9-1. 孫文 100年先を見た男

監督 デレク・チウ
出演 ウィンストン・チャオアンジェリカ・リーウー・ユエ
2006年・中国(角川映画)

解説
辛亥革命を起こし、中国近代化の礎を築いた革命家・孫文。そんな彼が数々の苦境や失意を乗り越え、愛する人に支えられ闘い続けた日々を、革命前年の亡命地マレーシア・ペナンを主な舞台に描く。

ストーリー
1910年。二千年に渡る皇帝の専制政治に終止符を打ち、共和制国家の樹立を目指す孫文(ウィンストン・チャオ)は、9回目の武装蜂起に失敗。国外での逃亡生活を余儀なくされていた。清朝政府によって懸賞金を懸けられた彼は、革命地盤の日本を脱出し、マラヤ(現マレーシア)のペナンへ向かう。その船上、ペナンで教師をしているというルオ・ジャオリン(チャオ・チョン)という青年と出会う。ペナンでは、裏でアヘン業を営む華僑のシュー家に身を寄せることになるが、頭領シュー・ボウホン(ワン・ジェンチョン)は“ここでの革命活動はやめるように”と告げる。華僑たちは、失敗続きの孫文の革命を信用していなかったのだ。さらに、ジャオリンとも再会。彼はボウホンの娘タンロン(アンジェリカ・リー)の恋人だったが、その正体は、孫文暗殺を任務とする清朝の密偵だった。だが、タンロンが何かと孫文に接近するため、ジャオリンは暗殺を実行できずにいた。資金調達が無理だと知った孫文はシュー家を離れ、ペナン同盟会を訪ねる。そこには、10年来彼を支える女性同志、チェン・ツイフェン(ウー・ユエ)の姿が。再会を喜ぶ孫文だったが、ツイフェンは複雑な思いを抱えていた。彼との穏やかな生活を夢見るツイフェンだったが、革命に生きる孫文に、穏やかな日々は有り得ないと悟ってもいたのだ。ある日、港で不当な扱いを受けていた中国人労働者を助けた孫文は、労働者の権利を説き、弁舌を振るう。この交渉によって、長きにわたる港での労使間の対立が解決。労働者たちから“中国のために”と、献金を受ける。再び革命への心を奮い立たせる孫文だったが、肝心の富豪華僑たちの心は動かず、資金集めは危機に瀕していた。彼の行動に心惹かれたタンロンは、富豪たちが集まるシュー家のパーティーに孫文を招待することを決意。それを知ったジャオリンはパーティーでの孫文暗殺を画策する……。




9-2. 5月のミル

監督 ルイ・マル
出演 ミシェル・ピッコリミュウ・ミュウミシェル・デュショソワ
1989年・フランス、イタリア(シネセゾン)

解説
1968年5月、フランスの田舎の家に集まってきたブルジョワ一家の数日間の騒動を描く人間ドラマ。エグゼクティヴ・プロデューサーはヴァンサン・マル、製作はジェラール・モルト、監督・脚本は「さよなら子供たち」 のルイ・マル、共同脚本はジャン・クロード・カリエール、撮影はレナート・ベルタ、音楽はステファン・グラッペリが担当。出演はミシェル・ピッコリ、ミュウ・ミュウほか。

ストーリー
1968年5月、南仏ジェールのヴューザック家。当主の夫人(ポーレット・デュボー)が死に、長男のミル(ミシェル・ピッコリ)は彼女の死を兄弟や娘たちに伝える。時は五月革命のさ中。駆けつけたミルの娘カミーユ(ミュウ・ミュウ)と彼女の子供たち、姪のクレール(ドミニク・ブラン)とその女友達マリー・ロール(ロゼン・ル・タレク)、弟のジョルジュ(ミシェル・デュショソワ)と彼の後妻リリー(ハリエット・ウォルター)たちの話題といえば、革命のことと遺産分配のことばかり。家を売ろうというカミーユとジョルジュに、ミルは怒りを爆発させる。そんな折、公証人ダニエル(フランソワ・ベルレアン)の読みあげる夫人の遺書の中に、手伝いのアデル(マルティーヌ・ゴーティエ)が相続人に含まれていると知った一同は驚く。その夜パリで学生運動に参加しているジョルジュの息子ピエール・アラン(ルノー・ダネール)がトラック運転手のグリマルディ(ブルーノ・ガレット)と、屋敷に現われる。翌日、革命の影響で葬儀屋までがストをする。ミルたちは遺体を庭に埋めることにし、葬式を一日延期し、ピクニックに興じる。解放された雰囲気の中で、ミルはリリーと、ダニエルはカミーユと、ピエール・アランはマリー・ロールと、グリマルディーはクレールと親しくなってゆく。しかしその夜、屋敷に現われた村の工場主プテロー夫妻(エティエンヌ・ドラベール、ヴァレリー・ルメルシェ)から、ブルジョワは殺されると知らされた一同は、森へと逃げる。疲労と空腹で一夜を過ごし、険悪なものとなった彼らのもとにアデルがやって来て、ストが終ったことを知らせる。いつしか彼らの心の中には、屋敷を売る考えはなくなっていた。そして無事葬儀は終わり、カミーユたちは迎えにやって来た夫のポール(ユベール・サン・マカリー)と共に、また他の人々も帰るべき場所へと帰って行き、屋敷には再びミルだけが残されるのだった。




9-3. さよなら子供たち

監督 ルイ・マル
出演 ガスパール・マネッスラファエル・フェジトフランシーヌ・ラセット
1988年・フランス、西ドイツ(シネセゾン)

解説
ナチス占領下のフランスのカトリック寄宿舎で生活する少年たちの心の交流を、製作・監督・脚本を担当した「アラモ・ベイ」 のルイ・マルの強い自伝的要素のもとで描いてゆく。撮影は「デジャヴュ」 のレナート・ベルタが担当。音楽はシューベルトとカミーユ・サン・サーンスのクラシックを使用。出演はガスパール・マネッス、ラファエル・フェジト、フランシーヌ・ラセットほか。

ストーリー
一九四四年、ナチス占領時代のフランス。パリから離れカトリックの寄宿学校で疎開している12歳のジュリアン・カンタン(ガスパール・マネッス)は、クリスマス休暇を終え駅で母(フランシーヌ・ラセット)との別れを惜しんだ後学校に戻り、そこで同級に入った転入生ジャン・ボネ(ラファエル・フェジト)と出会う。しかしジュリアンには彼の打ち解けない様子が気にかかる。というのもジャンの父は捕虜、そして母は非占領地域で3ヵ月もの間、音信不通が続いていたからである。やがて二人は、森での宝探しのハプニングで連帯感を増してゆくが、時にジュリアンのユダヤ人をからかう言動に喧嘩になってしまうこともあった。父母参観の日、ジュリアンは母や兄との食事の席にジャンを招待する。彼はユダヤ人に偏見はない、と語るジュリアンの母に好感を抱く。しかし、次第に親愛の情を深めてゆくジュリアンとジャンの幸せな日々もそう長くは続かなかった。ある日、闇屋との件がばれ学校から解雇された料理番のジョセフ(フランソワ・ネグレ)のゲシュタポへの密告により、ジャンを含む三人のユダヤ人生徒がミュラー(ペーター・フィッツ)率いる一団によって発見されたのである。学校は閉鎖され、少年たちを匿った罪で逮捕されてゆく校長のジャン神父(フィリップ・モリエ・ジェヌー)に生徒たちは口々に言葉をかける。「神父さん、さよなら」振り返ったジャン神父が応える。「さよなら子供たち、また会おう」。しかしジュリアンたちは二度と彼らの姿を目にすることはなかった。三人の少年はアウシュビッツで、ジャン神父はマウトハウゼンで死んでしまった。それから40年以上の月日が流れた。しかしジュリアンの心には、今もあの朝の出来事が息づいている。そしてそれは、生涯忘れることはないであろう。




9-4. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

監督 ガス・ヴァン・サント
出演 ロビン・ウィリアムズマット・デイモンベン・アフレック
1997年・アメリカ(松竹富士)

解説
心を閉ざした天才青年が、似た境遇の心理学者との交流を通じて成長していく姿を、繊細なタッチで綴ったヒューマン・ドラマ。自身もハーヴァード大学中退というエリートでもある「戦火の勇気」 のマット・デイモン(70年生)と、彼とベン・アフレック(「青春の輝き」 で共演)のふたりの新進俳優の共作によるオリジナル脚本を、デイモン自身の主演、アフレックの助演、「誘う女」 のガス・ヴァン・サントの監督で映画化。製作は「パルプ・フィクション」 のローレンス・ベンダー。製作総指揮は「シーズ・ソー・ラヴリー」 のボブとハーヴェイのワインスタイン兄弟に、ジョナサン・ゴードン、スー・アームストロングの共同。撮影はレオス・カラックス作品でも知られる「ザ・クロウ」 のジャン=イヴ・エスコフィエ。音楽は「マーズ・アタック!」 のダニー・エルフマンがスコアを担当し、音楽監修にはジェフリー・キンボールがあたった。美術はミッシィ・スチュワート。編集はピエトロ・スカリア。衣裳はベアトリス・アルーナ。共演は「ジャック」 のロビン・ウィリアムス、「スリーパーズ」 のミニー・ドライヴァー、「アミスタッド」 のステラン・スカルスゲールドほか。97度年ゴールデングローブ賞脚本賞受賞、アカデミーオリジナル脚本賞賞、助演男優賞(ウィリアムス)受賞。98年キネマ旬報ベスト・テン第7位

ストーリー
南ボストン。ウィル・ハンティング(マット・デイモン)は、MIT(=マサチューセッツ工科大学)で清掃員のバイトをしている。親友のチャッキー(ベン・アフレック)、モーガン(キャセイ・アフレック)、ビリーらとつるんで、たびたび警察沙汰の事件を起こしたりとタチが悪いが、実は彼は、特に数学に異様な才能を見せる天才だった。ある日。ウィルは人目を盗んで、MITの掲示板に書かれた難解な数学の証明問題をこっそり解く。出題者のランボー教授(ステラン・スカルゲールド)は問題を解いたのがウィルと知り、傷害事件で拘置所にいた彼をたずねて、身柄をあずかる。条件は、週2回彼と共に研究室で勉強し、さらに週1回セラピーを受けること。ウィルはランボーの下で新たな日々を送りはじめた。フィールズ賞受賞のランボーでさえ手こずる数学の難問をあっさり解いて、周囲を驚嘆させるウィル。だが、そんな彼も、セラピーだけは敬遠し、ランボーが頼み込んだ一流のセラピストたちを完全に馬鹿にして撃退してしまう。孤児で里親を渡り歩き、虐待までされた不幸な過去を送った彼は、誰にも心を開かないのだ。ランボーは大学時代のルームメイトで、かつては名声を馳せ、最愛の妻を亡くした後落魄して、今はコミュニティ・カレッジの講師をしている、ショーン・マクガイア(ロビン・ウィリアムス)をたずねる。ウィルと境遇が似ている彼なら、ウィルの相手もつとまると踏んだのだ。ショーンはウィルと対面。だがウィルは研究室にかかっていた絵を見て、逆に辛辣な言葉でショーンを分析。ショーンは傷つき、ウィルが彼の亡き妻を侮辱するような言葉を口にした瞬間、激怒してウィルを追い出すが、翌週彼と再び会う。公園のベンチで、自分の妻に対する想いをウィルに語るマクガイア。彼はウィルの先日の行為を非難し、自分の人生を他人に語り、人生の真実を見据えていくべきだと、淡々と、だが真摯な態度で諭す。ウィルは黙ってマクガイアの言葉を聞くが、セラピーでは沈黙を守った。数週間後。ウィルはようやく口をきいた。知り合って好きになったハーヴァード大学の女子学生スカイラー(ミニー・ドライヴァー)についてだ。ショーンは彼女と真剣に付き合うべきだと忠告。ウィルは忠告どおり、彼女をデートに誘い、やがて結ばれるが、自分の素性だけはどうしても告白できない。その頃、ランボーの元には全米のシンクタンクや政府機関などからウィルのの就職依頼が舞い込んでいた。ランボーはウィルに面接を受けさせるが、彼はチャッキーを代理人に立てたりとランボーの面目を潰してばかり。ウィルはまだ、自分が進むべき道に迷っていた。ショーンはウィルの将来は彼自身に決めさせるべきだと主張し、ランボーと対立。そんなさなか。西海岸の医学校に進学を決めたスカイラーは、一緒に来てとウィルを誘うが、混乱する彼は拒否した。傷心を抱える彼はセラピーもすっぽかし、刑務所に逆戻りの危機まで訪れる。そんな矢先、チャッキーは、一生下町で労働者として暮らしてもいいとつぶやくウィルに、「才能のあるお前が、もしずっとこの町にいたら、俺はお前を殺す」と親友として忠告。ショーンに会ったウィルは、ショーンにも虐待の過去があったことを知る。「君のせいじゃない」と優しく言い続けるショーン。ウィルはショーンの腕の中で涙を流した。セラピーの期間が終わり、彼は晴れて自由の身に。ランボーの薦めたシンクタンクへの就職も決めた。ショーンは自分も再出発のため、旅に出ると言う。ウィルは21歳になった。は仲間たちのプレゼントの中古車に乗り、彼はショーンの部屋に置き手紙をして去る。ウィルは就職も取りやめにして、西海岸にいるスカイラーのもとへ旅立ったのだ。




9-5. 理想の女

監督 マイク・バーカー
出演 スカーレット・ヨハンソンヘレン・ハントトム・ウィルキンソン
2004年・スペイン、イタリア、イギリス、ルクセンブルク、アメリカ(ギャガ)

解説
文豪、オスカー・ワイルドの名作戯曲を基にした感動ドラマ。ヘレン・ハント&スカーレット・ヨハンソンの共演で、イタリア社交界に渦巻く愛憎模様を辛らつかつ甘美に描出。

