学習書●[メディアテクノロジー論]

図形
グラフィックス


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/MedTech/figure.html



 再び見せるための情報の表現について学習する。
 前の単元([スチル][ビデオ])で学習したスチルビデオは、見せたい像の視覚をそのまま表現するメディアだった。この単元では、像そのものでなく、それが見えるもとになった情景(scene、この科目での特別な呼び方)を表現する考え方を学習する。このような考え方に基づいた技術を(コンピュータ)グラフィックス(graphics=図的技術)という。グラフィックスが扱う情景は、物体、照明、撮影の形、質感、配置などの要素から組み立てられている複合体だ。
 また、グラフィックスの一つの応用として、VRMLによる空間の表現についても学習する。



(この項目を正しく表示するにはVRML対応のプラグインが必要です)




作図システム


 グラフィックデザインや生産デザイン、建築デザインの作業は、作図を通じて行なわれていく。この作業を助けるための情報システムを作図システム(drawing system)という。作図システムは分野に応じて専門化している。グラフィックデザインの分野ではIllustratorなどが広く使われている。
 作図システムを使うと、デザインしている紙面を見ながら、そこに置かれている切紙(piece。スプライト<spriteとも)の形状配置塗色などを決めていくことができる。
 絵を描くための情報システムの多く(Photoshopなど)は、まさに描かれているスチルを内部に持ち、それを描き直していけるように作られている。Illustratorなどの作図システムはこれらとは異なり、内部では紙面の情報が管理されていて、外部に対しては、それを描いたものが表示されるようになっている。つまり、作図システムでは、図が見えるもとになる平面と要素とが作り直せるようになっていて、ウィンドーに表示される図をじかに描くのではない。

 表示の品質もPhotoshopとIllustratorとでは違う。Photoshopの表示は拡大すると格子が見えてくる。特に、色が変わる境界ではそれが階段形に見える。この現象をジャギ(<jaggy)という。Illustratorではこんなことは起こらない。
 また、いくつかの場合には、IllustratorでならPhotoshopよりずっと自由に像を操作できる。


情景システム


 Strata3dShadeなどの情景システム(scene processing system。俗に3Dシステムとも)を使うと、箱庭や模型を組み立てるのと同じような考え方に基づいて、いろいろな物体が置かれた空間をデザインすることができる。
 情景システムは作図システムとよく似ていて、デザインしている情景がどう見えるか確かめながら、そこに置かれている物体形状配置質感を決めていくことができるようになっている。また、カメラライトの使い方もデザインできる。
 情景システムも、情景の像をじかに描くのではなくて、その像を見せるもとになる空間と物体を作り、その像は、必要に応じて描かさせるようになっている。
 最近の情景システムは、時刻の経過につれて変化する情景もデザインできるようになっていて、実写の代わりに使えるような精密なアニメーションを生成するのにも使われている。


グラフィックス


 視覚を表現するには、スチルやビデオのように、その視覚を直接に表現する考え方と、その視覚か生まれたもとになった図形や空間がどうできているかを表現する考え方とがある。あとの考え方をベースにした表現の技術をグラフィックス(<graphics=図的技術)という。
 製品デザインや映画の制作にとっては、スチル(またはビデオ)を生成するのが目標だ。しかし、製品の姿や映画の中の情景を設計していく過程では(場合によってはさらに記録でも)、情景を表現するのにはスチル向きの形式ではなくグラフィックス向きの形式が使われている。グラフィックスには、どんな要素をどう構成しているかを表わす情報が含まれているので、構成を変えてみたり要素を差し替えたりする操作が可能になるからだ。
 先生の話し(資料[グラフィックス])を聞いて、グラフィックススチルとの関係について学習しなさい。

 グラフィックスについては、どんな目的にも使えるような統一的な枠組みはまだ定まっていない。この点については、同じ意味的メディアでも、演奏(楽音の集積としてとらえることができた)の場合とはかなり違っている。ただ、少なくとも以下のような内容(それぞれは時間によって変化する)から構成されていなければならないだろうということは分かっている。


形状
特性
配置
物体

色, 質感など

照明
-
色, 指向性, 減衰など

撮影
-
色, 視界, 深度など


 先生がStrata3Dを使って簡単なコンピュータアニメーションを作って見せてくれるので、どんな作業をどんな順番で進めていくのか確かめておきなさい。




グラフィックス記述形式


 情景は、いくつかの要素から構成されている。それらの要素もまたほかのいくつかの要素から構成されている。このような構成の深さや広がりは、場合によってさまざまで、サウンドやスチルのように固定した枠組みで表現することができない。そこで、情景を表現するのには、文章(というより日本語の世界ではむしろ箇条書き)に近い形式が必要になる。それらは、大きく二つのグループに分けられる。
 一つはマシン指向のもので、情景の要素や構造を番号とその配列とによって表現し直し、それをファイルに記録したり送信したりする。この方式は、レンダリングなどの処理をする場合の効率がいいし、コンパクトだが、人が読んだり書いたりすることはほとんど無理と言っていい。
 もう一つは人指向のもので、情景の要素はふつうの語句やその短縮形、ふつうの書き方の数などで表わし、構造も括弧、区切り、前置き詞などで表わす。そして、書き表わしたものをふつうの文字を使った文章として記録したり通信したりする。この方式なら、(学習と訓練は必要だが)誰でもふつうに読んだり書いたりすることができる。その代わり、冗長になるし、処理を行うシステムには語句などを読み取る負担がかかる。
 現在では、情報システムの負担はあまり心配しなくてもよくなってきたこともあって、人指向の表現がよく使われるようになっている。中でもよく使われているものとしては、以下のようなものがある。

