資料シート●各科目

色差方式
YUV YIQ

http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/L/LC.html



 明るさと色みとの組合せによっての違いを表現する方式の一つ。




 色差方式では、明るさ(特別に輝度とよぶ)と色み(色差とよぶ)との組合せによって色の違いを表現する。色差方式の表現には、YIQ表現、YUV表現、色差方式の表現、CIE表現などがある。
 色差方式の表現はHSV表現とRGB表現の長所を兼ね備えているので、(電子式の)写真、TV放送、ビデオ録画などに使われている。


輝度


 実際に使われている色差方式の表現では、明るさとして、狭い意味での明るさ(value。▽図上)ではなくて、その代わりに輝度(同下)を使う。輝度は、目に光が入った時に感じる明るさを表している。これに対して、明るさの方はどれだけ光を出すか(または届くか)を表しているということができる。
 明るさは赤/緑/青みの均等な平均と等しい(▽図上)。これに対して、輝度は、赤と青については軽めに、緑については重めに足し合わせて平均したものとして決められている。これは、わたしたちの視覚が、赤や青(光として感じられる光子の振動数の範囲の両端の色)よりも緑(同じく中央の色)の方を明るく感じるようになっているためで、その感じ方の強弱に対応して重みが決められている(同上)。


赤み
緑み
青み
V 明るさ
(value)

1/3
=0.333
1/3
=0.333
1/3
=0.333
Y 輝度

0.299 0.587 0.114

明るさと輝度とにおける色みの重み

 明るさの違いしか表示できないシステム(モノクロのモニタ、プリンタやファクスなど)でも、輝度さえ明らかになっていれば、スチルを自然な感じに表示することができる。


色差


 色みについては、そのものではなくて、代わりにその色みからほかの二つの色みの平均を差し引いたものを使う。これをその色みの色差という。色差は、0が基準で-1/2〜1/2の範囲の値になる。赤みの場合だと、緑みと青みとの平均と比べて、赤みの方が強ければ色差は正になり、緑みと青みとの平均の方が強ければ色差は負になる。

 色差は、ただ差し引きするのではなくて、輝度と同じように、色みによる感じ方の違いに合わせて、多少の重みづけをしてから差し引きする。この重みづけは実際の用途によって違う。また、輝度のほかに二つの色差が分かればあとの一つの色差は割り出せるので、三つ目の色差は省略される。

 (NTSC方式の)BSCSDVDDV、電子式スチルカメラ(いわゆるデジタルカメラ)などでは、輝度赤の色差青の色差を組み合せて色を表現する(▽図)。赤の色差については、緑と青の合計と比べて、赤みの方が強ければ正、緑と青の合計の方が強ければ負の値になるように表す。青の色差も同じように、青みの方が強ければ正、赤と緑との合計の方が強ければ負の値になるように表す(同下)。この方式では赤の色差をCrで、青の色差をCbで表す。

      

もとのスチル(左端。以下順に)とその輝度 赤色差 青色差
色は説明のためのもので実際には含まれていない

 (NTSC方式の)ふつうのTV放送やVHSテープでの録画では、輝度赤の色差緑の色差を組み合せて色を表現する。赤の色差は重みが違うだけで考え方ではYCrCb表現と変わらない。緑の色差も同じように決めるけれど、赤とは逆に緑の方が強いと負になるようになっている(▽図上)。この方式では赤の色差をIで、緑の色差をQで表す。そのため、特別にYIQ表現と呼ぶ。

赤み
緑み
青み
YCrCb
表現
赤の色差
Cr

1/2=0.5 -0.418 -0.081
緑の色差
(不要) (不要) (不要)
青の色差
Cb

-0.169 -0.331 1/2=0.5
YIQ
表現
赤の色差
I

0.596 -0.274 -0.322
緑の色差
Q

0.211 -0.523 0.312
青の色差
(不要) (不要) (不要)

色差における色みの重み

 特にCrやCbでは、こうして得られる値に1/2を足したものを色差とすることもある。こうすれば値の範囲が0〜1にずれるので、負の値をとらないようにすることができる。


