[月虹舎]


(イメージ)

貧乏な地方劇団のための演劇講座
第10章
宣伝
森島永年


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http://www.infonet.co.jp/apt/March/Aki/Binbou/10.html



 地方のアマチュア劇団の予算では華々しい宣伝をすることは不可能に近い。少ない予算で効率的な宣伝をするにはどうしたらいいのだろうか。方法としては、地味に売り歩く、マスコミを利用する、の2つが主なやり方だろう。




10-01
マスコミを利用する


 マスコミを利用するのはきわめて効果的な方法といえる。新聞、ラジオ、ミニコミ、プレイガイドなどは小さなスペースにのっただけでも、結構多くの人が読んだり聞いたりしているものなのだ。マスコミを利用しない手はない。


新聞の利用法


 新聞の地方欄にはかならず今週の[催し物]というコーナーがある。ここへは、こまめに情報を送ろう。ただし、ここへ情報を送るのは最後の作業。
 新聞社相手には、もっとしたたかに行動する必要がある。公演の一ヵ月前に各新聞社あてに公演の案内を送る。この時直接新聞社回りをするともっと効果的だ。新聞社へ送る資料は以下の物をそろえれば完璧だろう。

・チラシ
・芝居のあらすじ 今回の芝居の目的
・劇団の経歴、構成メンバーの紹介
・劇団のPR(劇団の方向性などアピールする点)
・練習日程
・練習風景の写真または過去の公演の写真
・代表者または情宣担当者の連絡先
・招待券

 実は自分たちでもここまでそろえたことはまずない。ここまで手間をかけるには、情報宣伝専門のスタッフが必要になる。たいがいは、チラシをもっていって、取材にきてくださいという程度になってしまうことが多い。本当は@からGまでそろえるべきだろう。
 新聞社は電話帳で調べてとにかく新聞と名のつくところには全部連絡すること。宝くじは買わなければあたらない、という原則はここでも当てはまる。特に周に一回程度入ってくる地方版の新聞PR紙は本紙よりも取っておく人が多いので、本紙よりも宣伝効果を期待できることがある。
 今週の[催し物コーナー]へは3週間前と2週間前の2回送ること。ここへはチラシと劇団紹介文程度でOK。1回だけだと、欄がいっぱいの時は没になることがある。2回送って没になったらあきらめること。


ミニコミの利用法


 送る資料は、新聞社と同じだが、取材にちゃんと対応できるようにしておけば、座談会形式やインタビュー形式のしっかりした記事にしてくれる。時には2〜3の劇団が集まってで座談会形式のPRをさせてもらうことも考える。


就職情報誌など


 写真を少し多めにする。高級な雑誌はカラー印刷している。クライアントに見本刷りを見せる都合もあるので、締切が早いから、なるべく早く回る。これはミニコミも同じ、公演が決まったらなるべく早く連絡をしよう。


ラジオ/テレビの利用法


○ラジオは投書するしかない。へたなテツポも数うちゃあたる。ただし、平日の昼間の番組のリスナーは客になりそうもない。

○テレビでニュースとして取り上げてもらう。ドキュメンタリーとして取り上げてもらう、など色々考えられるが、地方劇団が芝居をやるぐらいのことではニュースにならない。それよりは、[欽ちゃんの仮装大賞]に出ることを考えるほうが手っ取りばやいかもしれない。仙台の[IQ150]という劇団はこの時の賞金を元手に稽古場を借りたとのこと。当然、観客動員ものびただろう。


10-02
情報誌を作る


 あなたの街に劇団が5つ以上あるのならば、自分たちの情報誌を作ることを考えるといい。映画を観る会で、自分たちの上映会の宣伝のために情報誌を発行しているところは全国にいっぱいある。劇団も、自前の情報誌を発行して、評論やファンの声などを載せると、楽しいのではあるまいか。
 もちろん、情報誌を作るとなるとそれはそれでいろんな問題が生じる。

○資金をどうするか
 一回に1〜2万円あれば、簡単なものなら出せるはずだが。

○誰が書き、誰が出すのか
 演劇をやる目的で集まった劇団員。出版という作業にはむいていないかもしれない。いつどこで、どの劇団がやる、という情報だけでは情報誌はつまらなくなる。良い評論や、記事が必要となる。こういう記事は誰が書くのだろう。

