19-1. 愛の渇き (Longing for Love)

監督 蔵原惟繕
出演 中村伸郎浅丘ルリ子山内明楠侑子小園蓉子
1967年 (日活) 98分

解説
三島由紀夫の同名小説を藤田繁夫と 「夜明けのうた」 の蔵原惟繕が共同で脚色、蔵原惟繕が監督した女性ドラマ。撮影もコンビの間宮義雄。

ストーリー
松本悦子は夫良輔の死後も杉本家に住み、いつか義父の弥吉とも関係をもっていた。杉本家は阪神間の大きな土地に農場をもち、広い邸宅の中には、元実業家の弥吉、長男で大学でギリシャ語を教える謙輔夫妻、園丁の三郎、女中の美代、そして悦子が、家庭のぬるま湯の中で、精神の飢えを内にひめながら暮していた。その中でも悦子は弥吉との関係を断ちがたく、その心は愛に渇ききってしまっていた、その悦子がある日ふと心を動かしたのは園丁の三郎であった。若くひきしまった身体粗野なたくましさは、悦子のいる世界とは異質であるが、何か彼女の渇いた心を満たす湧水のようであった。買物のついでに三郎に靴下を買いあたえた悦子は、三郎に深く魅かれていった。また三郎もそんな妖艶さをひめた悦子に心まどわされるのであった。だが悦子は女の直感で女中の美代が三郎と恋仲であることを見破った。美代は三郎の子供をみごもっていた。表面静かに見える杉本家にとってこれは重大事であった。とりわけ悦子には、美代が三郎の子供を妊ごもったことに、深い嫉妬を覚えていた。胎児を始末させた悦子を恨みながら美代は郷里へ帰った。美代から愛を奪った悦子。だが三郎も家族も何もなかったように働いている。その頃、弥吉は農園を売り悦子を東京に連れてゆく計画をたてていた。その東京行がせまった頃、悦子は三郎に会った。その頃邸では、財産とられた謙輔夫妻を中心に、人間の空虚なうめきが狂い泣いていた。三郎と会った悦子は自分の心の渇きを訴えたが三郎の強い抱擁がただ男の暴力だと知った悦子は、三郎をつき放した。弥吉が血相を変えてかけつけた。鍬をふりあげた弥吉の手をとった悦子は自から、三郎の肩に下した。絶命した三郎の始末を済ませた悦子は、弥吉に別れを告げると自分を始末するため去っていった。






19-2. 二人の世界

監督 松尾昭典
出演 石原裕次郎浅丘ルリ子二谷英明深江章喜浜村純
1966年 (日活) 91分

解説
「黒い賭博師 悪魔の左手」 の小川英と 「男の紋章 竜虎無情」 の松尾昭典が共同でシナリオを執筆、松尾昭典が監督した歌謡もの。撮影は 「四つの恋の物語(1966)」 の岩佐一泉。

ストーリー
英国の豪華船のデッキで雑誌記者川瀬は、無表情で海をみつめる男の横顔に強くひかれた。どこかで見たことのある顔だ。男はフィリッピン人ヴァルガだと名のったが、川瀬が十五年前、新米の記者であった頃、少女殺人事件の容疑者で国外逃亡した北条修一こそ、この男にちがいない。その夜、船内のバーで戸川玲子とグラスをかたむける修一は、川瀬の目からのがれるため、玲子の昔からの友達として踊ってくれるよう頼んだ。翌日、デッキで川瀬に声をかけられた玲子は、修一の過去を聞き、彼に強い関心を抱いた。だが修一は、長崎の港が近づく頃、玲子に置手紙をすると、長崎に降りたった。時効四日前である。不審を抱いた川瀬と玲子は、修一の後を追った。まず修一は昔バンドで働いていた三宅を訪ねたが、三宅は今の幸福な家庭が破壊されるのを恐れ、殺人の目撃者朴の居所を教えて、協力を断った。一方、玲子は修一の身のうえを案じ、川瀬はスクープのチャンスと必死で修一を追った。証人の朴を見つけた修一は、事件の黒幕関根を訪ねた。関根は孤児の修一を育てた恩人であったが、麻薬密売の発覚を恐れ、運び屋の少女を殺し、修一に罪をきせたのだ。だがその頃証人の朴は何者かに消されていた。あせる修一に巴組の藤枝と名のる男が修一を玲子のもとに案内した。玲子は長崎の巴組とは兄弟分の東京戸川興業の跡とり娘であったが、家業を嫌って家を飛び出したことを修一に話した。そして修一にもうどこへも行かないでくれと訴えた。だが修一は二日にせまった時効ぎれまでになんとか真犯人をと、もう一人の証人古田を求めて去った。川瀬もそんな修一を見て協力を約したが、修一はかたくなにそれを断わった。そんな修一を関根が金を出す高梨組の男が襲ったが、危うく戸川興業の幹部小谷に助けられた。だが小谷は、玲子に思いを寄せていたが、玲子が修一に好意を抱くのを見て、心よく思っていなかった。時効まで二日。川瀬も必死であった。古田の女を若松に訪ね、古田が長崎の教会にいることを知った二人は、玲子に知らせて、古田を訪ねさせた。だが玲子は高梨組の手で暴行を加えられ、身の危険を感じた小谷が修一の居所をしゃべった。修一の命を案じた玲子は、関根を訪ね、修一の命と古田の証言を交換しようともちかけたが、関根はその取引を承諾しながら、子分を空港に配した。そのうえ、古田は関根らにつれ去られていた。高梨組の包囲をくぐって、教会に来た修一は、意外ななりゆきに愕然とした。関根を単身訪ね、射殺した修一に対して、警察は修一をヴァルガであると断定、関根殺害は正当防衛であると無罪を言い渡した。玲子と修一の二人の愛の世界は、新しく出発した。




j19-3. おさな妻

監督 臼坂礼次郎
出演 高橋惠子新克利坪内ミキ子佐藤久里子渡辺美佐子
1970年 (ダイニチ映配) 86分

解説
「ジュニア文芸」 に連載された富島健夫の人気小説を 「でんきくらげ 可愛い悪魔」 の白坂依志夫と安本莞二が共同執筆し、監督、撮影も同作の臼坂礼次郎と上原明がそれぞれ担当。

ストーリー
黛玲子は数カ月前、母を病気でなくし、みなし子になってしまった。親族会議の結果、伯母静江の家に引き取られることになった。母をなくした悲しみを、静江は優しくいたわり、今まで通り高校に通わせてくれたが、静江の息子淳一だけは、いかがわしい眼つきで玲子を見ていた。ある日、淳一が静江の留守中、学校から帰った玲子に乱暴しようとしたため、玲子はこの家を出る決心をする。行くあてもなく町をブラブラしている玲子に声をかけたのは由紀子というあまり売れない、小劇場の舞台女優だった。由紀子に事情を説明すると、こころよく、彼女のアパートにとめてくれ、翌日、安いアパートを紹介してくれた。静江の反対を押し切ってアパートでの一人暮しを始めた玲子は、再会した幼稚園時代の先生の紹介で通学のかたわら保育園で子供たちの面倒をみるアルバイトを始めた。生活のためとはいえ、学校を抱えてのアルバイトは苦しかったが、やがてそれもなれた。園児たちはすぐ玲子になつき、ことに母のないまゆみは、玲子を母のようにしたうようになった。やがてまゆみを間にはさみ、父親の吉川と玲子は食事をしたり、買い物をしたりする、楽しい時間を持つようになった。玲子は、吉川をまゆみの父親としてよりも、男性として愛情を感じ始めていた。吉川の強引な求婚に、玲子は高校生という自分の立場と吉川との年齢の開きに躊躇しながらも結婚に合意する。幸せな結婚生活が続いた。しかし、ふとしたきっかけで吉川の昔の恋人を知り、いまもなおその恋人が吉川を愛していることを知った玲子は、大人の愛憎の複雑さが理解できず自暴自棄になって結婚を後悔し、家庭を棄てようとするが、吉川の強い愛情を感じ、やがてまゆみと吉川との静かで平和な生活にもどっていった。




19-4. ちはやふる -上の句-

監督 小泉徳宏
出演 広瀬すず野村周平真剣佑上白石萌音矢本悠馬
2016年 (東宝) 111分

解説
テレビアニメにもなった末次由紀の人気コミックを広瀬すず主演で2部作として映画化した青春ドラマの前編。競技かるたを通じて絆を深めていく高校生たちの熱い思いが描かれる。ヒロインにかるたを教える新を真剣佑、幼なじみの太一を野村周平が演じるなど、若手実力派たちが多数共演。監督は 「カノジョは嘘を愛しすぎてる」 の小泉徳宏。

ストーリー
幼なじみの千早(広瀬すず)・太一(野村周平)・新(真剣佑)の3人は、いつも競技かるたで遊んでいたが、小学校卒業を境に離れ離れになってしまう。千早は一人になっても、競技かるたを教えてくれた新に「強くなったな」と言われたいという純粋な想いで、競技かるたを続けていた。千早は高校生になると、再会した太一とともに競技かるた部を作り、全国大会を目指す。全国大会に行けば新に会えるかもしれないという千早の気持ちを知りながらも、太一はかるた部の一員となる。3人と瑞沢高校かるた部の夏が始まる……。





19-5. ちはやふる -下の句-

監督 小泉徳宏
出演 広瀬すず野村周平真剣佑上白石萌音矢本悠馬
2016年 (東宝) 102分

解説
テレビアニメにもなった末次由紀の人気コミックを広瀬すず主演で2部作として映画化した青春ドラマの後編。競技かるたを通じて絆を深めていく高校生たちの熱い思いが描かれる。ヒロインにかるたを教える新を真剣佑、幼なじみの太一を野村周平が演じるなど、若手実力派たちが多数共演。監督は 「カノジョは嘘を愛しすぎてる」 の小泉徳宏。

ストーリー
千早(広瀬すず)、太一(野村周平)、新(真剣佑)は幼なじみ。いつも一緒にかるたで遊んでいたが、家の事情で新が引っ越し、離れ離れになってしまう。高校に入学した千早は、新にもう一度会いたい一心で、再会した太一と一緒に“瑞沢高校競技かるた部”を作る。創部1年目ながら、エース千早の活躍と抜群のチームワークで何とか強豪・北央学園に勝利。都大会優勝を成し遂げた。そして舞台はいよいよ全国大会へ……-。だが、都大会優勝を報告する千早に、新から思わぬ告白が。“俺、かるたはもうやらん……”。ショックを受ける千早だったが、全国大会に向け、懸命に仲間たちと練習に打ち込むのだった。そんな中、千早は同級生ながら“最強のクイーン”と呼ばれる若宮詩暢(松岡茉優)の存在を知る。全国大会の個人戦で詩暢と対決する可能性がある。新に会って“強くなったな”と言われたい、詩暢に勝てばもう一度、新とかるたを取れるかもしれない……。“クイーンに勝ちたい。”千早の気持ちは次第に詩暢に捕われ、競技かるた部の仲間たちから離れてゆく。そんな彼女の目を覚まさせようとする太一。千早、太一、新の気持ちが、少しずつバラバラになってゆく……。果たして、全国大会の行方は……?