色差の下方再標本化


 すべてのセルに対してYCC成分を全く省略しなければ(▽図左上)、スチル/ビデオを撮影された(または作画された)とおりに正確に記録/通信できる。しかし、これでは媒体にかかる負荷が大きい。特にビデオの場合はコーデックや転送が間に合わなくなるかもしれない。
 YCC系で表現されているスチル/ビデオの記録/通信のコーデックでは、(Y成分はそのままにしておいて)CC成分だけを省略する手法が使われている。たとえばDVでは、二つの色差のそれぞれについて、左右に並んだ4個のセルに対して一つずつしか記録/通信していない(▽図左下)。この省略によって、全体では負荷を半分に低減できる。
 このような省略はほかのコーデックでも行なわれている。これは、基本の標本化よりも粗い密度で標本化をやり直して品質を低下させていることに当たるので、下方再標本化(subsampling)とよばれている。もちろん、下方再標本化したビデオを再生する時には補間が必要になる。また、補間しても省略してしまったもとの情報は復元できない。
 ヒトの視覚は、明るさの変化には敏感だが、色合いや色の鮮やかさの変化についてはそれほどではない。そのため、色差が少しぐらい省略されていても、見ている限りはそれほど画質が落ちたようには見えない(よく見るとのっぺりして見えたり左右に色がブレているように見えたりするかもしれない)。しかし、色差を省略したスチル/ビデオを加工(たとえばクロマキー合成)や分析のための素材として使うことはできない。

呼称 左右の省略 上下の省略 負荷 用途
4:4:4 1/1 1/1 1/1  
4:2:2 1/2 1/1 2/3 NTSC
4:1:1 1/4 1/1 1/2 DV(一般用)
4:2:0 1/2 1/2 1/2 DVDのMPEG-2



4:4:4、4:2:2、4:1:1、4:2:0
([矢部]より転載)


色差の下方再量子化


 実際に記録/通信されているスチルやビデオの内容を調べると、輝度は最小から最大まで大きく広がっているが、色差は標準の1/2の周りの値に集中していてそれほど広がっていない(▽図)。したがって、色差については(極端に色差が大きい色は無視して)正確に記録/通信しなければいけない範囲の下限/上限を狭くしてしまうことができる。
 さらに、わたしたちの視覚は輝度の違いには敏感だけれど色差の細かい違いは区別できないので、輝度よりも階級の幅を広くしてしまう(=精度を落す)ことができる。
 実際の放送や録画では、負荷を低減するためにこのような操作が行なわれている。これは、本来のよりも少ない階数で量子化をやり直すことに当たるので、下方再量子化(subquantizing)とよばれている。


用途


 色差方式の表現には輝度がそのまま含まれているので、カラーでの表示を全く想定していないシステム(モノクロのモニタやプリンタ、ファクスなど)にも配慮しながらカラーのスチルを表現することができる。
 YCC(この場合はYIQ)表現は、TV放送がモノクロからカラーに切り替わった時に考え出された。それまでのモノクロのビデオやTVの機材がそのまま使えることと、人の視覚で違いが敏感に分かりやすい赤と青を正確に記録/転送できることの二つの条件を同時に満たす必要から、顕色系と混色系の両方の特徴を合せた表色系が必要になったからだ。当時はほとんどのTV機はモノクロ用のままで、カラー用のTV機(簡単には買えないほど高かった)に買い替える人は少なかったが、受信したYCCの情報のうちの輝度の部分だけに反応して、それまでとほとんど変わらないモノクロの表示を行なうことができた。
 現在のYCC系のいろんな亜種は、この特徴を引き継いで、各方式のTV放送、VHS、DV、DVDや電子カメラなどに使われている。


用途
YIQ表現
(これまでの)TV
VHS
YCrCb表現
BS
CS
電子式スチルカメラ
DV

色差方式の表現の用途




目を通しておいてほしいほかの資料

Wikipedia
YUV表現



参考にさせていただいた資料

越智宏、黒田英夫、図解でわかる画像圧縮技術 (日本実業出版社、99-01-25)

矢部拓也、YUVフォーマットを考察する -環境構築編-、ASCII、Vol.15、No.9 (04-08)、pp.128-129

SuperASCII、YCChttp://www.ascii.co.jp/pb/superascii/ghelp/14/1473.html

ループドピクチャー、YUV、http://www.vpj.co.jp/CF/HTML_U_Guide/4-1-2.html

YUV、http://www.ascii.co.jp/pb/superascii/ghelp/14/1473.html


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