18-1. 用心棒 (Yojimbo)  

監督 黒澤明
出演 三船敏郎東野英治郎河津清三郎山田五十鈴太刀川寛
1961年 (東宝) 110分

解説
「筑豊のこどもたち」 の菊島隆三と、黒澤明のオリジナル・シナリオを、 「隠し砦の三悪人」 の黒澤明が監督した娯楽時代劇。撮影は 「婚期」 の宮川一夫。パースペクタ立体音響。

ストーリー
馬目の宿は縄張りの跡目相続をめぐって一つの宿湯に二人の親分が対立、互いに用心棒、兇状持ちをかき集めてにらみ合っていた。そこへ桑畑三十郎という得体の知れない浪人者がふらりとやって来る。一方の親分馬目の清兵衛のところにやって来た三十郎は用心棒に俺を買わないかと持ちかけて、もう一方の親分丑寅の子分3人をあっという間に斬り捨ててしまった。清兵衛は五十両で三十郎を傭った。しかし女房のおりんは強つくばりで、半金だけ渡して後で三十郎を殺せと清兵衛をけしかけた。これを知った三十郎はあっさり清兵衛の用心棒を断わり、居酒屋の権爺の店に居据った。両方から、高い値で傭いにくるのを待つつもりだ。名主の多左衛門は清兵衛に肩入れ、造酒屋の徳右衛門は丑寅について次の名主を狙っていた。そんなところへ、丑寅の弟卯之助が帰って来た。短銃を持っており腕も相当だった。三十郎は丑寅方につくことになった。丑寅の金の供給源である徳右衛門は、百姓小平の女房ぬいを妾にしていた。小平から博奕の借金のかたにして取りあげてしまったのだ。小平と息子の金助の情ない様子を知って、三十郎は亥之吉をだまして親子三人を逃がしてやるのだった。権爺はそんな三十郎をだんだん好きになっていった。しかしぬいが感謝のために三十郎に出した手紙を卯之助にみつけられたため、三十郎は捕えられて土蔵に放りこまれた。ぬいの逃げ場所をはかせようと地獄の責苦がつづいた。ぬいの居所を知っているので殺されずにすんでいるのだ。三十郎はかんぬきをだまして墓地に逃れた。丑寅は卯之助の知恵で清兵衛の家に火をかけた。清兵衛一味は全部殺された。喧嘩は丑寅の勝利に終った。そこへ三十郎がふらりとやって来た。卯之助が銃を構えるより速く三十郎の手から出刃が飛んだ。そして丑寅達の間を三十郎が駆け抜けると、丑寅達は倒れていた。「おい親爺、これでこの宿場も静かになるぜ」と言って三十郎は去って行った。





18-2. 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生

監督 八鍬新之介
出演 水田わさび大原めぐみかかずゆみ木村昴関智一
2016年 (東宝) 104分

解説
子供からお年寄りまで幅広い層から支持される国民的人気アニメ 「ドラえもん」 の劇場版第36作。89年公開の第11作 「のび太の日本誕生」 をリメイクし、家出をして7万年前の日本へやってきたのび太たちの冒険と、謎の少年ククルとの出会いを描く。小島よしおと、プロレスラーの棚橋弘至、真壁刀義らがゲスト声優を務める。

ストーリー
家でも学校でも叱られてばかりののび太(声:大原めぐみ)は、家出をしようと思い立つ。ところが、どこに行っても持ち主がいない土地はない。さらに、ドラえもん(声:水田わさび)、しずか(声:かかずゆみ)、ジャイアン(声:木村昴)、スネ夫(声:関智一)もそれぞれの理由で家出したものの、みんな行くところがなく、途方に暮れてしまう。それならいっそのこと、まだ誰も住んでいない太古の日本へ行こうと、史上最大の家出に出発することに。のび太たち5人がタイムマシンで向かったのは、誰もいない7万年前の日本。原始時代の日本で自分たちだけのパラダイスを作り、たっぷり遊んだのび太たちは、一旦、帰宅することにしたが、なぜか現代で原始人のククルと出会う。どうやら時空乱流に巻き込まれて現代に来てしまったらしい。しかも、ククルの家族がいるヒカリ族は、精霊王ギガゾンビとクラヤミ族に襲われたというのだ。ククルとともに原始時代に戻った5人は、ヒカリ族を救うため立ち上がる……。




18-3. わたしのハワイの歩きかた 

監督 前田弘二
出演 榮倉奈々高梨臨瀬戸康史加瀬亮宇野祥平
2014年 (東映) 119分

解説
仕事でのストレスを抱えたOLが初めてやってきた常夏の島、ハワイで個性的な人々と出会い、大切なものを見つけていく姿を描く、榮倉奈々主演のラブ・コメディ。ヒロインがハワイで出会う人々を高梨臨、瀬戸康史ら注目の若手俳優が演じる。監督は国内外で高い評価を受けている 「婚前特急」 の前田弘二。

ストーリー
出版社で編集をしている26歳の小山田みのり(榮倉奈々)は日々仕事に追われ、人間関係にも疲れていた。ある日友人の愛子からハワイで挙式することを告げられ、その二次会のセッティングを頼まれる。面倒くささを感じつつも、仕事で特集を組んでその取材という名目でハワイで遊び倒そうと考える。ハワイの開放的な空気の中派手にパーティに行ったり飲んだりと満喫するが、どうも苛立ちを消すことができない。そんな中みのりは、ハワイで働きながら玉の輿を狙いパーティに出続ける茜(高梨臨)、事業を立ち上げては失敗を繰り返す勉(瀬戸康史)、自由気ままに生きる一見浮浪者みたいな知哉(加瀬亮)と知り合う。彼らと一緒に飲んで騒いでいたはずが、いつの間にか茜は本物の愛に目覚め、勉は新たな道を歩きはじめ、知哉は自分の人生と向かい合っていた。仕事からも恋からも逃げていたみのりは、ふと立ち止まる……。





18-4. 弁天小僧

監督 伊藤大輔
出演 市川雷蔵勝新太郎青山京子阿井美千子近藤美恵子
1958年 (大映) 85分

解説
「地獄花」 以来一年四カ月ぶりに伊藤大輔が監督した娯楽時代劇。脚本は 「日蓮と蒙古大襲来」 の共同執筆者・八尋不二、撮影は 「炎上」 の宮川一夫。 「濡れ髪剣法」 の市川雷蔵を筆頭に、 「赤胴鈴之助 新月塔の妖鬼」 の黒川弥太郎、青山京子・勝新太郎・近藤美恵子などが出演している。

ストーリー
雲州公が小娘に手をつけようとして、噛みつかれ、座敷牢に押しこめているという噂があった。これをタネにユスろうと、悪旗本王手飛車連の鯉沼伊織・三池要人・横地帯刀らは、上野輪王寺の宮の御使僧に化けて雲州邸に乗りこんだ。が、一足先に、輪王寺の宮の使いと称する振袖姿の寺小姓がその娘お半を金まで添えさせ奪って行っていた。寺小姓はユスリ・タカリが専門の、町のやくざ弁天小僧菊之助である。仲間には日本左衛門・南郷力丸・忠信利平・赤星十三がいる。弁天小僧は情婦お吉の家にお半を連れ帰って、お半を売り飛ばすつもりでいたが、その清純さにうたれ、金を持たせて、病気の父のいる長屋に送り戻してやる。お半が父に叱られ金を返しにお吉の家へ来たとき、御用提灯が迫り、弁天小僧はお半を連れて逃げた。今は互いに別れがたい気持だった。振切って別れた弁天小僧は百本杭で一人の釣客に会う。その男こそ、いれずみ奉行と噂の高い遠山左衛門尉だった。−−雲州公ユスリの一件が老中に聞こえ、王手飛車連の首が危くなった。老中筆頭松平は甥の伊織に隠居届を出し、息子に嫁を貰えとすすめる。そこで、伊織は、舶来物の羅紗地をタネに、呉服屋浜松屋幸兵衛をユスリ、身代そっくりを持参金に娘お鈴を嫁によこせと吹っかける。祝言の噂を開き、白浪五人男は江戸を離れる最後の大仕事に、この浜松屋に目をつけた。弁天小僧が文金高島田で女装し、万引をよそおい、インネンをつける。一人の武士が女装を見破ると、弁天小僧は双肌ぬいで大あぐらをかき、タンカをきって引きあげた。浜松屋に身をおいていたお半が涙で見送る。さっきの武士は日本左衛門だった。奥に招じ入れられると、忍びこんでいた赤星・忠信と共に花嫁の持参金をよこせと居直った。幸兵衛はいう、「どうでもなされ。これも二十一年前赤子の長男を捨てたむくいか」。話をきいて日本左衛門以下は悪旗本から、浜松屋を護ってやることにした。弁天小僧は実父が誰かを悟った。祝言の夜、鯉沼邸へお鈴の身代りにお吉が現れる。弁天と鯉沼が争いかけると、遠山奉行が現れ、弁天を逃す。日本左衛門の家に捕方が迫っていた。船宿網十に隠れるお半とお鈴を要人と帯刀が襲っていた。弁天は捕方を逃れて屋根を飛びながらお半を求めた。やっとたどりつき、お半と実父と妹にひと目会う。浜松屋も弁天を我が子と知った。が、弁天はそれを否定し、そのまま捕方に捕まる。−−息子を、父と妹と恋人が涙ながらに見送ったのである。




18-5. 復活の日 (Virus)  

監督 深作欣二
出演 草刈正雄夏八木勲多岐川裕美永島敏行丘みつ子
1980年 (東宝) 156分

解説
恐怖の細菌兵器のために人類はほとんど絶滅、南極に残されたわずかな人々の生きのびる姿を描く。小松左京の同名の小説の映画化で、脚本は 「日本の黒幕」 の高田宏治とグレゴリー・ナップ、 「赤穂城断絶」 の深作欣二の共同執筆、監督も同作の深作欣二、撮影は 「金田一耕助の冒険」 の木村大作がそれぞれ担当。

ストーリー
一九八×年冬、東ドイツの陸軍細菌研究所から新種のウイルスM?88が盗まれた。この細菌は摂氏マイナス10度で自己増殖をはじめ、零度を越えると猛烈な毒性を発揮する。M?88を奪ったスパイは小型飛行機でアルプスを越えようとするが、吹雪の中で墜落、恐るべき細菌が飛散してしまう。春が来ると、奇妙な事件が頻発。ソ連では羊が集団死、中国ではアヒルの死体が川を漂った。イタリアでは乳幼児が次々と意識不明になり、医師は「イタリア風邪」と名付けた。初夏になると南極昭和基地にも全世界に猛威をふるうイタリア風邪のニュースが伝わってきた。越冬隊員の吉住周三は東京に残してきた恋人、浅見則子の身を案じていた。その頃、東京では次々と死んでいく人々で路上は溢れ、混乱の極に達していた。ホワイトハウスでは連日閣議が開かれていた。そして、バークレイ上院議員はイタリア風邪の原因は、ガーランド将軍が大統領にも内密に開発した細菌兵器M?88であることをつきとめた。そしてM?88は何者かによって東ドイツに渡ったという。リチャードソン大統領は南極基地に「一致協力して生きる努力を傾けていただきたい」とのメッセージを残して息絶えた。夏の終り、南極に残る十一ヵ国八六三人を除いて世界は死滅した。八人の女性を含む残された人々の生活が始まった。そこへ、地震学者の吉住が人類滅亡の第二の危機が迫っていることを伝える。地穀変動調査でアメリカを垂直型地震が襲うことを探知、その衝撃波は、ガーランド将軍が死ぬ前にスイッチを入れた、ホワイトハウス地下にある対ソ連ミサイル攻撃の自動報復システムに作動すると言う。ミサイルが発射されれば、ソ連の報復システムも作動し、そのうちの一つが南極の米軍基地に降ることになるのだ。地震が起きる前に誰かが行かなければ。ホワイトハウスに詳しいカーター少佐は自分がいかねばならないことを知っていた。そして、吉住もカーターの助手として志願する。ノルウエーの女性隊員マリトは密かに吉住を慕っていたが、人類の種を絶やさないために、多くの男性との性交渉を義務づけられていた彼女に、吉住を独占する権利はなかった。吉住が死の旅へ出発する前夜マリトの愛は燃え上がった。「君が生き続けるために役立てるなら……」力をこめて抱き合う二人を染めて、南極の夜が明けようとしていた。





18-6. 死の棘

監督 小栗康平
出演 松坂慶子岸部一徳松村武典近森有莉木内みどり
1990年 (松竹)

解説
別離の危機に瀕した夫婦の絆と家族の再生を描いた人間ドラマ。島尾敏雄原作の同名小説の映画化で、脚本・監督は 「伽耶子のために」 の小栗康平、撮影は 「帝都大戦」 の安藤庄平がそれぞれ担当。

