"篠原研究室[民俗学]"の木札。
常盤が机に腰かけて、デジカメをいじっている。
常盤「
水樹、このカメラの日付、2012年になってるぜ」
水樹がリュックに地図やノートなどをつめている。
水樹「え?何?なんて言ったの?」
水樹のバックの壁には1997年10月のカレンダー
常盤「(カメラをかまえて)日付、なおしとこうか?」
常盤の覗いたフレームの中の陽光を浴びた
水樹の横顔。
フレーム内の日付は2012年10月。
水樹「左側でしゃべらないで。よく聞こえないんだから。」
シャッター音とフラッシュ。
水樹「あっ!もう、遊ばないでよ」
常盤「(フザけて)五百羅漢で神隠しにでもあったら、遺影に困るだろ?」
水樹「縁起でもないこと言わないで。あれは100年も昔の話。それに、神隠しは、五百羅漢じゃなく、八雲神社の裏稲荷の方よ」
水樹、バタバタと準備に忙しい。
常盤「しかし、石仏好きだね。お前の撮った写真でオレの
ホームページの容量、パンクしそうだよ。賃貸料もらわなきゃ、あわないよなぁ・・・」
デジカメの日付を直しながらながらブツブツ言う
常盤。
目を上げると、目の前に
水樹。
水樹「
トキワくん(
常盤の鼻先を勢いよく指差して、教授のモノマネ)民俗学の基本は何かね?」
常盤「(たじろぎながら)フィ、フィールドワーク」
水樹「よろしい!」
水樹、
常盤からデジカメを取り上げ、リュックへ入れる。
水樹「帰ったら、
ホームページよろしく!」
水樹、言い残して、研究室を出てゆく。
常盤「おい!神隠しの稲荷に近づくなよ」
ドアから手だけ残して返事をする
水樹。
常盤、やれやれといった表情。