3-1. ゼロからの風

監督 塩屋俊
出演 田中好子杉浦太陽豊原功補
2007年(ウィル・ドゥ)

解説
愛する息子を交通事故で失った母親が、危険運転の厳罰化を求めて活動した、実話に基づく社会派ドラマ。主演はベテランの田中好子と「ウルトラマンコスモス」の杉浦太陽。

ストーリー
最愛の夫(豊原功補)に先立たれ、一人息子の零(杉浦太陽)と暮らす圭子(田中好子)。お互いを「圭子さん」「零君」と呼び合い、まるで恋人同士のような二人に、突然、悲劇が起こる。大学に入学したばかりの零が飲酒運転の車にはねられたのだ。愛する息子のあまりにも突然過ぎる死…。圭子は零の死を受け止められない日々を過ごす。零を奪った加害者(袴田吉彦)は飲酒運転かつ無免許、再犯だったにも関わらずたった数年の懲役という判決だった。あまりにも軽い交通犯罪の刑罰。「未来ある若者の命を奪っておいて、数年で社会復帰できるなんて…なぜ?」圭子は刑法の厳罰化に向けて立ち上がる。自分と同じ悲しみを背負う人を一人でも増やさないために、零の生命を繋げていくために…。そして、圭子は「零君の分も生きるんだ」と誓い、世の中に、ひとつひとつ奇跡を起こしていく。




3-2. あかね空  

監督 浜本正機
出演 内野聖陽中谷美紀中村梅雀
2006年(角川ヘラルド)

解説
豆腐屋夫婦がたどる人生の浮き沈みを、江戸情緒たっぷりに描く時代劇。直木賞を受賞した山本一力のベストセラー小説を、名匠・篠田正浩に師事する浜本正機監督が映画化した。

ストーリー
江戸深川の長屋に、京で修行してきた豆腐屋志望の永吉(内野聖陽)が現れた。桶屋の娘おふみ(中谷美紀)と知り合い、親しくなる永吉。やがて豆腐屋「京や」を開くが、腰のある木綿豆腐に慣れた江戸の人々には、京の柔らかな豆腐は受けが悪かった。落ち込む永吉を優しく励ますおふみ。一方、永代寺出入りの老舗の豆腐屋・相州屋清兵衛(石橋蓮司)は、生き別れになった息子と年恰好の似ている永吉に目をかけていた。十八年後、浅間山の噴火による飢饉や大火が江戸を襲い、人々は不安の中で暮らしていた。相州屋があった場所に京やが店を借りて出している。今では永吉とおふみは所帯を持ち、三人の子供に恵まれていた。しかし、長男の栄太郎は博打に身を持ち崩し、夫婦の悩みの種となっていた。そして、その道に栄太郎を引き込んだ同業の平田屋には、昔からの野望があった。狙いは豆腐屋の命ともいえる京やの井戸だった。「あそこの井戸は、深川、いや江戸一番だ」。しかし、それを手に入れるには京やを潰すしかない。平田屋は虎視眈々とそのチャンスを窺っていたのだった。栄太郎を勘当した永吉がある日、永代寺に呼ばれていくと、思いもかけず相州屋からの言伝を聞かされた。それは土地の権利書を永吉に譲渡する、と言うものだった。「うちの子らに、店残したれる」喜びのあまり一目散に飛び出した永吉のもとに侍の乗った早馬が物凄い勢いで駆けてきた……。




3-3. 天然コケコッコー

監督 山下敦弘
出演 夏帆岡田将生柳英里紗
2007年(アスミック・エース)

解説
くらもちふさこの名作コミックを「リンダ リンダ リンダ」の山下敦弘監督が映画化。「ケータイ刑事」の夏帆が演じる少女の初恋を、美しい自然と共に映した青春ドラマ。

ストーリー
小中学生合わせても全校生徒がたったの6人しかいない田舎町の分校に、東京から転校生の大沢広海(岡田将生)がやってくる。中学2年生の右田そよ(夏帆)は初めてできた同級生を喜び、大沢の持つ都会の雰囲気に心をときめかせる。そんなそよと対照的に、大沢はどこか取っ付きにくい。ある夏の日、そよをはじめ、大沢も参加して友達みんなで海水浴へ行くことになる。道中、大沢は近道を行こうとするが、その道はかつて自殺者が出たことで誰もが避けて通る道だった。数年ぶりに通っていると、友達のひとりが自殺現場に誰かがいると言い出す。緊張の走る一行だが、突然トタンが大きな音を立てて倒れたことで、一目散にその場から逃げる。ところが、そよが線路に足をとられて転んでしまう。サンダルがはさまって立つことのできないそよを、大沢は平然と助ける。海からの帰り道、いつもの遠回りの道を行く友達と離れ、またも近道を行こうとする大沢に、そよは付いていく。近道を歩いていると、大沢がふいに「こっちに来ればふたりになれるかなと思って」とそよに伝える。その言葉は心に響き、次第にそよは大沢に惹かれていく。進級し、中学三年生になったふたりは、交際を始めていた。大沢の育った町を見てみたいと、そよは修学旅行先を東京にすることを提案する。はじめての東京に圧倒されるそよだったが、東京時代の大沢の友達に彼女として紹介されたことなどもあり、上機嫌で修学旅行を終える。季節は過ぎ、高校受験が間近になった。そよたちが住む地域の近くにはふたつの高校があり、普通ならばその高校に進学する。そよもそのつもりだったのだが、大沢は東京に戻るかもしれないと言い出す。このままふたりは離ればなれになってしまうのか、それとも……。




3-4. 恋するトマト

監督 南部英夫
出演 大地康雄アリス・ディクソン富田靖子
2005年(ゼアリズエンタープライズ)

解説
個性派俳優・大地康雄が、製作総指揮・企画・脚本・主演と1人4役をこなしたラブ・ストーリー。フィリピンを訪れた中年男性が恋や、困難と言われる大玉トマト栽培に挑む。

ストーリー
農家の長男の野田正男(大地康雄)は、お見合いを繰り返しては断られ、苦渋をなめてきた。田舎暮らしに憧れる景子との縁談も破談に終わり、見かねた農業仲間の勇作の紹介で、フィリピンパブで働くリバティを紹介され、結婚を前提に交際を始める。そして、リバティに引っ張られるように二人は結婚することに。フィリピンに渡って結婚式を挙げる予定だったが、正男を待っていたのは結婚詐欺という現実だった。農協に借金をして持参した結納金をだまし取られ、リバティは消えた。生きる気力をなくした正男は浮浪者のようにマニラの街をさまよう。そんな正男を助けたのは、日本人の中田だった。フィリピン女性を日本に送り込むブローカーである中田のもとで働き始めた正男は、次第にやくざへと変貌してゆく。そんなある日、正男は仕事で通りかかったラグーナの村の風景に驚く。大きな湖の周囲に広がる農村地帯。それは、霞ヶ浦周辺に広がる美しい故郷の風景に酷似していた。そして黄金色の稲穂が風になびく田園、稲刈りに励む人々。その中心にいたのは何度かレストランで見かけたことのある美しい女性、クリスティナ(アリス・ディクソン)だった。彼女の父親が病気で働けないことを知った正男は、収穫を手伝い始める。土に触れることで、正男は農家に育った男の血が騒ぎ始める。そして、クリスティナへの想いが芽生えてゆく。正男はクリスティナの家計の助けになればと、フィリピンでは困難とされた日本の大玉トマトの栽培に挑戦するのだった。




3-5. かもめ食堂  

監督 荻上直子
出演 小林聡美片桐はいりもたいまさこ
2005年(メディア・スーツ)

解説
若手女流監督の荻上直子がオール・フィンランドロケを敢行した話題作。異国で小さな食堂を営む女性の愛すべきスローライフをとらえた好編だ。原作は、群ようこ。

ストーリー
夏のある日、ヘルシンキの街角に「かもめ食堂」という小さな食堂がオープンした。店主は日本人女性のサチエ(小林聡美)。献立はシンプルで美味しいものを、と考えるサチエは、メインメニューをおにぎりにした。しかし、客はなかなかやってこない。それでもサチエは毎日食器をぴかぴかに磨き、夕方になるとプールで泳ぎ、家に帰ると食事を作る。サチエは、毎日真面目にやっていれば、いつかお客さんはやってくると思っていた。そんなある日、ついに初めてのお客さんの青年トンミ(ヤルッコ・ニエミ)がやってきた。その日の夕方、サチエは書店のカフェで、難しい顔をして『ムーミン谷の夏まつり』を読んでいる日本人女性ミドリ(片桐はいり)に声をかける。フィンランドは初めてというミドリの話に何かを感じたサチエは、自分の家に泊まるようすすめる。そして、ミドリはかもめ食堂を手伝い始める。ある日、サチエがひとりで店番をしているかもめ食堂に、ひとりの中年男(マルック・ペルトラ)がふらりと入ってきた。訳ありげな佇まいの男は、美味しいコーヒーを入れるコツをサチエに伝授すると、またふらりと出て行く。そんな頃、またひとり、訳ありげな女性、マサコ(もたいまさこ)がヘルシンキのヴァンター空港に降り立った。スーツケースが運ばれてこないために、毎日空港へ確認に行かなければいけないマサコもまた、かもめ食堂を手伝うようになる。かもめ食堂は次第に人気が出はじめ、日々は穏やかに過ぎてゆくのだった。




3-6. 宮本武蔵

監督 加藤泰
出演 高橋英樹田宮二郎松坂慶子
1973年(松竹)

解説
吉川英治の同名小説の映画化。動乱の時代、野望に満ちた青年・武蔵の闘争のドラマを厳流島における佐々木小次郎との決闘まで描く。脚本は「花と竜 青雲篇 愛憎篇 怒濤篇」の野村芳太郎と山下清泉、監督も同作の加藤泰、撮影も同作の丸山恵司がそれぞれ担当。

ストーリー
〈第一部・関ヶ原より一乗下り松〉作州宮本村の武蔵と又八は、出世を夢みて関ヶ原の戦いに参加したが、敗れて伊吹山中をさまよい歩くうち、お甲・朱実の母娘に救われた。又八はお甲に誘惑され夫婦になり、武蔵は帰国の途中関所破りをして役人に追われるはめになった。一方、又八の母・お杉は、息子が帰らないのは武蔵のせいだと、武蔵に恨みを抱いた。又八にはお通という許嫁がいたが、武蔵が沢庵和尚にいましめられ、千年杉に吊り下げられているのを見たお通は、武蔵を救い出し、共に逃げた。今では武蔵を慕う彼女は、武者修業を目論む武蔵に同行を懇願、武蔵も瞬間の激情にかられて、お通の体にいどむが、自らの行為を恥じ、逃げるように立ち去るのだった。それから三年−−。京都の名門・吉岡道場の当主・清十郎は、お甲の営む料亭に入りびたり、朱実に執心していた。又八は、お甲に喰わせてもらい、半ばやけっぱちの生活を送っていた。ある日、武蔵を追い求めて京都に来たお通は、五条大橋の高札で、武蔵が清十郎から試合を申し込まれていることを知った。そして、その直後、お通は、又八、お杉と再会した。お通に未練たっぷりな又八に対してお杉は、武蔵を斬るように叱咤するのだった。数日後、清十郎に犯された朱実が半狂乱となり、入水自殺を計った。丁度その場に居合わせた又八が、朱実を救った。京都に嫌気のさした二人は、新生活を願って大阪へと旅立った。洛北蓮台寺野における武蔵・清十郎の試合は、武蔵が清十郎を一撃のもとに倒す一方的な勝負に終った。清十郎の弟・伝七郎も、蓮華王院・三十三間堂にて武蔵に挑んだが、敗れた。滅亡に瀕した吉岡家では、吉岡家の血につながる少年・源次郎を名目人に立てて、武蔵に試合を申し込んだ。一乗寺下り松には、吉岡一門七〇名が武蔵を待ちうけていた。単身乗り込んだ武蔵は、真っ先に、源次郎を殺した。凄惨な決闘中、武蔵は無意識のうちに二刀を使って、門弟を次々と倒し、勝利を得た……。
〈第二部・柳生の里より巌流島〉宝蔵院流槍術、鎖鎌の宍戸梅軒を破って腕に磨きをかけた武蔵だったが、柳生に挑戦したところ、武蔵の剣は殺生剣として試合を否まれ、町の研屋にも、武蔵の刀は殺すだけの刀といわれ、自分の未熟さを知った。やがて、小倉藩細川家の家老長岡佐渡の世話になり小倉に滞在していた武蔵は、宿敵佐々木小次郎と会った。剣の道に迷った武蔵は、沢庵に会って悩みをぶちまけた。だが、沢庵は、剣の道に迷うくらいなら、小次郎に斬られるか、剣を捨てて故郷へ戻り、お通と一緒になれ、とつきはなすだけだった。その頃、宮本村に戻っていたお通は、同じく戻ってきたお杉に危うく絞め殺されそうになるが、昂奮したお杉が急死したおかげで危うく難を逃れる。一方、又八は大阪へ来てから悪事に手を出し、一度は朱実と別れ沢庵の元に身を寄せていたが、やがて、自分の子を抱えた朱実と再会してからは、我が身の旧悪に目覚めるのだった。慶長十七年四月十三日、武蔵と小次郎の試合が、長門の船島で決行されることになった。又八、朱実そしてお通もやって来た。妻と呼んでくれ、と泣くお通に「武士の出陣は笑って送ってくれい」と言い残した武蔵は船島へと向った。試合は一瞬のうちに決まった。小次郎の長刀・物干竿より長い、武蔵の手製のカイが小次郎の脳天を砕いたのだ……。





3-7. 黒部の太陽

監督 熊井啓
出演 滝沢修志村喬佐野周二三船敏郎石原裕次郎
1968年(日活)

解説
木本正次の原作「日本人の記録・黒部の太陽」(毎日新聞社刊)を、「女たちの庭」の井手雅人と、「日本列島」の熊井啓が共同で脚色し、熊井啓が監督した黒四ダム建設のドラマ。撮影は「情炎(1967)」の金宇満司。