ストーリー
ミホとトシオは結婚後10年の夫婦。第二次大戦末期の一九四四年、二人は奄美大島・加計呂麻島で出会った。トシオは海軍震洋特別攻撃隊の隊長として駐屯し、島の娘ミホと恋におちた。死を予告されている青年と出撃の時には自決して共に死のうと決意していた娘との、それは神話のような恋だった。しかし、発動命令がおりたまま敗戦を迎え、死への出発は訪れなかったのだ。そして現在、二人の子供の両親となったミホとトシオの間に破綻がくる。トシオの浮気が発覚したのだった。ミホは次第に精神の激しい発作に見舞われる。トシオはその狂態の中に、かつてのあの死の危機を垣間見る。それは、あらゆる意味での人間の危機であった。トシオはすべてを投げ出してミホに奉仕する。心を病むミホと二人の子を抱え、ある時は居を転じ、ある時は故郷の田舎に帰ろうと試み、様々な回復の手段を講じるトシオだったが、事態は好転せず、さらに浮気の相手・邦子の出現によって、心の病がくっきりし始めるのだった。トシオは二人の子をミホの故郷である南の島におくりミホと共に精神科の病院に入り、付き添って共に同じ日々を送る。社会と隔絶した病院を住み家とすることで、やがて二人にゆるやかな蘇りが訪れるのだった。




18-7. 日本一のホラ吹き男

監督 古沢憲吾
出演 植木等飯田蝶子浜美枝曽我廼家明蝶山茶花究
1964年 (東宝) 92分

解説
社長紳士録」 の笠原良三のオリジナル・シナリオを 「続若い季節」 の古沢憲吾が監督したサラリーマン喜劇。撮影は 「お姐ちゃん三代記」 の飯村正。

ストーリー
東京オリンピックを目指して、日本期待の三段跳びのホープ初等は、今日も猛トレーニングに励んでいた。がアキレス腱切断の重傷を負い入院中、祖先の伝記を手に入れた。“大ボラ吹けど、必ず実現して、浪人から一万石の大名に三段出世……”という伝記に勇気づけられた、初等は日本一の大会社「増益電機」に入社を決心した。入試試験で大ボラを吹いて、更にミス増益電機の可那子にチョッカイを出すずうずうしさだ。就職試験には失敗したが、増田社長にあの手この手でご機嫌伺いすると正社員に坐った。営業部に配置された初等は、「こんな仕事は一月で卒業して係長に昇進」と大ラッパを吹くと、睡眠時間三時間で大奮闘、予言通り、係長にスピード出世。強心臓を買われて、宣伝課づけとなった初等は、「三カ月で課長になって見せると」宣言すると、研究所技師の井川の冷暖電球うりこみに、自からテレビのコマーシャルを買って出る次第。片想いの可那子にも“初等を信じなさい”と強引にプロポーズ。増益電機では、彼の大ボラに大混乱となったが、信用第一と冷暖電球の量産にふみきった。がこれが大当りで、初等は一躍秘書課長に抜擢された。可那子もすっかり、彼の見事さにのまれて“結婚してよ”といい出す始末。だが初等は“あと二カ月で部長になるから”とまたも吹聴。ナイロニア国から発電機を買うという話を聞くと、商売仇の丸々電機西条社長のメカケをだまし、売り込みに成功、見事部長に昇進した。そして可那子と高砂屋とついに目的を達成したが、こればかりは予想に反して尻に敷かれて大ボヤキの毎日だ。




18-8. わが青春に悔なし 

監督 黒澤明
出演 大河内傳次郎三好栄子原節子藤田進高堂国典
1946年 (東宝) 110分

解説
「明日を創る人々」 に次ぐ黒澤明演出作品。GHQの奨励した民主主義映画の一つ。滝川事件とゾルゲ事件をモデルに、ファシズムの時代の中で自らの信念に基づいて生きる女性の姿を描いた作品で、 「自我の確立」 をテーマに据えた。第20回キネマ旬報ベスト・テン第2位。

ストーリー
目のさめるような若葉の京都吉田山野毛、糸川達大学生七人組とその師八木原教授とその奥さん、そして一人娘の幸枝などにとって今日は楽しいピクニックであったのだが、折からの陸軍演習の機銃音にその自由の夢も奪い去られた。時、昭和八年、満州事変を契機に軍閥の帝國主義的侵略の野望強行のため、この自由学園京都帝国大学も、ファッショの強圧に敗れなければならなかった。八木原教授は象牙の塔を追放され、常識家の糸川は残留、野毛は大学を去って左翼運動へいつしか踏み込んでいた。幸枝は、秀才型で社交家の糸川より、熱烈な行動派の野毛に対して何かギラギラ眼の眩むような生活があるような気がしていたのであったが、刑を終えて出獄した野毛の転向ぶりには落胆せざるを得ない彼女だった。昭和十六年、学園を追われた八木原は今では民間無料法律事務所を開設していた。幸枝は東京に自活の道を求めて上京したが、計らずも今は検事となった糸川に逢い、野毛の出京していることを知らされた。野毛は中国研究に名を借りて反戦運動に没頭していた。自己の信念に悔いなしと改めて野毛に面会した幸枝はお互いに信じ合う仲となり楽しかるべき同棲も束の間、野毛は国際スパイの汚名のもと検挙された。幸枝も毒いちごと称する特高警察のあらゆる屈辱に堪え愛人野毛のために戦った。ある日、上京した八木原は野毛のために弁護人に立つことを請願したが野毛事件の担任検事糸川の口より野毛の獄死したことをもたらされ愕然とする。野毛は未決にあるうちスパイの汚名のもとに病死したのだ。この嘆きを包みかくして幸枝は良人亡きあと田舎で百姓をしている野毛の両親の下に走った。そこで目撃したものは何か?「スパイの家」と村民の罵倒と、迫害のなかに蹶つ気力もなく呻吟している野毛両親一家であった。それでも彼女は戦った。雨の日も大風の日も老母と共に野良に出て馴れぬ鍬を握った。が、無法な村の人は彼女等が折角植え終わった苗をむしり撤いた。それでも彼女は全身を只一つ野毛に対する誠のため打ち続けた。そして彼女は野毛の墓参りに尋ねに来た糸川を追い返す強さの女となっていた。そして、自由甦る日、昭和二十年の終戦となった。八木原教授は京大拍手のうちに、再び自由の学園に復帰した。この喜びに京都へ帰って来た幸枝は、父に、母に理解を求め地に足のついた野毛の農村へ未来を求めて再び去って行く。思い出の吉田山を通り過ぎた。野毛の真価も一般に認められて来た。現在、幸枝は数々の思い出を顧みつ我が青春に悔いなしと叫びたい気持ちでいつまでも思い出の吉田山に佇んでいた。





18-9. そして父になる 

監督 是枝裕和
出演 福山雅治尾野真千子真木よう子リリー・フランキー二宮慶多
2013年 (ギャガ) 121分

解説
6年間愛情を注ぎ、育ててきたわが子が、もし他人の子だったら? 突然、過酷な現実にさらされた2組の夫婦の姿を映し出すヒューマンドラマ。 「誰も知らない」 の是枝裕和監督が、福山雅治を主演に迎えた深遠なドラマは、第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されるや、審査員賞に輝いた。

ストーリー
学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員・良多(福山雅治)。自分は成功者だと思っていた彼のもとに、病院から連絡が入る。それは、良多とみどり(尾野真千子)との間の子が取り違えられていたというものだった。6年間愛情を注いできた息子が他人の子だったと知り、愕然とする良多とみどり。取り違えられた先の雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)ら一家と会うようになる。血のつながりか、愛情をかけ一緒に過ごしてきた時間か。良多らの心は揺らぐ……。




j18-10. 眠狂四郎女妖剣

監督 池広一夫
出演 市川雷蔵藤村志保久保菜穂子根岸明美春川ますみ
1964年 (大映) 81分

解説
柴田錬三郎の原作を 「眠狂四郎円月斬り」 の星川清司が脚色 「座頭市あばれ凧」 の池広一夫が監督した眠狂四郎シリーズ四作目。撮影もコンビの竹村康和。

ストーリー
狂四郎はある朝浜町河岸に横たえられた、全裸の美女二人の死体を見た。鳥蔵と名乗る男はそれが、大奥の中臈綾路と、お半下女中の美乃であると狂四郎に告げた。だがその烏蔵は隠れ切支丹の科で役人に捕えられた。この頃江戸では、豪商備前屋が、金力を武器に、老中水野忠成を抱き込み、大奥の女達に秘かに阿片を送っていた。浜町河岸の死体は、残忍な菊姫に麻薬責めにされ殺されたのだった。そして菊姫は鳥蔵の妹小鈴に、兄を救う手段と称して、牢内のバテレン、ヨハネス・セルディニイを誘惑させた。しかし、約束は守られず、鳥蔵は殺され、小鈴は自殺して果てた。狂四郎は、鳥蔵が死ぬ間際に、浜松へびるぜん志摩という狂四郎と血のつながる女がいると聞かされ、浜松へと旅立った。途中、狂四郎は、備前屋の刺客や、情慾のとりこになった巫女に悩まされたが、愛刀無相正宗がその難を救った。大井川で足どめされた狂四郎は、妖艶な鳥追い女と旅篭に入った。女と酒を飲んだ狂四郎は、目がかすむのを知り愕然とした。女は、狂四郎の目をつぶすために使わされたのだった。狂四郎は女をそそのかした刺客を撃退する。再び浜松に向った狂四郎は、隠れ切支丹に案内されて舟小屋で、びるぜん志摩に会った。狂四郎は自分との関係を彼女に問うが答えない。その舟小屋に集まってきた隠れ切支丹たちを役人が捕縛する。その騒ぎを見て舟小屋の外に逃げ出した狂四郎たちは、菊姫の配下武部光源に襲われ、志摩は海上につれ去られた。武部を斬り倒し、小舟で備前屋の密貿易船にたどり着いた狂四郎は備前屋とその配下を斬り、宿敵陳孫との念願の一騎打ちとなった。死闘の末陳孫は海に飛び込み退散する。舟倉でびるぜん志摩に会った狂四郎は、志摩が備前屋のまわし者で切支丹になりすましては、信徒を売っていたこと、狂四郎を船にひき寄せるため配下にさらわれたことを知り、責めた。妖艶な表情に変った尼僧は、色と金で狂四郎を誘った。そして狂四郎の出生の秘密について語る。転びバテレンに生け贄として犯された武家の娘から産まれたのが狂四郎だと言うのだ。母は自害し、遺された狂四郎の乳母となったのが志摩の母であった。さらに色で誘う志摩を狂四郎の剣は一刀のもとに斬った。何故と問う志摩に狂四郎は「平気で斬れる。無頼の徒だからな」と言い残し立ち去るのだった。




j18-11. 大奥 (2006)

監督 林徹
出演 仲間由紀恵西島秀俊井川遥杉田かおる麻生祐未
2006年 (東映) 125分

解説
3度のテレビシリーズが放映された大ヒット時代劇を 「TRICK」 の仲間由紀恵主演で映画化。大奥史上最大のスキャンダル“絵島生島事件”を元に愛と憎しみのドラマが展開する。

ストーリー
七代将軍・徳川家継の御代は、家綱が幼少である為に権力争いが絶えなかった。大奥総取締りを務めていた絵島(仲間由紀恵)は、争いの渦中で心労の絶えない家継の生母・月光院(井川遥)を支えるべく心を砕いていたが、中でも月光院と家継の後見人・越前守との許されぬ恋は心配の種であった。月光院を疎ましく思っていた天英院は、月光院と越前守とが情を通じているという噂を聞き、二人を失脚させる策を巡らせ始める。天英院は月光院の腹心である絵島を陥れる為、色男と噂高い歌舞伎役者の生島(西島秀俊)を絵島に接近させる。大奥を出て護摩の行に代参する絵島に接近する生島。恩人である月光院を守る為に城の囲いの内を終の棲家と決心していた絵島は、生島に惹かれるものを感じるが固辞する。絵島の心根に演技を超えて心惹かれる生島。天英院の策動を察知し月光院と距離をとる越前守。月光院は越前守に会えない事が心労となり精神衰弱で病の床に伏せる。政略の中で不利を被ることに成りかねないと知った上でなお越前守に恋焦がれる月光院の様子に、絵島は理屈を超えたものを見て心打たれる。放火により炎上する芝居小屋から生島に命がけで救出された絵島は、生島の接近が天英院による罠だと気付きつつも、生島の誘いを受け入れる。火事の混乱の中、2人は罠と知りながら密通する。翌朝、今生の別れをする2人。不義密通の疑いで公儀の縄にかかった絵島は、天英院から、月光院と越前守の内状を詳らかにすれば密通の疑いを反故にすると取引を持ちかけられるが固辞する。一方生島も縄にかかり、絵島との密通を認めろと拷問にかけられるが口を割らない。月光院は越前守に絵島を助けてくれと頼むが、逆に「絵島を取るか、私を取るか」と迫られ、苦渋の内に越前守を取ることを決める。絵島に死罪の沙汰が下る。しかし将軍家継の配慮により減刑され、絵島は信州に流される事に決着し、天英院の企みは失敗に終わった。絵島は生島の死刑に立ち会い、生島が自分のために命を投げ出してくれたのだと悟る。流刑にされる絵島を見送りに来た月光院は、越前と絵島を秤にかけた事を詫びる。絵島は月光院の気持ちが今の自分には分かると言い残し、信州に旅立つのだった。




j18-12. 竹取物語

監督 市川崑
出演 三船敏郎若尾文子沢口靖子石坂浩二中井貴一
1987年 (東宝) 121分

解説
〈かぐや姫〉の誕生から、月の世界に戻るまでをロマンスを織りまぜて描く。古来から伝わる物語の映画化で、脚本は 「国士無双」 の菊島隆三、映画評論家の石上三登志、 「映画女優」 の日高真也、同作の監督も手がけた市川覚の共何執筆。特技監督は 「首都消失」 の中野昭慶、撮影は 「鹿鳴館」 の小林節雄がそれぞれ担当。

