戻る コロッサス (Colossus)



Colossus コロッサス (Colossus) は、 第二次世界大戦たけなわの 1943 年、 ドイツ軍がヒトラーと将官、 および将官と将官の通信に使用していたローレンツ SZ42 暗号機による暗号を解読するために、 イギリスで作られた電子計算機です。
ドイツの暗号といえば エニグマ が有名ですが、 ローレンツ暗号はそれを更に複雑にしたものです。 エニグマは機械式の解読機 「ボンベ」 で解読されていましたが、 ローレンッ暗号は機械式の解読機では時間がかかりすぎて役に立たないため、 電子式の解読機が作られることになりました。

コロッサスは 2,500 本の真空管を使い、 メモリも真空管で作られた 5 ビットの シフトレジスタ 5 組から成っています (プログラムはハードウェアで与えられ、 一部は固定、 一部はプラグの差替えによって変更できるようになっていました)
クロックは 5kHz、 消費電力は 4.5kW です。 高さ約 2.3m、 幅約 4.9m のラック二つに納められていました。
暗号のデータは読取速度 5,000 文字/秒の紙テープリーダから入力され、 解読された暗号はリレーによるバッファメモリを介して、 タイプライタで印刷されました。

コロッサスはそれまで数週間かかっていたローレンッ暗号の解読を数時間に短縮し、 1944 年のノルマンディ上陸作戦においても連合軍に貴重な情報を与えました。





コロッサスが作られたのは 1943 年ですが、 これより先の 1942 年、 米国のアイオワ州立大学で ABC という電子計算機が作られています。
ABC には論理演算ユニットやコンデンサドラム式のメモリなど、 画期的なアイデアが随所に見られます。
しかし、 コンデンサドラムの回転速度は約 1 回転/秒ですので、 せっかくの電子計算機も、 全体としての動作速度はドラムメモリの速度による制約を受けます。 電子式・機械式折衷のコンピュータ、 という印象です。

そのような意味ではコロッサスが世界で最初のコンピュータなのかも知れませんが、 ABC や ENIAC 同様、 コロッサスもプログラムはハードウェアによっていますので、 いずれも今日のコンピュータの概念からは、 かなりかけ離れたものでした



関連事項:  エニグマ  ABC  ENIAC


情報処理概論 に戻る   目次 に戻る   戻る


このページの写真は、Colossus Rebuild (http://www.cranfield.ac.uk/ccc/bpark/colossus.htm) から許可を得て (1999年) 引用していますが、リンクが切れているようです。 同様の記事および写真は、 Lorenz ciphers and the Colossus (http://www.codesandciphers.org.uk/lorenz/index.htm) にあります。

*1 colossus には 巨人、 巨像、 巨大なもの、といった意味があります。
*2 「コンピュータ」 を、機械式・電気式・電子式といった観点からではなく、 そのアーキテクチュアから定義しようという考え方もあります。 星野力: 「誰がどうやってコンピュータを創ったのか? (共立出版)」 では、 コンピュータとは 「プログラム可変内蔵機構をもつ機械」 と定義されています。 これに従えば、ABC も、 コロッサスも、ENIAC も、 すべて 「コンピュータではない」 ことになります。

update: 2013.01.13  address