戻る プライバシー (情報秘匿)


人間 は、 この点に関しては、 完全に両面を持っている。
人は一人では生きられない。 集団の中でしか生きられない。 だから、 人は群を作り、 社会を作る。 誰かに守られていたい。 母の懐に抱かれるように・・。
それでいて他方では、 他人に煩わされたくない。 他人の干渉を排除したい。 親離れだけでなく、 煩わしい親戚や郷里の人とも絶縁したい。
この表裏二面性。
田舎に帰ると、 懐かしい心安らぐ幼友達が迎えてくれる。 しかし、 他面、 親戚一党の煩わしい眼が光る。

前者 ・・すなわち、 社会の中で守り守られて生きるためには、 個人情報は晒す覚悟がなくてはならぬ。 貝のように身を閉ざしていては誰も助けようがない。
後者・・すなわち、 社会と一線を画して生きるには、 個人情報は隠蔽することが望ましい。 いつどこから、 矢が飛んで来るか分からないから。
この後者への思いが強くなった所で、 生まれてきたのがプライバシー権なるものではなかろうか。
確かに人には、 多かれ少なかれ、 他人に知られたくない秘密があり、 そうでなくても、 他人の情報を悪用する悪い奴等が現れてくる。

スイ スの心理学者グスタフ・ユングは、 人間には、 内向的な性格の人と、 外向的な性格の人とがあると説く。 内向的な人は、 内気、 はずかしがり、 無口。その性格が高じると、 非社交的、 根暗、 陰気に至ると云う。 俗説では、 血液型がA型の人は内向的だと云うが、 これには根拠はない。
 しかし、 内向的な人ほど、 プライバシーを求めると云うことは確かであろう。

かく して、 やがて、 プライバシー権が声高に叫ばれて、 同窓会や町内会・同好会でも名簿が作られなくなり、 災害緊急救護者名簿まで作ることが出来ない。 町並みには、 表札のない不気味な家が点在することになる。
 彼らは、 それでいて、 政府や自治体からのサービスは受けたい。 公共交通機関は利用したい。 家の前に街灯は欲しい。 補助金も貰いたい。 助成金も貰いたい。
更に、 行政機関には情報公開を求める。そして、 秘密保護法には反対と云う。
 そして、 しばしば、 それは矛盾ではないのかと云われ、 身勝手ではないのかと云われるが・・・。

隠者 と云うと先ず中国の故事を思い出す。
帝堯の世の許由は箕山に隠れ、 周の伯夷叔斉は首陽山で餓死し、 西晋の竹林の七賢は清談と囲碁で日を送り、 東晋の陶淵明は官途を去って帰去来の辞を作った。 人々はしばしば彼らを理想の姿とした。

孤影 悄然と云う言葉があり、 孤苦零丁と云う成句もある。 誇らかに一匹狼の孤高を謳っても、 遂には孤独死して路傍に屍を晒すことになると云うものである。 やはり、 一人切りは淋しいものである。

ことわざ 「プライバシー、 行き着く所は引き籠もり、 落ち行く先は自閉症」。


情報夜話内の関連事項】  隠れ蓑(プライバシー)


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