ストーリー
1930年、南イタリアのアマルフィ。この町は世界各国からやって来た上流階級の人々が、ひと夏のバカンスを過ごす高級リゾートとして知られている。そこに、ひと組の初々しいカップルが到着した。ニューヨーク社交界の華として知られるメグ・ウィンダミア(スカーレット・ヨハンソン)と、彼女の夫ロバート(マーク・アンバース)だ。地元の社交界の中心人物であるルッチーノ伯爵夫人(ミレーナ・ヴコティッチ)の案内で、町の見物に連れ出されるメグ。若くみずみずしい魅力をふりまく彼女は、たちまちプレイボーイの英国貴族ダーリントン卿(スティーヴン・キャンベル=モア)の目をひくが、彼の口説きのテクニックも、夫を一途に愛するメグには通用しなかった。一方メグの21歳の誕生日に特別なプレゼントを贈ろうと骨董店を訪れたロバートは、そこで魅惑的なアメリカ人女性のミセス・アーリン(ヘレン・ハント)と出会う。ウィンダミア夫妻と同じニューヨークからやって来た彼女は、華やかな恋愛遍歴を重ねるなかで、数々のスキャンダルをたくましく生き抜いてきた女だ。そんなアーリンのアドバイスに従って、純金をあしらった豪華な扇をメグへのプレゼントに選ぶロバート。以来、急速に接近したふたりの仲は、瞬く間に社交界の噂の的になる。その噂を裏付ける証拠をダーリントン卿が見つけたのは、ウィンダミア夫妻の別荘をたずねた時のことだった。何気なく盗み見たロバートの小切手。それは、ロバートがアーリンに多額の金を渡していることを物語っていた。出会いの日以来、メグにかなわぬ思いを寄せていたダーリントン卿は、「もしもロバートが浮気をしたら?」とさり気なくメグにさぐりを入れる。が、ロバートの誠実さを信じて疑わないメグは、自分たちは模範的な夫婦だと答えた。社交界にはもうひとり、噂を信じようとしない人物がいた。アーリンの中に、外見の華やかさとは異なる良き妻になる素質を見出し、思いをつのらせるイギリス人の大富豪タピィ(トム・ウィルキンソン)だ。アマルフィの劇場でオペラが上演された夜、アーリンのエスコートを買って出た彼は、帰り道に立ち寄った彼女の別荘で、思い切ってプロポーズの言葉を口にする。しかしアーリンは、「私にとって、結婚は日の射さない部屋と同じなの」と言い、タピィの申し出を断る。誕生日を迎えたメグは、ロバートから例の扇をプレゼントされる。大喜びするメグだが、幸せの絶頂は長くは続かなかった。その日、ロバートが外出したあと、誕生日プレゼントを携えて訪ねてきたダーリントン卿に仕向けられるまま小切手帳を開いたメグは、夫がアーリンにたびたび金を渡していることを知ってしまう。激しいショックにかられ、部屋に閉じこもってしまうメグ。そんな彼女が誕生日パーティの会場に姿を現したとき、集まった人々は域を呑んだ。なんとメグは、アーリンが着ていたのと同じ肌を大胆に露出したドレスをまとって現れたのだ。ロバートに対するメグの様子から、夫妻の間に亀裂が生じたことを察するダーリントン卿。彼から駆け落ちの話をもちかけられたメグは、自分自身の傷ついた気持ちをロバート宛ての書置きに記すと、ダーリントン卿のボートに向かう。だがメグには知る由もなかった。アーリンとロバートのスキャンダルの陰に、自身の出生の秘密がからんでいたことを。




9-6. ダブル・フェイス 秘めた女

監督 マリナ・ドゥ・ヴァン
出演 ソフィー・マルソーモニカ・ベルッチブリジット・カティヨン
2009年・フランス

解説
ひとつに重なるココロとカラダが、禁断の秘密を呼び覚ます。S・マルソー&M・ベルッチというヨーロッパ映画界を代表する2大美人女優がW主演した異色サスペンス。 最近なぜか愛する夫や子どもが他人に見えるようになり、自分自身の顔や体まで見知らぬ女性へと変貌を遂げる奇妙な現象に遭遇するようになったヒロインが、記憶の欠落した少女時代の秘密を探る旅へと出発。自らのアイデンティティーが曖昧に揺らいで2つの肉体のはざまを行き来するヒロインを、マルソー&ベルッチが各自の個性と官能美を存分に発揮しつつ、鮮やかに好演。独自の個性あふれる演出と共同脚本を手がけたのは、かつてフランソワ・オゾン監督の作品で女優・脚本家として活躍したM・ドゥ・ヴァン。

ストーリー
愛する夫と2人の子どもに囲まれ、幸せな家庭生活を送る女性作家のジャンヌ。ところが最近になって、なぜか夫や子どもが突然他人に見えるようになったばかりか、自分自身の顔や体まで見知らぬ別人へと変貌を遂げるようになり、ジャンヌは不安と恐怖におののくが、周囲の人々は異変に気づかず、平然と振る舞うばかり。そんな折、母の家で1枚の古い写真を見つけた彼女は、それを手がかりに事の真相を探るべく、イタリアへと旅に出る。




9-7. パッセンジャーズ

監督 ロドリゴ・ガルシア
出演 アン・ハサウェイパトリック・ウィルソンデイヴィッド・モース
2008年・アメリカ(ショウゲート)

解説
プラダを着た悪魔」 などで人気の若手女優アン・ハサウェイ主演作。飛行機事故の生存者たちをめぐる謎を追う若きセラピストの不安を見すえたサスペンス・ドラマだ。

ストーリー
セラピストのクレア・サマーズ(アン・ハサウェイ)は、恩師のペリー・ジャクソン(アンドレ・ブラウアー)から仕事を任される。それは、飛行機墜落事故で奇跡的に生き残った生存者5名のトラウマ的ストレスを治療するというものだった。やる気を見せるクレアに、ペリーは“生存者の1人、エリック・クラーク(パトリック・ウィルソン)に気をつけろ”と忠告する。病院でエリックと面会したクレアだったが、彼はグループ・カウンセリングを拒否。自宅での個別カウンセリングを行うことになる。だが、クレアが彼の自宅を訪れると、彼は大胆に言い寄ってくる。さらに、教えてもいないクレアのプライベートを知っているなど、謎めいた行動を見せる。さらに、クレアの自宅には近所のトニ夫人(ダイアン・ウィースト)が毎晩訪れてくるようになる。だが、その様子は何かを探るようで、どこかおかしい……。一方、グループ・カウンセリングでは他の生存者たちが航空会社の発表と食い違う事故の記憶に苦しんでいた。公式発表では事故原因はパイロットの過失だったが、患者の1人は墜落の前に爆発があったことを告白。だが翌日、その患者が姿を消す。それが合図の様に、記憶を取り戻した患者が、次々とクレアの前から消えてゆく。患者の1人が言い残した“真実を知る生存者を黙らせるつもりだ”という言葉から、航空会社に疑惑を抱くクレア。だが、航空会社代表アーキン(デヴィッド・モース)に真相を確かめても、公式発表を繰り返すばかり。ますます不信を募らせたクレアは、ペリーに相談を持ちかけるが、彼も陰謀説を否定。彼女は気付く。ペリーは航空会社と結託し、患者の様子を探らせるために自分にカウンセリングを担当させたのだと。もはや、信じるものをなくしたクレア。真実を追えば追うほど深みにはまっていく。なぜ、事故は起きたのか?なぜ、5人だけが生き残ったのか?そして、彼女の知らなかった驚愕の真相とは?




9-8. オーシャン11

監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 ジョージ・クルーニーバーニー・マックブラッド・ピット
2001年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
鬼才スティーブン・ソダーバーグ監督が豪華キャストでおくる集団犯罪劇。巨大金庫に眠る莫大な現金を狙って、個性的な犯罪のプロたちがチームを組む痛快娯楽作だ。

ストーリー
仮釈放中の窃盗犯ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)は、いかさまトランプ師のラスティー(ブラッド・ピット)、スリの達人ライナス(マット・デイモン)、爆破の達人バシャー(ドン・チードル)、元カジノ・オーナーのルーベン(エリオット・グールド)、車両のプロであるヴァージル(ケイシー・アフレック)とターク(スコット・カーン)の兄弟、カード・ディーラーのフランク(バーニー・マック)、元詐欺師のソール(カール・ライナー)、配線のプロであるリヴィングストン(エディー・ジェイミソン)、アクロバットの達人イエン(シャオボー・クィン)という仲間を集め、ラスヴェガスの三大カジノの金が収められる地下金庫を狙う壮大な犯罪を計画。そのカジノのオーナーのベネディクト(アンディ・ガルシア)は、オーシャンの離婚寸前の妻であるテス(ジュリア・ロバーツ)を恋人にしていた。計画が進む中、オーシャンは現金だけでなく、テスの愛をもベネディクトから奪おうとする。やがてオーシャンは、仮釈放中の身で州外に出ていたことから1人逮捕されるものの、残りのメンバーが現金を強奪。そして数か月後、出所してきたオーシャンを、ラスティーとテスが迎えにきており、オーシャンとテスは車の後部座席でヨリを戻すのだった。




9-9. パーマネント・バケーション

監督 ジム・ジャームッシュ
出演 クリス・パーカーリーラ・ガスティルジョン・ルーリー
1980年・アメリカ(フランス映画社)

解説
ニューヨークの裏街を眠れないまま漂流する16歳の若者アロイシュス・パーカーの姿を捉える。製作・監督・原案・脚本・編集は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」 のジム・ジャームッシュで、これは彼がニューヨーク大学の大学院映画学科の卒業制作として製作したもの。撮影監督はジェームズ・A・ルボヴィッツ、フォトグラファーはトム・ディチッロ、音楽はジョン・ルーリーとジャームッシュが担当。出演はクリス・パーカー、リーラ・ガスティルなど、

ストーリー
眠れないまま、アロイシュス・パーカー(クリス・パーカー)は、ニューヨークの裏街で歩きまって夜を過ごしていた。「どの人間も住んでいる部屋に似ていて、定着してしまえばおしまい」と考える彼は、そうならないために、追いかけてくるものの一歩さきを動いていこうと強く思っていたが、それを同居している女友だちのリーラ(リーラ・ガスティル)に伝えることはむなしい。彼女は部屋の外を窓から見ている。アパートに戻った彼は1人、ビー・バップのレコードをかけて踊る。彼は自分から口を開いて孤独について漂流の必要性などを彼女に話す。彼の父も漂流癖があったが、そのために母(ルース・ボルトン)は精神病院に入院していた。突然、アロイシュスは母を見舞いに行こうと思いたち実行に移す。荒れはてた病院に母を訪れる彼。老朽化した部屋に老婆といっしょに寝起きしている母。彼女とは意志の疎通が難しい。病院を出たアロイシュスは、また街をうろつく。ビルの前の少年たち、スペイン語の歌を歌っている少女たち。映画館のロビーに入ってポップコーン売りの娘に話しかけるが、相手にされない。黒人のジャンキーが彼を呼びとめ、ジョークを言う。あるアメリカ人ジャズ・ミュージシャンがヨーロッパで貧困し自殺しようとする話だ。男は自分で大笑いするが、アリーは楽しめず、またさまよい出す。あるサックス・プレイヤーがアロイシュスに美しいメロディーを即興で聞かせる。翌朝、屋上で日覚めるアロイシュス。その晩、アロイシュスはリーラのアパートに戻ってみるが、彼女は家にいない。寝室からスーツケースを持ち出し、パスポートを入れる。再び朝。アロイシュスは波止場にいる。少し離れたところに、同じようにスーツ・ケースを持った青年がいる。彼はフランス人でニューヨークには休息を求めてやって来たと語る。アロイシュスは、彼に自分はパリに行った方がいいかときく。青年は行った方がいいと答えた。入れかわるような2人。甲板で、長い桟橋を歩いて、アロイシュスは、船に近づくのだった。




9-10. エグゼクティブ・デシジョン

監督 スチュワート・ベアード
出演 カート・ラッセルハル・ベリージョン・レグイザモ
1996年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
強力な神経ガスを持ったテロリスト集団にハイジャックされたジャンボ機内に潜入し、乗客の生命とワシントンDC壊滅の危機を回避すべく奮戦する男たちの活躍を描いた航空パニック・アクション。監督は「ダイ・ハード2」 など数々の作品の編集やセカンド・ユニットの演出を手掛け、これが初監督作品となるスチュアート・ベアード。脚本はジム・トーマスとジョン・トーマスの共同。製作は「暗殺者」「フェア・ゲーム」 のジョエル・シルヴァー、エグゼクティヴ・プロデューサーはスティーヴ・ペリー。撮影は「クリフハンガー」 のアレックス・トムソン、音楽は「訣別の街」 のジェリー・ゴールドスミス、美術は「ショーシャンクの空に」 のテレンス・マーシュ、編集は「マーヴェリック」 のダラス・プエットと「ダイ・ハード」「カットスロート・アイランド」 のフランク・J・ユリオステ。主演は「エスケープ・フロム・L.A.」 のカート・ラッセルと「暴走特急」 のスティーヴン・セガール。共演は「フリント・ストーン モダン石器時代」 のハル・ベリー、「3人のエンジェル」 のジョン・レグイザモ、「三銃士(1993)」 のオリヴァー・プラット、「スピード」 のジョー・モートン、英国演劇界の重鎮で「ワールド・アパート」 などのデイヴィッド・スーシェほか。

ストーリー
ワシントンDC行きの747型ジャンボ・ジェット機がハイジャックされた。テロリストの主犯格ハッサン(デイヴィッド・スーシェ)は、先日、イギリスで逮捕された組織のリーダーの釈放を要求する。緊急会議の席上、米陸軍情報部顧問のデイヴィッド・グラント博士(カート・ラッセル)は「世界一殺傷力の強いソ連製の毒ガスDZ−5を盗んだ彼らは、ワシントン攻撃を狙っている」と、驚くべき仮説を立てる。3ケ月前、彼の計画立案で、オースティン・トラヴィス中佐(スティーヴン・セガール)の率いる米陸軍テロ対策特殊部隊がトリエステ郊外で毒ガス奪回作戦を決行したが、失敗に終わっていた。大統領を中心とした危機対処委員会は、グラントの仮説を無視してジャンボ機をワシントンに着陸させ、地上4千万人の命を危険にさらすか、それとも米空域に入る前に同機を爆破し、400名の乗客を犠牲にすべきか、苦しい選択を迫られる。答えが出ないままトラヴィスは、まだ実験段階にある空中輸送機を大西洋上8000mの地点でジャンボ機とドッキングさせ、秘密裡に特殊部隊のメンバーを機内に送り込むことを提案する。作戦は認められ、トラヴィスはラット(ジョン・レグイザモ)、キャピー(ジョー・モートン)、ルーイ(B・D・ウォン)、ベイカーの腹心の部下たちに加え、全く実戦経験のないグラントを選ぶ。彼は戸惑う間もなく、輸送機を設計したケイヒル(オリヴァー・プラット)を加えたメンバーと共に、輸送機に乗り込んだ。途中、グラントとトラヴィスは3ケ月前の作戦のことで反目しあい、緊張した空気は部下たちにも伝わる。輸送機は無事、ジャンボ機との接続に成功し、メンバーは次々と乗り込んでいく。ところが、激しい乱気流が発生し、このままでは両機とも大破しかねない。輸送機に残されたままのトラヴィスは、必死に手を伸ばすグラントに、笑顔で「頼んだぞ」という言葉を残し、輸送機を切り離してしまう。トラヴィスを乗せた輸送機は爆発炎上し、地上との連絡は一切絶たれてしまった。一方、米国防総省内では、レーダーから突如輸送機が消えたことから動揺が走る。トラヴィスを失った今、グラントには一度も組んだことのない彼に、不信感を抱くメンバーが残された。にわか仕立ての6人のチームは、限られた時間内で、テロリストたちに見つかることなく、機内の狭い空間を移動しながら、毒ガスと起爆装置を発見しなければならない。しかも、グラントは起爆装置を持つ人間(=スリーパー)は、武装したメンバーの中ではなく、一般の乗客に紛れ込んで乗っていることに気づく。グラントは、勇敢なスチュワーデスのジーン(ハル・ベリー)と連絡を取り、彼女の強力を得て、一歩一歩作戦を進めていく。一方、侵入者の存在に気づいたハッサンも警戒を厳しくする。そして、ついに大統領命令が下され、海軍戦闘機がジャンボ機に迫っていた。グラントたちは機転を効かし、ジャンボ機の機体のランプを利用したモールス信号で爆撃機のパイロットに無事を知らせ、撃墜の危機は回避された。ジーンの機転でスリーパーを見破ったグラントは、機内に乗っていた警官との連携でスリーパーを倒し、起爆装置は解除された。銃撃戦が開始され、テロリスト一味は全員倒されるが、ハッサンがパイロットたちを射殺したため、操縦する者のいない機は失速する。小型飛行機の操縦経験しかないグラントが操縦桿を握り、ジーンの協力で着陸を試みた。危機一髪、機は無事に着陸に成功し、乗客の生命は救われた。




