科目学習書●[メディアテクノロジー論]/[マルチメディア活用論]



組み立てる

ハイパテキスト

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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/MedTech/hypertext.html


今回の迷信
"ホームページ"
???


 前の単元ではテキストについて学習した。キャラクタ(文字)が並んだものをストリングといい、それが長くなって、行末などの準キャラクタによる区切りを必要とするようになったものを特にテキスト(文章)というのだった。
 この単元では、テキストをさらに発展させたハイパテキストについて学習する。







 テキストが長くなると、書きにくくまた読みにくくなる。そこで、長いテキストについては、全体で一つのものとは考えないで、いくつかの単位に分けて読み書きすることが行われるようになった。この単位は規模や階層の違いによって章(=chapter、しょう)とか、節(=section、せつ)などと呼び分けられているが、この単元ではまとめてと呼ぶことにする。


リニアテキスト


 テキスト、音楽、映画などは、小さい要素(テキストの場合は節)が、一列に並ぶことによって全体が構成されている(▽図)。このような構造をリニア(=linear、線形)な構造という。リニアなテキストは、先頭から末尾まで順に読んでいくように書かれている。

□---□---...---□

リニア構造

 多くのテキストは、本筋から分かれたり、逆に本筋に集まって来たりする枝葉に当たる節を含んでいる。それらは、注釈としてテキストの最後にまとめられていたり、無理に本筋の一部としてリニアな構造の中に埋め込まれていたりする。
 リニアテキストは、節の順番によって、ある特定の読み方にしたがうように読み手を強力に引率する力がある。そのため、枝葉の部分を注釈として避けておくと読者はそれを無視してしまうし、無理に本筋の中に埋め込んでしまうとそれが本筋にとってはじゃまになる。
 このように、リニアテキストは枝葉がうまく扱えないという欠点をもっている。

ランダムテキスト


 リニアに代わるもう一つの構造として、ランダム(random=たがいに関係のない)な構造がある。テキストの場合で言うと、テキストの全体をたくさんの節に分解して、それをそのまま対等に、また独立に提示するやり方に当たる(▽図)。



ランダム構造

 これなら、節と節との組合せは読み手の自由だから、書き手が考えていなかった新しい意味を読み出すことも起りやすくなる。ただし、それは、節の連続があって初めて示せるような関係(原因と結果、原理と実例のような)が表現できないということにもつながっている。
 また、読み手がみんな、自分の組合せを見つけられるとは限らない。ほとんどの読み手は、それぞれの節の内容を別々のものとして読み取るだけで、何も理解できなくなるだろう。


ハイパテキスト
Memex Xanadu HyperCard


 Bush(ブッシュ、Vannevar)は、45年の論文[思考の赴くままに]で、[Memex](▽図)という架空の情報システムを提案した。これは、大量の資料の中から必要なものを自由に検索して閲覧できるシステムだったが、それぞれの資料の中に、そこに書いてある記事と関係のある資料がどれか知らせる情報を埋め込むことができるようになっていた(資料[Memex])。



Memex
(文献[Brains]より加筆)

 ここから、リニアテキストとランダムテキストの二つの性格を合わせもつ新しいテキストの構造への検討が始まった。

 65年にNelson(=ネルソン、Ted Holm -)は[Xanadu]を提案した(資料[Xanadu])。これは、細かく分けられてはいるけれどそれぞれが完結した内容をもったいくつもの節を網のようにつなぎ合わせたものとして情報システムを構築するというものだった(▽図)。この情報の構造は、のちにハイパテキスト(hypertext)とよばれるようになった。



網構造

 80年代になってパーソナルコンピュータが登場すると、[Xanadu]のようなハイパテキストをパーソナルコンピュータを使って実現しようとする試みがいっせいに始まった。その一つはAppleが発表した[HyperCard]で、資料の中にほかの資料を呼び出すボタンを埋め込めるようになっていた(資料[HyperCard])。
 MemexもXanaduも、その時代には提案されただけで実際には実現されていなかったので、HyperCardは、世界で初めて実際に使われたハイパテキストになった。