ストーリー
八世紀の末。都に近い美しい山里。行商人の宇陀が竹取の家へ行き、女房の田吉女がぼんやりとしているのを目撃する。わずかの金がないばかりにたった二、三日の患いで娘の加耶を亡くしてしまったのだ。夜、閃光が空を走り、何か巨大なものが大音響とともに竹林のある山に落下する。翌日、竹取の造は竹林へ行き、加耶の墓のそばで金属物体を見つけた。墓に向かって光線が走り、物体の中にいた赤ん坊が見るまに加耶そっくりの少女に変身する。だが、その瞳は青かった。小さな水晶球を握って離さない少女を、田吉女は天からの授かりものとして育てようと言い出す。金属物体を宇陀が彫金師のところへ持ち込み、それが混りけのない金であることがわかった。宮中の紫宸殿で朝議が行われ、山里の天変地異が話題になり、大伴の大納言がわが国ではとれない純金が出廻っていることを報告する。加耶が一日で、十七、八の娘になり、竹取の造は山里を離れた場所に豪荘な邸をたてて移り住む。加耶の美しさが近隣の評判になり、かぐや姫と呼ばれるようになった。安倍の右大臣、車持の皇子、大伴の大納言の三人が彼女に求婚する。近くの長老の家の子守りで、盲目の明野に相談し、世に得がたい宝物といわれる蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣、竜の首の玉を持って来た人に嫁ぐという条件を出した。三人はそれぞれ船を仕立てて出発していった。満月の夜、水晶球を通じて加耶が月から来たことがわかった。車持の皇子、安倍の右大臣はいずれも偽物をさし出し、大伴の大納言は竜に襲われてしまう。水晶球から通信が入り、次の満月に月から迎えにくるという。帝は自分の威信にかけ、月からの使者を阻止せよと藤原の大國に命じる。満月の夜、巨大な宇宙船が月から飛来した。兵士の射る矢は何の効果もなかった。加耶は宇宙船のなげる光線の中に入って上昇していく。明野の月が見えるようになり、大伴の大納言は「かぐや姫、きっとまた会える」とつぶやくのだった。




18-13. 汚れた英雄 

監督 角川春樹
出演 草刈正雄レベッカ・ホールデン木の実ナナ浅野温子勝野洋
1982年 (東映) 112分

解説
天性の美貌を武器に上流社会の女たちに金を貢せ、レースに生命を賭ける若きライダーの青春を描く。製作・監督は初めて演出を手がける角川春樹、大藪春彦の同名小説を 「化石の荒野」 の丸山昇一が脚本、撮影は 「野獣刑事」 の仙元誠三が各各担当。

ストーリー
全日本選手権ロードレース第8戦、メインレースの国際A級500cc決勝を迎え、SUGOのサーキットは興奮のるつぼと化している。北野晶夫と大木圭史の宿命の対決が始まろうとしていたのだ。晶夫が96点で1位、2位には連続チャンピオンを狙う大木、3位は若手の鹿島健がつけていた。いつものように晶夫が飛び出し、9周目にはコース・レコードを出す好調さだったがラストの直線で大木に抜かれ、一輪差で敗けた。敗因はマシーンの差、ファクトリー・チームの技術と組織の差だった。ともあれ、これで晶夫と大木が同点で、勝負は最終戦にもち込まれた。北野のプライベート・チーム〈KITANO〉は、メカニックの雨宮、かつてのライダー仲間・緒方、その妻でチーム・マネージャーのあずさ、その息子の和巳に支えられている。チームを維持する莫大な資金は、晶夫の美貌とセックス・テクニックによってパトロンとなっている国際的なデザイナー、斎藤京子、財閥の令嬢・御木本菜穂子が出しているがまだ世界を狙うには金がいる。晶夫は、折りから来日した、国際的なコングロマリットのオーナーのクリスティーン・アダムスに的をしぼった。彼女とはヨーロッパで知り合っていたが、パーティで再会、晶夫の誘惑に何なく陥落する。恋のライディングは着々と成果を上げたが、肝腎のマシーンの性能アップは思うように進んでいなかった。メカの雨宮は女の事で作業をスッポカした。その為、晶夫は雨宮を解雇、自ら徹夜でマシーンに取り組んだ。いよいよ決勝の時が来た。全日本選手権最終戦、国際A級500cc決勝レース。晶夫、大木、鹿島らが一斉に飛びだした。38周目、魔のヘアピンにさしかかる晶夫。ついに勝利の女神は晶夫に微笑んだ。





18-14. イン・ザ・ヒーロー 

監督 武正晴
出演 唐沢寿明福士蒼汰黒谷友香寺島進日向丈
2014年 (東映) 124分

解説
特撮ヒーローものやアクション映画になくてはならない存在“スーツアクター”。普段はスポットの当たらない彼らの生き様に迫る、唐沢寿明主演の人間ドラマ。実際にスーツアクター経験のある唐沢が主人公に扮し、高さ8.5mからの落下や、炎に包まれながらの忍者100人斬りに挑戦するなど、まさに体を張った演技を披露する。

ストーリー
下落合ヒーローアクションクラブの代表・本城渉(唐沢寿明)は、ヒーローや怪獣などのスーツや着ぐるみを着て演じるスーツアクターを25年に渡り続けている。スーツアクターは肉体を酷使し特殊な技能を必要とする、表立っては出ないものの特撮やアクションものの映画・ドラマに欠かせない存在である。いつの日か顔を出して出演したいと思っているがなかなか実現せず、そのうちに妻子には逃げられ、新人・一ノ瀬リョウ(福士蒼汰)にも先を超されていた。そんな本城にハリウッドのアクション大作からオファーが舞い込む。千載一遇のチャンスだが、その内容は命がけの危険なスタントだった。周囲の反対を押し切り、本城は夢をかなえるため、誰かのヒーローになるためにスタジオへ向かう……。




18-15. 土竜の唄 潜入捜査官 REIJI

監督 三池崇史
出演 生田斗真堤真一仲里依紗山田孝之岡村隆史
2014年 (東宝) 130分

解説
「ビッグコミックスピリッツ」 に連載中の高橋のぼるによる人気コミックを、監督・三池崇史&脚本・宮藤官九郎のコンビが、生田斗真主演で映画化したバイオレンスドラマ。暴力団の大物を逮捕するため、潜入捜査を命じられた交番勤務の警察官が、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも目的達成のために奮闘する姿をコミカルに描く。

ストーリー
谷袋警察署交番勤務の巡査・菊川玲二(生田斗真)は、人一倍正義感が強いものの、警察学校を史上最低の点数で卒業、巡査になってからも始末書ばかり書かされる日々を送っていた。そんなある日、玲二は署長の酒見(吹越満)に呼び出され、突然クビを言い渡される。驚く玲二だったが、実は表向きは懲戒免職という形をとりながら犯罪組織に潜入してターゲットを挙げる潜入捜査官、通称“モグラ”となり、合成麻薬MDMAの密売ルートを暴けという命令だった。そのターゲットは関東一の広域暴力団・数寄矢会組長、轟周宝(岩城滉一)。数寄矢会は、関東一円を地盤とする武闘派暴力団組織で、組員は8000人といわれていた。覚悟を決めて闇カジノ“虎ジャガー”に潜り込んだ玲二は、ひょんなことから数寄矢会傘下・阿湖義組の若頭“クレイジーパピヨン”こと日浦匡也(堤真一)に気に入られ、とんとん拍子に組長の阿湖(大杉漣)と親子盃の義を取り交わすことになる。しかし、渦巻く数寄矢会内部での権力闘争、そして関東進出を狙う日本最大の暴力団組織・蜂乃巣会との抗争も勃発し、玲二は次から次へとピンチに陥る。果たして、玲二は無事に轟周宝を挙げ、モグラとしての任務を果たすことができるのか……。




18-16. 花のお江戸の無責任

監督 山本嘉次郎
出演 植木等谷啓ハナ肇草笛光子団令子
1964年 (東宝) 89分

解説
戸板康二の原案を 「ひばり チエミ いづみ 三人よれば」 の田波靖男と 「天才詐欺師物語 狸の花道」 の山本嘉次郎が共同で脚本化、山本嘉次郎が監督したコメディ。撮影は 「地の涯に生きるもの」 の遠藤精一。

ストーリー
父親を闇打ちされた古屋助六は、仇討のために江戸へ向った。しかし相手の目印は、背中の刀傷だけという心ぼそさ。だが根っから陽性の助六は、そんなことは意に介さず「早いとこパッパッと勝負をつけて、半年ばかり楽しく江戸で遊んでこよう」と最高にゴキゲン。鈴ケ森にさしかかった助六は雲助に因縁をつけられている白井権八を「ブァーッ」と胸のすくタンカで助けだした。そこへ通りかかったのが、今売り出し中の侠客播随院長兵衛。助六と権八は、長兵衛の侠気にすっかり感激し、二人は長兵衛の家に居候することになった。ところが、長兵衛の女房おぎんは大変な女。ちょっとでも逆らおうものなら長ぎせるでポカリ。あげくに二人は、吉原で石焼芋屋をやらされるはめになった。二人は夜桜で賑わう仲の町を「イシヤキイーモー」と世にも情けない顔をして歩くのだった。そんな二人だが、ある日長兵衛の留守中に助けを求めにきた、道具屋の娘お菊を白柄組から救けだして男をあげた。長兵衛からほうびにヒマをもらった二人は勇躍して吉原にくりこんだ。助六の目ざす相手は、今を盛りのおいらん揚巻だ。そこへやってきたのが、白柄組の親分格髭の意休だ。助六は、いやがる揚巻を口説きおとそうとする意休の前で威勢のいいタンカをきり揚巻の心をつかんだ。一方権八は、幼な友達小紫を身受けしようと助六の金をゴマカシて貯めるのに大奮闘。そんなうちに助六は揚巻から意休の背中に刀傷があることを聞きだした。助六の求める仇は意休だったのだ。勇躍した助六は意休と対決、見事仇討を果した。折も折、長兵衛が白柄組との出入りで死に、助六が長兵衛の跡をつぐこととなって、目出度く仇討の幕は下りたのだった。





18-17. 月曜日のユカ

監督 中平康
出演 加賀まりこ北林谷栄中尾彬加藤武波多野憲
1964年 (日活) 93分

解説
安川実の原作を 「学園広場」 の斎藤耕一と倉本聰が共同で脚色、 「光る海」 の中平康が監督した風俗ドラマ。撮影もコンビの山崎善弘。

ストーリー
横浜の外国人客が多い上流ナイトクラブ“サンフランシスコ”では、今日もユカと呼ばれる十八歳の女の子が人気を集めていた。さまざまな伝説を身のまわりに撒きちらす女、平気で男と寝て、教会にもかよう。彼女にとっては当り前の生活も、人からみれば異様にうつった。横浜のユカのアパートで、ユカがパパと呼んでいる船荷会社の社長は、初老の男だがユカにとってはパパを幸福にしてあげたいという気持でいっぱいだ。ある日曜日、ユカがボーイフレンドの修と街を歩いていた時、ショウウィンドウをのぞいて素晴しい人形を、その娘に買ってやっている嬉しそうなパパをみた時から、ユカもそんな風にパパを喜ばせたいと思った。ユカの目的は男をよろこばすだけだったから。だが、日曜はパパが家庭ですごす日だった。そこでユカはパパに月曜日を彼女のためにあげるようにねだった。月曜日がやって来た。着飾ったユカは母とともにパパに会いにホテルのロビーに出た。今日こそパパに人形を買ってもらおうと幸福に充ちていた。だが、ユカがパパから聞されたのは、取り引きのため「外人船長と寝て欲しい」という願いだった。ユカはパパを喜ばすために、船長と寝る決心をした。パパの約束通り船長に抱かれた。うつむいて埠頭を歩くユカを追ったパパは誤って海に落ちたが、ユカは、無関心に去って行った。




18-18. しとやかな獣 (Elegant Beast)

