12-1. モテキ

監督 大根仁
出演 森山未來長澤まさみ麻生久美子仲里依紗真木よう子
2011年 (東宝) 118分

解説
ある日突然“モテ期”を迎えた冴えない草食系男子が、恋にエロスに翻弄されるさまを描く、森山未來主演のハイテンション・コメディ。累計160万部を突破、深夜ドラマ化もされた久保ミツロウの大人気コミックを完全オリジナルストーリーで映画化。長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子という美女4人との恋模様が展開。

ストーリー
31歳の藤本幸世(森山未來)は、金なし夢なし彼女なし。派遣会社を卒業し、ニュースサイトのライター職として新しい生活を踏み出そうとしているが、結局のところ新しい出会いもないまま。だがある日突然、“モテキ”が訪れた。キュートな雑誌編集者・みゆき(長澤まさみ)、清楚で素朴な年上OLるみ子(麻生久美子)、ガールズバーの美人店員・愛(仲里依紗)、美貌のSキャラ先輩社員・素子(真木よう子)というまったくタイプの異なる4人の美女の間で揺れ動く幸世。「こんなの初めてだ……今まで出会った女の子と全然違う。冷静になれっ、期待しちゃダメだぁ……」モテキの波を越えて、幸世は本当の恋愛にたどりつくことができるのか……。




12-2. 四十七人の刺客

監督 市川崑
出演 高倉健中井貴一宮沢りえ岩城滉一宇崎竜童
1994年 (東宝) 129分

解説
大石内蔵助と吉良・上杉側の司令塔、色部又四郎との謀略戦争を軸に、内蔵助の人間像を追いつつ新しい視点で描いた忠臣蔵映画。従来の″忠臣蔵″の物語に、現代的な情報戦争、経済戦争の視点を当て実証的に描きベストセラーとなった池宮彰一郎の小説の映画化で、監督は 「帰ってきた木枯し紋次郎」 の市川崑。脚本は池上金男(池宮彰一郎の脚本家としてのペンネーム)と市川、竹山洋の共同、撮影は五十畑幸勇が担当。

ストーリー
播州赤穂藩筆頭家老・大石内蔵助と上杉藩江戸家老・色部又四郎の戦いは、元禄14年3月14日江戸城柳の間にて赤穂城主浅野内匠頭が勅使饗応役高家・吉良上野介に対し刃傷に及んだ事件から始まった。内匠頭は即刻切腹、赤穂藩は取り潰し、吉良はお咎めなしという、当時の喧嘩両成敗を無視した一方的な裁断は、家名と権勢を守ろうとする色部と時の宰相柳沢吉保の策略だった。赤穂藩は騒然となり、篭城か開城かで揺れるが、大石は既に吉良を討ちその家を潰し、上杉、柳沢の面目を叩き潰す志を抱き、早速反撃を開始した。事件発生後直ぐに塩相場を操作し膨大な討ち入り資金を作った大石は、その資金をばらまき江戸市中に吉良賄賂説を流布させ、庶民の反吉良感情を煽り、また赤穂浪士すわ討ち入りの噂を流して吉良邸付近の諸大名を震え上がらせ、討ち入りに困難な江戸城御府内にある吉良邸を外に移転させるなどの情報戦を駆使した。思わぬ大石の攻勢にたじろいだ色部も、吉良を隠居させる一方、仕官斡旋を武器に赤穂浪人の切り崩しを図り、討ち入りに備えて迷路や落とし穴などを完備した要塞と呼ぶべき吉良屋敷を建てさせるなど、反撃を開始する。京都・鞍馬で入念な準備に忙殺される大石はその傍ら、一文字屋の娘・かるとの恋を知る。かるはいつしか大石の子を身籠もった。追い詰められた上杉家は最後の策として吉良を米沢に隠居させようとする。その惜別の会が開かれた12月14日、運命の日。雪も降り止み誰もが寝静まった子の刻、大石以下47名が集まり、要塞化した吉良邸にいよいよ突入した。迷路を越え、上杉勢百数十名との壮絶なる死闘の末、遂に大石は吉良を捕らえる。追い詰められた吉良は大石に、浅野の刃傷の本当の理由を知りたくはないか、と助命を請う。だが大石は、知りとうない、と答え、吉良を討つ。吉良の死に重なるように、かるの腹から新しい生命が生まれた。




12-3. 婚期

監督 吉村公三郎
出演 若尾文子野添ひとみ京マチ子船越英二弓恵子
1961年 (大映) 97分

解説
おとうと」 の水木洋子のオリジナル・シナリオを、 「女の坂」 の吉村公三郎が監督した喜劇。 「おとうと」 の宮川一夫が撮影した。

ストーリー
唐沢卓夫は春山荘を経営する事業家だが、家の中が面白くないので妾をかこっている。仕事には敏腕だが金にはきたないエゴイストである。妻の静は、卓夫の妹の波子に鳩子、弟の典二郎をかかえ、封建的な生活に自分一人がたえ忍んでいるような顔をしているが、実は心の奥では何を考えているのか分らないポーカーフェイス。ある日、静の許に一通の手紙が舞いこんだ。卓夫が妾をかこっており、子供もいるというのである。その後、あやしげな電話もかかってくる。実は、これは波子と鳩子のいたずらで、静に火をつけようというコンタンであった。波子はいまやオールドミス、鳩子は新劇女優で、二人は共同戦線をはって兄嫁いびりがひどい。静の世話でお見合した相手が、どうしたまちがいからか、すっぽりハゲ上った中年の歯科医師だったことから、波子の怒りが爆発、鳩子と家を出ると言いだした。婆やが孫の雛子にひきとられることになった。波子と鳩子が嫁ぐまでと思っていた静だったが、卓夫が危うくガス中毒しそうになったのを、殺人未遂だといわれて遂に家出してしまった。静は友人玉枝の家で三日三晩眠り通した。卓夫が迎えにきた。波子と鶴子がアパートへ行くから帰れという。静もどうやらその気になったようで、二人は肩を並べて散歩に出かけた。玉枝が妙な顔で見つめていた。




12-4. ガチ・ボーイ

監督 小泉徳宏
出演 佐藤隆太サエコ向井理仲里依紗宮川大輔
2008年 (東宝) 分

解説
事故による脳障害で記憶が1日しか持たなくなった主人公が、学生プロレスと出会うことによって生の実感を取り戻す姿を追った青春ドラマ。劇団モダンスイマーズの舞台 「五十嵐伝 〜五十嵐ハ燃エテイルカ〜」の映画化。「タイヨウのうた」 の小泉徳宏がメガホンをとる。出演は 「LIMIT OF LOVE 海猿」 の佐藤隆太、 「クローズド・ノート」 のサエコなど。

ストーリー
北海道大学のプロレス研究会に、入部希望の学生が現れた。彼の名は五十嵐良一(佐藤隆太)、在学中に司法試験も合格できると太鼓判を押された成績優秀な学生だった。すでに3年生であることにキャプテンの奥寺(向井理)は困惑するが、折り目正しい態度がマネージャーの麻子(サエコ)らに認められて入部が決まった。良一は、ことあるごとにメモを取って、ポラロイドカメラで頻繁に写真を撮影する。そんな奇矯な行動を見ながらも、練習には熱心な良一に部員たちも感心して早くもデビュー戦が決まった。OBの君島(宮川大輔)から「マリリン仮面」のリングネームとマスクを貰って、良一は感激する。小さな商店街でのアトラクションが、マリリン仮面のデビュー戦だった。しかし、リングの上の良一は、昨日までに決めた段取りを無視して暴走、試合はガチンコ勝負となる。そのあげく、マリリン仮面は失神してしまった。運び込まれた楽屋に駆けつけたのは、良一の妹の茜(仲里依紗)だった。そこで、麻子たちは衝撃的な事実を知る。自転車で転倒して頭部を強打した良一は、高次脳機能障害を負っていた。事故以降の記憶は睡眠によって失われ、そのために膨大なメモと写真とで、前日までの記憶の復習を行っているというのだ。一方、そのガチンコ勝負でマリリン仮面は人気者となり、学園祭に登場することが決まる。興奮で眠れずに前夜を明かした良一は、記憶が残っていることに喜んで会場を目指す。しかし、バスの中で居眠りして記憶をなくした良一は、メモした手帳もバスに忘れて途方に暮れる。が、茜から助けられて、遅刻しながらも会場までたどり着くことができた。これが最後となる試合を、全身で楽しもうとする良一。そのファイトに、客席からは惜しみない声援が送られる。プロレスだけが、生きていることの実感だった良一は、リングの上で最高の感動を味わうのだった。




12-5. キャバレー

監督 角川春樹
出演 野村宏伸鹿賀丈史三原じゅん子原田知世真田広之
1986年 (東宝) 104分

解説
学生ジャズに訣別し、港町のキャバレー・バンドに身をおく青年が、本物のジャズを求めながら成長していく姿を描く。栗本薫原作の同名小説の映画化で、脚本は 「雪の断章 情熱」 の田中陽造、監督は 「愛情物語」 の角川春樹、撮影は 「早春物語」 の仙元誠三がそれぞれ担当。主題歌は、マリーン( 「Left Alone」 )。

ストーリー
矢代俊一は、本物のジャズを求めるために大学生活と訣別し、港町の場末のキャバレー、スターダストでサックスを吹いていた。彼は時々、コンボを組んでいる三流プロの中村(ドラムス)、金(ピアノ)、浅井(ベース)がついて来れないほど燃焼した。上流家庭に育った俊一の自分だけの音を求める姿は、キャバレーのステージにそぐわず、それだけにどこか輝いていた。片隅の指定席で、俊一にいつも「レフト・アローン」をリクエストする男がいた。菊川組の代貸、滝川である。深夜の棧橋で、俊一は滝川を消そうとしている二人組の話を盗み聞いた。この土地にも関東連合の北憂会が進出してきて、菊川組のシマを荒しはじめていたのだ。俊一は滝川に危険を告げた。翌朝、二人組の死体があがった。滝川は小坂井という刑事に、10年前からマークされていた。彼は南部恵という女を呼びだして拳銃を預ける。恵は俊一が尊敬するアルトサックスの天才、南部明の妹で、三年前に別れた滝川のもと恋人だった。俊一はホステスの英子と肌を合せた。英子にとって情夫の刑務所帰りを目前にした必死の恋だった。英子の情夫、安原は、二人の仲を知り、俊一に襲いかかるが、通りかかった滝川の舎弟、章次に殺された。章次は前から英子が好きだったと俊一の前で抱く。俊一はやりきれない気持で朝を迎えた。訪ねて来た浅井は、俊一ごとドルフィンという店にひきぬかれているという。俊一はどうでもいいとOKした。ドルフィンは北憂会の店であったため、滝川は浅井の指をつめさせる。俊一は恵の店、ケイズバーで、小坂井から滝川が10年前、シャブに手をだした舎弟を射った時、ジュークボックスから流れてたのが「レフト・アローン」だということ、その時の滝川のアリバイを恵が主張したことを聞いた。小坂井が帰った後、恵と俊一は寝た。二人が階下へ降りると滝川がいた。彼は近々、北憂会と白江組組長、白江の縁組が行なわれると言い残し、出て行く。滝川が命を捨てるつもりだと察した恵は、警察に10年前の殺しは滝川が殺ったと知らせた。縁組の日、機動隊が見守る中、機動隊の恰好をした滝川が、総長と白江を撃ち殺し、自分も倒れた。




12-6. 武士道シックスティーン

監督 古厩智之
出演 成海璃子北乃きい石黒英雄荒井萌山下リオ
2010年 (ゴー・シネマ) 109分

解説
成海璃子&北乃きいという若手実力派の2人が剣道に打ち込む女子高生に扮したスポーツ青春ドラマ。まったく違うアプローチで剣道と対峙する2人の少女の心の葛藤が描かれる。

ストーリー
磯山香織(成海璃子)は、3歳から練習を積んできた剣道のエリート少女。だが、彼女はある大会で無名選手に不覚を取り、敗れてしまう。そのときの悔しさが忘れられず、その選手を追って剣道の強豪高校に入学。しかし、そこで再会した因縁の相手、西荻早苗(北乃きい)は、ほぼ実績ゼロ、剣道は楽しむもの、というお気楽少女だった。拍子抜けしながらも、自分の敗因を突き止めたい一心で、早苗の力を引き出そうとする香織。早苗の方は当初、香織の気迫に押されてタジタジだったものの、次第に真剣勝負の面白さに目覚めていく。なぜ人は戦うのか?真の強さとは何か?勝つことの意味とは?因縁の戦いの果てに、2人は答えを見つけることができるのか?




