学習書●[情報処理]





音+像


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/Literacies/AV.html


メディア オーディオ MP3 MIDI スチル GIF JPEG ビデオ グラフィックス PostScript pdf VRML ムービ MPEG QuickTime

きょうの迷信

"残像は映画の原理"
???



メディア


 情報を表現するための形式をメディア(media)という。メディアの中には、映画やTVのように、ほかのメディア(この場合はビデオやオーディオ)を要素とする複合体として組み立てられているものもある。このようなメディアを特にマルチメディア(multimedia)という。

 コンピュータ工学では、"メディア"とか"マルチメディア"という術語をこのような意味で使うが、ほかの分野(たとえば社会科学の各分野)ではもともとこれらの術語を別の(たいていはもっと狭い)意味で使ってきた。だから、広い分野にまたがって議論が行われる場では、術語の定義がくい違って議論が噛み合わなくなったりしないように注意しなければいけない(演習["メディア"のほかの意味])。


オーディオ


 (sound)は、とても速くて細かい振動(=押したり引いたりする振れの変化の繰り返し)だ。音が伝わっていく途中の空気や水にはたらく圧力(押されているのか引っぱられているのか、それはどのくらいの強さか)を、一定の時間(たとえば1/4万秒)ごとに調べて並べていけば、時刻に対する圧力の変化のグラフができる(▽図)。


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時間につれて変化する圧力

 音には高さ、大きさ、音色の違いがある。これらはそれぞれ、圧力の振動の振幅振動数、波の形と対応している(資料[音])。つまり、音を成り立たせている圧力の変化を正確に記録/転送すれば、風の音や虫の声のような音でも、実際に聞こえたのと全く同じ音を記録/転送することができる。この考え方に基づいて取り扱われている音を、(狭い意味で)オーディオ(audio)という(資料[オーディオ])。



にゃあ

 テープレコーダを使うとオーディオをテープに記録することができる。また、ラジオでは電波を使ってオーディオを放送する。つまり、これらは音のグラフの形を何かの方法で記録したり放送したりできるようにしている。
 レコードでは、音のグラフをそのまま溝の表面に刻んで録音する。テープレコーダでは、音のグラフを磁気の強弱にして録音している。どちらの方式も、グラフの形をそのまま記録している。

 CDやコンピュータでは、音のグラフの形を、それぞれの時刻に対する圧力の相対的な値を順に並べた列(つまり数の列)として表現する。このようにしてオーディオを表現するための書式として、AIFFWAVが定められている(演習[AIFF:WAV])。



AIFFファイル

 グラフの形を数の列で表現するためには、まず、グラフを左右(時刻の方向)にいくつかに切って、その切れ目に当たる時刻の圧力の情報だけを選び出さなければならない。さらに、グラフを上下(圧力の方向)にもいくつかに切って、圧力の値をその切れ目に合わせて丸めなければならない。オーディオCDの場合では、時刻の分割の細かさは44.100kHz、圧力の分割の細かさは16ビット(つまり216段階)にすることが多い。
 この二つの作業によって、もとのグラフに含まれていた情報のうちのかなりの部分は捨てられてしまう。しかし、人の音を聞く能力にはもともと限りがあるので、実用上はほとんど問題ない。たとえば、人の耳が受け入れることのできる音の高さはせいぜい20kHzまでだけれど、この高さの音は40kHzよりも細かく記録されていれば完全に再生できることが分かっている。そのため、変化を44.100kHzよりも細かく記録したとしても、それによって区別されるようになった音の違いを聞き分けることはできないだろうと考えられている(資料[耳])。


AM FM


 放送では、媒体として電波(や電線の中を流れる電流)を使うので、音のグラフの形をそのまま通信することはできない(演習[AIFF:WAV])。もっと細かい振動なら電波として通信できるので、音のグラフの形を、そのような振動の厚みに対応させるAMや、同じく濃さに対応させるFMなどの方式が使われている(資料[AM][FM])。
 音を表現するために作られた複雑な電波を信号という。音を信号として電波に書き入れることを変調(modulation)、逆に信号から音を読み出すことを復調(demodulation)という。また、もとの信号を書き入れるための細かい振動を搬送波という。