監督 川島雄三
出演 若尾文子伊藤雄之助山岡久乃 川畑愛光浜田ゆう子
1962年 (大映) 96分

解説
「人間」 を監督した新藤兼人の原作・脚色から、 「雁の寺」 の川島雄三が監督した社会ドラマ。撮影は 「瘋癲老人日記」 の宗川信夫。



ストーリー
アパートが立ち並ぶ郊外の団地、前田家はその四階の一角を占めている。前田時造は元海軍中佐、戦後どん底の生活を経験した彼は自分の殻にとじこもり、子供たちを踊らせるあやつり師になった。息子の実には芸能プロの使い込みをやらせ、娘の友子は小説家吉沢の二号である。その友子が別れ話をもって帰って来た。友子を追って現れた吉沢にまだ友子への未練があるとみると、極力恐縮したふりをする時造夫婦だった。実は会社の会計係三谷幸枝と関係があった。その幸枝が、念願の旅館が開業の運びになったからこの辺で別れたいと言うのである。子供を抱え夫に死なれた彼女にとって唯一の道は思いきり体を使って生きるほかなかった。男の誘惑に巧みに乗り、大いに貢がせる。実との取引は既に終っていると幸枝は言い放つのであった。芸能プロにも辞表を出した。恩を仇で返したと社長の香取が怒っても、幸枝は香取の尻っぽを握っている。彼は幸枝のために使い込んだ金のことで税務署の神谷を抱き込んでいるのだ。神谷に払われた金がそっくり幸枝に戻ってくるのは、ホテルへ行って愛情の代償として貰うものであるから関係ないとうそぶく幸枝の見事さに、さすがの時造一家も感嘆するばかりだった。しかし幸枝にはまり込んでいた実は嫉妬に歯をくいしばるのだ。税金未納の責任で神谷が馘になったと聞いて、幸枝は一瞬驚いた。香取や実は当然罪に問われるだろう。それでも私は傷つくことはない……。幸枝はキッパリと実たちに絶縁の言葉を残して去って行った。前田家の団らんの中に神谷が幸枝を探しに来て空しく帰った。友子と実がステレオで踊り時造とよしのがビールを飲んでいる頃、アパートの屋上から神谷の体が落下して行った。




18-19. リリイ・シュシュのすべて

監督 岩井俊二
出演 市原隼人忍成修吾伊藤歩蒼井優細山田隆人
2001年 (Rockwell Eyes(配給協力 日本ヘラルド映画)) 146分

解説
岩井俊二監督がネット上の小説から構想を発展させた注目の新作が登場。イジメ、万引き、暴行などの犯罪が渦巻く日常で、心に傷を負った14歳の少年少女の痛みを繊細なタッチで描く。

ストーリー
カリスマ的アーティスト・リリイ・シュシュに心酔する中学2年の雄一。学校でイジメを受けている彼は、自らが主宰するリリイのファンサイトリリフィアの中で交わす、青猫というハンドルネームのリリイ・ファンとのチャットに心癒されていた。雄一をイジメているのは、星野という同級生。1年の頃は、剣道部の部員として仲の良かったふたりだが、夏休みに仲間と出かけた沖縄旅行を経た新学期、星野は突然豹変した。クラスの悪ガキを倒し、飯田と辻井を子分に従え、雄一に万引きなどで得た金を上納させるようになったのだ。星野のイジメの対象は雄一だけに留まらない。詩織もまた星野の命令で援助交際させられ、そのあがりを星野に渡していた。更に、雄一が秘かに心寄せる陽子もまた、彼女を嫌う女子同級生の企みで星野一派にレイプされてしまう。12月8日、リリイのライヴが代々木で開かれることになった。チケットをゲットした雄一は、青猫と会う約束をして会場へ向かう。ところが、そこにいたのは星野。雄一がリリフィアの管理人であることに気づいていない彼は、雄一のチケットを奪うとひとりでライヴを楽しんだ。会場に入ることの出来なかった雄一は、ライヴ終演後の雑踏の中、どさくさに紛れて星野を刺し殺す。そして2001年、15歳になった雄一は淡々とした日々を送っている。




18-20. 闇金ウシジマくん Part2

監督 山口雅俊
出演 山田孝之綾野剛菅田将暉木南晴夏門脇麦
2014年 (東宝映像事業部=S・D・P) 133分  (PG12)

解説
10日で5割という法外な金利で金を貸す闇金、カウカウファイナンスの社長・丑嶋と、彼の元を訪れる債務者たちの姿をリアルに描いた人気コミック 「闇金ウシジマくん」 の劇場版第2作。丑嶋役の山田孝之をはじめ、テレビドラマの第2シリーズから登場した情報屋の戌亥を綾野剛が演じるほか、菅田将暉、門脇麦ら注目の若手キャストが出演する。

ストーリー
ウシジマ(山田孝之)は、10日で5割という高額な金利で金を貸す闇金業者“カウカウ・ファイナンス”の社長。ヤンキーのマサル(菅田将暉)の母親はパチンコにハマり、ウシジマに借金をしていたが、ある日、そのマサルが暴走族のヘッド、愛沢(中尾明慶)に連れられてカウカウ・ファイナンスにやってくる。愛沢のバイクを盗んだマサルに、ウシジマから200万円を借りさせ、それを慰謝料として受け取るのが愛沢の狙いだった。ところが、懇願してくるマサルを気に入ったウシジマは、彼をカウカウ・ファイナンスで働かせることにする。当てが外れた愛沢だったが、彼にもまた、すぐにでも金が必要な事情があった……。





18-21. 乾いた花 (Pale Flower)

監督 篠田正浩
出演 池部良加賀まりこ藤木孝原知佐子中原功二
1964年 (松竹) 96分

解説
石原慎太郎原作を 「泥だらけの純情(1963)」 の馬場当と 「涙を、獅子のたて髪に」 の監督篠田正浩が共同で脚色、篠田が監督したヤクザもの。撮影もコンビの小杉正雄。

ストーリー
ヤクザ仲間の争いから人を殺して三年ぶりに娑婆へ出た村木は、賭場で「その少女」に心をひかれた。昔の女新子との夜は虚しかった。次の賭場で村木は再びその少女に会い、サシで勝負した。有金全部張って挑みかかる少女は、村木の心を楽しませた。その夜、村木は思いがけなく屋台でコップ酒を飲む少女を見た。名は冴子、もっと大きな勝負のある場所へ行きたいとせがむ。約束の日、豪華なスポーツカーで現れた彼女に村木は眼をみはった。大きな賭場での冴子の手捌きは見事だった。彼はふと隅にうずくまって少女を擬視している葉という男に気づいた。中国帰りで殺しと麻薬だけに生きているという、その死神のような眼に、村木はいいしれぬ危険を感じた。それでも勝負に酔った村木と冴子は、夜の街を狂ったように車を走らせた。二人は充たされたものを体に感じていた。ある日、豪酒なホテルのロビーで礼装した冴子の姿を見たとき、村木は初めて嫉妬を抱いた。次の賭場へ遅れて行った村木は、冴子が葉と語り合っているのを見た。突然ガサ入れがあったが、とっさに村木は冴子を小部屋に連れ込んで難を逃れた。無心に笑い転げる冴子に、村木は強烈な愛を感じた。そのころ、ヤグザ同士の縄張り争いにまき込まれ、村木は刺客の役を引き受けた。彼は冴子の見ている前で殺しをやるが、その瞬間、冴子の顔に歪んだ微笑を見た。そして二年、村木は刑務所で新入りの仲間から、冴子が葉に麻薬中毒患者にされ、殺されたことを知ったが、あどけない冴子の姿しか思い出せなかった。





18-22. 忠臣蔵外伝 四谷怪談

監督 深作欣二
出演 佐藤浩市高岡早紀荻野目慶子石橋蓮司渡辺えり
1994年 (松竹)

解説
鶴屋南北原作の怪談「東海道四谷怪談」 を、原点に帰って忠臣蔵の物語と融合させ、元赤穂藩侍の民谷伊右衛門と湯女・お岩との恋愛劇の中に四十七士の吉良邸討ち入りのドラマを織り込んだ時代劇。監督は「いつかギラギラする日」 の深作欣二。脚本は深作と古求の共同、撮影は石原興が担当。94年度キネマ旬報日本映画ベストテン第2位、同読者選出日本映画ベストテン第2位。

ストーリー
元禄14年、江戸城松の廊下で吉良上野介に刃傷を起こした赤穂藩藩主・浅野内匠頭は切腹、赤穂藩は取り潰しとなった。堀部安兵衛、高田郡兵衛、片岡源五衛門ら江戸詰の藩士たちは大挙して赤穂城へ舞い戻るが、家老・大石内蔵助の反応は冷ややか。浪人となった藩士には厳しい生活が待ち受けており、2カ月前に召し抱えられたばかりの民谷伊右衛門も父親譲りの琵琶を奏で、仲間の勘平や右衛門七らと共に門付けに立ち生計を立てていた。そんな伊右衛門は彼を熱い視線で見守る湯女・お岩に出会い、ほどなく一緒に暮らすようになる。お岩に魅かれている湯女宿の番頭・宅悦は彼女を強引に連れ戻そうとするが不首尾に終わった。その頃いつものように鬼子母神の境内で琵琶を奏でていた伊右衛門たちは、打ち掛けを羽織り、笛や太鼓を鳴らす侍女たちを従えたお梅の一行に出くわす。一行にからんできた酔っ払いを一閃のうちに倒した伊右衛門を、恍惚の声を挙げ見つめるお梅。その夜、お梅の祖父・伊藤喜兵衛が大金を持って伊右衛門の家を訪ねてくるが、喜兵衛は吉良家の家臣であった。刃傷沙汰から1年、内蔵助はようやく討ち入りする腹を決め、江戸にいた安兵衛や伊右衛門たちにも招集の声がかかる。お岩は伊右衛門の子を身籠ったことを打ち明けるが、仇討ちが待っている自分はいずれ死ぬ身と伊右衛門は拒絶。だが、強行派の郡兵衛が仲間から脱落することを知り呆然となる。同志たちが次々と京に集まり、決起の宴を開いている頃、伊右衛門は喜兵衛の家にいた。彼はお岩と別れお梅と一緒になる交換条件として、吉良家の家臣に推挙してほしいと告げた。狂喜するお梅。一方、お岩のもとには宅悦が現れ、伊右衛門から預かったという安産の薬をお岩に飲ませる。だがそれは、喜兵衛の策略による顔を溶かす毒薬であった。もだえ苦しみ、息絶えるお岩。その日のうちにお梅と祝言を挙げた伊右衛門の寝間に、そのお岩の亡霊が現れた。吉良家の清水一学は伊右衛門に、仕官の土産として川崎の平間村に入った内蔵助を倒せと命じる。浪士たちが警護する中、伊右衛門は半ば死ぬ覚悟で内蔵助と対峙するが内蔵助は斬れず、また自分も浪士たちに襲われながら逃げのびる。だが彼はもう半ば死んだ身であった。討ち入り当日、吉良屋敷へ内蔵助以下赤穂四十七士が押し寄せるが、伊右衛門の姿は彼らには見えない。そして、その討ち入りを亡霊となったお岩が手助けしていた。無事討ち入りを果たした後、互いに死んで晴れてお岩と一緒になった伊右衛門の奏でる琵琶の音のみが、かつての同志たち四十七士のもとに届いた。




18-23. 無宿やどなし

監督 斎藤耕一
出演 高倉健勝新太郎梶芽衣子藤間紫山城新伍
1974年 (東宝) 97分

解説
刑務所で知り合った性格の対照的な二人の男が、対立しながらも奇妙な友情に結ばれ、足抜けさせた女郎とともに海に沈んでいる大金を探しだそうとする冒険ロマン。脚本は 「赤ちょうちん」 の中島丈博と 「バンカク 関東SEX軍団」 の蘇武道夫、監督は 「津軽じょんがら節」 の斎藤耕一、撮影も同作の坂本典隆がそれぞれ担当。

ストーリー
昭和十二年夏、粋な着流しの穴吹錠吉と、白い麻の背広に力ンカン帽の駒形玄造が出所した。駒玄は坂東梅之丞率いるドサ廻りの芝居小屋に舞い戻った。錠吉の方は、兄費分の女房ユキノを女郎屋へ訪ねるが、既にユキノは死んでいた。女郎のサキエは、ユキノの死因は自殺で、自分も同じ道を巡るのは嫌だ、足抜けさせて欲しい、と錠吉に哀願する。丁度、遊びに来ていた駒玄の助けを貸りて、錠吉はサキエを足抜きさせてやった。しかし、人混みで錠吉を見失ってしまったサキエは、梅之丞一座にいる駒玄と出会った。その時駒玄は、サキエから、錠吉が元潜水夫だった事を聞き、自分の「計画」に錠吉を引き込む決意をした。駒玄とサキエは兄貴分の仇・人斬り仙蔵を狙っている錠吉を捜し廻った。そして、とある宿屋で錠吉を見つけた駒玄は、錠吉に、山陰沖に沈んでいるバルチック艦隊の軍用金引き上げの話を持ちかけるが、錠吉は無視し、再び姿を消した。サキエを追って来た玉井組に追われた駒玄とサキエは、とある賭場で錠吉が捜し求めている仙蔵と会った。そこへ錠吉もやって来た。駒玄が止めるのを振り切った錠吉は、仙蔵と対決、兄貴分の仇を討った。だが仙蔵は死ぬ間際、兄貴分を殺せ、と命じたのは親分の大場である事を錠吉に告げた。そして、錠吉はまたもや駒玄とサキエの前から姿を消した。錠吉の事を諦めた駒玄は、サキエとともに山陰の海へ行き、駒玄の父の使用人だった為造の家へ巡り着いた。目指す海域は軍の立入禁止区域となっていたが、駒玄は為造から舟を買い、サキエに呼吸ポンプをこがせて、自ら潜って金を探し廻った。そんな時、大場親分を殺し、追手から逃れて来た錠吉が、二人のいる海岸へやって来た。そして、錠吉も駒玄と交替で海に潜ることになった。数日後、沈んでいる船の残骸を発見、大金はもうすぐ目の前とばかり大喜びする。しかし、そこへ錠吉を追っている大場の子分の辰平たちが現われた。辰平たちと対決しようとする錠吉を、駒玄は持っていた舟の残骸で殴り倒し、「ここは立入禁止区域だ!」と叫びながら彼らに近づくが、いきなり拳銃で射たれてしまった。気が付いた錠吉も駒玄に近づこうとした時、弾丸が二、三発命中、その場に倒れた。二人が死ぬのを見ていたサキエは、愕然として、砂浜に膝を落とすのだった。