12-7. 7月24日通りのクリスマス

監督 村上正典
出演 大沢たかお中谷美紀佐藤隆太上野樹里阿部力
2006年 (東宝) 108分

解説
電車男」 でヒロインのエルメスを演じた中谷美紀が一変、彼氏いない歴29年の“オタク女子”に扮する。街並みが似ている長崎と妄想の街リスボンを舞台に展開するラブ・コメディ。

ストーリー
長崎で在住のサユリ(中谷美紀)は地味で平凡、彼氏なし。妄想の中でリスボンに暮らし、「現実の恋なんか興味ない」と退屈な日常をやり過ごしている。ある日、大学の先輩・亜希子(川原亜矢子)と職場の上司・譲(沢村一樹)夫妻の自宅に招かれたサユリは、憧れの先輩・聡史(大沢たかお)が、近々開かれるOB会に出席することを知る。聡史は亜希子の元カレで、東京で成功を収めているデザイナー。OB会当日、サユリと聡史は一瞬、いい雰囲気になったもののドレスアップして現れた亜希子と見つめあう聡史の姿を見て、サユリは落ち込む。そんな折、幼なじみの漫画オタク・森山(佐藤隆太)が働く書店で聡史のサイン会が開かれ、そこでサユリはなんと聡史にデートに誘われて完全に浮かれモード。雑誌やメイク道具を買い込み、モテ女を目指してひとり熱心に研究を始める。そんな中、昔からサユリに好意を寄せていた森山はサユリに突然、愛を告白。戸惑いながらも、聡史とのデートに出かけるサユリ。が、遅れてきた聡史が亜希子と会っていたことに気付く。聡史と森山。妄想のリスボンと現実の長崎のはざまで揺れ動く、サユリのクリスマスの行方は……。




12-8. 酒井家のしあわせ

監督 呉美保
出演 森田直幸友近鍋本凪々美濱田マリ栗原卓也
2006年 (ビターズ・エンド) 102分

解説
三重県を舞台に、複雑な一家の悲喜こもごもを軽妙なタッチで紡ぐドラマ。人気お笑い芸人の友近が映画初出演し、ユースケ・サンタマリアとおかしな夫婦役を妙演する。

ストーリー
一見ごく普通の家族・酒井家。中学2年生の次雄(森田直幸)と妹・光(鍋本凪々美)。母・照美(友近)、父・正和(ユースケ・サンタマリア)の四人家族は関西のとある小さな町に住む。しかし実は照美は再婚で、次雄は事故死した前夫との間の子。光は父親違いの妹という少し複雑な家庭で、次雄はそういう家族関係を近頃疎んじ始めていた。そんなある日、正和が突然家を出て行くという。その理由は、正真正銘男性である同僚の浅田君を好きになったからと言う。照美はあきれ、光は事態をうまく飲み込めない。何も手がつかなくなった次雄は、親友のナリ(栗原卓也)と喧嘩してしまう。心の拠り所を探し、実父の実家を訪ねた次雄は、実父と母の話を聞く。二人は毎日喧嘩しては離婚すると言い、父が亡くなった日は、皆で出かける予定だったが朝に喧嘩し、父が兄だけを連れて出てそれっきりになってしまった。その後、母は何度も川に身を投げようとしていた。実父と照美の意外な関係を聞き、次雄は家族の“脆さ”と“尊さ”を感じ始める。家に帰ると、大阪へ引っ越そうと照美が告げる。天神祭の日、次雄は偶然、家を出た父・正和を見かける。浅田が正和に、病院に見つかる前に帰ろうと声をかけた。次雄が浅田を問い質すと、病院に案内された。実は、一連の騒動は末期がんに侵された正和が、照美に二度も亭主を失くす不幸を味合わせたくないばかりに仕組んだ苦しい嘘だった。次雄は怒りながらも、父親の優しさを感じる。照美に正和のことを泣きじゃくりながら打ち明ける次雄。照美は、正和の病気を調べ上げており、大阪に引っ越すのも正和を看病する環境を作るためだった。家族は正和の死を前にまた一つになっていく。




12-9. サラリーマン専科

監督 朝原雄三
出演 三宅裕司加勢大周西村晃田中好子裕木奈江
1995年 (松竹) 93分

解説
平凡なサラリーマンの男が、同居する自由人の弟のために波乱に富んだ体験をさせられる様を描いたコメディ。監督は 「時の輝き」 の朝原雄三。原作は 「週刊現代」に連載中の東海林さだおの同名漫画で、これを山田洋次、朝原雄三、梶浦政男が共同脚色している。主演は「哭きの竜」 の三宅裕司。

ストーリー
石橋万作は、日向化学工業総務部庶務課長をつとめる平凡なサラリーマン。念願の一戸建てを購入した彼は、妻のふみ子と二人の子供、そしてフリーのチェロ奏者をしている弟の淳司を養っている。ある日、淳司の可愛がっていた犬・タロウが事故で死んでしまう。異常なくらい犬好きな淳司はひどく落ち込むばかりか、坊主を呼んでお経をあげてもらう始末。両親が亡くなって以来、淳司の面倒をみつづけてきた万作は、いい年をして子供じみたことをする弟の姿に嘆き、彼に厳しく接することを決意する。そんな矢先、淳司が一匹の迷い犬を連れて帰って来た。もう犬は飼わないと怒鳴る万作に、淳司は翌日飼い主に返す約束をするが、なんとその飼い主は万作の会社の社長・日向興三郎だった。そんなことに気づかない淳司は、犬の躾の仕方も知らない日向とその夫人に飼い方をレクチャーし、昼飯も御馳走になって帰って来るのであった。それを聞いた万作は、日向の名刺を貰っておきながら、それが自分の兄が勤める会社の社長だと気づかない淳司を、せっかく社長とお近づきなれるチャンスだったのにと責める。サラリーマンでない淳司には、それがどれほど大切なことだったのか理解出来なかった。それから数週間後、万作は突然社長から呼び出しを受ける。淳司の実直さを気に入った社長が、時々犬のバロンの面倒を淳司にみてもらいたいと言ってきたのだ。この申し出に感激した万作は、淳司に対する態度がすっかり変わってしまう。さらに軽井沢の別荘の空気の入れ換えをして欲しいと頼まれた万作は、ふみ子と淳司を連れ立ってそこへ赴くことになった。だが、豪勢な気分に浸ろうとした彼らに、これから立ち寄るという社長からの電話が入る。しかも、社長は姪で世界的プロゴルファーのひとみと友人夫妻を伴って来た。万作たちは、あっという間に別荘の管理人扱いされ、せっかくの休日も散々な思いをさせられてしまうのだった。ところが数日後、万作は社長からひとみと淳司の縁談についての相談を受けた。淳司がひとみと結婚すれば自分も日向一族の仲間入りをできると、万作はすっかり有頂天になるが、淳司は万作の気持ちなどお構いなしにきっぱりと話を断ってしまう。ショックに卒倒しそうになる万作だったが、淳司には既に意中の人がいたのだった。それは、近所の魚屋の娘・良子。万作と喧嘩した淳司は家を飛び出し、その足で良子にプロポーズした。そして、淳司と良子の結婚式。主賓の社長のスピーチに、万作は胸に熱いものを感じるのだった。




12-10. 劇場版 ATARU

監督 木村ひさし
出演 中居正広北村一輝栗山千明玉森裕太嶋田久作
2013年 (東宝) 120分

解説
サヴァン症候群に起因する特殊な能力を持った主人公が難事件を解決していく姿を描き、高視聴率を記録した中居正広主演の人気ドラマの初の劇場版。堀北真希が、中居演じるアタルと同じ能力を持った殺人犯に扮し、ミステリアスな物語が繰り広げられる。北村一輝や栗山千明といったテレビ版のキャストが引き続き登場する。

ストーリー
人並み外れた推理能力を持ち警視庁捜査一課の沢(北村一輝)や蛯名(栗山千明)の抱える難事件を解決へ導くサヴァン症候群の青年・チョコザイ(中居正広)。コミュニケーションが苦手なチョコザイと交流するうちに、沢や蛯名らは彼がFBI内で進められているサヴァン症候群を捜査に利用するプロジェクト下で教育を受けていた猪口在という人物であることを知る。ある事件を契機に、かつて在とともに同プロジェクトに参加していた在の友人アレッサンドロ・カロリナ・マドカ(堀北真希)が事件を裏で操作していた疑惑が向けられる。マドカが在に向けて発したメッセージの本意とは……。




12-11. ツレがうつになりまして。

監督 佐々部清
出演 宮崎あおい堺雅人吹越満津田寛治犬塚弘
2011年 (東映) 121分

解説
うつ病を患った夫との生活を淡々と描き、30万部を超えるベストセラーとなった細川貂々の同名エッセー漫画を映画化。宮崎あおい、堺雅人がNHK大河ドラマ「篤姫」以来2度目の夫婦役に。「日輪の遺産」の佐々部清監督が、原作のほんわかとした雰囲気を損なうことなく、病を通して成長していく夫婦の姿を感動的に描き出す。

ストーリー
高崎晴子(宮崎あおい)の家族は、夫・幹男(堺雅人)、そしてイグアナのイグ。幹男は仕事をバリバリこなし、毎朝お弁当まで作るスーパーサラリーマンであった。そんな幹男がある朝、真顔で「死にたい」と呟く。病院での診断結果は、うつ病(心因性うつ病)。仕事の激務とストレスが原因らしい。結婚5年目。幹男の変化に気付かなかった晴子は、幹男に謝りながら、「会社を辞めないなら離婚する」と告げる。そして会社を辞めた幹男が主夫になり、家事嫌いの晴子は内心嬉しく思っていた。だが、幹男のバカ真面目で完璧主義な一面もクローズアップ、時々イラッとすることもあるが、晴子は以前より明るい性格になり、グチグチ文句を言わなくなった。ところが収入源がなくなり、高崎家は貧困街道まっしぐら。そこで晴子は編集部へ行き、「ツレがうつになりまして、仕事をください」と大胆発言。晴子は新しい仕事をもらい、幹男の体調も徐々に回復していく。もう二度とあの元気な幹男に会えないのか、と不安になったこともあるが、考え方次第で人生はハッピーになると知った晴子。そして、小さなつまづきのその先には、ある奇跡のような出来事が待っていた……。




12-12. 風林火山

監督 稲垣浩
出演 三船敏郎佐久間良子大空真弓萬屋錦之介中村勘三郎(十八代目)
1969年 (東宝) 165分

解説
生誕100周年を記念し、名匠・稲垣浩監督の名作の数々をニュープリント版で再上映する。 「風林火山」 は、戦国時代に活躍した武田軍の名参謀・山本勘助の波乱の半生を描く。

ストーリー
群雄割拠の戦国時代。一介の軍師に過ぎない山本勘助にはしかし、壮大な野望があった。名君武田晴信に仕官して、天下を平定しようというものだった。勘助は暗殺劇を仕組んで武田の家老板垣に恩を売り、計略通り晴信の家臣になったのだった。天文十三年三月、晴信は勘助の進言で信濃の諏訪頼茂を攻めた。やがて機を見た勘助は和議を唱えた。諏訪方が従属を誓うなら戦わない方が得だからだ。新参者勘助の進言に諸侯は激昂したが、晴信は勘助の言を入れ、和議の役目を勘助に任したのだった。無事に和議を整えた勘助は、三度目に頼茂が来城したさい部下に命じて頼茂を斬った。目的のためには冷酷非情な手段をいとわぬ勘助を、晴信は頼もしく思うと同時に、底知れぬ恐しさを感ずるのだった。主を失った諏訪高島城は難なく武田の手におちた。勘助は全滅の城内で自害を図る由布姫を救った。父を欺し討ちにした人でなしと罵られながらも、勘助は類いまれな美貌の由布姫を、秘かに愛し始めていたのだ。だが、由布姫は晴信の側室に迎えられたのだった。武田勢は破竹の勢いで周辺を勢力下において行った。残る当面の敵は更級郡を支配する村上義清のみとなった。天文十五年武田勢は勘助の奇略で、戦わずして義清の属城信州戸石城を手中に収めた。その年、由布姫は父の仇晴信の子を生んだ。天文二十年二月、晴信は出家し、名を信玄と改めた。その頃、同じく天下平定の野望を持つ越後の上杉憲政も名を謙信と改め、入道になった。天下を目指す二人は、相戦う宿命を自覚しながら、その機をうかがっていた。四年後、由布姫は二十七歳で世を去った。慟哭する勘助の生甲斐は、母布姫の子勝頼の成人を見ることだった。永禄四年八月十五日、上杉謙信は一万三千の大軍を率いて川中島に戦陣を布いた。一方の武田信玄は一万八千の軍勢を指揮して川中島の海津城に進出した。やがて戦いの火蓋が切って落とされた。勘助は謙信の背後の妻女山から攻撃し、敵を追い落とすという作戦をとったが、謙信はこの作戦を事前に察知し、前夜のうちに軍勢を移動し、一気に武田の本営に攻め込んできた。このため武田勢は防戦一方に追い込まれた。勘助はこの危機に、自ら決死隊を率いて、敵の本営を目がけて突撃した。決死の奮戦で敵の一陣を突破した時、雑兵の槍が勘助の脇腹に突きささった。アブミを踏張って立ち上る勘肋の目に、妻女山の背後に回っていた坂垣信里の軍勢がようやく到着、その一大集団がうつった。安心した勘助だったが、右から左から無数の刃が勘勘を襲いつづけていた……。




