7-1.

監督 フェデリコ・フェリーニ
出演 アンソニー・クインジュリエッタ・マシーナリチャード・ベイスハート
1954年・イタリア(イタリフィルム=NCC)

解説
旅回りの道化師と一人の女をめぐって人生の哀歓をつく、五四年ヴェニス国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞、五六年ニューヨーク映画批評家協会最優秀外国映画、五六年アカデミー最優秀外国映画賞各受賞の話題作。「無防備都市」「戦火のかなた」 のシナリオを執筆したフェデリコ・フェリーニとトゥリオ・ピネリが原案、脚本を書き、同じくフェリーニが監督した。撮影は「恋愛時代」 のオテロ・マルテリ、音楽は「戦争と平和」 のニーノ・ロータ。主演は「ノートルダムのせむし男」 のアンソニー・クイン、フェリーニ監督夫人のジュリエッタ・マシーナ、「白鯨」 のリチャード・ベイスハート、「ファビオラ(1948)」 のアルド・シルヴァーニ。

ストーリー
貧しい上に少々足りない娘ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は、オートバイで旅まわりをする曲芸師ザンパノー(アンソニー・クイン)の助手となって旅に出た。ザンパノーの呼びものは、胸の力で鎖を切ること、それに疑い深く、狡猾と欲情にこりかたまった男である。彼はさっそく暴力によってジェルソミーナを妻にし、金ができれば他の女を追いかけまわしている。ジェルソミーナのやさしい心も彼には通じない。脱走してもつかまってしまう。ちょうどその頃、二人は小さな曲馬団に参加した。ところが、その一団にいる若い綱渡り−−人々から「キ印」と呼ばれている青年(R・ベイスハート)が、ことごとにザンパノーをからかい、彼が怒るのを見て手をたたく。本能的に、彼はザンパノーが気にくわないのだ。しかしジェルソミーナは、「キ印」がひくヴァイオリンの哀しいメロディに引きつけられ、彼と親しく口をきくようになる。「キ印」は彼女に、この世のどんなつまらないものでも、役に立つ時があるのだ、と語った。頭の足りないジェルソミーナも、この言葉には胸をうたれた。自分の運命はザンパノーと共にある……。「キ印」とけんかし、再び旅に出たザンパノーについて、彼女も苦しい日々を送りつづける。ところがある日、途上でザンパノーと「キ印」は顔をあわせた。そしてザンパノーは、怒りのあまり「キ印」を殺してしまった。誰も見てはいない。ザンパノーのオートバイは旅から旅へと逃避行をつづける。しかしこの事件はジェルソミーナに大きな打撃を与えた。昼も夜も泣き通しである。遂にもてあましたザンパノーは、雪の埋った山道に、彼女を棄てて去った。それから数年後、年老いたザンパノーは、ある海辺の町で、ジェルソミーナが好んで歌った「キ印」のヴァイオリンのメロディをきいた。聞けば、四、五年前この町で病死した気違い娘が、いつもこのメロディを聞かせていたという。その夜、酒に酔ったザンパノーは、海浜に出て、はじめて知る孤独の想いに泣きつづけるのであった。




7-2. 戦争と平和

監督 セルゲイ・ボンダルチュク
出演 リュドミラ・サベーリエワセルゲイ・ボンダルチュクヴァチェスラフ・チーホノフ
1965〜7年・ソ連(モスフィルム)

解説
レオ・N・トルストイの原作を、セルゲイ・ボンダルチュクとワシーリー・ソロビヨフが共同で脚色、ボンダルチュクが製作・監督・ナレーションを担当し、自らピエールに扮し出演もしている文芸篇。製作補佐はニコライ・イワーノフ。撮影はアナトリー・ペトリツキー、作曲・指揮はビャチェスラフ・オフチンニコフ、演奏はモスクワ・フィル。美術監督はミハイル・ボグダノフとゲンナジー・ミャスニコフ、戦闘場面の演出はアレクサンドル・シェレンコフと、チェン・ユ・ラン。出演はボンダルチュクのほかに新人リュドミラ・サベーリエワ、モスクワ芸術座のヴァチェスラフ・チーホノフ、「ハムレット(1964)」 のアナスタシア・ヴェルチンスカヤほか。アグファカラー・70ミリ。

ストーリー





7-3. 戦争と平和 第1部

監督 セルゲイ・ボンダルチュク
出演 リュドミラ・サベーリエワセルゲイ・ボンダルチュクヴァチェスラフ・チーホノフ
1965年・ソ連(モスフィルム)

解説
レオ・N・トルストイの原作を、セルゲイ・ボンダルチュクとワシーリー・ソロビヨフが共同で脚色、ボンダルチュクが製作・監督・ナレーションを担当し、自らピエールに扮し出演もしている文芸篇。製作補佐はニコライ・イワーノフ。撮影はアナトリー・ペトリツキー、作曲・指揮はビャチェスラフ・オフチンニコフ、演奏はモスクワ・フィル。美術監督はミハイル・ボグダノフとゲンナジー・ミャスニコフ、戦闘場面の演出はアレクサンドル・シェレンコフと、チェン・ユ・ラン。出演はボンダルチュクのほかに新人リュドミラ・サベーリエワ、モスクワ芸術座のヴァチェスラフ・チーホノフ、「ハムレット(1964)」 のアナスタシア・ヴェルチンスカヤほか。アグファカラー・70ミリ。

ストーリー
一八〇五年六月、帝政ロシアの首都ペテルベルグ。はなやかな社交界の話題の中心はナポレオンであった。若き公爵アンドレイ(V・チーホノフ)は、祖国の運命を思うにつけ、ロシアのために戦いたい情熱に燃えていた。一方、外国帰りの友人ピエール(S・ボンダルチュク)は、ナポレオンを尊敬している進歩派で、保守派の多い社交界の人々を、おどろかすのだった。彼は裕福な高官の落とし種で心の底に暗い影をいだいていた。悪童仲間ドーロホフとの、ささいないたずらがたたって首都追放の身になったピエールがモスクワの家に帰ると、父は危篤状態で、彼は臨終の床の父から実子と認められた。巨万の富が入ったが、同時に、時の権力家の娘で身持ちの悪い方で評判のエレンと結婚することになった。その頃ナポレオンのフランス軍はロシア軍に迫っていた。従軍し、ロシア・オーストリア連合軍の副官をつとめるアンドレイは、自分の中隊の兵士たちが、われさきに逃げだすのをみて、一人敵中におどりこんだ。しかし砲弾の炸裂に倒れ、意識を失った。ふと我にかえったアンドレイは、前線視察のナポレオンが馬を走らせるのをみた。だがその時の彼にとって、ナポレオンは、虚栄と名誉に執着した狂人の姿でしかなかった。一方ピエールは、愛と旧友ドトロホフとのスキャンダルに頭をいため、彼と決闘して傷を負わせ、妻には別居をいいわたした。アンドレイは、九死に一生を得て帰ったが、その夜、妻リーザは男の子を生んでこの世を去った。ピエールとアンドレイ二人の旧友は、再会しお互いに心の傷をわかちあった。一八一〇年、ロストフ伯爵家の娘ナターシャ(L・サベーリエワ)は、十八歳の春をむかえ、はなやかに社交界にデビューした。その夜こそはナターシャ一生の門出であり、アンドレイへの愛の門出でもあった。二人はワルツを踊り続けた。そして婚約、一年後の挙式を約束して、アンドレイは外国旅行にでた。しばらくは幸せにつつまれていたナターシャだったが、月日がたつにつれ、不安と焦燥にかられたのか彼女は、ハンサムな浮気男アナトリーと知りあい、はては駆け落ちの手はずまで整えた。婚約解消の手紙におどろいたアンドレイは帰国し、手紙をナターシャに返してほしいとピエールに依頼した。ピエールは重苦しい気持でロストフ家に行きいまや自分のおろかさに苦しむ、傷心のナターシャをいたわるのだった。ピエールは彼女を、少女時代からひそかに愛していたのである。一八一二年、この年ナポレオンは再びロシアに攻め込んできた。




7-4. 戦争と平和 第2部

監督 セルゲイ・ボンダルチュク
出演 リュドミラ・サベーリエワセルゲイ・ボンダルチュクヴァチェスラフ・チーホノフ
1965年・ソ連(ヘラルド)

解説


ストーリー
ナポレオンのロシア侵攻を背景に、激動の19世紀を生きる人々がたどる過酷な運命を描いた文豪トルストイの名作を映画化。第2部では、若く純粋なロストフ家の娘ナターシャの愛と孤独を描く。舞踏会で出会い、恋に落ちたナターシャとアンドレイ。アンドレイは人生経験のないナターシャのために、結婚の決断をするまで1年間の猶予を与え、旅に出てしまう。焦燥感にとらわれたナターシャは、別の男性に胸を焦がすようになる。




7-5. 戦争と平和 第3部

監督 セルゲイ・ボンダルチュク
出演 リュドミラ・サベーリエワセルゲイ・ボンダルチュクヴァチェスラフ・チーホノフ
1966年・ソ連(モスフィルム)

解説


ストーリー
1812年6月、ナポレオン率いるフランス軍が国境を越えてロシアに侵入。 クトゥーゾフ将軍率いるロシア軍は、ボロジノで迎え撃つことに。再び軍務についたアンドレイは、父の臨終にも立ち会えず、これから繰り広げられる激戦を前に自らの死を予感していた。 一方、戦地にやってきたピエールは、戦争の凄惨(せいさん)な現実を目の当たりにする。




7-6. 戦争と平和 第4部

監督 セルゲイ・ボンダルチュク
出演 リュドミラ・サベーリエワセルゲイ・ボンダルチュクヴァチェスラフ・チーホノフ
1966年・ソ連(モスフィルム)

解説
トルストイの名作を空前の巨費を投じて映画化した記念碑的作品の完結編で、ナポレオン軍の潰走とロシアの再生を描く。

ストーリー
ロシア軍はクトゥーゾフ将軍の苦渋の決断により、モスクワを捨てて退却することに。火災で街は大混乱となるなか、ピエールはモスクワに留まり、ナポレオンを殺そうと決意する。 一方、瀕(ひん)死の重傷を負ったアンドレイは、ナターシャと運命的な再会を果たすが…。




7-7. ドライビィング MISS ディジー

監督 ブルース・ベレスフォード
出演 モーガン・フリーマンジェシカ・タンディダン・エイクロイド
1989年・アメリカ(東宝東和)

解説
白人の老婦人と黒人の運転手の心の交流と友情を25年の時の流れの中で描くドラマ。エグゼクュティヴ・プロデューサーはデイヴィッド・ブラウン、製作はリチャード・D・ザナックとリリ・フィニ・ザナック、監督は「ロンリー・ハート」 のブルース・ベレスフォード、脚本・原作戯曲はアルフレッド・ウーリー、撮影はピーター・ジェームズ、音楽はハンス・ジマーが担当。出演はジェシカ・タンディ、モーガン・フリーマンほか。89年アカデミー賞作品、脚色、主演女優(ジェシカ・タンディ)、メーキャップ賞受賞。

ストーリー
48年、夏。長年勤めた教職を退いた未亡人のデイジー(ジェシカ・タンディ)は、ある日運転中に危うく事故を起こしかけ、母の身を案じた息子のブーリー(ダン・エイクロイド)は、彼女の専用の運転手としてホーク(モーガン・フリーマン)という初老の黒人を雇う。しかし典型的なユダヤ人で、元教師のデイジーには、運転手なんて金持ちぶっているようで気性が許さなかった。どうしても乗車拒否を続けるデイジーは、黙々と職務に励む飄々としたホークの姿に根負けし、悪態をつきながらも車に乗ることになる。こうして始まったデイジーとホークの奇妙で不思議な関係は、1台の車の中で、やがて何物にも代えがたい友情の絆を生み出してゆく。そして25年の歳月の流れの中で、初めてホークはニュージャージー州外を旅し、またデイジーはキング牧師の晩餐会に出席したりした。いつしか頭がボケ始めたデイジーは施設で暮らすようになり、長年住み馴れた家も売ることになった。しかしデイジーとホークの友情は、変わることなく続くのだった。




7-8. パットン大戦車軍団

監督 フランクリン・J・シャフナー
出演 ジョージ・C・スコットカール・マルデンマイケル・ベイツ
1970年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
アメリカの産んだ名将の、波瀾の生涯を描いた戦争巨編。製作はフランク・マッカーシー、監督は「猿の惑星」 のフランクリン・J・シャフナー。ラディスラス・ファラーゴの原作を「雨のニューオーリンズ」 のフランシス・フォード・コッポラとエドモンド・H・ノースが脚色。音楽は「刑事」 のジュリー・ゴールドスミス、撮影は「空かける強盗団」 のフレッド・コーネカンプ、編集はヒュー・ファウラーがそれぞれ担当。出演は「華やかな情事」 のジョージ・C・スコット、「血と怒りの河」 のカール・マルデン、「北京の55日」 のスティーブン・ヤング、「白銀のレーサー」 のカール・ミカエル・フォーグラー、「ハマーヘッド」 のマイケル・ベイツなど。デラックスカラー、D150 方式。1970年作品。

ストーリー
1943年、アフリカ戦線。初陣のアメリカ第2機甲兵団は、ドイツのロンメル将軍(カール・ミカエル・フォーグラー)の指揮する軍団をかい滅させたが、味方の損害も大きかった。そこへ、パットン将軍(ジョージ・C・スコット)が着任。兵団たて直しのため、ブラッドリー少将(カール・マルデン)を副官に任じ、厳しい再訓練を開始した。彼は、ロンメルと雌雄を決する気構えだった。その機会は意外に早く訪れた。そして、エルゲッターの戦闘で、彼の軍団はロンメルの機甲兵団をみごと粉砕した。この勝利で、アメリカ軍はモントゴメリー大将(マイケル・ベイツ)のイギリス軍と、歩調を合わせることができた。アフリカ方面の戦闘が終局を告げると、パットンはシチリア島侵攻の、第2兵団司令官となった。この侵攻作戦をめぐり、速攻派のパットンと慎重派のモントゴメリーは対立したが、パットンは作戦を強行、パレルモを奪取した。しかし、戦争ノイローゼの兵隊を殴ったことから、兵団司令の任をはずされた彼は、欧州上陸作戦最高司令官の重任も、ブラッドリーにさらわれてしまった。失意のパットンは、やがてイギリスにまわされたが、そこの婦人クラブで行った講演の内容から、またも彼は上層部の譴責をうけた。やがてノルマンディ上陸作戦が成功。作戦に参加できなかったことを悔やむパットンに、名誉恢復の日が到来した。ブラッドリーが、第3兵団司令官として、彼をノルマンディに呼びよせたのである。勇躍したパットンは、電撃的にドイツ軍を撃破、さらに有名なバルジの戦闘で、戦史に残る功績をあげた。やがてドイツは降伏。しかし、ソ連ぎらいのパットンは、そのためまたも物議をかもし出し、ついに失意のうちに、自動車事故でその特異な生涯を終えた。(20世紀フォックス配給*3時間)




7-9. 黄金

監督 ジョン・ヒューストン
出演 ハンフリー・ボガートウォルター・ヒューストンティム・ホルト
1948年・アメリカ

解説
「脱出(1944)」「カサブランカ」 のハンフリー・ボガートが主演する映画で、B・トレイヴン作の小説を「偉人エーリッヒ」「ファス」 のジョン・ヒューストンが脚色し、ヒューストン自ら「マルタの鷹(1941)」「シエラの高嶺」 等についで監督したもの。ボガードを助けて「悪魔の金」「我が心の歌(1942)」 のウォルター・ヒューストン「駅馬車(1939)」「荒野の決闘」 のティム・ホルト「ミルドレッド・ビアーズ」 のブルース・ベネット、「ブルースを唄う女」 のバートン・マクレーンらが出演している。撮影は西部劇を多く手がけて外景撮影に優れているテッド・マッコードが指揮し、音楽は「栄光の都」「愛の勝利(1939)」 のマックス・スタイナーが作曲している。