ストーリー
関西電力は黒部川上流に第四発電所を建設するため、太田垣社長総指揮のもとに社運をかけて黒四ダム工事に当たることになった。間組の国木田と熊谷組の下請会社の岩岡源三は、ともに現場責任者の北川を訪れ、ダム工事の難しさを知らされた。源三の息子剛は、トンネル掘りのためにどんな犠牲も省りみない源三に反抗し、家を出て設計技師として図面をひいていた。国木田はそんな剛と、北川の長女由紀と見合いさせようと提案して、源三を驚かした。昭和三十一年八月、世紀の大工事といわれた黒四工事は、大自然との闘いの火蓋を切った。九月に入って剛は偶然、由紀と会い、親しさを増していったが、彼女が父の北川の身を心配するのを見て、源三の様子を見に黒部に向った。源三はめっきりと体が弱くなっていた。北川の黒四にかける熱意にほだされた剛は父に代ってトンネル掘りの指揮をとることになった。こうして工事が始って半年、犠牲者はすでに十六人を数え、難工事であることが現場の人たちに不安を抱かせ始めた。翌年の四月、北川たちが恐れていた事態が起った。軟弱な花岡岩帯にぶつかったのだ。五月に入ってすぐ、山崩れと大量の水がトンネルを襲った。この危機を切り抜けるため、色々な技術プランが検討されたが、工事は一向に進まなかった。そんな折りも折り、北川は次女の牧子が白血病にかかって入院し、生命はあと一年と知らされたが、大仕事をかかえているので、娘のそばについているわけにはいかなかった。現場は労務者が一人、二人と去っていく状態で、彼らの士気は上らなかった。一方、太田垣はあらゆる手を尽して危機を乗り切るため莫大な金を投入、技術陣の科学的な処置と、北川や源三たちの努力が実を結び、その年の十二月、ついに難所を突破。翌年十一月、剛は由紀と結婚した。そして二月、北アルプスを抜いてトンネルが開通した。その瞬間を躍り上って喜ぶ労務者たちの中で、北川は牧子の死を知らせる電報に接し、激しく慟哭した。昭和三十八年三月、黒四ダムは多数の犠牲を出して完成した。その日はちょうど北川の停年退職の日であったが、北川や剛たちはダムの偉容に、無限の感動を覚えていた。




3-8. 栄光への5000キロ

監督 蔵原惟繕
出演 石原裕次郎仲代達矢三船敏郎
1969年(松竹映配)

解説
笠原剛三の原作「栄光への5000キロ東アフリカ・サファリ・ラリー優勝記録」(荒地出版刊)を「濡れた二人」の山田信夫が脚色し「愛の渇き」の蔵原惟繕が監督した。撮影は「黒部の太陽」の金宇満司が担当。

ストーリー
人間とメカニズムが大自然と極限状況で接する苛酷なレース。世界三大ラリーの一つモンテカルロ・ラリーに参加した五代は、視界ゼロの濃霧の中で岩石に激突。昏睡状態から覚めた五代の目に像を結んだのは必死の看護を続ける恋人優子の姿だった。その時、メカニックを担当したケニアの青年マウラは、事故の責任を感じ姿を消していた。やがて春、五代の傷は癒えたが、落着いた生活を夢みていた優子の期待は見事に裏切られた。五代にとって、自動車レースこそが最大の生甲斐だった。富士スピードウェイの日本グランプリ・レースで、五代は親友ピエールの巧妙なレース妨害で優勝を逸した。五代が、日産常務高瀬から、大任を依頼されたのはそんな折だった。アフリカのサファリ・ラリー出楊がそれだった。五代は早速コースにもっとも精通したメカニック担当者マウラを探し出すことから始めた。折も折、優子かデザインの勉強のためパリに飛たった。だが、五代は彼女を追う訳にはゆかなかった。それから数日後、ナイロビ空港に降り立った五代をマウラが待受けていた。このレースには、日本グランプリで苦渋を味あわせたピエールも出場。四月三日、熱気によどんだナイロビシティホール前、大統領夫人のかざすスタート・フラッグがうち下され、カーナンバー1のプジョーが、スタートした。やがてカーナンバー90の五代チームも夜のとばりをついて多難なレースにスタートしていった。レースは苛酷そのもの、前半を完走したのは九八台中わずか一六台だった。そして後半の北廻りコースを、いや大自然を征服した五代チームのブルーバードが、大観衆の見守る中で優勝の栄に輝いた。群衆の中には優子の姿もあった。




3-9. 瀬戸内少年野球団

監督 篠田正浩
出演 山内圭哉大森嘉之佐倉しおり
1984年(ヘラルド映画)

解説
敗戦直後の淡路島を舞台に、野球を通して子供たちに民主主義を学ばせようとする女教師と、スポーツに目覚めていく子供たちとの絆を描く。原作は阿久悠の同名小説で昭和五四年度下半期の直木賞候補作品。脚本は「夜叉ヶ池」の田村孟、監督は「悪霊島」の篠田正浩、撮影も同作の宮川一夫が各々担当。

ストーリー
昭和20年9月の淡路島。江坂町国民学校の初等科5年男組の級長、足柄竜太、バラケツ(ヤクザ)志望の正木三郎らは担任の中井駒子先生の指示に従って、国語の教科書の不適表現箇所を墨で塗りつぶしていた。海軍大将になることが夢だった三郎、父母を亡くした竜太、仲間のデブ国、ニンジン、ボラ、ガンチャ、ダン吉、アノネも、何によってよいか皆目見当がつかなかった。生徒の人気の的、駒子先生も、新婚早々に出征した夫正夫が戦死し、婚家の網元にとどまるかどうか迷っていた。義理の両親は、次男の鉄夫との再婚をすすめるのだが、気がすすまなかった。新学期が始まって、転校生がやってきた。海軍提督だった父に同行して島にやってきた波多野武女だ。彼女のきりりとした美しさに胸ときめいた少年たちは、武女と提督を進駐軍の手から守ってやることを誓い合った。そんなある日、竜太の祖父で巡査の足柄忠勇のもとに進駐軍が島へやってくるという報せが入った。数日後、星条旗をなびかせて巡視船がやってきた。アンダーソン中尉に率いられたGIたちは城山にある砲台を次々と爆破していった。その晩、中井家では将校を招いて大宴会が催された。手伝いを途中で抜け出して自分の部屋に戻った駒子を、鉄夫が力づくでねじ伏せ、体を奪った。翌日、バラケツと竜太は学校の帰りがけに天神さまに寄ると、一本足で松葉杖をついた白衣の軍人に声をかけられた。駒子先生の夫正夫だった。しかし、駒子先生は前夜の鉄夫とのことがあるため、正夫に会うことはできなかった。正夫は、竜太とバラケツに暮らすところが決ったら連絡すると約束し、島を去った。島の正月は、村芝居で賑わった。床屋のトメとその愛人で流しの旅芸人池田新太郎が企てた演し物は、駒子と鉄夫と正夫の三角関係を脚色した世話物で、町の好きものたちに大受けした。戦後はじめての春がめぐってきた。桜が満開になる頃、竜太、バラケツ、武女は6年生に進級、担任は駒子先生だった。間もなく、武女の父は巣鴨プリズンに出頭し、武女は島に残ることになった。それとは反対に、バラケツの兄、二郎と愛人のヨーコが島に戻ってきた。成金、軽薄を絵に描いたような二人が教室にやってきて、キャンデーをばらまいた。争ってそれを拾う生徒たち。そんな子供たちの姿を見て、駒子先生は子供たちに野球を教えようと思った。竜太たちは見よう見まねでグローブやボールやバットを作った。毎日、みんなは暗くなるまでボールを追ったが、バラケツだけは兄のいかがわしい仕事を手伝っていたために仲間に入らなかった。しかし、その兄と愛人は仕事に失敗して自殺してしまう。夏休み、駒子先生は竜太と武女に連れられて、金比羅さんにいる正夫を訪れた。鉄夫との過ちはあったものの、正夫に許しを乞い、もう一度一緒に生活を始めようと決意したのだ。二人の新しい生活が始まり、戦前の中等野球で活躍した正夫をコーチに招いて駒子先生率いる“江坂タイガース”は一段と練習に熱が入った。バラケツもチームに戻ってきた。しかし、隣町のチームとの初陣は、惨憺たる結果で終った。学校生活も残り少なくなったある日、武女に、父がシンガポールで絞首刑に処せられたという報せが入った。そして武女は兄が待つ東京に帰らなければならなくなった。そんなところにかつて、島にやって来たことがあるアンダーソン大尉が、思い出に江坂タイガースと試合をやりたいと申し込んできた。竜太と三郎は、武女の父親を絞首刑にしたような国のチームとはやりたくないと突っぱねたが、武女はやると言ってきかなかった。試合は、武女の決勝打で江坂タイガースが勝った。昭和22年3月、武女は兄と一緒に島を去った。バラケツ一人が武女を見送った。




3-10. ジャングル大帝

監督 竹内啓雄
出演 津嘉山正種柊美冬
1997年(松竹)

解説
ジャングルを舞台に、人間と動物たちの闘い、友情、愛、冒険を描いたスペクタクル長編アニメーション。監督は、テレビ・アニメ「美味しんぼ」の竹内啓雄。手塚治虫の大ベストセラー・コミックを、竹内と「ブラック・ジャック」の手塚プロダクション文芸部が脚色。撮影を「HERMES 愛は風の如く」の玉川芳行が担当。声の出演に、「蛍II 赤い傷痕」の津嘉山正種、柊美冬、富田耕生らがあたっている。

ストーリー
ジャングルの王者、白ライオンのレオとその妻・ライヤの間に2頭の子供・ルネとルキオが生まれ、ジャングル中がお祝い気分でいっぱいの頃、人間の街ではハム・エッグという男がジャングルで発見した月光石をめぐって騒ぎが起きる。月光石は未知のエネルギーを秘めた特殊な石で、エネルギー危機に直面した地球の救世主として注目を集めていたが、それがあるとされる幻のムーン山がどこにあるのかは明らかになっていなかった。科学技術庁員のラムネとともに月光石を探しに行くことになったハム・エッグは、ジャングルに詳しいヒゲオヤジと合流する。ところが、ハム・エッグは車の通る道を切り開くために木々を焼き払い、動物たちを殺し始めた。意見を異にするヒゲオヤジはラムネとともに隊を離脱するが、火災のせいで自然環境が崩れ、ジャングルは大雨と洪水に見舞われる。その影響でルネが濁流に流され、遥かな海で人間の船に拾われた。サーカスに売られたルネは空中ブランコの大スターになり、楽しい日々を送ったが、その頃、ジャングルでは死斑病が動物たちの間に大流行し、ライヤが息を引き取っていた。それを渡り鳥たちに聞いたルネは、サーカスの少女・メリーの手引きでジャングルへ帰る決心をする。一方、動物たちを薬で救ってやったヒゲオヤジは、ついにハム・エッグがムーン山を発見したことを知り、月光石を悪用されてはならないとムーン山への登山を開始した。レオの案内で、ヒゲオヤジたちはハム・エッグよりも早く登頂に成功し、月光石を発見するが、後をついてきたハム・エッグと熾烈な闘いになり、ヒゲオヤジとレオだけが生き残る。下山途中、彼らは猛吹雪に襲われ、ヒゲオヤジに肉と毛皮を与えようとレオは自らの命を絶った。ひとりで下山したヒゲオヤジは、偶然会ったルネに偉大な父の話を聞かせてやる。




3-11. 恋空

監督 今井夏木
出演 新垣結衣三浦春馬香里奈
2007年(東宝)

解説
出版後1ヶ月で100万部を突破した、美嘉の人気ケータイ小説を映画化。原作者がモデルのヒロインを新垣結衣が演じ、せつない恋と、その衝撃的な結末を描くラブ・ストーリーだ。

ストーリー
校舎の窓から海が見える、のどかな地方都市の高校に通う美嘉(新垣結衣)。ある日、彼女は愛用の携帯電話を落としてしまうが、図書室の本棚に置かれていた。その晩から発信人不明のメールが届き、返信を打ち続けるうちに美嘉は相手に興味を抱く。メール相手は、金髪の同級生ヒロ(三浦春馬)だった。二人はつきあうようになるが、ヒロの元彼女だった咲は激しく嫉妬して男子生徒たちに美嘉を襲わせる。さらには、校内中の教室の黒板に美嘉への中傷を書いて追いつめた。しかし、美嘉とヒロの絆は逆に深まっていった。そして、美嘉はヒロの子供を身ごもる。父親となることを決意したヒロは、美嘉の両親に結婚を申し込むが、またも咲の暴行で美嘉は流産してしまう。やがてヒロは、美嘉に唐突な別れの言葉を告げる。傷心の美嘉が出会ったのは、大学生の優(小出恵介)だった。包み込むような優の愛情で安らぎを得る美嘉。同じ大学に進学した美嘉は、優と迎える初めてのクリスマスイブの夜、ヒロと再会する。ヒロは、ガンで闘病生活を送っていた。美嘉への別れの言葉は、死を意識して自身から身を引こうとした結果だったのだ。真実を知った美嘉は、残されたヒロの僅かな時間をともに過ごそうと決意した。ふたりだけの木陰で挙げた結婚式。そのとき、初めてヒロは美嘉にすがって泣いた。 やがて、悲しい運命の日が訪れた。ヒロとの永遠の別れに、思わず橋から身を投げようとする美嘉だが、なんとか思いとどまる。自分には、まだ家族がいることに気がついたのだ。自身と、ヒロの家族が…。ヒロの思い出を抱いて生きていくことを選択する美嘉は、またひとつ成長していた。




3-12. ペリーヌ物語

監督 岡安肇
出演 鶴ひろみ巌金四郎
1990年(東宝東和)

