17-1. 英霊たちの応援歌 最後の早慶戦

監督 岡本喜八
出演 永島敏行勝野洋本田博太郎中村秀和山田隆夫
1979年 (東宝) 124分

解説
昭和十八年十月十六日戸塚球場で行なわれた最後の早慶戦の後、出陣学徒として散華していった若者たちを描く。東京12チャンネルが開局十五周年を記念して製作。神山圭介の同名の小説の映画化で、脚本は 「炎の舞」 の山田信夫と 「ダイナマイトどんどん」 の岡本喜八の共同執筆、監督も同作の岡本喜八、撮影は 「青春の門 自立篇(1977)」 の村井博がそれぞれ担当。

ストーリー
昭和十八年春、文部省は六大学野球連盟の解散を厳命する。この知らせに早慶両校の部員は「もう一度早慶戦をやりたい」と願う。早稲田実業からバッテリーを組んで来た三上哲男と秋山信吾もその一人だ。数数の困難を乗り込え、試合は十月十六日に開かれた。しかし、三上は、第十三期海浜予備学生を志願して入隊し、この試合に参加出来ず、土浦海軍航空隊近くのレストランで、早大が勝利した記事を読んだ。試合後、両校校歌が斉唱され、感動にうわずった両校部員は、こんどは戦場で会おうと叫ぶ。十二月九日、三上、本田耕一、相田暢一は横須賀第二海兵団二等水兵として入団。米軍がマーシャル群島に上陸した昭和十九年二月一日、三上たちは、第十四期海軍飛行予備学生に合格、五月、土浦から鹿児島出水海軍航空隊に配属された。米軍が沖縄に上陸した頃、秋山は三上たちがいる航空隊に教官として配属され、全兵力が結集する九州に向かう。宿舎の黒板には特攻隊として死んでいった十三期生の書いた銀座の地図があり、一軒ずつ店の名が書かれていた。ところどころに空白があり、銀座に強い慶応勢が黒板の前に集まり、それをうめていく。いよいよ秋山たちも、特攻隊として飛行機に乗ることになった。奄美大島上空、秋山中尉以下十三名は、敵機を発見。グラマンとの激烈な空中戦で三上は両眼をやられてしまう。「秋山、見えない、突っこむまで誘導してくれ」「了解。サインを出すぞ、外角低め、もっと低め、そこでシュートだ。シュートをかけろ!」炎に包まれながら三上機は突っこみ、敵空母は爆発、炎上した。「ナイスボール、ストライクアウトだ」叫んだ秋山も黒煙と真っ赤な炎の中に消えていった……。





17-2. 紙の月

監督 吉田大八
出演 宮沢りえ池松壮亮大島優子田辺誠一近藤芳正
2014年 (松竹) 126分  (PG12)

解説
直木賞作家・角田光代の同名作を 「桐島、部活やめるってよ」 の吉田大八が、宮沢りえを主演に迎えて映画化したサスペンス。契約社員として銀行で働く平凡な主婦が、年下の大学生との出会いを機に、金銭感覚をマヒさせていき、やがて巨額の横領事件を引き起こすさまを描く。相手役の大学生を演じるのは若手実力派の池松壮亮。

ストーリー
1994年。梅澤梨花(宮沢りえ)は、子どもには恵まれなかったものの夫(田辺誠一)と穏やかな日々を送っている。契約社員として勤務する「わかば銀行」でも、丁寧な仕事ぶりで上司の井上(近藤芳正)からも高評価。支店では、厳格なベテラン事務員の隅より子(小林聡美)や、まだ若くちゃっかり者の窓口係・相川恵子(大島優子)ら、様々な女性たちが梨花と共に働いている。だが一見、何不自由のない生活を送っている梨花であったが、自分への関心が薄く鈍感なところのある夫との間には空虚感が漂い始めていた。ある夜、梨花の顧客で裕福な独居老人の平林(石橋蓮司)の家で一度顔を合わせたことのある孫の光太(池松壮亮)と再会した梨花は、何かに導かれるように大学生の彼との逢瀬を重ねるようになる。そんな中、外回りの帰り道にふと立ち寄ったショッピングセンターの化粧品売り場。支払い時にカードもなく、現金が足りないことに気づいた梨花が手を付けたのは、顧客からの預かり金の内の1万円だった。銀行に戻る前にすぐに自分の銀行口座から1万円を引き出して袋に戻したが、これが全ての始まりであった。学費のために借金をしているという光太に梨花は「顧客からの定期の申し込みがキャンセルになった」と200万を渡す。さらに顧客から預かった300万を自分の通帳に入れ、自宅で定期預金証書や支店印のコピーを偽造する……。やがて横領する額は日増しにエスカレートしていくのだった、上海に赴任するという夫には同行せず、梨花は光太と一緒に高級ホテルやマンションで贅沢な時間を過ごすが、光太の行動にも変化が現れ、ある日、光太が大学を辞めたことを告げられる。そんな折、隅が、銀行内で不自然な書類の不備が続いていることを不審に感じ始めていた……。




17-3. 自虐の詩

監督 堤幸彦
出演 中谷美紀阿部寛遠藤憲一カルーセル麻紀ミスターちん
2007年 (松竹) 115分

解説
業田良家の人気4コマ漫画を、中谷美紀、阿部寛の共演で映画化。不幸な生い立ちのヒロイン・幸江と内縁の夫・イサオによる一風変わった愛の日々を、笑いと涙を交えてつづる。

ストーリー
窓から通天閣の見える大阪・飛田の小さなアパートで、幸江(中谷美紀)は内縁の夫であるイサオ(阿部寛)と暮らしていた。元ヤクザのイサオはまともに勤めることもなく酒とギャンブルに溺れ、幸江が近所の中華料理屋で働くことで生計を立てていた。無口で気性の荒いイサオは、ことあるごとに部屋のちゃぶ台をひっくりかえす。それでも、ひたすらイサオに尽くす幸江の健気さに、隣の住人である小春(カルーセル麻紀)は胸を痛めていた。一方、中華料理屋の主人(遠藤憲一)は秘かに幸江に思いを寄せて、プロポーズの機会をうかがっている。そんなある日、幸江の中学時代に逮捕された父親の家康(西田敏行)が出所して、幸江のもとに現れる。妻に家出された家康は、キャバレーのホステス(名取裕子)を口説いて、その再婚資金を得るために銀行に押し入ったのだった。イサオは、ふたたび暴力団の組員となる誘いを組長(竜雷太)から受けていた。と、幸江の妊娠が発覚する。親もヤクザでその血を受け継いだイサオは苦悩のあげく、失踪してしまう。それでもイサオの子供を産もうと、身重な身体で必死に働き続ける幸江。しかし、誤って歩道橋から転落した彼女は救急車で病院へ運ばれた。手術を受け、ベッドで昏睡する幸江は過去の日々を思い出していた。貧乏だった幼い日。父の逮捕後、唯一の友人として励ましてくれた同級生の熊本さん。覚せい剤に溺れて、自分の肉体を売っていた若き日々。そんな頃、チンピラ時代のイサオと知りあった。イサオは、組長に盃を返して小指を詰め、幸江と一緒になった。そして、二人で海に行った幸せな新婚時代…。意識が戻ったとき、幸江の前にはイサオがいた。「三人で、海へ行こう」イサオの言葉に、幸江は涙が止まらなかった。半年後、生まれたばかりの赤ん坊と一緒に、海辺でたたずむ幸江とイサオの姿があった。




17-4. 夜逃げ屋本舗

監督 原隆仁
出演 中村雅俊大竹しのぶ谷啓高木美保益岡徹
1992年 (東宝) 106分

解説
借金苦の人々を救うべく活躍する夜逃げ屋の面々の姿を描いた社会派コメディ。脚本・監督は 「べっぴんの町」 の原隆仁。共同脚本は真崎慎と長崎行男。撮影は 「バカヤロー!4 YOU! お前のことだよ」 の前田米造がそれぞれ担当。



ストーリー
借金に苦しむ人々を救済すべく、正当な手段で夜逃げの斡旋をする“ミッドナイトラン”の社長・源氏は、康子、野口、新藤ら社員の面々と様々な調査を行い、用意周到な計画を立てて客を逃がす。一方、大帝都信販調査室の芙美子は、彼らの行動を何とか阻止しようと挑んでくるが、源氏らはその後も様々な手段で任務を遂行していく。ある日、暴力金融を営む浜崎組組長が、彼らに夜逃げの依頼をしてきた。昨今の経済情勢によって大帝都信販から19億円にのぼる負債を抱えていたのだ。さっそく彼らは、浜崎を急病人に仕立てて計画を実行するが、そこへ芙美子が入り込んできたことにより、組員は大騒ぎで後を追ってくる始末。それでも何とか浜崎を逃がす源氏。ところが今度は、これまで彼らが逃がしてきた客の行方を芙美子が突き止めて、財産の差し押さえを決行。もはやこれまでと思いきや、突如大帝都信販のパソコンに入力された返済者の全てが破産宣告。実はこれも源氏があらかじめ計画していた最後の作戦だったのだ。




17-5. 鴨川ホルモー

監督 本木克英
出演 山田孝之栗山千明濱田岳石田卓也芦名星
2009年 (松竹) 113分

解説
「鹿男あをによし」 の人気作家・万城目学のデビュー作を映画化した異色ドラマ。奇怪な祭り“ホルモー”の世界に身を投じた大学生の姿を、濃密かつ脱力な笑い満載で描き出す。

ストーリー
京都。二浪して京大生となった阿倍(山田孝之)と同じ新入生の帰国子女・高村(濱田岳)は、三回生の菅原(荒川良々)から“京大青竜会”という怪しげなサークルの新歓コンパに誘われる。阿倍はその席で“美しい鼻筋”を持つ早良京子(芦名星)に一目惚れ、彼女に近づきたい一心で思わず入会してしまう。安倍の他にも高村、早良、大木凡人似のオタク系メガネ女子・楠木ふみ(栗山千明)、超高圧的で仕切り屋の芦屋(石田卓也)、見分けのつかない気弱な双子の三好兄弟(斉藤祥太、斉藤慶太)など、一風変わった面々が入会した。当初は普通のレジャーサークルと思われた青竜会だったが、祇園祭宵山の夜、安倍たちは、サークルの目的が、京都で千年続くという謎の祭り“ホルモー”を行うことだと知らされる。しかも“オニ”と呼ばれる小さく奇妙な式神を操り、京大・立命館・龍谷・京都産業大学の対抗戦が行なわれるというのだ。嘘くさい話に半信半疑のまま、キテレツなオニ語の習得やちょっと変態的な指令ポーズなど、1人100匹のオニを操るための特訓が開始。それから半年が経とうとしていた師走のある夜、安倍たちは吉田神社に呼び出される。厳粛な雰囲気の中、突如“レナウン娘”を歌いながら裸踊りを始める菅原たち。躊躇していた安倍たちも、いつのまにか全裸で上回生の輪に加わってトランス状態で踊り続けた。こうして“吉田代替りの儀”は終了、安倍たちの前に1000匹の小オニたちの群れが現れた……。そんなある日、安倍は、ずっと想い焦がれてきた早良が天敵・芦屋と付き合っていることを知る。ショックで青竜会を辞めると言い出した安倍に、菅原は古いホルモーの規定“17条”を持ち出した。10人の青竜会を5人ずつの2チームに分けて対戦させるというのだ。安倍は、高村、楠木、三好兄弟の賛同を得て、強敵・芦屋と対戦することになる。だが、禁断の17条ホルモーには、とてつもなく恐ろしい秘密が隠されていたのだった……。




17-6. 偉大なる、しゅららぼん

監督 水落豊
出演 濱田岳岡田将生深田恭子渡辺大貫地谷しほり
2014年 (東映=アスミック・エース) 114分

解説
映画化された 「鴨川ホルモー」 などマキメワールドと称される独特の世界観で知られる万城目学の同名小説を映画化したアドベンチャー。琵琶湖のほとりに住み、不思議な力を備えた高校生の青年と彼のもとにやってきた青年が繰り広げる騒動が描かれる。濱田岳、岡田将生らが、赤い制服に身を包んだ高校生に扮し、笑いを誘う。