 先生が[HyperCard]を使ってたがいを呼び出せるように資料を組み立てていくのを見てみなさい。


ハイパテキスト
ウェブ


 89年に、CERN(セルン。<Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire=ヨーロッパ素粒子物理学研究所)のBerners-Lee(バーナースリー, Tim。▽図)は、ウェブ(=web=織物、くもの巣という意味もあるのでよくそれにたとえられる)という新しいハイパテキストの形式を提案した。



Berners-Lee

 ウェブは、いくつかのページ(page)が集まってできている。そして、それぞれのページの記事の一部をボタンにしておくことができる(▽図)。このボタンを叩くと、同じページのほかの記事や、(インタネットにつながっているほかのコンピュータに置いてあるものも含めて)ほかのページが呼び出される。
 ウェブは、ページを網のようにつなぎ合わせた巨大なテキストと見なすことができる。



ボタン

 ウェブのことをホームページと呼ぶ人がいるが、間違いだから真似してはいけない
 ホームページというのは、住所録にあたるページで、自分がよく見に行くウェブや手紙をやりとりしている相手などのアドレスをまとめたものだ。したがって、ホームページは、インタネットを使っているそれぞれの人が一つずつ(いらないという人は別として)持っていて、一つずつしかない。また、プライベートなものなので、隠すほどのことはないにしても、一般のウェブのように宣伝するようなものではない(資料[ホームページ])。

 Berners-Leeのウェブの考え方の中心は、可用化(組み合せて使えるように情報はなるべく細かく分けて記録しておく)と公開化(たがいに情報の呼び出しを受け入れ合う)の二つの理念にある。

 現在では、世界で無数のウェブが公開されている。それらはどれも、たぶんどこかでたがいにつながり合っているはずだから、それをみんな合わせた、地球を包む一つの巨大なウェブがあると言うこともできる。この巨大なウェブのことを、WWW(world-wide web=全世界規模ウェブ)という。


HTML


 Berners-Leeは、ウェブの考え方と同時に、その構造を表現するための、HTMLという書式を提案した。
 HTMLは、記事の内容と構造とほかの記事へのつながり方を表現することができるようになっている。内容の本文はそのまま書き、構造やつながり方はタグ(tag)という形式で記述する(資料[HTML]。▽図)。

 

HTMLによる表現とその内容

 HTMLでは、ハイパテキストの全体としての構造はどこにも記録しておく必要がない。それどころかそれをあらかじめ決めておく必要もない。本文とタグとが混ざり合ったものを、ページごとにひとまとめにして、それぞれ別々のファイルの中に記録しておけばいい。
 なお、ウェブは必ずHTMLで書かなければいけないというわけではない。たとえば、(可用化と公開化さえされていれば)ただのテキストやただのJPEGでもウェブとして扱われる。


VRML


 95-05-26に、Pesch(=ペシ、Marc -)たちは新しいハイパテキストの表現の形式としてVRML(Virtual Reality Modelling Language。▽図)を提案した。HTMLがテキストや写真やスピーカなどが配置された紙をメタファにしているのに対して、VRMLは直方体や球などの図形が配置された空間をメタファにしている。そして、直方体や球のそれぞれに、テキストなどのいろいろなメディアによる内容とリンクを貼り付けるられるようになっている(資料[VRML])。



VRML





もっと深く学習するための資料


伊藤智、久保田真二
ヴァネヴァー-ブッシュ
([Brains:コンピュータに賭けた男たち]第2集に収録、集英社、97-04-23)

[ヤングジャンプ]に連載されていたまんが。Bushがどんな仕事をして、その中からどうしてMemexが生まれてきたのかを描いている


HyperCardの学校
MACLIFE (92-11〜94-02)

HyperCardの調理術
MacPower (95- 04〜08)

この二つは、マックを使っているけどHyperCardはまだ使ったことがなくて、これから試してみたいと思っている人のための教科書
おもしろいしよく分る


Tim Berners-Lee
WWW: Past, Present, and Future
IEEE Computer、Vol.20、No.10 (96-10)、pp.69-77

ほかにもいい資料や大切な資料はたくさんある
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