j16-1. 映画 暗殺教室

監督 羽住英一郎
出演 山田涼介菅田将暉山本舞香竹富聖花優希美青
2015年 (東宝) 110分

解説
週刊少年ジャンプで連載の松井優征による人気コミックを実写映画化。地球を破壊する力を持ちながら、中学校の教師となった謎の生物、殺せんせーと政府からその暗殺を依頼された中学生たちが繰り広げるユニークな攻防を描く。Hey! Say! JUMPの山田涼介のほか、菅田将暉、山本舞香らが落ちこぼれの中学生に扮する。

ストーリー
進学校として名高い椚ヶ丘中学の中でも落ちこぼれとされている3年E組の担任教師として、タコ型の謎の生物が赴任する。この生物は来年の3月に地球を破壊すると予告しており、E組の生徒たちは国家からこの生物を暗殺するよう依頼を受ける。提示された成功報酬は100億円。ターゲットとなった謎の生物は、生徒たちから『殺せんせー』と呼ばれ、思わぬところで生徒思いの面を見せる。果たしてこの生物の目的とは……。




16-2. 可愛い花

監督 井田探
出演 伊藤エミ伊藤ユミ松下達夫相馬千恵子岡田眞澄
1959年 (日活) 49分

解説
ザ・ピーナッツのヒット曲を背景した歌謡映画。 「おヤエの女中の大将」 の高橋二三の脚本を、 「海の罠」 のコンビ井田探が監督し、柿田勇が撮影した。

ストーリー
ペルマン化粧品会社の女社長荒谷しずえは、一人娘のユミがテレビでコマーシャル・ソングを歌っているのを発見して烈火の如く怒った。早速秘書を使ってユミを捕えにやったが、流行歌手志望のユミは姿をくらましてしまった。しずえは新東京興信所の腕利き調査員岡本ミヤを雇いユミの行方を探した。ミヤの夫、岡本信一はミサイルレコードのディレクターだが大失敗をしてしょげていた。というのは現在人気最高のアトミック・レコードの看板歌手平田昌彦がまだ芽の出ない頃テストを受けに来たのを、岡本が先見の明もなく追い帰したのである。株気違いの岡本はラジオの株式市況に熱中して平田の歌をきかなかったのであるが、怒った社長は平田に優る新しいタレントを発見しないとクビにすると岡本に宣言した。その時往年の人気歌手竹下竜一が娘のエミをつれてテストを頼みに来た。岡本はエミに失望した。しかしその時エミに瓜二つのユミが飛びこんで来た。ユミとエミは竹下としずえの間に出来た姉妹だったが、しずえと竹下が別れたために二人の姉妹は離れ離れに育ったのである。二人は両親の仲直りを計ったが、竹下もしずえも頑固にゆずらず、姉妹は家をとび出して独立すると宣言した。歌手志望の夢を捨て切れないエミは妹のユミをつれて再び岡本を訪ねてテストを頼んだ。社長命令の新しいタレントも見つからずいらいらしていた岡本はしぶしぶテストを引受けたが、やはり耳はラジオの株式市況に傾いていた。その時ユミとエミの素晴らしいデュエットが聞こえて来た。ニューボイス現れたとばかり岡本は社長と契約の話をすすめた。しかし姉妹に契約書を差出したのはアトミックレコードの平田だった。これは岡本にレコード会社を辞めさせようとするミヤの差金であったのだが、何もしらない姉妹がサインしてしまったため岡本は完全にクビを宣言されてしまった。エミとユミの“ザ・ピーナッツ”は売り出した。二人の記念公演にとどけられた特大の花輪はあれ以来株で大儲けした岡本からのものだった。ミヤとも仲直りした。竹下としずえもむつまじく姉妹の歌う「可愛い花」にきき入っていた。




j16-3.

監督 阪本順治
出演 藤山直美佐藤浩市豊川悦司大楠道代國村隼
2000年 (東京テアトル) 123分

解説
 喜劇界を代表する女優、藤山直美主演、 「どついたるねん」 の阪本順治監督による人間ドラマ。殺人を犯した女性の逃避行を、人間味とユーモアを織り交ぜて描く快作。

ストーリー
1995年1月。幼い頃から家に引きこもっている正子は、母親が営むクリーニング店の二階で洋服のかけはぎの仕事をしながらひっそりと暮らしていた。ところが、そんな彼女の生活が母親の急死で一変する。通夜の晩、正子は仲の悪かった妹・由香里をはずみで殺害。香典袋を手に、35年間閉じこもっていた家を飛び出した。突然の大地震も手伝って逃亡に成功した正子は、離れて暮らす父親の行方を探してやって来た大阪を経て、やがて別府へ流れ着く。そこで、親切な中年女性・律子に拾われた彼女は、律子の店でホステスとして働くことになるが、その仕事はそれまで内向的だった彼女の内面を変えていった。そして、いつしか生きる意欲を見出すようになった正子は、池田という男にも秘かな想いを寄せるようになる。だが、律子の弟でヤクザ者の洋行が殺され、店に警察の捜査が入ったことから、彼女は再び逃亡生活を余儀なくされる。律子や池田に別れを告げ、小さな離島へ逃げる正子。しかし暫くすると、そこへも警察の追っ手は迫ってきた。捕まってなるものか。必死に逃げようと海へ飛び込んだ正子は、やっと覚えた平泳ぎで泳ぎ出す。




j16-4. アルゼンチンババア

監督 長尾直樹
出演 役所広司堀北真希森下愛子手塚理美岸部一徳
2006年 (松竹/キネティック) 112分

解説
「キッチン」 「つぐみ」 以来となる、よしもとばななの傑作小説の映画化。家族を失った悲しみから再生する父娘を役所広司と堀北真希が演じる。父娘の絆をファンタジックにつづった感動作。

ストーリー
警官も、うなぎやも、酒屋も、みんな幼なじみのような小さな田舎町。仲の良い三人家族がいた。しかし、イルカの島で過ごした楽しい日々の思い出を残して母が死んでしまう。母を愛し、仕事一筋であった墓石彫りの父・悟(役所広司)は、何故かその日に限って病院に顔を出さず、突然姿を消してしまった。取り残された一人娘のみつこ(堀北真希)。半年後、父は変わり者の女性の屋敷で発見された。そこは広い草原にぽつんと佇む小さな田舎町の中の異国。そこには、昔はタンゴやスペイン語を教えていたが、今はちょっと頭がおかしくなって怪しい呪文を唱えているとみんなが噂する謎の「アルゼンチンババア」(鈴木京香)が住んでいた。母親の供養もほったらかして何で父親がそんな女のもとに? みつこは勇気を奮い起こして、父親奪還に向かう。気のいい町の人々も巻き込んで父親をまともな世界に取り返そうと奮闘するみつこ。しかし、そんなみつこが目にした屋敷内部の光景は、温かな陽だまりのように気持ちよく、不思議に幸せな空気が満ちているものだった。そして父親はそこの屋上で毎日こつこつと奇妙なものを制作しながら、少しずつ妻の死の痛手から回復しているようだった……。




16-5. 君を忘れない

監督 渡邊孝好
出演 唐沢寿明木村拓哉袴田吉彦反町隆史池内万作
1995年 (日本ヘラルド映画)

解説
戦争という暗く悲しい時代を、明るく懸命に生き抜いた7人の若きゼロ戦乗りたちの、恋と友情を描いた青春物語。監督は 「居酒屋ゆうれい」 の渡邊孝好。脚本は 「エンジェル 僕の歌は君の歌」 でも渡邊と組んだ長谷川康雄。撮影監督は 「サンクチュアリ」 の高間賢治がつとめ、キャストには 「高校教師」 の唐沢寿明、 「シュート!」 の木村拓哉ほか豪華なメンバーが顔を揃えている。

ストーリー
1945年、蓑屋航空基地。海軍の若きエリート大尉・望月晋平は軍の特攻作戦への反発から腕のたつパイロットを育てるため、自ら隊長となり302特別飛行隊を組織した。しかし、部下として集まってきたのは、水を飲んでも太ってしまうという肥満体で高所恐怖症の高松一飛曹、ジャズをこよなく愛し唯一の慰めとして常にハーモニカを持ち歩く佐伯少尉、東京帝大出で反戦主義者の早川少尉、輝かしい戦績を挙げながらも心に傷をもち続ける軍国少年・三浦少尉、整備兵上がりで飛行機マニアの森一飛曹、海軍兵学校をトップで卒業し、望月の後輩でありながら彼との確執を隠しきれない上田少尉と、いずれもかなりの変わり者ばかりだった。しかも、上田と三浦以外はとてもパイロットと呼べるような操縦技術の持ち主ではなかった。しかし、激しい飛行訓練を通じて、始めはバラバラだった七人の心には少しずつ連帯感が生まれていた。そんな日々の中で、早川は偶然連れられて行った遊郭の娘・緑と激しい恋に陥ちる。戦火はますます激しくなり、他の隊の仲間たちは軍からの特攻命令を受け、次々と飛び立っていった。望月の別れた恋人・志津子に想いを寄せ、事あるごとに望月と対立し続ける上田は、特攻という作戦の必然性について望月に激しく問いかけるが、彼は何も答えようとはしない。ある日、302特別飛行隊に三日間の休暇が伝えられる。佐伯は残してきた妻子と金網ごしの再会を果たし、三浦は遠く秋田から祖母を迎えた。不安と苛立ちから、早川は夜中に隊を抜け出し、緑の元へと走る。切ない思いで緑は一緒に逃げてと早川に訴えるが、早川は脱走兵として捕らえられてしまう。望月は自分の使いで早川を町に出したと嘘をついてかばうのだった。七人が揃い、ついに出撃の日がやってきた。その前夜、望月は隊員たちの部屋を訪れ、初めて様々な自らの思いを語った。沈黙の後、高松は「俺はみんなのこと忘れませんから。ずっと覚えてますから」と答えるのだった。出撃の朝、望月は一つの苦しい決断を迫られていた。父であり上官でもある望月中将に呼び出され、戦果確認のために一機だけ帰還させるようにとの命令を受けていたのだ。望月は自分が残るよう父に命じられていたが、古いピアノで優しくメロディを奏でる佐伯を見て決心する。佐伯を指名した望月は、抵抗して暴れる彼の手のひらに弾丸を打ちこんだ。望月は操縦桿を握れなくなった佐伯に、生き残ってこの戦争のことを息子に話して聞かせてやれと頼むのだった。そして、佐伯を除いた六人は笑顔で戦闘機に乗り込み、青空へ向かって飛び立っていった。




j16-6. エイプリルフールズ

監督 石川淳一
出演 戸田恵梨香松坂桃李ユースケ・サンタマリア小澤征悦菜々緒
2015年 (東宝) 120分

解説
「リーガルハイ」 の監督&脚本コンビによる、戸田恵梨香、松坂桃李ら出演のコメディ。4月1日、1年に1度嘘をついてもいい“エイプリルフール”を舞台に、対人恐怖症の妊婦、SEX依存症の天才外科医など個性豊かな27人の登場人物たちが何気なくついた嘘が次第に大きなトラブルへと発展していくさまがつづられる。

