[月虹舎]


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貧乏な地方劇団のための演劇講座
第12章
記録
森島永年


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/Aki/Binbou/12.html



 劇団を運営していく上で忘れがちになるのが記録である。劇を上演することが忙しくて、記録などついないがしろになってしまう。別に記録などなくても誰も困らないが長い間演劇をやっているとつい過去をふりかえることも多くなる。その時に記録があるとみんなで楽しむことが出来る。
 では記録とはどういう物があればいいのだろう。

○ビデオ
○ポスター、チケット、ビラ
○舞台写真
○会計簿
○アンケート

 ビデオは後々まで楽しめるという点では一番である。芝居は消え物だという人がいるが、これほどどういう舞台だったのかが分かるものはほかにはない。ビデオも年々高性能になって、ハイテクの良さを実感させられる。
 記録などといいだすこと自体、自分が年を取った証拠なのだろう。若い頃は記録なんて考えもしなかった。それでも学生時代の作品でもポスターの残っていない作品などは、ほとんどまったく中身を忘れているが、ポスターが残っている作品ほど記憶が鮮明なのは不思議なものだ。火事でポスターもほとんどが焼けてしまったので、今はもう昔の芝居を思い返すものは台本ぐらいしか残っていない。
自分の書いた作品でも再演されることはそうそうあるものではない。作品を忙しく書いている頃は、過去など振り返りもしなかった。この所、あまり作品も書かずに、劇から遠ざかっており、夜中にぼうっと過去の作品のビデオを観ることがある。自分の現場をもたない今の生活に、大きな不満があるわけではなく、毎日家出のんびりできる生活は楽でもあるのだが、少しだけ淋しい。
 記録を本当に必要とするのは、生活が忙しくなって芝居をやる暇もなくなってしまった人たちではなかろうか。あなたはそうならないかもしれない。でも、明日の自分は誰にも分からない。誰かがそっと記録を取っておいてくれるときっといつかは誰かの役に立つに違いない。



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