14-1. 突入せよ!「あさま山荘」事件

監督 原田眞人
出演 役所広司宇崎竜童伊武雅刀串田和美山路和弘
2002年 (東映)

解説
日本中の人々をテレビの前に釘付けにした“あさま山荘”事件を完全映画化。山荘を占拠した連合赤軍と、人質救出のために走る警察側との激しい攻防戦を描く衝撃作だ。

ストーリー
72年2月19日、長野県南軽井沢のあさま山荘に、連合赤軍のメンバー5人が管理人の妻を人質に取り、立てこもった。警察庁長官・後藤田の特命により丸山参事官の補佐として現地へ向かった警備局付警務局監察官・佐々淳行は、ヘラクレスの選択=敢えて困難な道を歩かされる自分の運命を呪いながらも陣頭指揮にあたることになる。ところが、現場は弁当も凍る寒さ。しかも、面子に固執する警視庁と長野県警の対立や先の見えない戦況に業を煮やすマスコミ、全国から押し寄せる野次馬、現場を信頼しない警察庁上層部とトラブル山積。当初、2、3日で解決すると思われた事件は、人質の安否も分からぬまま一週間を超えてしまう。そんな中、遂に佐々は強行突入を決意。そして事件発生から10日後の2月28日、作戦は実行され、犯人全員を逮捕、人質も無事救出し、負傷者24名、殉職者2名、民間犠牲者1名を出したあさま山荘事件は終幕した。




14-2. デスノート

監督 金子修介
出演 藤原竜也松山ケンイチ瀬戸朝香香椎由宇細川茂樹
2006年 (ワーナー) 126分

解説
「週刊少年ジャンプ」 に連載中の人気コミックを藤原竜也主演で実写映画化したミステリー・ホラー。死神のノートを手に入れた少年と、彼の周囲で起きる様々な事件を描く。

ストーリー
警視庁の刑事部長を父にもつエリート大学生・夜神月(藤原竜也)は、ひょんなことから死神のノート『デスノート』を手に入れる。将来は警視総監を目指すほどの正義感あふれる月だが、凶悪犯が野放しにされ被害者が泣き寝入りする日本の現状に怒りを抱き、法による正義に限界を感じていた。「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」と書かれたデスノートに、試しに誘拐殺人犯の名前を書き込むと、翌日の新聞にその男の獄中死が報じられた。ノートの効力が本物だと悟った月は、自らの手で犯罪者を裁き、新世界の王になることを決意。世界中の凶悪犯や法の裁きを逃れた犯罪者たちを、独自の判断で粛清してゆく。いつしか月はインターネット上で『救世主 キラ』と呼ばれるようになり、若者たちの間でカリスマ的な人気を集めていく。一方、連続する犯罪者の不審死が事件として表面化し、インターポールは警察庁に、これまで数々の難事件を解決してきた探偵L(松山ケンイチ)を派遣する。Lは、キラが事件発祥の地・東京にいると断定し、テレビの生放送などを駆使して月との距離を縮めていく。警察がキラを犯罪者として捜査していることを知った月は、彼らをも敵に回し、抹殺を始める。自分を尾行するFBI捜査官レイを利用して、日本に潜伏したFBI全員を殺害するが、レイの婚約者・ナオミは月こそがキラではないかと疑問を抱く。月の恋人・詩織を誘拐し、ナオミは自分の命を懸けて月に闘いを挑むが、誤って詩織を射殺してしまい、錯乱して拳銃自殺する。嘆き悲しむ月だが、実は自分への疑いを逸らすために、予めデスノートに詩織とナオミの死を書き込んでいたのだ。ノートの持ち主である死神リューク(声:中村獅童)は、悪魔的な人間へと変貌していく月を見つめるのだった




14-3. 時をかける少女(2006)

監督 細田守
出演 仲里依紗石田卓也板倉光隆谷村美月垣内彩未
2006年 (角川ヘラルド映画) 100分

解説
筒井康隆の同名小説をアニメ化。主人公の真琴の声優には、数百人の中から選ばれた新人を起用し、フレッシュさを出した。過去を変えるごとに混乱を増す奇妙なラブ・ストーリー。

ストーリー
高校2年生の紺野真琴(声:仲里依紗)は、故障した自転車で遭遇した踏切事故をきっかけに、時間を跳躍する能力を得る。叔母の芳山和子(原沙知絵)にその能力のことを相談すると、それは『タイムリープ』といい、年頃の女の子にはよくあることだという。半信半疑の真琴だが、その力の使い方を覚えると、それを日常の些細な不満や欲望の解消に費やす。世界は私のもの! バラ色の日々と思われたが、クラスメートの男子生徒、間宮千昭(石田卓也)や津田功介(板倉光隆)との関係に変化が。千昭から思わぬ告白を受けた真琴は狼狽のあまり、その告白をタイムリープで、強引に無かったことにしてしまう。やりなおされた「過去」。告白が無かったことになった「現在」。ところがその千昭に、同級生の友梨(垣内彩未)が告白。まんざらでもなさそうな千昭。さっきまで真琴に告白していたのに! 面白くない真琴。その上、功介にあこがれる下級生、果穂(谷村美月)の相談まで受けてしまう。いつまでも3人の友達関係が続けばいいと考えていた真琴の望みは、タイムリープでかえってややこしく、厄介な状況に。真琴は果穂の恋を成就させるために、タイムリープで東奔西走するのだが……。




14-4. 獄門島

監督 市川崑
出演 石坂浩二大原麗子草笛光子太地喜和子司葉子
1977年 (東宝) 141分

解説
犬神家の一族」 「悪魔の手毬唄(1977)」 に続き、原作・横溝正史、監督・市川崑、主演・石坂浩二のトリオが三たび放つ横溝シリーズ。封建的な古い因習の中で、本鬼頭と分鬼頭が対立する獄門島へきた金田一耕助が、連続殺人事件にまきこまれる姿を描く。脚本は 「悪魔の手毬唄(1977)」 の久里子亭、監督は同作の市川崑、撮影も同作の長谷川清がそれぞれ担当。

ストーリー
終戦から一年たった、昭和二十一年九月下旬??戦地から帰国の途中、引き揚げ船の中で死亡した鬼頭千万太の遺書を私立探偵・金田一耕助が友人から預り、獄門島の千光寺・了然和尚へ届けにきた。「死にたくない。おれが帰ってやらないと、三人の妹たちが殺される」その本鬼頭の月代、雪枝、花子の三姉妹は千万太と異母兄妹で、いまは座敷牢に入れられている当主・与三松と後妻・お小夜の間に生まれた子供たちだが、千万太の亡祖父・嘉右衛門は、旅芸人だったお小夜と与三松の再婚には、死ぬまで徹底的に反対した。金田一耕助が島へきて三日目に行なわれた千万太の通夜の日に、第一の殺人事件が起こる。死んだ嘉右衛門の妾で、いまは本鬼頭で女中のように働いている勝野が、三姉妹の着替えを終えた直後、三女・花子の姿が消えた。その夜、千光寺の梅の古木に自分のしめていた帯で逆さ吊りにされた花子の死体がみつかる。現場へ駆付けた千万太のいとこの早苗は、逆さ吊りにされている花子の懐から一通の封筒が落ちるのを見つける。それは、対立している分鬼頭家・儀兵衛の後妻・巴が、月代宛に書かせたものだった。千光寺に宿泊している金田一耕助は、枕もとにある屏風に極門という雅号の男が書き写した、芭蕉の句が二枚、其角の句が一枚と、三枚の色紙が貼ってあるのを発見した。「鴬の身をさかさまに初音かな」「むざんやな冑の下のきりぎりす」「一つ家に遊女も寝たり萩と月」。翌朝、金田一耕助は、花子殺害の重要容疑者として清水巡査に逮捕され、留置場に入れられてしまった。その間隙をぬうようにして、無残な第二の殺人事件が起こる。次女の雪枝が、海に向って天狗の鼻のようにつきでた崖の上に置かれている千光寺の吊り鐘の中で死体となって発見された。そして、花子、雪枝の葬儀の夜、長女の月代までが、かつてお小夜が使用した祈祷所の中で絞殺され、その死体には萩の花びらがふりまかれていた。岡山県警の等々力警部が指揮する捜査陣の努力もむなしく、犯人はみつからない。殺人事件の解決に苦しむ金田一耕助は、ふとしたことから極門こと鬼頭嘉右衛門が書き残した千光寺の屏風の色紙の三つの俳句の中から、意表をついた事件の糸口をつかむ。三つの殺人がすべて俳句の中の言葉を元に行なわれている。そして、金田一耕助は最初の殺人現場で了然和尚が「き(季)ちがいじゃ」とつぶやいたのを思い出し、和尚に詰めよると、彼は妖気と邪知にあふれた殺人事件の謎を語り始めた。お小夜を憎んでいた嘉右衛門が臨終の時、自分の後継者は千万太であり、三人の娘を殺すようにと、俳句に意志を託し死んだ。そして、その時、勝野も話を聞いていたのである。和尚は千万太の通夜の晩、鵜飼が来ると花子をおだて、彼女を殺すと鬼頭家から千光寺へと死体を運んだのであった。しかし、第二、第三の殺人は絞殺であり、リュウマチの和尚にできるはずはなく、その犯人は勝野であると金田一は謎解きを続ける。同じころ、早苗は二年前兄のひとしが出征する時、自分たちの母は勝野であると言い残し島を去ったと勝野に話す。最初は否定する勝野だったが、早苗の涙ぐむ姿に嘘はつけないと、殺人にまでおよんだいきさつを話し始めた。もし、千万太が死んでひとしが生きて帰ってきたら、三人の姉妹は殺される。勝野は千万太に無事に帰るように手紙を書くが、千万太がマラリヤで死んだことを知り、嘉衛門との間にできたひとしが復員してくるまでに何事も終わらせたいと殺人を行ったのだった。早苗に母となのれなかったのは、孤児の勝野を拾った了然和尚の忠告のためであり、それでも昔の自分を思うと幸せだと勝野は語る。そして早苗はもっと早く母さんと言えばよかったと涙ながらに抱きつくのだった。すべてが解決した獄門島にひとしの戦死の公報が届く。復員兵にひとしは帰還すると聞かされていた了然和尚は、勝野の手をとると断崖から海へ飛びこんだ。金田一が獄門島を去る時、これらの殺人は勝野の悲しい思い出が生んだ事件だと彼には思えるのだった。




14-5. 紙屋悦子の青春

監督 黒木和雄
出演 原田知世永瀬正敏松岡俊介本上まなみ小林薫
2006年 (パル企画) 111分

解説
父と暮らせば」 などの名匠、黒木和雄の遺作となった人間ドラマ。敗色濃厚な第2次大戦末期を背景に、男女3人の出会いと痛切な別れの物語を情感豊かに描き出す。

ストーリー
敗戦の色濃い昭和二十年・春。紙屋悦子(原田知世)は、鹿児島の田舎町で兄・安忠(小林薫)、その妻・ふさ(本上まなみ)と暮らしていた。そんな彼女は密かに兄の後輩、明石少尉(松岡俊介)に想いを寄せていた。ところがある日、兄は別の男性との見合いを悦子に勧めてきた。相手は明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)で、明石自身も縁談成立を望んでいるらしい。当日、永与は、悦子に真摯な愛情を示した。永与の優しさに少しずつ悦子も心を開いていく。必死で搾り出す永与の求婚の言葉に対し、「はい」と答える悦子。だが、悦子は衝撃的な事実を知らされた。明石が特攻隊に志願し、間も無く出撃すると言うのだ。死を目前にし、明石は最愛の人を親友に託そうとしたのだろう。数日後、悲痛な面持ちで明石の死を告げに来た永与。明石が書き残したという手紙を永与から受け取り、封を開けずに握り締める悦子。そして、勤務地が変わる事になったという永与が去ろうとした時、彼女は今度こそ胸の中に秘めた想いを口に出した。「ここで待っちょいますから……きっと迎えに来て下さい」これから共に長い人生を生きる二人の、結婚を決意した最初の一歩がはじまるのだった。




14-6. メイン・テーマ

監督 森田芳光
出演 薬師丸ひろ子野村宏伸財津和夫渡辺真知子太田裕美
1984年 (東映)

解説
沖縄を舞台に、元幼稚園の先生とマジックを修業中の青年とが結ばれるまでを、二人に関係する中年カップルの恋を交錯させて描く。片岡義男原作の同名小説の映画化で、脚本、監督は 「ときめきに死す」 の森田芳光、撮影は 「人魚伝説」 の前田米造がそれぞれ担当。