9-11. 勝利への脱出  

監督 ジョン・ヒューストン 、 ロバート・ライガー
出演 シルヴェスター・スタローンマイケル・ケインペレ
1981年・アメリカ(冨士映画)

解説
占領下のパリで行なわれることになったドイツ・ナショナル・チームと連合軍捕虜選抜軍のサッカー・ゲームとそれを利用して脱走を試みる連合軍のならず者たちの姿を描く。製作はフレディ・フィールズ、監督は「王になろうとした男」 のジョン・ヒューストン、脚本はエヴァン・ジョーンズとヤボ・ブロンスキー、撮影はゲリー・フィッシャー、音楽はビル・コンティ、ゲーム・シーン、監督はロバート・ライガーが各々担当。出演はシルヴェスター・スタローン、マイケル・ケイン、ぺレ、マックス・フォン・シドー、キャロル・ローレ、ボビー・ムーア、アミドゥー、ダニエル・マッセイなど、

ストーリー
1943年。第2次大戦下のドイツ南方ゲンズドルフ収容所。そこでは、捕虜になった連合軍兵士たちが、鉄条網の中で、ボール・ゲームに暮れる絶望的な日々を送っていた。そんな捕虜たちの中に、目立って機敏なゲームぶりを発揮する男がいた。米軍大尉ハッチ(シルヴェスター・スタローン)だ。彼らの様子をじっとみつめる者がいた。ドイツ情報将校フォン・シュタイナー(マックス・フォン・シドー)で、彼はふと、ドイツ・ナショナル・チーム対連合軍捕虜のサッカー試合を思いついた。戦前、英国ナショナル・チームのリーダーとして活躍していた捕虜のリーダー、コルビー大尉(マイケル・ケイン)は、このプランを受け入れ、条件として、ドイツ各地の捕虜収容所からの選抜でチームを組むことを要求した。その中には、サッカーの経験のないハッチの名もあった。コルビーは、このサッカー・ゲームを利用した巨大な脱走プランを練っていたのだ。一方、ドイツ軍上層部は、この試合をイベントとして対外宣伝に利用しようとしていた。捕虜チームの猛練習がはじまった。イギリスのテリー(ボビー・ムーア)など各国から、ならず者たちが集まるが、団結固い彼らに、部外者だったトリニダードのルイス(ペレ)がチームに参加した。サッカー経験のないハッチはルール違反でチームをタジタジにさせるが、彼は予定通り収容所を脱走し、パリでレジスタンス組織の美しい娘レニー(キャロル・ローレ)と接し、計画の全貌を知らされた。パリ郊外のコロムビア・スタジアムの選手の控え室の真下から外部に通じるトンネルを掘り、ゲームの最中に全員脱走という作戦だ。翌日収容所に戻ったハッチは仲間に詳細を告げ、ゲームではロール・キーパーの任についた。パリのスタジアムは観衆で埋めつくされ、ゲームは開始された。白熱のゲームが展開され劣勢に立つ連合軍チーム。計画では、ハーフ・タイムで控え室に戻った時、全員脱走するということだったが、試合を続行させたいルイスたちは、途中で計画を無視し、試合に戻ってしまった。そして、見事逆点優勝。喜ぶ大観衆は、そのまま興奮してグラウンドに乗り出し、連合軍チームの選手たちを取りまき、そのまま外へと誘導するのだった。




9-12. アトランティスのこころ

監督 スコット・ヒックス
出演 アンソニー・ホプキンスアントン・イェルチンホープ・デイヴィス
2001年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
シャイン」 でオスカー候補にもなった実力派スコット・ヒックス監督による人間ドラマ。超能力をもつ老人との出会いにより、大人へと成長する少年の姿が温かな感動を届ける。

ストーリー
アメリカ。50歳の写真家ボビー・フィールド(デイビッド・モース)は、二度と戻らない11歳の夏を思い出す。当時、父を幼い頃に亡くしたボビー(アントン・イェルチン)は、若く美しい母リズ(ホープ・デイビス)と小さな田舎町で暮らしていた。リズは自分の装飾品にはお金をかけるが、ボビーにはかまわなかった。二人の家の二階に、テッド(アンソニー・ホプキンス)という老人が下宿することになる。驚くほど知的な彼は、どこか謎めいた男だった。目の悪くなっているテッドは、ボビーに新聞を読む仕事を頼む。そして、「よく周りを見て、感覚を敏感にしておくこと」と言う。実はテッドは人の心を読む超能力者で、その力を利用しようと企む政府の機関から逃げていた。テッドは能力を求められているが、それを重荷に感じていた。歳の離れたボビーとテッドだが、二人は心を開き合いかけがえのない友達になった。「小さい頃は楽しいことばかりで、アトランティスのような幻の国にいるようだ。大人になると幻の国は消える」とテッドはボビーに今を大切にすることを伝えるが、リズによって政府の機関にテッドは連れ去られてしまう。ボビーはリズと引っ越すために、その思い出の町を離れたのだった。




9-13. コーチ・カーター

監督 トーマス・カーター
出演 サミュエル・L・ジャクソンロバート・リチャードロブ・ブラウン
2005年・アメリカ(UIP)

解説
名優サミュエル・L・ジャクソン主演の実話に基づいたスポーツ・ドラマ。希望のない青春を送る若者たちとバスケ・コーチが信頼で結ばれていくさまを熱く描き出す。

ストーリー
4勝22敗。ケン・カーター(サミュエル・L・ジャクソン)がコーチを引き受けた時、リッチモンド高バスケットボール・チーム、オイラーズの成績は惨憺たるものだったが、一番の問題は選手たちの意識にあった。反抗的なクルーズ(リック・ゴンザレス)、GFのキーラ(アシャンティ)が妊娠しているケニヨン(ロブ・ブラウン)、お調子者のワーム(アントウォン・タナー)、文字すら上手く読めないジュニア(ナナ・グベウォニョ)、父親が服役中のライル(チャニング・テイタム)…。環境の良くない街で育った彼らは自分の将来を考えることもなく、仲間同士の衝突が絶えなかった。同校のOBで、かつて全米代表にも選ばれたカーターが最初にしなければならなかったのは、まず規律を守らせること。「それが社会で勝つことのカギだ」と、選手たちに3つの“契約”を突きつけた。「ルール1:学業で、決められた点数以上の成績を収めること」「ルール2:授業にはすべて出席し、一番前の席に座ること」「ルール3:試合の日には上着とネクタイを着用すること」。契約を守らなければゲームには出さないという命令に、クルーズが捨てゼリフとともにコートを去り、残ったメンバーにカーターの激しいトレーニングが始まった。その厳しさは、チームに加わった息子のダミアン(ロバート・リチャード)にも、一切容赦はしないほどだった。練習は徐々に本格的となり、カーターも部員たちの心をつかみつつあった。迎えた新生オイラーズ第一戦。チームが大逆転で勝利を収めた時、観客の中にはクルーズの姿もあった。ドロップアウトした彼には、かつての仲間が輝いて見えていたのだ。そして翌日、彼はコートに現れる。「戻るにはどうしたら?」、「腕立て2500回、ダッシュ1000本。金曜までに!」。再生を賭けたクルーズの戦いが始まった。そして金曜日。クルーズはノルマをクリアできずにいたが、そのとき仲間たちが立ち上がる。彼の足りない分までダッシュと腕立てを始めたのだ。そんな姿を見て、カーターはチームがひとつになる瞬間を感じるのだった。勢いに乗ったチームの連勝とともに、選手たちは有頂天になっていった。しかし、それはカーターが目指した姿ではない。勝利に酔う選手たちに「勝つだけではダメだ!」と主張するカーターと、部員の進学など考えずコーチに専念するよう要請する校長との対立が、次第に露になっていく。チームの好成績が認められ、オイラーズは地区大会に進出することになった。決勝戦は奇跡の逆転勝利! 高揚した気持ちを抑えきれない選手たちは、宿舎を抜け出してパーティーに繰り出す。そこに乗り込んで来たカーターが見たものは、酒と女に溺れ、我を忘れている部員たち。勝利よりも子供たちの将来を考えてきたカーターの努力は、全く別の結果を生んでしまった。追い討ちをかけるように、部員たちの「学業進度報告書」がカーターを待っていた。それらのほとんどが「不合格」、「要個別指導」ばかり。カーターは、「契約した条件を満たすまで体育館を閉鎖する」と宣言。コートをロックアウトし、試合も放棄する決定を下す。それがチームにとって今シーズン初めての敗戦となる。それは当然のように校内をはじめ街中からも不満の声が上がり、マスコミが大挙して学校に押し寄せて来る。すでに事態はアメリカ中に、波紋を広げていくのだった。




9-14. シルミド

監督 カン・ウソク
出演 ソル・ギョングアン・ソンギホ・ジュノ
2003年・韓国(東映)

解説
韓国で大ヒットを記録した衝撃のドラマ。1971年に起きた実尾島(シルミド)事件をもとに、金日成(キム・イルスン)暗殺を命じられた特殊部隊の存在とその行方を描いた問題作。

ストーリー
1968年4月、インチョン沖に浮かぶ無人島シルミドに、死刑囚など重罪を犯した31人の男たちが極秘に集められた。彼らは韓国政府により684部隊の訓練兵という身分を与えられ、北朝鮮の金日成暗殺のための特殊部隊に仕立て上げられることに。隊長のチェ・ジェヒョン(アン・ソンギ)の指導の下、壮絶な特訓を課せられる31人。苛酷な日々の中、第3班班長となったインチャン(ソル・ギョング)は、第1班班長のサンピル(チョン・ジェヨン)とボクシングの試合で対戦、激しい打ち合いの末、勝利する。負けを認めないサンピルはインチャンにさらに喧嘩を吹っかけるが、これをきっかけに二人の間に信頼関係が生まれていく。一方、訓練は日ごとに厳しさを増し、インチャンの班員が転落死するにも至った。かくして3年以上が経過。いよいよ実行の時が近づくが、しかし直前になって、南北融和の気運が高まり外交路線を急遽変更した韓国政府は、中止命令を下した。今や国にとって邪魔になった684部隊の存在を隠蔽しようと、政府はジェヒョンに訓練兵の抹殺を命じる。悩んだ彼は、抹殺に反対する部下チョ(ホ・ジュノ)の出張中に粛正を行なおうとする。しかしジェヒョンの特別な計らいで抹殺計画を知ったインチャンは、サンピルたちと相談し、一致団結。訓練兵たちは銃を手に取り蜂起して、指揮官たちと激しい銃撃戦を繰り広げ、ジェヒョンはすべての責任をとって自殺する。激戦の末に島を脱出した彼らはバスを乗っ取り、ソウルの中心の青瓦台へと向かう。そして手榴弾で全員、バスごと自爆するのだった。




9-15. フリーダム・ライターズ

監督 リチャード・ラグラヴェネーズ
出演 ヒラリー・スワンクパトリック・デンプシースコット・グレン
2007年・アメリカ(UIP)

解説
2度のアカデミー賞主演女優賞に輝く、ヒラリー・スワンク主演のドラマ。すさんだ生活を送る高校生たちに“書かせること”で希望を与える女性教師の奮闘を感動的に紡ぎ出す。

ストーリー
ロサンゼルス郡ロングビーチ。様々な人種の集うウィルソン高校に新任国語教師エリン・グルーウェル(ヒラリー・スワンク)が赴任してくる。しかしクラスの生徒たちの反応は冷たい。それもそのはず、ロングビーチでは肌の色で境界線を引き、徒党を組み、人種間の憎しみをむき出しにしている状態であった。白人の女性教師など別世界の住人でしかなかったのである。エリンは夫に支えられながら、教材にラップを取り入れるなど努力を重ねていく。ある日の授業中、ラテンアメリカ系のティコ(ガブリエル・チャヴァリア)が黒人のジャマル(ディーンス・ワイアット)をバカにした絵を描く。エリンはその絵を見て、第二次世界大戦のホロコーストがこうした差別から生まれたことを説明するが、生徒たちは理解ができない。エリンは『アンネの日記』を教材にしようとするが、キャンベル教科長(イメルダ・スタウントン)に予算の無駄と拒否されてしまう。アンネが次にしたことは、「考えていることや思うこと、過去や未来、何でもいいから日記を書いて、読んでほしいときには棚に入れて」と生徒たちに日記帳を配ることだった。徐々に生徒たちは日記帳に本音を綴るようになってくる。彼らの生々しい言葉の数々と出口のない生活を実感したエリンは、教師とアルバイトを掛け持ちして、彼らに本を買い与えるようになる。夏休みがあけ、全員が2年生に進級する。目立たなかったミゲル(アントニオ・ガルシア)が朗読した日記の中には「家も何もないけれど、クラスのみんなと先生が希望を与えてくれた。ここが僕の家だ」とあり、203教室は無事にひとつにまとまっていくかのように思えた。しかし高まるエリンの熱意と比例して、キャンベル先生、さらには夫とも距離が生じていく。さらに銃撃事件の犯人として黒人生徒のグラントが逮捕されてしまう。逆風の中、生徒たちとエリンは卒業の日を迎えることができるのであろうか。




9-16. ストレンジャー・ザン・パラダイス 

監督 ジム・ジャームッシュ
出演 ジョン・ルーリーエスター・バリントリチャード・エドソン
1984年・アメリカ、西ドイツ (フランス映画社) 90分

解説
ニューヨークに住む若者とハンガリーからやって来たいとこの少女との触れ合いを描く。製作はサラ・ドライヴァー、エグゼクティヴ・プロデューサーはオットー・グロッケンバーガー、監督・脚本はミュージシャンでもありこの映画で日本初登場のジム・ジャームッシュ。撮影はトム・ディチロ、音楽は主演も兼ねるジョン・ルーリー、編集はジャームッシュとメロディ・ロンドンが担当。出演はルーリーの他にエスター・バリント、リチャード・エドソンなど。

