも決定したクライム・サスペンス。元刑事とシリアルキラーの壮絶な追跡戦が、息づまるほどの緊迫感で繰り広げられる。

ストーリー
元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)が経営するデリヘルの女たちが相次いで行方をくらましていた。彼女たちに渡した高額な手付金を取り戻すため、怒り心頭のジュンホは捜索を開始。失踪した女の車の中にあった携帯電話の着信履歴に“4885”という数字を見つける。部下から、たった今、ミジン(ソ・ヨンヒ)を斡旋した客の番号も末尾が同じだったことを聞き、ジュンホは二人の後を追ってマンウォン町へと向かった。一方、住宅街に佇む大きな家に迎えられたミジンは、男によって手足を縛られ監禁されていた。行方不明の女たちがこの男に殺されたことを察したミジンは泣き叫び必死に命乞いをするが、金槌とノミで頭を打たれてしまう。ミジンに電話が繋がらずイラついていたジュンホは、車の接触事故をきっかけにヨンミン(ハ・ジョンウ)という怪しい男に遭遇、長い逃走劇の末、ついに彼を捕獲し警察に引き渡す。「女たちは俺が殺した。そして、最後の女はまだ生きている」と告白するヨンミンだったが、自供のみで何一つ物的証拠がない。そんな状況にイ刑事(チョン・インギ)たちは焦っていた。遺体を発見しない限り、12時間後にはヨンミンを釈放しなくてはならないのだ。ヨンミンは殺し方や死体の処理方法については詳細に語るが、それ以上については固く口を閉ざしていた。刑事たちが遺体の捜索に躍起になる中、ジュンホは一人でミジンを捜し回っていた。古巣の警察に協力し、DNA鑑定をするためミジンの家に向かったジュンホは、そこでミジンの幼い娘ウンジ(キム・ユジョン)に出会う。少女を一人残していくことができなくなった彼は、嫌々ながらもウンジを連れていくことにする。そんな中、ミジンはやっとのことで手足の拘束を解き、家から逃げ出し、近くの雑貨店に駆け込んだ。しかし、その店には、検事の判断により証拠不十分で既に釈放されたヨンミンがタバコを買いに向かっていた……。




4-30. メトロポリス

監督 フリッツ・ラング
出演 アルフレッド・アベルグスタフ・フレーリッヒルドルフ・クライン・ロッゲ
1926年・ドイツ(松竹座=東和商事)

解説
「ドクトル・マブゼ」「ジーグフリード」「クリームヒルトの復讐」 に次ぐフリッツ・ランク氏の監督作品で、同氏の令閨テア・フォン・ハルボウ夫人が自身原作の小説から前三作品と同じく脚色の筆を執ったものである。映画初出演のブリギッテ・ヘルム嬢(後に 「懐かしの巴里」 に出演)と本邦初お目見得のグスタフ・フレーリッヒ氏とが主役として活躍するほか、 「ドクトル・マブゼ」「焔の裡の女」 のアルフレッド・アベル氏、 「クリームヒルトの復讐」「化石騎士」 のルドルフ・クライン・ロッゲ氏、 「ジーグフリード」 のテオドル・ロース氏、 「ドクトル・マブゼ」 のハインリヒ・ゲオルゲ氏、等も出演している。撮影者は 「最後の人」「ヴァリエテ(1925)」 のカール・フロイント氏と 「ジーグフリード」「クリームヒルトの復讐」 のギュンター・リッタウ氏とである。但し我国に輸入されたこの 「メトロポリス」 は、アメリカ版であって、チャニング・ポロック氏によって改修短縮されたものである事を付記して置く。(無声)

ストーリー
これは物質文明の精華、都会メトロポリスの物語である。そこでは科学と発明と機械とが偉大なる発達を示している。それは脳と手とからなっている都会。地上の資本家の楽園と地下の労働者の地獄との此の二つから成り立っている都会。この都会を動かすものはその支配者ジョン・マスターマンの頭である。彼は一切を機械の力によって処理した。従って彼の下に働く人間はただ機械のように動いていたのである。地下深くには労働者の住居する町があり、その上層には、このメトロポリスを動かす総ての力を生む機械の世界があり、更にその上層には、富める苦労知らぬ人々の楽しむ永遠の園があった。それはジョン・マスターマンの息子エリックが此の園で多くの美しい女達を相手として遊び戯れていた時であった。地下に住む女メエリーが多くの汚い子供達をひきつれてこの園に姿を現したのであった。エリックはメエリーが「子供達、御覧、あれはお前達の兄弟なのですよ」と子供達にいう声を聞いた。この声に目覚めたエリックは地下の労働町に降りて行ってそこで労働に従事した。彼は恋するメエリーに励まされて、地下に働く人々と父親との間の調停者となろうとした。が、この時、父親マスターマンは大発明家ロートワングに命じて疲れを知らぬ人造人間を作らせた。ロートワングはメエリーを捕らえ、彼女を模型としてメエリーそのままの人造人間を作った。この偽のメエリーは地下に降りて行き、本物のメエリーに代わって労働者達に道を説くのであった。が、この偽のメエリーはマスターマン等の意に反し、却って労働者達を煽動し機械に反抗した。かくて地下から地上へかけてと熱狂した労働者の一群は押し寄せた。そして総ての機械は破壊された。が、狂った労働者達は機械を破壊する事が地下の己等の住む町を水で漲らす事である事に気が付かなかった。程経てそれに気が付いた彼等は憤激の余り煽動者である偽のメエリーを捕まえて火で焼き殺した。が、彼等が地下に残して来た子供等はエリックとメエリーによって救われていた。ロートワングは労働者等の暴動を見、偽のメエリーを作った事によって禍がその身に迫る事を恐れ、本物のメエリーを無きものにしてその事実を紛らわそうとしてメエリーに迫って行った。メエリーが危うかった時、エリックはその救助に赴き、屋上の激しい格闘の後、ロートワングは転び落ちてその命を失った。マスターマンの頑な心もこの大事変によって目覚め、エリックとメエリーとの計らいによって、労働者と握手する事になった。やがては愛を基調とした此の両者の提携によって第二のメトロポリスが新しい建てられる事であろう。




4-31. 暴力脱獄

監督 スチュアート・ローゼンバーグ
出演 ポール・ニューマンジョージ・ケネディJ・D・キャノン
1967年・アメリカ(ワーナー・ブラザース・セブン・アーツ)

