学習書●情報処理

演習
タカラガイ
なぜ宝貝が貨幣として使われたか
報告

穴見恭子
(02年度履修生)

http://www.infonet.co.apt/March/syllabus
/Literacies/shell/gallery/Anami.html




 世界最古の貨幣は、殷王朝(紀元前1600年〜1046年)で価幣として使われた宝貝の一種、キイロダカラであるといわれる。宝貝は女陰に形が似ていたため、産婦がこの貝を握っていきめば安産するという俗信があり、子安貝とも呼ばれる。
 宝貝、すなわち子安貝が価幣として使われた理由には、その美しさゆえに装飾品としての利用価値があること、特徴的な形ゆえに誰もが一見してそのものと認識できること、大きさ・重さが手ごろで携帯・運搬が容易であること、長期間保存でき価値が減らないことなどがしばしば挙げられるが、この程度の条件を満たすだけでよいのなら他にも価幣の候補はたくさんある。社会学者の永井俊哉氏は、子安貝が価幣として特に好まれたのは、女陰との類似ゆえに、女性を象徴していたためであろう、という説を提唱している。女性は金銭と同じく直接的な欲望の対象となる。今でも中国には売買婚の習慣があるし、かつて戦争のときには財宝と同様、女も戦利品として略奪の対象になった。未開社会は女の交換を原型としつつ、女を代表する子安貝の交換を通して商品交換を始めたのではないかということである。
 儀式などで、本来は人間が犠牲として用いられていたが、のちに人間を保護するために人を象徴するものをその代わりとするようになる例はしばしば見られる。貴人が亡くなった際の殉死の風習があまりにも悲惨であるとして、中国では兵馬俑、日本では埴輪が殉死者の代わりに副葬するようになったし、神のための人身御供に代わって人形が用いられるのもよくあることである。女の交換に対して義憤を覚えた人々が、女性に代わるものとして、女性を象徴する子安貝を用いるようになったというのは大いにあり得ることだと思われる。

参考文献

永井俊哉
ファルスとしての価幣
教養大学講義録 第126号
(02-03-22)

増野和幸
貝貨(ばいか)となった貝
(02-07-09)



このページの記事は 表記の学生が学習の一環として著作した報告(一部調整)です

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