解説
 1978年にフジテレビ系で放映された世界名作劇場「ペリーヌ物語」の劇場用アニメーション。テレビアニメの全53話を再編集しつつ、セリフを新たに再録した内容となっている。  主人公のペリーヌは、インドから父の故郷であるフランスへ向けて、両親と共に旅に出る。しかし旅の途中で両親を亡くし、残されたペリーヌは祖父が住むマロクールへ向かうことに。そして何とかマロクールに着いたペリーヌだが、祖父が人の優しさを知らない冷徹な人物であることを知る。そこで自らの名を変えて、祖父が経営する工場で働くことに……。ペリーヌは祖父の心を開かせることができるのか。  なお、本作の原作は「EN FAMILLE(アン・ファミーユ)=家なき娘(邦題)」で、エクトル・マロの代表作「家なき子=サン・ファミーユ」の姉妹作として知られている。

ストーリー





3-13. 狼よ落日を斬れ

監督 三隅研次
出演 高橋英樹緒形拳近藤正臣
1974年(松竹)

解説
激動の幕末維新を背景に、血みどろで生きぬいた剣客、英雄たちの鮮烈な、そして魅力的な生きざま、死にざまを描いた長編時代劇。原作は池波正太郎の「その男」。脚本は国弘威雄、監督は「子連れ狼 冥府魔道」の三隅研次、撮影は「にっぽん美女物語」の小杉正雄がそれぞれ担当。

ストーリー
杉虎之助は御家人の総領として生まれたが、十四歳の時に家出、池本茂兵衛に捨われ、無外流に似た実戦的な剣術使いとなった。八年後、江戸に戻った虎之助は屈強の勤番侍にからまれている叔父の旗本・山口金五郎を偶然救ってやる。その時の、侍数人を川の中に叩き込んだ虎之助の早業に、幼年時代、虎之助の親代りだった金五郎は目を見張った。またもう一人虎之助の働きに瞠目した青年武士がいた。門弟千余人をかかえる江戸屈指の心形刀流伊庭道場の後継ぎ、伊庭八郎である。時に、国中は勤王、佐幕の抗争が続き、京都では近藤勇、沖田総司ら新選組が池田屋騒動で勤王の志士を大量殺戮した頃である。虎之助の腕を見込んだ八郎は、自分の友人が隊長をしている洛中見廻り組に力を借してくれ、と熱心に口説いた。その夜、虎之助は恩師茂兵衛の使いの僧から、礼子という女を連れて京都に来いとの伝言を受けた。品川宿で会った礼子は男装の美女だった。道中、箱根で二人は薩摩藩々士に襲われるが、虎之助は全員斬り伏せる。以来、若い二人の間に愛情が芽生えた。京の町は騒然としていた。その中で虎之助の目を惹く使い手がいた。薩摩の中村半次郎である。その攻撃一途の示現流も迫力があったが、半次郎の情婦の法秀尼という尼僧は、虎之助が江戸にいる時、やくざの手から救ったお秀だったのだ。数日後、虎之助は乞食に身をやつした茂兵衛と再会した。茂兵衛は、自分は幕府の密偵で薩摩藩を探索する身であることを明かし、「お前だけは今の時の流れに巻き込まれず、次の世の中を見つめてくれ」と諭すのだった。礼子も親の代からの公儀隠密で、女ながらに幕府の為に身を挺してきた礼子の話を聞き、虎之助の血は騒いだ。やがて、上洛して来た八郎にすすめられて見廻り組に参加した虎之助は、副隊長格として勤皇の士を斬りまくった。杉虎の異名は京の都にとどろくが、心は空虚感にうちひしがられる日々だった。祇園祭の夜、茂兵衛が薩摩藩士に襲われ死んだ。仇、東郷直二を斬った虎之助に対する茂兵衛のいまわの言葉は「礼子と共に江戸へ帰れ、無駄死するな」だった。鳥羽伏見の戦いで、八郎、沖田総司ら幕軍は、半次郎らの官軍に破れた。その頃虎之助は、師茂兵衛の遺志を守り、礼子と二人で江戸で愛の日を送っていた。京から逃れて来た沖田総司が胸の病で死んだ。数日後、八郎が虎之助を訪れ、上野の彰義隊に加わり幕臣として最後の一戦を交えよう、と誘った。虎之助は断ったが、それは上野で斬り死にするより辛いことだった。上野の戦いは幕臣側の惨敗に終った。虎之助と、八郎の義妹で八郎とは相思相愛のつやが、上野の山に八郎を求めて彷徨うが生死不明だった。数日後、彰義隊の残党狩りでごった返す町中で、虎之助は片腕を失った八郎を発見した。八郎は虎之助に、柳生新陰流−−本心流を受け継ぐ、心形刀流の奥儀である二十四の組太刀を伝えた後、再起をはかるのだ、と函館へ去った。そんなある日、残党狩りを続ける薩摩藩士村田以喜蔵が、虎之助の留守を襲い礼子を惨殺した。怒り狂った虎之助は、官軍の一隊を襲い、以喜蔵を斬った。明治六年。虎之助のところへ桐野利秋と名を替え陸軍少将となった半次郎が、遊びに来るようになった。全てが恩讐の彼方に流れ、二人の間に友情が復活したかのように見えたが、茂兵衛殺害の真犯人が実は半次郎であった、と知った虎之助は、西南戦争勃発で、鹿児島にいる西郷隆盛に従った半次郎を追って、鹿児島へ向かった。殺気をはらんで二人は対決したが、西郷の仲裁と、互いの憎悪が自然に消えていたこともあって、どちらからともなく刀を捨てた……。西南戦争は終った。東京のとある橋の上で、流れる川を眺める虎之助の耳に号外の鈴の音−−号外には西郷が自刃、半次郎戦死、との記があった。




3-14. ヴィヨンの妻

監督 根岸吉太郎
出演 松たか子浅野忠信室井滋
2009年(東宝)

解説
文豪・太宰治の短編に、他の太宰作品のエッセンスを取り込んで映画化。放蕩の限りを尽くす小説家と、そんな夫を愛し続ける美しい女性の物語を、松たか子と浅野忠信の共演でつづる。

ストーリー
戦後、混乱期の東京。ある夜、酒代を踏み倒した上に、その飲み屋から五千円を盗んで逃げ出した放蕩者の小説家・大谷(浅野忠信)を追いかけて、飲み屋夫婦の吉蔵(伊武雅刀)と巳代(室井滋)が大谷の自宅までやってきた。大谷は飲み屋夫婦と言い争うが、大谷の妻・佐知(松たか子)が割って入った瞬間、大谷はその場から逃げ出してしまう。翌朝、佐知はなんとか警察沙汰だけは許してもらおうと、吉蔵と巳代が経営する飲み屋・椿屋へ出向く。窮地にあっても不思議な生命力を発する佐知は、夫が踏み倒した過去の酒代の肩代わりに、その日から椿屋で働くことになる。いきいきと働く佐知の美しさと明るさが評判となって椿屋は大繁盛。客からチップを貰った佐知は、自分に魅力があると気付き、あっけらかんと「私、お金になるんですね」と言い放つ。一方、大谷は、酒を飲んでは借金を作り、浮気を繰り返し、たまに家に帰ってくると、何かに追いかけられているかのように喚き、佐知に救いを求めてくる。そして魂が抜けたようにまたふらりと出て行くのであった。彼は小説家の仕事はしているが、家に金を入れることはほとんどなかった。だが、家ではあまり会うことのなかった夫と、椿屋で会うことができるようになった佐知は、そのことがとても嬉しく幸せだった。佐知がそれを大谷に話すと、彼は「女には幸福も不幸もないのです。男には不幸だけがあるんです」と呟く。そんな中、椿屋で働く佐知の前に、佐知に好意を持つ真面目な工員・岡田(妻夫木聡)や、かつて佐知が思いを寄せていた弁護士・辻(堤真一)が現れる。佐知の心は揺れ動くが、そんな佐知の気持ちを知ってか知らずか、大谷はバーの女・秋子(広末涼子)と共に姿を消してしまう……。




3-15. オカンの嫁入り

監督 呉美保
出演 宮崎あおい大竹しのぶ桐谷健太
2010年(角川映画)

解説
大竹しのぶと宮崎あおいが母娘に扮した家族ドラマ。母親の突然の再婚宣言によって平凡な日常が変化していくさまを描く。全編関西弁による、2人のテンポのよい会話も楽しい。

ストーリー
大阪。月子(宮崎あおい)と陽子(大竹しのぶ)は、母ひとり子ひとりで仲良く暮らしてきた親子。ある日の深夜、陽子が酔っ払って若い金髪の男・研二(桐谷健太)を連れて帰ってくる。何の説明もないまま玄関で眠りこける二人。月子は陽子を引きずり、居間のこたつに寝かせ、玄関で倒れている研二には毛布をかけてやる。翌朝、ケロッとした顔で陽子が言う。「おかあさん、この人と結婚することにしたから」……あまりに突然のことにとまどう月子は、とっさに家を飛び出し、隣の大家・サク(絵沢萌子)のもとへ向かった。月子が生まれる前に、陽子は夫・薫と死に別れており、ずっと「薫さんが、最初で最後の人」と言っていた。しかも、研二は30歳。態度もヘラヘラしていて、元板前だというが、今は働いていないらしい。納得がいかない、というよりも母の行動が理解できない月子は、サクの家に居座り続ける。「月ちゃんがいない家に同居はできない」と研二は庭の縁側の下で寝泊りする。そんな中、陽子に対しても、研二に対しても頑なに心を閉ざし続ける月子に、陽子の勤め先、村上医院の村上先生(國村隼)は、これまで誰にも話すことのなかった陽子との秘密を告白、月子を驚愕させる。それを聞いて渋々だが、陽子の結婚を了承することにした月子。ところがある朝、陽子と研二が二人で衣裳合わせに出かける間際、陽子が倒れてしまう。緊急搬送され、診断結果は軽い貧血。ホッとする月子であったが、次の瞬間、医師から受け止めがたい現実を突き付けられる。月子は、陽子を白無垢の衣裳合わせに連れて行くことを決意。由緒ある神社の静かな衣裳部屋で、白無垢に身を包んだ陽子が三つ指をついて月子の前に座る。涙をこらえ、ゆっくりと絞り出すように、これまで決して話すことのなかった本音を、陽子が月子に語り始めた……。




3-16. 御用金

監督 五社英雄
出演 仲代達矢萬屋錦之介丹波哲郎
1969年(東宝)

解説
「喜劇 爬虫類」の田坂啓とテレビ出身の五社英雄が脚本を共同執筆し、五社がメガホンをとった時代劇。「お熱い休暇」の岡崎宏三が撮影を担当した。わが国はじめてのパナビジョン。(70ミリ)

ストーリー
天保二年の冬、越前鯖江藩領内で奇怪な事件が起った。黒崎村の漁民が一人残らず姿を消してしまったのだ。領民たちは、この事件を“神隠し”と呼んで怖れた。三年後の江戸。浪人脇坂孫兵衛が、鯖江藩士の流一学らに急襲された。孫兵衛は、彼らが、次席家老六郷帯刀によって差向けられたことを知り愕然とした。その頃鯖江藩は、公儀より一万石を削減され、さらに享保以来の不況で、極度に疲弊していた。帯刀は、佐渡から産出した御用金を積んだ船が黒崎村沖で遭難した時、漁民たちが拾いあげた金を藩財政建てなおしのために横領し、その秘密を知る漁民をみな殺しにしていたのだった。帯刀の妹しのの夫である孫兵街が、妻と藩を捨てて出奔したのは、それから間もなくのことだった。帯刀は、その時竹馬の友孫兵衛に二度と“神隠し”を行なわぬと約束させられた。だが、藩政改革に自分の政治的生命を賭ける帯刀は、再度の計画を練っていた。孫兵衛は、帯刀への怒りをこめて鯖江に向ったが、その途中女賭博師おりはと知合った。おりはも“神隠し”の犠牲者だった。年季奉行が明けて村へ帰った時、許婚者も父親もなく、身を落した女だった。旅を続ける孫兵衛は、やがて、浪人藤巻左門と会った。その時、左門は孫兵衛につかず離れずの旅をしていた。一方、藩では、孫兵衛の行動を察知し、剣の木峠で彼を急襲させた。そして、死闘で傷ついた孫兵衛を救ったのは左門だった。やがて、帯刀に、金を積んだ御用船が佐渡を出帆したという報告が入った。そして、鮫ヶ淵村が“神隠し”の舞台に選ばれた。帯刀の片腕九内らに狩り出された鮫ヶ淵村の漁民たちは、御用船を湾の暗礁地帯に誘導すべく、偽りの篝り火台を新設していた。帯刀の野望と領民の悲劇を阻止するために孫兵衛が立ちあがり御用船難波の真相究明に幕府が送った公儀隠密の左門もまた孫兵衛とともに鯖江藩の剣客と対峙した。雪をついて二人の剣が次々と相手を倒し、やがて帯刀を倒し、“神隠し”の悲劇を未然に防いだ。




3-17. 釣りバカ日誌 13 ハマちゃん危機一髪!

