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シリコンと硼素の原子 電子機器に使われている半導体、 トランジスタや IC の材料は、 ほとんどがシリコン (珪素、silicon) です。
シリコンは 4 価の元素で、 純粋な結晶は比重 2.0、 融点 1,420 ℃、 抵抗率約 103 Ωcm です。
同じ 4 価元素の炭素のようにダイヤモンドと同じ構造の結晶を作りますが、 ダイヤモンドはキラキラと美しいのに対して、 シリコンの結晶は硬いかたい灰色の石です。
しかし高純度のシリコンの結晶に硼素のような 3 価元素の不純物を極微量加えると、 見た目は灰色の石のままでも、 電気的な性質は一変し、 シリコンはダイヤモンドよりも 「輝かしく」 なります。

P 型半導体 左はシリコンの結晶に不純物として 3 価元素の硼素を加えた図です。
3 価の元素はシリコンより電子が 1 個少ないので、 硼素原子のまわりは電子が足りなくなって空席 (左図赤い円) ができます。
電子はマイナスの電荷を持っていますが、 電子の空席は単なる空席ですから電荷はありません。
しかし電子で満たされているシリコンの結晶の中で、 ここだけが空席、 まるでビールの泡のような存在です。

「空席」 といえば、 小学校の運動会などで、 前列の席が空くと後ろの人がすかさず前に移る、 という光景をよく見かけます。 移った後はまた新たな空席になるので、 更に後ろの人が前に移ります。 こうして順に空席が次々と埋められていくと、 空席は逆に後ろに向かって移動していきます。
電子もプラス電極の引力を受けているので、 前方に空席があると移動します。 後方の電子が次々と同じことを繰り返すと、 空席は結果的にマイナス極に向かって動いていきます。
空席はまるでプラスの電気を持っている電子のようです。
マイナスの電荷をもった電子で満たされた海の中で、 不純物原子近傍の空席は、 まるでプラスの電荷を持った電子のように見えます。
それで、 これを 「プラスの電荷を持っているように見える空席 (孔)」 と言う意味で、 正孔 (hole) といいます。

電子も正孔も、 動けば電荷が運ばれますから、 電流が流れます。 正孔は電子とともに、 半導体の中で電流を流す働きをしています。
正孔が電流を流す半導体を、 P 型半導体 (正 (positive)の電荷が電流を流す半導体) といいます。



関連事項: 半導体  P 型半導体  N 型半導体 


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update; 2013.02.28  address