学習書●[コミュニケーション実習D(メディア)]


(99年度履修生作品)

[会話]
演出


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/Communication/Conversation.html



 演技を設計することを演出という。この単元では映像における演出について学習する。
 "演技"といっても、ふつうの意味での演技だけ考えていればいいというわけではない。映像による表現では、いろんなことが演出の対象になりうる。どんな空間で演技をさせるか、その演技をどう撮影するか、といったことのすべてが自由に決定できるからだ。

 フレームからカットを組み立てる段階でも、演出は重要だ。しかし、カットの単位では、運動の視覚がきちんと再現できることが第一の問題だから、自由に演技を設計できる余地は少ない。それに、フレームで測られる時間は、演出を考えていく単位としてわたしたちには短すぎる。
 この単元では演出の対象としてたまたまドラマを題材に選んでみたが、架空のキャラクタが登場しないドキュメンタリやミュージックビデオのような表現でも演出は必要だということを忘れないでほしい。それどころか、表現としてではなく、研究のための記録として映像を作る場合でさえも演出を考えないということありえない。しかもそれを映像の目的にふさわしく行なわなければいけない。
 なお、照明や録音の演出も重要だが、これらについては準備の学習も含めて、あとの単元でまた学習しよう。

 映像の中できみたちが描いて見せなければならないキャラクタの行動のほとんどは、実は、人対人、人対環境のコミュニケーションだ。会話もちろんそうだし、アクション映画の追っかけや撃ち合いだって広い意味では人対人のコミュニケーションの現われだ。きみたちは虚構としてのコミュニケーション(演出された演技)を設計しながら、同時に現実のコミュニケーション(作品という表現)も設計していかなければならない。ここのように、コミュニケーションについて考えることは、映像の表現にとっては二重の意味で重要なことなのだ。




作業の目標


 以下の五つの脚本のうち一つを選び、ドラマの1シーンとして映像で表現しなさい。

[左耳の精霊]
(脚本:吉松幸四郎)
シーン7
[忘れなくてもいいから]
(脚本:井戸良弘)
シーン09.01
シーン11.00
[フレームアウト'80]
(脚本:鉄本久邦)
シーン12
シーン29.01

 設計に当たっては、それぞれのシーンの意味を適切に表現できるよう、きちんと演出を行ないなさい。特に、以下の3点について十分に検討しなさい。

・演技(キャラクタの話し方、振舞い)
・舞台(場所、日時、天候、小物)
・撮影(視野、長さ、つながり)

条件

 長さは(本体だけで)2分以下にする。

 音が小さくて聞き取れない、絵が暗くて見えないなどの問題がないようにしなさい。

 フィルタなどの機能は、調整のために使うのならかまわないが、特別な効果を作り出すためには使ってはいけない。また、タイトル/クレジットなどはつけてはいけない。

 実習で決められている標準書式にしたがって作品の前後を整えておきなさい。また、タイムラインの左端に隙間が空かないようにしなさい。

助言

 場所、日時、天候、小物については素材の設定を無視して可能な設定に変えてもいい。
 キャラクタが多すぎる素材もあるので、やむを得ない場合は自分で工夫して整理してもいい。ただし一人だけにしてはいけない。
 性別は変えてもいい。
 せりふとしぐさについては、原則としてそのまま使いなさい。ただし、人数や性別を調整する場合や、さらに作り込むために必要な場合には、細かい所については変えてもいい。


作例



浅田奈々恵

飯田美穂

中村健太郎

(02年度履修生)


自分で調達する道具/材料

○ビデオテープ(=撮影用)
 ・DV用
 ・ミニ型(ほかにスタンダード型があるがこの課題では使えない)
 ・30分用(60分用でもいい)
 ・メモリ機能は不要
○ヘッドホン(イヤホンでもいい)
 ・プラグ:ステレオミニ(変換でもいい)
○小道具(作品の内容に応じて)

 撮影用のテープは、新しく下ろして、その先頭の部分を使うようにしなさい。


実習に使うマニュアルフォーム

(なし)


標準作業時間

3週
(スクーリング3.5時間+自習3.5時間)