ストーリー
琵琶湖畔の街、石走に住む本家の元へやってきた日出涼介(岡田将生)。本家の日出家は1300年来代々琵琶湖から不思議な力を授かる一族で、涼介は高校への進学を期に修行するために本家で居候を始める。日出家は江戸時代に建てられた石走城に住み、石走の街を牛耳っていた。本家の跡取り息子・淡十郎(濱田岳)は最強の力の持ち主とされ、人々から崇め奉られていた。その姉・清子(深田恭子)は『グレート清子』と呼ばれるほどあまりに強大な力を持つため社会に馴染めず、城に引きこもっていた。城での暮らし、白馬を乗りこなす清子、源治郎(笹野高史)が漕ぐ船での登校など、涼介にとっては本家での生活は戸惑うことだらけだった。さらに生まれながらにして殿である淡十郎と接するうちに供の者として扱われ、自ずと主従関係ができてしまう。ある日、淡十郎は校長(村上弘明)の娘・速水沙月(大野いと)に恋をする。しかし沙月が思いを寄せるのは同じクラスの棗広海(渡辺大)であることを知り、尋常ではないほど取り乱す淡十郎。広海のいる棗家もやはり力を持っており、1300年にわたり日出家とライバル関係にある一族だった。元々いがみあっていた両家は淡十郎の小さな失恋をきっかけにさらに対立を深め、やがて世界を滅ぼしかねない大騒動を巻き起こす……。




17-7. 信長協奏曲コンツェルト

監督 松山博昭
出演 小栗旬柴咲コウ向井理山田孝之藤ヶ谷太輔
2016年 (東宝) 110/126分

解説
戦国時代にタイムスリップし、うりふたつだった戦国武将・織田信長の身代わりとして生きる事になった高校生サブロー。その数奇な運命を描く 「ゲッサン」 に連載中の石井あゆみの同名コミックが原作の小栗旬主演による人気ドラマを映画化。信長の正室・帰蝶役の柴咲コウや池田恒興役の向井理などドラマ版のキャストが引き続き出演する。

ストーリー





j17-8. BRAVE HEARTS 海猿

監督 羽住英一郎
出演 伊藤英明加藤あい佐藤隆太仲里依紗三浦翔平
2012年 (東宝) 116分

解説
海上保安官の青年と仲間たちとの絆を描く、人気コミックが原作のアクション・ドラマの劇場版第4作。原作でのラストエピソードに当たり、映像化は不可能と言われていた、ジャンボジェット機緊急海上着水事故に、海上保安庁の精鋭36人からなる特殊救難隊が挑む。仙崎役の伊藤英明、その妻役の加藤あいら主要キャストが顔をそろえる。

ストーリー
世界最大級の天然ガスプラント“レガリア”爆発事故から2年。仙崎大輔(伊藤英明)は自ら志願し、海難救助のエキスパートであり最も危険な事案に従事する“特殊救難隊”で、後輩の吉岡(佐藤隆太)と共に海難救助の最前線にいた。嶋副隊長(伊原剛志)の指導の下、日々苛烈な任務をこなしながらも、充実した日々が過ぎてゆく。大輔の妻・環菜(加藤あい)は2人目の子どもを身籠り、吉岡にはキャビンアテンダントの美香(仲里依紗)という恋人が出来ていた。そんなある日、羽田空港に向けて飛行中のジャンボ旅客機のエンジンが炎上する事故が発生。飛行困難な状況に陥った旅客機の救助方法が検討される中で、総合対策室の下川救難課長(時任三郎)は、夕闇が迫り視界が悪くなる状況にもかかわらず、前代未聞の東京湾への着水を提案する。しかし、海上着水に成功したとしてもジャンボが浮いていられる時間はわずか20分。機体が沈む前に乗客乗員346名全員を助け出す事が出来るのか!?さらに、その飛行機には美香も乗務していた。特救隊や現場に駆け付けた第5管区の服部(三浦翔平)、警察、消防、現場周辺の関係機関を巻き込んだ空前の大救出計画。日本中が固唾を飲んでその行方を見守る中、旅客機の村松機長(平山浩行)は東京湾着水に向けて降下を開始する……。その先には、予想もしない事態が仙崎たちを待ち受けていた……。




17-9. 油断大敵

監督 成島出
出演 役所広司柄本明夏川結衣菅野莉央前田綾花
2003年 (ゼアリズエンタープライズ=ケングルーヴ) 110分

解説
演技派・役所広司&柄本明が共演した、実話に基づく感動の人間讃歌。実直な刑事と伝説の大泥棒が追いつ追われつ、立場を超えて不思議なきずなを育む異色の人間ドラマだ。

ストーリー
平成4年、夏。妻を亡くし、男手ひとつで8歳になる娘・美咲を育てている泥棒専門の新米刑事・関川仁は、ある日、偶然にも大泥棒の“ネコ”こと猫田定吉を逮捕する。しかし、ネコはのらりくらりと取り調べを交わすばかりで、どんなヴェテラン刑事をしても彼に自供させることが出来ない。ところが、仁の実直さを気に入った彼は、仁にあっさり自供を始めた上、泥棒刑事としてのイロハや一流の泥棒の手口、哲学、プロフェッショナリズムを教えてくれるのであった。それから、10年の歳月が流れた。ネコの教えのお陰で、今ではすっかりヴェテラン刑事となった仁は、出所して仕事を再開したネコを再び逮捕する。だが、今回のネコはなかなか自供しようとしない。そんな中、仁は看護学校に通う美咲が、卒業したら海外で看護活動をしたいと聞かされ動揺する。いつまでも幼いと思っていた娘は今、自らの翼で飛び立とうとしているのだ。しかし、そのことがきっかけで、彼は不幸な生い立ちのネコもまた、自らの翼で飛び立とうとして盗みを始めたのだと知る。そして、それを理解した時、遂に自分の力でネコを自供に導くことが出来たのであった。




17-10. あん

監督 河瀬直美
出演 樹木希林永瀬正敏市原悦子内田伽羅浅田美代子
2015年 (エレファントハウス) 113分

解説
「萌の朱雀」 でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を、 「殯の森」 では同グランプリを獲得した河瀬直美監督が、作家やパフォーマーとして活躍するドリアン助川が人はなぜ生きるのかという根源的な問いに迫った同名小説を映画化。小さなどら焼き屋で粒あん作りを任された元ハンセン病患者の女性の姿を、四季の情景を織り交ぜながら描く。偏見にさらされ続けても精一杯生きようとする女性を 「わが母の記」 で第36回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した樹木希林が、人生につまずいた雇われ店長を 「KANO 1931海の向こうの甲子園」 の永瀬正敏が、女性の良き理解者を 「黒い雨」 の市原悦子が演じる。

ストーリー
縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏のもとに、ある日、求人募集の張り紙を見た徳江(樹木希林)がやってくる。彼女の勢いにのまれどら焼きの粒あん作りを任せたところ、あんの味が評判となりあっという間に店は大繁盛。つぶれたどら焼きをもらいにくる女子中学生・ワカナもだんだんと徳江に馴染んでいく。しかしかつて徳江がハンセン病患者だったことが広まり、客が一気に離れていった。この状況に徳江は店を去り、千太郎やワカナの前から消えてしまう。それぞれの思いを胸に、二人は徳江を探す……。




j17-11. 難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版 12 逆転相続

監督 萩庭貞明
出演 竹内力古本新之輔竹井みどりいしのようこ結城哲也
1998年 JSDSS(ジーダス) 75分

解説
売れない演歌歌手の藤巻は銀二から金を借り蒸発してしまう。彼を追って行くと、藤巻が何者かに全財産を騙し取られたことが判明する。さらに新たな事実を掴んだ銀二は、ある作戦を思い付く・・・。






17-12. のんちゃんのり弁

監督 緒方明
出演 小西真奈美岡田義徳村上淳佐々木りお山口紗弥加
2009年 (キノ フィルムズ) 107分

解説
弁当屋を開こうと奮闘する女性の姿を描き、人気を博したコミックが原作のハートフルムービー。小西真奈美が持ち前の明るさで周囲を和ませるアラサーのヒロインを熱演。

ストーリー
31歳の永井小巻(小西真奈美)は東京下町育ちの専業主婦。ある日、ダメ亭主の範朋(岡田義徳)に愛想を尽かした彼女は、娘の乃里子=“のんちゃん”(佐々木りお)を連れて、母フミヨ(倍賞美津子)のいる京島の実家に出戻る。のんちゃんを幼稚園に入れ、仕事探しを始めるが、主婦歴が長くキャリアのない小巻に世の中は甘くなかった。受ける面接は不採用続き。やむなく、のんちゃんの幼稚園の先生でもある同級生の玉川麗華(山口紗弥加)の紹介で、水商売のアルバイトを始める。だが、セクハラに遭って喧嘩した末、早々に辞めてしまう。なけなしの貯金も底をつき、焦りだけが空回り。自暴自棄寸前のところへ範朋が現れて、離婚には絶対に応じないと主張。小巻やのんちゃんの周りをうろつく。だがその一方で、初恋の同級生、川口建夫(村上淳)と16年ぶりに再会。互いに惹かれあっていく。そんな中、資格もこれといった職歴もない小巻の唯一の才能が開花する。それはお弁当作り。娘のために作ったのり弁が幼稚園で大評判になり、大人たちにも作るようになったのだ。あまりの美味しさから、タダでは申し訳ないと、お金を集めて持ってくる麗華。これに感激した小巻は、自分で“安くて美味しい最高のお弁当屋を開く”ことを決意。早速、小料理屋“ととや”の主人・戸谷(岸部一徳)に、弟子入りを志願する。困惑する戸谷だったが、熱意に負けて弟子入りを許可。やがて、料理だけではなく、働くことの意味や生きることについて、厳しくも温かい言葉で小巻を支えるようになってゆく。食品衛生責任者免許も取得し、目標に向かって奮闘する小巻だったが、店をオープンするための資金が貯まらない。困った小巻に、戸谷さんがお昼だけ“ととや”を貸してもいいと申し出る。さらには、建夫が“一緒にお弁当屋をやらないか”とプロポーズ。話が急展開する中、のんちゃんがいなくなったと幼稚園から連絡が入り大騒動に発展する……。




17-13. 相棒 劇場版II 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜 

監督 和泉聖治
出演 水谷豊及川光博小西真奈美小澤征悦宇津井健
2010年 (東映) 119分

解説
2010年に放送開始10周年を迎えた水谷豊主演の人気刑事ドラマを再び映画化。警視庁本部で起きた人質籠城事件を発端とした警察内部の不穏な動きに、特命係の相棒コンビ、杉下右京&神戸尊が挑む。組織の腐敗や社会の矛盾を突く硬派なストーリーをユーモアを交えつつ描く作風はそのままに、映画ならではのダイナミズムも味わえる。

ストーリー
日本警察の要所・警視庁本部内で、前代未聞の人質籠城事件が発生。人質は、田丸警視総監(品川徹)、長谷川副総監(國村隼)を始めとした幹部12名。現場となった会議室は機動隊と特殊捜査班SITによって完全に包囲されるが、犯人の動機は不明。要求もないまま、いたずらに時間が過ぎていく。いち早く事件に気づいたのは、特命係の神戸尊(及川光博)と杉下右京(水谷豊)。右京は会議室内の様子を把握することが肝心と、鑑識の米沢守(六角精児)や元特命係の陣川公平(原田龍二)の協力を得て、誰も予想しなかった奇策に出る。一方、捜査本部では、幹部たちが囚われているため思うように進展しない事態に、捜査一課の伊丹憲一(川原和久)、三浦信輔(大谷亮介)、芹沢慶二(山中崇史)らが苛立ちを募らせていた。そこへ情報を入手した右京が現れ、籠城犯が元警視庁刑事の八重樫哲也(小澤征悦)だと判明。籠城前に尊が八重樫から助け出した女性が総務部装備課の朝比奈圭子(小西真奈美)であることを突き止める。その時、緊迫する会議室内から2発の銃声が。右京の強硬な反対にも関わらず、SITと機動隊員たちが会議室内に突入し、事態は終結。人質は無事に保護される。だが、籠城した八重樫の目的は何だったのか?大河内監察官(神保悟志)の事情聴取に対しても、12名は言葉を曖昧にしたままで、何の証言も得られない。全員が一様に口を閉ざすことに疑問を抱いた右京と尊は、角田課長(山西惇)らの協力を得て、独自に幹部たちへの聞き込みを開始。一方、事件の報告を受けた警察庁幹部の小野田官房室長(岸部一徳)は、金子警察庁長官(宇津井健)とともに、不穏な動きを見せ始める。徐々に明らかになってくる事実。それは、八重樫や圭子が関わった過去の大きな事件に関する衝撃の真相だった……。