PCM


 番号を表す符号として特別な形をしたごく短い波をビットとするビット列を使えば、AMやFMの場合と同じように音を表現する信号ができる。このようにして信号を作るのも変/復調の特別なものと考えて、PCM(pulse-code modulation。資料[PCM])という。


MP3


 オーディオを番号の列としてそのまま表現すると、媒体にかなりの負荷がかかる。そのため、最近では多少は品質を犠牲にしても負荷が減らせる方式が使われるようになってきた。なかでも、MPEGの一部であるMP3(<MPEG-1 layer-3)は、3分間のオーディオなら1MB程度に圧縮して記録することができるので、短い曲をウェブを通じて放送したり、持ち歩いて聞いたりするのに使われている。


音楽


 ほとんどの音楽は、時間の経過に沿って楽音(楽譜の音符に対応する音)が重なりながら並んだものとして作られている。わたしたちが音楽の演奏を聞く場合も、音をオーディオとしてそのまま聞いているわけではなく、楽音をその中から読み出して、その複合体として聞いている(資料[特別な音としての音楽])。
 音の中でも特に音楽については、実際の聴覚をオーディオとして表現する代わりに、楽音から音楽がどう構成されているかによって音を表現することもできる。それぞれの楽音は、楽器の種類高さ強さ長さによって(つまりどの楽器のどのキーをどう押し下げるかによって)決まる。したがって、音楽は、これらの組み合わせがどの時刻に発生するか列挙することによって(つまり演奏のしかたとして)表現することができる。



[ツァラトゥストラはかく語りき]


MIDI


 MIDI(<Musical Instrument Digital Interface=楽器デジタルインタフェース)は、いろいろな楽器(もちろんコンピュータも含まれる)をケーブルでつなぎ合わせて音楽を作曲したり演奏したりするための規格だ。MIDIを使うと、楽器を演奏器や音源のネットワークとして組み立てて、作曲や演奏に使うことができる。
 MIDIには、ネットワークの配線に使うケーブルの機能や性能の規約と、ケーブルを通じてやりとりする演奏の情報の形式の規約が含まれている(資料[MIDI])。この形式をMIDIメッセージ(またはただMIDI)という。ネットワークが必要ない場合でも、MIDIメッセージはコンピュータを使って音楽を作曲したり演奏したりする場合の、音楽を演奏として表現できる標準的な形式として使われている。
 MIDIメッセージを、時刻の情報と合わせて記録する形式をSMF(Standard MIDI File、資料[SMF])という。SMFは音楽のウェブなどで使われている。
 今のMIDIには、ボーカルを表現するための規定がまだない。そのため、ボーカルが含まれている音楽は、MIDIで表現することはできない(演習[ボーカル])。


スピーチ


 演劇のせりふのように、喋ることによって発生する音をスピーチ(speech)という。
 スピーチも、音楽と同じように、発声される文章の内容に声の強さ高さ間の取り方などを追加したものとして表現することができる。(資料[スピーチ])。


スチル


 わたしたちは情報のやり取りの多くを視覚に頼っている。数や文章のような抽象的な情報でさえ、基本的にはエクリチュール(ecriture=書き字)を通じて表現している。
 視覚される情報を表現するのには、その成り立ちは気にしないで、ただのとして表現する考え方と、像を生み出したもとのもののや形の記述によって表現する考え方とがある。初めの方の形式のうち、止まったまま動かないものをスチル(=still、静止画像、ただ画像ということもある)といい、動いているものをビデオ(=video、動画像、資料[ビデオ])という。また、あとの方の形式をグラフィックス(graphics)という。



 初めに、スチルについて学習する(ビデオグラフィックスについてはそれぞれあとの節で学習する)。
 スチルは、基本的には、像を縦横の格子に切り分け、そのそれぞれのを順に記録することによって表現する。この格子をセル(cell、▽図)といい、左右に並んだ一列のセルをまとめてラスタ(raster)という。


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スチル
セル(太線で囲まれた部分)とラスタ(細線で囲まれた部分)

 格子の切り方にはいろんなものがあるが、写真、従来型のTV/ビデオ、コンピュータなどの表現の手段ごとにほぼ決まっている。コンピュータを通じて使うスチルでは、△図のように、左右×上下に均等に切って正方形の格子を作る。
 格子の本数や密度は、用途によって決まっている場合がある(▽表)。密度は、(習慣により)dpi(<dots per inch)で表わされる。