解説
実際に牢獄生活を送ったことのあるドン・ピアーズの小説を、彼自身とフランク・R・ピアソンが脚色、テレビ 「裸の町」「アンタッチャブル」 などの演出をしていたスチュアート・ローゼンバーグが監督した脱獄もの。撮影はコンラッド・ホール、音楽はラロ・シフリンが担当した。出演は 「引き裂かれたカーテン」 のポール・ニューマン、 「夕陽よ急げ」 のジョージ・テネディ、 「エデンの東」 のジョー・ヴァン・フリートとディック・ダバロスほか。なお、原作者のドン・ピアースが技術顧問を買ってでているが、彼は囚人の一人に扮して経験者ならではのリアルな芝居もしている。製作はゴードン・キャロル。

ストーリー
酔ったあげくに街のパーキングメーターをやぶったルーク(ポール・ニューマン)は懲役2年の刑を言い渡された。刑務所仲間はドラグライン(ジョージ・ケネディ)ほか強面の連中ばかりだったが、それ以上に、彼らを見守る看守の面々も猛者ぞろいだった。囚人と看守の間には絶えず反目と憎悪の空気が絶えなかった。新入りルークの仕事は、炎天下に雑草を刈り溝を掘るという重労働だったが、彼の新入りらしからぬ図々しくて、容量のいい態度は仲間の反感を買い、とくにボスのドラグラインは気に入らなかった。ある日2人は命をかけての殴り合いとなり、ついにルークが勝った。囚人のリーダーはドラグラインからルークの手に渡ったのである。数日後、ルークの母(ジョー・V・フリート)が訪ねてきた。面会時間が切れて、病に老いた母の後ろ姿を見送った時、ルークは、母に会うことはあるまい、と思った。そして、母の死を知らせる電報が来た時、彼は泣いた。3日後、ルークは脱獄した。逃げに逃げたが結局は捕まってしまった。ひどい懲罰を受けた。だか彼は再度脱獄。そしてドラグラインに、“冷たい手のルークより”と署名した手紙さえ送ったきた。監房の連中は口惜しがったが、ひとりとして怒るものはいなかった。自由になったルークこそ彼らの願望の体現者なのだから。しかし皆の期待を裏切ってルークはまた再び捕まってしまった。厳重な足かせをはめられ独房にほうりこまれた。それでも彼は反抗をやめない。そして、三度脱獄。今度はドラクラインも一緒だった。だが途中で2人は仲間割れ。ドラグラインは1人になり急に恐くなった。死にたくない。ルークも死なせたくない。半分は親友への愛から、半分は恐怖からルークの居場所を密告した。瀕死の床でルークは、医学的な治療をすべて拒絶した。迫りくる死を待つ彼の表情は美しくさえあった。今日も囚人たちは炎天下で働いている。言葉ををかわさない彼らの胸の中には権威に反抗し続けて、屈することを知らなかった冷たい手のルークが生きている。




4-32. アメリカ上陸作戦

監督 ノーマン・ジュイソン
出演 カール・ライナーエヴァ・マリー・セイントアラン・アーキン
1966年・アメリカ(ユナイテッド・アーチスツ)

解説
ナサニエル・ベンチレイの小説を原作にしてウィリアム・ローズが脚色し、 「シンシナティキッド」 のノーマン・ジュイソンが製作・監督したコメディー。撮影はジョセフ・バイロック、音楽はジョニー・マンデルが担当。出演はカール・ライナー、エヴァ・マリー・セイント、アラン・アーキン、ブライアン・キースほか。

ストーリー
ある日、アメリカ北東部ニュー・イングランド地方のある島の沖合に、ソビエトの潜水艦が座礁した。艦長(セオドア・バイケル)は副官のロザノフ(アラン・アーキン)に8人の水兵を連れて上陸を命じた。その頃夏休みをこの島で過ごすブロードウェイの脚本家ウォルト(カール・ライナー)は妻のエルスパス(エヴァ・マリー・セイント)と朝食の卓についていた。そこへロザノフたちが現れ、大騒動がもちあがった。ロシア人が上陸して飛行場を占領した、という噂がまたたく間にひろまった。島の男たちはライフル銃に身をかためて自警団を結成して、飛行場攻撃に出かけた。人々はロシア人がたったの9人でモーターボートを探しているだけだと分かったが、このあと空挺部隊や軍艦がやって来るのではないかと心配しはじめた。島はロシアの連中のために電話線が全部切断され、気違い集落の様子を呈してきた。潜水艦は折りからの満潮で離礁出来たが、ロザノフとひとりの仲間が、島の連中に捕えられていると考えて、救うため、主砲を町へ向けて引き渡しを迫った。この騒ぎを教会の塔から眺めようとした少年が誤って、足を踏みはずし宙ぶらりになってしまった。そして米ソ協力作業の末、無事救助された。だがその間に沿岸警備隊、海空軍がロシア人の情報をキャッチし出動した。しかし彼らの潜水艦は島の人々の護衛をうけて東の海へ姿を消して行った。




4-33. エイリアン

監督 リドリー・スコット
出演 トム・スケリットシガニー・ウィーヴァーヴェロニカ・カートライト
1979年・アメリカ(20世紀フォックス映画)

解説
女性2人をふくむ7人の宇宙飛行士が宇宙船に乗って就業中、今まで会ったこともないエイリアン(異星人)に遭遇し、必死の戦いで撃退するまでを描くSFサスペンス映画。製作総指揮はロナルド・シュセット、製作はゴードン・キャロル、デイヴイッド・ガイラー、ウォルター・ヒル、監督はリドリー・スコット。ダン・オバノンとロナルド・シュセットのストーリーを基にダン・オバノンが脚色。撮影はデレク・バンリント、音楽はジェリー・ゴールドスミス、編集はテリー・ローリングス、映像アイデア作画はH・R・ギーガー、ロナルド・コッブ、衣裳はジョン・モロー、美術はレスリー・ディリー、ロジッー・クリスチャン、特殊効果はブライアン・ジョンソンが各々担当。出演はトム・スケリット、シガーニー・ウィーバー、ベロニカ・カートライト、ハリー・ディーン・スタントン、ジョン・ハート、イアン・ホルム、ヤフェット・コットーなど。