監督 本木克英
出演 西田敏行三國連太郎鈴木京香
2002年(松竹)

解説
ハマちゃん&スーさんの釣りバカコンビが活躍する人気コメディ・シリーズ最新作。富山の雄大な山海の自然美を背景に、美術館建設を巡る義理人情&恋愛騒動が展開。

ストーリー
富山の老舗薬問屋・黒部屋天狗堂の会長で、釣り仲間である黒部から美術館建設の仕事を請け負ったものの、そのデザインを巡ってトラブルが発生したハマちゃん。鈴木建設設計部のエースであり、ミス・スズケンと呼ばれる桐山桂と富山へ飛んだ彼は、なんとか黒部を説得し事態を収拾、余った時間で黒部と釣りを満喫することが叶う。ところが、そんなハマちゃんに黒部が桂を自分の息子の嫁に欲しいと言い出した。変わり者の黒部だけに、機嫌を損ねては契約がご破算になってしまう。しかも、桂には透と言う秘かな想いを寄せる人がいた。困り果てたハマちゃんは辞表を出す覚悟でスーさんと桂と共に富山へ行くが、実は黒部の息子には既に妻子がいたことが発覚。こうして危機を乗り越えたハマちゃんは、美術館起工式を済ませ、スーさんと富山湾で釣りを楽しむのであった。




3-18. 遙かなる山の呼び声 

監督 山田洋次
出演 高倉健倍賞千恵子吉岡秀隆
1980年(松竹)

解説
警察に追われる男と、牧場を切り回す母子の出会いと別れを描く。脚本は「男はつらいよ 寅次郎春の夢」の山田洋次と同作の朝間義隆の共同執筆、監督も同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当している。

ストーリー
北海道東部に広がる根釧原野にある酪農の町、中標津で、風見民子は一人息子の武志を育てながら亡夫の残した土地で牛飼いをしている。激しい雨の降るある春の夜、一人の男が民子の家を訪れ、納屋に泊めてもらった。その晩、牛のお産があり、男はそれを手伝うと、翌朝、去っていった。夏のある日、その男がまたやってきて、働かせてくれという。隣家の娘ひとみが手伝ってくれるが、男手のない民子はその男を雇うことにする。田島耕作と名乗る男はその日から納屋に寝泊まりして働きだした。武志は耕作にすぐになついていった。近所で北海料理店を経営する虻田は、民子に惚れていて、ある日、力ずくで彼女をモノにしようとして耕作に止められた。怒った虻田は兄弟を集めて、耕作に決闘を挑むが、簡単にやられてしまい、それからは、耕作を兄貴と慕うようになる。民子が腰痛を訴え、入院することになった。武志はさみしさから、耕作と一緒に納屋に寝るようになった。民子が退院して間もなく、従弟の勝男が新婚旅行で新妻の佳代子を連れてやって来た。数日後、耕作の兄の駿一郎がやってきた。彼は耕作が起こした事件で教職を追われていたが、耕作の行く末を心配していた。その夜、兄の持ってきたコーヒーを飲みながら耕作は民子にここにとどまってもいいと胸の内を明かした。季節は秋に変り、土地の人達が待ちこがれる草競馬の時期となった。耕作も民子の馬で出場、見事、一着でゴールイン。興奮する民子、武志、観客たち。その中に、刑事の姿があった。刑事の質問にシラを切った耕作だが、その夜、民子にすべてを打ち明けた。耕作は二年前、妻が高利の金を貸りて自殺、それを悪し様に言う高利貸を殺し、逃げ回っていたのだ。家を出ていくという耕作に民子は止めるすべもない。夜更けに耕作が民子の家の戸をたたいた。ある決意をもって戸を開けた民子。だが、耕作は牛のぐあいが悪くなったと知らせにきたのだ。徹夜で牛の看病をした翌朝、耕作は家の前にとまったパトカーへ自分から歩いていった。冬、網走に向う列車の中に四年の刑を言い渡された耕作の姿があった。美幌の駅で耕作は虻田と民子の姿を見た。民子が町に出て、耕作の出所を待つために武志と新しい生活を始めたことを告げる虻田。夕焼けに染った雄大な雪原を耕作を乗せた列車が行く……。




3-19. 幸福の黄色いハンカチ 

監督 山田洋次
出演 高倉健倍賞千恵子武田鉄矢
1977年(松竹)

解説
ドーンの作詞・作曲したフォーク・ソングとしても親しまれている、ピート・ハミル原作の映画化。模範囚として六年の刑期を終えた男が、行きずりの若者二人と共に、妻のもとへ向う姿を描く。脚本は「男はつらいよ 寅次郎と殿様」の山田洋次と朝間義隆の共同執筆、監督も同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。

ストーリー
欽也が島勇作と逢ったのは、春の陽差しの強い網走の海岸であった。欽也は自分の車で、北海道の広い道をカッコイイ女の子を乗せて、ドライブするのが高校時代からの夢で、嫌な仕事も無理をして勤め、金をためて新車を買い求めた。東京からフェリーで釧路港へ、そして、あざやかな緑の根釧原野を欽也の赤い車は、ラジオの軽快なリズムに合わせて、ひた走った。欽也は網走の駅前で、一人でふらりと旅に出た朱実と知り合う。朱実は列車食堂の売り子で、同僚から誤解を受けて、やけくそになって旅に出たのだった。朱実は欽也の車に乗せてもらったものの、海岸で不意に欽也からキスを求められて、車から飛び出した。逃げ出した朱実をかばい、鋭い目付で欽也を睨んだ男、それが島勇作であった。欽也から見た勇作は、なんともいえない、いい男だった。しかし、欽也は啖呵を切った行きがかり上、勇作に挑むが、軽くあしらわれてしまう。そんなことがきっかけで、三人の旅は始まった。欽也が勇作に行く先を尋ねると、彼は暫らく考え、「夕張」と答えるだけだった。その夜、三人で泊まった宿で、欽也は、勇作が眠ったのを見定め、朱実の寝床に忍び込む。朱実は必死に抵抗し、大声で泣き出したため、目をさました勇作に、欽也は一喝を喰わされてしまった。翌日、欽也は毛ガニを買いこみ、一人で二匹もたいらげたことから、腹をこわしてしまう。車を運転していても、便所のあるところを見つけてはかけこむ始末である。そんなことで、十勝平野の美しい風景も欽也には共感が湧いてこなかった。大雪山が見える狩勝峠で、強盗犯人が逃亡したことから一斉検問が行なわれていた。欽也は免許証を見せるだけで済んだが、警官は勇作を不審に思い質問すると、一昨日刑期を終え、網走刑務所を出所したと彼は答えた。朱実と欽也は驚きのあまり、語る言葉もなかった。三人はパトカーで連行されるが、勇作が六年前、傷害事件をおこした際立合った温厚な渡辺課長の取りはからいで、何もなく富良野署から釈放される。走る車の中で勇作は重い口を開いて、朱実と欽也に過去を語り出した。 −−勇作は若い頃、九州に住んでいたが、三十歳を過ぎて考えを変え、夕張の炭抗で働らき始めた。その頃、町のスーパー・マーケットで働いていた光枝と恋をして結婚した。それから数年は幸福な日が続いた。そして光枝は妊娠するが、折角出来た赤ちゃんを流産してしまった。その夜、勇作は飲み屋で酔っぱらったチンピラに因縁をつけられる。あまりのしつこさに勇作は腹をたて、相手を殴ると、チンピラはそのまま死んでしまう。勇作は六年間、刑務所で過すが、光枝の面影は、勇作の心から離れなかった。刑期を終える直前、勇作は光枝に手紙を書いた。「俺は、お前が良い男と再婚して、幸せになっていることを望んでいる。この手紙がつく頃、俺は夕張に行くが、もしも、お前が今でも独りで暮しているなら、庭先の鯉のぼりの竿の先に黄色いハンカチをつけておいてくれ。そのハンカチを見たら俺は家に帰る。でもハンカチがなかったら、俺はそのまま夕張を去っていく」と。−−その話を聞いた朱実と欽也は声をふるわせて泣いた。車は赤平、歌志内、砂川を過ぎて一直線に夕張に向かう。朱実と欽也の祈りをこめて、車は夕張の町に近づいた。しかし、勇作は引返そうと言い出す。陸橋を越え、車は大きくカーブを描き、街の坂を登っていった。その時、欽也と朱実の眼に映ったものは、角の家の狭い庭先に、不釣合いな高い旗竿の上から下まで並んだ何十枚もの黄色いハンカチであった。欽也と朱実は手と手を固く握りしめる。黄色いハンカチのなびく家から、光枝は出てきた。語りきれない愛の言葉を胸に秘め、静かで温かな勇作の眼は、じっと光枝を見つめている。六年の歳月も、二人を離すことはできなかったのだった。




3-20. 時雨の記

監督 澤井信一郎
出演 吉永小百合渡哲也佐藤友美
1998年(東映)

解説
若い頃に見初めた女性との20年ぶりの再会に愛を燃やす中年男性と、そんな彼の一途な想いに深い理解を示していく中年女性の純愛をしっとりと描いた恋愛ドラマ。監督は「日本一短い「母」への手紙」の澤井信一郎。中里恒子の同名小説を基に、「日本一短い「母」への手紙」の伊藤亮二と澤井監督自身が共同脚色。撮影を「誘拐」の木村大作が担当している。主演は「霧の子午線」の吉永小百合と「誘拐」の渡哲也。尚、ふたりの共演は「愛と死の記録」以来、29年ぶりとなる。キネマ旬報日本映画ベスト・テン第9位

ストーリー
昭和が終わりを告げようとしていた頃。明和建設の専務・壬生孝之助は、20年ぶりに堀川多江の姿をあるホテルのパーティ会場に認めた。多江とはかつて一度だけ会社の会長の葬式で会っただけの間柄だったが、彼は彼女のことをずっと忘れないでいたのだ。この運命的な出逢いを機に、壬生は彼女の家を頻繁に訪問したり、彼女を食事に誘ったりと積極的な行動に出るようになる。一方、夫を亡くし生け花教室を開いてひとり慎ましく鎌倉に暮らしていた多江も、初めは戸惑いを隠せなかったが、一途な壬生の性分に好感を抱くようになっていた。だが、どんなに逢瀬を重ねても、ふたりの関係は口づけを越えることはなかった。ある日、多江と壬生は秋の京都を訪れる。多江の愛読する『名月記』の作者・藤原定家縁の常寂寺裏にある時雨亭跡を散策し、飛鳥の丘陵から吉野の山々を眺めながらここに庵を建てようと約束を交わすふたり。しかしそれから数日後、壬生が心臓発作で倒れ入院した。知らせを聞いた多江は急いで見舞いに駆けつけるが、そこで彼女は壬生の妻・佳子と会ってしまう。世間的には不倫と呼ばれて仕方のないふたりの関係。そのことを思い知った多江は身を引くことを決意すると、かねてから生け花の師匠に誘われていた京都行きを承諾するのだった。ところが、壬生はそんな多江の想いとは裏腹に、ふたりで京都に住もうと言い出す。時代は平成へと移り、スペイン出張から帰国した壬生は遂に佳子に別れを告げる。「今までは仕事中心に自分を殺して生きてきた。これからは自分の心の思うままに生きたい」と言って。多江を京都に追った壬生は、生け花の発表会の準備に忙しい多江と時雨亭跡で待ち合わせる。師匠の止めるのも聞かず、壬生の元に走る多江。だが、そこには心臓を押さえ苦しそうにしている壬生の姿があった。壬生が心不全で他界したのは、それから間もなくのことだった。葬儀も終わったある日、京都への引っ越しの準備をしている多江の元へ佳子がやって来る。彼女は、多江に思いの丈をぶつけた。そんな彼女に黙って耐え忍ぶしかない多江。だが数日後、壬生の無二の親友・庄田が、壬生が書き残していた庵の設計図を持って来てくれた時には、溢れ出る涙を抑えることは出来なかった。春。多江は、壬生との想い出の京都の地をひとり訪れた。




3-21. 海猿

監督 羽住英一郎
出演 伊藤英明加藤あい藤竜也
2012年(東宝)

解説
2004年6月12日に全国東宝系にて公開。海上保安庁が全面協力。キャッチコピーは「カッコつけてちゃ、命は救えない。」

ストーリー
海が好きという思いで、転職してまで海上保安庁に入った仙崎。第七管区福岡海上保安部に配属されたが、地上や船上勤務を退屈と感じ、エリート集団である潜水士を目指し、海上保安大学校の潜水士課程に入校するところから物語は始まる。海猿と呼ばれる若き潜水士候補生の友情、恋、挫折、試練、成長が描かれた。




3-22. スイングガールズ

監督 矢口史靖
出演 上野樹里平岡祐太貫地谷しほり
2004年(東宝)

解説
ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督の最新作。東北の片田舎を舞台に、ビッグバンドジャズに魅了された女子高生たちの奮闘を描く、笑いと感動の青春物語だ。

ストーリー
東北地方の田舎町。食あたりで倒れた吹奏楽部の代わりに、急遽集められた友子をはじめとする落ちこぼれ13人と、リコーダーとギターとベースしか出来ない3人という計16人の女子高生。たったひとり難を逃れた吹奏楽部の1年生・拓雄と共に、野球部の応援の為にビッグバンドを結成することになった彼女たちは猛特訓を開始するが、やっと演奏の楽しさを知った矢先、吹奏楽部が復活。17人の夏休みは、不完全燃焼のまま終わっていくのだった。だが、一度知ったスウィングの楽しさは忘れられるものではない。途中、脱落者は出たものの、大奮闘の末に楽器をゲットした彼らは、隠れジャズマニアだった数学の小澤先生の指導(?)の下、演奏も徐々に様になっていく。そして、一度は去ったメンバーたちも戻って、ビッグバンド“Swing Girls and a Boy”は“東北学生音楽祭”にも出場。満員の会場で、みごとな演奏を披露するのであった。




3-23. 陽暉楼

監督 五社英雄
出演 緒形拳池上季実子浅野温子
1983年(東映)

解説
西日本一を誇る土佐の高知随一の遊興、社交の場、陽暉楼を舞台に、そこでくり拡げられる様々な人間模様を描く。宮尾登美子の同名小説の映画化で、脚本は「鬼龍院花子の生涯」の高田宏治、監督も同作の五社英雄、撮影は「伊賀忍法帖」の森田富士郎がそれぞれ担当。

