科目学習書●メディアテクノロジー論

スチル
写真+印刷


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/MedTech/still.html




 これからいくつかの単元にわたって、わたしたちが最も頼りにしている感覚である視覚に基づいたメディアについて学習する。
 この単元では、おもに、止まって動かない画像を取り扱う技術について学習する。止まったまま動かない画像を、ビデオ(=video、動画像)に対してスチル(=still、静止画像、ただ画像ということもある)という。ビデオはたぶんあとの単元で学習する。
 目に見せるものを表現するのには、その成り立ちは気にしないで、ただのとして表現する考え方と、像を生み出したもとのものの色や形で表現する考え方とがある。スチルは初めの方の考え方に基づいている。あとの方の考え方をグラフィックス(graphics)という。グラフィックスもあとの単元で学習する。







もしまだならここで

について学習しておきなさい


スチル


 わたしたちの身の回りのメディアのほとんどは、視覚か聴覚に働きかけるように作られている。このうち、視覚を通じて情報を通信(何かの情報を伝えようとする行為はすべてここに含まれる。電波や電線を使った通信だけをイメージしないように)または記録するためのメディアで、動きを含まないものをスチル(still)という。
 視覚は人間の感覚の中では特に重要な役割りを果たしている。このことと相いまって、スチルに関連のある技術はとても大きく広がっている。それらを表示の形態によって分けるとすると、▽図のように、3種類の技術に類別できる。

示質
示媒
印刷 版画
インク、絵の具など
紙、キャンバスなど
写真
発色剤
フィルム、紙など
スライド映写

スクリーン
画像情報処理
不定
不定

 これらの技術のうちでは、画像情報処理が最も新しい技術で、そのためどちらかと言うと単純で分かりやすく組み立てられている(逆だと思っていた人はいない?)。まず、この分野から学習を始めよう。

 現在では、コンピュータを使うことによって、スチルに対して、切り貼り、変形、色の調節、合成などのいろんな加工を行なうことができる。
 先生が、[Photoshop](▽図)というシステムを使ってスチルを加工するのを見てみよう。

 


Photoshop


ラスタ+セル


 スチルは、音と比べてずっと複雑な構造をしている。そのため、歴史的には、スチルを情報として取り扱う技術は、音の技術よりも少しずつ遅れて進化してきた(資料[スチル])。
 スチルは上下と左右とに広がっている。そこで、まず一つの方向に細かく切って帯に分け、さらにそれをまた細かく切って駒に分けて取り扱う(▽図)という考え方が生まれた。この帯をラスタ(raster)といい、同じく駒をセル(cell、またはピクセル<pixel)という(資料[セル])。

     

スチル ラスタ セル

 スチルとは全く違う考え方で写真(や絵)を取り扱うこともできる。たとえば、その写真には何が写っているか(絵なら何が描いてあるか)を明らかにしてそれを記録すれば(または通信すれば)、写真を記録する(または通信する)ことができる。このような考え方に基づいて取り扱われている写真をグラフィックス(graphics)という。
 グラフィックスについてはあとの単元で学習する。

 先生が新聞や雑誌のモノクロの写真で、人の顔が1×1cm〜8×8cmぐらいの大きさに写っているものを配る。これをさらに4〜8本のラスタに分け、それらを自然に展開して明暗の信号を作ってみよう。
 暗い/やや暗い/やや明るい/明るいの4段階ぐらいに読み分けるつもりで作業すればいい。
 信号ができたら、それを近くの席のほかの学生と交換して、もとのスチルが読み出せるか試してもらいなさい。

 TVやビデオを21型のモニタで見ている時に、像を表示する電子ビームはどのくらいの速さで動いているか計算してみよう。以下のことがらを使いなさい。
・TVやビデオは1秒の間に30枚のフレーム(像)を繰り返し表示している。また、それぞれのフレームは上下に並んだ490本(NTSC方式の場合)のラスタに切分けられている
・21型のモニタのスクリーンの幅は約0.4m
 また、これがどんな速さか理解できるように、車や飛行機の速さと比べてみよう。
 自分でやってみて分からなくなったら、ヒントと作業例(稲森久子)も参考にしなさい。


スチルのフォーマット


 スチルを記録/通信するためのフォーマットには、PICTBMPJFIFGIFPNGなどがある(▽図)。

名称 画質 負荷 コーデック 用途
PICT △〜◎ △〜○ 各種 他目的
(MacOSの標準フォーマット)
BMP △〜◎ ×〜○ 各種 他目的
(Windowsの標準フォーマット)
JFIF △〜○ △〜○ JPEG カメラ
携帯電話
ウェブ
GIF △〜○ △〜○ GIF ウェブ
PNG △〜◎ △〜○ - ウェブ


スチルのもたらす負荷の低減


 スチルを素直に表現するには、それぞれのセルの色をRGB系などで表現してから順に並べていけばいいが、これだと、記録や通信の媒体に相当な負荷をかけることになる。

 1枚の標準的な大きさ(640セル×480ラスタ)の写真を素直に表現しようとすると、どのくらいの個数のビットが必要になってしまうか、計算してみよう。



 スチルの媒体には大きな負荷がかかるので、実際の記録/通信では、負荷をなるべく減らすために、色表化(color-lookup table indexing)、計数化(counting)、ブロック化(blocking)、チャンク化(chunking)などの手法が生み出されている。