ストーリー
2015年4月1日エイプリルフール。1年に1度だけ嘘をついていいこの日、街は朝から様々な嘘で満ち溢れていた……。〈イタリアンレストランでの大惨事〉対人恐怖症の清掃員・新田あゆみ(戸田恵梨香)は、一夜限りの関係を持った天才外科医・牧野亘(松坂桃李)に妊娠を告白。エイプリルフールの悪い冗談と掛け合わない亘に業を煮やし、亘のいるイタリアンレストランへ向かう。その頃、亘は美貌のキャビンアテンダント・麗子(菜々緒)とランチデート中。“フロアで起きることは私の責任です”がモットーの接客係(ユースケ・サンタマリア)とオーナーシェフ(小澤征悦)は、今日も爽やかに業務をこなしていたが……。〈ロイヤル夫妻の休日〉櫻小路夫妻(里見浩太朗&富司純子)は、ショッピングや初めてのハンバーガーショップ、ゲームセンターでお忍びデートを満喫中。だが、案内を任されたリムジン運転手(滝藤賢一)やハンバーガーショップ店長(古田新太)、アルバイト女子(木南晴夏)など周囲に驚異を与えるばかり……。〈不器用な誘拐犯〉昔気質のヤクザ・宇田川勇司(寺島進)は、小学生の少女・理香(浜辺美波)を誘拐するが、その一部始終を多くの人に目撃されていた。あまりにも不器用な犯行の上、身代金の要求もしなければ脅しもしない。そんな中、理香の母・絵里子(山口紗弥加)は犯人の似顔絵を見て絶句する……。〈占い老婆の真実〉過去にトラウマを抱えた刑事・小野(高嶋政伸)は、不運続きの救急隊員(岡田将生)から除霊師の老婆(りりィ)が大金を巻き上げている事を掴み、連行する。取り調べ中、友人から人質事件が起きたと通報があるが、毎年エイプリルフールに嘘をつかれているので小野は全く取り合わない……。〈42年ぶり涙の生還〉11歳の時、父親と漁に出て遭難、行方不明になっていた男(生瀬勝久)がムジャンガ島で発見され、42年ぶりに帰国する。やがて神社への参拝を1日も欠かさなかった幼馴染(千葉雅子)と涙の再会を果たすが……。〈僕は宇宙人〉ブラスバンド部に所属する宇宙好きの中学生(浦上晟周)は、いじめが原因で不登校になってしまう。ある日、何気なく見たホームページで自分が宇宙人だと確信した彼は、宇宙船との交信に全精力を費やす……。〈ある大学生の行末〉松田(窪田正孝)と梅田(矢野聖人)は、同じ大学へ通う友人同士。特に何をするわけでもなく、いつも二人でつるんでいた。そんなある日、梅田はずっと抱えていた思いを松田に告白。友人だった二人の関係を壊してしまう可能性もある事実だったが、それを超える真実が松田から告げられ……。そしてエイプリルフールの1日の終わり、全ての嘘が絡み合い、最高の奇跡を起こす……。




j16-7. 晩春

監督 小津安二郎
出演 笠智衆原節子杉村春子青木放屁宇佐美淳也
1949年 (松竹) 108分

解説
第一回の山本武のプロデュースで、広津和郎原作の 「父と娘」 より 「女性の勝利」 の野田高梧と 「風の中の牝鶏」 小津安二郎が協同脚色して、小津安二郎が監督に当る。キャメラは 「風の中の牝鶏」 と同様に厚田雄春が撮影に当る。主演には 「森の石松(1949)」 の笠智衆 「青い山脈(1949)」 「お嬢さん乾杯!」 の原節子の他に、 「朱唇いまだ消えず」 の杉村春子、 「君待てども」 の宇佐美淳、 「深夜の告白」 の三宅邦子 「恋の十三夜」 の月丘夢路、 「君待てども」 の三島雅夫をはじめ、坪内美子、桂木洋子らがそれぞれ助演する。

ストーリー
曽宮周吉は大学教授をしながら鎌倉に娘の紀子と二人で住んでいた。周吉は早くから妻を亡くし、その上戦争中に無理した娘の紀子が身体を害したため長い間父と娘は、どうしても離れられなかった。そのために二七歳の年を今でも父につくし、父は娘の面倒を何にくれとなくみてやっていた。周吉の実妹、田口まさも曽宮家に出入りして彼等の不自由な生活の一部に気をくばっていた。このごろでは紀子も元気になり、同級生であり友達でもある北川アヤと行来していた。アヤは一たん結婚したが、夫の悪どい仕打ちに会い今では出もどりという処。また周吉の助手をしている服部昌一も近々結婚するという。気が気でないまさは、何んとかして紀子を結婚させようとするが、紀子は首を縦にふらなかった。一度は助手の服部と紀子を結ばせようと考えていた周吉とまさは、服部にはすでに許婚があると聞いて思い直し、新に候補者をすすめるのであった。一方周吉と昔から親友である小野寺は、京都の大学教授をやっていた。たまたま上京した際、紀子に後妻をもらったと言って、不潔であると言われた。紀子はそれから父の動きをそれとなく伺っていた。叔母のまさは茶会で知った三輪秋子という美しい未亡人を心の中で兄の周吉にと考えていた、それを紀子に、彼女の結婚を進めながら話してみたが、紀子は自分の結婚よりも父の再婚に気をとられていた。紀子はそれからというものはなんとなく変っていった。北川アヤには結婚しなさいと言われても、気がますますいらだってくる。ある日紀子は父に再婚の意志を聞き正してみた。父は再婚するという返事たっだ。紀子はこのまま父と二人で暮したかったが、自分の気持がだんだん弱くなって行くのを知った。叔母のまさに承諾を与えた紀子は、最後の旅行を父と共に京都に赴いた。京都では小野寺一家の暖い家庭のフンイ気につつまれて、紀子がいつか小野寺の叔父に言った「不潔」と言う言葉を取り消した。京都から帰った紀子はすぐ結婚式をあげた。周吉は娘の紀子を新婚旅行に送ったあと、北川アヤに再婚するのと聞かれ、「ああでも言わなければ紀子は結婚せんからね」と答えるのであった。彼は一人五十六歳の身を今はさびしい鎌倉の吾が家にがっかりした様にいつまでも身を横たえていた。




j16-8. ペコロスの母に会いに行く

監督 森崎東
出演 岩松了赤木春恵原田貴和子加瀬亮竹中直人
2013年 (東風) 113分

解説
岡野雄一のエッセイ漫画を原作に 「ニワトリはハダシだ」 の森崎東監督が映画化。認知症の母親とその息子のおかしくも切ない日常を綴る。出演は 「川の底からこんにちは」 の岩松了、TVドラマ 「渡る世間は鬼ばかり」 の赤木春恵、 「長い散歩」 の原田貴和子、 「はじまりのみち」 の加瀬亮、 「ソウル・フラワー・トレイン」 の大和田健介。

ストーリー
長崎生まれの団塊世代、岡野ゆういち(岩松了)は、漫画を描いたり音楽活動をしたりと趣味にうつつを抜かし、仕事に身が入らないダメサラリーマン。小さいたまねぎ“ペコロス”に似たハゲ頭のゆういちは、今日もライヴハウスでオリジナルソングを歌い上げて悦に入っている。そんなゆういちの母・みつえ(赤木春恵)の認知症が始まったのは、夫のさとるが亡くなった頃からだった。それから10年、ある時はさとるのために酒を買いに出たところを孫のまさき(大和田健介)に見つけられて連れ戻され、またある時はゆういちが帰ってくるのを駐車場で待ち続けて危うく轢かれそうになった。さらに、箪笥の引き出しから汚れた下着が大量に出てきたこともある。ケアマネージャーに勧められたゆういちは、悩みながらも、みつえを介護施設に預けることにする。そこは老人たちが皆で歌を合唱するような明るい雰囲気のグループホームだった。女学生時代に戻って恋をしているらしいまつ、誰にでもアメをねだるユリ、隙あらば美人介護士の胸を揉む洋次郎など、個性豊かな面々がみつえを歓迎する。しかし、みつえは「“ふせ”(当て布をして繕うこと)ばせんといかん」と部屋にこもり、他の人の目には見えない縫い物をし続けるのだった。みつえは10人きょうだいの長女として育った。畑仕事でボロボロになった弟や妹たちの服を毎日縫うのがみつえの仕事。結婚後もさとるが給料の全てを酒に使ってしまい、さとるの背広やゆういちたち子供の服は“ふせ”だらけとなっていた。そんな中、みつえの記憶は少しずつ過去へ遡っていく。ある日、みつえは、さとるや幼なじみのちえこ、8歳で亡くなった妹のたかよが会いに来たとゆういちに語る。ゆういちは「ボケるとも悪かことばかりじゃなかかもな」と思い始めるのだった……。





j16-9. サクラサク

監督 田中光敏
出演 緒形直人南果歩矢野聖人美山加恋藤竜也
2014年 (東映) 107分

解説
「眉山」 「アントキノイノチ」 など、その著作が続々と映画化されるなど、小説家としても活躍するさだまさし。彼の短編小説を 「利休にたずねよ」 の田中光敏が映画化したヒューマンドラマ。祖父が老人性認知症を患ったのを機に、その記憶をたどる旅に出た家族が再び絆で結ばれていく姿が描かれる。

ストーリー
大手家電メーカーに勤める大崎俊介(緒形直人)は、部下からの信頼も厚く重役への出世も目前、生活は順風満帆なように思えたが、その家庭は多くの問題を抱えていた。妻・昭子(南果歩)との関係は冷え切り、二人の間には何年もろくな会話がない。息子の大介(矢野聖人)は、大学受験に失敗してからアルバイトを転々、家に帰っても逃げるように自分の部屋に閉じこもり、高校生の娘・咲子(美山加恋)は毎晩帰りが遅く、俊介の忠告も聞かず何を考えているのかわからない。俊介が仕事に追われている間、家族は確実にバラバラになりかけていた。そんな中、俊介の父・俊太郎(藤竜也)が老人性認知症を患い、大雨の夜、徘徊しているところを警察に保護され、この日を境におかしな行動が増えていく。苦しむ俊太郎を見ても家族は見て見ぬふりで、一切助けようとはしない。薄情な家族に俊介は大きく失望し、孤独な父を守ろうとひとり奮闘するが、ある日、大介が人知れず俊太郎を介護していたことを知る。家族の事を何も考えないと思っていた息子の優しさあふれる行動を見て、俊介は家族のことを見ようとしていなかったのは自分の方だったと初めて気付かされる。ある晩俊介は、俊太郎の遠い過去の物語を聞く。「家族と暮らした思い出は、敦賀のあのお寺だけだ。春、桜の花が満開で美しかった……」曖昧な様子で、それでもしっかりとした口調で大事そうにその思い出を語る俊太郎。俊介は、そんな父の遠い記憶を探すため、家族を見つめてまたやり直すためにある決意をする。やがて一家は一台のワゴン車に乗り込み、俊太郎の思い出の地を目指し、皆で初めての旅に出るのだった……。




j16-10. 悪名

監督 田中徳三
出演 勝新太郎田宮二郎中村玉緒中田康子二代目水谷八重子
1961年 (大映) 94分

解説
この作品は、現在、全国のあらゆる新聞、雑誌の連載小説中でも最も人気高く、 「週刊朝日」 に連載中の今東光の同名小説の映画化で、 「小太刀を使う女」 の依田義賢が脚色。 「鯉名の銀平(1961)」 の田中徳三が監督。撮影は 「沓掛時次郎(1961)」 の宮川一夫。

ストーリー
河内の百姓の伜朝吉は無類の暴れ者で“肝っ玉に毛の生えた奴”と恐れられていたが、盆踊の晩、隣村の人妻お千代と知りあって有馬温泉へ駆落した。しかし働きに出るお千代を、ゴロゴロ待っている朝吉は次第に退屈し、彼女が酔客と戯れているのを見たのをシオに大阪に帰った。彼はそこで幼馴染の青年達にあい、そのまま松島遊廓にくりこんだ。琴糸という源氏名の女は朝吉にぞっこん惚れ込んだ。その晩連れの青年が酔った勢いで土地の暴れん坊、モートルの貞と悶着を起し、彼らと貞は翌朝対決する羽目になった。しかし機敏な朝吉の働きで貞は散々に打ちのめされた。この時現れた貞の親分吉岡の客分として一家に身を預けた朝吉は、喧嘩やバクチ場で無類の強さを示し、貞も次第に彼にひかれた。そんな時、朝吉と馴染を重ねていた琴糸が逃げて来た。松島一家を恐れて匿うことを渋った吉岡の薄情さを怒った貞は、杯を叩き返し朝吉を親分と立て、一家を去った。琴糸は吉岡の隣のお絹の家に匿われていたが、松島一家に捕えられて因島へ売られてしまった。朝吉と貞は対策を練るが、その夜かねてから朝吉を好いていたお絹は“妻にする”という証文をかかせて身を任せた。二、三日お絹と甘い生活を送っていた朝吉は、貞の仕入れたピストルと軍資金を得て因島にのりこんだ。そして、わざと別の宿をとった貞は、毎晩琴糸のいる大和楼に、素姓を隠した大尽遊びを続けて手筈をつけ、琴糸をうまく朝吉に渡した。船で沖へ出た朝吉は潮に流されてまた港へ戻されてしまった。万事休した彼は度胸をきめて琴糸と貞と三人、旅館の大広間に立籠った。その時、この島の王様シルクハットの親分が、子分大勢をひきつれて琴糸を渡せと迫って来た。さすがの朝吉も顔面蒼白となり、ピストルで親分の心臓を狙った。そこへこの旅館の主で、子分二千人を持つ島の女王麻生イトがでてきた。自分の持ち家に筋を通さずのりこんできたシルクハットの無礼をなじり、仲裁をかって出た。仲裁の儀も滞りなく成立し、自由になった琴糸を中に、朝吉と貞はイト等に見送られて港を離れた。