19-6. 桜並木の満開の下に 

監督 舩橋淳
出演 臼田あさ美三浦貴大高橋洋松本まりか三浦力
2012年 (東京テアトル=オフィス北野(配給協力 バンダイビジュアル)) 107/119分

解説
東日本大震災後の茨城県日立市を舞台に、新婚早々最愛の夫を事故で亡くした妻の心の動きを描いたラブストーリー。監督はドキュメンタリーやロードムービーなど幅広く手がける舩橋淳。 「BIG RIVER」 「谷中暮色」 「フタバから遠く離れて」 に続き、本作もベルリン国際映画祭にて上映された。夫を亡くし悲しみに暮れるが事故を引き起こした工員に次第に心動かされて行く妻を 「東京プレイボーイクラブ」 の臼田あさ美が、ひたむきに許しを乞う工員に 「あなたへ」 の三浦貴大が演じている。ほか、 「東京公園」 の高橋洋、 「女優霊」 の柳憂怜、 「かぞくのくに」 の諏訪太朗らが出演。日本さくら名所100選に入った日立市平和通りの桜が主人公の心模様を彩る。

ストーリー
東日本大震災後の茨城県日立市。プレス工場で働く栞(臼田あさ美)は同僚の研次(高橋洋)と結婚。幸せに満ちた生活が始まった矢先、作業中に事故が起こり研次が亡くなってしまう。突然研次を失い、栞に孤独感が襲いかかってくる。事故を引き起こした新人の工(三浦貴大)が謝罪しても、彼を憎む気持ちしか持てなかった。工場は研次の死により経営が傾いていた。工場を立て直すために懸命に働く工。そんな工の姿を見ているうちに、栞の頑なな心は少しずつやわらいでいった。いつしか二人は意識し合うようになっていく。1年後、工場はなんとか再び軌道に乗ったが、栞は工が工場を辞めることを知る。問い詰める栞に、工は思いがけない理由を告げる……。




19-7. 東京夜曲

監督 市川準
出演 長塚京三桃井かおり倍賞美津子上川隆也はやし・こば
1997年 (松竹=松竹富士) 87分

解説
東京の片隅にある商店街を舞台に、そこに暮らす人々の心模様を描いた人間ドラマ。監督は 「トキワ荘の青春」 の市川準。脚本は 「正門前行」 の佐藤信介。撮影に 「トキワ荘の青春」 の小林達比古があたっている。主演は 「瀬戸内ムーンライト・セレナーデ」 の長塚京三と 「スワロウテイル」 の桃井かおり。 「うなぎ」 の倍賞美津子、NHK 「大地の子」 などで注目を集めた映画初出演の上川隆也が共演している。97年、モントリオール国際映画祭コンペティション部門正式上映作品で、市川準が同映画祭の監督賞を受賞した。97年度キネマ旬報ベスト・テン第4位。桃井が主演女優賞、倍賞が助演女優賞を揃って受賞した。

ストーリー
東京の下町にある上宿商店街に、数年前、家族を残して家を飛び出していたきりの浜中康一が帰ってきた。妻の久子は何事もなかったように夫を迎えるが、地元住民のたまり場である“喫茶大沢”では、そんな浜中の噂話に花が咲く。どうも浜中はまっとうな仕事に就いていなかったようだ。久子を秘かに慕っている作家志望の青年・朝倉は、そんな話を聞くうち浜中に反感を感じ、浜中と久子の過去を探り始める。そして朝倉は、喫茶大沢を経営しているたみと浜中が、かつて恋仲であったことを知った。さらに、たみが彼女に熱烈な想いを寄せていた大沢と結婚してしまって、その大沢が病死したころに浜中が街を出ていったこともわかる。喫茶大沢の向かいには、浜中の父親が経営する“浜中電気”があり、帰ってからぶらぶらしていた浜中は、父親に借金があることを知って、浜中電気で働き始めた。まるで商売っ気のない店の様子を見た浜中は、家電屋をやめてゲームソフト専門店を始める。この新しい商売は繁盛し、商店街に新風を巻き起こした。やがて、浜中の店の従業員・野村と、喫茶大沢のアルバイトの中国人・ニンが結婚することになる。喫茶大沢でそのお祝いパーティーを開いた夜、野村とつきあいのあったレコード屋の娘が野村やニンの姿を見つめる様子を目にした朝倉は、ひとつの推論に思い至った。浜中とたみが恋仲にあって、大沢がたみに想いを寄せていた当時、久子は大沢のことが好きだったのではないか。朝倉はパーティーからの帰り道、募る彼女への想いに任せて久子に真実を追求するが、彼ら4人には複雑な大人の恋愛模様があることを逆に思い知らされ、彼女への気持ちを断念する。一方、客の退けた喫茶大沢では、たみが両親の住む岡山へ引っ越しすることを浜中に告げ、ふたりはどちらからともなく、引き寄せられるように肌を重ねてしまった。時は流れて夏になり、朝倉の本が出版されることが決まって、これを機に彼は街を出ていく。同じ日、浜中の家には、岡山に去ったたみから桃が届いていた。





19-8. 魚影の群れ (The Big Catch)

監督 相米慎二
出演 緒形拳夏目雅子佐藤浩市矢崎滋レオナルド熊
1983年 (松竹富士) 135分

解説
厳しい北の海で小型船を操り、孤独で苛酷なマグロの一本釣りに生命を賭ける海の男達と、寡黙であるが情熱的な女達の世界を描く。吉村昭原作の同名小説の映画化で、脚本は、 「セーラー服と機関銃」 の田中陽造、監督は 「ションベン・ライダー」 の相米慎二、撮影は 「ふしぎな國・日本」 の長沼六男がそれぞれ担当。

ストーリー
小浜房次郎は、娘トキ子が結婚したいという、町で喫茶店をやっている青年・依田俊一に会った。彼は養子に来て漁師になっても良いと言う。マグロ漁に命賭けで取り組んできた房次郎は、簡単に漁師になると言われて無性に腹だたしく感じた。店をたたみ大間に引越してきた俊一は、毎朝、房次郎の持ち船(第三登喜丸)の前で待ち受け、マグロ漁を教えて欲しいと頼む。十日以上も俊一を無視し続けた房次郎が、一緒に船に乗り込むのを許したのはエイスケの忠告に従ったからだった。エイスケに指摘されたとおり、房次郎はトキ子が、家出した妻アヤのように自分を捨てて出て行くのではないかとおびえていた。数日間不漁の日が続き、連日船酔いと戦っていた俊一がようやくそれに打ち勝ったある日、遂にマグロの群れにぶつかった。そして、餌がほうりこまれた瞬間、絶叫がおきた。マグロが食いつき凄い勢いで引張られる釣糸が俊一の頭に巻きついたのである。またたく間に血だらけになり俊一は助けを求めるが、房次郎はマグロとの死闘に夢中だ。一時間後、マグロをようやく仕留めた房次郎の見たのは俊一の憎悪の目だった。数ヵ月後に退院した俊一はトキ子と一緒に町を出ていった。一年後、北海道の伊布港に上陸した房次郎は二十年振りにアヤに再会する。壊しさと二十年の歳月が二人のわだかまりを溶かすが、アヤを迎えに来たヒモの新一にからまれた房次郎は、徹底的に痛めつけ、とめに入ったアヤまで殴りつけた。翌日伊布沖でマグロと格闘していた房次郎は、生まれて初めて釣糸を切られ、ショックを受ける。大間港に、すっかり逞しくなった俊一がトキ子と帰って来た。ある日、俊一の第一登喜丸の無線が途絶えた。一晩経っても消息はつかめず、トキ子は房次郎に頭を下げて捜索を依頼する。房次郎は、長年培った勘を頼りに第一登喜丸を発見。俊一は房次郎の読みのとおり、三百キロ近い大物と格闘中であった。重傷を負っているのを見た房次郎は釣糸を切ろうとするが、「切らねでけろ。俺も大間の漁師だから」という俊一の言葉にマグロとの闘いを開始する。二日間にわたる死闘の末、大物は仕留められた。しかし、帰港の途中、来年の春にトキ子が母親になる、生まれた子が男の子だったら漁師にしたいと告げて、俊一は房次郎の腕の中で息を引き取った。





19-9. 子ぎつねヘレン (Helen The Baby Fox) 

監督 河野圭太
出演 大沢たかお松雪泰子深澤嵐小林涼子田波涼子
2005年 (松竹) 108分

解説
目と耳の不自由な子ぎつねの観察記録をつづったベストセラーを映画化。一匹の子ぎつねとともに成長していく少年の姿を描く感動作。人気バンド、レミオロメンが主題歌を担当。

ストーリー
カメラマンの母・律子(松雪泰子)の仕事の都合で、北海道の森の診療所で獣医をしている律子の幼なじみで“将来のお父さん”になる筈の矢島(大沢たかお)のもとに預けられることになった小学生の太一(深澤嵐)は、ある春の日、道端で1匹の子ぎつねを拾う。そして、どうやら母親とはぐれたらしい子ぎつねに自身の姿を重ね合わせた彼は、子ぎつねを診療所に連れ帰るのだが、実はその子ぎつねは目と耳が不自由だったのである。そんな子ぎつねに“ヘレン”と名付けた太一。「体力をつければ、手術を受けられるかもしれない」と言う矢島の言葉を信じた彼は“サリヴァン先生”となってヘレンを育て始める。やがて“ドクター・キタキツネ”の異名を持つ獣医大学の上原教授(藤村俊ニ)によって精密検査が行われることになった。ところが結果は太一の予想に反していた。しかも、このままではヘレンが教授たちの研究材料にされる!「ヘレンには僕が必要なんだ」。ヘレンを大学病院から取り戻した太一はそれからも献身的にヘレンの面倒を看た。だが、ヘレンは度々発作を起こすようになり、遂に息絶えてしまう。しかし、ヘレンと過ごした3週間は、太一に、そして周囲の人たちに生きることの意味を教えてくれた。




19-10. はなちゃんのみそ汁 

監督 阿久根知昭
出演 広末涼子滝藤賢一一青窈紺野まひる原田貴和子
2015年 (東京テアトル) 118分

解説
がんのため、33歳でなくなった安武千恵さんが5歳の娘や夫、家族との日々をつづったブログを基にしたエッセイを映画化したヒューマンドラマ。広末涼子が余命わずかと宣告されたヒロインを演じ、残された数少ない時間をかけて、幼い娘に食の大切さを教えようとする姿が涙を誘う。滝藤賢一がヒロインの夫役で共演。

ストーリー
恋人・信吾(滝藤賢一)との幸福な将来を夢見ていた千恵(広末涼子)はある日、乳癌を宣告される。見えない不安に怯える千恵に信吾は優しく寄り添いプロポーズ、二人は晴れて夫婦となった。ところがその後も抗癌剤治療の影響で卵巣機能が低下、出産を諦めていた千恵だったが、突如妊娠していることが分かる。しかし、産むということは癌の再発リスクが高まり、自らの命が危険にさらされるということであった。やがて周囲の支えで命を懸けて産むことを決意した千恵は、はなを無事出産。だが家族3人となったものの、幸せな日々は長くは続かず、千恵を再び病魔が襲い余命があとわずかと判明する。そんな中、自分がいなくなってもはなが困らないようにと、千恵ははなに鰹節を削るところからみそ汁作りを教え始める……。




19-11. 岸辺の旅 

監督 黒沢清
出演 深津絵里浅野忠信小松政夫村岡希美奥貫薫
2015年 (ショウゲート) 128分

解説
第68回カンヌ国際映画祭 「ある視点」 部門で監督賞に輝いた、黒沢清による夫婦の愛を描くせつないラブストーリー。3年にも及ぶ失踪の後、突然帰宅した夫と共に、かつてお世話になった人々の元を訪れ、愛を深めていくヒロインの姿を描く。深津絵里と浅野忠信が初の夫婦役を演じる。原作は湯本香樹実の同名小説。

ストーリー
3年前に夫・優介(浅野忠信)が失踪してしまってから喪失感を抱えていた瑞希(深津絵里)は、ようやくまたピアノ講師の仕事ができるようになった。そんな中突如優介が帰宅し、自分は死んだと告げる。優介に誘われるまま旅に出た瑞希は、初老の新聞配達員、小さな食堂を営む夫婦、山深くにある農園に住む家族といった3年の間に優介がお世話になった人々を夫と一緒に訪ねていく。空白の時を巡るように優介と一緒に過ごしながら彼が感じたことを同じように感じるとともに、見たことのない優介の一面も知っていく瑞希。二人は改めて互いへの愛を感じていくが、告別のときが近づいていた。





j19-12. ジュブナイル

監督 山崎貴
出演 香取慎吾酒井美紀遠藤雄弥鈴木杏清水京太郎
2000年 (東宝) 100分

解説
 少年たちのひと夏のアドベンチャーを、圧巻のSFX映像でつづるSFファンタジー。淡い初恋やロボットとの友情などを巧みに織り込み、少年たちの成長を描く感動作だ。