用途
密度
分割数
印刷
200〜300セル/ins
不定
TV/ビデオ録画(従来型)
不定
640×480
TV/ビデオ録画(DV)
不定
720×480
その他一般
72セル/ins
(=約3セル/mm)
不定

コンピュータを通じて使うスチルの格子の分割

 ふつうの絵や写真なら、一定の広さをもった格子の中には微妙に違ういろんなが現われる。しかし、それを区別することはできないから、決まった位置(たとえば左上の隅)のを代表に使って、それぞれの格子に対して一つずつのを選ぶ(▽図)。また、色はもともと無限に多くの種類があるが、それを厳密に区別するのはあきらめなければならない。これらの事情によって、記録/通信される像は、厳密にはもとの像は別の少し貧弱な像に変わることになる。



もとのスチル(左)と実際に表現できる近似スチル

 スチルとオーディオはよく似ている。しかし、以下のように全く異なっている点もある。

○配置の次元の違い
 オーディオは時間に沿って一列に並んだ圧力の変化として表現できる。これに対して、スチルを構成するセルは縦横に並んでいるから、そのままでは時間の場合のように一列に並ばせられない。

○要素の次元の違い
 オーディオを構成する圧力は単一の数量にすぎないが、スチルを構成するは単一の数量では表現できない。

 このように、スチルはオーディオに比べると二重に複雑なメディアだといえる。このために、スチルの技術は(したがってビデオの技術も)、オーディオの技術に比べてかなり遅れて進化してきた。


標本化 量子化


 写真を色の列として表現するために、格子の中のいろんなのうちの一つを代表として選ぶのも、一定の間隔の時刻だけを選んで音の圧力を調べるのも、時刻と平面の座標、圧力と色の違いが違うだけで、本質的には同じ操作と考えられる。このような作業を標本化(sampling)という。
 また、色にしても圧力にしても、値の種類はもともとは無限に多いはずだけれど、微妙な違いは無視することによって、値の種類をずっと少なく(とは言っても何万にもなるが)減らしている。これを量子化(quantizing)という。
 標本化も量子化も、もとの音/像に含まれている無限の情報を有限に整理するために必要だ。このふたつを合わせて離散化という。





 スチルは、どんな方式でも、基本的には色の行列として表現されている。だから、スチルの表現について学習する前に、色の構造とその表現について知っておく必要がある(資料[色])。

 色の違いは、色合い(赤とか青といったタイプの違い。色相、hue)、鮮やかさ(彩度、saturation)、明るさ(明度、value)の三つの属性の組合せによってはっきり特定することができる。この考え方をHSVモデルという。



色相(左)と彩度(右、左右方向)、明度(右、上下方向)

 わたしたちが光を感じるのは、光子(photon)という電磁波の単位が無数に目に入って来て刺激を受けるからだ。光子は振動数の違いによっていろんな種類があり、その混ざり方の違いが、光にともなって感じる色の違いをもたらしている。色合い、鮮やかさ、明るさの三つの属性は、それらの光子の振動数の分布の、平均値分散、(時間当たりの)集団の大きさとそれぞれ対応している。ただし、違った振動数の分布に対して全く同じを感じることはある。たとえば、黄純光だけの集団と、赤純光+緑純光の2種類から構成される集団はどっちも鮮やかな黄色を感じさせる。
 HSVモデルはわたしたちの感覚とよく合っているが、取り扱いには不便なので表現の目的ではあまり使われない。

 うまく3種類のを選べば、その混色によってどんなでも感じさせることができる。たとえば、赤、緑、青とか、黄、マゼンタ、シアン(▽図右)の組合せを使うと、白や黒も含むどんなでも表現できる。これらのの組みを、それぞれRGB3原色およびYMC3原色という。