ストーリー
大正元年冬、太田勝造と駆け落ちした豊竹呂鶴は追手の手にかかり死亡。二十年後、二人の間に生まれた房子は、陽暉楼の芸妓・桃若として大変な売れっ子になっていた。陽暉楼の女将・お袖は、呂鶴と勝造を張り合った勝気な女だったが、呂鶴の娘をあえて預り高知一の芸妓に仕上げ、自分のあとを継がせるつもりでいる。勝造は「芸妓紹介業」の看板を出し、今では“女衒の大勝”と呼ばれる存在になっていた。家には後添いのお峯と、実子で盲目の忠がいたが、最近、大阪に珠子という女を囲っている。珠子は、勝造の心の中の呂鶴の影に悩み、自ら陽暉楼に身を売ろうとしたが、お袖に断わられた。その時、陽暉楼で会った桃若に呂鶴の面影を見、嫉妬にかられた珠子は遊廓・玉水の明日楼に身を売る。ある日、大阪・稲宗一家の賭場で勝造は、丸子という芸者に出会う。以前から高知進出を企てていた稲宗は、丸子を陽暉楼に送り込み、主人・山岡を篭絡し抱きこもうと画策していた。稲宗の指し金で、丸子は山岡を誘い込み陽暉楼の芸妓となる。四国一の大ダンスホールに商工会々頭・前田、南海銀行副頭取・佐賀野井らとやって来た陽暉楼の面々は、珠子ら玉水の娼婦たちと居あわせる。やがて、珠子と桃若の間に険悪な空気が走った。佐賀野井から誘いをうけ約束の場所に駆けつけた桃若は、珠子との凄まじい決闘の結果、髪は乱れ、体中水びたしであった。そんな彼女を佐賀野井は抱きしめ、桃若は初めて愛の歓びを知る。その頃、陽暉楼を守るため、動きまわる勝造を稲宗一家の者が襲った。やがて、稲宗の手は珠子にまでのび、珠子は高知から大阪・飛田へと鞍替えさせられた。一命をとりとめた勝造は、お袖から稲宗の策略でピンチに立たされていること、桃若の妊娠を知らされる。桃若の相手は、パトロンの四国銀行協会々長・堀川でなく別の男だという。そして、お袖は道後温泉に遊ぶ山岡、丸子のもとに行き、力ずくで丸子を追い払う。一方、勝造は珠子をとり戻し、その足で稲宗の代貸し、三好のところに行き、山岡の博打の借金をたたき返し、稲宗一家との縁をたち切った。桃若は、前田から佐賀野井が三年間ヨーロッパへ行ったことを知らされショックをうけるが、子供を生もうと決心し、悩んだ末、堀川に子供は彼の子でないと打ち明けた。そんなことは承知で子供は認知しようと考えていた堀川は、自分の気持ちを踏みにじられたことに激怒し、縁切りを言い渡す。珠子は、勝造の希望通り秀次と一緒になり、高知に店を出すことになった。そして、桃若は女の子を生み弘子と名づける。桃若は、子供のために懸命に働くが、ある日、稽古の最中、突然倒れた。結核で身を蝕ばまれていたのだ。病院に見舞った珠子は、弘子を治るまであずかると言うが、芸妓の世界の習いとして、すでに弘子はお袖の世話で里子に出ていた。お袖は、弘子を返してくれとの勝蔵の頼みに、桃若の勝手な振舞をののしる。桃若の容態は悪化し、臨終の枕もとに弘子を伴って駆けつける勝造。その夜、秀次・珠子の店を勝造が訪れ桃若の死を告げた。その時、稲宗の手下が店を襲い、ドスに倒れて秀次は死んでいった。そして、大阪駅・三等待合室。勝造は切符を二枚珠子に渡し、用事が済むまでここで待つよう言い残し出て行く。勝造は床屋にいる稲宗、三好らを射殺するが、逃げる途中、追手に刺され絶命した。深夜の駅では、いつまでも勝造を待ち続ける珠子の姿があった。




3-24. サマー・ウォーズ

監督 細田守
出演 神木隆之介桜庭ななみ谷村美月
2009年(ワーナー・ブラザーズ映画)

解説
アニメ版「時をかける少女」で絶賛された細田守監督の最新作。世界を破滅の危機に陥れる仮想都市を相手に、ある大家族が挑む。一致団結する“親戚たち”の活躍ぶりが痛快!

ストーリー
現実と同様の仮想都市OZが作られ、世界の隅々まで行きわたるようになった現代。東京・久遠寺高校2年生、物理部所属の小磯健二(声:神木隆之介)は、天才的な数学力を持ちながらも数学学生チャンピオンの座を取りそこない、自信をなくしかけていた。夏休みには友人と共にOZの保守点検のアルバイトをする予定だったが、ふとしたきっかけから憧れの先輩、篠原夏希(桜庭ななみ)に誘われて長野県の高原・上田市を訪ねることになった。そこは室町時代から続く戦国一家・陣内家で、夏希の曾祖母・栄(富司純子)の90歳の誕生日を祝うため、各地から医者や漁師、消防士、水道局員、電気店経営、警官や自衛隊の将校、小学生や赤ん坊まで、多彩な親戚が集まってくる。そこで健二は突然、夏希からフィアンセを装うよう頼まれる。健二は困惑しながらも栄のために数日間の滞在をすることになった。賑やかな田舎で過ごす夏休み。だがその夜、不審な数学クイズのメールを受け取った健二は、数学好きの虫が疼きだし夜を徹して解答する。翌朝、仮想都市OZに出現した謎のアバター“ラブマシーン”は、完全無欠と思われていたOZ管理棟のパスワードを入手する。健二を始めとする多くのアバターにクイズ形式で解析させていたのだ。OZの心臓部に侵入したラブマシーンは4億人以上のアカウントを奪取、現実の世界を一変させてしまう。緊急通報システムと交通管理システムを麻痺させ、警察や消防署、病院は機能しなくなり、大渋滞によって流通はストップ、世界中が大混乱に陥っていった。そんな騒ぎを目の当たりにした栄はうろたえる人々を前に持ち前の度量を発揮、長年の人望を武器に陣頭指揮を開始する。しかし、ラブマシーンにアバターを乗っ取られた健二は、ラブマシーンが扮する偽ケンジによって、OZ荒らしの犯人の汚名を着せられ、現実の健二が逮捕されてしまう……。




3-25. 神童

監督 萩生田宏治
出演 成海璃子松山ケンイチ手塚理美
2006年(ビターズ・エンド)

解説
さそうあきらの同名漫画を映画化。テレビドラマを中心に活躍している若手女優の成海璃子と、「デスノート」前・後編で話題を集めた松山ケンイチが共演した青春ドラマ。

ストーリー
言葉を覚える前に楽譜が読めたうた(成海璃子)は、飛びぬけたピアノの才能を持ち神童と呼ばれて育った。しかし中学生になった今では、自分が本当にピアノが好きかどうか判らなくなっていた。一方、音楽大学を目指すワオ(松山ケンイチ)はピアノの練習に明け暮れる毎日。もし試験に落ちたら実家の青果店を継ぐことになっている。ふとしたことからワオと知り合ったうたは、青果店に通ってアドバイスをするようになった。次第に親しくなっていく二人。やがてワオは見事音大に入学し、二人はそれぞれの人生を歩んでいく。しかし、うたは原因不明のめまいと耳鳴りに悩まされるようになっていた。世界的な巨匠ピアニスト・リヒテンシュタインの代演でコンサートに出ることになったうた。そこにはワオも来ていた。周囲の不安をよそに素晴らしい演奏を繰り広げ、聴衆を圧倒するうた。しかし演奏後、激しい耳鳴りに襲われ、うたは倒れてしまった。それ以来、うたの耳から音が消えていった。ある日、幼い頃父に連れて行かれたピアノの倉庫にやって来たうた。かつて自分の屋敷にあったピアノを発見し、弾こうとするが弾けない。その時、別の指が音を鳴らした。ワオだった。「聞こえる?」と訊くワオに「聞こえたよ」と微笑むうた。やがて連弾を始めた二人を光が包んでいくのだった。




3-26. 白い馬

監督 椎名誠
出演 ガンボルディン・バーサンフーアディルビシーン・ダシビルジェナムジルパンサンギーン・サラントヤー
1995年(シネセゾン=ホネ・フィルム)

解説
一人のモンゴル人少年を通して、草原に暮らす人々の日常を綴った人間ドラマ。監督は、実際にモンゴルの遊牧民たちと生活を共にした経験を持ち、「ガクの冒険」以来、自然とドラマを融合させた作品を発表し続けている椎名誠。撮影監督は前作「あひるのうたがきこえてくるよ。」に引き続き高間賢治がつとめている。モントリオール世界映画祭'95、第1回ダブリン映画祭、ゆうばり国際冒険・フンタスティック映画祭'95正式招待作品。

ストーリー
初夏、7歳になるナランは、二人の兄と一人の姉とともに寄宿舎から草原にある我が家へと戻って来た。そこには両親と祖父母、病身の兄とやんちゃな妹、そしてナランと同じ日に生まれた白い愛馬が待っていた。彼らが家に戻ると、一家は冬の営地から夏の営地へとその居を移動する。夏の営地は川の側で緑も濃く、家畜を育てるには最適の場所だった。モンゴルでは幼い子供でも家の仕事を手伝わねばならない。ナランも家畜の面倒をみたり、妹の世話をやいたり、馬乳酒を作ったり、町へ買い出しに行ったりと、よく働いた。そんな彼の楽しみは愛馬で草原を走り回ることだった。ある日、草原で馬頭琴を抱えた老人と出会ったナランは、その老人からモンゴルに古くから伝わる「スーホの白い馬」という昔話を聞く。聞きながら、ナランはスーホを自分に重ねていった。両親が町へ馬を売りに行った日、家で留守番をしていた病身のトムルの容体が急変した。彼は戻って来た両親に連れられて町の病院へ急いだが、そのまま帰らぬ人となってしまった。ナランはトムルも好きだった白い愛馬と葬式に参列し、そこでナーダムへの出場の意志を強くする。出場について父を説得したナランは、それから毎日レースのための特訓を開始した。そして、ナーダムの日。トムルの写真を携えて、ナランの家族は会場へ向かう。少年競馬のスタートの合図に会場が沸き、ナランは愛馬に鞭を振るった。好調な出足を切ったナランは順調にライバルたちを抜いていくが、手を滑らせた拍子に鞭を落としてしまう。なんとか服の帯ヒモで対処するものの、愛馬の調子が狂ってしまい、彼の優勝は叶わなかった。初秋、ナランたちが再び寄宿舎へ出かける季節がやってきた。ナランは来年の夏にはもっと強くなってナーダムで優勝するという思いを胸に秘めつつ、兄や姉とバスに揺られるのだった。




3-27. 男はつらいよ 寅次郎真実一路

監督 山田洋次
出演 渥美清倍賞千恵子大原麗子
1984年(松竹)

解説
人妻に想いを抱く寅次郎の姿を描く「男はつらいよ」シリーズ34作目。脚本は「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」の山田洋次と同作の朝間義隆の共同執筆。監督も山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。

ストーリー
秋のある日、とらやでは一騒動が持ち上がっていた。裏のタコ社長の娘・あけみが、夕食のおかずのことで夫婦ゲンカして実家へ舞い戻ってきたのだ。そんな騒ぎの中、旅から寅次郎が戻ってき、たらまちタコ社長といつもの大ゲンカになってしまう。とらやを飛び出した寅次郎は、上野近くの焼き鳥屋へ行き、そこで知り合った富永健吉にごちそうになる。富永は証券会社に勤めるサラリーマンだった。ごちそうになりっぱなしじゃ申し訳ないと、後日、寅次郎は彼の会社を訪ねた。その晩も二人は例の焼き鳥屋で一杯飲んで、すっかり意気投合。酔った寅次郎は茨城県牛久沼の健吉の家にやっかいになる。翌日、彼が目を覚ました時は、もうすっかり日が高くなっていた。寅次郎が壁にかかった北原白秋の色紙をボンヤリ眺めていると、後ろで健吉の妻・ふじ子の声がし、その清楚な美しさに、彼は見惚れてしまった。健吉は七時半から会議だといって、朝六時に出て行ったという。数日後、寅次郎は再び牛久沼を訪ねた。が、ふじ子の様子がおかしい。健吉が先週の金曜に家を出たっきり帰ってこないと言うのだ。何かあったらすぐ連絡しろよと言い残し、寅次郎は牛久沼を後にした。とらやに戻った寅次郎は、占いで健吉が北海道にいると出たから、探しに行くためにお金を借してくれとまた騒動を起こす。ふじ子が息子の隆を連れてとらやを訪ねて来た。二人を慰めようとする寅次郎の考えだった。とらやの人々に囲まれて、久しぶりにふじ子に笑顔が戻った。ふじ子と隆を送って行く道すがら、これからも相談相手になってほしいと言われた寅次郎は、有頂天になり、頼もしげにうなずくのだった。ある日、健吉を彼の故郷・鹿児島で見た、と耳にしたふじ子は東京を発った。それを知った寅次郎も後を追う。二人は健吉の行きそうな所をあたるが、見つけることはできなかった。柴又に戻った寅次郎は、ふじ子に恋をしている自分に気づき思い悩んでいた。もし健吉が戻らなければ、ふじ子と夫婦になれるかもとまで考え、自分の醜さに耐えきれず旅に出る決心をする。そこに不精ヒゲをはやした健吉が現れた。寅次郎は彼を叱咤し、牛久沼に連れて行く。そして、いつ帰るとも知れない旅に出た。




3-28. 私は貝になりたい

監督 福澤克雄
出演 中居正広仲間由紀恵柴本幸
2008年(東宝)

解説
往年の名作テレビドラマを、中居正広主演でリメイクした感動作。自身の意思ではなかった米兵処刑の罪で逮捕、死刑を言い渡された元兵士の悲劇を重厚なタッチでつづる。