演習の手順


始めの回


作例の鑑賞
 これまでにこの単元の学習に参加した学生の作品を見て、どんな作品が作れるようになるのか知っておきなさい。

課題の選択
 素材として準備されている5点の脚本を読み比べて、自分にとって演出がしやすそうな(そしてもちろんおもしろそうな)ものを一つ選びなさい。

○(説明)シーンマップ
 シーンマップの描き方の説明を聞きなさい。

シーンマップの作成
 選んだ脚本のシーンマップを描きなさい。
 この段階では次の情報が書き込める。

・4方向の壁(もしあれば)
・行動に関係のある道具
・キャラクタの立ち位置とその変化
・キャラクタが見ている方向とその変化

○(説明)カット割り
 イベントが起こる時点ではカットを切り替えることができる。どんなイベントがカットを切り替えるきっかけにできるのか説明を聞きなさい(資料[どんなところでカットは切れるのか])。

カット割りの作成
 説明で分かったことを活かして、実際に、脚本の中に、カットが切れる線を引いてみなさい。
 カットを切ってしまったら、先頭から順に番号を振りなさい。この番号は、シーンマップにも書き加えておきなさい。

○(説明)視線表
 絵コンテを書く前に、それぞれのカットでは誰が誰を(または何を)見ているのかはっきりさせておかなければならない。これをまとめたのが視線表だ。
 視線表の書き方の説明を聞きなさい。

視線表の作成
 説明で分かったことを活かして、実際に、視線表を書いてみなさい。

○(説明)絵コンテ
 絵コンテの書き方の説明を聞きなさい。
 まず、誰を見せるのか決めよう。カットを切るきっかけになったイベントを起こした人を見せるのが原則だ。
 次に、それを誰の視界で見せるのか決めよう。さっき書いた視線表にしたがって、そのカットでその人を見ているはずの人のうちから誰かを選ぼう。観客や神/犬の視界を使うこともできるけれど、少し変わった感じに見えてしまうので、できれば止しておこう。
 最後に、どれぐらいの広さの視界で見せるのか決めよう。視界の広さには、アップ(up)、バスト(bust)、フル(full)、ロング(long)などの種類があって、カットの内容によって使い分けられている(▽図)。また、つなぎ方にもいくつかの原則が分かっていて、それをうまく使いこなせれば生き生きとしたシーンを組み立てることができる。

視界の広さ 用途 特に大切なこと
アップ それは何か/どんなか 収まり
バスト どんなふうに喋っているか
誰を/何を見ているか
目+顔の向き
フル 何をしているか
体の向き
ロング そこはどんな所/時か 空の線

絵コンテの作成(メモ+文)
 シーンマップに合うように絵コンテを書きなさい。
 この段階では次の情報が書き込める。

・カット番号
・視点
・視界の内容と広さ(ともしあるなら変化)の指定
・せりふ
・しぐさ


(宿題)


絵コンテの作成(絵)
 メモにしたがって絵を描きなさい。
 絵コンテの絵はあまりきれいに描かなくてもいい。初めのうちは、そのカットにとって最も大切なこと(少し△の図)が分かるようになっていればいい。慣れてきたら少しずつ描き込むものをふやしていこう。

絵コンテの作成(しぐさ)
 それぞれのカットのしぐさを考えて、ト書きや矢線を使って絵コンテに書き入れなさい。
 しぐさはできるだけ具体的に決めておきなさい(実際の撮影では役者に任せてしまうつもりでも)。


第01回


絵コンテの確認
 先生の説明を聞きながら、つながりのおかしい所がないか調べなさい。もし見つけたら工夫して直しなさい。



○(説明)撮影の進行
 (もし初めてなら)先生がカットの撮影のしかた(資料[カットの撮影の手順])を実演しながら説明するので聞きなさい。

○(説明)演出
 演じさせ方について説明を聞きなさい。

○(規則の説明)カメラ+電池の借り出し方/返し方
 カメラと電池の借り出し方/返し方の規則の説明を聞いて、自分で借り出してきなさい。
 使ってもかまわないカメラや電池は、一人一人に対してそれぞれ決まっている。番号を知らせるので、▽表に書き留めておきなさい。

カメラ

電池


○(もしまだなら)撮影の進め方
 間違いなく撮影できるようにするための注意(資料[撮影で失敗しないために])を先生から聞きなさい。


(宿題)


撮影
 絵コンテにしたがって各カットの素材を撮影しなさい。

 [キャンディボックス]の単元で学習したことを活かしてきれいに撮影しなさい。

・ボケないこと
・暗すぎたり明るすぎたりしないこと
・背景のいらないものが見えたりいらない音が聞こえたりしないこと
・縦横が傾かないこと

 撮っていて、カメラの操作がうまくできなかったり演技が間違ったりしたのに気づいたら、納得がいくまで撮り直しなさい。

注意
 カメラスタート/ストップとアクションスタート/ストップとの間に5秒ずつの捨て秒を撮っておくのを忘れないようにしなさい。捨て秒がないと、編集の時にカットの前後の端が正確に切れなくなったり、絵と音とがずれてしまったりすることがある。

