ゾートロープは、視覚を点滅させるためにスリットを使うという点では1832年に発表されていた
フェナキストスコープや
ストロボスコープとよく似ている。
しかし、
フェナキストスコープも
ストロボスコープも、フレームを少しずつ向きを変えながら円板に描いていかなければならなくて(たとえ絵心があったとしても)コンテンツを作るのが難しいという欠点があった。
これに対して、ゾートロープでは、円板ではなく環になった帯を担体として使うので、向きを少しずつ変えながら配置する必要はなく、ただ左右に並ぶように絵を描き並べていけばいい。この特徴によって、一般のユーザにとっても
コンテンツの作成が容易になった。さらに、作成した担体(=フレームを描き並べた帯)は折ったり巻いたりしておけるので、いくらでも描き溜めていけるようになった。これらの特徴から、ゾートロープは、既成のコンテンツを鑑賞する(というよりプレーヤがあまりに簡素なのでコンテンツそのもの)だけでなく、自分でコンテンツを作ることも楽しめる新しいメディアになった。
また、以前のシステムでは一度に一人しか見られなかったが、ゾートロープでは、みんなでプレーヤの周りを取り囲んでビデオを見ることができるので、家族や友人が
集まって同時に一つのコンテンツを鑑賞することが可能になった。
1877年になると
プラキシノスコープ(Praxinoscope)が登場する。
プラキシノスコープでは、スリットの代わりに回転する鏡を使うことによって点滅をなくしたことに進歩が見られるが、そのほかではゾートロープの特徴を引き継いでいる。
オカルト映画[TATARI](House on Haunted Hill、1999)には、今は廃屋になっている病院で治療(それとも拷問?)に使われていたという謳いで、ゾートロープの邪悪なバリエーションが登場する。
ここで使われているプレーヤは、円筒形のへやになっていて、壁に縦長のスリットが開けられている。そして、その少し外側にもう一つの円筒形の壁があり、その内側にいくつもの絵が並べて描いてある。つまり、へやが丸ごと巨大なゾートロープになっている!!!
外側の壁は回転するようになっていて、へやの中から内側の壁のスリットごしにそれを見ると、絵が動いているように見える(ということになっている)。
ゾートロープが使われていたのは、映画の舞台になっている病院が建てられたことになっている時代よりも100年ぐらい前のことだが、ゴシックな感じを醸し出すのにはなかなか役立っている。