17-14. アドレナリンドライブ

監督 矢口史靖
出演 石田ひかり安藤政信松重豊角替和枝マギー
1999年 (日本出版販売=ゼアリズエンタープライズ) 111分

解説
ヤクザの金2億円を巡って、平凡な男女が巻き起こす騒動を描いたコメディ。監督・脚本は 「ひみつの花園」 の矢口史靖。撮影を 「ビッグ・ショー! ハワイに唄えば」 の浜田毅が担当している。主演は、 「ベル・エポック」 の石田ひかりと 「鉄道員」 の安藤政信。99年度ベルリン国際映画祭ヤングフォーラム部門、香港国際映画祭、シアトル国際映画祭、ブリスベン国際映画祭、バンコク映画祭コンペティション部門、台北映画祭出品作品。

ストーリー
レンタカー屋で働くごく平凡な青年・悟は、ある日、黒岩というヤクザのジャガーに車を追突させ、事務所に連れて行かれてしまう。ところが、そこでガス爆発が発生。奇跡的に生き残った彼は、偶然、事務所の表に居合わせた人生超地味な看護婦・静子と共謀して、混乱に乗じてヤクザの闇金2億円を盗み出す。警察の取り調べをかわし、2億円をゲットしてほくそ笑むふたり。と思いきや、静子の勤める病院に運ばれていた重傷の黒岩がチンピラ6人組を使って彼らに迫ってきた。捕まったら殺される!悟と静子はチンピラたちの追跡を切り抜け、高原のホテルへと逃げ延びるのであった。新婚だと偽り、ホテルのスイートルームに宿泊したふたりは、洋服を買ったり髪を切ったり贅沢三昧。しかも、ふたりの関係もいい雰囲気だ。ところが、静子の金が泥棒に盗まれてしまった。なんとか取り戻すことに成功するも、事件がテレビのニュースで流れてしまい、それを見たチンピラ6人組と黒岩が、高原のホテルへやってきてしまう。2億円を巡り、悟と静子、欲に目が眩み黒岩を裏切ったチンピラ6人組、そして黒岩が三つ巴の争奪戦が展開。だが、壮絶なカーチェイスの末、金は全て燃えてしまうのであった。しかし、実は静子の機転で金はふたりの結婚通知葉書にすり替えられていたのである。こうして、まんまと2億円をゲットした悟と静子は、車に乗って新しい人生に向けて旅立つ。





17-15. ばしゃ馬さんとビッグマウス

監督 吉田恵輔
出演 麻生久美子安田章大岡田義徳山田真歩清水優
2013年 (東映) 119分

解説
「純喫茶磯辺」 の吉田恵輔監督が、シナリオライターになるという夢をあきらめきれずにもがき続ける、性格も考え方も正反対な男女の出会いと奮闘を描くヒューマンコメディ。恋愛やおしゃれよりも夢を追う事を大切にする三十路のヒロインを麻生久美子が、彼女に恋する年下男を関ジャニ∞の安田章大が演じる。

ストーリー
学生時代からシナリオライターを目指しているが、なかなか芽の出ない34歳の馬淵みち代(麻生久美子)は、友人のマツモトキヨコ(山田真歩)を誘って社会人コースのシナリオスクールに通うことに。そこで出会ったのは、自称もうすぐ天才脚本家の超自信過剰な“ビッグマウス野郎”こと天童義美(安田章大)・28歳。そんな天童を毛嫌いする馬淵だったが、天童は“ばしゃ馬”のようにシナリオを書き続ける馬淵にひと目ぼれ。俺がつき合ってほしいって言ったらどうする、と天童は馬淵に声をかけるが「ありえない」とあっさり振られてしまう。長い間頑張ってきた馬淵にとって、口先ばかりの天童は恋愛対象以前に性格的にまったく合わないタイプだった。しかも、馬淵の頭の中はシナリオのことばかり。お洒落も恋愛もそっちのけ、合コンの席でもバイト中でもいいアイデアが思いつけばパソコンを開いてせっせと書き出すのであった。だがコンクールの一次審査も通らず、まだまだストイックにならないと、と自分を奮い立たせる馬淵。そんなある日、シナリオスクールの講師として来ていた映画監督の何気ない一言をきっかけに、老人ホームを舞台にした介護の話を書くことにした馬淵は、かつて役者を目指していたが今は介護士として働く元恋人・松尾健志(岡田義徳)に頼んで老人ホームのボランティアを始める。しかし、キヨコが映画の脚本を書くことになったと知り、嫉妬とやるせなさで落ち込んでしまう。一方、ひたむきに夢を追いかける馬淵の姿に刺激された天童は、初めて自分自身を見つめペンをとることを決意。やがて、反発しあっていた二人の距離は徐々に縮まっていくのだが……。






j17-16. 映画 中村勘三郎

監督 松木創
出演 十八代目中村勘三郎
2013年 (松竹(協力)) 95分

解説
2012年12月5日に急逝した歌舞伎俳優・十八世中村勘三郎に密着したドキュメンタリー。20年にわたる密着取材、7000時間以上にのぼる映像から厳選したシーンを抽出し、舞台の上の顔から家庭の中のプライベートな姿まで、稀代の歌舞伎俳優の真の姿を映し出す。監督は、テレビのドキュメンタリーを手掛ける松木創。

ストーリー
2012年12月5日に急逝した歌舞伎俳優・十八世中村勘三郎。1959年、3歳で初舞台を踏んでから、半世紀以上にわたって、その姿は映像に収められてきた。日本が世界に誇る歌舞伎という伝統芸能を後世に伝えようと粉骨砕身する姿、若い世代の心を掴むため現代劇の劇作家たちとともに革新的な挑戦を続ける姿、父親として、師匠として、2人の息子たちに芸の魂を宿そうと奮闘する姿など、舞台の上の俳優としての顔から、家庭の中のプライベート映像まで、収録された映像は7000時間以上にものぼる。稀代の歌舞伎俳優・勘三郎はどこを目指していたのか、人々に何を伝えたかったのか、命をかけ、人生をかけ、何を成し得たのか……膨大な記録映像から厳選したシーンを抽出し、歴史に残る俳優の真の姿を映し出す。




17-17. 銀座カンカン娘

監督 島耕二
出演 灰田勝彦古今亭志ん生浦辺粂子笠置シヅ子高峰秀子
1949年 (新東宝) 68分

解説
製作は 「流星」 「グッドバイ(1949)」 の青柳信雄、脚本は 「春の戯れ」 につぐ山本嘉次郎と元日活協同プロダクション、プロデューサー、朝鮮映画製作部長をしていた中田晴康が戦後初の協同執筆、監督は 「今日われ恋愛す」 「グッドバイ(1949)」 の島耕二、キャメラは 「グッドバイ(1949)」 の三村明がそれぞれ担当する。出演は 「花くらべ狸御殿」 「我輩は探偵でアル」 につぐ灰田勝彦 「グッドバイ(1949)」 の高峰秀子のほか岸井明 「結婚三銃士」 の笠置シヅ子らが共演している。

ストーリー
落語家の新笑は、いまは引退して妻のおだいと、子供とささやかな生活を営んでいたそこへ居候として入ってきたのが、新笑が昔世話になったという恩人の娘お秋と、お秋の友人のお春だった。二人の明朗な娘達は朝から歌をうたって、おだいをイライラさせる。新笑の甥の武助は、会社の合唱隊を組織して歌に精進しているし、お春は声楽家、お秋は画家と、いずれも芸術家としての意欲にもえていた。しかし一文なしの娘達には、絵の具もピアノも買うことは出来ず、そうかといってブラブラといつまでも遊んでいる訳にも行かなかった。お秋が職さがしに出かけようとすると、おだいにポチを捨ててきてくれと頼まれてしまった。ポチをつれたお秋が捨場に迷っているとある映画会社のロケ隊に出会った。しかもその撮影に是非ポチと一しょに出てくれという話になり、一日だけエキストラとしてキャメラの前に立つことになった。撮影は進行して、女優の山田美恵が池の中に放り込まれることになって、ハタと困ってしまった。というのは山田嬢が、ガンとして承知しないのである。そこで代役を使うことになったので、お秋は早速お春をよんできて、代行させた。おかげで二人は千円という大金を手にすることが出来たのだった。そのエキストラで知り合った白井哲夫の世話で二人はバーで歌をうたうことになった。バーからバーへ毎夜銀座の裏から裏へ、白井の伴奏で三人は働いた。おかげでお秋もお春も、小ざっぱりした洋服と、いくらかの貯金も出来た。新笑の家では、生活も苦しく、しかも月一杯に十万円払い込まないと家を追いたてられると聞いて、恩返しはこの時とばかり、三人で十万円を送って新笑の苦境を救ったのだった。そのころから武助も会社をクビになったので三人の中に加って、武助とお秋、白井とお春の青春コンビは、カンカンブギウギのリズムと共に、親密さを増していった。新笑も引退しているような時代ではないと、再び落語家として第一線で活躍することになったその高座復帰のおひろめの夜は、急テンポで結ばれた、武助とお秋の婚礼ひ露の晩でもあったのだ。





17-18. 言の葉の庭

監督 新海誠
出演 入野自由花澤香菜平野文前田剛井上優
2013年 (東宝映像事業部) 46分

解説
秒速5センチメートル」 など、繊細な映像表現で人気を博す、アニメーション作家・新海誠によるラブストーリー。現代の東京を舞台に、雨の日に出会った靴職人を目指す高校生の少年と、年上の女性との恋の行方がつづられる。夕立や天気雨など、様々なタイプの雨を丁寧に描き出し、登場人物たちの心の変化や揺れを表現している。

ストーリー
高校1年生のタカオ(声:入野自由)は靴職人を目指しており、アルバイトもする一方、こつこつと自分で靴を作っていた。雨の朝は学校をさぼって日本庭園で靴のスケッチを描きデザインを考えている。ある雨の日庭園で、チョコを食べながら一人缶ビールを飲む謎めいた女性と出会う。女性は、ユキノ(声:花澤香菜)といった。その日から、約束はしていないものの雨の日の午前中に会うようになっていく二人。ユキノが自分の居場所を見失っていることを知り、タカオは彼女が歩きたくなるような靴を作りたいと思う。揺れ動く二人の心模様をよそに、梅雨はもうじき明けようとしていた……。





17-19. 告白 

監督 中島哲也
出演 松たか子岡田将生木村佳乃高橋努井之脇海
2010年 (東宝) 106分  (R15+)

解説
2009年の本屋大賞に輝いた湊かなえの同名ベストセラー小説を鬼才・中島哲也監督が映画化した衝撃作。担任するクラスの生徒に娘を殺された女性教師の狂気を松たか子が熱演。

ストーリー
とある中学校。終業式後のホームルームで、1年B組の担任・森口悠子(松たか子)は、37人の生徒を前に語り出す。私の娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです……。一瞬、静寂に包まれる教室。事件に関わった関係者たちの告白によって真相が明らかになっていく中、森口は、罪を犯して反省しない犯人に対し想像を絶する方法で罰を与える……。




17-20. 麻雀放浪記 (Mah-Jong)

監督 和田誠
出演 真田広之大竹しのぶ加賀まりこ内藤陳吉田良全
1984年 (東映) 109分

解説
敗戦直後の東京の片隅でひたすら麻雀を打ち続け、様様な勝負師との出会いでもう一つの人生を学んでいく若者を描く。阿佐田哲也の同名小説の映画化で、イラストレーターの和田誠が初の脚本を執筆、監督としてデビュー、 「野菊の墓」 の澤井信一郎が脚本を共同執筆している。撮影は 「ダブルベッド」 の安藤庄平。

ストーリー
敗戦直後の上野。哲は終戦後も学校へは戻らずブラブラしていたが、ある日、勤労動員の工場で働いていた時にバクチを教えてくれた上州虎と偶然会った。そして、虎に連れられてチンチロ集落に足を踏み入れる。なけなしの金しかない哲は、プロのバクチ打ちであるドサ健の張りにノッた。ドサ健のおかげで相当な勝金を得ることができた哲だか、その大半をコーチ料としてドサ健にとられてしまった。そんなドサ健に哲は、強烈な対抗心と同時に奇妙な友情を抱く。数日後、二人はアメリカ兵相手の秘密カジノ「オックス・クラブ」へ乗り込んだ。しかし、ドサ健は勝つだけ勝つと、哲が金を持っていないのを承知で帰ってしまい、哲は負け金が払えずアメリカ兵に打ちのめされてしまう。そんな哲を介抱してくれたのは、カジノのママだった。その夜、哲はママに抱かれ、初めて女を知った。翌日からママのもとで本格的な麻雀修業が始まった。それにつれてママへの思慕も深くなっていった。ある日、哲は魔術師的なプロに出会う。出目徳といって、虎のボス的存在だった。この徳から哲は“二の二の天和”というコンビ技を仕込まれ、いよいよドサ健と対決することになる。その頃ドサ健は、情婦のまゆみの家を雀荘にして大層な羽振りだった。哲と出目徳、そしてドサ健一派との対決は、哲たちの圧勝に終わった。ドサ健は持ち金全部では足りず、まゆみの家の権利書まで手離すほどだった。ドサ健は再度の対決を期すが、タネ銭がないので、まゆみを吉原に売ることにする。ここで一肌脱いだのがゼゲンの達。彼は、先刻の勝負に立ち会っており、ドサ健たちのプロ魂に惚れていたのだ。達のおかげでまゆみは女郎にならずにすんだ。一方、「オックス・クラブ」のママが人知れずいなくなった。男に頼ることなく一人で生きるママ、裏切られてもなお一人の男を思い続けるまゆみ。この二人の愛を通して、哲は少年から大人に成長した。再び対決の日が来た。哲、ドサ健、達、そして出目徳、哲は一匹狼のギャンブラーとして互角に渡り合う。二昼夜、勝負が続く。突然、出目徳が倒れた。“九蓮宝燈”という大きな手に、ヤクで弱っていた心臓が耐えられなかったのだ。三人は、出自徳の死体を彼の家まで運んで行き、帰りに上州虎をひろって、再び勝負を続けるべく、家に戻っていくのだった。





