フェナキストスコープ(Phenakistoscope、またはPhenakist
iscope、驚き盤)は、映画(厳密には
シネマトグラフ)以前のビデオシステムの一つで、巡回型のアニメーションを再生することができる。
1832年にベルギーの
Plateau(プラトー、Joseph A.F.、1801-1883。▽図)は
フェナキストスコープを発表した。Plateauは物理学の研究の過程でこの技術を思いついたらしい。
ディスクが透けて向こうの鏡が見えるのは、一瞬だけ(しかし何回も)スリットごしに向こうが見えているからだ。
いくつものスリットが目の前を通り過ぎて行くが、どのスリットが目の前を通る瞬間でも、絵の反射像は全く同じ位置に現われる(実際には位置が一つずつずれている。▽図)。しかも、目の前をスリットが通った瞬間しか反射像は見えないので、ブレがないくっきりとした像が見える。
これらのことによって、
ビデオの再生に必要な条件が揃い、絵が動いているように見える。
おもしろいことに、フェナキストスコープのディスクとそのパッケージ(
△図)は、少し前まで使われていたLPレコードやLDを思い浮かばさせる。
フェナキストスコープは、イギリスではファンタスコープ(Fantascope)という名前で売り出された。ファンタスコープの方が言いやすいからだ
[Denton]。
1832年には
ストロボスコープ(Stroboscope)も発表されている。ストロボスコープはフェナキストスコープとよく似ているが、もう少し複雑な機構のプレーヤを使って再生するようになっていた。品質ではストロボスコーブが優れていたが、しかけが単純で扱いやすい(だってただの棒だし)という点ではフェナキストスコープが勝っていた。
フェナキストスコープにしても
ストロボスコープにしても、
フレームを丸く描き並べる必要があった。そのため、一般のユーザが自分でコンテンツを作るのは(絵が得意だったとしても)難しかった。そこで、環になった紙の帯の上に絵を順に並べて描いたものを使ってビデオを再生するシステムが研究され、その最初の成果は1834年に
ゾートロープ(Zoetrope)として登場した。