j16-11. サマータイムマシン・ブルース

監督 本広克行
出演 瑛太上野樹里与座嘉秋川岡大次郎ムロツヨシ
2005年 (東芝エンタテインメント) 107分

解説
「踊る大捜査線」 シリーズの本広克行監督が放つSF青春劇。謎のタイムマシンで今日と昨日を行き来する大学生の騒動をコミカルに描く。主演は瑛太&上野樹里。

ストーリー
夏休み中のとある大学のグラウンド。炎天下の中、「SF研究会」の男子学生が野球をしている。ピッチャー小泉(川岡大次郎)大暴投、空振りする甲本(瑛太)。新見(与座嘉秋)はボテボテのゴロをトンネル。代わったピッチャー石松(ムロツヨシ)は、力強い投球でバッター曽我(永野宗典)にデッドボール。そんなユルい風景をカメラクラブの女性部員・伊藤(真木よう子)が写真に収めている。いつもと同じ、夏のけだるい一日。SF研の部室には様々なオモチャやゲーム、石松があちこちから集めてきたガラクタが所狭しと置かれている。みなSFの研究などせずに、クーラーのある部室で涼みながら、だらりと夏休みを過ごしているのだった。その奥にはカメラクラブの暗室があり、もう一人の女性部員・柴田(上野樹里)は来月のグループ展に向けて、SF研の顧問で大学助手の保積(佐々木蔵之介)の顔のアップを撮影している。5人は運動のあと、各自マイ洗面器を持っていつもの銭湯へ。すると新見が突然、愛用の「ヴィダルサスーンがない!」と騒ぎ出す。誰が取ったのか結局分からず、風呂を出てからもフテ腐れたまま。石松は皆と別れて薬局の前に置かれたマスコット「ギンギン」を部室に持ってきてしまう。甲本も「ちょっと寄る所あるから」と告げ、映画館で前売券を2枚買う。実は柴田に密かに想いを寄せていて、映画に誘おうと思っているのだった。ところが部室に帰ってくると、なぜか皆が騒いでいる。「洗面器、持ってるじゃないですか!」と曽我。「お前やっぱ盛り上げるなあ」と新見。伊藤や柴田も「初めて見るよねえ」「本当にやるんだ」と興味深げ。甲本は何のことだかワケが分からない。と、曽我が「こうやればいいじゃないですか?」と手を振った勢いでアイスがすっぽ抜け、その連鎖反応で新見が持っていたコーラがクーラーのリモコンにこぼれてしまう。なんだか不思議な一日は、サイアクな事故で終わろうとしていた。翌日の昼下がり。クーラーが使えなくなり、リモコンの修理を顧問の保積に頼むが、直すどころか壊してしまう。甲本は柴田を映画に誘うが「昨日言ってた彼女に悪いからいいよ」と断わられてしまう。甲本には彼女はいないし、昨日の騒ぎの理由も結局なんだか分からない。皆が部室に戻ってくると、なぜかマッシュルームカットの見知らぬ男が一人。「ここってSF研ですよね」「そうですけど、誰?」「いや、あの、失礼します!」と去っていく。こんな時期に入部希望?と気持ち悪がる5人だが、ふと見ると部屋の隅に見慣れぬ物体が置いてある。ダイヤルとレバーが付いた金属の物体は、まるでタイムマシンのよう。みな冗談で曽我をタイムマシンに乗せてみる。ところがレバーを下に倒した瞬間、曽我は閃光と共に機械ごと消えてしまった! 一体どうなったのか不思議がっていると、再び閃光と共におびえた表情をした曽我が戻ってくる。「今日は昨日じゃないですか?」とパニックになっている曽我。どうやら本物のタイムマシンらしい。




j16-12. テルマエ・ロマエII

監督 武内英樹
出演 阿部寛上戸彩北村一輝市村正親竹内力
2014年 (東宝) 113分

解説
ヤマザキマリの人気コミックを、阿部寛ら濃い顔の俳優を集めて実写映画化し、大ヒットを記録したコメディの続編。コロッセオにグラディエイターを癒すためのテルマエの建設を命じられた古代ローマの浴場設計技師ルシウスが、またもや古代ローマと現代の風呂を行き交う不思議な体験をし、ローマ帝国を二分する危機に巻き込まれていく。

ストーリー
タイムスリップした先である現代日本の風呂文化から着想を得て斬新な浴場建設をし、一躍人気者となった古代ローマ浴場技師ルシウス(阿部寛)に、コロッセオに闘士たち用の浴場を作るよう命令がくだる。頭を悩ませたルシウスは再び現代日本へタイムスリップ。風呂専門雑誌のライターになった真実(上戸彩)ら、ルシウスが平たい顔族と呼ぶ現代日本人と再会する。一方ローマ帝国では平和推進派であるハドリアヌス帝(市村正親)と武力行使派の元老院が対立、緊張が高まっていた……。




j16-13. 衝動殺人 息子よ

監督 木下惠介
出演 若山富三郎高峰秀子田中健尾藤イサオ大竹しのぶ
1979年 (松竹) 131分

解説
息子を殺された父親の悲しみと、同様の境遇の人々と共に、被害者遺族を保護する法律を作る運動を進める姿を描く。昭和五十三年 「中央公論」 三月号に掲載された佐藤秀郎の同名のノンフィクションを映画化したもので、脚本は砂田量爾と 「スリランカの愛と別れ」 の木下恵介の共同執筆、監督も同作の木下恵介、撮影は 「燃える秋」 の岡崎宏三がそれぞれ担当。

ストーリー
京浜工業地帯の一角で鉄工所を経営している川瀬周三は、昭和四十一年になって、めっきり身体のおとろえを覚え、工場の実務を二十六歳になる一人息子の武志に譲った。そして、秋には、妻・雪枝の郷里から田切杏子を迎え、結婚式をひかえていた。順風満帆、周三にはおだやかな老後が残されているだけのように思えた。昭和四十一年五月、武志は、友人吉川と近くの釣り堀に出かけた帰り道、ある若者に、すれ違った瞬間、腹部を刃物で刺された。武志の傷は深く、「お父さん、口惜しいよ、こんなことで死ぬなんて、仇は必ずとってくれよ」と言うと、周三の腕の中で息たえた。犯人は事件から三日後、自首してきた。ヤクザに「お前には蠅の一匹も殺せないだろう」と言われ、カッとなって、“誰でもいい、最初に行きちがった奴を殺そう”と話す。武志の葬儀を境に、周三の生活は一変した。工場を放り出し、墓地通いが続く。昭和四十二年二月、事件から十ヵ月近くして判決が下った。被告が未成年であり前途あることから〈五年乃至十年の不定期刑〉であった。軽すぎる刑に周三は怒った。周三は法律相談の窓口を訪ねるが、こうした故なき災害に対する被害者遺族の補償は全く無いに等しかった。周三は法律の勉強を始め、そして、事件発生以来熱心な取材にあたっている新聞記者、松崎から紹介された、娘を殺された中沢や全国の同様の境遇の人たちと被害者遺族を保護する法律を作ってもらうよう国会に働きかけることを誓う。周三は、工場を売却した資金で全国を回って、被害者遺族に会った。遺族の一人から京都の若手大学教授がこの間題に取りくんでいると聞き、周三は京都に行き、運動は大きく前進した。やがて、周三を中心とした全員の長い間の努力が実って、新聞やテレビも取り上げるようになり、政府も重い腰を上げた。昭和五十一年七月、周三は参考人として衆議院法務委員会へ招かれた。そこで法律の矛盾とこれまでの自分の体験を涙なからに訴えたのである。だが、その直後、周三は極度の疲労による心筋梗塞で倒れてしまった。昭和五十二年一月、周三は息子武志が息を引きとった病院で、六十六歳の生涯をとじた。枕元で妻雪枝がそっと語りかけた。「あとは私がひきついで、運動は続けていきますからね、見ていて下さいね」




j16-14. 僕達急行 A列車で行こう

監督 森田芳光
出演 松山ケンイチ瑛太貫地谷しほり村川絵梨ピエール瀧
2011年 (東映) 117分

解説
鉄道マニアの青年2人が恋に仕事に奮闘する様子を、ほがらかなユーモアに包んで描く。コメディの名手・森田芳光監督の下、振り幅の広さに定評のある松山ケンイチと瑛太が、不器用だがまっすぐな現代の日本男児を好演。全20路線80モデルに及ぶ電車がもうひとつの主人公。九州各地で撮影されたロケ映像も見どころだ。

ストーリー
のぞみ地所の社員、小町圭(松山ケンイチ)とコダマ鉄工所の二代目、小玉健太(瑛太)は、ともに鉄道を愛する者同士。ふとしたきっかけで出会った2人は、すぐに仲良くなる。住まいにも、鉄道が見える景色“トレインビュー”を追求する小町は、コダマ鉄工所の寮に入居したものの、やがて九州支社に転勤することに。転勤先の九州では、大手企業の社長(ピエール瀧)をなかなか口説き落とせず、のぞみ地所は苦戦していた。ところが、社長も鉄道ファンだったことから、小町や小玉と意気投合。事態は一気に好転する。仕事も趣味も順調そのもの。これに対して、恋の方は思ったように進展せず、2人は途方に暮れていたが……。





j16-15. 難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版 VII 先物取引の蟻地獄

監督 萩庭貞明
出演 竹内力城後光義高橋長英大森嘉之竹井みどり
1996年 85分

解説
暴力行為は一切使わず、頭だけで見事な取り立てを見せる銀次郎の活躍を描く。
サラ金でその日をしのぐサエナイ映画監督・鏑木は、ある日、先物取引の会社に勤める女・広子に出会う。鏑木は、銀次郎の融資を受け藁にもすがる思いで取引を申し込む。一時的に利益を得た鏑木だったが…。








j16-16. 人斬り

監督 五社英雄
出演 勝新太郎仲代達矢三島由紀夫石原裕次郎倍賞美津子
1969年 (大映) 139分

解説
「首」 の橋本忍がシナリオを執筆し、 「御用金」 の五社英雄がメガホンをとった。撮影は 「関東おんな悪名」 の森田富士郎。

ストーリー
岡田以蔵は、土佐の貧乏郷士に生まれ育った酒と女に目のない暴れ者だった。そんな彼を“人斬り以蔵”とまで呼ばれる刺客にしこんだのは、土佐勤王党の首領武市半平太。冷酷な革命家武市は、自分の政策上以蔵の腕を必要としていたのだった。土佐藩主の執政吉田東洋を門出の血祭りにあげて京に上った二人は、派手な殺りく活動をはじめ、好ましからぬ人物、を次々に消していった。以蔵の活躍は、一躍京洛の話題になり、薩摩の有名な人斬り田中新兵衛と比較されるほどになった。そんな彼にとっての関心事は、女郎おみのを抱くことと、姉小路邸で見かけた綾姫を偲ぶことだった。やがて、以蔵は渡辺金三郎を襲った武市の命に従わず、その暗殺に加わり、新兵衛と殺しの腕を競った。それから間もなく、武市は、以蔵に新兵衛の刀を持たせ、自分を後だてしていた姉小路を暗殺した。それは政策の上で相違が生じたためだった。この一件で嫌疑をかけられた新兵衛は、武士らしく自ら果てた。自分のおかれた立場の惨めさを思い知らされた以蔵は、悩み苦しんだ。そんな以蔵にあたたかい友情の手をさしのべたのは、坂本竜馬だった。竜馬は新しい日本をつくるために自分と行動を共にすることを勧めた。が、無学な以蔵は、大きな時の流れに押し流されてゆくのみだった。土佐藩執政吉田暗殺事件が露見した。そして武市一派は土佐に呼び戻され、取り調べられた。武市にとって、以蔵はもはや無用の長物でしかなかった。そこで、以蔵は武市の使いに毒をもられたが、九死に一生を得、白洲に出て武市一派の行状を暴露した。武市はやがて切腹、以蔵は武市から解放された喜びを味わいつつ磔台のつゆと消えていった。





j16-17. SADA

監督 大林宣彦
出演 黒木瞳片岡鶴太郎椎名桔平ベンガル嶋田久作
1998年 (松竹) 132分

解説
昭和11年、愛した男の性器を切断するという事件を起こして世間を騒がせた阿部定の半生を綴る人間ドラマ。監督は 「三毛猫ホームズの推理」 の大林宣彦。脚本は、自らの原作を基に執筆した西澤裕子。撮影を 「良寛」 の坂本典隆が担当している。主演は、 「失楽園」 の黒木瞳と 「でべそ」 の片岡鶴太郎。第48回ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞受賞作品。