ストーリー
小笠原しぶきは、先日まで幼稚園の先生だったがふとしたことでやめざるを得なくなり今は失業中。房総の海岸で、彼女は4WDのピックアップで全国をマジック修業にまわっているという大東島健と出会い、ひょんなきっかけから彼の4WDで一緒に旅をすることになる。しぶきの目的地は大阪。元、自分の受け持ちの園児で、父親の転勤で大阪へいってしまった御前崎カカルに会うのが一応の目的ではあるが、カカルの父親・渡に、以前から心魅かれるものがあったことも動機のうちだった。しぶきと健の旅が始まったが、何かとソリの合わない二人は道中ケンカばかりしている。浜松で、しぶきが健の叔父のマジック・ショーを手伝わされている頃、健は伊勢雅世子というジャズ歌手と出会い、ドライブを楽しんでいた。雅世子は渡と長い関係にあるのだが、しぶきはそのことは知らない。健は雅世子の大人の魅力にすっかりまいってしまい、しぶきはそんな彼の様子をみて小さな嫉妬を感じる。健の4WDは大阪に着いた。別れ際、しぶきはシャツをプレゼントし、健は故郷の沖縄へ向った。御前崎の家をたずね、カカルとの再会を楽しむしぶきだったが渡の妻に対する気がねなどがあり、長居はできなかった。そして、彼女は健のことが心にひっかかり、沖縄に住む姉夫婦を訪ねることにする。一方、雅世子は、歌手生活にピリオドを打つ決心をし、最後のステージを故郷の石垣島に近い沖縄でしめくくろうと向った。また、それを知った渡も沖縄へ飛んだ。しぶきは健、雅世子は渡とそれぞれ再会する。渡がしぶきを訪ねて来た。しぶきは想いを打ち明けるが、子供扱いされる。ある日、しぶきはレストランで雅世子と親しそうに話す渡を見てショックをうける。万座ビーチの海開き、健のマジックショーが行われた。その後、健と雅世子が連れ立って行くのを見たしぶきは、二人がキスするのを目撃、雅世子に渡のことを持ち出し、つっかかる。そして、健にも意地を張った。雅世子に呼び出されたしぶきは、彼女から渡と別れたことを聞く。幼稚園に就職したしぶきのもとに、健が誕生日のお祝いに駆けつけた。二人はお互いの気持ちを確かめ合い、ホテルに向かうが道路は渋滞。ラジオから雅世子のラストコンサートの実況中継が流れる。石垣島、畑仕事をする雅世子のもとに渡が現れる。一方、しぶきと健は、万座ビーチホテルへ腕組みして入っていった。




14-7. 九ちゃんのでっかい夢

監督 山田洋次
出演 坂本九倍賞千恵子竹脇無我谷幹一佐山俊二
1967年 (松竹) 89分

解説
三木洋の原作を、 「なつかしい風来坊」 の山田洋次が、シナリオと監督を担当したアクション・コメディ。撮影も 「なつかしい風来坊」 で山田と組んだ高羽哲夫。

ストーリー
スイスのレマン湖畔にある古い館の一室では富豪の老婦人が孤独な生涯を閉じようとしていた。彼女は莫大な遺産を、かつて愛した日本の初恋の人源九郎の孫九太郎に贈ることに決め、九太郎を直ぐに探し出すようにと弁護士を日本に向わせた。ところが老婦人の甥アラン・ポウはこの遺言に怒り九太郎を殺すべく、殺し屋カルダンを日本へ発たせた。しかしその頃当の九太郎はガンの宣告を受け絶望の日々を送っていた。彼は横浜の小劇場のカケ出しのコメディアンであったが、いっそのこと自分が知らない間に死ねたらと思い、便利屋のポンに殺し屋の紹介を依頼した。だが恋人愛子のことを思うと暗澹としてくるのだった。それに愛子には清彦という恋人がいたが、九太郎はそれを知らなかった。さてその頃、頼まれ殺し屋の竜も、カルダンも九太郎を追うのに汲汲としていた。一方愛子は念のため今一度大学病院の大河内教授を訪ねると、九太郎のレントゲン写真が別人の物であることが判明、狂喜した彼女が横浜の劇場に駈けつけると、ついに九太郎の居所をつきとめた弁護士もやってきた。舞台では殺し屋カルダンに狙われているとも知らない九太郎が客席を大いにわかせていた。突然竜がピストルを九太郎に向けぶっ放した。観客は騒然となり、流れ弾にあたったカルダンはその場に倒れてしまった。再び生きる喜びを見出した九太郎は愛子に愛を告白したが「清彦さんを……」という言葉が返ってくるのだった。数カ月後九太郎はスイスの古城の一室で、美酒を傾けながら、生涯独身で通し、その莫大な財産は、愛子と清彦の子供に贈ろうと考えていた……。




14-9. 黒い雨

監督 今村昌平
出演 田中好子北村和夫市原悦子原ひさ子沢たまき
1989年 (東映) 123分

解説
原爆による黒い雨を浴びたために人生を狂わせられてしまった女性と、それを暖かく見守る叔父夫婦とのふれあいを描く。井伏鱒二原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は 「女衒」 の今村昌平、共同脚本は 「ジャズ大名」 の石堂淑朗、撮影は 「危険な女たち」 の川又昂がそれそれ担当。

ストーリー
昭和20年8月6日、広島に原爆が投下された。その時郊外の疎開先にいた高丸矢須子は叔父・閑間重松の元へ行くため瀬戸内海を渡っていたが、途中で黒い雨を浴びてしまった。20歳の夏の出来事だった。5年後矢須子は重松とシゲ子夫妻の家に引き取られ、重松の母・キンと4人で福山市小畠村で暮らしていた。地主の重松は先祖代々の土地を切り売りしつつ、同じ被爆者で幼なじみの庄吉、好太郎と原爆病に効くという鯉の養殖を始め、毎日釣りしながら過ごしていた。村では皆が戦争の傷跡を引きずっていた。戦争の後遺症でバスのエンジン音を聞くと発狂してしまう息子・悠一を抱えて女手一つで雑貨屋を営む岡崎屋。娘のキャバレー勤めを容認しつつ闇屋に精を出す池本屋。重松の悩みは自分の体より、25歳になる矢須子の縁組だった。美しい矢須子の元へ絶えず縁談が持ち込まれるが、必ず“ピカに合った娘”という噂から破談になっていた。重松は疑いを晴らそうと矢須子の日記を清書し、8月6日に黒い雨を浴びたものの直接ピカに合っていないことを証明しようとした。やがて庄吉、好太郎と相次いで死に、シゲ子が精神に異常をきたした。一方、矢須子はエンジンの音さえ聞かなければ大人しく石像を彫り続けている悠一が心の支えとなっていった。しかし、黒い雨は時と共に容赦なく矢須子の体を蝕み、やがて髪の毛が抜け始めたのだった。




14-10. 火垂るの墓(2008)

監督 日向寺太郎
出演 吉武怜朗畠山彩奈松坂慶子松田聖子江藤潤
2008年 (???????????) 100分

解説
「誰がために」 の日向寺太郎監督が、アニメ映画版も有名な戦争文学を実写で映画化。混乱した戦時下を自力で生き抜こうとする兄妹の痛切な運命を描き出す。

ストーリー
1945年6月の神戸。大空襲の後、逃げまどう人々の中に14歳の清太(吉武怜朗)とその背中でおびえている4歳の妹節子(畠山彩奈)がいた。彼らの家は焼け落ち、やっとの思いで二人は国民学校にたどり着く。教室の中には重傷の人達が寝かされ、その中に兄妹の母・雪子(松田聖子)もいた。清太は雪子を病院へ連れて行こうとリヤカーを調達するが、その苦労も無駄に終わる。町会長(長門裕之)は母親が亡くなったことを清太に告げた。清太は節子を連れて西宮の遠縁の家を訪ねる。半年前に夫を失ったばかりの未亡人(松坂慶子)は最初、二人を追い返そうとするが、兄妹の荷物の中にある大量の缶詰などの食料に気付き態度を変える。近所には様々な人がいた。学生の高山道彦(山中聡)は、若い未亡人(池脇千鶴)と同棲し、周囲から白い目で見られている。近くの中学校の校長・本城雅夫(江藤潤)は何かと清太を気にかけ、剣道の稽古をつけたり、家に招待することもあった。しかし、日を追うごとに兄妹に対するおばの仕打ちはひどくなり、炊事も別々にするようになる。そんなある日、校長一家が心中、清太が淡い思いを寄せていた娘も帰らぬ人となった。兄妹は家を出て、池のほとりの横穴式防空壕で生活を始める。池の周りを飛ぶ蛍を捕まえては壕の中へ放して遊んでいたが、そんな生活も束の間、食料がなくなると清太は空家に忍び込み盗みを繰り返すのだった。ある日、清太は防火用水に高山の死体を発見する。どさくさに紛れて町会長(原田芳雄)らに虐殺されたのだ。節子は日々弱っていき、下着を汚すたびに清太が手で洗った。やがて、日本は敗戦の日を迎える。兄妹の父(高橋克明)は海軍大尉だったが生還の望みは薄かった。天皇による玉音放送の数日後、節子は静かに息をひきとる。清太は池のほとりの蛍たちの墓の隣に小さな墓を作り、節子を埋めた。そして、清太はどこへ行くあてもないまま歩き続けるのだった。




14-11. 円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

監督 行定勲
出演 芦田愛菜平幹二朗いしだあゆみ八嶋智人羽野晶紀
2014年 (東宝映像事業部) 113分

解説
“天才子役”の名をほしいままにする芦田愛菜が、口の悪い大阪在住の小学3年生の少女に扮した、映画初主演となるヒューマンドラマ。9歳にして孤独に憧れる、8人家族の末っ子の少女が、ひと夏の経験を通して成長していく姿を描き出す。 「きいろいゾウ」 などで知られる西加奈子の同名小説を映画化したのは、 「世界の中心で、愛をさけぶ」 の行定勲。

ストーリー
小学3年生の渦原琴子“こっこ”(芦田愛菜)は、大阪の狭い団地に家族と8人暮らし。父親の寛太(八嶋智人)、母の詩織(羽野晶紀)、祖父の石太(平幹二朗)、祖母の紙子(いしだあゆみ)、そして三つ子の姉・理子、眞子、朋美(青山美郷:三役)と毎日、食事時に大きな円卓をみんなで囲んでいた。好奇心旺盛な彼女は、気になった言葉や初めて知ることなどを、“じゃぽにか(=ジャポニカ自由帳)”に書き留めて大事にしていたが、ある時、そのノートを紛失。実は姉の朋美が祖母への誕生日プレゼントとして、“じゃぽにか”の表紙にあるグロテスクな蟻を刺繍するために、こっそり拝借していたのだった。こっこの一番の仲良しは、隣に暮らす吃音のクラスメイト、ぽっさん(伊藤秀優)。“普通”が嫌いで、他人と違うことが“かっこええ!”と考えるこっこは、ぽっさんだけでなく、様々なクラスメイトを憧れの眼差しで見つめる。ものもらいで眼帯を着用した香田めぐみ(草野瑞季)から親がベトナムの“ボートピープル”だったゴックん(野澤柊)、突然の不整脈で倒れた在日韓国人の朴くん(古谷聖太)まで……。そんなこっこを、担任教師のジビキ(丸山隆平)は優しく見守っていた。ある日こっこは、母が新しい子どもを身籠ったことを知るが、喜びに沸く家族の中、1人だけ全く喜べない。悩むこっこにぽっさんは告げる。“う、嬉しなかったら、よ、喜ばんでも、ええ。”そんな2 人に、祖父・石太は英語の“イマジン(=IMAGINE)”という言葉を教える。想像すること、相手がどう思うか、友達がどう思うか……。それが“いまじん”。2人はこの言葉を深く胸に刻む。そして、待ちに待った夏休み。こっこはぽっさんと一緒に、学校のウサギの散歩をしたり、夏休みの自由研究で蚊に血を吸わせたりと忙しい日々。だが、お墓参りに行くことになったぽっさんと別れたこっこに、この夏最大のピンチが訪れる……。




14-12. 日本のいちばん長い日

監督 岡本喜八
出演 宮口精二戸浦六宏笠智衆山村聡三船敏郎
1967年 (東宝) 157分

解説
大宅壮一名義(実際の著者は当時編集者だった半藤一利)で当時の政治家宮内省関係、元軍人や民間人から収録した実話を編集した同名原作(文芸春秋社刊)を、 「上意討ち ?拝領妻始末?」 の橋本忍が脚色し、 「殺人狂時代」 の岡本喜八が監督した終戦秘話。撮影は 「喜劇 駅前競馬」 の村井博。

ストーリー
戦局が次第に不利になってきた日本に無条件降伏を求める米、英、中のポツダム宣言が、海外放送で傍受されたのは昭和二十年七月二十六日午前六時である。直ちに翌二十七日、鈴木総理大臣官邸で緊急閣議が開かれた。その後、八月六日広島に原爆が投下され、八日にはソ連が参戦、日本の敗北は決定的な様相を呈していたのであった。第一回御前会議において天皇陛下が戦争終結を望まれ八月十日、政府は天皇の大権に変更がないことを条件にポツダム宣言を受諾する旨、中立国のスイス、スウェーデンの日本公使に通知した。十二日、連合国側からの回答があったが、天皇の地位に関しての条項にSubject toとあるのが隷属か制限の意味かで、政府首脳の間に大論争が行なわれ、阿南陸相はこの文章ではポツダム宣言は受諾出来ないと反対した。しかし、八月十四日の特別御前会議で、天皇は終戦を決意され、ここに正式にポツダム宣言受諾が決ったのであった。この間、終戦反対派の陸軍青年将校はクーデター計画を練っていたが、阿南陸相は御聖断が下った上は、それに従うべきであると悟した。一方、終戦処理のために十四日午後一時、閣議が開かれ、陛下の終戦詔書を宮内省で録音し八月十五日正午、全国にラジオ放送することが決った。午後十一時五十分、天皇陛下の録音は宮内省二階の御政務室で行われた。同じ頃、クーデター計画を押し進めている畑中少佐は近衛師団長森中将を説得していた。一方厚木三〇二航空隊の司令小薗海軍大佐は徹底抗戦を部下に命令し、また東京警備軍横浜警備隊長佐々木大尉も一個大隊を動かして首相や重臣を襲って降伏を阻止しようと計画していた。降伏に反対するグループは、バラバラに動いていた。そんな騒ぎの中で八月十五日午前零時、房総沖の敵機動部隊に攻撃を加えた中野少将は、少しも終戦を知らなかった。その頃、畑中少佐は蹶起に反対した森師団長を射殺、玉音放送を中止すべく、その録音盤を奪おうと捜査を開始し、宮城の占領と東京放送の占拠を企てたのである。しかし東部軍司令官田中大将は、このクーデターの鎮圧にあたり、畑中の意図を挫いたのであった。玉音放送の録音盤は徳川侍従の手によって皇后官事務官の軽金庫に納められていた。午前四時半、佐々木大尉の率いる一隊は首相官邸、平沼枢密院議長邸を襲って放火し、五時半には阿南陸相が遺書を残して壮烈な自刃を遂げるなど、終戦を迎えた日本は、歴史の転換に伴う数々の出来事の渦中にあったのである。そして、日本の敗戦を告げる玉音放送の予告が電波に乗ったのは、八月十五日午前七時二十一分のことであった。