17-21. 青天の霹靂

監督 劇団ひとり
出演 大泉洋柴咲コウ劇団ひとり笹野高史風間杜夫
2014年 (東宝) 96分

解説
お笑いだけでなく、俳優、作家としてマルチな活躍を見せる劇団ひとりが映画監督に初挑戦したヒューマンコメディ。大泉洋演じる売れないマジシャンがひょんな事から40年前にタイムスリップし、若き日の両親と出会い、自らの出生の秘密を知る。劇団ひとり本人も、主人公の父親の若き日を演じ、大泉とコミカルなやりとりを見せる。

ストーリー
薄汚れたマジックバーで日々働く39歳の売れないマジシャン轟晴夫(大泉洋)は、幼い頃、母に捨てられ、父とは10年以上絶縁状態が続いていた。そんなある日、晴夫のもとに警察から電話が入り、父の死を知らされる。遺骨を抱え、ホームレス生活だった父の住み家のダンボールハウスに来た晴夫は自らの未来を重ね、「なんで俺、生まれてきたんだろう」と絶望に暮れるのだった……。そこに青天の霹靂――青空に一閃の雷が光り、晴夫を直撃する。気付けば晴夫は、40年前の浅草にタイムスリップしていた。浅草ホールを訪ねた晴夫は、スプーン曲げを披露して一躍人気マジシャンとなっていく。そんな中、同じくマジシャンをやっていた若き日の父・正太郎(劇団ひとり)と、彼のアシスタントである母・花村悦子(柴咲コウ)と出会った晴夫は、ひょんなことから正太郎とコンビを組むことになる。やがて、悦子の妊娠が発覚、晴夫の出生の秘密が次第に明らかになっていく……。




17-22. 天国と地獄 (High and Low)  

監督 黒澤明
出演 三船敏郎香川京子江木俊夫佐田豊島津雅彦
1963年 (東宝) 143分

解説
エド・マクベイン原作“キングの身代金”を 「椿三十郎」 の小国英雄、菊島隆三、久板栄二郎、黒澤明が共同で脚色、黒澤明が監督した刑事もの。撮影は 「娘と私」 の中井朝一と 「ニッポン無責任時代」 の斎藤孝雄。



ストーリー
ナショナル・シューズの権藤専務は、大変な事件に巻込まれてしまった。明日まで五千万円を大阪に送らないと、次期総会で立場が危くなるというのに、息子の純と間違えて運転手の息子進一を連れていってしまった誘拐犯人から、三千万円をよこさないと進一を殺すという電話があったからだ。苦境に立った権藤は結局金を出すことになった。権藤邸に張りこんだ戸倉警部達は権藤の立場を知って犯人に憎しみを持った。金を渡す場所。それは、明日の第二こだまに乗れということだった。犯人は戸倉警部達を嘲笑するかのごとく、巧みに金を奪って逃げた。進一は無事にもどった。権藤は会社を追われ、債権者が殺到した。青木は進一の書いた絵から、監禁された場所を江の島附近と知って、進一を車に乗せて江の島へ毎日でかけていった。田口部長と荒井刑事は、犯人が乗り捨てた盗難車から、やはり江の島の魚市場附近という鑑識の報告から江の島にとんだ。そこで青木と合流した二人は、進一の言葉から、ついにその場所を探り出した。その家には男と女が死んでいた。麻薬によるショック死だ。一方、戸倉警部は、ある病院の焼却煙突から牡丹色の煙があがるのをみて現場に急行した。金を入れた鞄には、水に沈めた場合と、燃やした場合の特殊装置がなされていたのだ。燃やすと牡丹色の煙が出る。その鞄を燃やした男はインターンの竹内銀次郎とわかった。また共犯者男女ともかつてこの病院で診察をうけており、そのカルテは竹内が書いていた。今竹内をあげても、共犯者殺人の証拠はむずかしい。戸倉警部は、二人の男女が持っていた二百五十万の札が、藤沢方面に現われたと新聞に発表する一方、竹内には、二人が死んでいた部屋の便箋の一番上の一枚に、ボールペンで書きなぐった後を復元した、「ヤクをくれヤクをくれなければ……」という手紙を巧妙に渡して、腰越の家に罠を張って待った。そして、竹内には十人からの刑事が尾行についた。竹内は横浜で麻薬を買った。肺水腫に犯された二人が麻薬純度九〇%のヘロインをうって死なないはずがない。竹内はそのヘロインを今度は、伊勢崎町の麻薬中毒者にあたえてためそうというのである。果して一グラム包〇・三%を常用している中毒者は忽ちにしてショック死した。彼は薬の効果を確かめてから、二人の男女中毒者をおいておいた腰越の別荘に走った。そこには、すでに戸倉警部の一行が、ずっとアミを張って待っているのだ。




17-23. レイクサイドマーダーケース

監督 青山真治
出演 役所広司薬師丸ひろ子豊川悦司柄本明鶴見辰吾
2004年 (東宝) 94/118分  (R-15)

解説
「EUREKA(ユリイカ)」 の青山真治監督が、東野圭吾のミステリー小説 「レイクサイド」 を映画化。湖畔の別荘で起きた殺人事件の意外な行方をじっくりと描き出す。

ストーリー
藤間、関谷の2組の親子とカリスマ塾講師・津久見と共に、湖畔の別荘で行われる中学受験の勉強合宿へ、別居中の妻・美菜子と彼女の連れ子である舞華の為、お受験の意義に疑問を抱きつつも参加した、アートディレクターの並木俊介。だが、そんな彼の前に愛人でカメラマンの英里子が現れ、その夜、死体となって発見された。驚愕する俊介に、ふたりの関係を知った自分が殺したと告白する美菜子。果たして、俊介は警察に連絡しようとするが、子供たちの将来を考えスキャンダルを恐れる親たちは猛反対。綿密な計画を練り、死体を湖に沈めることにする。そして、全ては計画通りに運んだ。ところが翌日、俊介は英里子のバッグからある写真を見つけてしまうのである。そこには、親たちから裏金を受け取る津久見の姿が写っていた。英里子は、俊介に会う為でなく、津久見の不正を知って彼を脅しに来たのだ。それに気づいた俊介は津久見を問い質すが、更なる事実が発覚する。確かに英里子は津久見を脅迫したが、殺害したのは彼ではなく、3人の子供たちのうちの誰かだったのだ! その子は、英里子の姦計によって自分たちの将来が脅かされるのを危惧し、凶行に出たのだ。それを知った俊介に、もはや引き返す道は残されていなかった。誰が手を下したかは関係ない。他の親たち同様、子供たちの未来を守ろうと口を閉ざすことを余儀なくされる。事件は完璧に隠蔽された。たったひとつ、死体を沈める時に俊介がライターを一緒に落としたことを除いては。




17-24. はやぶさ奉行 (Plot in the Tosho Shrine)

監督 深田金之助
出演 片岡千恵蔵大川橋蔵千原しのぶ植木千恵岡田敏子
1957年 93分

解説
週刊アサヒ芸能連載の陣出達朗の原作を 「日清戦争風雲秘話 霧の街」 の共同脚色者の一人、高岩肇が脚色、 「若さま侍捕物帳 鮮血の人魚」 の深田金之助が監督した、“遠山の金さん”が主人公の時代劇。撮影は同じく 「若さま侍捕物帳 鮮血の人魚」 の三木滋人。主演は 「佐々木小次郎 (前篇)(1957)」 の片岡千恵蔵、千原しのぶ、花柳小菊、 「若さま侍捕物帳 鮮血の人魚」 の大川橋蔵、 「ふるさとの唄 哀愁のりんご園」 の岡田敏子。色彩はイーストマン東映カラー。

ストーリー
目下江戸で評判のお道、およう両太夫のギャマン水槽の水中曲芸の最中に殺人事件が起った。その犯人を目撃したのは水槽中の二人だけだった。御存知遠山の金さんは、お道太夫の友達である大工藤兵衛の娘お景の家に弟子となって住みこんでいた。ある晩お景の家に飛びこんできた侠盗ねずみと出喰わして意気投合した。金さんはお景と家に帰る途中、第二の殺人にあった。その男は前の事件と同様に大工で“花川戸の虎姫”という言葉をのこして息絶えた。その翌日おようは、水槽の中で死体となって発見された。金さんは植木職人に変装して虎姫屋敷にのりこんだ。虎姫の六郷藩は日光仮御殿の造営を命じてられており虎姫は将軍の愛妾お牧と兄の有楽斎と将軍暗殺の密議をこらしていた。虎姫の屋敷を見張っていた金さんは、屋敷から出て来た数人の大工と武士の後をつけた。一行の進む先は日光街道で、有楽斎も日光にむかっていた。お景やお道は虎姫一味に捕えられたが、ねずみの機転で救けられ、金さんも、道中敵の妨害をものともせず日光の工事場にのりこんだ。有楽斎は、藤兵衛の考えた歯車の仕掛けを、天井に仕組んで将軍を殺そうとしたのだった。そして六郷筑前守をあやつり、お牧の方一派で天下を取ろうとした。いよいよ将軍御参詣の日が近づいて来た。その警護役には金さんの父の遠山景晋がえらばれた。金さんは工事完成の夜、他の大工と共に毒を盛られたが、一人だけ助かった。が、追いつめられて崖から落ちた。お景ら三人が水葬にあいそうになった時、金さんが現れ助けた。将軍御参詣の当日、御殿の天井は轟音と共に落下した。その寸前、金さんは畳をはね上げ飛びだしてきて、将軍を助けた。逆賊は召し捕られ、遠山景晋の裁きを受けた。金さんは北町奉行として、父を助け、悪人どもの陰謀をあばいた。悪人どもは自から亡びた。





17-25. もういちど

監督 板屋宏幸
出演 林家たい平福崎那由他富田靖子ゴリ大野百花
2014年 (マイシアター=ライブビューイング・ジャパン) 95分

解説
噺家修行を諦めた落語家と少年の交流を描くヒューマンコメディ。監督・原案・脚本・編集は、浜田省吾などのMVを手掛けた板屋宏幸。美術監修は 「思い出のマーニー」 の種田陽平。出演は、落語家の林家たい平、ドラマ 「とんび」 の福崎那由他、 「南京の基督」 の富田靖子、 「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」 のゴリ。

ストーリー
江戸時代末期。とある事情から噺家修行を諦めたたい平(林家たい平)は、絶望のうちに深川の長屋に流れ着く。そして、そこで出会った少年・貞吉(福崎那由他)にひょんなことから落語を教えることになる。奉公先の子供たちにイジメられ、しばらくの間、両親の元へ帰ってきていた貞吉は心を閉ざした様子だったが、ずっと憧れていた落語の稽古に没頭し、笑顔を取り戻していく。最初は仕方なく引き受けていたたい平も、何事にも素直に驚き、一生懸命な貞吉の様子に、心持ちが変化していく。いつの間にか親子のように笑い合うようになった2人は、長屋の個性豊かな連中に温かく包まれ、それぞれ本来の自分を取り戻そうとしていた。そんな中、貞吉の幼馴染で米屋のお菊が落語の稽古に協力しようして起こした行動が大事件を呼ぶ。貞吉の初めての落語会の行方は? そしてたい平は、家族を亡くした過去から立ち直れるのか?