ストーリー
1919年夏。14歳の定は、慶応ボーイの斉藤に旅館に連れ込まれ、処女を失う。ひどい痛みと出血に泣きじゃくる定。そんな彼女を介抱してくれたのは、同じ慶応ボーイで医学生の岡田であった。優しい岡田に定は想いを寄せるが、岡田は定を一度も抱くことなく彼女の前から姿を消してしまう。その後、定は近所のガキ大将・金ちゃんらと不良生活を経て、1923年、義兄・滝口の紹介で芸者置屋の門を潜る。神田の畳屋の末っ子として生まれた定は、三味線や歌に秀でており、たちまち売れっ子となった。時は流れ、あちこちの遊郭を転々とした定・29歳の時。政府外郭団体の大物・宮崎の妾宅に暮らしていた彼女は、名古屋市議会議員の立花を紹介され、彼の愛人となる。立花の寵愛をうけ、安定した生活を送るようになる定。埼玉に住む両親にも孝行が出来るようになった彼女であったが、しかし今でも気がかりなのは岡田の行方だ。そこで、立花に無理を言って岡田の行方を探して貰うが、実は岡田はハンセン病で瀬戸内海のある島に隔離され、生死も定かでないことが判明する。1936年、31歳になった定は、立花の薦めで料亭「きく本」に見習いへ出る。ところが、彼女は店の主人・喜久本龍蔵といい仲になってしまうのである。龍蔵との濃密な情交に溺れていく定。そのことが女将・よしに知れると、彼女は店を飛び出し、龍蔵と待合を渡り歩く暮らしをする。もはや、彼女は龍蔵なしでは生きていられないほど彼を愛していた。同年5月17日の夜、定は龍蔵の首に腰紐を巻きつけ殺害。男根を切断すると、それを帯の間に大切にしまって姿をくらますのであった。彼女が逮捕されたのは、それから2日後のことだった。彼女の事件は当時の新聞を騒がせたが、一般には恋に生きる女性として好意的に受け取られた。その年の暮れ、彼女に懲役6年の判決が下りる。その後、彼女がどのように生きたか詳しく知る者はいないが、ハンセン病の隔離政策も解かれた現代・1998年。もし、定が生きていれば93歳になっている筈である──。




j16-18. 陽だまりの彼女

監督 三木孝浩
出演 松本潤上野樹里玉山鉄二大倉孝二谷村美月
2013年 (東宝=アスミック・エース) 129分

解説
“女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1”のキャッチコピーが話題となるなど、女性から絶大な支持を受ける、越谷オサムの同名ベストセラー小説を、松本潤&上野樹里主演で映画化したファンタジック・ラブストーリー。10年ぶりに再会した中学時代の幼なじみの恋の行方をつづる。監督は 「僕等がいた」 の三木孝浩。

ストーリー
新人の営業マン・浩介(松本潤)は、ある日、取引先で幼なじみの真緒(上野樹里)と再会する。10年ぶりに対面した真緒は、バカにされていた中学時代と打って変わって、魅力的な女性になっていた。彼女のおかげでかつての純粋な気持ちを取り戻した浩介は、やがて真緒を愛し、結婚を視野に入れるようになる。しかし彼女はある秘密を抱えていた……。




16-19. フィッシュストーリー

監督 中村義洋
出演 中村有志浅野麻衣子岡田眞善渡辺海弓渡部惟裕
2009年 (ショウゲート) 112分

解説
「アヒルと鴨のコインロッカー」 の監督&原作者コンビによる最新作。売れないパンクバンドが最後に残した1曲が世界に希望をもたらしていくさまを斬新な構成で語り明かす。

ストーリー
2012年。彗星が地球に激突するまであと5時間。人々が方々へ避難し、静まり返った街で唯一つ営業を続けるレコード店があった。そこにいるのは、店長(大森南朋)と不気味な車椅子の客、谷口(石丸謙二郎)。“もうすぐ世界が終わる”と語る谷口に、店長は“正義の味方が世界を救う”と返す。店内には、70年代に解散したマイナーなパンクバンドの曲“FISH STORY”が流れていた。1982年。気の弱い大学生、雅史(濱田岳)は仲間と車で合コンに参加。その最中、1人が“FISH STORY”という曲にまつわる不気味な噂を語り始める。無音になる1分間の間奏の間に、女性の悲鳴が聞こえるという。合コンの後、1人淋しく帰宅する途中、カーステレオから流れてきたのは“FISH STORY”。その間奏で女性の悲鳴を耳にする雅史。1999年。“ノストラダムスの大予言”で世界が終わるとされている7の月。“明日、世界が終わる”という谷口の予言を信じて人々が集まる。だが、翌日も太陽は燦燦と輝いていた。人々に責められた谷口は“2012年に、世界の終わりが来る!”と叫ぶ。2009年。修学旅行の最中、フェリーに置いていかれた女子高生、麻美(多部未華子)。泣きじゃくっていた彼女に優しく語り掛けてきたのは、正義の味方になりたかったと語るコック(森山未來)。そのとき、フェリーがシージャックされる。1975年。解散直前のパンクバンド“逆鱗”。メンバーはベースでリーダーの繁樹(伊藤淳史)、ボーカルの五郎(高良健吾)、ギターの亮二(大川内利充)。彼らの最後のレコーディング曲は“FISH STORY”。再び2012年。彗星の衝突が迫る中、正義の味方、売れなかったレコード、世界の終わり。全く関連性のないように見えた全ての出来事が、“FISH STORY”を通して一つにつながったとき、世界を救う……?




j16-20. 海街diary

監督 是枝裕和
出演 綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すず加瀬亮
2015年 (東宝=ギャガ) 126分

解説
海の見える街で暮らす個性的な4姉妹と周囲の人々との交流を描いた吉田秋生の同名コミックを 「そして父になる」 の是枝裕和監督が映画化した人間ドラマ。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずという日本映画界を代表する女優たちが4姉妹に扮する。3人の母親役の大竹しのぶをはじめ、堤真一、加瀬亮ら豪華キャストが集結。

ストーリー
長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)は、鎌倉で三人一緒に住んでいた。そんな彼女らのもとに、ある日、15年前に家を出て疎遠になっていた父の訃報が届く。三人は父の葬儀が行われる山形に向かい、母親違いの妹・すず(広瀬すず)と初めて対面する。身寄りをなくしたすずはどうしようもない大人たちに囲まれながらも、一人毅然とした態度を見せていた。そんなすずに幸は、鎌倉に来ないかと言う。こうして、すずを入れた四姉妹の暮らしが始まった……。




j16-21. ソロモンの偽証 前篇・事件 

監督 成島出
出演 藤野涼子板垣瑞生石井杏奈清水尋也富田望生
2015年 (松竹) 121分

解説
転落死した同級生の死の謎を巡って、中学生たちが隠された真実を暴こうとする姿を描く、宮部みゆきの同名小説を2部作として映画化したサスペンス・ミステリー。事件の第一発見者であり、学校内裁判を提案するヒロインを新人の藤野涼子が演じる。監督はサスペンスから人間ドラマまで幅広いジャンルを手がける成島出。

ストーリー
記録的な大雪が降ったクリスマスの朝、ある中学校の校庭で2年生の男子生徒・柏木卓也(望月歩)が遺体となって発見される。転落死したと見られ学校と警察は自殺と断定するが、彼は殺されたという目撃者を名乗る者からの告発状が届き、波紋を呼ぶ。マスコミの報道が熱を帯び混乱が深まる中、犠牲者が一人、また一人と増えていった。生徒の一人・藤野涼子(藤野涼子)は保身ばかりを考える大人たちに見切りをつけ、死の真相をつきとめようと動きはじめる……。




j16-22. ソロモンの偽証 後篇・裁判 

監督 成島出
出演 藤野涼子板垣瑞生石井杏奈清水尋也富田望生
2015年 (松竹) 146分

解説
転落死した同級生の死の謎を巡って、中学生たちが隠された真実を暴こうとする姿を描く、宮部みゆきの同名小説を2部作として映画化したサスペンス・ミステリーの完結編。事件の第一発見者であり、学校内裁判を提案するヒロインを新人の藤野涼子が演じる。監督はサスペンスから人間ドラマまで幅広いジャンルを手がける成島出。

ストーリー
男子中学生・柏木卓也(望月歩)の転落死以降、殺人を告発する目撃者からの手紙、過熱報道、連鎖していく事件により学校は混乱していたが、大人たちは保身に走る一方だった。生徒の一人・藤野涼子(藤野涼子)は自分たちで柏木卓也の死の真相を突き止めようと動きはじめ、学校内裁判が開廷される。人間の底知れぬエゴや欲望、悪意が渦巻く中、少女が学校内裁判の果てに見たものとは……。




j16-23. 花とアリス

監督 岩井俊二
出演 鈴木杏蒼井優郭智博坂本真相田翔子
2004年 (東宝) 125分

解説
岩井俊二監督がリリカルなタッチで紡ぎ上げた青春映画。親友同士の女子高生2人と、先輩の男の子が織り成す恋の三角関係が、せつなさとユーモアたっぷりにつづられる。

ストーリー
一目惚れした先輩・宮本と同じ落語研究会に入部した高校生のハナ。ある日、宮本がガレージのシャッターに頭をぶつけて意識朦朧としているどさくさに紛れて、自分が今カノだと信じ込ませることに成功した彼女は、その嘘の為に幼なじみの親友で、モデルを目指すアリスを宮本の元カノ役=共犯者として巻き込んだ。ところが、このことがきっかけで宮本はアリスに好意を寄せるようになり、アリスもまた宮本に心惹かれるようになっていく。ハナに隠れてデートを重ねるアリスと宮本。しかし、そんな関係がいつまでも続く筈がなく、アリスはハナの為に身を引くが、ハナもアリスの為に宮本に真実を告げて身を引こうとする。その後、オーディションでバレエを披露し合格したアリスがファッション誌の表紙を飾り、それを機にハナとアリスは仲直りする。




j16-24. 男子高校生の日常

監督 松居大悟
出演 菅田将暉野村周平吉沢亮岡本杏理山本美月
2013年 (ショウゲート) 85分

解説
Web雑誌 「ガンガンONLINE」 で連載された山内泰延の同名コミックを 「アフロ田中」 の松居大悟監督が実写映画化。男子校に通う冴えない3人組とそのクラスメイトたちの学園生活を描く。出演は 「王様とボク」 の菅田将暉、 「スープ 生まれ変わりの物語」 の野村周平、 「ぼくが処刑される未来」 の吉沢亮、 「ヤッターマン」 の岡本杏理、 「桐島、部活やめるってよ」 の山本美月。

ストーリー
男子校に通う仲良し3人組、タダクニ(菅田将暉)、ヨシタケ(野村周平)、ヒデノリ(吉沢亮)は、いつもタダクニの部屋に集まって、タダクニの妹(高月彩良)のスカートを穿いてみたり、マンガを読んだりとダラダラした日々を過ごしている。そんなある日、隣接する女子校と文化祭を共催する事となり、3人の冴えない毎日が一転。グダグダ男子校にキラキラ女子が襲来し、勘違いな恋愛騒動に発展していくが………。




16-25. ナニワ銭道

監督 萩庭貞明
出演 窪田正孝的場浩司駿河太郎森本亮治升毅
2014年 (楽映舎) 87分

解説
「ナニワ金融道」の青木雄二プロダクションによるコミック「ナニワ銭道〜もうひとつの「ナニワ金融道」 」を映画化。大阪ミナミを舞台に、“銭”をテーマにした悲喜こもごもを描く。監督は、 「ミナミの帝王」 シリーズの萩庭貞明。出演は、 「ガチバン」 シリーズの窪田正孝、 「俺は、君のためにこそ死ににいく」 の的場浩司。

ストーリー
漫画家を目指し、関東から大阪へやってきた25歳の青威雄一郎(窪田正孝)は、当座の生活のため、ミナミの繁華街にあるキャバレー“サン”でボーイとして働いている。ある日、ホステスがヤクザにお触りされている場面を目撃した青威は、持ち前の正義感から助けに入るも逆に殴り飛ばされる。そのとき店に居合わせた派手な関西人・小籔蛙次(的場浩司)が法律知識でヤクザを黙らせ、逆に弁償代・迷惑料などを換算して20万を支払わせる。閉店後、青威は小籔に連れられ、もつ焼き屋“下品屋”に行き、小籔の仲間であるミナミの高級クラブのNo.1・桃黒瞳(谷村美月)とのやりとりを見て、小籔が金でトラブルを解決するエキスパートだと知る。後日、行きつけの煙草屋の店主・臼井佐知代が立退き要求されている場面を見た青威は、なんとか助けてもらえないか小籔に頼み込む。タダで仕事はしないと一蹴する小籔だったが、どこかほっておけない青威に乗せられ、佐知代の相談を聞く。すると小籔は、この立退き騒動の裏に、かつて自分を罠にはめた経済界の大物・我目津一郎(升毅)の存在があることを知る。改めて煙草屋救済の依頼を受けた小籔は、自らの復讐も果たすため、青威と共に我目津の野望に立ち向かう。佐知代の孫・臼井敦(駿河太郎)を使って我目津グループの内情を探った小籔は、鍵となる煙草屋の土地所有権をめぐって我目津と一騎打ちをする。この一件で小籔に惹かれた青威は、仕事を手伝わせてほしいと申し出る。こうして銭のスペシャリスト小籔と正義感の強い青威という水と油のような凸凹パートナーの2人は、ミナミを中心に銭道を歩き始めるのだった……。




j16-26. 100回泣くこと

監督 廣木隆一
出演 大倉忠義桐谷美玲ともさかりえ忍成修吾波瑠
2013年 (ショウゲート) 116分

解説
中村航のベストセラー小説を、関ジャニ∞の大倉忠義&桐谷美玲主演で映画化した、せつないラブストーリー。バイク事故で記憶を失った青年と運命的な再会を果たしたヒロインの姿が描かれる。プライベートでもバイクを運転するという大倉が、スタントなしで物語のカギを握る事故シーンに挑むなど、まさに体当たりの演技を見せる。