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RGB3原色(左) YMC3原色

 をRGBの混色で再現したいとすると、それぞれの原色をどれぐらいずつ混ぜ合わせればいいかを表わした(ふつうは[0〜1]の)数量の組みによってを表現する考え方をRGBモデルという。RGBモデルは電子的にを表示する技術とよく馴染むので、コンピュータの周りではよく使われている。
 YMCに黒(B)を追加した4の組みをYMCKという。YMCKの混色を表わした(ふつうは[0〜1]の)数量の組みでを表現する考え方をYMCKモデルという。YMCKモデルはインクの重ね刷りでを表示する技術とよく馴染むので、印刷でよく使われている。
 明るさと各色成分の濃さとを組合せた数量の組みをYCC表現という(色によって感じ方が違うのを考えて少し変換している。資料[YCC系])。YCC表現を使うとカラーでない表示システムにも配慮しながらカラーの像を表現できるので、TVのカラー放送が始まった時に採用され、そのまま今でもTVやビデオ録画などに使われている。


絶対値 相対値


 などの感覚の対象を表現する場合は、絶対値(absolute value)を表現しなければならない場合と、相対値(relational value)を表現しなければならない場合とがある。
 たとえば、試薬の反応色と成分の濃さの対応を示すための表のは、実際ののとおりに印刷されていなければならない。
 これに対して、画集の[モナリザ]の肌のは、もともと周りの光りの状態によって変化するものだ。作品の全体と比べて正しいであることが重要だから、編集の考え方によって、切り取って並べて比べると明るめに印刷してある画集と暗めに印刷してある画集とがあってもおかしくない。
 この違いは、それぞれが色の絶対値を記録しようとしているか、相対値を記録しようとしているかの違いと言える。絶対値を表現するためのいろいろな方式を、(絶対)表色系という。この単元では、おもに相対値の表現について考える。


GIF/JPEG


 スチルの表現の基本は、セルのを左から右へ、さらに上から下へと順に並べていくことだ。この方式は、最も単純で分かりやすいが、媒体にかなりの負担をかける。
 ウェブやCDでは、スチルを記録する方式として、このような素朴な方式の代わりにGIF(資料[GIF])やJPEG(資料[JPEG])を使っている。これらは、当然の情報や目立たない情報を捨てることによって、媒体に負担がかからないように工夫されている。
 GIFとJPEGにはそれぞれ短長があるので、用途に応じて使い分ける必要がある。





(左から順に)もとのスチル 量子化GIF 網点化GIF JPEG
全体(上、1/3に縮小) 一部(下、2倍に拡大)


ビデオ


 スチルに対して、ビデオや映画TVのように、動いて見える像をビデオ(video)とよぶ。90年代から、ビデオの編集などの作業も、コンピュータを使って行なわれるようになってきた。
 わたしたちの視覚は、一連のスチルを一定の時間(1/3〜1/60秒ぐらい)ごとに切り替えながら見せられていると、スチルスチルとの間の運動が、実際に見えたぐらいに、かなりはっきり感じ取れてしまう傾向がある。こうして見える、実際にはない運動の感覚を仮現運動(apparent movement)という(資料:[私たちはどのようにして世界を見ているのか?][仮現運動])。
 ビデオを記録/表示するシステムは、この性質に基づいて、無数(たとえばふつうのビデオテープでは約30枚)の一連のスチルに分解してビデオを記録し、それをそのまま表示するようにできている。つまり、ビデオはスチルの列として表現できる(資料[ビデオ])。このスチルのそれぞれをフレーム(frame)という(▽図)。



フレームの列としてのビデオの記録
8mmフイルム 約1/2秒分
左から右に向かって順に記録/再生される

 実用的には、ビデオは単独で取り扱われることはめったになくて、いつもオーディオをともなったムービとして記録/通信されている。そのため、ビデオを表現する形式も、ムービを表現するためのMPEGやQuickTimeなどの形式の一部として定められている。


グラフィックス


 像そのものではなく、それが見えるもとになった情景(<scene、この科目での特別な呼び方)を表現することによって像を表示することもできる。このようにして表現される情報やその技術を(コンピュータ)グラフィックス(=graphics=図的技術)という(資料[グラフィックス])。
 グラフィックスとして扱われる情景の情報の中には、情景を構成する物体などの形(資料[形状スキーム])、色、質感などが含まれる。情景を像として表示する以外の用途まで考えて、重さや硬さなどの見えない属性を含めることもある。

 グラフィックスには、スチルビデオとは違う、下記のような特徴がある。

・情景を視覚を通じてではなく意味で直接に表現するから、意味的に変更を加えて表示できる。たとえば、向こうからだとどう見えるか調べることができる

・一般には像よりも媒体に負担をかけない

・表示するには像を生成しなければならない。この作業をレンダリング(rendering、資料[レンダリング])という。情景の複雑さによってはレンダリングはかなり時間がかかる