注意
 カメラを使う前には、電池を必ず充電しておきなさい。コンセントの近くでしか撮れないとなると、撮影できる場所はかなり限られてしまう。
 充電には1.5時間ぐらいかかる。すぐには撮影できないのでスケジュールには気をつけなさい。

規則
 学内で撮影する場合は、ほかの人たちのじゃまにならないように、おとなしくしなさい。特に、空いている教室に出入りする場合には、ほかの授業や片付けのじゃまになったりしないようにしなさい。
 他人が写ってしまいそうな場合には、必ず、写されたくない人によけてもらってから撮りなさい。特に、授業のように、よけたくてもよけられないような状況では、決して撮ってはいけない。
 雨が降っている時は屋外で撮ってはいけない。

規則
 週末は、カメラを自分の家に持ち帰って学外で撮影してもかまわない。ただし、ほかの科目の学生が先に予約しているかもしれないので、必ず借りられるとは限らない
 借り出す時には、借り出しカードを書いて、遅くとも前日までに管理室に届けておきなさい。


第02回


課題フォルダの準備
 自分の個人フォルダ(初めの単元で作ったもの)の中に、この単元で使う新しい課題フォルダを作りなさい(▽図)。
 そして、そのフォルダの名前をつけ直して(単元の名前かきょうの日付がいい)、単元の区別が分かるようにしておきなさい。



 このフォルダは、この単元の素材や作品のファイルを入れておく場所として使う。

素材テープからのキャプチャ
 キャプチャウィンドー(▽図)を使って素材テープの絵+音をキャプチャして、それらを新しい課題フォルダの中のファイルとして保存しなさい。



 キャプチャをする場合は、Premiere(またはStillCamera)を起動する前に必ずデッキの電源を入れておきなさい。また、Premiereが起動したら、すぐに課題フォルダをキャプチャフォルダとして指定しておきなさい(資料[キャプチャフォルダの指定])。

 撮影の具合が悪かったのが原因で正しくキャプチャできなくなるのを防ぐために、カットごとに別々にキャプチャして保存しなさい。(途中で見直したりしていなければ)同じカットのテークはまとめてしまってもかまわない(▽図)。

 ファイルの名前は絵コンテに書いておいたカットの番号にしたがってつけるといい。



 この方があとの取扱いも楽になる。

○キャプチャファイルの内容の確認
 上で作ったマニュアルの記事を確認しながら、QuickTimePlayerを使って、キャプチャファイルの内容を確かめなさい。特に、先頭が切れていないか、が入っているかについては必ず確かめておきなさい。



 QuickTimePlayerは、コンピュータにとってはあまり負担にならないので、Premiereが走行している状態で起動してもかまわないが、安全のためになるべくPremiereは終了しておこう。

○白紙の作品ファイルの作成
 最初の単元で作ったマニュアルを見ながら、(Premiereの)白紙のウィンドーを開きなさい。



 白紙のウィンドーを開く時に聞かれるプロジェクトの属性については、▽表のように設定しなさい。

目的
DV
書式
NTSC
幅:丈
標準
サンプリング頻度
48KHz

 このウィンドーをそのまま保存しなさい。

 ウィンドーを保存する時に聞かれるプロジェクトの属性については、▽表のように設定しなさい。

場所
さっき作った課題フォルダの中
名前
"作品"など
書式


 このほかの属性については、コンピュータから勧められたままにしておいてかまわない。

 この一連の操作によって、新しい白紙のプロジェクトファイル(同下)ができる。この課題では、これを作品のファイルとして使う。
 この次からは、このプロジェクトファイルを開きさえすれば、途中で作業を休んでいても、すぐにそこから続けることができるようになる。

 このあとの実験や制作では、ここで作ったプロジェクトファイルを開いて現れるウィンドーを使ってもいいし、開いたままになっているウィンドーを続けて使ってもいい。

 プロジェクトファイルは、最初に作業を始めてからアプリ終了するまでの間に作ればいいことになっているけれど、なるべく早く作っておいた方がいい。

素材ファイルの読み込み
 キャプチャで作った素材ファイルを待機ウィンドーに入れなさい。

 この場合は、待機ウィンドーに入るのは形代だけで、もとのファイルはそのままもとのフォルダに残っている。

粗編
 待機ウィンドーに入れた素材を、絵コンテに書いておいた順に出番ウィンドーに並べなさい。
 絵がビデオ1トラックに入るようにしなさい。こうすれば音も自動的にオーディオ1トラックに入る。