ストーリー
戦火たけなわな昭和19年。理髪師の清水豊松(中居正広)は、高知の海沿いの町で小さな店を開業していた。家族は、妻の房江(仲間由紀恵)と息子の健一。同業者の房江とは、駆け落ち同然で一緒になった仲だった。その町に二人でたどりつき、苦労を重ねて店を開いたのだ。そんな豊松にも召集令状が届いた。戦局は激しさを増して、豊松は本土防衛の中部隊に配属される。軍隊での日々の過酷さは想像を絶するものだった。矢野中将(石坂浩二)の指揮のもと、豊松や滝田(荒川良々)のような二等兵は、上官からボロ雑巾のように扱われた。ある日、撃墜されたB29の米兵がパラシュートで領地内に降下してきた。矢野中将は「処刑せよ」と命じ、その任務は豊松と滝田に回ってくる。上官からの命令は、陛下の命令に等しい。やむなく豊松は、すでに虫の息の米兵へと銃刀を向けた……。終戦を迎えて、豊松は高知へと帰った。房江や健一と再会し、ふたたび理髪師として腕を振るおうと決意する豊松。房江の胎内には新たな生命も芽生えていた。ささやかな幸福と平和を噛み締める豊松の身に青天の霹靂が起こる。戦犯容疑で占領軍から逮捕されたのだ。軍事裁判を受けた豊松は、絞首刑という重い判決が下る。わけもわからないまま、巣鴨プリズンに収容される豊松。そこで彼が出逢ったのは、いまも続く戦火のなごりの犠牲となる人々だった。同室になった大西三郎(草なぎ剛)は、翌日に処刑される。次に同室となった西沢卓次(笑福亭鶴瓶)は、減刑に向けてアメリカ大統領に嘆願書を綴っていた。高知から3日がかりで訪れた房江と健一、産まれたばかりの直子と面会した豊松は泣き崩れた。そして、房子は減刑の嘆願のため、知人の伝手を頼って雪の中を奔走する。しかし、その努力も報われることはなかった。豊松に処刑の日がやってきたのだ。最後に残した彼の遺言は、「生まれ変わったら、私は貝になりたい」だった。




3-29. 王将

監督 伊藤大輔
出演 阪東妻三郎水戸光子三條美紀
1948年(大映・京都)

解説
これは47年度新國劇が上演して好評を博した北条秀司原作の戯曲によるもの「木曽の天狗」「Zの戦慄」と同じく奥田久司の企画「素浪人罷通る」の伊藤大輔が脚本を書き監督する。カメラは石本秀雄の担当。「素浪人罷通る」「木曽の天狗」の阪東妻三郎の主演で、相手役には松竹より「駒鳥夫人」「肖像」の水戸光子が出演、多摩川より三條美紀、民藝の滝沢修、松竹の坂本武他小杉勇、斎藤達雄らが出演する。

ストーリー
時は明治も終わりごろ、大阪は天王寺付近、がけ下の長屋住まいで麻裏草履をこしらえてその日暮らしのしがない稼業、これが坂田三吉という男で、将棋が三度の飯より好き、好きこそものの上手なれで、玄人はだしの腕前、手合わせする者は素人も有段者も相手構わぬナデ切り、負けたためしがないという、勝てばそのやまいがますますこうずるのは当たり前、やれ春季大会のそれ何々主催の将棋会のとあちらこちらに手を出した挙句、家業はおろそかになる収入は減る、おまけに会費などと余計な出費で倍金はかさむ一方、家財道具は持出す、狭い長屋の一室は空っぽという有様、女房の小春は青息吐息、何度亭主に意見したか知れぬが三吉はあらためるどころの沙汰ではなく、関根七段との千日手の一局で、その執念は恐ろしいばかり、小春は娘の玉江を連れて家出した事も一度や二度ではない、その度に自分のいなくなった後、子供の様に愚かな三吉がどんなになるだろうと心配してはもどって来るこころ優しい小春であった。しかし今日も今日とて朝日新聞主催の将棋大会に、会費の二円を工面するに事欠いて、玉江の一張羅の晴衣を質に置いて出掛けた始末の三吉。小春はそれを知り今はこれまでと、娘をつれて自殺を計る可く鉄道線路の方に出ていった。勝負半ば注進に驚いた三吉が駒を放り出して飛んで帰り、長屋の皆とやっとの事、小春母子の生命をとりとめ以後はすっぽり将棋をやめると誓うが、反って小春はその必死の気組みに心変わり、いっそやるなら日本一の将棋差しになれと励ました、折も折関根八段が来阪し、三吉と平合わせた。相方ゆずらぬ熱戦の後、終盤近く三吉の打込んだ窮余の一手二五銀が命取り、関根七段は敗退する。それ以来何年、十何年、大正に入り三吉と関根は追いつ追われつ、三吉が次第に勝越す。坂田三吉の名は天下にとどろいた。当時無学非識字者の三吉も既に長年の芸の修練で人間的にも完成されつつあった。関根は八段となり三吉は七段。名人位をかけた一戦も三吉の勝とはなったが、丁度病床にふしていた小春の積年の望みも空しく名人位は関根八段に冠せられた。その祝詞をのぶべく小春に内緒で上京した三吉は、関根名人との会見の席上、自分をここまで仕立ててくれた最愛の妻小春のふ報を聞かねばならなかった−−。




3-30. NECK

監督 白川士
出演 相武紗季溝端淳平平岡祐太
2010年(アスミック・エース)

解説
映像化不可能と言われた舞城王太郎による同名小説を相武紗季主演で映画化。恐怖の妄想を具現化する巨大な箱に入れられた大学生の運命を描く、ホラー仕立てのラブ・ストーリー。

ストーリー
真山杉奈(相武紗季)は、可愛らしい外見とは裏腹の風変わりな大学院生。“怖いことを考えることによって、本当は存在しないお化けが生まれる”という独自の“ネック理論”を証明するための研究に打ち込んでいた。そんな杉奈に夢中なのが、同じ大学に通う熱血スポーツマンの首藤友和(溝端淳平)。ある日、首藤は思い切って告白するが、返事の代わりに彼女の実験に協力することに。その実験とは、ネックマシーンという名の大きな木箱に入れられ、首だけ外に出した状態でホラー映画を見続けるというもの。1人で研究室に放置されてビデオを凝視すること数時間。戻ってきた杉奈は急いで箱の中を改める。だがそこには、何もなかった。肩を落とす杉奈。ネック理論による仮説では、首藤の怖い想像によって箱の中にお化けが生まれているはずだったのだ。怖がらせ方が違うのではないかと考えた首藤は、ある“怖がらせのプロ”の協力を得ることを提案。そのプロとは、人気ホラー作家の越前魔太郎(平岡祐太)。だが実は、越前は極度の怖がり。美人編集者の赤坂英子(栗山千明)と一緒にお寺に来ていたところに、“崇史くーん!”と彼の本名を呼びながら、杉奈が現れる。実は、杉奈と越前こと古里崇史は幼なじみ。子供の頃に杉奈から聞かされた怖い話が、彼のトラウマになっていたのだ。結局、越前は杉奈のネック理論実証実験に協力することになってしまう。 後日、用意した実験場所に杉奈、首藤、赤坂を連れていく越前。そこは以前、人形に取り憑かれた人形師が、人形に襲われるという怪奇現象が起こった人形屋敷だった…。杉奈の実験は成功し、お化けは生み出されるのか?!果たして4人は、無事ここから脱出できるのか?!ドキドキの一夜が始まる!!




3-31. バーバー吉野

監督 荻上直子
出演 米田良もたいまさこ石田法嗣
2003年(ユーロスペース)

解説
04年ベルリン映画祭の児童映画部門特別作品に輝く新人、荻上直子監督によるユーモアあふれる人間ドラマ。田舎町を舞台に、都会の少年をめぐる騒動をほのぼのとつづる。

ストーリー
古くからの習わしにより、少年全員が同じ“吉野ガリ”なるマッシュルーム・カットにさせられている田舎町。その散髪を一手に引き受けているのが、町で唯一の床屋である“バーバー吉野”のおばちゃんこと吉野良子。吉野ガリの伝道師である彼女は、町の子供たちの行動にも常に目を光らせている。そんな彼女の息子で小学生の慶太のクラスに、ある日、東京からの転校生・坂上くんがやって来た。町の伝統に異議を唱え、自分のヘアスタイルを貫き通す坂上くん。彼と親しくなった慶太とその仲間であるヤジ、カワチン、グッチは、次第に彼に感化されていくのだが、それに気づいたおばちゃんによって、坂上くんも吉野ガリにされてしまう。そこで、彼らは脱・吉野ガリを宣言。祭りの日、町の人たちの前で髪型の自由を訴えると、果たして他の少年たちもそれに賛同する声をあげてくれた。しかし、慶太の胸中は複雑だった。「吉野ガリはまっぴらだけど、お母さんがみんなの敵になるのも嫌だ!」 翌日、5人の願いは通じ、吉野ガリは廃止されることとなった。そして、一度は淋しい思いをしたおばちゃんも、今は元気に町の人の髪を切り続けている。




3-32. 化身

監督 東陽一
出演 藤竜也黒木瞳梅宮辰夫
1986年(東映)

解説
若いホステスを自分好みのいい女に変身させようとする男の悲哀を描く。渡辺淳一原作の同名小説の映画化で、脚本は「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」の那須真知子、監督は「湾岸道路」の東陽一、撮影は「ひとひらの雪」の川上皓市がそれぞれ担当。主題歌は、高橋真梨子(「黄昏人」)。

ストーリー
京都から帰京した文芸評論家の秋葉大三郎は、東京駅に降りた時、「鯖の味噌煮が食べたい」と珍しいことを言っていた銀座のホステスを想いだした。里美というそのホステスのいるバー「魔呑」へ友人、能村と出かけた秋葉は彼女をデートに誘った。デートの日、泥臭さが抜けきらないが素朴なところに魅かれた秋葉は、里美を抱いた。里美は本名を八島霧子といった。霧子は不思議な魅力を持っていた。髪形やファッションを変えると見違えるように変身した。秋葉には編集者で38歳の田部史子という愛人がいたが、霧子と付合うようになってから、仲が遠のいていた。たちまち「魔呑」の売れっ子となった霧子を別荘に連れて行った秋葉は、そこで史子と出くわす。史子は秋葉の心変わりを知った。霧子は「魔呑」を辞め、秋葉は彼女のために高級マンションを与えた。彼は日毎に容姿も肉体もいい女になっていく霧子に充足感を覚えていた。霧子が代官山に洋服のリサイクルの店を出したいと言ってきた。二千万近い資金は秋葉が都合し、霧子は店の名を秋葉のアと霧子のキから「アンティック・阿木」と名付けた。新しい情報と品物の仕入れの為に霧子がニューヨークに発った。秋葉も同行するはずだったが、母の久子が脳血栓で倒れたため、仕方なくニューヨーク在住の商社員、室井達彦に霧子の世話を頼む。ある日、秋葉は「阿木」から出て来た史子と会った。彼女とは一年近くも会っていなかったが、昔のことにはふれず逆にサバサバした様子だった。霧子が帰国した。出迎えた秋葉は別人のように美しくなった霧子を見て呆然とする。霧子の身辺は急に多忙になった。マスコミの付合いなどで秋葉が介入する余地がないほどだ。霧子は自立する女に変りかけていた。ある夜、別れ話をきりだした霧子はマンションを飛びだした。追いかけた秋葉は史子の部屋に入って行く霧子を見て呆然とした。二人は半年前からの知り合いだと言う。久子の葬儀の日、霧子が焼香に現われ、秋葉に別れの理由を語る。霧子はまだ秋葉を愛していたが、史子と彼の関係を知り愛の不確さを感じたのだ。そして、男に去られる前に生甲斐を見つけて去って行くことを考えたのだった。




3-33. 銀座の恋の物語

監督 蔵原惟繕
出演 石原裕次郎ジェリー藤尾浅丘ルリ子
1962年(日活)

解説
「アラブの嵐」の山田信夫と、「男と男の生きる街」の熊井啓が共同で脚本を執筆、「メキシコ無宿」の蔵原惟繕が監督した歌謡メロドラマ。撮影もコンビの間宮義雄。

ストーリー
伴次郎はジャズ喫茶のピアノひきの宮本と一つ部屋を仕切って同居する絵かきで、「銀座屋」の針子秋山久子を愛していた。そして二人は一緒に考えた“銀座の恋の物語”を大事に胸に秘めていた。次郎と宮本は苦しい生活の中で助けあった。次郎は久子の肖像画作成に没頭した。一方宮本はバーテンたちの企みで、クラブをクビになってしまった。次郎は久子と結婚するために信州の母のところへいくことになった。田舎いきのため、次郎は今まで売ろうとしなかった久子の肖像画を春山堂に売り払った。出発の日新宿へ見送りにいった久子は、横からとびだした車にはねられてしまった。久子は事故現場から姿を消したままになっていた。次郎にはやけ酒の日が続いた。ある日宮本のピアノをひきあげにきた月賦屋を次郎と宮本は悪酔いが手伝って殴り、留置所にいれられた。次郎と宮本が釈放されて帰ってみると、二人の家は消えてなくなり、「銀座屋建築用地」の立札。宮本は憤り、次郎のとめるのもきかず、何処かへきえ去った。幾週かがすぎ次郎は久し振りで宮本にあった。宮本は豪華なアパートに住み、次郎の描いた久子の肖像画をもっていた。宮本の部屋からでた次郎はデパートに流れる久子の声を耳にした。久子は記憶喪失症になっていた。次郎は久子の記憶回復につとめ、二人の記憶がつながる肖像画を買いとりに、宮本の所へ行ったが彼は絵を手ばなさないといった。その時電話がなり、宮本は蒼然と外へとび出していった。彼は偽スコッチ製造の主犯だった。彼はひそかに久子をおとずれ、例の肖像画をおいて、そそくさとでていった。数日後、春山堂で次郎の個展がひらかれ、会場に流れる“銀座の恋の物語”のメロディに久子の記憶は回復した。




3-34. ファンシイダンス

監督 周防正行
出演 本木雅弘鈴木保奈美大沢健
1989年(大映)