12-13. アントキノイノチ

監督 瀬々敬久
出演 岡田将生榮倉奈々松坂桃李鶴見辰吾檀れい
2011年 (松竹) 131分

解説
「ヘヴンズ ストーリー」 でベルリン国際映画祭2冠を獲得した瀬々敬久監督が、さだまさし原作の同名小説を映画化。遺品整理の仕事を通して自らの過去と向き合う青年・杏平を 「悪人」 の岡田将生が、悲しい過去を持つ杏平の恋人・ゆきを 「余命1ケ月の花嫁」 の榮倉奈々がみずみずしく演じている。

ストーリー
高校時代に親友を“殺した”ことがきっかけで、心を閉ざしてしまった永島杏平(岡田将生)は、父・信介(吹越満)の紹介で遺品整理業“クーパーズ”で働くことになる。社長の古田(鶴見辰吾)は「荷物を片付けるだけではなく、遺族が心に区切りをつけるのを手伝う仕事だ」と杏平を迎える。先輩社員・佐相(原田泰造)、久保田ゆき(榮倉奈々)とともに現場に向かった杏平。死後1ヶ月経って遺体が発見されたその部屋では、ベッドは体液で汚れ、虫がチリのように部屋中に散乱していた。最初は誰もが怖気づくという現場に杏平は黙って向き合うが、ゆきに遺品整理のやり方を教わっている最中、彼女の手首にリストカットの跡を見つける……。3年前。生まれつき軽い吃音のある杏平は、高校時代、同じ山岳部の松井(松坂桃李)たちに陰でからかわれていた。そんな中、松井による陰湿ないじめと周囲の無関心に耐えられなくなった山木(染谷将太)が飛び降り自殺をする。その後、松井の悪意は表立って杏平へと向かい、何も抵抗できない杏平だったが、登山合宿で松井と二人きりになった時にふと殺意が生まれる。崖から足を踏み外した松井を突き落とそうとする杏平。結局、杏平は松井を助けるが、松井は「滑落した杏平を助けたのは自分だ」と周囲にうそぶく。だが文化祭当日、山岳部の展示室には松井を助ける杏平の写真が大きく飾られていた。顧問の教師が撮影していたのだ。それは、教師や同級生たちが松井の悪意や嘘を知っていながら、それを見過ごしていたという証拠だった。杏平は再び松井に殺意を抱き「なんで黙ってるんだよ」と叫びながら松井に刃を向けた……。ある日、ゆきは仕事中に依頼主の男性に手を触られ、悲鳴をあげ激しく震えた。心配した杏平は、仕事帰りにゆきを追いかけ、彼女はためらいながらも少しずつ自分の過去に起きた出来事を杏平に告げる。そのことでゆきは自分を責め続けていた。なぜ自分は生きているのか。自分の命は何なのか。何かを伝えようとするが言葉が見つからない杏平。そして、ゆきは杏平の前から姿を消した……。




12-14. 華の乱

監督 深作欣二
出演 吉永小百合松田優作池上季実子石田えり中田喜子
1988年 (東映) 139分

解説
大正時代、愛に芸術に社会運動に情熱を燃やした人々の姿を描く。永畑道子原作の小説 「華の乱」「夢のかけ橋」の映画化で、脚本は「必殺4 恨みはらします」 の深作欣二、 「紫式部 源氏物語」 の筒井ともみ、 「ウェルター」 の神波史男が共同で執筆。監督は深作、撮影は 「花園の迷宮」 の木村大作がそれぞれ担当。

ストーリー
晶子は若き日に親兄弟を捨てて歌の師である与謝野寛と結ばれた。大正12年、晶子も39歳になり、11人の子持ち。夫はウツ病がひどかった。晶子は「明星」に発表した詩が称賛とともに非難を浴び、世間に知られるところとなった。そんな時作家の有島武郎と知り合い、ときめきを覚えた晶子は家族ぐるみのつき合いをするようになった。有島にはいつも美人の雑誌記者・波多野氏がついていた。ある日夫が郷里で選挙に立候補して落選、そのままかつての恋人・登美子と暮らすようになった。晶子は子供達を気にかけながらも有島の北海道行きに同行。晶子は有島に愛を告げたが、帰宅すると病気のまま放ったらかしにされた子供たちから非難された。それから数日後、有島は秋子と心中した。秋子から晶子への遺書にはふたりの心情が記されていた。有島は秋子を愛し互いに死を約束していたが、晶子と会ったことで生と死の間をさ迷っていたのだった。




12-15. 股旅 三人やくざ

監督 沢島正継
出演 仲代達矢桜町弘子内田朝雄尾形伸之介田中邦衛
1965年 (東映) 120分

解説
「日本侠客伝 浪花篇」 の笠原和夫が第一話を、 「御存じ いれずみ判官」 の中島貞夫が第二話を、 「赤い手裏剣」 の野上龍雄が第一話を、それぞれ執筆、 「御存じ いれずみ判官」 の沢島忠が監督したオムニバス時代劇。撮影もコンビの古谷伸。

ストーリー
〔第一話秋の章〕片目のやくざを叩き斬って貸元金兵衛親分の敷居を股いだ千太郎は、八州役人を斬って追われる兇状持ちであった。翌日から千太郎は、金兵衛の旅籠で遊女おいねの張り番を始めた。金兵衛は遊女おいねをさらおうとする猪之助、卯吉の兄弟を恐れ、千太郎の仁義を受けたのだ。おいねは、はかない遊女の生活から、女房として身請けしてくれるという猪之助を待っていた。千太郎は、ふとしたことから、その猪之助が片目だと知って愕然とした。自分が斬った男が猪之助だと知った千太郎は、おいねに自分を斬るよう長脇差を持たせた。ちょうどその時卯吉がとびこんで千太郎に斬りつけた。千太郎は古手拭いに血判を押すと、八州役人の番所へ届けるように言い、自分の首にかかった二十両で、おいねを請け出せと卯吉をうながした。そして金兵衛をおびき出した千太郎は金兵衛を斬って、御用提灯の中へとびこんだ。何も知らぬおいねは、卵吉の漕ぐ船で利根川を下っていった。 〔第二話冬の章〕老やくざ掛川の文造と、若いやくざ源太は峠の茶屋で酒を飲みながら身の上話を始めた。源太は父親が博奕に手を出して、首を吊ったことから田畑を失い村を追われてやくざになったという。文造はそんな源太に足を洗うよううながした。そこへ茶屋の娘みよが帰って来た。文造は自分はみよの父の親友だと名のったみよは、母の葬式を済ませたばかりだと語った。一瞬青ざめた文造は、いかさま博打で儲けた金を、みよに渡した。ふとしたはずみに腕の刺青を見たみよは、文造が父であることを知るが、みよは文造を許そうとせず文造は家を出た。この時迫っ手がやって来た。源太は文造を店の内へつきとばすと、長脇差を抜いて走った。跡を追う文造にみよが必死に抱きついた。 〔第三話春の章〕旅鴉久太郎は、ふと知り合った少年勘助の緑で、村長三右衛門に歓待され草鞋をぬいだ。その代償として悪代官所役人半兵衛を斬るよう頼まれた。久太郎は一宿一飯の義理を感じて渋々半兵衛と対決した。だが半兵衛の刀さばきは、久太郎のおよぶところではなかった。百姓は久太郎を罵倒した。そのころ美男やくざ仙三が村へやって来た。百姓から金をもらった仙三は半兵衛を追い、久太郎も助っ人を買って出たが、仙三は半兵衛から金をもらうとずらかってしまった。村は大騒ぎ、半兵衛は強気になるばかりであった。義理を感じた久太郎は、一念発気半兵衛に斬りかかった。この気迫におされて、悲鳴をあげて倒れた半兵衛は、勘助の仕かけた狸の罠に落ちたのだった。これで、村に漸く平和が訪れた。




12-16. グスコーブドリの伝記

監督 杉井ギサブロー
出演 小栗旬忽那汐里草刈民代柄本明佐々木蔵之介
2012年 (ワーナー・ブラザース映画) 108分

解説
宮沢賢治の童話を、彼の代表作「銀河鉄道の夜」をアニメ化した杉井ギサブロー監督ら同じスタッフによって映像化した感動アニメ。イーハトーヴの森で暮らす主人公が家族を奪った冷害に再び襲われ、苦悩する姿が描かれる。主人公ブドリの声を小栗旬が担当するほか、忽那汐里、佐々木蔵之介らが声優に挑戦している。

ストーリー
イーハトーヴの森の木樵の息子として両親と妹と穏やかに暮らしていたブドリは、森を襲った冷害のため家族を失くし、ひとりぼっちになってしまった。それでもブドリは、生きるために一生懸命働き、やがて成長し火山局に勤めるようになる。そこに再び大きな冷害が襲ったが、悲劇を繰り返さないため、ブドリは決心する。




12-17. バッテリー

監督 滝田洋二郎
出演 林遣都山田健太鎗田晟裕蓮佛美沙子萩原聖人
2006年 (東宝) 119分

解説
世代を超えた読者に愛され、文庫5巻が累計380万部を突破した、あさのあつこの人気小説を映画化。中学野球部の投手が、不器用ながらも友情や家族愛をはぐくむ感動ドラマだ。

ストーリー
長男の巧(林遺都)が中学へ入学するタイミングで岡山県に引っ越してきた原田一家を迎えたのは、祖父の洋三(菅原文太)だった。甲子園出場校の監督と知られた洋三の血を受け継ぐ巧は少年野球大会でも活躍する剛腕のピッチャーだが、弟の青波(鎗田晟裕)は持病を抱えている。そんな巧の投球に惚れ込んだのは、医者の息子の永倉豪(山田健太)だった。野球は小学校の卒業で辞めるという親との約束も反故にして、豪は巧とバッテリーを組むことを決意する。母の真紀子(天海祐希)から野球を止められている青波も、兄に女房役ができたことが嬉しくて堪らない。中学校の野球部には、鬼監督の戸村(萩原聖人)がいた。それでも巧は、マイペースの姿勢を崩そうとしなかった。その態度が反発を買い、他の野球部員からリンチを受ける巧。事態は明るみに出て、校長は野球部の活動停止を言い渡した。巧の同級生である矢島繭(蓮佛美沙子)には、ライバル校の野球部の従兄弟がいた。その縁から非公式な試合が行われる。しかし、その試合中、巧と豪の力量の違いが明らかになった。二人の信頼関係は崩れ、バッテリーも崩壊してしまう。仲違いした巧と豪の間を取り持ったのは、青波だった。三角ベースで、ひさびさに野球のプレイを楽しむ巧と豪。だが、その疲労から青波は急性肺炎を起してしまう。小児ICU観察室に収容される青波。巧を叱責する真紀子だが、夫の広(岸谷五朗)から諌められる。そして、巧と豪のように、青波と巧や豪の間にもバッテリーが存在することを思い知らされた。 「勝ってな、お兄ちゃん」の声に励まされ、巧は再試合の球場へと向かった。ピッチャーマウンドに立った巧は、キャッチャーの豪に向かって剛球を投げ続ける。二人の黄金のバッテリーが復活した。




12-18. 吉原炎上

監督 五社英雄
出演 名取裕子二宮さよ子藤真利子西川峰子かたせ梨乃
1987年 (東映)

解説
斉藤真一の「吉原炎上」「明治吉原細見記」を原作に、吉原遊廓の花魁の生き様を描く。脚本は「瀬降り物語」の中島卓夫、監督は「極道の妻たち」の五社英雄、撮影も同作の森田富士郎が担当。また脚色構成として笠原和夫が参加し、「今は幻、吉原のものがたり」の作家近藤富枝が監修。