スチル
ビデオ
グラフィックス
視覚
意味
直接的
間接的
描画向き
作図向き

 グラフィックスには、空間に広がる情景を表現したものと、平面の上に敷き並べられた図案を表現したものとがある。平面のグラフィックスは作図(<drawing=ドローイング、俗にドロー)ということがある。


PostScript pdf VRML


 グラフィックスには、いくつもの物体、照明、撮影の形、質感、配置が要素として含まれている。これらの要素の属性は、文章として書き出す必要があるので、そのための記法がいくつか考え出されている。
 情景は、いくつかの要素から構成されている。それらの要素もまたほかのいくつかの要素から構成されている。このような構成の深さや広がりは、場合によってさまざまで、スチル(セルの格子)やビデオ(フレームの列)のように固定した枠組みで表現することができない。そこで、文章のような入り組んだ構造でも書ける記法が必要だ。
 平面に展開するグラフィックスには、PostScript(ポストスクリプト)という形式がよく使われている。PostScriptはもともとフォントデザインで字の形を書き表すために考え出された。その後、製版システムを制御するプログラミング言語として使われるようになったために、今ではグラフィックデザインの表現に広く使われている。また、ハイパテキストの機能も盛り込んだpdfという形式もよく使われている。
 空間に展開するグラフィックスの記述には、VRML(Virtual Reality Modeling Language、仮想現実感形成言語、資料[VRML])という形式がよく使われている。VRMLは、もとはVRシステムの開発のために提案されたが、今では(名前とは違って)、一般のグラフィックスの記述に広く使われている。また、ウェブの内容や構造を表現するのにも使える(というより実はそっちの方が本来の目的に近い)。


官能的表現:意味的表現


 オーディオやスチルのように、聞こえる/見えるとおりに情報を表現するのを官能的表現(sensitive representation)といい、音楽やスピーチ、グラフィックスのような情報の表現を意味的表現(semantic representation)という。
 官能的表現は、記号には還元できないような細かい内容(たとえば音が硬いか柔らかいか)も表現できる。意味的表現は、適用できる情報の範囲は限られているが、意味や内容にかかわる情報の加工(音楽を転調したり図形の向きや大きさを変えたりするなどの)が可能になる。
 音楽やスピーチとしての音の表現を一般の音の表現サウンドに変換することはそれほど難しくない(ただし時間はかかる)。この処理は、耳で聞く情報の場合はトラックダウン(tracking down)、目で見る情報の場合はレンダリング(rendering)と呼ばれている。これに対して、オーディオ(もちろん音楽やスピーチを内容とする)やスチル(グラフィックスを内容とする)を音楽やグラフィックスに変換する処理を認識(=recognition)という。
 認識は一般にはとても難しいので、目的ごとに特別な事情を活かして認識を実現する手段が研究されている。たとえば、話す人が固定されていれば、あらかじめ話す人の声の質を細かく知らせておいたうえで、その人が話した単語の綴りを生成することが可能になっている。

グラフィックス

スチル



意味的表現

レンダリング
官能的表現
(視覚)

認識


ムービ


 映画館で上映される映画TVの番組、ビデオソフトなどの情報の形式をまとめてムービ(movie)という。ムービはビデオによる動く絵の部分とオーディオによる音の部分とから組み立てられていて、絵と音が同時に揃って再生されるようになっている。
 特に強化されたムービは、ビデオやサウンドのほかに、それと同時に再生する音楽キャプション字幕スプライト(○印や矢印のような画面の上に被さって動く絵)も要素として含まれている。


MPEG


 ムービを記録したり保存したりするため広く使われている標準の形式の一つにMPEG(資料[MPEG])がある。MPEGには、符号化/復号がやさしいものから手間がかかるものまで、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG7(策定中)の4種類があり、さらにそのそれぞれについてビデオの形式とオーディオの形式が何種類かずつ決められている。
 ビデオもオーディオも媒体に特に負担をかける(資料[ビデオの重さ])ので、MPEGは、いろんな手法を盛り込んで、少しでも容量のむだを節約しようとしている。特に、ビデオに対するずれ圧縮の考え方は強力だしおもしろい。