ストーリー
スペース・シップ(宇宙船)ノストロモ号は、船上に工場設備を持ち、そこで生産した工業用品を販売して廻る通商用の巨大なスペース・シャトル(宇宙船)。乗組員は船長のダラス(トム・スケリット)をはじめ、一等航海士ケイン(ジョン・ハート)、科学者のアッシュ(イアン・ホルム)、技師パーカー(ヤフェット・コットー)、機関長ブレット(ハリー・ディーン・スタントン)の男5人と、二等航海士リプリー(シガーニー・ウィーバー)、操縦士ランパート(ベロニカ・カートライト)の女性2人の総勢7人。地球に帰る途中、彼らは、他の宇宙船からのSOSを傍受し、救出のために、ある惑星に着陸した。ケイン、ランバート、ダラスの3人が、信号発信地へ向かうが、やっと見つけた宇宙船は、すでに黒く焼けこげ、人影はなかった。その宇宙船の底の方を探りに行ったケインは、そこで、床一面に転がっている大きな卵状の物体を見つけた。その1個をのぞき見たケインは、突然飛びだした小さなッ生物に顔をふさがれてしまった。ノストロモ号に連れ戻され寝かされたケインの顔の上には、付着した生物が息づいており、無理に剥ぎとろうとするとケインの顔が破壊しかねない程、しっかりおおっていた。見かねたダラスが、強引に刃を突き刺すと、切り口からは液体が流れ、その強力な酸の影響でベッドも床も溶けてしまった。が、辛くもアスベスト板(絶縁体)のおかげで事なく済んだ。しばらくして、彼らがキャビンに戻ってみると生物は姿を消していた。全員が捜索を始め、船室の隅で乾燥した物体に変身して潜んでいるのを、リプリーが捕獲した。この危険なッ生物」を船外に棄てるという皆の意見に対して、科学者のアッシュだけは「初めて遭遇した宇宙生物だから研究のために保存すべきだ」と主張し、結局、科学担当の彼に従い、ヘリウム管に保存されることになった。ノストロモ号は、再び宇宙に飛び立ち、ケインは意識を回復し元気を取り戻した。しかし、食事中に彼は呻き声をあげて苦しみ出し、胸部から一つの頭が飛び出した。生物は、彼の体の中で成長し続けていたのである。ケインは血だらけになって死んだ。もはや燃料は1週間分しか残っていなかった。一刻も早く生物を捕まえなくてはならない。船内の大混乱の中、火焔放射器を持って捕獲に向かった船長のダラスがあえなく首をしめられて死んだ。リプリーは、いくつかの疑問を感じ、コンピューターに質問した。「アッシュは生物を保護しているの、か?」。答えは「イエス」。しかし、その時、背後には殺意を抱いたアッシュが迫っていた。必死で抵抗するリプリーは、駆けつけたランバートとパーカーの力で助かり、アッシュは死んだ。何と彼はロボットで、生物を地球に運ぶ任務にあったのだ。小型シャトルに生物を追い込み、シャトルごと宇宙の果てに飛ばす作戦に出た4人は、しかし、次々に襲われていき、リプリーと1匹の猫だけが残された。彼女は猫を連れ、シャトルに乗り込み、ノストロモ号から分離させて、一路地球に向かった。しかし、安全だと思われたシャトルには、生物が潜んでいた。リプリーの必死の反撃で、生物はシャトルから落ち、宇宙の彼方へと消えていくのだった。




4-34. カンナさん大成功です!

監督 キム・ヨンファ
出演 キム・アジュンチュ・ジンモ
2006年・韓国(ワーナー・ブラザース)

解説
「白鳥麗子でございます!」 の鈴木由美子の同名漫画を映画化した、韓流ラブ・コメディ。肥満体の女性歌手が整形で体重を落とし、愛するプロデューサーの気を引こうと奮闘する。

ストーリー
身長169cmにして体重95kgという体格のカンナ(キム・アジュン)の基本スタイルは上下スウェット。楽しみといえば豚の三枚肉を食べることで、馴染みの占い師にも「お前に取り柄があるなら教えてくれ」と言われる始末。だが、そんなカンナにも人並み以上の才能があった。誰もが聞き惚れる美声と天才的な歌唱力。その取り柄を活かし“影の歌手”、ゴースト・シンガーとして活躍していた。顔とスタイルは抜群だが、歌はまるでお粗末なスター、アミの舞台裏で、彼女の代わりに歌を歌っているのがカンナなのだ。スポットライトの当たらない場所ではあるけれど、その時だけは想いを寄せるプロデューサー、サンジュン(チュ・ジンモ)をモニター越しに眺めることができる。自分が“特別”になれるその瞬間、それだけでカンナは満足だった。ひたすら現実から眼を背け、自分の殻に閉じこもって暮らすカンナであったが、サンジュンの誕生会で彼の本音を聞いてしまう。「カンナには才能はあっても美貌はない。憐れんで放っておけばいい」。カンナは絶望の渕を彷徨った果て、全身整形という壮絶な決断をする。テレクラで知り合った美容整形医を脅し、大手術を決行。その日からカンナの巨体は業界から姿を消した…。カンナの謎の失踪から1年後、突如ジェニー(キム・アジュン)という歌手が現れる。169cm、48kgというスタイルで、天才的な歌唱力を持つ彼女は一躍トップスターに踊り出た。実は、彼女は昔のカンナ。命がけの整形と超絶ダイエットでジェニーに生まれ変わったのだ。ジェニーが微笑むだけで男はイチコロ。その歌声だけで誰もが涙する。そんなジェニーを、サンジュンも気にせずにはいられなかった。だが、彼女は決して秘密を明かさない。贅肉とともに捨て去ったカンナという過去には、自分の幸せはない、と固く信じていた……。




4-35. 師弟出馬

監督 ジャッキー・チェン
出演 ジャッキー・チェンウェイ・ペイシー・キエン
1980年・香港(ゴールデン・ハーベスト)

解説
折り合いが悪かったロー・ウェイのプロダクションからゴールデン・ハーベスト社に強行移籍したジャッキー・チェンが、同社で監督・主演した第1回作品。香港クンフー映画の定番 「仇討ち物語」 ではないオリジナルの物語に、素手の対決はもとより扇子やスカート、ロープなどさまざまなアイテムを効果的に使った、趣向を凝らしたアクションを取り入れた明るい作品である。 仇役には70年代に香港クンフー映画でも活躍したハプキドー(韓国合気道)の達人ウォン・インシクを迎え、20分近いジャッキーとウォンの対決はジャッキー作品のクンフー対決の中でも屈指の内容である。

ストーリー
孤児のドラゴンとタイガーは名門金龍道場に拾われて育った若者。 だが町の道場間で競われる舞獅(獅子舞)合戦の練習中に、頭持ちのタイガーが負傷し急遽ドラゴンが頭となって出場。しかし相手道場の獅子頭を持っていたのは怪我をしたはずのタイガーだった。舞獅合戦は金龍道場の完敗で、道場は町の笑い者になり師範は弟子に八つ当たりを始める。 だがその後タイガーの裏切りが発覚し師範はタイガーを追放してしまう。八つ当たりの度を強める師範についにドラゴンが爆発、自分も出て行くことを宣言するが、師範は我に返り、ドラゴンに免許皆伝の証である道場の大扇子を持たせてタイガーを連れ戻すよう頼む。 一方タイガーは悪投キムの一味となって悪事の片棒を担いでいたが、タイガーもまた免許皆伝の大扇子を持っていたため、ドラゴンは悪党として警察に捕まってしまった。




