資料シート●各科目

ゾートロープ
Zoetrope

http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/bookshelf/Zoetrope.html




 イギリスのHorner(ホーナー、William George。▽図)は1834年ゾートロープ(Zoetrope)を発表した。
 ゾートロープは映画(厳密にはシネマトグラフ)以前のビデオシステムの一つで、循環型のビデオが再生できるようになっていた。



 ゾートロープの担体は環になるようにした1本の開いた紙の帯で、一定の間隔ごとにフレームが描かれている(▽図左)。この構造は、本質的に今のムービフィルムと全く変わらない。
 ゾートロープのプレーヤは円筒を手で回転させることができるようにしたもので、一定の間隔でスリットが開けられている(同右)。この内側に絵の帯を巻きつけてから円筒を回転させると、スリットのために円筒が透けて見えるようになる。そして、帯に描いてある絵が動いているように見える(▽図)。

 

(資料[Film]より)

 円筒が透けて見えるのは、間欠的に、スリットを通して向こうが見えるからで、そのそれぞれの瞬間に、円筒の対面のフレームは順に全く同じ位置に現われる。このことによって、ビデオの再生に必要な条件が揃い、絵が動いているように見える。



(資料[Film]より)

 ゾートロープは、視覚を点滅させるためにスリットを使うという点では1832年に発表されていたフェナキストスコープストロボスコープとよく似ている。
 しかし、フェナキストスコープストロボスコープも、フレームを少しずつ向きを変えながら円板に描いていかなければならなくて(たとえ絵心があったとしても)コンテンツを作るのが難しいという欠点があった。
 これに対して、ゾートロープでは、円板ではなく環になった帯を担体として使うので、向きを少しずつ変えながら配置する必要はなく、ただ左右に並ぶように絵を描き並べていけばいい。この特徴によって、一般のユーザにとってもコンテンツの作成が容易になった。さらに、作成した担体(=フレームを描き並べた帯)は折ったり巻いたりしておけるので、いくらでも描き溜めていけるようになった。これらの特徴から、ゾートロープは、既成のコンテンツを鑑賞する(というよりプレーヤがあまりに簡素なのでコンテンツそのもの)だけでなく、自分でコンテンツを作ることも楽しめる新しいメディアになった。
 また、以前のシステムでは一度に一人しか見られなかったが、ゾートロープでは、みんなでプレーヤの周りを取り囲んでビデオを見ることができるので、家族や友人が集まって同時に一つのコンテンツを鑑賞することが可能になった。

 1877年になるとプラキシノスコープ(Praxinoscope)が登場する。プラキシノスコープでは、スリットの代わりに回転する鏡を使うことによって点滅をなくしたことに進歩が見られるが、そのほかではゾートロープの特徴を引き継いでいる。

 オカルト映画[TATARI](House on Haunted Hill、1999)には、今は廃屋になっている病院で治療(それとも拷問?)に使われていたという謳いで、ゾートロープの邪悪なバリエーションが登場する。
 ここで使われているプレーヤは、円筒形のへやになっていて、壁に縦長のスリットが開けられている。そして、その少し外側にもう一つの円筒形の壁があり、その内側にいくつもの絵が並べて描いてある。つまり、へやが丸ごと巨大なゾートロープになっている!!!
 外側の壁は回転するようになっていて、へやの中から内側の壁のスリットごしにそれを見ると、絵が動いているように見える(ということになっている)。
 ゾートロープが使われていたのは、映画の舞台になっている病院が建てられたことになっている時代よりも100年ぐらい前のことだが、ゴシックな感じを醸し出すのにはなかなか役立っている。




もっと知りたい人のための資料

Wikipedia
ゾーイトロープ
(http://en.wikipedia.org/wiki/Zoetrope 06-06-10)


参考にした資料

The Museum of the Moving Image (assoc.)
Cinema
Eyewitness Guide Series
(Dorling Kindersley Limited, 92)

Andrea Gronemeyer
Film
A Concise History
(Lawrence King, 99)


ジャンクション

映像 |

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