資料シート●[コミュニケーション実習D(メディア)]


(00年度履修生作品)

[こんにちは]
フレームから作品へ
(スクラッチアニメーションの制作を通じて)


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/Communication/Greeting.html



 この単元では、止まっている映像から動く映像が作り出されるムービのしくみについて学習する。
 動く映像、つまりムービを記録したり放送したりする技術は、フレームという考え方をベースにして成り立っている。動いている映像でも、それをフレームという、それぞれは動かないで止まっている映像、つまりスチルに分解して、それを時刻の順に並べておけば、それを記録したり放送したりすることによって、もとのムービが(それなりの品質で)ちゃんと再現できるのだ。フレームは物質に対する原子のようなものだと考えてもいいだろう。
 この単元の実習を体験すると、ムービとフレームとの関係についていろんなことが分かってくるだろう。ほんの短い時間しか動かないムービを構成するために、実は膨大な枚数のフレームが使われていることを実感として感じとってほしい。

 この課題だけはいつもと違って、8mmフィルムをメディアとして使う。8mmなどのフィルムは、ムービがどんなシステムで記録/再生されているか、実際に自分の手で触り、目で見ることができるので、こんな学習にはちょうどいい。これまでムービが記録できるしくみが分かったような分からなかったような人も、これで少しは感じが分かってもらえるはずだ。
 それに、一度ぐらいはいつもとは違ったメディアも使ってみた方が、メディアといってもいろいろあって違う特徴を持ってるということがよく理解できるだろう。

 スクラッチアニメーションは、美術やデザインの作品として映像を作ろうとしている人たちにとっては、ちょっとくせがあるおもしろい技法だ。だから、スクラッチアニメーションそのものの表現のおもしろさもぜひ知っておいてほしい。
 また、フィルムを切ったり張り合わせたりするのに使うスプライサという器具やプロジェクタの使い方も、興味があったらぜひここで身につけておこう。




作業の目標


 あいさつ("さっきはごめんね。私が悪かったの"とか"毎度ありがとうございます。またのご来店をお待ちしています"とか)を録音して、そのせりふのリズムメロディの変化に合わせて動くムービをスクラッチアニメーションの技法を使って作りなさい。

条件

 長さは5秒とする。

 図形簡単な記号だけを使いなさい。何かの姿を具体的に描き表わしたもの(人形など)や文字を描いてはいけない。

助言

 1枚ずつ見るときれいな絵が描けていても、それだけではアニメーションを作ったことにはならない。その動かし方が初めて見る動き方だったり何かの動き方に似ていたりした時に初めて、アニメーションは成立する。だから、何か意味のある姿形を動かすよりは、線分とか○とか簡単な形を使って、むしろ動かし方の方で工夫をするといい作品が作れるだろう。
 スクラッチで絵を描くことの難しさと作品の長さからくる制約を考えてみても、人や動物やロボットが動くようなアニメーションを目指すのはやめた方がいい。

挑発

 スクラッチアニメーションの技法にはいろんなバリエーションがある。それらを取り入れたり、自分で新しい技法を工夫してみよう。

[作例]


大川恭一
(00年度)

角田□□
(00年度)

小林さちよ
(00年度)

竹内□□
(00年度)

中村千晶
(00年度)

代々木□□
(00年度)




Motozawa
(02年度)



Sekino
(02年度)


自分で調達する道具/材料

○ヘッドホン
 ・プラグ:ステレオミニ(変換でもいい)
○スクラッチを刻むための道具
 ・いらなくなったコンパス
 ・折刃カッタ(使ってみるなら)
 ・細目の紙やすり(使ってみるなら) など
○カッティングマット
 ×ノートなどで代用してはいけない
 ・なるべく明るい色のもの
○サインペン(使ってみたければ)


実習に使うマニュアルフォーム

録音テープ SoundEdit 00/ 01/ 02/ 03


標準作業時間

3週
(スクーリング3.5時間+自習3.5時間)





