資料シート●各科目

VHS

http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/VHS.html




 70年代から世界の各社では家庭用のVTRの技術の開発が進められるようになった。業務用のものと違って、家庭用のVTRは小さくて壊れにくくて媒体も機械も安いことが必要だ。その成果としていろいろな方式が発表された。
 この技術については日本が各国に先行し、80年代の終りまでには日本ビクターのVHSとソニーのべ−タマックスの2方式が世界の実際の標準としてほぼ絞り込まれていた。
 現在では、ベータマックスは姿を消し(これとよく似たベータカムが業務用では標準として使われている)、(テープによる)TV放送の録画やビデオソフトの出版では唯一の方式として使われている。このほか、カメラではDVが、ディスクによるビデオソフトの出版ではDVD(国によってはビデオCD)が使われている。また、TV放送のエアチェックではMPEG2のファイルとしてハードディスクやDVDに記録することも行なわれるようになってきている。

 VHSでは、2分の1インチ(=約12.6mm)の幅で新書版の大きさのカセットに収納したテープを使う(▽図)。



[原 78]より

 なお、ビデオでは一般に12.6〜50.8mmの幅のテープが使われている。コンピュータでの記録にも同じものが使われている。録音用では、オープンリール式では6.3mmのもの、カセットでは3.8mmのものがよく使われる。

 VHSは(ほかの消えてしまった初期の方式も)、それが登場する少し前から業務用で広く使われるようになっていたU-マチック方式(または四分三=3/4インチ)と共通の特徴を備えていた。その一つが低速で走行するテープでも十分な密度で絵と音を記録できるヘリカル走査だ。この方式では、たがいに対称な2点にヘッドを配置したドラムを使う。このドラムは30回転/秒で回転していて、テープはそれに斜めに半周だけ巻きついた状態で走行する。こうしておくと、テープの軌道とヘッドの軌道との傾きのずれによって、テープに対して斜めに傾いた映像トラックが順に作られる。VHSやベータマックスの場合は、このトラック2本分で受信したTVの絵の1フレーム分が記録される。





[原 78]より

 VHSでは、(ドラムに対して)テープが流れる速さには、3.335cm/秒と10cm/秒との二通りがあり、場合によってそのどちらかを選ぶことができる。3.335cm/秒が標準の速さで、録画できる時間は短いが画質がいい。3倍速の10cm/秒では、画質はやや落ちるが同じテープで3倍の時間の録画ができるようになる。
 動く絵が再生できるようにするには、それを4MHz以上の振動数の信号で記録しなければならないと考えられている。さらに、できれば2時間の映画の放送を1本のカセットで録画できるようにしたい。これらの制約から、テープが流れる速さは少なくとも4m/秒以上でなければならない。VHSでヘリカル走査を行なうのはこのためで、これならヘッドに対しては十分な速さで走行させることが可能になる。

 VHSでは、テープへの記録の形式はTVの放送の信号の形式になるべく合わせるように決められている。TVの放送の信号は、日本や合衆国ではNTSC方式が、ドイツなどのヨーロッパの多くの国ではPAL方式が、フランスや東ヨーロッパの国々ではSECAM方式が使われている。この違いを反映して、同じVHSでも絵のトラックの幅や時間当たりの本数は異なっている。
 そのためにテープが流れる速さも違っている。たとえば、日本では(標準モードで)120分しか録画/再生できないテープでも、ヨーロッパでなら180分は録画できる。このため、こうしたテープは日本ではT-120(NTSCで120分録画できる)、ヨーロッパではE-180(PAL/SECAMで180分録画できる)とよばれている。


参考にした資料


原正和
ホームビデオ
(日本放送出版協会 78-09-20)


映像


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03-07-06