解説
家業を継いで田舎のお寺の跡取り坊主になったシティボーイの姿をコメディタッチで描く。岡野玲子原作の同名漫画の映画化で、脚本・監督は「変態家族・兄貴の嫁さん」の周防正行、撮影は「二十世紀少年読本」の長田勇市がそれぞれ担当。

ストーリー
塩野陽平は、街の明るい大学4年生。ロックバンドを組み、ライブハウスでリードボーカルとして翔んでる毎日を送っていた。しかし、陽平には寺の跡取りという宿命があった。恋人の真朱を残して、ド田舎の禅寺、明軽寺に弟の郁生と共に入った陽平たちを待っていたのは、つらく厳しい修行の毎日だった。しかし、地獄の修行もしばらくすると、お寺の裏側も見えてくる。偉そうな顔した古参たちも裏に回れば何をやっているかわかったもんじゃないというのが現実だった。そんなある日、たまたま会社の研修で参禅にやってきたバンド仲間のアツシから真朱が硫一と付き合いだしたと聞かされた陽平は、不安を隠せない状態に陥るが、そこへなんと真朱が明軽寺にやってきた。久しぶりに愛を確かめ合おうと思ったものの、嫉妬深い寿流に見付かってしまい、大目玉をくらってしまう。そんなことで陽平は名物住職の南択然老師の行者となってしまった。しかし、この老師は世話のやけるボケ老人。しかし、なぜか陽平はそんな南老師のそばにいると気分が落ち着くのだった。そして一年がたった。真朱のもとに帰る日も近い!と浮かれていた陽平だったが、知らない間に山を降りる日を延期され、次の制中の首座に選ばれてしまった。落ち込む陽平だったが南老師の言葉に奮起して修行に打ち込みだし、遂に法戦式の日が来た。寿流らの妨害もあったが何とか無事に終ったのだった。




3-35. ドラえもん

監督 
出演 
年・()

解説


ストーリー





3-36. セカンドバージン

監督 黒崎博
出演 鈴木京香長谷川博己深田恭子
2011年(松竹)

解説
中年女性と年下の青年とのドロドロ不倫を赤裸々に描いて社会現象を巻き起こしたNHKドラマ「セカンドバージン」を映画化。大胆なベッドシーンで注目を集めた鈴木京香をはじめ長谷川博己、深田恭子の主要キャストが続投。舞台をシンガポールからマレーシアへと移し、ドラマでは描かれなかった衝撃の事実が明かされる。

ストーリー
出版業界で名の知れた辣腕専務・中村るい(鈴木京香)は、出張でマレーシアを訪れる。そこで、鈴木行(長谷川博己)と再会する。行はるいより17歳年下で、万理江(深田恭子)という妻がいた。しかし、るいと行は激しく愛し合った恋人同士だった。日本から遠く離れた異国の地で思いがけない再会を果たした2人だったが、行はるいの目の前で銃弾に倒れる。なぜ行はこんなことになったのか、なぜ5年前、何も言わずにるいの前から姿を消したのか……。コーランが遠くに聞こえるなか、行は生死の間をさまよっていた。るいは、そばにいる行を、切ないほど遠くに感じていた。そんな2人の前に、思いがけない人物が現れる。




3-37.

監督 片山修
出演 小栗旬長澤まさみ佐々木蔵之介
2010年(東宝)

解説
小学館漫画大賞を受賞した石塚真一の人気コミック「岳 みんなの山」を豪華キャストで実写映画化。高度なクライミング技術を持つ山岳救助ボランティア、島崎三歩に扮した小栗旬は、高所恐怖症にも関わらず、日本アルプスでの雪山ロケで迫真の登山シーンを披露する。監督は「花より男子」など人気ドラマを手がけてきた片山修。

ストーリー
雄大な北アルプス山系。そこには、誰よりも山を愛する男・島崎三歩(小栗旬)がいた。世界中の巨峰を登り歩いてきた三歩は、山岳救助ボランティアとして登山者たちの命を守っている。彼は、山のように大きな包容力を持ち、仮に要救助者が死んでしまっていても「よく、頑張った」と労わりの言葉をかける男である。そんな三歩の暮らす山に、北部警察署山岳救助隊に配属されたばかりの椎名久美(長澤まさみ)がやってくる。久美は、同じ山岳救助隊の隊長・野田正人(佐々木蔵之介)や三歩の指導の下、過酷な訓練を乗り越え新人女性隊員として確実に成長していく。だが、実際の救助では自分の未熟さや大自然の脅威により、遭難者の命を救うことが出来ない日々が続く。打ちひしがれ自信を無くす久美。そんな折、猛吹雪の雪山で多重遭難が発生。仲間と共に救助に向かった久美を待ち受けていたのは、想像を絶する雪山の脅威だった……。




3-38. ニッポン無責任野郎

監督 古澤憲吾
出演 植木等団令子ハナ肇
1962年(東宝)

解説
「六本木の夜 愛して愛して」の田波靖男と「月給泥棒」の松木ひろしが共同で脚本を執筆、「若い季節(1962)」の古沢憲吾が監督したサラリーマン喜劇。撮影はコンビの飯村正。

ストーリー
真面目な野郎は損をする、嬉しがらせて儲けて逃げるこれが無責任男源等の人生観。ひょんなことから知り合った明音楽器営業部長の長谷川から会社の派閥争いを嗅ぎつけると、絶好のチャンスとばかり入社をこころざした。次期社長の椅子を狙う王仁専務と幕田常務の間を縫って「明音楽器は貴方のもの」と、天性のハッタリとオトボケでまんまと入社に成功。丸山英子の預金を見つけた源等、通帳ほしさに一円玉を預金して一〇〇万とオオボラ吹いてすかさず結婚を申込む。金に弱いが……の常、ガッチリや英子もヒトコロリ。結婚式は千円会費で、花嫁花婿は式をそっちのけの金儲け。新婚旅行は観光団体にまぎれ込んで飲めや歌えの大騒ぎ。女とウサギは掴み方にコツがある。等は長谷川に惚れているバーのマダム、専務の恋人、はては社長のお目当て芸者初太郎のハートをガッチリ惑きつけてしまった。一金、二ワイフ、三出世、女なんかは余技の中、等の本領は金にある。会社から未収金取り立て係に廻されるや、ホイホイと取り立てた五百万円をソックリ自分名義で預金して利息でチャッカリ金儲け。一方英子も負けてはいない。食事代は割り勘、お代りは割り増し料金。等こんどは、アメリカはスミス楽器の御曹子が技術提携をしたいとのふれこみで、サックス吹きのゲーリイを引っぱりこんでの大博打。彼も等に劣らぬしたたか者、サックスも吹けばホラも吹く。二人の口車にのせられた王仁、幕田は社長への絶好の足がかりとばかり、ゲーリイ、等にリベート合戦。スイスイスイの人生街道にも山もあれば谷もある。あっさりゲーリイは化けの皮をはがされ、ついでに等の取立て貯金もバレてしまった。バレテしまえばハイソレマデヨ、等の旺盛な生活力は底知れない。




3-39. 序の舞

監督 中島貞夫
出演 岡田茉莉子名取裕子風間杜夫
1984年(東映)

解説
母との愛憎を軸に、師匠・恩師・画塾生など三人の男たちと関わりながら、日本画家として大成していく女の生きざまを描く。宮尾登美子の同名小説の映画化で、脚本は「誘拐報道」の松田寛夫、監督は「人生劇場(1983)」の中島貞夫、撮影は「白蛇抄」の森田富士郎がそれぞれ担当。

ストーリー
安政五年、洛北・大宮村の貧しい農家の娘・勢以は、京都の葉茶屋ちきりやに養女に出された。彼女が二十歳の年に、養父母・島村夫婦が相次いで世を去った。翌明治三年、勢以は婿養子をとったが、五年後には夫に先立たれ、二十六歳という女盛りで二児をかかえた後家になった。それからの勢以は、長女・志満と次女・津也を女手ひとつで育て、生計を支えるために、自ら女を捨てようとする。やがて時は流れ、絵に熱中しはじめた津也は、図画の西内先生のすすめもあって、小学校を卒業すると京でも有数の松溪画塾へ通うことになった。明治二十三年、第三回内国観業博覧会に津也が出品した「四季美人図」が一等褒状を射とめた。すでに師・松溪から「松翠」の雅号を授かっている津也は、早くも天才少女と騒がれる身となっており、勢以も津也の絵の情熱と才能を認めざるを得なくなった。その頃、西内先生がヨーロッパへ留学することになり、津也にとって大きな悲しみとなる。また、村上徳二という青年が松溪塾に入塾し、彼は津也に好意を抱くようになった。松溪の千枚描きに立会った日の夜、津也は師の誘いのままに、料亭へ出向き、抱かれる。徳二に片想いをしていた志満は、本家ちきりやのお内儀のすすめで西陣へ嫁いで行った。津也は絵に打込み、次々と賞をかち取っていったが、画塾内では松溪と津也の仲を言いたてるものもいた。月日が流れ、津也は妊娠した。それに気づいた勢以は、娘を激しく責め、相手が松溪と知り、津也に絵を禁じた。そして勢以は、津也の子を里子に出すことに決め、祇園で芸者をしていた喜代次を頼る。その喜代次の手引で、見知らぬ土地の農家で女児を出産した津也は、京には帰らず、東京にいる徳二を頼って行った。徳二との暮しの中でも、津也の中の絵への想いは捨てきれず、偶然、新聞で見かけた“西内太鳳ヨーロッパ帰朝展”の報に、津也は出かけて行く。そして、徳二に置手紙を残し、西内の滞在する長浜の昌徳寺に走った。西内は弟子にしてほしいと頼む津也のひたむきさに心動かされ、京に戻ると彼女に一軒の家を与えて絵の修業を続けさせた。明治二十九年、津也の「人生の春」が第五回日本美術院展の第一等に輝いた。光彩堂の招きでとある割烹に出向いた津也は、その席で松溪と再会する。かたくなな態度をとっていた津也も、老いた旧師が涙を流すのを見て、再び彼の腕の中に沈んで行った。津也はまた妊娠し、そのことを松溪に告げる。すると思いのほか“誰の子か”と冷たく突き放された。松溪は津也が太鳳の世話になっていることが面白くなく、ある展覧会の審査院として彼と顔を合わせた際、暴言を吐きちらした。津也と松溪の関係が続いていたことを知って激怒した太鳳は、津也に破門を言い渡す。津也は福井の高浜へ出かけ、おろし薬を飲んだ。漁師の電報で勢以は、すべてを許し、津也はちきりやで男の子を産んだが、父なし子を生んだことで世間の風当りはひどかった。三ヵ月後、津也は破門を許されて画壇に復帰した。大正七年、第一回文展の会場で、松翠の「母子」が注目を集めていた。そして、その前に立ちつくす松溪の姿があった。




3-40. ハワイの若大将

監督 福田純
出演 加山雄三星由里子田中邦衛
1963年(東宝)

解説
続社長道中記 女親分対決の巻」の笠原良三と「ニッポン無責任野郎」の田波靖男が共同で脚本を執筆、「にっぽん実話時代」の福田純が監督した若大将シリーズの第四作。撮影は「妻という名の女たち」の内海正治と「ホノルル・東京・香港」の西垣六郎。

ストーリー
京南大学ヨット部のキャプテン・若大将こと田沼雄一は練習中、中里澄子の操るモーターボートに衝突され、ヨットの修理費捻出のためダンス・パーティを計画した。券を売り歩くうち、先輩平岩と同じ化粧品会社の宣伝課に働く澄子と再会する。パーティが盛会だったのは、ヨット部入りを条件に青大将こと石山が券を買い占めてくれたからだ。学期末試験の日、雄一は青大将に答案を見せたことがバレて停学処分となり、父親から勘当された。他方、父新介の指金でハワイの古屋老人に身柄を預けられ同地の大学に入ることになった青大将は、又もやカンニングが露顕して不合格。新介の懇望もだしがたく雄一は青大将をつれ戻すためハワイに向った。だが、青大将は古屋家を飛び出したあと、パスポートと財布を紛失して途方にくれている雄一に、ジェーン上田が十ドル紙幣を恵んでくれた。化粧品の宣伝のためハワイにきていた澄子と夏子に会い、雄一は地獄の仏の思いだ。翌日から青大将探しにかかり、やっと豪華なヨットにトグロを巻いていることが判った。奇縁にもジェーンの父・上田のヨットであり、彼女は古屋老人の孫娘でもあった。日本へ帰る旅費を作るため、雄一と青大将は古屋老人の経営する食堂で働くが、青大将は、澄子が雄一に心をよせているのに気がつかず夢中になった。そんなある日、澄子は赤まむしと異名をとった赤塚とドライブに出かけた。ハイウェイを突ッ走るスポーツカーを、雄一と青大将が追った。




3-41. 大奥

監督 金子文紀
出演 二宮和也柴咲コウ堀北真希
2010年(松竹=アスミック・エース)

解説
1人の女将軍に3000人の美しき男たちが仕える大奥。男女の役割が逆転したユニークな世界を描き、人気を博した同名コミックを実写映画化。嵐の二宮和也が大奥で力をつけていく主人公を演じる。