18-24. ホタルノヒカリ

監督 吉野洋
出演 綾瀬はるか藤木直人手越祐也板谷由夏松雪泰子
2012年 (東宝) 110分

解説
デートよりも合コンよりも家でゴロゴロしていたい。そんな“干物女”の生態を描いた人気ドラマの劇場版。最終回で晴れて恋人と結ばれた主人公・蛍が、海外旅行先で大騒動に巻き込まれる。 「フラガール」 の松雪泰子がイタリア版干物女を怪演。人気アイドルの手越祐也の共演や、美しいロケ映像も見どころだ。

ストーリー
仕事はきっちりこなすものの、家ではジャージ姿でビールを開け、女として枯れた姿から“干物女”と称される雨宮蛍(綾瀬はるか)。恋愛とも程遠い生活を送っていたが、突如として舞い込んだ高野部長(藤木直人)との同居や高望みのような男性との恋愛など紆余曲折を経て、蛍と高野部長は結婚をした。とはいえ相変わらず家では自堕落に過ごす蛍に、あきれる高野部長。二人は新婚旅行としてイタリアへ行くことにする。しかし旅先では、蛍同様に仕事以外ではきっちりしていない冴木莉央(松雪泰子)とその弟・優(手越祐也)が起こす騒動に巻き込まれ、さらにローマでは高野部長の行方がわからなくなり、蛍は大奔走する……。





18-25. 若親分

監督 池広一夫
出演 市川雷蔵朝丘雪路藤村志保三波春夫山下洵一郎
1965年 (大映) 86分

解説
紙屋五平の原案を 「赤い手裏剣」 の高岩肇と 「座頭市関所破り」 の浅井昭三郎が共同でシナリオを執筆 「忍びの者 続霧隠才蔵」 の池広一夫が監督した侠客もの。撮影は 「これからのセックス 三つの性」 の武田千吉郎。

ストーリー
日露戦争で戦勝気分に酔っていた頃、南条組の親分辰五郎は、将棋帰りに殺され、車曳きの三吉の証言で下手人は滝沢組のものらしいと噂された。葬儀は全国の親分が集って盛大に行われたが、その中には、滝沢組、組長巳之助の顔もあった。その日、辰五郎の一子武は海軍少尉の軍装のまま葬儀に参列して人目をひいた。数カ月後、南条組二代目武の襲名披露は華やかに開かれた。幼馴染みの“花菱”の若い女将京子は、武にヤクザになることの無暴さを説いた。だが武の披露宴は終りに近づいていた。お開きの頃、三吉が巳之助にとびかかるという惨事がもちあがった。だが助人に出た武が、海軍仕込みの抜刀術で巳之助の右手首を叩き落した。父の仇を討った武は、父がひいきにしていた桃中軒雲右衛門を招いて追善興業をうとうと計画した。武は、その打ち合せの帰り道、若い衆に足蹴にされている教師高瀬俊介を助けた。俊介は芸者千代梅と恋仲であったが、千代梅が太田黒組の親分伊蔵の持ち物であるため、ことがめんどうになったのだった。そこへ、先乗りの若い衆が伊蔵のインチキ賭博にひっかかり、雲右衛門の興行権を渡したと血だらけでころがりこんだ。かけつけた武は、バクチでけりをつけようと言われ、賭打場にのぞんだが、伊藤の卑劣なやり方に怒った武は、人質となっている雲右衛門を連れて出ていった。だがその夜、当の恵比須座がつけ火のため焼け落ち、焼け跡の雲右衛門独演会という奇妙な興行となった。その騒ぎが終らぬ内、京子の手引きで俊介と千代梅が武の許へ逃げこんで来た。ヤクザの世界ではこの種の行為に対する制裁は厳しかった。伊蔵の掛け会いにも、武の妙案でのがれた二人は、その夜西へ落ちのびた。見送りの帰り、武の車が父の殺されたガード下に近づいた時、長ドスを抜いて前に立った男がいた。親分を殺った男だ!三吉の叫びで追いかけた武は、その男の背後に伊蔵がいると聞き、巳之助を訪れて、父の仇と誤解したわびを入れた。そして、単身伊蔵一家の待つ決闘場へ乗りこんだ。街は、日露戦勝祝賀でわき返っていた。




18-26. 小野寺の弟・小野寺の姉

監督 西田征史
出演 向井理片桐はいり山本美月ムロツヨシ寿美菜子
2014年 (ショウゲート) 114分

解説
引っ込み思案で恋に奥手な弟と生命力の強い姉。不器用ながらも平穏に暮らす姉弟の姿を描く、向井理&片桐はいり主演のヒューマン・コメディ。同じキャストで評判を得た舞台版同様に、 「怪物くん」 などの脚本家・西田征史が初めて監督に挑み、温かな視線で姉弟の姿を映し出す。弟が恋に落ちるヒロインを山本美月が演じる。

ストーリー
小野寺進と姉のより子は、早くに両親を亡くし、それ以来ずっと二人で一緒に一軒家に住んでいる。33歳になった進(向井理)は真面目ながら寝癖をつけたままにしておくようなズボラな面がある。恋には奥手で、より子(片桐はいり)からは過去の恋を引きずっていると指摘されることがある。40歳になるより子は髪型に強いこだわりを持っており、きっちりしている。特に仲がいい訳ではないが、笑いあい、不器用ながらも互いを大切に思い暮らしていた。ある日家に誤配達の郵便が届いたことから、二人に転機が訪れる……。




j18-27. THE LAST MESSAGE 海猿

監督 羽住英一郎
出演 伊藤英明加藤あい佐藤隆太加藤雅也吹石一恵
2010年 (東宝) 129分  (3D)

解説
困難な任務に挑む海上保安官たちの姿を描いた人気コミックが原作のスペクタクルドラマの完結編。海上巨大天然ガスプラント施設で起きた火災事故からの生還に挑む人々の物語。

ストーリー
2010年10月、大型台風接近中の福岡沖が緊張に包まれる。巨大天然ガスプラント施設“レガリア”で事故が発生。高波に煽られた海洋掘削装置ドリルシップがレガリアに激突、火災が発生したのだ。しかも、現場は日韓間排他的経済水域。レガリアは、日韓共同施設である上、ロシアからも技術供与を受け、1500億円もの予算がつぎ込まれた大規模国家プロジェクトだった。この重大危機に海上保安庁、韓国海洋警察庁が現場へ向かう。第十管区海上保安本部機動救難隊の仙崎大輔(伊藤英明)の姿も、バディの吉岡哲也(佐藤隆太)、レガリアの設計主任である桜木浩一郎(加藤雅也)とともにその中にあった。施設内には300名以上の作業員や関係者が取り残されており、さらに膨大な天然ガスも貯蔵されていた。一歩間違えれば大惨事となる危機的状況のもと、要救助者の救出が行われ、桜木による防災対策が進む。だがその時、突然の爆発により大輔、桜木、医師の西沢夏(吹石一恵)、作業員の木嶋久米夫(濱田岳)がレガリア内に取り残され、逃げ場を失ってしまう。その窮地を救ったのは、第七管区海上保安本部機動救難隊の服部拓也(三浦翔平)。だが、もはやヘリも船も近付ける状態になく、安全な場所もない。家で待つ妻の環菜(加藤あい)と生後10ヶ月の長男、大洋を思う先崎は、初対面の服部とバディを組み、脱出の道を探る。一方、事故対策本部では救難課長の下川(時任三郎)を中心に、人命優先で救助の道を探っていた。だが、国益を最優先に考える内閣参事官の吉森(鶴見辰吾)がその方針に口を挟む。各国から報告を求める声も相次ぎ、焦燥感に包まれる対策本部。そして、今日が三回目の結婚記念日となる環菜も、不安に襲われながら大輔の帰りを待っていた。様々な思いが交錯する中、刻一刻と過ぎていく時間。そして、レガリア内に取り残された大輔たちを、更なる危機が襲う……。




18-28. 無頼漢 (The Scandalous Adventures of Buraikan)

監督 篠田正浩
出演 仲代達矢岩下志麻小沢昭一丹波哲郎渡辺文雄
1970年 (東宝) 103分

解説
河竹黙阿弥の 「天衣紛上野初花」 を題材に、寺山修司が脚本を書き、 「心中天網島」 の篠田正浩が監督した異色時代もの。撮影は 「御用金」 の岡崎宏三が担当。

ストーリー
天保十三年、水野忠邦の天保の改革は庶民を苦しめ、市井には不満の声が満ちていた。江戸、猿若町の見世物小屋が軒を並べるあたり、役者志願の遊び人直次郎は、美しい花魁犬口屋の三千歳を知った。直次郎が母親のくまと住む犯罪長屋。一年ぶりに帰ってきたなまけ者丑松だが、留守中に女房お半と子供は、御用聞き、五斗米市と家主の紋左衛門の手にかかり姿を消していた。芝居小屋の前で「水野体制批判」をして役人に追われた三文小僧を救ったのは、河内山宗俊だった。三千歳を直次郎とはり合う森田屋は御家人くずれの金子市之丞に直次郎殺しを頼んだ。だが金子市は、直次郎と間違えて河内山を襲い、顔を合わせた金子市、河内山、森田屋の三人は、互にふくみ笑いして見合った。直次郎は老いて醜い、おくまがいては三千歳と世帯ももてないと考え蒲団にくるみ、大川へ投げ込んだ。一方、河内山は上州屋の一人娘浪路が、松江出雲守にめかけになれと無理難題を押しつけられているのを聞き、二百両で浪路をとり返すことをうけあった。河内山の生命をかけた大仕事を知り直次郎が仲間に加わった。ところで、金子市は丑松、三文小僧など水野体制からはみだした連中を集め、改革に謀叛の火を打ちあげんとしていた。松江家では依然、出雲守が浪路を追い回していたが、家老北村大膳はこの乱行が外にもれることを怖れ、浪路と近習頭宮崎数馬を不義の仲とデッチあげた。そこへ、河内山扮する御使僧北谷道海と直次郎扮する駕篭脇に控える侍桜井新之丞が現れ、晴れの舞台よろしく、大芝居をうった。出雲守からまんまと、浪路をだましとった河内山だが、大膳に見破られ凄絶な最後をとげた。直次郎は邪魔者おくまを背負って捨てに家を出たが、その時、夜空にひろがる花火を見た。それは金子市、丑松、三文小僧の三人が打ち上げた謀反の火柱だった。




18-29. 探偵はBARにいる

監督 橋本一
出演 大泉洋松田龍平小雪西田敏行マギー
2011年 (東映) 103/125分  (PG12)

解説
北海道を舞台にした東直己の小説 「ススキノ探偵」 シリーズ2作目 「バーにかかってきた電話」 を、 「相棒」 で多くのエピソードを演出した橋本一監督で映画化。ご当地出身の大泉洋が、酒好きで美女に弱い探偵に扮し、相棒役の松田龍平と息の合った掛け合いを展開する。スタントなしのアクションシーンも見どころだ。

ストーリー
札幌・ススキノ。この街の裏も表も知り尽くした探偵(大泉洋)は、いつものように行きつけのBARで相棒兼運転手の高田(松田龍平)と酒を飲み、オセロに興じていた。そこへ“コンドウキョウコ”と名乗る女から電話が……。職業柄、危険の匂いには敏感なはずが、簡単な依頼だと思い引き受け、翌日実行。だがその直後に拉致され、雪に埋められ、半殺しの目に遭ってしまう。怒りが収まらぬ探偵の元に、再び“コンドウキョウコ”から電話が入る。その依頼を渋々こなし、自力での報復に動き出した探偵と高田は、知らず知らずのうちに事態の核心に触れていく。その過程で浮かび上がる沙織(小雪)という謎の美女と大物実業家・霧島(西田敏行)の存在。そして、探偵は4つの殺人事件にぶつかる……。果たして“コンドウキョウコ”は何を目論んでいるのか。事件と事件のつながりは何なのか……。




18-30. 日本の首領 野望篇

監督 中島貞夫
出演 佐分利信東恵美子折原真紀高橋悦史二宮さよ子
1977年 (東映) 141分

解説
全国制覇をめざし、東京進出を企てる中島組と、それを阻止しようとする関東同盟の争いを政財界の黒い相関図をからめて描く。脚本は 「仁義と抗争」 の高田宏治、監督は 「日本の仁義」 の中島貞夫、撮影も同作の増田敏雄がそれぞれ担当。