ストーリー
1920年のことである。シエラ・マドレの山脈を西北に望むメキシコのタムピコの港で、運に見放されたアブレ者のアメリカ人が二人落ちあった。一人はダッブスという男ざかり、一人はやや若いカーチンだ。建築工事があるというので、早速汗を流したが二人とも賃金はもらえず、宿屋とは名ばかりの薄汚い小屋で、顔見合わせて苦笑いした。そしてハワードという老人の山師がマドレの山の中に金があると話しているのを聞いた。ダッブスとカーチンはだまされた気でハワードに案内させる。というのはダッブスが富くじで少しばかり当てたので、それで必要な道具と食糧を買い、山が当たれば三人山分けと決めた。タムピコからデュランゴまで鉄道で行ったがそれからはロバの旅であった。不思議な運のよさで、三人は金を掘り当てたが、それからというもの、ダッブスは他の二人を疑いの眼で見て夜もおちおち眠れない。そこへ得体の知れないコディと名乗る男が、ひょう然と風の如くに訪れて来て、仲間に入れてくれと資本金を出し、テコでも動かない。ところが、突如ゴールド・ハットを頭目とする23名の山賊が襲って来た。その戦いで三人はからくも命は助かったが、不意打ちを食ったコディは殺されてしまった。この事件でダッブスの神経はいよいよとがって来たし、その気持はカーチンにもうつって、三人の仲間は猜疑の眼でにらみ合いを続けるばかりだ。その間にも砂金は袋に一杯となったので、ともかくも山を去ろうということになる。帰りの山路は難渋を極めたが、そのうえ途中でインディアンの群につかまった。幸にも無害な種族で、少年の急病を治してくれというのだった。ダッブスの骨折で、少年は助かり全集落の信任を得たけれども、彼の仲間に対する猜疑は強まるばかりで、ダッブスとカーチンは到頭射ち合った。カーチンは傷ついたまま捨てられ、ダッブスは宝を一人占めにして山を下ろうと難儀を続けた。山賊のゴールド・ハットは待ち伏せして、ダッブスを刺殺して彼の砂金袋を奪ったが、袋を切りさいて出た砂金を金とは知らず折からの強風に金の砂を吹き飛ばしてしまった。一方カーチンは息を吹き返し、ハワード老人のところにからくもたどり着く。そしてゴールド・ハットがダッブスを殺し、砂金を風に吹きちらかし、悪運つきて官憲に捕らえられたという話を一緒に聞いたハワード老人はカラカラと笑いながら、カーチンにさとすようにいった。人生ってものはお笑い草だよ、とりわけ金が絡んだとなれァ、きっとお笑い草に終わるんだ。




7-10. 黒いオルフェ

監督 マルセル・カミュ
出演 ブレノ・メロマルペッサ・ドーンルールディス・デ・オリヴェイラ
1959年・フランス(東和)

解説
リオのカーニバルを背景にギリシャ神話のオルフェとユリディスの愛の現代化を試みたもの。監督は「濁流(1957)」 のマルセル・カミュ。その第二作。ブラジルの詩人ヴィニシウス・デ・モラエスの戯曲からジャック・ヴィオが脚本を書き、カミュとビオが脚色・台詞を書いた。撮影は「ひと夏の情事」 のジャン・ブルゴワン。音楽はアントニオ・カルロス・ジョビンとルイス・ボンファの作曲。出演者はほとんど一般市民から選ばれ、ブレノ・メロ、マルペッサ・ドーン、ルールディス・デ・オリヴェイラ、レア・ガルシア、アデマール・ダ・シルバら。製作サッシャ・ゴルディーヌ。五九年カンヌ映画祭グランプリ、アカデミー最優秀外国映画賞、ゴールデン・グローブ賞を受けた。

ストーリー
カーニバルを明日にひかえたリオ・デ・ジャネイロにやってきた黒人娘ユリディス(マルペッサ・ドーン)は、市電の運転手である黒人青年オルフェ(ブレノ・メロ)の電車にのった。彼女は、自分を追う謎の男を避けて、田舎から従姉セラフィーナを尋ねてきたのである。電車が終点について仕事を終ったオルフェは、婚約者ミラとともに街に行き、質屋からギターをうけ出した。オルフェの歌とギターは、村の子供たちの敬畏の的だった。丘の従姉の家についたユリディスは、隣りからきこえる美しい歌声にさそわれテラスに出た。こうして、オルフェとユリディスは再会し、愛しあった。夜、明日のカーニバルの練習であるサンバの群舞に二人は酔った。すると、死の仮面をつけた例の男が現れ、ユリディスを追った。失神したユリディスを救ったオルフェは、彼女を自分の部屋のベッドに横たえた。−−カーニバルの当日、ユリディスは従姉の仮装を借りてオルフェの指揮する熱狂的な踊りの輪の中に入った。夜になった頃、ミラがそんなユリディスに気づいて、彼女につかみかかった。逃れるユリディスを、死の仮面の男が追っていた。必死に市電の車庫に逃げこんだが、天井においつめられた。ユリディスの手が高圧線にかかった時、かけつけたオルフェが車庫内を明るくしようと電気スイッチを押した。ユリディスは死んだ。死んだ彼女を求めてオルフェは深夜の街を、病院から警察へとさまよった。警察の小使いに連れられて、祈祷所でオルフェはユリディスの呼び声を聞いた。その方をふりむいてしまった彼は、霊媒の老婆を見た。ユリディスの死体は死体置場にあった。夜が明けようとしていた。オルフェは死体を抱いて丘に帰った。嫉妬に狂ったミラが小屋に放火していた。彼女の投げた石でオルフェはユリディスを抱いたまま断崖から落ちた。二人の死体は重なった。彼のギターを鳴らしながら、黒人の子供たちは日の出を迎えた。




7-11. 不都合な真実

監督 デイヴィス・グッゲンハイム
出演 アル・ゴア
2006年・アメリカ(UIP)

解説
アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞したドキュメンタリー。元・米副大統領アル・ゴアの地球温暖化問題に関する講演と、そこで明かされる衝撃の真実を映し出す。

ストーリー
地球温暖化によって起こる様々な諸問題。その数々の問題に胸を痛め、問題提起をするべく立ち上がった元アメリカ副大統領アル・ゴア。世界各国で積極的に行われるゴアのスライド公演は、問題に対する真摯な姿勢とユーモラスな語り口で、多くの共感を呼んでいく。公演でゴアは、北極が40年間で40%縮小したこと、温暖化の影響で数百万に及ぶ渡り鳥が絶滅の危機に瀕していること、環境破壊による難民の増加が懸念されることなどを、数多くのデータやフィルムを使いながら聴衆に投げかけていく。そこから、目前に迫った地球の危機に対しても、その問題を直視しない政治家や政府を批判すると共に、私たちひとりひとりの環境への取り組みや姿勢を説く。車の排気ガスを減らす、水力や風力に代表される自然発電エネルギーを積極的に取り入れる、などの基本的なことから、「給湯装置を断熱布で覆う」、「地元の農産物直売所(ファーマーズ・マーケット)を支援する」など、生活に密着した日常生活レベルでの改善を努力していく重要性をも訴えかける。さらに、ゴア自身のエピソードも織り交ぜて語られる。ゴアが環境問題に政治家として長年携わるようになったのは、彼の息子が6歳のときに交通事故に合い生死の境をさまよったという経験によるということ、自分の声とスライド公演で環境問題を訴えていくことにしたその決意は、2000年に行われたアメリカ大統領選挙の敗北が関わっている……など、ゴアという人そのものがいかにしてその運動に突き進むことにしたのかも作中で描かれていく。すべての人類にとっての課題である環境問題を、地球の未来を信じるがゆえに、ゴアは今日もまた訴え続けていく。




7-12. セント・オブ・ウーマン(夢の香り) 

監督 マーティン・ブレスト
出演 アル・パチーノクリス・オドネルジェームズ・レブホーン
1992年・アメリカ(ユニヴァーサル映画=UIP)

解説
盲目の退役軍人と、その道案内役の青年が共に旅をするうちに心を通わせていく姿を描く人間ドラマ。92年度アカデミー賞最優秀主演男優賞、ゴールデン・グローブ賞作品賞〈ドラマ部門〉、最優秀主演男優賞〈同〉、最優秀脚本賞を受賞。監督・製作は「ミッドナイト・ラン」 のマーティン・ブレスト。エグゼクティヴ・プロデューサーは「普通の人々」 のロナルド・L・シュワリー。イタリアの作家ジョヴァンニ・アルピーノの小説をもとに「カッコーの巣の上で」 のボー・ゴールドマンが自身の体験も加えて脚本を執筆(なお、この小説は75年にディノ・リージ監督によりIl Frofumo Di Donnaというタイトルで映画化されている)。撮影は「あなたに恋のリフレイン」 のドナルド・E・ソリン。音楽は「幸せの向う側」 のトーマス・ニューマンが担当。主演は「恋のためらい フランキーとジョニー」 のアル・パチーノ。ほかに「フライド・グリーン・トマト」 のクリス・オドネル、「氷の微笑」 のジェームズ・レブホーン、ガブリエル・アンウォーらが共演。

ストーリー
全寮制の名門ハイスクール、ベアード校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)は、アルバイトで盲目の退役軍人フランク(アル・パチーノ)の世話を頼まれた。翌朝、トラクス校長(ジェイムズ・レブホーン)が全校生徒の前でペンキまみれにされるというイタズラが起き、校長はその犯人の顔を知るチャーリーと同級生のジョージ(フィリップ・S・ホフマン)を呼びつけ、犯人の名を明かさないと週明けの特別集会で退学を申し渡すと脅した。さらに校長はチャーリーに大学進学の奨学金を交換条件に提示した。バイトの初日、チャーリーはフランクに無理矢理ニューヨークへの旅に同行させられることになり、一流ホテルや高級レストランを使うその超豪華な旅に仰天した。フランクはこの旅の最後に自殺すると平然と語り、チャーリーの学校での一件の話を聞くとジョージに裏切られる前に友を売って自分を救えと言う。翌日フランクはチャーリーと共に郊外に住む兄を訪ねるが、歓迎されずに寂しく立ち去った。さらに2人の旅は続いた。あるホテルのラウンジで、偶然近くに座った美しい女性ドナ(ガブリアル・アンワー)に近づき、ダンスを申し込んだフランクは、優雅なタンゴを披露した。次の日にはフェラーリに強引に試乗して容器にはしゃぐ。そうかと思うとすぐ塞ぎ込むフランクにチャーリーは不安を覚えた。そして予告通りフランクは軍服を着て自殺しようとするが、チャーリーの必死の説得で断念し、2人の頬に涙が伝った。そして旅は終わり特別集会の日がやって来た。ジョージに裏切られたチャーリーは孤立するが、講堂にフランクが現れてチャーリーを援護する演説をして、全校生徒の支持を得たチャーリーは退学をまぬがれることができたのだった。




7-13. クレオパトラ(前編)

監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
出演 エリザベス・テイラーリチャード・バートンレックス・ハリソン
1963年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
プルタークの英雄伝、スブトニアス、アピンそのほかC・M・フランツェロの小説「クレオパトラの生涯とその時代」 から、「野郎どもと女たち」 のジョセフ・L・マンキーウィッツウィッツ、「山」 のラナルド・マクドゥガル、「ジョルスン再び歌う」 のシドニー・ブックマンら3人が脚本を書き、「去年の夏突然に」 のジョセフ・L・マンキーウィッツウィッツが監督した。戦闘場面を「史上最大の作戦」 のアンドリュー・マートンとエルモ・ウィリアムスがあたり、3度のアカデミー受賞のレオン・シャムロイがロケ撮影をした。出演は「予期せぬ出来事」 のエリザベス・テイラー、「史上最大の作戦」 のリチャード・バートン、「誰かが狙っている」 のレックス・ハリソンのほか、ジョージ・コール、ヒューム・クローニン、ロディ・マクドウォル、チェザーレ・ダノヴァなど。

ストーリー
紀元前48年、エジプト王国は内乱につぐ内乱を重ね、新興ローマの覇勢に滅亡寸前のありさまで。幼いプトレマイオス14世をを立てる一派は、王の姉にあたる18歳のクレオパトラ(エリザベス・テイラー)を王宮から追放してしまった。そのころ、アレキサンドリアに遠征していたローマの将シーザー(レックス・ハリソン)は砂漠のスフィンクスで初めてクレオパトラに会い。その虜になってしまった。シーザーはクレオパトラを伴い、アレキサンドリアに侵入、激しい戦闘を重ねて勝利を収め、クレオパトラは、エジプトの王に即位した。やがてローマに堂々凱旋したシーザーは、独裁者としての勇威を高めていったが、クレオパトラはそのシーザーを追ってローマへ渡った。しかし、2人の喜びも束の間、ブルータス(ケネス・ヘイグ)達の暗殺団の手にその短い生涯を閉じた。クレオパトラは不穏なローマを逃れてエジプトに帰った。そして3年の月日が流れ、ローマの権力者アントニー(リチャード・バートン)は財政の窮乏をエジプトに活路を求め、クレオパトラを迎え、たちまち2人の恋の焔が燃えた。アントニーがクレオパトラと結婚し、彼が死んだらエジプトの土になるという遺書を認めてローマ元老議員は激昂した。そしてローマとエジプトはこの戦いに敗れて死にクレオパトラは捕虜にされた。もはや、彼女はこの世に対する執着はなかった。「アントニーの側に葬って……」と遺書を書き、果物篭に隠してあったアスプ(毒蛇)の牙を胸にあてた。39歳であった。




7-14. クレオパトラ(後編)

監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
出演 エリザベス・テイラーリチャード・バートンレックス・ハリソン
1963年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
プルタークの英雄伝、スブトニアス、アピンそのほかC・M・フランツェロの小説「クレオパトラの生涯とその時代」 から、「野郎どもと女たち」 のジョセフ・L・マンキーウィッツウィッツ、「山」 のラナルド・マクドゥガル、「ジョルスン再び歌う」 のシドニー・ブックマンら3人が脚本を書き、「去年の夏突然に」 のジョセフ・L・マンキーウィッツウィッツが監督した。戦闘場面を「史上最大の作戦」 のアンドリュー・マートンとエルモ・ウィリアムスがあたり、3度のアカデミー受賞のレオン・シャムロイがロケ撮影をした。出演は「予期せぬ出来事」 のエリザベス・テイラー、「史上最大の作戦」 のリチャード・バートン、「誰かが狙っている」 のレックス・ハリソンのほか、ジョージ・コール、ヒューム・クローニン、ロディ・マクドウォル、チェザーレ・ダノヴァなど。

ストーリー





7-15. ティファニーで朝食を  

監督 ブレイク・エドワーズ
出演 オードリー・ヘップバーンジョージ・ペパードパトリシア・ニール
1961年・アメリカ(パラマウント映画)

解説
トルーマン・カポーティの原作を映画化した都会劇。監督に当たったのは「ペティコート作戦」 のブレイク・エドワーズ。脚色担当はジョージ・アクセルロッド。撮影を受け持っているのはフランツ・プラナー。音楽をヘンリー・マンシーニが担当している。出演するのはオードリー・ヘップバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニールなど。製作はマーティン・ジュローとリチャード・シェファード。

