戻る DigiQ  (赤外線コントロール チョロQ)


DigiQ チョロQ を初めて見たときは驚きました。
なにしろあの小さい車が、すっ跳ぶように走るんですから。

その チョロQ が、 赤外線コントロール & コンピュータ制御 に進化して再登場しました。
ゼンマイ仕掛けの鉄砲玉と違って、すっ飛んでいってはひっくり返り、転げ回ってまた走り出す…。 まるで元気いっぱいの小犬がじゃれ回っているようです。
(もちろん、ちゃんとコントロールすれば転げ回ることはありませんが。)

チョロQ の魅力が何倍にもふくらんでいます。


DigiQ は 2001年10月の発売ですが、当初は入手難だったようです。
私もおもちゃ屋さんをのぞく度に探しましたが、なかなかお目にかかれず、結局インターネットで購入しました。




小型のワイヤレスリモコンカーとしては、BitChar-G と共通点も多い反面、 それぞれに独自の特徴があります。
簡単な表にすると次のようになります。また、外観の相違も写真で比べてみました。

 DigiQBitChar-G
製品形態 DigiQ完成品・改造禁止 BitCharG組立式・カスタマイズ可
制御方式 赤外線コントロール: 比例ラジコン: ON/OFF
操舵方式 後輪回転数制御前輪角度制御
寸法 (実測) 全長 49.8mm×幅 31.7mm×高さ 27mm 全長 60.8mm×幅 32.2mm×高さ 27mm
重量 20g21g
充電/走行時間 10分 / 15分45秒 / 2分
メーカー タカラ・コナミトミー
購入価格 約 \4,500約 \2,500

DigiQ と BitChar-G
DigiQ と BitCharG
DigiQ: INTEGRA TypeR    BitChar-G: ACCORD Wagon




DigiQ 内部 さっそく分解 してみました。
(写真をクリックすると、大きい写真が表示されます。 以下、 マークのあるものは同様。)

シャーシにはニッケル水素電池が2個とモーターが2個、その上に基板があります。
基板で目を引くのは何といっても手前の CPU と、のけぞり返っている赤外線センサです。
赤外線センサを少し起こしてやると、基板を固定しているネジが現れます。

DigiQ さらに分解 基板裏側右の IC はモータコントローラ、上部の小さい IC は DC-DCコンバータ でしょう。

後輪はそれぞれ別個のモーターでドライブされます。 左右モーターの回転数が等しいときは直進、異なるときは回転数の少ない方にカーブします。
子供のころ、モーターを2個使ってよく似たしくみのリモコン戦車などを作って遊んだことを思い出します。 (もちろん、単純な ON/OFF、正/逆 のコントロールのみでしたが…。)

コントローラ上部 コントローラのカバーを開くと、上部は全面プリント基板でした。
右端に CPU が見えます。 TMP47C433M とあるので調べてみると、これは東芝の 4ビットマイクロコントローラでした。
この CPU にはアナログポートが8つあるので、 スロットルトリガーやステアリングホイールの角度は小型の VR (可変抵抗器) を使ってアナログ入力し、 マイクロコントローラ内でデジタル化しているようです。
コントローラ基板 基板の部品面右側には6個の LED が並んでいます。

その下に光センサらしきもの (丸印) があります。これは何のためでしょうか?

光センサの必要性を考えてみて、これは何台かが一緒になってカーレースで遊ぶ (4台まで可能) ときに、 他のコントローラの光による誤動作を互いに防止するためではないかと思いつきました。