4-36. 或る結婚の風景

監督 イングマール・ベルイマン
出演 リヴ・ウルマンエルランド・ヨセフソンビビ・アンデショーン
1974年・スウェーデン(エキプ・ド・シネマ)

解説
ある一組の夫婦の結婚と離婚を通じ人間の真の結びつき、コミュニケーションとは何かを描く人間ドラマで、当初スウェーデン国営放送のもとで各50分6エピソード全5時間のTVシリーズとして企画・製作されたもの。製作はラース・オウェ・カールズベルイ、監督・脚本は 「叫びとささやき」 のイングマール・ベルイマン、撮影はスヴェン・ニクヴィスト、音楽はオーヴェ・スヴェンソン、編集はイングマール・ベルイマンとシブ・ラングレン、製作デザインはビヨルン・チューリン、衣裳はインガー・ペルソンが各々担当。出演はリヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ビビ・アンデショーン、ヤン・マルムシェーなど。

ストーリー
ヨハン(エルランド・ヨセフソン)とマリアンヌ(リヴ・ウルマン)は結婚10年目を迎えていた。42歳のヨハンは応用心理研究所の助教授、35歳のマリアンヌは親族法・民法の弁護士で、二人の間の娘二人と共に安定した暮しを送っていた。理想的に見えるこの夫婦は、ある朝取材の女性記者のインタビューを受け、マリアンヌは夫婦関係について初めて語った。数日後、夫婦の共通の友達夫婦ピーター(ヤン・マルムシェー)とカタリーナ(ビビ・アンデショーン)を夕食に招いた二人は、お瓦いにののしりはじめたその夫婦に唖然としながら仲介をするのだった。その晩夫に自分たち夫婦の在り方を話そうとしたマリアンヌに、しかしヨハンは耳を傾けようとはしなかった。ヨハンは研究室で実験し、マリアンヌは法律事務所で依頼人の相談に応じるという相変らずの毎日が過ぎてゆくが、遂にそのバランスが崩れる時を迎える。ある夏の夕方、二人の娘と田舎の別荘にいたマリアンヌをヨハンが突然訪れた。喜ぶ彼女に、自分には実は恋人がいたのだときっぱりと告白するヨハン。その晩、激しくいい争った後、ヨハンは荷物をまとめ、翌朝出て行った。それから8カ月程たってヨハンからの電話を受けたマリアンヌは、彼を自宅に沼き、久しぶりにじっくりと話しを交した。その夜、ベッドを共にした二人は、しかしお互いにどうにもならない溝を感じた。正式に離婚し、それから数年の間に二人の生活は大きく変わった。ヨハンは恋人と別れ別の女性と結婚し、マリアンヌも幾つかの恋人を経て新しい夫を得ていた。しかし、今では、何のわだかまりもなくなっていた二人は時々会い、深い理解をもって本心を語り合い、静かな時を共に過ごすのだった。




4-37. 運動靴と赤い金魚

監督 マジッド・マジディ
出演 ミル・ファロク・ハシェミアンバハレ・セッデキアミル・ナージ
1997年・イラン(エース ピクチャーズ)

解説
運動靴をなくした小学生兄妹の姿をあたたかく見つめたドラマ。監督・脚本はイランの新鋭マジッド・マシディで、本作が日本初紹介となる。撮影はバービス・マレクサデー。美術はアスガル・ネジャド=イマニ。編集はハッサン・ハッサンドスト。録音はヤドラー・ナジャフィ。出演はミル=ファロク・ハシェミアン、バハレ・セッデキほか。

ストーリー
小学生のアリ(ミル=ファロク・ハシェミアン)は修理してもらったばかりの妹ザーラ(バハレ・セッデキ)の靴を買い物の途中でうっかりなくしてしまった。ふたりの家は貧しく、洗濯物の洗う仕事をする母(フェレシュテ・サラバンディ)はぎっくり腰が治らないまま顔色もすぐれず、父(アミル・ナージ)も小言が多い。そういうわけで両親にも言えないまま、アリの一足きりしかない運動靴をふたりで苦労して履くふたりだが、通学途中で履きかえるので、妹を先に行かせる兄のアリはどうしても遅刻してしまい、先生に目をつけられる羽目に。ある日、ザーラは学校で下級生が自分の靴を履いているのを見つけた。その子の家に行き、靴を返してもらおうとするふたりだが、その子の父親が盲目で貧しい生活をしているのを知って言い出せなくなる。アリを連れて仕事に出た父はうまく金持ちの家で仕事にありつき、妹の新しい靴も買ってもらえることになったが、その直後、ふたりが乗っていた自転車が大破、父は大怪我をしてしまい、結局靴の話はご破算に。そんな矢先、小学校でマラソン大会が行なわれることに。3等賞は運動靴だ。かくして、アリは頼み込んで出場させてもらい、妹のために3等目指して必死で走るのだった。




4-38. チベットの女 イシの生涯

監督 シェ・フェイ
出演 テンジン・ドカーラクチュンオンドゥ
2000年・中国(ビターズ・エンド/フォーカスピクチャーズ)

解説
チベットの女 イシの生涯の画像 チベットの美しい景色と人々の情の深さ、独特な宗教観に魅せられたシエ・フェイ監督による感動作。全編チベットでロケを敢行し、スタッフと出演者にチベット人を起用している“本物”のチベット映画だ。

ストーリー
チベットの小さな村に住む農奴の娘イシは、美しい歌声と容姿で近隣に知られていた。父親の借金の肩代わりで荘園の若旦那クンサンの元に行かされるが、寵愛を受け、篤く庇護される。だが村を通りがかった荷駄隊の首領ギャツォがイシに一目惚れしてしまい、略奪同然に自分の妻にする。ギャツォとの放浪生活が始まるが、旅に疲れ果てたイシは、生まれた娘と共に故郷に帰る。イシに未練のあったクンサンは屋敷の下働きとしてイシを雇い入れ、やがてイシは2人目の子を産む。久々に家に戻ったギャツォは子供の誕生を喜ぶが、実は子供の父親はクンサンだった……。




4-39. 踊る幸せの赤いバス

監督 フィリップ・アラクティンジ
出演 ロドニー・エル・ハッダードナディーン・ラバキナダー・アブー・ファルハート
2005年・レバノン(劇場未公開)

