"悪いのはお前だろ!映画を観ていて主人公にそう言いたくなることないか?"と
井戸が言った。
"[スピード2](*00)って見たか?あれって、黙っていたら何も起こらなかったのに、船を止めようとしたもんだからとんでもないことになっちゃったんじゃないか。一番悪いのはお前だ!ってさ"
僕ならたとえばそれは
[コン-エアー](
*01)だ。砂漠の前で撃墜しておくべきだ。映画には映っていなかったが、飛行機が街中に着陸したことによって、一体何人の人間が死んだことだろう。凶悪犯を乗せた故障した飛行機を、街中に着陸させてはいけなかったのだ。もっとも、こうした設定はドラマを盛り上げるのに必要なわけだから仕方がないといえば仕方がないのかもしれない。
現実の生活では、もっと悲惨なことになる。バブルの時に旧国鉄の土地を売却していれば債務は帳消しになっていたはずなのに、土地価格の安定のためとか言って売却に反対した議員。政府に債務を買い戻してほしいと銀行に言われ、国民の非難をかわすためにそごうの方を倒産させて、かえって国民の負担を増やした議員。"あんたが余計なことをしなけりゃいいのに"と呟きたくもなるではないか。いまさらながらのように言われている教育問題にしても同じことだ。先生を採用しているのは、管理する側なのだから、管理する側の方から先生の質を云々してほしくない。
そう言えば、僕が最初の会社を辞めた時に、そのきっかけになった理由も"あんたが余計なことをしなければよかったのに" だった。僕が最初に勤めたのは、貿易会社の国内営業だった。半年以上もかけてある会社を営業して、"お前のとことから半分だけ買ってやる "と言ってもらえるところまでこぎつけたまさにその時、全部うちのところで買ってもらおうとした上司がその会社に行って "うちの製品を使わないからお宅の製品は品質が悪い" とホザいた。そのため相手の社長が怒り出して、話は全部おじゃんになった。これも "あんたが行かなければよかったのに" の実例である。
と、ここまで書いたところで悲しいニュースが飛び込んできた。リポーターはおなじみひろみさんである。
昨日の新聞で、秋田のまんぷく食堂が閉店するという記事をみつけました。
カラー写真付きの結構大きい記事になっていて、半世紀続いた店が、10月13日をもってひっそりと幕を閉じる、みたいな記事になっていました。
店がやっていたのは昭和22年から平成12年までです。今の場所に移ったのは、昭和53年だそうだから、森島さんは、古いのと新しいのと両方知ってるんじゃないでしょうか。駅前が変わって客足が減ったのと、跡継ぎがいないというのが閉店の理由だとか。
森島さんの[映画の食卓-僕の食卓]にも登場した肉鍋は、やっぱり、名物だったんだそうですね。他の店よりも甘めの味付けが自慢だったとか。
これで、森島さんが秋田に来た時の楽しみが一つ減ってしまいましたね。あしたは、肉鍋で一杯やって、秋田の冬を思い出してください。
消えていくものは消えていくからちゃんとした思い出になるのだ、と頭では分かっているものの、淋しいものは淋しい。
そういえば、数年前に訪れてみたら、秋田の駅前も全国のどこにでもある普通の町並みになっていた。まんぷく食堂もこぎれいになっていて、実際には昔よりもずっとあたたかい作りになっていたのだろうが、あの、がたがた鳴るガラス戸を開けたときの、店内の喧騒がかもしだす暖かさはもう感じられなくなっていたような気がする。
"あんたが余計なことをしなけりゃいいのに"。
誰に言ったらいいのかは分からないが、そう呟きたくもなるではないか。
*01
Con Air (97)
森島は分かって言ってるんだと思うけど、俺が
[スピード2] で問題にしたいのは、
[コン-エアー]とは全く別の問題だ。
護送機をラスベガスに行かせてしまったのは、仕方がなかったんだよ。もっといい解決もあったかもしれないけど、無能とかまあいろんな事情があったのさ。つまり、みんな仕方ないと思って、それでこうなったんだから、それをどうこう言ってもね。
そごうを潰した政治家だって、悪い奴が悪いことをしただけで、それはかまわないと思うんだ(別のコンテクストでは批判されるべきだけど)。
だけど、
[スピード2] の主人公って、自分が
世界を救うつもりで行動してて、実はそうじゃないじゃん。ヤン-デポンさんには次はぜひ
ダーティーペアシリーズの映像化をやってほしいなぁ。