14-13. ええじゃないか

監督 今村昌平
出演 桃井かおり泉谷しげる緒形拳露口茂草刈正雄
1981年 (松竹) 151分

解説
江戸時代末期に発生したええじゃないか騒動や百姓一揆など騒然とした世相を背景に江戸東両国界隈に生きた下層庶民のバイタリティ溢れる生活を描く。脚本は 「復讐するは我にあり」 の今村昌平と宮本研の共同執筆、監督も同作の今村昌平、撮影も同作の姫田真佐久がそれぞれ担当。

ストーリー
慶応二年、日本は激動期の真只中にあった。源次はそんな江戸へ六年ぶりにアメリカから帰って来た。上州の貧農の出の源次は横浜港沖で生糸の運搬作業中に難破し、アメリカ船に救けられ、そのまま彼の地に渡ったのだ。その間、妻のイネは、病身の父に売られ、現在、東両国の“それふけ小屋”(ストリップ劇場)で小紫太夫と名乗って出演している。源次はなんとかイネを発見、六年ぶりの再会に二人は抱きあった。見せ物小屋の立ち並ぶ東両国は、芸人、スリ、乞食、ポン引きなどアブレ者の吹き溜り。源次は三次、ゴン、孫七、卯之吉、旗本くずれの古川など、したたかな連中に混ってそこに居ついてしまう。そして、金蔵がここら一帯を取り仕切っている。自由の国アメリカが頭から離れない源次は、イネを誘いアメリカ渡航を計るが、結局、彼女はこの猥雑な土地を見捨てられず、彼もイネの肉体にひかれて残ってしまう。この頃、幕府と薩摩、長州連合の対立は抜きさしならないところにきており、金蔵は薩摩の伊集院などの手先となって、一揆の煽動など、天下を騒がす仕事に飛びまわっていた。「ええじゃないかええじゃないか」と〈世直し〉の幟やムシロ旗を立てた群衆は次々と豪商の倉を襲っていった。この群衆の中に、金蔵配下の源次、ゴンたちがアジテーターとしてまぎれこんでいた。更に、この騒ぎの中に、親兄弟を虐殺された琉球人のイトマンが仇の薩摩藩士の姿を求めて鋭い目を光らせていた。そして、「ええじゃないか」の勢いは止まるところを知らず、群集は、歩兵隊の制止も聞かず、大橋を渡ろうとした。「死んだって ええじゃないか」源次が仆れた。数日後、復讐をとげたイトマンの舟が琉球へとすべり出した。舟を見送るイネ。その翌年、元号は明治となるのだった。




14-14. 戦場のメリークリスマス  

監督 大島渚
出演 デヴィッド・ボウイ坂本龍一北野武トム・コンティジャック・トンプソン
1983年 (松竹富士) 125分

解説
第二次世界大戦下、ジャワ山中の日本軍俘虜収容所を舞台に、男たちの交流を描く。サー・ローレンス・ヴァン・デル・ポストの 「影の獄にて」 の映画化で、脚本は 「愛の亡霊」 の大島渚とポール・マイヤースバーグの共同執筆、監督も同作の大島渚、撮影は成島東一郎がそれぞれ担当。

ストーリー
1942年、ジャワ。山岳地帯の谷間レバクセンバタに日本軍の浮虜収容所がある。まだ夜が明けきらない薄闇の中日本軍軍曹ハラは、将校宿舎に起居する英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行く。広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモトが転がされていた。カネモトはデ・ヨンの独房に忍び込み彼を犯したのだ。ハラは独断で処置することを決め、万一の時の証人として流暢に日本語を操るロレンスを立ち合わせたのだった。そこへ、収容所長ヨノイ大尉が現れ、瞬時にして状況を察した彼はハラに後刻の報告を命じて、軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。バビヤダ市内の第16軍拘禁所にある法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズの軍律会議が開廷された。ヨノイは魔に魅入られたかのように異様な眼差しでセリアズを凝視する。セリアズはレバクセンバタ浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイはハラに、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。そこへ浮虜長ヒックスリが連れてこられた。ヨノイは彼に、浮虜の内、兵器、銃砲の専門家の名簿をよこせと命ずるがヒックスリは、敵に有利となる情報を提供するわけにいかないと拒否する。ある日、ヨノイの稽古場にハラが現れ、気合の鋭さに浮虜が怯えているため、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。そんなロレンスに、ヨノイは唐突に、自分は二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため決起に参加できず、死に遅れたのだと語った。そして、その場でカネモトの処刑をいい渡した。処刑場にはヒックスリ以下浮虜側の上級将校も強制的に立ち会わされ、ハラがカネモトの首を切り落とした瞬間、デ・ヨンが舌を噛みきった。「礼を尽くせ」とヨノイは命ずるが浮虜たちは無視する。激昂したヨノイは、収容所の全員に48時間の謹慎と断食の〈行〉を命じる。無線機を持ちこんでいたという理由でロレンスとセリアズは独房入りとなった。壁越しに話をする2人。ロレンスは、たった2度しか会わなかった女性の思い出の中へ。セリアズは、耳許に内向的だった弟の歌声を聞く。衛兵の長靴足音が聞こえ、2人は司令室に連行された。そこには酒で上気し「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり〜すます」と笑いかけるハラがいた。ハラは2人に収容所に帰ってよいといい渡す。ヨノイの命令で、浮虜全員が閲兵場に整列させられたが、病棟の浮虜たちがいない。病人たちをかばうヒックスリに、激怒したヨノイは再び「兵器の専門家は何人いるか」と問う。「おりません」とヒックスリ。ヨノイは「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、浮虜の群からセリアズが優雅に歩み出、両手でヨノイの腕をつかむと、彼の頬に唇を当てた。後ろに崩れ落ちるヨノイ。ヨノイは更迭され、新任のゴンドウ大尉が着任した。閲兵場の中央に深い穴が堀られ、セリアズが首だけ出して生き埋めにさせられる。ある夜、月光の中からヨノイが現れ、無残な形相となったセリアズの金髪を一房切り落とし、どこへともなく立ち去った。時は流れ、1946年、戦犯を拘置している刑務所にロレンスがやってくる。処刑を翌日に控えたハラに面会にきたのだ。ロレンスは、ヨノイから日本の神社に捧げてくれとセリアズの遺髪を託されたことを告げる。クリスマスの日の思い出を語り合う二人。やがてロレンスは出口へ向かう。その瞬間、収容所で何度も聞かされたあの蛮声でハラが「ローレンス」と怒鳴る。そして、振り向いたロレンスの眼前に「めりい・くりすます。みすたあろーれんす」と告げるハラの笑顔があった。




14-15. 八月の狂詩曲

監督 黒澤明
出演 村瀬幸子井川比佐志茅島成美大寶智子伊嵜充則
1991年 (松竹) 98分

解説
人里離れた山村を舞台に、長崎での被爆体験を持つ祖母と4人の孫たちのひと夏の出来事を描くドラマ。村田喜代子原作 「鍋の中」 の映画化で、脚本・監督は 「」 の黒澤明。撮影は同作の斎藤孝雄と上田正治が共同でそれぞれ担当。

ストーリー
長崎から少し離れた山村に住む老婆・鉦のもとに一通のエアメールが届いた。それは鉦の兄であるハワイの大富豪・錫二郎の息子・クラークからで、不治の病にかかり余命短い錫二郎が、死ぬ前に鉦に会いたいというものだった。ところが、兄弟が多い鉦には錫二郎という兄の記憶がなく、そんな鉦の気持ちとは裏腹に、突然現れたアメリカの大金持ちの親せきに興奮した息子の忠雄、娘の良江はハワイに飛んで行ってしまう。それによって残された4人の孫・縦男、たみ、みな子、信次郎は夏休みを鉦の家で過ごすことになった。孫たちは鉦の家の生活に退屈しながらも、長崎の街にある戦争の傷跡や鉦がいつも話す昔話を聞いて、原爆で祖父を亡くした鉦の気持ちを次第に理解するようになる。そして、鉦がついにハワイに行く気になり、縦男はその旨を手紙に書いてハワイに送る。それと入違いに忠雄と良江が帰って来た。手紙のことを知った二人は、その手紙に原爆のことが書いてあることを知り、急に落胆する。アメリカ人には原爆の話をしてはいけないと言うのだ。そんな時、突然クラークがハワイからやって来る。縁台で鉦と手を取り合って対面を喜ぶクラークは「ワタシタチ、オジサンノコトシッテ、ミンナデナキマシタ」とたどたどしい日本語で語った。そして長崎で孫たちと楽しい日々を送っていたとき、錫二郎の死を告げる電報がクラークのもとへ届き、クラークは急いで帰国するのだった。鉦も縁側でその電報を握りしめていつまでも泣いていた。そしてこの時から鉦の様子がおかしくなっていく。そして雷雨の夜、突然「ピカが来た!」と叫びだし、翌朝、豪雨の中で鉦は風に揺られながら駆け出していく。そして、そんな鉦を忠雄、良江、それと4人の孫たちはこみあげる熱い気持ちのまま、泣き叫びながら追いかけていくのだった。




14-16. キタキツネ物語 35周年リニューアル版

監督 三村順一
出演 佐藤隆太平野綾松井月杜三木理紗子内田朋美
2013年 (アスミック・エース) 97分

解説
北海道の厳しい自然の中で生息するキタキツネたちの生態をとらえ、日本映画初の動物映画として話題を呼んだ 「キタキツネ物語 THE FOX IN THE QUEST OF THE NORTHERN SUN」の35周年リニューアル版。同作で助監督を務めた三村順一がメガホンを握り、再びキタキツネたちの姿を追ったドキュメンタリー。親元から自立していく子ギツネたちの姿が感動を誘う。

ストーリー
雪と氷に閉ざされた北海道オホーツク。遥か北から、流氷に乗って1匹のキタキツネがやって来た。その様子を、ブリザードに晒されながら立つ1本の“柏の木”が見つめる。アイヌ語で“赤い獣”の意味を持つフレップという名のそのキタキツネは、この北の大地で愛する妻レイラと出会い、家庭を築くことを決めた。やがて春になり、5匹の子宝に恵まれたフレップは、子どもたちに惜しみない愛情を注ぐ。だが、彼らの命は数々の危険に晒されていた。雪解けとともに始まる人間たちの狩猟で傷つき、夏はスコールによって最大の武器である聴覚と嗅覚を奪われて食料の確保ができなくなり、飢えに襲われる。食べ物を求めて人間の土地へ足を踏み入れれば、罠が待ち受ける。冬には一面の雪が豊かな自然を覆い隠す。過酷な環境の中、フレップは家族を守るために戦うが、時に環境は大切なものを容赦なく奪い去って行く。生まれつき視力の弱い末っ子のチタニは、母が話してくれるフレップの冒険譚に憧れ、やがて暗い世界に飛び出し、そのまま行方不明となった。食料を探しに出て人間の罠にかかった妻のレイラは、その傷が元で命を落とす。愛する妻と息子を失った悲しみに暮れるフレップだったが、残された4匹の子どもたちを守って戦い続けなければならなかった。やがて、短い夏が終わろうとする頃、フレップと子どもたちはついに別れの時を迎える。“もうここへ帰ってきてはダメだ。自分で生きろ!” と、突如として子どもたちに対して牙を剥くフレップ。子どもたちは戸惑うが、やがてどうにもならないことを悟り、生まれ育った家を後にする。苦しく、悲しくも、深い愛に包まれた子別れの儀式を成し遂げたフレップは、使命を終えたことに安堵と喪失感を覚える。もはやこの地に未練はない。再び雪と氷の季節がやってきたとき、フレップは流氷に乗り、凍てつく海へと漕ぎ出して行く。吹雪がこだまするオホーツクの遥か果てを目指して。




14-17. 肉弾

監督 岡本喜八
出演 寺田農大谷直子天本英世笠智衆北林谷栄
1968年 (ATG) 116分

解説
日本のいちばん長い日」 の岡本喜八が脚本・監督を担当したもう一つの“日本のいちばん長い日”。撮影は 「北穂高絶唱」 の村井博が担当した。

ストーリー
昭和二十年の盛夏。魚雷を脇に抱えたドラム岳が、太平洋に漂流していた。この乗組員、工兵特別甲種幹部候補生のあいつは、まだ終戦を知らなかった。あいつが、ここまで来るには可笑しくも悲しい青春があった。演習場のあいつ。候補生たちは、みな飢えていた。あいつは、めしと死以外を考える余裕はなかった。乾パンを盗んで裸にむかれたこともあった。それから、広島に原爆が落ち、ソ連が参戦した。そして予備士は解散され、あいつら候補生は特攻隊員にされた。一日だけの外出を許されたあいつは、無性に活字が恋しくなって古本屋へ行った。だが、活字で埋った本は、電話帳だけだった。そこには、B29に両腕をもがれた爺さんと観音さまのような婆さんがわびしく暮していた。あいつは、やりきれなくて焼跡の中の女郎屋に飛込んだ。けばけばしい女たちの中で、因数分解の勉強をしているおさげ髪の少女が、あいつに清々しく映った。だが、あいつの前に現われたのは、前掛けのおばさんだった。再び雨の中へ飛出したあいつは、参考書を待った少女に出会った。なぜか少女はついて来た。やがて二人は防空壕の中で結ばれた。翌日のあいつは、対戦車地雷を抱えて砂丘にいた。少女、古本屋の老夫婦、前掛けのおばさん、そして砂丘で知りあった小さな兄弟とモンペ姿の小母さん。あいつが死を賭けて守る祖国ができた。その夜の空襲で少女が死んだ。それから、作戦が変更されあいつは魚雷と共に太平洋に出た。あいつは、ドラム缶の中で少女を殺した敵をじっと待ったが、敵機の機銃掃射を受けて、彼のメガネは飛び散ってしまった。日本は敗けた。だがあいつはある朝、大型空母を発見した。あいつは執念をこめて九三式魚雷を発射したが、魚雷は泡をたてて沈んでしまった。それから間もなくあいつは、空母と錯覚したし尿処理船に助けられ、終戦を聞かされた。し尿処理船に曳航されながら港に向かったあいつだが、腐ったロープが切れてしまい取り残されてしまった。しかしあいつはそれに気づかずに怒号していた。それから二十年余、海水浴客で賑わう同じ海に、ドラム缶が浮いていた。その中で、白骨化したあいつは、いまだに怒号していた。