解説
フランスに亡命していたカマール(ロドニー・エル・ハッダード)は、斬新な振り付けで仲間とともにダブケ・コンクールに出場するが、古い伝統を重んじる審査員から酷評され落選。だが彼らはあきらめずに、戦火を無傷で乗り越えたバスに乗って巡業ツアーに出る。 15年ぶりに内戦後の故郷レバノンに戻ってきた振付師が、伝統的民族舞踊ダブケに新しい風を吹き込もうと奮闘する様を描くミュージカル・ロード・ムービー。ボスタとは「バス」を表すアラビア語。




4-40. 胡同(フートン)のひまわり

監督 チャン・ヤン
出演 ソン・ハイインジョアン・チェンリウ・ツーフォン
2005年・中国(東芝エンタテインメント)

解説
「こころの湯」 の俊英、チャン・ヤンが放つ家族ドラマ。ある画家親子がたどる愛と葛藤に満ちた軌跡を、激動の中国近代史を背景に温かな語り口でつづっていく。

ストーリー
1967年に北京で生まれた向陽(シャンヤン)。シャンヤン(チャン・ファン)が9歳になった日、父(スン・ハイイン)が強制労働を終え、6年ぶりに家に戻る。父は遊んでばかりの彼を厳しく叱りつけ、絵の勉強をさせようする。父親も絵描きだったが、強制労働で手をつぶされ、今では絵筆を握ることができない。だからこそ、息子に夢を託して絵を描かせるが、幼いシャンヤンは自由な時間を奪われ、父親に必死に抵抗しようとする。19歳となったシャンヤン(ガオ・グー)は、絵の才能を伸ばしつつあった。シャンヤンは抑圧的な態度を取り続ける父にいよいよ我慢ができなくなり、大学に行かずに、ひそかに広州に行くことを企てた。その旅には恋人のユー・ホン(チャン・ユエ)も同行することになっていたが、出発の直前になって父にばれ、父は嫌がるシャンヤンの手を引き、列車から引きずりおろす。シャンヤンは再会したユー・ホンに別れの言葉を告げられるが、その時、彼は身ごもったユー・ホンが父の指図のもとに、知らない間に子供を堕ろしていたことを知る。さすがに、今度ばかりは父親を許せないシャンヤンだったが、父が凍った湖の割れ目に落ちてしまい、仕方なく父に手を差し伸べるのだった。32歳になったシャンヤン(ワン・ハイジ)はハン・ジン(リャン・ジン)と結婚、画家としてのキャリアは順調で、大きな展覧会の準備に追われていた。シャンヤンと厳しい父との心の溝は、今も深い。展覧会でシャンヤンの家族を描いた絵画に深く心を揺り動かされた父は、会場で彼と握手を交わした。ある時、父が姿を消した。シャンヤンたちの前には、テープに吹き込まれた彼のメッセージが残されていた。




4-41. グリーン・マイル

監督 フランク・ダラボン
出演 トム・ハンクスデイヴィッド・モースボニー・ハント
1999年・アメリカ(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
「評決のとき」 の若手注目株ダグ・ハッチンソンが卑劣な看守役に。権力をカサに着た横暴な態度の背後に身勝手で臆病な素顔をのぞかせ、憎々しさをぞんぶんに伝える。

ストーリー
1995年。老人ホームの娯楽室で名作「トップ・ハット」を見たポール・エッジコムの脳裏に60年前の記憶が甦る……。大恐慌下の1935年。ジョージア州コールド・マウンテン刑務所の看守主任ポール(トム・ハンクス)は、死刑囚舎房Eブロックの担当者だった。死刑囚が電気椅子まで最後に歩む緑のリノリウムの廊下はグリーンマイルと呼ばれていた。部下は副主任のブルータル(デイヴィッド・モース)はじめ頼れる連中ぞろいだが、州知事の甥である新人パーシー(ダグ・ハッチソン)だけは傍若無人に振る舞う。そんなある日、ジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)なる大男の黒人がやってきた。幼女姉妹を虐殺した罪で死刑を宣告された彼は、実は手を触れただけで相手を癒すという奇跡の力を持っていた。彼はポールの尿道炎を治したのを皮切りに、パーシーに踏み潰された同房のドラクロアが飼っていたネズミのミスター・ジングルズの命を救った。ドラクロアはその翌日処刑されたが、パーシーは残酷にも細工をして彼を電気椅子で焼き殺した。コーフィの奇跡を目の当たりにしたポールらはパーシーを拘禁室に閉じ込めてコーフィをひそかに外へ連れ出し、刑務所長ムーアズ(ジェームズ・クロムウェル)の妻で脳腫瘍で死の床にあったメリンダ(パトリシア・クラークソン)の命を救わせた。房に帰ったコーフィは、拘禁室から解放されたパーシーをいきなりつかまえるや、メリンダから吸い取った病毒を吹き込んだ。するとパーシーは厄介者の凶悪犯ウォートン(サム・ロックウェル)を射殺し、そのまま廃人になった。ウォートンこそ幼女殺しの真犯人だったのだ。ポールはコーフィに手をつかまれ、彼の手を通じて脳裏に流れ込んで来た映像で真実を知った。ポールは無実のコーフィを処刑から救おうとする。だが、彼は「全てを終わらせたい」と自ら死刑を望み、最後の望みとして映画「トップ・ハット」に見入ってから死に赴いた。それから60年。あのときコーフィが与えた奇跡の力はポールに宿り、彼にいまだグリーンマイルを歩かせしめないのであった。




4-42. 天空の草原のナンサ

監督 ビヤンバスレン・ダバー
出演 ナンサル・バットチュルーンウルジンドルジ・バットチュルーンバヤンドラム・ダラムダッディ・バットチュルーン
2005年・ドイツ(東芝エンタテインメント)

解説
「らくだの涙」 のビャンバスレン・ダバー監督が手掛けた心温まるドラマ。モンゴルで語り継がれる伝説を盛り込み、遊牧民一家の営みや、6歳の少女と子イヌの交流をつづる。

