P 型半導体は高純度の半導体
(主にシリコン : silicon) に、
不純物として硼素
(boron) などの 3 価元素をごく微量加えることによって作られます。
シリコンは価電子
(原子の化学的性質に影響する電子) を 4 個、
硼素は 3 個持っています。
純粋なシリコンの結晶中では、 隣り合ったシリコン原子は互いの電子を共有しあっています。
電子は原子に強く束縛されているため容易に動くことができないので、 電気伝導には殆ど寄与することができません。
そのため純粋なシリコン結晶の結晶には電流が流れにくく、 抵抗率は約 10
3Ωcm という値になっています。
導体でも絶縁体でもない 「
半導体」 です。

しかしここに微量の不純物、 硼素が加わると、 状況はガラリと変わります。
硼素には価電子が 3 個しかないので、 共有結合に与る電子が一個足りなくなって、
左図のように電子のない空席
(孔: hole) ができます。
こういう不純物を含むシリコンの結晶に電圧がかかると、
電子はすべて原子に強く束縛されているので容易には動けませんが、
孔の近くにある電子だけは、 プラス極に引かれて孔の方に移動してそこに落ち着きます。
しかしその電子がもといたところは新たな孔になって、
新たにできた穴の近くにいる電子がまた移動してきて、 その跡がまた穴になる…。
このような 「椅子取りゲーム」 が続くうち、 孔自体は結果的にマイナス極に近づいていきます。
小学校の運動会の日、 朝は早くから学校に行って、 応援席を確保しなければなりません。
これにしくじると、 前の人の頭が邪魔になって見づらい席で我慢することになります。 責任は重大です。
しかし最前列の席がとれなくても、 運動会が始まってしばらくたつと、 前の席が空くことがあります。
そんなときはすかさず前に移動しますが、 振り返るともと自分たちがいた席には、
もっと後ろにいた人たちが引っ越してきています。
そのまた空いた席にはもっと後ろの人たちが…。
かくして空席はどんどん後方に移動していきますが、 P 型半導体の空席が移動していく様子は、 これにそっくりです。
実際は多数の電子が少し席を変える一連の動きによって P 型半導体には電流が流れるようになり、
空席
(孔) はマイナス極に向かって移動します。
空席はあたかも 「プラスの電気を持っている電子」 のようにふるまいます。
そこでこれを、「
正孔 (hole)」 といいます。
半導体の中で電流を運ぶものをキャリア
(carrier) といい、
P 型半導体のキャリアは正孔です。
正孔はプラス
(positive) の電気を持っている電子のようにふるまうことから、
これを 「P 型半導体」 といいます。
ダイオード や
トランジスタ などの半導体素子は、
P 型半導体 と
N 型半導体 を組み合わせて作られています。