ストーリー
その昔、東京浅草の一隅に、吉原遊廓と呼ばれる歓楽の別天地があった。そこでは借金に縛られた娘たちが六年の年季が明けるまで、春を売っていた−−。久乃がここ吉原の“中梅楼”に遊女として売られてきたのは十八歳の春。明治の末のことである。〈春の章〉中梅楼には花魁の筆頭とも言うべき、お職の九重をはじめ、二番太天の吉里、三番太天の小花に次いで、菊川などさまざまな遊女がそれぞれ艶を競っていた。お職の身にありながら、宮田という学生と抜きさしならない仲になっていた九重は久乃に不思議な魅力を感じていた。九重の下につき見習いをはじめた久乃にやがて、娼妓営業の鑑札が下り、若汐という源氏名を貰った。ところが初見世の時、若汐は突然客のもとを飛び出し、裸足で逃げだしてしまった。そして、店のものに追われる途中、救世軍で娼妓の自由廃業運動を展開中の古島信輔と出会う。若汐は結局、店のものにとり押えられ、連れ戻されるが、このことに激怒した九重は、自らの身体で若汐に廓の女の作法を教えるのだった。彼女に不思議な魅力を感じていた九重は、この時自分が廓の女であることを忘れ身悶えてしまった。そして、数日後、店への借金を成算するとどこへともなく吉原を去っていった。〈夏の章〉一年後−−。中梅楼のお職の座には吉里がついていた。ある日、娼妓の菊川が品川に住み替えとなった。菊川は気のいい女で若汐とも仲がよかっただけに、彼女は一抹のさびしさを感じていた。そんなある夜、若汐の前に信輔があらわれた。信輔は今や先代の急死で古島財閥の若き当主となっていた。そしてこの日を境に信輔は若汐のもとに通いつめた。がしかし、一度も彼女を抱こうとしなかった。やがて、お職の吉里が、熱をあげていた男にフラれた腹いせに、剃刀を持ってあばれだし、白昼、自らの首に剃刀を当て死んでいった。吉里は酒と情人に弱い女だったのだ。〈秋の章〉ふたたび一年後。若汐の美しさはますます磨かれて、姉さん格の小花と艶を競うまでになっていた。翌年の年季明けをめざして小花はよく客をとっていた。しかし、このことが災いしてひどい喀血の末、病院送りとなってしまった。そして、小花に替わって若汐がお職の座につき、楼主と女将のすすめもあって花魁名跡“紫”を継ぐことになった。十月恒例の“仁和賀”で湧き立つ仲之町。お職の位に出世した紫の豪華な“積夜具”が部屋へ運び込まれた。その部屋はもとの小花の部屋。店のものがうっとりとそれらをながめていると突然、幽気のような小花が現われた。そしてお座敷から信輔と一緒に戻った紫の前で小花はその夜具をこなごなに切りさき、絶叫の中、死んでいくのだった。〈冬の章〉それからさらに一年後の冬。楼主と女将に呼ばれ部屋へ行く紫。とそこには信輔がいた。信輔は二千円という大金を彼女にさし出し、好きなように使えという。そして彼女の前から姿を消してしまった。紫はその金でかねてから考えていた“花魁道中”をやることにした。ある日、紫は菊川と再会した。一度は身受けしてもらったものの再び廓に身を落とし今では安女郎の菊川。二人の差は年月以上に大きなものだった。やがて、めぐりくる桜の季節となり、紫の豪華な花魁道中が行なわれた。彼女は信輔がお春という女郎のもとにいることを知ると、すぐに駆け付けるが、そんな彼女を菊川がとがめた。そして、紫は馴染みの客の坪坂の願いもあって、吉原を去ることにした。二人を乗せた人力車が吉原を出ようとする時、お春があやまって倒した火がもとで吉原全体が猛火につつまれ紫が育った中梅楼も、信輔もすべてが灰となってしまった。彼女は、燃えあがる吉原を万感の思いで見つめていた。




12-19. 忍者武芸帖 百地三太夫

監督 鈴木則文
出演 真田広之蜷川有紀志穂美悦子長谷匡彦徳満信央
1980年 (東映)

解説
秀吉の腹心、不知火将監によって父、百地三太夫を殺された息子、鷹丸の一族再興のための活躍を描く。脚本は石川達男、「団鬼六 少女縛り絵図」の神波史男、「トラック野郎 故郷特急便」の鈴木則文の共同執筆、監督も同作の鈴木則文、撮影は「影の軍団 服部半蔵」の中島徹がそれぞれ担当。

ストーリー
天下を狙う秀吉の命を受けた腹臣、不知火将監によって伊賀山中の百地砦が襲撃された。秀吉の狙いは、伊賀忍者皆殺しと、百地一族の隠し金山を手に入れることであった。不知火将監率いる甲賀勢との戦いで三太夫をはじめ、百地一族は壊滅。生き残ったのは三太夫の一子、鷹丸と、石目、川次郎、五助、右衛吉、門太、おつうなど幼い子供たちだ。子供たちを追う将監の弟、幻之介。鷹丸は海へ逃れ、おつうは服部半蔵に拾われた。そして十年後。鷹丸は中国から帰国した。胸元にかざす狼印の短刀には、百地家の隠し金山のありかが刻まれていた。鷹丸は京の町で、盗族、石川五右衛門と出会った。この五右衛門こそ、百地家の幼な子たち、石目、川次郎、五助、右衛吉、門太の成長した姿だった。鷹丸は彼らと共に秀吉と将監の首を取って百地一族再興を誓う。一方、服部半蔵に育てられたおつうは、美しいくの一に成長していた。半蔵は家康に仕え、やはり百地家の金山を狙っており、おつうを鷹丸のグループに接近させた。五助の恋人、お艶の密告で、アジトが将監らに襲われ石目、右衛吉、門太が捕らえられた。救出に向かう鷹丸たち。このとき、中国娘、愛蓮が現われ、百地勢に味方した。鷹丸と一緒に育てられた彼女は、彼を慕い、日本へ追いかけて来たのだ。おつうは、鷹丸の短刀を半蔵に渡してしまった。育ての親、半蔵への思いと、百地同族、特に鷹丸への思いの板ばさみで、彼女は苦しんでいた。しかし、短刀は一本では用をなさず、もう一本のものと合わさって、金山の地図が成立する。将監との戦いで弥次郎、五助、右衛吉が死んだ。復讐の念に燃える鷹丸は、父の無二の友戸沢白雲斎を訪ねた。亡き友の息子をさらに強者にしようとする白雲斎。厳しい訓練の日が続いた。そして、おつうとの間には恋が芽ばえた。ある日、白雲斎は鷹丸に一ふりの短刀を手渡した。これこそ三太夫が白雲斎に預けておいたもう一本の短刀だ。しかし、その短刀を、おつうが盗みだそうとした。おつうを追う白雲斎。二人の間に立ちはだかる鷹丸。白雲斎と鷹丸の激闘。そして、遂に鷹丸は、小太刀二刀流で白雲斎の技をしのいだ。満足したような笑みを残して自害する白雲斎。天下を取った秀吉は、家康を討つべく、将監の軍を派遣した。このチャンスを逃してはならず、後を追う鷹丸。鷹丸を思うおつうの一途な気持に屈した半蔵も百地の新しいリーダー鷹丸に協力。ここに空前の大決戦がはじまった……。




12-20. ザ・マジックアワー

監督 三谷幸喜
出演 佐藤浩市妻夫木聡深津絵里綾瀬はるか西田敏行
2008年 (東宝) 136分

解説
THE 有頂天ホテル」 の三谷幸喜の監督第4作。伝説の殺し屋を演じることになった俳優が、2つの犯罪組織が対立する町で巻き起こす騒動を、豪華キャストで描くコメディ。

ストーリー
売れない役者の村田(佐藤浩市)がマネージャー長谷川(小日向文世)とやってきたのは、港町・守加護だった。彼は、映画監督の備後(妻夫木聡)から映画の主演を依頼されたのだ。…しかし、備後の真の職業はクラブの支配人であった。街のボスである天塩(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)に手を出したことが発覚した備後は、伝説の殺し屋“デラ富樫”を5日以内に連れてくることを要求される。それが、命を救われる唯一の道だった。そこで備後は、“デラ富樫”のニセ者として村田を呼び寄せたのだ。騙されているとも知らず、初めて主役の座を得た村田は大いに張り切って、台本がないことを不審がる長谷川を尻目に、“デラ富樫”の役作りを深めていく。天塩と初対面の席でも、そのオーバーアクトに拍車がかかり、備後は気が気でない。幸運な偶然が重なって、天塩の部下である黒川(寺島進)の目も欺くことに成功する。天塩が“デラ富樫”を探していたのには理由があった。天塩商会と対立する江洞(香川照之)から狙われの身の天塩は、“デラ富樫”を自分の配下におこうと企んだのだ。きわどい備後の目論みに業を煮やしたマリは、早く街から逃れようと誘う。やがて計画は崩壊し、ようやく村田も映画の撮影ではないことに気がつく。そのとき、自分の身を犠牲にして備後と村田を救ったのはマリだった。すべてを悟った村田は、映画仲間たちを守加護に呼んで、天塩を騙すための大芝居を仕掛ける。だが、その過程で天塩とマリは真実の愛に目覚めて、二人で街を去っていく。呆然とする備後と村田の前に現れたのは、本物のデラ富樫だった。映画仲間たちのトリックで、デラ富樫をペテンにかける村田。それは彼にとって一世一代の名芝居であり、見切りをつけようとしてした役者稼業を思いとどまらせるのに充分なものだった。ひとつのドラマが終わり、また次の映画が始まるように……。




12-21. 仁義なき戦い

監督 深作欣二
出演 金子信雄木村俊恵松方弘樹菅原文太三上真一郎
1973年 (東映) 99分

解説
日本暴力団抗争史上で最も多くの血を流した“広島ヤクザ戦争”をドキュメンタリー的に描く。原作は抗争渦中の人物“美能組”元組長の獄中手記をもとに書き綴った飯干晃一の同名小説。脚本は 「日本暴力団 殺しの盃」 の笠原和夫、監督は 「人斬り与太 狂犬三兄弟」 の深作欣二、撮影は 「着流し百人」 の吉田貞次がそれぞれ担当。

ストーリー
終戦直後の呉。復員後遊び人の群れに身を投じていた広能昌三は、その度胸と気っぷの良さが山守組々長・山守義雄の目にとまり、山守組の身内となった。当時の呉には土居組、上田組など四つの主要な組があったが、山守組はまだ微々たる勢力にしかすぎなかった。そこで山守は上田組と手を結ぶことに成功し、当面の敵、土居組との抗争に全力を注ぐ。その土居組では組長の土居清と若頭・若杉が仲が悪く、事あるごとに対立し、とうとう若杉は破門されてしまった。そして、若杉は以前からの知り合いである広能を通じて山守組へと接近していった。若杉の山守組加入で、土居殺害の計画は一気に運ばれた。広能は土居殺害を名乗り出た若杉を押し止どめ、自ら土居を襲撃し、暗殺に成功。ところがそれ以来、山守の広能に対する態度が一変し、組の邪魔者扱いにするようになり、広能は結局自主して出るのだった。その態度に怒った若杉が、山守の若い衆を殺害したことから、警察に追われ、激しい銃撃戦の後、殺された。その間にも、土居組の崩壊と反比例して、山守組は増々勢力を伸ばしていった。しかし、その組の中でも、主流派の坂井鉄也と、反主流派の有田俊雄という二つの派閥が生まれ、山守を無視しての内戦が始まっていた。まず、市会議員・金丸と、土居組の残党を味方に引き入れ勢いづいた有田は、坂井の舎弟山方、兄弟分上田を殺害した。激怒した坂井は有田を破門するとともに、報復に出た。次々と射殺される有田一派、ついに血で血を流す凄惨な抗争車件に発展してしまった。そして、警察の出動により有田は逮捕、兄貴分の新開は殺された……。勝ち残った坂井は、広島の海渡組と手を組み、山守に替って呉を支配するかのように振るまうようになった。やがて今ままでの内戦を黙視していた山守の巻き返しが始まった。山守は、丁度その時仮釈放で出所した広能に坂井暗殺を捉した。冷酷な山守の魂胆を見抜いている広能は、微妙な立場に立たされた。山守に従う気はないが、そうかと言って坂井に手を貸す気もなかった。そんな時、矢野組々長・矢野修司が坂井と海渡組の手を切るぺく画策中に殺された。山守の恐るぺき執念がついに実行される。殺気立っていた矢野組々員をけしかけ坂井を襲撃させたのである。坂井は血だるまになるまで銃弾を受けた。翌日、坂井の葬儀が盛大に行われた。広能はかつて憧れたやくざ社会に虚しさと怒りを抱きながら無傷の喪主山守の前を去っていった。




12-22. ロボジー

監督 矢口史靖
出演 ミッキー・カーチス吉高由里子濱田岳川合正悟川島潤哉
2011年 (東宝) 111分

解説
ハッピーフライト」 などコメディを得意とする矢口史靖監督が、ロボットと老人をテーマに作りあげたエンターテインメント作。73歳の老人をロボットの中に入れることになった窓際社員3人がおかしな騒動を繰り広げる。鈴木老人を演じるのは、200人を超えるオーディションで選ばれた五十嵐信次郎(=ミッキー・カーチス)。

ストーリー
家電メーカー木村電器の窓際社員、小林(濱田岳)、太田(川合正悟)、長井(川島潤哉)の3人は、いつもワンマンな木村社長(小野武彦)から流行の二足歩行ロボット開発を命じられる。近く開催されるロボット博での企業広告が目的だった。しかし、ロボット博まであと1週間という時期になって、制作途中のロボット“ニュー潮風”が木っ端微塵に大破してしまう。窮地に追い込まれた3人は、ロボットの中に人間を入れてごまかす計画を立案。ロボットの外装にぴったり収まる人間を探すため、架空のオーディションによって、仕事をリタイアして久しい独り暮らしの老人、73歳の鈴木重光(五十嵐信次郎)が選ばれる。しかし、この鈴木さん、実はとんでもない爺さんだった…。さらに、“ニュー潮風”に恋をしたロボットオタクの女子学生・葉子(吉高由里子)も巻き込み、事態は思わぬ方向へ転がり出す……。