ストーリー
果てしなく広がるモンゴルの草原の、遊牧民の家族が暮らしている。羊の放牧をするたくましい父親(ウルジンドルジ・バットチュルーン)と優しい母親(パヤンドラム・ダラムダッディ・バットチュルーン)、6歳になる愛らしい娘のナンサ(ナンサル・バットチュルーン)、その妹(ナンサルマー・バットチュルーン)と小さな弟(バトバヤー・バットチュルーン)の仲良しきょうだい。ある日、母親に頼まれ、一人でお手伝いに出かけたナンサは、寄り道したほら穴で、賢くてかわいい子犬と出会う。ナンサはその犬を“ツォーホル”と名付け、家に連れて帰るが、父親はオオカミの仲間かもしれないと言って、飼うことを許してくれない。「思い通りにならないこともあるのよ」と、母親に優しく諭されるナンサ。だが、父親が町に羊の皮を売りに出かけて留守にするのをいいことに、ナンサはこっそりツォーホルを買い始める。ところが、放牧に出かけた草原で、ナンサはツォーホルとはぐれてしまう。ツォーホルを探して馬を走らせるナンサ。ようやくツォーホルが見つかった頃には、あたりはもう薄暗くなっていた。不安でいっぱいのナンサは、降り出した雨の中、遠くから聞こえる歌声に導かれ、遊牧民のおばあさん(ツェレンプンツァグ・イシ)に助けられる。おばあさんは家にナンサとツォーホルを招きいれ、「“黄色い犬”にならなくてよかったね」と言い、『黄色い犬の伝説』を話してくれた。「むかしむかし、お金持ちの家族が住んでいました。ある日、その家のとても美しい娘が重い病気になってしまいました。どんな薬を飲んでも治りません。そこで父親は賢者に相談に行きました。すると賢者は、『黄色い犬を飼っているだろう? その犬を追い払わなくてはならない』と言うのです。でも父親は、家族や家畜を守ってくれている犬を殺すことなんてできません。そこで、犬をほら穴に入れて出られなくしました。父親は毎日エサを持っていきましたが、ある日、犬はいなくなってしまいました。すると、娘は本当に治ったのです。でも娘が元気になったのには、ほかに理由がありました。娘はある若者に恋をしていたのです。黄色い犬がいなくなり、2人は何者にも邪魔されずに会えるようになったのでした…」。父親が町から戻り、草原を移動する時がきた。ゲルを解体し、準備を始める家族達。父親はツォーホルを置いていくと言う。ツォーホルのことが気になり、お守りを頼まれたのに、弟から目を離してしまうナンサ。次の放牧地への羊達と共に移動する途中、気づくと小さな弟はどこかへいなくなってしまっていた。あわてる母親、馬に飛び乗り探しに行く父親。心配そうに見つめるナンサと妹。その頃、小さな弟は,よちよち歩きでもとの草原にいた。羊の死骸をついばむハゲワシの大群に近づいていく小さな弟。ロープでつながれたままのツォーホルは、それを見て力いっぱい何度も何度も大きく吠える。はたして、ツォーホルは小さい弟を救うことができるのだろうか。




4-43. フロント・ページ

監督 ビリー・ワイルダー
出演 ジャック・レモンウォルター・マッソースーザン・サランドン
1974年・アメリカ(ユニヴァーサル映画=CIC)

解説
アメリカ・シカゴの1920年代、新聞記者社会を舞台にした風刺コメディで、ブロードウェイのヒット舞台劇の映画化。製作総指揮はジェニングス・ラング、製作はポール・モナシュ、監督は 「シャーロック・ホームズの冒険」 のビリー・ワイルダー、脚本はワイルダーとI・A・L・ダイアモンド、原作はベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーの同名舞台劇、撮影はジョーダン・クローネンウェス、音楽はビリー・メイ、編集はラルフ・E・ウィンタースが各々担当。出演はジャック・レモン、ウォルター・マッソー、キャロル・バーネット、スーザン・サランドン、ヴィンセント・ガーディニア、デイヴィッド・ウェイン、アレン・ガーフィールド、チャールズ・ダーニングなど。日本語版監修は高瀬鎮夫。テクニカラー、パナビジョン。1974年作品。

ストーリー
1929年6月6日。シカゴの刑事裁判所の記者クラブ。その裁判所の庭では、翌朝行われる警官殺しの犯人として死刑を宣告されたアール・ウィリアムズ処刑のための、絞首台が作られていた。その頃、シカゴ・エグザミナー紙のデスク、ウォルター・バーンズ(ウォルター・マッソー)は、同紙のトップ記者ヒルディ・ジョンソン(ジャック・レモン)をその取材に当たらせるために捜していたが、ヒルディの姿はどこにもなかった。折も折、当のヒルディが踊るような足どりで編集室に入ってきた。バーンズは一通り叱言を言うと、ウィリアムズの処刑を特ダネにするアイディアを打ち明けるが、ヒルディは、今日限りで辞職して恋人のペギー(スーザン・サランドン)と結婚してシカゴを離れると言う。バーンズは仕方なくヒルディの後釜に新米のケップラーを据えた。そのケップラーが記者クラブで、ヒルディの退社を他の記者に伝えているところへ、モリー(キャロル・バーネット)が飛び込んできた。彼女が死刑囚ウィリアムズの情婦であるように書きたてている新聞記事に、文句を言いにきたのだ。モリーが出ていくと、入違いにヒルディが入ってきて、早速祝い酒が始まる。一方、保安官ハーマン(ヴィンセント・ガーディニア)の事務所では、エンゲルフォッファー医師がウィリアムズの心理状態を調べると称し、警官殺しの現場を再現させようとして保安官の拳銃をウィリアムズに渡す。そして陽気に騒ぐ記者クラブに、銃声が3発響く。記者連は色めきたち、ウィリアムズが脱走したことを知ると一斉に飛び出した。すると、一人残されたヒルディの前に、怪我をしたウィリアムズが転がり込んできた。ヒルディは大急ぎでバーンズに電話すると、今度はモリーが入ってきた。再会を喜ぶ二人だが、そこへ他社の記者が戻ってくる。ヒルディはあわてて、ウィリアムズをトリビューン紙の記者ベンジンガー(デイヴィッド・ウェイン)の大きなロールトップの机の中に隠す。そんな二人の様子を見て、記者たちは二人が何か隠していることを嗅ぎつけるが、モリーの窮余の一策で何とかその場を切り抜ける。しかしそれも束の間、新米のケップラーのためにヒルディとバーンズが脱走犯をかくまっていることがばれ、公務執行妨害でブタ箱にブチ込まれてしまう。ウィリアムズも牢へ逆戻りだ。しかし、ウィリアムズの刑執行猶予令状が出ていることを偶然知った二人は、市長にくいさがって釈放された。ヒルディはパトカーの護衛つきで、ペギーが待つ駅に駆けつける。バーンズは自分の腕時計をヒルディに贈る。汽車が動きだすと、バーンズは駅の電話室からインディアナ州ゲイリー市警察署長宛に電報を打った。電文は「ヒルディ・ジョンソンを逮捕されたし」。「あいつめ、俺の時計を盗みやがった」。それはバーンズのヒルディ引き止め工作の苦肉の策だった。(ユニヴァーサル映画=CIC配給1時間45分)




4-44. JFK

監督 オリヴァー・ストーン
出演 ケヴィン・コスナーシシー・スペイセクジョー・ペシ
1991年・アメリカ(ワーナー・ブラザース)