演習の手順


(宿題)

00
 簡単で短い(5秒ぐらいの)一言を、その話し方も含めていくつか考え、ノートに書き並べてみなさい。
 あいさつ、早口ことば、話しの中のせりふ、歌の一節など、いろんなものについて、ストップウォッチ(または時計)で長さを確かめてみなさい。
 5秒という時間は意外に長い。


始めの回

参考作品の鑑賞
 カナダで活躍していたアニメーション作家のマクラレン(<McLaren, Norman)はアニメーションの技法を使った作品をいくつか作っている。そのうちから、[クリスマスの手紙はお早めに](<Mail Early for Christmas)と[Blinkity Blank]を見てみよう。
 これらの作品はスクラッチアニメーションの技法を使って作られている。手で描いたふつうの線や点とはどこか違う、めりはりがはっきりしていて動きもくっきりしていて、でもどこか頼りなさそうな光の線や点が飛び回っている。

作例の鑑賞
 これまでにこの単元の学習に参加した学生の作品を見て、どんな作品が作れるようになるのか確めなさい。

課題フォルダの準備
 自分のロッカーフォルダ(最初の単元で作ったもの)の中に、この単元で使う新しい作業フォルダを作りなさい(▽図)。
 そして、そのフォルダの名前をつけ直して(単元の名前かきょうの日付がいい)、単元の区別が分かるようにしておきなさい。



 このフォルダは、この単元の素材や作品のファイルを入れておく場所として使う。

○(操作説明)[サウンド:入力]
 音機能設定システム[サウンド:入力](▽図)の使い方の説明を聞き、マニュアルを作りなさい。



[サウンド:入力]

○録音源の設定
 [サウンド:入力]を使って録音源を▽図のように設定しなさい。

録音源
外部マイク
レベル
緑範囲の2/3ぐらい

 [サウンド:入力]を使いたい時は、あらかじめPremiereやSoundEditを終了させてから起動するようにしなさい。
 [サウンド:入力]は、PremiereやSoundEditが起動していると正しく機能しないことがある。

 この設定は、ほかの録音源を使ったりほかの人が使ったりしていない限りは何度もやり直さなくてもいい。

○(説明)[SoundEdit]
 オーディオ編集システム[SoundEdit](▽図)の使い方(録音/再生)の説明を聞き、マニュアルを作りなさい。



[SoundEdit]

○録音
 [SoundEdit]を使ってあいさつ(▽図のどちらか)を録音し、それをAIFF(同下)で保存しておきなさい。

こんにちは □□□□です
みんなで□□□□しましょう!
こんにちは □□□□です
みんなは□□□□ですか?

あいさつ



AIFF

 このほかにも好きなせりふがあったら録音してそれぞれ別々のファイルに保存しておきなさい。

○(説明)[SoundEdit](続)
 オーディオ編集システム[SoundEdit](▽図)の使い方(ウィンドーの操作と見方、マーク、切り貼り)の説明を聞き、マニュアルを作りなさい。

○黙り込みの断ち落し
 前に保存しておいたそれぞれのあいさつについて、前後や途中の余分な黙り込み(silence)を断ち落しなさい(▽図)。



黙り込みの断ち落し

○(説明)[セレクタ]
 印刷に使うプリンタを設定するのには、[セレクタ](▽図)というパネル型のアプリを使う。[セレクタ]の使い方の説明を聞いてマニュアルを作りなさい。



[セレクタ]

○印刷
 最も気に入ったあいさつを一つ選んで印刷しなさい。
 用紙の使い方は▽図のように設定するといい。

向き
横位置
倍率
80%


第01回


分析
 始めの回で印刷したグラフを分析してみなさい。たった5秒のせりふの中でも、声の高低強弱は一定ではない。ストレス(目立つ部分。▽図赤)とリリーフ(その他の部分。同青)とに必ず分かれている。声の高低や強弱の変化をグラフから読み取って、特にはっきりしているストレスを数か所選びなさい。