17-26. 劇場版 MAJOR 友情の一球ウィニングショット 

監督 加戸誉夫
出演 くまいもとこ森久保祥太郎大浦冬華釘宮理恵笹本優子
2008年 (東宝) 80分

解説
満田拓也の同名コミックを基にしたテレビ版も好評なスポ根アニメの劇場版。プロ選手を目指してリトルリーグで奮闘する野球少年・吾郎の成長や友情ドラマを快活に描き出す。

ストーリー
リトルリーグの強豪“横浜リトル”との激闘で“三船ドルフィンズ”は見事に勝利を収めた。しかし、エースで4番の茂野吾郎(声:くまいもとこ)は、プロ野球選手の父・英毅(咲野俊介)の移籍に伴い、チームメイトに別れも告げぬまま、突然九州の福岡へ転校してしまう。母・桃子(野田順子)は、横浜リトル戦で負傷した吾郎の右肩を心配するが、吾郎は新しい地で友達を作るため、再び野球を始めようとする。吾郎の想いを受け止めた英毅は、肩が治るまで投球しないことを条件に、県大会優勝を目指す名門“博多南リトル”への入団を許すのだった。天性の野球センスで吾郎は打者として入団。横浜での伝説的な活躍を知るメンバーにとって、吾郎の打力とアドバイスは力強く頼もしいものだったが、エース・古賀は吾郎を歓迎していなかった。それでもチーム一丸となり、博多南リトルは九州大会決勝まで勝ち進む。決勝の相手は、全国大会優勝候補といわれる“北九州リトル”。博多南リトルナインは、アーサーとマックスというアメリカンスクールに通う二人の選手に翻弄される……。一方、横浜では吾郎のライバル・佐藤寿也(大浦冬華)の言葉に一念発起した三船ドルフィンズが、優勝候補の横浜リトル打倒を目指して、神奈川県大会を勝ち抜いていた。そして遂に、吾郎に負け雪辱に燃える横浜リトルと、吾郎が去った三船ドルフィンズが対戦することになった。果たして、博多南リトルと三船ドルフィンズの試合の行方は? 三船ドルフィンズの仲間たちはもう一度吾郎に会うことができるのか……?





17-27. 山の音 (THE ECHO)  

監督 成瀬巳喜男
出演 山村聡長岡輝子上原謙原節子中北千枝子
1954年 (東宝) 94分

解説
世界的に高い評価を得ている名匠・成瀬巳喜男監督が文豪・川端康成の小説を映画化。折り目正しい精緻な描写の中に、そこはかとなく漂う舅と嫁の間のエロティシズムが絶品!

ストーリー
六十二という齢のせいか、尾形信吾は夜半、よく目がさめる。鎌倉の谷の奥−−満月のしずかな夜など、海の音にも似た深い山の音を聴いて、彼はじぶんの死期を告げられたような寂しさをかんじた。信吾は少年のころ、妻保子のわかく死んだ姉にあこがれて、成らなかった。息子修一にむかえた嫁菊子に、かつての人の面影を見いだした彼が、やさしい舅だったのは当然である。修一は信吾が専務をつとめる会社の社員、結婚生活わずか数年というのに、もう他に女をつくり、家をたびたび開けた。社の女事務員谷崎からそれと聴いて、信吾はいっそう菊子への不憫さを加える。ある日、修一の妹房子が夫といさかって二人の子供ともども家出してきた。信吾はむかし修一を可愛がるように房子を可愛がらなかった。それが今、菊子へのなにくれとない心遣いを見て、房子はいよいよひがむ。子供たちまで暗くいじけていた。ひがみが増して房子は、またとびだし、信州の実家に帰ってしまった。修一をその迎えにやった留守に、信吾は谷崎に案内させ、修一の女絹子の家を訪ねる。谷崎の口から絹子が戦争未亡人で、同じ境遇の池田という三十女と一緒に自活していること、修一は酔うと「おれの女房は子供だ、だから親爺の気に入ってるんだ」などと放言し、女たちに狼籍をはたらくこと、などをきき、激しい憤りをおぼえるが、それもやがて寂しさみたいなものに変っていった。女の家は見ただけで素通りした。帰ってきた房子の愚痴、修一の焦燥、家事に追われながらも夫の行跡をうすうすは感づいているらしい菊子の苦しみ−−尾形家には鬱陶しい、気まずい空気が充ちる。菊子は修一の子を身ごもったが、夫に女のあるかぎり生みたくない気持のままに、ひそかに医師を訪ねて流産した。大人しい彼女の必死の抗議なのである。と知った信吾は、今は思いきって絹子の家をたずねるが、絹子はすでに修一と訣れたあとだった。しかも彼女は修一の子を宿していた。めずらしく相当に酔って帰った信吾は、菊子が実家にかえったことをきく。菊子のいない尾形家は、信吾には廃虚のように感じられた。二、三日あと、会社への電話で新宿御苑に呼びだされた信吾は、修一と別れるという彼女の決心をきいた。菊子はむろんのこと信吾も涙をかんじた。房子は婚家にもどるらしい。信吾も老妻とともに信州に帰る決心をした。




17-28. 青い山脈 新子の巻 (THE ECHO)  

監督 今井正
出演 池部良杉葉子若山セツ子原節子龍崎一郎
1949年 (東宝) 91分

解説
若い人」「馬車物語」等の石坂洋次郎の原作を「面影」の井手俊郎と今井正の協同脚色。「民衆の敵」「地下街二十四時間」の今井正が演出を担当する。カメラは「わが愛は山の彼方に」の中井朝一「春の饗宴」の池部良と「誘惑(1948)」「時の貞操」の原節子「面影」の龍崎一郎、新人杉葉子らが主演するほか若山セツ子、木暮実千代、飯野公子らが出演する。前篇。

ストーリー
ある片田舎町の駅前。金物商丸十商店の店先に一人の女学生が「母が手元に現金がないからこれを町へ持って行って学用品を買いなさいって……」と小さく海光女学校五年生寺沢新子と書かれたリュックの米をつき出した。留守番の六助はドイツ語の教科書を放り出して大儀のついでに御飯を炊いてもらう。だんだん事情を聞いてみると母を二人もつ新子だった。一方英語教師島崎雪子は新子あてにきたラヴレターを見せられて、友達のいたずらだという彼女の言分に、何かしら尋常でない性格をつかみ、まして前の学校で転校を余儀なくされたこの娘に力になってやりたい衝動にかられる。そしてライ落な校医の沼田にこの問題を相談するが意外な答えだったのでついなぐってしまう。雪子は恋愛の問題を講義しつつ偽のラヴレター事件を直接生徒達に説いてゆく。しかし生徒達は「学校のために」やったといい、その理由として新子の行動を六助と結びつけて曲解した例をあげた。雪子は生徒達の旧い男女間の交際の考え方を是正しようと努力するが、それはますます生徒達の反感を買うばかりだった。教員仲間でも雪子の行動を苦々しく思い民主主義のはき違いなどといいつつ問題は次第に大きくなっていった。新子はそのうづ巻の中にあっても、高校生の六助や富永たちとつき合って行く。ついに学園の民主化を叫ぶ名目で新聞にまで拡がり、沼田も黙っていられず、雪子の協力者となるが、暴漢に襲われる。





17-29. 武士の献立 

監督 朝原雄三
出演 上戸彩高良健吾西田敏行余貴美子夏川結衣
2013年 (松竹) 121分

解説
江戸時代の加賀藩を舞台に、その台所を切り盛りする包丁侍の家に嫁入りした娘と、料理が苦手な跡継ぎが、ぶつかりながら、絆を深めていく姿を描く家族ドラマ。上戸彩と高良健吾が夫婦役に扮するほか、西田敏行、余貴美子らベテランが脇を固める。当時のレシピ集である 「料理無言抄」 を基に再現された江戸時代の料理も必見だ。

ストーリー
江戸時代。優れた味覚と料理の腕を持つが、気の強さが仇となり1年で離縁された春(上戸彩)は、加賀藩六代藩主・前田吉徳の側室・お貞の方(夏川結衣)に女中として仕えていた。ある日、料理方である舟木伝内(西田敏行)にその才能を買われ、息子の嫁にと懇願されて春は2度目の結婚を決意する。舟木家は代々、藩に仕える由緒ある包丁侍の家であったが、跡取りの安信(高良健吾)は料理が大の苦手で、しかも春より4つも年下。春は、姑の満(余貴美子)の力も借りながら、必死に夫の料理指南を始める。様々な料理の基礎を安信に教える春。渋々指導を受けながらも、めきめきと腕をあげていく安信。やがて昇進の機会が訪れ、試験では春が夕餉に出した治部煮をもとに治部の肉の代わりにすだれ麩を足す着想が、節制を重んじる藩から高い評価を得る。昇進した夫の素っ気ない感謝の言葉に小躍りしたいほど嬉しい春。安信の昇進を家族はもちろん、親友の定之進(柄本佑)やその妻・佐代(成海璃子)も喜ぶのだった。嫁入りから1年。江戸詰から家に戻った伝内は隠居を決意。安信に役目を譲り、今後は加賀料理を書に纏めたいと語る。そんな中、藩では改革派と保守派との間で不穏な空気が流れていた。藩主・吉徳の推挙を得て、新しい政治を進めようとする大槻伝蔵(緒形直人)の下には、定之進をはじめ改革に燃える若者らが集まっていた。安信はその場に居ながらも料理をするしかない自らの無力さに肩を落とす。だが吉徳が急逝、保守派の重臣・前田土佐守直躬(鹿賀丈史)は、新藩主となった宗辰に、伝蔵の弾劾を直訴する。改革派を一掃せよとの命は下級平士にも及び、定之進・佐代夫婦も国を追われてしまう。その後も藩政の混乱は続き、宗辰が急死。次なる藩主、重煕の毒殺未遂が起き、容疑は吉徳の死後、尼寺で暮らす真如院ことお貞の方にかけられた。納得いかない春は、安信の計らいで幽閉されている真如院に再会。母のように慕い仕えた真如院のため心を込めて作ったお重を並べ、真如院との最後の時間を過ごすのだった……。




17-30. 桃太郎侍

監督 三隅研次
出演 市川雷蔵浦路洋子河津清三郎木暮実千代
1957年 (大映) 86分

解説
山手樹一郎の同名小説の再映画化。(前回は昭和二十七年に衣笠貞之助監督、長谷川一夫主演で製作された)今回は「鬼火駕篭」の八尋不二が脚本を書き、「三日月秘文」の三隅研次が監督、「鳴門秘帖(1957)」の杉山公平が撮影した。主演は「鬼火駕篭」の市川雷蔵、「不知火頭巾」の浦路洋子、「その夜のひめごと」の木暮実千代、「夕凪」の河津清三郎。色彩は大映カラー。

ストーリー
浅草蔵前通りを着流しの雪駄ばきで歩いて行く浪人者−−桃太郎と名乗る無類の剣の使い手である。桃太郎は若木家若殿新之助と双生児だったが、双児を忌む武家の風習から里子に出され、成人してもそんな武家のならわしを蔑すみ何人にも仕官しようとはしなかった。若木家では大殿の病気をよいことに、次席家老の鷲塚が新之助を退け妾腹の子万太郎を擁して藩の実権を握ろうと企み、陰謀家伊賀半九郎に策を練らしていた。それを知った江戸家老の伊織は若殿が菩提寺に参詣するその足で帰国を願おうと考え、娘の百合を通じて桃太郎に若殿の道中の護衛を依頼した。桃太郎の正体を知らない半九郎もまた、女スリ小鈴を使って彼を味方に引き入れようとしていた。一度は百合の頼みを断った桃太郎も、若殿が毒を飲まされたことを聞くと、生家の一大事とばかり若殿の身替りとなって敵に立ち向かうことを決意した。舞台は東海道へ移った。若木家の行列を狙って叢の中から銃口が火を吹いた。だが駕篭の中で絶命していたのは若殿に毒を盛った裏切者だった。桃太郎は敵の計略を見破り少数の供とともに先行していたのだ。若殿になりすました桃太郎たちはいくたびか窮地を脱して漸く城代屋敷へ着いたが、大殿は陰謀派の掌中に取りこめられ、重態と称して会うことさえ出来なかった。半九郎からの果し状を受取った桃太郎は、敵の本拠鷲塚屋敷へ乗込んで行った。やがて半九郎が現われ短筒で彼を狙ったが、桃太郎に惚れていた小鈴が、彼をかばい、弾丸は小鈴にあたった。遂に二人は縄をかけられ離れ屋敷にくくられたまま放火されたが、小鈴は縛られた手を火中に入れて綱を焼ききり桃太郎を助け、自らはこと切れた。毒殺を計られたものの辛うじて一命はとりとめた若殿も回復し、桃太郎と初めて兄弟の名乗りを交した。ここに陰謀は水泡に帰し、新之助は世継に、桃太郎は百合を伴って素浪人にかえり江戸への帰路についた。




j17-31. 必殺仕掛人

監督 渡辺祐介
出演 田宮二郎高橋幸治山村聡川地民夫秋野太作
1973年 (松竹) 87分

解説
法に代って、庶民の怨みを晴らす“殺しの代行者”仕掛人の活躍を描く、池波正太郎原作、同名のテレビ・ドラマの映画化。脚本は安倍徹郎、監督は脚本も執筆している 「舞妓はんだよ 全員集合!!」 の渡辺祐介、撮影は 「男じゃないか 闘志満々」 の小杉正雄がそれぞれ担当。