ストーリー
2000年、夏。林間学校に参加した祐介、岬、俊也、秀隆は、森の中で祐介に会いに来たと言う小型ロボット、テトラを発見し、祐介の部屋の押入で飼うことにする。祐介たちが集めて来る金属片でカラダを改造したテトラは、更にタイムマシンの研究をしている天才物理化学者にして町の電気屋・神崎のパソコンからインターネットを通じて知識を増やしていった。ところでその頃、地球上空10万キロに巨大宇宙船団が接近、また太平洋沖200海里には1辺が6キロもある巨大な三角錐が出現していた。それは、惑星改造を目論み、地球の海水を奪いにやってきた異星人・ボイド人のものだった。そして、彼らは自分たちの計画に邪魔になる時代に相応しくないオーバーテクノロジーであるテトラを探して、祐介たちの町に現れる。実は、テトラはボイド人たちの脅威から地球を守る為に未来から送られてきたメッセンジャーだったのだ。岬の従姉・範子や神崎になりすまし、テトラを奪おうとするボイド人。彼らは岬を誘拐し、引き替えにテトラを要求してきた。一方、テトラはガンゲリオンという巨大なパワードスーツを作成し、祐介と共にボイド人に戦いを挑んでいく。そして、ボイド人が乳酸菌に弱いことを掴み、ボイド人を撃退。岬の救出にも成功する。ところが、その戦いでテトラが故障し動かなくなってしまった。テトラには、まだ発明されていないディスクが使用されており、神崎をしても直すことは出来なかった……。それから20年後。ロボット工学を学んだ31歳の祐介に、テトラに内蔵されていたディスク発明のニュースが飛び込んだ。早速、テトラを修理する祐介。更に彼は、神崎博士の開発したタイムマシンで、テトラを2000年の夏に送った。ボイド人の計画を少年時代の自分たちに知らせる為に……。





19-13. 野菊の墓 (The Wild Daisy)

監督 澤井信一郎
出演 松田聖子桑原正村井国夫赤座美代子樹木希林
1981年 (東映) 91分

解説
明治末期、15歳の少年と17歳の少女の淡い恋と、周りの大人たちの中傷で悲しい結末をむかえるまでを描く。伊藤左千夫の同名の小説の映画化で、過去に 「野菊の如き君なりき」 の題で木下恵介、富本壮吉で二度映画化されており、今回が三度目。脚本は宮内婦貴子、監督はこれがデビュー作となる澤井信一郎、撮影は森田富士郎がそれぞれ担当。

ストーリー
坂東三十三ヵ所お礼所の一番・杉本寺の石段を踏んでゆく一人の老人がいる。忘れ得ぬ人の魂の回向を思い立ち遍路の旅に出た斎藤政夫老である。老人の脳裏に、半世紀以上も昔の思い出があざやかによみがえっていた。田園風景が美しい江戸川べりの村。政夫の生家は、醤油の醸造業を営む旧家だ。政夫が十五歳のとき、病弱の母きくの世話をするため、従姉で二つ歳上の十七歳の民子が家に住むようになった。以来二人の仲は親密になり、姪の初子や奉行人の間で噂にのぼった。きくは奉行人をいましめ、二人をかばうが、なるべく会わないようにと話す。それが二人の思いを淡い恋心に変えていった。二人の仲を中傷する周りの声は強まり、心配したきくは、政夫を予定より一ヵ月早めて中学の寮に入れることにした。一方、正月には帰るという政夫を待つ民子に縁談が持ち込まれた。拒む民子だが大人たちは一方的に話をすすめる。そのやり方に憤慨した女中のお増は、政夫にその話を知らせた。やっとのことで花嫁行列にかけつけた政夫は、民子の車めがけて、りんどうの花を投げつけることしか出来なかった。それから数ヵ月後、政夫のもとへ帰宅するようにときくから電報が届いた。家に戻った政夫に民子の死の知らせが待っていたのだ。民子は流産し、嫁ぎ先で冷たい仕打ちにあって実家に戻され病床についたまま、帰らぬ人となったのだ。政夫は激しく泣いた。時は流れた。今、政夫は残り少ない人生を、民子の清らかな魂の故郷へむかって巡礼の旅に出ようとしていた。





19-14. 劇場版 SPEC 天 

監督 堤幸彦
出演 戸田恵梨香加瀬亮伊藤淳史栗山千明三浦貴大
2012年 (東宝) 119分

解説
戸田恵梨香、加瀬亮主演で超能力捜査官の活躍を描いたテレビドラマ 「SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」 の劇場版。スペシャルゲストの浅野ゆう子と伊藤淳史が、それぞれ謎の中国人マダムと本人役を怪演する。堤幸彦監督ならではのユニークな映像と、先の読めないハードな展開に引き込まれる。

ストーリー
通常の捜査では解決できない特殊な事件を専門に扱う「警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係」通称“未詳”。特別捜査官の当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文焚流(加瀬亮)のもとに“ミイラ死体殺人事件”のニュースがもたらされる。これはスペックホルダーによる犯行なのか。事件はやがて国家をも揺るがす大事件となっていく。シンプルプランとは?ファティマ第3の予言とは?その時、当麻の左手に激痛が走る……。





19-15. 快盗ルビイ 

監督 和田誠
出演 小泉今日子真田広之水野久美加藤和夫伊佐山ひろ子
1988年 (東宝) 96分

解説
おしゃれでチャーミングな快盗ルビイの犯罪と恋を描く。ヘンリー・スレッサーの 「快盗ルビイ・マーチンスン」 の映画化で、脚本・監督は 「麻雀放浪記」 の和田誠、撮影は 「上海バンスキング(1988)」 の丸池納がそれぞれ担当。主題歌は、小泉今日子( 「快盗ルビイ」 )。

ストーリー
ある日DM発送会社に勤める林徹のマンションに女の子が引っ越してきた。彼女は加藤留美というフリーのスタイリストだが、本当はルビイという名の快盗だった。徹はさっそく相棒として犯罪を手伝わされる。まずは巧妙な手口で食料品屋の親父から売上げ金を盗んだが、中味は大金とは程遠くて経費を差し引くと赤字だった。頭の切れるルビイと頼りない徹だったか、二人は次に銀行襲撃を計画した。しかし、これも徹が脅迫の手紙と買物メモを間違えて失敗。ルビイは凝りずに宝石店詐欺を試るが、あっさり店主に見抜かれてしまう。犯罪計画を楽しむような二人は豪華マンションに忍び込むが、管理が厳しくて脱出するのに精一杯で物を盗むどころではなかった。徹はルビイが好きだが、彼女には恋人がいた。ルビイが喧嘩した恋人に宛てた手紙を取り戻してほしいという。徹は気やすく引き受けるが、運悪く警察に捕まってしまう。気のいい刑事の計らいで徹はすぐに釈放されたが、ルビイはそんな自分のワガママを聞き入れてくれた彼を暖かく迎えた。そして今度は徹のほうが、新しい犯罪計画をルビイに持ちかけるのだった。




19-16. 清須会議 

監督 三谷幸喜
出演 役所広司大泉洋小日向文世佐藤浩市妻夫木聡
2013年 (東宝) 138分

解説
三谷幸喜が17年ぶりに手がけた小説を自らメガホンを握り、映画化。織田信長亡き後、その家臣たちが集まり、後継者問題や領地の配分を決めた、清須会議。日本史上、初めて合議によって歴史が動いたとされる、同会議に参加した人々、それぞれの思惑など、入り乱れる複雑な心情が明らかになる。三谷にとっては本作が初の時代劇。

ストーリー
天正10年(1582年)。本能寺の変で、一代の英雄・織田信長(篠井英介)が明智光秀(浅野和之)に討たれた。跡を継ぐのは誰か……。後見に名乗りをあげたのは、筆頭家老・柴田勝家(役所広司)と後の豊臣秀吉・羽柴秀吉(大泉洋)であった。勝家は、武勇に秀で聡明で勇敢な信長の三男・信孝(坂東巳之助)を、秀吉は、信長の次男で大うつけ者と噂される信雄(妻夫木聡)を、それぞれ信長の後継者として推す。勝家、秀吉がともに思いを寄せる信長の妹・お市様(鈴木京香)は、最愛の息子を死なせた秀吉への恨みから勝家に肩入れ。一方、秀吉は、軍師・黒田官兵衛(寺島進)の策で、信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方に付け、秀吉の妻・寧(中谷美紀)の内助の功もあり、家臣たちの心を掴んでいくのだった。そんな中、織田家の跡継ぎ問題と領地配分を議題に“清須会議”が開かれる。会議に出席したのは、勝家、秀吉に加え、勝家の盟友で参謀的存在の丹波長秀(小日向文世)、立場を曖昧にして強い方に付こうと画策する池田恒興(佐藤浩市)の4人。様々な駆け引きの中で繰り広げられる一進一退の頭脳戦。騙し騙され、取り巻く全ての人々の思惑が猛烈に絡み合っていく……。





19-17. 家族はつらいよ2 

監督 山田洋次
出演 橋爪功吉行和子西村雅彦夏川結衣中嶋朋子
2017年 (松竹) 113分

解説
巨匠・山田洋次監督によるホームコメディの第2弾。熟年離婚の危機を乗り越えた平田家の面々が新たな騒動に巻き込まれるさまがつづられる。一家の主である周造を橋爪功、その妻・富子を吉行和子が演じるなど、個性派キャストが再集結。一家に新たな騒動を引き起こす周造の同級生・丸田を小林稔侍が演じる。

ストーリー
周造(橋爪功)と富子(吉行和子)の熟年離婚の危機から数年後。気ままなドライブを楽しんでいる周造だったが、周造の車にへこみ傷が目立つようになり、家族は高齢者の危険運転を案じる。そして運転免許を返納させようとするが、頑固な父を誰が説得するか兄妹夫婦でなすりつけ合っているのを見透かした周造が激怒。平田家は再び不穏な空気に包まれる。周造の免許返納について家族会議を開くため兄妹夫婦たちが集められたところ、前日に周造が家に泊めていた高校時代の友人・丸田(小林稔侍)が息を引き取っており、てんやわんやの大騒ぎになる。




19-18. 椿三十郎 (Sanjuro)  

監督 黒澤明
出演 三船敏郎仲代達矢加山雄三平田昭彦田中邦衛
1962年 (東宝) 95分

解説
用心棒」 の菊島隆三、黒澤明と 「葵の暴れん坊」 の小国英雄が共同で脚本を書き、 「用心棒」 の黒澤明が監督した時代劇アクション。撮影は 「 「挑戦」 より 愛と炎と」 の小泉福造。パースペクタ立体音響。