ストーリー
ウィリー(ジョン・ルーリー)は、10年来ニューヨークに住んでいる。ハンガリー出身で本名はベラ・モルナー。クリーヴランドに住むロッテおばさん(セシリア・スターク)から電話が入り、彼女が入院する10日間だけ、16歳のいとこエヴァ(エスター・バリント)を預かるこどになった。エヴァはアメリカで新生活を始めるため、ブダペストからやって来るのだ。やって来たエヴァに、TVディナーやTVのアメリカン・フットボールを見せるウィリー。彼にはエディー(リチャード・エドソン)という友達がいて、2人は、競馬や賭博で毎日の生活を食いつないでいる。エヴァの同居をはじめ迷惑がっていたウィリーも、彼女が部屋の掃除や万引きしたTVディナーをプレゼントしてくれるうちに、親しみを覚えていった。お礼に贈つたドレスを、エヴァはうれしそうにもらうが、気持ちだけ受けとって、その趣味の悪いドレスをゴミ箱に捨てた。彼女がクリーヴランドに発った直後、ウィリーとエディーは、いかさまポーカーで大儲けして、借りた車でクリーヴランドヘ向った。クリーヴランドは雪におおわれており、ロッテおばさんの家で暖まった2人は、ホットドッグ・スタンドで働いているエヴァを迎えに行く。エヴァと彼女のボーイフレンドのビリー(ダニー・ローゼン)とクンフー映画を見に行ったり、エリー湖に行ったりした2人。数日を過ごした後、ウィリーとエディーは、ニューヨークに帰ることにするが、いかさまで儲けた600ドルのうち、まだ50ドルしか使ってないことに気づき、エヴァも誘つてフロリダに行くことにする。サングラスを買って太陽のふりそそぐ海辺に向かう。2人分の宿賃で安モーテルにもぐり込む3人。翌朝、エヴァが起きるとウィリーとエディはドッグレースに出かけており、有り金を殆どすって不機嫌な様子で戻って来た。やがて競馬でとり返すと言って彼らが出て行き、エヴァは土産物店でストローハットを買うが、その帽子のために麻薬の売人と間違えられ大金を手にする。競馬に勝って勇んで帰って来た2人は、エヴァのおき手紙と大金を発見して驚く。飛行場に急ぐ彼ら。しかし、エヴアは、その頃、考え直して安モーテルに戻ることにするのだった。




9-17. マッド・マックス

監督 ジョージ・ミラー
出演 メル・ギブソンジョアン・サミュエルヒュー・キース・バーン
1979年・オーストラリア(ワーナー・ブラザース)

解説
ショットガンとマグナム44を利用し黒のマシーンを駆る特別警察官マックスを中心に暴走族と追跡専門の警察との戦いを描くアクション映画。製作はバイロン・ケネディ、監督・脚本はジョージ・ミラー、撮影はデイヴィッド・エグビー、音楽はブライアン・メイ、スタントはグラント・ぺージ、フィル・ブラック、ジョージ・ノヴァック、デイヴィッド・ブラックス、クリス・アンダーソン、ディル・べンシュ、テリー・ダニエルスが各々担当。出演はメル・ギブソン、ジョアン・サミュエル、ヒュー・キース・バーン、スティーヴ・ビズレー、ティム・バーンズ、ロジャー・ワードなど。

ストーリー
黒皮の上下服を着込み、肩にはマグナム44、足にはショットガンを入れ、完全武装した警官マックス(メル・ギブソン)。彼は、追跡専門のパトカー、インターセプターに乗り、同僚のグース(スティーヴ・ビズレー)からの無線連絡で、ナイトライダーを追跡している最中だ。ナイトライダーとは、警官を殺し、パトカーを奪い、追跡車を次々に転倒させている悪漢だ。ナイトライダーは、ぴったりとくっついてくるインターセプターに恐怖心を抱き、咄嗟にブレーキを踏んで、そのまま工事中現場に突っこんでしまった。彼の死は、それからのマックスの生活に大きな変化をもたらした。家を守る妻のジェシー(ジョアン・サミュエル)は、マックスの仕事が不安でたまらない。ナイトライダーの死で、集まってきた彼の仲間たちが、復讐のために町の者を脅かし、狂暴さを示しだした。トッカーター(ヒュー・キース・バーン)を筆頭にしたグループ「アウトライダー」の面々の暴力性は増し、遂に親友のグースが殺された。翌日、上司フィフィ(ロジャー・ワード)に辞表を出し、家族と車で旅に出たマックスは、しかし、行先の伯母の牧場で思いがけない襲撃をうける。トッカーターを初めとしたアウトライダー達が、ここにも来ていたのだ。必死の思いで彼らを納屋に閉じこめ、車で逃げるマックス。ジェシーは息子を抱いて逃げる。しかし、2人は追跡してきたアウトライダー達にひき殺されてしまった。愛する者を奪われたマックスの怒りは爆発した。武装して、チューンアップしたインターセプターに乗り込んだマックスは、逆に挑戦を開始した。トッカーター、ジョニー(ティム・バーンズ)らは凄絶な戦いの結果、怒りに燃えるマックスの必死の攻撃に絶滅するのだった。




9-18. ハードボイルド 新・男たちの挽歌

監督 ジョン・ウー
出演 チョウ・ユンファトニー・レオンテレサ・モー
1992年・香港(パイオニアLDC)

解説
巨人密輸組織を相手に闘う警官と裏刑事の姿を描くアクション。監督は「狼たちの絆」 のジョン・ウー、製作はリンダ・クックとテレンス・チャン、脚本は本作が遺作となった「鬼喰う鬼」 のバリー・ウォン、撮影は「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」 のウォン・ウィン・ハン、音楽はマイケル・ギブスが担当。

ストーリー
ユン警部補(チョウ・ユンファ)=通称テキーラは腕利きの警官だが、その強引なやり方から拳銃取り引きの現場で乱闘となり、相棒のア・ロン(ボウイ・ラム)が殺されてしまう。上司のチャン警視(フィリップ・チャン)が秘密捜査官として送り込んだ部下も命を落としてしまった。数日後、図書館でひとりの男が殺された。武器輸出を扱うマフィアのボス、ホイの右腕であるトニー(トニー・レオン)の仕事だったが、彼はその腕前ゆえ対立組織のボス、ジョニー(ウォン・チョウサン)からも誘いがかかる。ジョニーはホイの武器庫を襲撃し、トニーはホイを裏切って彼を殺した。その銃撃戦の現場に駆けつけたユンはトニーと激しく撃ち合うが、最後のところで何故かトニーはユンを殺さなかった。トニーは実はチャンに送り込まれた裏刑事であり、より大きなジョニーの組織を壊滅するのが目的だった。事情を知ったユンはトニーと反目し合いながらも、協力して秘密武器庫がある病院に侵入。チャンや彼の秘書でユンの恋人でもあるテレサ(テレサ・モー)をはじめ警官隊も駆けつけ、大銃撃戦となる。大勢の患者を人質に取られ、敵の凄腕の殺し屋(國村隼)によりボロボロになりながらも2人はジョニーを追い詰めていく。トニーはジョニーの人質となってしまうが、トニーは自ら死を選ぶ。彼の犠牲としてジョニーはユンによって射殺され、長い戦いは漸く終わるのだった。




9-19. レイン・メーカー

監督 フランシス・フォード・コッポラ
出演 マット・デイモンクレア・デインズジョン・ヴォイト
1997年・アメリカ(ギャガ・コミュニケーションズ=ヒューマックス・ピクチャーズ)

解説
悪徳巣食う法廷に挑む若き弁護士の苦闘を描いた法廷ドラマ。ベストセラー作家ジョン・グリシャムの原作「原告側弁護人」(新潮社刊)を、「ジャック」 のフランシス・フォード・コッポラの監督・脚本・製作総指揮で映画化。ナレーションの執筆はマイケル・ハー。製作は「ゲーム」 (主演)「フェイス/オフ」 (製作)のマイケル・ダグラスと、スティーヴン・ルーサー、フレッド・ファーカス。撮影のジョン・トール、編集のバリー・マルキン、衣裳のアギー・ジェラード・ロジャースは「ジャック」 に続いてコッポラと組んだ。音楽は「大脱走」「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」 などのヴェテラン、エルマー・バーンスタイン。美術は「ロング・キス・グッドナイト」 のハワード・カミングス。主演は「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」 のマット・デイモン。共演は「ロミオ&ジュリエット」 のクレア・デーンズ、「アナコンダ」 のジョン・ヴォイト、「マーズ・アタック!」 のダニー・デヴィート、「ダブルチーム」 のミッキー・ローク、「リーサルウェポン3」 のダニー・グローヴァー、「のら猫の日記」 のメアリー・ケイ・プレイス、「ミニヴァー夫人」「ある日どこかで」 の老女優テレサ・ライト、「キャンディマン」 のヴァージニア・マドセン、「蜘蛛女」 のロイ・シャイダーなど、多彩な布陣。

ストーリー
弁護士志望の青年ルーディ・ベイラー(マット・デイモン)は苦労の末、悪徳弁護士のブルーザー・ストーン(ミッキー・ローク)に雇われた。相棒のデック(ダニー・デヴィート)は、病院に通いつめて交通事故の被害者から委任状をとりつけるという強引なやり口など、法律の実態をルーディに教える。彼の初仕事は、白血病の息子ダニー・レイ(ジョニー・ウィットワース)に対し、支払いを拒否している悪徳保険会社グレート・ベネフィット社をその母ドット・ブラック(メアリー・ケイ・プレイス)を原告に据えて訴えること。司法試験に合格したルーディ。だが、その矢先、雇い主のブルーザーは悪行が摘発されて雲隠れ。デックはルーディに独立しようと持ちかけ、ふたりは小さい事務所を構えた。そんな折り、ダニーは世を去った。訴訟棄却の審問会の日。ルーディは会社側の弁護士、老練なドラモンド(ジョン・ヴォイト)の立ち会いで宣誓し、晴れて弁護士になる。示談を狙う会社側だが、人権派のタイロン・キプラー(ダニー・グローヴァー)が担当判事となり、事態は好転、裁判が始まる。だが初めての法廷だけにルーディは苦戦。そんな彼を支えるのは頼りになるデックと、夫の暴力を耐え忍ぶケリー・ライカー(クレア・デーンズ)の存在だった。ケリーはルーディの説得で離婚を決意、彼女の夫はふたりを襲うが逆に倒され、とどめをさしたケリーは拘留される。裁判は佳境に入る。デックは会社が隠していた証人のジャッキー・レマンジック(ヴァージニア・マドセン)を探し出し、会社の支払い拒否の実態を明るみにするが、ドラモンドの逆襲で振り出しに。だが、最後に社長のキリー(ロイ・シャイダー)が証人席に呼び立てられた時、デックが雲隠れ中のブルーザーから仕入れた作戦が効を奏して、ルーディらは形勢逆転。陪審員は会社に有罪と多額の賠償金の支払いを宣告した。結局、社は直後に破産申告、賠償金は支払われなかったが、裁判には勝ったのだ。ルーディは司法関係の教育者になろうと進路変更を決め、正当防衛が認められて釈放されたケリーと新たな人生を迎えるのだった。




9-20. ロッキー

監督 ジョン・G・アヴィルドセン
出演 シルヴェスター・スタローンタリア・シャイアバート・ヤング
1976年・アメリカ(ユナイト)

解説
ボクシングに生きる若者の孤独、不安、愛、そして真の勝利とは……。第49回アカデミー作品賞、監督賞、編集賞受賞作品。76年度ゴールデン・グローブ最優秀作品賞受賞作品。製作はアーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ、監督は「ジョー」 のジョン・G・アビルドセン、脚本はシルヴェスター・スタローン(ノヴェライゼーション/S・スタローン、ジュリア・ソレル共著、二見書房刊)、撮影はジェームズ・クレイブ、音楽はビル・コンティが各々担当。出演はシルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、バージェス・メレディスなど。

ストーリー
フィラデルフィアはサウスサイドのスラム。そこに賞金稼ぎボクサー(プライズ・ファイター)としてヤクザな生活をしているロッキー(シルヴェスター・スタローン)がいた。今、彼には新たな生きがいがある。ペット・ショップに勤めるアドリアン(タリア・シャイア)に恋心を抱き始めたからだ。素朴な彼女は精肉工場に勤める兄ポーリー(バート・ヤング)と共に暮している。4回戦ボーイのロッキーは、今日もラフファイトぶりで勝利をおさめるが、『お前のようなガムシャラなファイトぶりではゼニにならん』と、ジムをほうり出されてしまう。酒場でポーリーと飲み交うロッキー。ポーリーはロッキーの妹への好意に感謝する。数日後、人生最大のチャンスが訪れた。近づく建国200年祭のイベントの一つ、世界タイトルマッチ出のアポロ(カール・ウェザース)の対戦相手がケガをしたため、代役としてロッキーが指定されたのだ。元ハードパンチャーとして鳴らしたポーリーが、かつてのジムの老トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)が各々彼の協力を申し出た。一方、アドリアンとの愛も育っている。孤独だったロッキーの人生は一変した。愛が、人生の目的が、そして自分を応援してくれる人々がいる。ロッキーの短期間の猛訓練が始まった。そして試合当日、ハデな衣装で入場するアポロ、片やポーリーの会社マーク入りのガウンのロッキー。賭け率は50対1。ゴングが鳴った。攻めるアポロ。負けじと打ち返すロッキー。7、8、9ラウンド。ロッキーの善戦、手を焼くアポロ。両者の腫れ上ったまぶたが血と汗にまみれる。死闘だ。遂に試合終了。凄まじい試合に酔いしれる観客達。結果は引き分けだった。だが、王座をかろうじて守ったアポロに比べ、恋人アドリアンの名を誇らかに呼び続けるロッキーには、敗北感など微塵にも感じられない。『ロッキー!ロッキー!』と異様な興奮のリング上で、抱き合うロッキーとアドリアンだった。




9-21. ロッキー2

監督 シルヴェスター・スタローン
出演 シルヴェスター・スタローンタリア・シャイアバート・ヤング
1978年・アメリカ(ユナイト映画)

解説
前作で、フィラデルフィアのチンピラから、世界ヘビー級タイトル・マッチで、アメリカ中のヒーローとなったロッキーが、結婚、ジュニアの誕生などをへて、苦悩しながらも人間的に成長していく姿を描く。製作はアーウィン・ウィンクラーとロバート・チャートフ、監督・脚本はシルベスター・スタローン、撮影はビル・バトラー、音楽はビル・コンティ、編集はダンフォード・B・グリーン、美術はリチャード・バーガーが各々担当。出演はシルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウエザース、バージェス・メレディス、トニー・バートン、ジョー・スピネル、レナード・ゲインズ、シルビア・ミールズ、バドカス・スタローンなど。

ストーリー
世界チャンピオン、アボロ・グリード(カール・ウェザース)陣営の倣慢ともいえる発想から行なわれた建国200年記念ヘビー級タイトル・マッチで王座を守ったとはいえ、アポロの闘いぶりには非難が集中し、挑戦者であるロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)の闘魂に世界中からの熱烈な賛辞がよせられた。フィラデルフィアのチンピラヤクザは、一夜にしてヒーローとなったが、猛烈な打ち合いでダメにした眼部が悪化し、医者からはボクシング続行を止められてしまった。数日後、傷のいえたロッキーは、恋人エイドリアン(タリア・シャイア)にかねてからの想いを打ち明け、彼女の方も待っていたかのようにすぐOK。間もなく、内輪の人々だけのささやかな結婚式が教会で挙げられた。ローンで買った新居に移り、トランザムの新車を購入し、安らかな新生活がはじまった。やがて、エイドリアンが妊娠し、いつまでものん気にはしていられないと感じたロッキーは、何か安定した職業に就こうと決心するが、一度名声を手にしてしまうと、かえって職がみつからない。そんな時、義兄のポーリー(バート・ヤング)が、CM出演の話を持ってきた。仕方なく同意して男性化粧品のCM撮りを行なうが、さんざんの失敗に終った。結局ポーリーの精肉工場で働くことになるが、経営状態のよくない工場は、ほどなく人員整理に踏み切り、ロッキーはクビを言いわたされる。一方、アポロは、ロッキーに対する復讐の念に燃えていた。巷に流布するアポロ再起不能の噂を打ち消すためにもロッキーと再戦し、決着をつける必要があった。アポロ陣営はマスコミを総動員し、ロッキーへの挑戦を開始した。ロッキーの眼を心配するエイドリアンやトレーナーを依頼したミッキー(バージェス・メレディス)の反対にも関わらず、人生の壁につき当っていたロッキーは、再戦する決心をした。ポーリーから、ロッキーを駄目にしているのはお前ではないかと言われ、ショックを受けたエイドリアンは、そのために早産の危機に見舞われ、待望の2世を授かったものの、母体は危険な状態に落ち入った。長い昏睡が続く妻の傍らで、ロッキーは、闘うことをあきらめるが数週間後、眠りから覚めたエイドリアンは、ロッキーに闘うことを望んだ。トレーニング期間は予定の半分しか残っていなかったが、ダウンタウンの人々や子供たちの声援を背に、ロッキーはひたすら走った。試合当日、世紀のリマッチに会場のフィラデルフィア・ミュージアムは満員の観衆でむせかえり、運命のゴングが鳴った。そして、激しい闘いの結果、遂にロッキーは勝利を手にするのだった。




