寄稿●三月劇場

アトムの時代
03




http://www.infonet.co.jp/apt/March/paper/AtomicAge/03.html



 さて、それではここで、60年代のTVのこども番組のタイプの変遷を整理してみましょう。

[月光仮面]時代 58〜61年 実写 仮面ヒーロー
[鉄腕アトム]時代 63〜65年 アニメーション 超少年
[ウルトラマン]時代 66〜年 特撮 巨人対怪獣
[仮面ライダー]時代 71年〜 着ぐるみ 仮面ヒーロー対怪獣

表:60年代のこども番組の変遷

 当時のTVの人たちは、必ずしも、こういった時代の流れをきちんと理解してはいなかったような気がします。
 たとえば、俺は新聞のTV欄でしか見てないんですが、69年に、[巨人の星対鉄腕アトム]っていうとんでもない特番がありました。よく作ったなあって感心はしました。でも、ちょっと引っかかりました。
 この時点で、[巨人の星]の方はまだ放送が続いていましたが、[アトム]は66年に放送を完了し、まんがの連載も68年に終了していました。つまり、飛雄馬は同時代だけどアトムはすでに古典になっていたんです。つまり、その時代の視聴者に関する限り、アトムはもう飛雄馬と対峙させる素材としては通用しなくなっていたはずです(ひどい言い方ですいません)。企画した人たちにはそこが分かっていないような気がして、妙にいらいらしたのを覚えています。

 [月光仮面](58〜59年)時代の子ども番組の主流は、ヒーローが変装して活躍するものでした。たぶん、[快傑黒頭巾]なんかの覆面剣士ものが現代(当時の)的に変形したものでしょう。海外ドラマとして放送された[スーパーマン](56-11-01〜)の影響もあったはずです。
 [七色仮面](59年〜)、[ナショナルキッド](60〜61年)、[白馬童子](60年)、[まぼろし探偵](59〜60年)、[少年ジェット]、[海底人ハヤブサ]などの番組が、この流れを形作っています。
 これらの番組は、桑田次郎([月光仮面]、[まぼろし探偵])や一峰大二([七色仮面]、[ナショナルキッド])のまんがとして少年誌([ぼくら]、[少年画報]など)にも載っていて、雑誌の看板になりました(文献05)。

 (その頃の言い方では)TVまんがブームの時代までを含む[鉄腕アトム]時代はこのあとにやって来ます。この時代の主流は白黒のアニメーションで、超少年が活躍しました。8マンも、年齢だけは違いますが、そのバリエーションです。

 [ウルトラマン](66〜67年)時代は、変身して登場する巨人が巨大な怪獣と格闘戦を繰り広げた時代です。放送もカラーになります。
 [ウルトラマン]の日曜19:00〜19:30は、このあと、[キャプテンウルトラ]、[ウルトラセブン](67〜68年)、などなど、しばらくの間、怪獣の時間帯として特別な地位を占めることになります。
 ほかに、この時代に登場した同じタイプの番組には、ほかに[マグマ大使](66〜67年。マグマは変身するんじゃなくて呼び出されるんですけど)や、[仮面の忍者赤影](忍者が巨大怪獣と格闘するってあんまり)、[悪魔くん](こっちは妖怪ものって言われてたけど)などがありました。
 これらの番組の傾向は、一つの源流と一つのきっかけとから生まれたんじゃないかと思うんです。
 源流の方は、金曜日のプロレスリング中継です。力道山たちが活躍したこの番組は、[ディズニーランド]と交替で、隔週でしか放送されませんでしたが、プロレスごっこという新しい遊びのスタイルを生み出すほどヒットしていました。
 きっかけの方は[ウルトラQ](66年)です。[ウルトラQ]は、着ぐるみと、ミニチュアセットと、満を持して導入したオプティカルプリンタによって作られた怪獣番組で、それまでアニメーションを見ていた世代の子どもたちの興味をみごとにさらってしまいました。俺もそうだったなぁ。TVまんがなんてそのあとに続けてやる[オバQ]以外は完全に見なくなったもん。
 [W3]は、この時期に手塚さんが[サンデー]に描いておられたまんがですが(いろいろ言わくがあるのはご存じの通り)、ボッコたちが作った機械じかけの天狗が現われて大騒ぎになるモブシーンの中に"ウルトラQだ!"、なんてせりふがあって(再録では変更かな?)、意識しておられるんだなぁって思いました。
 こうして、[ウルトラQ]的にショーアップしたプロレスとして、[ウルトラマン]の放送が始まります。この時間帯から怪獣が撤退することになった時、あとを引き継いだのは[柔道一直線]とそれに続く男子スポーツ根性シリーズ(30分からは女子スポーツ根性シリーズでした)でしたが、それも納得できる気がするような。
 話しをちょっと63年まで戻します。[カッパコミクス]って言って、原則月刊で連載まんがを再録して出版するシリーズが、光文社(当時は[少年]を出していました)から出ていました。[アトム]の再録も、63年12月から3年ぐらいにわたって(何しろあとで話しますが途中で見るのを止めちゃったもんで...)このシリーズで出版されてました。[カッパコミクス]なんかのまんがの形態ってのも、時代に連れていろいろあっておもしろいテーマになりそうですが、またいつかということにしときましょう。
 で、その何号目かの巻頭言を、[ウルトラQ]の円谷英二さんが書いておられて、[鉄腕アトム]が実写(59-03〜)で放送された時、円谷さんにも作らないかって誘いがあったんだけど、[アトム]をTV化するんだったらアニメーションにしてほしいと思って断わったっておっしゃっていたように記憶しています(未確認です)。人のつながりっておもしろいですよね。
 [マグマ大使]は、オープニングで爆発するゴアの宇宙船を始めとして、アニメーションやマットがふんだんに使われた、ちょっと変わったテーストの映像を持った作品でした。虫プロとはゆかりのピープロダクションの作品ですから、当然だったとも言えますが。もっとも、当時の観客としては、そこん所にはまるで気がつかなかったんですが。
 [アトム]の時代の終わりを、どう新しい仕事につなげていったらいいのか、みんないろいろ考えてたんじゃないかと思います。そう言えば、同じ手塚さんのお仕事で、アニメーションを実写に組み入れた[バンパイア]なんて番組もありましたね。

 このあと、[仮面ライダー](71-04〜)時代がやって来ます。ヒーローが異形に変身して活躍する、ミニチュアセットなしの着ぐるみだけの実写番組の時代です。
 この時代って、石(まだノがない)森章太郎さんが独りで活躍してましたね。[変身忍者嵐](72-04〜)、[人造人間キカイダー](72-07〜)、[ロボット刑事](73-04〜)などなど。ほかに、[シルバー仮面](71-11〜)もありました。
 ただ、こっから先は、俺に関しては、もうTVもまんがも見るのをやめてしまった時代になってしまいます。ここからあとについては、自分がその時に感じたことを通じて時代を語ることはできそうにありません。歴史の話しはここで終わりにすることにします。





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