ストーリー
ある城下町の夜、薄暗い社殿で九人の若侍が密議をこらしていた。城代家老睦田に、次席家老黒藤と国許用人竹林の汚職粛清の意見書をさし出して入れられず、大目付菊井に諭されてこの社殿に集っていたのだ。その真中へよれよれの紋付袴の浪人者が現れて、九人をびっくりさせた。その上、その浪人者は、城代家老が本物で、大目付の菊井が黒幕だといって皆を仰天させた。その言葉の通り、社殿は大目付輩下の手の者によって取りまかれていた。あおくなった一同を制してその浪人者は、九人を床下へかくし一人でこの急場を救った。その時、敵方の用心棒室戸半兵衛はその浪人者の腕に舌をまいた。かしこまる若待をみた浪人者は、急に可哀そうになり力をかすことにした。城代家老は屋敷からはすでにどこかへ連れていかれた後であり、夫人と娘の千鳥が監禁されていた。浪人者はこの二人を救い出し、若侍の一人寺田の家にかくまった、寺田の家は黒幕の一人黒藤の隣だ。黒藤の屋敷は別名を椿屋敷と言われるくらい、椿の花が咲いていた。夫人の言葉にその浪人者は名を椿三十郎と名乗った。皆は、城代家老の居場所を探すに躍起だ。黒藤か菊井か竹林の家のどこかに監禁されているはずだ。三十郎は敵状を探るため、室戸を訪ねていった。室戸は三十郎の腕を買っているので、即座に味方につけようと、菊井、黒藤の汚職のことを話し、自分の相棒になれとすすめた。三十郎を信用しない保川、河原は、三十郎に裏切られたら大変だと、三十郎の動向をうかがうことになった。三十郎を支持する井坂、河原も、あの二人には任せておけないと三十郎の後をつけた。しかし室戸と三十郎に見つけられた四人は当見をくって捕えられた。三十郎は室戸の隙をみて、番人を斬り倒し、自分をしばらせて四人を逃がした。三十郎はこれで室戸から用心棒稼業を馘になってしまった。寺田の家に帰って来た三十郎は若侍をどなりつけた。その時、夫人が椿屋敷から流れてくる川の中から意見書の紙片を拾って来た。この川は寺田の庭の隅を通っているのだ。家老は黒藤の家に監禁されていると決った。三十郎は、黒藤の警固を解かせるため、むほん人の一味が光明寺に集っていると知らせに行くことになった。その留守になった合図に椿の花を川に流すというのだ。計略は図に当った。警固の一隊は光明寺に向った。だが、光明寺の門の上に寝ていたという三十郎の言葉に嘘がばれてしまった。光明寺には門がないのである。三十郎は捕えられた。しかし、臆病な竹林は三十郎の罠にかかって、川に椿の花を流した。若待必死の斬込みで城代家老は救われた。三十郎と半兵衛の一騎打は??。三十郎は若侍九人の見送りをうけて静かに去っていった。






19-19. 宇宙兄弟#0

監督 渡辺歩
出演 平田広明KENN沢城みゆき三瓶由布子チョー
2014年 (ワーナー・ブラザース映画) 90分

解説
宇宙飛行士を目指す兄弟の姿を描き、テレビアニメや実写映画にもなった、小山宙哉原作の人気コミックのエピソード0にあたる物語をアニメ映画化。宇宙飛行士になる夢を抱きながら自動車会社に勤める兄と、彼より一足早く宇宙飛行士になった弟が抱える悩みや、彼らに多大な影響を与える宇宙飛行士のジェイ兄弟との交流を描き出す。

ストーリー
南波六太と日々人の兄弟は幼い頃、宇宙飛行士になってそろって月面に立とうと誓い合っていた。成長し宇宙飛行士になった日々人(声:KENN)は、月面着陸ロケットCES-43に搭乗するブライアン・J(声:大塚明夫)のバックアップクルーに新人ながら選ばれた。実力も経験も足りず悩む日々人に、ブライアンは辛くて楽しいこのチャンスを存分に経験しろと言葉をかけ月に向かっていった。任務を果たし地球へ帰還する際、CES-43は事故を起こし墜落。ブライアン他2名は命を落とす。この事故を受けてNASAでは宇宙開発の有人ミッションの見直しを検討し始める。自動車会社で新車種の開発に携わっていた六太(声:平田広明)は、現実味のない夢物語ばかり語っていたため会社から煙たがられ、地方への出向を命じられていた。そんな自分が日々人にかけられる言葉などないと無力さを感じる六太の脳裏に、ある言葉が浮かぶ……。




19-20. ボクの妻と結婚してください。

監督 三宅喜重
出演 織田裕二吉田羊原田泰造込江海翔森カンナ
2016年 (東宝) 83/114分

解説
織田裕二が愛する家族の未来のために、再婚相手を探す男を演じるラブストーリー。世の中のいろんな事を好奇心で“楽しい”に変えてきた放送作家が、人生の最後に妻のために最高の結婚相手を探そうとする姿が描かれる。吉田羊が主人公の妻を演じ、 「県庁おもてなし課」 など人間ドラマに定評のある三宅喜重が監督を務める。

ストーリー
バラエティ番組の放送作家をしている三村修治(織田裕二)は12本ものレギュラーを抱え、忙しい日々を送っていた。ある日、体に異変を感じた彼は検査を受け、末期のすい臓がんで、余命6ヶ月と宣告される。だが、1日でも長く延命し家族と静かに過ごすという最期の過ごし方ではおもしろくない。放送作家として、今までずっと世の中の色々なことを好奇心で“楽しい”に変えて来た修治はそんな思いから、家族に遺す“最期の企画”を練り始める。専業主婦の妻・彩子(吉田羊)は、小学生の息子・陽一郎を抱え苦労するだろう。また、気丈そうに見えてもろいところがあるので、何とかして笑顔にしてあげたい。そんなことを思っていたとき、結婚相談所の看板を見かける。修治は、自分がいなくなっても妻が前を向いて進めるように、妻の結婚相手を探すことにする。婚活市場を勉強し始めた修治は、自身も同僚の手を借りてお見合いパーティーに潜入する。さらに、元仕事仲間の知多かおりが現在結婚相談所の社長であると知ると、なんとか協力を取り付け、妻にとって最高の結婚相手を探し出してもらう。そして現れたのは、真面目で誠実なインテリア会社社長、伊東正蔵(原田泰造)だった。修治の、まさに命がけのプロジェクトが始まる……。




19-21. 俺は待ってるぜ

監督 蔵原惟繕
出演 石原裕次郎北原三枝二谷英明波多野憲小杉勇
1957年 (日活)

解説
石原慎太郎が弟の裕次郎の歌ったヒット・ソングにヒントを得て書き下したサスペンス・ドラマ。監督は新人、蔵原惟繕が昇進第一作として当り、「危険な年齢」の高村倉太郎が撮影した。主演は「鷲と鷹」の石原裕次郎、「勝利者」の北原三枝。二人を中心に菅井一郎、二谷英明、草薙幸二郎らが助演する。

ストーリー
波止場の近くの小さなレストラン“リーフ”のマスター譲次は元ボクサーだった。喧嘩で人を殺したのを苦にしてやめたのだ。彼の兄はブラジルにいて、一年後には彼を呼んでくれる約束だっだ。約束の日も近い或る夜、兄への手紙を出しに行った帰り、港をさ迷っていた歌手早枝子を救った。彼女は働いていたキャバレー“地中海”の経営者、波止場の顔役柴田弟に言い寄られて、花瓶で頭を殴りつけ、殺したと思いこんでいた。翌日から、彼女は“リーフ”で、はたらき始めた。互いに二人は心ひかれた。映画見物の帰り、柴田弟に見つかった早枝子は譲次にかばわれ難を逃れた。彼女は店の常連の年老いた医者内山から譲次の身上話をきいた。内山は一年前酔って手術をし、誤って一人の男を殺して以来大酒飲みになってしまった男だった。譲次が兄と約束した日が来ても、何の音さたもなかった。彼の手紙が返送されてきた。譲次の心は疑惑でおおわれた。その夜、店に柴田兄弟が現れ早枝子を返せと迫った。ボクサーくずれの柴田兄が譲次をなぐりつけた。譲次はそのままそれに耐えた。人を殺した記憶が蘇ったからだ。彼らの一人が持っていたメダルは彼が兄にやったものと似ていた。調査すると、兄は船に乗っていず、何者かに一年前殺されていた。“地中海”に連れ去られた早枝子から例のメダルは兄のものと確認してきた。警察で彼は兄の殺された現場写真を見た。死体のそばに内山医師が写っていた−−。譲次が手がかりの人竹田を探しているのを知った柴田は竹田を殴り海へ放りこんだ。彼を救った譲次は兄が金のため柴田兄に殺されたことを知った。彼は単身“地中海”に乗りこみ、凄じい殴り合いの末、復讐を遂げた。−−彼は早枝子と結ばれた。




19-22. 22年目の告白―私が殺人犯です―

監督 入江悠
出演 藤原竜也伊藤英明夏帆野村周平石橋杏奈
2017年 (ワーナー・ブラザース映画) 94/117分

解説
韓国映画 「殺人の告白」 を基に、時効となり、突如、姿を現した殺人事件の犯人によって翻弄されていく人々を描くサスペンス。藤原竜也が犯人の曾根崎に扮し、法で裁けないのをいい事に大胆不敵な行動で刑事や被害者遺族の神経を逆なでしていく怪演を披露。刑事の牧村を伊藤英明、被害者遺族を夏帆、岩松了ら実力派が共演する。

ストーリー
かつて5人の命が奪われ、未解決のまま時効を迎えた凄惨な連続殺人事件。その犯人が、事件から22年後、突然自ら名乗り出てくる。盛大に開かれた記者会見場に現れたのは、自身の告白本を手に、不敵な笑みを浮かべる曾根崎雅人(藤原竜也)という男だった。素顔をカメラの前にさらし、肉声で殺人を告白する曾根崎の登場にネットは熱狂。賛否両論を巻き起こしつつ、その告白本はベストセラーとなる。曾根崎の派手な行動は、それだけでは終わらなかった。マスコミを伴った被害者遺族への謝罪、執念深く事件を追い続ける刑事・牧村(伊藤英明)への挑発、そしてサイン会まで……。彼の行動のすべてがあらゆるメディアを通じて発信され、SNSで拡散してゆく。だがそれは、日本中を巻き込んだ新たな事件の始まりだった……。日本中を釘付けにした告白の行方は……?やがて事件は意外な展開を見せるが……。






19-23. 深夜食堂  

監督 松岡錠司
出演 小林薫高岡早紀柄本時生多部未華子余貴美子
2015年 (東映) 119分

解説
繁華街の路地裏にある小さな食堂を営むマスターと、彼が作る懐かしい味を求めて集う客たちとの交流を描く、安倍夜郎の人気コミック 「深夜食堂」 。同作をテレビドラマ版と同じく、小林薫を主演に迎えて映画化。寡黙なマスターとワケありな客たちが巻き起こす心温まるエピソードを紡ぐのは、人間ドラマに定評のある松岡錠司。

ストーリー
街のある一角に、深夜0時になると開くめしやがある。掲げられたメニューは豚汁定食、ビール、酒、焼酎しかないが、マスター(小林薫)ができるものだったら言えば作ってくれる。めしやにはいつもマスターの味と居心地の良さを求めて人が集まる。ある日、店に骨壷が置き忘れられていた。常連客たちが骨壷をネタにああだこうだ話に花を咲かせていたところ、久しぶりにたまこがやってくる。最近愛人を亡くした彼女は、新しいパトロンを探している最中だった。めしやに住み込みで働くことになったみちるも、常連客のあけみに会いたいと騒ぐ謙三も、何か訳ありの様子。マスターのどこか懐かしい味は、そんな彼らのおなかも心も満たしていく。





19-24. ハッピーウエディング

監督 片島章三
出演 吉岡里帆ミッキー・カーチス蛭子能収小林よう小園優
2015年 (アルタミラピクチャーズ) 77分

解説
「ギャラクシー街道」 、 「舞妓はレディ」 などで助監督を務めてきた片島章三の初監督作品。熱血漢だがドジな性格の新米ウエディングプランナー、相川愛子は、娘が結婚式を挙げないことを寂しがる母親の相談を受け、何とか結婚式を成功させようと奔走する。出演は 「ゆとりですがなにか」 の吉岡里帆、 「溺れるナイフ」 のミッキー・カーチス。

ストーリー
新米ウエディングプランナーの相川愛子(吉岡里帆)は、結婚式をサポートする今の仕事が大好き。しかし、思い込むと突っ走ってしまう熱血派の性格に加えて、究極のドジ。そのためにいつも失敗を繰り返し、上司や同僚に迷惑ばかりかけていた。それでも、横浜で釣船店を営む両親の下、人情と愛情たっぷりに育てられたせいか、どこか憎めない性格。そんなある日、愛子の職場、株式会社オールハピネスでは、1人の母親から“婚約中の娘が結婚式を挙げない。”という悩みの相談を受ける。その寂しそうな後ろ姿を目にして、“絶対に娘さんの結婚式をしましょう。私にお任せください!!”と約束してしまう愛子。ところが、何度説得に行っても“結婚式は絶対しない!!”と頑なに拒む娘の玲花。その裏には、父・泰男が抱えるある理由があった。愛子のまっすぐな想いと、彼女を支えるサービスキャプテン、カメラマン、シェフ、衣装係など仕事場の仲間たち。さらには、家族の協力を得て、事態はついに驚きの展開に。果たして無事に結婚式を挙げることはできるのか……!?




