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ハードディスク技術の進歩 |
コンピュータ関連の技術の進歩には、目を瞠るものがあります。
中でも、ハードディスクの分野の技術革新が注目されています。
最近のパソコンには数百ギガバイトのハードディスクが使われていますが、
私が 20年あまり前に初めて使ったハードディスクの記憶容量は、 20Mバイトでした。
パソコンのハードディスクの記憶容量は、 20年でざっと 1 万倍になったわけです。
同じ大きさの紙でも、小さい字ならたくさんの字を書くことができます。
字はどんなに小さいくても、読めさえすれば 「情報を伝える」 という文字の機能は損なわれません。
ハードディスクもこれに似て、「小さい字で書く」 技術の進歩によって、 記憶容量が増え続けています。
小さく書かれた文字を読むための技術の進歩も、 めざましいものがあります。
400字詰めの原稿用紙は、20行×20字ですが、
「20行」 に相当するものをハードディスクではトラック密度
(TPI: track per inch)、
「20字」 に相当するものを線記録密度
(BPI: bit per inch)
といい、これを掛け合わせたものが 「400字詰め」 に相当する面記録密度
(bpsi: bit per square inch) です。
1平方インチ
(2.54cm×2.54cm) の中に何ビット記録できるかを
ビット/インチ
2 という単位で表します。
下図はハードディスクの面記録密度の推移を表したものです。
● は 実験・研究室レベルで確認されたもの、
● は 製品として出荷されたものを表しています。
面記録密度 (ビット/インチ2 ) の推移
これまで、ハードディスクの面記録密度は 50Gbpsi〜100Gbpsi が限界といわれていましたが、
2000年になって 50Gbpsi を越えるものが現れ、 2001年8月には 100Gbpsi、 「限界」 を越えました。
現在はさらにその 10倍、 1 Tbpsi を越えるハードディスクが開発されています。
ハードディスクの技術の進歩には、目を離せません。
しかし、面記録密度を高めるということは、「小さい文字で書く」、すなわち
データを記憶する磁性体の面積を小さくすることです。
字をどんどん小さくしていくと拡大鏡がないと読めなかったり、
もっと小さくなると顕微鏡が必要になるかもしれません。
1 Tbpsi のディスクには、1文字 (8ビット) は僅か 0.07μm×0.07μm の中に書かれている計算になります。
この小さい 「文字」 を読むためには、まず磁気ヘッドが正しく読むべき 「文字」 の上にいなくてはなりません。
小さい文字からは磁気も弱くなるので感度のよい磁気ヘッドが必要です。
磁気ヘッドの浮上量を減らしてできるだけ読みやすくすることも必要で、
そのためには磁気ディスクの表面も極限まで平坦でなくてはなりません。
ハードディスクの面記録密度はさまざまな技術に支えられて、
1.6〜2倍/年という驚くべきペースで増加し続けています。