ストーリー
4年前のバイク事故で逆行性健忘症を患い、事故以前1年間の記憶を失った藤井(大倉忠義)は、恋人の佳美(桐谷美玲)に関する記憶がぽっかりと消えていた。ところが、共通の友人であるムース(忍成修吾)とバッハ(波瑠)の結婚式に出席したことをきっかけに、2人は運命の再会を果たす。初めて出会ったはずの佳美に自然と惹かれた藤井は、ずっと乗っていなかったバイクの修理に彼女を誘い、距離が接近。やがて、藤井の記憶は戻らないまま、止まっていた時が動き出すように、2人は再び付き合い始めるのだった。だが、4年間ずっと待ち続けていたはずの佳美は、かつて恋人同士だった事実を藤井に打ち明けようとしない。一方、佳美に強く惹かれた藤井は“突然だけど、結婚しよう”とプロポーズ。それを受けた佳美だったが、“1年間、結婚の練習をしよう”と条件を付けて一緒に暮らし始める。穏やかに過ぎてゆく2人の生活。街角の小さな教会でのたどたどしい愛の言葉と誓いのキス、佳美が熱を出した時、藤井が渾身の力を出して踊ってくれた“解熱の舞”……。ささやかながら、満ち足りた幸せがこのままずっと続くと思っていた頃、佳美に病魔が忍び寄る。ある日、佳美は“実家の父親の具合が悪いから”と家を出たまま帰ってこなくなってしまう。佳美の言葉に何の疑いも持たなかった藤井だったが、久しぶりに帰った実家で見つけた手紙をきっかけに、4年前も自分たちが付き合っていた事実を知る。さらに、佳美の親友、夏子(ともさかりえ)から彼女の現状を聞き、バイクを飛ばす。なぜ、佳美は“結婚まで1年”と答えたのか……。なぜ、かつて2人が付き合っていたことを明かさなかったのか……。藤井の失われた記憶の中には、佳美への深い愛と、あまりにも切ない真実が隠されていた……。




16-27. 徳川家康

監督 伊藤大輔
出演 北大路欣也畠山淑子青木勇嗣萬屋錦之介山本圭
1965年 (東映) 143分

解説
山岡荘八の同名小説を 「この首一万石」 の伊藤大輔が脚色、監督した歴史時代劇。撮影もコンビの吉田貞次。

ストーリー
群雄割拠の東海地方は、駿府を居城として駿、遠、参の三国を領する今川義元が、強大な勢力を誇り西には新鋭の織田信秀が次第に東方に進出し、西三河一帯は東西勢力の接触点となった。ここに累代この地域を拠点とした岡崎と刈谷は、両勢力いずれかにつかざるを得ず、刈谷の水野は、刈谷の姫於大を和睦のしるしに三州岡崎の城主松平広忠の許へやり、今川方の松平に属した。天文十一年於大は、男子を出生、松平竹千代と名づけられた。寅の日、寅の刻という希瑞に岡崎城下はわいた。竹千代三歳の春、於大の父は病死し、城主となった信元は、今川の勢力を脱し織田方と盟を結んだ。戦国時代に生きる女の宿命か、於大は、兄の一決で織田方阿久居の城主久松佐渡守俊勝のもとに嫁いだ。病弱な広忠は、如何なる運命にも耐えて、竹千代を守れと於大を送った。一方今川義元は伯父雪斎禅師の進言を容れ、岡崎を織田進撃を喰い止める要路とみて、竹千代を人質に迎える旨岡崎に伝えた。弱小国岡崎のとる道は唯一つ、竹千代は七人の侍童に守られて駿府に向かった。だが途中田原領主戸田弾正の寝がえりに会い、竹千代は一千貫で織田方にうられ、侍童たちは割腹し果てた。この悲惨な光景は終生家康の心を離れなかった。信元は、竹千代の命とひきかえに、広忠に織田方へ加担をすすめたが、広忠は武士の意地を立て通した。この報は於大の耳にも入り、熱田に赴いた於大は後の信長、吉法師にすがり、竹千代の姿を垣間みた。もともと、竹千代に肉親のような感情を抱いていた吉法師は、於大の心に激しく胸をゆさぶられた。天文十八年広忠が病死し、安祥城を急襲した岡崎勢は城主信広と交換に、竹千代を三年ぶりに城に迎えた。しかしそれもつかの間、竹千代は駿府の人質として岡崎を去り、三河の地は今川に統割された。十年の月日がたち竹千代は元服して元信と名を改め義元の姪瀬野と婚儀を結んだ。また一方、吉法師も信長と名を改め、勢力を増し、今川方を脅し、藤吉郎を派遺して、竹千代の動静をつぶさに於大に知らせた。永禄三年義元は日本征覇の野望を果すため京へ向った。松平の血をうけた元信の決意は、岡崎譜代の家臣のため、岡崎勢と共に大高城に篭り、織田方との戦いをさけた。元信の真意を解した信長は、大高城を迂回し今川の本陣に入り、義元の首級を上げた。義元討たるの報を聞いた元信は、織田軍に乗り込むと義元の首を、受けたいと告げた。恨みよりも恩を返えそうとする元信の心に、信長は、かねて約束の馬と共に、友情をこめて、義元の首を手渡すのだった。かくして、信長と元信の間に十四年間の友情がつづいた。




j16-28. 東京上空いらっしゃいませ

監督 相米慎二
出演 中井貴一牧瀬里穂笑福亭鶴瓶毬谷友子
1990年 (松竹) 109分

解説
一度は天国へ行ったものの、気のいい死神をだまして地上へ舞いもどった少女の姿をファンタスティックに描く。脚本は新人の榎祐平が執筆。監督は 「光る女」 の相米慎二。撮影は稲垣湧三がそれぞれ担当。

ストーリー
キャンペーンの最中にキャンペーンガールのユウは、スポンサーの好色な専務白雪恭一の魔手から逃れようと、自動車からとび出した瞬間、後続の車にはねられ、死んでしまう。街にあふれる看板やポスターや写真や音楽をそのまま残してユウの魂は東京上空へと舞い上っていってしまった。広告代理店の担当雨宮文夫や白雪たちは、事故をひたすら隠してキャンペーンを続けることにし、後始末に奔走する。一方、天国に昇ったユウは、白雪とウリ二つの死神コオロギをしっかりだまして地上に舞い戻った。しかも、事故の知らせを聞いて右往左往している文夫のマンションに現われたのだ。 唖然としてうろたえる文夫。 ユウはユウで戻ったものの、自分はもう死んでいることになっているのだ。 家にも帰れず、学校にも行けない。 文夫は、そんなどこにも帰れないユウと同居しながら、 ユウの事故死の後始末をするはめになってしまう。 ちょうどそのころ、だまされたと知ったコオロギは、ユウに付きまといながら、あの世へ連れ戻そうと説得したり、おどしたりと奮闘する。それでもユウはけなげに、新しい自分として一から生きてゆこうと頑張るのである。 文夫はそんなユウがいじらしくなってきた。 このままユウを抹殺してしまうのが耐えられなくなってくるのだった。文夫は、死んだはずのユウを白雪の所へ連れて、茫然とする白雪に、事故現場の写真と引き換えにユウのキャンペーンを続行させる取り引きをもちかける。 しかし、その夜、やっと自分を取り戻したことを感じたユウは天国に行くことを決心し、コオロギと共に東京上空を舞い上っていく。




j16-29. 里見八犬伝

監督 深作欣二
出演 薬師丸ひろ子真田広之千葉真一寺田農志穂美悦子
1983年 (東映) 136分

解説
里見家の姫と八犬士の一人との恋をベースに、悪の妖怪軍団と戦う犬士達の姿を描く。滝沢馬琴著 「南総里見八犬伝」 に新解釈を加えた鎌田敏夫原作 「新・里見八犬伝」 の映画化で脚本は 「探偵物語」 の鎌田敏夫と 「人生劇場(1983)」 の深作欣二の共同執筆、監督は 「人生劇場(1983)」 の深作欣二、撮影は 「探偵物語」 の仙元誠三がそれぞれ担当。

ストーリー
館山城主・里見成義の一人娘・静姫は叔父のもとへと逃避行を続けていた。突如、黒装束の騎馬侍達が前ぶれもなく城に攻め入り、成義以下を皆殺しにしたのだった。城を奪った男・蟇田素藤は、かつて成義の父・義実が征伐した蟇田定包の子であり、その時死んだ筈の素藤と彼の母・毒婦玉梓は悪霊“御霊様”に仕えることによって、不死身の身体をもつ妖怪となって蘇ってきたのである。そして静姫の生き血を“御霊様”に捧げるべく、彼女の行方を血まなこになって探していた。静姫は炭焼小屋で親兵衛という若者と出会う。彼に追われた静姫は巡礼姿の二人連れに助けられた。二人は犬山道節、犬村大角と名乗り、一巻の絵巻物を差し出した。それには、約百年前に里見義実が蟇田一族を滅したいきさつ、そして玉梓の呪いからか、義実の息女・伏姫が飼犬・八房に授けられ、懐妊した伏姫の胎内より白気と共に、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の各字を刻んだ霊玉が八方に飛散したことなどが記されていた。道節と大角はそれぞれの霊玉を静姫に見せ「一刻も早く霊玉を持つ他の六人を探し出し、静姫を奉じ素藤らと戦わねばならない」と説く。最初はそんな話を信じなかった静姫だが、一人、また一人と犬士が集まってくるうち、犬士達と共に戦うことを決意した。なおも残る犬士を探す旅が続くなか、突然、けもの罠にかかり静姫がさらわれた。犯人は静姫を城に連れてきた者は侍にしてやる、という素藤のおふれに野望を燃やす親兵衛だった。彼は静姫を素藤のもとへ連れていこうとするが、素藤の支配下となった安房国の荒廃と黒騎馬侍の人を人とも思わぬ殺戮を見て心の中に変化が起き始めた。そして、黒騎馬侍達に静姫が発見された時、親兵衛は彼女をかばい、二人は鐘乳洞に逃げ込んだ。そこには、新たに同志を加えた道節らがいた。親兵衛の心の善を信じはじめた静姫だったが、二人はここで別れなければならなかった。犬士達に放りだされた親兵衛は黒騎馬達に捕まり城に連れさられる。彼はそこで、腕にある赤いアザから玉梓の子の転生であるということを知らされた。そして“御霊様”に仕える司祭・幻人によって悪の化身とされてしまう。その時、素藤配下の侍大将・現八に変化が起きる。彼は仲間を倒し、気を失っている親兵衛を連れて城を脱出した。懐にはいつしか光る霊玉がありそれに導かれるように静姫のいる洞に着いた現八は、七人目の犬士として迎えられる。その時、親兵衛が目を覚まし、いきなり静姫に襲いかかった。姫を守ろうとする犬士達に「刀を引きなさい」と、静姫が命じた。静姫は心で親兵衛に対峙しようとしたのだ。その瞬間、白い閃光が親兵衛を一撃し、彼の身体は静姫の前に崩れ落ちた。新兵衛が再び眼を覚すと腕のアザが消えており、二人の間には光り輝く霊玉があった。喜びに満ちあふれる二人は愛し合う。が、突如、大蛇があらわれ、静姫を巻き玉梓の笑い声を残して消え去った。集結した八犬士のもとに伏姫の「この矢を“御霊様”に向って静姫に引かせなさい」という声が響いた。そして彼らは姫を救い出し“悪”を滅すために館山城に向った。一人、一人合い討ちながらも素藤一味を倒していく犬士達。だが、素藤、玉梓、静姫のいる大広間にたどりついたのは、親兵衛と道節のみだった。道節は自ら追手の盾となり、親兵衛は静姫のもとへ飛んだ。そして縛めをとかれた静姫は“御霊様”に向って矢を放った。玉梓らはミイラと化し、城は崩れ落ちた。親兵衛は静姫を叔父の城へと送り届け、二人に別れの時がきた。親兵衛は静姫を想いながら七犬士達の墓を祭っていると馬に乗った静姫がやってきた。