19-25. 帝一の國 

監督 永井聡
出演 菅田将暉野村周平竹内涼真間宮祥太朗志尊淳
2017年 (東宝) 118分

解説
日本一の名門校で生徒会長を目指す高校生たちの戦いを描く、古屋兎丸の人気コミックを菅田将暉主演で映画化した青春コメディ。野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗といった若手注目株が多数共演し、主人公のライバル役をユニークに演じる。監督は 「世界から猫が消えたなら」 など数々の話題作を手がけてきた永井聡。

ストーリー
全国屈指の優秀な学生800人が通う日本一の名門校・海帝高校。4月、新学期を迎え、赤場帝一はある夢を胸にこのエリート校に入学する。彼の夢は、総理大臣になり自分の国を作ること。政財界に強いコネを持つ海帝高校の生徒会長になれば将来の内閣入りが確約されると言われており、帝一はライバルを全員蹴落とし何が何でも生徒会長になると決めている。帝一の代の生徒会長選挙は2年後。誰よりも早く動き始め、野望を実現させるためにはどんな汚いことも辞さない覚悟の帝一だったが、想像を絶する罠と試練が待ち構えていた。




19-26. アゲイン 28年目の甲子園 

監督 大森寿美男
出演 中井貴一波瑠和久井映見柳葉敏郎門脇麦
2014年 (東映) 120分

解説
元高校球児たちが憧れの甲子園を目指して白球を追う“マスターズ甲子園”をテーマにした人間ドラマ。とある事件によって甲子園への夢を絶たれた元球児たちが、過去を清算するべく、再び白球を追う姿が父親と子供たちのドラマを交えてつづられる。中井貴一、柳葉敏郎らが野球に挑戦し、実際に甲子園球場で撮影が敢行された。

ストーリー
46歳の坂町晴彦(中井貴一)は元高校球児だが白球を追った日々は遠い昔、もはや仕事に張りはなく、離婚した妻が亡くなって以来、一人娘の沙奈美(門脇麦)とも絶縁状態が続いている。そんなある日、坂町を元チームメイトだった松川典夫の娘・美枝(波瑠)が訪ねてくる。坂町は彼女から、長年音信不通だった松川が昨年の震災で死亡したことを知らされる。美枝は別居していた父親の遺品の中に、坂町や元エースの高橋直之(柳葉敏郎)らチームメイト全員に宛てた27年分の年賀状の束を見つけ、なぜ毎年投函せずにいたのか知りたいと思い、そこに書かれた住所を訪ねてきたのだという。元高校球児が再び甲子園を目指す“マスターズ甲子園”のスタッフとして働く美枝は、坂町に大会への参加を勧めるが、いわゆるサビついたオヤジとなっている坂町は「今さら」と断るのだった。だが、美枝にだけは話したくない本当の理由が別にあった。坂町たちが甲子園に行けなかった原因は美枝の父にあったのだ。28年前のある事件によって夢を断たれた坂町は、自らの思いにフタをしたつもりでいた。それは高橋も同じで、甲子園に出てさえいればプロになっていたかも知れないと、リストラで就職活動中の自分の冴えない現状をあの夏のせいにしていた。そんな中、父親の思い出を追い求める美枝と接するうち、坂町は沙奈美と正面から向き合うことをせず、ずっと逃げてきたことに気付く。現実と折り合いをつけ、思い出を上手に諦めることで自分自身を騙し続けてきた日々……。“あの夏”に決着をつけなければ前へは進めない、と坂町はマスターズ甲子園への参加を決意、再び人生のグラウンドへ走り出す。そして坂町は、事件のことを知りながらずっと姿を消していた元マネージャー・立原裕子(和久井映見)に一通の手紙を送る。やがて野球部OBたちの前に現れた裕子の口から、彼らが全く知らなかった真実が語られる……。




j19-27. ホットロード

監督 三木孝浩
出演 能年玲奈登坂広臣木村佳乃小澤征悦鈴木亮平
2014年 (松竹) 93/119分

解説
80年代に 「別冊マーガレット」 に連載され、人気を博した紡木たくの同名少女コミックを能年玲奈主演で実写映画化した青春ドラマ。不幸な生い立ちから、行き場を失った少女が暴走族の少年と出会い、恋に落ちる姿がつづられる。三代目J Soul Brothersの登坂広臣がヒロインの相手役・春山を演じ、映画初出演を果たす。

ストーリー
14歳の少女・宮市和希(能年玲奈)の家には、亡き父の写真すらない。母(木村佳乃)は結婚前から別の男性に思いを寄せており、和希は自分は望まれて生まれた子ではないと思っていた。母の誕生日に万引きを働き警察に捕まるが、母は迎えに来ず、和希は孤独感を募らせる。ある日、転校生の絵里(竹富聖花)に誘われるまま行った夜の湘南で、暴走族Nightsのメンバーである春山洋志(登坂広臣)と出会う。はじめは衝突し傷つけあっていたが、次第に春山に惹かれていく和希。そんな中、仲間たちから慕われていた春山はNightsのリーダーとなり、敵対するチーム・漠統との抗争に身を投じていく……。




19-28. 映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館ミュージアム

監督 寺本幸代
出演 水田わさび大原めぐみかかずゆみ木村昴関智一
2013年 (東宝) 104分

解説
人気アニメの劇場版第33弾は、ドラえもんの首につけられた鈴と、四次元ポケットから取り出すひみつ道具の謎を巡る物語。謎の男・怪盗DXに盗まれた鈴を探すため、未来世界にある 「ひみつ道具博物館」 を訪れたのび太たちが、さらなる事件に巻き込まれていく。人気テクノポップユニット、Perfumeが同シリーズの主題歌を初めて担当。

ストーリー
ドラえもん(声:水田わさび)が昼寝をしていたところ、怪盗DXという謎の男が鈴を盗んでいく。気付いたドラえもんが名探偵のようになれるシャーロック・ホームズセットで鈴の行方を探すと、未来にあるひみつ道具博物館に手がかりがあることがわかる。未来へ向かったのび太(声:大原めぐみ)たち一行は、博物館に到着。見習い道具職人でガイドのクルトにすべてのひみつ道具が展示されている博物館を案内してもらうが、そこでもまた怪盗DXにより次々にひみつ道具が盗まれる事件が起こる……。






19-29. クレージーの無責任清水港

監督 坪島孝
出演 植木等谷啓ハナ肇団令子平田昭彦
1966年 (東宝) 94分

解説
「花のお江戸の法界坊」 の小国英雄がシナリオを執筆、 「ここから始まる」 の坪島孝が監督した時代喜劇。撮影は 「若い娘がいっぱい」 の小泉福造。

ストーリー
東海道清水港。売出し中の清水次郎長も経済成長のひずみで一家の台所は火の車。そんなところへ、信州は沓掛の生れの風来坊追分の三五郎がやってきた。しかしこの三五郎は一宿一飯の恩義で、肩のこる思いをするのは真平と、次郎長一家へ草鞋を脱がず、腹をへらしたあげく、無銭飲食で牢へ入った。一方、次郎長一家では、大瀬の半五郎がふとしたことから、次郎長一家の売り出しを恨む鷹岡の勘助の身内と喧嘩になり大瀬の半五郎の身代りを買ってでた、人の良い石松が牢暮しの破目におちいった。牢内で会った石松と半五郎はたちまち意気投合。やがて数日がすぎ出所した石松は次郎長のもとに帰り、三五郎はまた宿無しの身となった。が、ある日、小料理屋「ひさご」で一人娘お美代を相手に、石松から聞きかじっていた、大瀬の半五郎の武勇伝をわがことのようにぶち、悦にいっていた。ところが、これをまわりで聞いていたのが用心棒の大河原玄蕃を雇って次郎長一家へ殴りこみをかける途中の勘助身内の子分たちだった。引っこみがつかなくなった三五郎は、奇抜な計画で玄蕃を倒し逃げだしたものの、仕返しを恐れて石松の居候となった。またそんな時、新助、清次という兄弟が親の仇討ちの助太刀を頼みにやってきた。そこへ勘助が横山隼人という用心棒を雇い、喧嘩状を送ってきた。次郎長は石松に破門を言い渡し、怒った三五郎と石松は恋しいお雪やお美代に別れをつげ次郎長のもとを去った。が、途中三五郎を追ってきた新助、清次の兄弟が、仇とねらう隼人をみつけだし、仕方なく三五郎は、隼人と対して奇策で隼人を倒した。そこへお美代がかけつけ次郎長の窮状を告げた。石松は三五郎のとめるのをふりきって、次郎長を助けるべく勘助との喧嘩場へむかった。三五郎も仕方なく後を追い、自分がカマユデになることを条件に喧嘩を無事おさめ、得意の忍術でカマをぬけだした。数日後、次郎長のもとにたち帰った三五郎は、おどろき、あきれる次郎長をしり目に、またゴキゲンで旅にでていった。




19-30. 四月は君の嘘 

監督 新城毅彦
出演 広瀬すず山?賢人石井杏奈中川大志甲本雅裕
2016年 (東宝) 122分

解説
テレビアニメ化もされた新川直司の人気コミックを、広瀬すず&山崎賢人主演で実写映画化したラブストーリー。母親の死をきっかけにピアノが弾けなくなってしまった少年が、ひとりのヴァイオリニストとの出会いを機に再生していく姿が描かれる。主演の2人のほかにも、石井杏奈や中川大志など若手実力派が脇を固める。

ストーリー
完全無欠かつ正確無比な演奏で、“ヒューマンメトロノーム”と呼ばれた天才ピアニストの有馬公生(山崎賢人)は、母の死を境にピアノが弾けなくなっていた。高校2年生に進級した4月のある日、幼馴染の澤部椿(石井杏奈)と渡亮太(中川大志)に誘われた公生は、ヴァイオリニストの宮園かをり(広瀬すず)と出会う。勝気で自由奔放、まるで空に浮かぶ雲のように掴みどころのない性格のかをりの、自由で豊かで楽しげな演奏をきっかけに公生はピアノと“母との思い出”に再び向き合い始める。一方、かをりが抱える秘密にも大きな変化が訪れる……。彼女がついた嘘とは、一体何なのか……?






