作品/[三月劇場]

[映画の食卓-僕の食卓]
(8)




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 9月になったとはいえ、残暑の厳しい今日この頃である。5年も落ち続けている試験もやっと終わり、今年もだめだろうなという寂寞感だけが秋の気配を忍ばせている。痛手を受けた僕の精神はこんなにも、文学しているのであるが、試験が終わったのは現実であり、開放感に浸るのに文学は適さない。そこでまんがとビデオの日々、のはずだったのだが、ビデオのほうは[アルマゲドン][ガメラ3]、それと得体の知れないイギリスのSF探偵ものを見ただけだ。おまけに、こいつらがすべて、いまいち面白くなかった。特に[ガメラ3]は期待が大きかっただけに、本当にがっかりした。あれでは[ゴジラVSビオランテ]とさして変わりがないではないか。
 こんな時には、うまいものを食べるに限る。しかし、貧弱な食生活の我が家ではさして変わったメニューが出てくることはまずありえない。
 それにしても、今年の残暑はなかなかのものだ。そんななか、わが町エスパルスは現在首位である。エスパルスといえば、主将の沢登が日本代表に復帰したのもめでたいではないか。その沢登の年賀状を町のラーメン屋で見かけたことがある。このラーメン屋はエスパルスの選手が来るので有名らしいが、僕は何度通っても一度も見かけたことがない。
 さて、その沢登の年賀状であるが、"今年もチャーハンを食べに行きますからよろしく"、というような内容のものであった。しかし、そのラーメン屋の名物は[永楽麺]である。しまった、"町のラーメン屋"で通そうと思ったのに、メニューにしっかりと店の名前が入っているではないか。
 [永楽麺]は激辛ラーメンで、値段は600円と、まあ、高いような安いようなお値段である。しかしこの激辛麺は、そこらの激辛麺とは一味違う。トーバンジャンの辛味を生かした激辛麺なのである。
 さて、[永楽麺]のレシピであるが、僕はすぐに食べに行けるのだ。わざわざ作る必要はないのだ。というわけで、作ったことはないのだが、およそは想像できるのでここで再現してみよう。
 まず、にんにくとしょうがのみじん切りをいため香り出しをする。これに500円玉程度の大きさに刻んだザーサイとトーバンジャンを加え、スープでのばす。豚こまともやしを別にいため、トーバンジャンのスープを麺に加えた後、いためた豚こまともやし、刻んだわけぎをのせて出来上がりである。麺はちぢれていない細麺がいい。スープはしょうゆ味のもので十分代用できると思う。
 "町のラーメン屋"では、[永楽麺]を食べるときには、2リットルのペットボトルで作った氷がペットボトルごとテーブルに出てくる。この氷が溶けるのをお冷やにして、辛い辛い麺をフウフウいいながら食べるのである。
 ラーメンを正面から取り上げた作品に、伊丹十三監督の[タンポポ] (1985)がある。グルメがブームになる前で作られたにもかかわらず、やがて来るグルメブームを予感させるような作品であった。しかし、決してできのいい作品でないことは確かだ。税金の問題や、いい作品を期待されることに疲れたのだろう。それとも、一部で報道されたように女性問題のせいだったのかもしれない。
 [マルタイの女]も見たが今までの焼き直しだった。それでも、面白かった。が、面白がってもらうだけでは満足できない人だったのだろう。それが、自らを死に至らしめた一番の原因だったのではないか。[タンポポ]を好きになれないのも、たかがラーメンと笑う余裕が映画に感じられないせいかもしれない。ウッデイ-アレンのようにいいかげんになってしまえば、きっとそれなりに楽しめるのだろうが。
 さあ、凡人は安くて適度においしい激辛麺を食ってこの残暑を乗り切るしかないのだ。
 おかしい。秋に向けて文学していたはずなのに、なんで元気にならなくちゃいかんのだ。

Mon, 20 Sep 1999 23:23:53
森島永年






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