QuickTime
その他


 [QuickTime](資料[QuickTime])は、ムービをきちんと表現するために作られた情報の形式だ。時間の経過だけでなく、架空の空間の中での移動や読者の操作に対する応答も盛り込むことができるように設計されている。

 AVIはWindowsでムービを扱うための標準的な形式として使われている。
 RealMovieはインタネットでTVやラジオに代わるサービスを実現するための形式として広く使われている。
 DVはムービを撮影したり編集したりするのに使う形式としてコンピュータよりもカメラやレコーダのための形式として使われている。





[演習]

演習の進め方をよく確認してからとりかかりなさい


"メディア"のほかの意味

 この科目で使っているのとは違う意味で"メディア"ということばを使っている記事(教科書、論文、新聞の記事など)を見つけなさい。もし見つけたら、そこではどんな意味で使っているか明らかにしなさい。著者が述べていなかったら、自分で考えなさい。さらに、そこでの意味はこの科目での意味とどんな関係(広い/狭い、ずれがある、意味が変化した、など)があるか説明しなさい。

調べてから自分で考えなさい

報告例
川辺豊美


非変調表現

 レコードやテープレコーダのように、(変調によって作った信号ではなく)音のグラフをそのまま使って行なわれている記録/通信を一つ選んで、その物理的な形式と符号化/復号のしくみについて説明しなさい。

自分で資料を探して調べなさい
必ず図を使って説明しなさい
・音や電波の正確な知識がないと難しい・


AIFF:WAV

 AIFFとWAVのしくみと特性について調べ、比較してみせなさい。

自分で資料を探して調べなさい
・コンピュータの正確な知識がないと難しい・


音が電波にできない理由

 放送ではなぜ、音の波と同じ形をした電波の代わりに変調によって作った信号の電波を使うのか、理由を考えて説明しなさい。

自分で考えてまとめなさい
・音や電波の正確な知識がないと難しい・


セル

 (フィルムを使う従来式の)写真や、TV/ビデオ録画(どれか一つでいい)では、セルやラスタの大きさ、形、配置などはどうなっているか調べなさい。

自分で資料を探して調べなさい
必ず図を使って説明しなさい


HSV方式の多形性

 HSV方式では、白などの一部のはいくつもの違う表現ができてしまう。ただ、ほとんどのはほかの方式と同じように、と表現とが1対1に対応する。
 HSV方式で違う表現ができてしまうはどんなで、一つしか表現ができないとはどこが違うか考えなさい。

自分で考えなさい
HSV方式とよく似ているけれど別のHLS方式とを混同しているとよく分からなくなってしまうので注意しなさい
必ず図を使って説明しなさい


JPEG

 資料[JPEG]には、JPEGがどんなふうにして作らていくか説明する記事が載っているが、きっと、文章だけだと意味が分かるまでにかなり時間がかかるだろう。
 この記事の内容をもっと分かりやすく説明しなさい。

必ず図を使って説明しなさい
どんな図を見せると内容がうまく伝えられるか工夫しなさい
自分は頭の中にどんなイメージを立てて理解したのか思い出して それを図で見せるようにするといいだろう

報告例
軍司奈水


ちらつき

 多くの方式のビデオテープやTV放送では、ラスタをインタレース方式で表現している。インタレース方式は、非インタレース方式よりも表示のちらつきを押さえる効果があるからだ。それはなぜか、また、どのくらい少なくなるのか説明しなさい。

自分で考えなさい
説明にあたっては、適切な図を作り、それを示しながら説明するようにしなさい
"ちらつき"という用語は、表示が点滅しているように見える現象(▽図左)を指すのと、表示が細かく振動しているように見える現象(▽図右)を指すのと、二通りの意味で使われている。ここでは初めの方の意味で使っている。混乱しないようにしなさい。



点滅(左)と振動(右、どちらもかなり強調して示している)


形状スキームの長短

 グラフィックスで物体の形を書き表すために、いくつかの形のとらえ方が考え出されている。これらを形状スキーム(figure representation scheme)という(資料[形状スキーム])。身の回りの物のいくつかについて、その形を表現するのに各スキームを使うと、どこが有利でどこが不利か検討してみなさい。記述の量と操作の自然さについては必ず確認しなさい。
 たとえば、フォーク、入道雲、立ち木についてはどうか。