○(説明)トリミング
 前後のカットとつながるように素材の前後を切り詰めることをトリミング(trimming)という。先生がトリミングの考え方と操作を説明するので聞きなさい。


(宿題)


撮影(追加)
 編集(もし必要なら撮影も)の作業を続けなさい(週に1時間ぐらいずつ)。
 週末に限っては、カメラを自分の家に持ち帰って学外で撮影してもかまわない。この場合は、予約する時に撮影に行く場所と自分の電話の番号を必ず書き添えておきなさい(平日に学内や近くで撮る場合は不要)。ただし、ほかの科目の学生が先に予約しているかもしれないので、必ず借りられるとは限らない

素材ウィンドーの準備
 課題フォルダのウィンドーを開くと、そこには素材ファイルがあるはずなので、それらをそこから素材ウィンドー(▽図)の中に移しなさい。



 移しても、もとのファイルはなくならない。ただし、落とす先を間違えてはいけない。間違えたりすると、もとのファイルがなくなってしまうことがある。

出番ウィンドーの準備
 プロジェクトウィンドーからタイムラインウィンドー(▽図)のビデオ1A+オーディオ1トラックに素材のファイルを移して、絵コンテに書いておいた順に並べなさい。
 移しても、もとのファイルはなくならない。ただし、落とす先を間違えてはいけない。間違えたりすると、もとのファイルがなくなってしまうことがある。



 同じカットに対して使えそうなテークがいくつもある場合は、とりあえず順に並べておいて、あとで見比べて整理すればいい。
トリミング
 それぞれの素材をトリミングして自然につながるようにしなさい。


講評の回


合評の準備
 作品が正しく上映できる状態になっているか確認しておきなさい。

・最新のバーションか?作品とは関係ない部分が(特に前後に)残ったままになっていないか?
・モニタウィンドーの配置(ほかのウィンドーに重ならないように)と大きさ(324×240)、再生する音の大きさ(70/100)などは正しく調整してあるか?巻き戻してあるか?
・最後はどこで止めるのか?

講評
 先生や周りの席の学生を集めて再生して見せなさい。
 作る側として意図していた効果が見る側にはどう受け止められたか、ほかの学生に感想を聞いてみなさい。
 ほかの学生の作品を見て、特にいいと感じた内容や表現(または技術)を見つけたら、誰の作品のどんな部分だったか書き留めておきなさい。

○(オプション 説明)絵の明るさ+音の大きさの調節
 絵の明るさ音の大きさを調節する操作について説明を聞きなさい。そしてマニュアルを作りなさい。

○(オプション)絵の明るさ+音の大きさの調節
 作ったマニュアルの内容を確認するために、特に問題のありそうないくつかのカットを実際に調節してみなさい。

 うまく調節できたら、絵のうちの直した範囲についてはレンダリングしておきなさい。


宿題


○(オプション)批評
 周りの席のほかの学生の作品のうちで、自分が最も感心した作品の、さらにその作品の中で最も感心した表現を選んで、なぜ自分はその表現にそれほど引かれたのか深く考え、その内容や表現を紹介する文を書いて提出しなさい。

・初めに、その表現が、作品の中のどこに使われていたのか、そしてそれはどのようなものだったのかをはっきりさせなさい。その作品をまだ見ていない人でも、どんな表現が行なわれていたはっきり分かるように、ていねいに説明しなさい
・続いて、それの表現がなぜよかったと思っているのか説明しなさい。表現がいいと思える理由なんて、初めは自分でも分からないかもしれない。でも、よく考えて、ほんとうの理由を見つけ出しなさい
・この課題では、技術が秀れている所や作業が丁寧な所に感心させられるこもあるかもしれない。でも、そういった誰にでも分かるような所ではなくて、センスアイデアのような、一人一人が違う受け止め方をしていそうな所を、なるべく取り上げるようにしてほしい

○推敲
 自分の作品の表現の中に不満な所が見つかったら、ほかの学生や先生から指摘されたことも考え合せながら、もっといい表現ができるように手直ししてみなさい。


Q&A




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映像 | コンピュータ


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