ストーリー
ホリー(オードリー・ヘップバーン)はニューヨークのアパートに、名前のない猫と住んでいる。鍵をなくす癖があり。階上に住む日本人の芸術写真家(ミッキー・ルーニー)に開けてもらう。ホリーの念願は“ティファニー”のようなところで暮らすことだ。ある日、ホリーのアパートにポール(ジョージ・ペパード)という青年が越してきた。作家ということだが、タイプライターにはリボンがついていない。室内装飾と称する中年女がいつも一緒にいて、夜半に帰って行く。ポールはホリーと知り合うと、さすがに作家らしく都会文化が生んだ奇形児のようなホリーの性格に興味をおぼえた。ホリーも、ポールの都会の塵にまみれながらも純真さを失っていない性格に惹かれたようだ。ある夜、ポールの部屋の窓からホリーが入ってきた。彼女は“ティファニー”のことや、入隊中の兄のことを語った。時計が4時半になると「わたしたちはただの友達よ」と断わりながら、ポールのベッドにもぐり込んだ。彼女につきまとう男が多い。テキサスから夫が迎えにきても、ホリーは素気なく追い返した。一方、ポールもパトロンの女と手を切った。そんなとき、彼の短編が50ドルで売れた。お祝いにホリーはポールを“ティファニー”に誘った。麻薬密輸にまきこまれたホリーを警察からもらい下げたものはポールだった。ブラジルへ行くといってきかないホリーも、ポールの真剣な気持ちに動かされ、彼の胸に顔を埋めるのだった。




7-16. ミセス・ダウト

監督 クリス・コロンバス
出演 ロビン・ウィリアムズサリー・フィールドピアース・ブロスナン
1993年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
離婚した父親が子供たちに会いたい一心で、女装して元妻の家庭へ家政婦として潜り込んでの騒動を描いたコメディ。アン・ファインの小説(邦訳・講談社文庫)を「潮風のいたずら(1988)」 のレスリー・ディクソンが新人ランディ・メイエム・シンガーと脚色、「ホーム・アローン」 シリーズのクリス・コロンバスが監督して映画化。製作は、ロビン・ウィリアムズと夫人のマーシャ・ガーセス・ウィリアムス、マーク・ラドクリフの共同で、本作はウィリアムス夫妻の設立したブルー・ウルフ・プロの第1回作品。撮影は「パトリオット・ゲーム」 のドナルド・M・マッカルパイン、音楽は「羊たちの沈黙」 のハワード・ショア。美術は「ゴッドファーザーPARTII」 のアンジェロ・グラハム。特殊メイクは「ドラキュラ(1992)」 のグレッグ・キャノン。主演は「トイズ」 のロビン・ウィリアムズ。共演は「ソープディッシュ」 のサリー・フィールドら。

ストーリー
7色の声を使い分ける声優のダニエル(ロビン・ウィリアムズ)は仕事中にボスともめ、クビになる。インテリアデザイナーの妻ミランダ(サリー・フィールド)は、子供と遊ぶしか能のない夫にうんざりしていた。長男クリス(マシュー・ローレンス)の12歳の誕生パーティで子供や動物たちとバカ騒ぎをしたダニエルに、ついにミランダの怒りが爆発し、離婚を宣言する。クリスの姉リディア(リサ・ジャクブ)と5歳の妹ナタリー(マラ・ウィルソン)も落胆するが、それ以上にショックだったのは、子ぼんのうなダニエルだった。裁判の結果、養育権はミランダのものとなり、ダニエルは週に1度しか彼らに会えなくなった。一方、ミランダは昔の恋人スチュ(ピアース・ブロスナン)と交際を始める。ミランダは留守中に子供の世話をしてくれる家政婦を雇う新聞広告を出すが、それを知ったダニエルは、オカマで映画の特殊メイクアップ・マンの兄フランク(ハーヴェイ・ファイアスティン)の協力で、初老のイギリス夫人に変身。ミセス・ダウトと名乗ってミランダを訪れた彼はすっかり気に入られ、家政婦として雇われる。ミランダも子供たちもフランクとは気づかず、何度もバレそうになるのをごまかしながら、彼は子供たちを厳しくしつける。ある日、クリスとリディアはダウトの正体に気づくが、パパの本心を知り3人だけの秘密にする。その頃、ダニエルはTV局の社長ランディ(ロバート・プロスキー)に気に入られ、新番組の打ち合わせにレストラン″ブリッジス″に招待される。ところが同時刻、同じ場所でミランダの誕生祝いがあった。仕方なくレストランに向かった彼は、トイレで忙しく変装しながら、2組のテーブルを往復する。酔ったフランクは、スチュにいたずらを仕掛けてさんざんな目に遭わせるが、逆に正体がバレてしまう。子供たちに対する愛情を知ったミランダは、フランクと和解する。TV番組のホストも好評を博した彼は、子供たちの良きパパだった。




7-17. 招かれざる客

監督 スタンリー・クレイマー
出演 スペンサー・トレイシーシドニー・ポワチエキャサリン・ヘップバーン
1967年・アメリカ(コロムビア)

解説
アメリカ上陸作戦」 のウィリアム・ローズのオリジナル・シナリオを、「愚か者の船」 のスタンリー・クレイマーが製作・監督した。撮影は「手錠のままの脱獄」 のサム・リーヴィット、音楽は「真昼の衝動」 のデヴォル。出演は、これが遺作となった「おかしな、おかしな、おかしな世界」 のスペンサー・トレイシー、「いつも心に太陽を」 のシドニー・ポワチエ、「去年の夏突然に」 のキャサリン・ヘップバーン、そのほか、キャサリン・ホートン、セシル・ケラウェイなど。

ストーリー
サンフランシスコ空港で飛行機から降り、タクシーに乗った若いカップルが、人目をひいた。だが、人々のぶしつけな視線など気にしないかのように、黒人青年と白人女性は親しげに語り合っていた。青年はジョン(シドニー・ポワチエ)といい、世界的に著名な医師。女性の名はジョーイ・ドレイトン(キャサリン・ホートン)。2人はハワイで知り合い、互いに愛し合う間柄となったのである。ジョーイの母クリスティ(キャサリン・ヘップバーン)は、娘の婚約者が黒人であることを知り、驚いたが、娘の嬉々とした様子に、動揺は次第に喜びに変わっていった。だが、父のマット(スペンサー・トレイシー)は、そうはいかなかった。新聞社を経営し、人種差別と闘ってきたマットも、自分の娘のこととなれば、話はちがってくるのだ。ジョンは、学界でも有数な人物であり、近くジュネーブの大学院に迎えられることになっているということは、マットも知ってはいるのだが、黒人と白人との結婚には、想像を絶する困難がある。結婚を許しながらもマットは割り切れなかった。ジョンのジュネーブ行きの時間が迫っており、2人はその前に、互いに両親の了解を得たがっていた。息子の見送りと嫁に会うため、ジョンの両親プレンティス夫妻が空港に着き、ジョーイは出迎えたが、夫妻は嫁が白人であることを知り愕然とした。やがて、夕食の時が訪れた。ジョンとジョーイ、ドレイトン夫妻、プレンティス夫妻。そしてドレイトン夫妻の友人であるライアン神父。母親同士は結婚には賛成だったが、父親同士は反対し、とくに、マットは頑固だった。だが、そのマットも、若い2人のどんな困難にも立ち向かおうとする真剣さとその情熱に、かつての自分の青春を見、その尊さに気づき、2人の結婚を認めた。一同はそろって、夕食の席に着くのだった。




7-18. 甘い生活

監督 フェデリコ・フェリーニ
出演 マルチェロ・マストロヤンニアニタ・エクバーグアヌーク・エーメ
1960年・イタリア(イタリフィルム)

解説
「崖」 のフェデリコ・フェリーニ監督作。退廃したローマ上流社会が描かれている。フェリーニとトゥリオ・ピネリ、エンニオ・フライアーノが共同で書いた原案を、この三人にブルネロ・ロンディが加わった四人が共同脚色した。撮影は「青春群像」 のオテロ・マルテリ、音楽は「戦争と平和」 のニーノ・ロータが担当。出演するのは「掟(1959)」 のマルチェロ・マストロヤンニ、「ローマの旗の下に」 のアニタ・エクバーグ、「恋人たち」 のアラン・キュニー、「今晩おひま?」 のアヌーク・エーメら。製作ジュゼッペ・アマート。一九六〇年カンヌ映画祭でグランプリを受賞した。

ストーリー
作家志望の夢を抱いてローマに出た青年マルチェロ・ルビーニ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、今は社交界ゴシップ専門のトップ屋となった。憧れた都は退廃と無気力以外の何ものでもなかった。カトリックもキリストの像をヘリコプターで運ぶなど、華やかな示威をした。豪華なナイトクラブでは、ローマの大富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)にめぐり会った。場末の夜の女の宿でマルチェロと一夜をすごすことも、彼女にとってはほんの気まぐれだった。郊外のわびしい家に帰った時、マルチェロは同棲中の愛人エンマが服毒して苦しんでいるのを見た。しかし悔いる気持も永くは続かなかった。彼はハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を迎えると、野外で狂乱の宵を過し、名所トレーヴィの泉で戯れた。ローマ地方の郊外で奇蹟が起きた。再び聖母出現の日の聖地はテレビ・カメラに包囲され、奇蹟にあやかろうと横たわる病人の上に豪雨が降りそそいだ。日頃マルチェロのため悩みの絶えぬエンマは熱狂して信じた。二人は友人スタイナー(アラン・キュニー)の家を訪れ、調和と安らぎに満ちたその生活を羨んだ。或る夜、豪壮な館のパーティーに出たマルチェロは、虚脱したように歓楽をむさぼる貴族たちの仲間入りをした。スタイナーは死んだ。子供を連れた無理心中だった。平和に見えた一家のこの悲劇の深さはマルチェロの残った夢をすべて消した。その場限りの快楽の他に今の彼は何を望んだろう。やがて海に近い別荘でこの世のものとも思えぬ乱痴気騒ぎの狂宴がくりひろげられた。マルチェロは自ら狂乱の中に没入した。夜明け方、人々は快楽に疲れ果てた体をひきずって海辺に出た。波打ち際に打ち上げられた怪魚は、腐敗し悪臭を放ち、彼らの姿そのものだった。彼方から顔みしりの少女ヴァレリアが何か叫んでいる。その声は波に消されて彼の耳には入らない。真実の生命の清純さに溢れる少女に背を向けて、マルチェロは砂浜を別荘の方へと戻って行った。




7-19. グランプリ

監督 ジョン・フランケンハイマー
出演 ジェームズ・ガーナーイヴ・モンタン三船敏郎
1966年・アメリカ(MGM)

解説
「ワーロック(1959)」 のロバート・アーサーが、ロバート・ディリーのノンフィクション「残酷なスポーツ」その他、オートレースの記録にもとずいてストーリーを書き、劇作家ウィリアム・ハンリーが脚色、「大列車作戦」 のジョン・フランケンハイマーが監督にあたった。撮影は「影なき狙撃者」 のライオネル・リンドンで、レース・シーンには20数台のカメラが動員された。音楽はモーリス・ジャール、レース顧問にはジョー・ボニアー、レース技術監督はジム・ラッセルが担当した。出演は「砦の29人」 のジェームズ・ガーナー、「7人目に賭ける男」 のイヴ・モンタン、三船敏郎、「いそしぎ」 のエヴァ・マリー・セイント、「スェーデンの城」 のフランソワーズ・アルディ、ブライアン・ベドフォードほか。またレース・シーンにはブルース・マクラレン、ボブ・ボンデュラント、フィル・ヒル、グラハム・ヒルなど世界的レーシング・ドライバーが出演する。製作担当はエドワード・ルイス。

ストーリー
国際オートレースのトップをきって行われたモンテ・カルロのグラン・プリ・レースで惨事が突発した。アメリカ人ピート(ジェームズ・ガーナー)は地中海に投げ出され、幸に軽傷ですんだが、イギリス人スコット(ブライアン・ベドフォード)は壁に激突して重傷を負った。優勝はサルティ(イヴ・モンタン)だった。ピートとスコットのスポンサー、ジョーダンは2人を激しく非難したが、弁護してくれたのはサルティだった。ところで、レーシング・ドライバーの生活は女性の憧れの的だが、彼らの家庭生活は必ずしも平穏ではなかった。スコットの妻パットは離婚を決意し、サルティはフェラリ創立者の娘モニークと結婚していたが、生活は暗礁にのりあげ、パーティで知り合った雑誌記者のルイーズ(エヴァ・M・セイント)を愛し始めていた。そしてピートの妻も彼のもとを去っていった。傷心の彼に救いの手をさしのべたのは、ホンダの矢村(三船敏郎)だった。彼はピートのファイトを買い、日本チームへの参加を勧めた。矢村のおかげでピートはよみがえり、つぎつぎとレースに優勝していった。傷いえたスコットも第一線に復帰し、モンテ・カルロで2位に入賞したニーノ、それにピートとサルティを加えた4人が各地のレースでしのぎを削りあった。そしてフォーミュラー・ワンの最後のレースであるモンツアのイタリア・グラン・プリを迎えることになった。レースは白熱化し、異常な興奮をまき起こした。特にサルティの運転ぶりに大歓声が起こり、その歓声にホテルにこもっていたルイーズも思わず飛び出した。だがその時、サルティの車はコントロールを失い、壁にあたって爆発してしまった。これを見てニーノは車を降りた。レースはピートとスコットの争いとなり、少しの差でゴールを奪ったのはピートの白いホンダだった。新しいチャンピオンの誕生に観衆は熱狂した。しかし名選手サルティを失って動揺したピートは、心の真の平和を、尊敬する矢村の国から見い出したいと日本行きを決意した。そして、もしそれが見つかったら、再びレースに戻ることはあるまいと思っていた。




7-20. ポセイドン・アドベンチャー

監督 ロナルド・ニーム
出演 ジーン・ハックマンアーネスト・ボーグナインレッド・バトンズ
1972年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
1400名の乗客を乗せてニューヨークからギリシャに向かう豪華客船ポセイドン号が32メートルの大津波に襲われ転覆爆破し、生き残った船客が超人的な勇気で脱出をこころみる姿を描く。製作は「海底探検」 のアーウィン・アレン、監督は「クリスマス・キャロル(1970)」 のロナルド・ニーム、ポール・ギャリコのベスト・セラー小説を「夜の大走査線」 のスターリング・シリファントと「脱走特急」 のウェンデル・メイズが共同脚色。撮影はハロルド・E・スタイン、特撮は「トラ・トラ・トラ!」 でアカデミー特撮賞を獲得したL・B・アボット、音楽はジョン・ウィリアムズ、美術はウィリアム・クリーバー、、セットデザインはラファエル・ブレットン、編集はハロルド・F・クレスが各々担当。出演はジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレイ、ロディ・マクドウォール、ステラ・スティーヴンス、シェリー・ウィンタース、ジャック・アルバートソン、パメラ・スー・マーティン、エリック・シーア、フレッド・サドフ、レスリー・ニールセン、シーラ・マシューズ、ジャン・アーバンなど。

