戻る 内分泌系 (ホルモン:もう一つの人体内情報伝達)  (情報伝達)


人体内における情報伝達は、 @ 神経系によるもの、 A 内分泌系によるもの、 の2つのシステムがある。
@ 神経系が神経線維 (軸索) と、 それを接続するシナプスから構成されているのに対し、
A 内分泌系は内分泌液 (ホルモン) を製造する器官 (内分泌器) と、 それを受け取る細胞 (標的臓器の受容体) があるだけで、 それを繋ぐものは何もない。 内分泌液は血液とともに体内をゆっくりと流れてゆく。

@ 神経系A 内分泌系
 構成 軸索、シナプス    内分泌腺、受容体
 移動するもの    電気信号 化学物質=ホルモン   
 移動ルート 神経網 血管網
 速度 少しは速い 極めて遅い
 効果の持続 短時間 長時間
 例えば 有線電話 郵便

従って、 内分泌系は植物や昆虫における情報伝達に似ている。 植物や昆虫は情報伝達のために気体の化学物質を大気中に放出する。 (昆虫の場合、その化学物質はフェロモンと呼ばれる) 人体における内分泌系は化学物質であるホルモンを血液中に放出する。

この時、 原則的には
  @ 一種類のホルモンは一個所だけで作られる。
  A 一種類のホルモンは一個所だけで受け取られる。 ・・・・と云う。
つまり、 一対一の情報伝達であり、 まさに郵便であり手紙である。

(なお)
血液中を流れるホルモンの中には、 神経系のシナプスに取り込まれて、 神経伝達物質になるものもある。


内分泌器 (9器官) ・ 主なホルモン ・ その化学構造 (3種類) (内分泌器に視床下部を加えることもある)
内分泌器 主なホルモン 化学構造  
 下垂体 前葉   成長ホルモン、プロラクチン、 P
 後葉 パソブレッシン、オキシトシン P
 松果体 メラトニン、 A
 甲状腺 チロキシン(甲状腺ホルモン) A
 副甲状腺 (上皮小体) パラトルモン、カルシトニン、 P
 副腎 皮質 アンドロステロン、コルチゾール、 S
 髄質 アドレナリンノルアドレナリン 
 膵臓 (ランゲルハンス島)   インスリン、グルカゴン、 
 卵巣 エストロゲン (卵胞ホルモン)、プロゲステロン (黄体ホルモン)    S
 胎盤
 精巣 アンドロゲン (男性ホルモン)  S
* 化学構造は下表に示す略号による。

ホルモンの化学構造 (3種類)
化学構造  上表における略号   
 ペプチド 水溶性 P アミノ酸が複数個結合したもの  
 ステロイド 脂溶性 S コレステロールから作られる
 アミノ酸誘導体   水溶性   A 


【付記】 主なホルモンの主な作用
 下垂体前葉   成長ホルモン 骨の先端の軟骨の増殖を促す
 プロラクチン 分娩後の乳汁生成
 下垂体後葉 オキシトシン 分娩時の子宮収縮、分娩後の射乳
 パソブレッシン 尿を濃縮させる(抗利尿ホルモン)
 松果体 メラトニン 光刺激の低下により眠気を催す
 甲状腺 チロキシン 物質代謝の亢進、交感神経の活動促進
 副甲状腺 カルシトニン 血中のCa濃度を下げる(パラトルモンの反対)   
 パラトルモン 血中のCa濃度を上げる(過剰で骨粗鬆症)
 副腎皮質 アルドステロン 尿からNaを吸収し、尿へKを排出する
 コルチゾール 抗炎症作用、
 副腎髄質 アドレナリン 交感神経の刺激により、血管収縮・血圧上昇。  
 ノルアドレナリン  
 膵臓 インスリン 血糖値を下げる。不足すると糖尿病。
 グルカゴン 血糖値を上げる(インスリンの反対)。
 卵巣 エストロゲン 女性二次性徴を作る、発情を誘発、
 プロゲステロン 受精卵の着床準備、妊娠維持、
 胎盤  
 精巣 アンドロゲン 男性二次性徴を作る、精子形成、


(ところで)
ホルモンの中には、 人間の情動 (感情の急速な激しい動き) に関わっているものがあると云い、 これを脳内ホルモンなどと呼ぶ。
そして、 重要なものとして、 ドーパミン、 アドレナリン、 セロトニンを挙げ、 更にオキシトシンを示し、 更にオピオイドを掲げている。
しかし、 生理学的にはまだ十分には解明されていないようである。



情報夜話内の関連事項】  人体内の情報伝達


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