戻る 十進数に二種類がある (十進数)

 十進数とは、「0、1、2、3、4、5、6、7、8、9」 と十個の数があり、それだけしかないので、 「9」 の次は1桁上げて「10」にする。すなわち 「十」 で1桁進む数の体系である。と私は学生に説明している。 ところが、十進数にはもう一種類ある。 「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十」 と十個の数があり、 その次は1桁上げて 「十一」 にする数の体系である。

 前者の方が合理的であり、また、コンピューターの基礎になっている二進数、すなわち、 「0、1」 の二個の数だけで成り立っている数体系を説明しようとすると、 どうしても前者の方でなければ説明できないからである。

 「一」 から 「十」 までの十進数は東洋で行われた。 これは、「0」 と云う概念がなかったからである。 「0」 はインドあたりで生まれ、西の方へは伝播していったが、東へは伝わらなかったからである。

クリックすると原画が表示されます (78KB)  このため、面白い現象が色々な所で見られる。

 まず、年齢。戦前までは、生まれたばかりの赤ん坊は 「一才」 であった。 現在では、初誕生日が来て初めて 「一才」 であり、それまでは 「0才」 である。 大人の年齢も昔は 「数え年」 で数えた。現在は満年齢である。

 次は、月日。これは今でも、十二月三十一日の翌日は一月一日である。0月0日ではない。 時間の方が11時59分の次が0時0分であるので、これは不統一である。 欧米では月は数で表さない。一月ではなく 「January」 である。

 次は、家屋の階数。日本では一階、二階、三階となるが、欧米ではしばしば、 ground-floor、first-floor、second-floor である。日本の二階が欧米では一階である。 だから日本では、「四階の高さは二階の高さの何倍か」 と云う質問が、イジワルなヒッカケ質問になる。 (4÷2=2倍と答えたくなるが、正解は3倍)

 それにしても、東洋では何故 「0」 が生まれなかったのだろう。 ソロバンは中国で紀元前600年頃、春秋時代に生まれた。 ソロバンでは数字を置く時、例えば 「2056」 は 「二千トンデ五十六」 で、百の桁が空になる。 この 「トンデ」 が 「0」 であることに何故気付かなかったのだろう。 おそらく、「二千」 あるいは 「五十」 と 「千」「十」 というような、 桁を入れるという表記法が災いしたのであろう。 それにしても不思議でならない。


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