戻る CPU  (中央処理装置: Central Processing Unit)



コンピュータの構成図 CPU (中央処理装置) はコンピュータの中で、 最も重要な役割を担っています。
コンピュータは大まかには左のような構成になっていて、 CPU には演算装置と制御装置があります。
現在の CPU は 1 個の LSI に集積されているので、 MPU (Micro Processing Unit) という言い方もあります。

「演算装置」 は文字通りさまざまな演算を行う装置、 「制御装置」 は命令を解読して演算装置に送ったり、 コンピュータ内の各装置の動作のタイミングを整える、 などの仕事をしています。

コンピュータのプログラムはメモリが記憶しています。
アプリケーションのアイコンをダブルクリックするとアプリが起動しますが、 このときプログラムがハードディスクからメモリに読み込まれるのです。
CPU はプログラムの命令を読みとって、 順に処理していきます。 その結果としてブラウザのウインドウにウェブページが表示されたり、 ドライブに入れた CD から音楽が流れてきたりします。 そうしたことによって、 私たちは間接的に、 CPU が働いていることを知ります。



Pentium CPU
i4004 (1971)
Pentium CPU
Pentium E6300 (2009)
Pentium CPU
Pentium E6300 裏面

上の写真、 左端はインテルが 1971 年に作った世界初のワンチップの CPU (つまり MPU)、 i4004 です。
"i4004" という名前が示す通り (かな ?) 、 これは 4 ビットの CPU です。
4 ビットでは文字データも扱えないのに何故こんなものが、 とお思いかもしれませんが、 これは電卓のために日本の電卓メーカーとインテルが共同で開発した MPU です。 2,300 個のトランジスタが集積されています。
電卓用なので扱うデータは数値のみ、 したがって 4 ビットで十分でしたが、 MPU の汎用性に気付いたはインテルは翌年、 すかさず 8 ビットの MPU (i8008) を世に出し、 パーソナルコンピュータ時代の幕を開きました。

時は流れて 2009 年、 写真の中央はやはりインテルの Pentium E6300 プロセッサです (右はその裏面。 ズラッと並んでいるのはピンで、 i4004 は 16 本だったのに、 こちらはなんと 775 もあります。  プリント基板ではこれらのピンに配線パターンをつながなくてはならないんですが、 内側のピンの信号はどうやって外に引っ張りだすんでしょうね。 余計な心配かも知れませんが)
Pentium E6300 は 64 ビットの CPU で、 クロック周波数は 2.8GHZ (i4004 は 741kHz でした)、 集積されているトランジスタは 2 億 2800 万個です。
やや乱暴ですがこれらの数字が単純に CPU の性能を表すとして i4004 と Pentium を比べると、 ビット数が 8 倍でクロック周波数は 378 万倍、 両方掛ければ 3000 万倍です。 他にもスピードに関る要因はありますが、 これだけでも、 i4004が 1 年かかる仕事が Pentium E6300 なら 1 秒で片づく計算になります。



    インテル MPU 集積トランジスタ数の推移


上図はインテル製 MPU に集積されたトランジスタ数の推移のグラフです。 1971年の i4004 (トランジスタ数 2300個: チップサイズ 12mm2 に始まり、 2011年の Xeon "ジーオン" E7 (26億個: 513mm2 までが表されています。

トランジスタ数は i4004 の 2300 個に対して Xeon E7 は 26億個、 なんと 100 万倍にも増えているのに、 チップサイズは 12mm2 から 513mm2、 わずか 43 倍にすぎません。
チップのサイズの増大はコストに直結するのて、 なるべく、 大きくしたくないのです。

チップサイズを大きくせずにトランジスタを大量に集積するには、 トランジスタのサイズを小さくする以外に方法がありません。
IC チップのパターンの細かさは描画する配線の幅で表しますが、 i4004 のそれは 10μm (おおむね髪の毛の 1/10、 台所のアルミフォイルの厚さ程度)でしたが、 Xeon E7 は 32nm(ナノメートル) なので、 i4004 の線幅が 10 メートルだとすれば、 Xeon E7 はわずか 3.2cm しかありません。
線幅が約 1/300 になったので、 トランジスタの面積は 10 万分の 1、 トランジスタが増えれば周辺の配線も複雑になる… というようなことを無視すれば、 同じサイズのチップに 10 万倍のトランジスタが集積できる、 ことになります。

トランジスタを小さくすれば大量のトランジスタを集積でき、 CPU の機能が高くなりますが、 実はもうひとつおいしい 「オマケ」 があります。
電流が流れるのは電子が動くからですが、 トランジスタが小さければ電子の動く距離も短くなります。
10 メートル走らなくてはならなかったのが 3.2cm でよくなったので、 走る速さが同じなら、 走る時間も 1/300 になります。
こうしてトランジスタの動きは素早くなり、 トランジスタが速く動けば、 CPU も速くなります。
一石二鳥とはまさにこのこと。
集積度を上げたらスピードも速くなったなんて、 こんなうまい話、 そうざらにあるものではありません。



上のグラフからはまた、 集積トランジスタ数の増え方は、 ほぼ右肩上がりの直線にのっていることが分かります。
このグラフの縦軸 (トランジスタ数) は対数目盛 (1,000、1万、10万… と、一目盛りごとに 10 倍) なので、 これは 「集積度は一定の比率で増え続けている」 ということを表しています。
図からはざっと、 「40 年で 100 万倍」 と読みとれます。
かつてインテルの共同創立者であったゴードン・ムーアは、 「半導体の集積度は 1.5 年〜 2 年で倍になる」 と言いました。
これは 「ムーアの法則」 として知られていますが、 「2 年で倍」 ならグラフにぴったりです。

「ムーアの法則」 は単なる経験則で、 「万有引力の法則」 のように科学的な根拠があるものではありませんが、 集積回路の黎明期に提唱された「法則」が今なお生き続けているのは驚きです。
一時技術の進歩が危ぶまれたこともありましたが、 ムーアの法則が逆に目標となって、 技術の進歩を牽引してきたという側面もあるように思えます。




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update: 2014.07.26  address