光センサの信号
光センサの信号
(ver. 1V/div, hor. 20msec/div)
これを確認するために、25年前のポンコツオシロスコープを引っぱり出してきてセンサの信号波形を見てみました。
あまり鮮明ではありませんが、約 200msec 毎に複雑な信号が出ている様子が分かります。
(目盛りの部分全体で 200msec。 センサに赤外光が当たると L レベルになる。)
(したがって、 0.2秒を切る早技は DigiQ には無効らしい。)
発光時間は発光間隔の 10%あまりですから、 これなら4台のコントローラが互いに干渉しないように発光タイミングを制御することができそうです。
TV リモコンとの干渉
TV リモコンとの干渉
コントローラが2台あればもっと分かりやすいのでしょうが、 とりあえず手近にあったテレビのリモコンのボタンを押してみました。
(写真1と比べて、増えているのはリモコンからの信号です。)
リモコンの信号と干渉して、センサの信号が乱れてしまいます。
(こうなると、コントローラの CPU はリセットされるようです。)
光センサ信号の拡大
光センサ信号の拡大
写真3は、写真1の時間軸を拡大したものです。
(ほぼ画面いっぱいになるように拡大したので、時間軸は校正されていません。)
スロットルトリガーやステアリングホイールを操作したり、ID No. の設定を変えると、 この信号の様子が微妙に変化します。


波形観測用「ヒゲ」
DigiQ の CPU は 16ピン SOP ですが、 これはコントローラに使われている CPU (TMP47C433M) と同じシリーズのものです。
I/Oポートのいくつかがモータードライバ IC につながっているので、 その信号をみるために IC のピンに電線の切れっ端を半田付けしました。

このピンの信号は、普段(DigiQ 停車時)は常に H レベルですが、 スロットルトリガーを引くと一時的に L レベルになって、またすぐに H レベルに戻ります。
微速時のモーター制御信号
微速 (ver. 2V/div, hor. 2msec/div)
オシロスコープのスポットが下にある(L レベル)時間だけモーターに電流が流れ、 上にあるとき(H レベル)は流れません。
1/100 秒ごとにモーターに電流が流れるのですが、微速時は 3/10,000 秒後にすぐ OFF になります。 これを繰り返すと、モーターには平均すると 3% の時間だけ電流が流れます。
中速時のモーター制御信号
中速
スロットルトリガーをもう少し強く引くと、モーターが ON になる時間が長くなります。 左の写真の状態では、約30% の時間だけ通電されていることになり、 もっと強く引くと下の写真の状態になって、約70% の時間が ON になります。
このようにして微速から高速まで、8段階ほどでスピードがコントロールされています。

高速時のモーター制御信号
高速 (Normal)
ステアリングホイールが操作されていないときは左右のモーターに同じ信号が加えられますが、 ステアリングホイールを回すと片方のモーターのスピードが少し遅くなります。 このときのモーター ON の信号は、もう少し微妙にコントロールされているようです。

スロットルトリガーを押してやると CPU の隣のピンにこのような信号が現れ、DigiQ はバックします。


コントローラ と DigiQ たかがおもちゃといってしまえばそれまでですが、 おもちゃにも IT を結集すれば、こんな楽しいものができるという好例だと思います。

IT ばかりでなく、タイヤを模した(?) ステアリングホイールも凝っていて、 触感も操作感も悪くありません。
コントローラのグリップの部分には単三アルカリ乾電池が4個入りますが、 この電池のカバーも単なる 『電池のフタ』 ではなく、子供たちの夢を育むようなマニアックな工夫が施されています。

このようなおもちゃを開発した人々の笑顔が目に浮かぶようです。



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*1 最初は、分解できないように特殊なネジが使われていたそうですが、 後輪にホコリがからまって動かなくなることがあるからでしょうか、 私が入手したものは普通のプラスネジで止められていて、 「追加メンテナンス」 という分解マニュアルまで添付されていました。 ただし、分解の手順が説明されているのは、 この写真の状態までです。

*2 2001年6月7日付けの プレスリリース には、 「超小型CPU (1cm×0.5cm) のスペックは8ビット」 とあり、 デジQの特徴 の写真でも 28ピン の IC に見えますが、 製品に実装されているのは4ビットの CPU、TMP47C201M のようです。


update: 2002.05.07  address