12-23. 夢売るふたり

監督 西川美和
出演 松たか子阿部サダヲ田中麗奈鈴木砂羽安藤玉恵
2012年 (アスミック・エース) 137分

解説
ディア・ドクター」の西川美和監督が、火事で店を失った夫婦が再出発のために結婚サギを繰り返す姿を描くラブストーリー。松たか子と阿部サダヲが夫婦役で初共演を果たし、タイプも様々な女性たちを騙していく姿が痛快。騙される女性役として、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、木村多江ら個性派女優が多数共演している。

ストーリー
東京の片隅にある小料理屋。この店を営むのは、愛嬌たっぷりな人柄に加え、確かな腕を持つ料理人の貫也(阿部サダヲ)と、彼を支えながら店を切り盛りする妻の里子(松たか子)。2人の店は小さいながらも、いつも常連客で賑わっていた。ところが5周年を迎えた日、調理場からの失火が原因で店は全焼。夫婦はすべてを失ってしまう。もう一度やり直せばいいと前向きな里子とは対照的に、やる気を無くした貫也は働きもせず酒に溺れる日々。そんなある日、貫也は駅のホームで店の常連客だった玲子(鈴木砂羽)に再会する。酔っ払った勢いに任せて、玲子と一夜を共にした貫也。翌朝、浮気はすぐに里子にバレてしまうが、里子はその出来事をキッカケに、夫を女たちの心の隙間に忍び込ませて金を騙し取る結婚詐欺を思いつく。自分たちの店を持つという夢を目指し、夫婦は共謀して次々と女たちを騙し始める。実家暮らしで結婚願望を持つOLの咲月(田中麗奈)、男運が悪い風俗嬢の紀代(安藤玉恵)、孤独なウエイトリフティング選手のひとみ(江原由夏)、幼い息子を抱えたシングルマザーの滝子(木村多江)……。計画は順調に進み、徐々に金は貯まっていく。しかし、嘘の繰り返しはやがて、女たちとの間に、そして夫婦の間にさえも、さざ波を立て始めていく……。




12-24. 難波金融伝 ミナミの帝王 劇場版PARTII 銀次郎VS整理屋

監督 萩庭貞明
出演 竹内力竹井みどり太平サブロー柳沢慎吾大森嘉之
1993年 (ケイエスエス) 92分

解説
劇場では、第1作の3番目のエピソードとして上映された一編。漫才師に借金を踏み倒された銀次郎の弟分・竜一。慌てて漫才師の父親のもとに駆け付けるが、その会社は既に“整理屋“と呼ばれる経済ヤクザによって計画倒産させられていた。銀次郎がひと肌脱ぐことになるが……。









12-25. SPACE BATTLESHIP ヤマト

監督 山崎貴
出演 木村拓哉黒木メイサ柳葉敏郎緒形直人西田敏行
2010年 (東宝) 138分

解説
往年の人気アニメ 「宇宙戦艦ヤマト」 を実写映画化したSFアドベンチャー。木村拓哉、黒木メイサら豪華キャストが顔を揃え、滅亡の危機にある地球と人類を救おうとするヤマトの乗組員たちの熱き闘いを活写する。 「ALWAYS 三丁目の夕日」 など、CGの名手である山崎貴監督が最新技術を駆使し、原作の壮大な世界観を構築する。

ストーリー
2194年、外宇宙に現れた正体不明の敵ガミラスが、地球に向けて攻撃を始める。人類は各国の全戦力を結集して対抗するが、全軍壊滅。ガミラスは遊星爆弾を投下し、人類の大半を死滅させる。それから5年後、遊星爆弾によって放射能汚染された地上を離れ、わずかに生き残った人類は地下での暮らしを余儀なくされていた。そんななか、かつてのエースパイロット古代進(木村拓哉)は、ガミラスの攻撃で家族を失った悲しみから軍を退き、失意の日々を送っていた。ある日、地球に通信カプセルが落下する。それは、14万8千光年先にある惑星イスカンダルからのものだった。その情報によってイスカンダルには放射能を除去できる装置があることを知った人類は、イスカンダルの高い科学技術が産み出した波動エンジンを搭載し、宇宙戦艦ヤマトを建造する。兄・守(堤真一)の戦死を知り、戦場への帰還を志願した進は、戦闘班班長としてヤマトに乗り込み、守を見殺しにした沖田十三艦長(山崎努)に憎しみをぶつける。一方、ヤマトに搭載されている最新鋭の宇宙戦闘機コスモタイガーのパイロット・ブラックタイガー隊のエース森雪(黒木メイサ)は、古代が上官に任命されたことを不満に思っていた。彼らを乗せたヤマトが、地球を旅立つときがきた。ヤマトを発進させるエネルギーは膨大で、地球を監視するガミラス偵察艦隊に発見されないはずがない。ヤマトは出撃と同時に、ガミラスとの戦いに突入する。また、人類に残された1年以内に、銀河の彼方にあるイスカンダルへ往復するには、ワープ航法が欠かせなかった。波動エンジンはワープ航法を可能にしたが、人間の体がワープに耐えられるかは未知だった。




12-26. サイドカーに犬

監督 根岸吉太郎
出演 竹内結子古田新太松本花奈谷山毅ミムラ
2007年 (ビターズ・エンド) 94分

解説
竹内結子が2年ぶりに映画復帰を飾る感動ドラマ。長嶋有の同名小説をもとに、 「雪に願うこと」 の根岸吉太郎監督が、男勝りな女性と内気な少女の交流を繊細なタッチで描く。

ストーリー
不動産会社の営業として働く30歳の薫は、久々に再会した弟から結婚披露宴の招待状を受け取る。それをきっかけに、薫は20年前にヨーコさんと過ごした刺激的な夏休みを回想する。小学4年生の夏休みの初め、父(古田新太)と喧嘩の絶えなかった母が家を出た。その数日後に薫(松本花奈)の家に突然やって来たヨーコさん(竹内結子)は、薫の父の愛人という。ヨーコさんは、何事にも神経質な薫の母親とは対照的な大らかな人だった。煙草を吸い、さっぱりとした性格で気が強く、自由な精神にあふれた女性だが繊細な優しさも併せ持っていた。長女らしい生真面目さを持つ薫には、ヨーコさんとの生活は驚きの連続だった。だが、ヨーコさんは薫を子ども扱いすることなく、薫の長所を鋭く見抜く。そんなヨーコさんに、甘え下手だった薫も知らず知らず影響され、ありのままの自分を解放させる楽しさを味わっていく。




12-27. 見えないほどの遠くの空を

監督 榎本憲男
出演 森岡龍岡本奈月渡辺大知橋本一郎佐藤貴広
2011年 (ドゥールー=コミュニティアド) 99分

解説
「すべては海になる」 などのプロデューサー、榎本憲男の初監督作。主演女優の突然の死によって、映画を完成させられなかった学生監督の心の変化を描く。出演は 「紙風船」 の森岡龍、 「ガチバン アルティメット」 の岡本奈月、 「色即ぜねれいしょん」 の渡辺大知、 「学校をつくろう」 の橋本一郎、 「代行のススメ」 の佐藤貴広、 「終わってる」 の前野朋哉、 「東京島」 の中村無何有。

ストーリー
大きな公園の中、一本の樹の下に若い男女が座り、その前に映画の撮影隊がいる。高橋賢(森岡龍)は、映研の仲間たちと一緒に、学生生活最後の作品「ここにいるだけ」の最後のショットを撮影していた。カットの声がかかる直前、ヒロイン役の杉崎莉沙(岡本奈月)は、シナリオに書かれていない台詞をひと言口走る。その時、雨が激しく降ってきて撮影は中断。だが撮影再開の前日、不慮の事故によって突然、莉沙が亡くなってしまう。もともとこの映画の結末をめぐって、莉沙と賢の間には意見の対立があり、光浦丈司(渡辺大知)に説得されて賢が書いた手紙を読まずに莉沙は死んでしまった。そして、最後のワンショットを撮り残し、「ここにいるだけ」は未完成のままとなった……。一年が過ぎたある日、賢は街で莉沙にそっくりな女を見かける。おもわず後を追う賢。その女・洋子(岡本奈月)との会話を重ねるうちに、賢は、彼女を代役にして最後のショットを撮り、映画を完成させようと思いつく。やがて、仲間の反対を押し切って賢は撮影を再開しようとするが、事態は思わぬ方向に発展していく……。




12-28. 単騎、千里を走る。

監督 チャン・イーモウ
出演 高倉健リー・ジャーミンチアン・ウェンチュー・リンヤン・ジェンボー
2005年 (東宝) 108分

解説
日本映画界が誇る名優・高倉健が、中国の名匠チャン・イーモウと組んだ話題作。息子への情愛を胸に秘めて中国へと旅立った男と、現地の人々との交流を映し出す。

ストーリー
静かな漁村に暮らす高田剛一(高倉健)は、久々に東京に向かう。嫁の理恵(寺島しのぶ)が電話で、剛一の息子、健一(声:中井貴一)が重病で父親に会いたがっていると知らせてきたのだ。しかし、入院している健一は、長年にわたる確執から父親に会うことを拒んでいた。打ちひしがれ、病院をそっと抜け出す高田に、理恵はビデオテープを渡す。テープを再生した高田は、息子が千年以上にさかのぼる、宗教的儀式にまつわる演劇形態の研究をしていたことを知る。有名な俳優リー・ジャーミン(リー・ジャーミン)の舞踏を見るために、はるばる中国南部・雲南省まで向かった健一だったが、あいにくリーは病気のために歌を披露することができず、健一が翌年再び雲南省を訪れたら、『三国志』に由来する仮面劇『単騎、千里を走る。』を披露することを約束していたのだ。今となっては決して果たされない約束。高田は息子のやり残した仕事を成し遂げるために、リーの舞踏をビデオ・テープに撮ろうと単身、中国の麗江市へ旅立つ。手がかりは、舞踏家リー・ジャーミンという名前のみ。しかも高田の道案内をするチュー・リンは、おそろしく日本語がおぼつかない。遅々として進まない状況。言葉も分からないこともあって、苛立ちを隠しきれない高田は、やっとの思いでリーの元にたどり着くが、リーは生き別れになった息子ヤン・ヤンのことを思うと、『単騎、千里を走る。』を舞うことができないと言う。息子に一目会いたいと泣きながら懇願するリーに、高田はやむなくヤン・ヤンを迎えに行くことを決意する。




12-29. BALLAD 名もなき恋のうた

監督 山崎貴
出演 草なぎ剛新垣結衣大沢たかお武井証筒井道隆
2009年 (東宝) 132分

解説
大人も涙したという 「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」 を実写映画化。未来からやってきた少年と戦国時代の侍との友情、そして侍と姫との悲恋が描かれる。

ストーリー
1574年、戦国時代。春日という小国の姫君・廉姫(新垣結衣)を守る、井尻又兵衛(草なぎ剛)という無敵を誇る侍がいた。2人は幼いころから一緒に育ち、身分違いの恋心を秘めていた。ある戦場で、敵の足軽の鉄砲が又兵衛の隙を狙っていた。しかし不思議な少年(武井証)が突如姿を現し、驚いた足軽は狙いを外す。少年は川上真一と名乗り、未来からタイムスリップしてきたと言う。又兵衛は春日城に真一を連れていき、城主・康綱(中村敦夫)に彼の処遇を相談する。城で廉姫を見た真一は、タイムスリップする前に何度も夢で見た女性にそっくりだと驚く。夢の話を聞いた廉姫は、真一の世話を又兵衛に命じる。ある日、北関東の大国の大名・大倉井高虎(大沢たかお)が、美人の誉れ高い廉姫に婚姻を申し込みにやってくる。小国である春日を守るため、廉姫は又兵衛への想いを封じ、政略結婚に同意する。そのころ現代では、真一の父・暁(筒井道隆)が姿を消した息子を捜していた。暁は“川上の大クヌギ”と呼ばれる巨木の下で、真一が天正2年の世界にいることを伝える手紙を見つける。暁と妻・美佐子(夏川結衣)は半信半疑ながらも、四輪駆動車で大クヌギへ向かう。すると2人はタイムスリップし、戦国時代で真一と再会を果たす。しかし現代へ戻れず、仕方なく春日城へ向かう。康綱やお付役の吉乃(香川京子)は一家を温かく迎え入れる。暁から、未来の世界では春日の国も大国もなくなっていることを聞いた康綱は、廉姫の縁談を断る。激怒した高虎は春日に大軍を送り込む。春日の国を守るため出陣する又兵衛に、廉姫は初めて自分の本当の気持ちを伝える。






12-30. 父は家元

監督 高野裕規
出演 小堀宗実小堀優子小堀正大十代目坂東三津五郎
2013年 (フィルムボイス) 91分

解説
430年の伝統を受け継ぐ遠州茶道宗家家元・小堀宗実の活動に密着、茶道の芸術性とその背景にある日本文化の真髄を映し出すドキュメンタリー。監督は、企業ビデオやゲームムービーなどを多数製作、本作で劇場映画デビューを飾る高野裕規。ナレーションを家元の次女である小堀優子が担当する。音楽は 「天と地」 の喜多郎。

