戻る   LSI (large scale integration)



IC は半導体のチップ上に多数のトランジスタやダイオードなどの素子を集積して電子回路を構成したものですが、 1000 〜 10 万個程度の素子を集積したものを LSI (大規模集積回路)、 それ以上の素子を集積したものを VLSI (very large scale integration, 超大規模集積回路) といいます

IC の集積度が高くなると、 IC の電子回路は複雑になり、 機能も高くなります。 それに伴って、 一般的には IC の外部に接続する信号の数も増え、 IC のピン (リード) がたくさん必要になります。 また、 小さなチップにトランジスタを集積すればするほど発熱が増えます。 IC の形状は集積されたトランジスタの数やピンの数、 発熱の程度、 などによってほぼ決まります。

LSI の形状のいくつかを紹介します。
DIP (dual in-line package)
DIP IC の形状としては代表的なもので、 たいていは 8 〜 40 ピンです。 DIP IC のピンのピッチは 2.54mm が標準 (狭くしたものもあります) ですから、 40 ピンだと IC の両側に 20ピンずつ並び、 IC の長さは約 50mm になります。 取り扱いは簡単ですが、 電子機器を小さくしたい用途には不向きです。

SOP (small outline package)
SOP IC の両側にリードが並んでいます。 実装密度を高めるために高さを 1.2mm 程度にした TSOP (thin small outline package) というのもあります。 メモリボードの DRAM などでよく見かけます。
リードのピッチを狭くすればピン数を増やすことができますが、 1.0mm から 0.5mm が一般的です。 これより狭くなると IC の取り扱いが極めて難しくなります。
DIP や PGA (下の方にあります) はプリント基板に開けた穴にリードを挿入して半田付けしますが、 SOP や以下の QFP、 PLCC、 BGA などはプリント基板に載せただけで半田付けします。 基板にリード挿入用の穴を開けなくても良く、 機器の小型化に適しています。 これを表面実装 (SMT: surface mount technology) といいます。

QFP (quad flat package)
QFP ピン数が増えると両側では足りなくなるので IC の4辺を使用します。 このような IC を実装するには、 0.1mm でもずれたり、 曲がったりすることは許されません。 IC のリードピッチが狭くなると、 隣のピンとショートする可能性も高くなります。 このような LSI を基板に実装するためには、 部品のズレや曲りをカメラで測定し、 それを補正することができる高精度のマウンターが必要になります。

PLCC (plastic leaded chip carrier)
PLCC リードを "J" 字型に内側に曲げてあるので SOP や QFP のような IC の外側の接続用スペースが不要で、 温度変化のストレスに対する耐性が高いという特徴があります。
リードピッチは 1/20 インチ (1.27mm) なので、 ピンがたくさん必要なものには向きませんが、 IC ソケットを使用すれば IC の交換もできます。

PGA (pin grid array)
PGA さらにたくさんのピンが必要な場合は、 IC の底面にピンを格子状に配置します。
写真は Pentium という、 かつてパソコンで使用されていた CPU で、 296 本のピンがあります。
ピンのピッチは一般的に 1/10 インチ (2.54mm) で、 ピンを挿入するための穴を基板に開けることになるので プリント基板の設計が難かしくなります
BGA (ball grid array)
BGA PlayStation 2 に使われている Emotion Engine、 1350 万個のトランジスタが集積された 540 ピンの VLSI です。
BGA は PGA のようなピンではなく、 底面に格子状に小さい半田のボールをつけておいて、 基板に載せた後全体を加熱して半田付けします。 500 カ所以上の半田がちゃんとできているかどうかを検査することも、 半田付けの不良箇所を修正することもできません。 高度な実装技術が必要です。






次の写真は携帯電話機に実装されていた LSI の断面です。 左が SOP、 右が BGA。 下の写真はそれぞれのリードや半田ボール部の断面クローズアップで、 白っぽく見えるのが半田です (いずれも写真をクリックすれば拡大表示されます)
SOP のリード線ピッチは 0.5mm、 BGA の半田ボールのピッチは 1.524mm です。
SOP


BGA


電子機器、 特に携帯電話などには、 SOP や QFP のようなリードピッチが狭い IC や、 超小型の電子部品 が使われています。
こうした部品を使ってプリント基板を作るには、 まず基板の端子部にペースト状の半田 を印刷します。
次にチップ状の抵抗器やコンデンサを載せますが、 これには精密な高速の実装機 (マウンタ)を使用します。
続いて IC を載せます。 IC のリードピッチが 0.5mm 程度になると、 ほんの少しずれても傾いてもいけないので、 カメラやレーザーで計測して補正できる、 精度 0.05mm 程度のマウンターが使われます。
最後に基板全体を部品ごと高温の炉に入れて、 半田付けをします。





コンピュータのカバーを開くと、 このようなさまざまな形状の LSI, VLSI を見ることができます。 メモリの増設などの機会があれば、 IC の形にも注目して下さい。 きっと、 「わぁ、 こんなに小さいんだ!」 と驚くに違いありません。
コンピュータの技術の世界が、 身近に感じられますよ。




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*1 かつては SSI、 MSI、 LSI、 VLSI、 ULSI (それぞれ small scale, medium scale, large scale, very large scale, ultra large scale) などの分類が行われていましたが、 最近はあまり使われなくなりました。 たぶん半導体技術が進みすぎて、 very, ultra, super, extreme … と、 どこまでいってもキリがないし、 また分類する意味もないからでしょう。
*2 内側のピンから信号を取り出すためには、 ピン間の細い隙間を通って配線パターンを通さなくてはなりません。 当然、内側になればなるほど、ピン間をくぐり抜けて IC の外まで配線パターンを引き出すことが困難になります。 BGA でも事情は似ていますが、基板に貫通穴を開けなくてもいいので、PGA よりは楽です。
もちろん、このようなプリント基板の配線パターンの殆どは、コンピュータによって設計されます。
*3 当初は 3.2 × 1.6mm サイズであったチップ抵抗器が、 1.6 × 0.8mm、 1.0 × 0.5mm とだんだん小さくなって、 最近では 0.4 × 0.2mm にまで超小型されています。 幅 0.2mm しかない電子部品を、 持ち上げるだけでもどれだけ大変か、 想像できるでしょう ?
こんな部品が携帯電話には 600 〜 800 個も使われています。 これを最近のマウンタは 1 時間に 6 万個、 1 秒間に 16 個ものスピードで載せていくんですから驚きです。
*3 半田の微粉末をフラックスで練ったものです。 適度の粘性があるので、 この上に部品をそっと載せると、 衝撃さえ加えなければズレたりすることはありません。

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update; 2013.02.10  address