14-18. STAND BY ME ドラえもん

監督 山崎貴
出演 水田わさび大原めぐみかかずゆみ木村昴関智一
2014年 (東宝) 95分

解説
藤子・F・不二雄が生んだ国民的ヒーローである未来からやってきたネコ型ロボット、ドラえもん。そんなドラえもんと小学生ののび太や仲間たちとの日常が初めて3DCGで描かれる劇場版。ドラえもんとのび太との出会いから別れまでがつづられる。 「永遠の0」 の山崎貴と 「フレンズ もののけ島のナキ」 の八木竜一が監督を務める。

ストーリー
勉強もスポーツもダメな冴えない小学生のび太(声:大原めぐみ)のもとに、ある日、セワシという少年が訪ねてくる。のび太の孫の孫にあたるセワシは22世紀からやってきて、このままでは悲惨なものになるのび太の未来を変えるためにネコ型ロボット・ドラえもん(声:水田わさび)をのび太の世話係にしようとする。あまり乗り気ではないドラえもんに、セワシはのび太を幸せにするまで22世紀に帰れないよう『成し遂げプログラム』をセットしてしまう。こうして未来をいいものにしようとするドラえもんとの日々がはじまった……。




14-19. 椿三十郎 (2007)

監督 森田芳光
出演 織田裕二豊川悦司松山ケンイチ鈴木杏村川絵梨
2007年 (東宝)

解説
名匠・黒澤明の傑作時代劇を、同作の脚本をもとに森田芳光監督がリメイク。織田裕二扮する、性格は明るく剣の腕も立つ浪人・三十郎が、藩のお家騒動の黒幕を追い詰めていく。

ストーリー
ある夜、社殿の中で九人の若侍が、上役の汚職を暴き出そうと密議をこらしていた。若侍の一人、井坂伊織(松山ケンイチ)によれば、汚職の張本人である次席家老黒藤(小林稔侍)と国許用人竹林(風間杜夫)の粛清の意見書を、伯父である城代家老睦田(藤田まこと)に差し出したが、受け入れてもらえなかったとのこと。一方、大目付菊井(西岡徳馬)はこの進言を快諾し、詳しい話を聞きたいから仲間全員を社殿に集めるよう宣われたと言う。意気の上がる若侍たち。しかしその時、彼らの前に社殿の奥からよれよれの紋付袴を着た浪人、椿三十郎(織田裕二)が現れた。彼は城代家老が本物で、大目付菊井が黒幕だと言って若侍たちを仰天させる。その言葉通り、すでに社殿は大目付菊井の手の者によって取り囲まれていた。動揺する若侍たちを制して、三十郎は一人で社殿の外に打って出た。その時に出会ったのが、敵方の室戸半兵衛(豊川悦司)。彼は、三十郎が只者ではないと途端に見抜いて言葉をかけた。再び社殿に戻った三十郎は、九人の若侍に手を貸すことを決める。一同は夜陰にまぎれて城代家老宅へ向かうが、家老はすでにどこかに連れ去られていた。睦田夫人(中村玉緒)と娘の千鳥(鈴木杏)は監禁されていたが、三十郎は二人を救い出し、若侍の一人、寺田文冶(林剛史)の家にかくまった。寺田の家は、椿屋敷の異名を取る次郎席黒藤の家の隣だった。皆は城代家老の居場所を探し出すのに躍起で、三十郎は敵状を探るために室戸を訪ねる。三十郎を味方につけようとする室戸。それに乗ったふりをする三十郎をめぐる若侍たちの不和が、彼ら自身を窮地に追い込み、三十郎がそれを救うハメになる。やがて城代家老は、黒藤の家に監禁されていることが判明。三十郎と若侍たちは策略を練り、見事、城代家老の救出に成功する。そして室戸との一騎打ちに勝利した三十郎は、若侍たちを背に静かに去っていくのだった。




14-20. 江戸城大乱

監督 舛田利雄
出演 松方弘樹十朱幸代三浦友和西岡徳馬金田賢一
1991年 (東映)

解説
徳川五代将軍の座を巡る熾烈きわまりない跡目争いを豪快に描く時代劇。脚本は 「陽炎」 の高田宏治が執筆。監督は 「必殺!5 黄金の血」 の舛田利雄。撮影は 「動天」 の北坂清がそれぞれ担当。

ストーリー
延宝八年、春。四代将軍・家綱は、体が弱く世継ぎもいなかった。江戸幕府の大老・酒井雅楽頭忠清は、時期将軍候補として家綱の次弟・綱重を擁立。大半の賛同は得たものの、尾張当主・徳川光友だけは異を唱える。将軍位継承の権利は御三家にもあるというのがその理由だった。家綱に変わって独裁政治を敷く酒井には反感を持つ者も多い。三代将軍・家光の血を引く館林当主・綱吉もそのひとり。そんな中、堀田備中守正俊に綱重出迎えの大命が下った。だが江戸への帰還中、綱重は何者かに殺されてしまう。そこで先代家光の側室・桂昌院は実子の綱吉を五代将軍にと願うが、酒井は強硬に異議を唱える。桂昌院は酒井とは最早戦うしかないと決心し、堀田に助力を求めた。だが家綱は死に、時期将軍には甲府・綱豊にと遺言を残す。その報せを聞いた桂昌院は、酒井の謀略だと確信していた。そして老中稲葉美濃守の手元へ家綱直筆の遺言状が侍女によって差し出された。それには、次期将軍は館林・綱吉とはっきり記されていた。完全に敗北を悟った酒井は、綱吉を斬ろうと刀を抜くが、綱吉のあくまで鋭い眼光と威厳に満ちたその容姿に圧倒された彼はその場に平伏。そして徳川家への大逆をわび、切腹するのだった。




14-21. アンフェア the movie

監督 小林義則
出演 篠原涼子椎名桔平成宮寛貴阿部サダヲ濱田マリ
2007年 (東宝) 112分

解説
2006年に関西テレビ・共同テレビ制作・フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ、「アンフェア」の映画版。主演はテレビシリーズ・SP版と同じく篠原涼子。「アンフェア the special コード・ブレーキング・暗号解読」の直接の続編であり、テレビシリーズ・SP版に残っていた全ての謎が明かされるが、また新たな謎を残す。続編となる映画「アンフェア the answer」が2011年9月17日公開された。

ストーリー
推理小説型予告殺人・募金型誘拐事件・×マーク連続殺人事件、そしてコードブレーキング暗号解読の事件が解決し、雪平の父の死の真相も判明して、すべての事件が終わったように見えた。雪平はこれらの事件により、心痛の日々を過ごしていた。そんな中、雪平の娘・美央が爆破事件に巻き込まれ、病院に運び込まれる。その病院がテロリストにより、占拠され一気に混乱する。そして事態を察した雪平は、美央を救うため単身病院内に潜入し、テロリストとの戦いに身を投じることになる。





14-22. 新 居酒屋ゆうれい

監督 渡邊孝好
出演 舘ひろし松坂慶子鈴木京香津川雅彦生瀬勝久
1996年 (東宝) 113分

解説
死んだ女房の幽霊の出現で大騒動になる居酒屋の主人と彼の現在の妻の姿を描いたロマンティック・コメディ。大好評となった94年の 「居酒屋ゆうれい」 の続編だが、前作と同じ設定の物語のバリエーションのひとつで、キャストを一新しての登場となった。監督は 「君を忘れない」 の渡邊孝好。脚本の田中陽造とともに前作 「居酒屋ゆうれい」 に続いての登板となる。撮影は 「天守物語」 の藤沢順一。主演は 「あぶない刑事リターンズ」 の舘ひろし、 「女ざかり」 の松坂慶子、 「大失恋。」 の鈴木京香。

ストーリー
幼なじみの賢三の葬儀に参列した壮太郎は、火葬場で、死別した前の妻・しず子にそっくりな女・ユキエと出会う。壮太郎が北品川で営む居酒屋“上総屋”は、後添えの里子の愛想のよさもあって、魚春のオヤジに酒屋の幸一、生活の辛さを愚痴りに来る辰夫、命の洗濯に遠く荻窪からやって来る佐久間など常連のお客でいつも一杯だった。ある日、怪しげな風体の飛び込みの客が上総屋の暖簾をくぐった。里子は、その男が前の亭主でヤクザの幹部の杉町であることに気づいて震え上がる。男は煮込みとビールを流し込むように胃に収めると、さっさと店を出て行ってしまった。杉町は記憶を失っていたが、死んだとばかり思っていた前の亭主の出現で動揺した里子は、壮太郎に安らぎを求めようとする。そんなふたりの前に、幽霊となったしず子が突然現れた。以来、上総屋では壮太郎を挟んで、あの世とこの世の女房の戦いが起き、騒動に疲れた壮太郎は、いつしかユキエと会うようになっていた。ユキエには不治の病で入院中の弟がいて、その入院費用のために彼女は“青柳”というフグ料理を出す店に勤めていた。青柳は死を予感した人たちをフグの毒で楽にしてやる危ない料亭で、癌に冒された佐久間も利用している。その噂が警察の耳に届いたため青柳は閉店に追い込まれ、職と同時に弟も失ったユキエは壮太郎の前から姿を消した。そのころ、里子は事故で記憶を取り戻した杉町から復縁を迫られていた。壮太郎を心底愛している自分に改めて気づいた里子は壮太郎の元に戻るが、しず子から杉町の存在と彼が刺客に狙われていることを知らされていた壮太郎は、杉町の身を案じて強引に里子を追い帰してしまう。壮太郎の男気に惚れなおしたしず子は里子の体に乗り移り、杉町の命を吸い取った。さらにしず子は佐久間の病気も吸い取ってやると、しず子の生前のヘソクリを辰夫夫婦にやってしまった壮太郎を許し、命日の日の0時を過ぎたころ、あの世へ帰っていった。




14-23. 壬生義士伝

監督 滝田洋二郎
出演 中井貴一佐藤浩市夏川結衣中谷美紀山田辰夫
2002年 (松竹) 137分

解説
浅田次郎の同名ベストセラー小説を「陰陽師」の滝田洋二郎監督&豪華キャストで映画化。幕末の新撰組を舞台に男同士の確執と友情、家族のきずなを描く人情時代劇。

ストーリー
明治三十二年、東京市。冬のある夜、満州への引っ越しを間近に控えた大野医院に病気の孫を連れてやってきた老人・斎藤一は、そこにかつて新選組で一緒に戦った隊士・吉村貫一郎の写真を見つける…。盛岡の南部藩出身の貫一郎は、純朴な外見に似合わない剣術の達人であった。が、その一方で名誉を重んじ死を恐れない武士の世界に身を置きながら、生き残ることを熱望し、金銭を得るために戦った男でもあった。全ては、故郷で貧困に喘ぐ家族のため。脱藩までして新選組に入隊した彼には、金を稼ぎ、愛する家族のために生き残る必要があったのだ。斎藤はそんな貫一郎を嫌ったが、反面、一目置くところもあった。時が過ぎ、大政奉還。一転して賊軍となった新選組は、官軍の制圧に遭い壊滅状態に陥る。ところが、貫一郎だけは脱藩で裏切った義を二度と裏切れないと、たったひとりで最後まで戦い抜いた。そして、傷ついた彼は大阪蔵屋敷の差配役として赴任していた幼なじみの大野次郎右衛門の情けで、官軍に引き渡されることなく、故郷を想いながら切腹したのだった。思いかけず、次郎右衛門の息子・大野千秋から、気になっていた貫一郎の最期を聞くことが出来た斎藤。彼は、貫一郎の娘で今は千秋の妻となった小児科医・みつの診断を終えた孫を連れ、夜の道を帰っていった。