16-30. リターナー

監督 山崎貴
出演 金城武鈴木杏岸谷五朗樹木希林高橋昌也
2002年 (東宝) 116分

解説
「ジュブナイル」で一躍注目を集めた新鋭・山崎貴監督のSFアクション。未来をかけた決死の闘いを、ワイヤーワークを駆使したスタントと圧巻のVFXで描く痛快作だ。

ストーリー
人身売買の取り引き現場に突然現れた少女・ミリのせいで、親友を殺した仇敵・溝口を取り逃がしてしまった、ブラック・マネーを強奪しそれを依頼者に戻す裏稼業リターナーのミヤモト。2084年の未来から来たと言うミリに、人類を絶滅寸前に追い込むことになる宇宙生物・ダグラの最初の一匹を一緒に倒して欲しいと頼まれた彼は、既に地球に侵入しているゲートダグラが溝口の手に渡りそうなことを知って、筑波の宇宙開発研究所に急行する。だがそこで、ゲートダグラが地球侵略を目論んで飛来したのではなく、単なる迷子であり、それを人間が殺したことで戦争が勃発したことを知ったふたりは、ゲートダグラをマザーシップに帰すべく作戦を変更。壮絶な戦いの末、溝口を倒し、ゲートダグラを帰還させることに成功する。こうしてすべてが終わり、ミリは未来へ帰って行った。その後、溝口への復讐を果たしたミヤモトはリターナーを辞めるも、彼に怨みを持つ男の凶弾に倒れてしまうが、ミヤモトの死を知り再び未来から来たミリのお陰で、彼は命拾いするのであった。




j16-31. 俺はまだ本気出してないだけ

監督 福田雄一
出演 堤真一橋本愛生瀬勝久山田孝之濱田岳
2013年 (松竹) 105分

解説
青野春秋のデビュー作にして、 「このマンガがすごい!2009」 にランキングされるなど話題を呼んだコミックを、堤真一主演で映画化したコメディ。42歳でバツイチ子持ちの中年男がいきなりマンガ家になろうとするも、ダメダメすぎて空回りし続ける姿が笑いを誘う。監督・脚本を手がけたのは 「コドモ警察」 などの福田雄一。

ストーリー
42歳、バツイチの大黒シズオ(堤真一)は、高校生の一人娘・鈴子(橋本愛)、父親の志郎(石橋蓮司)と3人暮らし。「本当の自分を見つける」と勢いで会社を辞めてから1ヵ月経つが、朝から寝転んでゲーム三昧、志郎はそんなシズオに毎日怒鳴り散らしている。ある日、本屋で立ち読みをしていたシズオは突然ひらめき、「俺、マンガ家になるわ」と宣言。根拠のない自信をもとに出版社に持ち込みを続け、担当編集者の村上(濱田岳)に励まされつつ雑誌掲載を目指すも、原稿はすべてボツ。バイト先のファーストフード店でのあだ名は“店長”だが、新人に叱られ、バイト仲間と合コンに行ってもギャグは不発。さらには鈴子に2万円の借金、何かと理由をつけて幼馴染の宮田(生瀬勝久)と飲みに行ってしまう。そんな中、バイト先に金髪の新人・市野沢(山田孝之)がやってくる。初日からやる気がない彼をシズオは飲みに誘うが、宮田の奢りで自分は泥酔。シズオを送った市野沢は大黒家に泊まり付き合いが始まる。しばらく後、市野沢はバイトを辞めてキャバクラで働き始めるが、何かと揉め事が多い様子。シズオも自信作の自伝マンガを持ち込むが結果はボツ。家では志郎と取っ組み合いの大ゲンカになり、シズオは家出。宮田には断られ、市野沢の家に転がり込む。「マンガは本気か、趣味か」悩んだシズオは改めて「デビューしたい」と思い直す。「俺には運がないだけ」と考えたシズオは、占い師(佐藤二朗)に運気の上がるペンネームを付けてもらい“中村パーソン”の名前で描いたマンガが新人賞の佳作に引っかかる。一コマだけ小さく掲載された雑誌を買い占めたシズオ。果たしてシズオにデビューの日は訪れるのか……。




j16-32. バケモノの子

監督 細田守
出演 役所広司宮崎あおい染谷将太広瀬すず山路和弘
2015年 (東宝) 119分

解説
おおかみこどもの雨と雪」 など、独特の世界観で海外からも高い注目を浴びる細田守監督によるアドベンチャーアニメ。人間の世界とバケモノの世界という、本来なら交わるはずのない2つの世界に住む、ひとりぼっちの少年と暴れんぼうのバケモノが出会い、奇想天外な冒険を繰り広げるさまが描かれる。

ストーリー
この世界には人間の世界とは別にもうひとつ、バケモノの世界がある。人間界“渋谷”とバケモノ界“渋天街”という交わるはずのないふたつの世界で、ひとりぼっちの少年(声:宮崎あおい)と暴れん坊のバケモノ・熊徹(声:役所広司)はそれぞれ暮らしていた。だがある日、少年はひょんなことからバケモノの世界に迷い込み、熊徹の弟子となって九太という名を授けられる。熊徹は、渋天街で一二を争う最強のバケモノで粗暴な性格、品格のカケラも無い。一方の九太は、9歳のときある事をきっかけに両親と離ればなれになってしまい、どこにも行き場がないため嫌々ながら熊徹の弟子となったのだった。しかしその偶然の出会いが、想像を超えた冒険の始まりであった……。





j16-33. 奇跡のリンゴ

監督 中村義洋
出演 阿部サダヲ菅野美穂池内博之笹野高史伊武雅刀
2013年 (東宝) 129分

解説
11年にわたる苦悩の末、無農薬によるリンゴ栽培に成功した青森県弘前在住のリンゴ農家、木村秋則の実話を、阿部サダヲ×菅野美穂主演で映画化した人間ドラマ。食事もままならない極貧生活にもめげずに奇跡のリンゴを生み出した一家の姿が涙を誘う。監督は伊坂幸太郎原作の作品を多数手がけてきた中村義洋。

ストーリー
岩木山が日本最大のリンゴ畑を見下ろす青森県中津軽郡。この地で生を受けた木村秋則(阿部サダヲ)は、幼い頃から学生時代にかけて、車やバイク、エレキギターなど機械いじりに夢中になって過ごしていた。高度経済成長によって生み出されたモノの仕組みに対する興味は人一倍で、当然ながら一帯を覆うリンゴ畑や農業への関心はゼロだった。後に、この農業に人生を賭けることになろうとは、学生時代には全く想像できなかった。そんな彼に転機が訪れる。リンゴ農家の娘・木村美栄子(菅野美穂)とお見合い結婚して木村家に入ることになったのだ。農業もリンゴも秋則にとっては初めての経験だったが、苦労しながらも何とか技術を身に付けてゆく。やがて、妻の身体に異変が起きる。リンゴは農薬なしでは生産不可能な果物だったが、その農薬が美栄子の身体を蝕んでいたのだ。繰り返し散布する農薬の影響で皮膚がかぶれ、数日間寝込むこともあった。これをきっかけに、絶対不可能と言われていた“リンゴの無農薬栽培”への挑戦を決意する秋則。美栄子の父・征冶(山崎努)の協力を得て、私財を投げ打って挑戦を続けるが、およそ10年の間、奇跡が起きることはなかった。畑は痩せ、周囲の農家には“カマドケシ(破産者)”と疎まれ、家族は貧困にあえぐ。追い詰められ、自殺を決意した秋則は1人、岩木山を登る……。とその時、荒れ果てた山野に立つ1本の樹が目に止まった。その枝には、果実がぶら下がっていたのだ。“なぜ、こんなところに……?”疑問に思いながらその樹に近づいた秋則は、そこで奇跡の糸口を掴む……。




j16-34. 映画 鈴木先生

監督 河合勇人
出演 長谷川博己臼田あさ美土屋太鳳風間俊介田畑智子
2012年 (角川書店=テレビ東京(配給協力 ミラクルヴォイス)) 124分

解説
武富健治の同名コミックを基に、数々の賞にも輝いた話題のドラマが初の劇場映画化。理想のクラスを作り上げようと奮闘する中学校の国語教師・鈴木先生をドラマ版同様に長谷川博己が演じ、卒業生による立てこもり事件という史上最大の危機に立ち向かう。本作で注目を浴びた土屋太鳳らが、再び中学2年生のリアルを等身大で演じる。

ストーリー
緋桜山中学の国語教師・鈴木先生(長谷川博己)は、一見問題がない普通の生徒ほど内面が鬱屈していると考えており、独自の教育理論・鈴木メソッドを用いて理想的なクラスを築き上げようと日々奮闘している。常識を打ち破る局面もあるため、他の教師と対立することもある。また、理想の教室を築く上で欠かせないと考える女子生徒・小川蘇美(土屋太鳳)を重要視しているうちに、よからぬ妄想を抱いてしまうこともしばしばある。そんな鈴木先生を妻の麻美(臼田あさ美)はよき相談相手となりそっと支える。麻美には相手の考えていることを見抜き生霊を飛ばす特殊能力があり、鈴木先生は身重の麻美に気苦労させまいとより一層自らを律している。生徒会選挙や文化祭など行事の多い2学期を迎え、慌ただしいながらも充実した日々を送る中、OBの勝野ユウジ(風間俊介)が小川を人質にとり学校に立て篭もる事件が起こる……。





j16-35. まんじ

監督 増村保造
出演 若尾文子岸田今日子川津祐介船越英二山茶花究
1964年 (大映) 90分

解説
谷崎潤一郎の同名小説を 「傷だらけの山河」 の新藤兼人が脚色 「 「女の小箱」 より 夫が見た」 の増村保造が監督した文芸もの。撮影もコンビの小林節雄。

ストーリー
秘かに奈良の奥山を散策する二人の女性。手をしっかりと握って、どちらともなく微笑みかけている美しい二人は、洋服のよく似合う魅惑的な徳光光子。その眼は特に印象的だ。そして和服の似合うもう一人の女性は、弁護士柿内孝太郎の妻で、チャーミングな小悪魔を思わせる柿内園子だった。この二人は同性愛であった。先日も、園子の寝室で、その美事な裸体を披露した光子は、その美しさに興奮した園子と、激しく抱き合っていた。最初は恥かしがっていた光子も、だんだんその奇妙な魅力のとりこになっていた。すっかり光子の美しさに魅惑された園子は、光子に綿貫栄次郎という情夫がいることを知って、光子に裏切られたと、涙にくれた。だが光子を食いものにする綿貫は、園子と光子の愛情のこまやかなのを心配して、光子への愛を二人で分け合おうともちかけ、光子、園子、綿貫の奇妙な三角関係が生れた。だが、この関係も長くは続かず、光子と綿貫の関係を清算させようと園子が画策するのを知った綿貫は光子を脅迫した。これに絶望した光子と園子は狂言自殺をしたが、朦朧とした園子の眼に映ったのは、自殺の知らせを聞いて、駈けつけた園子の夫孝太郎と、光子の情事であった。ここに、光子のとりことなった孝太郎と、光子、園子の新しい三角関係が成立した。ところがある日のこと、三人にとって致命的な事件が起きた。綿貫が写真に撮った誓約書を新聞にスッパ抜いたのだ。醜聞は、広まり、三人の前には、自殺でつぐなうより他に手はないように思えた。ある夜ベッドで睡眠薬を飲んだ三人は、静かに事を処理した。だが翌日、光子と孝太郎はすでに息絶え、園子だけが生き残っていた。




j16-36. 夏の庭 The Friends

監督 相米慎二
出演 三國連太郎坂田直樹王泰貴牧野憲一戸田菜穂
1994年 (ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画) 113分

解説
真夏の神戸を舞台に、ワンパクざかりの男の子3人と老人との交流を描くドラマ。湯本香樹実の同名児童小説(福武書店、新潮文庫・刊)を原作に、 「お引越し」 に続いて相米慎二が監督。脚本は 「夢二」 の田中陽造、撮影は 「ワールド・アパートメント・ホラー」 の篠田昇が担当。主演の小6トリオはオーディションにより選ばれた。94年度キネマ旬報日本映画ベストテン第5位、同読者選出日本映画ベストテン第8位。1994年3月12日より大阪・京都・神戸先行公開。