ストーリー
鍼医者・藤枝梅安は、仕掛人の元締・音羽屋半右衛門から前金二十五両と引換えに日本橋蝋燭問屋・辻屋文吉の後添いお照を殺した。お照は、盗っ人稼業駿府の音蔵の娘で、音蔵が乾分の徳次郎に殺された後は、孫八と組んで悪事を重ねていた。その上、老い先短い文吉をたぶらかして後妻に入り込み辻屋の身代を狙っていた。文吉がお照の仕掛を依頼したのもそのためであった。翌日、梅安は血の匂いを消すため、今では梅安の助っ人となっている徳次郎を連れて甲州へ旅立った。二人の後を、梅安のお照殺しを目撃していた孫八が尾けていた。その夜、徳次郎は裏切者として孫八に殺された。仕掛人西村左内は研師を稼業としていたが、その喧嘩さばきを買われて、八丁堀同心峯山又十郎から町方同心になることをすすめられていた。ただし、与力、組頭への手土産として三十両が必要だという。だが、それは又十郎の地位利用のユスリタカリだった。街はずれの私娼宿の女将・お吉は、上野界隈を縄張りとする香具師・三の松の平十の妾だが、今では平十の乾分になっている孫八とも深い仲であった。やがて、病弱な平十は、度々難癖つけてユスっていた又十郎の殺しを音羽屋に依頼して息を引き取った。平十の弟分・聖天の大五郎もあらためて又十郎殺しと、そしてお吉の仕掛を依頼した。音羽屋は、又十郎を左内に、お吉の仕掛を梅安に命じた。左内の大刀が一閃した。又十郎は愛妾の絶叫を聞きながら死んでいった。一方、梅安は、お吉と孫八が情欲の後、熟睡している時を狙って殺した。平十の遺児・為吉は、お吉、孫八、又十郎と邪魔者が亡くなって平十の縄張りを継いだ。ところが、大五郎はかねてからの計画通りに、為吉を殺し、縄張りを手中にした。だが、大五郎に利用されたと知った音羽屋は、大五郎を許さなかった。音羽屋の白扇の柄からスッと抜かれた細い刃が一閃した……。数日後、音羽屋、梅安、左内が酒を交わしていた。そして、梅安が淋しそうに言った。「あのお吉の目が、おふくろの目にそっくりだったんですよ……。」





17-32. 麥秋

監督 小津安二郎
出演 菅井一郎東山千栄子笠智衆三宅邦子原節子
1951年 (松竹) 124分

解説
製作は 「自由学校(1951 渋谷実)」 「虎の牙」 に次ぐ山本武。脚本は 「宗方姉妹」 と同じく野田高梧と小津安二郎との共同執筆。監督は 「宗方姉妹」 に次ぐ小津安二郎作品。撮影は常に小津作品を担当する厚田雄春。出演者は、 「西城家の饗宴」 の菅井一郎、 「自由学校(1951 渋谷実)」 (松竹)の笠智衆、淡島千景、杉村春子、高橋豊子、 「白痴」 の原節子、東山千栄子、 「天明太郎」 の佐野周二、 「あゝ青春」 の三宅邦子、 「恋文裁判」 の二本柳寛、 「初恋トンコ娘」 の井川邦子などである。

ストーリー
間宮周吉は北鎌倉に住む老植物学者である。息子康一は医者で東京の某病院に通勤、娘紀子は丸ノ内の貿易会社の専務佐竹宗太郎の秘書である。佐竹の行きつけの築地の料亭「田むら」の娘アヤは紀子と学校時代からの親友で二人共未婚であるが、安田高子と高梨マリの級友二人はすでに結婚していて、四人が顔を合せると、未婚組と既婚組とに対立する。折から間宮家へは周吉の長兄茂吉が大和の本家より上京して来たが、紀子の結婚談が出る。同時に佐竹も自分の先輩の真鍋という男との縁談をすすめる。間宮家では、周吉夫婦をはじめ康一たちも佐竹からの話に乗り気になり、紀子も幾分その気になっているが、古くから間宮家の出入りである矢部たみの息子で、康一と同じ病院に勤めている謙吉が、急に秋田の病院へ転勤するときまったとき、謙吉こそ自分の結婚すべき相手だったことに気がつく。謙吉には亡き妻との間に光子という三才の遺児があり、恒産もないので、間宮家では四十歳ではあるが、初婚で、善通寺の名家の出である真鍋との結婚を希望するが、紀子のたっての希望を通してやることにする。紀子は秋田へ去り、周吉夫妻も大和の本家へ引きあげて行く。その大和はちょうどさわやかな麦秋であった。





17-33. 家族はつらいよ

監督 山田洋次
出演 橋爪功吉行和子西村雅彦夏川結衣中嶋朋子
2016年 (松竹) 108分

解説
巨匠・山田洋次監督が 「男はつらいよ」 シリーズ以来ひさびさに手がけるコメディ。突然の両親の離婚問題に揺れる子供たちら8人が繰り広げる騒動を描き出す。橋爪功と吉行和子が離婚の危機を迎えた熟年夫婦を演じるほか、西村雅彦、夏川結衣といった 「東京家族」 で一家を演じた8人のキャストが再集結し、別の家族を演じている。

ストーリー
初秋。東京の郊外で暮らす三世代同居の平田一家の主・周造(橋爪功)は、モーレツサラリーマンだった時期を終えて今はすっかり隠居生活を送っている。今日も仲間とゴルフを楽しんだ後、美人女将・かよ(風吹ジュン)がいる小料理屋で散々女房の悪口を言って盛り上がり上機嫌で帰宅。長男・幸之助(西村雅彦)の嫁・史枝(夏川結衣)は酔っぱらっている周造に気を遣いながらも義父の苦言に笑顔で付き合う。妻の富子(吉行和子)もまたそんな夫を優しく迎え、寝室で脱ぎ捨てる服を拾い歩きながら着替えを手伝うのだった。周造はいつものように靴下を脱ぎ捨てながら、ふと寝室に飾られたバラの花瓶を見て「その花どうした」と尋ねる。なんでも誕生日に花をプレゼントする事は仲間の決まりで、今日は私の誕生日なのだと富子は言う。すっかり忘れていた周造だったが、たまには妻に誕生日プレゼントでもしてやろうかと欲しいものを聞いてみると、富子が机から持ち出してきたのはまさかの離婚届であった。突然の宣告を受け唖然と凍りつく周造。一方、富子はそんなことはお構いなしに冷静に部屋を出ていってしまう。こうして、平田家の“離婚騒動”は幕を開けた……。10月26日、秋晴れの日曜日。周造と富子、幸之助と史枝、長女・成子(中嶋朋子)と夫・泰蔵(林家正蔵)が集まっている。件の離婚問題について議論しようとしたとき、今日が家族会議だと聞かされていなかった次男の庄太(妻夫木聡)が恋人を紹介するため憲子(蒼井優)を連れてくる。なかなか本題に入れない一同だったが、ようやく憲子を交えた8人で家族会議が始まった。だが幸之助と成子が口論を始め、ついには史枝、庄太、泰蔵まで巻き込まれ、会議は思わぬ方向に進んでしまう。やがて長年抱え続けた富子の思いがけない本音が暴露されると、事態は更に思いも寄らぬ局面を迎えるのだった……。




17-34. リトル・フォレスト 夏・冬 

監督 森淳一
出演 橋本愛三浦貴大松岡茉優温水洋一桐島かれん
2014年 (松竹メディア事業部) 111分

解説
五十嵐大介の同名コミックを橋本愛主演で実写映画化したヒューマンドラマ。故郷での自給自足の生活を通して、都会で失った自信や生きる力を取り戻していくヒロインの姿を、旬の食材を使った料理などとともに描く。岩手県奥州市などで約1年にわたる撮影を敢行。東北のうつろいゆく四季を映し出した4部作の夏・冬編となる。

ストーリー
都会に出たものの馴染めないでいたいち子(橋本愛)は、故郷である東北地方の小さな集落・小森に戻ってくる。山に囲まれた小森の周辺にはスーパーやコンビニはないため、畑で農作物を作ったり、野山で季節のものを採ってきたりして、自給自足に近い生活をしなければならない。山の恵みを使って、夏にはグミジャムや岩魚の塩焼き、秋はくるみごはんや栗の渋皮煮などを作るいち子。もちろん自然には厳しさもある。季節の移ろいを感じ、ふと立ち止まって自分自身と向き合いながら、いち子はおいしいものを食べて次の一歩を踏み出す勇気を得ていく。





17-35. リトル・フォレスト 春 

監督 森淳一
出演 橋本愛三浦貴大松岡茉優温水洋一桐島かれん
2015年 (松竹メディア事業部) 120分

解説
五十嵐大介の同名コミックを橋本愛主演で実写映画化したヒューマンドラマ。故郷での自給自足の生活を通して、都会で失った自信や生きる力を取り戻していくヒロインの姿を、旬の食材を使った料理などとともに描く。岩手県奥州市などで約1年にわたる撮影を敢行。東北のうつろいゆく四季を映し出した4部作の完結編。

ストーリー
“小森”は東北のとある村の中の小さな集落。いち子(橋本愛)は、一度街に出て男の人と暮らしてみたものの、自分の居所を見つけられずに、1人でここに戻ってきた。“言葉はあてにならないけど、わたしの体が感じたことなら信じられる”と、何事も自分でやってみないと気が済まない性格のいち子は、稲を育て、畑仕事をし、周りの野山で採った季節の食材を料理して食事を取る毎日を過ごしている。そんな静かなある日、彼女の元に1通の手紙が届く。それは、5年前の雪の日に突然失踪した母・福子(桐島かれん)からだった。甘酒とカボチャを使って作った3色ケーキ、子供の頃から大好きな出来立てアツアツの納豆もち、ふきのとうでつくるばっけ味噌……。母のレシピを料理しながら思う。“私は母さんにとって本当に家族だったろうか……。”今までの自分、そしてこれからの自分を思い、心が揺れ始める。親友キッコ(松岡茉優)との小さな口げんかでは、“私は、ちゃんと向き合えなくて、それで小森に帰ってきたんだな……”と落ち込む。さらに、小森のこれからを真剣に考えるユウ太(三浦貴大)からは、“いち子ちゃんは1人で一生懸命やっててすごいなと思うけど、本当は逃げてるんじゃないの”と指摘され、言葉を返せない。長かった冬も終わりに近づき、雪解けが進んできた。少しづつ畑の準備を進めてきたものの、いち子は春一番で植えるジャガイモを、今年は植えるかどうか迷っていた。来年の冬、ここにはいないかもしれないから……。自分の本当の居場所を探すいち子が、春の訪れと共に出した答えとは……。





j17-36. 台風のノルダ

監督 新井陽次郎
出演 野村周平金子大地清原果耶
2015年 (東宝映像事業部) 27分

解説
大型台風が近づいている離島の中学校を舞台に描く青春ファンタジー。 「陽なたのアオシグレ」 でキャラクターデザイン・作画監督を担当した新井陽次郎の劇場映画監督デビュー作。声の出演は、 「日々ロック」 の野村周平、ドラマ 「カサネ」 の金子大地、アミューズオーディションフェス2014グランプリの大型新人・清原果那。

ストーリー
文化祭を翌日に控えた、とある離島の中学校。東シュウイチ(声:野村周平)は幼いころからずっと続けていた野球をやめたことがきっかけで、親友の西条(金子大地)とケンカをする。そんなとき、突如現れた赤い目をした不思議な少女ノルダ(清原果那)と出会う。「“地の渦”と“空の渦”と“私”が一つに繋がれたとき、この星が生まれ変わる」と告げるノルダ。そのころ学校に、観測史上最大級の台風が近づいていた……。




17-37. 墨東綺譚 

監督 豊田四郎
出演 山本富士子芥川比呂志新珠三千代織田新太郎東野英治郎
1960年 (東宝) 120分

解説
永井荷風の 「墨東綺譚ぼくとうきたん」 を軸に 「失踪」 と 「荷風日記」 を組合せて、 「女経」 の八住利雄が脚色し、 「珍品堂主人」 の豊田四郎が監督した文芸映画。撮影も 「珍品堂主人」 の玉井正夫が担当。昭和35年度芸術祭参加作品。