9-22. ロッキー3

監督 シルヴェスター・スタローン
出演 シルヴェスター・スタローンタリア・シャイアバート・ヤング
1982年・アメリカ(ユナイト映画)

解説
しがない4回戦ボーイからヘビー級チャンピオンの座を獲得したボクサーを描く「ロッキー」 シリーズ最終編。製作は「レイジング・ブル」 のロバート・チャートフとアーウィン・ウィンクラー、製作総指揮はハーブ・ナナス、監督・脚本・主演は、前作に引き続いてシルベスター・スタローン、撮影はビル・バトラー、音楽はビル・コンティが各々担当。出演はスタローンの他にタリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザーズ、バージェス・メレディス、ミスター・T、そしてプロレスラーのハルク・ホーガンがゲスト出演している。

ストーリー
凄絶な死闘の末、アポロ・リード(カール・ウェザーズ)を倒しヘビー級の新チャンピオンとなったロッキー・バルボア(シルベスター・スタローン)は、底辺から這い上がったヒーローとして大衆、マスコミ界から熱烈に歓迎された。それから3年、ロッキーは妻エイドリアン(タリア・シャイア)、ロッキー・ジュニア、義兄ポーリー(バート・ヤング)、トレーナーのミッキー(バージェス・メレディス)らの熱い声援を背に、勝利の道をひたすら走り続け、10度の防衛を記録した。だが、これ以上高みへ昇る目標もない、充ち足りた日々はロッキーからハングリー精神を奪っていた。チャリティーで怪物レスラー(ハルク・ホーガン)と戦い観客を熱狂させたものの、所詮は真剣勝負など望むべくもないショーに過ぎなかった。しかも、凄い戦績で彼を猛追しているクラバー・ラング(ミスター・T)の存在があった。その頃、ロッキーを讃えて市の博物館前に巨大なブロンズ像が設置されることになった。その除幕式に出席したロッキーは感謝のスピーチの最後に、引退を宣言。ところが、観衆の中にいたクラバーがロッキーの弱腰をなじり、エイドリアンをも侮辱する言葉に、ロッキーは挑戦を受けたが、ミッキーは「3ラウンドしか持たない」と悲観的だった。やがて試合当日。ミッキーが心臓の痛みを訴えて倒れた。不安な思いでリングにのぼったロッキーに、クラバーのハンマー・パンチが炸裂。ロッキーは2ラウンドともたなかった。しかも控え室に戻ったロッキーを待っていたのはミッキーの死だった。奈落の底に叩き落とされたロッキーに協力を申し出たのは、かつての宿敵アポロだ。彼は、ロッキーに失われた闘争本能を取り戻すべく、彼を下町の黒人ジムに移し、1から徹底的にトレーニングをし直した。最初は弱気のロッキーだったが、アポロとエイドリアンの叱咤激励によって、ハングリーだったかつての姿が甦えった。クラバーとのリターン・マッチの日、生き返ったように軽快なロッキーは、苦闘しながらもついに栄光の座を取り戻した。




9-23. ロッキー4

監督 シルヴェスター・スタローン
出演 シルヴェスター・スタローンタリア・シャイアバート・ヤング
1985年・アメリカ(UIP)

解説
宿敵であり親友であるファイター、アポロを絶命させたソ連の殺人マシーンドラゴに挑戦するロッキーの雄姿を描く。製作はアーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ、エグゼクティヴ・プロデューサーはジェイムズ・D・ブルベイカーとアーサー・コバニアン。監督・脚本・主演は「ロッキー3」 のシルヴェスター・スタローン、撮影はビル・バトラー、音楽はヴィンス・ディコーラが担当。共演はタリア・シャイア、バート・ヤングなど。

ストーリー
かつて、2度にわたり壮絶なヘビー級タイトルマッチを演じたロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)とアポロ・クリード(カール・ウェザーズ)は、リングの上では宿敵だったが、今では固い友情で結ばれていた。妻のエイドリアン(タリア・シャイア)とも結婚9年日を迎え、一粒種のロッキー・ジュニア(ロッキー・クラコフ)と幸せな日々を過ごしているロッキー。義兄のポーリー(バート・ヤング)の誕生日に、身のまわりの世話までできるロボットを贈るほど、その生活ぶりは豊かだった。一方、ソ連のアマチュア・ヘビー級ヂャンピオン、ドラゴ(ドルフ・ラングレン)が渡米したとのニュースをTVで知ったアポロは、ドラゴがロッキーと闘いたがっているのを知ると、ロッキーを訪れ、かわって自分を試合に出させてほしいと懇願する。ドラゴとアポロのエキシビジョン・マッチが決まった。ラスヴェガス、MGMホテルの特設リングで米ソ両大国の試合が盛大に行なわれた。妻ルドミラ(ブリジット・ニールセン)やコーチらのもとで最新鋭科学の粋を駆使したトレーニングを積んだ巨大な肉体をもつドラゴは、アポロを打ちのめし、アポロはリング上で絶命した。血に染まったアポロを抱きながら、ロッキーは復讐の炎に燃えた。12月25日のクリスマスにモスクワでドラゴとロッキーの試合が行なわれることになった。自殺行為だと猛反対するエイドリアンをなだめると、ロッキーはシベリアの田舎町にわたった。科学的トレーリングを積むドラゴに対して見渡す限りの雪原で自然に挑戦するかのように、走り、木を切り、荷車を引くロッキー。かつてないほどのトレーニングを積んだ後、ドラゴの待つモスクワへと向かうロッキー。米ソのみならず、全世界が注目する超満員の試合会場にはソ連の政府最高首脳陣の姿も見える。会場に入ったロッキーに、大観衆は敵意のブーイングをなげかけた。四面楚歌のリソグで、いよいよドラゴを迎えるロッキー。意外なほどのロッキーのねばりで熱戦に次ぐ熱戦が続き、観衆はいつしか、ロッキーの不屈の闘士に賛同し、ロッキーに惜しみない拍手を送った。そして、遂に最終ラウンドでロッキーはドラゴを倒すのだった。




9-24. ロッキー・ザ・ファイナル

監督 シルヴェスター・スタローン
出演 シルヴェスター・スタローンバート・ヤングアントニオ・ターヴァー
2006年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
シルベスター・スタローンの出世作にしてアカデミー作品賞を受賞した「ロッキー」 。その人気シリーズの30年の集大成。過去作品へのオマージュが満載の感動ドラマだ。

ストーリー
元ボクシング界のスター、ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)は、妻エイドリアンに先立たれ、地元フィラデルフィアでイタリアン・レストランを経営しながら静かな日々を送っていた。息子のロバート(マイロ・ヴィンティミリア)は有名人である父に引け目を感じて家を飛び出しており、ロッキーは孤独を感じていた。そんなある時、ロッキーは昔、少し世話をしたことのあるシングルマザーのマリー(ジェラルディン・ヒューズ)に出会う。彼女とその息子ステップス(ジェームズ・フランシス・ケリー三世)との交流をきっかけに、心に火が灯り始めたロッキーは、再びボクシングを始めることを決意。熱い思いをエイドリアンの兄で親友のポーリー(バート・ヤング)に告白し、プロ・ボクサーのライセンスを再申請する。復帰を果たしたロッキーは、世界ヘヴィー級チャンピオンのディクソン(アントニオ・ターヴァー)とリングで戦うことに。そしてマリーや、勤務先の食肉工場をクビになったポーリー、人生に迷って舞い戻ってきたロバートらの協力を得て、猛トレーニングを積んでいく。いよいよ試合の日、大観衆が詰め掛けたラスベガスのリングに上がったロッキーは、ディクソンと互角の勝負を繰り広げる。結果は判定負けになったが、客席からはロッキーへの声援が止むことがなかった。




9-25. ファン・ジニ

監督 チャン・ユニョン
出演 ソン・ヘギョユ・ジテリュ・スンリョン
2007年・韓国(コムストック・グループ)

解説
韓国の大ヒットテレビ時代劇の劇場版。16世紀の朝鮮を舞台に、貴族の娘から芸妓へと身を落とした実在の女性ファン・ジニの波乱に満ちた生涯とその恋の物語が描かれる。

ストーリー
差別が色濃く残り、人々が富のために嘘も戦いもいとわなかった16世紀、朝鮮王朝時代。その時代に両班(貴族)の娘として育ったチニ=ファン・ジニ(ソン・ヘギョ)のそばにはいつも、友人であり奴婢であるノミ(ユ・ジテ)の姿があった。チニに縁談が持ち込まれ、結婚式が間近に迫った頃、チニは、父が母の下女を手ごめにし、生まれた子供が自分であることを知ってしまう。結婚は破談、チニは家を出て妓生(芸妓)となった母と同じ道を選ぶことを決意する。生まれ育った家に別れを告げ、ノミに自分を抱いてほしいと願いでるチニ。ノミは、チニの嫁ぎ先に出生の秘密を漏らしたことを告白するが、それでもチニは愛するノミに身体を捧げるのだった。チニは明月と名乗り、妓生としての道を歩きはじめる。しかし、ノミはチニが他の男に抱かれるのを見ることに耐えられず、彼女から去っていった。5年後。様々な芸を身につけ、男たちを知性と教養でやりこめる妓生になったチニは、位の高い長官さえも身体に触れさせぬままそのプライドと美しさの虜にしていた。そんなある日、奪ったものを平民たちに分け与える窃盗団が町に出現。チニは盗賊を率いているのがノミであることに気付き、密かに彼の逃亡の手助けをする。チニが可愛がる奴婢たちの結婚式の日。窃盗団を捕らえようとする長官は、チニとノミの関係を知る。奴婢がノミと連絡を取り合っているとにらんだ長官は、結婚式を妨害。チニはノミを助けるために、長官に身体を捧げることを決意する……。




9-26. ウィンチェスター銃 73

監督 アンソニー・マン
出演 ジェームズ・スチュアートシェリー・ウィンタースダン・デュリエ
1950年・アメリカ(日本ユニヴァーサル)

解説
「愛と血の大地」 の助監督などを経て製作者となアーロン・ローゼンバーグ製作になる1950年度西部劇。「暴力行為」 のロバート・リチャーズと、「赤い河」 のボーデン・チェイスが脚本を書き、「草原の帝王」 のアンソニー・マンが監督した。撮影は「ハーヴェイ」 のウィリアム・ダニエルス、音楽監督はジョゼフ・ガーシェンソンの担当。「ハーヴェイ」 のジェームズ・ステュワートを中心に、「二重生活」 のシェリー・ウィンタース、「サハラ戦車隊」 のダン・デュリエ、「鉄路の弾痕」 のスティーブン・マクナリーらが共演、以下ミラード・ミッチェル、チャールズ・ドレイク、ジョン・マッキンタイアらが助演する。

ストーリー
1873年7月4日、リン・マカダム(ジェームズ・スチュアート)と“ハイ・スペード”ジョニー・ウィルスン(ミラード・ミッチェル)は、仇敵ヘンリー・ブラウン(スティーブン・マクナリー)を求めてドッジ・シティに乗り込んだ。ヘンリーは、かつてリンが射撃コンテストで獲得したウィンチェスター・ライフル銃を持って砂漠へ逃げ込み、リンとハイ・スペードは早速これを追いかけた。ところがヘンリーは、途中でポーカーに負けて銃を商人のラモントにせしめられ、更にラモントはインディアン酋長ヤング・ブルに巻き上げられた。ヤング・ブルは部下を糾合して合衆国騎兵隊を襲おうとしていた。リンとハイ・スペードは街のダンサーのローラ(シェリー・ウィンタース)やその許婚者スティーヴらとともにき兵隊に同行していたが、、奮戦の末インディアンを撃退、銃はスティーヴの手に渡った。ただしスティーヴは無法者ワコ・キッドとの争いで殺され、銃を奪ったキッドはローラをさらった上、ヘンリーと共に町の銀行を襲撃した。この襲撃は失敗に終り、キッドはころされれて銃は再びヘンリーの手に帰った。彼はこれをもって逃げ出したが、ついに追い付いたリンに捕らえられ、あえなく最後を遂げた。リンは今や運命の銃の由来から「ウィンチェスター」と仇名されるヒーローとなり、ハイ・スペードと共にドッジ・シティに引き揚げた。




9-27. お買い物中毒な私!

監督 P・J・ホーガン
出演 アイラ・フィッシャークリステン・リッターヒュー・ダンシー
2009年・アメリカ(ウォルト・ディズニースタジオ=モーション・ピクチャーズジャパン)

解説
若い女性たちの心をつかみ、世界中でベストセラーとなった小説をジェリー・ブラッカイマーが映画化。夢をあきらめずに前向きに生きるヒロインの姿を描くサクセス・ストーリー。

ストーリー
レベッカ・ブルームウッド(アイラ・フィッシャー)は、一流ファッション誌の記者を夢見るNY在住の25歳。でも理想と現実はあまりに遠く、彼女が働くのは地味な園芸雑誌の編集部。どんなに期待外れの毎日でも、レベッカには魔法のストレス解消法があった。それは“お買いもの”であった。そもそも女性には買いものをする理由がいくらでもある。「恋をしたから」「ふられたから」「仕事が上手くいったから」「仕事がサイテーだったから」気がついたら、お買いものが止まらない。レベッカはかなり重症な“お買いもの中毒”だったのだ。こんな生活、普通のOLには長く続かない。ついにカードの限度額を超えてしまったレベッカは、生活を立て直すため転職活動を開始。狙いを定めたのは、憧れのファッション誌の編集部……のはずが、なぜか同じ出版社のお堅い経済誌に雇われることに。「お買いもの中毒のあなたが、経済誌の記者なんて、悪い冗談よ」と友人に笑われても、今のレベッカに仕事を選んでいる余裕はない。ところが意外なことに、消費者の気持ちを知りつくしたレベッカの記事は、編集長ルークの高い評価を受ける。仕事を褒められるのって、最高だと感じるレベッカ。しかも編集長ルークはよくよく見るとハンサム。「こんな私でも、絶対に幸せになる!」人生の大逆転をかけて、今レベッカの反撃が始まった!!




