学習書●[情報処理]

演習
特許+意匠登録
報告

特許権

野田麻梨子
(02年度履修生)

http://www.infonet.co.apt/March/syllabus/Literacies/ethics/gallery/Noda.html




 知的な創作活動によって生み出されたものを、それを創作した者の財産として保護するのが知的所有権である。この知的所有権は主として、産業の発展のために発明や商標などを財産として保護する「工業所有権」と、文化の発展のために音楽や絵画などを保護する「著作権」とに大別される。工業所有権はさらに4つの権利に分かれ、そのうちの一つが今回説明する特許権である。

 特許権は、発明を保護対象とし、特許法によって定義規定されている。私たちの社会の産業経済の発展には産業機器等の技術の進歩が重要である。そこでこの進歩を促進するために、国家が発明者に対し一定年限の特別な権利を認め、発明を保護する代わりに、その発明を世の中に広く公開させ、それをもとにしたさらに優れた発明を奨励することを目的として作られたのが特許権である。

 それでは特許とは具体的にどの様な発明にどのようにして与えられるのだろうか。買い物先でふと手にした商品の包装に「特許出願中」という文字を発見したという経験がある人も多いと思うが、特許というのはただ「発明した」、というだけでもらえるわけではない。正式で複雑な手順を踏んだ出願の手続きが必要だ。この出願とは、「その発明が特許を取得するための条件を満たしているかどうか」を審査するためのものである。特許法にはその条件として下記の8つの客体的要件が記されており、出願された発明は特許庁の審査官によってこれらの条件を満たしているかどうかを審査されねばならないのである。

客体的要件

1.特許法で規定する発明であること

2.産業上利用することができる発明であること

3.新規性がある発明であること

4.新規性を喪失した発明の場合、救済規定を受けること

5.進歩性がある発明であること

6.最先に出願された発明であること

7.先願の明細書・図面に記載されていないこと

8.公益に反しない発明であること

 もしも上記の条件のうち、一つでもあてはまらないものがあれば、その発明は拒絶されてしまい、特許は取得できない。

 しかし、たとえ上記の条件を全て満たしている発明であってもその手続きが煩雑で時間がかかってしまうこと、専門家に依頼すると一件の出願につき20~30万円もかかってしまうことから、実際は特許制度の存在を知っていても利用する人はそう多くないというのが現状のようである。さらに特許権は「出願提出から20年間」という存続期間の規定があり、20年経過後や、特許料が払われなかった場合は自然的に効力を失ってしまうのである。

 これに比べて著作権はどうであろうか。まずこれが最大の相違点とも言えるであろうが、著作権には取得のための出願手続きがない。というのは著作権には(印刷物であれば印刷して)公表されたときに自然に発生するという定義がなされているためである。また、特許権が20年間という存続期間だったのに対し、著作権は取得(すなわち著作の公表)から著作者の死後50年間も存続するという違いもある。

 つまり煩雑な手続きを通し、その内容が十分に審査されてようやく与えられる特許権とは違い、著作権は良し悪しに関わらずどんな著作であろうと与えられ、いつ、どこでそれが世に出ようと、みなその著作料が入るのだ。よって技術家に比べ、小説家や漫画家、ミュージシャンといった著作権を行使する立場の人のほうが比較的財をなす人が多いとも言われている。これは明らかに特許権よりも著作権のほうがメリットが大きいと言える。

 それでは、一体なぜ同じ知的所有権を保護するための権利であるはずの、特許権と著作権に違いが生まれるのだろうか。その答えは、その権利で第一に大事とされる対象の違いにある。
 特許権には前述の通り「優れた発明を保護することで、さらに優れた発明を促し、産業の発展を目指す」という一番の目的がある。つまり、発明者よりもまず発明ありきで、しかもその発明はあくまでも産業の発展に尽くすという考えである。しかし一方の著作権は「著作者個人の創作活動の保護を第一にすることで、文化の発展を目指す」というものなのである。すなわち特許権が第一に大事とするのは、発明そのものであり、著作権が第一に大事とするのは、著作者個人ということである。よって国家としては、さらに発展していく産業の促進のきっかけの一つに過ぎない発明よりも、著作者の創造活動、さらには著作者自身の権利(人権)に対する保護に有利な制度を作る必要があったのだ。その結果、特許権よりも著作権のほうが簡単に取得でき、長い期間存続するという有利な権利になったのであった。

参考文献

中本繁実、"知的所有権 工業所有権+著作権 のことがわかる本 改訂版"、(工学図書株式会社、1998年03月10日)

上原勉、川井隆、中山寛二、"はじめての知的所有権-特許との出会い-改訂第二版"(法学書院、1998年02月25日)



このページの記事は、科目[情報処理]を履修した学生が課題の学習の一環として作成した著作物(一部加筆)です

情報処理[ネットワーク][ウィルス情報]


Copyleft(C) 2002, by Studio-ID(ISIHARA WATARU). All rights reserved.


最新更新
02-11-22