さて白黒映画である。
カラーが当たり前になってからも意図的に白黒で作られた名作があり、ちょうど僕の思春期と重なるものが何本かある。それは
[ラストショー](The Last Picture Show, 1971)であり、
[ペーパームーン](Paper Moon, 1973)である。もちろんこの他にも、制作年代が古い作品や、もう筋すら忘れてしまった当時作られた白黒作品を何本か見ているはずだが、洋画で印象的だったのはこの2本である。
ただ、
[ラストショー]はどうも印象が暗くって、能天気な僕には、名作であるということは分かっても、部分部分の印象しか残していかなかった。それに引き換え
[ペーパームーン]は、
テータム-オニール(Tatum O'Neal)が可愛かったことや、ストーリーの面白さから言っても、印象深い作品であった。最も一番覚えているシーンは、父親役の
ライアン-オニール(Ryan O'Neil)が
テータム-オニールを遊園地に連れていって"コニーアイランドを食べたことがあるか"と聞くシーンである。コニーアイランドとはどんな食べ物であろうか、とドキドキしながら見ていると、そこで
テータム-オニールが食べていたのは、ホットドッグであった。そうかアメリカではホットドッグのことを"コニーアイランド"と言うのか、と勝手に思い込み、一時期なんかは、"アメリカではホットドッグのことをコニーアイランドと言うのさ"と得意がっていたが、英和辞典で引いてもホットドッグのことを別の言い方はしていないようなので、NYっ子のスラングのひとつなのかもしれない(>注
01)。
[ペーパームーン]が公開された当時は喫茶店が全盛で、
マクドマルドなんかはまだ、
[太陽にほえろ]の中で張り込みをしながら食べてるな、というぐらいのどこか遠い世界の食い物だった。
そう言えば、僕が一人で喫茶店に出入りを始めたのは中学2年から3年にかけてのことで、学生服を着たままコーヒーを飲みに出かけていた。困ったことに、幼稚園の頃から叔父さんや叔母さんが喫茶店やパーラーに連れていってくれたので、喫茶店に出入りするのは不良だというのを知ったのは高校2年を過ぎた頃だった。こういうのもやっぱりおくてというのだろうか。
その頃好きだった喫茶店の一つに新静岡センター地下のアートコーヒーの直営店がある。この店は、コーヒーもそこそこおいしかったが、ホットドッグがおいしい店だった。そう、当時はホットドッグを出す店が案外あちこちにあったのだ。
今、ホットドッグが食べられるというとモスバーガーだろうか、しかし、モスバーガーのホットドッグには、欠けているものが一つある。それは、キャベツだ。ホットドッグにはいためたキャベツが不可欠だと思っているのは、僕だけであろうか。
自分でホットドッグを作ろうとすると、必ずやいくつかの困難に遭遇することであろう。第一に、バンズを購入するのが意外と困難である。売っているところには売っているのだが、いざ探すとこれが手に入らない。大手のスーパーか生協をあたるのがいいだろう。
次にソーセージである。ホットドッグ用でおいしものを探せたら幸運といわなければならない。アメリカンドッグ用のものは案外売っているのだが、これはホットドッグには向かない。なければ、([買ってはいけない]では買っていけない商品とされているが)シャウエッセンの類でも充分用は足りる。
調理は簡単、キャベツの千切りをいためて、ソーセージと一緒にパンにはさみ、オーブントースターで焼くだけである。
焼きあがったホットドッグにケチャップと粒マスタードを添えてがぶっとかじる。濃いコーヒーと良い白黒映画が観たくなるはずである。ホットドッグをかじりながら
[マンハッタン](Manhattan, 1979)なんてどうだろう。
ねえ、ところで
テータム-オニールって
[マンハッタン]にも出てたっけ(>注
02)?