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CD-ROM ドライブ CD-ROM ドライブは、パソコンにとって、なくてはならない補助記憶装置です。

かつては、パソコンにソフトウェアをインストールするのに、フロッピーディスクを使っていました。
ソフトウェアによっては 10数枚もあるフロッピーディスクを、順番に、1枚ずつ交換しながら行いましたので、 ずいぶん手間も時間もかかりました。
フロッピーディスクの読み取りエラーも希ではなかったので、インストール作業が進むにつれて、 「どうぞトラブルが起こりませんように…」 と、祈るような気持ちでフロッピーディスクを交換していたのですから、 今から思えば笑い話です。

CD-ROM は記憶容量、信頼性、量産コスト、読取り速度など、 どれをとってもフロッピーディスクより優れていますので、現在では CD-ROM 全盛となりました。


光ピックアップ と スピンドル ここでは、CD-ROM ドライブ *1 を分解しながら、その構造 を見ていくことにします。
左の写真は、光ピックアップ と スピンドルです。
CD-ROM を (レーベル面を上にして) ドライブに入れると、 スピンドルの上に置かれて固定されます。

光ピックアップには、対物レンズ、レーザダイオード、光検出器などが取り付けられていいます。

光ピックアップが固定されているユニットは、左右のシャフトで支えられていて、前後に動くことが出来ます。 CD-ROM のデータは内周から外周へと記録されていますから、スピンドルに近い手前から、 データの読み取りが進につれて、次第に奥の方に移動します。

トラッキング機構部 これは上の写真の裏側です。

上部の白いギヤは、光ピックアップを CD-ROM の 内周部矢印外周部 に移動させるトラッキング機構部です。 ギヤが回転すると、光ピックアップユニットのラックに伝わって直線運動に変わります。

写真の左下部にある長方形のものは光ピックアップの底面で、左の円筒はスピンドルモーターです。 CD-ROM はこのモーターによって回転します。
データの読み取りが進むにつれて、光ピックアップは少しずつ右に移動することになります。



CD のピット上に、正しくレーザビームが当たるように光ピックアップの位置を制御することを、 トラッキング制御といいます。

CD の中心がスピンドルの軸とずれてドライブにセットされると、ピットの位置は1回転毎にふらふらと揺れます。 CD のトラックピッチは僅か 1.6μm ですから、中心が 1μm もずれると、 たちまちデータが読みとれなくなってしまいます。
CD の中心を 1μm 以下の精度で、正確にスピンドルの軸心に合わせてセットすることは不可能ですし、 上のトラッキング機構は、1回転毎に微妙に変化するピットの位置に合わせるような、 デリケートな制御には向いていません。

また、CD を完全に水平にセットすることも不可能ですから、レーザビームのピントを合わせる位置も、 1回転毎に絶えず変化します。 レーザビームのピントを合わせるためには、ピットと対物レンズの距離がいつも一定になるように、 対物レンズの高さを常に調整しなければなりません。

このような、微妙なトラッキング制御やフォーカシング制御の仕組みが、 光ピックアップの中に組み込まれています。



トラッキング・フォーカシング制御機構 光ピックアップの上面カバーを外してみました。

磁性体のケースに2組の磁石が固定されていて、 その中に対物レンズとコイルを組み付けた樹脂の部品があります。
これは中心の軸のまわりで左右に回転したり、上下に動いたりできるようになっています。

これを取り外したのが下の写真です。コイルの様子がよく分かります。

磁界のあるところで電流が流れると力が発生しますが、この場合、 右側の縦長のコイルに電流を流すと左右に回転する方向に、 左の横長のコイルに電流を流すと上下方向に動くようになっています。 モーターとスピーカを組み合わせたようなものといえば、 分かりやすい人が (よけい分からなくなる人も) いるかもしれません…。

対物レンズと駆動用コイル 光ピックアップ自体は、上のトラッキング機構によって (左の写真の方向では) 下から上へ徐々に移動していきますが、CD-ROM の偏心によるピットの位置の変動は、1回転毎に、 (同じく左の写真の方向では) 上下方向の変動になります。 従って、対物レンズの部分が回転することによって、レーザビームの位置を上下方向に補正できますから、 偏心の影響を取り除くことができます。

回転は CD-ROM の偏心によってピットが振れる分だけ、 上下の動きも CD-ROM の傾きによって生じる変動に追従できればいいので、大きいストロークは必要ありません。
樹脂の部品と対物レンズ、2組のコイルだけのものですから重量も僅かです。 CD-ROM の回転に追従して、素早くトラッキング、フォーカシングできるように工夫されています。

CD-ROM の光学系 左図は CD-ROM の光学系の略図です。

レーザダイオードから出たレーザ光は、回折格子を通ることによって、主ビームと2つの副ビームに分かれます。 副ビームはトラッキングの制御に使用されますが、左図では描かれていません (詳細は CD の制御機構 をご覧下さい)

レーザビームは偏光ビームスプリッタで上方に曲げられ、コリメータレンズ、1/4波長板、対物レンズ を経て CD-ROM のピットに至ります。

ここで、CD-ROM がズレてセットされて偏心があると、ピットは左図のように左右に揺れますが、 それを追いかけるように対物レンズが動いて、常にピット上にレーザビームが当たるように制御されます。

同様に、CD-ROM が傾いていると上下に振れますが、それに応じて対物レンズが上下に動いて、 常にピット上に正しくピントを結ぶように制御されます。

光検出器 チップ 左は光検出器のチップ (約 2mm × 2mm) を拡大 *2 したものです。

中央の3個の黒い部分が受光素子で、左右の大きいものはトラッキング制御に、 中央の小さいものは CD-ROM のデータ読み取りとフォーカシング制御に使用されます (フォーカシング制御の詳細は CD の制御機構 をご覧下さい)

受光素子の電気信号から、CD-ROM の信号を取り出したり、 トラッキング、フォーカシング制御のための信号に変換するための電子回路が、 受光素子の周辺に集積されている様子が分かります。



関連事項: CD   CD の制御機構


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*1 ここで使用した CD-ROM ドライブは 1996年製 のものです。 かなり旧式ですが、その分かえって構造が分かりやすいかもしれません。
*2 一般的な IC のチップは黒いエポキシ樹脂に封入されていてなかなか目にする機会がありません。 その点、光検出器は光を通さなくてはなりませんから、 透明樹脂でパッケージされているので簡単にチップを観察できます。 EPROM にも同様の特徴があります。

2001.08.31  address