ストーリー
昭和四十六年、一宮病院を退院した中島組組長・佐倉一誠の盛大な全快祝賀パーティが開催された。構成員四百団体、一万二千人は全盛時よりやや減ってはいるものの、国内随一の勢力を誇っていた。一時、危機に追い込まれた組をここまで再建したのは、一宮恭夫と松枝四郎であった。佐倉の退院を機に中島組の関東進出は急務となり、その第一歩として新組織「桜商事」を設立、その指揮に松枝が当った。「桜商事」の目的は中央の政財界に強力なコネクションをつけることで、最初の仕事がジャパンシップ乗っ取りの介入だった。これをいち早く察知したのは東京の暴力団の大物、松風会会長・大石剛介だった。大石は東京の暴力団を連合する「関東同盟」を結成し、右翼の巨頭・大山規久夫を顧問に迎えた。大山は後藤通産大臣に圧力をかけ、中島組が買占めたジャパンシップの株式の買戻しを強行する。「桜商事」の若宮洋一郎がこの事件の餌食となって殺された。これがきっかけとなって、中島組対関東同盟の抗争は表面化するが、中島組内部では辰巳の死以来空席となっている若頭の地位をめぐって、野心と思惑が入り乱れていた。佐倉は冷静に情況を見きわめ、松枝を若頭に抜擢し、その補佐に天坊信助を任命した。天坊は殺し屋を雇って、関東同盟の真光会会長を射殺するが、大石はこの挑発にのってはこなかった。一方、松枝は人気歌手や美女をスカウトして、東京に「シャングリラ」という秘密クラブを開き、ママには一宮の友人の姉小路尚子をすえた。尚子と松枝の才腕によって政財界の実力者や海外の名士に及ぶ多彩な客が集まり、中島組の事業は着実に拡大していった。その頃、ガルダスソネ共和国大統領アナンタが来日する。女好きの彼はシャングリラにも現われ、美女をあさった。ガルダネソス国営石油開発の利権を五光汽船に落とそうと企む松枝は、アナンタの歓心を買うべく生贄作戦に出るが、大統領の目に止まったのは、関西旅行中に怪我をした際、治療に当った一宮病院の看護婦、三浦かおるであった。アナンタは、かおるにのめり込んでいく。石油開発利権争奪で、一歩中島組に先を越された関東同盟サイドは、野党代議士に中島組に不利になるような情報を流し、打撃を与えようとした。結局、ガルダネソス石油資源開発の利権は関東同盟側が握り、その事業公団設立記念式典が盛大に行われた。中島組の巻返しは天坊一人の暴走となって火を噴いた。式典会場ロビーで待伏せしていた天坊の拳銃が大石に向けて発射された。弾丸は逸れたが、この一発は佐倉にとって、大きな敗因をつくる結果となる。それは、全責任を負った若頭・松枝の自殺だった。




18-31. 日本の首領 完結篇

監督 中島貞夫
出演 三船敏郎桜町弘子山本由香利渡辺文雄佐藤慶
1978年 (東映) 131分

解説
日本最大の暗黒ファミリーとそれを率いる首領(ドン)の存在を通して、壮大な人間ドラマを描く 「日本の首領」 三部作の完結篇。脚本は 「多羅尾伴内」 の高田宏治、監督は 「日本の首領 野望篇」 の中島貞夫、撮影も 「日本の首領 野望篇」 の増田敏雄がそれぞれ担当している。

ストーリー
関東同盟理事長、大石剛介と、関西中島組組長、佐倉一誠の間には表向きには平穏無事な日々が続いていたが、日本政財界最大の黒幕、大山喜久夫が癌で倒れたことにより、両者の間に再び不穏な空気が漂いはじめた。大山は佐倉の娘婿の医師、一宮恭介の執刀で九死に一生を得た。大山は任侠団体の統一合体を提唱するが、全国制覇の野望に燃える佐倉、大石は、ともに同意せず、虚々実々のかけひきが始まる。サイパン島開発という国家的な大事業に着眼した大石は大山を後盾に保守党中久保派の伊庭官房長官に接近する。平山幹事長から大石の野心を聞いた佐倉は大いに動揺した。大石、佐倉の当面の問題は資金調達にあった。佐倉の胸中を読んだ川西は、膨大な土地、不動産を持つ松原産業の子会社、木村建設を倒産に追い込んだ。そして自殺した木村社長の娘、由紀子を保守党の実力者、刈田に与えた。一方、大石は、娘の郁子と刈田の息子春男の縁組により、刈田を味方に引き込み、アメリカ側への賄賂の特使として、刈田と春男をサイパンに派遣する。大山は自分の回復祝の席で、佐倉に打倒大石を示唆するのであった。刈田はサイパンでジェラード議員と取引中に中島組の組員らしき強盗団に襲われ、大金を奪われる。被害にあったのが日米の両議員のうえ巨額の金銭とあって、鬼島検事正は大規模な捜査活動を開始する。身の危険を悟った大石は帰国した春男と愛人をガス自殺にみせかけ口を封じ、重病を装って入院した刈田も毒殺して、サイパン事件の賄賂の領収書を取り戻そうとする。だが領収書は由紀子の手にあり、それを、大山から外科部長の椅子を約束された一宮が買い取った。さらに大山はサイパン事件の仕掛人、川西も抱き込み、佐倉の背信行為を示唆するのであった。一方、佐倉も大石に勝った大山を消すことをファミリーの一宮に託す。医者としての地位をとるか、佐倉に従うか一宮は苦脳する。時同じくしてアメリカでのジェラードの証言が報じられ、大山とジェラード、大石と故刈田の黒い関係が報道されて、大山は病気再発を理由に入院するのである。又、川西は関東同盟の報復で悲惨な最後を遂げた。佐倉はついに関東の壁を破ったかに見えたが……。




18-32. 必殺!5 黄金の血

監督 舛田利雄
出演 藤田まこと三田村邦彦村上弘明光本幸子山本陽一
1991年 (松竹) 分

解説
問答無用で悪を斬る仕事人の活躍を描く時代劇シリーズ第五弾。脚本は 「必殺! ブラウン館の怪物たち」 の吉田剛が執筆。監督は 「動天」 の舛田利雄。撮影は 「必殺4 恨みはらします」 の石原興がそれぞれ担当。

ストーリー
金座後藤家の女中・お浅は、幼なじみの与七に想いを寄せていた。しかし、与七を乗せた御用船は無宿人に襲撃されて沈没。お浅は川へ身を投げようとするが、偶然通りかかった政に助けられる。金を乗せた御用船沈没によって江戸の金相場は急上昇し、そんな折り、主水に鎌イタチの元締おむらから裏の仕事の依頼が入る。後藤家の妻・千勢が御用船乗組員の仇討ちに五百両出すというのだ。主水は話がうますぎると仕事を断るが、数日後、無宿人どもを始末したおむら達が、紅蝙蝠を自在に操る黒装束の集団・地獄組に襲われる。新月の夜のある日、丘の上から突然立ち昇った不思議な光を見ようとると江戸中から人々が集まっていた。その中には千勢の企みを暴こうとする政や秀、おむらの姿もあった。だが、その光とは実は後藤家が無宿人どもに襲わせ、隠させた御用船の金の光だった。その真相を知られることを恐れた千勢らは、お浅ともども仕事人達を始末しようとしていた。すべては金の値上がりで儲け、その金で老中職を買おうとする勘定奉行・太田と金座後藤家の当主の座を狙う三之助が仕組んだことだった。無宿人どもに上納金を盗ませ、隠させ、仕事人に無宿人どもを殺させ、その仕事人を今度は黒装束の地獄組が襲う。そしてそのからくりを知った主水を始め、仕事人達は地獄組との死闘を繰り広げ、勘定奉行・太田と金座後藤組の三之助、そして千勢に怒りの刃を差し向けるのだった。




18-33. 血槍富士 (On the Trail)

監督 内田吐夢
出演 片岡千恵蔵片岡栄二郎加東大介植木基晴喜多川千鶴
1955年 (東映) 94分

解説
中国抑留から帰還した内由吐夢の第一回作品である。故井上金太郎の原作から 「近松物語」 の八尋不二、 「酔いどれ囃子」 の民門敏雄が脚色、 「越後獅子祭り やくざ若衆」 の三村伸太郎が脚本を書いた。企画マキノ、玉木の他、企画協力として溝口、小津、清水、伊藤が賛助した。撮影は 「新諸国物語 紅孔雀」 の吉田貞次。出演者は、 「隼の魔王」 の片岡千恵蔵、喜多川千鶴、田代百合子、島田照夫、 「浮雲」 の加東大介、片岡の子息植木基晴、息女千恵。

ストーリー
仲間稼業の権八は東海道を、若様酒匂小十郎の槍持ちをつとめて、供の源太と江戸へ向った。同じ道を旅する一行は、小間物商人の伝次、身売りにゆく田舎娘おたねと老爺の与茂作、あんまの藪の市、巡礼、旅芸人のおすみ母子、挙動不審の藤三郎という男、最後に権八の槍に見とれた浮浪児の次郎等である。折柄、街道には大泥棒風の六右衛門詮議の触れ書が廻っているが、権八はそれ所ではない。朗らかで気立てが優しいが、酒乱癖のある若様を守って旅を終るのが主命である。供の源太が酒好きなので気が気ではない。一行は袋井に一宿したが、藤三郎が大金を持っているのに目をつけた伝次は、さては大泥棒とつけ廻すが、隣室で藪の市に肩を揉ませている巡礼こそ大泥棒六右衛門なのである。その夜、おすみの使を受けて権八も悪い気がせず外へ出ると、その隙に小十郎は源太を連れて酒を飲み始めたが、駈けつけた権八に制せられ事なきを得た。また旅が始まったが、大井川の近くで何処かの馬鹿殿様が始めた野立ての為通行止になり、大井川を前に長逗留となった。隙を狙って六右衛門は馬鹿殿の路銀を盗んだが、うっかりして顔を見知られた次郎に発見され、来合わせた権八の槍に怖気が出て簡単に縛についた。与茂作が女衒久兵衛におたねを渡して帰ろうとすると藤三郎に引留められた。五年前預けた娘を引取る為、稼ぎ貯めた金を持って来たのだが、娘は亡くなっていたのだ。小十郎は、素朴な人々を見て武士の世界に嫌気がさし、又源太と居酒屋に入った。権八の駈けつけた時は遅く、小十郎と源太は酔いどれ武士の手に無惨な最期を遂げていた。数日後、骨箱を抱えて国元へ出立する権八の悲しい姿が見られた。




18-34. 図書館戦争 THE LAST MISSION

監督 佐藤信介
出演 岡田准一榮倉奈々田中圭福士蒼汰西田尚美
2015年 (東宝) 120分

解説
武力による検閲から本を守る防衛組織、図書隊の活躍を描く、人気作家・有川浩のベストセラー小説の実写映画化第2弾。ヒロインの郁を榮倉奈々、上官の堂上を岡田准一が演じるなど、前作のキャストが再登板。松坂桃李が演じる図書隊壊滅を目論む男の陰謀に立ち向かう。監督は前作に引き続き、 「GANTZ」 シリーズなどの佐藤信介。

ストーリー
近未来の日本。国家による思想検閲やメディア規制が広まるのに対抗し、読書の自由を守るために図書館の自衛組織・図書隊が結成される。読みたい本を取り上げられそうになったところを図書隊隊員に助けてもらった笠原郁(榮倉奈々)は、その隊員に憧れ自ら図書隊に入隊。特殊部隊タスクフォースに所属され、非常に厳しい教官・堂上篤(岡田准一)や上官の小牧幹久(田中圭)、手塚光(福士蒼汰)や柴崎麻子(栗山千明)といった同期の仲間らとともに過酷な訓練と図書館業務にあたっていた。ある日堂上らのもとに、1冊しか現存していない自由の象徴である『図書館法規要覧』が展示される『芸術の祭典』の会場警備をするよう指令が下る。しかしこれは図書隊を解散させ社会を正そうとする手塚の兄・慧(松坂桃李)が仕組んだ罠で、検閲実行部隊『良化隊』による急襲を受けたタスクフォースは窮地に陥る……。




18-35. 社長行状記

監督 松林宗惠
出演 森繁久彌久慈あさみ松村浩和小林桂樹司葉子
1966年 (東宝) 95分

解説
「日本一のゴマすり男」 の笠原良三のオリジナル・シナリオを、 「続社長忍法帖」 の松林宗恵が監督したサラリーマンもの。撮影もコンビの鈴木斌。

ストーリー
既製服の大メーカー栗原サンライズの社長栗原弥一郎は、不況を克服するため、“サンライズ・バイタリティ”で立ち向かおうと意欲満々である。営業部の不安を他に、社長自から紳士服の積極的販売にのりだしたが、競争会社の大阪衣料が、中部一帯に強力な販売網をもつ尾張屋デパートに喰い入り、サンライズの地盤をきりくずしにかかったのを知った弥一郎は、直ちに後藤常務、佐々営業部長、小島秘書課長と共に名古屋にくり込み、強力な提携を結ぼうと尾張屋デパート社長小田中を料亭に接待した。だが名古屋芸者一二三は、小田中をそっちのけで、弥一郎にベタ惚れ、弥一郎もつい浮気の虫がはい出して、目尻を下げてしまった。これで折角の親睦もチョン。弥一郎も仕方なく大阪パンドラのマダム町子を訪ねた。だが町子は先客に口説かれている最中であった。意気消沈した弥一郎だが、先客がフランス一流のファッションデザイナー・チオールの日本支配人安中と聞いて、商売気がもりあがった。世界一のデザイナー・チオールと技術提携して、漸新なファッションで販売網を獲得しようとしたのだ。一考を案じた弥一郎は、美人秘書原田伸子を使って安中を口説こうとしむけた。効果、てきめん伸子に魅せられた安中はチオール夫妻が来日するという朗報を伝えた。だが安中は、伸子に本気で結婚を迫まった。伸子は困り果てた末、秘書課長小島を婚約者に仕立て、サービスにつとめる内、現われた小島の妻の手前、話は合わぬし、安中にはばれて大騒動。そんな中で弥一郎は、チオール夫妻を迎えた。特に佐々部長は大ハッスル。夫妻の望むパールアイランド、二見ケ浦を中心に、即日大接待旅行へと向った。