14-24. 大菩薩峠

監督 三隅研次
出演 市川雷蔵本郷功次郎中村玉緒山本富士子
1960年 (大映) 105分

解説
おなじみ中里介山の原作を映画化したもので、 「白子屋駒子」 のコンビ衣笠貞之助が脚色し、三隅研次が監督した。撮影も 「白子屋駒子」 の今井ひろし。

ストーリー
秀麗富士を遠望する大菩薩峠の頂上。黒紋付着流しの机竜之助は、一刀のもとに居合わせた老巡礼を斬り捨てた。この祖父の死に驚くお松を、通り合わせた怪盗裏宿の七兵衛が助けて江戸へ向った。一方、机道場に帰った竜之助を持っていたのは、字津木文之丞の妹と偽るその妻お浜だった。御嶽山奉納試合の勝ちを譲れというお浜の言葉を冷くはねつけ、その帰途を水車番の与八に襲わせた竜之助は、その小屋でお浜を犯す。それから数日、奉納試合は文之丞の意趣で殺気をはらんだが、竜之助の音無しの構えは一撃にして文之丞を倒し、竜之助はお浜を伴って江戸へ。この兇報に馳せ戻った文之丞の弟兵馬は、竜之助の父弾正から、妖剣音無しの構えを破るには並大抵の修行ではだめだと教えられ、剣聖島田虎之助に正剣を学ぶため江戸へ向った。江戸に出た竜之助は新撰組に出入りし、近藤勇、芦沢鴨、土方歳三らと知り合うが、ある夜、誤って島田虎之助に斬りかかった土方らが、虎之助の絶妙な剣の冴えに一蹴されたのを見て動揺する。また七兵衛に救われたお松は、生花師匠お絹の家で行儀見習いをするうちに、亀田道場へ通う兵馬と知り合い、恋し合うようになる。ところで兵馬は、遂に竜之助を探し出し果し状を送ったが、竜之助はこれを知って兵馬に討たれてくれとたのむお浜を斬り、お浜との間に出来た一子の郁太郎を残して江戸を去った。京都に入った竜之助は芦沢をたよって新撰組に入り、これを追うようにして現われた兵馬は近藤の世話で新撰組入りとする。ここでも宿命の対立を見せた。一夜、島原で近藤暗殺の計画を聞かされた竜之助は、この密議を聞いたおばのお滝と情夫の清吉に走り飛ばされ京都に来ていたお松を御簾の間に連れこんだ。竜之助の蒼白の顔面から漂う妖気。それが突如として狂気に変った。無気味の竜之助の哄笑。この時、近藤に後楯された兵馬らが御簾のそとにひしひしと迫っていた。




14-25. 大菩薩峠 竜神の巻

監督 三隅研次
出演 市川雷蔵本郷功次郎中村玉緒山本富士子近藤美恵子
1960年 (大映) 90分

解説
「大菩薩峠(1960)」 の第二部で、脚色・衣笠貞之助、監督・三隅研次、撮影・今井ひろしといずれも前作と同じスタッフ。

ストーリー
京の島原で狂乱の机竜之助と宇津木兵馬との対決は、お互いを霧の中に見失ってしまった。裏宿の七兵衛はお松を島原より身請けし、彼女を部屋に閉じこめた浪人者こそ、お松の爺さんを斬った机竜之助であると初めて語った。兵馬は竜之助を求めて新選組を脱け、お松、七兵衛とともに竜之助の後を追うことにした。竜之助は八木の街道で、浪人酒井新兵衛に兵法試合を望まれるが、仲裁に入った植田丹後守の人柄に引かれて彼の屋敷にしばらく逗留することとなった。そこで竜之助は過日助けたことのある女、お豊と再会した。お豊は心中の生き残りとして屋敷の手伝いをしていたが、土地の庄屋の息子金蔵に言い寄られて困っていた。ために竜之助が江戸へ発つ時、同行を申し出た。しかし、金蔵は土地の猟師と語らいお豊を奪って去った。上野の旅篭についた竜之助はいつかの浪人酒井新兵衛と会い、天誅組の総裁松本奎堂に引き合わされた。そして遊山がてら彼らと行動をともにすることになった。しかし大敗を喫した天誅組の背後には、藤堂藩、彦根藩などの追手がかかっていた。天誅組と木樵小屋に潜んでいた竜之助は、追手の投げ込む爆薬のため盲目となったが血路を開いて竜神の森へと逃れた。竜神の篭堂で休み、滝にあたって目を洗う竜之助はお豊と再会した。お豊は金蔵にむりやり夫婦にさせられ金蔵の叔父がいとなむ旅篭の夫婦養子となっていた。一方、兵馬も七兵衛の働きによって竜之助の後を確実に追っていた。だが、お松は天誅組騒動の際に巻き添えをくい藤堂藩の作業員黒滝の鬼蔵にさらわれたが、お玉、米友に救われていた。そんな頃、金蔵夫婦の旅篭に兵馬が草鞋を脱いだ。お豊は竜之助の身に危険が迫ったことをさとり、旅支度を整えて篭堂に登った。それを不審に思った兵馬はお豊の後をつけ竜之助に勝負を挑んだ。その頃下の村では金蔵がお豊に逃げられたことを知り狂乱、村中に火を放ちお豊の後を追った。竜神の森で宿命の対決となった。竜之助と兵馬は、−−兵馬捨て身の突きをかわした竜之助は断崖から滝壷へ姿を消した。兵馬、竜之助が再び会う日は何時か。




14-26. 大菩薩峠 完結篇

監督 森一生
出演 市川雷蔵中村玉緒小林勝彦
1961年 (大映) 98分

解説
「大菩薩峠(1960)」 の第三部・完結編で、中里介山の原作を、一・二郎に続き衣笠貞之助が脚色し、三隅研次に代って 「おけさ唄えば」 の森一生が監督した。撮影も 「おけさ唄えば」 の本多省三。

ストーリー
竜神の滝の断崖から落ちた盲目の竜之助はお豊の助けで伊勢大湊の与兵衛宅にかくまわれていた。お豊は古市の廓に身を沈めたが病に犯され自害した。竜之助あての遺言状と金は流しのお玉に手渡された。挙動不審を咎められたお玉は役人に追われ金は落してしまうが、手紙だけは竜之助に渡すことができた。裏宿の七兵衛はやっとのことで竜之助を探し出すが、竜之助は生花の師匠お絹と発った後であった。お絹の色香を狙うがんりきの百は山中で二人の駕籠を別々に引き離してしまった。怒った竜之助は百の片腕を切り落すが、谷底に落ちてしまう。それを救ったのはお徳であった。竜之助はお徳の子蔵太郎を見てわが子郁太郎の身に思いをはせるのだった。甲府勤番となって湯元にやって来ていた旗本神尾主膳は、土豪望月家から金を捻出しようと面策、婿の清一郎を召捕った。お徳からこれを聞かされた竜之助は清一郎を救い出すが、自分は主膳の家に捕われた。主膳は竜之助の腕を見込んで、甲府勤番頭駒井能登守の暗殺を条件に屋敷へかくまった。その頃兵馬と七兵衛の二人は竜之助の足取りを、確実に追っていた。主膳は有野村の馬大尽の一人娘との縁組を強制していた。一夜、お銀を屋敷に連れこむがお銀は竜之助に救われた。お銀は顔半面むごたらしいヤケドの跡を作っているため、盲目の竜之助にかえって愛情を持った。竜之助もお銀の声にお豊、お浜の面影を思いだしていた。竜之助はある夜、駒井能登守を襲うがその人格にうたれて討つことができなかった。お銀とともに大菩薩に舞い戻った竜之助は、お浜の墓地をみつけて愕然とした。それからというものは、竜之助の辻斬りが毎夜のように続いた。辻斬りの噂を聞いて兵馬も大菩薩に帰って来た。折柄の豪雨に笛吹川は氾濫、村人は恐怖に包まれ続々と退避していた。与八の世話で立派に成長している郁太郎を求めて竜之助は雨中をさまよっていた。そこへかけつけた兵馬。竜之助との宿命の対決となった。だが、足元からくずれだす笛吹川の濁流のため、竜之助は濁流の中に押し流されていった。




14-27. 闇の狩人

監督 五社英雄
出演 仲代達矢原田芳雄いしだあゆみ岸惠子神崎愛
1979年 (松竹) 137分

解説
金権政治が蔓延った徳川十代将軍家治の世、江戸の総元締を狙い、次々と悪人狩りをを引き受ける五名清右衛門の率いる“闇の狩人”の姿を描く。池波正太郎の同名の原作の映画化で、脚本は北沢直人、監督は 「雲霧仁左衛門」 の五社英雄、撮影は酒井忠がそれぞれ担当。

ストーリー
徳川十代将軍家治の世、首席老中田沼意次が幕政をあやつり、後に田沼時代と呼ばれる金権汚職の世をつくりあげていた。そして、江戸市民生活の裏面には、金で殺しを請負う“闇の狩人”という組織があった。天明四年冬、浪人谷川弥太郎は河津の弥市の手引きで、白金の徳三を斬った。闇の稼業の一方の旗頭、五名清右衛門が競い合う徳蔵を消す仕掛けであった。弥太郎は、五名の代貸を勤める弥市に、谷川に落ち過去の記憶を失って彷徨っていたのを助けられ、谷川弥太郎と名づけられたのだ。その仕掛け以後、五名は弥太郎を片腕として雇い入れた。ある夜、五名と勢力を争う芝の元締治平の誘いに乗った弥市は、五名を亡きものにしようと企み、五名の女、おもんを手ごめにするが、その現場を看破られ、闇の掟通り殺されてしまう。おもんも川に沈められる筈だったが、隙を見て舟を漕ぐ寅松を殺して逃げる。がその現場を見た嘉助に強請られ、その女になり下がる。そして治平は弥太郎によって斬られてしまう。五名は、元北前藩家老の下国左門から、お家再興を願う蛎崎将監、筧軍兵衛らを亡き者にする仕掛けを請負い、弥太郎にその仕事を命じた。弥太郎は相手を次々と斬り倒すが、目指す二人を取逃してしまう。隠れ家でかえり血を清めている弥太郎に、治平の女お蓮が恨みを晴らそうと斬りかかり、弥太郎は深傷を負う。別の隠れ家に運ばれた弥太郎の手当をする五名の囲い女おりはは、弥太郎の顔を見て驚く。行方しれずの夫平三郎だったからだ。おりは(荻野)は平三郎に語った。蝦夷地の豊かな資源に目をつけた老中田沼は慾にくらむ左門を抱き込み、藩主章広が乱心の末自刃して果てたという表向きの理由で北前藩を取り潰した。ところが、藩主には脇腹ながら跡継がおり、それを左門に知らせた笹尾善左衛門は、左門の駕篭を借りたがために、誤まって息子平三郎の刃にかかる。父の遺言により平三郎、荻野夫婦が江戸へ向かう途中、左門の配下に襲われ、平三郎は谷川に転落、行方不明となった??。おりはを愛していた五名はこの話を盗み聞いて絶望的になる。一方、弥太郎の正体を知った嘉助は左門を訪れ、それを種にたかるのだった。左門は五名を呼び出し、弥太郎を差出せと迫るが、五名はその申し出をきっばり断わるのだった。その頃、おりはの言葉を聞いた弥太郎は傷の身も顧ず、浅草般若院に出かけると、そこの住職招厳は、弥太郎の顔を見るなり「笹尾善左衛門が伜、平三郎であろう」と語り、北前藩が家康公から拝領した里油印と幼名の所在を記した文箱を渡す。そこへ、蛎崎と筧たちが押し入り、二人に斬りかかり、倒れた燭台の火が燃え拡がるのを見て、弥太郎は突然記憶をとり戻した。重傷を負った弥太郎は、逃げ帰った隠れ家の中で荻野と再会したのも束の間、忍び入ったお蓮のドスに弥太郎は倒れ、荻野も夫弥太郎の傍で自害して果てた。そしてお蓮も後を追った。暫くして、丘の上の鶏小屋で、北前藩の命運を賭けたお墨付を中に、左門と五名は、男の夢と生きざまをかけて対峙し、壮烈な死闘の末、共に死んでゆく……。





14-28. 母べえ

監督 山田洋次
出演 吉永小百合浅野忠信檀れい志田未来佐藤未来
2007年 (松竹) 132分

解説
武士の一分」 の山田洋次監督が、激動の昭和を描いた感動作。第二次世界大戦の暗い世相のなか、親類らの助けを得て、2人の娘を明るく育てた女性の姿を吉永小百合が力演。

ストーリー
昭和15年の東京。家族と共に倹しくも幸せに暮らしていた野上佳代(吉永小百合)だが、反戦思想を持ったドイツ文学者の夫、滋(坂東三津五郎)が治安維持法違反で検挙されてから、その暮らしは一変する。不安と悲しみを募らせる野上家に、一筋の光として現れたのが、滋のかつての教え子である山崎徹(浅野忠信)だった。小さな出版社に勤める彼は、不器用だが優しい性格で長女・初子(志田未来)と次女・照美(佐藤未来)に親しまれ、“山ちゃん”の愛称で野上家に欠かせない存在となる。まもなく、滋がいつ帰れるか全く見通しが立たないため、佳代は小学校の代用教員として一家の家計を支え始める。帰宅すれば深夜まで家の雑事に追われる毎日の中、滋の妹の久子(檀れい)が時折手伝いにきてくれた。そして夏休みの間だけ、叔父の仙吉(笑福亭鶴瓶)が奈良から上京してくる。変わり者の仙吉は、デリカシーのない発言をして思春期を迎えた初子に嫌われてしまうが、その自由奔放な姿は佳代の心を癒した。昭和16年に入り、佳代の故郷・山口から、警察署長をしていた父・久太郎(中村梅之助)が上京してくる。思想犯となった滋との離婚を命じるためだが、佳代の心は少しも揺るがなかった。そしてその年の12月8日、ついに太平洋戦争が勃発。昭和17年に入り、滋が獄死。その悲しみに追い打ちをかけるように、山崎に赤紙が届く。3年後、ようやく終戦となるが、山崎は戦死。久子は故郷の広島で被爆して亡くなっていた。そして現在。美術教師となった照美(戸田恵子)は、初子が医師として勤める病院に入院している佳代の容態が悪化したと聞き、病院に駆けつける。そして病床の佳代は、「死んでからじゃなく、生きている父べえに会いたい」と悲痛な言葉を呟くのだった。




14-29. 晴れ、ときどき殺人

監督 井筒和幸
出演 渡辺典子太川陽介松任谷正隆美池真理子伊武雅刀
1984年 (東映セントラルフィルム) 98分

解説
母の贖罪の為、コールガール殺しの真犯人を探さなければならなくなった女子大生の姿を描くユーモア・ミステリー。赤川次郎の同名小説の映画化で脚本は 「すかんぴんウォーク」 の丸山昇一、監督は 「みゆき」 の井筒和幸、撮影は浜田毅がそれぞれ担当。