ストーリー
向島寺島町の一角にある売春婦の巷、通称“玉の井”。突然夕立があり、娼婦たちが駈けていく。そんな中に、洋傘を拡げた中学校教師・種田順平のところに忍びこんできた潰し島田の女がいた。お雪である。彼女の商売ににあわぬ素直な気立てが順平の心をひきつけた。順平には、以前宅間家の書生をしていた頃好き合って一緒になった小間使の光子という妻がいる。添う前に主人の手がついて、そのときの子供稔を土産に結婚した仲なのだ。宅間家の執事が子供の学資名目で月々の手当を持ってくる。順平は光子の背後に宅間家の顔を感じて不決だった。お雪を、叔父の音吉が訪ねてきた。行徳にいるお雪の義母の病気が悪く金の心配をしてくれというのだ。亡夫の母の入院のたびに身をおとさねばならぬお雪にとっても義理の重荷が苦しかった。春本の作者だと順平がいつか女たちの間で噂されるようになった頃、お雪と順平の仲は深まる一方だった。順平の日常を知って親友の山井先生夫妻は心を痛めた。順平はお雪の気持にほだされ、学校に辞表を出し、退職金でお雪との生活を考えた。山井は見かねて、光子にすべてを打明けた。光子は、宅間家からの仕送りの貯金を女にやってくれと差出し、私の許に帰ってくれと激しく迫った。順平は久しぶりにお雪を訪れた。お雪はもう順平が来なくなるという予感がし、酒をあおった。歯痛が原因か、悪感がして倒れ、運び出されていった。順平はそんなお雪に心から詑びたかった。燈火管制のサイレンが不気味に鳴りひびく病院の一室で、お雪は愛のあきらめと、迫る死の影に涙を流した。玉の井の路地では、必死に客を呼ぶ女の媚笑が悲しく浮かんでは消えていく。




17-38. 十兵衛暗殺剣

監督 倉田準二
出演 近衛十四郎香川良介林真一郎北竜二内田朝雄
1964年 (東映) 86分

解説
紙屋五平の原作を 「忍者狩り」 の高田宏治が脚色 「月影忍法帖 二十一の眼」 の倉田準二が監督した忍者もの。撮影は 「紫右京之介 逆一文字斬り」 のわし尾元也。

ストーリー
神秘的なたたずまいをみせる琵琶湖・竹生島。狂ったように鳴き騒ぐ白鷺の群れが舞い降りる湖上には、白鷺に喰い荒されて死を待つ五人の処刑者があった。処刑されたのは、湖賊の長六右衛門の娘美鶴と配下の源と近江之介だった。かつては湖をわがもの顔に横行し、水の忍者として恐れられた湖賊だが、支配者が代った今、公儀の力の前に衰滅の一途をたどっていた。一方、将軍家指南役をつとめる柳生新蔭流は、上泉伊勢守から柳生石舟斎につがれ、さらに独眼の剣豪柳生十兵衛三巌に受けつがれていた。しかし新蔭流を受けついだのは、石舟斎だけではなかった。同門松田織部正も石舟斎を凌駕するほどの腕を持っていた。しかし織部正は豊臣家の禄をはんだが故に野におかれた。幕屋大休は、この織部正の流れをくんだ剣術者だった。大休は、新蔭流正統を証明する印可状と守り刀を竹生島神社から奪い、そのまま江戸に足をのばし、柳生新蔭流に正面から挑戦した。これを知った将軍家光は、大休を斬り、印可状を奪うように十兵衛に命じた。これを聞き、血気にはやる十兵衛の門弟達は、大休の道場に斬りこんだ、しかし、道場剣法しか知らぬ門弟達は、大休らの手で無惨にも斬って捨てられた。大休の作謀で戦いの場所は竹生島に移った。大休の参謀田丸宗十郎は、衰退の一途をたどる湖賊を言葉たくみに煽動して仲間に引き入れ、十兵衛らを迎え討った。湖の上で育った湖賊の神出鬼没の活躍で、十兵衛らは敗退し、門弟達は惨殺され、一人十兵衛だけが生きのこった。十兵衛は、湖賊になりすまして大休に迫った。湖賊の持つ銛を武器とした十兵衛は大休の前に立った。白刃がひらめき、銛がうなった。くずれ落ちた大休の屍を前にした十兵衛の胸の中を、亡び行くものの哀感が、そっと吹き抜けていった。




17-39. 駆込み女と駆出し男 

監督 原田眞人
出演 大泉洋戸田恵梨香満島ひかり内山理名陽月華
2015年 (松竹) 143分

解説
井上ひさしの時代小説を原案にした、江戸時代の離婚事情をつづる、大泉洋主演のコミカルな時代劇。幕府公認の駆込み寺・東慶寺にある御用宿で離婚を懇願する女たちから聞き取り調査を行う男たちと、さまざまな事情を抱えた女たちとのユニークなやりとりが描かれる。戸田恵梨香や満島ひかりが“駆込み女”を演じる。

ストーリー
鎌倉にある東慶寺は、江戸幕府公認の駆込み寺だった。離縁を望む妻がここに駆け込めば問題解決に向け動く拠り所だった。駆け込んだからといってすぐには入れず、まずは御用宿で仔細の聞き取りがされる。御用宿の柏屋に居候する医者見習い兼駆出しの戯作者・信次郎(大泉洋)は柏屋の主人・源兵衛(樹木希林)とともに、様々な事情を抱えた男女のもつれをほどき、女たちの再出発を支えていく。





17-40. まあだだよ

監督 黒澤明
出演 松村達雄香川京子井川比佐志所ジョージ油井昌由樹
1993年 (東宝) 134分

解説
「百鬼園随筆」 などの随筆家・内田百けんとその門下生たちとの心のふれ合いを様々なエピソードで綴るドラマ。 「八月の狂詩曲」 (91)に続く黒澤明監督の三十作目であり、 「姿三四郎(1965)」 でデビュー以来監督生活五十周年目という記念すべき作品。結果黒澤監督の遺作となった。また 「影武者」 以来演出補佐を務めた名パートナー・本多猪四郎はこの作品を最後に本年二月二十八日死去した。主人公の先生役には 「どですかでん」 以来の黒澤作品出演となる松村達雄が扮し、また門下生の一人として所ジョージが黒澤作品に初出演をして話題となった。キネマ旬報ベストテン第十位。

ストーリー
昭和一八年の春。先生は生徒たちへ、作家活動に専念するため、学校を去ることを告げた。生徒たちは『仰げば尊し』を歌い敬愛する先生を送る。退職後に引っ越した家にも、高山、甘木、桐山、沢村ら門下生たちが遊びにやって来る。といっても皆、中年のいい大人なのだが。ある日、先生の家で還暦の祝宴が開かれた。先生と奥さん、門下生たちの馬鹿鍋を囲みながらの楽しい会話が弾むが、戦時下のこと、空襲で水をさされてしまう。先生の家は空襲で焼けてしまい、知人の厚意で貸してもらった、三畳一間の堀建小屋暮らしを余儀なくされる。先生と奥さんは狭いこの小屋で夏、秋、冬、春……三年半を暮らす。昭和二一年の晩春、門下生たちの画策で第一回『摩阿陀会』が開かれた。元気な先生はなかなか死なない、そこを洒落で死ぬのは『まあだかい?』というわけだ。吉例となっていくビールを飲み乾して先生は『まあだだよ!』と答える。宴会は盛り上がり、混乱の極致である。門下生たちの尽力で新しい家ができた。先生はお礼の申しようもないと感謝し、幸せそうである。猫を抱いた奥さんも嬉しそうだ。ある日、先生もお気に入りの猫、ノラがふいに失踪する。以来先生は哀しみにくれる毎日を過ごす。ノラを捜す周囲の人たちの善意に、先生の胸は感激でいっぱいになった。昭和三七年、晩春。第十七回の『摩阿陀会』。先生の髪は白くなり、門下生たちは子供や孫を同伴しての出席である。先生は小さな子供たちへ言葉を贈る。『みんな、自分が本当に好きなものを見つけて下さい……』。途中で体調をくずした先生は、門下生に付き添われて家へ帰る。布団の中で眠る先生は、なんだか楽しそうな顔をしている。先生は夢を見ているらしい。





17-41. 隠し砦の三悪人 (The Hidden Fortress)  

監督 黒澤明
出演 千秋実藤原釜足三船敏郎藤田進上原美佐
1958年 (東宝) 139分

解説
「どん底」 の黒澤明が久方振りに発表する初のワイド作品で、戦国の世、敗軍の将が美女と黄金を擁して敵中を突破するという娯楽時代劇。脚本は、菊島隆三・小国英雄・橋本忍・黒澤明の合作。撮影は 「東京の休日(1958)」 の山崎市雄。出演者は 「無法松の一生」 の三船敏郎を筆頭に、千秋実・藤原釜足・藤田進・志村喬、それに新人の上原美佐・樋口年子など。

ストーリー
戦国の乱世、秋月家は隣国の山名家と一戦を交えて敗れ去った。秋月家の侍大将・真壁六郎太は、世継の雪姫を擁して数名の残党と隠し砦にこもった。砦近くの泉には、薪の中に軍資金黄金二百貫が隠されている。同盟国の早川領へ脱出の機会を狙っていた六郎太は、砦近くの沢で出会った二人の男、百姓の太平と又七を利用しようと考えた。二人の強欲は、黄金を背負わせたらあらゆる苦難にも耐え得ると見抜いたからだ。早川領への国境は警護が固かったから、一度山名領へ入り、敵地を通って早川領へ抜けるより道はなかった。六郎太は雪姫を口がきけない村娘にしたて、太平・又七とともに砦を後にした。国境の関所。六郎太は背中の薪を一本引抜き山で拾ったと訴え、黄金を見て騒ぎ出したその際に関門を通過した。木賃宿で一夜を明かした六郎太は、姫の願いで、人買いに買われて行く秋月の百姓娘を救った。百姓娘はどこまでもついてきた。一行五人は、しばらくの間姿をくらますことに成功したが、騎馬武者に発見された。六郎太の前に、山名の侍大将・田所兵衛が立ちふさがった。激闘数合、兵衛は六郎太の槍を太腿に受けた。首をさしのべる兵衛を残し、六郎太は馬にとび乗った。山名方は百姓を火祭りにかりたて、一行がその行列にまぎれこんで逃げるのを待った。薪を火にくべる火祭りの行列は、黄金をしこんだ薪を運ぶ絶好の機会だった。太平と又七が列を離れようとしたとき、六郎太は押しとどめその炎の中に薪を投げこんだ。一行は、百姓たちとともに踊った。翌朝、金の延棒を拾いあげていた一行に危機が迫った。山名方の山狩りである。太平・又七は敵方へ走った。??山名と早川の国境にある関所の牢の中で、雪姫と六郎太は最後を待っていた。そこに現われたのが兵衛だ。六郎太に不覚をとったため、主君に弓杖で打たれたという。姫・六郎太・百姓娘の三人は、縛られたまま馬にのせられて曳き出された。続いて黄金をつんだ五頭の馬。と、兵衛が現われ黄金をつんだ馬の尻をなぐりつけた。馬は早川領へ。続いて兵衛は六郎太の縄を切った。三人は早川領へ走り去った。兵衛も続いた。慌てた山名の鉄砲が、後を追って鳴り響いた。





17-42. 僕だけがいない街

監督 平川雄一朗
出演 藤原竜也有村架純鈴木梨央中川翼林遣都
2016年 (ワーナー・ブラザース映画) 120分

解説
三部けいの人気コミックを藤原竜也と有村架純の共演で映画化したミステリー。自分の意志とは無関係に、身近で起きる事件の直前へとタイムスリップしてしまう特殊な力を身につけた主人公が凶悪犯に挑む姿を描く。 「ヤングエース」 に連載の原作は 「このマンガがすごい!」 や 「マンガ大賞」 で3年連続ランクインするなどベストセラーになっている。

ストーリー
藤沼悟(藤原竜也)は漫画家としてなかなか売れず、アルバイトをして生計を立てている。彼には普通の人とは違うところが一つあった。それは、何か悪い出来事が起こると時空移動(タイムリープ)し、原因が取り除かれるまでその時間が繰り返される『再上映(リバイバル)』が起こることだった。やがて藤沼はあることをきっかけに、彼がまだ小学生だった18 年前、母が犠牲になった児童連続誘拐事件と向き合うことになる。





