情景は、いくつかの要素から構成されている。それらの要素もまたほかのいくつかの要素から構成されている。このような構成の深さや広がりは、場合によってさまざまで、サウンドやスチルのように固定した枠組みで表現することができない。そこで、情景を表現するのには、文章(というより日本語の世界ではむしろ箇条書き)に近い形式が必要になる。それらは、大きく二つのグループに分けられる。
一つはマシン指向のもので、情景の要素や構造を番号とその配列とによって表現し直し、それをファイルに記録したり送信したりする。この方式は、レンダリングなどの処理をする場合の効率がいいし、コンパクトだが、人が読んだり書いたりすることはほとんど無理と言っていい。
もう一つは人指向のもので、情景の要素はふつうの語句やその短縮形、ふつうの書き方の数などで表わし、構造も括弧、区切り、前置き詞などで表わす。そして、書き表わしたものをふつうの文字を使った文章として記録したり通信したりする。この方式なら、(学習と訓練は必要だが)誰でもふつうに読んだり書いたりすることができる。その代わり、冗長になるし、処理を行うシステムには語句などを読み取る負担がかかる。
現在では、情報システムの負担はあまり心配しなくてもよくなってきたこともあって、人指向の表現がよく使われるようになっている。中でもよく使われているものとしては、以下のようなものがある。
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PostScript(ポストスクリプト)形式
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RenderMan(レンダマン)形式
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VRML(<Virtual Reality Modelling Language=仮想現実感形成言語)
VRMLは、ウェブの内容や構造を表現するのにも使える(というより実はそっちが本来の目的)、おもしろい形式だ。先生の話しを聞きながら、
VRMLを使って簡単な情景を記述するのを実際に見てみよう。ちょっと読みにくいような気がするかもしれないが、語句や文形の使い方さえ分かれば自分でじかに書くことだって難しくくはない。特に、要素や構造を自由に書き変えられるというグラフィックスの特徴を確かめておこう。また、
スチルとこれらの
グラフィックスのファイルとの大きさを比べてみると、
グラフィックスの方が実はずっとコンパクトに表現できることにも注意しておこう。
これらの形式は、人が手で書くだけではなく、情景などに使われる情報システム(つまりコンピュータ)が作業の成果を記録するために使うことも多い。
グラフィックスとして表現された情報には、その情景がどう組み立てられているかが含まれている。けれども、それだけでは、それがどんな情景なのかは目には見えない。そこで、
グラフィックスから実際に見える視覚を生成する作業が必要になる。
グラフィックスから実際の視覚を生成する作業を
レンダリング(<rendering=本来は製品デザインで完成予想図を作画すること)という。
レンダリングにはいろんな手法がある。先生が、いろんな手法の原理や特徴(資料
[レンダリングの手法])を説明しながら、実際にそれらの手法でレンダリングをさせてみるので、その効果や作業の重さを実際に見て感じてみよう。