まず先入観を持たないために、原作を読み返さずに鑑賞させていただきました。
原作は10年近く前に読んだきりなので、憶えていることといえば
Dの名の由来くらい(笑)。
なお、一文にまとめ上げる文章能力には恵まれておりませんので、箇条書きにて失礼します。
・シーツが新品同様で綺麗過ぎる。一人暮らしだし、情事の後だと言うことを鑑みると少々不自然
(*00)
・
雛衣が時計を投げつけるシーンが割愛されていて少し解かりづらいか
(*01)
・
Dの配役はなかなかイメージどおりではないか。また声色も軽シンの塩沢さんを彷彿とさせて悪くない
・[DALI]で電話にでた
Dは、なぜ
内記に対して一人芝居をしたのか?
(*02)
・
Dの鼻歌 "
雛衣のお尻〜" はツボでした。爆笑
・
Dと
早弓の会話シーンなどに、モノローグと区別がつきづらいときがある
(*03)
・コマ割りを思わせるテンポのよさ、シーンの切り替えが小気味よい
(*04)
・百物語シーンのアニメーションは意表を突かれた。
残念ながら怖くなかったが、前座のチープさを表現しているとすれば当然かもしれない
(*05)
・ラストシーンみたいに
早弓の幽霊?を直に表現してしまうのには異論があるが、
雛衣と仲良くやっているという解釈はよかった
(*06)
作品を見ているうちに、[DISIR]というまんががどんな作品だったのかがしだいに思い出されてきました。
次に原作を読み返してから鑑賞。さらには読み比べながら幾度か鑑賞しました。
見慣れると流してしまい見落としがでる可能性もあり、気持ちの鮮度を保つために1、2日のブランクを空けて鑑賞。
結果、長々とお借りすることとなってしまいました。反省。
・絵の再現性に感心。特に大胆にも緑色を基調にすることで実にシュールに仕上がっていると思う
・
Dと
内記の絡みのシーン、あの駄弁り感はたがみ氏一流のチェンジアップなので、もうすこしボリュームが欲しかった
・[DALI]での電話のシーン、原作を読んでいないとシャアが唐突過ぎないだろうか
・
Dが窓の女を追うシーン "おいそこの女の子、異人さんに" の科白の割り方が原作より自然でよかった
・
内記が
Dに札を握らせるシーンなどに、コマ割りに制限されていたものが開放されているのが見て取れた
・
Dが "窓の女は誰でしょお" と口にして偶然にタイトルを言い当ててしまうシーンは必須だったのでは?
絵のタイトルが明らかにされていないとオチの科白が弱くなるように感じますが
(*09)
・
佐和子というキャラクターの位置付けがよく判らない。
Dはモテるということを示すためと解釈したが?
(*07)
・
雛衣側の描写が加えられていることにより、恋人たちの物語としての奥行きが増しているように感じられる
また、
Dのみの視点だった原作に比べて舞台の広がりや時間の経過を感じ取りやすくなっている
(*08)
・
早弓が殺されていることが明確でなく、絵のモデルであること、
雛衣が来られた筈がないという
内記の証言が削られているために、ミステリー風味が薄らいでいるように見受けられる
(*09)
・
Dが百物語に茶々を入れたときの、他のメンバーの反応などあるともっとおもしろかったかも
・予告編がかっこよくて、じつに面白そうだった。カットされたシーンなども併せて見てみたかった
(*10)
全体的にエッセンスを良く捉えているが、原作を盲目的に引き写すことなく、独自の解釈と視点を交えて独立した作品としての器量を備えている。
(*11)
原作では、謎を放置しておくことでミステリーとしての部分を強調させているように思われるが、本作ではミステリーは隠し味風のスパイスとして抑えられ、二人のラブストーリーの強調に使われているように見受けられた。
最後に、
本作品を鑑賞するにあたり原作を読み返した結果、気づいた点や思い当たった点などを。
・
雛衣って苗字だったんだなぁ(笑)
・窓の外の女の謎は放置されたままだ。絵は確かに
Dの部屋に来たが、窓の外に女が出なくなったかどうかは判らない。
彼女は絵の作者の前にも現れていたと思われるし、
早弓が
Dの部屋を知らないことも併せて窓の外の女≠
早弓だろう。
絵のモデルになった
早弓が、絵を媒介に窓の外の女の能力(?)を得たとも考えられるが、
Dの部屋を知らないのに窓の外に現れたことの説明としてはやはり難しい。
Dの部屋が絵の作者の部屋と同一ではという仮説も浮かんだが、時系列的に無理があるので却下
以上を踏まえて、現状での私の解釈は以下のとおり。
まあ、シュールレアリズムを解釈しようとすること自体がナンセンス、野暮なんですが(苦笑)
・話の内容が内容だけに大学生くらいの話だと思っていたが、どうも高校生みたいですね、
D。
そのため、むしろ原作の方が舞台設定に違和感を感じる
(*12)
今回、
映画を鑑賞させていただくことで、原作への理解がより深まったと実感しています。
その点について他者の目、視点、解釈、メディアの違いが大きな刺激になったことは間違いないでしょう。
[DISIR]という作品を新しい視点から見直してみる機会を与えていただいて、一ファンとしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
(*00)
えへへ。確かにまずいですね。
(*01)
ダイ(=
D)の心象風景(一瞬気絶してまっ暗)に逃げさせていただきました。まんがでの表現の気分をうまく再現できる方法が思いつかなくって。
今だったらアニメーションにしていたかも。CGで時計を作ったりして...