17-43. 最高殊勲夫人 (The Most Valuable Madam)

監督 増村保造
出演 若尾文子宮口精二滝花久子亀山精博川口浩
1959年 95分

解説
週刊明星に連載中の源氏鶏太の同名小説を、 「完全な遊戯」 の白坂依志夫が脚色、 「親不孝通り」 の増村保造が監督した喜劇。撮影も 「親不孝通り」 の村井博。



ストーリー
結婚披露のカクテル・パーティ、新郎は三原二郎、新婦は野々宮梨子である。二人は、三原一郎・野々宮桃子に続いて同じ家の同じ兄妹同士の結婚なのだ。三原商事の営業部長対秘書の恋愛結婚が二度繰返されたのだ。ところで、現在三原家には大島商事に勤務している三郎、野々宮家には短大を卒業した杏子が残っている。桃子はこの二人を結ばせ、トリプルプレイを狙っていた。三郎と杏子は、お互いに恋人があることを宣言、絶対に結婚しないことを誓った。三郎は大島商事社長令嬢の富士子からプロポーズされていたが、杏子には恋人などいなかった。彼女は早速恋人を見つけねばならなかった。桃子の願いを聞き入れ、杏子は三原商事の社長秘書に就職した。たちまち、宇野・野村という若い社員が彼女の後を追い始めた。テレビのプロデューサーで、富士子の兄の武久も、杏子にイカれてしまった。武久は、停年になった杏子の父の就職先まで探し出してきた。宇野には豊子という恋人がいたが、彼女は杏子に宇野を横取りしないよう頼んだ。杏子は承知した。宇野も杏子を諦らめ、豊子と元のサヤにおさまった。杏子と野村を加えた四人は、社長夫婦に仲人を頼みに行った。この時、杏子に首ったけらしい野村を見た桃子は、一郎に野村を北海道へ転勤させるよう命じた。恐妻家の一郎は従わざるを得なかった。杏子からこのことを聞いた三郎は考えた。社長の細君が社内の人事にまで口を出すようでは三原商事も危いと。自分が乗り出さなくては駄目だと。野村と武久からプロポーズされた杏子は、本当は三郎が好きなのだと気づいた。三郎にしてもそれは同じことだった。二人はロカビリー喫茶の騒音の中で、大声を出して愛を告白し合った。野村を転勤させないこと、会社のことには口出ししないこと、の二つの条件を桃子が承諾したので、三郎は三原商事に入社し杏子と結婚することにした。トリプルプレイに成功した桃子も満足げだった。





17-44. ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE

監督 亀垣一
出演 栗田貫一小林清志浪川大輔沢城みゆき山寺宏一
2013年 (東宝) 107分

解説
世紀の大泥棒ルパン三世と小学生探偵・江戸川コナンの対決という夢のような組み合わせが、09年に放送されたテレビスペシャル以来、再び実現した長編劇場版アニメ。華麗なる盗みのテクニックを披露するルパンと、驚異的な推理力でルパンに迫っていくコナン。それぞれのシリーズの人気キャラクターも登場し、究極の対決が展開する。

ストーリー
米花町の銀行に保管されているチェリーサファイアという大変貴重な宝石を狙うルパン三世(声:栗田貫一)からの予告状が届いたことから、ルパン専任捜査官であるICPOの銭形警部(声:山寺宏一)と警視庁の目暮警部(声:茶風林)は協力体制を敷く。激しい攻防戦の末、躍起になる警察の目をかいくぐりルパンにまんまとチェリーサファイアを盗み出されてしまう。そしてルパンは、峰不二子(声:沢城みゆき)をそばに置くアラン・スミシーという謎の男(声:内野聖陽)に電話をかける……。その頃江戸川コナン(声:高山みなみ)ら少年探偵団は、来日した海外の超人気アイドル・エミリオと美人マネージャー・クラウディア(声:夏菜)に釘付けになっていた。そんな中、ルパンの相棒・次元大介(声:小林清志)がエミリオのボディーガードについているのを見つけたコナンは、ルパンらが何か企んでいることを察知。さらにライブ中止を要求する脅迫文がエミリオの元に届き、私立探偵・毛利小五郎(声:小山力也)が身辺警護にあたることに。ルパン一味の逮捕を目指す少年探偵団は、思いがけず石川五ェ門(声:浪川大輔)の待つアジトを発見する。エミリオのライブ当日、会場の東都スタジアムでチェリーサファイアをめぐる恐ろしい取引がなされるという情報を得たコナンと灰原哀(声:林原めぐみ)。ライブの熱狂の渦の中で、ルパン一味や警察、探偵、アラン率いる謎の組織の思惑が交差する……。





17-45. 心が叫びたがってるんだ。 

監督 長井龍雪
出演 水瀬いのり内山昂輝雨宮天細谷佳正村田太志
2015年 (アニプレックス) 119分

解説
幼なじみ6人が繰り広げるせつないストーリーで人気を博したアニメ 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」 。監督の長井龍雪、脚本の岡田麿里をはじめとする同作のスタッフが、同じく埼玉県秩父市を舞台に描く青春群像劇。心に傷を抱えた女子高生のヒロインが仲間や音楽との出会いを通して再生していく姿がつづられる。

ストーリー
幼い頃、何気なく発した言葉によって家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順(声:水瀬いのり)。彼女は、突然現れた“玉子の妖精”によって、二度と人を傷つけないようにお喋りを封印され、言葉を発するとお腹が痛くなる呪いをかけられてしまった。それ以来、トラウマを抱えた彼女は心を閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は携帯メールだけ。やがて高校2年生になった順はある日、担任から“地域ふれあい交流会”の実行委員に任命される。一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わず、やる気のない少年・坂上拓実(声:内山昂輝)、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した野球部の元エース・田崎大樹(声:細谷佳正)、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月(声:雨宮天)。彼らもそれぞれ心に傷を抱えていた。担任の思惑により、交流会の出し物はミュージカルに決定するが、クラスの誰一人として乗り気ではなかった。その中で拓実だけは、“もしかして歌いたかったりする?”と順の気持ちに気付いていた。だが、順はそれを言い出せない。“だんまり女にミュージカルなんて出来るはずがない”と、揉める仲間たち。自分が原因で揉める様子を目にして、順は思わず“私は歌うよ!”と声に出してしまう。そして迎えた発表会当日。心に閉じ込めていた“伝えたかった本当の気持ち”を歌うと決めたはずの順だったが……。





17-46. あ、春

監督 相米慎二
出演 佐藤浩市山崎努斉藤由貴藤村志保富司純子
1998年 (松竹) 100分

解説
エリート・サラリーマンの前に、死んだと聞かされていた父親が突如現れたことから始まる騒動を描いたホーム・コメディ。監督は 「ポッキー坂恋物語 かわいいひと」 で総監督を務めた相米慎二。村上政彦の 「ナイスボール」 を基に、 「ラブ・レター」 の中島丈博が脚色。撮影を 「学校III」 の長沼六男が担当している。主演は、 「らせん」 の佐藤浩市と 「静かな生活」 の山崎努。第11回東京国際映画祭特別招待作品。

ストーリー
一流大学を出て証券会社に入社、良家のお嬢様・瑞穂(斉藤由貴)と逆玉結婚して可愛いひとり息子にも恵まれた韮崎紘(佐藤浩市)は、ずっと自分は幼い時に父親と死に別れたという母親の言葉を信じて生きてきた。ところがある日、彼の前に父親だと名乗る男が現れたのである。ほとんど浮浪者としか見えないその男・笹一(山崎努)を、にわかには父親だと信じられない紘。だが、笹一が喋る内容は、何かと紘の記憶と符合する。しかも、実家の母親に相談すると、笹一はどうしようもない男で、自分は彼を死んだものと思うようにしていたと言うではないか。笹一が父親だと知った紘は、無碍に彼を追い出すわけにもいかず、同居する妻の母親に遠慮しながらも、笹一を家に置くことにした。しかし、笹一は昼間から酒を喰らうわ、幼い息子にちんちろりんを教えるわ、義母の風呂を覗くわで紘に迷惑をかけてばかり。ついに堪忍袋の緒が切れた紘は笹一を追い出すが、数日後、笹一が酔ったサラリーマンに暴力を振るわれているのを助けたことから、再び家に連れてきてしまう。図々しい笹一はそれからも悪びれる風もなく、ただでさえ倒産が囁かれる会社が心配でならない紘の気持ちは、休まることがない。そんなある日、笹一の振る舞いを見かねた紘の母・公代が来て、紘は笹一との子ではなく、自分が浮気してできた子供だ、と告白する。その話に身に覚えのある笹一は、あっさりその事実を認めるが、紘の心中は複雑だ。ところが、その途端に笹一が倒れてしまう。病院の診断では、末期の肝硬変。笹一は入院生活を強いられ、彼を見舞う紘は、幼い頃に覚えた船乗りの歌を笹一が歌っているのを聞いて、彼が自分の父親にちがいない、と思うのだった。しばらくして、ついに紘の会社が倒産した。しかし、今の紘には、笹一のように強く生きていける自信がある。そしてその日、笹一が息を引き取った。紘は死に目に会うことは叶わなかったが、笹一のおなかに、彼がこっそり温めて孵化したチャボのひなを見つける。数日後、笹一の遺体を荼毘に付した紘たち家族は、彼の遺灰を故郷の海に撒くのだった。




17-47. 蜩ノ記

監督 小泉堯史
出演 役所広司岡田准一堀北真希原田美枝子青木崇高
2014年 (東宝) 129分

解説
第146回直木賞に輝いた葉室麟の時代小説を、 「明日への遺言」 の小泉堯史監督が役所広司、岡田准一らを迎えて映画化。前藩主の側室との不義密通の罪で幽閉され、家譜編纂と10年後の切腹を命じられた元郡奉行の秋谷。その監視役が、山間の村で秋谷の家族との交流を通して、事件の真相に迫っていく姿が描かれる。

ストーリー
郡奉行だった戸田秋谷(役所広司)は藩主の側室との不義密通および小姓を斬り捨てたことにより10年後の切腹とそれまでの間に藩の歴史である藩主・三浦家の家譜を編さんし完成させるよう命じられる。それから7年後、刃傷沙汰を起こしてしまったものの家老・中根兵右衛門の温情により切腹を免れた檀野庄三郎(岡田准一)は、幽閉中の秋谷の監視役を命じられる。監視の内容は、藩の秘め事を知る秋谷が7年前の事件を家譜にどう書くか報告し、秋谷が逃亡のそぶりを見せた場合には妻子ともども始末するというものだった。はじめは秋谷のことを懐疑的に思う庄三郎だったが、編さん途中の三浦家譜と『蜩ノ記』と名づけられた秋谷の日記には、前藩主の言葉を守り事実のまま書き留め、切腹が迫りつつも編さんに誠実に向き合い一日一日を大切に生きる彼の姿があり、感銘を受ける。そして7年前に一体何が起きたのか、事の真相を追ううちに、彼の人間性に魅せられていく。秋谷に深い愛情と信頼を寄せる妻・織江(原田美枝子)や心の清らかな娘・薫(堀北真希)らとともに暮らす中で、いつしか庄三郎と薫との間に恋が芽生えていた。やがて庄三郎は不義密通事件の真相に辿り着き、事件の謎を解く文書を入手するが、そこには藩を揺るがすようなことが記されていた……。




17-48. あさひるばん

監督 やまさき十三
出演 國村隼板尾創路山寺宏一桐谷美玲斉藤慶子
2013年 (松竹) 110分

解説
釣りバカ日誌」 の原作者として知られるやまさき十三が72歳にして初の映画監督に挑んだ人情コメディ。30年前に高校球児だった男たちが、かつてのマドンナの病気の報せを受けて結集し、騒動を起こすさまを描く。國村隼、板尾創路、山寺宏一が元高校球児の3人組に扮し、マドンナの祖父役の西田敏行と絶妙な掛け合いを見せる。

ストーリー
高校時代野球部にいた浅本・日留川・板東の3人組は、名字をもじって『あさひるばん』と呼ばれていた。甲子園出場を目指していたが、あと一歩というところでライバル校の野沢に打たれてしまう。それから30年。それぞれの道を歩む3人のもとに、野球部マネージャーだった幸子(斉藤慶子)の娘・有三子(桐谷美玲)から手紙が届く。その手紙は、入院中の母に会いに来てほしいという内容だった。彼らにとってマドンナだった幸子が病気であること、いつの間にか子供をもうけていることに驚いた浅本(國村隼)・日留川(板尾創路)・板東(山寺宏一)の3人は、久しぶりに故郷・宮崎に集結する……。