ストーリー
アメリカ留学から戻ってきた北里可奈子は、母浪子の死の間際、ショッキングな告白を聞く。浪子は北里産業という巨大コンツェルンを一人で切り盛りしていた女会長であったが加奈子を殺すと脅迫されて、目撃したコールガール殺人事件の偽証をし、無実の人間に罪をきせ自殺に追いやってしまったというのだ。真犯人は北里家をとりまく身近な人間だという。浪子は自分宛ての葉書の筆跡からその人間に目星をつけたのだが、名を告げる直前に逝ってしまった。浪子の通夜、北里産業の雇われ社長で、この機会に会社を自分のものにと狙う円谷と、加奈子に婚約を迫り、執拗に追いまわすその息子正彦。無表情で何を考えているのか全くわからない浪子の秘書水原。主治医菊井和人など、続々と身近な人々が集まって来た。おそるおそる真犯人探しを始めた加奈子は、多田・安岡刑事の訪問を受けた。彼らが帰った後、彼女は突然の闖入者に気づく。上村と名乗るその若者は、殺人の疑いで警察に追われ、北里家に侵入して来たのである。上村は自分の無実を主張し、目撃した紋章入りライターから犯人は北里家に関係した人間だと告げた。しかも、その殺しの手口が半年前のコールガール殺人事件とソックリと聞いた加奈子は、上村を母が私室として使っていた秘密の隠し部屋に匿う。浪子が亡くなる前に葉書の筆跡を依頼していた興信所員・岩下が結果を持ってやって来たが、加奈子と会う前に書類を盗まれ殺されてしまう。上村が熱を出した。加奈子は昔、家庭教師をしてもらっていた菊井和昌に援助を頼む。彼は和人の息子で外科医をしていた。夜明け近く運び出すことに決めたところ、刑事が匿名電話で隠し部屋のことを知りやって来た。だが、その時には脅迫状を見つけた上村は逃亡していた。皆を帰した加奈子は、脅迫状を見て年賀状と照らし合わし、メイドの石田マリ子の部屋に向かうが彼女は殺されていた。屋敷の中、ひとりになった加奈子のもとに和昌が現われる。加奈子は安心するが、そこに飛び込んで来た上村は「だまされてはいけない」と言う。その時、加奈子は和昌から匂うマリ子が使っていたシャネルの香りに気づいた。真犯人は和昌でマザー・コンプレックスを笑われたための犯罪であった。マリ子は彼の愛人で連絡をとっていたのだった。上村と加奈子は、上村の作った人力飛行機で逃げるが、すぐに墜落してしまう。そこに刑事たちがやって来た。




14-30. 宮本武蔵(1954)

監督 稲垣浩
出演 三船敏郎八千草薫三國連太郎尾上九朗右衛門水戸光子
1954年 (東宝) 94分

解説
吉川英治の長編小説「宮本武蔵」の戦後最初の映画化作品で、「続宮本武蔵 一乗寺の決斗」(1955年)、「宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島」(1956年)へと続く3部作の第1作である。また、東宝初のイーストマン・カラー作品でもある。第28回アカデミー賞名誉賞受賞。

ストーリー
慶長5年(1600年)、美作国宮本村で「悪蔵」と呼ばれる乱暴者の武蔵(たけぞう)は、幼馴染の又八と共に村を抜け出し、雑兵として関ヶ原の戦いに参加した。侍としての出世を夢見る二人だったが、味方は惨敗。武蔵は負傷した又八を連れて、野武士の未亡人であるお甲と、娘の朱実が住む屋敷に転がり込んだ。
野盗の襲撃を一人で防いだ武蔵に惚れ、結婚を迫るお甲。だが、武蔵に相手にされないことに腹を立てたお甲は、又八と娘を連れて京の都へと旅立った。取り残された武蔵は、又八の母であるお杉に、又八の生存だけでも伝えようと故郷を目指した。だが、途中の関所で暴れたために、関所破りとして追われる身となる。捜索の目をかい潜り、お杉の屋敷にたどり着く武蔵。だが、お杉は、一人息子を戦場に連れ出した武蔵を憎み、役人に通報する。
宮本村に陣を張った役人は、武蔵を捕えるため、村人を総動員して山狩りを命じた。寺の沢庵和尚は、武蔵を説得するために、又八の許嫁であるお通を連れて山に入った。お通は、又八の母のお杉から、又八が帰らなくても嫁として家に入れと言い渡されていた。孤児であるお通は、この村にいる限り、形ばかりの嫁として生きなければならない。そんな身の上を嘆きつつ、笛を吹くお通。その笛の音に誘われて、現れる武蔵。
沢庵和尚に諭され、その人徳に感銘を受けた武蔵は、おとなしく捕われて村に戻った。だが沢庵和尚は、村の大木に武蔵を吊るし、何日も放置し続けた。わめきたてる武蔵。和尚に、ひどすぎると抗議するお通。実は和尚は、武蔵の首を引き渡せという役人を追い返していたのだが、事情を知らないお通は武蔵を助け、二人で村を出奔してしまう。
お通の裏切りに激怒するお杉。村の名家の誇りにかけて、お通と武蔵を切って捨てると宣言したお杉は、郎党を引き連れ、旅に出る。一方、武蔵とお通の行く末を案じた沢庵和尚は、武蔵を武人として鍛え上げる計画を立て、奇策を巡らす。





14-31. 続・宮本武蔵 一乗寺の決闘

監督 稲垣浩
出演 三船敏郎鶴田浩二堺左千夫平田昭彦藤木悠
1955年 (東宝) 103分

解説
生誕100周年を記念し、名匠・稲垣浩監督の名作の数々をニュープリント版で再上映する。 「続・宮本武蔵」 は、三船敏郎主演によるシリーズ第2作。京都を舞台に血みどろの死闘が展開。

ストーリー
黎明の広野に、鎖鎌の達人宍戸梅軒と戦って勝った宮本武蔵は、そのまま京への道を歩んで行く。その彼を追い求めているのはお通と朱実であった。やがて京の三条大橋に現われた武蔵は、そこで待ちわびて居たお通に逢った。そこへ吉岡道場の一味が現われ、武蔵はお通をかばいながら激しく斬り合ったが、それを橋上から眺めているのは物干竿と呼ばれる大刀を持った佐々木小次郎である。武蔵を見失ったお通は、清十郎に恥ずかしめられた朱実に出会ったが、二人共求める男が武蔵であることを知ると、朱実は嫉妬をあからさまに示した。その頃、修行の旅から帰って来た吉岡伝七郎は、兄清十郎の不甲斐なさに武蔵を討つ決心をしたが、逆に斬られてしまった。雪の夜、伝七郎を討ち、そっと廓に戻った武蔵の袖の血を、吉野大夫が懐紙で拭った。やがて武蔵と清十郎の対決する時が来た。一乗寺下り松では、門弟等大勢が武蔵をだまし討ちにしようと待ち構えていた。小次郎が立合いに来たが、その外お通と朱実もかけつけ、お杉と又八もそれを追った。やがて武蔵が現われ鉄砲が火を吹いた。いつしか二つの剣を持って戦う武蔵は手傷を負っていた。やがて門弟に謀られて遅れた清十郎もやって来て武蔵と対決した。武蔵の勝ちであった。谷川のほとりで傷を癒やす武蔵とお通。心をかき乱された武蔵はお通を枯草の上に倒した。驚き身を退けるお通、はッと我に返った武蔵は起き上って姿を消し去った。




14-32. 宮本武蔵 完結篇 決闘巖流島

監督 稲垣浩
出演 鶴田浩二岡田茉莉子三船敏郎桜井将紀上田吉二郎
1956年 (東宝) 104分

解説
吉川英治の原作を北条秀司が劇化、それを 「忘れじの人」 の若尾徳平と 「旅路(1955)」 の稲垣浩が・共同脚色し、同じく稲垣浩が監督、 「初恋三人息子」 の山田一夫が撮影を担当した。主なる出演者は 「応仁絵巻 吉野の盗賊」 の鶴田浩二、志村喬、 「生きものの記録」 の三船敏郎、 「青い果実」 の岡田茉莉子、 「俺は藤吉郎」 の嵯峨三智子、 「三四郎」 の八千草薫など。色彩はイーストマン・カラー。

ストーリー
旅僧日観から将軍家師範柳生但馬守に仕官するように勧められ、城太郎を伴って江戸へ出た武蔵は馬喰町の旅篭で、来る日も来る日も観音像を彫っていた。その頃、小次郎も細川候へ仕官のため、これも江戸に来ていた。お目見得の御前試合で、心ならずも相手を不具にした小次郎を慰めたのは家老岩間角兵衛の娘お光であった。ある日、武蔵と出逢った小次郎は対決を迫り、明日の再会を約して別れるが、翌日、果し合いの場所に城太郎が手紙を持って来た。試合を一年後に延期してくれというのである。城太郎と博労熊五郎をつれて旅に出た武蔵は、法典ヵ原に小屋をつくり、剣も鍬、鍬も剣なりと畑を耕すのだった。そんなある日、匪賊に襲われた男装の女を城太郎と熊五郎が救ったが、それはお通だった。その頃、江戸吉原の遊廓に身を沈めていた朱実は細川藩に仕官した小次郎から武蔵の消息を聞き、法典ヵ原に向かったが野武士に囲まれた。首領は辻風典馬の兄黄平、手下は祇園藤次の一味である。黄平は朱実を囮にして武蔵を討とうと図るが、却って武蔵に斬られ、朱実は藤次の匁にかかって死んだ。朱実を葬った武蔵に、豊前小倉へ赴任した小次郎から、舟島で試合をしたいと手紙が届いた。その当日、武蔵が舟から浅瀬におりると、小次郎が迫った。東の空が紅く染まり武蔵の背後に朝日が輝いた。小次郎の剣が円を描いて武蔵の鉢巻を斬った瞬間、武蔵の木刀が打ちおろされた。砂上に倒れた小次郎の顔には「勝った」という微笑がうかんでいた。船頭佐助の漕ぐ舟の上で、武蔵の眼から涙が流れ落ちていた。櫂の木刀が朝日に輝く浪に乗って流れて行く。





14-33. SPEC〜結〜漸ノ篇・爻ノ篇

監督 堤幸彦
出演 戸田恵梨香加瀬亮北村一輝栗山千明香椎由宇
2013年 (東宝) 181分

解説
“SPEC”と呼ばれる特殊な力を持った者たち(=SPECホルダー)と、特殊な事件を専門に扱う 「警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係」 の特別捜査官たちとの戦いを描く、戸田恵梨香 & 加瀬亮主演の人気ドラマの劇場版。特殊な力で世界を裏側から操ってきたSPECホルダーと警察との戦いに終止符が打たれる完結編(前編&後編)。

ストーリー
“時を止める”能力を持つ最強のSPECホルダーであり弟でもあるニノマエ(神木隆之介)との死闘を終えた当麻紗綾(戸田恵梨香)。瀬文焚流(加瀬亮)とともに、瀕死の状態で病室に担ぎ込まれ、2人の距離が縮まったかに思えたその頃。世界はある人物によって破滅へと向かっていた。SPECホルダーと人類の間で始まる人種間戦争。世界を揺るがすSPECホルダーたちによって、現人類の歴史に終止符が打たれようとしたその時。人類の危機を救うため、秘められていた当麻のSPECが目覚める……。




14-34. 就職戦線異状なし

監督 金子修介
出演 織田裕二仙道敦子的場浩司和久井映見坂上忍
1991年 (東宝) 103分

解説
激化する就職戦線を目の前にした学生たちが、その理想と現実に悩みながらも奮闘していく姿をユーモラスに描く青春映画。杉元伶一原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は 「咬みつきたい」 の金子修介。共同脚本は 「ハッピーエンドの物語」 の福田卓郎。撮影監督は 「渋滞」 の高間賢治がそれぞれ担当。

ストーリー
4月、ここ早稲田大学では「就職杯内定獲得レース」という内定目指して疾走する四年生を馬になぞらえ、後輩たちがどの馬が勝利を手にするか賭けていた。見どころはあるのにドC級な性格の大原、ひたすらマスコミに憧れ、クリエイティブな仕事にいい女にいい車を手に入れることを夢見る立川、学生ライターで大原に好意を抱く毬子、要領の良さと親のコネでしっかり超大手代理店の内々定をとっている北町。6月に入り、いまだに内定がひとつもとれない大原と立川をよそに北町は大原たちを六本木のゴージャスなナイトクラブに呼び出した。それは北町を確保しようとする某デパートの接待なのであった。そんな彼らに冷ややかな視線を送る中年男がいた。男は連れの女性・葉子を口説こうとしてフラレたばかりで面白くないのだ。売り言葉に買い言葉で男と殴り合ってしまう大原はその男をのしてしまう。就職戦線もクライマックスを迎える7月、5月に行われたエフテレビの企業セミナー(実は青田買い)で運を逃した大原と立川は、狭き門ではあるが本採用に賭けていた。ところがその面接官・雨宮は大原がナイトクラブで殴り倒した中年男だったのだ。イヤな予感がする大原だったが、その予感とは裏腹に彼は試験を次々と通過していく。そんな中でエフテレビのOLであった葉子とも再会し、好意を抱き始める大原。そんな様子を毬子は哀しげに見守るのだった。一方、前途洋々だったはずの北町は父親の急死によって故郷へ帰ることになり、マスコミ一辺倒であった立川もそんな自分の生き方に疑問を抱き、食品会社に入社してしまう。それぞれの思いが交錯する中、大原はここまで自分が残ったのは雨宮の陰謀であったと知り、落胆するが、毬子や葉子の助けもあり、何とか最終面接まで残ることになる。そして大原は内定を獲得するが、そのときにはじめてそこに自分のなりたいものがないことを知った大原は、エフテレビを捨てて自らの道を切り開いていくのだった。





14-35. 許されざる者

監督 李相日
出演 渡辺謙柄本明佐藤浩市柳楽優弥忽那汐里
2013年 (ワーナー・ブラザース映画) 135分

解説
第65回アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いたクリント・イーストウッド監督による名作を、日本を舞台にリメイクしたヒューマンドラマ。一度は戦う事をやめた男が、女郎の願いを聞き入れ、再び戦いの世界に身を投じるようになる姿をつづる。主演の渡辺謙をはじめ、柄本明、佐藤浩市ら、日本映画界きっての名優が顔を揃えた力作だ。

ストーリー
明治13年。開拓が進められている北海道に、かつて人斬り十兵衛との異名を持ち恐れられていた幕府軍残党・釜田十兵衛(渡辺謙)がいた。十兵衛は愛する女性と出会ってから刀をしまい、子どもをもうけた。幸せも束の間、妻は早世し、男は幼い子どもを抱えて貧しく厳しい生活をしていた。そこへ、かつての仲間がやってくる。そして、無残にも切りつけられた女郎のこと、街を牛耳る暴力的な支配者がその事件に関して深追いさせないこと、女郎は支配者に逆らい仲間たちとともに賞金を作り敵を討ってほしいと懇願していることを話す。十兵衛は自分のためではなく他の者のために、あらゆる覚悟を背負い、再び刀を手にするという苦渋の決断をする……。




14-36. 難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版8 詐欺師の運命

監督 萩庭貞明
出演 竹内力光石研石井トミコ大森嘉之石野陽子
1996年 (Softgarage) 81分

解説
竹内力主演、大阪ミナミの高利貸し・萬田銀次郎の活躍を描いた大人気シリーズの劇場版第8弾。

ストーリー
銀次郎は丸山医院の医院長夫妻に2000万円の借金を残して夜逃げされた。丸山の妻の母であるサヨに肩代わりを迫るが、断られてしまう。そんな時、早川という男が資産家のサヨから財産をだまし取ろうとしている情報をキャッチするのだが…。資産家の財産をめぐって、ヤクザと銀次郎が火花を散らす!