18-36. 難波金融伝 ミナミの帝王 V版13 システム金融 (Snow Country)

監督 萩庭貞明
出演 竹内力古本新之輔竹井みどり天田益男秋野太作
1999年 JSDSS(ジーダス) 79分

解説
竹内力主演、大阪ミナミの高利貸し・萬田銀次郎の活躍を描いた大人気シリーズ第13弾。“システム金融”に手を出したディスカウントショップ店長・磯辺は、銀次郎から借金をし、野口工業に融資する。しかし、会社は倒産し、磯辺は姿をくらましてしまう。

ストーリー
ディスカウントショップ・マルツウの店長、磯崎は“システム金融”に手を出す。手軽に大金を得られることから、どんどん借り入れ萬田金融からも借金をする。しかし、融資した会社が倒産してしまい、成す術の無い磯崎は蒸発。後を追った銀二だが、調べるうちに“システム金融”の黒幕に、日之下興産がいることをつきとめる…。




18-37. 合葬  

監督 小林達夫
出演 柳楽優弥瀬戸康史岡山天音門脇麦桜井美南
2015年 (松竹メディア事業部) 87分

解説
漫画家・杉浦日向子の代表作で、日本漫画家協会賞優秀賞に輝いた歴史コミックを映画化。江戸時代末期の江戸を舞台に、将軍の警護と江戸の治安維持のために結成された彰義隊の3人の隊員たちが運命に翻弄されていく姿を描く。柳楽優弥、瀬戸康史、岡山天音が隊員役を演じるほか、幹部役でオダギリジョーらが出演。

ストーリー
慶応4年(1868年)の鳥羽・伏見の戦い後、将軍慶喜の警護および江戸市中の治安維持を目的として有志により“彰義隊”が結成される。秋津極(柳楽優弥)は、福原悌二郎(岡山天音)の妹・砂世(門脇麦)との婚約を破談にし、自らの意思で彰義隊へ入隊。クールな物腰の反面、主君慶喜に対して熱い忠誠心を持っていた。一方、極と悌二郎の幼なじみ・吉森柾之助(瀬戸康史)は、養子先の笠井家を追い出され、行くあてもなく赴くままに彰義隊へ入ってしまう。彰義隊の存在意義に疑問を呈する悌二郎は、彰義隊の幹部で穏健派・森篤之進(オダギリジョー)に意見するが、柾之助や極と関わり翻弄されていく。そんな中、茶屋の仲居・かな(桜井美南)は、ある事件をきっかけに極に恋心を抱くようになる。しかし、柾之助がかなを好きになり、三角関係となってしまう……。




18-38. 雪国 (Snow Country)

監督 豊田四郎
出演 池部良岸恵子八千草薫久保明三好栄子
1957年 (東宝) 133分

解説
川端康成の原作を 「 「廓」 より 無法一代」 の八住利雄が脚色、 「猫と庄造と二人のをんな」 の豊田四郎が監督した文芸篇。撮影は 「殉愛」 の安本淳。主な出演者は 「あなた買います」 の岸恵子、 「忘却の花びら」 の池部良、 「世にも面白い男の一生 桂春団治」 の八千草薫、 「雨情」 の久保明、森繁久彌。ほかに加東大介、東野英治郎、狼花千栄子、多々良純など。

ストーリー
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった……その雪に深く埋れた名もなき温泉場に日本画家の島村は、昨年知り合った駒子が忘れられずに訪れた。駒子は養母とその息子行男の治療費を稼ぐため芸者になっていた。彼女の義妹葉子は島村と駒子の仲を憎しみの眼で瞶めた。だが、二人の胸には激しい愛の炎が燃え立っていた。二人とも、とうてい結ばれぬ恋だとは覚っていたが、年に一度の逢う瀬が、いつしか二人にこの上ない生きがいとなってしまった。島村には東京に妻子がいた。駒子には養うべき人々と、そのための旦那をもっていた。駒子は島村と一緒に浮き浮きして楽しそうだった。しかし、夜、島村と二人きりになると、駒子はままならぬ二人の運命の切なさに身もだえするのであった。その冬島村が帰京する日駒子は駅に見送りに来ていると、葉子が行男の急変を知らせに来たが、人の死ぬのを見るのはいやと、家とは逆の方向に歩いていった。次の年、約束より遅く島村は来た。すでに養母も行男も死んでいなかった。駒子は旦那とも手を切っていた。そんな彼女に島村は、妻にも話したから一緒に東京へ行こうといった。駒子はその彼を呆然と見つめていたが、あんたは年に一度来る人……といって突伏した。翌晩、酔った駒子が島村の部屋に入って来た。抱き寄せる島村に駒子は悲しく無抵抗であった。翌朝、島村は駒子に、この雪国に来ないことがせめても君への謝罪だといった。愛の激しさ、厳しさ、哀しさを噛みしめながら二人は別れた。その夜、映画会をやっていた繭倉が火事になって、葉子は顔中大火傷を負った。……島村は次の年も、その次の年も姿を見せなかった。駒子は葉子を一生の荷物として、山袴にゴムの長靴をはいて雪の中を今日もお座敷へ急いでいた。




18-39. 君の名は。 

監督 新海誠
出演 神木隆之介上白石萌音成田凌悠木碧島崎信長
2016年 (東宝) 107分  (IMAX)

解説
精緻な風景描写と繊細な言葉遣いなど、独自の世界観で国内外で高い評価を受ける、新海誠監督によるファンタジーアニメ。田舎町で暮らす女子高生と東京で暮らす男子高生が、心と身体が入れ替わる不思議な体験を通して成長していく姿を描く。 「心が叫びたがってるんだ。」 の田中将賀がキャラクターデザインを務める。

ストーリー
千年ぶりとなる彗星の来訪を一か月後に控えた日本。山深い田舎町に小学生の妹と祖母の3人で暮らす女子高校生・宮水三葉(声:上白石萌音)は、憂鬱な毎日を過ごしていた。町長である父の選挙運動や家系の神社の古き風習などに嫌気が差し、友人たちと小さく狭い町を嘆き、東京の華やかな生活に憧れを抱いていた。周囲の目が余計に気になる年頃だけに、都会への憧れは日々強くなっていく。そんなある日、三葉は自分が男の子になる夢を見る。見慣れない部屋、見知らぬ友人、目の前に広がるのは東京の街並み。三葉は、戸惑いながらも念願だった都会での生活を思いっきり満喫するのだった……。一方、東京で暮らす男子高校生、立花瀧(声:神木隆之介)は、日々、友人たちと楽しく過ごしイタリアンレストランでバイト中。同僚の奥寺先輩へひそかに好意を寄せている。ある夜、瀧は奇妙な夢を見る。行ったこともない山奥の町で自分が女子高校生になっているのだ。繰り返される不思議な夢。そして、明らかに抜け落ちている記憶と時間……。出会うはずのない瀧と三葉は、やがてお互いの存在を知る。入れ替わってしまった身体と生活に戸惑いながらも、その現実を少しずつ受け止める二人。運命の歯車がいま動き出す……。




18-40. この首一万石

監督 伊藤大輔
出演 大川橋蔵大坂志郎堺駿二松川清名護屋一
1963年 (東映) 93分

解説
「王将(1962)」 の伊藤大輔が自作を脚色・監督した残酷時代劇。撮影は 「いれずみ半太郎」 の吉田貞次。

ストーリー
人入れ稼業井筒屋の抱え人足で槍奴ぶりが評判の伊達男、権三と浪人者凡河内典膳の娘ちづはかねてからの恋仲だが、娘の夫は武士でなければという典繕の一徹さのために結婚出来ないでいた。そんなことから権三は武士になりたいと願うようになった。ある日、井筒屋に小大名小此木藩から九州へ帰国のための人足を雇いたいという注文が舞い込み、権三は仲間の助十たちと旅に出ることになった。ちづと変らぬ愛情を誓い合い旅に出た権三は、宿で仲間たちから女遊びを誘われても一人宿に止まるのだった。その翌朝、はずみで権三は足の生爪を剥いでしまい行列に落伍することになった。一人旅の権三はのんびり三島の宿にたどりついたが、宿場女郎ちづるがちづと瓜二つなのを知った。有頂天の権三は本陣に槍を立てて務めを終えると、先刻の遊女屋へ引きかえしていた。その頃本陣では、小此木藩の一行と後から到着した渡会藩の行列とがハチ合わせするという事件がもち上っていた。渡会藩が大藩の威力で本陣の明け渡しを申し出たことから小此木藩も対抗上東照神君由来の名槍阿茶羅丸を捧げての道中であると、でまかせの口実で拒んだものの渡会藩の賄賂政策にあっさりその申し入れを受けて脇本陣へ移っていった。ところが、阿茶羅丸だという槍が権三が立て掛けたままになっていたので、渡会藩は小此木藩の芝居に気づいて責任者の切腹を要求した。のっぴきならなくなった重臣たちは身代りの下郎の首で急場を凌ごうと決めて、かねてから武士への憧憬を語っていた権三に目をつけた。遊女屋から連れ戻された権三は、武士の姿に整えられていく自分の姿を眺めてたあいなく喜んでいた。しかし権三の夢は儚なく消えた。いつのまにか白刃に取りまかれている自分と、武士の世界の醜い裏側を見せられた権三だった。がむしゃらの抵抗を試みる権三に武士たちの刃が執拗に迫った。人足たちも権三を救おうと問題の槍を渡会藩から取り戻したのだが、追いつめられて町に飛び出し傷ついた獣のような権三に、代官所の鉄砲は非情に火を吹いた。翌朝の東海道は、何事もなかったように富士の白雪が美しく輝いていた。




18-41. 炎の城

監督 加藤泰
出演 大川橋蔵大河内傳次郎高峰三枝子明石潮薄田研二
1960年 (東映) 98分

解説
「ぼく東綺譚(1960)」 の八住利堆の脚本を、 「あやめ笠 喧嘩街道」 の加藤泰が監督した日本版“ハムレット”。撮影は 「妖刀物語 花の吉原百人斬り」 の吉田貞次。

ストーリー
約四百年の昔、瀬戸内海沼岸に偉容を誇る一城があった。王見城というり城内は、明国から帰ってくる若君王見正人の噂でもちきりだった。だが、正人の留学中に、父勝正を謀殺、城主の位を奪った正人の叔父師景と腹臣の六角直之進、今は師景の妻となっている正人の母時子は、正人の帰国を不安の面持で迎えた。正人は、師景の暴政の数々を耳にし、狂気をよそおって帰城した。だが、正人の狂気も、彼を愛する雪野の目をあざむくことはできなかった。正人は、ある夜、父勝正の血にまみれた亡霊を見た。父の死に疑いをもった正人は一計を案じた。猿楽の一座を招き、師景、時子に天皇を刺し殺した后サビメの古事記の一節を見せた。時子は悲鳴を上げ、師景は席を立った。正人は、ある日、誤まって雪野の父直之進を刺してしまった。正人は直之進の墓前で雪野に会った。すべてを許す雪野を、彼は振りはらわねばならなかった。雪野は死んだ。師景は奸智をめぐらし、雪野の兄祐吾と正人の決闘を図った。師景は、水瓶に毒を入れ、祐吾の剣にも毒を塗り、弓隊まで準備した。祐吾は毒のため血を吐いて倒れ、弓隊は正人をかばう時子の胸を射抜いた。その時、農民一揆の大群が城内になだれこんだ。城は炎上、正人は師景を倒した。




18-42. 本能寺ホテル

監督 鈴木雅之
出演 綾瀬はるか堤真一濱田岳平山浩行風間杜夫
2017年 (東宝) 119分

解説
プリンセス トヨトミ」 のキャスト&スタッフが京都を舞台に描く歴史ミステリー。不思議なエレベーターに乗って、戦国時代に迷い込んだヒロインが、“本能寺の変”前日の織田信長と知り合い、歴史の謎に迫っていく姿がつづられる。綾瀬はるかが奇想天外な出来事に遭遇するヒロインを、堤真一が織田信長を演じる。