ストレスとリリーフ

○(説明)フレーム
 先生から、ムービがフレームとよばれるたくさんのスチルの列として組み立てられていることとか、フィルムのつくりについて説明(資料[8mm])を聞いて、実際にムービが録画されているフィルムを見てそれを確かめなさい。
 特に、これからの作業に重要な、フィルムの上下/前後/裏表についてはしっかり理解しておきなさい。

 このフォルダは、この単元の素材や作品を入れておく場所として使う。

準備
 先生から90フレーム(=5秒)のフィルムをもらって、それをカッティングマットの上端に置き、始めの端から18フレーム分に当たる長さごとに5本、鉛筆で目盛りを引きなさい。この目盛りと目盛りとの間が1秒に当たる。
 また、終わりの端の3フレームに"×"を書き、その真ん中のフレームに自分の氏名を削り込んでおきなさい。この3フレームはキャプチャに使うためのもので、作品に使ってはいけない。

・・18fr・・|・・18fr・・|・・18fr・・|・・18fr・・|・・18fr・・×(氏名)×

目盛りの引き方

 フィルムやビデオテープの世界では、このように時間も長さに置き換えて測ることができる。

 エマルジョンにスクラッチを刻み込むにはかなり力がいる。氏名を削り込む時に、どのくらい力をかけないといけないか、感じをつかんでおきなさい。

当たり
 グラフと見比べながら、フィルムの上でストレスの時点に当たりそうなフレームを割り出して、そこに当たりとして鉛筆で"○"を書いておきなさい。

ストレスの作成
 当たりをつけておいたフレームの前後のフレームを描きなさい。
 一つの動作が6フレームぐらいでまとまるようにするといい。
 絵の内容とせりふの内容をむりに合わせる(あいさつに合わせておじぎするのを見せるとか)必要はない。せりふのリズムやメロディをうまく活かせられればいい。
 ストレスの直前/直後の音の変化が急激なら直前/直後の絵の変化も激しく、音の変化が緩慢なら絵の変化も緩やかになるようにするといい。

[注意]
 グラフとフィルムとでは時間に対応する長さが違うので、うっかり見間違えないようにしなさい。
 フレームの範囲を想像して、絵がそれぞれのフレームから(特に上下で)はみ出さないように描きなさい。
 描いた絵は上映すると裏返しになるから、左右がたいせつなら、左右を逆にして描いておきなさい。

リリーフの作成
 上の手順でスクラッチした以外の部分に、ストレスのアニメーションの背景として動くアニメーションをスクラッチしなさい。

[注意]
 ストレスのアニメーションよりも目立たないようにしなさい。

[注意]
 まとめて学外でキャプチャしてもらうので、先生が指示する日時までに必ずフィルムを提出しなさい。


第02回


アニメーションファイルの複写
 先生からMOを受け取って、その中にある自分のアニメーションの素材ファイルをそこから課題ウィンドーの中に移しなさい。

課題プロジェクトファイルの準備
 これから新しい課題の作品の制作にとりかかるので、作品の台紙として使う新しい白紙のウィンドーを開かせる必要がある。
 Premiere(▽図)を起動して、新しい白紙のウィンドーを開きなさい。ウィンドーの種類は、▽図と同じ属性のものを選びなさい。

方式
DV
NTSC
縦横比
スタンダード
(=指定なし)
標本化
48000Hz

 ウィンドーが開いたらすぐに、そのウィンドーを、前に作った新しい課題フォルダの中に保存しておきなさい。
 場所、名前、形式については、必ず▽表のように正しく指定するようにしなさい。もし間違えると、せっかく作った作品をなくしてしまうことがある。

場所
新しい課題フォルダ
名前
フォルダと同じ名前がいい
形式
(指定できない)