ストーリー
小学6年生のサッカー仲間、木山諄、河辺、山下の3人は、ふと人の死について興味を抱き、近所に住む変わり者の老人・傳法(でんぽう)喜八に目をつけ、彼がどんな死に方をするか見張ることにした。荒れ放題のあばら家にひとり住む様子を観察する3人に気づいた喜八は最初は怒り出すが、やがてごく自然に4人の交流が始まる。老人の指示通り子供たちは庭の草むしりや家のペンキ塗りを行い、庭にはコスモスの種を巻き、家は見違えるようにきれいになっていった。子供たちは喜八から、古香弥生という名の女性と結婚していたが別れたという話や、戦争中、兵隊をしていた時にジャングルの小さな村でやむを得ず身重の女の人を殺してしまった話などを聞く。3人は喜八の別れた妻を探し出すことにし、やがてそれらしき人を探し当て老人ホームに訪ねるが、部屋には担任の静香先生がいた。先生は何と弥生の孫だった。弥生はボケているのか夫は死んだと答えるばかりだったが、静香は喜八は自分の祖父に違いないと確信し、彼を訪ねる。だが喜八もそれを否定した。そんなある日、子供たちはサッカーの試合の帰りに喜八の家に寄ってみると、彼は既に息絶えていた。葬儀の日、3人の子供たちや市役所の職員、遺産のことばかり気にする甥の勝弘らが見守る中、静香に連れられ弥生がやって来る。じっと棺の中の喜八の顔を見つめていた弥生は、生きている相手に向かうかのように正座して「お帰りなさいまし」とお辞儀した。数日後、取り壊しを控えた老人の家を訪ねた子供たちは、暗い井戸の底からトンボや蝶、ホタルが次々と飛んでいくのを目撃する。それはまるでおじいさんが3人に別れの挨拶をしているかのようであった。




16-37. 難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版 11 追憶

監督 萩庭貞明
出演 竹内力古本新之輔竹井みどり石野陽子結城哲也
1998年 (JSDSS(ジーダス)) 88分

解説
竹内力が“闇金の帝王・銀次郎”を演じる、ヒットシリーズの劇場版第11作。定年の老刑事とともに、迷宮入りの殺人事件を捜査することになった銀次郎の活躍を描いた作品。推理モノの要素を取り入れ、いつもの金融詐欺路線とは一味違った作品に仕上がっている。

ストーリー
定年を控えた老刑事・桜井。彼は銀次郎からの借金を、自らの後輩が殺された時効寸前の事件の捜査に当てていた。そんな彼を見て、銀次郎は捜査に協力する。





j16-38. 変身

監督 佐野智樹
出演 玉木宏蒼井優佐田真由美山下徹大松田悟志
2005年 (日本出版販売) 108分

解説
東野圭吾の同名小説を映画化した恋愛劇。脳移植により、ドナーの暴力的な人格に支配されてしまう主人公を演じた玉木宏と、それに苦悩する恋人役の蒼井優の熱演が感動を呼ぶ。

ストーリー
ある病院の特別室で、長い昏睡から青年が目覚める。工場で働く成瀬純一(玉木宏)は、毎週金曜日に画材店に通っていた。その店で働く恵(蒼井優)は、笑顔がとびきり素敵な女の子だ。ある日、純一は勇気を出して、湖のある森に恵を誘う。それまで風景画しか描かなかった純一は、その日から恵の肖像画を描きはじめ、2人は急速に親しくなっていく。恵との幸せな日々をベッドの中で思い出していく純一は、ある夜、人のいなくなった解析室の中に入り、低温保存庫の中に人間の脳と思われる標本を2つ発見する。そのひとつには「JN」と記されていた。純一のイニシャルだ。彼は、それまで詳しい説明を言いしぶってきた担当医師の堂元(北村和夫)に手術の詳細を問いただす。彼が施されたのは、世界初の脳移植手術であり、損傷を受けた部分に他人の脳片を移植したのだと聞かされる。あの日、純一は恵と一緒に住む部屋を探すために不動産屋にいたのだった。そこに1人の青年が入ってきて、拳銃を振りかざし、金を要求した。その時、奥のスペースで遊んでいた少女が何も知らずに出てきて、その音に驚いた犯人は少女に拳銃を向けた。その時、とっさに少女をかばった純一の頭部に銃弾が撃ち込まれたのだった。退院が近くなった時、やっと面会を許された恵が訪ねてきてくれる。だが、純一は、以前とは食べ物の好みが一変し、描く絵のスタイルも変化する。そればかりか、勤め先の工場でも、以前は人と争うことなど皆無だったのに、同僚たちの仕事ぶりを痛烈に批判し、アパートの隣に住む若者に殺意さえ抱いてしまう。そして愛する恵の天真爛漫な言動にさえ、いらだちを抑えきれなくなるのだった。そんな純一の耳に、どこか遠い記憶の彼方から、ピアノの音が聞こえてくる。それは純一の記憶ではなかった。苦悩を深める純一が偶然出会った女性は、あの強盗犯、京極瞬介(松田悟志)の双子の妹(釈由美子)だった。兄妹の育った家で、強盗事件の発端になった彼らの生い立ちと恨みを彼女は純一に語ってくれる。彼女が語る瞬介は優しい青年だったが、父への恨みから世の中全体を、特に金銭的に恵まれた者たちを激しく憎むようになっていたのだ。そして彼女は、純一の前に赤い小さなおもちゃのピアノを差し出す。幼い日、いつも瞬介はこのピアノを弾いていたという。こうして純一はすべてを知るが、だからといって変わっていく自分を止めることは、彼の力ではできない。彼の本当の葛藤は、ここから始まるのだった。






16-39. 超高速!参勤交代

監督 本木克英
出演 佐々木蔵之介深田恭子伊原剛志寺脇康文上地雄輔
2014年 (松竹) 119分

解説
優秀な映画向けの脚本に与えられる城戸賞に輝き、小説化されるやベストセラーとなった土橋章宏の同名作を映画化したコミカルな時代ドラマ。幕府から無理難題を押しつけられた小藩の藩主が藩と領民を守るため、知恵を絞って、逆境に立ち向かっていくさまが描かれる。藩主を佐々木蔵之介が務めるほか、個性派俳優が多数顔を揃えている。

ストーリー
元文元年春、磐城国の湯長谷藩は徳川八代将軍吉宗の治める江戸幕府から、通常8日かかる道のりにも関わらず突然5日以内に参勤交代をするよう命じられる。湯長谷の金山を手中に入れようとする老中・松平信祝(陣内孝則)の策略によるものだった。わずか1万5千石の小藩にとって、ただでさえ貯蓄も人手もない上にあまりにも短い日程を強いられたこの参勤交代は到底できようもないものだった。あまりの無理難題に憤りながらも、藩主・内藤政醇(佐々木蔵之介)は家老の相馬兼嗣(西村雅彦)に対策を講じさせる。そして、藩の少人数のみで山中を近道して駆け抜けていき、道中の人が見ているところでは渡り中間を雇って大人数に見せかけるという作戦を立てる。さらに東国一の忍びと言われる戸隠流の抜け忍・雲隠段蔵(伊原剛志)を道案内役に任じるが、一方で幕府の老中らはこの参勤交代を阻もうと手をのばしてくる……。




16-40.

監督 黒澤明
出演 寺尾聰倍賞美津子原田美枝子根岸季衣井川比佐志
1990年 (ワーナー・ブラザース) 121分

解説
監督自身が見た“夢”の世界を八つのオムニバス形式で描く。脚本・監督は 「」 の黒澤明。撮影は 「優駿 ORACION」 の斎藤孝雄と 「」 の上田正治が共同でそれぞれ担当。



ストーリー
「日照り雨」ある日、五歳位の“私”は母に見てはいけないと言われていた狐の嫁入りを見てしまう。家に帰ると母が恐い顔をして立っていた。狐が来て怒っていた、腹を切って謝れと言ってたという。一生懸命、死ぬ気になって謝って来なさいと母は言った。“私”は白鞘の短刀を持って、虹の下の狐の家に行くのだった。「桃畑」桃の節句の日、少年時代の“私”は不思議な少女(桃の精)を見る。少女を追って裏の桃の段々畑に出ると、人間と同じ雛人形が集まっていた。雛人形たちは桃の木を切り倒した“私”の家には行かないと言った。だが、ひとりの女雛が桃の木が切られるときに“私”は泣いてくれたということで、大勢の雛人形が舞を舞って、桃の花盛りを見せてくれた。しかし、気付くとそこには桃の木の切り株だけが残っていた。「雪あらし」“私”たち四人のパーティは、雪山登山中に猛吹雪に遭遇し、視界ゼロの雪渓に迷い、次第に睡魔に襲われる。眠りの中の夢か、幻覚か、吹雪の中から美女が現われ、みるみる鬼女に変わっていく。“私”は正気に戻り、死の眠りに陥っている仲間を起こした。吹雪は弱まり、視界が徐々に広くなる。そして、そのすぐ側に黄色いキャンプが浮かんでくるのだった。「トンネル」“私”は陸軍中隊長で、ひとりだけ戦争から生還してきた。トンネルの入口に手榴弾を背負った犬がいる。犬は“私”に向かって怒り吠えていた。長いトンネルを抜けたとき、そのトンネルの中から戦死したはずの野口一等兵が現われる。野口は自分の死が納得出来ず、この世をさ迷っていたのだ。さらに続いて全滅したはずの第三小隊の隊列までも“私”の前に現われた。“私”は戦争のもたらした悲劇の苦しみを味わいながらも、彼らに静かに眠ってくれと哀願する。そして、第三小隊は、出てきたトンネルの中へ、隊列を整えて消えてゆくのだった。「鴉」画学生の“私”は、展覧会場に飾られたゴッホの絵に魅せられているうちに、気付くと「アルルのはね橋」の絵の中を歩いていた。“私”は絵の中でゴッホと出会う。ゴッホは手を休めることなく、精力的にスケッチを続け、終わると画材を担いで次のスケッチ場所を求めて立ち去るのだった。「鴉のいる麦畑」の道を足早に歩いていくゴッホの後姿の前を沢山の鴉が飛び立つ。そして“私”が立っているのは、ゴッホの絵の前だった。「赤富士」遂に原発が爆発した。富士山が真っ赤に溶けていく。逃げまどう群衆。大地が、波が震動し荒れ狂う。“私”はただ絶望的に赤い霧の中で抵抗した。そこへ一人の男が現われる。男は原発の奴らは許せないと言い、海に身を投げようとするが、その男こそ原発に関わる男だった。「鬼哭」遂に地球も滅びようとしている。生きているものは何一つない。だが“私”の前に異様な男が現われる。それは鬼だった。この鬼たちは飢餓に悩まされている。食べ物がないから弱肉強食のように共食いをしているのだった。夕方になると鬼は泣く。死にたくても死ねないから泣くしかないのだ。そして“私”はそんな鬼たちが血の池の回りで泣く、哭く、大勢の鬼の姿を見るのだった。「水車のある村」新緑に抱まれた自然の豊かな村。“私”はこの村で一人の百三歳になる老人に話を聞いた。老人は人間も自然の一部であると説く。そんなとき遠くから村の静けさを破って歓声が聞こえてきた。今日はお祭りですかと老人に聞くと、葬式だという。老人は賑やかな葬列に鈴を持って加わる。“私”はそんな名も知らぬ人の墓石に花を置いて、村を後にするのだった。




16-41. 雲のむこう、約束の場所

監督 新海誠
出演 吉岡秀隆萩原聖人南里侑香石塚運昇井上和彦
2004年 (コミックス・ウェーブ) 91分

解説
短編 「ほしのこえ」 が絶賛された、新海誠監督が放つ長編アニメ。架空の戦後を舞台に、眠り続ける同級生を救おうとする2人の青年の奮闘をつづる青春映画だ。

ストーリー
日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキ(声:吉岡秀隆)と白川タクヤ(萩原聖人)は、同級生の沢渡サユリ(南里侑香)に憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、そしてもうひとつ。津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された、謎の巨大な「塔」。視界にくっきりとそびえるその白い直線は、空に溶けるほどの高みまで遥か続いていた。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、軍の廃品を利用し、山中の廃駅跡で小型飛行機を組み立てる二人。サユリも「塔」も、今はまだ手が届かないもの、しかしいつかは触れることができるはずのもの…二人の少年はそう信じていた。だが中学三年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう…。言いようのない虚脱感の中で、うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へとそれぞれ別の道を歩き始める。三年後、タクヤは政府諮問の研究施設に身をおき、サユリへの憧れを打ち消すように「塔」の研究に没頭していた。一方で目標を喪失したまま、言葉にできない孤独感に苛まれながら、東京で一人暮らしを送るヒロキは、いつからか頻繁にサユリの夢を見るようになる。そこでのサユリはどこか冷たい場所にいて、自分と同じように、世界に一人きりとり残されている、そう感じていた。ヒロキの元に届けられた、中学時代の知り合いからの手紙。しばらくは開ける気がせず放っておいたその封を、偶然開いたヒロキは、サユリがあの夏からずっと原因不明の病により、眠り続けたままなのだということを知る。サユリを永遠の眠りから救おうと決意し、タクヤに協力を求めるヒロキ。そして眠り姫の目を覚まそうとする二人の騎士は、思いもかけず「塔」とこの世界の秘密に近づいていくことになる。折りしも「塔」を巡る世界情勢は悪化の一途を辿り、開戦の危機も目前に迫っていた。「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか―」はたして彼らは、いつかの放課後に交わした約束の場所に立つことができるのか?




