戻る ADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line)



ADSL は従来の加入者電話回線 (subscriber line) を利用したデジタル信号の伝送方式で、 Asymmetric Digital Subscriber Line は 「非対称デジタル加入者線」 と訳されます。

「加入者線」 とは家庭から電話局までの電話線のことで、 ADSL は加入者線を利用して通信しますが、 電話や ISDN のように電話回線をつぐのではなく、 電話線という 「電線」 に、 搬送波に乗せたコンピュータの信号を多重化することによって通信します。

「非対称」 は電話局 → 利用者方向 (下り) の伝送速度と、 利用者 → 電話局方向 (上り) の伝送速度とが異なっていることを意味しています。
家庭のコンピュータをインターネットに接続する場合、 ホームページの閲覧やメールの交換という利用形態を想定すると、 利用者から送信される情報 (上り) は 閲覧したいページの URL や検索のキーワードなどデータ量はわずかですが、 それに対して送られてくる情報 (下り) にはテキスト (HTML) あり、 静止画あり、 動画あり、 音声ありと多様で、 データ量は上りに比べて圧倒的に多くなります。 そのため、 上下の通信速度を同じにして上り方向をあまり利用されないままにしておくより、 下り方向の速度を速くした方が全体として回線を効率よく利用できます。
道幅が限られているなら、 交通量の多い下り車線を多くする方がいい、 というわけです。

ADSL


ADSL は電話線を利用しますが、 電話機のようにダイヤルして電話回線を使用するのではなく、 電話線という 「電線」 を使って、 電話とはまったく異なる性質の信号を伝送します。
そのため、 インターネットに接続したままにしておいても通話料金がかかることがありません。
コンピュータのスイッチを入れるといつでもインターネットが利用できる、 「常時接続」 になります。

ADSL のもうひとつの特徴は通信速度、 当初は 1.5Mbps (メガビーピーエス)でしたが、 12Mbps、 24Mbps と次第に高速化され、 50Mbps というサービスも始まっています。
しかし電話線はもともと音声通話のためのもので、 このような高速のデータ通信を保証するものではありません。
最良の状態でも最高速度の80%程度、 通常は半分、 あるいはもっと遅いと考えた方がよさそうです。 電話局から遠いほど通信速度が落ちる傾向があり、 長距離になると通信できないというケースもあります。

また、 ADSL は加入者線という "電線" に信号を多重化していますから、 電話局までの通信線の中に光ファイバーが含まれている場合も通信できません。


ADSL、CATV、FTTH の利用者数の推移
ADSL, CATV 加入者数推移

出典:ブロードバンドサービス等契約数の推移
( http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/new/)
2010年3月末より、CATV の一部事業者に集計方法の変更があります。

日本では 1999年12月に ADSL のサービスが開始されましたが、 当初は利用料金や加入料金が CATV と同程度であった ためか、 しばらく低迷が続きました。
2001年8月、 Yahoo!BB が 8Mbps サービスを月額 2,83O円という低価格で参入し、 他の業者も価格の引き下げを余儀なくされたこともあって一気に普及しました。 2001年末には CATV 加入者数を上回り、 2003年12月には 1,000万人 を突破してなお増え続けましたが、 2006年6月から減少に転じ、 2008年6月には FTTH に逆転されました。