(*02)
マスターの代わりに店の人として出てしまったので、そのままじゃ格好がつかないから(向こうは分かってるんだけど)本人にスイッチする必要があったわけですね。
マスターの証明写真を撮っている、という設定にしたせいでこーいうことになりました。
たがみさんのまんがを見た時の印象では、
ダイは絵をやってるんだろうなと思ったんですが、それだと持ち物とか行動(野外巡検=フィールドワークに出かけたりする)とか引き出しにくいので、写真に変えました。最初がこんなふうに始まるのはそのためです。
(*03)
区別どころか、そもそも音が小さくて聞き取りにくかったでしょ? すみません。
話しているようでもあり、内心のようでもあり、という演出をしたかったトコロが何シーンかあったんです。
ここらへんは直したいですね。何しろ今ならコンピュータってモンが使えるからねっ。
(*04)
ありがとうございます。
でも、今だったらもっと刈り込むと思います。アクションも何か少し遅い感じだし。当時は満足していたけど...
たがみさんって駒割りがうまいですよね。特に[DISIR]の中だと、二人が初めて会った時のシーンの、立ち去ろうとする
早弓を引き止めようとする
ダイのアクションの、たった一瞬を4駒も使って見せてるのがとても気に入ってて、それを何とかして再現しようとして苦労しました。各ショット20回以上は撮ったかな。
(*05)
まんがのまんまです。お面(8頭身キャラの)をかぶっているのがちゃんと描いてあったので、それもそのとおりにさせてもらいました。
(*06)
はい。ここが悩んだトコロです。
早弓と
雛衣との関係がそれからどうなったのか、というのがまんがを見た時に気になりました。
逆に言うと、その解決がこうだったらおもしろいんじゃないかと考えたのが、この作品の
映画化の動機の一つでした。
雛衣はどういう事情で百物語に来ちゃったのか覚えていない、というんだけど、それが実は
早弓との合意だったんじゃないのか、
ダイだけがそれを知らないだけで、彼女たちは彼女たちで...なんてコトを考え始めたら、こんな話ができちゃったってワケです。
それはそうとあの画面、いいでしょ。フィルムの時代にどうやって撮ったと思います?
(*07)
はい。
あとそれと、
雛衣はまだ高校生で写真のコトなんか知らないんで、
ダイのお手伝いはできないという事情もあったり。
(*08)
基本的には女の子の味方なので。
どーも野郎ってどう描いたら魅力的に見えるのかよくわからないです(たがみさんも言ってたな)。それが分かるようになったら俺だって
Dになれるんですけどね。
(*09)
あっしまった。それって撮るのすっかり忘れてました。
そう言えば、どこにも[窓の女]の説明がない!!! 最後のナレーションで出て来るのに
実は、[DALI]で
早弓と
雛衣がはちあわせする直前にそのやりとりがあったんです。だから、そのあとで雨の夜に
ダイのアパートで
雛衣が
早弓に向かって、"殺された子ってあなたじゃないの?" って聞くわけです。
でも、そこがなかなか映画的に仕切れなくて、いつのまにか撮るのを忘れちゃったみたいです。
(*10)
いつも最初に予告編を撮ります。
どんな作品にするのか役者やスタッフに理解してほしいので。まぁ企画書みたいなモンですね。
技術的な問題を洗い出すのにも便利です。
(*11)
そう言っていただけるとうれしいです。
このころ撮っていた作品って、絵的なコトとかつなぎ方とか、たがみさんの表現のニュアンスが何とかして使いこなせるようになろうとしていて、かなり going にまねさせていただいています。
(*12)
そうなんですよね。
ちょっと年寄りすぎるぞお前は。まあ、ハタチ前後にしておくのがいいんじゃないかと思います。
そうした方が、
雛衣との会話なんかがうまく展開できるしね(
雛衣のコドモっぽさとのコントラストが出せる)。
ていねいなコメントをいただいて感謝感激です。
お気づきになったコト(ペケとして指摘された点も含めて)は全部大当たりです。
いろいろ
作者としては気になっているトコロがありまして、そこをぐぢくぢと突かれたりしたらどうしようと思って身構えておりましたが、
作者が自覚していなかったコト(たぶん窓の女さんが後ろで指示してくれたんだと思います)とか、悩んでえいやっと決めたのにすっかり忘れていたコトなんかを思い出させていただきました。
ていねいに見ていただけて、ほんとうにうれしく思っています。
転載を快く許していただけたことも併せて、ほんとうにありがとうございました。