14-37. あずみ

監督 北村龍平
出演 上戸彩小橋賢児成宮寛貴金子貴俊石垣佑磨
2003年 (東宝(配給協力 日本ヘラルド映画)) 91/142分

解説
小山ゆう原作の同名コミックスを、人気アイドル、上戸彩主演で映画化。戦乱の時代を舞台に、過酷な運命を背負った少女の姿を、圧巻の戦闘シーンとともに描く時代劇だ。

ストーリー
戦乱の世、母を失い孤児となった少女・あずみ。戦を起こそうとする輩を事前に殲滅するための刺客を養成するよう徳川家康の側近・天海の密命を受けた月斎の下、剣の達人へと成長した彼女と9人の仲間に、ある日、旧豊臣恩顧の有力大名・浅野長政、加藤清正、真田昌幸の暗殺使命が下った。そして、月斎から与えられた「刺客として非情な心を植え付けるため、仲間と殺し合え」という最後の試練を乗り越えた、うきは、ひゅうが、あまぎ、ながらと共に外界へと旅立ったあずみは、首尾良く長政暗殺に成功。だが、次なる標的・清正襲撃に失敗した彼らに、清正の側近・勘兵衛が次々と攻撃を仕掛けてきた。そんな中、友と殺し合い、憎くもない敵を斬り、罪もない人たちを見殺しにしなければならない自らの過酷な宿命に疑問を抱いたことで月斎に見放されたあずみは、旅の途中で知り合った旅芸人のやえと行動を共にするが、やがて刺客としての血を目覚めさせると、清正の潜伏する蒲生へと乗り込んで行くのだった。月斎を人質に待ち受ける、狂気の剣士・最上美女丸との壮絶な戦い。美女丸を倒し、清正暗殺に成功したあずみは、生き残ったながらとふたり、真田昌幸暗殺へと向かうのだった…。





14-38. マザーウォーター

監督 松本佳奈
出演 小林聡美小泉今日子加瀬亮市川実日子永山絢斗
2010年 (スールキートス) 105分

解説
かもめ食堂」 「めがね」 「プール」 のプロジェクトによる、京都を舞台にしたドラマ。美しい水に恵まれた京都の町を舞台に、そこに暮らし始めた3人の女性たちの穏やかな日常をつづる。主演の3人を演じるのは小林聡美、小泉今日子、市川実日子。そのほか加瀬亮、もたいまさこら個性派俳優が顔を揃える。監督は新鋭の松本佳奈。

ストーリー
街の中を流れる大きな川、そしてそこにつながるいくつもの小さな川や湧き水。そんな確かな水系を持つ、日本の古都、京都に三人の女たちが暮らし始める。ウイスキーしか置いていないバーを営むセツコ(小林聡美)、疎水沿いにコーヒーやを開くタカコ(小泉今日子)、そして、水の中から湧き出たような豆腐を作るハツミ(市川実日子)。芯で水を感じる三人の女たちに反応するように、そこに住む人たちのなかにも新しい水が流れ始める。家具工房で働くヤマノハ(加瀬亮)、銭湯の主人オトメ(光石研)、オトメの銭湯を手伝うジン(永山絢斗)、そして“散歩する人”マコト(もたいまさこ)。そんな彼らの真ん中にはいつも機嫌のいい子ども、ポプラがいた。ドコにいて、ダレといて、ナニをするのか、そして私たちはドコに行くのか……。今一番だいじなことはナンなのか、そんな人の思いが静かに強く、今、京都の川から流れ始める……。





14-39. 運が良けりゃ

監督 山田洋次
出演 ハナ肇犬塚弘武智豊子倍賞千恵子安田伸
1966年 (松竹) 91分

解説
山内久と 「霧の旗(1965)」 の山田洋次が共同でシナリオを執筆、山田洋次が監督した時代喜劇。撮影もコンビの高羽啓夫。

ストーリー
春。向島山谷堀の裏長屋の住人たちは、貧乏ゆえにかえって傍若無人に、人間の姿を赤裸々に見せる。住人は左官の熊五郎、相棒の八、因業金貸しのおかん婆、それにクズ屋の久六、按摩の梅喜、頑固でお人好の差配源兵衛。そして八の女房とめと、熊の妹ではきだめの鶴と言われるせい。そんな中で近江屋の若旦邦七三郎は道楽息子ながら、長屋では唯一のエリートだ。せいは美人をみこまれて五万石のお大名赤井御門守に見染められ、お妾奉公にあがるばかりになっていたが、熊が酔払って話をぶちこわしてしまった。だがせいは、長屋に肥汲みに来る吾助に思いを寄せ、二人はいつかくさい仲となった。やがて、秋も近くなった頃、近江屋の主人守兵衛は、源兵衛に長屋の店賃値上げを厳命する。しかし長屋の連中は馬耳東風と聞き流す始末。だが店賃値上げに失敗した源兵衛は、責任を追及されてお払箱になる様子。こんな時に黙っていては江戸っ子の名がすたると熊が一計を考え出し、家主の近江屋がひっくり返る大騒ぎとなった。遂に町方に召捕られた源兵衛と熊のいない間に、冬がやって来た。政治の腐敗、経済の窮乏が庶民の身に沁みる季節だ。熊が入牢して既に二カ月が過ぎた。おかん婆さんは寒さも加わって衰弱し、誰の目にも死期がせまっていた。必死になって貯めた金を冥土まで持ってゆこうと、病床のおかんは、心をわずらわした。一方、間男の子をはらんだ八の女房とめの出産が迫り、死と生が長屋のすべてを支配した。おかんが死んだ。これを機会に年内立ちのきを命じる近江屋の過酷さに、また熊は立ちあがった。そのうちとめが男の子を産んだ。再び春がめぐって来た。吾助とせいの晴れの婚礼の日、あいかわらずバクチですってんてんの熊と八が、いちかばちかの賭けに、春の日射しをうけて一攫千金を夢みていた。




14-40. 刑事物語

監督 渡辺祐介
出演 武田鉄矢有賀久代仲谷昇北村和夫岡本富士太
1982年 (東宝) 110分

解説
長髪に膝の抜けたズボン、一見刑事には見えないが実は蟷螂拳の名手という異色刑事と聾唖者の娘の人間的な絆を通して、男のやさしさを描く。片山蒼(武田鉄矢のペンネーム=サンリオ刊)の原作を 「新宿馬鹿物語」 の渡辺祐介と武田自身が脚本化、監督は渡辺祐介、撮影はTV出身の矢田行男がそれぞれ担当。

ストーリー
七月、山笠祭りの暑い夜、博多署はあるソープランドを管理売春の容疑で不意打ち捜査した。刑事の片山元はそこで聾唖者の風俗嬢三沢ひさ子と出会った。翌朝、ガサ入れ失敗をマスコミは書きたてた。そのとばっちりが片山にまわってきて、沼津転勤が決まった。東京行きのブルートレインに片山とひさ子が乗っていた。ひさ子の悲惨な過去に同情した片山が身柄を引き取ったのだ。二人は兄妹ということで、市内の花園荘に住むことになった。そんな二人をじっと見ている二人がいた。村上努と秋吉一人だった。片山は早速、南沼津署に出勤し、連続殺人事件班に組み入れられた。ある日、信用金庫で強盗事件が起きた。片山は得意の蟷螂拳で犯人を取り押さえ、その男が連続殺人事件と繋がっていることをつきとめた。男は女性を売春組織に送り込む周旋屋だったのだ。さらに片山は九州時代の知り合いの老ヤクザ工藤からソープランドを根城にした大がかりな売春ルートの情報を入手、捜査班はソープランド「徳川」への強制捜査に踏み切った。だが、片山はそこで、重要参考人のクリーニング店「白美社」の店員を死亡させるというミスを犯してしまった。ひさ子の様子が変わったのはその頃だった。片山の問いに彼女は「スキナヒトガイル」と答えた。ひさ子に指一本ふれていない片山はショックだった。ある夜、片山は正体不明の三人組に襲われ、工藤の勧めで沢木と共にひさ子の身辺を見張ることにした。二日目、「白美社」の車が花園荘に近づき、ひさ子を連れ去った。売春組織の元締めである「白美社」が口封じのため、不要になった女たちを次々に殺していった。それが連続殺人事件の真相だった。怒った片山は組織の巣窟である「白美社」に乗り込み、一味の黒幕・秋吉と対峙、大乱闘の末一味全員を逮捕した。翌日、刑事課の喜びとは別に、威嚇とはいえ秋吉相手に実弾六発を射った片山はまたも転勤を命じられた。今度は青森である。片山と入れ替えに、北海道から三上刑事が沼津署にやってきた。表に出た片山を待っていたのは、ひさ子と村上努という、ひさ子と同じ境遇の工員だった。奈落から救ってくれた片山に感謝しつつも、懸命に逆境に生きる村上を愛さずにはいられなかったのだ。村上は、ひさ子を倖せにすると約束し、片山に許しをこうのだった。数日後、上野駅から一人淋しく青森行きの夜行列車に乗り込む片山の姿があった。




14-41. 思い出のマーニー

監督 米林宏昌
出演 高月彩良有村架純松嶋菜々子寺島進根岸季衣
2014年 (東宝) 103分

解説
イギリス人作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学を、スタジオジブリが舞台を北海道に移してアニメ映画化したファンタジー。海辺の村に住む夫婦に預けられた少女・杏奈と、不思議な雰囲気を持つ同い年の少女マーニーとの交流が描かれる。監督は 「借りぐらしのアリエッティ」 の米林宏昌。

ストーリー
北海道。12歳の杏奈(声:高月彩良)は、一見ごく普通の中学生だが実は大きな苦しみを抱えながら生きていた。そんなある日、海辺の村にひと夏を過ごしにやって来た杏奈は、美しい湿地の対岸に古ぼけた洋館を見つける。その屋敷に既視感を覚えた杏奈が村人に尋ねると、そこはもう何10年も人が住んでいない“湿っ地屋敷”だという。好奇心からひとりでボートに乗って屋敷を目指す杏奈だったが、誰もいないはずの屋敷の窓に明かりが灯り、同時に屋敷の方から「ロープをこっちへ投げて」と声が聴こえてくる。声の方に向かって杏奈がロープを投げると、そこには金色の髪、青い瞳、白いネグリジェを纏った裸足の少女が立っていた。彼女の名はマーニー(声:有村架純)。杏奈とマーニーはすぐに仲良くなり、ふたりは“湿っ地屋敷”で過ごすことになるが、その後、杏奈の身には次々と不思議な出来事が起こり始める。時を超えた舞踏会、告白の森、崖の上のサイロの夜……。やがてふたりの少女のひと夏の思い出が結ばれるとき、杏奈は思いがけない“まるごとの愛”に包まれていく……。




14-42. 難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版10 待つ女

監督 萩庭貞明
出演 竹内力古本新之輔竹井みどり石野陽子天田益男
1997年 (ケイエスエス) 86分

解説
竹内力主演、大阪ミナミの高利貸し・萬田銀次郎の活躍を描いた大人気シリーズの劇場版第10弾。

ストーリー
銀次郎に金を借りていた小野寺が詐欺に遭い、行方をくらましてしまう。銀次郎は小野寺を張るために、彼の妻である芸者・夢千代の下に涼子を送り込む。





14-43. ドロップ

監督 品川祐
出演 成宮寛貴水嶋ヒロ本仮屋ユイカ上地雄輔中越典子
2008年 (角川映画) 122分

解説
品川庄司の品川ヒロシが、大ヒットを記録した自伝的小説を自ら監督を務めて映画化した青春映画。不良の世界に飛び込んだ少年の成長を笑いとアクション満載で描き出す。