PostScript(ポストスクリプト)形式
RenderMan(レンダマン)形式
VRML(<Virtual Reality Modelling Language=仮想現実感形成言語)

 VRMLは、ウェブの内容や構造を表現するのにも使える(というより実はそっちが本来の目的)、おもしろい形式だ。先生の話しを聞きながら、VRMLを使って簡単な情景を記述するのを実際に見てみよう。ちょっと読みにくいような気がするかもしれないが、語句や文形の使い方さえ分かれば自分でじかに書くことだって難しくくはない。特に、要素や構造を自由に書き変えられるというグラフィックスの特徴を確かめておこう。また、スチルとこれらのグラフィックスのファイルとの大きさを比べてみると、グラフィックスの方が実はずっとコンパクトに表現できることにも注意しておこう。
 これらの形式は、人が手で書くだけではなく、情景などに使われる情報システム(つまりコンピュータ)が作業の成果を記録するために使うことも多い。


レンダリング


 グラフィックスとして表現された情報には、その情景がどう組み立てられているかが含まれている。けれども、それだけでは、それがどんな情景なのかは目には見えない。そこで、グラフィックスから実際に見える視覚を生成する作業が必要になる。グラフィックスから実際の視覚を生成する作業をレンダリング(<rendering=本来は製品デザインで完成予想図を作画すること)という。
 レンダリングにはいろんな手法がある。先生が、いろんな手法の原理や特徴(資料[レンダリングの手法])を説明しながら、実際にそれらの手法でレンダリングをさせてみるので、その効果や作業の重さを実際に見て感じてみよう。




いろいろな手法によるレンダリング
(左から右へ)Warnock法 多角形法 Phong法 光線遡行法





 グラフィックスの表現で最も重要なのは形のとらえ方だ。形は色や楽音などと違って、無限に多くの種類があるし、単純な大小で表現できるものでもない。そこで、いろんな形が書き表せて、しかも読むのにも書くのにも分かりやすい形のとらえ方がいくつか考え出されてきた。これらを形状スキーム(figure representation scheme)という。グラフィックスは、VRMLなどの形式で、文章(というより箇条書き)によって表現されることが多いが、このような形式は、いろんな形状スキームのどれか一つ(またはいくつか)に基づいて組み立てられている。
 どんな形状スキームがあってどう使われているか学習しなさい(資料[形状スキーム])。



質感


 形とともにグラフィックスの重要な要素は、質感だ。物体の表面がざらざらしているとか、つるつるしているとか、ぎらぎら光っているとか、反射や透過によってほかの物体が映って見えるとかいった情報があれば、情景の内容はずっと充実する。色も質感の一部として取り扱う。
 先生が、製品デザインや映画の制作に使われている[StrataVision3d]を使って、質感をコントロールするいろんな要素について説明する。それを聞いて質感の考え方を学習しなさい。

拡散性
鏡面性
滑らかさ
透明度
屈折率
模様


文字の形
(オプション)


 ディスクに作文を記録する場合、記録されるのは何の文字が並んで文を構成しているか、であって、その文字がどんな形をしているかが記録されているわけではない(単元[文字と文字列])。それなのに、文の中に含まれているいろんな文字をスクリーンに表示したりプリンタで印刷させたりできるのは、(例外もあるけれど)それぞれの文字がどんな形をしているのかが、ディスクのほかの場所にまとめて記録してあるからだ。その場所をフォントファイルという。コンピュータは、文字を表示する時は、1字ずつ、その字がどんな形をしているかフォントファイルを読んで調べ、そこで分かったとおりの形を文字として表示している。
 まず、人もコンピュータも、読んだり書いたりする文字の形をどのようにして決めているのか学習しよう。特に、字体と書体の二つの考え方をしっかり理解しておこう。さらに、書体とフォントとの関係についても学習しよう。 そのうえで、文字の形がどう表現され、どう使われているか学習しよう。

 明治時代の教科書[読方入門]にひらがなの表が載っている。ここに示されている字の形は、現在のひらがなのとはかなり違っている。近代からあとでさえ、字の形はこれほどまでに変化している。





[演習]


グラフィックス史

 グラフィックスの技術はほんの20年ぐらいの間にいくつものターニングポイントを折れ曲がるようにして進んできた。その経過を、資料[ターニングポイント]で学習しなさい。
 そのうえで、資料で取り上げているターニングポイントのうちの一つを選び、自分でも資料を探して、もっと深く調べてみなさい。そして、新しく分かったことがあったら、それについて説明しなさい。
 また、その転換によって、社会や文化に対してどんな変化が引き起こされたか考えなさい。

 自分で資料を調べて考えなさい
 あれこれ浅く広げてしまわないで、テーマを一つに絞って説明しなさい。視覚的なことについて説明する場合は、必ず図を使いなさい

ヒント

報告例
小橋麗恵 西谷英理


形状スキームの長短

 身の回りの物のいくつかについて、その形を表現するのに各スキームを使うと、どこが有利でどこが不利か検討してみなさい。記述の量と操作の自然さについては必ず確認しなさい。
 たとえば、フォーク、入道雲、立ち木についてはどうか。

自分で考えなさい


RenderMan/VRML

 RenderManかVRMLを使って、いくつかの情景を記述してみなさい。また、できればそれを表示させてみなさい。

それぞれの記法については、自分で説明書を探して調べなさい





学習のための資料

今間俊博
めざせCGクリエーター!
CG入門セミナー
(日経BP社、98-05-10)
ISBN4-8222-1467-2

そのほかの資料



グラフィックス


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