19-31. 残穢ざんえ ―住んではいけない部屋―

監督 中村義洋
出演 竹内結子橋本愛佐々木蔵之介坂口健太郎滝藤賢一
2016年 (松竹) 107分

解説
第26回山本周五郎賞に輝いた小野不由美の小説を 「白ゆき姫殺人事件」 の中村義洋監督が映画化したミステリー。ある小説家が、奇妙な“音”のする部屋に住む女子大生から投書を受け取ったことをきっかけに、謎の原因を探り、部屋を巡る驚くべき真相に迫っていく姿を描く。小説家役を竹内結子、女子大生役を橋本愛が演じ、初共演を果たす。

ストーリー
小説家である私(竹内結子)のもとに、読者の久保という女子大生(橋本愛)から住んでいる部屋で奇妙な音がすると記された手紙が届く。好奇心から彼女とともに調査に乗り出したところ、かつて住んでいた人たちがこのマンションから引っ越していった後、自殺や心中、殺人といった事件を引き起こしていたことがわかる。やがて恐ろしい真相にたどり着いた二人もまた事件に巻き込まれてしまう……。




19-32. 君の膵臓をたべたい 

監督 月川翔
出演 浜辺美波北村匠海北川景子小栗旬大友花恋
2017年 (東宝) 115分

解説
“泣ける小説”として人気を博した住野よるのベストセラー小説を映画化。膵臓の病を患う少女と、彼女の言葉を胸に後に教師となる少年の物語がつづられる。浜辺美波と人気バンド、DISH//の北村匠海というフレッシュなキャストに加え、原作にはない12年後の現在を描くパートでは主人公を小栗旬、ヒロインの親友を北川景子が演じる。

ストーリー
高校時代のクラスメイト・山内桜良(浜辺美波)の言葉をきっかけに母校の教師となった僕(小栗旬)は、教え子の栗山(森下大地)と話すうちに、彼女と過ごした数ヶ月を思い出していく……。重い膵臓の病を患う桜良が密かに綴っていた「共病文庫」(=闘病日記)を偶然見つけたことから、僕(北村匠海)と桜良は次第に一緒に過ごすようになった。だが、眩いまでに懸命に生きる彼女の日々は、やがて終わりを告げる……。桜良の死から12年。結婚を目前に控えた桜良の親友・恭子(北川景子)もまた、僕と同様に桜良と過ごした日々を思い出していた。そして、ある事をきっかけに、僕と恭子は桜良が12年の時を超えて伝えたかった本当の想いを知る……。




19-33. リング 

監督 中田秀夫
出演 松嶋菜々子真田広之中谷美紀沼田曜一雅子
1998年 (東宝) 95分

解説
呪いのビデオを巡って展開する恐怖を描いたモダン・ホラー。監督は 「暗殺の街」 の中田秀夫。鈴木光司による同名ベストセラー小説を、 「暗殺の街」 の高橋洋が脚色。撮影を同じく 「暗殺の街」 の林淳一郎が担当している。主演は 「恋と花火と観覧車」 の松嶋菜々子と、 「緊急呼出しエマージェンシーコール」 の真田広之。

ストーリー
「見ると一週間後に死ぬ」──子供たちの間で噂の広まる呪いのビデオの取材をしていたTVディレクター・玲子の親戚の娘・智子が、そのビデオを見て死んだ。しかも、一緒にビデオを見た3人のクラスメイトも、同日の同時刻に死んでいたのだ。真相を探るべく、智子たちがビデオを見た伊豆の貸別荘へ赴いた玲子は、そこでビデオを発見。自らもそのビデオを見て、死の予告を受けてしまう。呪いを解く方法はないのか。玲子は、大学で講師をしている離婚した夫・竜司に助けを求めた。彼は、人や物から記憶を読み取る不思議な力を持っているのだ。玲子の持ち帰ったビデオを見た竜司は、ビデオの映像からそれが三原山の噴火に関係があることを掴み、玲子と共に大島へ飛ぶ。そこで彼らは、そのビデオの映像が、千里眼という不思議な力を持っていた為に、人々から恐れられ、気がふれて噴火口へ身を投げて死んだ山村志津子という女性の娘・貞子の怨念が念写されたものであることを突き止める。貞子もまた母の力を受け継いでいたせいで、千里眼を研究していた伊熊博士によって井戸に突き落とされ殺されていたのだ。呪いを解くには、貞子の遺体をビデオに映る井戸からあげてやることだ。その井戸は伊豆の貸別荘の下にあった。蓋のされた井戸に潜り、貞子の死体を探す玲子と竜司。予告された玲子の死まで時間がない。果たして、玲子たちは貞子の亡骸を探しだし、死を免れることに成功する。ところが、東京へ戻った竜司が謎の死を遂げてしまう。呪いはまだ解けていなかったのだ。では何故自分は死ななかったのだろう。呪いを解くには、ビデオを見てから一週間以内に別の誰かに見せることだと気づいた玲子は、ビデオを見てしまっていた息子の陽一を助ける為、ビデオを持って実父の元へ車を走らせるのであった…。






19-34. メアリと魔女の花

監督 米林宏昌
出演 杉咲花神木隆之介天海祐希小日向文世満島ひかり
2017年 (東宝) 93/102分

解説
思い出のマーニー」 の米林宏昌監督ら、スタジオジブリ出身のスタッフによって誕生したスタジオポノックの長編第1作となるアニメーション作品。禁断の魔女の花によって不思議な力を手に入れた少女の冒険が描かれる。主人公のメアリの声を杉咲花が演じるほか、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、大竹しのぶらが声優として出演。

ストーリー
明朗で快活、天真爛漫だが、不器用で毎日に不満を抱えている赤毛にそばかすの少女メアリ(声:杉咲花)。ある日、赤い館村に引っ越してきたメアリは、森で7年に一度しか咲かない不思議な花《夜間飛行》を見つける。それはかつて、魔女の国から盗み出された禁断の“魔女の花”だった。一夜限りの不思議な力を手に入れたメアリは、雲海にそびえ立つ魔法世界の最高学“エンドア大学”への入学を許可される。しかし、メアリがついたたったひとつの嘘が、やがて大切な人を巻き込んだ大事件を引き起こしていく……。メアリは、魔女の国から逃れるため「呪文の神髄」を手に入れ、すべての魔法を終わらせようとするが、そのときメアリはすべての力を失ってしまうのだった。次第に明らかになる“魔女の花”の正体。メアリに残されたのは、一本のホウキと小さな約束。魔法渦巻く世の中で、ひとりの無力な人間・メアリが、暗闇の先に見出した希望とは何だったのか……。




19-35. キッズ・リターン

監督 北野武
出演 安藤政信金子賢石橋凌森本レオ山谷初男
1996年 (オフィス北野配給(配給協力*ユーロスペース)) 108分

解説
高校生悪ガキコンビの挑戦と挫折を描いた青春映画。監督・脚本は 「みんな?やってるか!」 の北野武。撮影をやはり 「みんな?やってるか!」 の柳島克己が担当している。音楽監督は今作で映画音楽に復帰した 「ソナチネ」 の久石譲。主演は、本作でデビューし、キネマ旬報新人男優賞をはじめ各映画賞で新人賞を総ナメにした安藤政信と、 「ファザーファッカー」 の金子賢。この若手ふたりを 「迅雷 組長の身代金」 の石橋凌、 「ありがとう(2096)」 の森本レオ、 「男はつらいよ 寅次郎紅の花」 の下絛正巳らベテランが脇で支えている。カンヌ国際映画祭監督週間正式出品作品。96年度キネマ旬報ベストテン第2位、同・読者選出ベストテン第2位。

ストーリー
高校時代の同級生だったシンジとマサルは、ある日、偶然再会し、バカなことばかりにエネルギーを費やしていた昔のことを想い返した。18歳の秋、シンジとマサルはいつもつるんで行動し、学校をサボってはやりたいことだけを楽しむ毎日を送っていた。ある夜、ヤクザに絡まれたシンジとマサルは、それを咎めた組長の迫力に素直に感動を覚える。そんなころ、以前にカツアゲした高校生が助っ人に呼んだボクサーにのされてしまったマサルは、自尊心をひどく傷つけられ、自分もボクシングを始めるのだった。酒もタバコもすっぱりやめたマサルは、毎日ジムに通って練習に励んだ。そんなマサルに連れられてジムを訪れたシンジも、なりゆきからジムに入門することになった。ところが、遊び半分の初めてのスパーリングで、マサルに鮮やかなカウンターを浴びせたシンジは、筋の良さをジムの会長に認められ、本格的にプロを目指すことになる。面白くないマサルはジムをやめ、あの時出会った組長のもと、ヤクザの世界に足を踏み入れてしまった。マサルは学校にも来なくなり、シンジは気まずい思いを抱いたまま、互いに顔を合わせることもなくなって、それぞれの日々が過ぎていった。高校を卒業したシンジは、いよいよプロボクサーとしてデビューし、着実にその才能を伸ばしていた。マサルは組のいざこざを利用して、今では子分をかかえてシマを任されるまでにのし上がっている。ある日、マサルがシンジを訪ねてジムにやってきた。ふたりは、お互いにそれぞれの世界でトップに立った時にまた会おうと約束する。しかし、敵対する組のヒットマンに組長を撃たれたマサルは、組同士の利害を考えて事を荒立てようとしない親分に楯突いて、厳しい制裁を受けた。シンジは先輩ボクサーのハヤシに悪習を吹き込まれて体調を乱し、大事な試合に惨敗する。ともに苦い挫折を迎えたふたりは、それぞれの世界から身を引くのだった。シンジとマサルは久しぶりに高校を訪れ、自転車にふたり乗りしながらグランドを走っていた。「俺たちもう終わっちゃったのかなあ」と尋ねるシンジに、マサルは「バカヤロウ、まだ、始まっちゃいねえよ」と答える。






19-36. トリガール!

監督 英勉
出演 土屋太鳳間宮祥太朗高杉真宙池田エライザ矢本悠馬
2017年 (ショウゲート) 98分

解説
中村航が母校である芝浦工業大学の人力飛行サークルをモデルに描いた人気小説を、土屋太鳳主演で映画化した青春ドラマ。二人乗り人力飛行機で鳥人間コンテストを目指す人力飛行サークルに入部してしまったヒロインの奮闘を描く。憧れの高橋先輩を高杉真宙、コンビを組む坂場先輩を間宮祥太朗が演じる。

ストーリー
流されるままなんとなく生きてきた鳥山ゆきな(土屋太鳳)は、一浪して理系大学に入学する。入って早々、理系のノリにカルチャーショックを受けるゆきなは、一目惚れした先輩の高橋圭(高杉真宙)に誘われるままサークルに入部する。そこは、二人乗り人力飛行機で鳥人間コンテストを目指す人力飛行サークル“T.B.T”だった。ゆきなは憧れの圭先輩と二人きりのパイロット班で大空に羽ばたくことを夢見るも、ヤンキーかぶれのくせにメンタル最弱の坂場先輩(間宮祥太朗)とコンビを組むことになり……。





19-37. 団地

監督 阪本順治
出演 藤山直美岸部一徳大楠道代石橋蓮司斎藤工
2016年 (キノフィルムズ) 103分

解説
大阪のとある団地を舞台に、住民たちが繰り広げるおかしな騒動を描くコメディ。 「」 で数々の賞を受賞した阪本順治監督が同作でもコンビを組んだ藤山直美のためにオリジナルの脚本を執筆。さまざま人生が交錯する団地で暮らすごく平凡な夫婦の普通じゃない日常を映し出す。夫の清治を岸部一徳が演じる。

ストーリー
山下ヒナ子(藤山直美)とその夫・清治(岸部一徳)は、とある事情で家業の漢方薬局を畳み、団地に引っ越してくる。そこには、自治会長の行徳(石橋蓮司)と妻の君子(大楠道代)、クレーマーで次期会長を狙う吉住(宅間孝行)に、暇を持て余した奥さま連中が暮らしていた。ある日、些細な出来事でヘソを曲げた清治が、「僕は死んだことにしてくれ」と床下に隠れてしまう。夫の姿が消えても淡々とパートに通い続けるヒナ子の言動に、隣人たちは妄想を膨らませる。さらに妙な立ち居振る舞いの青年・真城(斎藤工)が山下家を訪ねてきて……。




j19-38. またまたあぶない刑事

監督 一倉治雄
出演 舘ひろし柴田恭兵浅野温子仲村トオルベンガル
1988年 (東映) 95分

解説
型破りな2人の刑事の活躍を描く。 「あぶない刑事」 シリーズの第2弾で、脚本は 「あぶない刑事」 の柏原寛司と大川俊道が共同で執筆。監督はこれが第一作となる一倉治雄、撮影は 「猫のように」 の藤沢順一がそれぞれ担当。