解説
アメリカ現代史上の一大事件で今なお謎の残るジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を、新たな調査資料をもとに検証したドラマ。事件を担当した検事ジム・ギャリソンの著作を土台に、 「ドアーズ」 のオリヴァー・ストーンが監督・脚本・製作を務め、エグゼクティヴ・プロディーサーはアーノン・ミルチャン、共同製作はA・キットマン・ホー、共同脚本はザカリー・スクラー、撮影はロバート・リチャードソン、音楽はジョン・ウィリアムス(2)が担当。91年度アカデミー賞では撮影賞、編集賞を受賞。

ストーリー
1963年11月22日、晴天の午後。テキサス州ダラスにおいて、第35代大統領ジョン・F・ケネディが暗殺されるという大事件が起こった。ニューオリンズ州の地方検事ジム・ギャリソン(ケヴィン・コスナー)は、暗殺後2時間も経たないうちに警官殺しの容疑で逮捕されたリー・ハーヴィー・オズワルド(ゲイリー・オールドマン)が大統領暗殺の犯人と発表され、さらに今度はオズワルド自身がダラス警察本部の駐車場で護送される途中、ナイトクラブの経営者ジャック・ルビー(ブライアン=ドイル・マーレー)に撃たれて死ぬという一連の経過に疑問を抱く。ギャリソンは匿名の電話情報からオズワルドの航空隊時代の教官であったデイヴィッド・フェリー(ジョー・ペシ)を訊問するが、彼はFBIに拘留されるもすぐに釈放となった。大統領を引き継いだジョンソンが暗殺事件を調査するべく設置した最高裁長官アール・ウォーレンを委員長とする調査委員会も、オズワルドの単独犯行説と結論した。そして3年後。ケネディがこのまま大統領を続けていれば撤退していたはずのヴェトナム戦争はますます泥沼化していた。ギャリソンは改めて暗殺事件をスタッフとともに秘密捜査することにし、最初の匿名の電話の主であるジャック・マーティン(ジャック・レモン)をはじめ、数々の目撃者、関係者に聞き込みを行い、やがて軍の極秘任務によりキューバ侵攻のゲリラ作戦を行うマングース計画を進めていた元FBI捜査官ガイ・バニスター(エドワード・アズナー)やフェリーらが暗殺を図ったことと、首謀者は実業家として知られるクレー・ショー(トミー・リー・ジョーンズ)であることを突き止めた。捜査が真相に近づくにつれギャリソンはマスコミの攻撃や政府からの脅しを受け、妻(シシー・スペイセク)や子供たちとの私生活も危機に見舞われるが、Xと名乗る大佐(ドナルド・サザーランド)から事件が軍やFBIやCIAをも巻き込んだクーデターであることを知らされ、遂にクレー・ショーを暗殺の共謀罪で告訴する。裁判でギャリソンはケネディが三方から射撃されたことを明らかにし、1発の銃弾で7ケ所に傷を与えたという「魔法の弾丸説」の虚構を暴いて陪審員にアメリカの正義を訴える。だがクレー・ショーは無罪に終わった。全ての真相が明らかになるには、オズワルドやジャック・ルビーについての非公開の極秘報告書が公表される2039年まで待たなければならない。




4-45. 団塊ボーイズ

監督 ウォルト・ベッカー
出演 ジョン・トラヴォルタマーティン・ローレンスウィリアム・H・メイシー
2007年・アメリカ(ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン)

解説
ジョン・トラボルタら、実力派スター競演のコメディ。盛りを過ぎた中年男4人組が人生の輝きを取り戻そうと、バイクでの全米走破に挑む姿を笑いと涙でつづる。

ストーリー
アメリカの閑静な住宅街に、週末になるとハーレーに乗った4人組が現れる。実業家のウディ(ジョン・トラヴォルタ)、歯科医のダグ(ティム・アレン)、小説家を夢見る下水配管工のボビー(マーティン・ローレンス)、パソコンのスペシャリスト、ダドリー(ウィリアム・H・メイシー)だ。ウディはある日突然、自己破産を宣告され、妻にも逃げられ、大きな家も失う。ダグは仕事も家庭も順調だが、守るものなどない無鉄砲だったころの面影は無く、大きくなる一方の腹に頭を悩ませていた。ボビーは小説の執筆に専念するために妻から1年の猶予をもらったが、生計を支える妻と家庭内の立場が逆転、娘にもバカにされる日々を送っている。パソコンおたくのダドリーは運命的な恋を待ち続け、独身生活を余儀なくされている。ある週末、4人はバイクに乗ったあと、ハーレー仲間が集うバーに行く。そこでウディが、アメリカ横断の旅を提案する。最初は乗り気でなかった3人も、次第に心を動かされる。しかし、実は彼らのバイクの実力は初心者同然だった。ダグはこの無謀な計画を心のどこかで懸念し、ボビーは便器の講習に行くと妻に嘘をつき、内心ビクビクしていた。ダドリーは運命の恋を期待して胸躍らせていたが、彼がまともにハーレーに乗れたことはまだ1度もなかった。ウディは旅のリーダーを気取り、携帯電話を道路に投げ捨てた。そして4人は、ワイルドな現実と思いがけない冒険が待ちうける旅に出発する……。




4-46. シャーロットのおくりもの

監督 ゲイリー・ウィニック
出演 ダコタ・ファニングジュリア・ロバーツスティーヴ・ブシェーミ
2006年・アメリカ(UIP)

解説
原作は 「スチュアート・リトル」 のE.B.ホワイトが書いた名作童話。農場の娘と動物たちの心温まる交流を描いたファンタジーだ。ジュリア・ロバーツら豪華な声優陣も話題に。

ストーリー
誰もが変わらない毎日を過ごす平凡な田舎町サマセット。春の大雨が降った夜、農家を営むエラブル家に11匹の子ブタが生まれた。ところが母ブタの乳は10個しかなく、最後に生まれた小さな子は母の胸に抱かれることすらできない。エラブル家の娘のファーン(ダコタ・ファニング)はその1匹をウィルバー(声:ドミニク・スコット・ケイ)と名付け、まるで母親のように育て始める。やがてウィルバーは、様々な動物が住む向かいのザッカーマン農場に預けられることになった。夜、どこからかウィルバーに話しかける声が聞こえてきた。声の主はクモのシャーロット(声:ジュリア・ロバーツ)だった。ウィルバーと彼女は大の仲良しになる。しかし、春に生まれた子ブタは、クリスマスのハムになる宿命にあった。怯えるウィルバーに、シャーロットが守ってあげると約束する。シャーロットは自分の巣に糸で『とくべつなブタ』と綴ったのだ。”ザッカーマン農場のクモの巣”の噂は瞬く間に広がり、静かな農場に人々が押し寄せてくる。ウィルバーがピンチになるたびに、まるで自分の命を縮めることも厭わないような力強さで言葉を紡ぐシャーロット。そんな時、ファーンは町のお祭りで家畜の品評会があることを知る。そこに出て優勝できればきっとウィルバーはハムにされないですむ。シャーロットの身体には新しい命が宿っており無理のできる状態ではないが、ウィルバーとの約束を守るため、品評会に付き添うことを決意。いよいよ明日は品評会の結果が発表される日。シャーロットはネズミのテンプルトン(声:スティーブ・ブシェミ)と共に『最後のメッセージ』を捜していた。そして次の朝、4番目の奇跡が起きる……。