ストーリー
81000トンの豪華客船ポセイドン号が、ギリシャに向かうためにニューヨーク港をでたのは12月末だった。船長(レスリー・ニールセン)は最初から船の重心が高いことに気づいていた。バラスト(底荷)をしていないので、船体の上部が重く、大波を喰うと転覆する恐れもあり、スピードを出すことも危険だったが、船主の代表はそれを認めなかった。ポセイドン号が地中海に入ったとき、地震観測所から、クレタ島南西130マイル沖合いで海底地震があったという電報が入った。それから間もなく大津波がおしよせポセイドン号は一瞬にして転覆した。船体の上部が海底に没し、船底が海面に現われたのである。折から新年を祝うパーティが大食堂で催されており、集まった船客たちのほとんどが生命を失うという大惨事だった。乗客の1人であるフランク・スコット牧師(ジーン・ハックマン)は、大混乱が鎮まると奇跡的に助かった人々と共に脱出を試みた。ニューヨークの刑事であるマイク・ロゴ(アーネスト・ボーグ・ナイン)その妻でもと売春婦だったリンダ(ステラ・スティーヴンス)、雑貨商のジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、中年夫婦マニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)とベル(シェリー・ウィンタース)、歌手のノニー・バリー(キャロル・リンレイ)、17歳のスーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)と10歳になるその弟のロビン(エリック・シーア)そして船のボーイ、エーカーズ(ロディ・マクドウォール)の9人がスコットに従うことになり、あとの生存者は、救急隊がくるまでじっとしていた方がいいという事務長の意見をとった。スコット牧師は、かすかながら船内にともる電気があるうちに、船の竜骨、つまり海面に1番近い所にたどりつき、そこで待機していれば助かるかもしれないと判断したのだ。上部に進むためには大クリスマス・ツリーを逆によじ登っていかなければならない。10人が登り終わったとき、スコット牧師の意見が正しかったことが証明された。キッチンボイラーが爆発して、残った人々を流してしまったのだ。一行はスコット牧師の指示に従い、ブロードウェイと呼ばれる通路を通り、エンジンルームにたどりついた。その間、船内の爆発はたびたび起こり、船体は往々に沈下して、海水が下から次第にせり上がり、皆をあせらせた。最初の不幸は、ギャレーから次のエンジンルームに向かうときに興った。35フィート先にあるエンジンルームに着くためには水中を通らなければならない。ロープをはるために、スコット牧師が飛び込んだ。だが途中、倒れてきた鉄板の下敷きになって身動きができなくなってしまった。娘の頃、水泳選手であったベルは、異変を感じ水中に飛び込んだ。無事彼を救ったベルは、目的地に泳ぎついたものの、心臓発作に襲われ、息を引き取った。やがて他の生存者たちもベルを見習い、水を潜ってエンジンルームにたどりついたが、彼女の死は一同を悲しみに包んだ。やがて一行は最後の困難にさしかかった。いよいよプロペラ・シャフトにアタックする段階に入ったのである。この時、船体が再び傾いたと思う間もなく遠くに爆発音が起こり、更に船体は船尾に傾いた。このため、ロゴ刑事の妻リンダが振り落とされ、水中に沈んだ。参事は更に続いた。出口のそばにあるスチーム・パイプが破れ、噴き出し始めたのだ。このままでは進路がはばまれれば、今までの苦労は水の泡になってしまう。スコットは決意したようにパイプに飛びつきハッチをしめた。だがさすがの彼も熱いスチームには耐えきれず水中に落下した。スコット牧師に変わってロゴが指導する一行はやっとの思い出船底にたどりついた。皆は鉄棒を振って船底を無我夢中で叩きだした。すると、遠くからかすかに反応が聞こえてくる。外には救助隊が救助にきていたのだ。船底の扉が焼ききられ、太陽がさし込んだ。助かった6人を乗せたヘリコプターが大空へと舞い上がっていった。




7-21. アビス

監督 ジェームズ・キャメロン
出演 エド・ハリスメアリー・エリザベス・マストラントニオマイケル・ビーン
1989年・アメリカ(20世紀フォックス)

解説
深海に潜む生物体との遭遇を描くアドベンチヤー・ロマン。製作はゲイル・アン・ハード、監督・脚本は「エイリアン2」 のジェームズ・キャメロン、撮影はミカエル・サロモン、音楽はアラン・シルヴェストリが担当。出演はエド・ハリス、メアリー・エリザベス・マストラントニオほか。後に171分の完全版が発表されている。

ストーリー
深海。アメリカ海軍の原子力潜水艦が謎の物体に襲われ、救助活動の基地として選ばれたのは海底油田採掘用試作品住居<ディープコア>だった。バッド・ブリッグマン(エド・ハリス)を始めとする9人のクルーのもとに、コフィ大尉(マイケル・ビーン)が指揮する海軍のダイバー・チームと、ディープコアの設計者リンジー(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)がやって来る。実はバッドとリンジーは離婚間近の夫婦で、ふたりは事あるごとに対立するのだった。そんな折、クルーのジャマー(ジョン・ベッドフォード・ロイド)が救助中に巨大な光る物体を目撃し、ショックで昏倒してしまう。そしてリンジーも、その光を見た。一方コフィたちは、バッドたちに無断で原潜から何かを回収する。その頃海上は嵐に襲われ、基地を結ぶ連絡ケーブルが切れた挙句、音信不通となり、クルーからも犠牲が出た。被害状況を調べるために外に出たリンジーは、海溝から姿を現わしたあの光る物体と再び接触するが、バッドたちはその事を信じない。やがてリンジーは、コフィが原潜内から回収したものが核弾頭であることを知り激しく詰め寄るが、彼は潜水病とストレスからの緊張感で狂気の世界に入り始めていた。そんな時、光る訪問者がやって来てクルーとコミュニケーションをとり始めるが、それによってコフィの狂気はエスカレートし、海溝で核弾頭を爆発させようとする。その危機を救ったのは昏睡から醒めたジャマーで、バッドは潜水艇で海中に出たコフィを追ってリンジーと共に、必死の追撃戦を展開する。激しい戦いの末に、コフィの艇は海溝に落ちてゆき、水圧で爆死した。バッドとリンジーを乗せた艇も損傷が激しく、バッドが潜水ヘルメットをかぶってディープコアまで到着した後、溺れたリンジーを蘇生させるのだった。そしてバッドは、海溝に落ちた核弾頭の起爆装置を解除するため、液体酸素で満たしたヘルメットと潜水服を着て、底知れぬ深淵へと潜ってゆく。そして彼は起爆装置のコードを切断することに成功するが、液体酸素はディープコアに戻るまでなかった。こうして死を迎えようとしているバッドを救出するのは、あの光る巨大な物体だった。やがて嵐は去り、地上と交信が再開され、リンジーたちはバッドが生きていることを知り歓喜する。そしてふたりは夫婦としての絆を取り戻すのだった。




7-22. 失われた週末

監督 ビリー・ワイルダー
出演 レイ・ミランドジェーン・ワイマンフィリップ・テリー
1945年・アメリカ

解説
1945年度アカデミー受賞映画であわせて監督賞、脚本賞、主演男優賞をも得ている。「青髭八人目の妻」 の共同脚色チームのチャールズ・ブラケットとビリー・ワイルダーが、チャールズ・R・ジャクソンの小説を基に脚本を書き、ワイルダーが監督に当たったもの。主演は「呪いの家」 のレイ・ミランドと最近、「一年仔」 に主演した帰り咲きのジェーン・ワイマン。「最後の地獄船」 のハワード・ダ・シルヴァ、フィリップ・テリー、ドリス・ダウリング、フランク・フェイレンが助演している。撮影は「アラブ」 等古くから名手たるジョン・サイツの担当。

ストーリー
ドン・バーナム(レイ・ミランド)は33歳、大学時代から小説家になるつもりで、中途退学してニューヨークに飛び出してきたのだが、学窓の天才も世に出てはいっこうに小説が売れない。売れなくとも書いているうちはよかった。書けなくなってきて、焦慮をまぎらそうと一杯の酒を飲んだのが諸悪の始まりで、どうやらアルコール中毒になってしまったらしい。弟思いの兄ウィック(フィリップ・テリー)のアパートで兄弟は二人暮らしで、何から何までドンは兄まかせである。十日ほどの酒びたりからやっと目覚めた弟を、ウイックは田舎へ連れて行って週末4日間なりとも健康生活をさせようと企画する。出発の準備の最中、ドンの恋人ヘレン(ジェーン・ワイマン)が訪ねて来る。彼女が音楽会の切符を二枚持っているというと、ドンは3時の列車の予定を6時半の列車に延ばし、無理に兄を彼女に同伴させる。しかし酒は一滴もない、金も一文なし、どの酒屋も現金でなければドンには酒を売らない。そこへ給金を貰いに来た掃除女との扉ごしの問答で、給金10ドルの隠し場所を知ったドンは、彼女をごまかして追い返し、それをネコババ。すぐ安酒を2本買い、ついでにナットの酒場に寄るのだった。飲んだくれたドンは時間に遅れ、ヘレンに会わないようにしてアパートへ帰る。兄は怒って、一人で田舎へ行ってしまった。買ってきた酒の1本を電燈のかさの裏に隠し、もう1本を飲んでドンは寝る。翌日、朝からナットの酒場へ行き、ドンはヘレンとの恋物語を始める。3年前、オペラでレインコートの預かり札の間違いで知り合い、恋仲となったこと。恋は不思議なもので、酒を断つことができたこと。彼女の両親が娘の恋人に会いにニューヨークへ来たこと。失業の身で昔気質の老人たちに会うのが気恥ずかしく、電話で時間が遅れると断って1杯飲んだこと。そして飲んだくれ、彼女に正体を見せたこと。しかしドンに首ったけのヘレンは彼を見限らず救おうとして、以来約3年の間むなしい努力を続けていることを話す。ドンは、帰って小説を書き始める。タイトルは『酒びん』ドン・バーナム作、ヘレンに贈る。しかし後は一行も書けない。酒が飲みたいが、金はない。ドンは無一文で初めての酒場で飲み、ハンドバックをスリ損なって店を放り出される。タイプライターを売ろうとすれば、ユダヤ人のヨム・キッパー祭日で、質屋は全部休み。顔見知りの女給グロリアから5ドル借りるが、階段から落ちて気絶する。気が付くとドンは、アルコール中患者収容所にいる。医師のコートを盗んでアパートへドンはアパートへ逃げ帰る。部屋の中で幻覚におびえているところに、ヘレンが来る。彼女の介抱でその夜は眠るが、翌朝はヘレンがオーバーを質に入れ、ピストルを出してくる。しかし、ドンは自殺はしなかった。ヘレンの愛で酒飲みのドン・バーナムは死んだが、作家ドン・バーナムはこれからは大いに書くだろう。




7-23. 第17捕虜収容所 

監督 ビリー・ワイルダー
出演 ウィリアム・ホールデンドン・テイラーオットー・プレミンジャー
1953年・アメリカ(パラマウント映画会社)

解説
「地獄の英雄」 のビリー・ワイルダーが1953年に製作・監督した作品で、ドナルド・ビーヴァン、エドモンド・トルチンスキ共作の舞台劇の映画化。脚色にはワイルダーとエドウィン・ブラムが当たり、撮影は「底抜けびっくり仰天」 のアーネスト・ラズロ、音楽は「綱渡りの男」 のフランツ・ワックスマンの担当。主演は「月蒼くして」 のウィリアム・ホールデンで、「花嫁の父」 のドン・テイラー、「月蒼くして」 の監督オットー・プレミンジャー、「底抜け落下傘部隊」 のロバート・ストラウス、ハーヴェイ・レムベック、ロバート・ショーリー、ロビンソン・ストーン、ウィリアム・ピアスン、それに原作者のエドモンド・トルチンスキらが共演している。

ストーリー
第2次大戦末期。スイスとの国境に近いドイツの第17捕虜収容所。ここの第4キャンプには、アメリカ空軍の兵士ばかりが収容されていた。しかもすべて軍曹ばかりで、いろいろの悶着がよく起こるのだった。クリスマスに近いある夜、2人の捕虜がみんなの協力で、脱走することになった。2人が出かけたあと、無事に脱出できるかどうかの賭けが始まった。悲観説をとなえたのはセフトン(ウィリアム・ホールデン)軍曹。まもなく銃声が聞こえ、2人は射殺されたことがわかった。この計画が発覚したのは捕虜のなかにスパイがいるからにちがいないと、皆の間で問題になる。お人好しのストッシュ(ロバート・ストラウス)、その親方のハリー(ハーヴェイ・レムベック)、いつもオカリナを吹いているジョーイ、自警委員のプライス、一本気のハーフィ、それにセフトンとセフトンの子分のクキーなどのうち、最も疑われたのはセフトンだった。実際セフトンは抜け目ない男で、衛兵を買収してひそかに外出したりするので、疑われる理由は充分だった。だが、一同はセフトンの恩恵もこうむっていた。セフトンの経営する“事業”には、『デパート』『競馬』『酒場』『のぞき』などがあった。『デパート』はセフトンがベッドの下に隠しているトランクで、その中にタバコ、酒から女の靴下まであった。『競馬』はハツカ鼠を走らせてタバコを賭ける遊び。『酒場』はイモからアルコールを蒸溜し、タバコ2本で1杯飲ませていた。『のぞき』は手製の望遠鏡でソヴェトの女囚が入浴場で順番を待っている様をのぞくことだ。脱走者が射殺された数日後、ダンバー(ドン・テイラー)という中尉と、バグラディアン軍曹が収容された。ダンバー中尉は、ドイツ軍の軍用列車を爆破したことがあり、それを耳にした所長(オットー・プレミンジャー)の厳しい訊問を受けた。こんなことからセフトンへの疑惑は更に深まり、一同は彼を袋叩きにする。セフトンはなんとか疑惑を晴らそうと、スパイの正体をつきとめる機会を待った。やがてスパイはプライスであることが判ったが、現場をにぎるまで手を下すことは出来ない。ダンバー中尉はベルリンへ連れて行かれることになり、捕虜たちは中尉奪還の計画を立て、成功する。そして中尉を夜のうちに脱走させることになり、プライスが同行を申し出た。セフトンは我慢できず、プライスを責めて自白させ、みずから中尉脱走の役目を買って出る。セフトンには成算があった。彼はプライスをオトリにし、彼は集中射撃を浴びて倒れた。その隙にセフトンと中尉は、首尾よく自由の世界へ逃れるのだった。




7-24. スミス都へ行く

監督 フランク・キャプラ
出演 ジーン・アーサージェームズ・スチュアートクロード・レインズ
1939年・アメリカ(コロンビア映画)

解説
政界の陰謀術策によって傀儡議員に祭り上げられた純心直情な青年が、腐敗政治を糾弾するという正義と愛情の美しさを描いたヒューマンドラマ。監督は「美しき哉、人生!」 の巨匠フランク・キャプラ。主演は「めまい」 などで知られるジェームス・スチュアートほか、クロード・レインズなど。

ストーリー
ある州の上院議員フォーリーが急逝した。焦ったのは同僚のペイン(クロード・レインズ)であり、その黒幕である州財界のテイラー(エドワード・アーノルド)及び州知事のホッパー(ガイ・キビー)たちだった。なぜなら、今彼に死なれたことは、彼等が不正な巨利を貪るべく計画していたダム建設安案を通過させるために大痛手だったからである。直ちに対策が講ぜられ、自分たちに有利な後任議員を指名する必要に迫られ、政界の事情には盲目同然の少年団長ジェフ・スミス(ジェームス・スチュアート)が選ばれた。スミスは首都ワシントンに赴き、美しい女秘書サンダース(ジーン・アーサー)の協力を得て議員生活の第一歩を踏み出すことになった。しかし青二才の身で手練手管の必要な国会に出席する非を悟ったスミスは辞職したくなり、ペインの許に赴いた。スミスは、亡父の親友としてペインを尊敬していたので、彼に宥められて辞職を思い止まった。それに故郷のウイレット河一帯に少年村を建設することは彼の年来の宿望でもあったので、ペインにすすめられるままその議案を起草し提出すべく、サンダースを相手に仕事を始めた。一方、ペインはスミスが少年村を建設するというウイレット河とういうのが、彼等がダム工事用地として政府に売り込もうとしている土地であることに気づき、スミス案を阻止せねばならぬハメになった。そしてペインは彼の除名動議を提出することになった。スミスはこの正義なき議会に失望し、いよいよ辞職を決議するが、サンダースから今こそ国家に必要な人物になるべきだと激励され、翌日の議会に臨んだ。彼は発言を求め、ダム工事にまつわる不正行為を摘発し、事実を明らかにするまでは発言権を譲るまいと演説を続けた。しかしスミスの正論はテイラー一派の策動に遮断されてしまう。スミスは諦めずに猶も正義の獅子吼を続けたが、演説開始以来二十四時間を経て声も途絶えがちとなってしまう。かくしてスミスは、席上でペインを面詰して倒れてしまった。ペインはこの正義の声に自責を感じ、自殺しようとしたが果たせず、遂に議場において一切の真相を告白し、スミス説を承認した。スミスの苦闘はかくて酬いられたのであった。