 この次からは、このプロジェクトファイルを開くだけで作業が始められるようになる。

待機ウィンドーの準備
 課題フォルダのウィンドーを開くと、そこには、せりふアニメーションプロジェクトの三つのファイルのアイコンが置かれているはずだ(▽図)。



 これらのうちから、せりふのファイルとアニメーションのファイルのアイコンを引きずって来て、待機ウィンドーの中に落としなさい。
 それぞれがクリップとして待機ウィンドーの中に現れる(▽図)。



 この課題で使うクリップはこの二つだけだ。

 課題ウィンドーから待機ウィンドーにファイルを持って来ても、もとのファイルはなくならない。
 ただし、落とす先を間違えたり途中で落としたりすると、もとのファイルがなくなってしまうことがある。それにしても、慌てなければもとに戻すことはできる。

アニメーションの出線の準備
 待機ウィンドーの中からアニメーションの方のアイコンを引きずって来て、出線ウィンドービデオ1aトラックの左端に移しなさい。これによって、ビデオの出線ができる(▽図)。



 先生から渡されるアニメーションのファイルは音が取り除いてあるので、オーディオの出線は作られない。

クリッピング
 自分の絵は新しくできた出線の途中のどこかにあるはずなので、それを見つけて、左右の余分な部分を詰め、左端に寄せ直しなさい(▽図)。




せりふの出線の準備
 待機ウィンドーの中からせりふの方のアイコンを引きずって来て、出線ウィンドーオーディオ1トラックの左端に移しなさい(▽図)。




タイミング
 モニタウィンドーで作品を再生してみなさい。
 もしせりふとアニメーションが揃っていなかったら、せりふの出線の方を左右にずらして、初めに考えていたとおりにせりふとアニメーションとが揃うようにしなさい(▽図)。




終わりの回
(合評)


合評の準備
 作品が正しく上映できる状態になっているか確認しておきなさい。

・最新のバーションか?作品とは関係ない部分が(特に前後に)残ったままになっていないか?
・コンピュータ(QuickTime)に出力するようになっているか?
モニタウィンドーの配置(ほかのウィンドーに重ならないように)と大きさ(360×240)、再生する音の大きさ(70/100)は正しく調整してあるか?
・(もし必要なら)レンダリングは完全か?
・巻き戻してあるか?

合評
 進行にしたがって再生してみんなに見せなさい。
 自分の意図を説明して、それが見る側にはどう受け止められたか、ほかの学生に感想を聞いて確認しなさい。
 ほかの学生の作品を見て、特にいいと感じた内容や表現(または技術)を見つけたら、誰の作品のどんな部分だったか書き留めておきなさい。


(宿題)


 ほかの学生の作品のうちで、一番いいと思った作品の、さらに一番いいと思った表現を選んで、その内容や表現(または技術)を紹介する文を書いて提出しなさい。

・初めに、その表現が、作品の中のどこに使われていたのか、そしてそれはどのようなものだったのかをはっきり説明しなさい。その作品をまだ見ていない人でも、どんな表現が行なわれていたはっきり分かるように、ていねいに説明しなさい。それがあいまいなままでは、いいとかよくないとか検討することはできない
・続いて、それの表現がなぜよかったと思っているのか説明しなさい。表現がいいと思える理由なんて、初めは自分でも分からないかもしれない。でも、よく考えて、今は分からない理由を見つけ出しなさい

 自分の作品の表現の中に不満な所が見つかったら、ほかの学生や先生から指摘されたことも考え合せながら、もっといい表現ができるように手直ししてみなさい。





資料


手塚治虫、古川タク、鈴木伸一、福島治、林静一、島村達雄、川本喜八郎、岡本忠成、亀井武彦、中島興、田名網敬一、相原信洋
12人の作家によるアニメーションフィルムの作り方
(主婦と生活社、80-08-11)
アニメーションのいろんな技法をもっと調べて実際に作ってみたいならこれしかないというぐらいのいい資料
スクラッチアニメーションとその変種の解説もある




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03-07-30