j16-42. サンマとカタール〜女川つながる人々

監督 乾弘明
出演 阿部淳石森洋悦阿部由理阿部美奈須田善明
2016年 (東京テアトル) 73分

解説
11年3月に起きた東日本大震災で津波にのまれ、住民の1割近くが犠牲となり、8割以上が住まいを失った宮城県女川町。中東のカタールの援助による冷凍冷蔵施設マスカーの完成を機に、町の主産業であるサンマ漁などを通して復興にかける人々の姿を約2年にわたって映しだす。中井貴一がナレーションを務める。

ストーリー
宮城県女川町。牡鹿半島の付け根にあり、サンマの水揚げで有名な水産業の町。石巻線の終着駅で、古くから天然の良港として栄えた美しい港町だった……。だが2011年3月11日、東日本大震災による津波で住民の1割近くが犠牲となり、8割以上が住まいを失った。被災したすべての市町村の中でも人口比では最も激烈な被害を蒙った町であったが、女川は着実に復興への道を歩み続け、今では“復興のトップランナー”と呼ばれている。実は震災後最初の希望は、中東の国カタールによってもたらされた。古くは漁業で栄えたカタールは、震災直後に基金を設立し津波対策を施した冷凍冷蔵施設「マスカー」を建設。2012年10月に本格操業を開始する。町の中がまだ瓦礫の山だった頃。女川港の奥にすっくと立つ雄々しいマスカーを見たとき、町の人は「女川は本当に復興するんだ」と希望を感じたという。その後マスカーの周辺には多くの水産加工工場の建築が進み、まさに女川の水産業復興の牽引役となった。そして2015年3月21日、女川駅再開。あれから5年経った今でも寝る間を惜しんで復興にかける若きリーダーたち、その仲間が生み出す波及効果。人々の輪は町を飛び越え広がってゆく……。




16-43. 蘇える金狼

監督 村川透
出演 松田優作風吹ジュン佐藤慶成田三樹夫小池朝雄
1979年 (東映) 131分

解説
昼間は平凡なサラリーマンを装いながらも、夜になると、身体を鍛え巨大資本乗っ取りを企む男の姿を描く。大藪春彦の同名の小説の映画化で、脚本は 「肉の標的・奪う!」 の永原秀一、監督は 「白昼の死角」 の村川透、撮影も同作の仙元誠三がそれぞれ担当

ストーリー
朝倉哲也、二十九歳。表向きは資本金十五億円の東和油脂本社経理課に勤める平凡なサラリーマンだが、いつの日か、この会社を乗っ取ってみせるという野望に燃えている。そのため、表面は真面目な会社員のポーズを装い、勤務後は、週二日はボクシングジムに通っている。その腕前は、コーチの野沢が是非試合をやらせたいと思うほどのものだが、朝倉は、試合に勝って有名になっては元も子もないので、何とか、その申し出を断っている。朝倉は、ある日、共立銀行の現金輸送車を襲い、九千万円を奪い取るが、その札は、ナンバーが銀行に登録されていて使えない。朝倉は、横須賀に出かけ、その札を麻薬に替え、それを再び安全な紙幣に替えた。朝倉は、手に入れた麻薬で、会社の上司小泉部長の愛人、永井京子を手なずけた。暫くして、朝倉は、会社幹部たちの横領事件をネタに、桜井という男がゆすりに来ていることをつきとめた。要求金額は五千万円、背後には、経済界の黒幕、鈴本光明が控えていた。京子から情報を得ていた朝倉は、会社が桜井へわたした内金二千五百万円を奪い取る。会社に金を取り返されたと思って激怒した桜井は、改めて二億円を要求。朝倉は、巧妙な手段で自分の秘めた力を幹部に示すと、桜井を消す仕命を受ける。朝倉は見事に任務を果たすが、幹部たちは、秘密を知った朝倉を消そうと殺し屋を放つが、反対に殺されてしまう。そして、ついに朝倉は、社長令嬢の絵理子と婚約することに成功する。会社の頂点まで、あと一歩と迫ったのだ。その頃、嫉妬に燃える京子は、ある決意をしていた。一方、朝倉は、京子との海外旅行を計画、二人分の旅券を持って京子の部屋に入った。京子は、薬を飲むと、朝倉の腹に鋭利な刃を突き刺した。息絶えた京子を後に、朝倉はよろめきながらも、出国手続を済ませた。数分後、飛行機は離陸した。スチュワーデスが客席を廻っていると、出血し、息絶えた朝倉の身体が横たわっていた。




16-44. 竜馬の妻とその夫と愛人

監督 市川準
出演 木梨憲武中井貴一鈴木京香江口洋介橋爪功
2002年 (東宝) 115分

解説
人気脚本家・三谷幸喜の舞台劇を、「東京マリーゴールド」の市川準監督が映画化。亡き竜馬にかかわる男女4人が、にぎやかな恋のさや当てを繰り広げるラブ・コメディ。

ストーリー
坂本竜馬が暗殺されて13年。竜馬のかつての同志たちは、今や政府の高官や軍の幹部に出世していた。ある日、そのうちのひとりで新政府の役人・菅野覚兵衛は、竜馬の十三回忌に彼の元妻・おりょうを招くべく、テキ屋の松兵衛と再婚し横須賀のおんぼろ長屋で貧乏生活を送っている彼女の元を訪れる。だがそこで、おりょうが竜馬にそっくりの愛人・虎蔵と駆け落ちを企てていたことが発覚。同志たちから、「これ以上、竜馬の名を汚すようなことがあった場合、おりょうを斬れ」との命を受けた覚兵衛は、夫である松兵衛におりょうを取り戻させようと大奮闘するのだが、情けないことに松兵衛は木刀一本振ることが出来ない。ところが、おりょうが長屋に連れて来た松兵衛も竜馬を気取っていただけの情けない男であったことが判明。更に、そのことにがっかりしたおりょうに言い寄られた覚兵衛もまた、竜馬の妻であった彼女を自分のものにすることが出来ない情けなさ。しかし騒動を通して、おりょうが竜馬だけしか愛していなかったことを悟った松兵衛と覚兵衛は、ひとりで出て行くと言う彼女を許してやるのだった。




16-45. 星守る犬

監督 瀧本智行
出演 西田敏行玉山鉄二川島海荷余貴美子温水洋一
2011年 (東宝) 128分

解説
とにかく泣けると話題を呼んだ村上たかしの大ヒット漫画を映画化した感動ドラマ。名優・西田敏行がごく普通の中年男を演じ何もかも失い、最後に残った愛犬ハッピーと共に過ごした、切なくも幸せだった旅を映し出す。監督が全国を探しやっと見つけたという、2人が最後に辿り着くひまわり畑は、印象的な原作の表紙を再現している。

ストーリー
夏。とある山中に放置されたワゴン車から、身元不明の中年男性と犬の遺体が発見された。だが、男性の遺体は死後半年を経過していたが、犬の遺体は死後1ヶ月しか経っていないことが判明。犬はなぜ、男のそばに寄り添って死んだのか……。市役所の福祉課に勤める奥津京介(玉山鉄二)は、偶然出会った少女・有希(川島海荷)と共に、死んだ男と犬の足取りを追う旅を始める。旅を進めるにつれ、その男・お父さん(西田敏行)が病気を患い、失業、離婚、一家離散、そして家を失い、唯一傍にいた愛犬・ハッピーと共に車で旅に出たことが明らかになっていく。奥津と有希の旅は、東京から北海道へ。お父さんとハッピーは、時に可笑しく、時に哀しく、旅の途中で出会った人びとに、忘れられない思い出を残していた。やがて、旅の終着点で、奥津と有希が見たものとは。そして、「星守る犬」という言葉にこめられた願いとは……。




16-46. 箱入り息子の恋

監督 市井昌秀
出演 星野源夏帆平泉成森山良子大杉漣
2013年 (キノフィルムズ) 117分

解説
ミュージシャンで、俳優としても活躍する星野源の初主演作となるラブストーリー。彼女もいないまま30代半ばを迎えた主人公が、代理見合いをきっかけに知り合った女性との恋に暴走していく様を、彼らの家族の姿を交えて描く。 「任侠ヘルパー」 では大胆な役どころにも挑戦した夏帆が、清楚なヒロインを魅力的に演じている。

ストーリー
市役所に勤める天雫健太郎(星野源)は、内気な性格が災いしてか、35歳にもなって女性と付き合ったことが一度もなかった。家と職場を往復するだけの日々で、ペットのカエルが唯一の癒しという健太郎を見かねて、健太郎の両親は親同士が子どもの結婚相手を探す代理お見合いに参加。今井家の一人娘・奈穂子(夏帆)とのお見合いを決めてくる。お見合い当日、緊張する中、清楚で美しい奈穂子を見て、健太郎は生まれて初めて恋に落ちる。奈穂子の目が見えないことはものともせず、好きという感情を爆発させる健太郎。しかし二人の行く手には幾多の壁が立ちふさがっていた……。




16-47. ジャージの二人

監督 中村義洋
出演 堺雅人鮎川誠水野美紀田中あさみダンカン
2008年 (ザナドゥー) 93分

解説
芥川賞作家・長嶋有の小説をもとに、田舎で何もしない夏休みを過ごす父子の姿を軽妙につづるコメディ。テレビや映画で活躍中の堺雅人とミュージシャンの鮎川誠が親子を好演。

ストーリー
会社を辞めたばかりの32歳の息子(堺雅人)は、54歳のグラビアカメラマンの父(鮎川誠)に誘われ、北軽井沢の別荘に向かう。父の飼うシベリアンハスキーのミロも一緒。別荘というと聞こえはいいが、実態は虫が出る上に、携帯の電波も入らない山奥の山荘だった。二人はそこで、古着のジャージを着て何もしない時間を満喫する。父はひたすらTVゲームで麻雀をし、息子は小説を書こうと持参した原稿用紙に一文字も書けずにいる。息子に浮気をしている妻(水野美紀)から電話が入ったり、隣の遠山(大楠道代)や父の友人岡田(ダンカン)が入れ替わり立ち代わり訪ねては去ってゆく。そんな緩い毎日が過ぎていく。一年後、二人と一匹は再び別荘へ向かう。今回は浮気をやめた息子の妻も一緒である。三人は揃ってジャージを着るが、息子と妻の間はまだギクシャクしていた。そして、妻は仕事があるといって二日後に帰ってしまう。来年も来るつもりなのか、ジャージは置いたままで。入れ違いにやってきたのは父の娘、花ちゃん(田中あさみ)。息子にとっては母が異なる妹だった。花ちゃんは夏休みにビデオを40本見ると言い、レンタルショップでビデオを借りたものの、ビデオデッキがない。ビデオデッキを持っている遠山に借りてくるが、ピアノの先生の訃報が入り、花ちゃんは東京に帰ることになる。翌朝、遠山に三人とミロの揃った写真を撮ってもらった後、父と花ちゃんは帰京する。一人になった息子は小説を書くために机に向かう。その翌朝、台風一過で爽やかに晴れ渡った空の下、携帯を取り出すと、妻からのメールを受信。息子はその返信を打つと、携帯を天に向かって高く掲げるのだった。




j16-48. 四月物語

監督 岩井俊二
出演 松たか子田辺誠一藤井かほり留美加藤和彦
1998年 (ロックウェルアイズ) 67分

解説
大学へ進学する為、北海道から上京してきた少女の日常を綴った青春ドラマ。監督・脚本は、 「スワロウテイル」 の岩井俊二。撮影を 「HAPPY PEOPLE」 の篠田昇が担当している。主演は 「東京日和」 の松たか子。

ストーリー
四月、桜が満開の季節。東京・武蔵野にある大学に通う為、北海道から上京してきた卯月は、慣れない土地で独り暮らしを始める。おとなしい性格の彼女は、変わった性格の友人・さよ子やアパートの隣人の照子など、個性の強い人々との触れ合いの中で、次第に心を開いていく。だが、そんな卯月もさよ子に大学の志望動機を聞かれた時だけは、思わず言いよどんでしまうのだった。実は、卯月には人に言えない不純な動機があったのだ。それは、高校時代に憧れていたひとつ上の先輩・山崎と同じ大学に通いたかったから。山崎を追って上京してきた卯月は、彼がバイトをしている本屋に頻繁に通うようになる。ある日、山崎は遂に彼女のことを想い出してくれる。卯月は、都会の片隅で愛の奇跡を信じるのであった。