9-28. 最後の恋のはじめ方

監督 アンディ・テナント
出演 ウィル・スミスエヴァ・メンデスケヴィン・ジェームズ
2005年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ)

解説
ウィル・スミス扮するデート・コンサルタントが自らの恋に奮闘するラブ・コメディ。恋愛下手な男女が幸せをつかむまでを、軽妙な本音トークを交えて描く。

ストーリー
ニューヨーク。デート・コンサルタントを営むヒッチ(ウィル・スミス)は、不器用な男たちが結婚にゴールインできるように恋愛指南を続けている。ある日ヒッチは、モテない勤め人の男、アルバート(ケヴィン・ジェームズ)から依頼を受けた。彼は、自身が資産管理を担当するコール財団のセレブ、アレグラ(アンバー・ヴァレッタ)に恋してしまったのだという。ヒッチのアドバイスのおかげで、アルバートはアレグラとデートをすることになり、念願のキスまで成功させる。一方、ヒッチはバーで出会ったゴシップ記事専門の新聞記者、サラ(エヴァ・メンデス)に恋をする。満を持して彼女とのデートに臨んだヒッチだったが、仕掛けたことが裏目に出て、満足のいくデートにはならなかった。しかし意外にも、サラの方から次のデートの誘いが来る。追いかけているアレグラのスキャンダルに、ヒッチが関わっていることを知り、その情報収集をしようと目論んだのだ。デート中、サラの目的に気づいたヒッチだったが、彼女の家で夜を過ごし、翌朝初めてのキスをする。だがサラは、親友のケイシー(ジュリー・アン・エメリー)を傷つけたと誤解しているデート・コンサルタントの正体も追っており、それがヒッチだと分かった途端、激怒。ヒッチの正体と、彼にコンサルタントを依頼していたアルバートのことを、暴露記事として世間に晒してしまう。このスキャンダルのせいで、ヒッチとサラに続き、アルバートとアレグラも破局。だが真剣にアレグラを愛していたアルバートは、彼女に再びアタックして、彼女のハートを本当にモノにする。それに刺激されたヒッチは、サラとの誤解を解き、2人はめでたく結ばれるのだった。




9-29. ウディ・アレンの夢と犯罪

監督 ウディ・アレン
出演 ユアン・マクレガーコリン・ファレルヘイレイ・アトウェル
2007年・イギリス(アルバトロス・フィルム(提供 ニューセレクト))

解説
恋愛映画の名手、ウディ・アレンによる人間ドラマ。あることをきっかけに、悲劇的な運命をたどる兄弟の姿を描く。ユアン・マクレガーとコリン・ファレルが対照的な性格の兄弟を熱演。いもの中毒な私!

ストーリー
ロンドン南部。父親が営むレストランで働くブレイン家の長男イアン(ユアン・マクレガー)は、カリフォルニアのホテル事業に投資し、そのリターンを元手にビジネスマンとして新たな人生を踏み出すという夢を描いていた。一方、自動車修理工場に勤めるイアンの弟テリー(コリン・ファレル)は、酒とギャンブルをこよなく愛し、さしたる不満もない気楽な日々を送っている。恋人ケイト(サリー・ホーキンス)と一緒に住むマイホームを持つことが唯一の希望であった。夢も性格も対照的だが、お互いに良好な関係を保っている兄弟は、格安の6000ポンドで売りに出されていた小型クルーザーをローンで共同購入、テリーがドッグレースで大穴を当てた犬の名にちなんで“カサンドラズ・ドリーム号”と名付ける。そんなある日、イアンは車の故障で立ち往生していたアンジェラ(ヘイリー・アトウェル)という若い女優を助け、そのお礼として彼女が出演中の舞台に招待される。やがてテリーの修理工場から借りた高級車でリッチな雰囲気を演出し、港町ブライトンに繰り出したイアンは、モデルの仕事を終えたアンジェラとホテルで結ばれる。自らの人生が輝き始めたことを実感するイアンであったが、テリーがマイホームの資金ほしさに危険なポーカー勝負に手を出し、ヤミ金相手に9万ポンドもの借金があることを聞く。ところがまもなくして、カリフォルニアや中国で美容関係の事業を行っている伯父・ハワード(トム・ウィルキンソン)が、家族に会うためにやって来る。一族きっての成功者である彼ならば、テリーの借金もイアンのホテル投資の軍資金も肩代わりしてくれるだろうと期待した兄弟だったが、ハワードは意外な交換条件を二人に切り出す。「マーティン・バーンズという男を処分するんだ……」。ホテルのレストランでバーンズの顔を確認したイアンとテリーは、手製のピストルを胸元に忍ばせ、彼に近づいていった……。




9-30. きみがぼくを見つけた日

監督 ロベルト・シュヴェンケ
出演 ミシェル・ノルデンアレックス・フェリスアーリス・ハワード
2009年・アメリカ(ワーナー)

解説
全米ベストセラーの純愛小説を映像化。時空を旅する能力を持つ男と、彼と運命の恋に落ちた女性の愛をつづる。時に引き裂かれる2人のせつない運命の行方に目が離せない。

ストーリー
遺伝子に異変をきたしているヘンリー(エリック・バナ)は、時空を旅する“タイムトラベラー”の運命を背負っていた。彼はある時間軸にとどまることなく、過去、現在、未来を瞬間移動してしまう。いつ、どの時代のどこに飛ぶのかを、自分で選ぶことはできない。ヘンリーはその秘密を抱え、常に孤独な人生を送っていた。ある日ヘンリーは、過去の世界で1人の少女と出会う。その少女・クレアは、物心ついたときからヘンリーに想いを寄せるようになる。そして心の美しい女性に成長したクレア(レイチェル・マクアダムス)はヘンリーと愛し合い、2人は結ばれると信じていた。しかし2人の前に、宿命が立ちはだかる。ヘンリーは何の前触れもなく彼女のもとから引き離され、再び会えるのかもわからなくなる。それでもクレアは、愛する人とともに生きようとする。




9-31. プルーフ・オブ・マイ・ライフ

監督 ジョン・マッデン
出演 グウィネス・パルトロウアンソニー・ホプキンスジェイク・ギレンホール
2005年・アメリカ(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
恋におちたシェイクスピア」 の名コンビ、ジョン・マッデン監督&グウィネス・パルトロウ主演の感動ドラマ。天才数学者である父を亡くした女性の人生の再生を見つめる。

ストーリー
27歳の誕生日を迎えた美貌の天才数学者、キャサリン(グウィネス・パルトロウ)は生きる気力を失っていた。シカゴ大学で教鞭を取り、天才数学者と讃えられた父ロバート(アンソニー・ホプキンス)が一週間前に亡くなったのだ。精神のバランスを崩した父を一人で看病していたキャサリンにとって、父は師であり、人生の羅針盤であった。そんなキャサリンのもとに、父の教え子だったハル(ジェイク・ギレンホール)がやって来る。彼はキャサリンにほのかな想いを寄せていた。やがて父の葬儀に出席するために、キャサリンの姉クレア(ホープ・デイヴィス)がニューヨークからやって来る。通貨アナリストとして第一線で働くクレアは、父と妹の絆を自分には関係ないものとして避けていた。葬儀が終わったあと、周囲の無神経な態度にますます傷ついていくキャサリン。そんな彼女を、ハルだけが優しく見守ってくれた。その夜、二人は恋に落ちる。翌朝、久しぶりに喜びの気分に満たされたキャサリンは、ハルに一本の鍵を差し出す。それはロバートの書斎のデスクの鍵だった。そしてハルは、デスクから一冊のノートを見つける。そこには、どんな数学者も成し遂げられなかった定理の証明が記されていた。興奮するハル。だがキャサリンは、その論証を書いたのは父ではなく自分だと主張するのだった。




9-32. アンナ・カレーニナ 

監督 ジョー・ライト
出演 キーラ・ナイトレイジュード・ロウアーロン・テイラー=ジョンソン
2012年・イギリス(ギャガ)

解説
ロシアの文豪トルストイの最高傑作として知られるラブストーリーを、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督が、キーラ・ナイトレイ主演で映画化。19世紀末のロシアを舞台に、愛のない結婚をしたヒロインが運命の男性と出会い、真実の愛に目覚める姿を描き出す。ジュード・ロウほか、実力派が多数共演する。

ストーリー
19世紀末、帝政末期を迎えているロシア。サンクト・ペテルブルクで社交界の華と謳われる美貌の持ち主アンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)は、政府高官を務める夫カレーニン(ジュード・ロウ)に愛情を持てずにいた。モスクワへ向かう中、騎兵将校のヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と出会ったアンナ。二人は一目見たときから恋に落ちてしまう。自制心を働かせようとするも、舞踏会で再会したときには燃えさかる情熱を止めることができなくなっていた。アンナは社交界も夫も捨てヴロンスキーとの愛に身を投じるが、それは同時に破滅へと向かうことになっていく……。




9-33. ココ・アヴァン・シャネル

監督 アンヌ・フォンティーヌ
出演 オドレイ・トトゥブノワ・ポールヴールドアレッサンドロ・ニヴォラ
2009年・フランス(ワーナー・ブラザーズ映画)

解説
全仏の興収ランキングで1位に輝いた伝記映画。モード界のトップ・ブランド"シャネル"の生みの親であるココ・シャネルの若き日を、オドレイ・トトゥが華やかに演じる。

ストーリー
まだ小さな少女、ガブリエル・シャネル(オドレイ・トトゥ)は、フランスの田舎にある孤児院に姉と一緒に入れられ、毎週日曜、決して来ることのない父親の迎えをひたすら待ち続けた。その後、彼女はナイトクラブの歌手となり、酔った兵士相手にか細い声で歌い、その一方で、慎ましいお針子として田舎の仕立屋の奥でスカートのすそを縫う日々を送っていた。ある日、将校のエティエンヌ・バルザン(ブノワ・ポールブールド)と出会ったガブリエルは、彼の愛人となるが、その生活は退廃的で退屈なだけであった。そんな中、彼女は突然恋に落ちる。相手はイギリス人実業家のボーイ・カペル(アレッサンドロ・ニボラ)。その想いに報いてくれた彼だったが、結婚は叶わず、ガブリエルは自分が生涯、誰の妻にもならないことを悟るのであった。自分が生きる時代のしきたりを息苦しく感じていた彼女は、男性たちの服を身にまとってみせる。ガブリエルは、ファッションを通して女性を解放、世界中を魅了し、やがて伝説のファッション・デザイナー、ココ・シャネルとなるのであった。




9-34. きつねと私の12か月

監督 リュック・ジャケ
出演 ベルティーユ・ノエル=ブリュノーイザベル・カレートマ・ラリベルトゥ
2007年・フランス(松竹)

解説
「皇帝ペンギン」 のリュック・ジャケ監督が贈る、本国フランスで大ヒットを記録した動物ドラマ。仏アルプス地方の美しい自然を背景に、野生のキツネと少女との交流をつむぐ。

ストーリー
秋。少女リラ(ベルティーユ・ノエル=ブリュノー)は学校からの帰り道、森の小道で1匹の美しいきつねを見つける。しかしリラが近づくと、きつねは森の中へ消えていった。その日からリラはきつねを探し続ける。冬。雪に残るきつねの足跡を見つけたリラの耳に、獣の咆哮が聴こえる。顔を上げると、遠くの崖の上に2匹の狼が歩いていた。それに気を取られたリラは前方の崖から落ち、足を骨折する。春。足が治ったリラはきつねの巣穴を見つける。中を覗くと子狐がいた。翌朝リラが再び巣穴を訪れると、きつねが子狐を加えて出てきた。人間に巣穴を知られたので引越しをしているのだと気づき、リラは落胆する。続いてリラは木の上で待つ作戦に出た。そこから双眼鏡を覗いていると、ハリネズミがリラのパンを食べ始める。リラはそれを見て、パンできつねをおびき寄せることを思いつく。作戦は成功し、きつねはパン屑に誘われ姿を現すが、リラを見ると森の中へ姿を消した。夏。きつねはリラから食べ物を取っては去っていったが、その距離は縮まっていた。その内、リラはその場でうたた寝をする。そして目を覚ますと、きつねがリラを見つめていた。リラはきつねに、おちびちゃんという意味の“テトゥ”と名付けた。テトゥはゆっくり歩き出し、リラを森の様々なところへ案内した。ところが、最後の鍾乳洞でテトゥは見えなくなる。リラは何とか外に出るが、森はすっかり暗くなっていた。しかし雲の切れ間から月の光が差し込むと、安心して眠ってしまう。翌朝リラが目を覚ますと、傍らでテトゥが眠っていた。秋。すっかり仲良くなったリラとテトゥは、森の中で一緒に過ごすようになった。ある日、リラはテトゥの首にスカーフを巻き、縄を通す。嫌がるテトゥは縄を食いちぎり、森の中へ消えていく。翌日、テトゥがリラの家を訪ねてくる。リラは2階の自分の部屋にテトゥを入れるが、密室状態に恐怖を感じたテトゥは暴れ出し、狼狽するリラの前で悲劇は起こる。




9-35. スピードスピード

監督 ヤン・デ・ボン
出演 キアヌ・リーヴスデニス・ホッパーサンドラ・ブロック
1994年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
時限爆弾を抱え、猛スピードで疾走するバスの乗客を救うSWAT隊員の活躍を描いたノンストップ・アクション大作。監督は「氷の微笑」「ダイ・ハード」 のキャメラマン出身で、本作がデビューのヤン・デ・ボン。脚本は、これが初の劇場用作品のグラハム・ヨスト(黒澤明の脚本「暴走機関車」 にインスパイアされたという)。製作は「微笑みがえし」 のマーク・R・ゴードン、エグゼクティヴ・プロデューサーは「ビバリー・ヒルビリーズ じゃじゃ馬億万長者」 のイアン・ブライス。撮影は「フォーリング・ダウン」 のアンジェイ・バートコウィアク、編集は「レッド・オクトーバーを追え!」 でアカデミー賞候補となったジョン・ライト、スタント・コーディネートは「インディ・ジョーンズ」 3部作のゲイリー・M・ハイムズがそれぞれ担当。音楽は「ライオン・キング」 のマーク・マンシーナで、主題歌はビリー・アイドル。主演は「リトル・ブッダ」 のキアヌ・リーヴス。共演は「トゥルー・ロマンス」 のデニス・ホッパー、「デモリションマン」 のサンドラ・ブロックほか。

ストーリー
ロサンゼルスの高層ビルのエレベーターが爆発し、10数名が宙づり状態のまま閉じ込められた。脅迫電話が警察に入り、要求に応じなければケーブルを爆破し乗客を皆殺しにするという。ロス警察SWAT隊の若き行動派、ジャック(キアヌ・リーヴス)は、パートナーのハリー(ジェフ・ダニエルズ)と共に全員を救出した。彼はビルに潜んでいた犯人のハワード(デニス・ホッパー)と対峙するが、惜しくも逃げられる。数日後、ハワードは電話でジャックに「この前の仕返しに、市バスに爆弾を仕掛けた。時速80キロ以下に落とすと自動的に爆発する」と告げ、身代金を要求した。ジャックは15名の乗客を乗せて走るバスを追い、飛び乗った。重傷を負った運転手の代わりにアニー(サンドラ・ブロック)という若い女性がハンドルを握る。ロス市警が見守る中、バスはハイウェイを走り続けた。ジャックからの連絡で、起爆装置の腕時計が退職警官に贈られる物であることを知ったハリーは、当該リストから犯人を割り出した。やがて15メートルほどのハイウェイの未完部分に出くわすが、決死の空中大ジャンプで奇跡的に着陸に成功。ジャックは空港内の滑走路に入り、車内をビデオカメラで監視していた犯人のハワードをトリックで欺く。その隙にSWATと協力して乗客を救出すると、残ったアニーと共にバスから脱出する。そうとは知らぬハワードは身代金の受け渡し場所に現われ、金を奪って逃げる。ハワードは居合わせたアニーをさらい、走る地下鉄の列車に逃げ込む。ジャックも後を追って犯人を倒すが、2人は爆走する車内に閉じ込められて絶体絶命。暴走列車はついに地上に飛び出したが、2人は無事だった。