ストーリー
千利休に代表される「侘びさび」の茶道は余計なものを極限までそぎ落とした精神性を重視する世界であった。しかし、流祖である小堀遠州は利休の精神性に美しさ、明るさ、豊かさを加え、誰からも美しいと云われる客観的な美と調和の世界「綺麗さび」の美意識を築き上げる。茶室にも明るさという新しい概念をもたらし、開放感を与え、それは伝統を重んじつつ、現代的なモノや海外のモノを茶道に取り入れる様なまさに“クール”と表現される新しさを持っていた。大名家に生まれた遠州は、幼少期から父である新介正次の英才教育を受け、千利休、古田織部と続いた茶道の本流を受け継ぎ、徳川将軍家の茶道指南役となった。生涯に400回あまりの茶会を開いた遠州は、寛永文化サロンの中心的な人物。さらに、遠州は幕府の建設大臣として建築、造園にも才能を発揮。名古屋城、二条城、桂離宮を手掛けた名建築家でもある。また国産の陶器の指導を行い、日本の陶芸文化に多大な足跡を残し、その分野を問わない縦横無尽な活躍から日本のレオナルド・ダ・ヴィンチと称されている。昭和31年、遠州茶道宗家12世小堀宗慶の長男として生まれた小堀宗実は、平成13年元旦より13世家元を継承。伝統文化の普及と精神文化の向上に努める傍ら、時代を見据え様々な文化とのコラボレーションも実施している。都心にあるオラクル青山センターの最上階。東京の街並みが一望できるこの場所に、宗実家元の設計・監修によって茶室「聚想庵」が作られた。素材や意匠など細部まで遠州流綺麗さびの美意識に裏打ちされた空間。この天空茶室に歌舞伎俳優・坂東三津五郎を迎え、茶会が開かれる。当代一の歌舞伎俳優と一流の茶人の会は、江戸文化人たちのサロンだった茶会を彷彿とさせるのであった。




12-31. 風立ちぬ

監督 宮崎駿
出演 庵野秀明瀧本美織西島秀俊西村雅彦スティーブン・アルパート
2013年 (東宝) 126分

解説
宮崎駿の「崖の上のポニョ」以来5年ぶりとなる新作は、零式艦上戦闘機(零戦)を設計した実在の人物、堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄を織り交ぜた主人公・二郎の姿を描く大人のラブストーリー。大正から昭和にかけての激動の時代を生きた人々の物語がつづられる。二郎役の庵野秀明ら豪華声優陣の共演にも注目したい。

ストーリー
少年の頃から飛行機に憧れ、東京の大学に進学、ドイツへの留学を経て、航空技術者となった堀越二郎(声:庵野秀明)。夢や憧れ、恋、やがて近づく戦争など、零戦を設計したことで知られる彼の若かりし頃を描く。




12-32. 犯人に告ぐ

監督 瀧本智行
出演 豊川悦司小澤征悦片岡礼子中村育二平賀雅臣
2007年 (ショウゲート) 117分

解説
豊川悦司が初めて刑事役に挑んだミステリー映画。雫井脩介の同名ベストセラー小説をもとに、メディアを使った大胆な捜査手法で難事件に挑む刑事の苦闘を描く。

ストーリー
6歳の少年が誘拐され、犯人からの身代金受け渡し指示がきた。神奈川県警警視・巻島史彦(豊川悦司)は、警視庁の指揮の下、現場に張り込んでいた。巻島は不審な男の姿をとらえるが、別の男が母親に接触。だが捜査員に取り押さえられた男はナンパだったと判明、不審者を逃してしまう。翌日、警察を嘲笑した犯人のメッセージとともに少年の遺体が発見される。だが、県警の曾根刑事部長(石橋凌)からミスは一切認めるなと釘を刺されていた巻島は、記者会見の場で杓子定規な返答しかできない。報道陣が苛立つ中、命の危険を伴う出産にのぞんでいる巻島の妻・園子(松田美由紀)のいる病院から電話が入り、動揺した彼は記者たちに抑えていた感情を爆発させてしまう。6年後。左遷された巻島のもとに、神奈川県警本部から呼び出しがかかる。県警トップ本部長の座についた曾根は、難航する川崎連続児童殺害事件の捜査責任者としてテレビに出演しろと巻島に命じる。それは、テレビで世間を挑発し、3件目の犯行後、姿を消した<BADMAN>と名乗る犯人に対し、曾根が下した大胆な『劇場型捜査』だった。ミヤコテレビの生放送のニュースに出演した巻島は、番組を通じてBADMANと直接対話したいと発言。打ち合わせにない展開に周囲はあわてふためき、抗議が殺到するが、視聴率は倍増。翌日、巻島は本物からと思われる手紙を示し、再びBADMANへ呼びかける。ライバル番組のキャスター・杉村(片岡礼子)は、大学時代同級生だったエリート警視の植草に連絡。巻島の勝手な暴走に上司の面子を潰された植草は、下心もあって杉村に情報提供をちらつかせる。そして、6年前の失態を含め、巻島へのバッシングが始まった。メディアは巻島を追いまわし、世間から非難の声がわき、曾根も巻島を見放す決断を下す。絶体絶命の窮地だが、BADMANの新たな手紙を入手した巻島は再びミヤコテレビのスタジオへと向かい、犯人に、お前はもう逃げられないと告げる。




12-33. 電車男

監督 村上正典
出演 山田孝之中谷美紀国仲涼子瑛太佐々木蔵之介
2005年 (東宝)

解説
ネット掲示板“2ちゃんねる”から生まれた実話純愛物語の映画化。“電車男”と呼ばれる奥手なオタク青年のピュアな恋模様を描く。主演は若手実力派の山田孝之。

ストーリー
電車内で酔っ払いのオヤジに絡まれていた美しい女性を救った、秋葉系ヲタク青年=電車男。彼女に恋をした彼は、お礼に貰った高級ブランド“エルメス”のペアカップのお返しにと、彼女=エルメスを食事に誘おうとするのだが、彼女いない歴23年、恋愛経験ゼロの彼にはどうしていいか分からない。そこで、ネット掲示板の住人たち=名無しさんたち(看護師のりか、ひきこもりのひろふみ、仕事に疲れたサラリーマンのひさし、倦怠期主婦のみちこ、ヲタク3人組のよしが、たむら、むとう)に助言を求め、なんとかエルメスと食事の約束を取りつけると、更に彼らのアドヴァイスで眼鏡をコンタクトに変え、髪も美容院で整え、ブランドものの洋服を購入、感じのいいレストランをチョイスし、初めてのデートを成功させるのであった。こうして、その後も名無しさんたちに勇気づけられながら幾度かのデートを重ねた電車男は、いよいよ自分の気持ちをエルメスに伝える決意をする。しかし、ちょっとしたミスからふたりの間に溝が生じてしまい、彼は改めて自分とエルメスの不釣合いを実感。だが、またしても名無しさんたちの声援に支えられ、エルメスに告白。遂に、恋を成就させるのであった。




12-34. 故郷

監督 山田洋次
出演 倍賞千恵子井川比佐志笠智衆渥美清前田吟
1972年 (松竹) 96分

解説
瀬戸内海の小島で石の運搬をしている一家が工業化の波に押され、島を出て新天地で暮らすことを決断するまでを描いた作品。舞台となった広島県倉橋島に長期滞在し、島の住民を多く登場させるなど、「家族」同様ドキュメンタリーの手法も交えて撮った。

ストーリー
瀬戸内海の小島、倉橋島に住む精一、民子の夫婦は小さな古い砂利運搬船で石を運び、生計を立てていた。しかし、船のエンジンの調子が悪く、さらに荒れた海に出た日に船体も壊れてしまう。すでに耐用期間も過ぎた船体の修理には精一にとっては多額の費用が必要であった。今後の生活を悩む中、尾道市にある鉄工所を見て、故郷を捨てる決心をする。




12-35. 小さいおうち 

監督 山田洋次
出演 松たか子黒木華片岡孝太郎吉岡秀隆妻夫木聡
2013年 (松竹) 136分

解説
第143回直木賞に輝いた中島京子の同名ベストセラー小説を、名匠・山田洋次監督が映画化したミステリアスなドラマ。とある一家で起きた恋愛事件の行方を見守った1人の女中。60年後、彼女がつづったノートを手にした青年によってその出来事が紐解かれていくさまが描かれる。女中を黒木華、一家の若奥様を松たか子が演じる。

ストーリー
東京郊外にあった少しモダンな三角屋根の家で女中として働いていた当時の思い出を大学ノートに書き記していくタキ(倍賞千恵子)。昭和11年、タキ(黒木華)は上京し、時子(松たか子)と雅樹(片岡孝太郎)の夫婦とその息子が暮らす平井家で働き始める。優しい時子やかわいらしい息子のいるその家での穏やかな暮らしは、一人の青年(吉岡秀隆)の出現により変化する。時子の気持ちが揺れ、恋愛事件の気配が漂う中、タキはある決断をする。タキの死後、このノートを読んだ親類の健史(妻夫木聡)は、遺品の中からタキが封じ込めた秘密に関わる手紙を見つける……。




12-36. 川の底からこんにちは

監督 石井裕也
出演 満島ひかり遠藤雅相原綺羅志賀廣太郎岩松了
2009年 (ユーロスペース=ぴあ) 112分

解説
妥協した生活を送るOLが、実家のしじみ工場を継いだことから人生に立ち向かっていく姿を描く人間ドラマ。監督は、 「剥き出しニッポン」 の石井裕也。出演は、 「愛のむきだし」 の満島ひかり、 「夢十夜 海賊版 第七夜」 の遠藤雅、DVD 「夢十夜 海賊版 第七夜」 の遠藤雅、DVD「THE3名様」の志賀廣太郎。第60回ベルリン国際映画祭フォーラム部門招待作品。

ストーリー
上京して5年目のOL・木村佐和子(満島ひかり)は、職場の上司・新井健一(遠藤雅)と付き合っている。バツイチで娘・加代子(相原綺羅)がいる健一は頼りないが、いつも男に捨てられてきた佐和子は不満に感じることもない。ある休日、3人は動物園を訪れる。そこで健一は佐和子にプロポーズするが、唐突なことで佐和子は戸惑う。そのとき、佐和子の叔父・信夫(岩松了)から、佐和子の父・忠男(志賀廣太郎)が入院したと電話が入る。一人娘の佐和子は実家のしじみ工場を継ぐよう求められるが、佐和子は決心がつかなかった。しかし健一は会社を辞め、佐和子の故郷で工場を一緒に継ぎたいと言い出す。佐和子は健一と加代子を連れ、実家に帰る。しじみ工場の従業員のおばちゃんたちは、駆け落ちして父を捨てた佐和子を無視する。経理の遠藤(菅間勇)以外やる気を感じられない工場の経営は、悪化の一途をたどっていた。健一は佐和子の幼なじみの友美(鈴木なつみ)と浮気をして、家を出ていく。ある朝、佐和子は工場に乗り込み、おばちゃんたちに胸の内をぶちまける。するとおばちゃんたちも、男で失敗した経験を打ち明け始める。意気投合した佐和子とおばちゃんたちは、工場の経営再建を目指す。佐和子は新しい社歌を作り、毎朝全員で歌うようになる。すると、次第にしじみの売り上げも上がっていく。




12-37. 動乱

監督 森谷司郎
出演 高倉健吉永小百合米倉斉加年田村高廣志村喬
1980年 (東映) 150分

解説
昭和史の起点となった五・一五事件から二・二六事件までの風雲急を告げる時を背景に、寡黙な青年将校とその妻の愛を描いたもので第一部 「海峡を渡る愛」 、第二部 「雪降り止まず」 の二部構成になっている。脚本は 「英霊たちの応援歌 最後の早慶戦」 の山田信夫、監督は 「聖職の碑」 の森谷司郎、撮影は 「天使の欲望」 の仲沢半次郎がそれぞれ担当。