自分で考えなさい


像/音とアナログの狭了性

 [情報]の単元でも触れたように、デジタル技術から見れば、アナログ技術は、数を通じてでは表現できない情報を排除する、ある意味では狭了な技術だった(資料[アナログは人間的なんかじゃない])。この議論をベースにして、グラフィックス的表現に対するスチル/ビデオ的表現、または、演奏的表現に対するオーディオ的表現の狭了性について説明しなさい。

自分で考えなさい
・コンピュータの正確な知識がないと難しい・


RenderMan/VRML

 RenderManかVRMLを使って、いくつかの情景を記述してみなさい。また、できればそれを表示させてみなさい。

それぞれの記法については、自分で説明書を探して調べなさい
・コンピュータの正確な知識がないと難しい・


音が電波にできない理由

 音はもともと波だからそのまま電波にすることもできる。実際に、レコードやテープレコーダではそれに似たことをしてオーディオを記録している。それなのに、放送ではなぜそうしてできる電波(つまり音の波と同じ形をした電波)を使わないで、搬送波を変形したものを使っているのか、理由を考えて説明しなさい。

自分で考えてまとめなさい
・音や電波の正確な知識がないと難しい・


楽譜

 ポピュラー音楽の実際の楽譜を何か選び、その第1番の最初の4小節の演奏の内容を文章だけで表現してみなさい。
 その曲の実際の演奏をよく知っている場合は、楽譜には書いてないけれど聞いていれば気がつくような情報もなるべく盛り込めるような書き方を工夫しなさい。

自分で試してみなさい
楽譜から何が読み取れるか、それを文章でちゃんと表現するにはどんな形式が書きやすく読みやすいか、各自で考えて工夫しなさい
見比べられるように、もとの楽譜(複写)も添えなさい

報告例
Sasaki Hirosi 佐々木万里子 松田奈穂子


ボーカル

 ポピュラー音楽などのボーカルを記述できる形式を作りなさい。
 そして、その形式を使って実際に曲のボーカルを記述してみなさい。

自分で考えなさい
近い将来の技術で記録/再生が可能になるかどうかは気にしなくてもいい。それよりも、必要になる情報が洩れなく表現できているか、きちんと確かめながら考えなさい

報告例
渕上幸太


ピアノロール

 音楽を演奏として記録し再現するために、ごく最近までピアノロール(pianoroll)という手段が使われていた(資料[ピアノロール])。その名残りで、今でも、作曲/演奏ソフトウェアのメタファ(見立て)になっている。もとのピアノロールはどんなものだったか調べなさい。

資料には必ず目を通しておきなさい。そして、それを参考にして、もっと深く調べることができそうな資料を自分で探しなさい


AVI

 AVI(資料[AVI]は、アップルの[QuickTime]に代わるものとしてウィン機のために特別に開発された、ムービを記録するための規格だ。これについて調べなさい。
 たとえば、AVIのしくみや、はたらきや、使われ方、[QuickTime]との違い、などの中からテーマを自分で決めて調べてみなさい。

自分で資料を探して調べなさい
・コンピュータの正確な知識がないと難しい・


MPEGの圧縮/伸長

 MPEGにはいろんな圧縮/伸長の技法が使われている。そのうちの一つを選んで深く学習し、技法の要点とMPEGでの具体的な使われ方を説明しなさい

自分で資料を探して調べなさい
必ずを使って説明しなさい。資料にもが載っているが、これよりも分かりやすいぐらいのものを目指しなさい
・コンピュータの正確な知識がないと難しい・




もっと学習したい人のために

牧野武文
Macの知恵の実
(毎日コミュニケーションズ、00-02-19)

タイトルは"Mac"だけど、実際の内容はコンピュータの側から見たデザイン(特にグラフィックデザイン)の各論。スチルというメディアに対してわたしたちが何を求めてきたのかが明らかにされていく
?A4はなぜ半端な長さなのか?スチルの解像度はなぜ72dpiがいいのか?虹はほんとに7色なのか?
迷信を片っ端から斬っていくスリリングな本
ISBN4-8399-0329-8


スチル 映画 グラフィックス オーディオ 音楽


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01-11-08