ストーリー
私立のお坊ちゃん学校に通っていたヒロシ(成宮寛貴)は不良に憧れて、公立の狛江北中学校に転校する。赤い坊主頭にボンタン姿のヒロシは、すぐに不良に目をつけられて、河川敷に呼び出される。そこで待っていた達也(水嶋ヒロ)は極悪非道で知られるカリスマ不良で、ヒロシはいきなり達也とタイマンを張らされることになる。ヒロシはがむしゃらに向かっていくが、全く歯が立たない。しかし、その根性と、口のうまい性格が気に入られ、ヒロシは不良グループの仲間入りを果たす。その他の仲間は、クールな森木(波岡一喜)、狂犬の異名を取るワン公(若月徹)、盗みの天才・ルパン(綾部祐二)。さらに、狛江西中学校のテル(坂本雅仁)も加わり、ケンカや悪さ、くだらないおしゃべりに明け暮れる日々が続いた。そんなヒロシのことを、姉のユカ(中越典子)の恋人で、工事現場で働く元不良のヒデ(上地雄輔)は優しく見守ってくれていた。ヒロシは、達也の彼女・ミユキ(本仮屋ユイカ)に密かに惹かれるようになる。達也はミユキに冷たく、別の彼女をつくったりしていた。ヒロシは、達也に振られたミユキを慰めるが、友達以上の関係には踏み出せなかった。翌年、最大の敵だった調布南中学校の赤城(増田修一朗)や加藤(住谷正樹)らとも和解し、卒業を迎える。卒業式をサボろうとしていたヒロシや達也は、ヒデの車に乗せられて式に出席する。卒業式を終えて、ヒロシはミユキに告白するが、あっさり振られる。春、ヒロシは高校に入学するが、初日から問題を起こし、退学になってしまう。そこで、ヒデと同じ工事現場で働くことにする。しかし仕事初日、達也に呼び出され、仲間のピンチを知らされる。ヒロシは姉の制止を振り切り、仲間の元に向かう。そのとき、誰も予想しなかった出来事が起こる。





14-44. 社長忍法帖

監督 松林宗惠
出演 森繁久彌久慈あさみ小林桂樹司葉子英百合子
1965年 (東宝) 95分

解説
「ホラ吹き太閤記」 の笠原良三がシナリオを執筆 「万事お金」 の松林宗恵が監督した社長シリーズ再開第一作目。撮影もコンビの鈴木斌。

ストーリー
岩戸久太郎を社長とする岩戸建設は業界Aクラス突入を目指して信義誠実をモットーに躍進していた。中でも技術部長の石川は社長から絶大な信頼を得て、北海道の真駒団地建設を一任されていた。そんなとき、北海道出発所主任の毛馬内がニュースを持って東京に現れた。天下の万才生命が札幌にビルを建てるというのだ。しかし万才生命はライバル東西組のお得意先だ。折も折常務戸樫が担当していた城南大学体育館の工事が、東西組の悪質な裏切りで獲得困難となった。こうなっては、岩戸建設も後へは退けない。報復手段に万才生命は貰ったと社員一同大ハッスル。その一番手をうけたまわったのが宴会好きの総務部長間々田。万才生命の社長武田が有名な女好きとわかると、早速武田社長御寵愛の芸者鈴千代を使って飲めや歌えの大騒ぎ。ところがこの作戦も、かんじんの北海道の団地工事が遅れているのがバレておじゃん。急拠石川が北海道へたった。札幌に着いた石川は、道産子毛馬内から浮気の相手にバー“まりも”のホステス百合子を紹介された。ところがこのマダムというのが社長岩戸のおなじみで、毛馬内と石川はバーがよいが続いた。が、そんなとき武田社長が北海道の別宅を訪れた。これを知った社長岩戸と常務戸樫は今がチャンスと北海道に武田を追いかけた。しかし武田は風邪で寝込んで面会謝絶。しかたなく東京に帰った岩戸にこんどは、愛人鈴千代がお色気攻勢。女房登代子のホコ先きをかわそうと、北海道出張を理由に家を出た岩戸だが、登代子が急用で北海道へきてしまった。大あわての岩戸はまたまた北海道へ。ここで折よく武田に会い夫婦そろって誠意の売込み。団地工事も石川の大車輪の活躍で完成した。この熱意が武田に認められ、万才生命ビルの工事は岩戸建設手におちた。





14-45. 必殺仕掛人 春雪仕掛針

監督 貞永方久
出演 緒形拳林与一山村聡岩下志麻夏八木勲
1974年 (松竹) 89分

解説
“必殺仕掛人”シリーズ三作目。次々と殺人を犯す強盗団に挑戦する仕掛人たちの活躍を描くサスペンス時代劇。原作は池波正太郎の同名小説。脚本は 「必殺仕掛人」 の安倍徹郎、監督は 「影の爪」 の貞永方久、撮影は 「宮本武蔵(1973)」 の丸山恵司がそれぞれ担当。

ストーリー
正月の雪の降る夜、漆器問屋の一家が惨殺された。この事件は、半年前、ここに後妻に入ったお千代が盗賊の首領であり、彼女の手引きによるものだった。この真相を知っているのは、昔は盗っ人で今は堅気となっている、お千代を育てた小兵衛だけだった。小兵衛は千代を立直らすには彼女の子分たち−−勝四郎、三上、定六−−を殺すしかないと考え、仕掛人音羽屋半右衛門に三人の始末を依頼した。半右衛門の命を受けた梅安は、まず、定六を風呂屋の中で殺した。そして、三上は小杉十五郎の剣に倒れた。次に勝四郎を狙った梅安は、勝四郎が千代の情夫であるのを知ると同時に、千代は、昔、自分が女にした女であることを知った。千代が次に目をつけたのは大阪屋で、そこの手代幸太郎の誘惑に成功するが、幸太郎は勝四郎に殺されてしまった。そんなある日、千代は梅安を尋ね、勝四郎殺害を依頼した。だが、これは千代と勝四郎の罠で、梅安は捕えられ、定六たちの殺しの依頼者を聞き出そうとする勝四郎の拷問を受けた。その時、梅安を救いに、小兵衛が現われ、自分は殺されてしまった。ある雪の夜、大阪屋の金蔵を勝四郎一味が襲った。しかし、金蔵の中に入っていたのは半右衛門と小杉。一転して修羅場と化した蔵の中で、盗賊たち、そして勝四郎が次々と死んでいった。一味の帰りを待つ千代の前に、梅安が立った。「梅安さんのお内儀さんになりたかった」とすがるように言う千代のうなじに、梅安の殺し針が突き刺さった。




14-46. THE 有頂天ホテル

監督 三谷幸喜
出演 役所広司松たか子佐藤浩市香取慎吾篠原涼子
2006年 (東宝) 136分

解説
脚本家・三谷幸喜の監督第3作は、大晦日のホテルを舞台にした群像コメディ。さまざまな事情を抱える男女23人が織り成す悲喜こもごもを描く。豪華俳優陣も話題に。

ストーリー
大晦日。高級ホテル・アバンティは新年を迎えるカウントダウンイベントを控えて賑わっていた。歌手に成る事を夢見、このホテルでベルボーイのアルバイトをしていた憲二(香取慎吾)は、夢を諦めて明日故郷へ帰ろうと決めていた。客室係のハナ(松たか子)はシングルマザーとして一人息子を育てていたが、母親としての自覚を未だ持てずにいる。息子の父親は汚職事件で世間を騒がしている国会議員・武藤田(佐藤浩市)であった。会社社長の愛人・なおみ(麻生久美子)が宿泊する客室の掃除をしていたハナは、誰も居ない隙に彼女の高級な毛皮を着て、子供を産まなければ今頃こんな毛皮を着て良い暮らしをしていたかもしれないと夢想していた。そこになおみを尋ねて来客があり、ハナは咄嗟になおみのふりをする。ホテルの副支配人である新堂(役所広司)はこの日たまたまホテルに宿泊していた元妻・由美(原田美枝子)と再会した。自分も宿泊客であり、今晩ホテルで行なわれる“ステージマン・オブ・ザ・イヤー”の表彰パーティーに招かれたのだと言ってしまう。彼はかつて芝居で身を立てる事を夢見ていたが、挫折してホテルマンに成ったのだった。今でも芝居を続けているとウソをついてしまう。カウントダウンイベントに出演予定の歌手・桜チェリー(YOU)は、所属事務所の社長に歌いたくない歌を押し付けられ、事務所の為に顧客と寝る事をも強要されていた。汚職疑惑の渦中にいる武藤田は、このホテルに身を隠している事をマスコミに嗅ぎ付けられてしまい、政治家としての進退を迫られていた。表彰パーティーが始まり、新堂は受賞者のふりをしてスピーチするが、“ステージマン”ではなく“スタッグマン”(鹿の交配技師)の表彰パーティーだった。しかも表彰されるはずだったのは由美の今の旦那であった。ホテルマンである事を恥じた事に自己嫌悪する新堂。自室で思い詰めていた武藤田は、自殺を決心して銃に手をかけたが、隣部屋から能天気な歌が聞こえて来て思いとどまる。憲二が宿泊客に頼まれて歌っていたのだった。客には才能が無いから歌なんてやめろと言われる憲二だが、武藤田には良い歌だとほめられる。なおみのふりをしていたハナは、彼女の境遇を知る。世間の眼を気にして愛する人と一緒になる事を諦めようとしている様なのだ。鉢合せになったなおみに、諦めると後悔する事になると告げたハナは、取って返してかつての恋人・武藤田の部屋を尋ね、汚名を被ってでも政治家を続けろと助言する。憲二は歌が歌えるだけ幸せじゃないかと桜チェリーを叱咤激励し、新堂はホテルマンとして武藤田をマスコミから守り切る事に成功する。カウントダウンイベントで誇らしく謡う桜チェリー。その姿を見て自らも歌を続ける事を決意する憲二。その傍らで息子に電話をかけるハナ。新堂は由美と相対し、今はホテルマンとしてがんばっている事を告げ、さっそくやって来た新年最初の客を出迎えに行くのだった。





14-47. 子猫物語

監督 畑正憲
出演 露木茂小泉今日子
1986年 (東宝) 95分

解説
様々な動物たちと出会い、別れながら成長していく茶虎の子猫の姿を描く。脚本、監督は北海道に動物王国を持つムツゴロウこと作家の畑正憲。協力監督は 「ビルマの竪琴(1956)」 の市川崑。撮影は 「犬死にせしもの」 の藤井秀男と富田真司がそれぞれ担当。

ストーリー
早春の北国、牛舎の中で母猫に抱かれている子猫たち。その中の一匹、茶虎のチャトランが脱け出て来て、土間に転落した。腕白ざかりのチャトランの親友は小犬のプー助。二匹はぐんぐん大きくなっていく。ある日、プー助と遊んでいたチャトランは、川辺の木箱に入り込んだ。突然、木箱は流れ出し滝つぼを落ちて行った。驚いたプー肋は助けようとするが泳ぎが大の苦手。必死に流れていく方へ走って行き木箱を見つけるが、チャトランの姿はなかった。その頃、やっと岸に上がったチャトランは森の中を歩いていた。キタキツネが砂に埋めた食料を失敬しようと思ったが、カラスに邪魔されて失敗。野原を馬の背中に乗って散歩したり、ワタスゲの原っぱで子鹿と遊んで一緒に昼寝したりと過ごす。夜、森の中でチャトランは怪我をした子豚に出会う。優しく舐めて元気づけ、朝になって子豚を送って行くと、御礼にと母豚が子豚の兄弟と一緒にお乳を飲ませてくれた。水辺にたどりついたチャトランは、一計を案じた。尻尾を水にたらして喰いついた魚を釣り上げたのだ。だが喜んだのもつかの間、アライグマに横取りされてしまう。草原の木立ちに登ったチャトランは、プー助の姿を見つけた。二匹はやっと巡り逢うことができた。牧場で病気の子牛にカラスが群がっている。プー助がカラスを追い払いに行く。再びプー助と離れてしまったチャトランは、海辺の絶壁で飛びかう鴎の子供を狙う。だが、母鳥に襲われ追いつめられて絶壁から落ちる。ずぶ濡れになって砂浜から上がり、番小屋でひと休みするチャトラン。そこに熊が襲って来るがタンスの中に隠れて危機を逃れた。暫くして、今度は蛇に追いつめられ深い穴の中に落ちてしまう。這い上がろうとするが全く無理、そこへロープを垂らし、引っばりあげてくれたのはプー助だった。秋になり、チャトランとプー助が遊んでいると一匹の白い牝猫が現われた。白猫に寄り添いじゃれ合うチャトラン。置き去りにされたプー助は、もう子供のままでいられないことを感じて寂しく去って行く。やがて冬が来た。白猫とチャトランの愛は深まっていく。春になり、桜が咲き乱れるなか、チャトランそっくりの子猫たちが遊んでいる。そこに、プー助が彼の家族を連れてやって来た。





14-48. たそがれ清兵衛

監督 山田洋次
出演 真田広之宮沢りえ田中泯岸惠子伊藤未希
2002年 (松竹)

解説
藤沢周平の人気時代小説を「男はつらいよ」の山田洋次監督がリアルに映画化。幕末を舞台に、名もない下級武士の正直な生き方と、家族の絆をしみじみと描く感動作だ。

ストーリー
幕末、庄内・海坂藩の下級藩士・井口清兵衛は、妻に先立たれた後、幼いふたりの娘と年老いた母の世話、そして借金返済の内職の為に、御蔵役の勤めを終えるとすぐに帰宅することから、仲間から”たそがれ清兵衛“とあだ名されていた。ある日、かつて想いを寄せていた幼なじみで、酒乱の夫・甲田に離縁された朋江の危難を救ったことから、剣の腕が立つことを知られた彼は、藩命により上意討ちの手に選ばれてしまう。秘めていた想いを朋江に打ち明け、一刀流の剣客・余吾の屋敷を訪れた清兵衛は、壮絶な戦いの末に余吾を倒す。その後、朋江と再婚した清兵衛。だが仕合わせも束の間、彼は戊辰戦争で命を落とすのだった。