ストーリー
第一部「海峡を渡る愛」昭和七年四月、仙台連隊。宮城啓介大尉が隊長をつとめる中隊の初年兵、溝口が脱走した。姉の薫が貧しさから千円で芸者に売られようとしていたからだ。溝口は捜索隊の上司を殺してしまい、宮城は弁護を申し出るが聞き入れられず、溝口は銃殺刑に処せられた。宮城は父に用立ててもらった千円を香典として渡す。当時、日本は厳しい経済恐慌に包まれ、これを改革すべく、一部の海軍将校と陸軍士官候補生らが決起した。五・一五事件である。クーデターは失敗に終り、陸軍内部の皇道派と統制派の対立を激化させた。この影響は仙台にいる宮城にまで及び、部下から脱走兵を出した責任で朝鮮の国境守備隊へ転任を命じられる。そこは、朝鮮ゲリラへ軍需物資の横流しが平然と行なわれる腐敗したところだ。官城は将校をねぎらう宴に招待され、そこで芸者になった薫と再会する。薫を責める宮城。数日後、薫が自殺を図った。宮城は軍の不正を不問にすることで、薬を入手し薫の命を救う。その頃、国内では統制派によって戦争準備が押し進められていた。第二部「雪降り止まず」昭和十年十月、東京。宮城は第一連隊に配属になり、薫と共に居をかまえた。しかし、二人の間にはまだ男と女の関係はなかった。官城の家には多くの青年将校が訪れ、“建設か破壊か”と熱っぽく語り合っていく。憲兵隊の島謙太郎はそんな宮城家の向いに往みこんで、四六時中、見張りを続けていた。ある日、宮城は恩師であり皇道派の長老格でもある神崎中佐を薫と伴に訪れた。神崎の家庭の幸せを見て、薫は「私の体は汚れているから抱けないんですか」と宮城につめよる。数日後、宮城が決行を決意していた軍務局長暗殺を神崎が単身で陸軍省におもむき果してしまった。この事件は青年将校たちに“時、来る”の感を持たせ、昭和維新への機運いっきに高まった。官城たちの行動に、心情的には同調しながらも、憲兵という職務から事を事前にふせごうと島は苦悩する。決行の日が決まり、宮城は実家に帰り父に薫のことを頼むと、はじめて彼女を抱くのだった。決行の日が来た。時に昭和十一年二月二十五日。夜半から降りはじめた雪は、男たちの熱い思いと、女たちの哀しい宿命をつつみこんで、止むことなく降り続いていた……。




12-38. レンタネコ

監督 荻上直子
出演 市川実日子草村礼子光石研山田真歩田中圭
2011年 (スールキートス) 110分

解説
大の猫好きだという荻上直子監督が、「めがね」など荻上作品の常連である市川実日子を主演に迎え、猫を通して結ばれる人間同士の絆を描いたハートウォーミング・ストーリー。どこか懐かしい家具や衣装、日だまりのような照明が織りなすスタイリッシュな映像の中、さまざまな猫たちが観る者の心を和ませる。

ストーリー
サヨコ(市川実日子)は、都会の一隅にある平屋の日本家屋でたくさんの猫と暮らしている。亡き祖母の仏壇を守りつつ、謎の隣人(小林克也)にからかわれながらも、心の寂しい人に猫を貸し出すレンタネコ屋を営んでいた。サヨコは猫たちをリヤカーに乗せて街へ出かけ、様々な人に出会う。猫たちを連れ川原を歩いていたサヨコは、上品な老婦人・吉岡さん(草村礼子)に声をかけられる。吉岡さんは14歳の茶トラ猫に興味を示し、サヨコは猫が住みやすい家か審査するため、彼女の暮らすマンションに向かう。彼女は、夫と飼い猫を亡くしてひとり住まい。子どもはとうに巣立ってしまったという。息子が小さい頃好きだったというゼリーを食べながら、身の上話をする吉岡さん。サヨコは、そんな彼女の姿を見て審査を合格とする。吉岡さんは借用書の期限の欄に“私が他界するまで”と書き記す。数日後、サヨコは寂しげな中年男・吉田(光石研)の姿を発見する。寂しい時には猫がいちばんとサヨコに促され、吉田は審査のため自宅にサヨコを招き入れる。彼は単身赴任中のサラリーマン。離れて暮らすうちに一人娘はすっかり年頃になり、父親を避けるようになってしまったとうなだれる吉田の靴下の先には大きな穴が空いている。彼は審査に合格し“家族の元に帰るまで”と借用期限に書き込み、一匹の仔猫を借り受ける。「ハワイ旅行が当たる」というのぼりにつられて、レンタカー屋の中に入っていくサヨコ。そこには生真面目そうな女性店長・吉川(山田真歩)がいた。AからCランクまでの料金設定に対して喰ってかかるサヨコに問い詰められた吉川は、自分はCランクだと漏らす。聞けば、吉川には話し相手がおらず、寂しい毎日を送っているという。サヨコは彼女に一匹の三毛猫を貸すことにする。借用期限は“待ち人現れるまで”。中学時代の同級生・吉沢(田中圭)とすれ違ったサヨコ。子どもの頃から嘘つきで有名だった吉沢をサヨコは避けるが、彼は明日インドに発つから最後の夜は女の子と一緒に過ごしたいとメス猫を貸してくれるようサヨコにせがむ。きっぱり断って家に帰るサヨコだったが、吉沢はサヨコを追って家までやってくる。縁側で彼と話しながら、サヨコは中学時代を思い出す。学校に馴染めない二人は保健室の常連で、お互いを“ジャミコ”、“嘘つきはったりの吉沢”と呼び合っていた。吉沢は縁側で猫とたわむれ、結局、猫を借りずに去っていく……。




12-39. さかなかみ

監督 浜野安宏
出演 浜野安宏丞威
2014年 100分

解説
北海道の河川湖沼の保護活動やアイヌの原住民優先権を守る活動をしながら、1メートルを超えるイトウ“さかなかみ”を釣ろうとするフライフィッシング界の大物釣り師を描くヒューマンドラマ。東急ハンズなど商業施設のプロデュースに携わる浜野安宏が、自著 「小説さかなかみ」を初の監督・脚本・主演作品として映画化。

ストーリー
白狼(浜野安宏)と呼ばれる70過ぎのフライフィッシング界の大物釣り師は、本業はファッション、ライフスタイル、商業都市などのプロデューサーだが、日本の河川湖沼とそれを取り巻く自然、健全な魚の保護活動なども熱心に行ってきた。利益団体も保護団体もないまま荒廃が進む北海道の河川を健全に利用する運動を具体化することを自身の最終章と決めた彼は、道東の阿寒川近くに友人の離れ家を借りて、簡素な森の生活をしている。白狼は、イトウやマス、サケなど、川で生まれ海に下って成長して川に戻ってくる魚、サルモニダエ族の魚たちを釣って日本の自然を楽しんできた。都市文明が著しく川を破壊し、干潟を埋め立てて大規模開発を行ってきた近代日本の自動作用に別れを告げるため、巨大イトウを釣り上げることで最後の可能性を確認したいと、この生活を選んだのだ。行きつけのバーのマスターの口癖に共感し、1メートルを超えるイトウを“さかなかみ”と呼び、さかなかみに賭けるべく行動を起こす。白狼はアイヌの原住民優先権として河川に遡上したサケを捕獲する権利を奪回したが、一般のアイヌたちはアイヌと思われたくないと言い出し、誰もついてこなくなっていく。護岸工事と道路工事で真っ直ぐにされた川は増水し、濁りが入るようになる。いくつもの川を訪ねるが、アメマスもニジマスも釣りにくくなっていた。J・ジョー(丞威)というブレイクダンスのリーダーの若者が白狼の弟子となる。白狼は次第にイトウに集中し始める。ある日、白狼が川で転倒し、底なしの沼に足を取られて身動きができなくなるが、J・ジョーの助けで脱出する。漁民たちが仕掛けた鮭止めのウライでは鮭がひしめいている。最北にわずかに残った干潟にいるようだ。底なしの沼に沈みかけたことが転機となり、白狼は明確なビジョンを描き始める。そして、伝説のイトウ釣り師・高木知敬に出会い、彼の導きで60センチのイトウを釣る。白狼は最後に一人でさかなかみに挑み、究極の大物を釣り上げる。




12-40. かぐや姫の物語

監督 高畑勲
出演 朝倉あき高良健吾地井武男宮本信子高畑淳子
2013年 (東宝) 137分

解説
名匠・高畑勲監督が 「ホーホケキョとなりの山田くん」以来14年ぶりに手がけたアニメ映画。有名な「竹取物語」 を基に、平安時代を舞台にしたかぐや姫の物語が描かれる。本作のために作られた 「かぐや姫スタジオ」 の下、 「かぐや姫スタジオ」 の下、「ホーホケキョ〜」のアニメーターである田辺修、スタジオジブリ作品ではおなじみの音楽家・久石譲らが参加。

ストーリー
竹から出てきたかぐや姫が美しく成長し、男性たちからの求婚をかわし、やがて月に帰っていく様を綴った『竹取物語』。日本最古の物語と言われている『竹取物語』を題材に、姫が犯した罪と罰を描く。




12-41. 半次郎

監督 五十嵐匠
出演 榎木孝明AKIRA白石美帆津田寛治永澤俊矢坂上忍
2010年 (ピーズ・インターナショナル) 121分

解説
西郷隆盛の右腕的存在として彼を支え、維新に尽力した薩摩武士・中村半次郎。激動の時代を侍として生き抜いた半次郎の生涯を描き出す歴史ドラマ。半次郎役の榎木孝明が同郷の偉人を映画化するべく企画から参加。人気ヴォーカル&ダンス・ユニット、EXILEの一員であるAKIRAが、半次郎の盟友・永山弥一郎役で殺陣を披露する。

ストーリー
動乱の幕末、薩摩藩。貧しい下級武士の中村半次郎(榎木孝明)は、若い侍たちの中心的存在である西郷吉之助(田中正次)が京に上ると聞き、自分もその一員に加えてほしいと願い出る。その面会の場、半次郎は求められて西郷に剣の腕前を披露。これが、以後の人生を共にする2人の出会いとなった。上京すると、人並み外れた度胸のよさと剣の腕前が評判となり、半次郎の名前はたちまち世間に知れ渡る。ひたむきで大らかな人柄も仲間たちから慕われ、長州藩士の鮎川小次郎(葛山信吾)、煙管屋の村田伊兵衛(竜雷太)、同じ薩摩藩士の永山弥一郎(AKIRA)など、次々と交友関係を広げていく。中でも、伊兵衛の一人娘さと(白石美帆)とは、心を通わせ、互いに生涯忘れられない相手となる。その一方で、熾烈を極める幕府軍との戦い。一時は圧倒的な幕府軍により、窮地に追いつめられる。しかし、味方の士気を鼓舞した半次郎の活躍もあり、劣勢を覆して薩摩軍は勝利。明治新政府が樹立されると、武勲を評価された半次郎は陸軍少将にまで上り詰め、名を“桐野利秋”と改める。故郷を離れてから、すでに7年の月日が経っていた。しかし、明治新政府での有力者たちの奢侈ぶりと腐敗は目を覆うばかり。やがて、権力闘争に敗れた西郷とともに、半次郎は薩摩に帰っていく。その頃、近代化を急ぐ新政府は不平を抱く士族を弾圧、言論統制の圧政を敷く。不満を爆発させる薩摩の青年たち。彼らを見捨てることができず、半次郎は西郷を担ぎ出して反政府の旗を掲げる。薩摩の不利は明らかだったが、村田新八(坂上忍)、篠原国幹(永澤俊矢)、別府晋介(津田寛治)など、ともに下野した仲間たちも加わってくる。戦いは無謀だと参加を拒んだ弥一郎も、最後は半次郎の説得に応じて参加。50年ぶりの雪が桜島を覆った日、半次郎は弥一郎とともに、一万三千の薩摩軍を率いて東上する……。




12-42. フレフレ少女

監督 渡辺謙作
出演 新垣結衣永山絢斗柄本時生斉藤嘉樹染谷将太
2008年 (松竹) 114分

解説
新垣結衣が 「恋空」 以来の主演を務める青春ドラマ。ひょんなことから応援団長となってしまった女子高生が、学ランとハチマキの硬派な姿で笑いと涙の奮闘を繰り広げる!

ストーリー
現実よりも小説の中の恋に夢中な文学少女、百山桃子(新垣結衣)は櫻木高校の2年生。ある日の下校中、暴投が直撃したことがきっかけで野球部のエース・大嶋に一目惚れしてしまう。だが、大嶋は学内のヒーロー。ライバルの数に怖気づく桃子の耳に、唯一の応援団員・龍太郎(永山絢斗)の絶叫が届く。“我々は、どんな困難にも諦めず立ち向かわなければならない!”。桃子はその天の声に従い、大嶋への想いを貫くことを決意する。大嶋を見守るため、廃部寸前の応援団に入部した桃子。部の維持には最低5人が必要と聞いて、団員探しに奔走する。集まったのは、金髪でパンク好きの元吹奏楽部員・譲二(柄本時生)、音痴な元合唱部員・晃(染谷将太)、軟派な元ウェイトリフティング部員・泰平(斉藤嘉樹)。そして、桃子は満場一致で団長に任命される。強豪・不知火学園との試合当日。意気込む桃子の思いとは反対に、散々な応援で好投する大嶋の足を引っ張ってしまう。惨敗にふさぎこむ桃子と龍太郎。そんな二人に、大嶋が不知火学園へ転校するというニュースが追い討ちをかける。すっかりやる気をなくした桃子たちの前に、OBの柳原源蔵(内藤剛志)が現れ、応援団伝統の合宿に連れ出す。軽い気持ちで参加したものの、想像を超えた猛特訓に音をあげる団員たち。だが、次第に彼らは柳原たちの想いを受け止めてゆく。そして迎えた合宿最終日。桃子たちは一致団結して、大団旗を掲げて険しい山道を練り歩く“団旗行軍(だんきこうぐん)”を成し遂げ、団員たちの中で何かが変わる。学校に戻った桃子は、学ランに身を包み、応援の精神を校内に広めようとするが、生徒たちの対応は冷ややか。“想いが通じれば奇跡は起きる”という決意のもと、毅然とふるまう桃子。そして、遂に甲子園予選が始まる。果たして、桃子率いる“へなちょこ応援団”は奇跡を起こすことができるのか?そして、桃子の恋の行方は……?