4-47. フールズ・ゴールド

監督 アンディ・テナント
出演 マシュー・マコノヒーケイト・ハドソンドナルド・サザーランド
2008年・アメリカ(ワーナー)

解説
マシュー・マコノヒー主演のアドベンチャー。カリブ海に沈むスペイン王朝の秘宝をめぐり、陽気な探検家と別居中の妻がスリルと笑いにあふれた恋と冒険を繰り広げる。

ストーリー
トレジャー・ハンターのベン・フィネガン、通称“フィン”(マシュー・マコノヒー)には、この数年間探し続けている宝があった。それはスペイン王から王妃への贈り物で、1715年に海に沈んだ、40個の箱に納められた莫大な財宝である。しかしそれを見つけようとしている間に彼は何もかもを失った上に、妻のテス(ケイト・ハドソン)にも愛想を尽かされ、離婚されてしまう。テスは人生をやり直すために、大富豪ナイジェル・ハニーカット(ドナルド・サザーランド)が所有する豪華ヨットで働き出す。一方フィンは、財宝の在りかを示す決定的な手掛かりを発見する。そしてテスの困惑をよそに、ちゃっかりナイジェルのヨットに乗り込んでしまう。フィンは、ナイジェルが甘やかしている娘ジェマ(アレクシス・ジーナ)が海に落とした帽子を大袈裟に拾い上げる。そうして持ち前の茶目っ気でナイジェルとジェマの心をつかみ、彼らを宝探しに加わらせる。またテスも、ずっと探していた財宝の謎が明らかになると思うと、興味を持たずにはいられなくなった。しかしこの財宝を、フィンのかつてのスポンサーであるビッグ・バニー(ケヴィン・ハート)も狙っていた。ビッグ・バニーはギャングでありながらラップ・シンガーとして音楽業界でも成功し、その金でカリブ海のある島を買っていた。そしてフィンが探している財宝は、その島付近に沈んでいた。そのため財宝の所有権を主張するビッグ・バニーは、フィンのトレジャー・ハンティングの師匠モー・フィッチ(レイ・ウィンストン)を巻き込み、フィンを出し抜こうとするが……。




4-48. ネバー・クライ・ウルフ

監督 キャロル・バラード
出演 チャールズ・マーティン・スミスブライアン・デネヒーゼイチャリー・イッティマンヤック
1983年・アメリカ(東宝)

解説
カナダ北部のツンドラ地帯を舞台に1人の生物学者と悪魔の化身とも恐れられているオオカミの触れ合いを通じて大自然の驚異を描く。ディズニー・プロ内に設立されたウォルト・ディズニー・ピクチャーズの第1回作品。製作はルイス・アレン、ジャック・クーファーとジョセフ・ストリック、エグゼキュティブ・プロデューサーはロン・ミラー、監督は 「少年の黒い馬」 のキャロル・バラード。ファーレイ・モワットの原作「オオカミよ なげくな!」(紀伊国屋書店)を基に力ーティス・ハンソン、サム・ハム、リチャード・クレッターが脚色。撮影はヒロ・ナリタ、音楽はマーク・アイシャム、美術はグリーム・マレイ、録音はアラン・スプレットが担当。出演はチャールズ・マーティン・スミス、ブライアン・デネヒー、ゼイチャリー・イッティマンヤックなど。

ストーリー
カナダ北部の草原を疾走するカリブー<北米トナカイ>の数が激減しだした。この原因はオオカミにあるらしく、若い生物学者タイラー(チャールズ・マーティン・スミス)が、調査員として、この北極のツンドラ地帯に乗り込むことになった。ロージー(ブライアン・ドネイ)という得体の知れない男の旧式な単発機でやっとのこと氷上に着陸したタイラーは、1人静寂の世界に取り残された。政府支給のサバイバル手引書を頼りに生活するしかない。春になり、いよいよ彼の調査が開始された。孤独感に耐えながらも、調査開始後2カ月たって、ようやく1匹のオオカミを発見。体重80kg、体長は尻尾を含めると2mをこえる北極オオカミだ。巣穴も発見して、夫婦オオカミらしいその2匹をジョージとアンジェリンと名付けた。ジョージたちは、人間を襲う獰猛な動物と考えられているオオカミとは、信じられないくらいおとなしくみえた。現に、ジョージがカリブーを襲っている形跡はない。では何を食べて生活しているのだろうか。ある日、アンジェリンが野ネズミを捕えているのを目撃した。それで、この謎もとけた。イヌイットのウテック(ゼイチャリー・イッテマンヤック)が、マイクという英語の話せるイヌイットの青年を連れて来た。マイクは、狩猟で生計をたてる普通のハンターで、オオカミの毛皮は、高価だが、ジョージたちは殺さないと言った。夏の終り、オオカミがカリブーを襲うのを目撃した。しかし、襲われたカリブーの骨を調べると、年老いているか、病気であるかのどちらかであった。このあと、しばらくして、タイラーは、ロージーに再会した。6カ月前のオンボロ機ではなく、最新式の飛行機を持っていた。彼は都会から2人のハンターをここまで連れてきていた。獲物のカリブーを得意気に飛行機に積み込みながら、タイラーに飛行機に乗って都会に帰ることを勧めたが、彼はかたくなに断った。数日後、タイラーは、テントに戻ったが、ジョージとアンジェリンの姿が見えない。子供たちを残してどこかへ行くことは考えられない。イヤな予感を感じるタイラー。やがて、ロージーが再びタイラーを迎えにやって来た。その時に、飛行機の一部にオオカミの尻尾が風になびいているのを発見するタイラー。彼は、ロージーに向って発砲し追い返した。冬が近づき、大自然の本当の厳しい季節がやってくるのだ。オオカミ狩りを手引きしたマイクも去っていった今、タイラーの、真のサバイバルが始まろうとしていた。