戻る MRAM (Magnetoresistive random access memory)


MRAM (エムラム) は、Magnetoresistive Random Access Memory の略語ですが、 その名の通り、磁気によってデータを記憶するメモリです。

軍事・宇宙開発などの特殊な用途以外では、まだあまり実用化されていませんから、 MRAM なんて聞いたことがないかもしれません。

MRAM は、最近話題になりつつある次世代のメモリです。

現在よく使われているメモリには、 DRAMSRAM、 デジタルカメラの画像記憶などに使われておなじみになった EEPROM (フラッシュメモリ、スマートメディアなど) があります。

下表に、MRAM と、DRAM、SRAM、EEPROM の特徴をまとめてみました。 (◎、○、△、×、? 等の記号は私の独断です。)

  MRAM  DRAM  SRAM EEPROM
 書換え時間 △ (×)
 読出し時間
 集積度◎ ?
 消費電力
 不揮発性××
 ビット単価◎ ?

MRAM の集積度やビット単価には ? をつけてあります。
現状では MRAM の集積度は DRAM より少し劣りますが、将来的には DRAM を凌駕する可能性もありそうです。
ビット単価は、集積度が高くなれば、あとは量産の程度や歩留まりや需給のバランスなどで決まりますから、 これも ◎ になる可能性があります。

MRAM の特徴は、何といっても 「不揮発性」 と、読み書きの速度が速いことです。 既存のメモリでこれらをすべて満足するものはありません。

MRAM は、DRAM に置き換わって、究極のメモリ となる可能性を持っています。


コアメモリ 半導体メモリ (DRAM, SRAM etc.) が普及するまで、 コンピュータにはコアメモリが使われていました。
コアメモリは左の写真のように、小さいドーナツ状の磁性体に縦、横、斜めに導線を通し、 これに電流を流して磁性体の磁化の方向を切り替えることによってデータを記憶します。

この写真のコアメモリはごく初期のものですが、記憶容量は 256bit です。 最近のパソコンには 256MB のメモリが実装されていますから、 同じ記憶容量にするには、このコアメモリが 8,388,608個必要です。
この写真のコアメモリが、仮に1個 1,000円であったとしても、256MB では、総額は約84億円にもなります。 コアメモリが姿を消した理由が、コストからだけでも容易に納得できます。 もちろんスペースや消費電力などの面でも、半導体メモリの方が圧倒的に優れています。

MRAM は磁気によってデータを記憶するメモリですから、コアメモリを IC 化したもの、と考えていいかもしれません。


MRAM では磁気コアの代わりに TMR 素子 (tunneling magnetoresistive) というものを使用します。


TMR


TMR 素子は、わずか数原子分という極めて薄い絶縁物の層を磁性体ではさんだもので、 磁性体の層の磁化の方向によって電気抵抗が変化します。

いま、左図の方向に電流を流すと、電線の下部には右向きの磁界が発生しますから、 TMR 素子の上部の磁性体はその方向に磁化されます (下部磁性体の磁化の方向は変化しないように工夫されています)。 このとき TMR 素子は、薄い絶縁物の層をトンネル効果によって電流が流れやすくなるため、抵抗値が下がります。

右図の方向に電流を流すと、電線の下部には左向きの磁界が発生しますから、 TMR 素子の上部磁性体は逆方向に磁化されます。 この場合、TMR 素子は絶縁層に電流が流れにくくなり、抵抗値が上がります。

電流が流れやすい左図は  '0'  を、 流れにくい右図は  '1'  を記憶していることになります。

一度 TMR 素子の磁化の方向を変化させると、磁気記録ですから、ビデオテープに録画した映像が消えないように、 メモリの電源が切られても記憶が消えることはありません。 メモリの電源が切られても記憶が消えないことを 「不揮発性」 といいます。



Magnet


DRAM、SRAM など、現在の殆どの半導体メモリには、「揮発性」 という欠点があります。
電源スイッチを切れば、メモリの記憶はすべて消えてしまいます。

半日がかり、1日がかりで打ち込んだワープロや表計算のデータが、 パソコンのハングアップや停電等のために一瞬のうちに消えてしまった、ということはしばしば経験します。

メモリが不揮発性であれば、このような場合でも貴重なデータが救われる可能性が高くなります。

最近のニュースでは、 16M ビットの MRAM が発表され(2004.6.22)、 4M ビットの MRAM の量産が始まった(2003.10.28)ようです。 また、2004年9月21日の朝日新聞では、産業技術総合研究所とアネルバの研究チームが ギガビット級の MRAM 量産に道筋をつけた、とも。 いよいよ、小容量不揮発性メモリとしてなら実用化が近づいてきました。


テレビやラジカセなどと同じように、いつでも自由にスイッチを OFF にしたり ON にできるパソコンができるのも、 時間の問題… かも知れません。



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インフィニオンとIBMが共同で世界初の16MビットMRAMを発表 (http://www.infineon.jp/news/press/p0406071.php)
モトローラ、世界で初めての4Mビット MRAMチップ生産開始 (http://www.mot.co.jp/SPS/html/ad/2003/mram4.html)

このページのコアメモリの写真は、 Virtual Museum of Computing から引用しています。

update: 2004.09.21  ueyama@infonet.co.jp