7-25. ハーヴェイ

監督 ヘンリー・コスター
出演 ジェームズ・スチュアートジョセフィン・ハルペギー・ドウ
1950年・アメリカ(ユニヴァーサル日本支社)

解説
ピュリッツァ賞を受けたメアリー・チェイスの同名戯曲の映画化で、ジョン・ベック製作の1950年映画。原作者自身が「恋の乱戦」 のオスカー・ブロドニーと協力した脚本を、「気まぐれ天使」 のヘンリー・コスターが監督した。撮影は「裏街(1941)」 のウィリアム・ダニエルズ、音楽はフランク・スキナー、舞台でもこの役を演じたことのあるジェームズ・スチュアート(「折れた矢」 )が主役を演じ、これも舞台からのジョセフィン・ハル、「輝ける勝利」 のペギー・ドウ、「コマンチ族の怒り」 のチャールズ・ドレイク、「幸福の森」 のセシル・ケラウェイらが助演。

ストーリー
米国中西部の小さな町グレンドーラ。当地の名門ダウド家の主人エルウッド(ジェームズ・スチュアート)は、ハーヴェイと称する6フィートの白兎と大の親友である――と自ら信じ込み、会う人毎にこの親友を紹介したがるので、彼と同居している姉のヴィタ(ジョセフィン・ハル)や彼女の娘マートル・メエ(ヴィクトリア・ホーン)は大いに閉口している。ヴィタは、マートル・メエの婿探しに名流婦人の茶会を催したが、エルウッドはチャーリーの酒場でいい御機嫌になって御帰館、兎を紹介しはじめ、会を滅茶滅茶にした。ヴィタは遂に彼を精神病院に入れることにしたが、病院の若い医師サンダースン博士(チャールズ・ドレイク)はヴィタを患者と間違えた上、エルウッドにすっかり共鳴してしまった。院長チャムリー博士(セシル・ケラウェイ)はエルウッドが帰ってからやっと彼が狂人であることに気づき、ヴィタを釈放する一方、、チャーリーの酒場に彼を追って行くが、これまたすっかりハーヴェイ党になって馴れぬアヴァンチュールにまで発展した末、兎の幻想に追われながら帰院した。一方エルウッドは酒場でサンダースン博士と看護婦ケリー(ペギー・ドウ)を結び付けてやったところを看護人ウィルスンに病院へ連れ戻され、ヴィタの願いで幻想の消える注射を打たれることになった。しかしこの時乗ってきたタクシーの運転手(ウォーレス・フォード)から幻想の消えた患者が如何に平凡な人間になるかを聞いて、彼女も初めてエルウッドの良さを悟った。入院はおろか注射も中止して、彼女とエルウッドは、見えざるハーヴェイともども心楽しく帰宅した。




7-26. モンゴル

監督 セルゲイ・ボドロフ
出演 浅野忠信スン・ホンレイアマデュ・ママダコフ
2007年・ドイツ、ロシア、カザフスタン、モンゴル(東映=ティ・ジョイ)

解説
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた、浅野忠信主演の歴史大作。モンゴル建国の英雄チンギス・ハーンの戦いと波乱に満ちた人生が、雄大な映像世界の中で展開する。

ストーリー
12世紀のモンゴル。一部族の頭領イェスゲイの息子テムジンが誕生する。テムジンは9歳のとき、敵対するメルキト部族から花嫁を選び友好関係を結ぶため父と旅に出る。イェスゲイには、メルキト部族からテムジンの母となる女性を略奪した過去があった。しかし途中立ち寄った村で、テムジンは少女ボルテを許婚として選ぶ。帰路、イェスゲイは敵対するタタール部族に毒殺される。父を失ったテムジンは、頭領の座を狙うタルグタイの裏切りにより、家財を奪われ命を狙われる。テムジンは過酷な自然の中に身を潜める。テムジンは凍てつく池に落ちるが、逞しい少年ジャムカに救われ、2人は兄弟の契りを交わす。タルグタイの手を逃れ成長したテムジン(浅野忠信)は、許婚ボルテ(クーラン・チュラン)を迎えに行く。ボルテもまた彼を待ち続けていた。しかしメルキト部族騎馬軍団の奇襲に遭う。弓矢に貫かれたテムジンを守るため、ボルテは自らメルキト部族に身を投じる。翌年テムジンは、多くの戦士を抱えるジャムカ(スン・ホンレイ)と共にメルキト部族に攻め入る。テムジンは激戦の末、ボルテを見つける。彼女はメルキト部族の子供を宿していたが、テムジンは我が子として慈しむ。テムジンの寛大な精神は、ジャムカの戦士たちを惹きつけた。そのためジャムカから離れ、テムジンに付いていく者が出始めた。ジャムカはテムジンを討つ覚悟を決め、タルグタイも彼に合流する。ジャムカの軍団が、テムジンの率いる人々を襲う。テムジンは家族を逃がし、数で劣勢な戦いに挑むが捕らえられてしまう。ジャムカはテムジンを殺すに忍びなく、命乞いを要求する。しかしテムジンは応じず、部下たちと共に奴隷として売られ、中国西北部タングート族の地で投獄される。数年後、ボルテの身を挺した尽力によって、テムジンは生還。彼は、乱れたモンゴルに規律をもたらそうという強い意志を固める。ジャムカの大軍との決戦を控えた彼のもとには、最強の戦士たちが集まるのであった。




7-27. ウォーリー

監督 アンドリュー・スタントン
出演 ベン・バートエリッサ・ナイトジェフ・ガーリン
2008年・アメリカ(ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン)

解説
ディズニーとピクサーが放つ、最新CGアニメ。荒廃した未来の地球で、孤独にゴミ処理を行っていたロボットが宇宙へと飛び出し、夢と感動にあふれた大冒険を繰り広げる。

ストーリー
29世紀。地球の大気圏は、煤けた雲状のスモッグに覆われていた。荒れ果てた地上はゴミの山。そこには、人間はおろか生物や植物の気配すらなかった……。無人の高層ビル群と、ゴミの塊を積み重ねてできたタワーの間を縫うように、一台の小さなロボットが移動している。彼の名はウォーリー。地球に残された最後のロボットだ。ゴミをキューブ型に圧縮、それを積み上げ、地球をキレイに片付けることが彼の任務だった。たったひとりで働き続け、既に700年という時が流れていた。ウォーリーは、ゴミの中から古い玩具や食器、指輪ケース、ライターなど、“宝物”を見つけては、住まい代わりのトレーラーに持ち帰ることを楽しみとしていた。いちばんのお気に入りはミュージカル映画「ハロー・ドーリー」のビデオで、主人公を真似て踊ったり、歌ったり…。しかし、男女が手を握るロマンティックな場面では決まって寂しい気持ちになるのだった。そんなある日、巨大な宇宙船が空から降りてきて、中から真っ白に輝くロボットが現れる。彼女の名はイヴ。まるで天使のようなイヴにウォーリーは一目で恋をした。しかし、懸命に何かを探しているイヴは、彼を相手にしようとはしない。数日後、猛烈な砂嵐が二人を襲った。ウォーリーはイヴを自分のトレーラーへと導き、そして数々の“宝物”をイヴに見せる。そのいくつかに興味を持ったイヴは、次第にウォーリーとも打ち解けていった。ところが、ウォーリーがとっておきの宝物である小さな植物をイヴに見せると、彼女の身体から放たれた光線が植物を包み込んだ。そして、一瞬のうちに植物がイヴの身体に取り込まれ、突然彼女はフリーズしてしまう。ウォーリーがイヴを看病していると、宇宙船が再び出現、彼女を連れ去っていった。ウォーリーは、飛び立とうとする宇宙船を追いかけ、その船体に必死にしがみつく。それは、想像もつかないほど壮大な冒険の始まりだった……。




7-28. 幸せのちから

監督 ガブリエレ・ムッチーノ
出演 ウィル・スミスサンディ・ニュートンジェイデン・クリストファー・サイア・スミス
2006年・アメリカ(ソニー・ピクチャーズ)

解説
息子のために奮闘し、全財産21ドルから億万長者へとのしあがった男の実話を描くドラマ。ウィル・スミスが実の息子と初共演し、本物の親子ならではのリアルな父子愛を見せる。

ストーリー
五歳の息子・クリストファー(ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス)と妻・リンダ(タンディ・ニュートン)とともにサンフランシスコで生活するクリス(ウィル・スミス)。生活は困窮していたが、クリスは医療機器のセールスに励み、生活を立て直そうと必死で働いた。しかし家賃の支払いすらままならず、一日16時間のパート労働を続けていたリンダも限界に達してしまう。息子を連れて出て行ってしまうリンダ。28歳になるまで実の父と会った事すらなかったクリスは、息子に自分と同じ思いをさせまいと心に誓い、彼を自分のもとに引き取る。しかし生活は悪化の一途を辿り、父子は医療機器の在庫を抱えてモーテル暮らしを強いられる。そんなある日、クリスは街中で真っ赤なフェラーリを颯爽と乗り付けた高級スーツの男を見かけ、声をかけた。「どうすればあなたみたいに成れるんだい?」。男は株の仲介人だった。聞けば学歴がなくとも証券会社の養成コースを受講すれば正社員採用の道が開けるというのだ。クリスは受講者募集の口を見つけ、定員に滑り込む為の猛烈アピールを開始する。彼の特技であるルービックキューブの技術に関心した採用者によって、養成コースの受講に成功するクリス。無給で六ヶ月の実地研修を続けた末、採用されるのは20人の内のたった一人だと告げられる。厳しい道ではあったが、今の生活から愛息子とともに抜け出す為にはこれしか無いと決め、クリスは勉強と顧客開拓に励んだ。一方生活は益々困窮し、二人は、ついにホームレスにまで身を落とす。手元に残っている金目の物は、壊れてしまった一台の医療機器だけだった。駅のトイレや教会の宿泊斡旋所などを渡り歩き、疲弊しつつもユーモアを絶やさない二人。そしてクリスは六ヶ月の研修期間を乗り切り、20分の1の採用者の資格をも見事に勝ち得た。未来が開けた喜びを噛み締めながら、クリスは息子をむかえに託児所へと急ぐのだった。




7-29. ブラインドサイト 小さな登山者たち

監督 ルーシー・ウォーカー
出演 ギャヴィン・アットウッドサリー・バーク
2006年・イギリス(ファントム・フィルム)

解説
雄大なヒマラヤ山脈の絶景を収めたドキュメンタリー。初めての登山にチャレンジする盲目の子供たちの奮闘と、彼らをサポートする大人たちの葛藤を映し出す。

ストーリー
チベットでは、古くから盲人は前世の悪行が原因で悪魔に取り憑かれているという言い伝えがあり、多くの差別的な扱いを受けてきた。盲目の子供たちも「愚か者」と周りの子供たちからからかわれ、社会からはじかれてしまうという現実に直面していた。そんな子供たちに救いの手を差し伸べたのは、自身も盲人であるドイツ人教育者サブリエ・テンバーケン。様々な困難を乗り越え、彼女はチベット初の盲人のための学校を設立する。数年後、盲人史上初のエベレスト登頂に成功したアメリカ人登山家、エリック・ヴァイエンマイヤーに感銘を受けたサブリエと教え子たちは、エリックに連絡を取り、登山のワークショップを開いてもらうべく学校へと招待する。そのことがきっかけとなり、エリックは子供たちにエベレストの北側、標高7000メートルのラクパリを目指すことを提案する。《10万の美しい湖》ソナム・ブムツォ、《優勝旗》ゲンゼン、《小さな月》ダチャン、《幸せ》キーラ、《ブッダの教えを守る者》テンジン、《幸運》タシ。6人の少年少女とサブリエ、そしてエリックたちは、こうして前代未聞の挑戦をはじめることになった。自分たちの可能性に向かって足を踏み出す登山者たちは、果たして無事に登頂することができるのだろうか?




7-30. 愛されるために、ここにいる

監督 ステファヌ・ブリゼ
出演 パトリック・シェネアンヌ・コンシニジョルジュ・ウィルソン
2005年・フランス(セテラ・インターナショナル)

解説
セザール賞で3部門ノミネートされたドラマ。孤独に生きる初老の男が、タンゴのレッスンで知り合った女性との交流を通して輝きを取り戻すまでを繊細に紡ぎ上げる。

ストーリー
50歳を過ぎたジャン=クロード(パトリック・シェネ)は、父親から継いだ、人情を殺して裁判所の決定を伝える執行官の仕事を長年続け、心身ともに疲れている。彼のオフィスの窓からはタンゴ教室の様子が見え、タンゴのメロディが聞こえてくる。毎週末に彼は老人ホームにいる高齢の父(ジョルジュ・ウィルソン)を訪ねている。しかし気難しい父親からはいつも文句ばかり聞かされている。ある日、医師から何か運動を、と勧められたジャン=クロードは思い切ってタンゴ教室に入ってみた。そこには、数週間後に控えた自身の結婚式でタンゴを踊るためにレッスンを受けに来たフランソワーズ(アンヌ・コンシニ)がいた。偶然ジャン=クロードの車で送ってもらったフランソワーズは、車の中の忘れ物を受取りに彼の家に行く。タンゴのステップをうまく踏めないジャン=クロードは、彼女にレッスンしてもらう。頬と頬が触れ合う程そばで踊るうちに、お互いの気持ちが高揚するのを感じる二人。ある夜タンゴのステージを観た帰り、お別れのキスから抑えられない熱いキスを交わすのだった。しかし偶然から、ジャン=クローズは彼女の結婚のことを知る。彼女は彼に何も話していなかった。事実を知ったジャン=クロードは彼女の説明も聞かず去る。数日後フランソワーズは、ジャン=クロードのオフィスを訪れ、結婚することを黙っていたことを詫びた。自分はマリッジ・ブルーなのだと説明し、友達でいようと言うも、ジャン=クロードは彼女を冷たく拒絶。各々に空しい日々を過ごす二人。ジャン=クロードは、ある日、秘書の女性(アンヌ・ブノワ)から、彼女が言ったことは本心ではないと助言され、驚くのだった……。




7-31. アイランド

監督 マイケル・ベイ
出演 ユアン・マクレガースカーレット・ヨハンソンジャイモン・ハンスゥ
2005年・アメリカ(ワーナー)

解説
ヒットメイカー、マイケル・ベイ&ユアン・マクレガー主演のSF大作。近未来を舞台に、臓器提供用に作られたクローン人間たちのサバイバルが緊迫感たっぷりに展開する。