ストーリー
江戸時代、第七代将軍徳川家継の治世。男だけを襲う謎の疫病により、男性の人口が激減した日本では、全ての要職を女性が担い、数少ない男の価値は子種を残すことのみであった。そんな男女逆転した世にあって、水野祐之進(二宮和也)はもはや芸事と化した剣術に打ち込み、武士としての道を追い求めていた。だが彼は、困窮した旗本である家を救うため、大奥にあがることを決意。それは互いに恋心を抱きながらも、身分違いの叶わぬ恋の相手である大問屋の娘、お信(堀北真希)への想いを断ち切るためでもあった。意気揚々と月代を剃り上げ、髷を結い大奥にあがった水野は、これまで見たこともない程の数多の美男が集められている大奥に驚愕する。徳川の血を絶やさぬため一人の女将軍のもと、3000人の美男が集められたといわれる女人禁制の男の園。そこでは将軍の寵愛を求めて、日夜、才色兼ね備えた男たちの熾烈な競争が繰り広げられていた。不条理な世界で、容赦なく様々な嫌がらせの洗礼を浴びせられる新入りの水野であったが、持ち前の度胸と、良き理解者である古参の先輩格、杉下(阿部サダヲ)の助言で窮地を切り抜けていく。冬。幼少で逝去した家継に代わり、紀州より第八代将軍徳川吉宗(柴咲コウ)が迎えられた。策謀の果てに将軍の座を掴んだ吉宗は、武芸を好み、一人で馬を走らせる様な男勝りな面もありながら、不況の世を憂い、質素倹約を旨に果敢に政治の、そして大奥の抜本的改革に挑む知性に富んだ女性であった。吉宗初の大奥へのお目見えとなる“総触れ”を控えたある日、水野は大奥総取締、藤波(佐々木蔵之介)から、将軍の“お手つき”として寵愛を受ける可能性のある御中臈の位への昇進を告げられる。“総触れ”の日、美男揃いの大奥の中から、更に選ばれし者たちが色とりどりの裃で着飾り、御鈴廊下を埋め尽くす中、水野もそこに加わった。そして鈴の音が鳴り、今まさに将軍吉宗が姿を現そうとしていた……。




3-42. 優駿 ORACION

監督 杉田成道
出演 斉藤由貴緒形直人吉岡秀隆
1988年(東宝)

解説
一頭のサラブレッドをめぐる牧場主や馬主、調教師、厩務員、騎手などさまざまな人人の生き様を描く。宮本輝原作の同名小説の映画化で、脚本はTV「ここの岸より」の池端俊策が執筆。監督はこれが第一作となるTV「北の国から」の杉田成道、撮影は「密約 外務省機密漏洩事件」の斎藤孝雄がそれぞれ担当。

ストーリー
北海道・静内の牧場主・渡海千造と息子・博正の夢は、名馬をつくりダービーを制覇することだった。そして伝説の名馬ゴドルフィンの血をひく仔馬オラシオンが無事産まれた。和具工業社長の平八郎は二つの悩みを抱えていた。一つは会社の危機で、もう一つは娘の久美子も知らない腹違いの弟・誠の存在だった。しかも腎不全で、父親の腎臓移植が必要なほど重病だった。和具はオラシオンを3千万円で買い、夢を託すことにした。一方、久美子はオラシオンの馬主となり、弟と知らされた誠の見舞いに通った。やがてオラシオンは博正の手を離れ、大牧場へと移された。本格的な調教を受けるためだ。一時は脚のケガで競争馬生命を危ぶまれたが、奇跡的に回復していった。和具平八郎、久美子、誠、渡海父子、それぞれの夢がオラシオンに託されていた。そしてオラシオンは見事デビュー戦で優勝。誠はこの晴れ姿を見れずに死に和具は会社を買収され、渡海も胃ガンでダービー直前に息を引きとった。ケガの後遺症が心配だったオラシオンだが、ダービーで優勝、和具は久美子、博正と共に、牧場を始めることにした。




3-43. 南極料理人

監督 沖田修一
出演 堺雅人生瀬勝久きたろう
2009年(東京テアトル)

解説
料理人として南極越冬隊に参加した西村淳の実話エッセイを、堺雅人主演で映画化したコメディ。世界一過酷な環境に置かれた男たちの悲喜こもごものドラマが繰り広げられる。

ストーリー
1997年、南極。昭和基地から1,000キロ離れた高地にある南極ドームふじ基地では、8人の隊員が一年間の共同生活を送っていた。その1人、西村(堺雅人)は隊員たちの毎日の食事を用意する調理担当。だが、食材は冷凍、乾燥、缶詰が基本。凍ったらダメになるものは用意していない。特殊な場所だけに様々な制約を受ける中で、いかに隊員たちにおいしい食事を届けるか。それが彼の仕事だった。ある日の料理は伊勢海老を使った特大エビフライ。それを見た隊員たちは唖然とする。家族を日本に残してきた西村。妻のみゆき(西田尚美)と娘の友花(小野花梨)、赤ん坊の航。家族のことを想う西村だったが、家族から届くファックスを見て落ち込む。“お父さんがいなくなってから、毎日が楽しくてしょうがありません”。雪氷学者の本さん(生瀬勝久)の誕生日には、牛肉の丸焼きがテーブルに並ぶ。歓声を挙げた隊員たちは、飲めや歌えやの大騒ぎ。そして冬至には、全員が正装してフレンチのフルコースに舌鼓。時が経ち、次第に髪はボサボサ、髭も伸び放題。保存していた食材も次第に減ってゆく。ラーメンがないと不満を漏らす気象学者のタイチョー(きたろう)。仕事をサボって遊んでいた主任(古舘寛治)は、平さん(小浜正寛)に追いかけ廻される。その騒動で揉み合う中、お守り代わりに持ち歩いていた友花の乳歯がなくなってしまう。フテ寝する西村だったが、自分で料理を作ろうと悪戦苦闘する隊員たちの姿を見て、再び厨房へ。嬉しそうに彼を迎え入れる隊員たち。ある日、意を決した西村は、ありあわせの材料で手打ちラーメンを作る。恐る恐る箸をつけたタイチョーが笑い出す。“ラーメンだ!”やがて訪れる帰国のとき。食堂をきれいに片付け、包丁をしまってキッチンを後にする。出迎えでごった返す空港。家族の姿を見つけた西村は走り出す。そして、すべてがごく普通の日常へと戻っていくのだった。




3-44. チーム・バチスタの奇跡

監督 
出演 
年・()

解説


ストーリー





3-45. アジアンタム ブルー

監督 藤田明二
出演 阿部寛松下奈緒小島聖
2006年(角川ヘラルド映画)

解説
阿部寛と映画初出演の松下奈緒が、日本とフランスを舞台にラブ・ストーリーを展開する。「ニューヨーク恋物語」などの人気テレビドラマを手がけてきた藤田明二の映画初監督作。

ストーリー
成人男性誌「月刊エレクト」の編集者・山崎隆二(阿部寛)は、カリスマSM女王・ユーカ(小島聖)の撮影旅行を企画していた。撮影地はヨーロッパ。隆二はユーカの推薦でカメラマンの続木葉子(松下奈緒)と会うが、上司の判断で彼女はカメラマンとして不採用になってしまう。葉子は水に映ったものにしか被写体の魅力を感じられずにいた。水溜りに映った隆二の姿を写真に撮る葉子。ユーカと共にヨーロッパを撮影して廻る隆二はニースを訪れる。この海を葉子に見せたかったと言うユーカ。長く続いている親友の妻との不倫生活に疲れ、今の仕事にも中途半端にしか取り組めずにいた隆二は、葉子の不思議な魅力に惹かれ始めていた。東京に帰った隆二は葉子と再会し、2人は同棲生活を始める。互いに影響し合い変わり始める2人。葉子は水に映ったもの以外にもカメラを向け始め、隆二は不倫関係を清算し、幸せな生活が続くかと思われたが、葉子は撮影中に突然倒れてしまう。末期の癌におかされ、余命1ヶ月と宣告された葉子。隆二は彼女をニースへ連れて行く。死を間近に感じつつ不安を募らせる葉子と、彼女を優しく見守る隆二は、残りわずかな時をニースの美しい景色の中、2人で穏やかに暮らそうとするのだった。




3-46. 容疑者 室井慎次

監督 君塚良一
出演 柳葉敏郎田中麗奈哀川翔
2005年(東宝)

解説
「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフ第2弾は、室井警視正が主人公のサスペンス。捜査の責任を取らされ逮捕された彼の奔走と、警察庁と警視庁との確執を描く。

ストーリー
“地下鉄不審車両暴走事件”から2ヶ月後の2005年2月、新宿で起きた殺人事件の捜査本部長を務めていた警視庁管理官・室井慎次が、“特別公務員暴行陵虐罪の共謀共同正犯”の容疑で逮捕された。被疑者として取り調べを受けていた警官・神村が逃走途中に車で撥ねられ死亡したことから、捜査の過程で過剰な暴力行為があったとして、神村の母親が刑事告訴したのだ。だがその陰には、警察の不正を暴こうと意気込むやり手の弁護士・灰島の姿があった。大学時代の恋人自殺という室井の辛い過去を抉り出し、追及の手を緩めない灰島に対し、新城の根回しで一旦は釈放された室井は、停職処分になりながらも、沖田警部捜査一課管理官が手配した若き弁護士・小原久美子や、室井の事件解決への真摯な姿勢に賛同した新宿北署の工藤を始めとした刑事たちの力を借りて、真犯人の捜査に乗り出す。だが、灰島の邪魔立てや警視庁と警察庁の権力闘争の中、捜査は思うように進まない。やがて、捜査線上にひとりの女が浮かび上がった。桜井杏子。彼女こそ、三角関係のもつれから黒木殺害を石本というチンピラに依頼した事件の真犯人で、神村は彼女を庇おうとして黙秘を続けていたことが杏子自身の供述などにより判明した。かくして、事件は解決。灰島も告訴を取り下げ、辞職を覚悟した室井にも新城の独断で広島県警への異動が命じられるのであった。




3-47. カムイ外伝

監督 崔洋一
出演 松山ケンイチ小雪伊藤英明
2009年(松竹)

解説
白土三平の同名コミックを松山ケンイチ主演で映画化したアクション・エンタテインメント。忍者の掟を破り、抜忍として組織から追われる青年カムイの孤独な戦いを描き出す。

ストーリー
江戸時代の日本。貧しい村に生まれ、忍者となった男カムイ(松山ケンイチ)。だが彼は、理不尽な殺戮、掟に縛られた世界に嫌気が差し、自由を求めて忍の世界を抜ける。同時にそれは裏切り者として追っ手と戦う運命を背負うことでもあった。彼を追うのは、かつての仲間、大頭(イーキン・チェン)やミクモ(芦名星)。その執拗な追跡を逃れ、生きるための逃亡の旅は続く。ある日、漁師の半兵衛(小林薫)を助けたことから、その家族に迎えられるカムイ。だが半兵衛の妻は、かつての仲間でカムイ同様、抜け忍となったくノ一のスガル(小雪)だった。カムイを追っ手と思い込むスガルは心を許さなかったが、反対に娘のサヤカ(大後寿々花)は密かにカムイに恋心を抱く。そんな時、半兵衛が藩主・軍兵衛(佐藤浩市)に捕らえられてしまう。カムイとスガルの協力により半兵衛は無事救出。だが、家に戻ることのできない半兵衛一家とカムイは、荒れ狂う海に船を漕ぎ出す。沖合いで人食い鮫の群れに襲われる一行。その窮地を救ったのは、屈強な鮫退治軍団“渡り衆”とそれを率いる不動(伊藤英明)だった。不動たちの千石船に迎えられたカムイたちは、無事に幸島に辿り着く。突然現れた彼らに不信感を抱いたカムイだったが、不動たちが自分と同じ抜け忍であることを知り、行動を共にするようになる。サヤカと心を通わせ、人と触れ合う温かさを知り、束の間の穏やかな日々を送るカムイ。だが、追っ手はすぐそこに迫っていた……。




3-48. サラリーマンNEO

監督 吉田照幸
出演 小池徹平生瀬勝久.田口浩正
2011年(ショウゲート)

解説
2004年からNHKで放映開始以来、異色の大人向けコントとして注目を集め、エミー賞にもノミネートされた人気番組がついに映画化。主演の小池徹平を中心に、番組開始当初からのレギュラーである生瀬勝久、沢村一樹らおなじみのメンバーと個性的なゲストの面々が爆笑サラリーマン生活を繰り広げる。

ストーリー
新城(小池徹平)は、第一志望ではない業界5位のNEOビールに入社する。かつて“冷麦”という大ヒット商品を飛ばしたが、今は阪神タイガースの応援だけに執心する課長・中西(生瀬勝久)を筆頭に、何かと不条理な目に遭う川上(沢村一樹)など、一筋縄にはいかないメンバーが揃う営業一課に配属された新城は、量販店まわりや接待など、絵に描いたようなサラリーマン生活を送り出す。しかし1カ月経っても営業契約件数0で、社内のOLたちからは総スカン、合コンでも女の子の鈍い反応に、新庄は早くも転職を考え始める。そんな折、全国酒類協会ゴルフコンペで、業界1位の大黒ビールの布袋社長(大杉漣)とラウンドをして惨敗したNEOビールの根尾社長(伊東四朗)が、大黒ビールを抜いてシェア1位を目指すと宣言、新商品のアイデアを出すよう全社員に厳命する。さっそく営業一課でも企画会議が開かれ、無重力ビールや枝豆ビールなど斬新かつ珍妙なアイデアが次々飛び出すが、中西はピンとこない。ところが新城がその場しのぎで口にしたある企画にGOサインが出てしまい、事態は思わぬ方向に転がり出す。その企画「セクシービール」実現のための社内プロジェクトが立ち上げられ、新城がプロジェクト・リーダーに任命される。苦心の末試作品が完成するが、大黒ビールに先に同じ名前の商品を発表されてしまう。実は新城が転職相手のベンチャー広告代理店のCEO皆川につい話してしまったことを、かつてNEOビールで同期だった中西に一物持つ皆川が布袋社長に伝えたためだった。実は“冷麦”の企画は皆川から中西が横取りしたものだった。プロジェクトは崩壊し新城は資料管理室送りとなる。しかしプロジェクトのメンバーは諦めず、会社には秘密裏にセクシービール開発を進めるのだった。そして完成したビールは、なんとか社長の承認を取り付け発表されることとなった。「セクシービール」の名前が使えないため「セクスィービール」と名付けられたそのビールの発表会には、フェミニスト団体が押し寄せるが川上が変身した“セクスィー部長”の活躍で大成功を収める。実はすべては宣伝のためのヤラセであった。それでも新城は充実を感じるのだった。そして「セクスィービール」の大ヒットによりNEOビールは業界1位になったのであった。