ストーリー
鷹山と大下がターゲットとしている長峰由紀夫は表向き実業家だが、実は拳銃や麻薬の密売、売春など犯罪の元締めだった。二人は麻薬に絡んで緒方を逮捕するが、証拠不十分で釈放。だが緒方は何者かに殺されてしまった。ある日幼稚園のバスが園児を乗せたまま誘拐された。その中には国家機密法に反対する代議士の娘もおり、犯人は12億円の身代金を要求してきた。鷹山、大下は現金輸送車が狙らわれると判断して張り込んだが、間一髪で逃げられてしまった。そんな頃、二人は長峰を取材しているフリージャーナリストの萩原博美と手を組んだ。犯人の一人、佐久間を追いつめた鷹山と大下は、一人一億円で買収されてしまった。事件を追うにつれ、矢野弁護士、萩原博美、佐久間と長峰を取り巻く人間が次々と殺されていく。逆に二人は殺人の容疑を着せられたが、少年課の優子に助けられた。高山と大下は今回の事件が国家機密法成立を企む大がかりなものであることを知った。列車の爆破計画を阻止した二人は、長峰を追いつめたが、銃撃戦の末長峰はビルの窓をつき破り、落ちていった。





19-39. ザ・スパイダースのゴーゴー向う見ず作戦

監督 斎藤武市
出演 田辺昭知井上孝之井上順堺正章大野克夫
1967年 (日活) 81分

解説
「君が青春のとき」 の倉本聰と、 「二人の銀座」 の才賀明が共同でシナリオを執筆し、斎藤武市が監督した青春コメディ。撮影は 「爆弾男といわれるあいつ」 の山崎善弘。

ストーリー
健の恋人チノが素人歌謡コンクールで優勝した時、チノは司会者の質問に、まだ恋人はいないがあらゆる障害を越えて自分の所へ直進してくる人がいたら、求愛を受入れる、と答えた。チノは気が弱い健を励ますためにそう言ったのだった。ところが、横浜でテレビを見ていた順や昭知たちの七人組の若者たちが、チノの言葉に発奮して東京に向って一直線に行進を始めたのである。彼らは喫茶店の大ガラスを破り抜け、車の行き交う交差点を進んで六重衝突を起こさせ、途中で警察署を通り抜けようとしたが、武装警官に信号無視、家宅侵入、器物破損などの罪で逮捕された。しかし、順たちは、ただまっすぐに歩きたかっただけだと言って許された。一方、健はバンド仲間の浩治たちから激励され、三軒隣りのチノの家まで一直線に歩くことになったが、隣りの三上教授は健の通り抜けを断ったために、再びそれを強行しようとして三上家の防犯ベルにひっかかってしまい、健は半ば計画を諦めた。その頃、ようやく七人組の奇行がマスコミの話題になり始めた。ニュースカメラマンが七人を追いかけ、ある評論家は“直線に憧れる若者”を讃美するなど、全国的な話題になったのだった。しかし、七人の若者はそんな虚名に少しも喜ばず、ただ目的のために歩いて行った。健は七人組のことをテレビで知り、いてもたってもいられず、父の、チノを奪えという言葉に勇気を出し、チノの家までトンネルを掘り出した。健が日夜、トンネル掘りに精を出す頃、七人の若者は刻々とチノの家に近づいていた。健危うしとみた浩治たちは、いち早く七人組の前に立ち塞がり、前進を妨害したため、健はわずかの差でチノの家へ駆け込んだ。チノはそんな健に感激して、堅く抱きしめるのだった。一方、遅れをとった七人組は、敗北を認めると、今まさに落ちなんとする太陽に向って、一直線に遠去かって行った。




19-40. お茶漬の味 

監督 小津安二郎
出演 佐分利信木暮実千代柳永二郎三宅邦子津島恵子
1952年 (松竹) 115分

解説
麥秋」 に次ぐ小津安二郎作品。脚本は 「麥秋」 と同じく野田高梧との協力によって書き、撮影は例のように厚田雄春が担当。出演者は、最近 「離婚」 で共演した佐分利信と木暮実千代に、 「華やかな夜景」 の津島恵子、 「郷愁」 の三宅邦子と笠智衆、 「東京騎士伝」 の鶴田浩二、 「お景ちゃんと鞍馬先生」 の淡島千景、 「母の山脈」 の柳永二郎と設楽幸嗣の他に、元松竹の女優小櫻葉子で現上原謙夫人の上原葉子と、随筆家として知られた石川欣一氏が特別出演している。

ストーリー
妙子が佐竹茂吉と結婚してからもう七、八年になる。信州の田舎出身の茂吉と上流階級の洗練された雰囲気で育った妙子は、初めから生活態度や趣味の点でぴったりしないまま今日に至り、そうした生活の所在なさがそろそろ耐えられなくなっていた。妙子は学校時代の友達、雨宮アヤや黒田高子、長兄の娘節子などと、茂吉に内緒で修善寺などへ出かけて遊ぶことで、何となく鬱憤を晴らしていた。茂吉はそんな妻の遊びにも一向に無関心な顔をして、相変わらず妙子の嫌いな「朝日」を吸い、三等車に乗り、ご飯にお汁をかけて食べるような習慣を改めようとはしなかった。たまたま節子が見合いの席から逃げ出したことを妙子が叱った時、無理に結婚させても自分たちのような夫婦がもう一組できるだけだ、と言った茂吉の言葉が、大いに妙子の心を傷つけた。それ以来妙子は口も利かず、茂吉が何か言いたげな態度を見せてもとりつく島もない。そのあげく妙子は茂吉に無断で神戸の同窓生の所へ遊びに行ってしまった。その留守に茂吉は、妙子に言いだせずにいた海外出張が飛行機の都合で急に決まり、電報を打っても妙子が帰ってこないまま、知人に送られて発ってしまった。その後で妙子は家に帰ってきたが、茂吉のいない家が彼女には初めて虚しく思われた。しかしその夜更け、思いがけなく茂吉が帰ってきた。飛行機が故障で途中から引き返し、出発が翌朝に延びたというのであった。お茶漬が食べたいと言う茂吉のために、二人で夜更けた台所に立って準備をし、体裁もなくお茶漬を食べた。夫婦とはお茶漬なのだという茂吉の言葉に、妙子は初めて夫婦というものの味をかみしめるのだった。





19-41. ザ・スパイダースの大進撃

監督 中平康
出演 田辺昭知堺正章井上順ムッシュかまやつ加藤充
1968年 (日活) 82分

解説
新人の伊奈洸と、 「ザ・スパイダースのゴーゴー向う見ず作戦」 の倉本聰が共同でシナリオを執筆し、 「喜劇 大風呂敷」 の中平康が監督したアクション・コメディ。撮影は 「喜劇 東京の田舎っぺ」 の北泉成。

ストーリー
スパイダースの七人組が帰国した。七人はそれぞれ模造宝石のついたタンバリンを得意気に手にかざしていたが、その様子を黒眼鏡の男と美代子が見つめていた。また、空港の混雑の中で、アタッシュケースが取違えられたのを、七人組もマネージャー緒方と妹のゆり子も気づかなかった。最初の事件は、楽屋で順のタンバリンが盗まれた時だが、誰も気にもとめなかった。だが、次々と事件が起った。昭知が暴漢に襲われ、仲間の部屋が荒された時、、七人組は始めて自分たちが何者かに狙われていることを知ったのだった。七人組はどの演奏会場でも美代子の姿を認めたが、ファンと思っただけだった。一方、連絡を受けて捜査に乗り出した警察も、全く手掛りを得ることが出来ず、途方に暮れる有様だった。七人は身の危険を感じてホテルに合宿、やがてこの騒動の中で鹿児島に発った。沈みがちな七人をゆり子が慰めたが、再度、鹿児島でも狙われた七人は、敵の狙いがタンバリンであることを知った。また、楽譜の入っているはずのケースから秘密書類が現われたことから、これも狙われる原因であることを知った。そして、ゆり子をピストルで脅してケースのありかを知ろうとした覆面の男が何者かに殺され、敵が二組であることが分ったのである。東京に戻ったスパイダースは緒方と相談の結果、刑事たちの助けを借りて二組の悪漢たちを誘い出す計画を立てた。誘いに乗った黒眼鏡の男と美代子、そして重要な秘密書類を取り返そうとする峰岸の一味は、パトカーで駆けつけた警官に囲まれた。美代子は車で逃げようとして、コンクリートの壁に衝突して果てた。七人組のタンバリンに本物のダイヤをまぎれ込ませて密輸入しようとしてのことだった。残りの悪漢は間もなく逮捕され、スパイダースの顔にはようやく明るさが戻ってきた。




19-42. はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜

監督 古橋一浩
出演 早見沙織宮野真守櫻井孝宏中井和哉梶裕貴
2017年 (ワーナー・ブラザース映画) 97分

解説
「週刊少女フレンド」 に連載され、テレビアニメや実写映画にもなった大和和紀の代表作を2部作で劇場アニメ化したラブ・コメディの前編。大正時代を舞台に、恋も結婚相手も自分で決めようとするじゃじゃ馬娘の紅緒と許嫁の伊集院少尉が繰り広げる恋の騒動を描く。紅緒を早見沙織、伊集院少尉を宮野真守という実力派声優が共演する。

ストーリー
大正時代。17歳の花村紅緒は、親友の環とともに女学校で楽しく学園生活を送っていた。明るくじゃじゃ馬で、恋も結婚相手も自分で選びたいと思っている彼女の前に現れたのは、よく笑う優男の伊集院忍少尉。彼が祖父母の時代から決められていた許婚であることを知った紅緒は反発、愛のない結婚を阻止しようと騒動を巻き起こすうちに、少尉に少しずつ惹かれていく。




19-43. 映画 聲の形 

監督 山田尚子
出演 入野自由早見沙織悠木碧小野賢章金子有希
2016年 (松竹) 129分

解説
「週刊少年マガジン」 に連載され、数々の賞に輝いた、大今良時の人気コミックを、京都アニメーションが劇場アニメ化したハートフルストーリー。ガキ大将の少年と、耳の不自由な少女が出会い、様々な体験を通して成長していく姿を描く。 「たまこラブストーリー」 の監督&脚本コンビが手がけ、aikoが主題歌を担当する。

ストーリー
退屈を何よりも嫌うガキ大将の小学生・石田将也は、転校してきた西宮硝子に無邪気に好奇心を抱く。彼女が来たことで退屈から解放されるが、硝子とのある出来事をきっかけに周囲から孤立してしまう。それから五年が経ち、二人はそれぞれ別の場所で高校生になっていた。あの出来事から殻に閉じこもっていた将也は、硝子の元を訪れる。





19-44. けんかえれじい (The Born Fighter)

監督 鈴木清順
出演 高橋英樹浅野順子川津祐介片岡光雄恩田清二郎
1966年 (日活) 86分

解説
「座頭市海を渡る」 の新藤兼人がシナリオを執筆し、 「東京流れ者」 の鈴木清順が監督したアクションもの。撮影は 「骨まで愛して」 の萩原憲治。

ストーリー
岡山中学の名物男南部麒六は“喧嘩キロク”として有名だ。キロクに喧嘩のコツを教えるのが、先輩のスッポン。そのスッポンのすすめでキロクは、OSMS団に入団した。OSMS団とは岡山中学五年生タクアンを団長とするガリガリの硬派集団だ。そのOSMS団と関中のカッパ団とが対決した。キロクの暴れぶりは凄まじく、この喧嘩で忽ち副団長となった。だが、キロクにも悩みはあった。下宿先の娘道子が大好きで、硬派の手前道子とは口もきけないからだ。反対に道子は一向に平気でキロクと口を聞き、野蛮人のケンカ・キロクには情操教育が必要とばかり、彼女の部屋にキロクを引き入れてピアノを練習させる始末だ。そのうえ、夜の散歩には必ずキロクを誘いだした。ケンカに強いが女にゃ弱い。キロクはガタガタふるえるばかり。この二人の道行きをタクアンが見つけたからおさまらない。硬派にあるまじき振舞いとばかり、キロクを殴りつけようとした。それと知ったスッポン先輩がかけつけて、その場は何とか切り抜けたが、キロクの道子病は重くなるばかり。その煩悩をたち切ろうと、学校では殊更暴れ廻り、配属将校と喧嘩したため、若松の喜多方中学校に追い出されてしまった。しかし、転校一日目にして、喧嘩キロクの名前は全校にひろまってしまった。会津中学の昭和白虎隊と名乗る三人組をやっつけたからだ。この喧嘩は大喧嘩に発展した。昭和白虎隊がキロクに宣戦布告をしたからだ。キロクには喜多方中学の硬派が続々と集り、決戦の場会津鶴ケ城でしゆうを決することになった。この大喧嘩は町中の評判となり、キロクは停学処分をうけた。下宿でポツンと一人で居るキロクのところに、珍客が現われた。はるばる岡山から道子が尋ねて来たのだ。感動の面持ちで、じっと道子をみつめるキロクに道子が思いがけないことを告げた。道子は長崎の修道院に入るというのだ。キロクは絶望のどん底にたたきこまれる思いだった。このつらさを忘れるためにも、もっともっと暴れまわらなけりゃならない、喧嘩しなければならないとキロクは思うのだった。