ストーリー
21世紀の前半、近未来。海に浮かぶ緑豊かな島、憧れの地“アイランド”を目の前に、海へ引きずりこまれてしまういつもの悪夢…。しかし、夢から覚めたリンカーン(ユアン・マクレガー)を待っていたのは、普段と変わらない1日だった。壁のスクリーンに映し出される健康アドバイス、管理の行き届いた食事、そして、女性用の住居棟で暮らすジョーダン(スカーレット・ヨハンソン)との、心はずむ会話。数百名の住人と共に彼らが住むその閉鎖的な施設は、厳重な管理下に置かれ、住人たちの日常は常に監視されている。だが、それも住人たちの安全を考えてのことらしい。大気汚染から救い出され、このコミュニティで暮らし始めてもう3年。安全で快適だけれども、退屈な日々。ここで暮らす人々の夢は、地上最後の楽園“アイランド”へ行くことだった。その島は放射能汚染を逃れた地上唯一の楽園で、人類は地球規模の環境破壊によって、すでに死に絶えてしまっているらしい。彼ら施設の住人を除いては。日々行われる抽選会が、彼らの最大の関心ごとだった。しかし、リンカーンはある日、換気口から入ってきた一匹の蛾を発見して、ある疑問を抱く。外の空気は汚染されているはずではなかったか? そして施設内を探索するうちに、恐るべき真実を目撃する。彼らは、保険契約を結んだクライアントに臓器を提供するためだけに生産された“クローン”であり、「アイランド行き」とは、すなわち臓器摘出の死刑宣告だったのだ。そして次の当選者に決まったのは、なんとジョーダンだった! リンカーンとジョーダンは、生きるための脱出を試みる。初めての外の世界へ逃れ出たふたりは、監視の目から解放され、いつしか友情以上の関係を育んでいく。だが、彼らを施設から派遣された追っ手が執拗に追跡する。




7-32. 初体験 リッジモント・ハイ

監督 エイミー・ヘッカリング
出演 ショーン・ペンジェニファー・ジェイソン・リージャッジ・ラインホルド
1982年・アメリカ(ユニヴァーサル=CIC)

解説
現代高校生気質をコミカルに描いた青春ドラマ。79年秋、学生になりすまして母校リッジモント・ハイにもぐり込んで若者たちの生態を観察したキャメロン・クロウの同名原作を彼自ら脚色、女性監督エイミー・ヘッカリングが初演出。製作はアート・リンソンとアービング・エイゾフ、製作指揮はC・O・エリクソン、撮影はマシユー・F・レオネッティ。ジャクソン・ブラウン、ザ・カーズ、ポロらの歌うロック&ポップスが24曲つめこまれている。出演はショーン・ペン、ジェニファー・ジェーソン・リー、ジャッジ・ラインホールド、フィービ・ケイツなど。

ストーリー
15歳のステーシー・ハミルトン(ジェニファー・ジェイソン・リー)と17歳のリンダ(フィービー・ケイツ)は、ロサンゼルスのアップタウンにあるリッジモント高校の同窓生だ。性体験済のリンダと、まだのステーシーは学校がひけた後、近くのファーストフードの店でウェイトレスをしている。ステーシーの最大の関心事は、早く体験すること。ある日、店にいかした男の子が入ってきたので、早速デートの約束をとりつけた。リッジモント高には、仲間に何でも斡旋し稼ぎまくるマイク、ステーシーにあこがれている小柄のマーク、ステーシーの兄で連日のらりくらりとハンバーグを焼いているブラッド(ジャッジ・ラインホールド)、歴史教師ミスター・ハンドに目をつけられたサーフィン好きでドラッグ狂いのジェフ(ショーン・ペン)らが通っている。やがて、ママの目を盗んでステーシーは深夜の脱出に成功、くだんの男の子とデートし、大人へのかけ橋を渡ってしまった。それ以来、彼女は人が変ったようになる。マークとのデートもOK、ところが彼は肝心のところで、「用事があるから…」と彼女の気持を無視した行動をとる。ステーシーのセックスに対する好奇心はエスカレートし、マイクともメイク・ラブしちゃった。ところが、ステーシーは妊娠。しかし、マイクは知らぬ存ぜぬの一点張り。話を聞いて憤慨したリンダは、マイクの車、彼のロッカーにペンキで短小野郎と書いて、彼をへこました。そして試験シーズンがやってきた。サーフィン一筋のジェフ。やがて、華やかな卒業記念ダンス・パーティーの準備も始まり、学園生活はいよいよ佳境に入る。一方、マイクのことで傷ついたステーシーの心理も微妙に変化した。求めていたのはセックスへの興味ではなく、愛ではないのか。そんな時、彼女はマークの自分への真剣な思いを感じとる。この2人なんとなくいいムードになりそうである。




7-33. 大列車強盗

監督 バート・ケネディ
出演 ジョン・ウェインアン・マーグレットベン・ジョンソン
1972年・アメリカ(ワーナー映画)

解説
列車強盗で奪われた金塊につけられた5万ドルの賞金をめぐって展開する壮烈な金塊争奪戦を描く。製作はジョン・ウェインの息子であるマイケル・ウェイン、脚本・監督は「デザーター」 のバート・ケネディ、撮影はウィリアム・H・クローシア、音楽はドミニク・フロンティア、編集はフランク・サンティロが各々担当。出演はジョン・ウェイン、ベン・ジョンソン、アン・マーグレット、ロッド・テイラー、ボビー・ヴィントン、クリストファー・ジョージ、ジェリー・ガトリン、リカルド・モンタルバンなど。

ストーリー
ウエルス・ファーゴがら5万ドルの賞金がでることもあって、レイン(ジョン・ウェイン)は、若くて美しいロウ未亡人(アン・マーグレット)に手をかすことを承知した。夫人と一緒にメキシコの荒野の奥深くにいき、そこに捨てられているボロ機関車に隠されている50万ドル相当の金を取り戻そうというのだ。その金は、今は亡き彼女の夫が、生前に列車から強盗したものだった。レインは危険な旅の応援を頼むために、古い相棒のウイル・ジェシー(ベン・ジョンソン)、グラディ(ロッド・テイラー)、ベン・ヤング(ボビー・ヴィントン)などを集めた。グラディは2人の新顔も連れてきた。カルフーン(クリストファー・ジョージ)にサム・ターナー(ジェリー・ガトリン)だ。一行は武器を積み込み、メキシコに向けて出発した。その日おそく、武装した20人の屈強な男たちがレイン一行の跡をつけて出発した。その中の7人はマット・ロウと一緒に列車強盗をした生き残りで、他の男は雇われガンマンだった。ロウ夫人の跡をつけ、金を見つけ次第、それをかっさらおうというのだ。3日後、大した混乱もなく目的の機関車にたどり着き、50万ドルの金塊を発見した。尾行者たちに気づいたレインは、彼らの攻撃をさそうために、箱をわざと目につきやすい所にほっぽりだした。案の定、一味は攻撃してきたが待ち構えたレインたちは敵10人を倒した。翌日、鉄道駅に着いた一行は、生き残った無法者たちの銃撃をうけた。レイン、ジェシー、グラディの3人が酒場にたてこもり、ベンとサムがロウ夫人をホテルの安全地帯に移す一方、馬に乗ったカルフーンは、ロバに積んだ金を酒場に入れた。レインとグラディは走ってきた貨車に飛び乗って、ダイナマイトを投げつけた。一味は残らず吹っ飛ばされた。次の朝、北に向かう列車に金を積み込んだ一同は、ロウ夫人にしんみりと、賞金は息子さんのために使うようにといった。今にも泣き出しそうな顔で彼女が列車に乗ると、フォームのはしから、葉巻をくわえたナゾの男が姿を現わした。彼は実はウエルス・ファーゴのために働いていたお抱え探偵(リカルド・モンタルパン)だったのだ。彼の話しによると、美しいロウ夫人はとんだ食わせ者だということだった。マット・ロウとは結婚などしていないし、金のあり場所を知っていたのも、売春婦をしていた彼女が、死ぬ前のマットから偶然ききでしたにすぎないというのだ。列車が駅をではじめると、美しさにまどわされ、ロウ夫人にまんまと一杯くわされた自分に腹を立てたレインが、さっそく行動を開始した。レインの後から全員が走る列車に向かって走りだした。




7-34. 夕日の挽歌

監督 ブレイク・エドワーズ
出演 ウィリアム・ホールデンライアン・オニールカール・マルデン
1971年・アメリカ(MGM)

解説
初老の男と若者の2人のカウボーイの夢と挫折を描いた作品。製作は「暁の出撃」 のブレイク・エドワーズとケン・ウェールズの共同、監督・脚本はブレイク・エドワーズ、撮影は「ひとりぼっちの青春」 のフィリップ・ラスロップ、音楽はジェリー・ゴールドスミス、編集はジョウ・F・バーネットがそれぞれ担当。出演は「クリスマス・ツリー」 のウィリアム・ホールデン、「ある愛の詩」 のライアン・オニール、カール・マルデン、リン・カーリン、トム・スケリット、ジョー・ドン・ベイカー、ジェームズ・オルソンなど。

ストーリー
ロス・ボーディーン(ウィリアム・ホールデン)とフランク・ポスト(ライアン・オニール)は、モンタナの広大な牧場に働くカウボーイで、年こそ大きな開きがあるが、大の仲良しである。ある日、仲間の1人が暴れ馬に蹴殺され、多感なポストは牧童生活の空しさを感じた。一方ボーティーンには、メキシコでの優雅な、豊かな生活の夢があった。1つの結論にたどりついた2人は、翌夕、牧場をあとにして町へ向かった。牧場主のバックマン(カール・マルデン)の次男(トム・スケリット)は不審に思い、乗り気でない兄ポール(ジョー・ドン・ベイカー)を誘って後を追った。ボーディーンたちの行く先はなんと町の銀行副頭取ジョー・ビリングズ(ジェームズ・オルソン)の家だった。ボーディーンはまんまと3万6千ドルを巻き上げたものの、ボーディーンの馬がアメリカ豹に殺され、ボーティーンとポストは、1頭の馬に相乗りで逃走することになった。目的地は、ボーディーンが夢見るメキシコだ。部下の銀行強盗を知ったバックマンは怒り狂い、息子のポールとジョンをシェリフの追手に参加させ、生死を問わず必ず2人を引き連れてこいと厳命した。逃避行を続けるボーディーンとポストはモンタナを抜けてワイオミングに入り、ベンソンの町で風呂に入り、酒を飲み、女と遊んだ。その時、ポーカー・ゲームに加わったポストは喧嘩を売られて撃ち合いとなり、相手を倒したものの自分も重傷を負った。シェリフたちは州境で引き返したが、バックマン兄弟は執拗に追跡を続けた。彼らはベンソンに到着した時、父親が羊飼いに撃ち殺されたことを耳にしたが、功をあせる弟ジョンは追跡をあきらめようとはしなかった。南下するにつれ、ポストの傷は悪化する一方で、ある日の午後、メキシコでのバラ色の生活を話して聞かせるボーティーンの膝元で、ポストは静かに息をひきとった。ポストを埋葬して旅を続けるボーディーンを発見したバックマン兄弟は激しく追跡した。逃げ切るかに見えたボーディーンの馬をジョンのカービン銃がとらえ、2人の格闘となったが、一瞬、優勢のボーディーン目がけてポールの6連発が火を吹き、ボーディーンはのけぞった。ポールは自分の行跡をボーディーンに詫びると、弟ジョンには目もくれず、その場から立ち去った。




7-35. 太陽がいっぱい

監督 ルネ・クレマン
出演 アラン・ドロンマリー・ラフォレモーリス・ロネ
1960年・フランス、イタリア(新外映)

解説
ルネ・クレマンの「海の壁」 以来の映画。アラン・ドロンが“天使の顔をした悪人”を演じるサスペンス・ドラマ。出演はドロンのほか、新星マリー・ラフォレ、「死刑台のエレベーター」 のモーリス・ロネら。フランス映画で活躍したスターたちの代表作をニュープリントで上映する「フランスがいっぱい」 などでも上映。

ストーリー
トム・リプレイ(アラン・ドロン)は、フィリップ(モーリス・ロネ)と酔っぱらってナポリに遊びにきた。近くの漁村モンジベロからだ。−−トムは貧乏なアメリカ青年だ。中学時代の友人・金持のドラ息子フィリップを、父親から頼まれて連れ戻しにきたのだ。五千ドルの約束で。フィリップにはパリ生れのマルジェ(マリー・ラフォレ)という美しい婚約者がいた。−−ナポリから帰った時、アメリカから契約をやめる手紙が来ていた。フィリップが約束の手紙を出さなかったからだ。トムが邪魔になっていた。友人のパーティーに向うヨットの上で、トムはますます彼からさげすまれた。裸でボートに放り出され、全身が火傷のように日焼けした。−−彼は決意し、まず小細工をして、マルジュとフィリップに大喧嘩をさせた。彼女が船から下りたあと、フィリップに向い、刺し殺した。死体はロープで縛り、海へ捨てた。陸へ上ると、彼はフィリップになりすました。ホテルに泊り、身分証明書を偽造し、サインを真似、声まで真似た。金も衣類も使った。ヨットを売り払う交渉も、親元からの送金を引き出す仕事もうまくいった。マルジュあてのフィリップの手紙をタイプし、送った。彼女は彼を忘れられずにいた。ホテルにフィリップの叔母が現れたが、姿をくらますことができ、別の下宿に移った。 そこに、フィリップの友人が訪ねてきて、何かを察したようだった。トムは平生から憎んでいたその男を殺し、死体を捨てた。それは発見され、刑事が調べにきた。死体確認に集った時、トムはマルジェにフィリップはモンシベロに戻ったと告げた。女刑事が盗み聞いていた。トムはモンジベロの家にその夜いくと、遺書を書き、送金を全部ひき出したのをマルジェに残し、自殺したことにした。警官もマルジュも駈けつけたが、彼は逃げおおせた。彼は元のトムに戻り、傷心のマルジェをいたわり、愛を告げた。彼女もついに彼を受け入れ、結婚することになった。遺産も手に入るだろう。彼が海水浴のあと、極上の酒に酔っていた時、フィリップのヨットが売られるために陸に引きあげられていた。スクリューにからまったロープの先からフィリップの死体が現われた。




7-36. 決断の3時10分

監督 デルマー・デイヴィス
出演 グレン・フォードヴァン・ヘフリンフェリシア・ファー
1957年・アメリカ(コロムビア)

解説
エルモア・レナードの原作をハルステッド・ウェルズが脚色、「襲われた幌馬車」 のデルマー・デイヴスが監督した異色西部劇。撮影監督は「夜の乗合自動車」 のチャールズ・ロートン・ジュニア、音楽は作曲が「ピクニック」 のジョージ・ダニング、指揮を「女ひとり」 のモリス・W・ストロフがとった。主演は、「辺境の掠奪者」 のグレン・フォード。「愛欲と戦場」 のヴァン・ヘフリン、「襲われた幌馬車」 のフェリシア・ファー。

ストーリー
広々としたアリゾナ荒原−−そこを行く駅馬車が今日も襲われた。襲ったのはウェード(グレン・フォード)一味。彼らは家畜の群を使って駅馬車を止め兇行を働くのが常だった。折しもこの光景を目撃したのは貧乏牧場主のダン(ヴィン・ヘフリン)であった。しかもかの家畜が兇行に使われていた。だが悪漢一味に手出しはできない。ダンの一家にはもっと切実な問題が控えていた。旱魃のため大事な家畜が死に瀕している。ウェード一味はビスビイに到着していた。一方ウェードは酒場の女エミイ(フェリシア・ファー)に一目でひかれた。そのころ保安官はダンと出会い、ウェードが駅馬車強盗の首領であることを知った。彼はまずダンを町にやってウェードと話合わせ、そのすきに難なく逮捕した。が、牢獄のあるユマまでウェードを護送するには、彼の子分たちの眼を逃れなければならない。そこで保安官の代りにダンともう1人が護送の役目を買って出た。2人はまずウェードを町まで連行、ホテルの1室に監禁した。この町の停車場からユマ行の汽車が出るのは3時10分、発車までまだ2時間もあった。いらいらするダン。しかもその間にウェードの子分プリンスが仲間を集めてダンの前に現れた。ダンは襲ったらウェードの命はないと一味に警告した。ウェードはまた逃がしてくれたら1万ドルやろうという。その上、妻がここへ訪ねてきて、危険なこの仕事から手を引いてくれと哀願する。さすがのダンもこれには動揺した。が、仲間がプリンスに殺されるやダンの心は決まった。ダンはウェードの背に拳銃を擬しつつ遂に汽車に乗せることに成功した。ユマへの列車が速度を増すころ大粒の雨が降り出した。ダンの顔に喜びの笑みが浮んだ。