ストーリー
何の疑いもなく流れに任せながら日々を過ごしてきた倉本繭子(綾瀬はるか)。勤めていた会社が倒産し、あての無い生活を送っていたところ、付き合って2年の彼氏・吉岡恭一(平山浩行)からプロポーズをされる。周囲からも薦められ、流されるままに婚約した繭子は、恭一の両親の金婚式の祝賀パーティに出席するため京都を訪れる。しかし、予約していたはずのホテルは繭子の手違いで泊まることが出来ず、途方に暮れた繭子がたどり着いたのは、路地裏にひっそりと佇む“本能寺ホテル”だった。「ようこそ、本能寺ホテルへ」と出迎えた支配人(風間杜夫)に導かれるように、繭子は不思議な世界へと迷い込む……。時は1582年。武将と家臣団たちが逗留のため京都・本能寺に滞在している。冷酷非道なお館様を前に、戦々恐々とした日々を過ごす家臣たち。そんな時、風変りな女が一人、寺に迷い込んでくる。噛み合わない会話を繰り広げるその女の正体は“本能寺ホテル”にチェックインしたばかりの繭子であった。そして、突如彼女の前に現れたのは天下統一を目前とした名将・織田信長(堤真一)。繭子は自身も訳のわからぬまま“本能寺ホテル”と1582年の本能寺を行き来しながら、信長と信長に仕える小姓・森蘭丸(濱田岳)との交流を深める中で、次第に信長の人間性に惹かれていく。やがて繭子は、1582年の迷い込んだその日が本能寺の変が起きる前日である事に気付く……。





18-43. TETON 山の声 (Fullmetal Alchemist: The Sacred Star of Milos)

監督 浜野安宏
出演 浜野安宏ふるいちやすしBANJO AI
2016年 58分

解説
「島でぜんぶおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭」(2017年4月20〜23日)上映作品。 浜野安宏は、1986年にワイオミング州、GRAND TETON国立公園に隣接する広大な宅地を買い、GRAND TETON山の麓にログハウスを建てて住み始める。30年間、夏は1ヶ月以上欠かさず滞在し、山の声を聞き続けた。この映画は、浜野安宏のマインドフルなTETONでの生活を通じて、「山の声」を聴き「感じて生きる」ことの大切さを心底から語りかける。

ストーリー





18-44. ニンゲン合格 

監督 黒沢清
出演 西島秀俊役所広司菅田俊りりィ麻生久美子
1999年 (松竹) 109分

解説
昏睡状態から10年ぶりに目覚めた青年が、家族再生に奮闘する様を描いたニンゲン・ドラマ。監督・脚本は 「蜘蛛の瞳」 の黒沢清。撮影を 「フ・レ・ン・チ・ド・レ・ッ・シ・ン・グ」 の林淳一郎が担当している。主演は 「冷血の罠」 の西島秀俊。第11回東京国際映画祭コンペティション正式参加、第49回ベルリン国際映画祭正式出品作品。

ストーリー
14歳の時に交通事故に遭い、昏睡状態が続いていた豊が10年の眠りから突然覚めた。しかし、彼を出迎えたのは懐かしい家族ではなく、藤森という風変わりな中年男だった。産廃処理業を営む藤森は豊の父・真一郎の友人で、離散した豊の家族に代わって数年前から東京郊外にある豊の家の一部を釣り堀に改造して暮らしているらしい。藤森に連れられて、すっかり変わり果てた家に帰る豊。彼は心のリハビリを兼ねて、かつての友人たちに会って失われた時間を取り戻そうとするが、既に成人している友人たちとの溝は埋められる筈もなく、ひとりやりきれなさに苛まれるばかりであった。そんなある日、一頭の馬が豊の家に迷い込んできた。豊は藤森に頼んでその馬を買い取り、ポニー牧場を作り始める。豊の家はかつてポニー牧場を経営していたのだ。暫くすると、今は宗教活動をしている父やアメリカへ留学している筈の妹・千鶴が恋人の加崎と共に帰ってきた。しかし、10年ぶりの家族の再会はどこかぎこちなく、数日後、彼らは再び家を出ていってしまう。また、千鶴から母・幸子の住所を聞いた豊は、父と離婚し自立している母に会いに行くも、どうやら彼女には一緒に生活している誰かがいるようだった。その後、豊はポニー牧場再建に向けてこつこつと働くようになる。ポニー牧場が出来れば、家族も元に戻るかもしれないと信じながら。やがて豊の努力が実り、ポニー牧場が完成した。そして、それに合わせるかのように千鶴や幸子が戻ってきた。父はアフリカに行ってしまったが、再び家族が顔を合わせ、ひとつ屋根の下で生活を始められたことに豊は満足であった。ある晩、家族でテレビを囲んでいると、アフリカへ向かう船の沈没を伝えるニュースの中に父親の名前が流れた。心配する豊たち。だが、暫くして父の無事が確認された。家族の心配をよそに飄々とテレビのインタビューに答える父の姿を見ながら、ホッと胸を撫で下ろす豊たち。その光景は、束の間ながら家族が久しぶりに揃った瞬間でもあった。しかし翌日、千鶴も幸子も再び家を出ていってしまう。その上、豊を事故に遭わせた室田という男が、豊の幸せをやっかみ牧場を滅茶苦茶にしてしまった。全てを破壊された豊は、その時、気づく。自分は10年間のブランクを埋めることばかりを考えて、現実に目を向けようとしなかったと。「そろそろ目を覚ます時が来た」そう悟った豊は、産廃の不法投棄を役所に咎められ雲隠れしていた藤森と一緒に、別の土地で人生をやり直すことを決める。ところが、トラックに馬を乗せようとして、彼はスクラップの下敷きになってあえなく命を落としてしまう。今際の際、豊は藤森に尋ねる。「俺、ちゃんと存在した?」数日後、豊の家族が顔を揃えた。だが、皮肉にもそれは豊の葬儀の日であった。





18-45. セイント☆おにいさん

監督 高雄統子
出演 森山未來星野源鈴木れい子
2013年 (東宝映像事業部) 89分

解説
第13回手塚治虫文化賞短編賞に輝いた中村光の同名人気コミックをアニメ映画化。バカンスのために下界に降臨し、東京・立川のアパートで共同生活をするブッダとイエスのおかしな日常を、宗教における逸話などを交えて描くコメディ。イエス役で森山未來、ブッダ役で星野源がそれぞれ声優に初挑戦している。

ストーリー
螺髪・白毫・長い耳たぶがトレードマークのブッダ(声:星野源)と、長髪・髭・茨の冠がトレードマークのイエス(声:森山未來)は、世紀末を無事に超えバカンスとして下界に降臨、東京・立川のアパートで共同生活を送っている。しかし、近所のおばあちゃんのように細かいお金を気にするブッダは、衝動買いの多いイエスをことあるごとにたしなめるのだった。そんな二人は、周囲に素性がバレないよう細心の注意を払いながら生活していたが、ついセイントな奇跡を発揮してしまい、近隣住民たちはそれを訝る。だが、ブッダとイエスの人間味溢れる行いに、いつしか目には見えない優しく心地よい繋がりが人々に芽生え始めていく……。




18-46. 愛と死をみつめて (Gazing at Love and Death)  

監督 斎藤武市
出演 浜田光夫吉永小百合笠智衆原恵子内藤武敏
1964年 (日活) 118分

解説
大島みち子、河野実の書簡集を 「越後つついし親不知」 の八木保太郎が脚色 「鉄火場破り」 の斎藤武市が監督した青春もの。撮影もコンビの萩原憲治。

ストーリー
高野誠が小島道子に会ったのは、誠が浪人中、阪大病院に入院したときであった。知的な美しい瞳と、清純な顔は、その日から誠の心の中に好感をもってむかえられた。一見健康そうにみえた道子は、誠が東京の大学に入って二年目に再会したときも、病院生活を送っていた。二人の文通は続けられた。入院生活を続ける道子の不安は、誠の手紙によって力づけられていた。高校をどうにか卒業した道子は、希望の大学に入学したが、軟骨肉腫の再発で四度目の入院をした。アルバイトで大阪に来た誠は、病院を訪れては、信州の山々の美しさや、野球の話に楽しい時間を過した。道子も、不安を抱きながらも、強いて明朗にふるまっていた。九月になって、誠は東京に帰ったが、道子は主治医のすすめで、大学を退学すると本格的な、闘病生活に入った。日本には、まだデータのない不治の病と聞かされた道子は、誠に別れの手紙を出すと、淋しく、病室に横たわった。手紙を受け取った誠は、病院にかけつけるとくじける道子の気持を責めた。道子も誠の誠実な愛情に号泣するのだった。一方主治医は、道子の生命を守るために、道子の顔半分がつぶれるという、大手術が必要だと言った。話を聞いた道子の動揺は激しかった。だが誠の愛情の大きさに、ついに道子は決意をきめて、手術を受けた。元気になって社会奉仕をしたい、道子の願いは、病床の中で強く燃えあがった。大手術のあと、容態は順調であった。道子の顔は左半分、白いガーゼで覆われたが、日増しに明るくなっていった。だがある日、道子は健康な右半分に、骨が出て来たのに気づき、愕然とした。再び、手術台の上で道子は二十一歳の誕生日を迎えた。手術半ば、道子はこの世を去った。道子の日記帳には誠との楽しい生活を夢みた、数々の青春の悲しみと喜びが記してあった。






j18-47. ベニシアさんの四季の庭

監督 菅原和彦
出演 ベニシア・スタンリー・スミス梶山正梶山悠仁蜂巣ジュリー蜂巣浄
2013年 (テレコムスタッフ=NHKエンタープライズ(配給協力 クレストインターナショナル)) 98分

解説
京都・大原で築100年以上の古民家に暮らすイギリス人女性、ベニシア・スタンリー・スミスさんの自然と調和した暮らしと、波乱の人生を紹介するドキュメンタリー。監督は、NHK BSで2009年4月から4年間放送された 「猫のしっぽカエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし」 チーフディレクターの菅原和彦。

ストーリー
イギリスの貴族の家系に生まれたベニシア・スタンリー・スミスさんは華やかな社交界で心の安らぎを得ることができず、19歳のとき祖国を旅立った。本当の幸せとは何かを求めて世界を放浪した果てにベニシアさんがたどり着いたのは、京都・大原だった。折々に美しい山里の四季、今に息づく昔からの知恵……そんな大原に理想郷を見出した彼女は、築100年以上の古民家で、およそ100種類ものハーブを庭で育てながら、自然と調和した暮らしを営んでいる。NHK BSで2009年4月から4年間に渡り放送されたドキュメンタリー番組『「猫のしっぽカエルの手 京都大原ベニシアの手づくり暮らし』は、日本の四季にイギリスの伝統を融合させた彼女流の丁寧な暮らしと、ハーブの恵みを余すところなく活用したレシピの数々を紹介し、静かな人気を呼んだ。映画では、一見優雅で羨ましく思えるベニシアさんの暮らしの陰にある、様々な困難も描いていく。結婚と離婚、3人の子供を抱えるシングルマザーとしての苦労、娘の病気、夫の事故……今まで語られることのなかったエピソードを通して、波乱の人生の中でも折れることなく乗り越えてきた彼女の心のしなやかさにもスポットを当てる。エッセイとして書き下ろされた、困難を乗り越える心構えは、本人の朗読で伝えられる。ベニシアさんの庭で育てられるハーブは、料理はもちろん、掃除、美容に至るまで幅広い用途に使われる。本作では、イギリスと日本の文化を融合させたオリジナルレシピの数々を紹介する。春夏秋冬それぞれに美しい表情を見せる庭と、大原の美しい景色をスクリーンで味わえる映画ならではの贅沢と、TV放送でおなじみの川上ミネによるオリジナルの音楽も楽しめる。




18-48. 龍三と七人の子分たち

監督 北野武
出演 藤竜也近藤正臣中尾彬品川徹樋浦勉
2015年 (ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野) 100/111分

解説
元ヤクザと詐欺集団との戦いをコミカルに描く、北野武監督による人間ドラマ。オレオレ詐欺にひっかかったヤクザの元組長と仲間たちが詐欺で人々をだまそうとする若者たちに喝を入れる姿を、高齢化社会やオレオレ詐欺といった社会問題を盛り込みながらつづる。元組長役の藤竜也ほか、近藤正臣など平均年齢72歳のベテラン陣が出演。

ストーリー
70歳の高橋龍三(藤竜也)は、元ヤクザの組長だが“鬼の龍三”と畏れ慕われた時代はもはや過去のもの。現在は家族にも相手にされず、社会にも居場所がなく、大企業で働く息子・龍平(勝村政信)の家に肩身の狭い思いで身を寄せながら「義理も人情もありゃしねぇ」と世知辛い世の中を嘆いている。そんなある日、オレオレ詐欺に引っかかったことをきっかけに、元暴走族の京浜連合と因縁めいた関係になった龍三は「若いヤツらに勝手な真似はさせられねぇ」と、昔の仲間に召集をかける。集まったのは、若頭のマサ(近藤正臣)、はばかりのモキチ(中尾彬)、早撃ちのマック(品川徹)、ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、カミソリのタカ(吉澤健)、神風のヤス(小野寺昭)の7人。どうせ先は長くないのだからと盛り上がった龍三たちは勢いで“一龍会”を結成、京浜連合をことごとく邪魔しまくるのだった。やがて京浜連合のチンピラたちは、調子に乗り始めたジジイたちを疎ましく思うようになり、一龍会vs.京浜連合の対立は龍三や子分の家族を巻き込み一大騒動へと発展していく……。