19-45. 謝罪の王様

監督 水田伸生
出演 阿部サダヲ井上真央岡田将生尾野真千子高橋克実
2013年 (東宝) 92/128分

解説
監督・水田伸生、脚本・宮藤官九郎、主演・阿部サダヲという 「舞妓Haaaan!!!」 のトリオによる痛快コメディ。ケンカの仲裁から、国家間のトラブルまで、大小さまざまな問題を、土下座を始めとした華麗なる謝罪テクニックで乗り越えていく、架空の職業“謝罪師”の姿を6つのエピソードで描いていく。

ストーリー
東京謝罪センター所長、“謝罪師”を生業とする黒島譲(阿部サダヲ)は、ケンカのような小さなトラブルから国家存亡の危機まで、ひと癖もふた癖もある依頼人から舞い込む様々な事件に遭遇。降りかかる難問を次から次へと謝罪のテクニックを駆使して解決していくのだった……。〈CASE1〉司法書士を目指す帰国子女の倉持典子(井上真央)は、車の運転中に追突事故を起こしてしまい、車から現れたヤクザ風の男たちに対しうまく謝罪ができず、気が付くと組事務所で内容を読まないまま誓約書に判を押してしまう。それは「示談金400万円、毎月12万円の返済、利子が10日で3割、来週から大阪のデリヘルに就職」という最悪のものだった……。〈CASE2〉下着メーカーの中堅社員・沼田卓也(岡田将生)は、開けっ広げな性格が災いし、飲み会で酔った勢いで共同プロジェクトの担当者・宇部美咲(尾野真千子)にセクハラ三昧。さらには軽いノリで謝る沼田に対し、美咲は怒り心頭。結局、沼田はプロジェクトをはずされ、セクハラで訴えられてしまう……。〈CASE3〉大物俳優・南部哲郎(高橋克実)の息子が傷害事件を起こし、南部が謝罪会見を行うことになった。そんな中、黒島が謝罪の指南をするが、芝居じみた謝罪で糾弾され結果は裏目に。仕方なく元妻の大物女優・壇乃はる香(松雪泰子)を引っ張り出すと、自身の出演舞台の十二単の衣装で登壇、宣伝までしてしまう始末。そして拘置所から出所した息子のTシャツには「Kill You Next Time」の文字が……。〈CASE4〉一流国際弁護士・箕輪正臣(竹野内豊)は、沼田の訴訟の弁護士であり、典子の大学時代の講師でもある。コロンビア大学卒、27カ国で弁護士資格を取得した完璧なエリート弁護士の彼だが、離婚して離れ離れになってしまった当時3歳だった娘に手を挙げてしまったことを今でも謝りたいと思っている。法律に携わる人間として自分が許せないと言うが……。〈CASE5〉映画プロデューサー・和田耕作(荒川良々)がプロデュースした作品に、たまたまお忍びで来日していたマンタン王国・皇太子がエキストラ出演していたことが発覚。マンタン王国皇族の肖像権侵害は懲役20年の重罪であることが判明し、黒島を介し謝罪に行くものの国の習慣や国民性の違いから誤解が生じ謝罪は失敗に終わる。正式に日本政府に謝罪を求めるという国際問題へと発展していく中、マンタン王国は日本との貿易停止を発表。打開策の見えない黒島は絶体絶命の窮地に追い込まれる……。〈CASE6〉謝罪師・黒島譲はなぜ、謝罪を生業とするのだろうか。なぜ謝罪にこだわるのだろうか。それは、ほんの些細な出来事が発端であった……。




19-46. ミックス。 

監督 石川淳一
出演 新垣結衣瑛太広末涼子瀬戸康史永野芽郁
2017年 (東宝) 119分

解説
不器用で欠点だらけの人々が、卓球の男女混合(ミックス)ダブルスに挑み、再生していく姿を描く、新垣結衣主演のコミカルな人間ドラマ。かつては天才卓球少女と呼ばれていた平凡なヒロインが、自分を馬鹿にした元彼とその恋人を見返そうと、再びラケットを手に奮闘する。主人公とペアを組む元プロボクサーを瑛太が演じる。

ストーリー
母・華子(真木よう子)のスパルタ教育により、かつて“天才卓球少女”として将来を期待された28歳独身の富田多満子(新垣結衣)。母の死後、普通に青春を過ごし、普通に就職する平凡な日々を過ごしていたが、会社の卓球部のイケメンエース・江島(瀬戸康史)に告白され交際を始める。ついにバラ色の人生が……と思った矢先、新入社員の美人卓球選手・愛莉(永野芽郁)に江島を寝取られてしまう。人生のどん底に落ち、逃げるように田舎に戻った多満子だったが、亡き母が経営していた卓球クラブは赤字に陥り、自分の青春を捧げた活気のある練習風景はそこにはなかった。クラブの部員も、暇を持て余した元ヤンキーのセレブ妻、ダイエット目的の中年夫婦、オタクの引きこもり高校生、さらにケガで引退した元プロボクサーながら、妻の上司を不倫相手と勘違いして暴力事件を起こし妻と娘に見捨てられた新入部員の萩原(瑛太)など全く期待が持てない面々ばかり。だが江島と愛莉の幸せそうな姿を見た多満子は、クラブ再建と打倒江島・愛莉ペアを目標に、全日本卓球選手権の男女混合ダブルス〈ミックス〉部門への出場を決意。部員たちは戸惑いながらも、大会へ向け猛練習を開始するのだった。多満子は萩原とミックスを組むものの、全く反りが合わずケンカの毎日。しかし、そんな二人の関係にもやがて変化が訪れ……。




19-47. ぼくのおばあちゃん

監督 榊英雄
出演 菅井きん岡本健一阿部サダヲ寺島進清水美沙
2008年 (キノシタ・マネージメント) 98/123分

解説
人気イラストレーター、なかむらみつる原作による感動作。仕事に追われる男が、ふと亡き祖母との交流を思い出し、家族の尊さを噛み締める姿を温かな筆致で追う。

ストーリー
智宏(岡本健一)は住宅展示場に勤務するトップ・セールスマン。いつも仕事に追われている智宏の姿に、妻の絵美(加藤貴子)は心配を募らせている。仕事を手がけている一家の祖父と孫の仲のいい様子を見た智宏の胸に、少年時代の記憶が甦ってくる。父の征二(柳葉敏郎)は入退院を繰り返していており、母の千恵子(原日出子)は父の看病のためよく家を空けており、家は智宏(吉原智宏)とおばあちゃん(菅井きん)ふたりきりのことが多かった。いつだって優しいおばあちゃんを、智宏はずっと守ると誓う。そんな中、征二が死んだ。葬式の晩、奥の部屋でひとりからだを丸めて泣くおばあちゃんは、智宏が近づくと力強く抱きしめた。おばあちゃんががんに冒されていると分かったのは智宏が中学生だった頃。医師から手の施しようがないことを知らされ、おばあちゃんを自宅に連れ帰ることを決める。智宏はおばあちゃんが淋しくならないよう夜を徹して作業し、天井を写真で飾りつける。決してひとりじゃない。そんな智宏の思いやりにおばあちゃんは胸を熱くする。突然庭に出たいと言い出すおばあちゃんを背負って庭に出た智宏。翌朝、おばあちゃんは息を引き取ったのだった……。仕事の依頼主である茂田家に赴いた智宏。家の模型を見せながら最終説明をする。以前、茂田家の妻・美佐子(清水美沙)は年老いた義父の源次郎(石橋蓮司)を老人ホームに入れて家を建て替えたいと主張し、夫の洋一(阿部サダヲ)とケンカしていた。その日、美佐子が突然、源次郎と同居型の家にしてほしいと提案する。嬉しそうにすかさず別の模型を取り出す智宏。それこそが、家族みんなが幸せになる家づくりを実現させるために夜な夜な誠意を込めてつくっていた2世帯型住宅の模型だった。清々しい気持ちで久々に家族3人で故郷の実家へ帰る智宏たち。そこで智宏は、時間を越えておばあちゃんから贈られた、最高のプレゼントを見つける……。




19-48. 東京暮色 

監督 小津安二郎
出演 笠智衆有馬稲子信欣三原節子森教子
1957年 140分

解説
早春」 以来、久々に登場する小津安二郎、野田高梧のコンビが執筆した脚本から小津が監督した話題作。父を裏切って家出した母を求める娘の激情を描く。撮影は 「あなた買います」 の厚田雄春。主演は 「白磁の人」 の有馬稲子、 「大番」 の原節子、 「暴れん坊街道」 の山田五十鈴、 「顔(1957)」 の笠智衆。ほかに 「情痴の中の処女 天使の時間」 の高橋貞二、 「近くて遠きは」 の杉村春子、 「正義派」 の田浦正巳、それに山村聡、信欣三、中村伸郎、宮口精二、浦辺粂子、三好栄子、藤原釜足、増田順二、長岡輝子のヴェテラン。菅原通済が特別出演している。

ストーリー
停年もすぎて今は監査役の地位にある銀行家杉山周吉は、都内雑司ケ谷の一隅に、次女の明子とふたり静かな生活を送っていた。長女の孝子は評論家の沼田康雄に嫁いで子供もあり、あとは明子の将来さえ決まれば一安心という心境の周吉だが最近では心に影が芽生えていた。それは明子の帰宅が近頃ともすれば遅くなりがちでしかもその矢先姉娘の孝子までが沼田のところから突然子供を連れて帰ってきたからだ。??明子には彼女より年下の木村憲二という秘かな恋人があった。母親がいない寂しさが、彼女をそこへ追いやったのだが、憲二を囲む青年たちの奔放無頼な生活態度に魅力を感じるようにいつかなっていた。しかも最近、身体の変調に気がついた彼女が、それを憲二に訴えるとそれ以来彼は彼女との逢瀬を避けるようになった。そして、焦慮した彼女は、憲二を探して回ったがその際偶然、自分の母についての秘密を知った。母の喜久子は周吉の海外在任中にその下役の男と結ばれて満洲に走ったが、いまは東京に引揚げて麻雀屋をやっていたのだ。既に秘かに堕胎してしまった明子には、これは更に大きな打撃であった。母の穢れた血だけが自分の体内を流れているのではないかという疑いが、彼女を底知れぬ深淵に突落してしまったのだ。蹌踉として夜道へさまよい出た彼女は、母を訪ねて母を罵り、偶然めぐりあった憲二の頓にさえ怒りに燃えた平手打を食わせ、そのまま一気に自滅の道へ突き進んで行った。その夜遅く、電車事故による明子の危篤を知った周吉と孝子が現場近くの病院に駈けつけたが明子は殆どもう意識を失っていた。その葬儀の母の帰途、孝子は母の許を訪れ、明子の死はお母さんのせいだと冷く言い放った。喜久子はこの言葉に鋭く胸さされ東京を去る決心をした。また、孝子も自分の子のことを考え、沼田の許へ帰っていった。雑司ケ谷の家は周吉ひとりになった。所詮、人生はひとりぼっちのものかも知れない。今日もまた周吉は心わびしく出勤する……。