7-37. 赤と黒 第1部

監督 クロード・オータン・ララ
出演 ダニエル・ダリュージェラール・フィリップアントネラ・ルアルディ
1954年・フランス(東和)

解説
スタンダール(1783−1842)の著名な小説を「青い麦」 のクロード・オータン・ララが監督するイーストマンカラー色彩の作品で、脚色台辞はやはり「青い麦」 のコンビ、ジャン・オーランシュとピエール・ボストの二人が担当している。撮影は「外人部隊(1953)」 のミシェル・ケルベ、音楽は「青い麦」 のルネ・クロエレックである。出演者は「しのび逢い」 のジェラール・フィリップ、「たそがれの女心」 のダニエル・ダリュー以下、「愛すべき御婦人たち」 のアントネッラ・ルアルディ、「裁きは終わりぬ」 のアントワーヌ・バルペトレ、「北ホテル」 のアンドレ・ブリュノ、ジャック・クランシーらが出演する。

ストーリー
大工の息子ではあったが大工仕事よりもラテン語の勉強に身を入れるジュリアン・ソレル(ジェラール・フィリップ)は、シェラン僧院長の推薦でヴェリエエルの町長ド・レナアル侯爵家の家庭教師となった。ド・レナアル夫人(ダニエル・ダリュー)はいつしかジュリアンに愛情を抱くようになったが、ジュリアンとの逢瀬が重なるにつれ次第に後悔し、子供が病気になったとき、夫人は自分の非行を天が罰したのではないかと考えるようになった。世間の口も次第にうるさくなって来たころ、ジュリアンは心を決めてかねての計画通り神学校に向けて出発した。ナポレオン戦争直後のフランスでは、僧侶になることが第一の出世道だったのである。しかし、神学校でも、ジュリアンは、平民に生れた者の持つ反逆の感情に悩まねばならなかった。ピラアル僧院長はジュリアンの才気を愛していたが、同時に彼の並ばずれて強い野心を心配していた。僧院長がド・ラ・モオル侯爵に招かれてパリに行くときジュリアンも同行してド・ラ・モオル侯爵の秘書となったが、ここでも上流社会からの侮蔑の目が彼に注がれた。ジュリアンはその復讐に、侯爵令嬢マティルド(アントネラ・ルアルディ)と通じ、侯爵令嬢をわがものとした優越感に酔った。二人の結婚を認めねばならなくなった侯爵は、ド・レナアル夫人にジュリアンの前歴を照会した。夫人は聴問僧に懺悔したと同じく、ジュリアンを非難し、自分との関係を暴露した返事をよこした。これを読んでジュリアンは激怒し、ヴェリエエルへ行って夫人をピストルで傷つけた。法廷に立ったジュリアンはあらゆる弁護を拒絶した。彼はこの犯行が貴族への復讐心から出たものではなく、彼女への恋から発していることを悟った。獄舎に訪れて心から許しを乞う夫人との抱擁に満足しつつ、ジュリアンは絞首台の人となった。




7-38. 赤と黒 第2部

監督 
出演 
年・()

解説


ストーリー





7-39. 恐怖の報酬

監督 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
出演 イヴ・モンタンシャルル・ヴァネルヴェラ・クルーゾー
1952年・フランス(東和)

解説
「二百万人還る」 のアンリ・ジョルジュ・クルーゾーが一九五一年から五二年にかけて監督した作品で、中米を舞台に四人の食いつめ者がニトログリセリンを運搬するスリルを描いたもの。ジョルジュ・アルノーの小説をクルーゾー自身が脚色し、台詞をかいた。撮影は「夜ごとの美女」 のアルマン・ティラール、音楽は「アンリエットの巴里祭」 のジョルジュ・オーリックである。出演者はシャンソン歌手として日本にもよく知られるイヴ・モンタン(「失われた想い出」 )、「独流」 のシャルル・ヴァネル、クルウゾオ夫人のヴェラ・クルウゾオ(映画初出演)、「オリーヴの下に平和はない」 のフォルコ・ルリ、「外人部隊(1953)」 のペーター・ファン・アイク、「ヨーロッパ一九五一年」 のウィリアム・タッブスなどである。なおこの作品は一九五三年カンヌ映画祭でグラン・プリを受賞、シャルル・ヴァネルが男優演技賞を得た。

ストーリー
中央アメリカのラス・ピエドラスという町は世界各国の食いつめ者が集るところだ。コルシカ人マリオ(イヴ・モンタン)もその例外ではなかったが、彼には酒場の看板娘リンダ(ヴェラ・クルーゾー)という恋人がいた。そんな町へ、パリで食いつめた札つき男ジョー(シャルル・ヴァネル)が流れてきてマリオと親しくなった。ある日町から五〇〇キロ先の山の上の油井が火事になり、多くの犠牲者が出た。石油会社では緊急会議の結果、山上までニトログリセリンを運び上げ、それによって鎮火することにした。危険なニトログリセリン運搬の運転手は賞金つきで募集され、多く集った希望のない浮浪者の中からマリオ、ビンバ、ルイジ、スメルロフの四人が選ばれた。選に洩れたジョーは大いに不服だった。翌朝三時、マリオとルイジとビンバは約束通りやって来たがスメルロフは姿を見せず、ジョーが現れた。何故スメルロフが来ないのか、そんな詮索をする暇はない、ジョーが代りに加ってマリオとジョーの組が先発、三十分遅れてルイジとビンバの組が出発した。マリオの組は、ジョーが意外に意気地がなくて二人の協力がうまく行かず、後から来たビンバ組に追いこされてしまった。崖の中腹に突き出た吊棚の上を危うく通りぬけたのち、車は道路をふさいでいる大石のためストップしてしまった。しかし、沈着なビンバは少量のニトログリセリンを使用して大石を爆破し、無事に通りぬけることができた。そのあとは坦々とした行進がつづき、一同もほっとしたとき、突如ビンバの車が大爆発を起し、跡かたもなくけし飛んだ。爆発のあとは送油管が切れて石油がたまりかけていた。早くここを通りぬけないと油に車をとられて二進も三進も行かなくなる。マリオは思いきって車を油の中にのり入れた。そのとき、ジョーが油に足をとられて倒れたが、車を止めることができないばかりに、マリオは倒れたジョーの脚の上を通りぬけなければならなかった。そしてジョーを助け上げ、介抱しながらようやく目的地につくことができたが、そのとき、ジョーは既に息絶えていた。ニトログリセリンのおかげで火事は消しとめられ、マリオは賞金四千ドルをもらった。重責を果して空車を運転しながら帰途につくマリオの心は軽かった。しかし、リンダとの幸福な生活を眼前にしてはずむ彼の心を魔が捉えたのか、僅かのカーヴを切りそこねたトラックは、希望に開けたマリオをのせてもんどりうって崖下に転落した。




7-40. マイティ・ハート

監督 マイケル・ウィンターボトム
出演 アンジェリーナ・ジョリーダン・ファターマンアーチー・ポアンジャビ
2007年・アメリカ(UIP)

解説
ブラッド・ピットが原作のノン・フィクション本に感動し、アンジェリーナ・ジョリー主演で製作した実録ドラマ。妊娠中の妻が、テロリストに誘拐された夫の生還を気丈に待つ。

ストーリー
<9.11>の翌日、ダニエル(ダン・ファターマン)とその妻マリアンヌ(アンジェリーナ・ジョリー)は、パキスタンに到着した。二人はジャーナリスト同士であり、ウォール・ストリート・ジャーナルの特派記者であるダニエルは、アルカイダと関わりある人物との接触を試みようとしていた。この取材を終えた後は、妊娠5ヶ月の妻とともに帰国する予定だった。しかし、予定の時刻を過ぎてもダニエルは戻らなかった。行方不明となった真相を探るため、アメリカ領事館の外交保安担当者をはじめ、パキスタンのテロ対策組織のリーダー、ウォール・ストリート・ジャーナルの上司、そしてFBI捜査官などが次々にマリアンヌのもとへ集まってきた。やがて、現地の新聞にはダニエルをスパイ扱いする記事が掲載され、拘束された写真がメールで送られてくる。記者を装ったCIAのスパイとして誘拐され、人質となっていたのだ。犯人側は身柄の引き渡しと交換にジェット機を要求してきた。夫のスパイ容疑をはらすために、テレビ出演するマリアンヌは訴える。「私は6日間、眠っていませんが、まだ希望はあります。彼を愛しています」次第に、ダニエルの足取りが解明されていく。浮かび上がってきたのは、パキスタンのテロ組織だった。ダニエルはテロリストによって誘拐され、「価値の高い人質」とされてしまったのだ。不安と焦燥の中でも、気丈に振る舞うマリアンヌ。しかし、FBIによる必死の捜索の甲斐もなく、ダニエルが処刑される模様を撮影したビデオが届く。世界で最も愛する夫を失ったマリアンヌは慟哭する。翌日、その事実を報告するためもういちどテレビ出演するマリアンヌ。それは、自身もフランスのラジオ局で記者をつとめていた彼女の矜持だった。やがて、ひとりで出産を終えた彼女は、生まれた息子にアダムと名付ける。それは、生前のダニエルと決めていた名前だった。




7-41. ブラザーズ・グリム

監督 テリー・ギリアム
出演 マット・デイモンヒース・レジャーモニカ・ベルッチ
2005年・アメリカ(東芝エンタテインメント)

解説
「12モンキーズ」 の鬼才テリー・ギリアムが放つファンタジー。まるで童話のような怪事件の解明に挑むグリム兄弟の冒険を、イマジネーション豊かに描き出す。

ストーリー
19世紀、フランス占領下のドイツの街カールシュタッド。ウィル(マット・デイモン)とジェイコブ(ヒース・レジャー)のグリム兄弟は、各地で魔物退治をしながら賞金を稼ぐ日々を送っていた。そんな中、フランスの将軍ドゥラトンブ(ジョナサン・プライス)の部下カヴァルディ(ピーター・ストーメア)に逮捕されてしまった兄弟。そして彼らに、森で少女たちが失踪するという奇怪な事件の謎解きを要求される。さっそく調査に行った兄弟は、村人から敬遠されている猟師の娘アンジェリカ(レナ・ヘディ)をガイド役に、森の奥へ入っていく。やがて兄弟は、かつて女王が住んでいたという伝説の高い塔を発見。そこには今も鏡の女王(モニカ・ベルッチ)が住んでおり、失踪事件は彼女の仕業だった。鏡の女王はかつて魔力で永遠の命を手に入れたが、若さは失われ、それを取り戻すために12人の若い命を必要としていたのだ。その運命の儀式は、月食の今夜、行なわれようとしていた。やがてジェイコブに続き、ウィルが女王の魔力に取り込まれそうになるが、ジェイコブが鏡を壊すと、女王の体は粉々に爆発。そして眠らされていたアンジェリカに、ジェイコブがキスをすると、魔力が解けて彼女は目を覚ました。そして他の少女たちも解放され、事件は解決するのだった。




7-42. ファイアー・ウォール

監督 リチャード・ロンクレイン
出演 ハリソン・フォードポール・ベタニーヴァージニア・マドセン
2006年・アメリカ(ワーナー・ブラザース)

解説
ハリソン・フォード主演のサスペンス。家族を人質にとられ、銀行からの大金強奪を迫られた防犯システム専門家の孤独な戦いを、ノンストップのスリルで描き出す。

ストーリー
シアトルのランドロック・パシフィック銀行の最高幹部であるジャック・スタンフィールド(ハリソン・フォード)は、コンピュータ・セキュリティのスペシャリスト。彼が設計した銀行の資産を守る盗難防止システム”ファイヤーウォール“は、業界で屈指の防衛力を誇っている。だがビル・コックス(ポール・ベタニー)率いる強盗グループは、ジャックの個人情報を徹底的に調べ上げ、ジャックの自宅に侵入。彼の妻ベス(ヴァージニア・マドセン)と子供たちを監禁し、ジャックに”ファイヤーウォール“を破って、ビルの海外口座に送金するよう脅迫した。為す術のないジャックは脅されるまま、ビルの口座に大金を振り込んでしまう。だがそのあとで捨て身で反撃に出て、秘書のジャネット(メアリー・リン・ライスカブ)の協力を得ながら、ビルの銀行口座に忍び込む。コンピュータ操作でビルの残高を減らしながら、家族を返すようにビルと取り引きする。そしてジャックは犯人たちのアジトに乗り込んで、大乱闘の末、ビルを殺害。無事、家族との再会を果たすのだった。




7-43. 左きゝの拳銃

監督 アーサー・ペン
出演 ポール・ニューマンリタ・ミランジョン・デナー
1958年・アメリカ(ワーナー・ブラザース)

解説
21人を殺して21才にして死んだ西部開拓史上名高い無法者ビリー・ザ・キッドの生涯を、リアルに描こうとした西部劇。ゴア・ヴィダルの原作をレスリー・スティーヴンスが脚色、新進アーサー・ペンが監督した。撮影監督は「十戒」 のペヴァレル・マーレー。音楽はアレクサンダー・カレッジ。キッドに扮するのは「傷だらけの栄光」「追憶(1957)」 のポール・ニューマン。その他「虐殺の砦」 のリタ・ミラン「プロディガル(1955)」 のジョン・デナー「嵐を呼ぶ銃弾」 のジェームズ・ベスト、ハード・ハットフィールド、ジェームズ・コングドン等が出演する。

ストーリー
1880年代のニューメキシコ平原で、熱気と疲労にやられたウィリアム・ボニイ(ポール・ニューマン)は牛商人のタントール老人一行に救われた。彼こそは既に12歳にして殺人を犯した札つき男ビリイ・ザ・キッドだったが、度胸をみこんだ老人は彼を雇った。折からリンカーンの町では保安官ブラディ、副保安官ムーン、家畜商ヒル・モートンが結託して、老人の牛群が町に入るのを阻み、単身商談に来た彼を3人は峠道で射殺した。逃げる3人を目撃したビリイは復讐を誓い、町に入って白昼の路上で保安官ブラディと対決、罵倒してこれを射ち殺した。一味の副保安官ムーンは法の名によって彼を制裁しようとし、町の人々ともに彼の隠れ家を囲んで火をかけた。銃撃戦ののち、全身に火傷をうけたビリイはマデロの旧知、サバルと美しい妻セルサ(リタ・ミラン)のもとに身をよせた。煩悶する彼は、心をセルサの美しさによってまぎらせた。仲間の牧童チャーリーとトムに合流した彼は再びリンカーンの町に乗りこみ怯える副保安官ムーンを倒し復讐した。保安官殺しによってお尋ね者となった3人を恐れた最後の1人ヒルは、腕のたつギャレットに保護を求めた。ところがギャレットの婚礼の日、ビリイは恐怖に発砲したヒルを射殺した。祝いの日を血で汚されたギャレットはさすがに怒って自ら保安官に就任、自警団を組織して対抗し、トムとチャーリーを射殺し、ビリイを捕まえて、絞首刑を宣告した。獄につながれたビリイは重い鎖を切って辛くも逃亡したが、ギャレットの一隊はこれを追った。彼等はビリイの旧友モールトリーの手引きで彼がサバルとセルサの家にいるのを知った。セルサ夫婦の冷たい態度に家を出てきたビリイは、ギャレットに声をかけられて振り向いた瞬間、夜空に響く1弾をうけて絶命した。沙婆に未練をなくした彼の腰には、もう拳銃さえつけられてはいなかった。