○どういうルートで配布するか
 公民館に置いてもらう。DMで送付する。方法は色々考えられるけれども、配布する手間が馬鹿にならない。かといって、手抜きをして読んでもらえなければ効果はない。

 現在でも各劇団単位で、こうした情報は出しているはずだが、これをもう少し効率的にする方法はないのだろうか。


10-03
地味に売り歩くとは


 地味に売り歩くといっても、一軒一軒歩き回って、チケットを買ってくれというわけではない。昔、公演前に各家々に投げビラをしたり、街頭宣伝車で、街を流していた水戸の某劇団があるが、公演前日は出来ればこういうことでばたばたしたくない。といいつつも、自分たちも公演前日と当日に駅前や大学前でビラまきをしたことがある。
 地味に売り歩く宣伝行為はポスター、ビラ、DM(ダイレクトメール)の3つだろう。

○ポスター
 ポスターははっきりいって、あまり効果を期待しない方がいい。100枚のポスターを貼って、2〜3人の客が増えるだけかもしれない。しかし、ポスターもない芝居はつまらない。ポスターは何より、記念品としての価値が第一だろう。
 今でこそ、ビデオや録音も気楽に利用できるようになったが、こうした器材が出回る前は記録といえば、写真、記念といえば、ポスターぐらいしかなかったのだ。
 さて、ポスターだがサイズはA3〜B3程度とする。A2となれば映画のポスターサイズだが残念ながら大きすぎてなかなか貼ってもらえる場所がない。昔はこのポスターをはらせてもらう行為そのものが演劇をやる側と観てもらう側との最初コミュニケーションだったような気がする。
 ポスター貼りにいく時は次の道具をもっていくのを忘れずに。

・ガムテープ
・画鋲
・セロテープ
・カッター
・チケット
・ビラ
・伝票
・ハンコ
・封筒

 伝票は、チケットをあずかってもらえたときに使う。納品書を切っておくと自分が回収にいけないときにも誰かに代わりに持っていかせることができる。領収書にも納品書にもなる仕切り書のタイプが便利。ハンコは領収書に押すもの。封筒はチケットを入れたりするのに使う。
 つい近頃まで、[月虹舎]ではポスター貼りとテント張りという2つの作業をさぼると後々までなんやかやと言われたものだ。平日は忙しいので、ポスター貼りは日曜日に一気にやって、一日で町中を[月虹舎]の芝居をやるんだという感じであふれさせたい。こう考えていたので、市内をブロックに分けて劇団員総出で貼って歩いた。こういうときは、なるべく多人数が必要となる。用事があるときはしようがないとしても、出来るだけさぼらないで作業したいものだ。
 しかし、出来の良いポスターは信じられないほど集客能力がある。ポスターの力を馬鹿にしてはいけない。

○ビラ
 ビラはなるべく作った方がいい。ポスターを作らないときはビラに力を入れるのも良い。最近の[月虹舎]ではポスターよりもビラにウェイトがかかっている。ただしポスターをそのまま縮小するときはバランスを考えて縮小すること。字の大きさなど縮小すると結構気に掛かるもの。出来れば別のデザインを用意したい。
 ビラを置く場所は、公民館、映画館、喫茶店など。喫茶店に置かせてもらうビラは下図のようにするといい。


図10−1 ビラの処理


 街頭でのビラ配りはあまり効果がない。しかし、客足の伸びないときは何でもやってみることが必要だ。コンサート会場の前で、[せめてこの半分でも客が入ってくれればいいのに]と呟きながら、寒空の下でビラまきをしていると、フツフツと闘志が湧いてきたりする。なお、他人のイベントでビラまきをさせてもらうのには、あらかじめ主催者に断ること。時には、ビラを折り込ませてくれたりもする。
○DM(ダイレクトメール)
 はがきでも十分。ただし、分かりやすく、作ること。読んだだけで、いってみようかなと思うようなものが出来れば満点。
 DM(ダイレクトメール)の欠点は一度来場した客にしか出せないこと。つまり、新しい客を増やす努力を常にした上で、効果を持ち続けるという手段なのだ。ダイレクトメールだけで2〜300人集める劇団もあるので、経済効率から言うと比較的効率の良い方法といえる。




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