9-36. 太陽が知っている

監督 ジャック・ドレー
出演 アラン・ドロンロミー・シュナイダーモーリス・ロネ
1968年・フランス(ヘラルド)

解説
ジャン・クロード・カリエール、ジャン・エマニュエル・コニル、ジャック・ドレーの三人によるシナリオを、「ある晴れた朝突然に」 のジャック・ドレイが監督した。撮影は「さらば友よ」 のジャン・ジャック・タルベス、音楽は「華麗なる賭け」 のミシェル・ルグランが担当。出演は「あの胸にもういちど」 のアラン・ドロン、「夏の夜の10時30分」 のロミー・シュナイダー、「ペルーの鳥」 のモーリス・ロネ、「ナック」 のジェーン・バーキンほか。

ストーリー
太陽がまばゆいサントロペの豪華な別荘でジャン・ポール(アラン・ドロン)とマリアンヌ(ロミー・シュナイダー)は快適な休暇を過していた。しかし、マリアンヌが招待したハリー(モーリス・ロネ)とその娘ペネロープが別荘にやって来てから雰囲気は一変した。ハリーとマリアンヌはかつての恋人同士。そしてハリーは、ジャン・ポールの前に、今でも彼女を自分のものにする自信があるといい、自分に対し劣等感と憎悪を抱いているジャン・ポールに対し、露骨に軽蔑の態度をあらわすようになった。一方、マリアンヌは、ジャン・ポールとペネロープの間が心配だった。そして彼女はジャン・ポールを嫉妬させるため、わざとハリーと戯れた。数日後、ジャン・ポールとペネロープはハリーとマリアンヌが抱きあっている姿を見てしまった。ペネロープは父への反感からジャン・ポールの恋人になったが、次第に真の愛情を感じるようになっていった。娘を思うハリーは、酒をのんでジャン・ポールと喧嘩した。酔ったハリーはプールに突き落された。突然ジャン・ポールの胸に激しい憤りがわいた。プールから上ろうとするハリーの顔を、ジャン・ポールは水の中へと押しつけた。ハリーは死んだ。マリアンヌは事実を知っていたが、なにもいわなかった。ペネロープは母親のもとへ帰っていった。執擁な警察の調べにも、ジャン・ポールは動ぜず、殺人は完全犯罪となった。しかしジャン・ポールとマリアンヌの仲はもとにもどらなかった。愛し合っていた二人から、殺人者と真実を知りながら沈黙した共犯者という結びつきにかわった。彼らのこれからの生活は地獄にかわった。




9-37. 潜水服は蝶の夢を見る

監督 ジュリアン・シュナーベル
出演 マチュー・アマルリックエマニュエル・セニエマリ・ジョゼ・クローズ
2007年・フランス、アメリカ(アスミック・エース)

解説
順風満帆な人生から一転、身体の自由を失った男が、唯一動く左目の瞬きだけで自伝を書き上げた奇跡の実話を映画化。「ミュンヘン」 のM・アマルリックが難役の主人公を熱演。

ストーリー
病室で意識を取り戻したジャン=ドミニク・ボビー、通称ジャン=ドー(マチュー・アマルリック)は、自分が倒れ、昏睡から目覚めたのだと理解する。しかし自分の言葉が誰にも伝わらず、身体がまったく動かないことに気づく。主治医は、全身が麻痺する「ロックト・インシンドローム」であると告げる。唯一動くのは左目だけだった。かつての彼は「ELLE」誌の編集者として華やかな世界で働き、女性関係も忙しく、3人の子供にも恵まれていた。ジャン=ドーは、そのころとは掛け離れた現実を、潜水服に閉じ込められたように感じた。言語療法士のアンリエット(マリー=ジョゼ・クローズ)は、左目を使ったコミュニケーションの手段を発明する。「はい」なら1回、「いいえ」なら2回瞬きをするというものだ。使用頻度の高い順に並べられたアルファベットを読み上げていき、ジャン=ドーが左目で合図する。そうして文章を作ることで、蝶が自由に舞うように、記憶と想像力で自分もどこへでも行けると気づいたジャン=ドーは、生きる気力を取り戻す。ある日、編集者のクロード(アンヌ・コンシニ)が彼を訪ねる。ジャン=ドーは倒れる前に、本を執筆する契約を結んでいた。クロードは日々、ジャン=ドーが左目の瞬きで綴る文章を記録していく。それは彼の半生であり、父の記憶や、恋人ジョゼフィーヌと行ったルルドの記憶だった。ジャン=ドーが過去を旅する間も、父が誕生日に祝いの電話を掛けてくれたり、3人の子供とその母セリーヌ(エマニュエル・セニエ)が病室を訪ねて来たりした。ジャン=ドーは改めて周囲の人々に感謝の気持ちを抱き、その思いも本に綴る。理学療法士マリー(オラツ・ロペス・ヘルメンディア)とのリハビリで首や舌も動かせるようになり、父の日には家族で海に遊びに行くことができた。ジャン=ドーは快復の希望を胸に、執筆を続けるのだった……。




9-38. みんな元気

監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
出演 マルチェロ・マストロヤンニミシェル・モルガンマリーノ・チェンナ
1990年・イタリア、フランス(ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画)

解説
イタリア全土に散らばる子供たちを訪ねて歩く老人の旅を描いたロード・ムーヴィー形式のヒューマン・コメディ。エグゼキュティヴ・プロデューサーはマリオ・コトーネ、製作はアンジェロ・リッツォーリ、監督は「ニュー・シネマ・パラダイス」 のジュゼッペ・トルナトーレ、脚本はトルナトーレと「霧の中の風景」 のトニーノ・グエッラの共同、撮影はブラスコ・ジュラート、音楽はエンニオ・モリコーネが担当。出演はマルチェロ・マストロヤンニ、ミシェル・モルガンほか。

ストーリー
シチリア島に住む70歳のマッテオ・スクーロ(マルチェロ・マストロヤンニ)はイタリア中に散らばる自分の子供たちを訪ねて廻ることを思い立つ。まずナポリのアルヴァーロの所に向かうが家はもぬけの殻で途方に暮れるマッテオの前に子供の頃のアルヴァーロの幻が現れる。不吉な思いを胸に議員秘書をしているカニオ(マリーノ・チェンナ)の住むローマを訪れたマッテオだが、スリに間違えられ逮捕された所を危うく娘のトスカ(ヴァレリア・カヴァーリ)に助けられる。女優とモデルの仕事で大成功しているというトスカの言葉を鵜呑みにしたマッテオは大喜びでフィレンツェのトスカの(実は借りものの)豪華な家に泊まり、今度はミラノで打楽器奏者をしているグリエルモ(ロベルト・ノービル)の所へ向かうが、そこで彼は息子の家族の間がうまく行っていないことを知ってしまう。最後にトリノで幸福な結婚をしているはずの娘ノルマ(ノルマ・マルテッリ)の家を訪れたマッテオはそこでついに自分が見せられた子供たちの現在の姿は全て嘘で取り繕ったものであることを悟る。そして全員集合を約束したローマのレストランに来たのは、カニオとグリエルモだけだった。マッテオは4人の子供たちが自分にアルヴァーロの自殺を隠していたことを知り、沈んだ思いでシチリアに帰るが、丘の上に眠る妻の墓には「みんな元気だったよ」と報告するのだった。




9-39. パリ、恋人たちの2日間

監督 ジュリー・デルピー
出演 ジュリー・デルピーアダム・ゴールドバーグダニエル・ブリュール
2007年・フランス、ドイツ(アルバトロス・フィルム)

解説
人気女優ジュリー・デルピーが監督&主演など、一人六役を務めた恋愛劇。カルチャー・ギャップを交え、フランス人とアメリカ人の恋人に訪れる破局の危機をコミカルにつづる

ストーリー
付き合って2年になるフランス人フォトグラファー・マリオン(ジュリー・デルピー)とアメリカ人インテリアデザイナー・ジャック(アダム・ゴールドバーグ)はニューヨーク在住。ベネチアでのバカンスの後、彼女の故郷パリに立ち寄る。ジャックはテロを警戒しメトロやバスを嫌い、タクシーに乗ると主張する。マリオンは両親のアパルトマンの真上に部屋を購入する。その建物は古く、バスルームの天井はカビだらけだった。清潔好きなジャックは気味悪がるが、マリオンは清潔すぎるからアレルギーになると言う。マリオンはベネチア旅行前に、猫のジャン=リュックを両親に預けていた。彼女が引き取りに行くと、猫は驚異的に太っていた。母アンナ(マリー・ピレ)が賞味期限ギリギリのフォアグラを食べさせていたのだ。マリオンの声を聞いて出てきた父ジャノ(アルベール・デルピー)はアンナに加勢する。2人は両親と食卓を囲む。ジャノは知っている作家の名前を並べ立てる。そしてジャックを試そうとわざと画家の名前を挙げるが、ジャックはそれを指摘する。道端でマニュ(アレックス・ナオン)と出会う。ジャックを無視してマリオンを見つめるマニュ。苛立ったジャックはマリオンと言い争う。2人は友人宅のパーティーに参加する。ジャックは、フランス人たちが下半身にまつわる話題ばかりをぶつけてくるので落ち着かない。サンマルタン運河のカフェでガエルと再会する。ガエルもマリオンの元カレだった。マリオンの元カレにばかり遭遇するジャックは、彼女が部屋に置き忘れた携帯を見せる。そこにはマチューからのエロティックなメッセージがあった。2人はついに喧嘩別れすることに。1人になったジャックはファーストフードショップに入る。そこで相席になった男、ルカ(ダニエル・ブリュール)から、彼女の元に戻るように言われる。その日は“音楽の日”で、街中に音楽が溢れていた。マリオンとジャックはその中に紛れ込む。互いにこのひとときを一緒に過ごしたいと思いながらも、2人は出会えず……。




9-40. 十二人の怒れる男

監督 シドニー・ルメット
出演 ヘンリー・フォンダリー・J・コッブエド・ベグリー
1957年・アメリカ(ユニオン提供=松竹セレクト配給)

解説
「女優志願」 のシドニー・ルメットが監督したレジナルド・ローズのTVドラマの映画化。場所を1室に限定して、12人の陪審員によるある事件の審議が描かれる。脚色はローズ自身、TV劇の演出もルメットがあたった。撮影は「波止場」 のボリス・コーフマン。音楽ケニョン・ホプキンス。出演するのは「ワーロック(1959)」 のヘンリー・フォンダ、「暗黒街の女(1958)」 のリー・J・コッブ、エド・ベグリー、E・G・マーシャル、ジャック・ウォーデン、マーティン・バルサム、ジョン・フィードラー、ジャック・クラグマン、エドワード・ビンズら。製作ヘンリー・フォンダとレジナルド・ローズ。

ストーリー
ニューヨークの法廷で殺人事件の審理が終わった。被告は17歳の少年で、日頃から不良といわれ、飛び出しナイフで実父を殺した容疑だった。12人の陪審員が評決のため陪審室に引きあげてきた。夏の暑い日で彼らは疲れきっており、早く評決を済ませ家に帰りたがっていた。第1回の評決は11対1で有罪が圧倒的、しかし、判決は全員一致でなければならなかった。無罪は第8番(ヘンリー・フォンダ)ただ1人。彼は不幸な少年の身の上に同情し、犯人かもしれないが有罪の証拠がないといった。第3番(リー・J・コッブ)が証拠を読みあげた。殺人の行われた部屋の真下に住む老人が、当日の夜、少年が“殺してやる!”と叫んだのを聞いた。その直後、老人は少年を廊下でみかけた。警察は被害者の胸に飛び出しナイフが刺っているのを発見した。逮捕された少年はその時間に映画を見ていたという。だがその題名は思い出せなかった。第10番(エド・ベグリー)は殺人現場の向う側に、高架鉄道をはさんで住んでいる老婦人が、折から通過した回送電車の窓越しに、犯行を目撃した事実を指摘した。第6番(エドワード・バインス)は親子の仲が日頃から悪いことを重要視した。これに対し第8番はこれらの証言にも、万が一間違いがあるかもしれないと反駁した。陪審員たちは凶器のナイフを再検討した。被告はナイフを買ったことは認めたが、落としてなくしたという。警察は形が特別なもので、被告のものが凶器だと主張した。第8番は同形のナイフを自分のポケットから取り出した。この効果はあった。2度目の評決で第9番目(ジョセフ・スウィニー)が無罪に変わった。味方を得た第8番は、証言の不確かさを次々と反駁していった。第11番(ジョージ・ヴォスコヴェク)は少年が犯人なら、なぜ捕まるとわかっている自宅に帰ったのかと疑った。3回目の評決がとられた。無罪が4人に増えた。第2番(ジョン・フィードラー)が傷口のことにふれた。第5番(ジャック・クラグマン)は飛び出しナイフなら傷口の角度が逆だという。第8番の科学的な分析と、粘り強い説得で、第7番(ジャック・ウォーデン)、第1番(マーティン・バルサム)と第12番(ロバート・ウェバー)が無罪の側についた。いまだに有罪を主張するのは頑固な第3番と、第4番(E・G・マーシャル)と狂信的な第10番だけ。その時、第9番は第4番のかけている眼鏡から思いつき、証人の女が近眼で、彼女の証言が嘘だと指摘した。有罪は第3番だけになった。彼は自分の意見を述べた。が、論旨は通らず遂に自分の敗北を認めた。評決は全員一致で無罪となった。外に出た12人は、互いの名前も知らずに、夕立のやんだ街の中へと散っていった。




9-41. ボーン・スプレマシー 

監督 ポール・グリーングラス
出演 マット・デイモンフランカ・ポテンテブライアン・コックス
2004年・アメリカ(UIP) 109分

解説
マット・デイモン主演の大ヒット・スパイ・サスペンスの続編。恋人を殺され、CIAの陰謀に巻き込まれた元工作員が、追われる者から追う者へと転じ、し烈な闘いを展開する。

ストーリー
記憶を喪失したCIAのトップエージェント、ジェイソン・ボーンは過去を捨て、恋人マリーとともに新たな人生を踏み出した。だが、2年たっても記憶が完全には戻らないボーンを、過去が闘いの場に引き戻す。ベルリンで起きたCIAを震撼させる事件。同時期にCIA内部で不正を働いた者のリストの売り込みがあり、情報屋との取引現場を何者かが襲撃。エージェントと情報屋は殺され、犯人の唯一の手掛かりはひとつの指紋。それはジェイソン・ボーンのものだった。そのころ、インドのゴアでひっそりと暮らしていたボーンは殺し屋に襲われ、マリーが犠牲になってしまう。からくも窮地を脱したボーンは、CIAの仕業と考え、復讐に立ち上がるのだった。