12-43. ゴジラ(1954)

監督 本多猪四郎
出演 志村喬河内桃子宝田明平田昭彦堺左千夫
1954年 (東宝) 97分

解説
放射能を扱った空想科学映画。脚色は 「飛びだした日曜日」 の村田武雄が監督と共同で当り、 「さらばラバウル」 の本多猪四郎が監督、 「恋愛特急」 の玉井正夫が撮影する。主なる出演者は 「母の初恋」 の志村喬、 「水着の花嫁」 の河内桃子と宝田明、 「宮本武蔵」 の平田昭彦らである。

ストーリー
太平洋の北緯二十四度、東経百四十一度の地点で、次々と船舶が原因不明の沈没をした。新聞記者萩原は遭難地点に近い大戸島へヘリコプターで飛んだ。島では奇蹟的に一人だけ生残った政治が、海から出た巨大な怪物に火を吐きかけられて沈んだというが、誰一人信じない。只一人の老漁夫は昔からの云い伝えを信じ、近頃の不漁もその怪物が魚類を食い荒すせいだという。海中に食物がなくなれば、怪物は陸へ上って家畜や人間まで食べると伝えられている。萩原は信じなかったが、暴風雨の夜、果して怪物は島を襲って人家を破壊し、政治と母も一瞬に踏み潰された。国会は大戸島の被害と原因を確かめる調査団を派遣した。古生物学者山根博士を先頭に、その娘で助手の恵美子、彼女の恋人サルベージ会社の尾形、原子物理学の田畑博士に萩原と政治の弟新吉も加った。そして調査団は伝説の怪物が、悠々と巨大な姿を海中に没するのを見た。帰国した山根博士は二百万年前の海棲爬虫類から陸上獣類に進化する過程の生物ゴジラが、海底の洞窟にひそんで現代まで生存していたが、度々の水爆実験に生活環境を破壊されて移動し、而も水爆の放射能を蓄積して火を吐くのだと説明した。フリゲート艦が出動して爆雷を投下したが何の効果もなく、ゴジラは復讐するかの如く海上遥かに浮上り、東京に向って進んだ。直ちに対策本部が設けられた。山根博士の弟子芹沢は、恵美子を恋していたが戦争で傷けられて醜い顔になったのを恥じ、実験室にこもって研究を続けていた。ゴジラは東京に上陸し、品川駅を押し倒し、列車を引きちぎり、鉄橋を壊して海中へ去った。本部では海岸に五万ボルトの鉄条網をはり、都民は疎開を始めた。ゴジラは再び上陸し、鉄条網を寸断し戦車や重砲の攻撃を物ともせず、議事堂やテレビ塔を破壊し、一夜にして東京は惨澹たる街となった。芹沢の秘密の研究を知る恵美子は、それを尾形に打明けた。水中の酸素を一瞬に破壊して生物を窒息させる恐るべき発明である。現代の人間を信じない芹沢はこれが殺人武器に用いられることを恐れて資料を火に投じ、ただ一個の機械を持って自ら海中に身を没した。船上の人々は目のあたりゴジラの断末魔を見た。そして秘かな恋をすてて死んだ芹沢の為に黙祷を捧げた。




12-44. ハルフウェイ

監督 北川悦吏子
出演 北乃きい岡田将生溝端淳平仲里依紗成宮寛貴
2008年 (シネカノン) 85分

解説
「幸福な食卓」 などの若手注目株、北乃きい主演による青春ラブ・ストーリー。卒業前に想いが通じ合った高校生の男女が織りなす恋の行方を、切なくも清々しく映し出す。

ストーリー
北海道小樽市。高校3年生のヒロ(北乃きい)は、ある日片想いだったシュウ(岡田将生)から、“付き合ってほしい”と告白される。思いがけない幸せを素直に喜ぶヒロだったが、2人の前には、もうすぐ“卒業”という現実が。そしてシュウには、進路について彼女に言えないでいることがあった。地元北海道の大学に進学するヒロに対して、自分は東京の早稲田大学に行くつもりでいたのだ。“何で言わなかったの? 東京に行くのにあたしにコクってどういうつもり?”怒りを露にしたヒロは、自分の気持ちを伝えようとするシュウからの電話にもメールにも答えなくなってしまう。ヒロの気持ちを察し、東京行きをやめようと担任の高梨先生(大沢たかお)に相談するシュウ。高柳からは進学するよう諭されるが、自分の気持ちを抑える事はできなかった。東京行きをやめると聞いて、はしゃぐヒロ。だが、その気持ちは少しずつ変化を見せ始める。東京に行ってほしいような、行ってほしくないような……。さんざん悩んだ挙句、ヒロは決断する。シュウを連れて職員室に向かった彼女は、担任の先生に向かって“早稲田に行かせてあげてほしい”と、頭を下げる。その行動に戸惑いながらも、シュウは自分の本心に気付く。卒業したら離れることが決まった2人。放課後のグラウンドで大声を上げて泣くヒロ。シュウは、そんな彼女をただ抱きしめる……。




12-45. ぱいかじ南海作戦

監督 細川徹
出演 阿部サダヲ永山絢斗貫地谷しほり佐々木希ピエール瀧
2012年 (キングレコード=ティ・ジョイ) 115分

解説
“現代版ロビンソン・クルーソー”と評された椎名誠の同名小説を映画化したサバイバル・コメディ。気分転換で訪れた西表島で全財産を奪われるも、前向きかつのほほんと生きる主人公を阿部サダヲが好演。そんな彼と生活を友にする若者役に永山絢斗、貫地谷しほり、佐々木希が扮する。監督は本作が初長編作となる新鋭、細川徹。

ストーリー
勤めていた会社からリストラされ妻とも離婚した佐々木(阿部サダヲ)。妻と職を同時に失い失意にあった佐々木は、気分一新するために南の最果ての島へ赴く。島の浜辺で4人のキャンプ生活者に会い、彼らの生活を見て酒を酌み交わすうちに、おおらかな島の雰囲気に魅せられていき、4人と打ち解ける。翌日、酔い潰れた佐々木が目を覚ますと、自分の持ち物とともに4人が消えていた。なけなしの財産をも失った佐々木が唖然としているところに、都会生活から抜け出してきたオッコチという若者(永山絢斗)やアパ(貫地谷しほり)とキミ(佐々木希)という関西から来た女子2人組と巡り合い、一緒に浜辺で生活を送ることになる。奇妙な組み合わせながらも、次第に絆を深める4人。ある日、ふとしたことで4人組ホームレスの噂を耳にした佐々木は、財産を取り戻すべく『ぱいかじ南海作戦』と銘打ったリベンジに乗り出す……。





12-46. ボックス!

監督 李闘士男
出演 市原隼人高良健吾谷村美月清水美沙宝生舞
2010年 (東宝) 126分

解説
ボクシングを題材にした青春小説を実写映画化。若き天才ボクサーの主人公を 「猿ロック」 の市原隼人が、努力家のボクサーを 「ソラニン」 などで注目度上昇中の高良健吾が演じる。

ストーリー
鏑矢義平こと“カブ”(市原隼人)は、大阪の高校の体育科に通うボクシング部のエースにしてやんちゃな天才ボクサー。カブの幼なじみで気弱な優等生・木樽優紀こと“ユウキ”(高良健吾)も、彼の強さに憧れてボクシングを始める。怠け者だが天性のボクシングセンスを持つカブは試合でもいきなり連戦連勝。誰の言うことも聞かないマイペースな彼だったが、先輩のために体を張る仲間思いな一面も持ち合わせていた。そんなカブのサポートもあり、ユウキはただ強くなりたい一心と持ち前の生真面目さで日々鍛錬を積み重ねていく。二人の成長を見守るのは、カブに恋心を抱き、押しかけマネージャーとなった丸野(谷村美月)、不本意ながらも新たにボクシング部の顧問となった英語教師の耀子(香椎由宇)、そして秘められた過去を持つボクシング部顧問の沢木(筧利夫)だった。沢木の指導もあって、ユウキは高校ボクシング界で無敵を誇るカブに一歩一歩近づいていく。やがて、ライバルとして二人が拳をぶつけ合う日が訪れる。熱戦の末、勝利を手にしたのは意外にもユウキであった。しかし、カブは悔しさを噛み締めながらも、ユウキの成長を心から祝福する。栄光と挫折の中に見出した真実の友情は、二人を新たなるステージへと向かわせることとなった。超高校級の無敗のモンスターと恐れられる稲村を倒すため、カブとユウキは更に過酷な特訓を続けていく……。




12-47. カラスの親指

監督 伊藤匡史
出演 阿部寛村上ショージ石原さとみ能年玲奈小柳友
2012年 (20世紀フォックス映画=ファントム・フィルム) 160分

解説
直木賞作家・道尾秀介の小説を阿部寛主演で映画化した痛快作。コンビを組むサギ師の元に3人の男女が転がり込んだ事から始まる奇妙な同居生活と、彼らが挑む一世一代の大勝負の行方が笑いとともにスリリングに展開する。阿部扮するタケさんとコンビを組むサギ師をお笑い芸人の村上ショージが演じ、独特の間で笑わせる。

ストーリー
悲しい過去を背負ったままサギ師になったタケ(阿部寛)と、成り行きでコンビを組むことになった新米サギ師のテツ(村上ショージ)。そんな2人の元に、ある日ひょんなことから河合やひろ(石原さとみ)と河合まひろ(能年玲奈)の美人姉妹、それにノッポの石屋貫太郎(小柳友)を加えた3人の若者が転がり込んでくる。彼らもまた、不幸な生い立ちのもと、ギリギリのところで生きてきたという。これをきっかけに始まる他人同士のちょっと奇妙な共同生活。やがて、タケが過去に起こしたある事件が、彼らを一世一代の大勝負へ導くことになるが、この時は誰一人、それを知る由もなかった……。社会のどん底で生きてきた5人の一発逆転劇。そして驚愕の真実が明かされる……。




12-48. 新サラリーマン専科

監督 朝原雄三
出演 三宅祐司森繁久彌岸本加世子松下由樹中村梅雀
1997年 (松竹) 107分

解説
平凡なサラリーマンの一家に巻き起こる騒動を描いたコメディ・シリーズの第3弾。監督は前2作も手掛けた朝原雄三。東海林さだおの人気漫画のキャラクターをもとに、前作でもチームを組んだ山田洋次、朝原雄三、鈴木敏夫が共同脚色をつとめた。撮影にはやはり前作同様、近森眞史があたっている。主演も前作と同じく三宅裕司がつとめるが、その妻の役は前作までの田中好子から、 「Morocco 横浜愚連隊物語」 の岸本加世子にバトンタッチされた。また、 「GOING WEST 西へ…」 の森繁久彌がゲスト出演している。

ストーリー
日向電機に勤める平凡なサラリーマン・石橋万作の家に、妻・たか子の父・寺内庄助が転がり込んできた。どうやら、老人ホームへの入居を勧める兄夫婦の家を飛び出してきてしまったらしい。万作はそんな庄助を快く迎えてやるが、庄助は孫たちにチンチロリンを教えたり、アダルトビデオを持ち込んだり、食事に文句をつけたりと、何かとトラブルを巻き起こした。一方、万作は会社でもトラブルに巻き込まれてしまう。総務部課長に昇進した彼は、中元や歳暮のみならず、備品の購入に到るまで、会社が全てを仲丸屋デパートと単独取引していることに疑問を抱いた。そして、その仲丸屋の接待に上司の冬木部長たちと出席した万作は、帰りのお土産袋の中に200万円分の商品券を発見する。そのことがきっかけで、冬木部長が長期に渡って賄賂を受け取っていたことを知った万作は、クビを覚悟で、直訴状とともにその商品券を社長室の前の目安箱に投函した。その頃、家では庄助が行方をくらまして大騒ぎが起きる。実は、庄助は福井県の三方五湖を旅していた。そこで、新宿でソープ嬢をしているルカという女性に出会った庄助は、居心地の悪い実家へ真っ直ぐ帰れずにいた彼女を優しく説得してやり、実家に帰る決心をさせてやる。翌日、庄助は東京へ戻り、贈賄事件も万作の勇気ある告発が社長に高く評価され、冬木部長が免職処分となったことで一件落着した。それから後、平和を取り戻した万作一家は休みを利用して、老人ホームに入居している庄助を訪ねる。