7-44. パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー 

監督 トム・シャドヤック
出演 ロビン・ウィリアムズダニエル・ロンドンモニカ・ポッター
1998年・アメリカ(UIP)116分

解説
ジョークを連発するユニークな療法で人々の心と体を癒す実在の精神科医パッチ・アダムスの若き日を描いたヒューマン・ドラマ。監督は「ライアーライアー」 のトム・シャドウイック。製作総指揮はシャドウィック、「ミセス・ダウト」 のマーシャ・ガーデス・ウィリアムス。製作は「ニッキーとジーノ」 のマイク・ファーレルとマービン・ミノフ、「ロミーとミシェルの場合」 のバリー・ケンプ、「フェノミナン」 のチャールズ・ニューワース。脚本は「ナッシング・トゥ・ルーズ」 (監督も)のスティーヴ・オーデカーク。撮影は「マウス・ハント」 のフェドン・パパマイケル。音楽は「イン&アウト」 のマーク・シャイマン。美術は「ウルフ」 のリンダ・デシーナ、編集は「ライアーライアー」 のドン・ジマーマン。衣裳は「モンタナの風に抱かれて」 のジュディ・ラスキン=ハウエル。出演は「グット・ウィル・ハンティング 旅立ち」 のロビン・ウィリアムス、「コン・エアー」 のモニカ・ポッターほか。

ストーリー
1969年。自殺未遂の果て、精神病院に入院したハンター・アダムス(ロビン・ウィリアムス)は、ジョークで患者たちを笑わせ、心を癒す能力に目覚める。そんな彼に富豪で天才病の患者アーサー(ハロルド・グールド)は「パッチ(傷をなおす)」というニックネームをつける。2年後、パッチは精神科医を目指し、バージニア大学医学部に入学。同級生トルーマン(ダニエル・ロンドン)と白衣を着て病院に潜入し、患者たちの心を掴んでいく。パッチの笑いの療法が次第に功を奏で、ベテラン看護婦たちも温かな目で見守ってくれるようになる。しかし、学部長のウォルコット(ボブ・ガントン)はパッチを快く思わず、放校処分に。常に成績がトップクラスのパッチに学長が理解を示し、学校に残ることが許される。一方、冷淡な同級生カリン(モニカ・ポッター)へ思いを募らせるパッチは彼女の誕生日を温かく祝い、いつしか心を通わせるようになる。パッチは病院や医療制度の理不尽さから無料の病院を作りたいと考えるようになる。精神病院で患者同士として出会った富豪のアーサーの出資により、夢が現実となる。トルーマン、カリンと共にさまざまな患者を無料で受け入れてきたが、ある患者がカリンを殺し自殺するという事件が起こる。ショックから診療所を閉め病院もやめる決心をするが、再び患者の心を捉えたことをきっかけにやり直すことに。しかし、そんな時、医師免許も無いうちに無料で診察していたことを理由に退校が申し渡される。医師会の裁定に判断を仰いだパッチは、裁定の場で医者と患者は対等であることや心をほぐすことが何よりの治療になることを主張。認められ無事大学を卒業し、独自の治療方法を広く伝えることになるのだった。




7-45. 死刑台のエレベーター

監督 ルイ・マル
出演 モーリス・ロネジョルジュ・プージュリージャン・ヴァール
1957年・フランス(映配)

解説
二五歳の仏映画界の新人監督ルイ・マルが、推理作家ノエル・カレフの原作を、自身と新進作家ロジェ・ニミエの共同で脚色、ニミエが台詞を書いた新感覚スリラー映画。キャメラは新人アンリ・ドカエ。巻頭から巻末までを十曲のモダーン・ジャズで通した音楽はトランペット奏者で作曲家のマイルス・デイヴィスで「メイン・タイトル」「エレベーターの中のジュリアン」「夜警の巡回」等と名づけられた十曲が演奏される。種々の新しい試みによってこの作品は一九五七年ルイ・デリュック賞を得た。「抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より」 に主演したフランソワ・ルテリエが第二助監をつとめている。出演者は「宿命」 のモーリス・ロネ、「現金に手を出すな」 のジャンヌ・モロー、「素直な悪女」 のジョルジュ・プージュリー、「親分」 のフェリックス・マルタン、「夜の放蕩者」 のリノ・ヴァンチュラ、「悲しみよこんにちは」 のエルガ・アンデルセン等。製作イレーネ・ルリシュ。

ストーリー
未開地開拓会社の技師ジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)と社長夫人フロランス・カララ(ジャンヌ・モロー)は愛し合っていた。二人の自由を阻む邪魔者シモン社長を亡きものにせんと、二人は完全犯罪を計画していた。殺害計画実行の日が来た。ジュリアンは拳銃をポケットにしのばせ、バルコニーから手すりに錨つきのロープをかけて上り、社長室に入り、社長を射殺し、その手に拳銃を握らせた。彼は再び手すりから一階下の自分の部屋におり、何くわぬ顔をして、彼を待っていた電話交換手とビルの管理人と共に、エレベーターでおり、外に出た。しかし手すりに錨つきロープを忘れて来たことに気付き、ビルにかけこみ、エレベーターに乗り、上りはじめたが急に階の途中でエレベーターは止まってしまった。ビルの管理人が電源スイッチを切って帰ってしまったのだ。ジュリアンは何とか脱出せんと試みたが無駄だった。フロランスとの約束の時間はどんどん過ぎていった。彼を待つフロランスは段々と不安にかられ、彼を求めて夜のパリをさがしまわった。一方、花屋の売り子ベロニック(Y・ベルダン)とチンピラのルイ(ジョルジュ・プージュリー)はジュリアンの車を盗んで郊外に走り出た。車の中にはレインコート、小型カメラ、拳銃があった。前を走るスポーツ・カーについて、或るモーテルに着いた彼等は、ジュリアン・タベルニエ夫婦と偽り、そのスポーツ・カーの持主ドイツ人夫婦と知り合いになった。ドイツ人夫婦の小パーテーに招かれ、いたずらにカメラで写真を撮した後、ルイと共にドイツ人夫婦の部屋を出たベロニックは、モーテルの現像屋へフィルムをとどけ、自分達も、部屋に帰った。そのころ、なおジュリアンを探し求めていたフロランスは、夜の女と共に警察に連行された。同じ頃、ジュリアンは尚も脱出せんとしたが万策つき、やむなく朝を待つことにした。一方モーテルのベッドで寝ていたルイとベロニックは夜明けを待たずに起き、ドイツ人のスポーツ・カーを盗んで逃げようとして見付かり彼等を射殺して逃げ、アパートに帰ったが、今更のように殺したことが怖くなり催眠剤を飲み心中をはかった。ドイツ人夫婦殺しは、宿帳に記載されていたジュリアン・タベルニエ夫婦と云う名と、現場にあった車と拳銃で、犯人はジュリアン・タベルニエと推定された。警察に連れて行かれたフロランスは身分を明し、釈放されたがその時、警部から、ジュリアンが若い娘と共にドイツ人を殺し、逃亡したと云うことを聞いた。朝、エレベーターが動き出し、やっと外へ出られたジュリアンを待っていたのは、身に覚えのない殺人事件の犯人と云うことで、彼を捕える警察の手であった。ドイツ人殺しのアリバイを立証する為には、完全犯罪として計算してやった社長殺しの方が危くなる。警察は、社長は自殺であると思いこんで、専らドイツ人殺しの自供を求めた。一方フロランスはジュリアンが昨夜、車に乗せていた若い娘は花屋の売り子であろうと、彼女の部屋にかけつけたが、若い二人は催眠剤を飲んだが死んではいなかった。フロランスはドイツ人殺しの嫌疑をジュリアンから除く為彼等のことを警察に知らせた。その間に部屋を出たルイは、唯一つの彼等の証拠品であるフィルムをとりに、モーテルへと行った。しかしルイは写真屋の暗室で逮捕された。ドイツ人と共に撮した写真が全てを証明していた。ルイを追って来たフロランスも、社長殺しの共犯として逮捕された。即ち、ジュリアンと共に撮した親しげな写真が彼等の関係を物語っていたのだった。




7-46. マンデラの名もなき看守

監督 ビレ・アウグスト
出演 ジョセフ・ファインズデニス・ヘイスバートダイアン・クルーガー
2007年・フランス、ドイツ、ベルギー、南アフリカ(ギャガ・コミュニケーションズ)

解説
南アフリカ初の黒人大統領、ネルソン・マンデラ。黒人弾圧に反抗して捕えられた若き日の彼と、ある白人看守がはぐくむ人種を超えた絆を温かくつづった実話を基にした物語。

ストーリー
1968年、南アフリカ共和国。アパルトヘイト政策により、黒人には投票権がなく、住居や就職、教育でも差別されていた時代。ジェームズ・グレゴリー(ジョセフ・ファインズ)は、国内一の刑務所と名高いロベン島に看守として赴任する。そこで彼は反政府運動の首謀者ネルソン・マンデラ(デニス・ヘイスバート)の担当を命じられる。コーサ語を話せるグレゴリーに、黒人たちの秘密の会話をスパイさせることがその狙いだった。妻グロリア(ダイアン・クルーガー)とともに異例の出世を喜んでいた人種差別主義者のグレゴリーだったが、刑務所内でも堂々と振舞うマンデラの姿に特別な印象を抱く。しかし、面会に来た夫人とマンデラの会話をグレゴリーが上司に報告したことで、彼の息子が暗殺される。普段の落ち着きが嘘のように息子の死を悲しむマンデラの姿に、同じ父親としてグレゴリーは深く同情。そして、グレゴリーの中で、“危険なテロリスト”というマンデラに対するイメージが次第に覆され、“人種を超えて平和に暮らせる世界”を目指すというその思想に共感していく。1975年のクリスマス。グレゴリーは、二年ぶりに面会する妻に贈りものを渡したいというマンデラの願いを聞き入れる。しかし、その行動は大きな問題となり、黒人びいきと罵られたグレゴリーの一家は孤立。彼は転属を願い出て、マンデラの元を去る。1982年、マンデラの長期投獄に反対する世界中の圧力に屈した政府は、彼をポールスムーア刑務所に移送する。グレゴリーはそこで再びマンデラの担当となり、二人は再会。しかし、もはやグレゴリーは無教養な人種差別主義者ではなかった。武装闘争が激化する中、南アフリカは真っ二つに割れる。“黒人びいきの子供は殺す”と脅されるグロリア。それでもグレゴリーは、マンデラの輝く瞳の中に未来と希望を見出していた……。




7-47. ドゥ・ザ・ライト・シング

監督 スパイク・リー
出演 ダニー・アイエロオジー・デイヴィスルビー・ディー
1989年・アメリカ(ユニヴァーサル=UIP)

解説
ブルックリンのピザ・パーラーを舞台に、黒人と白人の凄絶な戦いを通して、人種差別を描くドラマ。製作・監督・脚本・主演は「シーズ・ガッタ・ハヴ・イット」 のスパイク・リー、撮影はアーネスト・ディッカーソン、音楽はビル・リーが担当。出演はほかにダニー・アイエロ、オシー・デイヴィスなど。

ストーリー
その年一番の暑さの日、“サルス・フェーマス・ピッツェリア”のオーナー、サル(ダニー・アイエロ)は、その日も暢気なヴィト(リチャード・エドソン)と、人種差別主義者のピノ(ジョン・タテューロ)のふたりの息子と共に、近所の黒人たちにピザを売っていた。店員のムーキー(スパイク・リー)は、仕事の暇をみつけては恋人のティナ(ロージー・ペレズ)と会っている。酔っぱらいだが愛想のいいダー・メイヤー(オシー・デイヴィス)は、町の母的存在のマザー・シスター(ルビー・ディー)の気をひこうとするが、彼女は相手にしない。町にはウィー・ラブ・ラジオのDJミスター・セニョール・ラブ・ダディー(サム・ジャクソン)の声に乗せて音楽が流れている。黒人自覚提唱者のバギン・アウト(ジャンカルロ・エスポジート)は、ピッツェリアにイタリア系のスターの写真しか飾られていないのを見て、黒人スターの写真を飾れ、とサルに抗議するが、聞き届けられずボイコットで仕返ししようとする。またサルは、巨大なビート・ボックを持って店にやって来たレディオ・ラヒーム(ビル・ナン)との間にも一悶着起こしていた。やがて1日も終わりを迎えようとしている日暮れ時、ピッツェリアにバギン・アウトとレディオ・ラヒームが乗り込んできて、つばぜりあいが始まる。そしてサルがレディオ・ラヒームのビート・ボックを叩き壊したことでその波紋が広がろうとしている時、やってきた警官のひとりがレディオ・ラヒームを羽がいじめにし、窒息死させてしまう。こうしてピッツェリアは黒人たちの一大暴動の舞台となり、火の海と化してゆく−−。一夜あけ翌朝、給料を取りに来たムーキーとサルとの間には、奇妙な和解が生まれるのだった。




7-48. ローズ・ランド

監督 ジェームズ・アイヴォリー
出演 テレサ・ライトルー・ジャコビジェラルディン・チャップリン
1977年・アメリカ(俳優座シネマテン)

解説
ニューヨークのダンスホール“ローズランド”に集う人々の人間模様をオムニバス形式で描く。エグゼクティヴ・プロデューサーはマイケル・ティモシー・マーフィーとオットマール・ルドルフ、製作はイスマイール・マーチャント、監督は「カルテット」 のジェームズ・アイヴォリィ、脚本はルース・プローワー・ジャブヴァーラ、撮影はアーネスト・ヴィンツ、音楽はマイケル・ギブソンが担当。出演はテレサ・ライト、ジェラルディン・チャップリン、リリア・スカラほか。

ストーリー
<ワルツ>かつてローズランドで、夫のエディと“ダンスの名人”と評判だった未亡人メイ(テレサ・ライト)は、今日も夫との思い出を他人に聞かせ、追憶にひたっている。そんな彼女にほのかな思いを寄せているスタン(ルー・ジャコビ)はダンスを申し込む。そして彼と踊る時だけ、メイはエディとの若く美しい頃の姿が、彼女だけの幻となって鏡に写って見えるのだった。やがてメイに自分の心をうちあけるスタン。それによって初めてメイは、孤独な自己を解放することができるのだった。<ハッスル>ローズランドで未亡人ポーリーン(ジョアン・コープランド)の誕生パーティが開かれた。メンバーは彼女の親友でダンス教師のクリオ(ヘレン・ギャラガー)、ジゴロのラッセル(クリストファー・ウォーケン)、そして夫に離縁され、自立するために職を探しているマリリン(ジェラルディン・チャップリン)。ラッセルにとってマリリンの存在は新しい刺激で、ふたりは心魅かれあうが、やがて彼女の現実的な愛はラッセルにとって重荷になってゆく。こうしてマリリンは、彼と訣別すべく夕暮れの町を歩き始めるのだっだ。<ピーバディ>ローズランドのピーバディ・コンテストで優勝を夢みるローザ(リリア・スカラ)は、アーサー(デイヴィッド・トマス)を相手に特訓を重ねるが、不器用な彼はなかなか上達しない。だがそんなある日、アーサーが突然息を引きとったことを聞き、ショックでダンス・フロアに立てないローザは、なじりながらも楽しかったアーサーとの思い出にひたるのだった。