9-42. 最高の人生の見つけ方

監督 ロブ・ライナー
出演 ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマンショーン・ヘイズ
2007年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン共演の感動作。共に余命わずかの富豪と自動車整備工が出会い、やり残したことを叶えようとする旅の様子を笑いと涙でつづる

ストーリー
46年の間、家族のためにひたすら働いてきた自動車整備工カーター・チェンバース(モーガン・フリーマン)。彼は学生時代、哲学の教授から勧められ“棺おけリスト”を作ったことがあった。それは、自分たちが棺おけに入る前に、やりたいこと、見たいものすべてを書き出したリストのことだった。とはいえ、カーターの前には現実という壁が立ちはだかった。結婚、子供、さまざまな責任。そのうち“棺おけリスト”は、そのチャンスを失ったという苦い思い出と、仕事の合間に時折思い出す程度の空想に変わっていた。一方、会社を大きくすることに人生のすべてをつぎ込んできた大金持ちの実業家エドワード・コール(ジャック・ニコルソン)。多忙な人生を過ごしてきた彼は、企業買収や美味しいコーヒーを飲むこと以上に、より深く自分が求めているものについて考えることさえできなかった。対照的な人生を歩んできた、出会うはずのない二人。しかし彼らは、ガンで余命6ヶ月と宣告され、病院のベッドで隣り合わせたことから、人生の最後を共に過ごす仲間となる。ベッドの上でカーターが取り出した“棺おけリスト”。そこにカーターは「荘厳な景色を見る」、「赤の他人に親切にする」、「涙が出るほど笑う」と記した。それを見たエドワードは「スカイダイビングをする」、「マスタングを乗り回す」、「ライオン狩りをする」、「世界一の美女にキスをする」と付け加える。こうして、病院を飛び出した二人の生涯最後の冒険旅行が始まる。タージマハルから野生の楽園セレンゲティ、最高級のレストランからいかがわしいタトゥーショップ、レースカーのコックピットからスカイダイビング用の小型機まで。ひとつまたひとつとリストを埋めていく中で、二人は生きる上で直面する様々な疑問に取り組むことになる。やがて、二人は気づかないうちに生涯の友になっていくのだった……。




9-43. グラン・トリノ 

監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッドビー・バンアーニー・ハー
2008年・アメリカ(ワーナー・ブラザース映画)

解説
クリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」 以来となる監督&主演作。近隣の人々との交流を頑なに拒んでいた元軍人の男とアジア系移民の家族との交流を描く。

ストーリー
妻を亡くしたウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、二人の息子や孫とも疎遠になった頑固で偏屈な老人だった。朝鮮戦争の帰還兵である彼は、戦場で人を殺した重い記憶から逃れられず、愛犬のデイジー以外には心を開けなくなっていた。妻と交流の深かった神父ヤノビッチ(クリストファー・カーレイ)からの懺悔の誘いも、ひたすら拒み続ける。かつてフォード社の自動車工だった彼の宝物は、ガレージで眠る72年型の愛車グラン・トリノだった。 ひとり暮らしを続ける彼の自宅の隣に引っ越してきたのは、東洋からやって来たモン族の一家だった。その息子タオ(ビー・バン)は従兄たちの不良グループからけしかけられて、グラン・トリノを盗もうとするが、それをきっかけにウォルトと出会う。タオの姉で人懐っこいスー(アーニー・ハー)とも知り合って、孤独だったウォルトの生活にも潤いが生まれた。父親のいない気弱なタオに対して、ウォルトは男としての誇りを教えていく。祖父と孫ほど年齢の違う二人は、次第に心を通わせあっていった。 しかし、不良グループたちは執拗なまでにタオを狙った。タオが傷つけられたことを知ったウォルトは、不良グループのメンバーのひとりを暴力で威嚇する。その報復として、タオの家は銃弾を浴びせかけられ、スーは暴行を受ける。 ウォルトの怒りは爆発した。一緒に戦いに行こうと叫ぶタオを部屋に閉じ込めたウォルトは、単身で不良グループの家へと向かう。彼らを怒らせたウォルトは、銃弾によって蜂の巣にされる。そして不良グループは警察から逮捕された。ウォルトの葬儀がヤノビッチ神父によって行われ、その遺言で愛車グラン・トリノはタオに与えられた。まるで新車のように輝くグラン・トリノには、ウォルトの半生が刻み込まれていた。デイジーを助手席に乗せてタオがハンドルを握ったグラン・トリノは、今日も街を駆け抜けていく。




9-44. 嘆きのテレーズ

監督 マルセル・カルネ
出演 シモーヌ・シニョレラフ・バローネジャック・デュビー
1952年・フランス(新外映)

解説
嘆きのテレーズ」(なげきのテレーズ、Thérèse Raquin)は1953年のフランスのサスペンス映画。 エミール・ゾラの1867年の小説「テレーズ・ラカン」を原作とし、舞台を現代(映画公開当時)に翻案した作品である。 1953年のヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(当時は、最高賞である金獅子賞にノミネートされた複数の作品に対して授与される準グランブリに相当する賞)を受賞している。

ストーリー
リヨンの裏町でラカン生地店の主婦になったテレーズ(シモーヌ・シニョレ)は、病弱なくせに傲慢な夫カミイユ(ジャク・デュビイ)、息子を溺愛するだけの姑ラカン夫人(シルヴィー)にはさまれて、冷たく暗い毎日を送っていた。貨物駅に勤めるカミイユは或日イタリア人のトラック運転手ローラン(ラフ・ヴァローネ)と知り合い、意気投合して家に連れて来た。逞ましく若々しいこの男の魅力にテレーズはみるみる惹かれ、ローランも...




9-45. ダンケルク

監督 アンリ・ヴェルヌイユ
出演 ジャン・ポール・ベルモンドカトリーヌ・スパークフランソワ・ペリエ
1964年・フランス、イタリア(ヘラルド)

解説
ロベール・メルルの小説「ズイドコートの週末」を「わんぱく戦争」 のフランソワ・ボワイエが脚色、「太陽の下の10万ドル」 のアンリ・ヴェルヌイユが演出した戦争映画。撮影は「輪舞(1964)」 のアンリ・ドカエ、音楽は「大列車作戦」 のモーリス・ジャールが担当した。出演は「太陽の下の10万ドル」 のジャン・ポール・ベルモンド、「フランス女性と恋愛」 のフランソワ・ペリエ、舞台俳優ジャン・ピエール・マリエル、「わんぱく旋風」 のピエール・モンディ、「輪舞(1964)」 のカトリーヌ・スパークなど。製作はロベール・アキムとレイモン・アキム。

ストーリー
一九四〇年六月初旬の土曜日だった。北仏ダンケルクにほど近いズイドコートの海岸には四〇万近い英仏連合軍の兵士達が絶望と不安に突き落されていた。マイヤ(J・P・ベルモンド)はズイドコートにアレクサンドル(F・ペリエ)デリイ(P・モンディ)ピエルソン(J・P・メリエル)という三人の戦友と野営していた。その頃、英国軍はドーヴァー海峡を渡り始めていたが、フランス兵の乗船は拒否しているという噂が広まった。英語が話せるマイヤは乗船交渉のため英軍の将校に会いに行ったが、彼は不在だった。マイヤは水を求めて一軒の家に入ったが、無人と思ったその家にはジャンヌ(C・スパーク)という娘がいた。奇妙に整然としている家だったのには驚いたが、彼は再び将校に会いに出かけた。将校は彼を英国兵と一緒に貨物船に乗せてくれたが、途中で船は弾を受けて炎上し始めた。マイヤが飛び込むと数人の兵士が続き、彼は火傷した兵士を助けながら海岸まで泳ぎついた。マイヤがジャンヌの家にたどりつくと半裸のまま失神している彼女の傍に二人のフランス兵がいた。彼は二人を射ち殺した。正気にかえったジャンヌはマイヤに身をよせ自由にしてくれと懇願したがマイヤは彼女を罵り、仲間達の所にもどった。マイヤの代りに、泉まで水汲みに出かけたアレクサンドルは独軍の銃弾に倒れた。再びジャンヌのもとに行ったマイヤは結婚の約束をして荷車を取りに表に出た。約束の場所で待っているとき砲弾が爆発し、遅れてやってきたジャンヌの姿を見ることなく、マイヤは死んでいった。ドイツ軍の騒音が不気味に聞え始めた六月の日曜日の午後だった。




9-46. 三人の名付親

監督 ジョン・フォード
出演 ジョン・ウェインペドロ・アルメンダリスハリー・ケイリー・ジュニア
1949年・アメリカ(メトロ日本支社)

解説
「静かなる男」 と同じくジョン・フォードとメリアン・C・クーパーが主宰するアーゴシイ・プロ製作の1949年作品。すでに3回映画化されているピーター・B・カインの原作を、「黄色いリボン」 のローレンス・ストーリングスと「静かなる男」 のフランク・S・ニュージェントが脚色し、「栄光何するものぞ」 のジョン・フォードが監督したテクニカラー作品。撮影は「静かなる男」 のウィントン・ホック、音楽は「黄色いリボン」 のリチャード・ヘイゲマンの担当。主演は「静かなる男」 のジョン・ウェイン、「アパッチ砦」 のペドロ・アルメンダリス、「黄色いリボン」 のハリー・ケイリー・ジュニア(初出演)の3人で、「静かなる男」 のワード・ボンド、「リオ・グランデの砦」 のベン・ジョンソン、「アパッチ砦」 のメイ・マーシュ、「静かなる男」 のミルドレッド・ナットウィック、ジェーン・ダーウェルらが助演する。

ストーリー
アリゾナのウェルカムにやって来た3人の男が、突然町の銀行を掠奪して砂漠の中に逃れていった。3人のうち首領格は逞しいボッブ(ジョン・ウェイン)で、あとの2人は中年のピート(ペドロ・アルメンダリス)とまだ年若いキッド(ハリー・ケイリー・ジュニア)であった。烈日を浴びて砂漠を行く彼らは渇に苦しんだが、深傷を負っているキッドは1人耐えがたかった。砂漠には所々に旅人のための水槽タンクがあり、彼らはその1つであるマジャヴ・タンクへと急いだが、そこはすでに町の役人スイート(ワード・ボンド)が部下とともに先回りしていた。彼らは追手の裏をかき逆戻りしてテラピン・タンクへ向かった。そこには1台の幌馬車が止まっており、中に1人の若い婦人がいた。ニュー・イエルサレムから来た彼女は身重の体であり、まもなくピートの世話で赤ん坊を生み、3人に赤ん坊のことをくれぐれも頼みながら死んでいった。3人は途方にくれたが、婦人の残していった聖書に力を得てニュー・イエルサレムに赤ん坊を連れて行くことにした。しばらくしてテラピン・タンクに来たスイートは幌馬車の中に残されていた婦人の衣類が彼の姪のものであると知って、3人が彼女を殺したものと思い、ますます彼らに対する憎悪に燃えた。その頃3人は死の苦しみと闘っていた。キッドは死に、ボブとピートは赤ん坊をいたわりながら砂漠をさまよったが、突然ピートは足を折り、いまはこれまでと自殺した。ボブは1人、最後の力をふり絞り、倒れては立ち遂々ニュー・イエルサレムに辿り着いた。スイートはボブを捕らえた。一部始終を聞いた彼は、憎悪の念も消え感謝の気持ちさえ湧いた。だが銀行掠奪の罪は消えず、ボブは自ら名づけ親となったこの赤ん坊をスイート夫人の手に預け、潔く引かれて行った。




9-47. マッケンナの黄金

監督 J・リー・トンプソン
出演 グレゴリー・ペックオマー・シャリフテリー・サヴァラス
1969年・アメリカ(コロムビア)

解説
ウィル・ヘンリーの原作をカール・フォアマンが脚色「死刑台への招待」 のJ・リー・トンプソンが監督したアクション篇。撮影は、「プレイラブ48章」 のジョー・マクドナルド、音楽はクインシー・ジョーンズが担当。出演は「アラベスク」 のグレゴリー・ペック、「ファニー・ガール」 のオマー・シャリフ、「追いつめて殺せ!」 のテリー・サヴァラス、他にジュリー・ニューマー、キーナン・ウィン、リー・J・コッブ、エドワード・G・ロビンソンなど。製作は脚色も担当している「野性のエルザ」 の監督カール・フォアマンと音楽家のディミトリー・ティオムキン。

ストーリー
1872年、アメリカの南西部。荒涼たるキャニオンにある小屋は異様な雰囲気に満ちていた。インディアンが隠した黄金を探し求める無頼漢コロラド(オマー・シャリフ)と騎兵隊上がりのディブス(テリー・サヴァラス)などの部下の一団、それに、黄金の谷への道を知って捕虜にされた保安官のマッケンナ(グレゴリー・ペック)。古くからの因縁でコロラドはマッケンナへの復讐を思っているのだが、殺せば黄金の谷への道が分からなくなるというので、コロラドはいらだっていた。もう1人の捕虜である判事の娘インガは、少し前にコロラドに父を殺されていた。そして、そのインガにマッケンナの気持ちが傾いているのを悟った、マッケンナの以前の恋人ヘシュ・ケはいつかインガに復讐しようとしていた。こうした内部の葛藤の外に彼らには、共通の敵があった。アパッチ族の襲来を防がねばならないのである。そこへさらに黄金にとりつかれた町のおえら方たちも現れた。こうして黄金を求めて集まった20名ばかりの男女の間には、欲とエゴを中だちとする不気味な均衡が保たれていた。だが、フロンティアたちの黄金への夢はそれ自体が彼らに血を流させ、互いに殺し合いをさせる要素であった。マッケンナとコロラドの命を賭けた死闘が、そしてインガとヘシュ・ケの戦いが……。そこへ怒涛のようにアパッチが襲来してきた。激しい争いが展開、1人また1人と白人たちは倒されて行った。マッケンナ、コロラド、ディブス、インガの4人が生き残った。そして黄金は彼らの手に入った。が、その時地震が起こった。命からがら逃げたマッケンナとコロラド。ついに一騎打ちの時が来た。しかしマッケンナはコロラドを打とうとはしなかった。それぞれの方向に去る2人。その時、マッケンナはクラに黄金が隠されている馬が生き残っているのを発見した。




9-48. 最後に恋に勝つルール

監督 ナイジェル・コール
出演 アシュトン・カッチャーアマンダ・ピートタリン・マニング
2005年・アメリカ(劇場未公開)

解説
 ひょんなことから出会って意気投合するものの、互いに一歩を踏み出せないまま再会と別れを繰り返し、微妙な関係が続く男女の恋の行方を描いたロマンティック・コメディ。

ストーリー
 ロサンゼルスからニューヨークへ向かう飛行機で出会い、すぐに意気投合したオリバーとエミリー。しかし、2人はニューヨークに着くと、次に会う約束もせず、そのまま別れてしまう。それでも彼らは、その後も運命的に幾度となく再会することに。そのたびに価値観が同じで本来の自分を表現できる唯一の相手だと再認識しながらも、友達以上の発展はなく、すれ違いの関係を続ける2人。そんな想いを片隅に彼らはそれぞれの人生を歩み、仕事や恋愛などで様々な経験をしていく。こうして7年もの歳月が過ぎた頃、オリバーとエミリーはようやく互いにかけがえのない存在だと気づくのだが…。