 色表を使った方法は、素朴な方法に比べて、媒体への負荷がどのくらい低減できるか計算してみよう。


RGB/GIF/JFIF


 デジタル技術でスチルを記録する方式はいろいろあるが、最もよく使われているのはGIFJFIFだ。これらはそれぞれ特徴があって、うまく使い分けられている。これらと、最も単純で分かりやすいRGB方式について学習しておこう。


絶対値 相対値


 色などの感覚の対象を記録/通信する場合は、絶対値(absolute value)を表現しなければならない場合と、相対値(relational value)を表現しなければならない場合とがある。たとえば、BTBの反応色とPHとの対応表の色は、実際の色のとおりに印刷されていなければならない。これに対して、画集の[モナリザ]の肌の色は、作品の全体と比べて正しい色であることが重要だから、編集の考え方によって、切り取って並べて比べると明るめに印刷してある画集と暗めに印刷してある画集とがあってもおかしくない。これらはそれぞれ絶対値と相対値を印刷していることになる。この単元では、おもに相対値の表現について考えてきた。


版画 印刷 写真


 デジタル技術が発達する前は、スチルを記録/通信する方法としては(手で書く/描くのは別として)、版画または印刷や写真が使われていた。

 版画や印刷は、基本的には、インクを置くと像が現れる特別な板を作り、その像を紙に転写する。この板を版という。インクをただ置くだけで像が現れるようにするために、いろんな手法が工夫されてきた(資料[版画+印刷])。現在は、平版法の一つのオフセット法が最もよく使われている。
 オフセット法は、インクが乗りやすい場所とインクをはじく場所とを版の上に作り分けることで実現されているので、そのままでは絵や写真に見られるような、色の連続な変化を実現することができない。そこで、スクリーンを使って無数の点(など)の行列を作り出し、その点の大小で色を表現する技術が生まれた(→資料[印刷の色について])。

 現在の写真の技術の基礎は1800年代に発明されたダゲレオタイプに求めることができる。写真はもともと版画や印刷の製版の技術として生まれた。現在の写真も、フィルムに像を記録して、それを原版として印画紙に複写するようになっている(→資料[カラーフィルムの構造と現像プロセス])。
 最近では電子式のカメラがスチルやビデオの撮影に使われているが、それも写真の技術の延長にある。


メカニクス/エレクトロニクス


 メディアを表現に関係がある技術のほとんどは、モータエンジンで何かを動かすメカニクス(mechanics=機械工学、力学)か、無数の電子の流れによって力や光や熱を起こすエレクトロニクス(electronics=電子工学)のどちらかを基礎として成り立っている。
 メカニクス/エレクトロニクスには、技術の基礎としてどんな長所と短所があるか学習しよう。そして、それらが技術にどんな展望と限界をもたらしているか考えよう。




聞きたいこと 確かめておきたいこと

ディザ化すると表示がしやすくなるの?

FourierパタンとFourier級数ってどういう関係?

Fourierパタンを単純にしたのがHadamarパタン?

ブロック化って何ですか?

GIFで保存したら画質がよかったり悪かったり...

ウェブサイトで見かけるPNGって?

Photoshopで保存するならフォーマットは?

負荷を下げるって画質を落すこと?



学習の成果を自己評価してみよう




もっと深く学習するための資料


名取洋之助
岩波新書 青505
写真の読み方
(岩波書店 63-11-20)

題名を見れば分かると思うけど これは別にメディア工学の本ってわけじゃなくて 写真がどう作られてどう見られるのか考えるために書かれた本だ
でも この本を読んでいけば 写真がどんな仕組みになっていて それがなぜそう決められてきたのかが 自然に理解できるようになるはずだ
だいたい 写真でなくても何でも ものの役割り仕組みっていうやつは裏表になって互いを規定し合っていくものなんだよね
ISBN4-00-414081-1
(新刊では手に入りにくくなっています)

越智宏、黒田英夫
図解でわかる画像圧縮技術

(日本実業出版社 99-01-25)

いろいろな圧縮の技法の解説
もともと工学系の学生のために書かれている本なんだけど 親切に書かれているから 1週間ぐらいかけてゆっくり読むといいよ
ISBN4-534-02884-9

牧野武文
Macの知恵の実

(毎日コミュニケーションズ 00-02-19)

タイトルは"Mac"だけど 実際の内容はウィンなんかも含めたすべてのコンピュータの側から見た デザイン(特にグラフィックデザイン)の各論
スチルというメディアに対してわたしたちは何を求めてきたのかが明らかにされていく
?A4はなぜ半端な長さなのか?スチルの解像度はなぜ72dpiがいいのか?虹はほんとに7色なのか?
迷信を片っ端から斬っていくスリリングな本
ISBN4-8399-0329-8



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ジャンクション

スチル


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